(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】非破壊検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/04 20180101AFI20240509BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
G01N23/04
H01M10/04 W
(21)【出願番号】P 2020085777
(22)【出願日】2020-05-15
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】391017540
【氏名又は名称】東芝ITコントロールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】篠原 正治
(72)【発明者】
【氏名】森田 知実
(72)【発明者】
【氏名】染谷 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】小湊 宏
(72)【発明者】
【氏名】山影 陽平
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-102901(JP,A)
【文献】特開2012-164620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-G01N 23/2276
G01N 21/84-G01N 21/958
G01B 11/00-G01B 11/30
H01M 6/00-H01M 6/52
H01M 10/00-H01M 10/34
B65G 47/00-B65G 47/96
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物を搬送する搬送装置と、
前記被検査物の複数個所に放射線ビームを照射する放射線発生器と、
前記搬送装置を挟んで前記放射線発生器に対向して設けられた放射線検出器と、
前記放射線発生器と前記放射線検出器によって撮像された前記被検査物の
4つの放射線透視画像のうち、検査対象個所において所定の基準を満たす前
記放射線透視画像が
3つ以上
の場合に当該被検査物を良品と判定する判定部と、
を備え、
前記4つの放射線透視画像は、1つの前記被検査物の上部の左側及び右側と下部の右側及び左側をそれぞれ撮像した画像であり、
前記所定の基準は、前記検査対象個所の形状または寸法であ
る、
非破壊検査装置。
【請求項2】
前記被検査物は、内部に幅の異なる複数の素材を円筒状に巻回した構造を含み、
前記検査対象個所は、前記複数の素材の端部であり、
前記複数個所は、前記被検査物において対称な位置関係にある、
請求項1に記載の非破壊検査装置。
【請求項3】
前記放射線発生器及び前記放射線検出器は、複数組設けられ、
前記放射線発生器と前記放射線検出器の各組は、前記複数個所のうちそれぞれ異なる個所の放射線透視画像を撮像する、
請求項1または2に記載の非破壊検査装置。
【請求項4】
前記所定の基準は、幅方向において前記複数の素材の一方の端部と他方の端部との間隔が、所定の間隔に維持されていることである、
請求項
2に記載の非破壊検査装置。
【請求項5】
前記被検査物は、正極板と負極板を巻回してなる電池またはキャパシタであり、
前記複数の素材は、前記正極板と当該正極板よりも幅広の前記負極板である、
請求項
2に記載の非破壊検査装置。
【請求項6】
前記負極板にはタブが接続され、
前記タブは、前記正極板の端部または前記負極板の端部の一部を覆う、
請求項5に記載の非破壊検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、非破壊検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線で代表される放射線を被検査物に照射し、被検査物を透過することで減弱した放射線の二次元分布を検出して画像化することで、被検査物の非破壊検査を行う非破壊検査装置が知られている。被検査物は、例えば円筒型のリチウムイオン電池であり、その内部は正極板と負極板とを円筒状に幾重にも巻回した構造となっている。
【0003】
