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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】構造体
(51)【国際特許分類】
   F28D 1/047 20060101AFI20240509BHJP
   F28F 13/02 20060101ALI20240509BHJP
   F28F 1/40 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
F28D1/047 A
F28F13/02 D
F28F1/40 Q
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020153077
(22)【出願日】2020-09-11
(65)【公開番号】P2022047263
(43)【公開日】2022-03-24
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】今城 貴徳
(72)【発明者】
【氏名】初田 光嶺
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0018560(US,A1)
【文献】特開2004-225696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D1/00-13/00
F28F1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に熱交換媒体を流す流路が設けられ、前記熱交換媒体を前記流路内に供給する流路入口と、前記流路内の前記熱交換媒体を排出する流路出口とを有する構造体であって、
前記流路は、格子を多次元に組み合わせた格子物の集合体である格子構造体を有し、
前記格子構造体は、前記格子の少なくとも一部を埋める格子壁片を有し、
前記流路には、前記熱交換媒体の流動方向を規制して前記熱交換媒体の流速を変更する規制部材が配置され、前記規制部材は、前記格子壁片を含んで構成されており、
前記格子壁片は、前記構造体の前記流路入口と前記流路出口とが並ぶ方向に直交する格子面に配置されている、
構造体。
【請求項2】
記流路は、前記流路入口と前記流路出口との間に、流路断面積が異なる複数の分岐流路に分岐され、
前記分岐流路は、流路長手方向に沿って流路断面積が変化している、
請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記流路の内部に設けられた前記格子構造体は、前記流路を形成する流路壁を支持している、
請求項1又は2に記載の構造体。
【請求項4】
前記流路の内部に設けられた前記格子壁片は、前記格子構造体とともに前記流路壁を支持している、
請求項3に記載の構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数の流路部を通過する流体間で熱交換するコアが備えられた熱交換器を開示している。この熱交換器は、流路部内に立体的な格子状の構造を有する単位格子が繰り返し配列された2次伝熱部を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-150732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された熱交換器では、流路部内に立体的な格子状の構造を有する単位格子が繰り返し配列され、各単位格子が内部骨格となって構造体の機械的強度を高めている。しかし、構造体内部の伝熱部に熱交換媒体となる流体を流し、伝熱部を冷却する場合、流体は格子間の隙間を自由に流れるだけであり、構造体の特定部分に流体を選択的に導くことは難しい。また、特定部分の流速を高める等の局所的に冷却効果を調整することも難しい。
【0005】
そこで本発明は、構造体の機械的強度及び冷却性能を高めつつ、所望の部分を選択的に
効率よく熱交換できる構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は下記の構成からなる。
(1) 内部に熱交換媒体を流す流路が設けられた構造体であって、
前記流路は、格子を多次元に組み合わせた格子物の集合体である格子構造体を有し、
前記格子構造体は、前記格子の少なくとも一部を埋める格子壁片を有する、
構造体。
(2) 熱交換媒体を流す流路が内蔵された構造体の製造方法であって、
前記流路の内部に、格子を多次元に組み合わせた格子物の集合体である格子構造体を積層造形法で形成する積層造形工程を含み、
