(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】取り出し具付き容器
(51)【国際特許分類】
B65D 77/04 20060101AFI20240509BHJP
B65D 8/06 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B65D77/04
B65D8/06 A
(21)【出願番号】P 2020196533
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 浩通
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-183236(JP,A)
【文献】特開2020-179903(JP,A)
【文献】特開2009-067411(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0738477(KR,B1)
【文献】特開2009-149319(JP,A)
【文献】特開2018-099158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 67/00-79/02
B65D 8/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状をなし内容物を収容する内容器と、
外側底部、及び外側周壁部を有し、該外側底部と該外側周壁部の内側に前記内容器を収容可能であって、該外側周壁部に上方を開口させた縦溝部を有する外容器と、
前記内容物を掬うための掬い部と、該掬い部で該内容物を掬う際に持ち手となる持ち手部とを有し、前記縦溝部に収容される取り出し具と、を備え、
前記外容器は、前記縦溝部に収容された前記取り出し具を押し下げると該取り出し具を上方に持ち上げる弾性部を有
し、
前記内容器は、前記外容器に収容された際に前記外側周壁部の内側に位置する内側周壁部を有し、
前記内側周壁部は、径方向外側に向けて突出して前記縦溝部よりも上方に位置する突起部を有し、
前記持ち手部は、前記掬い部を下方に指向させた状態で前記取り出し具を前記縦溝部に収容した際に前記突起部に当接する支持部と、該支持部に対して反対面に設けられ、該持ち手部を該縦溝部に挿入した際に該突起部に係合可能な持ち手部側突出部とを備える、取り出し具付き容器。
【請求項2】
前記持ち手部は、前記掬い部に対してスライド可能であって、
前記掬い部は、該掬い部を下方に指向させた状態で前記取り出し具を前記縦溝部に収容した際に、前記突起部の下方に位置する掬い部側突出部を備える、請求項
1に記載の取り出し具付き容器。
【請求項3】
前記掬い部及び前記持ち手部の何れか一方は、弾性変形可能な係合片を有し、該掬い部及び該持ち手部の何れか他方は、該掬い部に対して該持ち手部をスライドさせた際に該係合片が係合する係合保持部を有する請求項
2に記載の取り出し具付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容した内容物を掬い取るための取り出し具を備える取り出し具付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばクリーム状やゲル状の内容物(化粧料など)を容器本体から取り出す(掬い取る)にあたっては、スプーンやへらのような形態をした取り出し具(スパチュラとも言う)が使用される。取り出し具を使用する場合は収容した内容物に指等を差し入れる必要がなく、衛生面に優れる利点があるものの、使用した取り出し具の置き場所に困ることになる。
【0003】
このような問題点に対応したものとして、容器本体と外蓋とで取り囲まれる空間内に中蓋を設け、保管時等にはこの中蓋の上に載置できるようにした取り出し具付き容器が既知となっている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでこのような取り出し具は、中皿の深さよりも高さが低く収まるように薄板状に形成して、取り付けられる外蓋に干渉しないようにしている。このため、取り出し具を中蓋からつまみ上げようとしても、指掛かりとなる部分が少ないために持ちにくく、つまみ上げにくいという問題がある。
【0006】
本発明はこのような点を解決することを課題とするものであって、収容した取り出し具を簡単に取り外すことができる取り出し具付き容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、有底筒状をなし内容物を収容する内容器と、
