(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】バインダー組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20240509BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240509BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20240509BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240509BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240509BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240509BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K3/36
C09D183/04
C09D5/02
C09D7/61
C09D7/63
(21)【出願番号】P 2020538931
(86)(22)【出願日】2019-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2019051611
(87)【国際公開番号】W WO2019145352
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2022-01-11
(32)【優先日】2018-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アデバー、トルシュテン
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー、ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】ピエール、デビッド
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-040966(JP,A)
【文献】特開2014-055075(JP,A)
【文献】特開2009-062403(JP,A)
【文献】特開2011-157506(JP,A)
【文献】特開2010-155946(JP,A)
【文献】特表平11-505499(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122691(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/10
C08J 5/00- 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
1つ以上のシロキサンポリマー、シリコーン樹脂、シリコーン系エラストマー、
又はこれらの混合物を含み、任意選択的に、ケイ素結合加水分解性基を含有するシラン及び/又はシロキサンを含む1つ以上の架橋剤成分を含む、バインダーと、
親水性粉末及び/又はゲルであって、100m
2/g~1500m
2/g以上のBET表面積、及び20℃及び大気圧で0.004~0.05W/m・Kの熱伝導率を有する、1つ以上の非晶質多孔質親水性シリカ、1つ以上の親水性シリカエアロゲル、及びこれらの混合物から選択される、親水性粉末及び/又はゲルと、を含み、
1.0~20.0重量%の前記親水性粉末及び/又はゲル並びに80.0~99.0重量%の前記バインダーを含む、組成物。
【請求項2】
前記非晶質多孔質親水性シリカが、0.1~100nmの孔径分布を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記バインダーが、少なくとも1つのカルビノール基(C-OH)若しくはシラノール基(Si-OH)若しくはSi加水分解性基、又はこれらの混合を有する、1つ以上のシロキサンポリマー及び/又はシリコーン樹脂を含有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記シロキサンポリマー及び/又はシリコーン樹脂が2つ以上のシラノール基及び/又はSi加水分解性反応性基を含み、前記バインダーは縮合硬化性であり、架橋性化合物、縮合硬化触媒、及び任意選択的に補強充填剤又は非補強充填剤を更に含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記バインダーが、少なくとも1つのアルケニル基(Si-アルケニル)及び/又はケイ素結合水素(Si-H)を有する、1つ以上のシロキサンポリマー及び/又はシリコーン樹脂を含有する、請求項1、2又は3に記載の組成物。
【請求項6】
