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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】テールピース台車、及びズリ搬送方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/12 20060101AFI20240509BHJP
   E21F 13/08 20060101ALI20240509BHJP
   B65G 21/12 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
E21D9/12 B
E21F13/08
B65G21/12 A
B65G21/12 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020082387
(22)【出願日】2020-05-08
(65)【公開番号】P2021177040
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(73)【特許権者】
【識別番号】592093833
【氏名又は名称】青山機工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596074029
【氏名又は名称】東京機材工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】副島 幸也
(72)【発明者】
【氏名】寺田 幸男
(72)【発明者】
【氏名】細川 剛志
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-087500(JP,A)
【文献】特開2003-176692(JP,A)
【文献】特開2000-345581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/12
E21F 13/08
B65G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘削によって生じたズリをベルトコンベヤによって坑口方面に搬送する際に用いられるテールピース台車において、
ズリが投入されるズリ投入部と、
前記ベルトコンベヤの切羽側端部を構成するベルト緊張部と、
前記ズリ投入部に投入されたズリを、前記ベルト緊張部上に移動させるシュート部と、
前記ベルト緊張部を移動する第1スライド部と、
前記ズリ投入部を移動する第2スライド部と、を備え、
前記ベルト緊張部は、前記第1スライド部によって、前記ベルトコンベヤの軸方向に対して垂直方向又は略垂直方向に移動し、
前記ズリ投入部は、前記第2スライド部によって、前記ベルトコンベヤの軸方向に対して垂直方向又は略垂直方向に移動する、
ことを特徴とするテールピース台車。
【請求項2】
トンネル掘削によって生じたズリを、ベルトコンベヤによって坑口方面に送り出す方法において、
テールピース台車が有するベルト緊張部の位置を調整するベルト位置調整工程と、
前記テールピース台車が有するズリ投入部の位置を調整する投入部位置調整工程と、
前記ズリ投入部にズリを投入するズリ投入工程と、を備え、
前記ベルト位置調整工程では、前記テールピース台車が有する第1スライド部によって、該テールピース台車の機械中心付近からトンネル側壁方向に前記ベルト緊張部を移動し、
前記投入部位置調整工程では、前記テールピース台車が有する第2スライド部によって、前記ベルト緊張部の上方となるように前記ズリ投入部を移動し、
前記ベルト緊張部は、前記第1スライド部によって、前記ベルトコンベヤの軸方向に対して垂直方向又は略垂直方向に移動し、
前記ズリ投入部は、前記第2スライド部によって、前記ベルトコンベヤの軸方向に対して垂直方向又は略垂直方向に移動し、
前記ズリ投入部に投入されたズリを、前記ベルトコンベヤによって坑口方面に搬送する、
