(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】シースの接続構造
(51)【国際特許分類】
E04C 5/10 20060101AFI20240509BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
E04C5/10
E04G21/12 104D
(21)【出願番号】P 2020114731
(22)【出願日】2020-07-02
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】中積 健一
(72)【発明者】
【氏名】川村 剛史
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 一治
(72)【発明者】
【氏名】阪井 光尚
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-148141(JP,A)
【文献】特開2017-040112(JP,A)
【文献】特開2018-123672(JP,A)
【文献】特開2003-301560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/00-5/20
E04G 21/12
E01D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のコンクリート部材(1)に埋設される筒状の第1シース(20)と、
第2のコンクリート部材(2)に埋設される筒状の第2シース(30)と、
前記第1シース(20)及び前記第2シース(30)を接続する筒状の中間シース(40)と、
前記第1シース(20)の内面に設けられ、筒軸を通る任意の縦断面で筒軸に平行であり、前記第1シース(20)と前記中間シース(40)とを筒軸方向に沿って相対移動可能に保持する第1平坦内面部(24)と、
前記第1平坦内面部(24)の奥側の端部に設けられ前記中間シース(40)の侵入を規制するストッパ部(25)と、
前記中間シース(40)が前記ストッパ部(25)により侵入を規制された状態で、前記第2シース(30)側への前記中間シース(40)の移動を規制する保持手段(60)と
、を備え、
前記第1シース(20)は、その内面が前記第1平坦内面部(24)を形成する筒状部材(23)と、前記筒状部材(23)を外側から保持する断面拡大部(22)と、前記断面拡大部(22)に接続され前記断面拡大部(22)の内面よりも小断面の内面を有する一般部(21)と、を備え、
前記ストッパ部(25)は、前記断面拡大部(22)の内面と前記一般部(21)の内面との間に設けられた段部又はテーパ部であるシースの接続構造。
【請求項2】
第1のコンクリート部材(1)に埋設される筒状の第1シース(20)と、
第2のコンクリート部材(2)に埋設される筒状の第2シース(30)と、
前記第1シース(20)及び前記第2シース(30)を接続する筒状の中間シース(40)と、
前記第1シース(20)の内面に設けられ、筒軸を通る任意の縦断面で筒軸に平行であり、前記第1シース(20)と前記中間シース(40)とを筒軸方向に沿って相対移動可能に保持する第1平坦内面部(24)と、
前記第1平坦内面部(24)の奥側の端部に設けられ前記中間シース(40)の侵入を規制するストッパ部(25)と、
前記中間シース(40)が前記ストッパ部(25)により侵入を規制された状態で、前記第2シース(30)側への前記中間シース(40)の移動を規制する保持手段(60)と
、を備え、
前記保持手段(60)は、前記中間シース(40)の外周にねじ結合されて筒軸回りに回転させることで前記中間シース(40)に対して筒軸方向へ相対移動するナット(42)を備えているシースの接続構造。
【請求項3】
第1のコンクリート部材(1)に埋設される筒状の第1シース(20)と、
第2のコンクリート部材(2)に埋設される筒状の第2シース(30)と、
前記第1シース(20)及び前記第2シース(30)を接続する筒状の中間シース(40)と、
前記第1シース(20)の内面に設けられ、筒軸を通る任意の縦断面で筒軸に平行であり、前記第1シース(20)と前記中間シース(40)とを筒軸方向に沿って相対移動可能に保持する第1平坦内面部(24)と、
前記第1平坦内面部(24)の奥側の端部に設けられ前記中間シース(40)の侵入を規制するストッパ部(25)と、
