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特許7485598大きな視野を生成するための表示装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】大きな視野を生成するための表示装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G03H 1/26 20060101AFI20240509BHJP
   G03H 1/08 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
G03H1/26
G03H1/08
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2020521373
(86)(22)【出願日】2018-10-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 EP2018078367
(87)【国際公開番号】W WO2019076963
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-10-12
(31)【優先権主張番号】17197171.6
(32)【優先日】2017-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507230267
【氏名又は名称】シーリアル テクノロジーズ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SEEREAL TECHNOLOGIES S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(72)【発明者】
【氏名】ライスター, ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】クロル, ボ
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/105281(WO,A1)
【文献】特表2008-525832(JP,A)
【文献】特表2014-503836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03H 1/00 - 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元のオブジェクトまたはシーンおよび/または三次元のオブジェクトまたはシーンを表すための表示装置であって、
コヒーレントな光を放射するための少なくとも1つの照光装置と、
入射光を変調するための少なくとも1つの空間光変調装置と、
少なくとも1つの光学システムと、
を備え、
前記少なくとも1つの光学システムは前記少なくとも1つの空間光変調装置の複数の結像のため、および前記少なくとも1つの空間光変調装置のイメージの数に従って仮想視聴ウィンドウを生成するために提供され、
前記少なくとも1つの空間光変調装置の個々のイメージはセグメントとして互いに組み合わされて視野を形成し、前記視野は少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントおよび少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントを含み、
前記高解像度ホログラフィックセグメントは前記低解像度ホログラフィックセグメントの内側に位置し、最大のセグメントは前記視野を形成する
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの光学システムは前記少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントの生成と組み合わせて、少なくとも1つの仮想視聴ウィンドウを生成するために提供され、
前記少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントの前記仮想視聴ウィンドウのサイズは前記視野内の前記オブジェクトまたは前記シーンを観察するオブザーバの目の瞳孔のサイズと等しいかまたはそれより大きいことを特徴とする、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントの前記少なくとも1つの仮想視聴ウィンドウのサイズが、6mm~15mmの範囲にあることを特徴とする、請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの光学システムは前記少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの前記生成と組み合わせて、少なくとも1つの仮想視聴ウィンドウを生成するために提供され、
前記少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの前記仮想視聴ウィンドウのサイズは前記視野内の前記オブジェクトまたは前記シーンを観察するオブザーバの目の瞳孔のサイズよりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの前記少なくとも1つの仮想視聴ウィンドウのサイズが、0.5mm~2mmの範囲にあることを特徴とする、請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
複数の低解像度ホログラムセグメント及び/又は複数の高解像度ホログラムセグメントが、異なるサイズの仮想視聴ウィンドウを有することを特徴とする、請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
オブザーバ面における、前記少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの前記仮想視聴ウィンドウと、前記少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントの前記仮想視聴ウィンドウと、の前記生成が、同一位置に提供されることを特徴とする、請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの前記仮想視聴ウィンドウと、前記少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントの前記仮想視聴ウィンドウとの少なくとも部分的な重なりが提供されることを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
少なくとも2つの空間光変調装置が提供され、一方の空間光変調装置は前記少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントを生成するために提供され、他方の空間光変調装置は前記少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントを生成するために提供されることを特徴とする、請求項1に記載の表示装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントを生成するための前記一方の空間光変調装置と、前記少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントを生成するための前記他方の空間光変調装置とが、異なるように構成されることを特徴とする請求項9に記載の表示装置。
【請求項11】
前記光学システムが、少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメントを備えることを特徴とする、請求項1に記載の表示装置。
【請求項12】
前記光学システムが、2つの切替可能または制御可能な光学エレメントであって、前記少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントを生成するために切替可能または制御可能である第1の切替可能または制御可能な光学エレメントと、前記少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントを生成するために切替可能または制御可能である第2の切替可能または制御可能な光学エレメントと、の2つの切替可能または制御可能な光学エレメントを備えることを特徴とする、請求項11に記載の表示装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントおよび前記少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントを生成するために、前記少なくとも1つの空間光変調装置に、単一視差エンコードの形式のホログラムが書かれることを特徴とする、請求項1に記載の表示装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントを生成するために、全視差エンコーディングの形式のホログラムが前記少なくとも1つの空間光変調装置に書かれ、前記少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントを生成するために、単一視差エンコーディングの形式のホログラムが前記少なくとも1つの空間光変調装置に書かれることを特徴とする、請求項1に記載の表示装置。
【請求項15】
オブザーバ面に存在するより高い回折次元を除去するために、少なくとも1つのフィルタ配置が提供されることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項16】
注視トラッキング装置および少なくとも1つのトラッキング装置が提供されることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項17】
前記少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントの前記仮想視聴ウィンドウをトラッキングするために、および/または、前記少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの前記仮想視聴ウィンドウをトラッキングするために、前記少なくとも1つのトラッキング装置が提供されることを特徴とする請求項16に記載の表示装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つのトラッキング装置は、前記少なくとも1つの空間光変調装置のイメージの位置、または前記少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントおよび/または前記少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの位置を、前記注視トラッキング装置によって決定されるオブザーバの目の焦点位置および注視方向に適合させるように提供されることを特徴とする請求項16に記載の表示装置。
【請求項19】
前記注視トラッキング装置はオブザーバの目の瞳孔の位置を検出し、前記オブジェクト又は前記シーンを観察するオブザーバの注視をトラッキングするために設けられることを特徴とする請求項16に記載の表示装置。
【請求項20】
前記視野は、前記少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントと、前記少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントと、少なくとも1つの立体視セグメントと、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の表示装置。
【請求項21】
前記少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメント、前記少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメント、および前記少なくとも1つの立体視セグメントが、前記視野において部分的または完全に重なるように配置されることを特徴とする、請求項20に記載の表示装置。
【請求項22】
光ガイドと、少なくとも1つの光結合装置と、少なくとも1つの光分離装置とを備える少なくとも1つの導光装置が提供され、光は前記光ガイドの境界面での反射によって前記光ガイドの内部を伝搬し、前記光ガイドから出る光の分離は前記光ガイドの前記境界面での光の所定の数の反射の後に、前記光分離装置によって提供されることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項23】
前記少なくとも1つの光学システムと、前記少なくとも1つの導光装置とが、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメント及び少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントを生成するため、および必要に応じて少なくとも1つの立体視セグメントを生成するために提供され、
前記高解像度ホログラフィックセグメントと、前記低解像度ホログラフィックセグメントと、必要に応じて前記立体視セグメントとが、視野であって、その中で三次元シーン又は三次元オブジェクトが表現可能な視野を共に形成することを特徴とする、請求項22に記載の表示装置。
【請求項24】
前記少なくとも1つの導光装置および前記少なくとも1つの光学システムによって前記少なくとも1つの空間光変調装置の結像が提供されることを特徴とする請求項22または23に記載の表示装置。
【請求項25】
前記少なくとも1つの照光装置に提供された少なくとも1つの光源の光源イメージが、光が前記導光装置に結合する前に、光路内の前記光学システムによって提供されることを特徴とする請求項22または23に記載の表示装置。
【請求項26】
前記少なくとも1つの光結合装置は、光源イメージの位置またはその領域に設けられることを特徴とする請求項25に記載の表示装置。
【請求項27】
前記光学システムは、互いに交差して配置された2つの円筒状光学エレメントを有することを特徴とする請求項22または23に記載の表示装置。
【請求項28】
前記光学システムは、光が前記導光装置に結合する前に、光路内に線形光源イメージを生成するために設けられることを特徴とする請求項27に記載の表示装置。
【請求項29】
少なくとも1つの照光装置、少なくとも1つの空間光変調装置、および少なくとも1つの光学システムによって、大きな視野であって、その内部でシーンまたはオブジェクトが異なる解像度で表現される視野を生成するための方法であって、
前記少なくとも1つの空間光変調装置が、入射光を前記シーンまたは前記オブジェクトの必要な情報で変調し、
前記少なくとも1つの光学システムが、前記少なくとも1つの空間光変調装置を複数結像し、前記少なくとも1つの空間光変調装置のイメージの数に従って仮想視聴ウィンドウを生成し、
前記少なくとも1つの空間光変調装置の個々のイメージはセグメントとして互いに組み合わされて視野を形成し、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントおよび少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントが前記視野を形成
前記高解像度ホログラフィックセグメントは前記低解像度ホログラフィックセグメントの内側に位置し、最大のセグメントは前記視野を形成する
ことを特徴とする方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメント及び前記少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの前記生成は、前記光学システムの切替可能または制御可能なエレメントによって実行されることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
2つの切替可能または制御可能な光学エレメントが前記光学システムに設けられ、
前記少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントを生成するために、第1の切替可能または制御可能な光学エレメントが切替または制御され、第2の切替可能または制御可能な光学エレメントが切替または制御されず、
前記少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントを生成するために、前記第1の切替可能または制御可能な光学エレメントが切替または制御されず、前記第2の切替可能または制御可能な光学エレメントが切替または制御されることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次元及び/又は三次元のオブジェクト又はシーンを表現するための表示装置に関する。さらに、本発明は、このような表示装置によって大きな視野を生成する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
二次元または三次元表示、または表示装置において、良好なユーザの利便性のために、大きな視野、または大きな視野角を生成することが特に有利である。
【0003】
しかしながら、ホログラフィック表示において、大きな視野は一般的に、空間光変調装置における非常に多数の画素か、又は任意に、視野の異なる領域が時系列的に連続して表現されるように意図されている場合には空間光変調装置の非常に高いフレームレートを必要とする。
【0004】
オブジェクトまたはシーンの表現に関連して、表現されたシーンまたはオブジェクトを観察することができる仮想視聴ウィンドウを生成する表示装置または表示部の場合、このことは例えば、波長460nmの青色光のための7mmの大きな仮想視聴ウィンドウまたは可視領域を生成するために、空間光変調装置では視野または視野角の度合い当たり約250の複素数値画素が必要とされることを意味する。4000×2000画素を有する高解像度の位相変調のみの空間光変調装置であっても、各々の2つの位相画素を組み合わせて複素値のマクロ画素を形成するという仮定では、約2000×2000の複素値のマクロ画素が存在し、縦8度×横8度の視野しか生成することができない。
【0005】
