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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】軸ずれ推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
G01S7/40 134
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020047819
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021148561
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-08-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】西岡 靖倫
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-066240(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1655682(KR,B1)
【文献】特開2014-153211(JP,A)
【文献】国際公開第2007/015288(WO,A1)
【文献】特開2003-107159(JP,A)
【文献】特開平11-142520(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0301159(US,A1)
【文献】特開2018-004477(JP,A)
【文献】特開2019-138672(JP,A)
【文献】特開2001-166051(JP,A)
【文献】特開2003-207571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42,
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体(VH)に搭載されたレーダ装置(3)の軸ずれを推定する軸ずれ推定装置(5)であって、
前記レーダ装置と当該レーダ装置によって検出されたレーダ波の反射点に対応した反射物体との間の距離である物体距離と、前記反射物体が存在する方位角である物体方位角と、を含む物体情報を、繰り返して取得するように構成された物体情報取得部(31、S100)と、
前記移動体が走行する走行路の側方において、当該走行路より高い位置にて、当該走行路の延びる方向に沿って配置されて当該走行路の延びる方向に延びる路側物、又は、前記走行路の延びる方向に沿って配置された複数の路側物、における前記反射点の情報を示す路側物情報を、前記物体情報から所定の抽出条件に基づいて抽出するように構成された路側物抽出部(33、S110、S120)と、
前記レーダ装置が基準の状態にて搭載されたときの前記レーダ装置の向きを搭載基準方向とし、前記レーダ装置の実際の向きを搭載実方向とした場合に、複数の前記反射点の情報を含む前記路側物情報から、前記搭載基準方向に対する前記搭載実方向の前記移動体の高さ方向である垂直方向におけるずれ角を示す垂直軸ずれ角を推定するように構成された軸ずれ角推定部(35、S130)と、
を備えるとともに、
前記軸ずれ角推定部は、前記路側物抽出部によって抽出された、前記高さ方向における位置が一定である前記路側物の前記路側物情報を利用して、前記垂直軸ずれ角を推定するように構成されるとともに、前記路側物情報のうち、前記移動体に対して所定の距離以下にある前記路側物よりも前記所定の距離よりも遠方にある前記路側物の情報ほど重みが増すように重みをつけて、前記垂直軸ずれ角を推定するように構成された、
軸ずれ推定装置。
【請求項2】
移動体(VH)に搭載されたレーダ装置(3)の軸ずれを推定する軸ずれ推定装置(5)であって、
前記レーダ装置と当該レーダ装置によって検出されたレーダ波の反射点に対応した反射物体との間の距離である物体距離と、前記反射物体が存在する方位角である物体方位角と、を含む物体情報を、繰り返して取得するように構成された物体情報取得部(31、S100)と、
前記移動体が走行する走行路の側方において、当該走行路より高い位置にて、当該走行路の延びる方向に沿って配置されて当該走行路の延びる方向に延びる路側物、又は、前記走行路の延びる方向に沿って配置された複数の路側物、における前記反射点の情報を示す路側物情報を、前記物体情報から所定の抽出条件に基づいて抽出するように構成された路側物抽出部(33、S110、S120)と、
前記レーダ装置が基準の状態にて搭載されたときの前記レーダ装置の向きを搭載基準方向とし、前記レーダ装置の実際の向きを搭載実方向とした場合に、複数の前記反射点の情報を含む前記路側物情報から、前記搭載基準方向に対する前記搭載実方向の前記移動体の高さ方向である垂直方向におけるずれ角を示す垂直軸ずれ角を推定するように構成された軸ずれ角推定部(35、S130)と、
を備え、
前記所定の抽出条件として、前記反射物体における反射点群を複数のクラスタに分類した場合に、前記反射点群のクラスタが前記移動体の進行方向における所定の縦方向の範囲にある条件と、前記反射点群のクラスタが前記移動体の前記進行方向と垂直の所定の横方向の範囲にある条件と、前記縦方向と横方向との範囲の条件を満たす前記反射点群のクラスタのうち、前記移動体に最も近い横位置の条件と、を全て満たす条件を用いる、
軸ずれ推定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記軸ずれ角推定部は、前記路側物情報のうち、前記移動体に対して所定の距離以下にある前記路側物よりも前記所定の距離よりも遠方にある前記路側物の情報ほど重みが増すように重みをつけて、前記垂直軸ずれ角を推定するように構成された、
軸ずれ推定装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記軸ずれ角推定部は、前記路側物情報に基づいて、前記移動体の走行方向に沿った前記路側物の前記複数の反射点の垂直平面における配置を直線で近似し、前記直線を用いて前記垂直軸ずれ角を推定するように構成された、
軸ずれ推定装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記軸ずれ角推定部は、前記路側物情報に基づいて、前記移動体の走行方向に沿った前記路側物の前記複数の反射点の垂直平面における配置を第1の直線で近似するとともに、
前記路側物の前記複数の反射点の前記垂直平面における配置を前記走行方向に沿って複数の領域に区分して、当該各区分毎にそれぞれ第2の直線で近似した場合に、前記第1の直線と前記第2の直線との傾きの差が所定以上であるときには、前記垂直軸ずれ角を推定しないように構成された、
軸ずれ推定装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記軸ずれ角推定部は、前記路側物情報に基づいて、前記路側物の前記複数の反射点の垂直平面における位置のばらつきが、所定以上である場合には、前記垂直軸ずれ角を推定しないように構成された、
軸ずれ推定装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記移動体が直線走行中の場合に、前記垂直軸ずれ角を推定するように構成された、
軸ずれ推定装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記走行路及びその周囲を示す地図情報に、前記路側物の位置の情報が含まれている場合には、前記路側物情報の抽出の際に、前記地図情報を用いるように構成された、
軸ずれ推定装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記レーダ装置として、前記移動体の走行方向である前方の前記反射物体を検出する前方レーダ装置(3a)と、前記移動体の側方の前記反射物体を検出する側方レーダ装置(3b)と、が配置されている場合に、前記前方レーダ装置と前記側方レーダ装置とによって前記路側物が検出可能であるときに、前記垂直軸ずれ角の推定を実施するように構成された、
