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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/00 20060101AFI20240509BHJP
   B23B 31/02 20060101ALI20240509BHJP
   B23B 31/12 20060101ALI20240509BHJP
   B23Q 3/06 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B23B31/00 A
B23B31/02 610Z
B23B31/12 H
B23Q3/06 303A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020047108
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021146429
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】浅川 和哉
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-214099(JP,A)
【文献】特開2017-213635(JP,A)
【文献】特開2010-046786(JP,A)
【文献】特開2007-268672(JP,A)
【文献】特開2007-160478(JP,A)
【文献】特開2005-022048(JP,A)
【文献】特開2004-001206(JP,A)
【文献】特開2001-079718(JP,A)
【文献】特開平09-094709(JP,A)
【文献】特開平05-245741(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0094355(US,A1)
【文献】米国特許第05887430(US,A)
【文献】米国特許第04604923(US,A)
【文献】中国特許出願公開第109333126(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108907837(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107363278(CN,A)
【文献】中国実用新案第202517301(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/00-33/00
B23Q 3/00-3/154
B23F 23/06
B23F 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持したワークに対して工具による所定の加工を実行するための各種駆動装置と、前記駆動装置の駆動を制御する制御装置とを有し、
スピンドルに設けられた回転可能なワークテーブルに、油圧アクチュエータによってワークを着座面に押し当てるチャック装置と、前記ワークテーブルに把持されたワークに形成された、前記ワークテーブルの回転軸と直交する方向に突き出した突出部のうち、前記回転軸から離れた箇所を油圧アクチュエータによって挟み込む位相決め装置とを備えた位相決めチャック治具が組み付けられた工作機械。
【請求項2】
前記チャック装置は、一対のチャック部材を作動させる2本の油圧アクチュエータに対して共通する作動油の供給流路と排出流路とが接続され、
前記位相決め装置は、一対の位相決め部材を作動させる2本の油圧アクチュエータに対して共通する作動油の供給流路と排出流路とが接続され、一方の油圧アクチュエータに対する供給流路にはシーケンス弁が設けられた
請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記チャック装置は、油圧アクチュエータによってスイングアームを軸方向に移動させるとともに揺動させてワークを着座面に押し当てるスイングクランプ装置であり、
前記位相決め装置は、リンククランプを介して取付けられた位相決め第1ブロックを油圧アクチュエータによってワークの突出部に一方から押し当てる第1位相決め装置および、油圧アクチュエータによって直動させる位相決め第2ブロックをワークの突出部に他方から押し当てる第2位相決め装置である
請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記位相決め装置は、下方の前記位相決め第1ブロックと上方の前記位相決め第2ブロックとによってワークの突出部を上下方向から挟み込むものであり、前記シーケンス弁は、前記第2位相決め装置の油圧アクチュエータに対する供給流路に設けられた請求項3に記載の工作機械。
【請求項5】
ワークの着座や装置の駆動に伴い複数の検出孔が塞がれ或いは開放されることにより変化する、各々の前記検出孔に接続されたエア供給管内の背圧を検出する判定装置を有し、
前記複数の検出孔は、ワークの着座部分、前記チャック部材の一方の可動部および、前記一対の位相決め部材の両方の各可動部に設けられた
請求項2に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相決めが必要なワークをクランプすることにより自動化を可能にする工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
