(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】ドアシステム及び車両
(51)【国際特許分類】
E05F 15/41 20150101AFI20240509BHJP
B61D 19/02 20060101ALI20240509BHJP
E05F 15/632 20150101ALI20240509BHJP
E05F 15/655 20150101ALI20240509BHJP
【FI】
E05F15/41
B61D19/02 E
B61D19/02 S
E05F15/632
E05F15/655
(21)【出願番号】P 2020079362
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2020041956
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】内田 晋右
(72)【発明者】
【氏名】田邉 和男
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】実公平2-7160(JP,Y2)
【文献】実開昭57-1267(JP,U)
【文献】特開2000-159102(JP,A)
【文献】特開平8-26639(JP,A)
【文献】特開2016-125340(JP,A)
【文献】特開2008-150172(JP,A)
【文献】特許第3014683(JP,B1)
【文献】国際公開第95/032145(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 19/02
B66B 13/28
E05F 15/00-15/79
E06B 3/42- 3/46
E06B 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉動作によって戸袋の内部に進入及び前記戸袋の内部から退出するドアと、
前記戸袋の内部に配置されるとともに外力の作用によって回転する回転体と、
前記回転体の回転方向のうち少なくとも前記ドアの開方向の前記回転体の回転に関する状態量を取得する取得部と、
を備えるドアシステム。
【請求項2】
取得された前記状態量に基づいて前記ドアの動作を制御する駆動制御部を備える請求項1に記載のドアシステム。
【請求項3】
前記駆動制御部は、
取得された前記状態量が第1の値である場合、第1の動作速度又は第1の動作量となるよう前記ドアの動作を制御し、
取得された前記状態量が前記第1の値より大きい第2の値である場合、前記第1の動作速度より遅い第2の動作速度又は前記第1の動作量より小さい第2の動作量となるよう前記ドアの動作を制御する
請求項2に記載のドアシステム。
【請求項4】
取得された前記状態量に基づいて前記回転体と前記ドアとの間の物体の巻き込みを検知する検知部を備える
請求項2又は請求項3に記載のドアシステム。
【請求項5】
前記駆動制御部は、前記ドアの開動作時に前記検知部によって前記回転体と前記ドアとの間の物体の巻き込みが検知される場合に、前記ドアを反転駆動する、又は、前記ドアの開動作を抑制する
請求項
4に記載のドアシステム。
【請求項6】
前記駆動制御部は、前記ドアの開動作時に前記検知部によって前記回転体と前記ドアとの間の物体の巻き込みが検知される場合、前記ドアの開度に基づいて、前記ドアを反転駆動する、又は、前記ドアの開動作を抑制する
請求項4に記載のドアシステム。
【請求項7】
前記駆動制御部は、前記開度が所定の開度未満である場合、前記ドアの開動作を抑制し、前記開度が前記所定の開度以上である場合、前記ドアを反転駆動する請求項6に記載のドアシステム。
【請求項8】
開閉動作によって戸袋の内部に進入及び前記戸袋の内部から退出するドアと、
前記戸袋の内部に配置されるとともに外力の作用によって回転する回転体と、
前記回転体の回転方向のうち少なくとも前記ドアの開方向の前記回転体の回転に関する状態量を取得する取得部と、
取得された前記状態量に基づいて報知を行う報知部と、を備えるドアシステム。
【請求項9】
前記回転体は、前記ドアの高さ方向に沿う回転軸線周りに回転自在である請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のドアシステム。
【請求項10】
前記状態量は、単位時間当たりの回転量である
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のドアシステム。
【請求項11】
前記状態量は、前記回転体のトルクである
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のドアシステム。
【請求項12】
前記ドアの開動作時に前記検知部によって前記回転体と前記ドアとの間の物体の巻き込みが検知される場合、前記ドアの閉方向の前記回転体の回転に関する状態量に基づいて、前記物体の巻き込みの解消を検知する解消検知部を備える請求項4に記載のドアシステム。
【請求項13】
取得された前記状態量に基づいて前記ドアの開動作を抑制する駆動制御部を備え、
前記駆動制御部は、前記ドアの開動作を抑制した後、前記ドアの閉方向の前記回転体の回転に関する状態量に基づいて前記物体の巻き込みの解消が検知される場合、前記ドアの開動作の抑制を解除する
請求項12に記載のドアシステム。
【請求項14】
前記取得部は、前記ドアの開動作の開始を指示する開指令に応じて前記状態量の取得を開始する
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のドアシステム。
【請求項15】
前記取得部は前記ドアの全開状態に応じて前記状態量の取得を停止する請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のドアシステム。
【請求項16】