軸ずれ推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーダ装置の軸ずれを推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載のレーダ装置では、何らの原因で設置状態等が変化することで、レーダビームの中心軸がずれる事態、所謂軸ずれが生じることがある。このような軸ずれが発生すると、レーダ装置の検出対象である物体の検出精度が低下する。
【0003】
この対策として、例えば下記特許文献1には、車両近くの路面からの反射波の受信強度が最大となる現象を利用して、レーダ装置の垂直方向における軸ずれ(即ち、垂直軸ずれ)の角度を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6321448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した技術では、路面での反射波の受信強度を利用して、垂直軸ずれの角度(即ち、垂直軸ずれ角)を推定しているので、レーダビームが上向きになったとき(即ち、センサ上向き時)には、垂直軸ずれ角を精度良く推定することは容易ではなかった。
【0006】
つまり、レーダビームが上向きに軸ずれしているときには、路面での反射波を十分に受信できないことがあり、そのような場合には、反射波に基づいて軸ずれを検出することは容易ではない。
【0007】
本開示の一つの局面は、レーダ装置の垂直軸ずれ角を精度良く推定できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、移動体(VH)に搭載されたレーダ装置(3)の軸ずれを推定する軸ずれ推定装置(5)に関するものである。
この軸ずれ推定装置は、物体情報取得部(31、S100)と路側物抽出部(33、S110、S120)と軸ずれ角推定部(35、S130)とを備える。
【0009】
物体情報取得部は、レーダ装置とレーダ装置によって検出されたレーダ波の反射点に対応した反射物体との間の距離である物体距離と、反射物体が存在する方位角である物体方位角と、を含む物体情報を、繰り返して取得するように構成されている。
【0010】
路側物抽出部は、物体情報から、路側物に関する路側物情報を抽出するように構成されている。即ち、移動体が走行する走行路の側方において、その走行路より高い位置にて、その走行路の延びる方向に沿って、所定の条件に従って配置された路側物、における反射点の情報を示す路側物情報を、物体情報から所定の抽出条件に基づいて抽出するように構成されている。
【0011】
軸ずれ角推定部は、レーダ装置が基準の状態にて搭載されたときのレーダ装置の向きを搭載基準方向とし、レーダ装置の実際の向きを搭載実方向とした場合に、複数の反射点の情報を含む路側物情報から、搭載基準方向に対する搭載実方向の垂直方向におけるずれ角を示す垂直軸ずれ角を推定するように構成されている。
【0012】
このような構成により、本開示では、レーダ装置を駆動させて得られた反射物体に関する物体情報から、走行路に沿って配置された路側物の位置等の路側物情報を容易に抽出することができる。この路側物は、走行路の側方において走行路より高い位置にて走行路に沿って、所定の条件に従って配置されているので、例えばレーダビームの向きが上向きにずれていても、路側物での反射波は路面での反射波よりも検出し易い。
【0013】
つまり、レーダ装置の向きが上向きにずれていても、路側物での反射波は路面での反射波より検出し易い。また、路側物は遠方までも検出し易い。
従って、本開示では、このような特徴のある路側物を利用して、路側物による反射波によって得られた路側物情報に基づいて、レーダ装置の垂直軸ずれを精度よく推定することができる。
【0014】
なお、この欄及び特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の軸ずれ推定装置を含む車両制御システムを示すブロック図。
図2】レーダ波の水平方向における照射範囲を説明する説明図。
図3】レーダ波の垂直方向における照射範囲を説明する説明図。
図4】第1実施形態の軸ずれ推定装置を機能的に示すブロック図。
図5】垂直軸ずれ角度及びロール角を説明する説明図。
図6】レーダ装置の軸ずれを説明する説明図。
図7】道路のガードレール等の平面における配置を説明する説明図。
図8】ガードレールやその反射点の垂直方向における配置等を説明する説明図。
図9】垂直軸ずれ角と反射点の配置と近似直線との関係を示す説明図。
図10】軸ずれ推定処理のメインルーチンを示すフローチャート。
図11】路側物候補点抽出処理を示すフローチャート。
図12】路側物点群抽出処理を示すフローチャート。
図13】直軸軸ずれ角度推定処理を示すフローチャート。
図14】反射点群における変曲点を説明する説明図。
図15】車両系座標と装置系座標と垂直軸ずれ角との関係を説明する説明図。
図16】第2実施形態における処理を示すフローチャート。
図17】第3実施形態における処理を示すフローチャート。
図18】第4実施形態における処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本開示の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.全体構成]
まず、本第1実施形態の軸ずれ推定装置を含む車両制御システムの全体構成について説明する。
【0017】
図1に示す車両制御システム1は、移動体である車両VHに搭載されるシステムである。車両制御システム1は、主として、レーダ装置3と制御装置5とを備えている。さらに、搭載角調整装置7と車載センサ群9と軸ずれ通知装置11と支援実行部13とを備えていてもよい。以下では、車両制御システム1を搭載する車両VHを自車VHともいう。また、自車VHの車幅方向を水平方向、車高方向を垂直方向ともいう。
【0018】
レーダ装置3は、図2及び図3に示すように、自車VHの前側に搭載され、自車VHの前方(即ち、進行方向)に向けて、レーダ波を照射する。つまり、レーダ装置3は、自車VH前方の水平方向における所定角度範囲Ra内及び自車VH前方の垂直方向における所定角度範囲Rb内に、レーダ波を照射する。レーダ装置3は、照射したレーダ波の反射波を受信することで、レーダ波を反射した反射点(即ち、反射物体)に関する反射点情報(即ち、物体情報)を生成する。
【0019】
なお、レーダ装置3は、レーダ波としてミリ波帯の電磁波を使用するいわゆるミリ波レーダであってもよいし、レーダ波としてレーザ光を用いるレーザレーダ、レーダ波として音波を用いるソナーであってもよい。いずれにしても、レーダ波を送受信するアンテナ部は、水平方向及び垂直方向のいずれについても反射波の到来方向を検出できるように構成されている。アンテナ部は、水平方向及び垂直方向に並ぶアレイアンテナを備えていてもよい。
【0020】
レーダ装置3は、照射するレーダ波によるビーム(即ち、レーダビーム)のビーム方向が、自車VHの前後方向における前方、従って進行方向と一致するように取り付けられる。そして、自車VHの前方に存在する各種の物体(即ち、物標)を検出するために用いられる。なお、ビーム方向とは、レーダビームの中心軸CAに沿った方向であり、レーダ装置3が正しい位置(即ち、基準位置)に設置されている場合には、通常では、ビーム方向は進行方向と一致する。
【0021】
レーダ装置3が生成する反射点情報には、反射点の方位角、反射点の距離(即ち、レーダ装置3と反射点との距離)、が少なくとも含まれる。なお、レーダ装置3は、反射点の自車VHに対する相対速度、反射点により反射されたレーダ波の反射波の受信強度(即ち、受信電力)、を検出するように構成されてもよい。反射点情報には、反射点の相対速度、受信強度が含まれていてもよい。