前記中間シース(40)が前記ストッパ部(25)により侵入を規制された状態で、前記第2シース(30)側への前記中間シース(40)の移動を規制する保持手段(60)と
、を備え、
前記中間シース(40)は、前記第2シース(30)に接続される筒状の本体部(41)と、前記本体部(41)に接続される筒状の延長部(48)とを備え、
前記本体部(41)の内面に、筒軸を通る任意の縦断面で筒軸に平行であり、前記本体部(41)と前記延長部(48)とを筒軸方向に沿って相対移動可能に保持する中間平坦内面部(44)を備えているシースの接続構造。
【請求項4】
前記第2シース(30)の内面に、筒軸を通る任意の縦断面で筒軸に平行であり、前記保持手段(60)による前記中間シース(40)の侵入の規制が解除された状態で、前記第2シース(30)と前記中間シース(40)とを筒軸方向に沿って相対移動可能に保持する第2平坦内面部(34)を備えている請求項1
から3のいずれか一つに記載のシースの接続構造。
【請求項5】
前記中間シース(40)の外面に、前記第1平坦内面部(24)及び前記第2平坦内面部(34)にそれぞれ摺接するシール部材(43a,43b)を備えている請求項
4に記載のシースの接続構造。
【請求項6】
前記シール部材(43a,43b)は、水膨張性能を有している素材である請求項
5に記載のシースの接続構造。
【請求項7】
前記保持手段(60)は、前記第2シース(30)と前記中間シース(40)とを筒軸方向へ相対移動可能にねじ結合するねじ部(37a,41a)を備えている請求項1
から6のいずれか一つに記載のシースの接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シースの接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、工場や専用のヤード等において予めコンクリート部材を製作し、そのコンクリート部材を現場に運搬して一体化する工法がある。この工法はプレキャスト工法と呼ばれ、各種建築物をはじめ、橋梁、床版、地下構造物、その他各種土木構造物にも用いられている。このプレキャスト工法によって構築された構造をプレキャスト構造という。
【0003】
プレキャスト工法で用いられるコンクリート部材には、PC鋼材挿通用の管であるシースが埋設されている。コンクリート部材を現場に搬入し、互いに隣接するコンクリート部材のシース同士を接続して、その内部にPC鋼材を挿通してプレストレスを導入する。その後、シースの内部にモルタル等の充填剤を流し込んで、コンクリート部材同士を一体化している。
【0004】
シース同士の接続は、一方のコンクリート部材のシースと他方のコンクリート部材のシースとが、中間の接続用シースによって接続されているものが一般的である。例えば、特許文献1では、中間の接続用シースとして用いられる間詰シースの外周に、一対の筒状パッキンを摺動自在としたものを採用している。一対の筒状パッキンの外周面は、それぞれ外端方向を肉薄とし対向方向を肉厚としたテーパ状であり、そのテーパ状の外周面が、両側のコンクリート部材(第1の橋桁及び第2の橋桁)に埋設されたシース(シース本体)の内面に隙間なく密着するようになっている。
【0005】
また、例えば、特許文献2では、中間の接続用シースとして用いられる内継ぎシースが、その外面に螺旋を有しており、内継ぎシースの外面の螺旋に螺合する定着駒を、コンクリート部材(コンクリートユニット)の対向面に圧接して、内継ぎシースがコンクリート部材に埋設されたシース(外シース)に接続されている。また、例えば、特許文献3では、中間の接続用シースとして用いられるシース用継手を、一方のコンクリート部材(コンクリート床版)のシースに連結される第1接続管と、他方のコンクリート部材(コンクリート床版)のシースに連結される第2接続管とで構成している。そして、第1接続管と第2接続管の端部同士を、互いに管軸方向に移動可能な状態で嵌合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特公平6-39764号公報
【文献】特開平11-343702号公報