ことを特徴とするズリ搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、トンネル掘削によって生じたズリをベルトコンベヤによって坑口方面に送り出すテールピース台車に関するものであり、より具体的には、ベルトコンベヤを容易にトンネル壁面側に寄せて配置することができるテールピース台車と、これを用いたズリ搬送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国の国土は、およそ2/3が山地であるといわれており、そのため道路や線路など(以下、「道路等」という。)は必ずといっていいほど山地部を通過する区間がある。この山地部で道路等を構築するには、斜面の一部を掘削する切土工法か、地山の内部をくり抜くトンネル工法のいずれかを採用するのが一般的である。トンネル工法は、切土工法に比べて施工単価(道路等延長当たりの工事費)が高くなる傾向にある一方で、切土工法よりも掘削土量(つまり排土量)が少なくなる傾向にあるうえ、道路等の線形計画の自由度が高い(例えば、ショートカットできる)といった特長があり、これまでに建設された国内のトンネルは10,000を超えるといわれている。
【0003】
山岳トンネルの施工方法としては、昭和50年代までは鋼アーチ支保工に木矢板を組み合わせて地山を支保する「矢板工法」が主流であったが、現在では地山強度を積極的に活かすNATM(New Austrian Tunneling Method)が主流となっている。NATMは、地山が有する強度(アーチ効果)に期待する設計思想が主な特徴であり、そのため従来の矢板工法に比べトンネル支保工の規模を小さくすることができ、しかも施工速度を上げることができることから施工コストを減縮することができる。
【0004】
また我が国におけるNATMは、本格的に実施されて以来、飛躍的に掘削技術が進歩しており、種々の補助工法が開発されることによって様々な地山に対応することができるようになり、さらに掘削機械(特に、自由断面掘削機)の進歩によって発破掘削のほか機械掘削も選択できるようになった。この機械掘削は、掘削断面積や線形にもよるものの一般的には比較的低い強度(例えば、一軸圧縮強度が49N/mm以下)の地山に対して採用されることが多く、一方、対象地山に岩盤が存在する場合はやはり発破掘削が採用されることが多い。
【0005】
さらに、発破掘削によって生じた岩砕(発破により岩盤が小割されたもの)や土砂(以下、これらを総称して「ズリ」という。)を坑外に搬出する方法にもいくつかの種類があり、ダンプトラック等に積載してズリを搬送する「タイヤ式」や、坑内に敷設したレールを利用してズリを搬送する「レール式」、同じく坑内に設置した連続ベルトコンベヤシステムによってズリを搬送する「ベルトコンベヤ式」などが挙げられる。
【0006】
このうちベルトコンベヤ式によるズリ搬送は、概ねトンネル全長(掘削長さ)分の設備を設置する必要があるものの、他の工程(例えば、コンクリート吹付など)との並行実施が可能であることから掘進サイクルを短縮することができるうえ、ダンプトラックのように化石燃料を使用することがないため環境(特に坑内環境)に悪影響を及ぼすことがなく、また掘削延長が長い場合は他の方式よりも経済的に有利であるといった特長がある。そのため、新幹線(例えばリニア中央新幹線)や高速道路など比較的延長が長いトンネルでは、ズリ搬送方式としてベルトコンベヤ式を採用する傾向にある。
【0007】
通常、連続ベルトコンベヤシステムは、ベルトコンベヤと、移動式破砕機(移動式クラッシャー)、テールピース台車、ベルトストレージ装置、メインドライブ装置等によって構成される。ベルトコンベヤは、坑口側のヘッドプーリーとテールピース台車のプーリー間を巡回する無端ベルトによって構成され、発破等によって生じたズリを坑口近くまで搬送する。ただし、発破では岩盤を比較的大きな塊状に小割りするだけであり、この状態のままベルトコンベヤによって搬送することはできない。そのため、移動式破砕機が発破による塊状の岩砕をさらに細かく破砕する。
【0008】
切羽側に配置されるテールピース台車は、移動式破砕機が破砕した岩砕(ズリ)をベルトコンベヤに引き渡すものである。すなわち、移動式破砕機がテールピース台車のズリ投入部(投入ホッパー)にズリを投入すると、そのズリはベルトコンベヤに載せられ坑口方面に搬送される。またテールピース台車にはクローラやタイヤといった自走手段が装備されており、切羽の進行に伴い移動(進行)することができる。そして、テールピース台車の進行によりベルトコンベヤを牽引することで、あらかじめベルトストレージ装置に貯蔵したベルトを順次繰り出しベルトコンベヤを延伸していく。