【0022】
反射点の方位角とは、図2及び図3に示すように、レーダビームの中心軸CAに沿った方向であるビーム方向を基準として求められた角度である。つまり、反射点が存在する水平方向の角度(以下、水平角度)Hor及び垂直方向の角度(以下、垂直角度)Verの少なくとも一方である。なお、ここでは、垂直角度Ver及び水平角度Horの両方が反射点の方位角を表す情報として反射点情報に含まれる。
【0023】
レーダ装置3は、例えば、FMCW方式を採用しており、上り変調区間のレーダ波と下り変調区間のレーダ波を予め設定された変調周期で交互に送信し、反射したレーダ波を受信する。FMCWは、Frequency Modulated Continuous Waveの略である。
【0024】
レーダ装置3は、変調周期毎に、上述のように反射点の方位角である水平角度Hor及び垂直角度Verと、反射点までの距離と、反射点との相対速度と、受信したレーダ波の受信強度と、を反射点情報として検出する。
【0025】
搭載角調整装置7は、モータと、レーダ装置3に取り付けられた歯車とを備える。搭載角調整装置7は、制御装置5から出力される駆動信号に従ってモータを回転させる。これにより、モータの回転力が歯車に伝達され、水平方向に沿った軸及び垂直方向に沿った軸を中心にレーダ装置3を回転させることができる。
【0026】
よって、例えば、水平方向に沿った軸を中心に、レーダ装置3を垂直平面に沿った矢印A方向(例えば、図5参照)に回転させることにより、レーダ装置3の垂直方向におけるずれ角を調整することができる。
【0027】
車載センサ群9は、自車VHの状態等を検出するために自車VHに搭載された少なくとも1つのセンサである。車載センサ群9には、車速センサが含まれていてもよい。車速センサは、車輪の回転に基づいて車速を検出するセンサである。また、前記図1に示すように、車載センサ群9には、例えばCCDカメラ等のカメラ15が含まれていてもよい。該カメラ15は、レーダ装置3によるレーダ波の照射範囲と同様の範囲を撮像する。
【0028】
さらに、車載センサ群9には、加速度センサが含まれていてもよい。加速度センサは、自車VHの加速度を検出する。また、車載センサ群9には、ヨーレートセンサが含まれていてもよい。ヨーレートセンサは、自車VH前方に対する自車VHの進行方向の傾きを表すヨー角の変化速度を検出する。さらに、車載センサ群9には、ステアリング角センサが含まれていてもよい。ステアリング角センサは、ステアリングホイールの切れ角を検出する。
【0029】
また、車載センサ群9には、地図情報を備えるナビゲーション装置17が含まれていてもよい。ナビゲーション装置17は、GPS信号等に基づいて自車VHの位置を検出し、該自車VHの位置と地図情報とを対応づけるものであってもよい。地図情報には、道路に関する各種情報として、路側物である例えば車両用の防護柵(以下、ガードレール)41(例えば、図7参照)が配置される位置の情報が含まれていてもよい。
【0030】
軸ずれ通知装置11は、車室内に設置された音声出力装置であり、自車VHの乗員に対して、警告音を出力する。なお、支援実行部13が備える音響機器等が軸ずれ通知装置11として用いられてもよい。
【0031】
支援実行部13は、制御装置5が実行する後述の物体検出処理での処理結果に基づき、各種車載機器を制御して、所定の運転支援を実行する。制御対象となる各種車載機器には、画像を表示するモニタ、警報音や案内音声を出力する音響機器が含まれていてもよい。又、自車VHの内燃機関、パワートレイン機構、ブレーキ機構等を制御する制御装置が含まれていてもよい。
【0032】
制御装置5は、CPU19と、ROM21、RAM23、フラッシュメモリ25等の半導体メモリ(以下、メモリ)27と、を含むマイコン29を備える。制御装置5の各種機能は、CPU19が非遷移有形記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、メモリ27が、プログラムを格納した非遷移有形記録媒体に該当する。また、このプログラムが実行されることで、プログラムに対応する方法が実行される。なお、制御装置5は、1つのマイコン29を備えていてもよいし、複数のマイコン29を備えていてもよい。
【0033】
制御装置5は、図4に示すように、物体情報取得部31と路側物抽出部33と軸ずれ角推定部35との機能を備えており、軸ずれ推定装置としての機能を有する。
物体情報取得部31は、反射点の方位角(即ち、物体方位角)と反射点の距離(即ち、物体距離)とを含む反射点情報(即ち、物体情報)を、繰り返して取得する。
【0034】
路側物抽出部33は、車両VHが走行する道路(即ち、車線)の側方において、その路面より高い位置にて、その道路の延びる方向に沿って、所定の条件(例えば、同じ高さ)で配置された路側物(例えば、ガードレール41)における反射点の情報を示す路側物情報を、前記反射点情報から、後述する所定の抽出条件に基づいて抽出する。なお、路側物情報には、例えば、レーダ波が路側物にて反射した反射点の位置の情報が含まれている。
【0035】
軸ずれ角推定部35は、路側物情報から垂直軸ずれ角を推定する。詳しくは、レーダ装置3が基準の状態(即ち、基準位置)にて搭載されたときのレーダ装置3の向きを搭載基準方向とし、レーダ装置3の実際の向きを搭載実方向とした場合に、複数の反射点の情報を含む路側物情報から、搭載基準方向に対する搭載実方向の垂直方向におけるずれ角を示す垂直軸ずれ角を推定する。
【0036】
ここで、搭載基準方向とは、レーダ装置3が、本来取り付けられる位置である基準位置に搭載されたときのレーダ装置3の向きである。本第1実施形態では、搭載基準方向は、例えば、図2及び図3に示すX軸(即ち、Xc)の方向に一致しており、レーダ装置3が基準位置に搭載されている場合には、レーダ装置3に軸ずれはない。なお、レーダ装置3の正面方向がレーダ装置3の向きであり、車両VHの正面方向が搭載基準方向である。
【0037】
[1-2.レーダ装置の軸ずれ]
次に、レーダ装置3の軸ずれについて説明する。
レーダ装置3の軸ずれとは、レーダ装置3が自車VHに正確に取り付けられるときの該レーダ装置3の座標軸に対して、レーダ装置3が自車VHに実際に取り付けられたときの該レーダ装置3の座標軸が、ずれていることをいう。
【0038】
レーダ装置3の軸ずれには、装置座標軸まわりの軸ずれと高さ方向の軸ずれとがあるが、ここでは、装置座標軸まわりの軸ずれのうち、主として垂直軸ずれについて説明する。
【0039】
(a)座標軸
まず、レーダ装置3の座標軸及び自車VHの座標軸について説明する。
レーダ装置3の座標軸とは、図5に示すように、自車VHにレーダ装置3が取り付けられた状態において、レーダ装置3の上下に延びる上下軸Zs、レーダ装置3の左右に延びる左右軸Ys、及びレーダ装置3の前後に延びる前後軸Xs、をいう。上下軸Zs、左右軸Ys、及び前後軸Xsは互いに直交する。自車VHの前方にレーダ装置3が設置される本第1実施形態では、前後軸Xsはレーザビームの中心軸CAに一致する。つまり、レーダ装置3の向きは前後軸Xsに一致する。
【0040】
なお、上下軸Zsと左右軸Ysと前後軸Xsとにより、レーダ装置3における座標(即ち、装置系座標)が構成される。
一方、自車VHの座標軸とは、鉛直方向に延びる軸である垂直軸Zc、水平方向に延びる軸である水平軸Yc、及び自車VHの進行方向に沿って延びる進行方向軸Xc、をいう。垂直軸Zc、水平軸Yc、及び進行方向軸Xcは互いに直交する。
【0041】
なお、垂直軸Zcと水平軸Ycと進行方向軸Xcとにより、自車VHにおける座標(即ち、車両系座標)が構成される。
なお、本第1実施形態では、上述のように、レーダ装置3が自車VHに正確に取り付けられたときには、中心軸CAは自車VHの進行方向に一致する。つまり、レーダ装置3の座標軸と自車VHの座標軸とは、それぞれ方向が一致する。例えば工場からの出荷時のような初期状態においては、レーダ装置3は、自車VHに正確に、すなわち予め定められた位置に、取り付けられている。