前記流路を形成する流路壁の少なくとも一部を、前記格子の少なくともいずれかの枠内を埋める格子壁片で形成する、
構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、構造体の機械的強度及び冷却性能を高めつつ、所望の部分を選択的に効率よく熱交換できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】構造体の外観を示す斜視図である。
図2】構造体の軸方向に沿う概略断面図である。
図3図2におけるA部を模式的に示す斜視図である。
図4】格子構造体の格子の形状パターンを(A)~(F)に示す概略説明図である。
図5】変形例1の構造体の軸方向に沿う断面を模式的に示す概略断面図である。
図6】変形例2の構造体の軸方向に沿う断面を模式的に示す概略断面図である。
図7】変形例3の構造体の軸方向に沿う断面を模式的に示す概略断面図である。
図8】構造体の他の例を示す図であって、(A)は角筒状の構造体の概略斜視図、(B)は円筒状の構造体の概略正面図である。
図9】構造体の製造方法を説明するための積層方向に沿う概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
ここでは、積層造形により製造された構造体として、圧縮ポンプのロータを例示するが、本発明はこれに限らず、熱交換媒体を流動させる流路を含む構造体であれば、好適に適用できる。
【0010】
図1は、構造体Wの外観を示す斜視図である。図2は、図1に示す構造体Wの軸方向に沿う断面を模式的に示す概略断面図である。
図1に示す構造体Wは、螺旋状に形成された複数のブレード11を有するロータであって、その両端に軸部13,15を有する。この構造体Wは、図2に示すように、外殻17によって囲われる構造体内部に、詳細を後述する格子構造体21が形成され、格子構造体21の一部に複数の規制部材27が形成されている。
【0011】
構造体Wは、一方の軸部13に形成された流路入口23と、他方の軸部15に形成された流路出口25とを有する。規制部材27は、構造体内部で、流路入口23と流路出口25とを連通させる流路19を画成する。この流路19を含む構造体内部は、詳細を後述する格子構造体21で埋められている。つまり、流路19は、構造体の外殻17と、構造体内部に設けられた格子構造体21に沿って形成された複数の規制部材27とによって画成される。そして、流路19内には、流路入口23から熱交換媒体が供給され、熱交換媒体が格子構造体21を流路19に沿って流れた後、流路出口25から排出される。
【0012】
熱交換媒体としては、例えば、水、油、又はクーラント等の液剤、或いはエア又は各種のガス、等が用いられる。熱交換媒体は、構造体Wを冷却する場合と加熱する場合とに応じて、熱交換媒体の温度を構造体Wよりも低温又は高温にされて流路19内に送給される。また、断熱効果を持たせる場合には、例えば一定温度の熱交換媒体が流路19内に送給される。
【0013】
外殻17と規制部材27とは、流路19の流路壁を構成する。規制部材27は、構造体内部に流れる熱交換媒体の流動方向を規制する。また、画成される流路19の流路断面積を変更することで、流路断面積の大小に応じて熱交換媒体の流速を変化させる。図2に示す構造体Wにおいては、流路入口23から供給された熱交換媒体が、規制部材27と外殻17との間に形成された狭隘部37を通って、流動方向を変化させながら流路出口25に向かうようになっている。
【0014】
図3は、図2のA部における規制部材27及び格子構造体21を模式的に示す斜視図である。
格子構造体21は、複数の格子31を多次元に組み合わせた格子物の集合体であり、一般にラティス構造と呼ばれる構造体である。図3に示す点線は1つの格子31(単位格子)を示しており、この場合の格子31は直方体である。複数の格子31は、縦横に複数配列されることで格子物を形成する。
【0015】
格子構造体21の規制部材27となる部分には、要素33によって形成された格子31の一面を埋める格子壁片35が設けられ、この格子壁片35が規制部材27となる。格子壁片35は、その4辺が要素33に接続された面材であり、要素33とともに積層造形により形成される。格子壁片35は、規制部材27となる以外にも、外殻17を構成することもできる。なお,図3には、1つの格子壁片35を示しているが、格子壁片35は、複数箇所で縦横に連続して形成されてもよく、分散して配置されていてもよい。
【0016】
格子壁片35により形成された規制部材27は、流路19の内部における熱交換媒体の流動方向を規制するとともに、流路断面積に応じて流速を変更する。格子構造体21を構成する多数の格子31は、要素33の配列によって様々な形状を生成できる。