開閉動作によって戸袋の内部に進入及び前記戸袋の内部から退出するドアと、
前記戸袋の内部に配置されるとともに外力の作用によって前記ドアの高さ方向に沿う回転軸線周りに回転する回転体と、
前記回転軸線周りでの前記回転体の回転方向のうち少なくとも前記ドアの開方向の前記回転体の回転に関する状態量を取得する取得部と、
取得された前記状態量に基づいて前記回転体と前記ドアとの間の物体の巻き込みを検知する検知部と、
前記ドアの開
動作時に前記検知部によって前記回転体と前記ドアとの間の物体の巻き込みが検知される場合に、取得された前記状態量に基づいて、前記ドアを反転駆動する、又は、前記ドアの開動作を抑制する駆動制御部と、
を備えるドアシステム。
【請求項17】
車体と、
開閉動作によって前記車体に設けられた戸袋の内部に進入及び前記戸袋の内部から退出するドアと、
前記戸袋の内部に配置されるとともに外力の作用によって前記ドアの高さ方向に沿う回転軸線周りに回転する回転体と、
前記回転軸線周りでの前記回転体の回転方向のうち少なくとも前記ドアの開方向の前記回転体の回転に関する状態量を取得する取得部と、
取得された前記状態量に基づいて各種機器を制御する制御部と、を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアシステム及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
乗員輸送用の鉄道車両などに搭載される自動ドアとして、いわゆる引き戸型のドアがある。引き戸型のドアは、例えば、溝又はレールなどによって案内されながらスライド移動することによって開閉するドア本体と、開動作時にドア本体を収納する戸袋とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、引き戸型のドアの開動作時にドア本体とともに戸袋の内部に異物が進入することを防ぐために、例えば異物から受ける圧力を検出する圧力センサ又は異物を戸袋の内部から排除する駆動機構などを備える装置がある。
しかしながら、異物から受ける圧力を検出する圧力センサを備える場合、人の指などの異物に負荷が生じる可能性があるとともに、圧力の大小のみではドア本体による異物の引き込みの有無を適正に判定することができない可能性がある。異物を戸袋の内部から排除する駆動機構を備える場合、装置構成が複雑になり、保守作業の作業負荷が増大する可能性がある。
【0005】
本発明は、構成が複雑になることを抑制しながら戸袋の内部へ進入する異物の検出精度を向上させることができるドアシステム及び車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るドアシステムは、開閉動作によって戸袋の内部に進入及び前記戸袋の内部から退出するドアと、前記戸袋の内部に配置されるとともに外力の作用によって回転する回転体と、前記回転体の回転方向のうち少なくとも前記ドアの開方向の前記回転体の回転に関する状態量を取得する取得部と、を備える。
【0007】
このように構成することで、戸袋の内部での物体との接触に起因する回転体の回転の有無を取得部によって取得することができる。回転体は外力の作用が僅かであっても回転軸線の周りに回転することができ、人の指又は手などの物体に負荷が生じることを抑制しながら、戸袋の内部への物体の進入及び回転体との接触の有無を容易に精度良く取得することができる。
【0008】
上記構成で、取得された前記状態量に基づいて前記ドアの動作を制御する駆動制御部を備えてもよい。
【0009】
上記構成で、前記駆動制御部は、取得された前記状態量が第1の値である場合、第1の動作速度又は第1の動作量となるよう前記ドアの動作を制御し、取得された前記状態量が前記第1の値より大きい第2の値である場合、前記第1の動作速度より遅い第2の動作速度又は前記第1の動作量より小さい第2の動作量となるよう前記ドアの動作を制御してもよい。
【0010】
上記構成で、取得された前記状態量に基づいて前記回転体と前記ドアとの間の物体の巻き込みを検知する検知部を備えてもよい。
【0011】
上記構成で、前記駆動制御部は、前記ドアの開動作時に前記検知部によって前記回転体と前記ドアとの間の物体の巻き込みが検知される場合に、前記ドアを反転駆動する、又は、前記ドアの開動作を抑制してもよい。
【0012】
上記構成で、前記駆動制御部は、前記ドアの開動作時に前記検知部によって前記回転体と前記ドアとの間の物体の巻き込みが検知される場合、前記ドアの開度に基づいて、前記ドアを反転駆動する、又は、前記ドアの開動作を抑制してもよい。
【0013】
上記構成で、前記駆動制御部は、前記開度が所定の開度未満である場合、前記ドアの開動作を抑制し、前記開度が前記所定の開度以上である場合、前記ドアを反転駆動してもよい。
【0014】
本発明の他の態様に係るドアシステムは、開閉動作によって戸袋の内部に進入及び前記戸袋の内部から退出するドアと、前記戸袋の内部に配置されるとともに外力の作用によって回転する回転体と、前記回転体の回転方向のうち少なくとも前記ドアの開方向の前記回転体の回転に関する状態量を取得する取得部と、取得された前記状態量に基づいて報知を行う報知部と、を備える。
【0015】
このように構成することで、戸袋の内部への物体の進入及び回転体との接触の有無を、ドアの周辺の人及びドアの動作を制御する人等の少なくともいずれかに適正に報知することができる。
【0016】
上記構成で、前記回転体は、前記ドアの高さ方向に沿う回転軸線周りに回転自在であってもよい。
【0017】
上記構成で、前記状態量は、単位時間当たりの回転量であってもよい。
【0018】
上記構成で、前記状態量は、前記回転体のトルクであってもよい。
【0019】
上記構成で、前記ドアの開動作時に前記検知部によって前記回転体と前記ドアとの間の物体の巻き込みが検知される場合、前記ドアの閉方向の前記回転体の回転に関する状態量に基づいて、前記物体の巻き込みの解消を検知する解消検知部を備えてもよい。
