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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】ポリアミド系積層樹脂チューブ
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20240509BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240509BHJP
   B65D 65/04 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B32B27/34
B32B27/32 D
B65D65/04 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020059378
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021154661
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 賢司
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100104802
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 尚人
(72)【発明者】
【氏名】新井 一郎
(72)【発明者】
【氏名】沖 光正
【審査官】山下 航永
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-112999(JP,A)
【文献】特開2005-254455(JP,A)
【文献】特開平10-305093(JP,A)
【文献】特開2020-131508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
B65D 65/00 - 65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系樹脂およびポリエステル系エラストマーから主としてなる最外層、変性ポリエチレン系樹脂から主としてなる中間層、ならびにポリエチレン系樹脂から主としてなる最内層を含み、最外層を構成する樹脂成分を100重量%としたとき、ポリエステル系エラストマーの配合割合が4~10重量%の範囲内であり、-25℃環境下で測定した場合の引張弾性率の値が、MD方向およびTD方向共に1,900MPa未満であることを特徴とする、ポリアミド系積層樹脂チューブ。
【請求項2】
前記の最外層、中間層、および最内層がこの順で隣接してなる、請求項1に記載のポリアミド系積層樹脂チューブ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のポリアミド系積層樹脂チューブを用いて製造される、包装用袋。
【請求項4】
食品を包装するためのものである、請求項に記載の包装用袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層樹脂チューブの技術分野に属する。本発明は、耐ピンホール性に優れたポリアミド系積層樹脂チューブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ナイロン樹脂などのポリアミド系樹脂を含むフィルムは、ガスバリア性、強靭性等を有するフィルムとして各方面で多用されている。例えば、ポリアミド層/バリア層/ポリアミド層の3層からなるフィルムは包装用として広く利用されている。
上記のようなポリアミド系積層樹脂フィルムは、例えば市場に流通する食品等の包装フィルムとして用いられるが、その搬送、運搬等においてピンホールを生じる場合があり、このピンホールのためにフィルムの優れたガスバリア性が阻害されることになる。そのため、市場からは更なる強靭性の向上、特に耐ピンホール性の向上が望まれている。
【0003】
樹脂フィルムのピンホールは、屈曲により発生するものと、繰り返しの接触による摩耗が原因で発生するものとが考えられる。一般に、ポリアミド樹脂層が硬いと、繰り返し接触の摩耗によるピンホールはできにくくなるが、屈曲によるピンホールが発生しやすくなる。一方、ポリアミド樹脂層が柔らかいと、屈曲によるピンホールが発生しにくいが、繰り返しの接触による摩耗でピンホールができやすくなる。
【0004】
特許文献1では、屈曲による耐ピンホール性および繰り返し接触による耐ピンホール性などに優るポリアミド系樹脂フィルムを得るために、ポリアミド層中のポリアミドの含有量と耐屈曲剤の含有量を特定の範囲に調整している。具体的には、ポリアミド層中のポリアミドの含有量を86~98重量%の範囲とし、耐屈曲剤の含有量を2~14重量%の範囲としている。
【0005】
特許文献2には、突起した部分を持つ物品用の包装フィルムとして、突き刺し強度の高いポリアミド系積層樹脂フィルムが開示されている。特許文献2の発明は、ポリアミド系積層樹脂フィルムにおいて、最外層をポリアミド樹脂層、中間層をメタロセン触媒により製造されたポリエチレン系樹脂および酸変性ポリエチレンよりなる接着性樹脂層、最内層をメタロセン触媒により製造されたポリエチレン系樹脂層とするものである。当該構成にすることにより、発明の目的を達成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-2114
