(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】X線CT装置、X線CT装置の制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
A61B6/03 531
A61B6/03 550H
(21)【出願番号】P 2020144450
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 莉紗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 庸次郎
(72)【発明者】
【氏名】天生目 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】川鍋 信哉
(72)【発明者】
【氏名】東 良亮
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-291727(JP,A)
【文献】特開2020-000450(JP,A)
【文献】特開2005-161078(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0140874(US,A1)
【文献】国際公開第2018/169086(WO,A1)
【文献】特開2006-141999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転しながらX線を照射するX線管と、
前記X線管から照射されるX線を検出するX線検出器と、
前記X線管および前記X線検出器を、前記X線管の回転中心を中心として回転させる回転部と、
前記回転部内に存在し、前記X線管またはX線検出器のうち一方または双方を移動させる駆動装置と、
所定の場合に、前記駆動装置に、前記X線管またはX線検出器のうち一方または双方を前記回転の径方向と交差する方向に移動させる駆動制御部と、を備
え、
前記駆動装置は、前記X線検出器を移動させることで、前記X線検出器の回転時の周方向に関する中心部の軌跡の曲率を変更し、変更後の前記X線検出器の検出面の中心が前記X線管の中心を向いた配置となるように、前記X線管または前記X線検出器を所定角度傾かせる、
X線CT装置。
【請求項2】
前記X線管またはX線検出器のうち一方または双方を第1の配置とした状態で撮像を行うことで被検体の第1の範囲の第1の画像を得る制御と、前記X線管またはX線検出器のうち一方または双方を第2の配置とした状態で撮像を行うことで被検体の前記第1の範囲とは異なる第2の範囲の第2の画像を得る制御とを行う制御部を、更に備える、
請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記駆動装置は、前記X線管またはX線検出器のうち一方または双方を移動させることで、前記X線管と、前記回転中心と、前記X線検出器の
回転時の周方向に関する中心とが、同一直線上とならない状態にする、
請求項1または2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記回転部は、前記X線管および前記X線検出器を、前記回転中心を中心として回転させる回転支持部と、前記回転支持部、前記X線管、前記X線検出器、および前記駆動装置を収容するガントリとを含み、
前記駆動装置は、前記ガントリに接触しない範囲で前記X線管または前記X線検出器のうち一方または双方を移動させる、
請求項1から3のうち何れか1項に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記X線による被検体の撮影範囲を決定する撮影範囲決定部を更に備え、
前記所定の場合は、前記撮影範囲決定部により決定された撮影範囲に基づいて、前記X線管または前記X線検出器のうち一方または双方を移動させる必要がある場合である、
請求項1から
4のうち何れか1項に記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記被検体を撮像した画像を取得する取得部を更に備え、
前記撮影範囲決定部は、前記取得部により取得された画像から得られる被検体の形状と、前記X線管から前記X線検出器までの距離と、前記X線検出器のチャネルの位置とに基づいて、前記撮影範囲を決定する、
請求項
5に記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記駆動制御部は、前記撮影範囲決定部により決定された撮影範囲に撮影対象範囲が含まれるように、前記X線検出器を、前記X線検出器に配列された複数のチャネルの配列方向に沿って移動させる、
請求項
5または
6に記載のX線CT装置。
【請求項8】
被検体に光を投射する投光器を更に備え、
前記所定の場合は、前記投光器により前記被検体に照射された光の照射範囲に基づいて、前記X線管または前記X線検出器のうち一方または双方を移動させる必要があると判定された場合である、
請求項1から
7のうち何れか1項に記載のX線CT装置。
【請求項9】
被検体を撮像する撮像装置を更に備え、
前記所定の場合は、前記撮像装置により撮像された前記被検体を含む画像に基づいて、前記X線管または前記X線検出器のうち一方または双方を移動させる必要があると判定された場合である、
請求項1から
8のうち何れか1項に記載のX線CT装置。
【請求項10】
前記所定の場合は、被検体の撮影情報に基づいて、前記X線管または前記X線検出器のうち一方または双方を移動させる必要があると判定された場合である、
請求項1から
9のうち何れか1項に記載のX線CT装置。
【請求項11】
前記駆動装置は、前記X線による撮影範囲の撮影が終了した後、前記X線管および前記X線検出器を移動させる前の位置に戻す、
請求項1から
10のうち何れか1項に記載のX線CT装置。
【請求項12】
前記駆動装置は、更に前記X線管から照射されるX線の照射範囲を調整するコリメータを駆動させ、
前記駆動制御部は、前記X線管または前記X線検出器のうち一方または双方を移動させた後、前記X線管によって照射されるX線が前記X線検出器の存在する範囲に照射されるように前記コリメータを移動させる、
請求項1から
11のうち何れか1項に記載のX線CT装置。
【請求項13】
回転しながらX線を照射するX線管と、前記X線管から照射されるX線を検出するX線検出器と、前記X線管および前記X線検出器を、前記X線管の回転中心を中心として回転させる回転部と、前記回転部内に存在し、前記X線管またはX線検出器のうち一方または双方を移動させる駆動装置と、を備えるX線CT装置のコンピュータが、
所定の場合に、前記駆動装置に、前記X線管またはX線検出器のうち一方または双方を前記回転の径方向と交差する方向に移動さ
せ、
前記駆動装置に、前記X線検出器を移動させることで、前記X線検出器の回転時の周方向に関する中心部の軌跡の曲率を変更させ、変更後の前記X線検出器の検出面の中心が前記X線管の中心を向いた配置となるように、前記X線管または前記X線検出器を所定角度傾かせる、
X線CT装置の制御方法。
【請求項14】
回転しながらX線を照射するX線管と、前記X線管から照射されるX線を検出するX線検出器と、前記X線管および前記X線検出器を、前記X線管の回転中心を中心として回転させる回転部と、前記回転部内に存在し、前記X線管またはX線検出器のうち一方または双方を移動させる駆動装置と、を備えるX線CT装置のコンピュータに、
所定の場合に、前記駆動装置に、前記X線管またはX線検出器のうち一方または双方を前記回転の径方向と交差する方向に移動さ
せ、
前記駆動装置に、前記X線検出器を移動させることで、前記X線検出器の回転時の周方向に関する中心部の軌跡の曲率を変更させ、変更後の前記X線検出器の検出面の中心が前記X線管の中心を向いた配置となるように、前記X線管または前記X線検出器を所定角度傾かせる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線CT装置、X線CT装置の制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、X線管とX線検出器の対を被検体周りに高速回転させながら撮影されたデータを再構成して被検体の断層画像を生成するX線CT(Computed Tomography)装置が知られている。また、X線検出器を構成するX線検出素子を増加させずに画像化可能な領域を広くするため、データ補正を行ったり、非対称検出器を用いて撮影を行うX線CT装置が知られている。非対称検出器は、X線検出素子がX線管の焦点とガントリ(gantry)の回転中心とを通る延長線を軸に、チャネル(channel)方向に対して非対称となるよう配設されたX線検出器である。非対称検出器を用いるX線CT装置では、ガントリを回転させてフルスキャン(full scan)することにより、画像化可能な領域を、X線検出素子が非対称検出器の最外郭のチャネルまでが対象となるX線検出器を用いる場合と同等の領域にまで広げることができる。なお、非対称検出器の場合にも、X線検出素子とX線管との位置や角度の関係から画質補正処理が必要となる。
【0003】
しかしながら、画像化可能な領域を広げるためのデータ補正を行った場合には、補正を行わない場合に比して画質が劣化する可能性がある。また、非対称検出器が用いられる場合には、予めX線検出器とX線管とが非対称の位置で固定されるため、広げられる領域も固定されてしまっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-114211号公報
【文献】国際公開第2013/161443号
【文献】特開2010-46102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、再構成画像の画質の低下を抑制しつつ、画像化可能な領域を広げることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のX線CT装置は、X線管と、X線検出器と、回転部と、駆動装置と、駆動制御部とを持つ。X線管は、回転しながらX線を照射する。X線検出器は、前記X線管から照射されるX線を検出する。回転部は、前記X線管および前記X線検出器を、前記X線管の回転中心を中心として回転させる。駆動装置は、前記回転部内に存在し、前記X線管またはX線検出器のうち一方または双方を移動させる。駆動制御部は、所定の場合に、前記駆動装置に、前記X線管またはX線検出器のうち一方または双方を前記回転の径方向と交差する方向に移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態におけるX線CT装置1の一構成例を示す図。
【
図3】画像取得機能51-1について説明するための図。
【
図4】移動量情報41-1の内容について説明するための図。
【
図5】駆動制御機能51-5の制御によりX線検出器が15を移動させることについて説明するための図。
【
図6】X線管11を回転させることについて説明するための図。
【
図7】X線管11を移動させることについて説明するための図。
【
図8】X線検出器の形状が平面検出器である場合の移動方向について説明するための図。
【
図9】X線検出器15#の移動方向について説明するための図。
【