NC旋盤などを使用する加工機械ラインでは、オートローダによって搬送されるワークに対して自動加工が行われる。ところが、加工対象とするワークには様々な形状のものがあり、ターボチャージャのベアリングハウジングのようなワークは、加工に際して位相決めしたクランプが必要である。そのため、ベアリングハウジングを加工対象とする工作機械には、作業者が位相基準にそのワークを当てたクランプ作業を行う手動タイプが使用されていたので、ライン全体の自動化が困難であった。そこで、従来の工作機械には次のような機構が提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1の工作機械は、回転方向の位相決めを行う装着時位相決め制御手段が設けられている。よって、ローダ装置から受け渡しされた異形ワークを主軸チャックが把持すると、主軸を回転自在にした状態で刃物台が主軸側へと移動し、その刃物台に設けられたワーク位相決め手段を異形ワークに押し付けることにより位相決めが行われる。また、下記特許文献2の工作機械は、主軸チャックにロケータピンがチャック爪の間に植設されている。そこで、ロボットハンドが搬送したワークを所定の位相で挿入させる際、ワークの突起部を主軸チャックの基準面に軽く押し当て、主軸チャックのロケータピンを所定位置に割出すことにより、そのロケータピンが突起部と密着した状態で位相決めが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-301602号公報
【文献】実開平5-93740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
工作機械には、従来例のように、それぞれの構造に応じた位相決め機構が設けられている。それは、既存の工作機械の構造を大きく変更することなく改良を加えることで位相決めを行う必要があるからである。例えば、前記従来例では、異形ワークに押し付けるワーク位相決め手段や、主軸チャックのロケータピンを所定位置に割出す構成など、位相決めのための構成が加えられている。その他、ワークに応じて位相決めが可能なチャック治具を用いることが考えられる、しかし、そのチャック治具を取り付ける回転テーブルは、スピンドルによって回転支持されているので電源ケーブルを通すことができない。そのため、モータではなくアクチュエータを用いることになるが、流路を通すスペースに制限があり、複数の動きをする位相決めチャック治具を構成することが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、位相決めが必要なワークに対する自動化のための工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る工作機械は、把持したワークに対して工具による所定の加工を実行するための各種駆動装置と、前記駆動装置の駆動を制御する制御装置とを有し、スピンドルに設けられた回転可能なワークテーブルに、油圧アクチュエータによってワークを着座面に押し当てるチャック装置と、前記ワークテーブルに把持されたワークに形成された、前記ワークテーブルの回転軸と直交する方向に突き出した突出部のうち、前記回転軸から離れた箇所を油圧アクチュエータによって挟み込む位相決め装置とを備えた位相決めチャック治具が組み付けられたものである。
【発明の効果】
【0008】
前記構成によれば、スピンドルに設けられたワークテーブルに位相決めチャック治具が組み付けられ、そこにオートローダによって搬送されたワークが、チャック装置における油圧アクチュエータの押し付けにより着座面に対してチャックされ、位相決め装置における油圧アクチュエータによる突出部の挟み込みによりワークの位相決めが行われるため、こうしたワークの受け渡しおよび当該ワークに対する加工の自動化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】工作機械の一実施形態であるマシニングセンタの主要な構成を示した斜視図である。
図2】位相決めチャック治具を示した斜視図である。
図3】位相決めチャック治具を示した斜視図である。
図4】位相決め機構を示した位相決めチャック治具の側面図である。
図5】位相決めチャック治具の軸方向正面図である。
図6】スイングクランプ装置、下部位相決め装置および上部位相決め装置を駆動させるための油圧回路を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る工作機械の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1は、工作機械の一実施形態であるマシニングセンタの主要な構成を示した斜視図である。このマシニングセンタ1は、図示するような内部構造を有し、その全体が機体カバーによって覆われ、ワークの切削加工などを実行する加工室が構成されている。特に、マシニングセンタ1は、ベース3上を前後方向に移動可能なものであり、車輪を備える可動ベッド11上に組み付けられている。
【0011】
マシニングセンタ1は、ワークに対して加工を行う工具を保持する主軸ヘッド12が前部に設けられている。主軸ヘッド12は、ドリルやリーマ、ボーリング等の工具の着脱可能な主軸チャック13を有し、その主軸チャック13に保持された工具が主軸用モータ14によって回転するよう構成されている。そして、マシニングセンタ1には、主軸ヘッド12に保持した工具をワークに対して3軸方向に移動させるための加工駆動装置5が設けられている。