ホログラフィック表示装置は、とりわけ、空間光変調装置の画素の開口での回折の影響と、光源によって放出されるコヒーレント光の干渉とに基づく。しかしながら、仮想視聴ウィンドウを生成するホログラフィック表示装置のいくつかの重要な条件は、幾何学的光学システムを用いて定式化され、定義されてもよい。
【0006】
一方、この場合、表示装置における照光ビーム経路が重要である。これは、特に、仮想視聴ウィンドウを生成するために使用される。空間光変調装置は、少なくとも1つの実光源又は仮想光源を含む照光装置によって照光される。次いで、空間光変調器の異なる画素から来る光は、それぞれ、仮想視聴ウィンドウ内に向けられなければならない。この目的のために、空間光変調装置を照光する照光装置の少なくとも1つの光源は、通常、仮想視聴ウィンドウを含むオブザーバ面内に結像される。この光源の結像は例えば、仮想視聴ウィンドウの中心で行われる。空間光変調装置を、無限遠で光源に相当する平面波で照光する場合には、これらの画素から垂直に出てくる空間光変調装置の異なる画素から、仮想視聴ウィンドウの中間に集光される。空間光変調装置の異なる画素から垂直ではなく、それぞれ同じ回折角で出現する光は、その後、仮想視聴ウィンドウ内の同じ位置にそれぞれ同様に集束される。しかしながら、一般に、仮想視聴ウィンドウはまた、少なくとも1つの光源のイメージに対して横方向に変位されてもよく、例えば、少なくとも1つの光源のイメージの位置は、視聴ウィンドウの左エッジまたは右エッジと一致してもよい。
【0007】
一方、ホログラフィック表示装置では、直視型ディスプレイを除いて、結像ビーム経路が重要である。ヘッドマウントディスプレイ(HMD)では、一般に小さい範囲の空間光変調装置の拡大像が発生する。しばしば、これは、空間光変調装置自体が位置する距離よりも遠くでオブザーバ(視聴者)が見る虚像である。空間光変調装置の個々の画素は、通常、拡大スケールで結像される。
【0008】
仮想視聴ウィンドウを生成するホログラフィック直視型ディスプレイは、照光ビーム経路を有する。ディスプレイは、少なくとも1つの光源を有する照光装置を備える。例えば、照光装置は、空間光変調装置を照光するコリメート平面波面を生成するバックライトとして構成される。平行波面は仮想光源に対応し、無限遠から空間光変調装置を照光する。しかしながら、空間光変調装置は、空間光変調装置の前方又は後方の有限距離にある実際の又は仮想の光源に対応する拡散又は収束波面で照光されてもよい。フィールドレンズは、空間光変調装置から来る光を、仮想視聴ウィンドウの位置に収束させる。空間光変調装置にホログラムが書き込まれない場合、光源画像と、より高い回折次数としてのこの画像の周期的な繰り返しとが、オブザーバ面内に形成される。空間光変調装置に適切なホログラムが書き込まれると、ゼロ番目の回折次数に近い仮想視聴ウィンドウが形成される。これは、光源画像の平面内に位置する仮想視聴ウィンドウとして以下に説明される。ホログラフィック直視型ディスプレイにおいて、光源の画像を生成する視野レンズは、通常、空間光変調装置に近接して位置する。オブザーバは空間光変調装置をその実距離で見るが、空間光変調装置の結像は行わない。その場合、結像ビーム経路は存在しない。
【0009】
他のホログラフィック表示装置、例えばヘッドマウントディスプレイ(HMD)、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、または他の投影ディスプレイでは、既に簡単に述べたように、結像ビーム経路がさらに存在してもよい。これらの表示装置では、空間光変調装置の実イメージまたは虚イメージが生成され、オブザーバはこのイメージを見ており、仮想視聴ウィンドウを生成するための照光ビーム経路がさらに重要である。従って、この場合、両ビーム経路、照光ビーム経路及び結像ビーム経路は重要である。
【0010】
他の表示装置、例えば立体視表示装置においては、結像ビーム経路及び照光ビーム経路が存在する場合が生じる。スイートスポットを発生させる立体表示装置は例えば、前述のホログラフィック表示装置と同様の光学配置、すなわち空間光変調装置とフィールドレンズの平行照光、さらには、例えば、規定された散乱角を有する散乱エレメントを備える追加構成を備えることができる。散乱エレメントが表示装置から取り出された場合、フィールドレンズは、スイートスポットの平面内に光源画像を生成するのであろう。散乱エレメントを使用することによって、光は代わりに、オブザーバの瞳孔距離よりも狭い、拡張されたスイートスポットにわたって分布される。しかし、ビネット効果なしに立体画像を完全に見ることができるようにするためには、照光ビーム経路が重要である。三次元ステレオ表示装置は、この場合、同様に結像ビーム経路を有してもよく、それを用いて、空間光変調装置がオブザーバから特定の距離で結像される。
【0011】
ホログラフィック表示装置において、三次元シーンからのホログラムの演算におけるサブホログラムの典型的なサイズは、空間光変調装置の平面、すなわちイメージ面に対する空間における三次元シーンの位置に依存する。その程度が大きいサブホログラムは例えば、オブザーバのためのシーンが空間光変調装置の平面、すなわちイメージ面のずっと手前に位置する場合に発生する。しかし、大きなサブホログラムは、ホログラム計算中の計算負荷を増大させる。本出願人名義の国際公開第2016/156287号公報には、空間光変調装置の仮想平面の計算の導入によって計算負荷を低減する方法が開示されている。しかし、代替として、空間光変調装置のイメージ面が好ましい位置に形成されるような方法で光学システムを選択することも望ましく、そのため、ホログラムは、その程度が小さいサブホログラムで計算することができる。
【0012】
仮想視聴ウィンドウを生成するホログラフィック表示装置の1つの代替構成では、仮想オブザーバ面内への空間光変調装置の結像も行われ得る。この目的のために、空間光変調装置のフーリエ面、すなわち光源のイメージ面における三次元シーンのホログラフィック表現のために、ある種のスクリーン、あるいは物理的スクリーンが存在しない場合には基準面が設けられる。したがって、このような表示装置には、同様に結像ビーム経路と照光ビーム経路とがある。しかしながら、ホログラム面及びオブザーバ面に対するそれらの重要性は入れ替えられる。次に、仮想視聴ウィンドウは、空間光変調装置のイメージ面内に配置され、したがって、結像ビーム経路と接続される。ホログラム、すなわち三次元シーンからホログラムを計算するための基準面は、空間光変調装置のフーリエ平面内に配置され、したがって照光ビーム経路に接続される。
【0013】
適切に計算されたホログラムが空間光変調装置に書き込まれ、表示装置が十分にコヒーレント光を発生する照光装置を備える場合、ホログラムのフーリエ変換として空間光変調装置のフーリエ面内に二次元イメージが生成される。追加の散乱エレメントをこの平面内に配置することができる。空間光変調装置の画像が散乱エレメントなしにオブザーバ面内に生成されるであろう場合には、その代わりに散乱エレメントと共にスイートスポットが形成されるのであろう。この場合のスイートスポットの大きさは散乱エレメントの散乱角に依存する。このような構成は例えば、ヘッドアップディスプレイ(HUD)に使用することができる。
【0014】
以下の説明は、主として、光源イメージ面内に仮想視聴ウィンドウ又はスイートスポットが存在する場合に関するものである。しかしながら、コメントは、結像ビーム経路と照光ビーム経路、または空間光変調装置の面とフーリエ面とをそれぞれ入れ替えることによってなされ、空間光変調装置を仮想視聴ウィンドウに結像させる実施形態にも適用可能である。したがって、本発明は、光源イメージ面内に仮想視聴ウィンドウまたはスイートスポットを有する場合に限定されるものではない。
【0015】
国際公開第2012/062681号公報には、仮想視聴ウィンドウを有するホログラフィックディスプレイが開示されている。視野のセグメント化された表現が説明される。この視野は、空間光変調器及び適当な光学システムによって、時系列的に視野の複数のセグメントを表現することによって拡大することができる。シーンまたはオブジェクトはこのセグメント化された視野内に表されてもよく、この視野はその後、仮想視聴ウィンドウから見える。しかしながら、個々のセグメントの時間的に連続した生成は、空間光変調装置のフレームレートに対する要求を増大させる。
【0016】
人間の目の網膜の中心、眼窩では、人間または人は、通常、1分の円弧の可視角分解能を達成することができる。文字「E」は例えば、大きさが5分の円弧であるときに100%の視力を有する人間によって知覚され、文字「E」の3つのバー(光領域)はそれぞれ1分の円弧を占め、文字「E」の2つの中間空間(明るい領域)もそれぞれ1分の円弧を占める。視野の1度当たり60画素の解像度、すなわち視野の1度当たり30サイクルであり、各サイクルは、それぞれ、隣接する黒点および白点からなるので、人間の解像力に対応する。しかしながら、網膜の周辺部では、解像度はるかに低い。
【0017】
したがって、人間の目の網膜の分解能は、小さな角度範囲においてのみ高い。この事実は例えば、周辺視野内の画質を低減することによって、レンダリング中の作業負荷を低減するためにアイトラッキングシステムを使用するグラフィックレンダリング技術である「中心窩レンダリング」に既に使用されており、すなわち、計算は画像の中央の領域においてのみフル解像度で実行され、一方、画像のエッジにおける領域は低解像度で計算される。したがって、これは、シーンの表現について、オブザーバの目がこの瞬間を見ている場合にのみ高解像度で計算され、中心視野の外側のより低い解像度で計算されることを意味する。
【0018】
この目的のために、例えば、注視トラッキングによって、オブザーバがどこを見ているかを検出することが可能である。このような「中心窩レンダリング」は、ホログラムの計算にも使用可能である。しかしながら、これは必要とされる計算能力のみに有利に影響するが、使用される空間光変調装置の必要とされる画素数又は必要とされるフレームレートには影響しない。
【0019】
例えば、国際公開第2012/062681 A1号公報には、視角または視野の部分のセグメント化またはタイル化された表現を有するホログラフィックヘッドマウントディスプレイ(HMD)において、ホログラフィック表現と立体表現とを組み合わせることも記載されている。視野の分割多重結像と呼ばれるタイリングはこの場合、ホログラフィックHMDで実行され、一実施形態ではセグメントの一部がホログラフィックに生成され、セグメントの別の部分が立体視的に生成される。この点に関して以下が開示される。「拡張されたオブザーバ空間におけるイメージコンテンツの時間的および/または空間的にセグメント化された提供の、改良された実施形態は、動的にエンコードされた、少なくとも部分的にコヒーレントなホログラフィック3D表現を伴う、インコヒーレント2D表現および/またはステレオ3D表現の、立体角において可変の組合せを表す。例えば、1つの単純な実施形態では表現を簡潔にするために、この場合では垂直オブザーバ角度のみが考慮される。すなわち、フィールドレンズ面内のSLMの中心セグメントに対応する(0から±13)°、すなわち26°degの中心角度範囲は動的にエンコードされたホログラフィック3D表現によって生成される。中心角度範囲の上下にある+13°~+39°および-13°~-39°の角度範囲は、2Dまたは3Dステレオ表現によって生成することができてもよい。その理論的根拠は、自然環境内ではユーザが高解像度及び高度に知覚可能な立体感を有する限られた立体角しか見ることができないということである。非常に大きな立体角がユーザに利用可能である場合、高解像度および高度に知覚可能な立体感の特徴は、全立体角のサブ領域にのみ存在する。これは、ユーザが集中し得る領域である。この領域は、ユーザの眼球運動に伴って空間内で移動することができるので、強い焦点および3Dの特徴で表される空間領域を移動させることも同様に有利である。この目的のために、目の位置および/または注視方向の検出が提供されるべきである」。
【0020】
立体三次元(3D)表現の1つの実質的な問題は、適合的眼球離反運動の不一致(vergence-accommodation conflict)である。適合的眼球離反運動の不一致は特に、立体表示装置又はディスプレイの場合に、オブザーバが明確に知覚することができるようにオブザーバがディスプレイ表面又は空間光変調装置の表面に焦点を合わせるとき生じる。表現された二つの立体画像の視差は、表示面の前後に見える三次元オブジェクトを示唆している。この場合、目は、これらのオブジェクトの表示面からの見かけの距離に収束する。これにより、オブジェクトは固定され、明確に知覚されるべきである。しかしながら、オブジェクトは、実際にはディスプレイ表面からある距離に位置しておらず、その結果、オブザーバはオブジェクトを固定したときに、オブジェクトをもはや明確に見ることができない。したがって、オブザーバは立体視シーンまたはオブジェクトを観察するときに、頭痛または他の種類の不快感を経験することが非常に多い。
【0021】
しかしながら、これらのネガティブ効果は、ホログラフィック表示装置またはディスプレイを使用する場合に克服され得る。
【0022】
知覚可能な奥行き解像度もまた、横方向解像度が減少することにつれて減少するので、オブザーバが中心窩上の中央領域において高解像度で知覚するシーンの領域に対して、適合的眼球離反運動の不一致が最も大きく生じる。眼は中心窩の中央領域の外側でも深さを知覚することができるが、奥行き分解能は低い。しかしながら、中心窩の中心から遠く離れた周辺視野では、二次元視覚のみが依然として可能である。
【0023】
眼窩の中心で網膜に当たる、眼の注視方向における三次元シーンの角度または視野の領域がホログラフィックに表され、より低い解像度で中心窩の中心から離れて知覚される角度の領域が立体的に表される場合、起きうる適合的眼球離反運動の不一致は、純粋な立体的な表現と比較して低減される。しかしながら、視野角または視野のホログラフィック分率が十分に大きく、奥行き情報が不足している視野角の領域でのみステレオ表現が行われるようにしなければ、適合的眼球離反運動の不一致は完全に回避できない。ホログラフィックに表されなければならない視野角の領域はこの目的のために約30度であり、したがって、26度の数値例としてWO2012/062681A1に明記されているホログラフィック領域と同様である。すでに説明したように、例えば、個々のセグメント内に2000×2000の複素値のマクロ画素を有する空間光変調器は、垂直方向にわずか8度×8度の視野をほぼ生成するのであろう。
【0024】
国際公開第2012/062681号公報には、とりわけ、立体セグメントおよびホログラフィックセグメントを生成するために2つの異なる光変調器を使用する可能性も記載されている。
【0025】
WO2018/146326A2ではホログラフィックヘッドマウントディスプレイが記載されている。このディスプレイが同様に、ホログラフィックセグメントとステレオスコピックセグメントとの組合せを可能にする湾曲導光装置を使用しており、これらは同一の空間光変調装置または2つの異なる空間光変調装置のいずれかで生成される。オブザーバの注視位置に対する少なくとも1つのホログラフィックセグメントの視野角部分又は視野部分の注視トラッキング及びトラッキングによって、及び立体視セグメントを有する大きな視野角又は大きな視野を生成することによって、全体的に大きな視野角又は大きな視野が生成され、生成は、従来の純粋なホログラフィック表現の場合よりも低い空間光変調装置の要件で実行される。
【0026】
しかしながら、国際公開第2018/146326号公報は、以下の欠点を有する可能性がある:人間の目が依然としてかなりの深さ分解能を有する角度範囲全体が可能な適合的眼球離反運動の不一致を完全に回避するために、従来の方法でホログラフィックに表されることが意図される場合、空間光変調装置内の比較的多数のピクセル、または比較的多数の時間的に連続して生成されるセグメントが依然として必要とされる。
【0027】
国際公開第2012/062681A1号公報の数値例は例えば、ホログラフィックに表される垂直方向26°の中心角度範囲に言及している。記載した1度あたり250画素の例では、これは空間光変調装置内の約6500個の複素値マクロ画素の数、または空間光変調装置内の2000個の複素値マクロ画素を有する空間光変調装置のための約3~4個の順次表されたセグメントに対応するのであろう。垂直方向26度×水平方向26度の視野角、すなわち視野に対して、これは、対応して、9~16のセグメントを与える。これは、非常に高い計算及び表現負荷に対応する。
【0028】
したがって、本発明の目的は簡単な手段で、かつ、高い計算労力および時間を必要とせずに、大きな視野を生成することを可能にする表示装置を提供することである。これは、好ましくは空間光変調装置のセグメント化された結像と組み合わせて達成可能であるように意図されている。特に、WO2018/146326A2の表示装置よりもさらに良好に、低減されたが依然として存在する深さ解像度を有する人間の目の網膜の減少する横方向解像度に適合され、空間光変調装置における画素数またはフレームレートに対する要求のさらなる低減、および表示装置またはディスプレイにおけるユーザの利便性のさらなる改善に寄与する表示装置が提供されることが意図される。
【発明の概要】
【0029】
この目的は本発明によれば、請求項1の特徴を有する表示装置によって達成される。
【0030】
本発明によれば、特に目の近くのディスプレイ、この場合には特にヘッドマウントディスプレイに使用するのに適した表示装置に提供されるが、使用はこれらのディスプレイまたは表示装置に限定されることを意図するものではない。表示装置は例えば、今まで市販されているヘッドアップディスプレイよりも大きな視野を有する将来のヘッドアップディスプレイにも使用することができる。
【0031】
二次元および/または三次元オブジェクトまたはシーンを表すための本発明によるこのような表示装置は、十分にコヒーレントな光を放射するための少なくとも1つの照光装置と、入射光を変調するための少なくとも1つの空間光変調装置と、少なくとも1つの光学システムとを備える。少なくとも1つの光学システムは少なくとも1つの空間光変調装置の複数の結像のために、及び少なくとも1つの空間光変調装置のイメージの数に応じた仮想視聴ウィンドウを生成するために設けられる。
【0032】
少なくとも1つの空間光変調装置の個々のイメージは、セグメントとして互いに結合され、視野を形成する。視野は、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメント及び少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントを含む。