【0020】
上記構成で、取得された前記状態量に基づいて前記ドアの開動作を抑制する駆動制御部を備え、前記駆動制御部は、前記ドアの開動作を抑制した後、前記ドアの閉方向の前記回転体の回転に関する状態量に基づいて前記物体の巻き込みの解消が検知される場合、前記ドアの開動作の抑制を解除してもよい。
【0021】
上記構成で、前記取得部は、前記ドアの開動作の開始を指示する開指令に応じて前記状態量の取得を開始してもよい。
【0022】
上記構成で、前記取得部は、前記ドアの全開状態に応じて前記状態量の取得を停止してもよい。
【0023】
本発明の他の態様に係るドアシステムは、開閉動作によって戸袋の内部に進入及び前記戸袋の内部から退出するドアと、前記戸袋の内部に配置されるとともに外力の作用によって前記ドアの高さ方向に沿う回転軸線周りに回転する回転体と、前記回転軸線周りでの前記回転体の回転方向のうち少なくとも前記ドアの開方向の前記回転体の回転に関する状態量を取得する取得部と、取得された前記状態量に基づいて前記回転体と前記ドアとの間の物体の巻き込みを検知する検知部と、前記ドアの開動作時に前記検知部によって前記回転体と前記ドアとの間の物体の巻き込みが検知される場合に、取得された前記状態量に基づいて、前記ドアを反転駆動する、又は、前記ドアの開動作を抑制する駆動制御部と、を備える。
【0024】
このように構成することで、戸袋の内部での物体との接触に起因する回転体の回転の有無を取得部によって取得することができる。回転体は外力の作用が僅かであっても回転軸線の周りに回転することができ、人の指又は手などの物体に負荷が生じることを抑制しながら、戸袋の内部への物体の進入及び回転体との接触の有無を容易に精度良く取得することができる。
また、駆動制御部によって、物体との接触有無の感度が高い回転体の回転に関する状態量に基づいて、実際に物体の挟み巻き込みの状態となることに先立って、前段階の状態である予兆が生じたか否かを精度良く判定することができる。さらに、戸袋の内部への物体の進入及び回転体との接触の有無に応じて、ドアの開動作を停止又は開速度の低減などを行うことができる。
【0025】
本発明の他の態様に係る車両は、車体と、開閉動作によって前記車体に設けられた戸袋の内部に進入及び前記戸袋の内部から退出するドアと、前記戸袋の内部に配置されるとともに外力の作用によって前記ドアの高さ方向に沿う回転軸線周りに回転する回転体と、前記回転軸線周りでの前記回転体の回転方向のうち少なくとも前記ドアの開方向の前記回転体の回転に関する状態量を取得する取得部と、取得された前記状態量に基づいて各種機器を制御する制御部と、を備える。
【0026】
このように構成することで、構成が複雑になることを抑制しながら戸袋の内部へ進入する異物の検出精度向上を実現可能な車両を提供することができる。
【発明の効果】
【0027】
上述のドアシステム及び車両は、構成が複雑になることを抑制し、戸袋の内部へ進入する異物の検出精度向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両に搭載されたドアシステムを上下方向から見た断面図。
【
図2】本発明の実施形態に係るドアシステムのドアを破断してドア及び回転体をドアの開閉方向から見た図。
【
図3】本発明の実施形態に係るドアシステムの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
<ドアシステム>
図1は、車両1に搭載されたドアシステム10を上下方向から見た断面図である。
図2は、ドアシステム10のドア13を破断してドア13及び回転体15をドア13の開閉方向から見た図である。なお、上下方向とは、車両1を走行できる状態に配置した場合の上下方向をいう。
図1、
図2に示すように、実施形態のドアシステム10は車両1の車体100に搭載されている。車両1は、例えば乗員輸送用の鉄道車両などである。ドアシステム10は、例えば車体100に設けられた乗員乗降用の片開き又は両開きの引き戸型の自動ドアである。
ドアシステム10は、戸袋11と、戸袋11の内部に進入及び戸袋11の内部から退出するドア13と、戸袋11の内部に設けられた回転体15と、回転体15の回転に関する状態量を検出する検出部17と、ドアシステム10を統括的に制御する制御装置19と、を備える。
【0031】
戸袋11は、例えば車両1の外部に露出する車体パネル21と車両1の内部の内装パネル23との間に形成されている。戸袋11は、全開状態のドア13の全体及び全閉状態のドア13の少なくとも一部を内部に収容する。戸袋11には、ドア13を受け入れる開口11aが形成されている。開口11aの外形状は、例えば車両1の上下方向に沿って延びるとともにドア13の外形に沿って湾曲したスリット状である。
戸袋11は、回転体15の一部を開口11aから外部に露出させつつ回転体15を内部に収容する。例えば、戸袋11は回転体15の外周面のうち周方向に沿った1/4程度の部位を開口11aから外部に露出させる。
【0032】
戸袋11の内部に進入及び内部から退出するドア13は、戸袋11に形成された開口11aに配置されている。
ドア13は、例えば、車両1に設けられたレール又は溝などのガイド部(図示略)によって案内されるとともに、リニアモータなどの電動機(図示略)を有するドア駆動部25(請求項の各種機器の一例)によって駆動されるドアリーフ31を備える。ドアリーフ31の外形状は、例えば車両1の上下方向に沿って延びるとともに下方側で車両1の幅方向の内方に向かって湾曲する板状である。ドアリーフ31の開閉動作の方向(開閉方向)Fは、例えば車両1の前後方向に沿った方向である。
【0033】