【文献】特開2003-301560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2に示すシースの接続構造では、テーパ状の外面を有する筒状パッキンや、特殊な形状を有する定着駒など、いずれも特殊な形状を有する専用部品を製作する必要がある。専用部品を用いることは、コスト高に繋がるので改善の余地がある。また、特許文献3に示すシースの接続構造では、専用部品への依存は少ないといえる。しかし、隣接するコンクリート部材同士の隙間が場所に応じて異なる状況で、作業中に接続用のシース用継手がコンクリート部材のシースの内部にどの程度入り込んでいるのかがわかりにくいという問題がある。
【0008】
そこで、この発明の課題は、できる限り簡素な構成で且つ簡単な作業で、コンクリート部材に埋設されるシース同士を接続できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、この発明は、第1のコンクリート部材に埋設される筒状の第1シースと、第2のコンクリート部材に埋設される筒状の第2シースと、前記第1シース及び前記第2シースを接続する筒状の中間シースと、前記第1シースの内面に設けられ、筒軸を通る任意の縦断面で筒軸に平行であり、前記第1シースと前記中間シースとを筒軸方向に沿って相対移動可能に保持する第1平坦内面部と、前記第1平坦内面部の奥側の端部に設けられ前記中間シースの侵入を規制するストッパ部と、前記中間シースが前記ストッパ部により侵入を規制された状態で、前記第2シース側への前記中間シースの移動を規制する保持手段と、を備えているシースの接続構造を採用した。
【0010】
ここで、前記第1シースは、その内面が前記第1平坦内面部を形成する筒状部材と、前記筒状部材を外側から保持する断面拡大部と、前記断面拡大部に接続され前記断面拡大部の内面よりも小断面の内面を有する一般部と、を備え、前記ストッパ部は、前記断面拡大部の内面と前記一般部の内面との間に設けられた段部又はテーパ部である構成を採用することができる。
【0011】
これらの各態様において、前記第2シースの内面に、筒軸を通る任意の縦断面で筒軸に平行であり、前記保持手段による前記中間シースの侵入の規制が解除された状態で、前記第2シースと前記中間シースとを筒軸方向に沿って相対移動可能に保持する第2平坦内面部を備えている構成を採用することができる。
【0012】
このとき、前記中間シースの外面に、前記第1平坦内面部及び前記第2平坦内面部にそれぞれ摺接するシール部材を備えている構成を採用することができる。また、前記シール部材は、水膨張性能を有している素材である構成を採用することができる。
【0013】
これらの各態様において、前記保持手段は、前記中間シースの外周にねじ結合されて筒軸回りに回転させることで前記中間シースに対して筒軸方向へ相対移動するナットを備えている構成を採用することができる。
【0014】
また、前記保持手段は、前記第2シースと前記中間シースとを筒軸方向へ相対移動可能にねじ結合するねじ部を備えている構成を採用することができる。
【0015】
さらに、前記中間シースは、前記第2シースに接続される筒状の本体部と、前記本体部に接続される筒状の延長部とを備え、前記本体部の内面に、筒軸を通る任意の縦断面で筒軸に平行であり、前記本体部と前記延長部とを筒軸方向に沿って相対移動可能に保持する中間平坦内面部を備えている構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、簡素な構成で且つ簡単な作業で、コンクリート部材に埋設されるシース同士を接続できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明の第1の実施形態を示し、中間シースを第2シースに挿入した状態を示す縦断面図
【
図2】同実施形態を示し、中間シースを第1シースに挿入した状態を示す縦断面図
【
図3】同実施形態を示し、保持手段を第2シース側に締め付けた状態を示す縦断面図
【
図6】この発明の第2の実施形態を示し、中間シースを第2シースに挿入した状態を示す縦断面図
【
図7】同実施形態を示し、中間シースを第1シースに挿入した状態を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。この実施形態は、プレキャスト工法で使用されるコンクリート部材(プレキャストコンクリート)に埋設されるシース同士を接続するシースの接続構造10及びその接続工法について説明する。この実施形態のシースの接続構造10は、隣接する第1のコンクリート部材1及び第2のコンクリート部材2を一体化するために用いられるものである。実施形態では、隣り合う2つのコンクリート部材を接続するものであるが、並列する3つ以上のコンクリート部材を接続するものであってもよい。