【0033】
したがって、本発明によれば、大きな視野角、すなわち大きな視野を生成するために、視野のセグメント表現を用いることにより、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントが、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントと組み合わせて提供される。このようにして、ホログラフィック表示装置における空間光変調装置の画素数の減少および/またはフレームレートの減少が、従来技術ですでに公知の表示装置と比較して使用されてもよい。さらに、視野のセグメント化された生成および表現によって、個々のセグメントを互いに組み合わせることによって、大きな視野を生成することが可能であり、その中で、三次元シーンまたはオブジェクトをオブザーバが観察することができる。この目的のために、オブザーバは、仮想視聴ウィンドウを通して三次元シーンを観察する。これは大きな視野に対する各個々のセグメントの生成中に仮想視聴ウィンドウが生成されることを意味し、オブザーバの目に対する全ての視聴ウィンドウはオブザーバ面内の1つの位置に形成され、互いに重ね合わされるように意図されている。
【0034】
オブザーバの目の注視方向に位置するように意図されているか、または視野全体の生成後にそこに見つけられることができ、したがって中心窩の中心で網膜に当たる三次元シーンの視野の1つまたは複数のセグメントは、高解像度ホログラフィックに生成され、表現され、すなわち非常に高い解像度を有する。本出願の文脈において、セグメントは、解像度、すなわち視野度当たりのオブジェクト点であって、仮想視聴ウィンドウから決定される視野が視野度当たり60画素/オブジェクト点の網膜の中心におけるオブザーバの眼の解像度にほぼ完全に到達するか、またはそれを超える場合、特に解像度が視野度当たり50画素/オブジェクト点以上である場合、高解像度と呼ばれる。視野1度あたり50画素/オブジェクト点は高解像度ホログラフィックセグメントのための必要な解像度がほぼ到達するが、眼の解像度には到達しない場合に当てはまるのであろう。
【0035】
しかしながら、オブザーバの目の注視方向に位置することを意図されていないか、又は視野全体の生成後にそこで見つけることができ、従って、中心窩の中心ではなく網膜に当たる、同じ三次元シーンの視野の1つ以上の前記セグメントは低解像度ホログラフィックに生成され、表現され、すなわち、低解像度である。本出願の文脈において、セグメントは解像度、すなわち視野度当たりの物体点(視野は仮想視聴ウィンドウから決定される)がオブザーバの目の解像度より著しく下に落ちるとき、特に解像度が視野度当たり40画素/オブジェクト点以下であるとき、例えば視野度当たり40画素/オブジェクト点から視野度当たり5画素/オブジェクト点未満の範囲内であるとき、低解像度と呼ばれるが、5画素/オブジェクト点のこのより低い値に限定されることを意図しない。
【0036】
例えば、縦50度の水平50度の大きな視野または大きな視野角は、約8×8度の大きさを有する高解像度ホログラフィックセグメントと、約50×50度の大きさを有する低解像度ホログラフィックセグメントとの組合せによって生成されてもよい。次いで、高解像度ホログラフィックセグメントは、それぞれ低解像度ホログラフィックセグメントの内側に位置する。セグメントの視野角の大きさは、例として述べた数値に限定されない。たとえば、セグメントの水平方向の視野角と垂直方向の視野角は異なる場合がある。少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントは例えば、60×30度のサイズを有することもできる。高解像度ホログラフィックセグメントは、約10×10度の視野角の最大サイズを有することができる。低解像度ホログラフィックセグメントは、約100×100度の視野角の最大サイズを有することができる。
【0037】
本発明による表示装置によれば、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントに対してでさえも、オブザーバの目の注視方向に存在しない三次元シーンのオブジェクトに対する立体セグメントの生成と比較して、再構成されたオブジェクトポイントのより現実的な奥行き表現を有利に達成することができる。このようにして、視野角または視野が純粋にホログラフィックに生成されるので、起きうる適合的眼球離反運動の不一致が実質的に低減されるか、または完全に回避される。
【0038】
本発明のさらなる有利な構成および改良は、他の従属請求項に見出すことができる。
【0039】
本発明の1つの特に有利な構成では少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントの生成と組み合わせて、少なくとも1つの仮想視聴ウィンドウを生成するために、少なくとも1つの光学システムを設けることができ、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントの仮想視聴ウィンドウのサイズはオブジェクトまたは視野内のシーンを観察するオブザーバの眼の瞳孔のサイズと等しいかまたはそれより大きい。
【0040】
人間の目の典型的な瞳孔サイズは、約2.5mm~6mmの範囲にある。好ましくは、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントの少なくとも1つの仮想視聴ウィンドウのサイズが約6mm~約15mmの範囲から選択することができる。
【0041】
本発明の別の特に有利な実施形態では少なくとも1つの光学システムが少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの生成と組み合わせて、少なくとも1つの仮想視聴ウィンドウを生成するために設けられてもよく、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの仮想視聴ウィンドウの大きさは視野内のオブジェクトまたはシーンを観察するオブザーバの眼の瞳孔の大きさ未満であることが提供され得る。
【0042】
この場合、低解像度ホログラフィックセグメントは、オブザーバの眼の瞳孔よりも小さい仮想視聴ウィンドウによって生成される。好ましくは、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの少なくとも1つの仮想視聴ウィンドウのサイズが約0.5mm~約2mmの範囲で選択される。
【0043】
有利には、空間光変調装置にエンコードされるべきホログラムの計算負荷だけでなく、特定の視野角を生成するために必要とされる空間光変調装置の必要画素数も、オブザーバの眼の瞳よりも小さい大きさの仮想視聴ウィンドウを有する低解像度ホログラフィックセグメントによって低減される。
【0044】
また、複数の低解像度ホログラフィックセグメント及び/又は複数の高解像度ホログラフィックセグメントが、異なるサイズの仮想視聴ウィンドウを備えることが有利である場合がある。
【0045】
したがって、複数の高解像度ホログラフィックセグメント、特に異なるサイズの仮想視聴ウィンドウを有する複数の低解像度ホログラフィックセグメントを使用することも可能である。例えば、約0.5mmのサイズを有する仮想視聴ウィンドウを有する低解像度ホログラフィックセグメントと、約2mmのサイズを有する仮想視聴ウィンドウを有する低解像度ホログラフィックセグメントとを提供し、生成することができる。しかしながら、原理的には、異なる大きさの仮想視聴ウィンドウを有する複数の高解像度ホログラフィックセグメントをオブザーバ面内で使用することもできる。高解像度ホログラフィックセグメントのための個々の仮想視聴ウィンドウのサイズは、有利には約6mmから約15mmの範囲内にある。
【0046】
さらに、サイズが異なる仮想視聴ウィンドウを有する複数の低解像度ホログラフィックセグメントを組み合わせ、サイズが異なる仮想視聴ウィンドウを有する複数の高解像度ホログラフィックセグメントを設けることも可能である。
【0047】
仮想視聴ウィンドウの大きさにより、空間光変調装置の視野度あたりの必要画素に対する異なる値が、各高分解能ホログラフィックセグメントおよび各低分解能ホログラフィックセグメントに対して得られる。
【0048】
少なくとも1つの空間光変調装置の画像を提供する、適切に構成された光学システムによって、視野の程度あたりの画素数は、適切に定義、選択、および調整されてもよい。この場合、光学システムは、空間光変調装置のイメージに対応する規定された距離を、オブザーバ面内の仮想視聴ウィンドウに与え、空間光変調装置のイメージの所定の倍率を与えるべきである。
【0049】
少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの仮想視聴ウィンドウと、オブザーバ面内の少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントの仮想視聴ウィンドウとの生成は、有利には同じ位置に設けられてもよい。
【0050】
さらに、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの仮想視聴ウィンドウと、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントの仮想視聴ウィンドウとの少なくとも部分的な重なりが提供されてもよい。
【0051】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントおよび少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントを生成するために、異なる空間光変調装置を使用することができる。このために、少なくとも2つの空間光変調装置が設けられてもよく、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントを生成するために1つの空間光変調装置が設けられ、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントを生成するために他の空間光変調装置が設けられている。
【0052】
また、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントを生成する1つの空間光変調装置と、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントを生成する他の空間光変調装置とは、この場合異なるように構成してもよい。例えば、2つの空間光変調装置は、異なるサイズ、異なる数の画素、または異なるアスペクト比の画素を含んでもよい。少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントを生成するための空間光変調装置は例えば、8×8度の観察角度を生成するために、2000×2000複素値画素の正方形配列を含み得る。少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントを生成するための空間光変調装置は例えば、2:1のアスペクト比の1000×500複素値画素の矩形配列を含み、60×30度の視野角を生成してもよい。
【0053】
1つの代替の好ましい実施形態では、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメント及び少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントに対して、同じ空間光変調装置が使用される。
【0054】
本発明の別の有利な構成によれば、光学システムは、少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメントを備えることができる。光学システムは、少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメントまたはコンポーネントを備えるように構成される。光学システム内の少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメントにより、生成される仮想視聴ウィンドウのサイズは、対応する高解像度ホログラフィックセグメントまたは低解像度ホログラフィックセグメントの生成中、または視野角あたりの画素数の生成中に選択および調整され得る。このようにして、単純な手段で、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメント又は少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの生成を選択することができる。この目的のために、少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメントは、生成されるべき高解像度ホログラフィックセグメントまたは低解像度ホログラフィックセグメントに従って、切替または制御されてもよい。
【0055】
本発明の1つの特に有利な構成において、光学システムは2つの切替可能または制御可能な光学エレメントを含んでもよく、第1の切替可能または制御可能な光学エレメントは少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントを生成するために、切り替え可能または制御可能であり、第2の切替可能または制御可能な光学エレメントは少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントを生成するために、切り替え可能または制御可能であることが提供され得る。
【0056】
少なくとも1つの光学システムにおける少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメントはレンズエレメントとして、またはミラーエレメントとして、またはグレーティングエレメントとして構成されてもよく、このグレーティングエレメントは切り替え状態に従って入射光を異なるように偏光する。レンズエレメントは任意に、屈折または回折するように構成されてもよい。光学システムにおける少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメントは受動偏光選択エレメント、例えば、偏光選択ミラーとして作用する偏光選択レンズエレメント又はワイヤグリッド偏光子、又は偏光状態に応じて光を異なるように偏向させる受動グレーティングエレメントと組み合わせて、偏光スイッチとして構成することもできる。この少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメントは、光伝搬方向から見て、少なくとも1つの空間光変調装置と、少なくとも1つの仮想視聴ウィンドウおよびオブザーバの目が位置するオブザーバ面の間の、本発明に係る表示装置のビーム経路内に配置されていてもよい。
【0057】
有利には、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメント及び少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントを生成するために、単一視差エンコードの形式のホログラムをさらに少なくとも1つの空間光変調装置に書き込むことができる。単一視差エンコードの形式のホログラムは、ホログラフィックセグメント、特に少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントに対して、少なくとも1つの空間光変調装置に書き込むこともできる。このようにして、仮想視聴ウィンドウが空間光変調装置におけるホログラムの1つの次元または方向、すなわちエンコーディング方向に生成され、スイートスポットがそれに垂直な次元または方向、すなわちホログラムの非エンコーディング方向に生成される。したがって、スイートスポットは、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントについて、オブザーバの典型的な眼の瞳孔よりもサイズが大きくてもよい。例えば、オブザーバ面内のスイートスポットの領域は約10mmの範囲を有することができ、一方、仮想視聴ウィンドウの領域は、約1mmの範囲を有することができる。
【0058】
低解像度ホログラフィックセグメントの生成と高解像度ホログラフィックセグメントの生成に同じ空間光変調装置を用いれば、これらのセグメントは時間順次、すなわち連続して生成する。
【0059】
しかしながら、2つの空間光変調装置、すなわち少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの生成のための1つの空間光変調装置と、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントの生成のためのさらなる空間光変調装置とが使用される場合、セグメントは同時に、すなわち同じ時間に生成されてもよい。
【0060】
本発明の1つの代替の有利な構成では、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントを生成するために、少なくとも1つの空間光変調装置に、全視差エンコーディングの形式のホログラムを書き込んでもよく、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントを生成するために、少なくとも1つの空間光変調装置に、単一視差エンコーディングの形式のホログラムを書き込んでもよい。
【0061】
従って、ホログラムの全視差エンコーディングは少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントの生成に使用され、ホログラムの単一視差エンコーディングは少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの生成に使用される。
【0062】
この場合も同様に、低解像度ホログラフィックセグメントの生成および高解像度ホログラフィックセグメントの生成のために、同じ空間光変調装置を使用してもよい。ただし、これらのセグメントは、異なるエンコーディングによって空間光変調装置に書き込まれ、次いで、時間順次生成される。
【0063】