図10】第1の実施形態における再構成画像の生成処理について説明するための図。
【
図12】第1の実施形態におけるX線CT装置により実行される処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図13】第2の実施形態におけるX線CT装置により実行される処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図14】第3の実施形態におけるX線CT装置2の一構成例を示す図。
【
図15】第3の実施形態におけるX線CT装置により実行される処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図16】第4の実施形態におけるX線CT装置3の一構成例を示す図。
【
図17】第4の実施形態におけるX線CT装置3により実行される処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図18】第5の実施形態におけるX線CT装置により実行される処理の流れの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、実施形態のX線CT装置、X線CT装置の制御方法、およびプログラムについて説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態におけるX線CT装置1の一構成例を示す図である。X線CT装置1は、例えば、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを備える。架台装置10は、例えば、X線管11と、ウェッジ12と、コリメータ13と、X線高電圧装置14と、X線検出器15と、データ収集システム(以下、DAS:Data Acquisition System)16と、回転フレーム17と、制御装置18とを有する。回転フレーム17は、「回転部」の一例である。制御装置18は、「制御部」の一例である。
【0010】
X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生させる。X線管11は、真空管を含む。例えば、X線管11は、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管である。X線管11は、X線管11の回転中心を中心として回転しながらX線を照射する。X線管11には、X線管11の位置を、後述する基準位置から所定方向に移動可能な第1駆動装置11Aが取り付けられていてもよい。第1駆動装置11Aは、X線管11の中心からX線管11の焦点を通る照射軸を、基準軸(図中-Y軸方向)から所定角度回転させてもよい。また、第1駆動装置11Aは、X線管11だけでなく、ウェッジ12も含めて上記の所定方向または所定角度に移動させてもよい。
【0011】
ウェッジ12は、X線管11から被検体Pに照射されるX線量を調節するためのフィルタである。ウェッジ12は、X線管11から被検体Pに照射されるX線量の分布が予め定められた分布になるように、自身を透過するX線を減衰させる。ウェッジ12は、ウェッジフィルタ(wedge filter)、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。ウェッジ12は、例えば、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したものである。
【0012】
コリメータ13は、ウェッジ12を透過したX線の照射範囲を絞り込むための機構である。コリメータ13は、例えば、複数の鉛板の組み合わせによってスリットを形成することで、X線の照射範囲を絞り込む。コリメータ13は、X線絞りと呼ばれる場合もある。コリメータ13は、例えばX線を四角錐の形状に絞り込む。そのX線の広がり角のうち、回転フレーム17の回転方向に沿った広がり角をファン角、ファン角に直交する方向の広がり角をコーン角と称する。コリメータ13には、絞り込むX線の照射範囲を動的に変更可能な第2駆動装置13Aが取り付けられていてもよい。コリメータ13と第2駆動装置13Aを合わせたものを「コリメータ装置」と称してもよい。
【0013】
X線高電圧装置14は、例えば、高電圧発生装置と、X線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器(トランス)および整流器等を含む電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生させる。X線制御装置は、X線管11に発生させるべきX線量に応じて高電圧発生装置の出力電圧を制御する。高電圧発生装置は、上述した変圧器によって昇圧を行うものであってもよいし、インバータによって昇圧を行うものであってもよい。
X線高電圧装置14は、回転フレーム17に設けられてもよいし、架台装置10の固定フレーム(不図示)の側に設けられてもよい。
【0014】
X線検出器15は、X線管11が発生させ、被検体Pを通過して入射したX線の強度を検出する。X線検出器15は、検出したX線の強度に応じた電気信号(光信号等でもよい)をDAS18に出力する。X線検出器15は、例えば、複数のX線検出素子列を有する。
図1の例において、X線検出器15は、X線管11の焦点を中心とした円弧状に形成されている。複数のX線検出素子列のそれぞれは、上記円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列されている。X線検出器15は、例えばチャネル方向に複数の検出素子が配列された検出素子列が列方向(スライス方向、row方向)に複数配列された構造を有する。
【0015】
X線検出器15は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。それぞれのシンチレータは、シンチレータ結晶を有する。シンチレータ結晶は、入射するX線の強度に応じた光量の光を発する。グリッドは、シンチレータアレイのX線が入射する面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドは、コリメータ(一次元コリメータまたは二次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、例えば、光電子増倍管(フォトマルチプライヤー:PMT)等の光センサを有する。光センサアレイは、シンチレータにより発せられる光の光量に応じた電気信号を出力する。X線検出器15は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であってもかまわない。光センサまたは半導体素子は、「検出素子」の一例である。
【0016】
また、X線検出器15は、X線検出器15の位置を基準位置から所定方向に移動可能な第3駆動装置15Aが取り付けられていてもよい。ここで、X線管11およびX線検出器15の基準位置とは、例えば、例えば、X線検出器15に配列されたX線検出素子がX線管11の照射軸に、チャネル方向に対して対称となるように位置付けられる位置である。X線管11およびX線検出器15は、基準位置に存在する場合には対称検出器として動作させることができる。また、第3駆動装置15Aは、X線検出器15だけでなく、DAS16も含めて所定方向に移動させてもよい。上述した第1駆動装置11Aおよび第3駆動装置15Aは、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させる。なお、上述した第1駆動装置11A、第2駆動装置13A、および第3駆動装置15Aは、一つの駆動装置として設けられていてもよい。
【0017】
DAS16は、例えば、増幅器と、積分器と、A/D変換器とを有する。増幅器は、X線検出器15の各X線検出素子により出力される電気信号に対して増幅処理を行う。積分器は、増幅処理が行われた電気信号をビュー期間(後述)に亘って積分する。A/D変換器は、積分結果を示す電気信号をデジタル信号に変換する。DAS16は、デジタル信号に基づく検出データをコンソール装置40に出力する。検出データは、生成元のX線検出素子のチャンネル番号、列番号、及び収集されたビューを示すビュー番号により識別されたX線強度のデジタル値である。ビュー番号は、回転フレーム17の回転に応じて変化する番号であり、例えば、回転フレーム17の回転に応じてインクリメントされる番号である。従って、ビュー番号は、X線管11の回転角度を示す情報である。ビュー期間とは、あるビュー番号に対応する回転角度から、次のビュー番号に対応する回転角度に到達するまでの間に収まる期間である。DAS16は、ビューの切り替わりを、制御装置18から入力されるタイミング信号によって検知してもよいし、内部のタイマーによって検知してもよいし、図示しないセンサから取得される信号によって検知してもよい。例えば、フルスキャンを行う場合においてX線管11によりX線が連続曝射されている場合、DAS16は、例えば、全周囲分(360度分)の検出データ群を収集する。ハーフスキャンを行う場合においてX線管11によりX線が連続曝射されている場合、DAS16は、半周囲分(180度分)の検出データを収集する。
【0018】
回転フレーム17は、X線管11、ウェッジ12、およびコリメータ13と、X線検出器15とを、対向保持した状態で回転させる円環状の回転部材である。回転フレーム17は、例えば、X線管11、ウェッジ12、およびコリメータ13と、X線検出器15とをX線管11の回転中心を中心として回転させる回転支持部と、回転支持部、X線管11、ウェッジ12、コリメータ13、X線検出器15、第1駆動装置11A、第2駆動装置13A、および第3駆動装置15Aを収容するガントリ(例えば、架台装置10)とを含む。回転中心には、例えば被検体Pが存在する。回転フレーム17は、更にDAS16を支持する。DAS16が出力する検出データは、回転フレーム17に設けられた発光ダイオード(LED)を有する送信機から、光通信によって、架台装置10の非回転部分(例えば固定フレーム)に設けられたフォトダイオードを有する受信機に送信され、受信機によってコンソール装置40に転送される。なお、回転フレーム17から非回転部分への検出データの送信方法として、前述の光通信を用いた方法に限らず、非接触型の任意の送信方法を採用してよい。回転フレーム17は、X線管11やX線検出器15等を支持して回転させることができるものであれば、円環状の部材に限らず、アームのような部材であってもよい。
【0019】
制御装置18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを有する処理回路と、モータやアクチュエータ等を含む駆動機構とを有する。制御装置18は、コンソール装置40または架台装置10に取り付けられた入力インターフェース43からの入力信号を受け付けて、架台装置10や寝台装置30等の各装置の動作を制御する。
【0020】
制御装置18は、例えば、回転フレーム17を回転させたり、架台装置10をチルトさせたり、寝台装置30の天板33を移動させたりする。架台装置10をチルトさせる場合、制御装置18は、入力インターフェース43に入力された傾斜角度(チルト角度)に基づいて、Z軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム17を回転させる。制御装置18は、図示しないセンサの出力等によって回転フレーム17の回転角度を把握している。また、制御装置18は、回転フレーム17の回転角度を随時、処理回路50に提供する。制御装置18は、架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられてもよい。