【文献】特開2001-219510
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、耐ピンホール性、特に冷凍環境下における耐ピンホール性に優れた新規なポリアミド系積層樹脂チューブを提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ポリアミド系積層樹脂チューブにおいて、ポリアミド系樹脂層にポリエステル系エラストマーを配合することにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明としては、例えば、下記のものを挙げることができる。
【0010】
[1]ポリアミド系樹脂およびポリエステル系エラストマーから主としてなる最外層、変性ポリエチレン系樹脂から主としてなる中間層、ならびにポリエチレン系樹脂から主としてなる最内層を含み、最外層を構成する樹脂成分を100重量%としたとき、ポリエステル系エラストマーの配合割合が4~10重量%の範囲内であることを特徴とする、ポリアミド系積層樹脂チューブ。
[2]前記の最外層、中間層、および最内層がこの順で隣接してなる、上記[1]に記載のポリアミド系積層樹脂チューブ。
[3] -25℃環境下で測定した場合の引張弾性率の値が、MD方向およびTD方向共に1,900MPa未満である、請求項1または2に記載のポリアミド系積層樹脂チューブ。
[4]上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のポリアミド系積層樹脂チューブを用いて製造される、包装用袋。
[5]食品を包装するためのものである、上記[4]に記載の包装用袋。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリアミド系積層樹脂チューブによれば、耐ピンホール性、特に冷凍環境下における耐ピンホール性に優れた包装用袋を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳述する。
1 ポリアミド系積層樹脂チューブについて
本発明に係るポリアミド系積層樹脂チューブ(以下、「本発明チューブ」という。)は、ポリアミド系樹脂およびポリエステル系エラストマーから主としてなる最外層、変性ポリエチレン系樹脂から主としてなる中間層、ならびにポリエチレン系樹脂から主としてなる最内層を含み、最外層を構成する樹脂成分を100重量%としたとき、ポリエステル系エラストマーの配合割合が4~10重量%の範囲内であることを特徴とする。
【0013】
ここで「主としてなる」とは、本発明の効果を損なわない範囲で対象成分以外の他の成分を含むことを許容することを意味し、成分の含有率を制限するものではないが、通常、層成分全体に対する対象成分の含有率が50重量%以上を占めていることをいう。好ましくは当該含有率が70重量%以上を占めること、より好ましくは80重量%以上ないし90重量%以上を占めていることをいう。当該含有率が100重量%であってもよい。
【0014】
1.1 最外層
最外層は、ポリアミド系樹脂およびポリエステル系エラストマーから主としてなる。最外層は、例えば、本発明チューブを用いて食品を包装するための包装用袋を製造した場合、食品と接触しない外側に形成される層である。以下、当該最外層をA層ともいう。
【0015】
(1)ポリアミド系樹脂
本発明チューブで用い得るポリアミド系樹脂としては、例えば、ω-アミノ酸の重縮合やジアミンとジカルボン酸の共縮重合等によるポリアミドが挙げられる。具体的には、例えば、ポリカプラミド(ナイロン-6)、ポリ-ω-アミノヘプタン酸(ナイロン-7)、ポリ-ω-アミノノナン酸(ナイロン-9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン-11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン-12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン-2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン-4,6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン-6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン-6,10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン-6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン-8,6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン-10,8)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン-6/12)、カプロラクタム/ω-アミノノナン酸共重合体(ナイロン-6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン-6/6,6)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン-12/6,6)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン-2,6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン-6,6/6,10)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン-6/6,6/6,10)などの脂肪族ポリアミド;芳香族ジアミンとジカルボン酸またはその誘導体との重縮合反応で得られる6T-6Iナイロン、MXD-6ナイロンや、脂肪族ジアミンとジカルボン酸またはその誘導体との重縮合反応で得られる、アモルファスナイロンなどの(結晶性ないし非晶性)芳香族ナイロンを挙げることができる。