【0012】
加工駆動装置5は、Y軸スライド17が機体前後方向に移動自在に搭載され、そのY軸スライド17に対してX軸スライド18が機体幅方向に移動自在に搭載されている。更に、X軸スライド18に対してZ軸スライド19が上下方向に移動自在に搭載され、そのZ軸スライド19に主軸ヘッド12が搭載されている。各方向の移動は、サーボモータの回転出力をボールネジ機構によって直進運動に変換する駆動機構において行われる。そして、加工駆動装置5により移動する主軸ヘッド12の下方には、ワークを回転可能に把持するワークテーブル15が組み付けられている。
【0013】
マシニングセンタ1は、可動ベッド11の上に加工駆動装置5を搭載するようにしてツールマガジン16が組み込まれている。ツールマガジン16は、高さ方向に見てワークテーブル15と主軸ヘッド12との間に複数の工具を収納したものであり、そのツールマガジン16内に自動工具交換機が組み込まれている。そして、マシニングセンタ1には、主軸ヘッド12やワークテーブル15あるいは加工駆動装置5、さらに自動工具交換機などの駆動を制御するための制御装置6が搭載されている。
【0014】
マシニングセンタ1はモジュール化されたものであり、同じくモジュール化された他の工作機械などとともに、ベース3に形成された同一幅のレール上に搭載され、横並びに設置された複数のベース3上に各種作業機が搭載されることで加工機械ラインが構成される。その加工機械ラインには、工作機械などに対してワークを順番に受け渡しするオートローダが組み込まれている。従って、加工工程に従ってオートローダによるワークの搬送が順番に行われ、マシニングセンタ1では、進入してきたロボットハンドとワークテーブル15との間でワークの受け渡しが行われる。
【0015】
本実施形態において加工されるワークは、ターボチャージャのベアリングハウジングである。このワークは加工時に位相決めが必要であり、ワークテーブル15にはワークの位相を決めてクランプする構造が求められる。そのため、ワークテーブル15には、図1に示す、放射状のチャック爪が開閉するチャック装置ではなく、各クランプ部材が異なる方向からワークを把持する位相決めチャック治具が組み付けられる。しかし、その駆動源にはモータではなく油圧アクチュエータを使用することになるが、複数の油圧アクチュエータを作動させるための流路をスピンドル内に設けることが困難であった。
【0016】
マシニングセンタ1の場合、スピンドル内に流体を通すためのインジューサは、油空圧用ポートの合計が8ポートである。従って、その限られたポート数を利用して複数のクランプ部材を作動させるための作動油の供給および排出、ワークの着座や各チャック機構の作動確認を行うためのエアの供給を行わなければならない。本実施形態の位相決めチャック治具は、こうした課題を解決すべく限られたポート数に対応した構造を有するものである。図2および図3は、図1に示すチャック装置に替えてワークテーブル15に取り付け可能な、本実施形態の位相決めチャック治具を示した斜視図である。
【0017】
位相決めチャック治具20は、ターボチャージャのベアリングハウジング80を把持するものである。ベアリングハウジング80は、フランジ811が形成されハウジング本体81に対し、中心を通した貫通孔82が形成され、その内部には滑り軸受を組み込んだ軸受部が形成されている。ターボチャージャは、その貫通孔82を通したシャフトが滑る軸受によって支持され、両端部にはコンプレッサホイールとタービンホイールとが連結される。そして、ベアリングハウジング80は、貫通孔82と直交する方向にハウジング本体81から対称的な位置に突出部83が突設され、そこには軸受部に対する潤滑油の供給および排出を行うための油路が形成されている。
【0018】
位相決めチャック治具20は、こうしたベアリングハウジング80に対応したものであり、一方の突出部83を基準位置として位相決めを行う構造を有している。その位相決めチャック治具20は、テーブル15に組み付け可能な本体ブロック25に各駆動装置が組み込まれている。まず、ベアリングハウジング80を密着させる本体ブロック25の着座面に、ハウジング本体81のフランジ811を押し当てる一対のスイングアーム31,32が設けられている。さらに、ベアリングハウジング80の一方の突出部83を長円形フランジ部831の上下方向から挟み込む、一対の位相決め第1ブロック33と位相決め第2ブロック34とが設けられている。
【0019】
従って、位相決めチャック治具20は、一対のスイングアーム31,32および位相決め第1ブロック33、位相決め第2ブロック34をそれぞれ作動させるための4つの油圧アクチュエータが設けられ、作動油を供給および排出する流路に対応した4ポートが利用される。そして、インジューサの残る4ポートは、ベアリングハウジング80が位相決めチャック治具20の着座面へ密着しているか否かの着座確認、一対のスイングアーム31,32に対する作動確認、位相決め第1ブロック33の作動確認および位相決め第2ブロック34の作動確認のそれぞれを、エア圧の検出によって行う判定装置に利用される。
【0020】