【0017】
ここで、格子構造体21の格子31の基本的な形状パターンについて説明する。
図4は、格子構造体21の格子31の各種形状パターンを(A)~(F)に示す概略説明図である。
【0018】
格子31(単位格子)の形状としては、図4の(A)に示すような6面体である立方体形状(ヘキサ形状)、図4の(B)に示すような4面体である三角錐形状(テトラ形状)、図4の(C)に示すような5面体である三角柱形状(プリズム形状)、図4の(D)に示すような5面体である四角錐形状(ピラミッド形状)等の立体形状がある。また、格子31としては、図4の(E)に示すような任意多面体形状(ポリヘドラ形状)、又は図4の(F)に示すようなハニカム形状であってもよい。
【0019】
上記構成の構造体Wにおいては、図2に示すように、流路入口23から流入した熱交換媒体が、格子壁片35(図3)からなる複数の規制部材27によって流動方向を変更しながら流路出口25へ向かって流れる。熱交換媒体の流動方向は、規制部材27の形状によって任意に設定でき、熱交換媒体を所望の位置に向けて導くことができる。また、流路19の規制部材27によって狭くなった狭隘部37では、熱交換媒体の流速が高められる。すると、狭隘部37における熱交換性能は、他の部分よりも向上することとなり、冷却能力、又は加熱能力を強めることができる。
【0020】
そのため、例えば冷却能力を高めたい箇所に積極的に熱交換媒体を多く流したり、狭隘部37を形成したりすることで、冷却性能を選択的に向上できる。加熱についても同様である。
【0021】
以上、説明したように、本構成の構造体Wは、格子31を多次元に組み合わせた格子物の集合体である格子構造体21によって構成される。このため、構造体内部の格子構造体21が構造体Wの機械的強度を高めつつ、流路19の内部における熱交換媒体の流れを、格子壁片35で形成される規制部材27によって自在に変更できる。よって、特に冷却又は加熱が必要とされる箇所に、構造体Wよりも低温又は高温にされた熱交換媒体を導いて、局所的に熱交換性能を高めることが簡単に行える。
【0022】
例えば、図1に示すロータにおいて、ブレード11の稜線、又は隣り合うブレード11同士の間の谷部に沿って、螺旋状に前述した流路19を画成し、この流路19に熱交換媒体を流すことで、ブレード11の稜線又は谷部の表面近傍に熱交換媒体を集中的に導いて熱交換させることができる。これにより、効率よく局所的な熱交換が可能となる。また、規制部材27の形状を調整して、例えば流路19の流路断面積が小さくなる狭隘部を設けることで、狭隘部での熱交換媒体の流速を高め、熱交換効果をより向上させることができる。
【0023】
次に、上記した構造体Wの各種の変形例について説明する。
(変形例1)
図5は、変形例1の構造体W1の軸方向に沿う断面を模式的に示す概略断面図である。
変形例1の構造体W1は、外殻17によって囲われた構造体内部は、格子構造体21により構成され、構造体W1の中心軸に沿って、内殻となる規制部材41が形成される。これにより、外殻17と規制部材41との間に流路19が画成される。
【0024】
規制部材41は、格子構造体21の格子31の一部を埋める複数の格子壁片35(図3)からなるもので、複数の格子壁片35が連設されて内殻を形成する。
本構成では、流路入口23と流路出口25との間で、流路19が分岐流路43に分岐される。図5においては、構造体W1の一断面における分岐流路43を示しているが、分岐流路43は、周方向に区分された複数の分岐流路であるほかに、構造体W1の軸線回りに連続する環状の空間であってもよい。以降に説明する他の変形例についても同様に、分岐流路は、規制部材等によって区分された複数の分岐流路であってもよく、環状の空間であってもよい。
【0025】
図5に示す分岐流路43は、流路の長手方向に沿って、その流路断面積が変化している。本構成の構造体W1では、流路入口23から流入した熱交換媒体は、規制部材41によって流動方向が分岐流路43に分岐され、各分岐流路43内を流路出口25へ向かって流れる。このとき、熱交換媒体は、分岐流路43における他の部分よりも狭くなった狭隘部45で流速が高められる。
【0026】
したがって、この構造体W1においては、構造体W1の外殻17に沿って熱交換媒体が流れ、外殻17の熱交換を促進でき、分岐流路43における流速が高められた狭隘部45で熱交換性能が向上する。これにより、特に熱交換を活発に行わせる領域を選択的に設定できる。なお、この場合でも、流路19内部を含む構造体内部が格子構造体21により形成されるため、構造体W1の機械的強度を高く維持できる。