これらの中でも、ナイロン-6やナイロン-6とナイロン-6,6との共重合体が好ましい。これらは1種であっても、2種以上の併用であってもよい。
【0016】
上記ポリアミド系樹脂の中、JIS(日本産業規格)K6920に準拠した測定方法により、96%HSO、1.0g/100mL、温度25℃の条件で測定した相対粘度が2.5~4.5の範囲内のポリアミド系樹脂が好ましく、より好ましくは3.0~4.5の範囲内のもの、更に好ましくは3.5~4.1の範囲内のものである。上記相対粘度が上述の範囲のポリアミド系樹脂を用いることにより、本発明チューブの耐突刺し性をより向上させることができる。
【0017】
また、上記ポリアミド系樹脂の中、国際標準化機構(ISO)1183-3に準拠して測定した場合の密度が1100~1200kg/mの範囲内であるポリアミド系樹脂が好ましく、1120~1160kg/mの範囲内であるものがより好ましい。
当該ポリアミド系樹脂の融点としては、通常、200~240℃の範囲内であり、210~230℃の範囲内のものが好ましい。
【0018】
(2)ポリエステル系エラストマー
本発明チューブで用い得るポリエステル系エラストマーとしては、例えば、変性ポリエステル系エラストマーが挙げられる。当該変性ポリエステル系エラストマーは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーが、不飽和カルボン酸またはその誘導体により変性されたものである。具体的には、例えば、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有率が58~73重量%である飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーを、ラジカル発生剤の存在下、不飽和カルボン酸またはその誘導体により変性処理して得られる変性ポリエステル系エラストマーを挙げることができる。不飽和カルボン酸またはその誘導体のグラフト反応および末端付加反応により反応性基が導入されるため、多種の樹脂との化学結合性、水素結合性が向上する。
【0019】
飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有するソフトセグメントと、ポリエステルを含有するハードセグメントとからなるブロック共重合体であり、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量が、該ポリエステル系エラストマー中の58~73重量%程度である。
【0020】
ソフトセグメントを構成するポリアルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2および1,3-プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンエーテル)グリコール等が挙げられる。ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量は、400~6000程度が好ましい。
【0021】
不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸、その酸無水物、そのエステルまたはその金属塩等が挙げられる。
ラジカル発生剤としては、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ化合物が挙げられる。
【0022】
上記各成分の配合割合は、飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマー100重量部に対して、不飽和カルボン酸またはその誘導体が0.01~30重量部の範囲内、ラジカル発生剤が0.001~3重量部の範囲内が好ましい。
【0023】
変性ポリエステル系エラストマーの調製方法は特に限定されないが、例えば、特開2002-155135号公報等に記載されている方法により調製することができる。得られる変性ポリエステル系エラストマーのメルトフローレート(MFR)は、40~300g/10分の範囲内であることが好ましい。なお、当該メルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238に準拠した測定方法で、230℃、2.16kgの条件により測定される値である。
【0024】
変性ポリエステル系エラストマーの市販品としては、具体的には、テファブロック(三菱ケミカル株式会社製)が挙げられる。
【0025】
(3)ポリエステル系エラストマーの配合割合