【0042】
(b)装置座標軸まわりの軸ずれ
次に、装置座標軸まわりの軸ずれについて説明する。
初期状態以降、自車VHにおいては、装置座標軸まわりの軸ずれが生じ得る。このような軸ずれには、垂直軸ずれとロール軸ずれと、が含まれる。軸ずれ角度とは、このような軸ずれの大きさを角度で表したものである。
【0043】
このうち、垂直軸ずれとは、図5の左図に示すように、レーダ装置3の座標軸である上下軸Zsと自車VHの座標軸である垂直軸Zcとの間にずれが生じている状態をいう。このような垂直軸ずれ時の軸ずれ角度を、垂直軸ずれ角θpという。垂直軸ずれ角θpは、所謂ピッチ角θpであり、自車VHの水平軸Ycまわりにおける、レーダ装置3の座標軸の軸ずれ角度である。つまり、垂直軸ずれ角θpは、自車VHの水平軸Ycまわりに、従って、レーダ装置3の左右軸Ysまわりに軸ずれが生じているときの軸ずれ角度である。
【0044】
なお、垂直軸ずれ角θpは、図5の左図から明らかであるように、レーダ装置3の座標軸である前後軸Xsと自車VHの座標軸である進行方向軸Xcとのずれの大きさを表す角度でも有り得る。
【0045】
ここで、垂直軸ずれ角について、図6に基づいて更に詳細に説明する。
図6は、進行方向軸Xcを通る垂直面であるZ-X平面において、レーダ装置3のレーダビームの軸ずれ(即ち、垂直方向における軸ずれ)が生じている状態を示している。なお、軸ずれが発生していない場合のレーダビームの中心軸CAは、進行方向軸Xcと同じである。
【0046】
図6に示すように、レーダ装置3の搭載基準方向が車両VHの進行方向と一致する場合に、レーダ装置3の実際の向きである搭載実方向をビーム方向とすると、垂直方向において、進行方向とビーム方向との間の角度が、垂直軸ずれ角θpである。
【0047】
つまり、レーダ装置3が、例えば矢印A方向に回動することによって、レーダ装置3のレーダビームの中心軸CAが、基準となる進行方向から同図の実際のビーム方向にずれた場合に、そのずれ角が垂直軸ずれ角θpである。
【0048】
なお、前記図5の右図に示すように、ロール軸ずれとは、レーダ装置3の座標軸である左右軸Ysと、自車VHの座標軸である水平軸Ycとにずれが生じている状態をいう。このようなロール軸ずれ時の軸ずれ角度をロール角度θrという。
【0049】
[1-3.原理]
次に、本第1実施形態のように、路側物を用いて垂直軸ずれ角を推定する原理について説明する。
【0050】
(a)例えば、図7及び図8に示すように、路側物として、道路の幅方向における側方にて、道路の延びる方向に沿って、路面から上方に突出するように配置されたガードレール41がある場合を例に挙げて説明する。なお、図7の左右方向が道路の幅方向であり、図7の上下方向が道路の延びる方向、即ち、車両VHの走行する方向である。
【0051】
このようなガードレール41は、通常、道路の延びる方向に沿って、図8に示すように、同じ高さとなるように配置されている。詳しくは、路面には、道路が延びる方向に沿って、複数のポール43が一列に並んで配置されており、各ポール43(例えば、隣接するポール43同士)を横方向に接続するように、棒状や板状の横部材45が固定されている。
【0052】
つまり、ポール43や横部材45は、通常、その高さが一定となるように配置されているので、ガードレール41の上端は、ほぼ水平に道路に沿って延びている。また、ガードレール41の全体も、路面上にて、垂直平面における帯状にて(即ち、所定の上下幅で)、ほぼ水平に沿って延びている。
【0053】
従って、車両HVのレーダ装置3から前方にレーダビームを照射すると、レーダビームは、路面やガードレール41で反射し、その反射波がレーダ装置3にて受信される。よって、その反射波に基づいて、路面やガードレール41が反射点(即ち、反射物体)として検出される。
【0054】
実際にレーダ装置3からガードレール41にレーダビームを照射してその反射波を調べてみると、ポール43の上端や横部材45の上端からの反射波の強度が大きいので、ポール43の上端や横部材45の上端の反射点を容易に検出することができる。また、ガードレール41において、ポール43の上端や横部材45の上端以外の場所での反射点も検出することができる。
【0055】
従って、道路に沿ってガードレール41が配置されている場合には、ガードレール41に対応した多数の反射点が、車両VHの進行方向に沿って帯状の範囲に検出される。特に、ポール43の上端や横部材45の上端に対応した反射点が、細い幅にて略線状の範囲に検出される。
【0056】
よって、後に詳述するように、ガードレール41に対応した、帯状の範囲にて検出された多数の反射点(即ち、反射点群)の配置状態から、垂直軸ずれがある場合における反射点群の傾きを求めることが可能となる。
【0057】
なお、図8では、理解が容易なように、ポール43の上端や横部材45の上端の各反射点を結んで、反射点群の配置の状態を示す直線が記載してある。
(b)次に、図9に基づいて、垂直軸ずれ角θと反射点群との関係について説明する。
【0058】
図9の(B)に示すように、レーダ装置3に垂直軸ずれが生じていないとき(即ち、中心軸CAが水平のとき)には、同図右側のグラフに示すように、レーダ装置3によって検出された複数の反射点の垂直平面における配置も水平に近いものとなる。
【0059】
なお、図9の右側のグラフは、3次元の装置系座標における各反射点を、左右軸Ysに沿ってZ-X平面に投影した場合の各点(即ち、投影された反射点)の位置を示している。また、各グラフの直線は、複数の投影された反射点を、最小二乗法で近似した近似直線KLである。なお、以下では、投影された反射点を、単に反射点と記すことがある。
【0060】
従って、図9の(B)のグラフに示すように、レーダ装置3の検出結果に基づいて、近似直線KLが水平であることが分かった場合には、垂直軸ずれが生じていないと判断することができる。
【0061】
しかし、仮に、図9の(A)に示すように、レーダ装置3のレーザビームの中心軸CA(即ち、レーダ装置3の向き)が、下方にずれている場合には、レーザビームの中心軸CAは、Xcで示す進行方向(即ち、遠方)に行くほどポール43の上端から離れてゆく。
【0062】
なお、前記図8に、レーザビームの中心軸CAが進行方向軸Xcに対して下方にずれている場合に、その中心軸CAとガードレール41の上端との間隔が、同図の右側の遠方に行くほど大きくなる状態を示す。
【0063】
そのため、図9の(A)のグラフに示すように、複数の反射点の配列は同図右側の遠方に行くほど上昇するので、近似直線KLの傾きβは正の値を有する。なお、近似直線KLの傾きβの絶対値が大きいほど、レーダ装置3の下向きの垂直軸ずれ角θpの絶対値が大きくなる。つまり、図9の(A)等から明らかなように、近似直線KLの傾きβに対応した角度(即ち、傾斜角度βk)の絶対値とレーダ装置3の垂直軸ずれ角θpの絶対値とは同じであり、その正負が逆である。
【0064】
従って、図9の(A)のグラフのように、レーダ装置3の検出結果に基づいて、近似直線KLの傾きβ(即ち、正の値のβ)が分かった場合には、傾きβに対応する垂直軸ずれ角θpにて、下向きの垂直軸ずれが生じていると判断することができる。なお、この場合は、傾斜角度βkは正の値であり、垂直軸ずれ角θpは負の値である。
【0065】
逆に、仮に、図9の(C)に示すように、レーダ装置3の向きが上方にずれている場合には、反射点の配列は、同図の右側のグラフに示すように、進行方向(即ち、同図右側)に行くほど下降する。この場合には、装置系座標において、近似直線KLの傾きβは負の値を有する。
【0066】
従って、図9の(C)のグラフのように、レーダ装置3の検出結果に基づいて、近似直線KLの傾きβ(即ち、負の値のβ)が分かった場合には、傾きβに対応する垂直軸ずれ角θpにて、上向きの垂直軸ずれが生じていると判断することができる。なお、この場合は、傾斜角度βkは負の値であり、垂直軸ずれ角θpは正の値である。