正極板の幅は負極板の幅よりも短く、正極板の端部が負極板の端部からはみ出さないように両者は巻回されている。正極板の端部が負極板の端部よりはみ出していると、はみ出した正極板にリチウムが析出してショートし、発火するおそれがある。また、正極板の端部が負極板の端部からはみ出していない場合であっても、振動などによってはみ出さないように両者の端部間は所定の間隔に維持されることが望ましい。そのため、電池の内部において、正極板の端部が負極板の端部からはみ出していないか否か、両者の端部間は所定の間隔であるか否かを検査する必要がある。この検査は、電池の上部または下部に放射線を照射し、断面視で交互に並ぶ正極板と負極板を撮像することにより行われる。
【0004】
近年、イヤホンのフルワイヤレス化などに伴いボタン型のリチウムイオン電池の需要が高まりつつある。このような電池は、フルワイヤレスイヤホン本体に内蔵されるような小型のものであるため、判定対象の放射線透視画像には高い解像度が要求される。すなわち、このような電池の検査においては、その上部または下部全体を撮像すると十分な解像度を得られず判定が困難となるため、左側または右側の一方に放射線を照射して検査を行うことが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、最外周に巻回されている負極板からはタブと呼ばれる金属製のリードが伸びている。タブは、電池を断面視した場合において、巻回された負極板の一方の側面から電池下部へと伸び、L字に屈折して電池の中心部近くにまで伸びている。タブも放射線を吸収するため、タブが正極板及び負極板の端部に重なった状態で撮像されると、上述の検査を妨げる要因となる。すなわち、
図1に示すような電池のタブが存在する下部右側画像では、タブの透視画像によって正極板及び負極板の端部が隠れて不鮮明となり、正極板の端部が負極板の端部からはみ出していないか否か、両者の端部間は所定の間隔であるか否かを正確に判定することが困難となるおそれがあった。
【0007】
このような課題は、被検査物が電池に限らずキャパシタなどの他の物品の場合も同様である。すなわち、被検査物を単に撮像しただけでは、検査対象個所が他の部材の影になったり、検査対象個所の影になるように異物が混入したり、更には、搬送される際に被検査物が振動したり傾いたりして、放射線透視画像からは検査対象個所の形状や寸法を把握できなくなる可能性があった。
【0008】
本実施形態は、上記課題を解決すべく、被検査物の検査対象個所について正確な判定を行うことのできる非破壊検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の非破壊検査装置は、次のような構成を備える。
(1)被検査物を搬送する搬送装置。
(2)前記被検査物の複数個所に放射線ビームを照射する放射線発生器。
(3)前記搬送装置を挟んで前記放射線発生器に対向して設けられた放射線検出器。
(4)前記放射線発生器と前記放射線検出器によって撮像された前記被検査物の4つの放射線透視画像のうち、検査対象個所において所定の基準を満たす前記放射線透視画像が3つ以上の場合に当該被検査物を良品と判定する判定部。
(5)前記4つの放射線透視画像は、1つの前記被検査物の上部の左側及び右側と下部の右側及び左側をそれぞれ撮像した画像である。
(6)前記所定の基準は、前記検査対象個所の形状または寸法である。
【0010】
実施形態の非破壊検査装置は、更に次のような構成を備えてもよい。
(1)前記被検査物は、内部に幅の異なる複数の素材を円筒状に巻回した構造を含み、前記検査対象個所は、前記複数の素材の端部であり、前記複数個所は、前記被検査物において対称な位置関係にある。
【0011】
(2)前記放射線発生器及び前記放射線検出器は、複数組設けられ、前記放射線発生器と前記放射線検出器の各組は、前記複数個所のうちそれぞれ異なる個所の放射線透視画像を撮像する。
【0012】
(3)前記所定の基準は、幅方向において前記複数の素材の一方の端部と他方の端部との間隔が、所定の間隔に維持されていることである。
【0013】
(4)前記被検査物は、正極板と負極板を巻回してなる電池またはキャパシタであり、前記複数の素材は、前記正極板と当該正極板よりも幅広の前記負極板である。
【0014】
(5)前記負極板にはタブが接続され、前記タブは、前記正極板の端部または前記負極板の端部の一部を覆う。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る被検査物の透視断面図である。
【
図2】実施形態に係る被検査物を示す斜視図である。
【
図3】実施形態に係る非破壊検査装置を示す平面図である。
【
図4】実施形態に係る制御を示す機能ブロック図である。
【