外側底部、及び外側周壁部を有し、該外側底部と該外側周壁部の内側に前記内容器を収容可能であって、該外側周壁部に上方を開口させた縦溝部を有する外容器と、
前記内容物を掬うための掬い部と、該掬い部で該内容物を掬う際に持ち手となる持ち手部とを有し、前記縦溝部に収容される取り出し具と、を備え、
前記外容器は、前記縦溝部に収容された前記取り出し具を押し下げると該取り出し具を上方に持ち上げる弾性部を有し、
前記内容器は、前記外容器に収容された際に前記外側周壁部の内側に位置する内側周壁部を有し、
前記内側周壁部は、径方向外側に向けて突出して前記縦溝部よりも上方に位置する突起部を有し、
前記持ち手部は、前記掬い部を下方に指向させた状態で前記取り出し具を前記縦溝部に収容した際に前記突起部に当接する支持部と、該支持部に対して反対面に設けられ、該持ち手部を該縦溝部に挿入した際に該突起部に係合可能な持ち手部側突出部とを備える、取り出し具付き容器である。
【0010】
前記持ち手部は、前記掬い部に対してスライド可能であって、
前記掬い部は、該掬い部を下方に指向させた状態で前記取り出し具を前記縦溝部に収容した際に、前記突起部の下方に位置する掬い部側突出部を備えることが好ましい。
【0011】
前記掬い部及び前記持ち手部の何れか一方は、弾性変形可能な係合片を有し、該掬い部及び該持ち手部の何れか他方は、該掬い部に対して該持ち手部をスライドさせた際に該係合片が係合する係合保持部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の取り出し具付き容器によれば、外容器の縦溝部に取り出し具を収容することができるため、取り出し具の置き場所に困ることがない。また収容した取り出し具を押し下げると、弾性部によってこれを上方に持ち上げることができるため、外容器から簡単に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る取り出し具付き容器の一実施形態に関する分解斜視図である。
【
図2】
図1に示した取り出し具付き容器の側面視での断面図である。
【
図3】
図1に示した取り出し具に関し、(a)は持ち手部のA-A断面図であり、(b)は持ち手部のB-B断面図であり、(c)は掬い部のC-C断面図であり、(d)は掬い部のD-D断面図である。
【
図4】(a)は収容した取り出し具を押し下げた状態を示した図であり、(b)は弾性部によって取り出し具が上方に持ち上げられた状態を示した図である。
【
図5】掬い部側突出部が突起部に係合して、掬い部に対して持ち手部がスライドする状態を示した図である。
【
図6】持ち手部側突出部を突起部に係合させて、内容器を外容器から取り外す状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明に係る取り出し具付き容器の一実施形態について説明する。なお、本明細書等において上下方向とは、図示した内容器1の軸線Oに沿う方向である。また径方向とは、軸線Oに対して垂直な面内で軸線Oと直交する方向であり、周方向とは、この面内で軸線Oを中心として周回する方向である。
【0015】
図1に示すように本実施形態の取り出し具付き容器10は、内容器1と、外容器2と、取り出し具5と、キャップ8で構成されている。ここで外容器2は、外容器本体3と弾性部材4で構成され、取り出し具5は、掬い部6と持ち手部7とで構成されている。
【0016】
内容器1は、
図2に示すように軸線Oを中心とする円板状の内側底部1aと、内側底部1aの外縁部に連結する円筒状の内側周壁部1bとを備えて、有底筒状に形成されている。内側底部1aと内側周壁部1bの内側には、内容物が収容される収容空間Sが設けられている。
【0017】
そして内側周壁部1bの上端部には、径方向外側に向けて延在した後、下方に向けて延在して断面視L字状になる嵌合部1cが設けられている。なお図示は省略するが、嵌合部1cにおける周壁内面(後述する挿入壁部3fの外周面に対向する部位)には、
図1に示す係合突起3gに係合する係合凹部が設けられている。
【0018】
また本実施形態における内容器1の嵌合部1cは、
図1に示すようにその一部が上下方向に切り欠かれていて、この切り欠かれた部位に、内側周壁部1bから径方向外側に突出する縦型リブ状の突起部1dが設けられている。
【0019】
外容器本体3は、