【0021】
制御装置18は、例えば、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を第1の配置とした状態で撮像を行うことで被検体Pの第1の範囲の第1の画像を得る第1の制御を行う。また、制御装置18は、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を第2の配置とした状態で撮像を行うことで被検体Pの第1の範囲とは異なる第2の範囲の第2の画像を得る第2の制御を行う。例えば、制御装置18は、第1の制御として、本スキャン撮影に先立って、X線管11およびX線検出器15を第1の配置とし、位置決めのためのスキャノ撮影を行って、第1の範囲のスキャノ画像(第1の画像)を取得する。例えば、制御装置18は、第2の制御として、X線管11およびX線検出器15を第2の配置とし、架台装置10を移動レールに沿って自走させ、X線管11から照射されるX線によって第2の範囲における被検体Pの本スキャン撮影を行い、目的とする本スキャン画像(第2の画像)を取得する。上述した制御は、処理回路50からの制御によって実行される。
【0022】
寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置して、架台装置10の回転フレーム17の内部に導入する装置である。寝台装置30は、例えば、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを有する。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向(Y軸方向)に移動可能に支持する筐体を含む。寝台駆動装置32は、モータやアクチュエータを含む。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を、支持フレーム34に沿って、天板33の長手方向(Z軸方向)に移動させる。天板33は、被検体Pが載置される板状の部材である。
【0023】
コンソール装置40は、例えば、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、ネットワーク接続回路44と、処理回路50とを有する。第1の実施形態では、コンソール装置40は架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置40の各構成要素の一部または全部が含まれてもよい。
【0024】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ41は、例えば、移動量情報41-1等を記憶する。移動量情報41-1は、例えば、撮影条件および被検体情報に、X線管11およびX線検出器15の移動量が対応付けられた情報である。また、移動量情報41-1には、X線管11やX線検出器15の移動量に加えて、コリメータ13の移動量(例えば、絞り込むX線の照射範囲の変化させるための移動量)が対応付けられていてもよい。移動量情報41-1の内容については後述する。また、メモリ41は、例えば、X線CT装置1により取得される検出データや投影データ、再構成画像、CT画像等を記憶してもよい。これらのデータは、メモリ41ではなく(或いはメモリ41に加えて)、X線CT装置1が通信可能な外部メモリに記憶されてもよい。外部メモリは、例えば、外部メモリを管理するクラウドサーバがコンソール装置40からの読み書き要求を受け付けることで、クラウドサーバによって制御されるものである。
【0025】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、X線CT装置1の処理状態や処理回路によって生成された医用画像(例えば、CT画像)や、操作者による各種操作を受け付けるGUI(Graphical User Interface)画像、入力インターフェース43により受け付けられた情報等を表示する。ディスプレイ42は、例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等である。ディスプレイ42は、架台装置10に設けられてもよい。ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40の本体部と無線通信可能な表示装置(例えばタブレット端末)であってもよい。
【0026】
入力インターフェース43は、操作者による各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作の内容を示す電気信号を処理回路50に出力する。例えば、入力インターフェース43は、撮影条件やスキャン撮影の実行、画像の表示要求等の情報の入力操作を受け付ける。撮影条件には、例えば、X線管11からX線検出器15までの距離、X線検出器15のチャネルの位置、数の情報が含まれる。また、撮影条件には、例えば、スキャン計画、検出データまたは投影データを収集する際の収集条件、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等が含まれてよい。スキャン計画には、例えば、再構成画像の撮影対象部位、X線の照射量、照射タイミング、撮影時間、スキャンの種類等が含まれる。上述した撮影条件は、予め複数種類の条件が動作モードとして設定されていてもよい。その場合、入力インターフェース43により複数種類の動作モードのうち何れかの動作モードの選択によって、撮影条件が決定される。
【0027】
入力インターフェース43は、例えば、マウスやキーボード、タッチパネル、ドラッグボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、フットペダル、カメラ、赤外線センサ、マイク等により実現される。入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール装置40の本体部と無線通信可能な表示装置(例えばタブレット端末)により実現されてもよい。なお、本明細書において、入力インターフェース43は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0028】
ネットワーク接続回路44は、ネットワークの形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装する。ネットワーク接続回路44は、この各種プロトコルに従ってX線CT装置1と他の装置とを接続する。この接続には、電子ネットワークを介した電気的な接続等を適用することができる。ここで電子ネットワークには、電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味し、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)、インターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワークおよび衛星通信ネットワーク等が含まれる。
【0029】
処理回路50は、X線CT装置1の全体の動作を制御する。処理回路50は、例えば、位置制御機能51、システム制御機能52、前処理機能53、再構成処理機能54、画像処理機能55、スキャン制御機能56、表示制御機能57等を実行する。処理回路50は、例えば、ハードウェアプロセッサがメモリ41に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものである。
【0030】
ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit; ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device; SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device; CPLD)や、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array; FPGA))等の回路(circuitry)を意味する。メモリ41にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは、回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。また、処理回路50は、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。
【0031】
コンソール装置40または処理回路50が有する各構成要素は、分散化されて複数のハードウェアにより実現されてもよい。処理回路50は、コンソール装置40が有する構成ではなく、コンソール装置40と通信可能な処理装置によって実現されてもよい。処理装置は、例えば、一つのX線CT装置と接続されたワークステーション、あるいは複数のX線CT装置に接続され、以下に説明する処理回路50と同等の処理を一括して実行する装置(例えば、クラウドサーバ)である。
【0032】
位置制御機能51は、所定の場合に、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を所定方向または所定角度に移動させる。所定の場合とは、例えば、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させる必要がある場合である。位置制御機能51の詳細については、後述する。
【0033】
システム制御機能52は、入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、処理回路50の各種機能を制御する。例えば、システム制御機能52は、例えば、X線高電圧装置14、DAS16、制御装置18、および寝台駆動装置32を制御することで、架台装置10における検出データの収集処理等を実行する。また、システム制御機能52は、スキャノ撮影によるスキャノ画像や本スキャン撮影による本スキャン画像を収集する撮影、および診断に用いる再構成画像を撮影する際の各部の動作を制御する。
【0034】
前処理機能53は、DAS16により出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を行って、投影データを生成し、生成した投影データをメモリ41に記憶させる。
【0035】
再構成処理機能54は、前処理機能53によって生成された投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等による再構成処理を行って、再構成画像(CT画像)を生成する。また、再構成処理機能54は、生成したCT画像をメモリ41に記憶させてもよい。
【0036】