【0009】
ベルトコンベヤの坑口側と切羽側にはそれぞれプーリーを配置した反転部が形成されており、この反転部で無端ベルトは上下面が逆転するとともに進行方向も反転する。すなわち、坑口側の反転部では無端ベルトが上面から下面に移るとともに坑口方面の移動から切羽方面への移動に反転し、切羽側(つまりテールピース台車)の反転部では無端ベルトが下面から上面に移るとともに切羽方面の移動から坑口方面への移動に反転する。またテールピース台車では、無端ベルトが弛まないように張力を付与する機構も有しており、そのためテールピース台車のうち反転部を含め無端ベルトが配置される部分は「ベルト緊張部」と呼ばれることがある。つまり、ズリ投入部に投入されたズリはこのベルト緊張部に載せられることになる。
【0010】
一般的にベルトコンベヤは、切羽付近(テールピース台車)からできるだけ坑口に近い位置まで設置され、したがってベルトコンベヤは坑内(トンネル内)のうち相当の範囲を占有することとなる。施工性や安全性を考慮すると坑内はできるだけ広く使用する方が望ましく、そのためベルトコンベヤは、重機の往来に支障の無い高所や、トンネル側壁に接近して配置されることが多い。
【0011】
しかしながら、トンネル側壁に接近して配置するには限界がある。テールピース台車は、当然ながら相当の機械幅を有しており、ベルトコンベヤ(ベルト緊張部)を機械中心に配置するとその分(つまり機械幅の1/2)だけベルトコンベヤはトンネル中心側に寄せられる。その結果、トンネル側壁に接近して配置するためには、機械中心からトンネル側壁までベルトコンベヤを徐々に寄せていくように配置することになるが、この場合、ベルトを延伸するたびに設置位置を調整する(位置をずらす)必要があり、この位置調整が蛇行発生の原因となる。これに対して、ベルトコンベヤ(ベルト緊張部)を機械の端部(右端か左端)に配置したテールピース台車の採用も考えられる。ところが、トンネル現場によっては連続ベルトコンベヤシステムをトンネル左端に配置したいこともあれば右端に配置したいこともある。これらいずれのケースにも対応するには、右端配置用のテールピース台車と左端配置用のテールピース台車を用意する必要があるが、機械の製造コストや維持コストが倍増するため望ましい手段とは言えない。
【0012】
これまで、トンネル掘削のズリを連続ベルトコンベヤシステムで搬出するための、様々な改良技術が提案されてきた。例えば特許文献1では、コンベヤ前端(切羽側端)のリターン部(反転部)を、コンベヤ本体に対して左右方向に水平に摺動可能にした長距離ベルトコンベヤ装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2003-176692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1に開示される技術は、舗装されていない坑内路盤には不陸が生じやすく、これに伴いコンベヤベルトも水平に配置することが難しいという点を問題とし、コンベヤベルトの配置姿勢を調整しやすくし、ひいては短時間で容易にコンベヤベルトを延長することを目的として提案されたものである。そのため、コンベヤ前端のリターン部を左右方向に水平移動するとしても限定的な移動量を想定しており、例えばテールピース台車幅の1/2など相当の量で水平移動するものではない。仮に、相当量でコンベヤ前端のリターン部を移動させたとすると、テールピース台車のズリ投入部に投入された岩砕(ズリ)は、ベルトコンベヤから外れた位置に落下することとなり、すなわちベルトコンベヤ上にズリが載置されず、坑口方面にズリが搬送されない結果となる。
【0015】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち蛇行することなくベルトコンベヤをトンネル側壁に接近して配置することができるテールピース台車と、これを用いたズリ搬送方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願発明は、投入部やベルト緊張部を連続ベルトコンベヤの軸方向に対して略垂直方向に移動し、シュート部を回転することによって岩砕の移動経路を変更する、という点に着目してなされたものであり、これまでにない発想に基づいて行われた発明である。
【0017】