回転体15は、例えば円柱状のローラーである。回転体15は、戸袋11の内部でドアリーフ31の内面31Aから車両1の幅方向の内方に所定距離だけ離れて配置されている。回転体15は、例えば順次に連結された複数の分割回転体41を備える。各分割回転体41は、例えば軸部43と、軸部43の外周面を覆う外周部45と、を備える。軸部43は、例えば金属材料によって形成されている。外周部45は、例えばゴム又は樹脂などの弾性材料によって形成されている。
【0034】
回転体15は、各分割回転体41の軸部43を支持する支持部47を備える。支持部47によって支持された各分割回転体41は、軸部43の中心軸線の周りに回転する。複数の分割回転体41のうち連結方向で並ぶ適宜の2つの分割回転体41同士の互いの軸部43は連結部49によって一体的に連結されている。連結部49は、例えば互いの軸部43の回転速度を同一に維持するユニバーサルジョイントなどである。連結された複数の分割回転体41は、各軸部43の中心軸線の周りに一体的に回転する。
【0035】
複数の分割回転体41は、例えば2つの分割回転体41であり、第1分割回転体41a及び第2分割回転体41bである。例えば、第1分割回転体41a及び第2分割回転体41bは、互いの軸部43同士を介して車両1の上下方向に沿って連結されている。第1分割回転体41aの中心軸線である回転軸線C1は、車両1の上下方向に沿って延びている。第2分割回転体41bの中心軸線である回転軸線C2は、車両1の上下方向の下方側で湾曲したドアリーフ31の内面31Aに沿って配置されている。
【0036】
回転軸線C1及び回転軸線C2は、ドアリーフ31の高さ方向に平行である。つまり、回転軸線C1の場合、ドアリーフ31の高さ方向は車両1の上下方向に平行である。回転軸線C2の場合、ドアリーフ31の高さ方向は車両1の上下方向に対して湾曲したドアリーフ31の内面31Aに沿った方向に平行である。すなわち、ドアリーフ31の高さ方向とは全体として車両1の上下方向と完全に一致しているわけではない。回転軸線C1も車両1の上下方向と完全に一致していなくてもよく、車両1の上下方向に沿っていればよい。
【0037】
一体的に連結された第1分割回転体41a及び第2分割回転体41bは、外力の作用によって各回転軸線C1,C2周りに回転する。例えば、第1分割回転体41a及び第2分割回転体41bは、ドア13とは独立してドア13の開方向及び閉方向に回転する。例えば、戸袋11の開口11aから内部に進入した人の指又は手などの物体がドアリーフ31と回転体15との間で第1分割回転体41a又は第2分割回転体41bに接触することによって、第1分割回転体41a及び第2分割回転体41bは一体的にドア13の開方向に回転する。例えば人の指又は手などの物体が、ドアリーフ31と回転体15との間で、第1分割回転体41a又は第2分割回転体41bに接触した状態で戸袋11の開口11aから外部に退出することによって、第1分割回転体41a及び第2分割回転体41bは一体的にドア13の閉方向に回転する。
【0038】
検出部17(請求項の取得部の一例)により検出される回転体15の回転の状態量又は回転に関する状態量の少なくともいずれかは、例えば単位時間当たりの回転量、回転速度及びトルクなどの少なくともいずれかである。例えば、検出部17は、回転体15の回転位置の検出信号を出力するエンコーダ又は回転体15のトルクの検出信号を出力するトルクセンサなどを備える。
【0039】
制御装置19は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサによって所定のプログラムが実行されることにより機能するソフトウェア機能部である。ソフトウェア機能部は、CPUなどのプロセッサ、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)及びタイマーなどの電子回路を備えるECU(Electronic Control Unit)である。制御装置19の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路であってもよい。
【0040】
制御装置19(請求項の検知部、解消検知部、制御部及び駆動制御部の一例)は、ドア13の開動作の開始を指示するドア開指令に応じて検出部17による回転体15の回転に関する状態量の検出を開始させる。また、制御装置19は、検出部17から出力された検出信号の受け取り及び取得した検出信号に基づく各種処理の実行を開始する。
ドア開指令は、例えば車両1の運転者などによって入力される信号又は車両1の停止状態に応じて自動的に生成される信号などである。車両1の停止状態は、例えば車両1の速度がゼロに低下した状態又は車両1の速度がゼロに低下してから所定時間経過後の状態などである。
【0041】
制御装置19は、ドア13の全開状態では、検出部17による回転体15の回転に関する状態量の検出を停止させる。また、制御装置19は、検出部17から出力された検出信号の受け取り及び取得した検出信号に基づく各種処理の実行を停止する。例えば、制御装置19は、ドア駆動部25によるドアリーフ31の駆動状態などに基づいてドア13の全開状態を判定する。
【0042】
制御装置19は、検出部17から出力される検出信号に基づいて回転体15とドアリーフ31との間の物体の巻き込みの予兆が生じたか否かを判定する。例えば、制御装置19は、停止状態の回転体15が各回転軸線C1,C2周りにドアリーフ31の開方向に回転したか否かを判定することによって、物体の巻き込みの予兆の有無を判定する。制御装置19は、ドアリーフ31の開方向に回転体15の回転位置の変位が生じた場合又はドアリーフ31の開方向に回転体15のトルクが生じた場合などに停止状態の回転体15がドアリーフ31の開方向に回転したと判定する。
例えば、物体の巻き込みの予兆が生じたか否かを判定する条件は、後述する実際に物体の巻き込みが生じたか否かを判定する条件に比べて、回転体15の停止状態から回転に移行する初期的な状態又は相対的に小さな回転状態等である。
【0043】