【0027】
(変形例2)
図6は、変形例2の構造体W2の軸方向に沿う断面を模式的に示す概略断面図である。
変形例2の構造体W2は、図5に示す変形例1の構造体W1の規制部材41の代わりとして、この規制部材41の内側領域に規制部材51を配置している。規制部材51は、格子31の一部を埋める格子壁片35(図3)を多数配置した格子物の集合体であり、規制部材51の領域外と比較して、格子壁片35の配置密度が高くなっている。
【0028】
図6に示す格子壁片35は、構造体W2の軸方向に直交する格子面に配置することで、熱交換媒体の軸方向への流れを選択的に規制している。ただ、格子壁片35は、必ずしも軸方向に直交する格子面に配置することに限らず、他の方向に向く格子面に配置した構成、又はこれら各方向に向く格子壁片35が混在した構成であってもよい。熱交換媒体の流れを妨げる作用を発生できれば、格子壁片35を配置する向きは特に限定されない。格子壁片35は、配置密度が高いほど、熱交換媒体の流れを規制しやすくなり、熱交換媒体を所望の方向へ流動させやすくなる。
【0029】
多数の格子壁片35を有する規制部材51が、構造体W2の中央部分の領域に配置されることで、流路入口23から供給された熱交換媒体の軸方向への流れが規制される。そのため、熱交換媒体は、流路入口23から径方向外側に向けて分散して流れ、構造体W2の外周部に形成される環状又は複数の分岐流路53に熱交換媒体が流れ込む。
【0030】
分岐流路53の流路入口23と流路出口25との間では、それぞれ流路長手方向に沿って、その流路断面積が変化している。したがって、流路入口23から流入した熱交換媒体は、各分岐流路53における他の部分よりも狭くなった狭隘部55で流速が高められる。したがって、この構造体W2においても、分岐流路53を流れる熱交換媒体は、流速が高められる狭隘部55で熱交換性能を向上させることができる。
【0031】
(変形例3)
図7は、変形例3の構造体W3の軸方向に沿う断面を模式的に示す概略断面図である。
変形例3の構造体W3は、格子構造体21の格子のサイズがそれぞれ異なる複数種の格子物を含んでいる。構造体W3の中心軸に沿って、大小の格子のサイズのうち、小サイズの格子31Aを多次元的に組み合わせた格子物が規制部材61として配置されている。規制部材61の周囲には、大サイズの格子31Bを多次元的に組み合わせた格子物が流路19として配置されている。小サイズの格子31Aは、大サイズの格子31Bよりも熱交換媒体の流動抵抗が大きいため、熱交換媒体の流れを妨げる効果がある。
【0032】
この構造体W3では、構造体内部の流路19が、規制部材61によって流路入口23と流路出口25との間で、環状又は複数の分岐流路63に分岐される。分岐流路63は、流路19の長手方向に沿って、その流路断面積が変化する流路である。
【0033】
構造体W3では、流路入口23から流入した熱交換媒体は、構造体中央部分の領域に設けられた規制部材61により、軸方向への流れが一旦制限される。すると、流入した熱交換媒体は、規制部材61よりも流動抵抗の低い外周側の分岐流路63へ流れて、分岐流路63内を流路出口25へ向かって流れる。また、熱交換媒体は、分岐流路63における他の部分よりも狭くなった狭隘部65で流速が高められる。したがって、この構造体W3においても、熱交換媒体が流路入口23から径方向外側に向けて分散して流れ、構造体W3の外周部に形成される環状又は複数の分岐流路53に流れ込む。また、分岐流路53を流れる熱交換媒体は、流速が高められる狭隘部65で熱交換性能を向上させることができる。
【0034】
なお、構造体W3において、規制部材61における流路入口23を臨む位置に、格子31の一部を埋める複数の格子壁片35を配置させてもよい。こうすることで、流路入口23から流入した熱交換媒体が規制部材61の格子壁片35に突き当たり、熱交換媒体が規制部材61の内部に入り込みにくくなる。よって、熱交換媒体を分岐流路63により導きやすくなる。
【0035】
上記した実施形態では、構造体としてブレード11を有するロータを例示して説明したが、構造体としては、ロータのような回転軸体に限らない。以下、他の構造体の例を説明する。
【0036】
図8は、構造体の他の例を示す図であって、(A)は角筒状の構造体の概略斜視図、(B)は円筒状の構造体の概略正面図である。
図8の(A)に示す構造体W4は、角筒状の筒体71と、筒体71の内部に設けられ、複数の格子31を多次元に組み合わせた格子物の集合体からなる格子構造体21とを有する。