本願発明のテールピース台車は、トンネル掘削によって生じたズリをベルトコンベヤによって坑口方面に搬送する際に用いられるものであり、ズリが投入されるズリ投入部と、ベルトコンベヤの切羽側端部を構成するベルト緊張部、さらにシュート部とスライド部を備えたものである。このうちシュート部は、ズリ投入部に投入されたズリをベルト緊張部上に移動させるものであり、スライド部は、ベルト緊張部を移動するものである。なおベルト緊張部は、スライド部によってベルトコンベヤの軸方向に対して略垂直(垂直含む)方向に移動し、またシュート部は、回転可能であってズリ投入部からベルトまでのズリの移動経路を変更することができる。
【0018】
本願発明のテールピース台車は、第1スライド部と第2スライド部を備えたものとすることができる。この第1スライド部は、ベルト緊張部を移動させるものであり、一方の第2スライド部は、ズリ投入部を移動するものである。この場合、緊張部は、第1スライド部によってベルトコンベヤの軸方向に対して略垂直(垂直含む)方向に移動し、ズリ投入部は、第2スライド部によってベルトコンベヤの軸方向に対して略垂直(垂直含む)方向に移動する。
【0019】
本願発明のズリ搬送方法は、本願発明のテールピース台車を用いてズリを搬送する方法であり、ベルト位置調整工程とズリ投入工程を備えた方法である。このうちベルト位置調整工程では、ベルト緊張部の位置を調整し、ズリ投入工程では、ズリ投入部にズリを投入する。またベルト位置調整工程では、スライド部によってテールピース台車の機械中心付近からトンネル側壁方向にベルト緊張部を移動するとともに、ズリ投入部からベルト緊張部までズリが移動するようにシュート部を回転する。そして、ズリ投入部に投入されたズリをベルトコンベヤによって坑口方面に搬送する。
【0020】
本願発明のズリ搬送方法は、投入部位置調整工程をさらに備えた方法とすることもできる。この投入部位置調整工程では、第2スライド部によってベルト緊張部の上方となるようにズリ投入部を移動する。したがってこの場合は、必ずしもシュート部を回転する必要はない。
【発明の効果】
【0021】
本願発明のテールピース台車、及びズリ搬送方法には、次のような効果がある。
(1)従来、移動式破砕機とテールピース台車の設置時には、岩砕(ズリ)の受け渡しのために微細な位置調整を必要とし、そのためベルトコンベヤの延伸作業に相当の時間を要していた。一方、本願発明のテールピース台車は、シュートによって岩砕(ズリ)をベルトコンベヤ上に搬送することができることから、ズリ投入部(投入ホッパー)を大型化することが可能になり、そのため移動式破砕機とテールピース台車の微細な位置調整を必要とせず、ベルトコンベヤの延伸作業を従来に比して短縮することができる。
(2)ベルトコンベヤをトンネル側壁に接近して配置することができる。その結果、坑内を広く利用することができ、例えば重機の離合幅等が確保しやすくなることから、施工性においても安全性においても極めて良好な施工現場を確保することができる。
(3)テールピース台車からベルトストレージ装置までベルトコンベヤを概ね直線的に設置できるため、蛇行リスクの少ない安定した運転が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】坑内に配置された本願発明の砕岩システムを示す側面図。
図2】(a)は移動式破砕機とテールピース台車、ベルトコンベヤの一部を示す部分斜視図、(b)は移動式破砕機とテールピース台車、ベルトコンベヤの一部を示す部分側面図、(c)は移動式破砕機とテールピース台車、ベルトコンベヤの一部を示す部分平面図。
図3】本願発明のテールピース台車を示す側面図。
図4】(a)はズリ投入部とベルト緊張部、シュート部、スライド部の位置関係を模式的に示す側面図、(b)はズリ投入部とベルト緊張部、シュート部、スライド部の位置関係を模式的に示す正面図。
図5】シュート可動式テールピース台車のシュート部が回転する状況を模式的に示す平面図。
図6】(a)は機械中心付近に配置されていたベルト緊張部が右スライド部によって機械左側のトンネル側壁方向に移動している状況を模式的に示す正面図、(b)は機械中心付近に配置されていたベルト緊張部が左スライド部によって機械右側のトンネル側壁方向に移動している状況を模式的に示す正面図。
図7】上下スライド式テールピース台車を模式的に示す正面図。