図5】実施形態に係る非破壊検査装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[1.実施形態]
[1-1.実施形態の構成]
以下、実施形態に係る被検査物及び非破壊検査装置について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、一つの被検査物について、まず、被検査物の上部において左側及び右側を撮像し、次に、被検査物の下部において左側及び右側を撮像することにより、正極板の端部が負極板の端部からはみ出していないか否か、両者の端部間は所定の間隔であるか否かを検査するものである。
【0017】
[被検査物]
被検査物Wは、内部に複数の素材からなる巻回構造を備える円筒型のものであれば特に限定されないが、本実施形態の被検査物Wは、ケース内部に正極板Pと負極板Nとを円筒状に幾重にも巻回した構造を有する円筒型のリチウムイオン電池である。正極板Pは、幅方向において負極板Nよりも短く、負極板Nからはみ出さないように巻回されている。より好ましくは、両者の端部間が所定の間隔に維持されるように巻回されている。なお、所定の間隔は、値であっても良いし、数値範囲であっても良い。また、
図1の下部右側に示すように、巻回構造の最外周に巻回されている負極板NにはタブTと呼ばれるリードが接続され、本実施形態では最外周の負極板Nの側面から電池の下部に向けて伸び、L字に屈折して電池の中心部近くにまで伸びている。すなわち、被検査物W内部にはタブTが格納されている。なお、詳細な説明は省き
図1にも示さないが、正極板Pと負極板Nの間には樹脂などからなるセパレータが存在している。
【0018】
図2の斜視図に示すように、被検査物Wは、その径方向において被検査物Wよりも大きい円筒型のホルダーHに載置されている。より詳細には、ホルダーHの上面には凹部が設けられ、この凹部に被検査物Wの下部が固定されている。ホルダーHは、例えば樹脂からなるので、その凹部に被検査物Wが固定されていても、被検査物Wの下部を放射線検査することができる。本実施形態では、被検査物Wを直接搬送するのではなく、被検査物Wが載置されたホルダーHを搬送する。
【0019】
[非破壊検査装置]
非破壊検査装置100は、被検査物Wに放射線を照射し、被検査物Wを透過した放射線を検出する。この検出結果に基づき、非破壊検査装置100は、被検査物Wの透視画像を生成する。
図3に示すように、非破壊検査装置100は、被検査物Wがその上面に保持された円柱状のホルダーHを搬送する搬送機構1、被検査物Wの透視画像を撮像する放射線発生器2と放射線検出器3、放射線を遮蔽する遮蔽箱4を備える。さらに、非破壊検査装置100は、搬送機構1、放射線発生器2、放射線検出器3の動作や向きを制御する制御部9を備える(
図4参照)。
【0020】
搬送機構1は、被検査物Wが載置されたホルダーHを搬送する機構である。搬送機構1は、被検査物Wの検査用搬送路を構成する回転搬送装置11と、回転搬送装置11の搬入側に設けられた搬入装置12と、回転搬送装置11の搬出側に設けられた搬出装置13と、を備える。搬入装置12、搬出装置13は、それぞれ移載装置121、131を備える。
【0021】
搬入装置12、搬出装置13は、例えばチェーンコンベアやベルトコンベアである。搬入装置12は、移載装置121を介して、被検査物Wが載置されたホルダーHを回転搬送装置11へと搬入する。すなわち、移載装置121は、搬入装置12と回転搬送装置11の間に設けられる。搬出装置13は、移載装置131を介して、回転搬送装置11において非破壊検査を終えた被検査物Wが載置されたホルダーHを回転搬送装置11から搬出する。すなわち、移載装置131は、搬出装置13と回転搬送装置11の間に設けられる。
【0022】
移載装置121、131は、ほぼ同様の構成であり、例えばホルダーHを保持可能な保持機構を備えるホイールを含んでなる。すなわち、移載装置121は、その外周に沿って等間隔に複数の凹部を備え、図示しないモータにより水平方向に回転する装置である。凹部には図示しない保持機構が設けられ、この保持機構により凹部でホルダーHを保持または解放することが出来る。移載装置121は、水平方向に回転しながらホルダーHの保持または解放を順次行うことにより、次々にホルダーHを搬入装置12から回転搬送装置11へと移載する。同様に、移載装置131は、その外周に沿って等間隔に複数の凹部を備え、図示しないモータにより水平方向に回転する装置である。凹部には図示しない保持機構が設けられ、この保持機構により凹部でホルダーHを保持または解放することが出来る。移載装置131は、水平方向に回転しながらホルダーHの保持または解放を順次行うことにより、次々にホルダーHを回転搬送装置11から搬出装置13へと移載する。なお、保持機構は、例えば真空または磁力による吸着機構や機械によるクランプ機構により実現されるが、本実施形態では真空または磁力による吸着機構を採用している。