しかしながら、再び2つの空間光変調装置、すなわち、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの生成のための1つの空間光変調装置と、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントの生成のためのさらなる空間光変調装置とを使用することが可能であり、異なるエンコーディングによって2つの空間光変調装置にそれぞれホログラムが書き込まれ、次いで、これらのセグメントが同時に生成される。
【0064】
オブザーバ面に存在するより高い回折次数を排除するために、少なくとも1つのフィルタ配置をさらに有利に設けることができる。
【0065】
特に、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントについては、より高い回折次数の光をフィルタ除去して、この光が視野内の三次元シーンのオブザーバの眼の瞳孔に到達することができないようにすることができる。これにより、ホログラフィック再構成の、またはホログラフィックに再構成されたシーンまたは物体の、目に見える望ましくない二重イメージが回避される。しかしながら、さらに、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントのために、全ての又は特定のより高い回折次数の光のみが、同じ又は追加のフィルタ構成を用いてフィルタ除去されるようにしてもよい。眼の瞳孔の典型的なサイズよりも大きい少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントの仮想視聴ウィンドウの場合、この光は、通常、眼に直接当たらない。しかしながら、フィルタリングは光学システムにおいて、例えば、レンズ表面での望ましくない反射など、おそらく生じる望ましくない摂動効果を低減し得る。あるいは、フィルタリングが光学エレメント、例えば、特定の許容角度のみを有する体積格子の使用を促進する。
【0066】
注視トラッキング装置および少なくとも1つのトラッキング装置が、本発明による表示装置に有利に設けられてもよい。この場合、注視トラッキング装置は眼の瞳孔位置を検出し、オブジェクトまたはシーンを観察するオブザーバの注視をトラッキングするために設けられてもよい。
【0067】
少なくとも1つのトラッキング装置は少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントの仮想視聴ウィンドウをトラッキングするために、および/または少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの仮想視聴ウィンドウをトラッキングするために提供されてもよく、したがって、特に視聴ウィンドウトラッキング装置として構成されてもよい。
【0068】
少なくとも1つの装置は少なくとも1つの空間光変調装置のイメージの視覚的な視聴ウィンドウからの位置、すなわち、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメント及び/又は少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの位置、ここでは視野内の視聴角度範囲を、注視トラッキング装置によって決定されるオブザーバの眼の焦点位置及び注視方向に適合させるために更に提供されてもよく、従って、特に注視トラッキング装置として構成されてもよい。
【0069】
さらに、本発明による表示装置は2つのトラッキング装置、すなわち、視聴ウィンドウトラッキング装置および注視トラッキング装置を備えることが可能であり、さらに好ましい。
【0070】
注視トラッキング装置では、例えば国際公開第2010/149587号公報に記載されているように、例えば可変格子周期を有する少なくとも1つの回折格子を使用することができる。少なくとも1つの回折格子へのレンズ機能を書くことにより、例えば、少なくとも1つの空間光変調装置の像の仮想視聴ウィンドウへの距離がずれてもよい。少なくとも1つの回折格子へのプリズム機能を書くことによって、例えば、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメント及び/又は少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの視野内の視野角範囲を変位させることができる。
【0071】
注視トラッキング装置は本発明による表示装置内に、例えば、空間光変調装置のフーリエ面内に配置されてもよい。しかしながら、本発明は表示装置内の他の位置も可能であるように、表示装置内の注視トラッキング装置のこの位置に限定されることを意図していない。
【0072】
好ましくは、オブザーバのトラッキングが少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントと少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントとの両方の仮想視聴ウィンドウが眼またはオブザーバが異なる位置に移動するときに、三次元シーンのオブザーバの眼の位置に追従するようになされることによって、視聴ウィンドウトラッキング装置によって行われる。視野の個々のセグメントのこのトラッキングは、様々な方法で実行することができる。例えば、例えば、WO 2018/037077 A2に記載されているように、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントに対して複数の回折次数を使用することができ、プリズム項およびプリズム関数をこれらの回折次数の内側の少なくとも1つの空間光変調装置にエンコードすることによって、仮想視聴ウィンドウの変位量を使用することができる。例えば、異なる構成では、WO2010/149587A2に記載されているように、可変格子周期を有する回折格子を同様に使用することができる。
【0073】
例えば、仮想視聴ウィンドウをトラッキングする少なくとも1つの回折格子を、少なくとも1つの空間光変調装置のイメージ面内に配置してもよい。しかしながら、本発明は、この位置に限定されることを意図するものではなく、むしろ他の位置も同様に可能である。
【0074】
しかしながら、本発明の別の実施形態では少なくとも2つの回折格子を使用することもでき、これは視聴ウィンドウトラッキングと注視トラッキングとの組合せを行う。
【0075】
しかしながら、本発明は、特定のタイプのトラッキングに限定されることを意図していない。
【0076】
本発明の別の特に有利な実施形態では、視野が少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントと、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントと、少なくとも1つの立体視セグメントとを含むことを提供することができる。
【0077】
したがって、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントおよび少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントは、視野内の少なくとも1つの立体セグメントと組み合わせることができる。これは、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメント及び少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントに加えて、少なくとも1つの立体セグメントが生成されることを意味する。この少なくとも1つの立体視セグメントは視野の横方向領域において生成され、オブザーバが低解像度でのみ、かつ、大幅に低減された、またもはや存在しない奥行き解像度で、表されたシーンを知覚する領域、すなわち、シーンまたはオブジェクトの立体感がほとんどまたは全くない領域である。この少なくとも1つの立体視セグメントは、視野内の固定セグメントとして構成される。これは、立体視セグメントがトラッキング装置によって視野内の異なる位置に変位していないことを意味する。
【0078】
例えば、垂直方向に水平方向に120度×50度の大きな視野又は大きな視野角は、約8×8度の大きさを有する高解像度ホログラフィックセグメントと、約50×50度の大きさを有する低解像度ホログラフィックセグメントと、約120×50度の大きさを有する固定され、従って、変位できない立体視セグメントとの組合せによって生成することができる。高解像度ホログラフィックセグメントは、視野内の少なくとも1つの注視トラッキング装置によって、水平方向及び/又は垂直方向に約±25度の範囲で変位されてもよい。低解像度ホログラフィックセグメントは同様に、約±25度の範囲で視野の内側で水平方向に変位させることができるが、垂直方向に固定すなわち非変位可能に設けられる。
【0079】
続いて、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントは生成された内部に位置し、低解像度ホログラフィックセグメントを表す。これは、大きな視野を生成するためのこれらのセグメントの両方の一般的な表現に関する。
【0080】
少なくとも1つの立体視セグメントも加えて生成され、このようにして視野がさらに増大される場合、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメント及び少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントは、追加的に生成され、立体視セグメントとして表現される内部に位置する。
【0081】
従って、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメント、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメント及び少なくとも1つの立体視セグメントが、視野内で部分的に又は完全に重なって配置されることが好都合であろう。
【0082】
個々のセグメント、すなわち、低解像度ホログラフィックセグメントおよび高解像度ホログラフィックセグメント、さらに、立体視セグメントが生成されることも意図される場合、この立体視セグメントも、任意選択で、視野内で互いに部分的にまたは完全に重なり合うことができる。特に、それらのサイズがより小さくなるように生成されるセグメントは、それらのサイズがより大きくなるように生成されるセグメントに完全に含まれ、トラッキング装置によって変位されてもよい。これは、高解像度ホログラフィックセグメントと低解像度ホログラフィックセグメントの両方、および存在する場合は立体視セグメントに関する。
【0083】
更に、本発明の1つの有利な構成では、少なくとも1つの導光装置を設けることができ、導光装置は光ガイドと、少なくとも1つの光結合装置と、少なくとも1つの光分離装置とを有し、光ガイドの境界面における反射によって光ガイド内部を伝搬する光と、光ガイドの境界面における光の所定数の反射の後に、光分離装置によって光ガイド外部への光の分離が設けられる。
【0084】
本発明による表示装置の光学構造は例えば、導光装置をさらに含むことができる。この場合、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントは、国際公開第2018/146326A2号公報に記載されている方法で生成され、変位されてもよい。低解像度ホログラフィックセグメントは例えば、立体視セグメントについて国際公開第2018/146326A2号公報に記載されているのと同様の方法で、同じ導光装置を使用するが、任意選択で、別個の光結合装置を用いて、導光装置の導光路内に入射し、導光装置から出射する光分離装置を使用することによって生成することができる。
【0085】
また、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントおよび少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの生成中に、光は、次いで、光ガイドの境界面における反射によって、導光装置の光ガイドの内部を伝搬する。光ガイドからの、または導光装置からの光の分離は光ガイドの境界面における光の定義された数の反射の後に、光分離装置によって、個々のセグメントに対してそれぞれ提供される。異なるセグメントについて、反射の数は同じであってもよい。他の実施形態では、反射の数はまた、異なるように調整されてもよい。例えば、高解像度ホログラフィックセグメントの場合、導光装置の光ガイドからの分離は、低解像度ホログラフィックセグメントの場合とは異なる又は他の数の反射の後に行うことができる。2つ以上の高解像度ホログラフィックセグメント又は2つ以上の低解像度ホログラフィックセグメントについて、個々の高解像度ホログラフィックセグメント又は個々の低解像度ホログラフィックセグメントの分離は、異なる数の反射の後に行うこともできる。
【0086】
例えば、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントのオブザーバ角度範囲は、この少なくとも1つのセグメントに対して修正された方法で反射の数を調整することによって、オブザーバの注視方向に適合させることができる。
【0087】
従って、少なくとも1つの光学システム及び少なくとも1つの光ガイドは少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメント及び少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントを生成するために、また、必要に応じて、少なくとも1つの立体視セグメントを生成するために、高解像度ホログラフィックセグメント、低解像度ホログラフィックセグメント及び必要に応じて立体視セグメントが一緒になって視野を形成し、その内部には三次元シーン又は三次元オブジェクトが表現可能である。
【0088】
本発明に係る表示装置に少なくとも1つの導光装置が設けられていても、少なくとも1つの導光装置及び少なくとも1つの光学システムによって少なくとも1つの空間光変調器の結像を設けてもよい。
【0089】
さらに、少なくとも1つの照光装置に設けられた少なくとも1つの光源の光源画像が光を導光装置に結合する前に、光路内の光学システムによって提供されることが、より有利である場合がある。
【0090】
この場合、特に、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントに対して、少なくとも1つの光結合装置が、光源イメージの位置において、またはその領域に設けられることが好ましい。
【0091】
したがって、本発明によれば、導光装置の光ガイドへの光の結合は、光源イメージの位置またはその近くで行われる。
【0092】
有利には、光学システムがさらに、互いに対して交差して配置される、2つの円筒状光学エレメントを含んでもよい。
【0093】
更に、光を導光装置に結合する前に、光路内に直線状又は一次元の光源イメージを生成するために設けられる光学システムにとって有利である場合がある。
【0094】
このようにして、特に、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントについて、2つの円筒状に構成された光学エレメントを、円筒状レンズエレメントとして構成することができ、かつ水平方向と垂直方向とで異なる焦点距離を有する光学エレメントとすることで、導光装置への光結合の位置に、例えば水平方向のみに焦点を発生させることができる。したがって、光の導光装置の光結合装置への結合の領域では、線形又は一次元の光源イメージが生成される。他の方向では上記例によれば、上下方向には導光装置から出てきた光の分離後まで光源イメージが生成されない。
【0095】
少なくとも1つの空間光変調装置内へのホログラムの好ましい単一視差エンコードが提供される場合、導光装置の光ガイドからの光の分離後に、ビーム経路内のホログラムの非エンコード方向にスイートスポットが生成されてもよい。ホログラムのエンコーディング方向および少なくとも1つの導光装置の後の光方向において、仮想オブザーバ領域が、少なくとも1つの空間光変調装置のフーリエ面またはイメージ面内に生成される。したがって、仮想オブザーバ領域は、空間光変調装置のフーリエ面内のホログラムのエンコーディング方向に設けられる。ホログラムのフーリエ変換が形成されるこの平面はこの場合、ホログラムが空間光変調装置に書き込まれない、またはエンコーディングされないときの光源イメージ面にも対応する。
【0096】
光源イメージは、この場合、光ガイドから規定された距離で光ガイドから光を分離した後に生成される。換言すれば、少なくとも1つの照光装置の少なくとも1つの光源の光源イメージはエンコーディング方向における仮想オブザーバ領域の位置で少なくとも1つの導光装置からの光分離後に、光路内で生成されてもよい。これは、仮想オブザーバイメージ又は仮想視聴ウィンドウが光源イメージ面内又は空間光変調装置のイメージ面内に生成され得ることを意味する。
【0097】
それと垂直な非エンコーディング方向において、少なくとも空間光変調装置へのホログラムの1つの好ましい単一視差エンコーディングが提供される場合、少なくとも1つの照光装置の少なくとも1つの光源の光源イメージは、光ガイドへの光の結合位置で、またはその近くで光路内に生成されてもよい。言い換えれば、ホログラムが空間光変調装置に書き込まれないか、またはエンコーディングされないとき、光ガイドへの光の結合位置またはその近くに、線形光源イメージが存在する。
【0098】
2つの円筒状光学エレメントは少なくとも1つの空間光変調装置にホログラムがエンコーディングされる方向に応じて、水平光源イメージ又は垂直光源イメージのいずれかを生成し、光源イメージは、エンコーディング方向及び非エンコーディング方向について、表示装置のビーム経路内の異なる位置に形成される。具体例としては、ここでは「水平(線形)光源イメージ」および「縦(線形)光源イメージ」という用語を、例えば、縦線の形の水平イメージまたは横線の形の垂直イメージが点光源から形成されていることを意味すると理解することができる。これは、本発明に係る表示装置の空間光変調装置にホログラムを単一視差エンコードする場合に適用される。
【0099】
本発明による目的はさらに、請求項29に記載されているように、内部でシーンまたはオブジェクトが異なる解像度で表される、大きな視野を生成するための方法によって達成される。
【0100】
内部でシーンまたはオブジェクトが異なる解像度で表される大きな視野を生成するための本発明による方法は少なくとも1つの照光装置、少なくとも1つの空間光変調装置、および少なくとも1つの光学システムによって実行され、