図8】(a)は機械中心付近に配置されていたベルト緊張部が右下段スライド部によって機械左側のトンネル側壁方向に移動するとともに機械中心付近に配置されていたズリ投入部が右上段スライド部によって機械左側のトンネル側壁方向に移動している状況を模式的に示す正面図、(b)は機械中心付近に配置されていたベルト緊張部が左下段スライド部によって機械右側のトンネル側壁方向に移動するとともに機械中心付近に配置されていたズリ投入部が左上段スライド部によって機械右側のトンネル側壁方向に移動している状況を模式的に示す正面図。
図9】シュート可動式テールピース台車を用いた場合における本願発明のズリ搬送方法の主な工程の流れを示すフロー図。
図10】上下スライド式テールピース台車を用いた場合における本願発明のズリ搬送方法の主な工程の流れを示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本願発明のテールピース台車、及びズリ搬送方法の実施の例を図に基づいて説明する。
【0024】
1.全体概要
ベルトコンベヤ式によるズリ搬送は、一般的に図1に示すような連続ベルトコンベヤシステムが用いられる。この連続ベルトコンベヤシステムは、移動式破砕機CRとテールピース台車100、ベルトコンベヤBC、ベルトストレージ装置STなどを含んで構成され、またベルトコンベヤBCは、坑口側のヘッドプーリーHPとテールピース台車のプーリー間を巡回する無端ベルトによって構成される。
【0025】
切羽側に配置された移動式破砕機CRは、発破による塊状の岩砕をさらに細かく破砕する。そして移動式破砕機CRによって破砕された岩砕(ズリ)は、テールピース台車100のズリ投入部(投入ホッパー)に投入され、さらにベルトコンベヤBCに載せられて坑口方面に搬送される。つまりベルトコンベヤBCの無端ベルトは、ズリを載置する上面は坑口方面に移動し、ズリを降ろした後の下面では切羽方面に移動するように回転(図1では時計回りの回転)する。またテールピース台車100にはクローラやタイヤといった自走手段が装備されており、切羽の進行に伴い移動(進行)することができる。
【0026】
本願発明はテールピース台車100とこれを用いたズリ搬送方法関にするものであり、テールピース台車100の機械中心付近に配置された「ベルト緊張部」をトンネル側壁側に接近させることを一つの特徴としている。ベルトコンベヤBCの無端ベルトは、テールピース台車100の坑口側から進入して、テールピース台車100の切羽側に設けられたプーリー(反転部)で折り返す。そして、テールピース台車100のうち反転部を含め無端ベルトが配置される部分が「ベルト緊張部」である。なお、ベルト緊張部では無端ベルトに張力が付与され、またズリ投入部に投入されたズリはこのベルト緊張部に載せられる。
【0027】
図2に示すようにベルトコンベヤBCは、テールピース台車100の内部(つまりベルト緊張部)から連続して坑口方面に延びるように配置される。図2は、連続ベルトコンベヤシステムのうち移動式破砕機CRとテールピース台車100、ベルトコンベヤBCの一部を示す図であり、(a)はその部分斜視図、(b)はトンネル中心から側壁方向を見た部分側面図、(c)は上方から見た部分平面図である。図2(a)や図2(c)から分かるように、ベルト緊張部をトンネル側壁側に寄せた効果で、ベルトコンベヤBCは蛇行することなくトンネル側壁に沿ったまま配置することができる。その結果、坑内を広く利用することができ、十分な重機の離合幅も確保することができるわけである。
【0028】
2.テールピース台車
次に、本願発明のテールピース台車100について詳しく説明する。なお、本願発明のズリ搬送方法は、本願発明のテールピース台車100を用いてズリを搬送する方法である。したがって、まずは本願発明のテールピース台車100について説明し、その後に本願発明のズリ搬送方法について説明することとする。
【0029】
図3は、本願発明のテールピース台車100を示す側面図である。この図に示すようにテールピース台車100は、ズリ投入部110とベルト緊張部120を備えており、自走用クローラ(あるいはタイヤ)やアウトリガーなども備えている。またテールピース台車100は、図4に示すようにシュート部130とスライド部140を備えている。図4は、テールピース台車100を構成するズリ投入部110とベルト緊張部120、シュート部130、スライド部140の位置関係を模式的に示す図であり、(a)はトンネル中心から側壁方向を見た側面図、(b)は切羽側から坑口側に見た正面図である。