【0023】
回転搬送装置11は、円盤状のテーブル111と、このテーブル111と略同心円にテーブル111上に立設されるリング状の保持部112とを備える。テーブル111には図示しないモータが設けられ、テーブル111は、保持部112と共に水平方向に回転することが出来る。保持部112には、その外周に沿って等間隔に複数の凹部113が設けられている。凹部113には図示しない保持機構が設けられ、この保持機構により凹部113でホルダーHを保持または解放することが出来る。すなわち、回転搬送装置11は、移載装置121により搬入装置12から搬入されたホルダーHを、テーブル111上で順次搬送することが出来る。なお、保持機構は、例えば真空または磁力による吸着機構や機械によるクランプ機構により実現されるが、本実施形態では真空または磁力による吸着機構を採用している。
【0024】
リング状の保持部112の内側には、2つの放射線発生器2が背中合わせに設けられる。放射線発生器2は、その前を順次搬送される被検査物Wに向けて放射線ビームを照射する。放射線ビームは、焦点を頂点として角錐形状に拡大する放射線の束である。放射線は、例えばX線である。この放射線発生器2は、例えばX線管である。
【0025】
放射線検出器3は、それぞれの放射線発生器2の焦点と対向して配置される。すなわち、2組の放射線発生器2と放射線検出器3は、それぞれリング状の保持部112を挟んで対向している。放射線検出器3は、放射線の透過経路に応じて減弱した放射線強度の二次元分布を検出し、当該放射線強度に比例した透過データを出力する。この放射線検出器3は、例えばイメージインテンシファイア(I.I.)とカメラ、又はフラットパネルディテクタ(FPD)により構成される。
【0026】
2組の放射線発生器2と放射線検出器3は、被検査物Wを撮像する高さが互いに異なり、搬入装置12側の組は被検査物Wの上部を、搬出装置13側の組は被検査物Wの下部を、それぞれ撮像可能な高さに位置している。また、搬入装置12側の放射線発生器2と放射線検出器3をそれぞれ放射線発生器2aと放射線検出器3aとし、搬出装置13側の放射線発生器2と放射線検出器3をそれぞれ放射線発生器2bと放射線検出器3bとする。2組の放射線発生器2と放射線検出器3は、いずれも被検査物Wの上部または下部の片側を撮像できるように設定されている。
【0027】
遮蔽箱4は、搬送機構1の一部と、放射線発生器2と、放射線検出器3とを囲い、放射線を遮蔽する。遮蔽箱4は、鉛などの放射線を遮蔽する材料を含み構成されている。遮蔽箱4は、例えば直方体形状である。遮蔽箱4には、被検査物Wが保持されたホルダーHを内部に搬入する搬入口41、遮蔽箱4内部の被検査物Wを遮蔽箱4外部に搬出する搬出口42が設けられ、搬入口41は搬入装置12の途上に、搬出口42は搬出装置13の途上に、それぞれ設けられている。
【0028】
図4に示すように、制御部9は、被検査物Wを搬送及び検査するために、搬送機構1、放射線発生器2、放射線検出器3の動作や向きを制御する。例えば、後述の判定部93の判定結果に基づいて搬送機構1を制御することが出来る。制御部9は、所謂コンピュータであり、HDDまたはSSDといったストレージ、RAM、CPU及びドライバ回路で構成される。ストレージには、例えば各構成を制御するためのプログラムやデータが記憶されている。RAMには、プログラムが展開され、またデータが一時的に記憶される。CPUはプログラムを処理し、この処理結果に従ってドライバ回路は各構成に電力を供給する。
【0029】
制御部9は、特に、撮像指令部91、記憶部92、判定部93を備える。撮像指令部91は、被検査物Wに対して、放射線発生器2に放射線ビームを照射させる。より詳細には、被検査物Wの上部または下部の左側及び右側に対して放射線ビームを照射させる。さらに、本実施形態では、2つの放射線発生器2a及び2bを用いて、1つの被検査物Wにおいて対称な位置関係にある上部の左側及び右側、下部の左側及び右側の4か所を撮像し、4つの放射線透視画像を生成する(