画像処理機能55は、入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、CT画像を公知の方法により、三次元画像や任意断面の断面像データに変換する。三次元画像への変換は、前処理機能53によって行われてもよい。また、画像処理機能55は、断面像データの画像を解析して、解析結果に基づいて被検体の形状(体型)や大きさ(サイズ)を分類してもよい。
【0037】
スキャン制御機能56は、X線高電圧装置14、DAS16、制御装置18、および寝台駆動装置32に指示することで、架台装置10における検出データの収集処理を制御する。スキャン制御機能56は、例えば、スキャノ画像や本スキャン画像を収集する撮影、および診断に用いる画像を撮影する際の各部の動作をそれぞれ制御する。
【0038】
表示制御機能57は、X線CT装置1の稼働状況や、各種画像(撮影画像、入力インターフェース43の受け付けた入力操作結果を示す画像等)をディスプレイ42に表示させる。例えば、入力操作結果を示す画像には、例えば、入力インターフェース43の受け付けた被検体Pの形状や大きさ、撮影条件、X線管11またはX線検出器15の移動量、移動後のX線管11およびX線検出器15の位置を示す画像が含まれる。
【0039】
上記構成により、X線CT装置1は、例えば、ヘリカルスキャンやステップアンドシュートスキャン等の形式で被検体Pの本スキャン撮影を行う。ヘリカルスキャンとは、天板33を移動させながら回転フレーム17を回転させて被検体Pを螺旋状にスキャンする態様である。ステップアンドシュートスキャンとは、天板33の位置を一定間隔で移動させてコンベンショナルスキャンを複数のスキャンエリアで行う態様である。どの形式(撮影の種類)で撮影を行うかについては、入力インターフェース43により受け付けられた撮影条件に設定されている。以下では、ヘリカルスキャンによって、被検体Pのスキャン撮影を行うものとして説明する。
【0040】
次に、位置制御機能51の詳細について説明する。
図2は、位置制御機能51の一構成例を示す図である。位置制御機能51は、例えば、画像取得機能51-1と、被検体情報取得機能51-2と、撮影範囲決定機能51-3と、移動要否判定機能51-4と、駆動制御機能51-5とを備える。画像取得機能51-1および被検体情報取得機能51-2を組み合わせたものが「取得部」の一例である。撮影範囲決定機能51-3は、「撮影範囲決定部」の一例である。駆動制御機能51-5は、「駆動制御部」の一例である。
【0041】
第1の実施形態において、画像取得機能51-1は、本スキャン撮影の実行に先立ってスキャノ画像を取得する。
図3は、画像取得機能51-1について説明するための図である。
図3の例では、回転フレーム17に搭載された構成を中心に示しており、一部の符号および構成を省略している。具体的には、
図3には、X線管11と、ウェッジ12と、コリメータ13と、X線検出器15と、DAS16と、回転フレーム17と、第1駆動装置11Aと、第2駆動装置13Aと、第3駆動装置15Aとが示されている。破線BLは、ファン角の外縁線を示している。
図3の例では、説明の便宜上、二人の被検体P1,P2が示されているが、天板33には、一人の被検体が載置される。
【0042】
第1の実施形態におけるスキャノ撮影時には、X線管11およびX線検出器15は、
図3に示すように基準位置(第1の配置の一例)に位置付けられている。この場合、X線検出器15は、X線管11に対向する位置に存在し、具体的には、X線検出器15は、被検体P1、P2の体軸およびX線照射軸に直交する方向に存在する。また、X線検出器15は、X線管11から照射されるX線の照射範囲の中心軸である照射軸上に、X線検出器15の中心C2が存在するように位置付けられている。
図3の例において、照射軸上には、X線管の照射口の中心C1と、X線管11の回転中心C0とが位置付けられている。基準位置に位置付けられている場合、X線検出器15による検出データの検出範囲は、X線検出器15の中心CL2を基準とした点対称またはX線照射軸を基準とした軸対称となる。また、基準位置は、X線管11の焦点と架台装置10の回転軸とを通る中心線に対して、チャンネル方向に対称な検出面をもつ。つまり、基準位置とは、
図3に示すようにX線管11とX線検出器15とが対称位置に位置付けられていることである。
【0043】
画像取得機能51-1は、制御装置18を制御して、本スキャン撮影の実行に先立って、システム制御機能52およびスキャン制御機能56にスキャノ撮影のための制御を実行させ、撮影されたスキャノ画像(第1の画像)を取得する。スキャノ撮影は、例えば、X線管11やX線検出器15を支持する回転フレーム17を回転させずに行われる。また、スキャノ撮影は、寝台装置30上の被検体Pに対して正面方向および側面方向といった所定の二方向からX線を照射して行われてもよい。このように、一方向または二方向のスキャノ撮影により、スキャノ画像が撮影される。
【0044】
被検体情報取得機能51-2は、画像取得機能51-1により取得したスキャノ画像に基づいて、被検体Pの形状や大きさに関する情報を取得する。また、被検体情報取得機能51-2は、例えば、入力インターフェース43により受け付けられた被検体Pの形状や大きさに関する情報、撮影対象範囲(再構成画像の撮影範囲)に関する情報、撮影条件に関する情報等を取得してもよい。
【0045】
撮影範囲決定機能51-3は、画像取得機能51-1により取得されたスキャノ画像に基づいてX線管11およびX線検出器15の基準位置において本スキャン撮影を行ったときの撮影範囲(例えば、FOV; Field of View)を決定する。例えば、撮影範囲決定機能51-3は、スキャノ画像から特徴を抽出する画像解析を行う。また、撮影範囲決定機能51-3は、画像解析により得られた特徴情報と、予め用意された部位のテンプレートを用いたパターンマッチング等の手法等を用いてスキャノ画像に含まれる被検体Pの領域や部位(例えば、頭部、胸部、腕部、腹部)の位置を取得してもよい。この場合、撮影範囲決定機能51-3は、撮影範囲に含まれる部位を決定する。
【0046】
また、撮影範囲決定機能51-3は、入力インターフェース43によって受け付けられたユーザ(例えば、X線CT装置の操作者)の撮影範囲に基づいて撮影範囲を設定してもよい。この場合、撮影範囲決定機能51-3は、予め決められた複数のFOVサイズ(例えば、S、M、L、LL、XL)のうち、何れかのサイズの入力を入力インターフェース43から受け付け、受け付けられたFOVサイズに対応付けられた撮影範囲を決定する。
【0047】
移動要否判定機能51-4は、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させる必要があるか否かを判定する。例えば、移動要否判定機能51-4は、撮影範囲決定機能51-3により決定された撮影範囲に基づいて、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を基準位置から移動させる必要があるか否かを判定する。例えば、
図3に示す被検体P1の場合には、被検体P1の左右(図中X軸方向)の幅がファン角の外縁線内に含まれる。そのため、撮影対象部位が被検体P1の胴体である場合であっても撮影範囲に含まれる。この場合、移動要否判定機能51-4は、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を基準位置から移動させる必要はないと判定する。
【0048】
一方、被検体P2の場合には、被検体P1の一部(
図3の例では被検体P1の左右(両腕部分))がファン角の範囲を超える。したがって、移動要否判定機能51-4は、撮影対象部位が腕部である場合(腕部の再構成画像が必要である場合)に、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を基準位置から移動させる必要があると判定する。なお、被検体P2の頭部は、基準位置においてファン角の外縁線内に含まれる。そのため、移動要否判定機能51-4は、撮影対象範囲が被検体P2の頭部である場合には、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を基準位置から移動させる必要はないと判定する。このように、被検体の大きさや撮影対象、撮影範囲によって、基準位置から移動させるか否かを、より適切に判定することができる。
【0049】
駆動制御機能51-5は、所定の場合の一例として、移動要否判定機能51-4によりX線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させる必要があると判定された場合に、駆動装置(第1駆動装置11A、第3駆動装置15A)により、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させる。例えば、駆動制御機能51-5は、移動要否判定機能51-4によりX線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を基準位置から移動させる必要があると判定された場合に、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方の移動量を決定する。例えば、画像取得機能51-1により取得された画像の撮影条件や画像の解析結果、被検体情報取得機能51-2により取得された被検体情報に基づいて、移動量情報41-1を参照し、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方の移動量を取得する。
【0050】
図4は、移動量情報41-1の内容について説明するための図である。移動量情報41-1は、例えば、撮影条件および被検体情報に、X線検出器移動量およびX線管移動量、コリメータ移動量が対応付けられた情報である。撮影条件(例えば、
図4に示す撮影条件SC1~SC4)には、例えば、基準位置におけるX線管11からX線検出器15までの距離、X線検出器15のチャネルの位置、数、配列状態が含まれる。撮影条件は、X線CT装置1の稼働前に決められた情報であるが、入力インターフェース43により受け付けられた情報により変更されてもよい。また、撮影条件には、撮影時の動作モードに関する情報が含まれてもよい。被検体情報には、例えば、被検体の形状や大きさに関する情報や、撮影対象部位に関する情報が含まれる。X線検出器移動量(例えば、
図4に示す移動量M1~M3)には、X線検出器15の基準位置からの移動量が含まれる。X線管移動量(例えば、
図4に示す移動量M4~M5)には、X線管11の基準位置からの移動量や基準角度からの回転角度が含まれる。コリメータ移動量(例えば、
図4に示す移動量M6~M9)には、例えば、X線検出器15やX線管11の移動に基づいて、X線管11からの照射範囲がX線検出器15の存在する範囲に照射されるように調整するためのコリメータ13の移動量が含まれる。X線検出器移動量およびX線管移動量は、例えば、本スキャン撮影の撮影範囲に撮影対象範囲を含ませるための最小の移動量である。また、X線検出器移動量およびX線管移動量は、天板33に載置された被検体Pの左右の端のうち一端がスキャノ画像の撮影範囲に含まれると推定される移動量であってもよい。X線管11またはX線検出器15を移動させることにより、X線管11およびX線検出器15の非対称位置に位置付けられる。
【0051】