【0030】
ズリ投入部110(投入ホッパー)には、ズリを収容する収容空間と、この収容空間の上方に投入口、その下方に排出口が設けられている。なお排出口は投入口よりも小さい開口面積とされ、そのため移動式破砕機CRによって投入口から投入されたズリは一旦収容空間に滞留し、徐々に排出口から排出されていく。
【0031】
シュート部130は、傾斜して配置されたいわゆる「スロープ」であり、ズリ投入部110の排出口から排出されたズリをその上端で受け、滑り落ちてきたズリをその下端でベルト緊張部120上に放出する。そして、ベルトコンベヤBCが回転することによって、無端ベルト上に載せられたズリは坑口方面へ搬送される。
【0032】
本願発明のテールピース台車100は、シュート部130が回転する機構を備えたもの(以下、便宜上「シュート可動式テールピース台車100」という。)と、2段のスライド部140が設置されたもの(以下、「上下スライド式テールピース台車100」という。)に大別することができる。以下、シュート可動式テールピース台車100と上下スライド式テールピース台車100それぞれについて順に説明する。
【0033】
(シュート可動式テールピース台車)
図5は、シュート可動式テールピース台車100のシュート部130が回転する状況を模式的に示す平面図である。なお図5は上方から見た平面図であり、便具上、ズリ投入部110を省略して描いている。この図に示すようにシュート可動式テールピース台車100のシュート部130は、略鉛直(鉛直含む)の回転軸周りに回転可能である。より詳しくは、スロープの上端側(つまり排出口に近い端部側)付近に回転軸が設けられ、ズリ投入部110は傾斜姿勢のままこの回転軸を中心に回転することができる。なおズリ投入部110は、動力(電力や油圧など)によって回転する機構とすることもできるし、手動によって回転する機構とすることもできる。
【0034】
またシュート可動式テールピース台車100のベルト緊張部120は、ベルトコンベヤの軸方向に対して略垂直(垂直含む)方向に略水平(水平含む)な移動が可能である。例えば図6(a)では、機械(テールピース台車100)中心付近に配置されていたベルト緊張部120が、機械右側に設けられたスライド部140(以下、便宜上「右スライド部140R」という。)によって、機械左側のトンネル側壁方向に移動している。この図に示す右スライド部140Rは、油圧ジャッキを利用して構成されており、そのアームを伸長することによってベルト緊張部120は押し出されるようにスライド移動する。もちろん右スライド部140Rは、ベルト緊張部120をスライド移動することができれば、電動によってスライド移動するなど、油圧ジャッキに限らず従来用いられている種々の技術を利用したものとすることができる。
【0035】
一方、図6(b)では、機械中心付近に配置されていたベルト緊張部120が、機械左側に設けられたスライド部140(以下、便宜上「左スライド部140L」という。)によって、機械右側のトンネル側壁方向に移動している。この図に示す左スライド部140Lは、右スライド部140Rと同様、油圧ジャッキを利用して構成されており、そのアームを伸長することによってベルト緊張部120は押し出されるようにスライド移動する。左スライド部140Lも、ベルト緊張部120をスライド移動することができれば、電動によってスライド移動するなど、油圧ジャッキに限らず従来用いられている種々の技術を利用したものとすることができる。
【0036】
図6(a)や図6(b)に示すように、ベルト緊張部120が機械中心から外れた配置まで移動すると、スロープの下端がベルト緊張部120の上方に位置するようにシュート部130を回転する。これにより、シュート部130を滑り落ちてきたズリは、ベルト緊張部120から外れることなく、ベルト緊張部120上に放出されるわけである。なおシュート可動式テールピース台車100は、右スライド部140Rと左スライド部140Lの両方を備えたものとすることもできるし、右スライド部140Rと左スライド部140Lのうちいずれか一方を備えたものとすることもできる。
【0037】
(上下スライド式テールピース台車)