本発明チューブにおけるポリエステル系エラストマーの配合割合は、当該最外層を構成する樹脂成分を100重量%としたとき、4~10重量%の範囲内であることが適当である。ポリエステル系エラストマーの配合割合がこの範囲であると、冷凍環境下での耐ピンホール性に優れたポリアミド系積層樹脂チューブを得ることができる。また、ポリエステル系エラストマーの配合は、ポリアミド系樹脂が本来有している強い突き刺し強度低下させる傾向にあるが、上記4~10重量%の範囲内であると、突き刺し強度の低下は最小限に抑えることができる。この中でも5~7重量%の範囲内であることが好ましい。
【0026】
(4)他の成分
当該最外層は、上記ポリアミド系樹脂およびポリエステル系エラストマーのみからなるものであってもよいが、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、無機または有機添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、アンチブロッキング剤、核剤、撥水剤、酸化防止剤、熱安定剤、金属石鹸、等が挙げられる。その配合量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、例えば、100~5000ppm程度が好適である。
【0027】
1.2 最内層
最内層は、ポリエチレン系樹脂から主としてなる。最内層は、例えば、本発明チューブを用いて食品を包装するための包装用袋を製造した場合、食品と接触する内側に形成される層である。以下、当該最内層をC層ともいう。
【0028】
本発明チューブで用い得るポリエチレン系樹脂は、エチレン単独重合体またはエチレンを主成分とする共重合体である。具体的には、例えば、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンを挙げることができる。
【0029】
直鎖状低密度ポリエチレンとしては、エチレンを主成分とし、例えば、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等のα-オレフィンとの共重合体を挙げることができる。この中、密度が900kg/m以上930kg/m未満、好ましくは900~920kg/mの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を挙げることができる。また、より好ましくはメタセロンLLDPEであり、その場合の密度は、910~920kg/m程度が好ましく、914~918kg/m程度がより好ましい。ここで、当該密度は、ASTM D792に準拠して測定した値である。
また、上記ポリエチレン系樹脂の中、0.8~4.5g/10分程度のMFR値を有するポリエチレン系樹脂が好ましく、0.8~1.5g/10分程度のものがより好ましく、0.8~1.2g/10分程度のものがさらに好ましい。なお、当該メルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238に準拠した測定方法で、190℃、2.16kgの条件により測定される値である。
【0030】
メタセロンLLDPEとは、メタセロン触媒(シングルサイト触媒)を用いて重合したLLDPEをいう。メタセロン触媒としては、ビス(フェロセノ[2,3]インデン-1-イル)ジメチルシリレンジルコニウムジクロライド、rac-(フェロセノ[2,3]インデン-1-イル)ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、rac-(フェロセノ[2,3]インデン-1-イル)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、rac-(フェロセノ[2,3]インデン-1-イル)ジメチルシリレン(2-メチルインデン-1-イル)ハフニウムジクロライド、rac-(フェロセノ[2,3]インデン-1-イル)ジメチルシリレン(フルオレン-9-イル)ジルコニウムジクロライド、rac-(フェロセノ[2,3]インデン-1-イル)ジメチルシリレン(t-ブチルアミド)ジルコニウムジクロライド、rac-(4-フェロセニルフェロセノ[2,3]シクロペンタジエニル)ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(4-フェロセニルフェロセノ[2,3]シクロペンタジエニル)ジメチルシリレンジルコニウムジクロライド及びビス(9-フェロセニルフルオレニル)チタンジクロライド等が挙げられる。
【0031】
メタロセン触媒を用いて重合されたLLDPEは、簡便には商業的に入手することが可能であり、例えば、エボリュー(プライムポリマー社製)、ノバテックLL(日本ポリエチレン社製)等として販売されている。
【0032】
その他のポリエチレン系樹脂として、エチレンと(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等との共重合体または多元重合体を挙げることもでき、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
【0033】