駆動制御機能51-5は、例えば、移動要否判定機能51-4によりX線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させる必要があると判定された場合、撮影条件や被検体情報を用いて、移動量情報41-1の撮影条件や被検体情報を参照し、合致した撮影条件や被検体情報に対応付けられたX線検出器移動量、X線管移動量、およびコリメータ移動量を取得する。なお、駆動制御機能51-5は、移動量情報41-1を参照することに代えて、予め決められた所定の関数を用いてX線検出器移動量、X線管移動量、およびコリメータ移動量を算出してもよい。所定の関数には、例えば、撮影条件や被検体情報を入力として、X線検出器移動量、X線管移動量、またはコリメータ移動量を出力するそれぞれの関数が含まれる。また、コリメータ移動量を出力する関数は、撮影条件や被検体情報に代えて、X線検出器移動量やX線管移動量を入力としてコリメータ移動量を出力する関数であってもよい。
【0052】
駆動制御機能51-5は、取得した移動量に基づいて、駆動装置(第1駆動装置11A、第2駆動装置13A、第3駆動装置15A)を制御して、X線管11、コリメータ13、X線検出器15を基準位置から移動させる。例えば、第1駆動装置11Aおよび第3駆動装置15Aは、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を、X線管11の回転中心を中心とした回転の径方向と交差する方向に移動させる。また、第2駆動装置13Aは、上記の移動に基づき、X線管11によって照射されるX線がX線検出器15の存在する範囲に照射されるようにコリメータ13を移動する。
【0053】
図5は、駆動制御機能51-5の制御によりX線検出器が15を移動させることについて説明するための図である。
図5の例では、天板33に被検体P2が載置されている。また、
図5の例は、被検体P2の胴体(横幅全体)を撮影範囲に含めるためにX線検出器15の移動させることについて説明する図である。
図5は、
図3と比較して、X線検出器15を基準位置から、回転フレーム17の回転方向であって、且つチャネルの配列方向に距離D1だけ移動させ第2の配置とした例を示している。チャネルの配列方向は、例えば、回転フレーム17によってX線検出器15が回転する円周に沿った方向と言い換えてもよい。
【0054】
駆動制御機能51-5は、X線検出器移動量に基づいてX線検出器15を移動させるように第3駆動装置15Aに制御情報を出力する。第3駆動装置15Aは、制御情報に基づいてモータやアクチュエータ等を駆動させてX線検出器15を距離D1の位置まで移動させる。つまり、第3駆動装置15Aは、X線検出器15を移動させることで、X線管11と、X線管11の回転中心C0と、X線検出器15の回転時の周方向に関する中心C2とが、同一直線上とならない状態にする。同一直線上とならない状態とは、X線管11とX線検出器15とが非対称位置である状態である。また、駆動制御機能51-5は、コリメータ移動量に基づいてコリメータ13を移動させるように第2駆動装置13Aに制御情報を出力する。第2駆動装置13Aは、制御情報に基づいてモータやアクチュエータ等を駆動させてX線管11から照射されるX線の照射範囲がX線検出器15の検出範囲に含まれるように、コリメータ13を駆動させてファン角を調整する。
図5の例では、X線検出器15を基準位置から右側に移動させることにより、第2の撮影範囲として、撮影範囲に被検体P2の右側が全て含まれるような位置に移動させている。
【0055】
また、駆動制御機能51-5は、X線検出器15の移動に基づいて、X線管11の照射軸を所定角度回転させてもよい。
図6は、X線管11を回転させることについて説明するための図である。
図6の例において、駆動制御機能51-5は、X線検出器15の移動量に基づいて、X線管11の照射軸がX線検出器15の中心C2を通るように、X線管11の照射軸を基準軸(図中-Y軸方向)から角度θ1まで回転させるように、第1駆動装置11Aに制御情報を出力する。なお、回転角度θ1は、X線管移動量に含まれていてもよい。これにより、X線検出器15の移動前後におけるX線管11とX線検出器15との相対位置を維持したままスキャンを実行することができる。
【0056】
図7は、X線管11を移動させることについて説明するための図である。駆動制御機能51-5は、X線管移動量に基づいてX線管11を移動させるように第1駆動装置11Aに制御情報を出力する。第1駆動装置11Aは、制御情報に基づいてモータやアクチュエータ等を駆動させて
図7に示す距離D2の位置までX線管11を移動させる。つまり、第1駆動装置11Aは、X線管11を移動させることで、X線管11と、X線管11の回転中心C0と、X線検出器15の回転時の周方向に関する中心C2とが、同一直線上とならない状態(第2の配置状態)にする。
図7の例では、図中のX軸方向に水平に移動させているが、-X方向に移動させてもよく、回転フレームによって、X線管11が回転する円周に沿った方向に移動させてもよい。また、駆動制御機能51-5は、上述した移動制御と共にX線管11の角度またはX線検出器15の角度を調整してもよい。
【0057】
また、駆動制御機能51-5は、上述したX線管11およびX線検出器15の両方を基準位置から移動させてもよい。例えば、移動量情報41-1に撮影条件または被検体情報に対応付けられたX線検出器移動量およびX線管移動量の両方が格納されている場合、X線管11およびX線検出器15の両方を移動させる。X線管11およびX線検出器15の両方を移動させることで、回転フレーム17のガントリの空間的な制約の中で、一方を移動させるよりも非対称の位置関係をより大きくすることができる。
【0058】
また、駆動制御機能51-5は、X線検出器15の形状によって、移動方向を変更してもよい。
図8は、X線検出器の形状が平面検出器である場合の移動方向について説明するための図である。
図8の例では、X線管11の焦点を中心として円弧状に形成されたX線検出器15に代えて、平面状に形成されたX線検出器15#が示されている。複数のX線検出素子列のそれぞれは、上記平面に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列されている。複数のX線検出素子列は、スライス方向に配列されている。この場合、駆動制御機能51-5は、X線検出器15#のチャネル方向に沿ってX線検出器15#を水平に移動させる。つまり、第3駆動装置15Aは、X線検出器15#を水平に移動させることで、X線管11と、X線管11の回転中心C0と、X線検出器15の回転時の周方向に関する中心C2とが、同一直線上とならない状態にする。
【0059】
また、X線検出器15#を水平に移動させる場合、回転フレーム17のガントリの空間的な制約により移動量が制限される。例えば、
図8に示すX線検出器15#の移動量(距離D3)が大きい場合に、X線検出器15#の端部が回転フレーム17の外形17oに接触してしまい、本スキャン時に回転できない可能性がある。そこで、駆動制御機能51-5は、X線検出器15#の移動量が確保できる位置に移動させるように移動方向を制御してもよい。例えば、駆動制御機能51-5は、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させることで、X線検出器15#の周方向に関する中心部の軌跡の曲率を変更する。
【0060】
図9は、X線検出器15#の移動方向について説明するための図である。
図9の例において、軌跡T1は、X線検出器15#が基準位置にある場合の中心C2の回転する軌跡を示している。駆動制御機能51-5は、X線検出器15#を移動させる場合に、軌跡T1の曲線よりも曲率が小さい(曲率半径が大きい)方向の軌跡T2に沿って移動させる。これにより水平に移動するよりも移動量を大きくすることができる。また、駆動制御機能51-5は、中心C2を基準としたX線検出器15#の平面に垂直な線がX線管11の中心を向くようにX線検出器15#を所定角度θ2だけ傾けてもよい。角度θ2は、例えば、移動量情報41-1のX線管移動量に含まれる。
【0061】
次に、本スキャンを実行時における再構成画像の生成の様子について図を用いて説明する。
図10は、第1の実施形態における再構成画像の生成処理について説明するための図である。本図は回転フレーム17に搭載された構成を中心に示しており、一部の符号および構成を省略している。また、X線検出器15は、
図5に示すように距離D1だけチャネルの配列方向に沿って移動させているものとする。回転フレーム17は、移動させたX線管11とX線検出器15の配置(第2の配置)を維持した状態で、X線管11およびX線検出器15を回転させる。回転フレーム17は、図に示す矢印A1方向(反時計回り)に回転するものとする。X線管11の回転位置(換言すると回転フレーム17の回転位置)は、回転フレーム17を回転させる制御装置18によって認識されており、その情報は制御装置18から処理回路50に提供される。
【0062】
スキャン制御機能56は、所定の動作モードに基づくスキャン方式(例えば、ヘリカルスキャン)によって被検体のスキャンを実行する。回転位置RP1-1~RP1-5は、例えば、第1回転目におけるそれぞれの角度でのX線の照射の様子を示している。回転位置RP1-5は、二回転目が開始される回転位置RP2-1と同等の位置である。
【0063】
例えば、回転位置RP1-1およびRP1-5の状態では、本図に示す被検体P2の左側(図に示す被検体P2の左側)が検出されていない。したがって、スキャン制御機能56は、被検体の左側も再構成画像の撮像範囲に含める場合に、2回転目が開始される回転位置RP2-1から被検体P2の左側が撮影範囲に含まれる回転位置RP-2までの検出データも利用して再構成画像を生成する。
【0064】
図11は、生成される再構成画像の一例を示す図である。画像処理機能55は、
図11に示すように本スキャンが開始されてからの時刻に応じて取得される検出データのうち、n回転目(nは1以上の整数)の再構成画像を生成する場合に、n回転で得られた検出データに加えて、n+1回転目の一部の検出データ(より具体的には、照射範囲からはみ出した部分の撮影範囲が含まれる回転角度までの検出データ)を用いてn回転目の再構成画像を生成する。
【0065】
なお、画像処理機能55は、検出データに取得対象が含まれている場合には、n+1回転の一部の検出データを用いずに、n回転で取得した検出データを用いて再構成画像を生成する。
【0066】
これにより、被検体の形状や大きさ、撮影対象部位に基づいて、撮影範囲に再構成画像の撮影対象範囲が含まれる場合には、基準位置のまま撮影することができ、撮影範囲に撮影対象範囲が含まれない場合には、X線検出器15またはX線管11のうち一方または双方を必要な距離だけ移動させて非対称位置で再構成画像を撮影することができる。したがって、再構成画像の画質の低下を抑制しつつ、画像化可能な領域を広げることができる。
【0067】