図7は、上下スライド式テールピース台車100を模式的に示す正面図である。この図に示すように上下スライド式テールピース台車100は、下方に設けられるスライド部140(以下、「下段スライド部141」という。)と、上方に設けられるスライド部140(以下、「上段スライド部142」という。)、すなわち上下2段のスライド部140を備えている。
【0038】
上下スライド式テールピース台車100のベルト緊張部120は、ベルトコンベヤの軸方向に対して略垂直(垂直含む)方向に略水平(水平含む)な移動が可能であり、さらに上下スライド式テールピース台車100のズリ投入部110も、ベルトコンベヤの軸方向に対して略垂直(垂直含む)方向に略水平(水平含む)な移動が可能である。例えば図8(a)では、機械(テールピース台車100)中心付近に配置されていたベルト緊張部120が、機械右側に設けられた下段スライド部141(以下、便宜上「右下段スライド部141R」という。)によって、機械左側のトンネル側壁方向に移動し、さらに機械中心付近に配置されていたズリ投入部110も、機械右側に設けられた上段スライド部142(以下、便宜上「右上段スライド部142R」という。)によって、機械左側のトンネル側壁方向に移動している。
【0039】
この図に示す右下段スライド部141Rと右上段スライド部142Rは、油圧ジャッキを利用して構成されており、そのアームを伸長することによってベルト緊張部120やズリ投入部110は押し出されるようにスライド移動する。もちろん右下段スライド部141Rと右上段スライド部142Rは、ベルト緊張部120やズリ投入部110をスライド移動することができれば、電動によってスライド移動するなど、油圧ジャッキに限らず従来用いられている種々の技術を利用したものとすることができる。
【0040】
一方、図8(b)では、機械中心付近に配置されていたベルト緊張部120が、機械左側に設けられた下段スライド部141(以下、便宜上「左下段スライド部141L」という。)によって、機械右側のトンネル側壁方向に移動し、さらに機械中心付近に配置されていたズリ投入部110も、機械左側に設けられた上段スライド部142(以下、便宜上「左上段スライド部142R」という。)によって、機械右側のトンネル側壁方向に移動している。この図に示す左下段スライド部141Lと左上段スライド部142Lも、右下段スライド部141Rや右上段スライド部142Rと同様、油圧ジャッキを利用して構成されたものとすることもできるし、電動によってスライド移動するなど従来用いられている種々の技術を利用したものとすることができる。
【0041】
図8(a)や図8(b)に示すようにベルト緊張部120とズリ投入部110は、下段スライド部141と上段スライド部142によって、同等の距離を同方向に移動している。したがって、シュート可動式テールピース台車100のようにシュート部130を回転する必要がなく、シュート部130を滑り落ちてきたズリはベルト緊張部120上に放出される。そのためシュート部130は、同様の移動をするように、ズリ投入部110(あるいはベルト緊張部120)に固定しておくとよい。なお上下スライド式テールピース台車100は、右下段スライド部141Rと右上段スライド部142Rを1セット(以下、「右側セット」という。)とし、左下段スライド部141Lと左上段スライド部142Lを1セット(以下、「左側セット」という。)として設けられ、右側セットと左側セットの両方を備えたものとすることもできるし、右側セットと左側セットのうちいずれか一方を備えたものとすることもできる。また上下スライド式テールピース台車100は、シュート可動式テールピース台車100と同様、回転軸周りに回転可能なシュート部130を設けたものとすることもできる。この場合、ベルト緊張部120とズリ投入部110の移動量が異なっても、シュート部130を回転することによってズリの経路を調整することができて好適となる。
【0042】
3.ズリ搬送方法
続いて、本願発明のズリ搬送方法ついて説明する。なお、本願発明のズリ搬送方法は、ここまで説明したテールピース台車100を用いてズリを搬送する方法である。したがって、テールピース台車100について説明した内容と重複する説明は避け、本願発明のズリ搬送方法に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「2.テールピース台車」で説明したものと同様である。