-少なくとも1つの空間光変調装置は入射光をシーンまたはオブジェクトの必要な情報で変調し、
-少なくとも1つの光学システムは少なくとも1つの空間光変調装置を画像化し、少なくとも1つの空間光変調装置のイメージの数に従って仮想視聴ウィンドウを生成し、少なくとも1つの空間光変調装置の個々の画像はセグメントとして互いに組み合わされ、視野を形成し、視野を形成し、視野を形成するために、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントおよび少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントが生成される。
【0101】
有利には、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントおよび少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの生成が光学システムの切替可能または制御可能なエレメントによって実行されてもよい。
【0102】
さらに、2つの切替可能または制御可能な光学エレメントが光学システムに提供され、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントを生成するために、第1の切替可能または制御可能な光学エレメントが切替または制御され、第2の切替可能または制御可能な光学エレメントが切替または制御されず、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントを生成するために、第2の切替可能または制御可能な光学エレメントが切り替えまたは制御され、第1の切替可能または制御可能な光学エレメントが切替または制御されないようにすることが好ましい場合がある。
【0103】
ここで、本発明の教示を有利に構成し、かつ/または記載された例示的な実施形態または構成を互いに組み合わせるための様々な可能性が存在する。これに関連して、一方では独立請求項に従属する特許請求項を参照し、他方では、本発明の好ましい例示的な実施形態の以下の説明を、図面を用いて行い、ここでは教示の一般的に好ましい構成も説明する。この場合、本発明は説明された例示的な実施形態を用いて原則的に説明されるが、後者に限定されることは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0104】
図1】人間の目の視野の概略図を示す。
図2】従来技術による表示装置の概略図を示す。
図3】高解像度ホログラフィックセグメントの生成中の本発明に係る表示装置の概略図を示す。
図4】低解像度ホログラフィックセグメントの生成中の図3に係る発明による表示装置の概略図を示す。
図5】追加の立体視セグメントの生成に関連して高解像度ホログラフィックセグメント及び低解像度ホログラフィックセグメントを表現した本発明による表示装置の概略図を示す。
図6】高解像度ホログラフィックセグメントの生成のための本発明に係る代替的な表示装置の概略図を示す。
図7】低解像度ホログラフィックセグメントの生成中の、図6に係る発明に係る代替的な表示装置の概略図を示す。
図8】低解像度ホログラフィックセグメントの生成および高解像度ホログラフィックセグメントの生成のための光結合装置の代替的な配置における図6および図7による代替的な表示装置の概略図を示す。
図9】光方向において導光装置より先に光源イメージが生成される、本発明に係る表示装置の更なる代替的な実施形態の模式図を示す。
図10図9に係る表示装置の代替的な構成の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0105】
同じである要素/部品/構成要素は、図面において同じ参照符号を有することに簡単に言及すべきである。
【0106】
図1は、人間の目の視野の概略図を示す。この図は、本発明をより良く理解するのに役立つように意図されている。
【0107】
視野内に表される特徴は、人間の目の網膜上に結像される。これは、視覚的知覚が存在する領域を視野と表現することを意味する。網膜の中心窩の内側のみが、可能な視野内の特徴の最も鮮明な視覚または最も明瞭な認識である。視野周辺部に向かうにつれて、視力、パターン認識および色覚に関する解像度または知覚の質は有意に低下する。図1から分かるように、眼の視野の水平範囲は約120度であり、図1の表現は人間の片眼のみに関連することを意図している。これは、両眼の水平視野が共に約180度~214度であるためである。眼が三次元表現を受けることができる視野の領域は約30度である。この30度の視野角を超えると、眼もはや奥行き知覚を行うことができない。約30度~約60度の領域内では立体視は可能であるが、奥行き知覚はない。
【0108】
図2は、仮想視聴ウィンドウが生成されるホログラフィック表示装置を示す。この場合、大きな視野は、視野のセグメント化によって達成される。空間光変調器200、光偏向装置400、およびレンズ500とともに、オブザーバ(視聴者)の目の位置において仮想視聴ウィンドウから見える視野の異なる部分がこの場合、時系列的に連続して生成される。
【0109】
空間光変調器200は異なるホログラフィック情報を搬送する、時系列的に連続したコヒーレント波面で示されており、光偏向装置400は、少なくとも一次元的に平面内の複数のセグメント内にある。このようにして、組み立てられた光変調器のイメージ(像)が形成される。時系列的に連続的に形成されたセグメント化された波面は、結像手段によって眼の瞳孔の方向に向けられる。空間光変調器の図示のセグメントにより、空間可視領域又は視野が生成される。
【0110】
ここで説明する例示的な実施形態の理解のために、結像ビーム経路及び照光ビーム経路、並びに、表示装置における仮想視聴ウィンドウ及び視野の大きさの関係について、最初に説明する。表示装置は照光装置、以下にSLMと称する空間光変調装置、及び光学システムを含み、この場合の説明のために、理想化されたレンズ、すなわち収差のない薄いレンズを含む。しかしながら、このような表示装置は、限られた視野しか有さない。
【0111】
特に、視野は、表示装置の光学システムの焦点距離に依存するので、仮想視聴ウィンドウのサイズと固定された関係にある。仮想視聴ウィンドウが拡大されると、視野はサイズが小さくなり、逆もまた同様である。一般に、使用される光学システムは、照射ビーム経路と表示装置内部の結像ビーム経路の両方に影響を及ぼす。
【0112】
表示装置の光学システムは一般に、1つの結像エレメントだけでなく、複数の結像エレメントを含んでもよい。次いで、システムの全焦点距離および主平面は、幾何光学の既知の方法によって決定されてもよい。したがって、上記の説明は、システム全体に対応して適用される。
【0113】
以下に説明する例示的な実施形態では、表示装置によって大きな視野が生成される。視野は、この場合、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメント及び少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントから形成される。これらのセグメントは、それぞれ、SLMのイメージ又はSLMのフーリエ面における回折次数の画像である。しかし、視野の大きさがこれを必要とするものであれば、複数の高解像度ホログラフィックセグメント及び複数の低解像度ホログラフィックセグメントを生成することも可能である。自然環境にいる人は高解像度で強い立体感を有する限られた立体角しか見ることができず、知覚することができないので、これは大きな視野を生成するときに使用されてもよい。したがって、シーンのオブザーバが直接観察または焦点を合わせるのではなく、背景でのみ知覚される三次元シーンのオブジェクトを、より低い解像度で表すことが可能である。したがって、オブザーバは、より弱い立体感で背景内のオブジェクトを知覚することになる。したがって、視野全体で見える多数のオブジェクトを含む、表現されるべき三次元シーンの背景は、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントによって生成されてもよい。
【0114】
しかしながら、オブザーバによって照準が合わされた、または焦点が合わされたオブジェクト、または三次元シーンのオブジェクトは、強い立体感を有するべきである。しかしながら、これらのオブジェクトは、視野の限定された立体角範囲において高解像度で表現される必要があるだけである。この目的のために、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントが、表示装置によって生成される。立体角範囲がどれだけ大きいかに応じて、複数の高解像度ホログラフィックセグメントが生成されてもよく、これらは、この立体角範囲を生成するために、順次配置される。高分解能でホログラフィック的に生成したこのセグメントの内部で、オブザーバが焦点を合わせた三次元オブジェクトを再構成して表現する。これは、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントが少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの内部で生成されることを意味する。高解像度ホログラフィックセグメントは、低解像度ホログラフィックセグメントと重畳されるか、または重ね合わされる。個々のセグメントはSLMのイメージであり、したがって、SLMの画素のイメージでもあるので、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントは高画素密度を有するイメージを表し、一方、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントは、より低い画素密度を有するSLMのイメージを表す。
【0115】
しかしながら、本発明は、例外なく、高解像度ホログラフィック表現と低解像度ホログラフィック表現との組合せに限定されることを意図していない。1つの例示的な実施形態が示すように、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントおよび1つの低解像度ホログラフィックセグメントを、さらに少なくとも1つの立体視セグメントと組み合わせることも可能である。
【0116】
以下、仮想視聴ウィンドウのサイズと、SLM1度当たりの必要画素数との関係について説明する。
【0117】
ホログラフィック表示装置内の仮想視聴ウィンドウvwから距離Dのところにピクセルピッチpを有するSLMの場合、波長λの光の場合、仮想視聴ウィンドウの最大サイズは、vw=D*λ/pとして与えられる。SLMのイメージを生成するホログラフィック表示装置において、例えば、仮想視聴ウィンドウから見えるヘッドマウントディスプレイ又は投影ディスプレイにおいて、D及びpは、仮想視聴ウィンドウまでのSLMのイメージの距離及び画素ピッチである。
【0118】
比率D/pが一定に保たれる場合、同じサイズの仮想視聴ウィンドウは例えば、SLM、またはSLMのイメージのより大きな距離およびより大きな画素ピッチまたは画素ピッチを有するSLMイメージを用いて生成されてもよい。
【0119】
この場合、SLM上の1度の視角は、x=tan 1°*Dの範囲に対応する。1度の視野角の内側のSLMの画素数Nを決定するために、SLM上のこの広がりを画素ピッチで割る。これにより、N=x/p=tan 1°*D/pが得られる。比率D/pは、この式でも同様に発生するので、N=tan 1°vw/λで置き換えることができる。約7mmのサイズおよびλ=460nmの光の波長を有する仮想視聴ウィンドウの場合、これは、例えば、SLMの266画素を与える。この値は、仮想視聴ウィンドウのサイズと共に線形に減少する。大きさが約1mmで、光の波長がλ=460nmの仮想視聴ウィンドウの場合、約38画素/視野角度が必要である。この場合、適切に選択された比率D/pを有する2000の複素値画素(2つの画素が複素値画素を形成する)を有するSLMは、約50度以上の視野、すなわち視野角を生成することができる。
【0120】
次に、仮想視聴ウィンドウのサイズと可視解像度との関係について説明する。
【0121】
仮想視聴ウィンドウが生成されるホログラフィック表示装置またはホログラフィックディスプレイの場合、仮想視聴ウィンドウのサイズは、従来、このサイズがオブザーバの眼の瞳孔と少なくとも同じ大きさになるように選択される。この場合、オブザーバの眼の瞳孔はそれが仮想視聴ウィンドウ内に完全に位置するとき、眼に入る光のための回折制限された開口として作用する。原則として、ホログラフィック三次元(3D)シーンの可視解像度は、眼の瞳孔サイズの回折限界によって、場合によっては眼の水晶体の収差によって、および眼の網膜上の光受容体の分布によって、オブザーバの自然環境の知覚と同様に制限される。しかしながら、ホログラフィック再構成は、オブザーバの目の瞳孔よりも小さい仮想視聴ウィンドウを用いて実行されてもよい。この場合、目の瞳孔の内側に位置する仮想オブザーバウィンドウの開口は、三次元シーンが知覚される解像度を制限することができる回折限界開口として作用する。
【0122】
しかしながら、本発明は解像度のこの制限が再構成されたシーンが眼の網膜の中心に直接位置するとき、すなわち、網膜上の最も鮮明な視力の領域を表す中心窩上に結像されるときにのみ関連し、したがって、このシーンが高密度の光受容体のために高解像度を有する場合に存在するという洞察に基づく。したがって、本発明によれば、オブザーバの眼の瞳孔よりもサイズが小さい仮想視聴ウィンドウが生成される生成されたホログラフィックセグメントは、オブザーバの眼の網膜の中心に衝突せず、オブザーバの可視解像度がいずれにしても低減される三次元シーンの部分に対してのみ生成または使用される。このようにすれば、知覚可能な解像度の損失を生じることなしに、空間光変調装置で必要とされる画素数を減らすことができる。
【0123】
図3および図4はホログラフィック表示装置の1つの例示的な実施形態を図式的に示し、その実施形態では、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントおよび少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントが生成される。この目的のために、表示装置は、少なくとも1つのSLM1と、少なくとも1つの光源2を有する少なくとも1つの照光装置と、少なくとも1つの光学システム3とを有する。光学システム3は、SLM1の結像に用いられる。この目的のために、光学システム3は、受動的に構成された少なくとも1つの結像エレメント4を備える。結像エレメント4は、SLM1の近くに配置され、この場合、主にSLM1を結像するために使用される。この場合、大きな視野を生成するために、SLM1は時間的に順次又は択一的に同時に多重結像され、このようにして、複数のセグメントが生成され、これらのセグメントは一緒になって、互いに組み合わされて、広い視野をもたらす。つまり、ホログラフィックセグメントについては、光学システム3がそれぞれSLM1の中間イメージを生成する。この場合、高解像度ホログラフィックセグメントと低解像度ホログラフィックセグメントのどちらが生成されるかは重要ではない。
【0124】
さらに、光学システム3は、少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメントを備える。図3および図4によるこの例示的な実施形態では、光学システム3が2つの切替可能または制御可能なエレメント5および6を備える。この場合、切替可能または制御可能なエレメント5及び6はレンズエレメントとして構成されるが、他の切替可能または制御可能なエレメント、例えば異なるセグメントに対して光を異なる光学エレメント、例えば異なるレンズに逸脱させる切替可能ミラーを使用することも可能である。スイッチを入れたり切ったりする切替可能なレンズエレメントの代わりに、例えば、ズーム目標に類似した光学システムを使用することも可能であり、ズーム目標では、様々なセグメントに対して異なる焦点距離を調整するために、焦点距離がレンズエレメント間の距離を機械的に修正することによって変化される。
【0125】
これらの切替可能または制御可能なエレメント5および6はSLM1とオブザーバ面7との間のビーム経路に配置されるが、この配置は必須ではない。また、これら2つのエレメントのうち1つの切替可能または制御可能なエレメントをSLM1の光方向前段に配置してもよい。これらの2つの切替可能または制御可能なエレメント5および6は仮想視聴ウィンドウおよび視野のサイズを変化させるために、オブザーバ面7に対するSLMのイメージの距離DおよびSLM1の画素のイメージの画素ピッチpの異なる大きな比率D/pを調整する。このような比率D/pの調整により、オブザーバ面7内に生成されるべき仮想視聴ウィンドウ8の大きさ、及び視野角、又は視野の大きさを、切替可能または制御可能なエレメント5及び6の切り替え状態に従って変化させることができる。
【0126】
図3に、高解像度ホログラフィックセグメントが発生するモードにある表示装置を示す。この場合、この図では、特に高解像度ホログラフィックセグメントに対するSLM1とオブザーバ面7との間のビーム経路が図示されている。照光装置は、光源2を備え、SLM1を十分にコヒーレントな光で照光する。図3および図4によるこの例示的な実施形態では、SLM1の照光が高解像度ホログラフィックセグメントおよび低解像度ホログラフィックセグメントについて同じである。これは、これら2つのセグメントの生成に同じ光源が使用されることを意味する。もちろん、これら2つのホログラフィックセグメントが生成されるために、2つの光源を使用することも可能である。これらの2つの光源はまた、異なるように構成されてもよい。しかしながら、これら2つの光源が十分にコヒーレントな光を放射することが重要である。
【0127】