図2に示すように円板状をなす外側底部3aと、外側底部3aの外縁部から上方に向けて立ち上がる円筒状の外側周壁部3bを備えている。外側周壁部3bの上部3cは、下部3dに比して薄肉になっている。また上部3cは、その外周面において雄ねじ部3eを備えていて、またその上端には、L字状になる嵌合部1cの内側に入り込む挿入壁部3fが設けられている。そして
図1に示すように挿入壁部3fの外周面には、径方向外側に向けて突出するとともに周方向に間隔をあけて設けられる係合突起3gが設けられている。係合突起3gは、上述したように内容器1に設けた係合凹部に係合するものであり、これにより内容器1は、外容器本体3に対して着脱可能に保持される。すなわち、内容器1に収容した内容物を使い切った後は、使用後の内容器1を外容器本体3から取り外して新たな内容器1に交換することができる。
【0020】
外側周壁部3bには、上方から下方に向けて延在する縦溝部3hが設けられている。
図1に示すように本実施形態の縦溝部3hは、外側周壁部3bの上部3cを縦方向に所定の幅で完全に切り欠くとともに、下部3dを径方向内側が凹状になるように切り欠くものである。
【0021】
また
図2に示すように外側底部3aの上面には、弾性部材4を嵌合保持するための第一凹部3jと、縦溝部3hの直下に位置し、第一凹部3jよりも深さが深い第二凹部3kとが設けられている。
【0022】
弾性部材4は、
図1に示すように板状であって平面視でT字状になる基部4aを備えている。基部4aには、板状であって平面視で矩形状をなし、上下方向に撓み変形可能な弾性部4bが一体に連結している。弾性部4bは、基部4aに連結する根元部4cに対して厚みが厚い先端部4dを備えている。本実施形態の先端部4dは、
図2に示すように側面視において、径方向外側に向かうにつれて上方に向けて湾曲する形状をなしている。
【0023】
基部4aは、第一凹部3jに嵌合させることが可能であって、これにより弾性部材4は、外容器本体3に保持される。また弾性部4bは、基部4aが第一凹部3jに嵌合した状態で第二凹部3kに位置していて、先端部4dは、縦溝部3hの直下に位置している。
【0024】
掬い部6は、
図3(c)、(d)に示すように、全体的に板状になる本体部6aを備えている。本体部6aには、幅方向外側に広がるように延在する一対の係合片6bが設けられている。係合片6bは、幅方向内側に撓むように弾性変形可能である。また本体部6aには、幅が次第に狭くなる形状となる掬い部先端部6cが一体に連結している。掬い部先端部6cは、
図3(d)に示すように、本体部6aと連結する部位の厚みが本体部6aよりも厚くなる突出部(掬い部側突出部6d)を備えている。
【0025】
持ち手部7は、
図3(a)、(b)に示すように、全体的に矩形状に形成され、厚み方向に間隔をあけて配置される第一壁部7a及び第二壁部7bと、第一壁部7aと第二壁部7bとを幅方向外側で連結する一対の側壁部7cとを備えている。なお第一壁部7aは、後述するように突起部1dに当接する部位であって、本明細書等における「支持部」に相当する。そして第二壁部7bには、
図3(b)に示すように、厚み方向外側に突出する突出部(持ち手部側突出部7e)が設けられている。
【0026】
そして第一壁部7a、第二壁部7b、及び側壁部7cの内側には、長手方向の一端部が開口する空間(スライド空間7d)が区画されている。スライド空間7dには、本体部6aを挿入することが可能であって、これにより持ち手部7を、掬い部6に対してスライドさせることができる。またスライド空間7dの幅方向外側には、側壁部7cを貫く孔部7fが設けられている。孔部7fは、掬い部6に対して持ち手部7をスライドさせた際、係合片6bに係合する部位であって、本明細書等における「係合保持部」に相当する。
【0027】
キャップ8は、有蓋筒状をなしていて、その内周面には、不図示の雌ねじ部が設けられている。この雌ねじ部は、雄ねじ部3eに対応する形状となっていて、雌ねじ部を雄ねじ部3eに螺合させることによって、キャップ8で外容器本体3の内側を閉塞することができる。
【0028】
このような部材によって構成される取り出し具付き容器10は、外容器本体3の縦溝部3hに、取り出し具5を収容することができる。取り出し具5を収容するにあたっては、掬い部6に持ち手部7が近づくようにこれをスライドさせて、掬い部6と持ち手部7との全長を短くしておく。そして掬い部6を下方に指向させ、また第一壁部7aが突起部1d側を向く状態で、取り出し具5を縦溝部3hに挿入する。取り出し具5を縦溝部3hに挿入した際、掬い部6の下端部は、先端部4dによって支持される。また第一壁部7aは、突起部1dに支持され、第二壁部7bは、縦溝部3hを区画する外側周壁部3bの径方向内側部で支持される。従って、縦溝部3hに収容された取り出し具5を安定的に支持することができる。