【0043】
また本願発明のズリ搬送方法は、シュート可動式テールピース台車100を用いた方法(以下、「第1のズリ搬送方法」という。)と、上下スライド式テールピース台車100を用いた方法(以下、「第2のズリ搬送方法」という。)に大別することができる。以下、第1のズリ搬送方法と第2のズリ搬送方法それぞれについて順に説明する。
【0044】
(第1のズリ搬送方法)
第1のズリ搬送方法について、図9を参照しながら説明する。図9は、第1のズリ搬送方法の主な工程の流れを示すフロー図である。
【0045】
ある程度トンネル掘削が進行すると、それに合わせて移動式破砕機CRやテールピース台車100を切羽付近に移設し、テールピース台車100のベルト緊張部120の位置を調整する(Step10)。より詳しくは、スライド部140によって機械中心付近に配置されていたベルト緊張部120をトンネル側壁方向に移動し(Step11)、スロープの下端がベルト緊張部120の上方に位置するようにシュート部130を回転する(Step12)。
【0046】
ベルト緊張部120の位置を調整すると、再びトンネル掘削を進めていく。発破による掘削が行われると、移動式破砕機CRは、塊状の岩砕を破砕するとともに、テールピース台車100のズリ投入部110にズリを投入する(Step20)。ズリ投入部110に投入されたズリは、シュート部130を経由してベルト緊張部120上に移動し、そして無端ベルト上に載せられたズリは坑口方面へ搬送される。
【0047】
(第2のズリ搬送方法)
第2のズリ搬送方法について、図10を参照しながら説明する。図10は、第2のズリ搬送方法の主な工程の流れを示すフロー図である。
【0048】
ある程度トンネル掘削が進行すると、それに合わせて移動式破砕機CRやテールピース台車100を切羽付近に移設し、テールピース台車100のベルト緊張部120の位置を調整する(Step10)。より詳しくは、下段スライド部141によって機械中心付近に配置されていたベルト緊張部120をトンネル側壁方向に移動するとともに(Step11)、上段スライド部142によって機械中心付近に配置されていたズリ投入部110をトンネル側壁方向に移動する(Step13)。
【0049】
ベルト緊張部120の位置を調整すると、再びトンネル掘削を進めていく。発破による掘削が行われると、移動式破砕機CRは、塊状の岩砕を破砕するとともに、テールピース台車100のズリ投入部110にズリを投入する(Step20)。ズリ投入部110に投入されたズリは、シュート部130を経由してベルト緊張部120上に移動し、そして無端ベルト上に載せられたズリは坑口方面へ搬送される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本願発明のテールピース台車は、鉄道トンネルや道路トンネルなど様々な用途のトンネル掘削に利用できるほか、採石場など岩盤を掘削して搬送するあらゆる状況で利用することができる。トンネル構造物という社会基盤(社会インフラストラクチャ)を効率的に構築することができることを考えると、本願発明は産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明といえる。
【0051】
100 本願発明のテールピース台車
110 (テールピース台車の)ズリ投入部
120 (テールピース台車の)ベルト緊張部
130 (テールピース台車の)シュート部
140 (テールピース台車の)スライド部
140R (テールピース台車の)右スライド部
140L (テールピース台車の)左スライド部
141 (テールピース台車の)下段スライド部
141R (テールピース台車の)右下段スライド部
141L (テールピース台車の)左下段スライド部
142 (テールピース台車の)上段スライド部
142R (テールピース台車の)右上段スライド部
142L (テールピース台車の)左上段スライド部
CR (連続ベルトコンベヤシステムの)移動式破砕機
BC (連続ベルトコンベヤシステムの)ベルトコンベヤ
HP (ベルトコンベヤの)ヘッドプーリー
ST (連続ベルトコンベヤシステムの)ベルトストレージ装置
図1
図2
図3
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図6
図7
図8
図9
図10