ワークテーブル15は、図2および図3に示すように、スピンドル側に固定された円筒形状の連結ブロック151が設けられ、インジューサの8つのポートに繋がった流路と接続するように位相決めチャック治具20が組み付けられる。位相決めチャック治具20は、本体ブロック25内に後述する油圧回路が構成され、その回路を通して流れる作動油によって駆動するスイングアーム31,32などの駆動機構が構成されている。ここで、図4は、位相決め第1ブロック33および位相決め第2ブロック34を作動させる位相決め機構を示した位相決めチャック治具20の側面図であり、図5、位相決めチャック治具20の軸方向正面図である。
【0021】
スイングアーム31,32は、図5に示すように軸支された回転軸を中心に、実線で示すクランプ位置と一点鎖線で示すアンクランプ位置との間を揺動するよう構成されている。このスイングアーム31,32は、スイングクランプ装置21,22に構成されたものである。スイングクランプ装置21,22は、一般的な構造のものであり、油圧シリンダ35,36(図6参照)に対して作動油の供給および排出が行われ、スイングアーム31,32がピストンの変位によって、本体ブロック25側に向けて軸方向に下降しながら揺動してクランプを行い、逆に軸方向に上昇しながら揺動してアンクランプを行うよう構成されたものである。なお、スイングクランプ装置21側には判定装置が構成され、ポート27から供給されるエアの流れる検出孔がクランプ時に閉じられるようになっている。
【0022】
次に、位相決め第1ブロック33は、図4に示すようにピストンロッド371を下方に突出した油圧シリンダ37を使用した第1位相決め装置23に構成されたものである。第1位相決め装置23にはリンククランプが構成され、クランクアーム41の一端部に位相決め第1ブロック33が固定され、その他端側にピストンロッド371が軸着されている。さらにクランクアーム41は、ピストンロッド371側にリンクレバー42の一端が軸着され、ピストンロッド371の伸縮に伴って揺動するよう構成されている。また、クランクアーム41には栓部材43が固定され、検出孔からエアが放出されている検出部44が、クランプ時には栓部材43によって塞がれるようにした判定装置が構成されている。
【0023】
一方、位相決め第2ブロック34は、図4に示すように下方にピストンロッド381を突出した油圧シリンダ38によって上下方向に直動する第2位相決め装置24を構成するものである。第2位相決め装置24は、ピストンロッド381が直交する連結バー45の中央に固定され、その両端には摺動ロッド46が設けられている。一方の摺動ロッド46は中空ロッドであり、その内部に挿入された蓋付ロッド47がスプリングに付勢された判定装置が構成されている。この判定装置は、アンクランプ時には中空軸部が蓋付ロッド47に塞がれ、クランプ時にはスプリングに抗して蓋付ロッド47が移動することにより、ポート48から供給されたエアが放出されるようになっている。
【0024】
次に、図6は、スイングクランプ装置21,22、第1位相決め装置23および第2位相決め装置24を駆動させるための油圧回路を示した図である。作動油を送り出すポンプ51には供給流路52が接続され、作動油の回収を行うタンク53には排出流路54が接続されている。そして、その供給流路52と排出流路54とに対し、インジューサ50を介して位相決めチャック治具20を構成する油圧機器が接続されている。ここで使用されるインジューサ50のポートは、スイングクランプ装置21,22に対するクランプポートP1とアンクランプポートP2、第1位相決め装置23および第2位相決め装置24に対するクランプポートP3とアンクランプポートP4である。
【0025】
クランプポートP1とアンクランプポートP2には方向制御弁61が接続され、作動油の供給と排出とをクランプ流路55とアンクランプ流路56との間で切り替えられるようになっている。方向制御弁61の一次側では、供給流路52に接続された供給側流路にリリーフ弁62が設けられ、一定圧以上の場合に排出流路54へ作動油が戻されるようになっている。また、方向制御弁61の二次側にはパイロットチェック弁63が接続され、一定条件下において逆方向に作動油が流されるよう構成されている。更に、クランプ流路55とアンクランプ流路56は、油圧シリンダ35,36のロッド側又はヘッド側に接続され、各流路には供給される作動油の量を調整するための油圧スピードコントローラ64が設けられている。
【0026】
また、クランプポートP3とアンクランプポートP4には方向制御弁71が接続され、作動油の供給と排出とをクランプ流路57とアンクランプ流路58との間で切り替えられるようになっている。そして、方向制御弁71の一次側には、供給流路52に接続された供給側流路にリリーフ弁72が設けられ、方向制御弁71の二次側にはパイロットチェック弁73が接続されている。更に、クランプ流路57とアンクランプ流路58は、油圧シリンダ37,38のヘッド側又はロッド側に接続され、各流路には供給される作動油の量を調整するための油圧スピードコントローラ74が設けられている。
【0027】
ところで、ベアリングハウジング80を安定して位相決めするには、位相決め第1ブロック33が先行して作用し、その後から位相決め第2ブロック34が作用するようにタイミングをずらして把持するように構成すべきである。そのためには第1位相決め装置23と第2位相決め装置24とに対して、独立した油圧制御を行うことが好ましい。しかし、インジューサ50のポート数には制限があることから、本実施形態では作動油の供給と排出をクランプポートP3とアンクランプポートP4を共通にした構成となっている。そして、油圧シリンダ38のヘッド側流路にシーケンス弁75を設けることにより、油圧がリリーフ圧を超えるまで第2位相決め装置24の動きが遅れるようにした構成がとられている。