この構成によれば、筒体71は、格子構造体21によって内部から支持されて、機械的強度が確保される。また、格子構造体21が設けられた領域には熱交換媒体が供給されることで、格子構造体21が熱交換媒体の流路73として機能する。
【0037】
図8の(B)に示す構造体W5は、円筒状の筒体81と、この筒体81の内部の中心に挿通された配管82と、配管82と筒体81との間に設けられた格子構造体21とを有する。
この構成によれば、筒体81は、格子構造体21によって内部から支持されて、機械的強度が確保される。また、格子構造体21が設けられた領域に熱交換媒体が流されることで、格子構造体21が熱交換媒体の流路83となる。これにより、筒体81の中心に支持された配管82との熱交換、又は配管82の断熱効果を得ることができる。
【0038】
次に、本実施形態に係る製造方法について、ブレード11を備えた構造体W(図1参照)を製造する場合を例に説明する。
図9は、構造体Wの製造方法を説明するための積層方向に沿う概略断面図である。
【0039】
本実施形態に係る構造体は、レーザ粉末焼結積層造形(SLM:Selective Laser Melting)法、レーザ粉体肉盛溶接(LMD:Laser Metal Deposition)、選択的レーザ溶接(DMLS:Direct Metal Laser Sintering)等の粉末積層造形法によって製造される。
【0040】
粉末積層造形法では、金属粉末にレーザ又は電子ビームを照射して溶融・凝固させることにより、格子31を多元的に組み合わせた格子物の集合体である格子構造体21を造形する。この構造体Wは、下方から上方に向けて順次に層を積み重ねることで造形される。
【0041】
つまり、粉末積層造形法では、構造体Wを造形する目標形状のモデルを生成し、このモデルを鉛直方向に複数の層に分割する。得られた分割層に対応して、金属粉末を溶融、凝固させた造形層を下層から上層へ順次に積層する。このとき、外殻17及び規制部材27を含む層の下層には、外殻17及び規制部材27を支持する格子31、又は格子壁片35を含む格子31を形成する。これにより、外殻17及び規制部材27がオーバーハング形状を有する場合でも、常にその下側に格子構造体21が配置され、外殻17及び規制部材27を支持できる。よって、形状を崩すことなく構造体Wを円滑に且つ安定して製造できる。また、外殻17及び規制部材27となる格子壁片35を形成した際、流路19の内部の不要な金属粉末を外部へ取り出すための粉抜き孔を形成しておく。
【0042】
軸部13,15、外殻17及び規制部材27が形成された格子構造体21を造形した後、この造形物を、金属粉末を敷き詰めた粉末床から取り出す。そして、軸部13及び外殻17の外側部分の不要な格子構造体21を取り除くとともに、粉抜き孔から内部の金属粉末を外部に排出し、粉抜き孔を封鎖する。
【0043】
上記した構造体の製造方法によれば、格子31を多次元に組み合わせた格子物の集合体である格子構造体21が、流路19を含む構造体内部に設けられて、機械的強度及び熱交換性能に優れた構造体Wにできる。また、格子31の枠を埋める格子壁片35を形成することで、この格子壁片35によって任意の形状、位置で流路を形成でき、設計自由度を向上できる。格子壁片35は、格子31を単位に任意形状に形成できるため、製造(造形)を煩雑にすることなく、簡単に形成できる。
【0044】
また、積層造形工程において、構造体の外殻17、及び流路19の内壁を含む層は、それぞれの下層の格子31又は格子壁片35を含む格子31によって支持できる。これにより、外方へ張り出すオーバーハング部を有する構造体Wであっても、その形状通りに安定して製造できる。
【0045】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0046】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 内部に熱交換媒体を流す流路が設けられた構造体であって、
前記流路は、格子を多次元に組み合わせた格子物の集合体である格子構造体を有し、
前記格子構造体は、前記格子の少なくとも一部を埋める格子壁片を有する、構造体。
この構造体によれば、流路が格子を多次元に組み合わせた格子物の集合体である格子構造体を有する。したがって、格子構造体によって機械的強度を高めつつ、流路の内部での熱交換媒体の流れを良好にして熱交換性能を高めることができる。また、格子構造体の格子壁片によって、流路内を流れる熱交換媒体の流れを自在に調整でき、特定部分の熱交換性能を選択的に制御できる。
【0047】
(2) 前記流路には、前記熱交換媒体の流動方向を規制して前記熱交換媒体の流速を変更する規制部材が配置され、