【0067】
このように、Z-X平面における反射点の配列の傾き、従って、近似直線KLの傾きβによって、レーダ装置3の垂直方向における軸ずれ、即ち、垂直軸ずれ角θpを求めることができる。
【0068】
[1-4.処理]
次に、制御装置にて実施される処理について説明する。
(a)軸ずれ推定処理のメインルーチン
まず、制御装置5が実行する軸ずれ推定処理の全体(即ち、メインイーチン)について、図10のフローチャートを用いて説明する。
【0069】
本軸ずれ推定処理は、垂直軸ずれ角θpを推定するための処理であり、イグニションスイッチがオンされたことをきっかけとして開始される。
制御装置5は、本処理が起動すると、ステップ(以下、S)100にて、レーダ装置3を用いて、自車VHの前方の物体を検出する処理を行う。この物体を検出する処理は、いわゆる物標検出処理であり、例えば前記特許第6321448号公報等に記載のように周知の処理であるので、詳しい説明は省略する。
【0070】
なお、ここで物体(即ち、物標)とは、反射点情報にて示される反射点に対応したものであり、この段階では、反射点としては、路面だけでなく、ガードレール41等の路側物が含まれる。
【0071】
具体的には、S100にて、レーダ装置3から反射点情報を取得する。反射点情報とは、自車VHに搭載されたレーダ装置3により検出された複数の反射点のそれぞれについての情報である。反射点情報には、反射点の方位角としての水平角度及び垂直角度と、レーダ装置3と反射点との距離と、を少なくとも含む。なお、制御装置5は、車載センサ群9から、自車速Cm等を含む、各種検出結果を取得する。
【0072】
続くS110では、路側物候補抽出処理を実行する。この路側物候補抽出処理とは、後に詳述するように、レーダ装置3によって得られた多数の反射点から、路側物の候補となる反射点(即ち、路側物候補点)を抽出するための処理である。
【0073】
続くS120では、路側物点群抽出処理を実行する。この路側物点群抽出処理とは、後に詳述するように、前記S110にて得られた複数の路側物候補点から更に路側物である可能性の高い点群(即ち、路側物点群)を抽出するための処理である。
【0074】
続くS130では、垂直軸ずれ角推定処理を実行する。この垂直軸ずれ角推定処理とは、後に詳述するように、前記S120にて得られた路側物点群からレーダ装置3の垂直軸ずれ角θpを推定するための処理である。
【0075】
続くS140では、前記S130にて推定された垂直軸ずれ角θpが、搭載角調整装置7による調整を必要とするか否かを判定する。ここで肯定判断されるとS150に進み、一方否定判断されるとS180に進む。
【0076】
つまり、レーダ装置3の垂直軸ずれ角θpが、予め定められた角度である閾値角度以上である場合に、調整が必要であると判断してS150に進み、一方、前記閾値角度未満の場合にはS180に進む。
【0077】
S150では、垂直軸ずれ角θpが、搭載角調整装置7による調整可能範囲内であるか否かを判定する。ここで肯定判断されるとS170に進み、一方否定判断されるとS160に進む。
【0078】
S170では、垂直軸ずれ角θpが調整可能範囲内であるので、軸ずれ調整処理を実行する。つまり、搭載角調整装置7を制御して、垂直軸ずれ角θpをゼロに調整する。
具体的には、レーダ装置3の向きが搭載基準方向となるように、レーダ装置3の左右軸Ysを中心に、該左右軸Ysまわりにレーダ装置3を垂直軸ずれ角θp分回転させる調整を行って、S180に進む。
【0079】
一方、S160では、垂直軸ずれ角θpが調整可能範囲外であるので、垂直軸ずれ角θpの調整を実施することなく、レーダ装置3に軸ずれが生じていることを示すダイアグ情報(即ち、軸ずれダイアグ)を、軸ずれ通知装置11に出力し、S180に進む。なお、軸ずれ通知装置11は、軸ずれダイアグに従って警告音を出力してもよい。
【0080】
S180では、例えばイグニションスイッチがオフされたか否かによって、本処理を終了するか否かを判定する。ここで肯定判断されると一旦本処理を終了し、一方否定判断されると前記S100に戻る。
【0081】
(b)路側物候補点抽出処理
次に、制御装置5が実行する路側物候補点抽出処理について、図11のフローチャートを用いて説明する。
【0082】
本処理は、前記図10のS110の処理であり、レーダ装置3によって得られた多数の反射点から、路側物の候補となる反射点(即ち、路側物候補点)を抽出するための処理である。なお、ここで抽出する候補となる反射点は、上述したガードレール41の反射点として確からしい点である。
【0083】
なお、以下では、路側物としてガードレール41を例に挙げて説明するが、ガードレール41を単に路側物と称することもある。
まず、図11のS200にて、「距離による判定条件」が成立するか(即ち、満たされたか)否かを判定する。ここで肯定判断されるとS210に進み、一方否定判断されるとS260に進む。
【0084】
例えば、自車VHの進行方向において、判定対象に反射点について、「反射点が、自車VHから2mを上回り且つ100m未満の範囲に存在するという条件」が成立するか否かを判定する。
【0085】
S210では、「横位置による判定条件」が成立するか否かを判定する。ここで肯定判断されるとS220に進み、一方否定判断されるとS260に進む。
例えば、「自車VHが左側通行の道路(例えば、2車線の道路)を走行している場合に、自車VHの進行方向における左側において、反射点が自車から2mを上回り且つ8m未満の範囲に存在するという条件」が成立するか否かを判定する。
【0086】
なお、例えば、自車VHが1車線の道路を走行している場合には、自車VHの右側において、反射点が自車から2mを上回り且つ8m未満の範囲に存在するか否かを判定してもよい。
【0087】
つまり、このS210では、反射点が、自車VHの横方向において、路側物であるガードレール41が存在する可能性の高い範囲にあるか否かの判定を行っている。
S220では、「相対速度による判定条件」が成立するか否かを判定する。ここで肯定判断されるとS230に進み、一方否定判断されるとS260に進む。
【0088】
つまり、ガードレール41は静止物であるので、ここでは、「自車VHに対する反射点の速度(即ち、相対速度)が、静止物を示す自車VHの速度(即ち、自車速Cm)に該当する条件」が成立するか否かを判定する。なお、自車速Cmが正の場合には、検出された相対速度は負である。
【0089】
なお、相対速度の判定では、相対速度の絶対値が、自車速Cmの絶対値を中心とした所定の誤差±Δの範囲にあるか否かによって判定を行うことができる。
S230では、「自車VHの走行状態(即ち、自車状態)による判定条件」が成立するか否かを判定する。ここで肯定判断されるとS240に進み、一方否定判断されるとS260に進む。
【0090】
例えば、自車VHの直線走行時や加速度が一定の場合には、反射点の検出精度が高いと考えられるので、ここでは、車載センサ群9からの情報に基づいて、自車状態が定常的に走行している安定した状態であるか否かを判定している。
【0091】
例えば、自車VHの走行時において、ヨーレートセンサによって検出されたヨー角や、ステアリング角センサによって検出されたステアリングホイールの切れ角が、所定値以下の場合には、直線走行時と判定してもよい。また、加速度センサによって検出された加速度が、所定値以下の場合には、加速度が一定と判定してもよい。
【0092】
なお、直線走行の判定や加速度が一定の判定の場合には、所定の誤差の範囲内であれば、直線走行や加速度が一定と判定してもよい。
S240では、「カメラ15による判定条件」が成立するか否かを判定する。ここで肯定判断されるとS250に進み、一方否定判断されるとS260に進む。
【0093】