前記バインダー、前記シロキサンポリマー及び/又はシリコーン樹脂が少なくとも1つのアルケニル基(Si-アルケニル)及び/又はケイ素結合水素を有する2つ以上を含み、前記バインダーは付加硬化性であり、架橋性化合物、Pt族硬化触媒、任意選択的に補強充填剤又は非補強充填剤を更に含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記バインダーが、a)溶液であって、任意選択的に界面活性剤を含有する、溶液、b)エマルジョンであって、任意選択的に界面活性剤を含有する、エマルジョン、又はc)分散体であって、任意選択的に界面活性剤を含有する、分散体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記溶液、分散体、又はエマルジョン型バインダーが、前記バインダーの総重量に基づいて、15.0~90.0重量%の溶解性/分散性/乳化性液体を含有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記バインダーが、シリコーン系エラストマーを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記バインダーが、バインダー及び/又は硬化剤としての使用に好適な、更なる無機又は有機成分を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
無機又は有機バインダー系とブレンドされている、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記親水性粉末及び/又はゲルが、レーザー光散乱法(ASTM D4464-15)によって決定して、0.5μm~3000μmの平均サイズを有する凝集体及び/又は集塊粒子を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記非晶質多孔質親水性シリカ及び/又は前記親水性シリカエアロゲルが、0.02~0.2g/cm
3の密度、200~1000m
2/gの範囲のBET表面積、及び/又は1~75nmの孔径分布を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
増粘剤、顔料、更なる触媒、更なる補強充填剤及び/又は非補強充填剤、難燃剤、更なる水又は溶媒、泡安定剤、及び/又は任意の他の更なる絶縁性充填剤から選択される1つ以上の添加剤も含み、前記組成物中のこのような添加剤の量は、前記全組成物の重量に基づいて、0.1~80重量%の範囲である、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
断熱材料又は遮音材料、塗料、コーティング、発泡物品、成形物品、注入物品、ガスケット、シーラント、接着剤、船舶及び配管としての、又はそれらにおける、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物を含む、又はそれからなる材料を基材上に適用することによって得られた、コーティング基材。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物を含む、又はそれからなる材料から得られた、製品。
【請求項18】
請求項17に記載の製品を含む、又はそれからなる、物品。
【請求項19】
請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物を含む、又はそれからなる材料により表面コーティングされた、基材。
【請求項20】
請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物を使用することによって作製されたコーティング、製品及び物品における亀裂形成の傾向を低減するための、請求項1、2、12及び13のいずれか一項に記載の非晶質多孔質親水性シリカ及び/又は親水性シリカエアロゲルの使用。
【請求項21】
請求項1及び3~11のいずれか一項に記載のバインダーとの相溶性を改善するための、及び/又は前記バインダーを使用して作製されたコーティング、製品及び物品における亀裂形成の傾向を低減するための、請求項1、2、12及び13のいずれか一項に記載の非晶質多孔質親水性シリカ及び/又は親水性シリカエアロゲルの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱、遮音、及び隔壁絶縁を提供することが可能なバインダー組成物、特に、船舶、コーティング、建築物及び建造物用途などの用途、並びにまた自動車用途におけるバインダー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
断熱及び/又は遮音は、多くの技術的用途において望ましい。
【0003】
バインダーとして水性アクリルラテックスで処理された中空ガラス球又は疎水性エアロゲルなどの無機粒子を含む、断熱塗料を調製することは、公知である。このような材料で得られた断熱は、最高約120℃の温度範囲に限定される。更に、シリコーン化合物に基づいてフィルム形成バインダーエマルジョンで処理された疎水性エアロゲルを含む組成物は公知であり、この組成物は、最高250℃のより高い熱安定性が必要とされる熱塗装用途で使用され得る。このような組成物の層によって提供される断熱により、主に、安全に触れること又はエネルギー節約が可能になる。
【0004】