【0028】
インジューサ50における残る4ポートは、前述したようにエアを利用した検出を実行する判定装置に利用される。着座確認や作動確認を行う判定装置は、各々の検査対象位置に形成された検出孔などに向けてコンプレッサからのエアが供給されている。一方で、ベアリングハウジング80の着座が行われ、スイングクランプ装置21,22、第1位相決め装置23および第2位相決め装置24が駆動することにより、前記検出孔が塞がれ或いは開放される。そして、着座や装置の駆動に伴い検出孔が塞がれ或いは開放されることによりエア供給管内の背圧が変化するため、判定装置ではその変化を検出することによって適切なワークの着座やワーククランプの確認が行われるようになっている。
【0029】
続いて、マシニングセンタ1では、オートローダで搬送されたベアリングハウジング80がワークテーブル15との間でワークの受け渡しが行われる。その際、ベアリングハウジング80は、図2などで示すように、位相決めチャック治具20の着座面に対してフランジ811が、一対のスイングアーム31,32による押し付けによって保持される。また、突出部83の長円形フランジ部831が、位相決め第1ブロック33と位相決め第2ブロック34とによって上下方向から挟み込まれて位相決めされる。
【0030】
このときスイングクランプ装置21,22側の油圧回路では、ポンプ51から供給流路52へと送られた作動油が方向制御弁61の切り換えにより、クランプ側流路55から油圧シリンダ35,36のロッド側へと供給される。これによって油圧シリンダ35,36が収縮作動し、一対のスイングアーム31,32が同時に旋回および押え込みを行い、ベアリングハウジング80が着座面に対する押え付けによって保持されたクランプ状態となる。また、油圧シリンダ35,36では、同時にヘッド側から作動油が排出され、アンクランプ側流路56から方向制御弁61を通り排出流路54へと流れてタンク53へと戻る。なお、アンクランプ時には方向制御弁61の切り換えによってポンプ51からの作動油が逆に流れる。
【0031】
一方、第1位相決め装置23および第2位相決め装置24側では、ポンプ51から供給流路52へと送られた作動油は、方向制御弁71の切り換えによってクランプ側流路57から油圧シリンダ37,38のヘッド側へと供給される。このとき油圧シリンダ38は、シーケンス弁75によって油圧が作用するタイミングが油圧シリンダ37に比べて遅くなる。そのため、先ず第1位相決め装置23の油圧シリンダ37が伸長作動することにより、クランクアーム41がリンクレバー42との連結軸を支点に揺動する。
【0032】
そして、位相決め第1ブロック33が、図4の一点鎖線で示す位置から実線で示す上方位置に変位して突出部83の長円形フランジ部831に下方から当てられる。第2位相決め装置24では、油圧シリンダ38が油圧シリンダ37よりも遅れて伸長作動することにより、摺動ロッド46に支持された連結バー45に固定の位相決め第2ブロック34が下降し、突出部83の長円形フランジ部831に上方から当てられる。このとき位相決め第1ブロック33より遅れて当たるため、長円形フランジ部831は、下側が支えられた状態で位相決め第2ブロック34による上からの挟み込みが行われる。なお、アンクランプ時には方向制御弁71の切り換えによってポンプ51からの作動油が逆に流れる。
【0033】
従って、本実施形態によれば、ワークテーブル15に位相決めチャック治具20を組み付けることにより、マシニングセンタ1はオートローダとの間で位相決めした自動受け渡しが可能になり、ワーク加工の自動化に大きく寄与する。その位相決めチャック治具20は、一対のスイングクランプ装置21,22および、第1位相決め装置23や第2位相決め装置24を組み込んだ構成によって、既存のポート数を利用して位相決めクランプと着座などのエア判定を実現することが可能になる。第2位相決め装置24は、油圧シリンダ38のヘッド側流路にシーケンス弁75を設けたことにより、第1位相決め装置23とタイミングをずらして安定して位相決めの把持が可能になる。
【0034】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、工作機械の一実施形態としてマシニングセンタを例に挙げて説明したが、旋盤の主軸に位相決めチャック治具20を組み付けるようにしてもよい。
また、前記実施形態では、チャック装置にスイングアームを使用したスイングクランプ装置21,22を採用し、位相決め装置には、リンククランプを使用した第1位相決め装置23や、位相決め第1ブロック33を直動させる第2位相決め装置24を採用したが、これとは異なる構造の位相決めクランプ治具であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…マシニングセンタ 15…ワークテーブル 20…位相決めチャック治具 21,22…スイングクランプ装置 23…第1位相決め装置 24…第2位相決め装置 25…本体ブロック 31,32…スイングアーム 33…位相決め第1ブロック 34…位相決め第2ブロック 35,36,37,38…油圧シリンダ 80…ベアリングハウジング


図1
図2
図3
図4
図5
図6