最内層は、上記のポリエチレン系樹脂のみからなるものであってもよいが、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、無機または有機添加剤を配合してC層を形成することができる。このような添加剤としては、例えば、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミドなどの滑剤、アンチブロッキング剤(シリカ、タルク、カオリン等)、スリップ剤、ポリエチレンワックス、酸化防止剤や熱安定剤、また着色の為に染料、顔料が挙げられ、これらを適宜配合することができる。その配合量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、例えば、100~10000ppm程度が好適である。
【0034】
本発明チューブには、必要に応じてコーンスターチ、澱粉等のアンチブロッキング剤をC層表面に撒布しておいてもよい。
【0035】
1.3 中間層
中間層は、変性ポリエチレン系樹脂から主としてなる。中間層は、前記の最外層と最内層の中間に位置し、最外層と最内層の両方に隣接していることが好ましい。以下、当該中間層をB層ともいう。
本発明チューブで用い得る変性ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などの変性物が挙げられる。変性物としては、酸変性物が挙げられ、無水マレイン酸変性ポリオレフィンが好ましい。具体的には、例えば、無水マレイン酸グラフト変性LLDPE等の無水マレイン酸変性ポリエチレン;無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン等の無水マレイン酸変性ポリプロピレンを挙げることができる。 また、前記のメタロセン触媒を用いて製造された変性ポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0036】
上記変性ポリエチレン系樹脂の中、0.8~4.5g/10分程度のMFR値を有する変性ポリエチレン系樹脂が好ましく、1.4~4.0g/10分程度のものがより好ましく、2.5~3.5g/10分程度のものがさらに好ましい。なお、当該MFR値は、ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kgの条件で測定した値である。
また、上記変性ポリエチレン系樹脂の中、ASTM D1505に準拠して測定した場合の密度が900~930kg/mの範囲内である変性ポリエチレン系樹脂が好ましく、900~910kg/mの範囲内であるものがより好ましい。
本発明において、B層は、変性ポリエチレン系樹脂以外の樹脂をなるべく含まない方が好ましい。B層における変性ポリエチレン系樹脂の含有量は、70重量%以上であり、好ましくは80重量%以上ないし90重量%以上である。変性ポリエチレン系樹脂の含有量が70重量%以上含有することで、A層とB層の間、またはB層とC層の間の層間強度を一定以上の強度で保持することができる。
【0037】
本発明チューブにおいて、B層は、変性ポリエチレン系樹脂のみからなるものであってもよいが、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、無機または有機添加剤、例えば、顔料、染料、酸化防止剤、熱安定剤等を適宜配合することができる。
【0038】
1.4 その他
本発明チューブは、A層、B層、およびC層の3層からこの順で構成することができるが、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて他の層を有していてもよい。A層、B層、およびC層がこの順で隣接している本発明チューブが好ましい。
【0039】
本発明チューブの総膜厚は、用途等にあわせて適宜設定することができ、特に限定されないが、通常20~100μm程度であり、好ましくは25~80μm程度であり、より好ましくは30~60μm程度である。
【0040】
また、各層の膜厚は、通常、A層が5~50μm程度、好ましくは10~40μm程度、より好ましくは12~30μm程度;B層が2~15μm程度、好ましくは3~10μm程度、より好ましくは4~8μm程度;C層が5~50μm程度、好ましくは10~40μm程度、より好ましくは12~30μm程度である。
【0041】
本発明チューブの「耐ピンホール性」は、例えば、後述の実施例に記載のゲルボフレックステスターを用いて評価することができる。本発明チューブは、-25℃の環境下において、2000回屈曲の耐ピンホール性の評価で発生するピンホールの数が2個以下、好ましくは1個以下、より好ましくは0個である。
本発明チューブの「引張弾性率」は、例えば、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。本発明チューブの引張弾性率は、-25℃環境下で、1,900MPa未満であることが好ましい。当該下限値としては、例えば、1,700MPaないし1,800MPaを挙げることができる。当該引張弾性率が1,900MPa未満であると、-25℃環境下でのピンホールの数を2個以下に抑えるのに適する。当該引張弾性率は、MD方向およびTD方向共に1,900MPa未満であることがより好ましい。
【0042】
2 本発明チューブの製造方法
本発明チューブの製造方法は、特に制限はなく公知の方法を用いることができるが、生産性や出来上がったチューブの物性等を考慮すると、押出成形によりチューブ状に製膜し、次いで二軸延伸して本発明チューブを製造するのが好ましい。
【0043】