このような公知の疎水性エアロゲル系組成物は、疎水性エアロゲルをエマルジョンバインダー材料に添加することによって調製される。その後、組成物は、基材上に適用される。しかし、疎水性エアロゲルをシリコーンフィルム形成バインダー材料で処理するとき、得られた乾燥フィルム中の組成物の粘度上昇及び亀裂の形成が観察される。更に、疎水性エアロゲルをシリコーン系バインダーエマルジョンで処理するとき、後者を、塗料の適用直前に添加する必要がある。したがって、2つの成分を、別個に保存する必要がある。
【0005】
国際公開第2016/010253(A1)号には、熱保持性及び断熱性が向上した農業用フィルムであって、第1の成分として、エチレン-酢酸ビニル(EVA)樹脂が、第2の成分として、表面改質親水性エアロゲル又はシリル化エアロゲルと混合され、及び、第3の成分として、無水マレイン酸がEVA樹脂にグラフト化されたポリマー(EVA-g-MAH)と混合され、並びに、第4の成分として、ポリエチレンワックス及びシリコーン変性ポリエチレンワックスから選択される1つ以上の成分と混合された、農業用フィルムが記載されている。
【0006】
韓国公開特許第2010/0033396号には、エアロゲルコーティング組成物が記載されている。エアロゲルの疎水性表面は、親水性材料との複合化によって表面処理されている。このように処理された複合体は、絶縁及び防音のためのコーティング剤として適用される。
【0007】
国際公開第2017/069315(A1)号には、親水性エアロゲルの調製方法であって、疎水性エアロゲルを準備する工程と、親水性エアロゲルを調製するために、疎水性エアロゲルを焼結する工程と、を含み得る方法が記載されている。
【0008】
韓国特許公開第2010/0002234号には、シリカエアロゲル、カーボンエアロゲル、アルミナエアロゲル、及びチタンエアロゲルから選択される10~35重量%のエアロゲルと、マイクロセメント、アルミナセメント、及び高炉スラグセメントから選択される20~65重量%のセメントと、を含有する親水性エアロゲル複合体粉末組成物が記載されている。
【0009】
国際公開第2007/021493(A2)号には、エアロゲル材料と、エラストマー又はエラストマー形成ポリオルガノシロキサン並びに強度付加及び過酷な環境での使用能力向上のための架橋剤を含む組成物の層と、を含むコーティング複合体が記載されている。
【0010】
米国特許出願公開第2004/0077738(A1)号には、水性バインダー、疎水性エアロゲル粒子、及び中空非多孔質粒子を含む、エアロゲル中空粒子バインダー組成物が記載されている。
【0011】
欧州特許第1515796(B1)号には、水性バインダー、疎水性エアロゲル粒子、及び中空非多孔質粒子を含む、エアロゲル中空粒子バインダー組成物が記載されている。
【0012】
欧州特許第2663395(B1)号には、外側PEGヒドロゲル層によってカプセル化された疎水性のエオシン官能化シリカエアロゲルコアからなる複合体が記載されている。
【0013】
米国特許第2893962(A)号には、シリカエアロゲル粒子を含む混練合成材料を含む、可撓性連続フィルム又はシートが記載されており、この全体的な骨組み構造は疎水性であり、ゴム様特性を有するラテックスと一緒に結合されている。
【0014】
米国特許第7144522(B2)号には、断熱層を形成するための硬化性コーティング組成物が記載されている。組成物は、高多孔質微粒子エアロゲル材料と、安定剤を含有するアクリルポリマーなどのフィルム形成ポリマーを含むフィルム形成樹脂系と、を含む。
【0015】
米国特許出願公開第2004/0142168(A1)号には、繊維及び/又は布地内の隙間の空間を1~500nmのサイズの粉末化材料で充填することによって、撥水性、難燃性及び/又は断熱性にした繊維及び繊維から製造された布地が記載されており、とりわけ、この材料は、疎水性シリカエアロゲルなどのエアロゲル又はエアロゲル様材料に由来し得る。
【0016】
米国特許第2870108(A)号には、親水性であり、部分的に疎水性であるが、非親有機性であり、部分的に疎水性及び親有機性である、又は完全に疎水性及び親有機性である、シリカエアロゲルが記載されている。シリカエアロゲルは、例えば、ラッカーにおける平坦化剤として、油用増粘剤として、又はシリコーンゴム用補強充填剤として、様々な用途に使用され得る。シリコーンゴム用補強充填剤として使用される場合、シリカ材料を少なくとも部分的に疎水性にすると、優れた特性が得られる。したがって、好ましいシリカ材料は、部分的乃至完全に疎水性であるものである。
【0017】
新たな材料を、断熱を改善するために提供する必要がある。特に、以前に可能であった温度よりも高い温度に対する耐性を物品に提供し得、好ましくはまた、遮音及び隔壁絶縁も改善し得る、このような新たな材料が必要である。
【0018】
本発明
上述の目的は、請求項1に記載の本発明の組成物であって、1つ以上のシロキサンポリマー、シリコーン樹脂、シリコーン系エラストマー、及びこれらの混合物を含み、ケイ素結合加水分解性基を含有するシラン又はシロキサンなどの1つ以上の架橋剤成分を更に含み得る、すなわち、上述の成分を組み合わせて含む組成物であり得る、バインダーと、