また、画像処理機能55は、例えば、特開2006-141999号公報に示すような公知の技術を用いて、X線検出器15の検出範囲の外に位置する範囲に関する投影データを補完し、補完した投影データに基づいてCT画像を再構成してもよい。具体的には、画像処理機能55は、X線管11の投影角度とX線検出器15に関してX線検出器15の検出範囲の外に位置する範囲(補間ポイント)の座標に基づいて、少なくとも一つの補完投影角度と、少なくとも一つの補完ポイントの座標とを決定する。そして、画像処理機能55は、少なくとも一つの補完ポイントに対応する少なくとも一つの重み付けを計算し、計算した重み付けに基づいて、スキャン対象の画像を再構成する際、補間ポイントにおけるスキャン対象に関する投影データを補完する。
【0068】
また、画像処理機能55は、例えば、特開2019-180834号公報に示すような公知の技術を用いて、X線検出器15の検出範囲の外に位置する範囲の画像を補間してもよい。具体的には、画像処理機能55は、天板33またはX線管11を天板33の長手方向に沿って移動させつつX線を照射させるように第1スキャノ撮影を行って被検体Pの一部を長手方向に沿って示す第1スキャノ画像を生成する。また、画像処理機能55は、第1スキャノ画像から天板の短手方向にはみ出た被検体Pの輪郭の一部を含む領域を撮影する第2スキャノ撮影の前に、長手方向に沿った複数の位置を設定し、複数の位置に順にX線管11を静止させてX線を照射させるように第2スキャノ撮影を行って輪郭の一部を含む領域を示す複数の第2スキャノ画像を生成する。そして、画像処理機能55は、第1スキャノ画像および第2スキャノ画像の各々に基づいて、被検体Pの輪郭を推定し、推定された輪郭に基づいて撮影されていない領域の輪郭を補間して再構成画像を生成する。
【0069】
また、画像処理機能55は、例えば、特開2007-111515号公報に示すような公知の技術を用いて、X線検出器15の検出範囲の外に位置する範囲の画像を補間してもよい。具体的には、まず、スキャン制御機能56は、X線管11とX線検出器15とを第1の回転角度位置に移動させて、第1の方向から投影データを取得させ、且つ、X線管11とX線検出器15とを第2の回転角度位置に移動させて、第2の方向から投影データを取得させるスキャン制御を行う。次に、画像処理機能55は、第1の方向に対応する投影データと第2の方向に対応する投影データとを合成して、1つのスキャン範囲設定用画像を生成する。なお、X線検出器15の検出範囲の外に位置する範囲の画像を補間する公知の技術については、上記の例に限定されるものではない。
【0070】
駆動制御機能51-5は、本スキャン撮影により再構成画像を生成した後、X線管11およびX線検出器15を次の撮影の前までに元の位置(基準位置)に戻すように駆動装置を制御する。なお、駆動制御機能51-5は、同じ被検体について複数のスキャンを行う場合であって、1回目のスキャンでX線検出器15とX線管11とが非対称位置になるように移動した場合には、そのままの位置関係を継続させてもよい。また、1回目のスキャンで被検体の胴体をスキャンし、2回目のスキャンで頭部をスキャンする場合であって、移動要否判定機能51-4により頭部は基準位置でも撮影できると判定された場合に、駆動制御機能51-5はX線検出器15およびX線管11を元の位置に戻す制御を行ってもよい。対称位置(基準位置)で撮影した画像の方が、非対称位置で撮影した画像よりも同位置における検出データを多く取得できるため、画質の良い画像が取得できる。そのため、できる限り基準位置で画像を取得することで、より画質の良い画像を取得することができる。なお、駆動制御機能51-5は、非対称位置のままでも対称位置での画像と比べて画質が変わらない場合には元に戻さないという制御を行ってもよい。
【0071】
図12は、第1の実施形態におけるX線CT装置により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下では、入力インターフェース43により動作モードの入力を受け付けた後の処理について説明する。また、第1の実施形態における処理の開始前において、また、以下では、X線管11およびX線検出器15は、基準位置(対称位置)に位置付けられているものとする。また、以下の処理では、X線管11またはX線検出器15を移動させる例について説明するが、X線管11とX線検出器15の両方を移動させてもよい。他の実施形態におけるフローチャートの説明においても同様とする。
【0072】
図12の例において、画像取得機能51-1は、入力インターフェース43により受け付けられる動作モード(例えば、再構成画像を取得するための動作モード)等に基づいて、X線管11およびX線検出器15の基準位置からスキャノ画像を取得する(ステップS100)。次に、被検体情報取得機能51-2は、被検体情報を取得する(ステップS102)。次に、撮影範囲決定機能51-3は、被検体情報に基づいて、本スキャン撮影時の撮影範囲を決定する(ステップS104)。
【0073】
次に、移動要否判定機能51-4は、決定された撮影範囲に基づいて、X線管11またはX線検出器15を移動させる必要があるか否かを判定する(ステップS106)。X線管11またはX線検出器15を移動させる必要があると判定された場合、駆動制御機能51-5は、X線管11またはX線検出器15の移動量を取得し(ステップS108)、取得した移動量に基づいてX線管11またはX線検出器15を基準位置から移動させる(ステップS110)。
【0074】
ステップS110の処理後、または、ステップS106の処理においてX線管11またはX線検出器15を移動させる必要がないと判定された場合、スキャン制御機能56は、スキャンを実行する(ステップS112)。次に、再構成処理機能54は、スキャンにより得られたデータの再構成処理を行う(ステップS114)。次に、画像処理機能55は、再構成画像に基づく画像処理を実行する(ステックS116)。次に、表示制御機能57は、画像処理機能55により処理された画像をディスプレイ42等に表示させる(ステップS118)。
【0075】
次に、駆動制御機能51-5は、動作モード等に基づいて基準位置に戻すか否かを判定する(ステップS120)。基準位置に戻す必要があると判定した場合、駆動制御機能51-5は、駆動装置を制御してX線検出器15およびX線管11を移動させた位置から基準位置に戻す(ステップS122)。これにより、本フローチャートの処理は、終了する。また、ステップS120の処理において基準位置に戻す必要がないと判定した場合、本フローチャートの処理を終了する。
【0076】
なお、上述の処理では、X線管11またはX線検出器15を移動させる例を示したが、X線管11およびX線検出器15の両方を移動させてもよい。また、駆動制御機能51-5は、X線管11と共にウェッジ12を移動させてもよく、X線検出器15と共にとDAS16を移動させてもよい。以降の実施形態における処理の説明についても同様とする。
【0077】
以上説明した第1の実施形態によれば、被検体の大きさに応じてX線管11またはX線検出器15を移動させて、より適切な撮影範囲で再構成画像を撮影することができる。また、第1の実施形態によれば、再構成画像の撮影対象範囲が、基準位置で撮影可能である場合には、基準位置で撮影することができるため、同一部分に対する検出データの量が多くなり、画質の低下がなく、より高品質の画像を取得することができる。したがって、再構成画像の画質の低下を抑制しつつ、画像化可能な領域を広げることができる。
【0078】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るX線CT装置について説明する。第2の実施形態は、上述した第1の実施形態と比較すると、スキャノ画像の撮影時にX線管11とX線検出器15とを予め非対称位置に位置付けておく点で相違する。したがって、以下では、主に相違点を中心として説明する。なお、第2の実施形態において、上記の非対称位置に位置付ける配置が第1の配置の一例である。第2の実施形態におけるX線CT装置は、X線CT装置1と同様の構成が適用できる。したがって、以下では、X線CT装置1を用いて説明するものとし、重複する説明については省略する。
【0079】
第2の実施形態において、位置制御機能51の駆動制御機能51-5は、画像取得機能51-1によりスキャノ画像を取得する場合に、X線管11とX線検出器15とのを非対称位置に移動させるように駆動装置を駆動させる。例えば、駆動制御機能51-5は、X線管11またはX線検出器15に対して予め決められた移動量を移動させてもよく、回転フレーム17の大きさの制約等により最大に移動できる移動量を移動させてもよい。予め決められた移動量とは、例えば、天板33に載置された被検体Pの左右の端のうち一端がスキャノ画像の撮影範囲に含まれると推定される移動量である。また、駆動制御機能51-5は、入力インターフェース43により入力される移動量に関する情報に基づいて、X線管11またはX線検出器15を移動させてもよい。入力される移動量に関する情報とは、例えば、予め決められた複数のFOVサイズ(例えば、S、M、L、LL、XL)のうち、何れかのサイズであってもよい。
【0080】
画像取得機能51-1は、例えば、X線検出器15を駆動制御機能51-5により
図5に示す移動位置まで移動させた状態(X線管11とX線検出器15とが非対称位置となる状態)で撮影されたスキャノ画像を取得する。この場合、画像取得機能51-1は、撮影範囲に含まれていない他端側の範囲の画像を、公知の技術を用いて補間する。
【0081】
被検体情報取得機能51-2は、画像取得機能51-1により取得されたスキャノ画像に基づいて被検体の情報を取得する。第2の実施形態では、非対称位置でスキャノ撮影を行っているため、被検体の全領域がスキャノ画像に含まれている。そのため、撮影範囲決定機能51-3は、被検体情報取得機能51-2により取得された被検体情報に基づいて、被検体ごとに、より適切に本スキャン撮影における撮影範囲を決定することができる。
【0082】
移動要否判定機能51-4は、スキャノ撮影による撮影範囲と本スキャン時における撮影対象範囲とを比較し、X線管11またはX線検出器15を移動させる必要があるか否かを判定する。例えば、撮影範囲の中心から画像範囲の中心までの距離が所定距離以上離れている場合に、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させる必要があると判定する。
【0083】
駆動制御機能51-5は、移動要否判定機能51-4によりX線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させる必要があると判定された場合に、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させる。また、駆動制御機能51-5は、本スキャンが終了して再構成画像を生成した後、X線管11およびX線検出器15を次の撮影の前までに元の位置(スキャノ画像を撮影するための位置)に戻すように駆動装置を制御する。
【0084】
図13は、第2の実施形態におけるX線CT装置により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図13に示す処理は、上述した第1の実施形態におけるS100~S122の処理と比較して、ステップS100、S110、S120、およびS122の処理に代えて、ステップS200~S206の処理を行う点で相違する。したがって、以下では、主にステップS200~S206の処理を中心として説明する。なお、