より具体的には、適正な温度に設定された3台の押出機に、A層を形成する樹脂組成物、B層を形成する樹脂組成物およびC層を形成する樹脂組成物をそれぞれ投入し、押出機内で樹脂を溶融・混練した後、多層構造の環状ダイスで共押出し急冷固化して、チューブ状多層原反を製造する。このチューブ状多層原反を適当な温度条件下にて加熱して空気を封入する事で延伸し配向を付与する。この際、縦方向×横方向の面倍率を4倍以上に延伸する事が好ましい。この後再び空気を封入して適当な温度条件下にて再加熱する事でアニール処理を行い、チューブ状多層フィルムを得る。
【0044】
3 包装用袋について
次に、本発明チューブを用いて製造される包装用袋(以下、「本発明包装用袋」という)について詳述する。
【0045】
本発明包装用袋は、本発明チューブを用いて、常法により、自動包装機等により成形し製造することができる。
【0046】
本発明包装用袋で包装される内容物としては、包装され得るものであれば特に限定されないが、包装後に内容物を冷凍環境下で流通するものが好適であり、例えば、豚肉、鶏肉等の畜肉やその加工食品、魚の切り身やその加工食品、等が挙げられる。
【実施例
【0047】
以下に実施例等を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0048】
主な原料は、次の通りである。
PA:ナイロン-6(密度1,140kg/m、相対粘度4.08、融点220℃)
PE-1:酸変性メタロセンポリエチレン(密度903kg/m、MFR=2.9、融点90℃)
PE-2:C8メタロセンポリエチレン(密度916kg/m、MFR=1.0、融点122℃)
ポリエステルエラストマー(密度1060kg/m、MFR=34、融点145℃)
【0049】
[実施例、比較例]
表1に示すとおりの配合比率のPAおよびポリエステル系エラストマーを最外層(A層)の成分として用い、また中間層(B層)にPE-1、最内層(C層)に99重量%のPE-2および1重量%のエルカ酸アミド(滑剤)を各層の成分として用い、それぞれの押出機に投入し、先端出口が3重環状ダイスを通して共押出して3層チューブを成形し、その3層チューブ内に空気を吹き込みながらチューブ外周を加熱して、縦方向に3.0倍、横方向に3.0倍延伸した後、引き続きチューブ内に空気を吹き込みながらチューブ外周を再加熱してアニール処理を行い、総厚み35μm(最外層15μm、中間層5μm、最内層15μm)、折り径200mmの3層チューブを得た。
【0050】
【表1】
【0051】
[試験例]
実施例等で製造したポリアミド系積層樹脂チューブについて、耐ピンホール性と熱収縮性を試験した。各試験方法は、下記の通りである。
【0052】
(1)耐ピンホール性試験
理化学工業社製のゲルボフレックステスターを用いて測定した。得られた折径200mmの3層チューブを長さ300mmにカットしてゲルボフレックステスターに装着し、最初の88.9mmで440°の捻りを与え、その後63.5mmは直線水平運動となる繰り返しの屈曲直線運動を-25℃の条件下で試験速度40回/分にて2000回繰り返した後、それぞれ浸透液を用いてピンホールの数を調べた。なお、ピンホール数の測定はサンプルの中央部における300cmの箇所で行った。3枚のサンプルについてピンホールの数を測定し、それぞれのサンプルのピンホール個数を測定結果とした。
(2)熱収縮率の測定
熱収縮率は、次のようにして測定した。得られたポリアミド系積層樹脂チューブを長さ150mmにカットし、チューブの中央部分に、MD方向100mm、TD方向100mmの十字線を油性マジックにて書き入れる。得られたサンプルを95℃の熱水に30秒間浸漬した後、冷水に浸漬する。熱水処理後の十字線の長さをMD、TDそれぞれ測定し、下記式にてMD方向及びTD方向の熱収縮率をそれぞれ算出する。
【0053】
【数1】
【0054】
(3)引張弾性率
引張弾性率は、長さ150mm×幅25mmの大きさのサンプルにカットし試験片を準備し、島津製作所社製オートグラフ AG-X500N(恒温槽付き)を用いて、標線間距離100mm、引張速度10mm/分で、-25℃環境下で測定した。なお、ヤング率は、各実施例および比較例につき、MD方向およびTD方向共に4つの試験片を用いて測定し、その平均値を算出した。
(4)突き刺し強度
JIS Z-1707(1997)に準拠した測定方法により突刺し強度を測定した。具体的には、試験片を固定し、直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針を毎分50mmの速度で突刺し、針が貫通するまでの最大応力を測定した。試験片の数は5枚とし、平均値を求めて測定結果とした。
【0055】
(5)結果
熱収縮性については、 実施例の本発明チューブがMD方向20%、TD方向25%であり、比較例のチューブがMD方向20%、TD方向25%であった。
耐ピンホール性の結果については、下記表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
本発明チューブは、MD方向に10~30%、TD方向10~30%の熱収縮率を有すると共に、-25℃環境下で、2000回の摺動によるピンホール個数が2個以下であった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明チューブは、冷凍環境下においても優れた耐ピンホール性を有することから、それらから製造される袋は、食品などの包装用として有用である。