【0019】
第1の実施形態を
図1~
図5に示す。第1のコンクリート部材1には筒状の第1シース20が埋設されている。また、第2のコンクリート部材2には筒状の第2シース30が埋設されている。また、第1シース20と第2シース30とを接続するために、筒状の中間シース40が用いられる。各シースの素材は、コンクリートの打ち込みの際に変形しにくく、その継目からセメントペーストが流入しないものが好ましく、例えば、ポリエチレン等の可撓性のある軟質樹脂が多用される。また、シースには、その内部をPC鋼材が通過し得る断面形状を有する筒状体(チューブ)が採用され、この実施形態のように、通常は円形断面のものが用いられる。
【0020】
第1シース20は、
図1に示すように、筒軸を通る任意の縦断面で筒軸に平行である第1平坦内面部24と、その第1平坦内面部24の奥側の端部に設けられるストッパ部25とを備えている。第1平坦内面部24は、金属製又は硬質樹脂製の筒状部材23の内面で構成されている。筒状部材23は断面円形であるので、第1平坦内面部24は円筒面である。また、第1シース20は、筒状部材23を外側から保持する断面拡大部22と、その断面拡大部22に接続されて、断面拡大部22の内面よりも小断面の内面を有する一般部21を備えている。一般部21も断面円形であるが、その強度を高めるために一般部21の全周に螺旋状のリブ21aが設けられている。一般部21と断面拡大部22は可撓性のある樹脂の成型品である。断面拡大部22は、筒状部材23の圧入によって一般部21よりも外径側へ膨出した形状となっている。ストッパ部25は、断面拡大部22の内面と一般部21の内面との間に設けられた段部で構成されている。断面拡大部22の外面と一般部21の外面との間は、両者を取り付けるテーパ面26となっている。第1シース20は、断面拡大部22の開口側の端縁が、第1のコンクリート部材1の端面(対向面)1aと面一になるように、第1のコンクリート部材1を構成するコンクリートC内に埋設されている。なお、この実施形態では、ストッパ部25を、断面拡大部22の内面と一般部21の内面との間に設けられた段部で構成しているが、これを断面拡大部22の内面と一般部21の内面との間に設けられたテーパ部等としてもよい。
【0021】
また、第2シース30は、
図1に示すように、筒軸を通る任意の縦断面で筒軸に平行である第2平坦内面部34を備えている。第2平坦内面部34は、金属製又は硬質樹脂製の筒状部材33の内面で構成されている、筒状部材33は断面円形であるので、第2平坦内面部34は円筒面である。また、第2シース30は、筒状部材33を外側から保持する断面拡大部32と、その断面拡大部32に接続されて、断面拡大部32の内面よりも小断面の内面を有する一般部31とを備えている。一般部31及び断面拡大部32は断面円形であるが、その強度を高めるためにそれぞれの全周に螺旋状のリブ31aが設けられている。一般部31と断面拡大部32は可撓性のある樹脂の成型品である。断面拡大部32は、筒状部材33の圧入によって一般部31よりも外径側へ膨出した形状となっている。第2シース30には、断面拡大部32の内面と一般部31の内面との間にストッパ部38が設けられている。ストッパ部38は、第1シース20の場合と同様に、段部又はテーパ部等で構成することができる(実施形態ではストッパ部38をテーパ部で構成している)。断面拡大部32の外面と一般部31の外面との間は、両者を取り付けるテーパ面36となっている。第2シース30は、断面拡大部32の開口側の端縁が、第2のコンクリート部材2の端面(対向面)2a側に開口するように、第2のコンクリート部材2を構成するコンクリートC内に埋設されている。なお、上記の断面拡大部22,32における筒状部材23,33の圧入は、樹脂等の構成素材を加熱した後に行うことで容易に可能である。
【0022】
第2のコンクリート部材2には、第2シース30の開口部付近に、対向面2aに開口する作業用空間(切り欠き空間)3が設けられている。作業用空間3は、対向面2aから第2シース30の奥側へ向かって奥端面3aに至っている。第2シース30の断面拡大部32の開口側の端縁は、第2のコンクリート部材2の作業用空間3の奥端面3aと面一になっている。