例えば、カメラ15で撮影した画像を周知の画像処理の手法で処理し、その画像から反射点の位置にある物体の画像がガードレール41の可能性が高いか否かを判定してもよい。なお、カメラ15の画像からガードレール41を検出する方法は、例えば、特開2011-118753号公報等に記載のように周知である。
【0094】
S250では、判定対象の反射点について、前記S200~S240の全てのステップで肯定判断されたので、当該反射点がガードレール41の反射点である可能性が高い路側物候補点としてメモリ27に記憶し、一旦本処理を終了する。
【0095】
一方、S250では、前記S200~S240のいずれかで否定判断されたので、当該反射点がガードレール41である可能性が低い非路側物としてメモリ27に記憶し、一旦本処理を終了する。
【0096】
なお、上述したS200~S260の処理は、前記物体検出処理によって得られた全ての反射点について実施されるので、全ての反射点は、路側物候補点か非路側物のいずれかに分類される。
【0097】
(c)路側物点群抽出処理
次に、制御装置5が実行する路側物点群抽出処理について、図12のフローチャートを用いて説明する。
【0098】
本処理は、前記図10のS120の処理であり、前記図11の路側物候補点抽出処理によって得られた複数の路側物候補点から、垂直軸ずれ角θpの算出に用いる路側物点群を抽出するための処理である。なお、路側物点群は複数の反射点から構成されている。
【0099】
まず、図12のS300にて、候補点クラスタリング処理を行う。つまり、複数の路側物候補点のクラスタリング(即ち、クラス分け)を行う。
例えば、周知のk-means法等によって、複数の路側物候補点である反射点を複数(例えば、6個)のクラスタに分割する。なお、各反射点は、車両系座標におけるXYZの座標を有する3次元のデータであるが、クラスタリングは、各反射点のXYの座標を用いて行う。
【0100】
続くS310では、「路側物点群(即ち、点群)の縦距離判定条件」が成立するか否かを判定する。ここで肯定判断されるとS320に進み、一方否定判断されるとS350に進む。
【0101】
すなわち、分割された各クラスタのそれぞれにおいて、各クラスタに含まれる全ての路側物候補点(即ち、路側物点群)について、縦距離判定条件が成立するか否かを判定する。
【0102】
具体的には、例えば、各クラスタに対応した各路側物点群、従って、それぞれの路側物点群における全ての反射点について、自車VHの進行方向である奥行方向の長さが一定以上の範囲にあるか否かを判定する。つまり、判定対象の各クラスタにおける全ての反射点について、反射点の奥行方向の距離のうち、自車VHより最も遠い距離(即ち、最大値)から自車VHに最も近い距離(最小値)を引いた値が、所定の閾値を上回るか否かを判定する。
【0103】
このS310の判定によって、全てのクラスタから、前記点群の縦距離判定条件を満たすクラスタを抽出することができる。つまり、全てのクラスタから、前記点群の縦距離判定条件を満たす反射点を有するクラスタを抽出することができる。
【0104】
なお、ここでは、各クラスタについて、全ての反射点について前記距離の条件が満たされた場合に、当該クラスタの縦距離判定条件が成立するとしたが、所定の割合以上の反射点について前記距離の条件が満たされた場合に、当該クラスタの縦距離判定条件が成立するとしてもよい。なお、このことは、下記の判定条件においても同様である。
【0105】
S320では、「前記点群の横距離判定条件」が成立するか否かを判定する。ここで肯定判断されるとS330に進み、一方否定判断されるとS350に進む。
すなわち、前記S310で肯定判断されたクラスタのうち、当該クラスタの路側物点群の全ての反射点について、横距離判定条件が成立するか否かを判定する。
【0106】
具体的には、例えば、前記クラスタの全ての反射点について、自車VHの左右方向である幅方向の長さが一定以下の範囲にあるか否かを判定する。つまり、全ての反射点について、幅方向の距離のうち、自車VHより最も遠い距離(即ち、最大値)から自車VHに最も近い距離(最小値)を引いた値が、所定の閾値を上回るか否かを判定する。
【0107】
このS320の判定によって、前記点群の縦距離判定条件を満たすクラスタから、更に、前記点群の横距離判定条件を満たすクラスタを抽出することができる。
S330では、「横位置の判定条件」が成立するか否かを判定する。ここで肯定判断されるとS340に進み、一方否定判断されるとS350に進む。
【0108】
すなわち、前記S320で肯定判断されたクラスタについて、横位置の判定条件が成立するか否かを判定する。
具体的には、判定対象のクラスタの点群が、自車VHの左右方向において最も内側の点群であるか否かを判定する。これによって、最も内側の点群を選択する。
【0109】
例えば、左側通行において、自車の右側を正と考えた場合に、点群の横位置が正(即ち、自車の右側)で、且つ、最も自車に近い位置であるか否かを判定する。
また、左側通行において、自車の右側を正と考えた場合に、点群の横位置が負(即ち、自車の左側)で、且つ、最も自車に近い位置であるか否かを判定する。
【0110】
S340では、前記S310~S330にて全て肯定判断されたので、選択されたクラスタの点群を、路側物の反射点を示す点群(即ち、路側物点群)とみなしてメモリ27記憶し、一旦本処理を終了する。
【0111】
一方、S350では、前記S310~S330のいずれかで否定判断されたので、否定判断されたクラスタの点群を、路側物の反射点を示さない点群(即ち、非路側物点群)とみなして、一旦本処理を終了する。
【0112】
なお、前記S310~S330の判定処理は、ガードレール41等の路側物として確からしい反射点を抽出するために行われる処理である。
(d)垂直軸ずれ角推定処理
次に、制御装置5が実行する垂直軸ずれ角推定処理について、図13のフローチャートを用いて説明する。
【0113】
本処理は、前記図10のS130の処理であり、前記図12の路側物点群抽出処理よって得られた路側物点群(即ち、反射点群)から、垂直軸ずれ角θpを算出するための処理である。
【0114】
まず、S400にて、前記路側物点群抽出処理よって得られた路側物点群における各路側物点(即ち、路側物点に該当する反射点)について、当該各路側物点に対応する反射点情報に含まれる距離と方位角とに基づいて、各路側物点の位置の座標(即ち、装置系座標)を算出する。
【0115】
装置系座標とは、レーダ装置3の座標軸に基づく3次元座標、即ち(Xs、Ys、Zs)で示される座標である。なお、前記反射点情報は、前記図10の物体検出処理によって得られる。
【0116】
つまり、制御装置5は、前記路側物点群のすべての路側物点(即ち、反射点)について、装置系座標である(Xs、Ys、Zs)の座標を算出し、メモリ27に記憶する。
続くS410では、前記路側物点群における各路側物点の位置(即ち、路側物位置)のばらつき判定条件が成立するか否かを判定する。ここで肯定判断されると一旦本処理を終了し、一方否定判断されるとS420に進み。
【0117】
このばらつき判定条件とは、装置系座標のZ-X平面において、路側物点群(即ち、複数の反射点)が、上述した近似直線KLにて近似することが難しい程度にばらついているか(即ち、ばらつきの程度が所定以上であるか)否かを判定するものである。この判定条件として、例えばZ-Y平面における複数の反射点の相関係数等を採用できる。
【0118】
つまり、本第1実施形態では、近似直線KLを利用して垂直軸ずれ角θpを推定するので、ここでは、ばらつきの大きな場合を排除して、垂直軸ずれ角θpを推定できるような近似直線KLを求めることが可能な、ばらつきの小さな状態を抽出している。
【0119】
S420では、上述したS410にてばらつきが小さいと判定されたので、前記路側物点群の全ての反射点について、最小二乗法によって近似直線KLの式(1)を求める。つまり、装置系座標のZ-X平面における下記の近似直線KLを求める。なお、式(1)の傾きはβであり、Cは切片である。