制御装置19は、例えば、ドアシステム10が報知部51(請求項の報知部及び各種機器の一例)を備える場合、検出部17から出力される検出信号に基づいて報知を行ってもよい。報知部51は、例えば、スピーカ、音源、灯体又は振動体などである。報知部51は、検出部17から出力される検出信号に基づいて、例えばドア13の周辺の人及びドア13の動作を制御する人の少なくともいずれかに報知を行う。例えば、制御装置19は、検出部17から出力される検出信号に基づいて回転体15とドアリーフ31との間の物体の巻き込みの予兆が生じたと判定した場合、報知部51を作動させる。
【0044】
制御装置19は、検出部17から出力される検出信号に基づいて回転体15とドアリーフ31との間に物体の巻き込みが生じたか否かを判定する。例えば、制御装置19は、回転体15が各回転軸線C1,C2周りにドアリーフ31の開方向の回転が特定の条件に合致したか否かを判定することによって、物体の巻き込みの有無を判定する。
【0045】
特定の条件は、例えば、回転位置に所定以上の変位が生じた回転、所定以上の回転速度又は単位時間当たりに所定以上の回転量が生じた回転、所定以上のトルクが生じた回転、ドアリーフ31の開動作に所定範囲以内で同調的になる回転又はこれらの回転が所定時間以上に亘って継続した場合などである。
ドアリーフ31の開動作に所定範囲以内で同調的となる回転は、例えばドアリーフ31及び回転体15の相互の速度(移動速度及び回転速度)、単位時間当たりの変位量(移動量及び回転量)、トルク又は抵抗力などの状態量が所定範囲内でほぼ同一又は所定の関係を有する回転である。
【0046】
制御装置19は、検出部17から出力される検出信号に基づいてドア13の動作を制御する。例えば、制御装置19は、検出部17から出力される検出信号に基づいて回転体15とドアリーフ31との間に物体の巻き込みが生じたと判定した場合、ドアリーフ31の停止又は開速度の低減などによってドアリーフ31の開動作を抑制する。制御装置19は、ドアリーフ31の開動作を抑制した後に回転体15の動作に関連する所定状態が生じた場合、ドアリーフ31の開動作の抑制を解除する。
所定状態は、回転体15とドアリーフ31との間の物体の巻き込みが解消する状態に対応し、例えば、所定時間の経過後の状態又は回転体15が各回転軸線C1,C2周りにドアリーフ31の閉方向に回転した状態などである。
【0047】
<ドアシステムの動作>
次に、ドアシステム10の動作について説明する。
図3は、ドアシステム10の動作を示すフローチャートである。
【0048】
先ず、制御装置19は、ドア開指令が有るか否かを判定する(ステップS01)。
この判定結果が「NO」の場合(ステップS01:NO)には、制御装置19は、ステップS01の判定処理を繰り返し実行する。
一方、この判定結果が「YES」の場合(ステップS01:YES)には、制御装置19は、処理をステップS02に進める。
次に、制御装置19は、検出部17による回転体15の回転に関する状態量の検出を開始させる(ステップS02)。
【0049】
次に、制御装置19は、検出部17から出力される検出信号に基づいて回転体15が回転したか否かを判定する(ステップS03)。
この判定結果が「NO」の場合(ステップS03:NO)には、制御装置19は、処理を後述するステップS13に進める。
一方、この判定結果が「YES」の場合(ステップS03:YES)には、制御装置19は、処理をステップS04に進める。
【0050】
次に、制御装置19は、検出部17から出力される検出信号に基づいて回転体15の回転方向がドアリーフ31の開方向であるか否かを判定する(ステップS04)。
この判定結果が「NO」の場合(ステップS04:NO)には、制御装置19は、処理を後述するステップS13に進める。
一方、この判定結果が「YES」の場合(ステップS04:YES)には、制御装置19は、処理をステップS05に進める。
【0051】
次に、制御装置19は、検出部17から出力される検出信号に基づいて回転体15とドアリーフ31との間の物体の巻き込みの予兆が生じたか否かを判定する(ステップS05)。
この判定結果が「NO」の場合(ステップS05:NO)には、制御装置19は、処理を後述するステップS09に進める。
一方、この判定結果が「YES」の場合(ステップS05:YES)には、制御装置19は、処理をステップS06に進める。
次に、制御装置19は、回転体15とドアリーフ31との間の物体の巻き込みの予兆が生じたことを報知する報知部51の動作を開始させる(ステップS06)。
【0052】
次に、制御装置19は、検出部17から出力される検出信号に基づいて回転体15とドアリーフ31との間の物体の巻き込みの予兆状態が解消したか否かを判定する(ステップS07)。
この判定結果が「NO」の場合(ステップS07:NO)には、制御装置19は、処理を上述したステップS05に戻す。
一方、この判定結果が「YES」の場合(ステップS07:YES)には、制御装置19は、処理をステップS08に進める。
次に、制御装置19は、回転体15とドアリーフ31との間の物体の巻き込みの予兆が生じたことを報知する報知部51の動作を停止させる(ステップS08)。そして、制御装置19は、処理を後述するステップS13に進める。
【0053】
次に、制御装置19は、検出部17から出力される検出信号に基づいて回転体15とドアリーフ31との間に物体の巻き込みが生じたか否かを判定する(ステップS09)。
この判定結果が「NO」の場合(ステップS09:NO)には、制御装置19は、処理を上述したステップS05に戻す。
一方、この判定結果が「YES」の場合(ステップS09:YES)には、制御装置19は、処理をステップS10に進める。
次に、制御装置19は、ドアリーフ31の停止又は開速度の低減などによってドアリーフ31の開動作を抑制する(ステップS10)。
【0054】
次に、制御装置19は、検出部17から出力される検出信号に基づいて回転体15とドアリーフ31との間の物体の巻き込みが解消したか否かを判定する(ステップS11)。