【0023】
中間シース40は、その全長に亘って本体部41を備えている。本体部41は断面円形であるが、同じくその強度を高めるためにそれぞれの全周に螺旋状のリブ41aが設けられている。また、中間シース40は、その外周にねじ結合されているナット42を備えている。ナット42の内周の雌ねじが、本体部41の外周のリブ41a(雄ねじ)にねじ合っているので、ナット42を筒軸回りに回転させることでナット42は中間シース40に対して筒軸方向へ相対移動する。このナット42は、後述の保持手段60として機能する。本体部41及びナット42は樹脂の成型品である。このナット42は本体部41の外周にねじ合うものであればよく、例えば、ナット42として、第1シース20や第2シース30の一般部21,31の部材を、筒軸方向に対して所定の長さに切断したものを用いることができる。これにより、既存の部材を活用してナット42を製作できるので、コストダウンを図ることができる。
【0024】
中間シース40の外面には、その中間シース40が第1シース20及び第2シース30内に挿入された状態で、第1平坦内面部24及び第2平坦内面部34にそれぞれ摺接するシール部材43a,43bを備えている。シール部材43a,43bの素材は、シース内に充填されるモルタル等のグラウトが外部に漏れ出ないように、樹脂やゴム、不織布、フェルト等、ある程度の水密性を発揮するものが望ましい。特に、シール部材43a,43bの素材として、水分を含むことによりその体積が膨張する水膨張性能を有している素材(例えば、水膨張性能を有する不織布シール材)を採用すれば、その水密性をさらに高めることができる。
【0025】
この第1シース20、第2シース30及び中間シース40を用いたシースの接続構造10、シースの接続方法、コンクリート部材の一体化方法について説明する。
図1に示すように、第1シース20が埋設される第1のコンクリート部材1と、第2シース30が埋設される第2のコンクリート部材2とが、対向面1a,2a間の所定の隙間を介して隣接した状態である。この隙間の大きさは、現場の状況に応じて適宜増減する。第1シース20と第2シース30は、その筒軸が同一直線上になるように配置されている。
【0026】
まず、
図1に示すように、中間シース40の他端46を、第2シース30内に挿入する。このとき、第2平坦内面部34は、全周に亘って筒軸に平行な母線を有する円筒面で構成されているので、第2シース30と中間シース40との筒軸方向への相対移動可能がスムーズである。すなわち、第2平坦内面部34は、第2シース30と中間シース40とを筒軸方向に沿って相対移動可能に保持している。また、第2平坦内面部34には中間シース40のシール部材43bが摺動するので、その相対移動が案内されている。中間シース40の他端46は、第2平坦内面部34の奥端部に合致する位置まで挿入される。なお、このときナット42の押圧端面42aは、作業用空間3の奥端面3aよりも対向面2a側にあり、保持手段60による侵入の規制は解除された状態である。ここで、中間シース40は、その他端46がストッパ部38に当たることでそれ以上の挿入が規制されるので、中間シース40が過度に第2シース30の内部に入り込むことが防止されている。なお、第2シース30側のストッパ部38の設置は、必要に応じて省略することが可能である。
【0027】
つぎに、
図2に示すように、中間シース40の一端45を、第1シース20内に挿入する。この挿入は、作業用空間3内に作業者が手や工具等を入れて、中間シース40を図中の矢印のように、第1シース20側へ引っ張ることにより可能である。第1のコンクリート部材1と第2のコンクリート部材2との間には、このような作業者が手や工具等を入れることができる空間が確保されている。このとき、第1平坦内面部24は、全周に亘って筒軸に平行な母線を有する円筒面で構成されているので、第1シース20と中間シース40との筒軸方向への相対移動がスムーズである。すなわち、第1平坦内面部24は、第1シース20と中間シース40とを筒軸方向に沿って相対移動可能に保持している。また、第1平坦内面部24には中間シース40のシール部材43aが摺動するので、その相対移動が案内されている。中間シース40の一端45は、第1平坦内面部24の奥部のストッパ部25に当接する位置まで挿入される。ストッパ部25が中間シース40の筒軸方向への位置決めを行うので、作業が容易である。