図1の上部左側、上部右側、下部左側、下部右側)。この4つの放射線透視画像のいずれも、被検査物Wにおける検査対象個所を含んでいるものとする。本実施形態の検査対象個所は、正極板Pの端部と負極板Nの端部である。なお、被検査物Wにおいて対称な位置関係にあるとは、被検査物Wの左側と右側、あるいは被検査物Wの上部と下部の関係を指す。また、本実施形態の対称な位置関係のように、対称な位置関係にある左側と右側が、上部と下部で1組ずつ計2組ある場合も含む。この場合、対称な位置関係にある上部と下部が、左側と右側で1組ずつ計2組あると考えることもできる。
【0030】
記憶部92は、判定部93がその判定の拠り所とする所定の基準を記憶している。本実施形態における所定の基準とは、正極板Pが負極板Nからはみ出していないこと、正極板Pの端部と負極板Nの端部との間隔が所定の間隔であること、またはその両方である。
【0031】
判定部93は、放射線検出器3が検出した上述の4つの放射線透視画像が所定の基準を満たしているか否かに基づいて、被検査物Wの良否を判定する。すなわち、判定部93は、4つの放射線透視画像における検査対象個所のそれぞれに対して、所定の基準を満たしているか否かを判定する。判定部93は、タブTの影響などにより放射線透視画像が不鮮明な場合、すなわち正極板Pと負極板Nを濃淡値から区別できない場合には、当該放射線透視画像が所定の基準を満たしていないものとして判定する。本実施形態では、
図1に示すように少なくとも1つの放射線透視画像がタブTの影響により不鮮明となり、所定の基準を満たさない。判定部93は、正極板Pと負極板Nを濃淡値から区別できる場合には、例えば正極板Pが負極板Nよりはみ出していない場合に所定の基準を満たすものとして判定する。より詳細には、検査対象個所の形状から、すなわち正極板Pと負極板Nの端部の位置関係から、正極板Pが負極板Nよりはみ出していないか否かを判定する。また、はみ出していない場合であっても、さらに正極板Pの端部と負極板Nの端部との間隔が所定の間隔であるか否かによって二重に判定してもよい。この場合は、正極板Pと負極板Nの端部の間隔を測定することにより、所定の間隔であるか否かを判定する。このようにして、4つの放射線透視画像のうち、所定の数以上の画像、例えば3つ以上の画像が所定の基準を満たしているか否かにより、被検査物Wの良否を判定する。なお、本実施形態においては、放射線透視画像のうち少なくとも1つが不鮮明であることを前提としているため、所定の数は複数の放射線透視画像の数より少ない。
【0032】
[1-2.実施形態の作用]
本実施形態の被検査物Wの搬送及び検査手順について、
図5のフローチャートを中心に図面を参照しつつ説明する。
【0033】
(1)搬入工程
前提として、搬入装置12の搬送経路には、被検査物Wが載置されたホルダーHが移載装置121の手前まで並べられている。制御部9による制御により、搬送機構1が駆動されると、ホルダーHは搬入装置12から回転搬送装置11へと順次移載される(ステップS01)。より詳細には、まず、移載装置121の凹部が搬入装置12上を搬送されるホルダーHを吸着保持する。次に、このホルダーHを回転搬送装置11の保持部112の凹部113が吸着保持し、一方、移載装置121はこのホルダーHを解放する。これにより、ホルダーHは、移載装置121から回転搬送装置11へと受け渡され、保持部112と共に回転するテーブル111上を凹部113に保持された状態で搬送される。
【0034】
(2)上部撮像工程
テーブル111上を搬送されるホルダーH上に載置された被検査物Wは、搬入装置12側に設けられた放射線発生器2aと放射線検出器3aにより、その上部が撮像される。より詳細には、撮像指令部91により放射線発生器2aが制御され、まず
図6(a)に示すように上部の右側が撮像され、次に
図6(b)に示すように上部の左側が撮像される(ステップS02)。放射線検出器3aは、これらの放射線透視画像を制御部9へと出力する。
【0035】
(3)下部撮像工程
ステップS02における非破壊検査を経た被検査物Wは、回転搬送装置11のテーブル111上をさらに搬送され、搬出装置13側に設けられた放射線発生器2bと放射線検出器3bにより、その下部が撮像される。より詳細には、撮像指令部91により放射線発生器2bが制御され、まず
図6(a)に示すように下部の左側が撮像され、次に
図6(b)に示すように下部の右側が撮像される(ステップS03)。放射線検出器3bは、これらの放射線透視画像を制御部9へと出力する。
【0036】
(4)判定工程