この判定結果が「NO」の場合(ステップS11:NO)には、制御装置19は、ステップS11の判定処理を繰り返し実行する。
一方、この判定結果が「YES」の場合(ステップS11:YES)には、制御装置19は、処理をステップS12に進める。
次に、制御装置19は、ドアリーフ31の開動作の抑制を解除する(ステップS12)。
【0055】
次に、制御装置19は、ドア駆動部25によるドアリーフ31の駆動状態などに基づいてドア13の全開状態であるか否かを判定する(ステップS13)。
この判定結果が「NO」の場合(ステップS13:NO)には、制御装置19は、処理を上述したステップS03に戻す。
一方、この判定結果が「YES」の場合(ステップS13:YES)には、制御装置19は、処理をステップS14に進める。
次に、制御装置19は、検出部17による回転体15の回転に関する状態量の検出を停止させる(ステップS14)。そして、制御装置19は、処理をエンドに進める。
【0056】
このように、上述のドアシステム10は、ドア13の開方向の回転体15の回転の状態量及び回転体15の回転に関する状態量の少なくともいずれかを検出する検出部17を備える。このため、戸袋11の内部での物体との接触に起因する回転体15の回転の有無を検出部17によって検出することができる。回転体15は、外力の作用が僅かであっても各回転軸線C1,C2周りに回転することができ、人の指又は手などの物体に負荷が生じることを抑制しながら、戸袋11の内部への物体の進入及び回転体15との接触の有無を容易に精度良く検出することができる。
【0057】
ドアシステム10は、検出部17の検出信号に基づいて回転体15とドアリーフ31との間に物体の巻き込みが生じたか否かを判定する制御装置19を備える。このため、回転体15の回転に関する状態量に基づいて回転体15とドアリーフ31との間に物体の巻き込みが生じたか否かを精度良く判定することができる。
制御装置19は、検出部17の検出信号に基づいて回転体15とドアリーフ31との間の物体の巻き込みの予兆が生じたか否かを判定する。これにより、物体との接触有無の感度が高い回転体15の回転に関する状態量に基づいて、実際に物体の巻き込みの状態となることに先立って、前段階の状態である予兆が生じたか否かを精度良く判定することができる。
【0058】
ドアシステム10は、検出部17の検出信号に基づいて報知を行う報知部51を備える。このため、戸袋11の内部への物体の進入及び回転体15との接触の有無を、ドア13の周辺の人及びドア13の動作を制御する人等の少なくともいずれかに適正に報知することができる。
ドアシステム10は、検出部17の検出信号に基づいてドア13の動作を制御する制御装置19を備える。このため、戸袋11の内部への物体の進入及び回転体15との接触の有無に応じてドア13の動作を適正に制御することができる。
検出部17によって検出される状態量は、単位時間当たりの回転量又はトルクである。このため、戸袋11の内部への物体の進入及び回転体15との接触の有無を精度良く検出することができる。
【0059】
制御装置19は、検出部17の検出信号に基づいてドア13の開動作を抑制する。このため、戸袋11の内部への物体の進入及び回転体15との接触の有無に応じて、ドア13の開動作を停止又は開速度の低減などを行うことができる。
制御装置19は、回転体15の回転及びドアリーフ31の移動に関する状態量又は回転体15のトルク及びドアリーフ31のトルクの少なくともいずれかに関する状態量に基づいて、ドア13の開動作を適正に抑制することができる。
【0060】
制御装置19は、検出部17の検出信号に基づいてドア13の開動作の抑制を解除する。このため、回転体15に接触した物体の戸袋11の内部からの退出に起因するドア13の閉方向の回転体15の回転に関する状態量に基づいてドア13の開動作の抑制を適正に解除することができる。
【0061】
検出部17は、ドア13の開動作の開始を指示するドア開指令に応じて状態量の検出を開始する。このため、例えばドア開指令とは無関係に状態量の検出を行う場合に比べて、不要な検出を抑制して電力消費の増大を防ぐことができる。
検出部17は、ドア13の全開状態に応じて状態量の検出を停止する。このため、例えばドア13の全開状態で状態量の検出を行う場合に比べて、不要な検出を抑制して電力消費の増大を防ぐことができる。
【0062】
戸袋11に形成された開口11aは、例えば回転体15の外周面のうち周方向に沿った1/4程度の部位を外部に露出させる。このため、開口11aとドア13との間に十分な隙間が形成され、開口11aとドア13との間に物体が巻き込まれてしまうのを抑制できる。
【0063】
[変形例]
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
上述の実施形態では、制御装置19は、ドア開指令の取得前で検出部17の動作を停止させ、ドア開指令の取得後に検出部17の動作を開始させる場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、例えば、制御装置19は、ドア開指令の取得有無にかかわらずに検出部17の動作を常時許容し、検出部17からの検出信号の受け取り又は検出部17から受け取った検出信号に基づく各種処理の実行をドア開指令の取得後に有効としてもよい。
【0064】
上述の実施形態では、制御装置19は、回転体15とドアリーフ31との間に物体の巻き込みが生じたと判定した場合、ドアリーフ31の停止又は開速度の低減などによってドアリーフ31の開動作を抑制する場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、例えば、制御装置19は、ドアリーフ31を開動作から閉動作に切り替えることによってドアリーフ31の開動作を反転させてもよい。
【0065】