2つの切替可能または制御可能なエレメント5および6は、それぞれ、ON状態およびOFF状態にされ得る。したがって、それらは、オンおよびオフに切り替えることができ、したがって、異なる状態で制御することができるように構成される。図3による高解像度ホログラフィックセグメントを生成するために、第1の切替可能または制御可能なエレメント5はON状態に、第2の切替可能または制御可能なエレメント6はOFF状態に切り替わる。これは、したがって、第1の切替可能または制御可能なエレメント5がエレメント5に当たる光に影響を及ぼし、第2の切替可能または制御可能なエレメント6がいかなる影響も及ぼさず、すなわち、入射光が切替可能または制御可能なエレメント6によってその伝搬に影響を及ぼされないことを意味する。高解像度ホログラフィックセグメントを生成するために、照光装置の光源2によって放射された光は、SLM1に当たって、三次元シーンの情報に従ってそれによって変調される。視野のセグメントが提供されるSLM1のイメージ9は光学システム3によって、すなわち、結像エレメント4および第1の切替可能または制御可能なエレメント5によって生成される。図3は、第1の切替可能または制御可能なエレメント5の後にイメージが形成される光学システム3によって生成されたSLM1のイメージ9を通ってSLM1の3つの画素P1,P2,P3からオブザーバ面7までのビーム経路を示している。この場合、1つの画素P2はSLM1の中央に位置し、他の2つの画素P1およびP3はSLM1の下縁および上縁に位置する。各画素に対して示されるのは、その開口角が画素の回折次数の回折角に対応する光線束である。SLM1と第1の切替可能または制御可能なエレメント5との間のフィルタ面11において、例えば、より高い回折次数がフィルタ除去されてもよい。第1の切替可能または制御可能なエレメント5の後のビーム経路において、SLM1のイメージ9が生成される。そして、SLM1のイメージ9から、オブザーバ面7の方向に光線が続く。このオブザーバ面7では、次いで、個々の画素P1、P2およびP3のビームプロファイルが重ね合わされ、このオブザーバ面7における高解像度ホログラフィックセグメントの生成中に、仮想視聴ウィンドウ8が形成される。この仮想視聴ウィンドウ8を通して、オブザーバはその目が仮想視聴ウィンドウ8の領域内のオブザーバ面7内にあるときに、視野内の三次元的に生成されたシーンまたはオブジェクトを観察することができる。
【0128】
オブザーバ面7におけるそれらの重ね合わせの位置における光の画素P1、P2およびP3から来るこれらのビームプロファイルの全体直径は、生成された仮想視聴ウィンドウ8の範囲を与える。仮想視聴ウィンドウ8の広がりは、図3においてオブザーバ面7内の太い灰色の線によって見ることができる。明らかなように、SLM1の種々の画素P1、P2及びP3から到来するそれぞれの中心光ビームは、異なる角度で仮想視聴ウィンドウ8の中心に到達する。SLM1のエッジ画素P1およびP3からのそれぞれの中心ビームの角度差は、生成される高解像度ホログラフィックセグメントの視野角、すなわち視野を与える。高解像度ホログラフィックセグメントのこの場合に生成される視野は、図3において参照符号10で提供され、SLM 1の2つの外側画素P1及びP3の像9から来て、仮想視聴ウィンドウ8の中央まで延在する黒線によって画定される。
【0129】
この場合、仮想視聴ウィンドウ8の内側にある目を有するオブザーバは、第1の切替可能または制御可能なエレメント5によって生成されるような、仮想視聴ウィンドウ8からの距離にあるSLM1のイメージを見ることになる。ホログラフィック三次元シーンはSLM1の生成されるイメージ9の前後に個々の物点を含み、SLM1に書き込まれるか、またはエンコーディングされてもよい。
【0130】
三次元シーンの解像度は、1次元または1方向におけるSLMの視野/視野角当たりの画素数によって与えられる角度解像度である。たとえば、2000画素の視野/視野角5度は、400画素/視野角度の解像度を与える。
【0131】
高解像度ホログラフィックセグメントの生成中に、オブザーバの眼の瞳孔よりも大きい、すなわちその広がりが約6mmよりも大きい、サイズの大きな仮想視聴ウィンドウが生成される。しかし、生成される視野は、そのサイズが数度、すなわち約10度以下に制限される。
【0132】
図4は、低解像度ホログラフィックセグメントの生成中の図3に係る表示装置を示す図である。この場合、低解像度ホログラフィックセグメントは、図3に係る高解像度ホログラフィックセグメントと同様の原理で生成される。このことは、この場合にも、照光装置、SLM1及び光学システム3によって、SLM1の結像又はイメージ、ひいてはセグメント及び仮想オブザーバウィンドウが生成されることを意味する。この場合の図4は、低解像度ホログラフィックセグメントの生成中のビーム経路を示す。このために、第1の切替可能または制御可能なエレメント5はOFF状態に切り替わり、一方、第2の切替可能または制御可能なエレメント6はON状態に切り替わるので、第2の切替可能または制御可能なエレメント6のみが光に影響を及ぼす。照光装置の光源2によって放射された光は、SLM1に当たって、三次元シーンの情報に従って変調される。光学システム3によって、すなわち、結像エレメント4および第2の切替可能または制御可能なエレメント5によって、視野のセグメントが提供されるSLM1のイメージ9が生成される。SLM1のイメージ9は今や、図3に示すように、第1の切替可能または制御可能なエレメント5の光方向後方に形成されなくなり、代わりに、第2の切替可能または制御可能なエレメント6の後方にのみ形成される。明らかなように、SLM1のこのイメージ9はオブザーバ面7の近傍に形成されているが、図3によるイメージ9とは倍率が異なり、オブザーバ面7までの距離も異なる。低解像度ホログラフィックセグメントの生成中に、オブザーバ面7内に仮想視聴ウィンドウ8が同様に形成される。この仮想視聴ウィンドウ8を介して、オブザーバは、視野12内の三次元的に生成されたシーン又は物体を、それらの目が仮想視聴ウィンドウ8の領域内のオブザーバ面7内にあるときに観察することができる。しかしながら、シーンのこの部分またはオブジェクトのこの部分は、図3に従って生成され、表されるシーンの部分よりも低い解像度で表される。
【0133】
個々の画素P1、P2およびP3から得られるビームの開口角は再び、図3のように、画素の回折角に対応する。この場合、切替可能または制御可能なエレメント5および6の他の切替状態のために、仮想視聴ウィンドウ8が形成されるオブザーバ面7内の、SLM1の画素P1、P2およびP3から来る光ビームの全体的な直径が、重ね合わせの位置においてほんのわずかな範囲を有するビーム経路が存在する。したがって、このようにして、その範囲が小さい視聴ウィンドウ8のみが生成される。低解像度ホログラフィックセグメントを生成するときの仮想視聴ウィンドウ8のサイズは、約2mm未満である。しかし、図4に見られるように、SLM1の画素P1、P2およびP3から来る光ビームはオブザーバ面7に到着し、そこでの仮想視聴ウィンドウ8では、図3よりもはるかに大きな異なる角度で到着する。
【0134】
これは、図4において、仮想視聴ウィンドウ8の中央にあるSLM1のイメージ11のエッジ画素P1及びP3からの黒線によって再び明らかにされる。このようにして大きな角度範囲が生成されるので、大きな視野12、すなわち大きな視野角が提供される。
【0135】
第2の切替可能または制御可能なエレメント6によって、SLM1のイメージが生成され、この場合、SLM1のイメージはオブザーバ面7の近くに位置する。しかしながら、オブザーバ面7から任意の距離に位置するオブジェクト点を有する三次元シーンをSLM1に書き込む又はエンコーディングすることも可能である。
【0136】
少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントにおける三次元シーンの解像度は再び、1次元、すなわち方向における視野または視角あたりのSLMの画素数によって決定される。例えば、66度の視野が2000画素で生成される場合、30画素/視野度の解像度が存在するのであろう。ここでも、これらは単に例示的な値であることが意図されている。
【0137】
次いで、その生成後、図3による少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントを生成および表現し、図4に従って生成され表現された低解像度ホログラフィックセグメントの少なくとも部分的に内部に配置する。適合的眼球離反運動の不一致を完全に回避することができる大きな視野を得るために、複数の又は多数の高解像度ホログラフィックセグメント、並びに複数の又は多数の低解像度ホログラフィックセグメントを生成することが可能である。次に、これらのホログラフィックセグメントは、図3および図4と同じ原理に従って生成される。生成は時系列的に実行されてもよいし、同時に(同時に)実行されてもよい。
【0138】
少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントは少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントと同様に、例えば三次元シーンのオブザーバが三次元シーンの内部でそれらの焦点を1つの物体から別の物体にシフトさせる場合、又はオブザーバが異なる位置に移動するか、又はそれらの頭部のみを移動させる場合に、トラッキング装置によって視野内の異なる位置に変位させることができる。この目的のために、変位されるべきホログラフィックセグメントに関連して生成される仮想視聴ウィンドウは、オブザーバ面内の対応する新しい位置に追従される。この場合、注視トラッキング装置はオブジェクトまたはシーンを観察するオブザーバの注視を検出し、トラッキングする。トラッキング装置はまた、SLMのイメージの位置、または少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントの位置、および/または少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの位置を、注視トラッキング装置によって決定されるオブザーバの眼の焦点位置に適合させる。
【0139】
図3および図4にかかる例示的な実施形態により、光学システムが切替可能または制御可能なエレメントを含む、表示装置の単純な構造により、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントおよび少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの生成が可能であり、達成可能であることが示される。
【0140】
図5は、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントおよび少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントに加えて、少なくとも1つの立体セグメントも生成される別の表示装置を示す図である。このようにして、視野をさらに増大させることができる。個々のセグメントは、少なくとも部分的に重ね合わされていても、重なり合っていてもよい。この場合、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントは少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントに少なくとも部分的に重ね合わされ、これら2つのホログラフィックセグメントは立体視セグメントと重ね合わされ、完全に立体視セグメントの内側に位置する。したがって、視野の横領域は、少なくとも1つの立体視セグメントによって形成される。この立体視セグメントでは次いで、三次元シーンの領域はオブザーバが三次元的に焦点を合わせることも知覚することもないが、いかなるイベントにおいても低解像度でかつ深度の知覚を伴わないだけで見ることになる。
【0141】
言い換えると、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントは次に生成され、表現される低解像度ホログラフィックセグメントの内部に位置する。これは、図3及び図4による表示装置による大きな視野を生成する際のこれら2つのセグメントの一般的な表現に関する。しかし、付加的に少なくとも1つの立体視セグメントも生成され、それによって視野がさらに増大される場合には、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメント及び少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントが付加的に生成され、立体視セグメントとして表現される内部に位置する。
【0142】
図5は追加の立体視セグメントを生成するための表示装置を示し、次いで、図3及び図4による表示装置は、図5に従って構成される。図5は、図3及び図4に係る表示装置の詳細を示している。
【0143】
表示装置は、図3及び図4に示すものと同じ照光装置2、同じSLM1及び同じ光学システム3を含む。SLM1の近くに配置された結像エレメント4は、ここでは切替可能または制御可能に構成されている。また、図3及び図4のように、フィルタ面11が設けられている。フィルタ面11は例えば、切替可能な開口またはストップとして構成されてもよいが、この場合、この面11でフィルタリングが行われないようにスイッチオフされるのであろう。さらに、光学システム3は、切替可能な結像エレメント12および13と、切替可能な拡散器(ディフューザ)14とをさらに備える。3つの画素P1、P2、およびP3からの光ビームが再び表示される。
【0144】
このような表示装置によって、高解像度ホログラフィックセグメント及び低解像度ホログラフィックセグメントも、図3及び図4に記載されているのと同様の方法で生成することができる。これらのホログラフィックセグメントの生成のために、追加の切替可能な結像エレメント12、13およびディフューザ14はオフに切り替わり、SLM1に近い結像エレメント4は、この場合には切替可能に構成され、スイッチオン状態にある。
【0145】
少なくとも1つの立体視セグメントを生成するために、結像エレメント4及び2つの切替可能または制御可能なエレメント5及び6はスイッチオフされる、すなわち、OFF状態にある。その代わりに、2つの追加の切替可能な結像エレメント12および13ならびにディフューザ14がオンに切り替えられ、すなわち、それらはオン状態にある。結像エレメント12の助けを借りて、SLM1の拡大された中間イメージが、結像エレメント13の位置及び切替可能なディフューザ(拡散器)14の位置で生成される。ディフューザ14はこの場合、スイッチが入り、従って、SLM1の各画素からの光の角度範囲を増大させる。
【0146】
しかしながら、切替可能または制御可能であるように構成されていないさらなる結像エレメント15を用いて、広い距離でのSLM1の結像およびオブザーバ面7内でのスイートスポット16の生成の両方が次いで行われる。しかしながら、明確にするために、大きな距離にあるSLM1の生成されたイメージを図5に示すことはできない。しかしながら、オブザーバ面7内のSLM1の個々の画素P1、P2及びP3から始まるほぼ平行な光線束が存在し、これらの光線束は互いに重ね合わされてスイートスポット16を形成する。このようにして生成された立体視セグメント、従って、生成された視野17は、この例示的な実施形態では低解像度ホログラフィックセグメントによって図4で生成された視野よりも大きい。
【0147】
1つの数値例では例えば、立体視セグメントは約133度の視野を生成する。2000画素を有するSLMの場合、これは、例えば、約15画素/度の解像度に対応する。
【0148】
この場合、この少なくとも1つの立体視セグメントは、視野内に固定されたセグメントとして構成される。これは、この立体セグメントがトラッキング装置によって視野内の異なる位置に変位していないことを意味する。
【0149】
高解像度ホログラフィックセグメントは例えば、8×8度のサイズを有することができ、低解像度ホログラフィックセグメントは例えば、50×50度のサイズを有することができる。さらに、立体視セグメントは例えば、120×50度のサイズを有することができる。このようにして、水平方向に120度、垂直方向に50度という大きな視野、つまり大きな視野角を作り出し、達成することができた。この場合、高解像度ホログラフィックセグメントは、水平方向及び/又は垂直方向に±25度の範囲で視野内のトラッキング装置によって変位されてもよい。低解像度のホログラフィックセグメントは同様に、ほぼ±25の範囲で視野内の水平方向に変位させることができるが、垂直方向においては固定されるように、すなわち、変位させることを意図しないように設けられている。
【0150】
しかしながら、本発明は、立体視セグメントの固定位置に限定されることを意図していない。他の実施形態では、この立体セグメントが視野内でさらに変位させることができる。
【0151】
加えて、ホログラフィー表現の他に立体表現が生成される場合、しかしながら、単一の立体セグメントのみが表示装置と共に生成されるのに十分である。この単一の立体視セグメントは、既に大きな視野を生成している可能性がある。少なくとも1つの立体視セグメントがオブザーバの左目のための表示装置内および同じオブザーバの右目のための別個の表示装置内でそれぞれ生成される場合、立体視シーンは、左右の視差情報を表示することによって立体視のための従来の方法において、立体視シーンを三次元的に表現することができる。視差情報のために、オブザーバは、眼のレンズの焦点情報が利用可能でない角度範囲においてさえ、奥行きの印象を知覚することができる。周辺の人間の視野はまた、図1に示すように、情報がそれぞれ一方の目に対してのみ見える領域を含む。この場合、立体視セグメントという用語は一般に、その一部が片眼だけに見えるような大きな視野を生成するセグメントにも使用される。左眼と右眼の立体視セグメントは部分的には重なるが、完全には重ならない。
【0152】
立体視セグメントの生成は、ここで図5に示すような表示装置の構成に限定されるものではない。立体視セグメントの生成はコヒーレント光を必要とせず、振幅SLMで生成することができるので、一般的な場合には、例えば、異なるSLMおよび異なる光源をホログラフィックセグメントの生成および立体視セグメントの生成に使用することも可能であろう。ホログラフィックセグメント及び立体セグメントのこれらのビーム経路は例えば、ビームスプリッタエレメント又はミラーによって重ね合わせることができる。
【0153】
図6図3図4及び図5に対する代替の表示装置を示しており、これを用いて、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメント及び少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントを生成することができる。
【0154】