【0028】
そして、
図3に示すように、ナット42を筒軸回りに回転させて第2シース30側へ移動させる。ナット42の押圧端面42aが、作業用空間3の奥端面3aに当接すれば、中間シース40はそれ以上第2シース30側へは移動できない状態となる。これにより、保持手段60による中間シース40の第2シース30内への侵入の規制が行われる。これにより、中間シース40は、ストッパ部25により第1シース20側へのそれ以上の侵入が規制された状態であり、また、保持手段60により、第2シース30側への移動が規制された状態となる。このため、中間シース40は、第1シース20と第2シース30のそれぞれにしっかりと固定された状態となる。ナット42の押圧端面42aが奥端面3aに当接するまでナット42を回せばよいので、締め付け不足や締め付け過ぎが生じにくく、その作業が容易である。
【0029】
このように、中間シース40を介して第1シース20と第2シース30とを接続した後、その内部にPC鋼材を挿通してプレストレスを導入する。プレストレスの導入は、第1のコンクリート部材1と第2のコンクリート部材2に反力を取って、PC鋼材を引っ張る(緊張する)ことにより行うことができる。PC鋼材を緊張状態に固定した後、シースの内部にモルタル等の充填材を流し込んで、充填材を硬化させることでPC鋼材とコンクリートCとの付着力を高め、第1のコンクリート部材1と第2のコンクリート部材2を一体化する。このとき、第1平坦内面部24には中間シース40のシール部材43aが、第2平坦内面部34には中間シース40のシール部材43bがそれぞれ密着しているので、充填材の漏出を抑えることができる。
【0030】
なお、
図4及び
図5に示す変形例のように、操作手段50を用いることもできる。
図4における操作手段50は、中間シース40を図中の矢印のように、第1シース20側へ引っ張るための引張り手段51である。引張り手段51には、樹脂や金属などからなる紐状部材、ワイヤ、帯状部材その他変形可能な素材からなる長手状部材を採用することができる。
図5における操作手段50は、ナット42を筒軸回りに回転させる引張り手段52である。ナット42を筒軸回りに回転させることで、ナット42を第2シース30側へ移動させることができる。引張り手段52には、樹脂や金属などからなる紐状部材、ワイヤ、帯状部材、その他変形可能な素材からなる長手状部材を採用することができる。作業用空間3内に作業者が手や工具等を入れることができない場合は、このような操作手段50が有効である。特に、
図4及び
図5に示すように、作業用空間3の側面3bが中間シース40の外面に接近している場合に便利である。
【0031】
この発明の第2の実施形態を、
図6及び
図7に示す。以下、この実施形態を、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0032】
第1シース20は、
図6に示すように、第1平坦内面部24と、その第1平坦内面部24の奥側の端部に設けられるストッパ部25とを備えている。第1平坦内面部24は、断面拡大部22を構成する樹脂の内面で構成されているが、これを第1の実施形態と同様に、金属製又は硬質樹脂製の筒状部材23の内面で構成してもよい。第2シース30は、一般部31と、その一般部31の開口側の端部に接続される延長筒部37で構成している。一般部31の外面及び延長筒部37の内面にはそれぞれ螺旋状のリブ31a,37aが形成されているので、そのリブ31a,37aをねじ部として、延長筒部37は一般部31の開口側の端部の外周にねじ結合されている。延長筒部37は、樹脂の成型品である。
【0033】
中間シース40は、第2シース30に接続される筒状の本体部41と、本体部41に接続される筒状の延長部48とを備えている。本体部41は、一端側に設けられた断面拡大部47bと、その断面拡大部47bの他端に接続されて、断面拡大部47bの内面よりも小断面の内面を有する一般部47aとを備えている。断面拡大部47bの内面に、筒軸を通る任意の縦断面で筒軸に平行であり、本体部41と延長部48とを筒軸方向に沿って相対移動可能に保持する中間平坦内面部44を備えている。中間平坦内面部44は、断面拡大部47bを構成する樹脂の内面で構成されているが、これを第1の実施形態と同様に、金属製又は硬質樹脂製の筒状部材の内面で構成してもよい。