上述の実施形態では、制御装置19は、回転体15とドアリーフ31との間に物体の巻き込みが生じたと判定した場合、ドアリーフ31の開動作を抑制する場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、例えば、制御装置19は、回転体15とドアリーフ31との間の物体の巻き込みの予兆が生じたと判定した場合、ドアリーフ31の開動作を抑制してもよい。この場合、巻き込みの発生を抑制又は巻き込みが生じる場合であっても巻き込みの程度を低減することができる。
【0066】
上述の実施形態では、制御装置19は、回転体15とドアリーフ31との間に物体の巻き込みが生じたと判定した場合、ドアリーフ31の開動作を抑制又は反転させる場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、例えば、制御装置19は、ドアリーフ31の開度の情報に応じてドアリーフ31の制御を変化させてもよい。
例えば、制御装置19は、ドアリーフ31の開動作直後に物体の巻き込みが生じたと判定したときに、ドアリーフ31の開動作を停止させ、ドアリーフ31の開動作途中に物体の巻き込みが生じたと判定したときに、ドアリーフ31の閉動作(反転駆動)、開動作の停止及び開速度の低減のいずれかひとつを実行してもよい。
【0067】
例えば、制御装置19は、物体の巻き込みが生じたと判定したときにドアリーフ31の開度が所定開度未満であれば、ドアリーフ31の開速度の低減又は停止によって開動作を抑制する。ドアリーフ31の開度が所定開度以上であれば、ドアリーフ31の開動作を反転させてもよい。所定開度は、例えば、ドアリーフ31の全開に対する半分程度の開度等である。この場合、ドアリーフ31の開動作を抑制し過ぎることを防ぎながら、巻き込まれた物体に過大な負荷が生じることを抑制することができる。
【0068】
例えば、制御装置19は、物体の巻き込みの予兆が生じたと判定したときにドアリーフ31の開動作を制御する場合、ドアリーフ31の開度が所定開度以上であれば、ドアリーフ31の開速度の低減又は停止によって開動作を抑制してもよい。この場合、例えばドアリーフ31の開動作を反転させる場合に比べて、ドアリーフ31の開動作が遅延することを抑制することができる。
【0069】
上述の実施形態では、制御装置19は、回転体15とドアリーフ31との間の物体の巻き込みの予兆が生じたか否かを判定する場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、例えば、制御装置19は、物体の巻き込みの予兆の発生有無を判定せずに、実際に回転体15とドアリーフ31との間の物体の巻き込みが生じたか否かのみを判定してもよい。この場合、例えば物体の巻き込みの予兆に応じてドアリーフ31の開動作が過剰に抑制されることを防ぐことができる。
【0070】
上述の実施形態では、制御装置19は、回転体15とドアリーフ31との間の物体の巻き込みの予兆が生じたと判定した場合、報知部51を作動させる場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、例えば、制御装置19は、物体の巻き込みの予兆の発生有無を判定しない場合等で、実際に回転体15とドアリーフ31との間の物体の巻き込みが生じたと判定した場合、報知部51を作動させてもよい。この場合、報知部51が過剰な頻度で作動することを抑制することができる。
【0071】
例えば、制御装置19は、物体の巻き込みの予兆が生じたと判定した場合と、実際に物体の巻き込みが生じたと判定した場合との各々で報知部51を作動させてもよい。この場合、報知部51の報知内容を判定事象(つまり、巻き込みの予兆の発生有無と実際の巻き込みの発生有無)に応じて変化させてもよい。この場合、判定事象に応じて詳細な報知を行うことができる。
例えば、制御装置19は、実際に物体の巻き込みが生じたと判定してドアリーフ31の開動作を抑制又は反転させる場合等で、ドアリーフ31の動作を制御する際に制御内容に応じて変化する報知内容で報知部51を作動させてもよい。この場合、ドアリーフ31の動作に応じた適正かつ詳細な報知を行うことができる。
【0072】
上述の実施形態では、制御装置19は、回転体15とドアリーフ31との間の物体の巻き込みの予兆が生じたと判定した場合、報知部51を作動させ、予兆状態が解消した場合、報知部51の動作を停止させる場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、例えば、制御装置19は、予兆状態が解消した場合及び実際の物体の巻き込みが解消した場合の少なくともいずれかで報知部51を作動させてもよい。
例えば、制御装置19は、報知部51の報知内容を判定事象(つまり、予兆状態の解消有無と実際の巻き込みの解消有無)に応じて変化させてもよい。この場合、例えばドア13の周辺の人及びドア13の動作を制御する人等にドアリーフ31の状態を適正かつ詳細に報知することができる。
【0073】
上述の実施形態では、制御装置19は、ドアリーフ31の開動作を抑制した後、物体の巻き込みが解消したと判定した場合、ドアリーフ31の開動作の抑制を解除する場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、例えば、制御装置19は、ドアリーフ31の開動作を抑制した後、所定時間経過後にドアリーフ31の開動作の抑制を解除してもよい。所定時間は、例えば、物体の所持者等による主体的な動作によって物体の巻き込みを解消するために必要な時間等である。この場合、ドアリーフ31の開動作の抑制を迅速に解除することによって、ドアリーフ31の開動作の遅延が増大することを抑制することができる。
【0074】