【0029】
そして収容された取り出し具5を外容器本体3から取り外すにあたっては、
図4(a)に示すように、取り出し具5を下方に向けて押し下げる。これにより、掬い部6によって弾性部4bの先端部4dが押し下げられて、弾性部4bが下方に向けて撓み変形する。このため取り出し具5は、弾性部4bからの弾性力によって上方に持ち上げられるため、外容器本体3から簡単に取り外すことができる。なお弾性部4bは、深さが深い第二凹部3kに設けられていて、これを下方に向けて大きく撓ませることができるため、十分な弾性力で取り出し具5を上方に持ち上げることができる。
【0030】
また本実施形態の先端部4dは、初期状態においては、
図2に示したように径方向外側に向かうにつれて上方に向けて湾曲する形状となっている。このため、下方に撓んだ弾性部4bが復元する際、先端部4dで持ち上げられる掬い部6は、
図4(b)に示すように、径方向内側に寄せられるようにして上昇する。すなわち、図示したように取り出し具5は、弾性部4bが復元することで持ち手部7が径方向外側に倒れるようにして持ち上げられるため、持ち手部7が指で摘まみやすくなる。従って、取り出し具5を外容器本体3からより簡単に取り外すことができる。
【0031】
また掬い部6は、上述したように掬い部側突出部6dを備えている。このため、
図5に示すように持ち手部7を持ち上げる際、掬い部側突出部6dが突起部1dに係合するため、掬い部6を持ち上げる際に、掬い部6から離れる向きに持ち手部7をスライドさせることができる。すなわち、取り出し具5を外容器本体3から取り外した際、取り出し具5の全長は長くなっている。従って、収容空間Sに収容された内容物が少なくなっても、長くなった取り出し具5で簡単に掬い取ることができる。また、掬い部6から離れる向きに持ち手部7がスライドすると、係合片6bが孔部7fに係合するため、使用中に取り出し具5の全長が不用意に短くなる不具合を防止することができる。
【0032】
収容空間Sに収容された内容物を使い切った際は、
図6に示すように取り出し具5を使用して、使用後の内容器1を取り外すことができる。内容器1を取り外すにあたっては、まず取り出し具5を、図示したように第二壁部7bが突起部1d側を向く状態で、持ち手部7を縦溝部3hに挿入する。そして、掬い部6が径方向外側に倒れるように取り出し具5を傾ける。これにより、掬い部6を押し下げると、外側周壁部3bの上端部に押し当たった第一壁部7aが梃の原理の支点として機能し、突起部1dに対して下方から係合する持ち手部側突出部7eが作用点として機能するため、内容器1を簡単に取り外すことができる。特に、図示したように掬い部6に対して持ち手部7をスライドさせて取り出し具5の全長を長くしておくと、掬い部6に加える力が少なくて済むため、一層取り外しやすくなる。
【0033】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0034】
例えば本実施形態では、掬い部6に対して持ち手部7がスライドできるように構成したが、スライド機能は必要に応じて設ければよい(例えば外容器本体3の高さが高くて全長が長い取り出し具5であっても収容できる場合等は、スライド機能は省いてもよい)。また本実施形態では、掬い部6に係合片6bを設け、持ち手部7に孔部7fを設けたが、係合片6bを持ち手部7に設け、孔部7fを掬い部6に設けてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1:内容器
1a:内側底部
1b:内側周壁部
1c:嵌合部
1d:突起部
2:外容器
3:外容器本体
3a:外側底部
3b:外側周壁部
3c:上部
3d:下部
3e:雄ねじ部
3f:挿入壁部
3g:係合突起
3h:縦溝部
3j:第一凹部
3k:第二凹部
4:弾性部材
4a:基部
4b:弾性部
4c:根元部
4d:先端部
5:取り出し具
6:掬い部
6a:本体部
6b:係合片
6c:掬い部先端部
6d:掬い部側突出部
7:持ち手部
7a:第一壁部(支持部)
7b:第二壁部
7c:側壁部
7d:スライド空間
7e:持ち手部側突出部
7f:孔部(係合保持部)
8:キャップ
10:取り出し具付き容器
O:軸線
S:収容空間