放射線検出器3a及び3bから計4つの放射線透視画像が入力された制御部9の判定部93は、これら4つの放射線透視画像に基づいて被検査物Wの良否を判定する(ステップS04)。より詳細には、4つの放射線透視画像のそれぞれにおいて所定の基準を満たしているか否かを判定し、所定の数以上、本実施形態では3つ以上の放射線透視画像が所定の基準を満たしている場合に、被検査物Wが良品であると判定する。所定の基準を満たしているか否かは、例えば正極板Pが負極板Nよりはみ出していないか否かによって判定されるが、タブTの影響などにより放射線透視画像が不鮮明な場合、すなわち正極板Pと負極板Nの濃淡値を区別できない場合には、当該放射線透視画像は所定の基準を満たしていないものとして判定される。例えば、4つの放射線透視画像のうち2つが不鮮明である場合には、3つ以上の放射線透視画像が所定の基準を満たしていないものとして判定されるため、被検査物Wは不良品として判定される。このように、判定部93は、正極板Pと負極板Nが濃淡値により区別できるか否かを、さらに区別できる場合には両者の端部の位置関係から正極板Pが負極板Nよりはみ出していないか否かを判定することにより、被検査物Wが良品であるか否かを判定する。また、正極板Pが負極板Nよりはみ出していない場合であっても、さらに正極板Pの端部と負極板Nの端部との間隔が、記憶部92に記憶されている所定の間隔であるか否かによって二重に判定してもよい。この場合は、濃淡値により区別される両者の端部の間隔を測定することにより、所定の間隔であるか否かを判定する。
【0037】
本実施形態においては、4つの放射線透視画像のうち3つ以上が所定の基準を満たさない場合、判定部93は、被検査物Wを不良品と判定する。不良品と見做された被検査物Wは、制御部9が移載装置131を制御することにより、図示しない回収コンベアに移載され、この回収コンベアの先に設けられた回収箱に回収されてもよい。
【0038】
(5)搬出工程
最後に、検査を終えた被検査物WのホルダーHは、回転搬送装置11から搬出装置13へと順次移載される(ステップS05)。より詳細には、まず、移載装置131の凹部がテーブル111上を搬送されるホルダーHを吸着保持する。一方で、回転搬送装置11の保持部112の凹部113がこのホルダーHを解放する。これにより、移載装置131はこのホルダーHを吸着保持したまま水平方向に回転を続け、搬出装置13上で解放する。
【0039】
以上、ステップS01~S05により、ホルダーHに載置された被検査物Wが順次搬送及び検査される。
【0040】
[1-3.実施形態の効果]
(1)本実施形態では、1つの被検査物Wの複数個所を撮像し、この複数の放射線透視画像のうち、所定の数以上の放射線透視画像がその検査対象個所において所定の基準を満たしているか否かに基づいて、被検査物Wの良否を判定する。これにより、複数の放射線透視画像のうち1つが不鮮明などの理由により所定の基準を満たさない場合であっても、他の放射線透視画像が所定の基準を満たすことで被検査物Wが良品であるにも拘らず不良品であるという判定が出るのを防ぐことが出来る。
【0041】
(2)被検査物Wが内部に幅の異なる複数の素材を円筒状に巻回した構造、例えば正極板Pと当該正極板Pよりも幅広の負極板Nとを円筒状に巻回した構造を含んでいる場合、正極板Pの幅と負極板Nの幅はいずれも被検査物Wの製造段階で決まっているので、上部または下部の一方における両極板の端部間の間隔から、他方における両極板の端部間の間隔も判明する。このため、被検査物Wの上部または下部の一方を撮像すれば被検査物Wの良否を判定できる。また、被検査物W内部において、正極板Pと負極板Nは円筒状に幾重にも巻回されているため、断面視においては略左右対称となっている。このことに鑑みれば、1つの被検査物Wに対して、上部または下部において、左側または右側の一方を撮像すれば被検査物Wの良否を判定することが出来る。
【0042】
本実施形態では、敢えて1つの被検査物Wに対して上部左側、上部右側、下部左側、下部右側を撮像し、これら4つの放射線透視画像に基づいて被検査物Wの良否を判定している。これにより、上部または下部のいずれかの放射線透視画像が例えばタブTの影響により不鮮明であっても、また被検査物W内部の巻回構造が巻きずれなどにより完全な左右対称でなくとも、高精度な品質検査を行うことが出来る。
【0043】
(3)本実施形態では、2組の放射線発生器2と放射線検出器3により、1つの被検査物Wに対して上部左側、上部右側、下部左側、下部右側を撮像し、これら4つの放射線透視画像に基づいて被検査物Wの良否を判定している。これにより、1組で2か所を撮像すれば良いので、被検査物Wの検査速度を向上させることが出来る。また、被検査物Wの例えば下部右側の放射線透視画像にタブTが映り込み、その影響により放射線透視画像が不鮮明であっても、4つのうち残りの3つの放射線透視画像で所定の基準を満たしているかを判定することが出来る。これにより、例えば4か所のうち3か所で所定の基準を満たすという厳しい品質水準をクリアした被検査物Wを生産することが出来る。