上述の実施形態では、回転体15を構成する複数の分割回転体41は一体的に回転し、検出部17は一体的に回転する回転体15の回転を検出する場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、例えば、回転体15を構成する複数の分割回転体41は互いに独立的に回転し、検出部17は各分割回転体41の回転を検出する複数のセンサを備えてもよい。この場合、複数の分割回転体41は車両1の上下方向で異なる位置に配置されていることにより、制御装置19は、ドアリーフ31の高さ位置に応じた物体の巻き込みの予兆又は実際の物体の巻き込みの発生有無を、検出部17から出力された検出信号に基づいて判定することができる。
【0075】
例えば、制御装置19は、ドアリーフ31の高さ方向での検出部17の検出位置に応じてドアリーフ31の制御を変化させてもよい。
例えば、制御装置19は、ドアリーフ31の高さ方向での所定高さ未満で物体の巻き込みが生じたと判定した場合、ドアリーフ31の開動作の反転を優先させる。一定高さ以上で物体の巻き込みが生じたと判定した場合、ドアリーフ31の開動作の抑制を優先させてもよい。所定高さ未満は、例えば、物体の所持者が子供である場合に対応する高さ等であり、所定高さ以上は、例えば、物体の所持者が大人である場合に対応する高さ等である。この場合、例えば物体の巻き込みを主体的に解消することが相対的に難しい子供に対してはドアリーフ31の開動作の反転によって迅速に巻き込みを解消することができる。例えば物体の巻き込みを主体的に解消することが相対的に容易である大人に対しては開動作の停止又は開速度の低減によってドアリーフ31の開動作が過剰に抑制されることを防ぐことができる。
【0076】
例えば、制御装置19は、ドアリーフ31の開度の情報に応じてドアリーフ31の制御を変化させる場合であっても、ドアリーフ31の高さ方向での所定高さ未満で物体の巻き込みが生じたと判定した場合、ドアリーフ31の開度にかかわらずにドアリーフ31の開動作を反転させてもよい。
【0077】
上述の実施形態では、制御装置19は、検出部17から出力される検出信号に基づいて回転体15とドアリーフ31の開方向の回転が特定の条件に合致したか否かを判定することによって物体の巻き込みの有無を判定して、ドアリーフ31の動作を制御する場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、例えば、制御装置19は、検出部17から出力される検出信号に基づいて得られる物体の巻き込みの程度(強さ等)に応じてドアリーフ31の制御を変化させてもよい。
【0078】
例えば、制御装置19は、回転体15が所定以上の回転量でドアリーフ31の開方向に回転したか否かを判定することによって、物体の巻き込みの予兆又は実際の物体の巻き込みが生じたか否かを判定する。さらに、判定事象(巻き込みの予兆又は実際の巻き込み)が発生したと判定した場合、回転体15又はドアリーフ31に作用するトルクの大きさに応じてドアリーフ31の制御を変化させてもよい。
例えば、制御装置19は、回転体15又はドアリーフ31に作用するトルクが所定未満である場合、ドアリーフ31の開動作の抑制度合いを低減させてもよい。回転体15又はドアリーフ31に作用するトルクが所定以上である場合、ドアリーフ31の開動作の抑制度合いを増大又は反転させてもよい。抑制度合いの低減は、例えば、ドアリーフ31の開速度の低減を小さくする等である。抑制度合いの増大は、例えば、ドアリーフ31の開速度の低減を大きくする等である。この場合、巻き込みの程度に応じて適正かつ詳細にドアリーフ31を制御することができる。
【0079】
例えば、制御装置19は、検出部17によって検出された状態量が第1の値である場合、第1の動作速度又は第1の動作量となるようドアリーフ31の動作を制御し、状態量が第1の値より大きい第2の値である場合、第1の動作速度より遅い第2の動作速度又は第1の動作量より小さい第2の動作量となるようドアリーフ31の動作を制御してもよい。
なお、動作量とは、ドアリーフ31の物理的な移動量をいう。
ここで、ドアリーフ31の開動作時に物体が回転体15に巻き込まれる場合を考える。
物体が回転体15に巻き込まれると、物体がより戸袋11の奥に巻き込まれ、回転体15の回転トルクが大きくなっていくと想定される。そこで、回転体15の回転トルクが大きくなるほど、ドアリーフ31の開速度をより遅くすることにより、物体の例えば損傷等のおそれを低減できる。
【0080】
上述の実施形態では、戸袋11は回転体15の一部を外部に露出させる場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、戸袋11は回転体15を外部に露出させなくてもよい。
【0081】
上述の実施形態では、ドアシステム10は、回転体15を備える場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、ドアシステム10は、回転体15に加えて又は回転体15の有無にかかわらずに、戸袋11の内部でドアリーフ31の外面から車両1の幅方向の外方に所定距離だけ離れて配置される他の回転体と、ドアリーフ31の開方向での他の回転体の回転に相関する状態量を検出する他の検出部とを備えてもよい。
【0082】
上述の実施形態では、回転体15は、例えば円柱状のローラーである場合について説明した。また、回転体15の回転軸線C1及び回転軸線C2は、ドアリーフ31の高さ方向(車両1の上下方向)に沿っていればよい場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、回転体15は、外力の作用によって回転するものであれば、さまざまな回転体を用いることができる。例えば、回転体15として球体やメカナムホイール等を採用することもできる。
【符号の説明】
【0083】
1…車両、10…ドアシステム、11…戸袋、13…ドア、15…回転体、17…検出部(取得部)、19…制御装置(検知部、解消検知部、駆動制御部、制御部)、25…ドア駆動部(各種機器)、31…ドアリーフ、51…報知部(各種機器)、100…車体、C1,C2…回転軸線