ホログラフィックディスプレイデバイス、例えば、HMDでは、SLMが一般に結像される。SLMのセグメント化された多重結像の場合、SLMのイメージは、各セグメントにそれぞれ形成される。しかしながら、所定距離でのSLMの結像は、光学システムの使用される結像エレメントの特定の焦点距離、およびこれらの結像エレメントからのSLMの特定の距離を前提とする。特に、一般に、表示装置における結像ビーム経路及び照光ビーム経路は、互いに独立していない。照光ビーム経路のおそらく必要とされる調整は、時には結像ビーム経路の変更を伴うこともある。
【0155】
フラット又はプレーナー導光装置及び少なくとも1つの結像エレメント、例えばレンズエレメントを備えた表示装置の1つの構成において、光を導光装置に結合する前の光方向において、例えば、SLMの複数の結像の異なるセグメントに対して仮想視聴ウィンドウの同じ位置を調整するために、この少なくとも1つの結像エレメントの焦点距離を変化させる必要性が生じる。結像エレメントからのSLMの距離が固定されている場合、結像エレメントの焦点距離が変更すると、SLMの結像位置が変更する。したがって、SLMのセグメント化された多重結像の場合、SLMの異なるイメージ面が各セグメントに対して形成される。
【0156】
ホログラフィックディスプレイ装置において、複数の結像の全てのセグメントに対して共通のイメージ面を有することは絶対に必要ではない。3Dシーンは例えば、個々のセグメント内のSLMに適合されるホログラムのサブホログラムの焦点距離によって、SLMの異なるイメージ面を有するセグメント境界にわたって連続的に表されてもよい。しかしながら、他方では、SLMのイメージ面が生成されるべき全てのセグメントについて少なくとも類似している場合、すなわち、例えば、数メートルだけではなく数センチメートルだけ異なる場合、ホログラム計算は単純化される。
【0157】
高解像度のホログラフィックセグメントを生成するために、図6による表示装置は、少なくとも1つのSLM21の他に導光装置24、SLM21を照射する少なくとも1つの光源22を有する照光装置、および光学システム23も備える。導光装置24は、ここでは湾曲するように構成された導光体と、2つの光結合装置25,25'と、光分離装置26とを備える。1つの光結合装置25は例えば、少なくとも1つの回折格子(グレーティング)エレメントを含むことができる。他方の光結合装置25'は例えば、光ガイド内に光結合するためのミラーエレメントを含んでもよく、この場合、ミラーエレメントは、反射性にされ、光ガイド内に配置された傾斜面として構成されてもよい。ミラーエレメントは例えば、反射ワイヤグリッド偏光子として構成されてもよく、その結果、特定の偏光方向の光のみが、この光結合装置25'によって光ガイド内に結合される。光分離装置26は、この場合、グレーティングエレメントを備えることができる。グレーティングエレメントは各光入射位置において導光装置24からの光を光ガイドの表面に対して垂直に分離することを可能にするために、光入射位置によって変化するグレーティング周期を有していてもよい。結像エレメント27の他に、SLM21の光方向後方において光学システム23は、少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメントをも含む。この例示的な実施形態では、光学システムがここでは参照符号28によって示される少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメントを備える。少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメントは例えば、レンズエレメントであってもよく、その焦点距離は駆動によって変化させることができる。代替例として、切替可能または制御可能なエレメントは例えば、レンズシステムとして構成することもでき、その全焦点距離は例えば、ズーム対物レンズのように変化させることができ、個々のレンズエレメントの距離によって変化させることができる。また、切替可能または制御可能なエレメントは例えば、互いに垂直に配置され、制御可能及び調節可能なグレーティング周期を有する2つの回折格子として構成することができ、この回折格子には、異なるレンズ機能を書き込むことができる。さらに、切替可能または制御可能なエレメントも、例えば、オンまたはオフに切り替えることができる2つのレンズエレメントとして構成することができる。加えて、偏光スイッチ33が設けられてもよい。光学システム23は光源22の中間イメージ30を生成し、従って、生成されるべき仮想視聴ウィンドウ29の中間イメージも生成する。さらに、仮想視聴ウィンドウの中間イメージ、および光源22の中間イメージ30は、少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメント28によって、実際の仮想視聴ウィンドウ29またはオブザーバ面に結像される。表示装置内に配置された導光装置24は、仮想視聴ウィンドウ29の中間イメージ30の後、及び少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメント28の後にビーム経路内に配置される。結像エレメント27と少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメント28とを備える構成はさらに、SLM21のイメージを生成する。仮想オブザーバウィンドウの中間イメージ又は光源22の中間イメージ30を結像する少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメント28も、SLM21の結像に寄与する。結像エレメント27及び少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメント28の焦点距離の適切な選択により、SLM21のイメージが導光装置24の導光体の内部に形成される。
【0158】
さらに分かるように、光学システム23を通過した後、光結合装置25を通って導光装置24に入射し、光導波路内の全内部反射によって伝搬した後、光分離装置26によって結合される。この点に関し、SLM21の複数の画素から来る複数の光ビームが示されている。SLM21の個々の画素ごとに、この場合には光学システム23によって導光装置24の光ガイドの内部にそれぞれフォーカスが形成される。これは、導光装置24の導光体内部にSLM21のイメージが形成されていることを意味する。
【0159】
少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメント28の焦点距離は、光を導光装置24の外に結合した後に仮想視聴ウィンドウ29が形成されるように選択される。
【0160】
図6による表示装置で高解像度のホログラフィックセグメントを生成するために、少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメント28は、それに対応して切替え又は駆動されて、規定された駆動状態となる。少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメントが例えば、可変焦点距離を有するレンズエレメントである場合、規定された駆動状態は規定された焦点距離に対応し、これは調節される。少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメントが回折格子として構成される場合、特定のレンズ機能も同様にこの回折格子に書き込むことができる。少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメントがオン/オフを切り替えることができる2つのレンズエレメントとして構成される場合、図3と同様に、2つの切替可能レンズエレメントのうちの1つはON状態にスイッチされ、さらなる切替可能レンズエレメントはOFF状態にスイッチされるのであろう。さらに、光結合装置25'は、切り替え可能に構成されなければならない。入射光が一方の光結合装置25によって導光装置24の光ガイド内に結合され得るように、光は他方の光結合装置25'を通過してから、それによって結合されなければならない。したがって、光結合装置25'は、現状ではスイッチを切らなければならない。
【0161】
光結合装置25'自体は、切り替え可能に構成されるべきであるか、又は光を光結合装置25'に結合するか又は結合しない別のエレメントで別個のスイッチングを行うべきである。光結合装置25'が例えば、1つの偏光方向の光を反射して結合し、それに垂直な別の偏光方向の光を透過してしたがって結合しない透過しない反射ワイヤグリッド偏光子として構成される場合、別個のスイッチングエレメントは例えば、偏光スイッチ33であってもよい。
【0162】
光結合装置25'が光を透過する場合、この光は、その背後に位置するさらなる光結合装置25に当たって、それによって結合される。
【0163】
代替例として、例えば、光結合装置25'も従来のミラーエレメントとして構成することができ、少なくとも1つの切替可能または傾斜可能なミラーエレメントをSLMと光結合装置との間の光路内に配置することができ、このエレメントは、光を結合するために光結合装置25'のいずれかに向けるか、又は結合しないように光結合装置25を過ぎる方向に向ける。例えば、2つの光結合装置25および25'は互いに隣接して配置されてもよく、光ガイド内に連続的に配置されなくてもよく、その場合、少なくとも1つの切替可能または傾斜可能なミラーエレメントは光を光結合装置25または25'のいずれかに導いてもよい。
【0164】
すでに述べたように、高解像度ホログラフィックセグメントを生成するために、光結合装置25'はスイッチオフされ、その結果、光はこの光結合装置25'を通過し、後方に位置する光結合装置25によって光ガイド内に結合される。
【0165】
高解像度のホログラフィックセグメントを生成するために、照光装置の光源22によって放射された光は、SLM21に当たって、三次元シーンの情報に従ってそれによって変調される。光学システム23によって、すなわち、結像エレメント27および第1の切替可能または制御可能なエレメントによって、SLM 21のイメージが生成され、それによって、視野31の高解像度ホログラフィックセグメントが提供される。第1の切替可能または制御可能なエレメントの後方に形成されるSLM21のイメージは、導光装置24の内部に形成される。オブザーバ面内には、高解像度ホログラフィックセグメントの生成中に仮想視聴ウィンドウ29が形成される。この仮想視聴ウィンドウ29を介して、オブザーバは、視野31内の三次元的に生成されたシーン又は物体を、それらの目が仮想視聴ウィンドウ29の領域内のオブザーバ面内にあるときに観察することができる。
【0166】
このようにして、複数の高解像度ホログラフィックセグメントを生成することもでき、これらを組み合わせることによって、全体的な視野における高解像度の視野角が増大する。例えば、複数の高解像度ホログラフィックセグメントを生成するために、光ガイドにおける反射の数をセグメント毎に異なるように調整してもよい。
【0167】
図6によるこのような表示装置では、視野をさらに増加させるために、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントを生成することもできる。この手順は、図7に関連して説明される。
【0168】
図7に示す表示装置は、高解像度ホログラフィックセグメントの生成に高解像度ホログラフィックセグメントの生成と同様の表示装置を用いるため、図6に示す表示装置の構造に構造的に対応している。したがって、図7に示す表示装置は、少なくとも1つの光源22、SLM21、光学システム23および導光装置24を備えた照光装置を再び備える。導光装置24は、再び同じ導光体、2つの光結合装置25および25'、および光分離装置26を備える。この光ガイドは、湾曲するように構成されている。この場合も、光結合装置25'は光ガイド内に光結合するためのミラーエレメントを含んでもよく、この場合、ミラーエレメントは反射性にされ、光ガイド内に配置された傾斜面として構成されてもよい。しかしながら、図6とは対照的に、光結合装置25'はここでスイッチが入り、その結果、光は、その位置で光ガイド内に結合される。したがって、光は後続の光結合装置25に当たらない。
【0169】
光分離装置26は、グレーティングエレメントを含み得る。グレーティングエレメントは各光入射位置で光ガイドの表面に垂直に導光装置24からの光の結合を可能にするために、光入射位置と共に変化するグレーティング周期を有することができる。図7には、1つの光分離装置26のみが示されている。しかしながら、一般に、光ガイドは、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメント及び少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントのための別個の光分離装置を含むこともできる。これらの別個の光分離装置は例えば、少なくとも1つの切替可能なグレーティングエレメントをそれぞれ含んでもよく、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントに対してスイッチオンされ、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントに対してスイッチオフされる、またはその逆である。光分離装置は国際公開第2019/012028号公報の実施形態に応じて構成されてもよいが、国際公開第2019/012028号公報の開示内容もここに完全に組み込むことを意図している。

【0170】
視野を増大させるために、照光装置によって放出された光は、SLM 21上に向けられ、それによって、表現されるべきオブジェクト又は表現されるべきシーンの情報で対応して変調される。この変調された光はこの場合、明確にするために、SLM21の3つの画素P1、P2、およびP3のみに由来し、異なるグレースケールの3つの光ビームによって表され、光学システム23によって、すなわち、この場合、結像エレメント27および少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメント28によって、光結合装置25'上に集束される。例えば、少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメント28が可変焦点距離を有するレンズエレメントである場合、この焦点距離は、光結合装置25'の位置に焦点が形成されるように(図6とは異なる値に)調整される。この場合、光源22のイメージ30は、光学システムの少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメント28の前の光方向に形成され、その結果、照光装置の光源のイメージがそこに形成又は生成される。少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメント28を切替え又は制御することによって、特に光結合装置25'の位置に焦点を発生させることによって、SLM 21の個々の画素P1、P2、P3、・・・PNから出てくる光は平均して異なる角度で導光装置24、特に光結合装置25'に当たり、この光結合装置25'によって光ガイド内に結合される。これは少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメント28の対応する異なる切替状態または制御状態のために、光結合装置の位置に焦点が存在しないが、その代わりに、SLM21の全ての画素P1、P2、P3、・・・PNからの光が同じ垂直角度で光結合装置25に当たる図6とは実質的に異なる。したがって、少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメント28の切替状態または制御状態によって、導光装置24上への異なる画素の光の入射角は少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントについてはすべての画素について同じであるが、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントについてはすべての画素について異なるように調整される。これは、異なる光結合装置25および25'と組み合わせることにより、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントおよび少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントに対して、光ガイド内の光の異なる伝搬をもたらす。更に、光分離装置26に関連して、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメント及び少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントに対して異なる大きさの視野を得るために、光ガイドにおけるこの異なる伝搬を用いてもよい。しかしながら、いずれの場合も、光は全ての画素についてそれぞれ同数の反射の後に、導光装置24の光ガイドの外に結合される。
【0171】
図7に示す低解像度ホログラフィックセグメントに対して、SLM 21の個々の画素P1、P2、P3、...PNから来る光は、導光装置24、特に光結合装置25'に平均して異なる角度で当たる。これにより、光の結合角スペクトルが定義される。したがって、画素P1、P2およびP3から来る3つの光ビームは、異なる結合角で光結合装置25'に当たる。これらの3本の光ビームは、光結合装置25'のミラーエレメントによって光ガイドに結合され、その後、光ガイドの境界面における全内部反射によって光ガイド中を異なる伝搬角度で伝搬する。結合される角度スペクトル、すなわち結合角度スペクトルはこの場合、空気中で約30度であり、光ガイド内で20度である。先に決定された、または規定された数の光ガイド内の光の反射の後、この光は、次いで、光ガイドの外に結合される。この例示的な実施形態では、結合される光ビームが光分離装置26によって、光ガイドの内面および外面、または境界面でのそれぞれ4回の反射の後に、光ガイドの外に結合される。導光装置24内又は光ガイド内を伝搬する光は導光装置24又は光ガイドの局部表面に対して垂直に光ガイドの外に結合されるが、仮想視聴ウィンドウ29に対して平均的に異なる角度で光ガイドの曲率のために結合される。このようにして、光のデカップリング角スペクトルが定義される。図7から分かるように、導光装置24から出てきた光をデカップリングした後、仮想視聴ウィンドウ29内の光ビームの焦点Fから見ると、表される外側の2つの光ビームによって横方向に境界が定められた視野32が存在する。この場合に生成される視野32は、60度までの角度範囲を有する。したがって、分かるように、光のデカップリング角スペクトルは、光の導光体に結合された角スペクトルの約2倍である。このようにして、低解像度のホログラフィックセグメントが生成され、それとともに大きな視野を生成することが可能であり、その内部に低解像度のホログラフィック表現を生成することが可能である。