【0044】
(4)本実施形態では、各放射線透視画像が満たすべき所定の基準を、正極板Pの端部と負極板Nの端部とが所定の距離を維持していることとした。これにより、正極板Pが負極板Nからはみ出していない場合に比べて、検査後に例えば振動などにより正極板Pと負極板Nが幅方向にずれることがあっても、正極板Pが負極板Nからはみ出すおそれを低減することが出来る。
【0045】
[2.他の実施形態]
本明細書においては、本発明に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。以上のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0046】
(1)上記実施形態では、タブTが被検査物W内部に格納されているものとして検査を行ったが、これに限られない。例えば被検査物W内部に製造過程で誤って異物が混入していないかを検査することもできる。
【0047】
(2)上記実施形態の検査対象個所は、正極板Pの端部と負極板Nの端部としたが、これに限られない。例えば、被検査物Wの垂直方向中央付近で亀裂や変形などが生じ易い場合、巻回構造の中央付近を検査対象個所としてもよい。また、上記実施形態における放射線発生器2の一方で正極板Pの端部と負極板Nの端部を撮像し、他方で被検査物Wの中央付近を撮像してもよい。この場合、中央付近の検査対象個所は、例えば巻回構造の変形や亀裂などといった巻回構造の形状である。
【0048】
(3)上記実施形態では、被検査物Wとして小型のリチウムイオン電池を用いたが、大型の被検査物Wを用いてもよい。この場合、放射線透視画像の解像度をそれほど高める必要がないので、上部または下部の左側及び右側を一つの放射線透視画像に収まるように撮像してもよい。また、被検査物Wは電池に限定されるものではなく、正極板と負極板とを円筒状に巻回した構造を含むキャパシタの検査にも使用できる。また、巻回される複数の素材は、電池やキャパシタの正極板と負極板に限られない。例えば、単なる金属フィルムなどでも良い。さらに、被検査物Wは、巻回構造を有する電子部品に限らない。複数の検査対象個所を有する物品であれば、上記実施形態と同様の検査を行うことが出来る。
【0049】
(4)上記実施形態では、2組の放射線発生器2及び放射線検出器3を用いたが、1組でも良い。1組で複数個所を撮像する場合は2組で撮像する場合に比して時間がかかるので、搬送速度を遅くすることが好ましい。また、1組で複数個所を撮像する場合、上述の巻回構造の対称性を利用することにより、被検査物Wの2個所、すなわち上部及び下部、または左側及び右側を撮像するだけでも良い。
【0050】
(5)上記実施形態では、2組の放射線発生器2及び放射線検出器3を用いたが、放射線ビームを照射する個所の数だけ設けてもよい。例えば、上記実施形態のように被検査物Wの4か所に放射線ビームを照射する場合、4組の放射線発生器2及び放射線検出器3を設けてもよい。これにより、1組で1か所を撮像するだけでよいので、被検査物Wの検査速度をさらに向上させることが出来る。
【0051】
(6)上記実施形態では、不良品と見做された被検査物Wを移載装置131により回収コンベアに載せて回収箱に回収させてもよいものとしたが、移載装置131から搬入装置12へと延びる図示しない再投入コンベアに載せて搬入装置12に再投入し、さらに回転搬送装置11に移載して再検査を行ってもよい。
【0052】
(7)上記実施形態の被検査物Wを搬送する搬送機構1は、回転搬送装置11の代わりに直線状のコンベアを搬送装置として含んで構成されてもよい。
【0053】
(8)上記実施形態の被検査物WはホルダーHに載置された状態で搬送されたが、ホルダーHを介さずに直接搬送されても良い。
【符号の説明】
【0054】
100…非破壊検査装置
1…搬送機構
11…回転搬送装置
111…テーブル
112…保持部
113…凹部
12…搬入装置
121…移載装置
13…搬出装置
131…移載装置
2…放射線発生器
3…放射線検出器
4…遮蔽箱
41…搬入口
42…搬出口
9…制御部
91…撮像指令部
92…記憶部
93…判定部
H…ホルダー
N…負極板
P…正極板
T…タブ
W…被検査物