図13に示す処理の開始前において、X線管11またはX線検出器15は、予め決められた非対称位置に位置付けられているものとする。
【0085】
図13の例において、画像取得機能51-1は、入力インターフェース43により受け付けられる動作モードに基づいて、X線管11とX線検出器15とが非対称位置の状態からスキャノ画像を取得する(ステップS200)。次に、被検体情報取得機能51-2は、被検体情報を取得する(ステップS102)。
【0086】
ステップS106の処理において、X線管11またはX線検出器15を移動させる必要があると判定された場合、駆動制御機能51-5は、X線検出器15またはX線管11の移動量を取得し(ステップS108)、取得した移動量に基づいてX線管11またはX線検出器15を非対称位置である現在位置から移動させる(ステップS202)。ステップS202の処理により、X線管11およびX線検出器15は、対称位置に移動されてもよく、他の非対称位置に移動されてもよい。ステップS202の処理後、または、ステップS106の処理においてX線管11またはX線検出器15を移動させる必要がないと判定された場合、ステップS112以降の処理が実行される。
【0087】
また、ステップS118の処理後、駆動制御機能51-5は、動作モード等に基づいてX線検出器15およびX線管11の位置を元の位置(スキャノ撮影を行う位置)に戻すか否かを判定する(ステップS204)。元の位置に戻す必要があると判定した場合、駆動制御機能51-5は、駆動装置を制御してX線検出器15およびX線管11を移動させた位置から元の位置に戻す(ステップS206)。これにより、本フローチャートの処理は、終了する。また、ステップS204の処理において元の位置に戻す必要がないと判定した場合、本フローチャートの処理を終了する。
【0088】
以上説明した第2の実施形態によれば、スキャノ画像を撮影する段階で、X線管11とX線検出器15とを非対称位置に位置付けることで、被検体が大きい場合であってもスキャノ画像に被検体の全体を含ませることができる。これにより、被検体の大きさをより正確に把握することができ、本スキャン時の撮影範囲や撮影対象範囲に基づいて、より適切な位置に、X線管11およびX線検出器15を位置付けることができる。したがって、再構成画像の画質の低下を抑制しつつ、画像化可能な領域を広げることができる。
【0089】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係るX線CT装置について説明する。第3の実施形態に係るX線CT装置は、第1の実施形態と比較して、架台装置10に投光器を備え、投光器から照射される光によって被検体の大きさ等を取得してX線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させる点で相違する。したがって、以下では、主に上記相違点を中心として説明する。また、以下では、X線管11およびX線検出器15が基準位置に位置付けられているものとする。
【0090】
図14は、第3の実施形態におけるX線CT装置2の一構成例を示す図である。
図14に示すX線CT装置2は、例えば、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを備える。架台装置10は、例えば、X線管11と、ウェッジ12と、コリメータ13と、X線高電圧装置14と、X線検出器15と、データ収集システム16と、回転フレーム17と、制御装置18と、投光器60とを有する。
【0091】
投光器60は、制御装置18からの指示に応じて、被検体Pの位置合わせ用の光(可視光線)、例えばレーザ光を開口内に挿入された天板33または天板33に載置された被検体Pに向けて投射する。被検体Pの位置合わせ用の光の照射範囲によって、ユーザは、スキャノ撮影および本スキャン撮影時の撮影範囲を視認することができる。投光器60から発せられる可視光線の色は、どのような色でもよく、例えば、赤、緑、または青等の色であってよい。なお、
図14においては、天板33の左右の方向から光を投射できる位置に二つの投光器60が設置されているが、投光器60の設置位置や設置数についてはこれに限定されるものではない。
【0092】
ユーザは、投光器60により投射された光に基づいて、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させる必要があると判断した場合に、入力インターフェースに43によりX線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を基準位置から移動させる指示を入力する。ユーザによってX線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させる必要があると判断される場合には、例えば、投光器60から被検体Pに照射された光の照射範囲に本スキャン時の撮影範囲が含まれていない場合である。この場合、ユーザは、入力インターフェースに43によりX線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を基準位置から移動させる指示を入力する。入力インターフェース43は、所定の場合の一例として、投光器60から光を投射させた後に、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させる指示の入力を受け付けた場合に、受け付けた指示を位置制御機能51に出力する。
【0093】
位置制御機能51は、入力インターフェースに43により入力されたX線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させる指示に基づいて、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を予め決められた移動量まで移動させる。予め決められた移動量とは、例えば、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方が移動可能な最大移動量であってもよく、最大移動量未満の所定の移動量であってもよい。画像取得機能51-1は、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させた後、スキャノ撮影されたスキャノ画像を取得する。また、画像取得機能51-1は、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を基準位置から移動させる情報および移動量に関する情報の入力を受け付けていない場合には、基準位置のままスキャノ撮影されたスキャノ画像を取得する。
【0094】
図15は、第3の実施形態におけるX線CT装置により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図15に示す処理は、上述した第1の実施形態におけるS100~S122の処理と比較して、ステップS100、S102の処理に代えて、ステップS300~S306の処理を行う点で相違する。したがって、以下では、主にステップS300~S306の処理を中心として説明する。なお、
図15に示す処理の開始前において、X線検出器15およびX線管11は、基準位置に位置付けられているものとする。
【0095】
図15の例において、画像取得機能51-1は、投光器60から光を照射する(ステップS300)。次に、画像取得機能51-1は、入力インターフェース43によりX線管11またはX線検出器15を移動させる指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS302)。X線管11またはX線検出器15を移動させる指示を受け付けたと判定された場合、駆動制御機能51-5は、X線検出器15またはX線管を基準位置から、予め決めらえた移動量だけ移動させる(ステップS304)。これにより、X線管11とX線検出器15とは非対称の位置関係となる。
【0096】
ステップS304の処理後、またはステップS302の処理において、X線管11またはX線検出器15を移動させる指示を受け付けていないと判定された場合、画像取得機能51-1は、スキャノ画像を取得し(ステップS306)、ステップS104以降の処理が実行される。
【0097】
以上説明した第3の実施形態によれば、ユーザは、スキャノ画像を撮影する前に、投光器60で被検体Pの撮影位置を確認して、必要に応じてX線管11およびX線検出器15の位置を移動させることができる。これにより、被検体Pの大きさや撮影位置等に応じて
再構成画像の画質の低下を抑制しつつ、画像化可能な領域を広げることができる。また、基準位置でのX線画像の撮影が可能である場合には、基準位置のままの撮影を行えるため、より画質の良い再構成画像を取得することができる。
【0098】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係るX線CT装置について説明する。第4の実施形態に係るX線CT装置は、第1の実施形態と比較して、架台装置10に撮像装置を備え、撮像装置により撮像された被検体を含む画像に基づいて、X線管11またはX線検出器15の一方または双方を基準位置から移動させる点で相違する、したがって、以下では上記相違点を中心として説明する。また、以下では、X線管11およびX線検出器15が基準位置に位置付けられているものとする。
【0099】
図16は、第4の実施形態におけるX線CT装置3の一構成例を示す図である。X線CT装置3は、例えば、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを備える。架台装置10は、例えば、X線管11と、ウェッジ12と、コリメータ13と、X線高電圧装置14と、X線検出器15と、データ収集システム16と、回転フレーム17と、制御装置18と、カメラ(撮像装置の一例)61とを有する。
【0100】
カメラ61は、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。また、カメラ61は、例えば、レンズや絞り等の光学系機構と、受光素子やメモリ等の電子系機構を備える。カメラ61は、例えば、寝台装置30に載置された被検体Pを撮像可能な位置および姿勢で設置される。例えば、カメラ61は、検査室天井や架台の上方に設置される。また、カメラ61は、1台でもよく複数台でもよい。カメラ61は、その撮像動作が処理回路50によって制御され、取得した画像データ(以下、カメラ画像と称する)を処理回路50に出力する。例えば、カメラ61によって撮影される撮影領域は、X線管11から照射されるX線の照射範囲に対応付けられていてもよい。
【0101】
第4の実施形態において、画像取得機能51-1は、カメラ61により撮像されたカメラ画像を取得する。被検体情報取得機能51-2は、画像取得機能51-1により取得されたカメラ画像に対して二値化やグラフカット等の処理を行い、処理結果に基づく輝度抽出やエッジ抽出等の特徴を抽出する画像解析を行い、画像解析により得られた特徴情報と、予め用意された部位ごとのテンプレートを用いたパターンマッチング等の手法等を用いてカメラ画像の撮影領域に含まれる被検体Pの位置(領域)や大きさ、部位(例えば、頭部、胸部、腕部、腹部)の位置等を含む被検体情報を取得する。また、被検体情報取得機能51-2は、入力インターフェース43により入力された情報に基づいて被検体情報を取得してもよい。