【0172】
この場合も同様に、複数の低解像度ホログラフィックセグメントが生成され得、これらを組み合わせることによって、全体視野における低解像度の視野角が増大する。
【0173】
したがって、大きな視野の生成は、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメント及び少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメント、これらのセグメントが一緒になって視野又は全体の視野を形成することによって実行される。光の角度スペクトルの伝搬および先に決定された反射回数および同様に高解像度ホログラフィックセグメントの発生後の光のデカップリングによる低解像度ホログラフィックセグメントのための視野の増加はしかしながら、ここに表されるように湾曲した光ガイドに限定されることを意図するものではなく、導光装置において平面構成された光ガイドの場合にも同様に使用可能である。
【0174】
更に、図6及び図7によるそのような表示装置において、少なくとも1つの立体視セグメントはさらに視野を増大させるために、又はそれらの自然環境においてオブザーバによって知覚されるのであろう視野に表示装置とともに生成される視野を適応させるために、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメント及び少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントに加えて生成することもできる。
【0175】
少なくとも1つのホログラフィックセグメントを有する立体視セグメントの組合せが提供される場合、視線トラッキング装置も同様に提供され得る。このような注視トラッキングおよびトラッキング装置によって、視野内のホログラフィックセグメントの位置の両方がオブザーバのそれぞれの眼の注視方向に従って変位されてもよく、SLMのイメージの深度は、立体視セグメントに対して、また任意に、少なくとも1つのホログラフィックセグメントに対しても適応されてもよい。網膜の中央領域では、このようにして、表されたシーン又はオブジェクトの最大の横方向解像度及び完全な三次元奥行きが得られる。網膜の中央領域の外側には、立体視セグメント内に二次元シーン又は物体のみが存在する。しかしながら、網膜の中央領域の外側であっても、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントによって、起きうる適合的眼球離反運動の不一致が回避される。この場合、高解像度ホログラフィックセグメントによってカバーされる部分よりも大きな視野の角度範囲にわたって、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントを用いて、イメージコンテンツ又はシーンの表現されるべきオブジェクトが生成されるときに、画質の実質的な改善が達成される。
【0176】
図8図6又は図7に記載の表示装置の一部を示しているが、この場合、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメント用の光結合装置25'と、導光装置24内の少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメント用の光結合装置25とは図6及び図7のように連続してではなく、互いに隣り合って配置されている。この例示的な実施形態では、光結合装置25及び25'の両方が少なくとも1つのグレーティングエレメントを含む。少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメント28は、この場合、切替可能ミラーエレメントとして構成される。少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメント28がオフにされるか、またはオフ状態にある場合、光は、光結合装置25'へ伝搬し続ける。少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメント28がスイッチオンされた場合、又はオン状態の場合、代わりに、光は、光結合装置25へのさらなるミラーエレメント34によって偏光される。この場合、例えば、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントと少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントに対して光の焦点を異なるように合わせるために、少なくとも1つの切替可能または制御可能なエレメント28とそれぞれの光結合装置25又は25'との間に静的レンズエレメント35及び36を使用することもできる。
【0177】
もちろん、本発明は、光結合装置の特定の配置に限定されることを意図していない。他の実施形態では、例えば、同じ光結合装置をホログラフィックセグメントの両方、すなわち少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントと少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの両方に使用することもできる。
【0178】
また、表示装置を、高解像度のホログラフィックセグメント、および/または低解像度のホログラフィックセグメント、および/または少なくとも1つの導光装置を含み、特に1つの構成において、図10に表されるように、少なくとも1つのSLMへのホログラムのエンコーディングのために単一視差エンコードを使用する立体視セグメントの生成のために使用することも可能である。
【0179】
一般に、単一視差エンコードは、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントと少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントの両方に使用され得る。しかし、例えば、少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントが全視差エンコードを含み、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントが単一視差エンコードを含む組合せも可能である。
【0180】
低解像度ホログラフィックセグメントのための、または任意選択で立体セグメントのためのそのような表示装置が、図9および図10に示される。本質的に、低解像度のホログラフィックセグメントに対して、図9は、図7に表される表示装置の異なる空間視聴に対応する。
【0181】
図9は少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメント又は立体視セグメントに対して二次元の光源イメージを生成するために、球状結像エレメントを含む光学システムを備える表示装置を概略的に示す。このようにして、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメント又は立体セグメントに対して、光の水平結合角度スペクトル及び垂直結合角度スペクトルの両方が生成される。したがって、SLM内で互いに隣り合って、すなわち互いに水平に隣り合って配置された画素P1・・・PNは、異なる水平光結合角度を有する。SLM内で互いに上下に、すなわち互いに垂直に隣接して、配置された画素P1・・・PMは、異なる垂直光結合角度を有する。
【0182】
この場合の表示装置は、少なくとも1つの光源42、SLM41及び光学システム43を有する照光装置も備える。光学システム43は、球状結像エレメント46と、視野レンズ45と、更なる結像エレメント47とを備える。導光装置48は、光学システム43の後に光方向に配置される。少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントおよび少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントを有する配置の場合、例えば、球状結像エレメント46は、切替可能または制御可能に構成されてもよい。したがって、この場合、図6図7、および図8の少なくとも1つの制御可能または切替可能なエレメント28に対応する。低解像度のホログラフィックセグメントに対しては、ここに示されるような球状結像エレメント46が点状の焦点、従って二次元光源イメージを光結合装置49において生成する球面レンズエレメントの機能に対応するように、切り替え又は制御される。例えば、この球面レンズ機能は制御可能なレンズエレメントによって、又は代替的に、互いに垂直に配置された回折格子によって生成されてもよく、この回折格子には、同じ焦点距離の2つの円筒レンズ機能が書き込まれる。
【0183】
しかしながら、同じ表示装置は例えば、1つの立体視セグメントのみを生成するために使用することもできる。この場合、球状結像エレメント46は切り替え可能に構成される必要はなく、代わりに、例えば、複数の従来の球面ガラスまたはプラスチックレンズエレメントの1つまたは組合せとして構成されてもよい。
【0184】
導光装置48は、光結合装置49と光分離装置50とを備える。この場合も、視野のセグメントは、照光装置、SLM 41、光学システム43及び導光装置48によってオブザーバ面内の仮想視聴ウィンドウ51に関連して生成される。任意選択的に、SLM41の複数の結像は、共に大きな視野を形成する複数のセグメントを生成するために実行される。このようなセグメントの生成はホログラフィック的にも立体視的にも、図9及び10において中心的に重要であることを意図したものではなく、WO2018/146326A2の開示事項に従って実施されることができ、WO2018/146326A2の開示内容もここに完全に取り入れることを意図したものである。むしろ、導光装置への光結合の領域における光源イメージの生成に集中する意図である。二次元光源像を生成するために、照光装置の光源42によって放射された光は、SLM41上にコリメートされて送られ、次いで、再構成されるシーンの情報に応じて光が変調される。次いで、変調された光はフィールドレンズ45に当たる。フィールドレンズは、SLM41の全ての画素から来る光を、SLM41内でエンコーディングされたホログラムのフーリエ変換が形成されたフーリエ面52内の第1の光源イメージに集束させる。このフーリエ面52には第1光源イメージが形成されているが、更なる結像手段47が配置されており、これはレンズエレメントとして構成されてもよく、任意であってもよい。フーリエ面52は、形成される回折次数のフィルタリングを実行することができる開口を任意選択で含むこともできる。画素が規則的に配列されている画素中のSLM上にエンコーディングされる一次元および二次元ホログラムの両方は、フーリエ面において周期的な再構成を生成する。周期性を抑制または除去するために、所望の周期性間隔のみを送信する開口、または所望の回折次数のみを使用することが可能である。
【0185】
フーリエ面52における第1の光源イメージの後、個々の画素の光ビームは拡散し、球形結像エレメント46に当たる。球形結像エレメント46は、入射光ビームを水平方向及び垂直方向に集光することにより、光結合領域又は導光エレメント48への光の結合前の領域に光源イメージが生成される。導光装置48の光結合装置49は、表示装置内の光源イメージの位置の領域またはその領域に配置される。このようにして、二次元光源イメージが生成される。光源イメージの生成は、導光装置48内への光結合領域の拡大図により詳細に示される。
【0186】
図10に、光学システムを有する表示装置であって、ここでは、球形結像エレメントの代わりに、線形光源イメージを生成するために、少なくとも1つの円筒形結像エレメントを備える、表示装置を示す。このようにして、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメントについて、または立体視セグメントについて、線形光源イメージの向きに応じて、光の水平結合角度スペクトルのみ、または垂直結合角度スペクトルのみが生成される。図10は垂直線形光源イメージを示す。したがって、SLM内で水平方向に隣り合って配置された画素P1・・・PNは、異なる水平光結合角度を有する。SLM内で互いに垂直上方に配置された画素P1・・・PMは、等しい垂直光結合角度を有する。
【0187】
また、表示装置は、少なくとも1つの光源62、SLM61および光学システム63を有する照光装置を備える。光学システム63は、1対の交差円筒形結像エレメント66(図10において1つのエレメントとして示される)、視野レンズ65、およびさらなる結像エレメント67を含む。導光装置68は、光学システム63の後に光方向に配置されている。導光装置68は、光結合装置69及び光分離装置70を備える。この場合も、視野のセグメントは、照光装置、SLM61、光学システム63及び導光装置68によってオブザーバ面内の仮想視聴ウィンドウ71に関連して生成される。任意選択的に、SLM61の複数の結像は、共に大きな視野を形成する複数のセグメントを生成するために実行される。図9に関連して既に言及したように、今や中心的な重要性を有するこのようなセグメントの生成ではなく、導光装置内への光結合の領域における一次元又は線形の光源イメージの生成である。
【0188】
線形光源イメージを生成するために、照光装置の光源62によって放射された光は、SLM61上に平行に送られ、次いで、光は再構成されるべきシーンの情報で変調される。次いで、変調された光はフィールドレンズ65に当たる。フィールドレンズでは、第1の点状の光源イメージが再び、図9によるフーリエ面72内で生成される。このフーリエ面72には第1光源イメージが形成されているが、更なる結像手段67が配置されており、これはレンズエレメントとして構成されてもよく、任意であってもよい。フーリエ面72は、任意選択で、形成される回折次数のフィルタリングを実行することができる開口を含むこともできる。
【0189】
フーリエ面72における第1光源イメージの後、SLM61の個々の画素の光ビームは散乱し、交差した一対の円筒状結像エレメント66に当たる。交差した一対の円筒状結像エレメント66は水平方向および垂直方向において異なる焦点距離を含み、したがって、水平方向においてのみ導光装置68に光結合する領域に焦点を生成するに過ぎない。したがって、線形光源イメージが、光結合の領域内、または導光装置68への光の結合の前に生成される。少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントおよび少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメント、および任意に少なくとも1つの立体視セグメントを生成するために、交差円筒状結像エレメント66の対は、制御可能であるように構成されてもよい。次に、少なくとも1つの低解像度ホログラフィックセグメント又は少なくとも1つの立体視セグメントのために、一対の交差した円筒状結像エレメント66のスイッチング状態又は駆動状態によって、導光装置68内への光結合の領域に水平方向にのみ焦点を生成するための異なる焦点距離の調整が実行される。少なくとも1つの高解像度ホログラフィックセグメントに対して、交差した円筒状結像エレメント66の対はその後、異なる焦点距離を有してもよく、一般的な場合には、しかしながら、水平方向および垂直方向においても異なる場合がある。更なる光源イメージは、光分離装置70によって導光装置68から外れた光を分離した後に形成される。導光装置68の光結合装置69は、表示装置における線形光源イメージの位置又はその領域に配置されている。線形光源イメージの生成は、導光装置68内への光結合領域の拡大図により詳細に示される。
【0190】
光の結合角スペクトルと比較して増大する導光装置からの光の分離角スペクトルを生成するために、図9および図10による両方の表示装置を使用してもよい。光の結合角スペクトルとは、SLMの個々の画素から来る光ビームが導光装置に当たって、導光装置の表面に対して平均的に異なる角度で結合される際に発生するスペクトルを意味することを意図している。光の分離角スペクトルとは導光装置内を伝搬する光ビームがオブザーバ領域に対して平均的に異なる角度で導光装置外に結合される際に発生するスペクトルを意味することを意図しており、このスペクトルは立体視セグメントの生成中に仮想視聴ウィンドウとして、又はスイートスポットとしても理解することができる。特に、図9の表示装置では、光の分離角スペクトルを、光の結合角スペクトルに比べて、水平方向及び垂直方向の両方に拡大してもよい。しかし、オブザーバには、矩形ではなく菱形に構成された視野が形成される。
【0191】
一方、図10の表示装置では、光の分離角スペクトルが光の結合角スペクトルに比べて水平方向にのみ増加する。これは、オブザーバにとって大きな水平視野が特に重要だからである。
【0192】
この表示装置は、増加した垂直視野を生成するための他の公知の可能性と組み合わせることができる。
【0193】
例えば、90°回転された第1の導光装置を使用することも可能であり、この第1の導光装置は例えば、平面非湾曲導光体を含む。第1導光装置の結合部では、垂直方向にのみ光源イメージが生成される。第1の導光装置では、結合角スペクトルに比べて、第1の導光装置からの分離角スペクトルが垂直方向に増加する。第1導光装置の外に結合された光は、さらなる結像エレメントによって、第2導光装置の光結合位置上に水平方向に集束される。第2導光装置では、結合角スペクトルに比べて増大する水平方向に分離角スペクトルが発生する。2つの導光装置の組合せにより、全体的な矩形視野が生成される。
【0194】
さらに、実施形態または例示的な実施形態のさらなる組合せが可能である。結論として、上述した例示的な実施形態は、単に請求された教示を説明するのに役立つだけであるが、この教示は、例示的な実施形態に限定されることを意図したものではないことも、最も特に指摘されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10