前記規制部材は、前記格子壁片を含んで構成される、(1)に記載の構造体。
この構造体によれば、格子壁片からなる規制部材によって流路を流れる熱交換媒体の流動方向を規制して流速を変更できる。これにより、特に熱交換が必要な特定部分に、流速を高めた熱交換媒体を円滑に導いて迅速に熱交換できる。
【0048】
(3) 前記格子構造体は、前記格子のサイズがそれぞれ異なる複数種の前記格子物を含み、
前記規制部材は、大小の前記格子のサイズのうち、小サイズの格子を多次元に組み合わせた格子物を含んで構成される、(2)に記載の構造体。
この構造体によれば、小サイズの格子を多次元に組み合わせた格子物が、大サイズの格子と比較して熱交換媒体の流れを抑制するため、熱交換媒体を大サイズの格子側へ導くことができる。これにより、熱交換媒体の流動方向を制御できる。
【0049】
(4) 前記熱交換媒体を前記流路内に供給する流路入口と、前記流路内の前記熱交換媒体を排出する流路出口と、を有し、
前記流路は、前記流路入口と前記流路出口との間に、流路断面積が異なる複数の分岐流路に分岐され、
前記分岐流路は、流路長手方向に沿って流路断面積が変化している、(1)~(3)のいずれか一つに記載の構造体。
この構造体によれば、流路入口から供給された熱交換媒体を、分岐流路へ導いて流路出口から排出できる。このとき、分岐流路の流路断面積が小さい部分では、他の部分よりも流速を高められる。したがって、特に熱交換が必要な部分で熱交換媒体の流速を高めることで、その部分を円滑かつ迅速に熱交換させることができる。
【0050】
(5) 前記流路の内部に設けられた前記格子構造体は、前記流路を形成する流路壁を支持している、(1)~(4)のいずれか一つに記載の構造体。
この構造体によれば、格子構造体によって流路壁が支持されているので、流路壁を含む構造体の機械的強度を向上できる。
【0051】
(6) 前記流路の内部に設けられた前記格子壁片は、前記格子構造体とともに前記流路壁を支持している、(5)に記載の構造体。
この構造体によれば、格子構造体とともに格子壁片によって流路を形成する流路壁が支持されているので、構造体の機械的強度をより高めることができる。
【0052】
(7) 熱交換媒体を流す流路が内蔵された構造体の製造方法であって、
前記流路の内部に、格子を多次元に組み合わせた格子物の集合体である格子構造体を積層造形法で形成する積層造形工程を含み、
前記流路を形成する流路壁の少なくとも一部を、前記格子の少なくともいずれかの枠内を埋める格子壁片で形成する、構造体の製造方法。
この構造体の製造方法によれば、積層造形工程によって格子構造体が流路の内部に設けられ、これにより機械的強度及び冷却性能に優れた構造体を容易に製造できる。また、格子の枠を埋める格子壁片を形成して、この格子壁片によって流路壁を自在に形成できる。
【0053】
(8) 前記積層造形工程において、前記格子構造体とともに前記格子壁片を形成する、(7)に記載の構造体の製造方法。
この構造体の製造方法によれば、積層造形工程において、格子壁片を格子構造体とともに造形することで、効率よく規制部材を形成できる。
【0054】
(9) 前記積層造形工程は、構造体の目標形状のモデルを鉛直方向に複数の層に分割して、得られた分割層に対応して金属粉末を溶融、凝固させて形成した造形層を、下層から上層へ順次に積層する工程を含み、
前記モデルを複数の層に分割した際に、前記構造体の外殻及び前記流路壁の下層には、少なくとも前記格子を含む前記格子構造体が最下層から支持されるように配置する、(7)又は(8)に記載の構造体の製造方法。
この構造体の製造方法によれば、積層造形工程において、外殻及び流路壁を含む層が、その下層の格子によって支持されるため、例えば、外方へ張り出すオーバーハング部を有する構造体であっても、円滑に製造できる。
【0055】
(10) 前記流路壁と最下層とを接続する前記格子に、前記格子壁片を形成する、(9)に記載の構造体の製造方法。
この構造体の製造方法によれば、積層造形工程において、流路壁を含む層が、その下層の格子及び格子に形成した格子壁片によって支持され、例えば、外方へ張り出すようなオーバーハング部分を有する構造体をより円滑に製造できる。
【符号の説明】
【0056】
19 流路
21 格子構造体
23 流路入口
25 流路出口
27,41,51,61 規制部材
31,31A,31B 格子
35 格子壁片
43,53,63 分岐流路
W,W1,W2,W3,W4,W5 構造体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9