【0120】
Zs=βXs+C ・・(1)
続くS430では、変曲点判定条件が満たされているか否かを判定する。ここで肯定判断されるとS440に進み、一方否定判断されると一旦本処理を終了する。
【0121】
この変曲点判定条件とは、図14に示すように、装置系座標において、前記複数の路側物点(即ち、複数の反射点)のZ-X平面における配列が、全体として大よそ真っ直ぐか否かを判定する条件である。
【0122】
例えば、図14に示すように、路側物点群における全ての反射点について、前記近似直線KLを求めるとともに、隣接する反射点間に直線SLを引く。そして、近似直線KLと各直線SLとの交差する角度を求め、交差する角度が所定以上に大きな場合には、変曲点判定条件が満たされている(即ち、変曲点がある)と判定してもよい。なお、直線SLを引く2点の反射点としては、隣接する反射点ではなく、所定距離以上離れた反射点のうち最小の距離の2点の反射点を採用してもよい。
【0123】
つまり、本第1実施形態では、ガードレール41のような路側物が、道路に沿って一定の状態、例えば一定の高さで連続している状況において、垂直軸ずれ角θpを推定するので、ここでは、路側物がそのような状態で連続しているような状況であるか否かを判定している。
【0124】
なお、図14の上図は、変曲点がない路側物点群の例を示し、図14の下図は、変曲点がある路側物点群の例を示している。なお、「変曲点がある」とは、複数の反射点による配列が、一直線状ではなく、途中で曲がっているような状態があることを示している。
【0125】
S440では、前記近似直線KLを示す式(1)の傾きβに対応した角度(即ち、傾斜角度βk)を求め、その角度の正負の値を逆にすることにより、垂直軸ずれ角θpを求め、一旦本処理を終了する。
【0126】
このようにして、レーダ装置3の垂直軸ずれ角θpを求めることができる。
なお、図15に、装置系座標と車両系座標との関係を示す。ここでは、レーダ装置3の上方に軸ずれした場合の垂直軸ずれ角は正の値のθpであるので、例えば、装置系座標の前後軸Xsは車両系座標の進行方向軸Xcに対して、垂直軸ずれ角θp分左回転している。
【0127】
従って、車両系座標において、レーダ装置3の向きである中心軸CAを示す直線は、下記式(2)で示すことができる。なお、Cは切片である。
Zc=θpXc+C ・・(2)
[1-5.効果]
上記第1実施形態では、以下の効果を得ることができる。
【0128】
(1a)本第1実施形態は、物体情報取得部31と路側物抽出部33と軸ずれ角推定部35とを備えている。
このような構成により、本第1実施形態では、レーダ装置3を駆動させて得られたレーダ波の反射点に対応した反射物体に関する反射物情報から、走行路に沿って配置されたガードレール41等の路側物の反射点の位置等の路側物情報を容易に抽出することができる。例えば、ガードレール41は、道路の側方において路面より高い位置にて道路に沿って、一定の高さで配置されているので、レーダビームの向きが上向きにずれていても、ガードレール41での反射波は路面での反射波よりも検出し易い。
【0129】
つまり、レーダ装置3の向きが上向きにずれていても、ガードレール41での反射波は路面での反射波より検出し易い。また、ガードレール41は遠方までも検出し易い。
従って、本第1実施形態では、このような特徴のあるガードレール41等の路側物を利用して、路側物による反射波によって得られた路側物情報に基づいて、レーダ装置3の垂直軸ずれ角θpを精度よく推定することができる。
【0130】
(1b)本第1実施形態では、上述した路側物情報に基づいて、自車VHの走行方向に沿った垂直平面におけるガードレール41等の路側物の複数の反射点の配置を直線で近似する。そして、その近似直線KLを用いて垂直軸ずれ角θpを推定することができる。
【0131】
例えば、ガードレール41は、一定の高さで、垂直平面に沿って帯状に設けられている。詳しくは、ガードレール41は、一定の高さで、路面と平行に、道路に沿って連続するように帯状に設けられている。よって、レーダ波の複数の反射点の垂直平面における分布は、垂直軸ずれ角θpに対応した傾きを有するほぼ帯状の分布となる。従って、この帯状の反射点の分布から得られた近似直線KLに基づいて、精度よく垂直軸ずれ角θpを推定することができる。
【0132】
(1c)本第1実施形態では、ガードレール41の反射点から得られる反射点の垂直平面における分布が変曲点を有するような状態、即ち、複数の反射点の配置を直線で近似した場合に、変曲点を有する状態であるときには、垂直軸ずれ角θpを推定しないようにしている。
【0133】
つまり、垂直軸ずれ角θpを精度良く推定できる条件が満たされた場合に、垂直軸ずれ角θpを推定するように構成されているので、精度の高い垂直軸ずれ角θpを求めることができる。
【0134】
(1d)本第1実施形態では、路側物情報に基づいて、路側物の複数の反射点の垂直平面における位置のばらつきが、所定以上である場合には、垂直軸ずれ角θpを推定しないようにしている。
【0135】
つまり、垂直軸ずれ角θpを精度良く推定できる条件が満たされた場合に、垂直軸ずれ角θpを推定するように構成されているので、精度の高い垂直軸ずれ角θpを求めることができる。
【0136】
(1e)本第1実施形態では、自車VHが直線走行中の場合に、垂直軸ずれ角θpを推定する。
つまり、垂直軸ずれ角θpを精度良く推定できる条件が満たされた場合に、垂直軸ずれ角θpを推定するように構成されているので、安定して精度の高い垂直軸ずれ角θpを求めることができる。
【0137】
[1-6.文言の対応関係]
本第1実施形態と本開示との関係において、車両VHが移動体に対応し、レーダ装置3がレーダ装置に対応し、制御装置5が軸ずれ推定装置に対応し、物体情報取得部31が物体情報取得部に対応し、路側物抽出部33が路側物抽出部に対応し、軸ずれ角推定部35が軸ずれ角推定部に対応する。
【0138】
[2.第2実施形態]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、以下では主として第1実施形態との相違点について説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0139】
本第2実施形態では、軸ずれ角推定部35は、路側物情報を示す反射物情報のうち、自車VHに対して所定の距離よりも遠方にある反射物情報に重みをつけて、垂直軸ずれ角θpを推定するように構成されている。
【0140】
例えば、複数の路側物に対応する反射点が検出された場合、図16に示すように、制御装置5では、S500にて、その反射点が自車VHから所定距離以上の遠方の範囲にある反射点であるか否かを判定する。そして、遠方の反射点である場合には、S510にて、その反射点の数を、例えば2倍等のように増加させる。
【0141】
これによって、複数の反射点について、最小二乗法によって近似直線KLを求める場合には、遠方にある反射点が増加した(即ち、再設定された)反射点に基づいて近似直線KLを求めることができる。
【0142】
なお、図16の処理は、例えば図13のS400の処理の後に実施することができる。これによって、路側物の反射点の位置を再設定することができる。
つまり、レーダ装置3の近くでは、反射波に各種のノイズが乗りやすく、レーダ装置3の遠方に比べて、反射点の位置等の正確な情報が得られにくいという傾向がある。そこで、本第2実施形態では、レーダ装置3の遠方の反射点の情報を重視して、反射点情報に重みをつけるようにしている。
【0143】
これによって、反射点の配置のより正確な状態が分かるので、誤差等の少ない、より正確な近似直線KLを得ることができる。従って、精度の高い近似直線KLから、より精度の高い垂直軸ずれ角θpを求めることができる。
【0144】
なお、本第2実施形態においても、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