【0102】
撮影範囲決定機能51-3は、被検体情報取得機能51-2により取得された情報に基づいて本スキャン時における再構成画像の撮影範囲を決定する。
【0103】
移動要否判定機能51-4は、撮影範囲決定機能51-3により決定された撮影範囲に基づいて、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させる。例えば、移動要否判定機能51-4は、撮影範囲に本スキャン撮影における撮影対象範囲が含まれていない場合に、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させる必要があると判定する。一方、移動要否判定機能51-4は、撮影範囲に撮影対象範囲が含まれている場合に、X線管11およびX線検出器15の位置を基準位置から移動させる必要はないと判定する。
【0104】
駆動制御機能51-5は、所定の場合の一例として、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させる必要があると判定された場合、撮影範囲に本スキャン撮影における撮影対象範囲が含まれるように、駆動装置(第1駆動装置11A、第3駆動装置15A)により、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させる。
【0105】
図17は、第4の実施形態におけるX線CT装置3により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図17に示す処理は、上述した第1の実施形態におけるS100~S122の処理と比較して、ステップS100~S102の処理に代えて、ステップS400~S402の処理を行う点で相違する。したがって、以下では、主にステップS400~S402の処理を中心として説明する。なお、
図17に示す処理の開始前において、X線検出器15およびX線管11は、基準位置に位置付けられているものとする。
【0106】
図17の例において、画像取得機能51-1は、カメラ61からカメラ画像を取得する(ステップS400)。次に、被検体情報取得機能51-2は、カメラ画像に基づいて被検体情報を取得する(ステップS402)。次に、ステップS104以降の処理が実行される。
【0107】
以上説明した第4の実施形態によれば、カメラ61により撮影されたカメラ画像に基づいて被検体Pの位置や大きさを取得して、取得した位置や大きさに応じてX線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させて再構成画像を撮影することができる。また、基準位置でのX線画像の撮影が可能である場合には、基準位置のままの撮影を行えるため、より画質の良い画像を取得することができる。また、第4の実施形態によれば、スキャノ画像を撮影することなく、撮影範囲を決定することができる。なお、第4の実施形態においては、カメラ61の撮影範囲で撮影されたカメラ画像が、第1の範囲で撮影された第1の画像の一例となる。また、カメラ61により撮影する時点のX線管11およびX線検出器15の位置(上述の例では基準位置)が、第1の配置の一例となる。
【0108】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係るX線CT装置について説明する。第5の実施形態に係るX線CT装置は、第1~4の実施形態と比較して、撮影範囲を決定することに代えて、被検体Pの撮影情報に基づいてX線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させる必要があるか否かを判定する点で相違する。したがって、以下では上記相違点を中心として説明する。また、第5の実施形態では、上述した第1~第4の実施形態と同様のX線CT装置を用いることができるため、一例としてX線CT装置1を用いて説明する。また、第5の実施形態において、位置制御機能51には、撮影範囲決定機能51-3を備えていなくてもよい。
【0109】
被検体Pの撮影情報には、例えば、被検体Pが過去に本スキャン撮影を実行したときの撮影履歴情報や撮影プロトコルが含まれる。撮影履歴情報には、例えば、撮影条件、被検体情報に、X線検出器15およびX線管11、X線検出器15の位置、およびコリメータ13の位置に関する情報が対応付けられている。撮影履歴情報は、被検体ごとに生成されてよい。この場合、撮影履歴情報は、被検体Pを識別する識別情報によって識別される。撮影プロトロルには、例えば、撮影対象の被検体Pの形状や大きさ、撮影対象部位に、X線照射が行われる角度位置、X線の照射範囲、照射タイミング、および再構成領域等の撮影に関する各種条件が対応付けられている。また、撮影プロトコルには、上記内容に加えて、X線管11の位置、X線検出器15の位置、コリメータ13の位置に関する情報が含まれてもよい。撮影プロトコルは、例えば、撮影対象の被検体Pの形状や大きさ、撮影対象部位ごとに複数生成されてよい。撮影情報は、例えばメモリ41に格納される。
【0110】
位置制御機能51の被検体情報取得機能51-2は、例えば、入力インターフェース43等により入力された被検体Pに関する情報(例えば、被検体Pを識別する識別情報や、被検体Pの形状や大きさに関する情報)や撮影条件に関する情報に基づいて、メモリ41に格納された撮影情報から被検体Pに対応する撮影情報を取得する。
【0111】
移動要否判定機能51-4は、取得した撮影情報に基づいて、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させる必要があるか否かを判定する。例えば、移動要否判定機能51-4は、取得した撮影情報に含まれるX線管11およびX線検出器15の位置と、現在のX線管11およびX線検出器15の位置とが異なる場合に、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させる必要があると判定する。また、移動要否判定機能51-4は、撮影情報に含まれるX線管11およびX線検出器15の位置と、現在のX線管11およびX線検出器15の位置とが同じ位置である場合に、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させる必要がないと判定する。
【0112】
駆動制御機能51-5は、所定の場合の一例として、移動要否判定機能51-4によりX線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させる必要があると判定された場合に、駆動装置(第1駆動装置11A、第3駆動装置15A)により、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させる。例えば、駆動制御機能51-5は、現在のX線管11およびX線検出器15の位置が、撮影情報に含まれるX線管11およびX線検出器15の位置になるような移動量を取得し、取得した移動量に基づいて、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方を移動させる。
【0113】
図18は、第5の実施形態におけるX線CT装置により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図18に示す処理は、上述した第1の実施形態におけるS100~S122の処理と比較して、ステップS100~S104の処理に代えて、ステップS500の処理を行う点で相違する。したがって、以下では、主にステップS500の処理を中心として説明する。
【0114】
図18の例において、被検体情報取得機能51-2は、被検体Pの撮影情報を取得する(ステップS500)。次に、移動要否判定機能51-4は、取得した撮影情報に基づいて、X線管11またはX線検出器15を移動させる必要があるか否かを判定し(ステップS106)、以降の処理が実行される。
【0115】
以上説明した第5の実施形態によれば、被検体Pが過去に本スキャン撮影を行ったときの撮影履歴情報や撮影プロトコル等の撮影情報に基づいて、より迅速にX線管11およびX線検出器15を適切な位置に移動させることができる。また、第5の実施形態によれば、スキャノ画像を撮影することなく、X線管11およびX線検出器15を移動させることができる。
【0116】
上述した第1~第5の実施形態のそれぞれは、他の実施形態の一部または全部と組み合わせてもよい。例えば、第3の実施形態と第4の実施形態とを組み合わせて、投光器60により被検体Pに投射された光を含む画像をカメラ61で撮影し、撮影したカメラ画像を解析することで、撮影範囲を決定してもよい。これにより、より正確な撮影範囲を取得することができる。
【0117】
また、第4の実施形態においては、カメラ画像だけでなくスキャノ画像を撮影してもよい。例えば、胸部や腹部全体等の外形部位を撮影する場合にはカメラ画像等を用いて撮影範囲を決定し、特定の臓器を撮影する場合にはスキャノ画像を撮影し、スキャノ画像に含まれる内部構造に基づいて撮影対象範囲に基づくX線管11およびX線検出器15の移動の要否を判定してもよい。また、第3および第4の実施形態においては、X線管11とX線検出器15とを基準位置(対称位置)に位置付けた状態に変えて、第2の実施形態と同様にX線管11とX線検出器15とを非対称位置に位置付けた状態でそれぞれの処理を行ってもよい。また、本実施形態では、予め決められたプロトコルによって、スキャノ撮影および本スキャン撮影で非対称状態とするか否かや、X線管11またはX線検出器15のうち一方または双方をどの程度移動させるかの情報を関連付けておいてもよい。
【0118】
上述した実施形態は、例えば、一管球型のX線CT装置にも、X線管11とX線検出器15との複数のペアを回転リングに搭載した、いわゆる多管球型のX線CT装置にも適用可能である。
【0119】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
回転しながらX線を照射するX線管と、
前記X線管から照射されるX線を検出するX線検出器と、
前記X線管および前記X線検出器を、前記X線管の回転中心を中心として回転させる回転部と、
前記回転部内に存在し、前記X線管またはX線検出器のうち一方または双方を移動させる駆動装置と、
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサは、前記プログラムを実行することにより、
所定の場合に、前記駆動装置に、前記X線管またはX線検出器のうち一方または双方を前記回転の径方向と交差する方向に移動させる、
ように構成されている、X線CT装置。
【符号の説明】
【0120】
1,2,3…X線CT装置、10…架台装置、30…寝台装置、40…コンソール装置、41…メモリ、42…ディスプレイ、43…入力インターフェース、44…ネットワーク接続回路、50…処理回路、51…位置制御機能、51-1…画像取得機能、51-2…被検体情報取得機能、51-3…撮影範囲決定機能、51-4…移動要否判定機能、51-5…駆動制御機能、52…システム制御機能、53…前処理機能、54…再構成処理機能、55…画像処理機能、56…スキャン制御機能、57…表示制御機能、60…投光器、61…カメラ