【0034】
まず、
図6に示すように、中間シース40の他端46を、第2シース30内に挿入する。この挿入は、延長筒部37のリブ(ねじ部)37aを雌ねじとし、中間シース40の本体部41のリブ(ねじ部)41aを雄ねじとして、延長筒部37の開口側の端部の内周に中間シース40をねじ込んでいくことで行うことができる。このとき、中間平坦内面部44は、全周に亘って筒軸に平行な母線を有する円筒面で構成されているので、本体部41と延長部48との接続範囲(重複範囲)が筒軸方向に長くなって、その接続がより確実である。また、中間平坦内面部44は、本体部41と延長部48とを筒軸方向に沿って相対移動可能に保持しているので、その抜き差しが容易である。また、中間平坦内面部44には延長部48の外周全周に設けたOリング48aが摺接するので、その相対移動が案内されている。
【0035】
つぎに、
図7に示すように、中間シース40の一端45を、第1シース20内に挿入する。この挿入は、同じく、中間シース40を筒軸回りに回転させて、本体部41と延長部48とを第1シース20側へ移動させることにより可能である。第2シース30の延長筒部37と、中間シース40の本体部41とは、ねじ部37a,41a同士のねじ結合によって筒軸方向へ相対移動可能であるが、延長筒部37と本体部41とを筒軸方向へ相反する方向へ引っ張っても、対向する方向へ押し込んでも、両者は相対移動できない。このため、ねじ部37a,41a同士のねじ結合が、保持手段60として機能している。
【0036】
また、第1平坦内面部24は、全周に亘って筒軸に平行な母線を有する円筒面で構成されているので、第1シース20と延長部48との筒軸方向への相対移動がスムーズである。すなわち、第1平坦内面部24は、第1シース20と中間シース40の延長部48とを筒軸方向に沿って相対移動可能に保持している。また、第1平坦内面部24には延長部48のOリング48aが摺接するので、その相対移動が案内されている。中間シース40の一端45は、第1平坦内面部24の奥部のストッパ部25に当接する位置まで挿入される。ストッパ部25が中間シース40の筒軸方向への位置決めを行うので、作業が容易である。これにより、中間シース40は、ストッパ部25により第1シース20側へのそれ以上の侵入が規制された状態であり、また、保持手段60により、第2シース30側への移動が規制された状態となる。このため、中間シース40は、第1シース20と第2シース30のそれぞれにしっかりと固定された状態となる。さらに、中間シース40の一端45、すなわち延長部48の一端45がストッパ部25に当接し、延長部48の他端48bが奥端面49に当接するまで中間シース40の本体部41を回せばよいので、締め付け不足や締め付け過ぎが生じにくく、その作業が容易である。
【0037】
中間シース40を介して第1シース20と第2シース30とを接続した後、その内部にPC鋼材を挿通してプレストレスを導入する。さらに、シースの内部にモルタル等の充填材を流し込んで、充填材を硬化させる。このとき、第1平坦内面部24には中間シース40の延長部48のOリング48aが、中間平坦内面部44にも延長部48のOリング48aがそれぞれ密着しているので、充填材の漏出を抑えることができる。なお、このOリング48aに代えて、樹脂やゴム、不織布、フェルト等のシール部材を採用でき、さらにそのシール部材の素材として、前述の実施形態と同様に、水分を含むことによりその体積が膨張する水膨張性能を有している素材(例えば、水膨張性能を有する不織布シール材)を採用することができる。
【0038】
なお、上記の第2の実施形態において、延長筒部37を用いずに、第2シース30を全長に亘って一般部31としてもよい。このとき、一般部31が作業用空間3の奥端面3aに開口し、その一般部31の内部に中間シース40がねじ結合される形態となる。この第2の実施形態において、第1の実施形態で用いた操作手段50を用いることもできる。
【符号の説明】
【0039】
1 第1のコンクリート部材
2 第2のコンクリート部材
10 シースの接続構造
20 第1シース
21 一般部
22 断面拡大部
24 第1平坦内面部
25 ストッパ部
30 第2シース
31 一般部
34 第2平坦内面部
37a ねじ部
40 中間シース
41 本体部
41a ねじ部
43a,43b シール部材
44 中間平坦内面部
48 延長部
50 操作手段
60 保持手段