[3.第3実施形態]
第3実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、以下では主として第1実施形態との相違点について説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0145】
本第3実施形態は、自車VHが走行する走行路及びその周囲を示す地図情報に、ガードレール41等の路側物の位置の情報が含まれている場合には、路側物情報を示す反射物情報の抽出の際などに、地図情報を用いるように構成されている。
【0146】
例えば、図17に示すように、制御装置5では、S600にて、ナビゲーション装置17が使用する地図が、ガードレール41等の路側物の位置が記載されている地図であるか否かを判定する。
【0147】
そして、路側物の位置が記載されている地図の場合には、S610にて、その地図の情報や自車VHの位置情報に基づいて、自車VHが走行している道路に沿って、ガードレール41等の路側物が設けられているか否か判定する。そして、路側物が設けられている道路の場合には、S620にて、自車VHに対する路側物の位置の情報、例えば平面において路側物が配置されている範囲等の情報を取得する。
【0148】
なお、路側物が設けられていない道路である場合には、軸ずれを推定するために必要な路側物がないので、軸ずれを推定するために必要な各種の処理を実施しないようにしてもよい。
【0149】
前記図17の処理は、例えば、図11に示す路側物候補点抽出処理の前に実施することができる。そして、地図情報から得られた路側物の配置の範囲の情報は、例えばS200~S240のいずれかの処理の前後にて利用できる。つまり、S200~S240の処理の前後に、路側物候補点の範囲を絞るための処理を設け、その処理の判定条件として、前記地図情報から得られた路側物の配置の範囲の情報を利用できる。
【0150】
このように、上述した処理によって、地図情報に基づいて、路側物の位置やその範囲が分かるので、実際にレーダ装置3によって路側物を検出する際に、この地図情報を利用することにより、路側物を精度よく抽出できる。その結果、より正確に垂直軸ずれ角θpを推定することができる。
【0151】
なお、本第3実施形態においても、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
[4.第4実施形態]
第4実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、以下では主として第1実施形態との相違点について説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0152】
本第4実施形態は、レーダ装置3として、図1に示すように、自車VHの走行方向である前方の物体(即ち、反射物体)を検出する前方レーダ装置3aと、自車VHの側方の物体(即ち、反射物体)を検出する側方レーダ装置3bと、が配置されている。
【0153】
本第4実施形態は、前方レーダ装置3aと側方レーダ装置3bとによって路側物が検出可能であるときに、垂直軸ずれ角θpの推定を実施するように構成されている。
具体的には、例えば図18に示すように、制御装置5では、S700にて、前方レーダ装置3aにて路側物が検出できたと判定され、且つ、S710にて、側方レーダ装置3bにて路側物が検出できたと判定された場合に、S720にて、垂直軸ずれ角θpの推定を許可するようにしてもよい。
【0154】
なお、図18の処理は、前記各レーダ装置3a、3bにて、例えば、路側物候補抽出処理又は路側物点群抽出処理を実施した後に実施することができる。
なお、最終的には、前方レーダ装置3aにて得られた反射点情報を用いて、垂直軸ずれ角θpの推定を行うことができる。
【0155】
これによって、確実に路側物の判定を行うことができるので、精度の高い垂直軸ずれ角θpを求めることができる。
なお、本第4実施形態においても、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0156】
[5.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0157】
(5a)本開示では、レーダ装置として、自車の前方(即ち、自車よりも前)の路側物を検出できるレーダ装置に限らず、自車の後方、前側方(例えば、左斜め前や右斜め前)、側方(例えば、左側方や右側方)のいずれかの方向の路側物を検出可能なレーダ装置を採用できる。つまり、ガードレール等の路側物を検出できれば特に限定はない。
【0158】
また、上述したレーダ装置のうち、少なくとも2種以上のレーダ装置を組み合わせてもよい。例えば、レーダ装置のうち、路側物を検出できたレーダ装置の反射物情報を用いて、垂直軸ずれ角を推定してもよい。
【0159】
(5b)本開示では、レーダ装置として、上述したFMCW方式以外に、2FCW方式、FCM方式、パルス方式等を利用した各種のレーダ装置を採用できる。なお、2FCWとは、2Frequency Modulated Continuous Waveの略であり、FCMは、Fast-Chirp Modulationの略である。
【0160】
(5c)前記各実施形態では、レーダ装置で得られたデータを制御装置に送信してデータの処理(例えば、軸ずれ推定処理)を行ったが、レーダ装置自身でデータの処理(例えば、物体検出処理等)を行ってもよい。また、車載センサ群の各センサにおいてデータを処理してもよいし、各センサで得られたデータを制御装置等に送信して、制御装置にて各種の処理を行ってもよい。
【0161】
(5d)路側物としては、防護柵以外に、道路の延びる方向に沿って配置されている複数のブロックや、車線等を区分する複数のポール等を採用することができる。また、防護柵として、ガードレール、ガイドパイプ、ガイドケーブル、ボックスビームなどの各種の車両用防護柵や、歩行者自転車用柵等を採用できる。
【0162】
なお、路側物としては、例えば、前記複数のブロックや複数のポール等のように、複数の構造物からなる路側物や、一体の単一の構造物からなる路側物を採用できる。例えば道路の延びる方向に沿って、連続して一体に長い距離にわたって配置された、各種の防護柵やコンクリート製等の側壁などを採用できる。
【0163】
(5e)本開示に記載の制御装置およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。
【0164】
あるいは、本開示に記載の制御装置およびその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。
【0165】
もしくは、本開示に記載の制御装置およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。
【0166】
また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。制御装置に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0167】
(5f)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。
【0168】
(5g)上述した制御装置の他、当該制御装置を構成要素とするシステム、当該制御装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移有形記録媒体、制御方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0169】
VH:車両、3:レーダ装置、5:制御装置、31:物体情報取得部、33:路側物抽出部、35:軸ずれ角推定部
図1
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