親水性粉末及び/又はゲルであって、100m2/g~1500m2/g以上のBET表面積、及び20℃及び大気圧で0.004~0.05W/m・Kの熱伝導率を有する、1つ以上の非晶質多孔質親水性シリカ、1つ以上の親水性シリカエアロゲル、及びこれらの混合物から選択される、親水性粉末及び/又はゲルと、を含む組成物によって解決される。
【0019】
好ましい実施形態は、従属請求項に開示される。
【0020】
本発明の一態様によれば、本発明の組成物の必須成分及び/又は非必須成分を含む実施形態は、これらの必須成分及び任意選択的に非必須成分からなる。
【0021】
本発明はまた、このような組成物を含む複合体、例えば、親水性粉末及び/又はゲルをケイ素含有化合物に導入することによって、親水性粉末及び/又はゲルを上記に定義されたケイ素化合物で処理することを含む、その調製方法、並びに、断熱又は遮音材料、塗料、コーティング、発泡物品、成形物品、注入物品、ガスケット、シーラント、接着剤、船舶及び配管としての、このような組成物の使用を提供する。本発明の組成物により、使用前の長期安定性が得られ、非常に厚いコーティング及びそれを含有する製品の場合であっても、基材へのコーティング後に乾燥したフィルム層の表面における粘度の偏り及び亀裂が防止される。更に、いくつかの実施形態では、1成分のアプローチが可能である。すなわち、例えば、塗料又はコーティング材料の形成のためのその使用直前に、及び所望の基材上へのその適用直前に組成物の成分を組み合わせる必要がなくなる。更に、上記の親水性粉末及び/又はゲルが、約300℃の上限温度を有する(この温度で分解が起こる)疎水性エアロゲルとは対照的に、最高900℃の温度まで安定なので、本発明の組成物により、より高温での使用が可能になる。
【0022】
親水性粉末及び/又はゲル成分
本発明の非晶質多孔質親水性シリカ成分は、低熱伝導率、すなわち、20℃及び大気圧(Patm)で測定して、0.001~0.15W/mK、例えば、0.004又は0.01~0.10又は0.05W/mK、好ましくは0.01~0.05又は0.01~0.03W/mKの範囲の熱伝導率によって特徴付けられるという点で、エアロゲル様材料と称され得る材料である。
【0023】
非晶質多孔質親水性シリカ材料は、多孔質構造を有し、非晶質親水性二酸化ケイ素系であり、すなわち、材料の90%(重量%)超が非晶質である。
【0024】
「親水性」とは、材料が、(周囲条件、例えば20℃及びPatmで)水に容易に分散可能であることを意味する。したがって、材料は水との安定な分散体を形成し、これは、水に分散したとき水表面上で材料の層に分離するこの種の疎水性二酸化ケイ素とは異なる。親水性特性は、材料の内側孔表面を含む表面上に親水性基が存在することによるものであり、疎水性材料は、Si-CH3基などの疎水性基の存在によって特徴付けられる。この態様は、当該技術分野において周知である。
【0025】
例えば、本発明による親水性材料は、水と安定した分散体を形成するものであり、これは、1、2、5、又は8gの材料、例えばQuartzene(登録商標)Z1を60gの蒸留水と、プラスチックジャー内にてSpeedMixer(商標)DAC150.1FVミキサーを2,750rpmで操作して用い、20℃で1分間混合し、得られた混合物を60分間静置した後に、水表面上に目視可能な相分離又は別個の材料層の形成が起きないことによって特徴付けられる。
【0026】
本発明による親水性シリカ材料の例は、本出願の本発明の実施例で使用されるQuartzene(登録商標)Z1のようなケイ質材料である。したがって、シリカ材料の親水性特性はまた、例えば、上記の条件下でその水分散性に関して、それを例示された材料と比較することによって、例示/決定され得る。
【0027】
非晶質多孔質親水性シリカ材料は、高温まで、すなわち、最高約900℃の温度までPatmで安定である。これは、約200~1,500m2/g、例えば200~1,000又は800m2/g、特に200~500又は800m2/gの範囲の表面積(BET)によって特徴付けられる。更に、これは、0.1~100nm、例えば0.5又は1~80又は90nm、特に1~50nmの範囲の孔径分布によって特徴付けられ得る。
【0028】
いずれの材料も、多孔質シリカから構成される骨格構造、非常に低い密度、及び非常に低い熱伝導率を有する点において、上記材料の特性はシリカエアロゲルの特性と同等である。大きな物理的差異は、上記材料が粉末として製造され、ゾルゲルプロセスからゲルとしては製造されないことである。このことは、超臨界乾燥又は亜臨界条件での樹脂強化/焼成プロセスによって製造された従来のエアロゲルの調製のために使用される、より高価な条件を回避する利点に関連する。
【0029】
上記材料を調製するための方法は、例えば、「Novel hydrophilic and hydrophobic amorphous silica:Characterization and adsorption of aqueous phase organic compounds」by A.L.Tasca,F.Ghajeri and A.J.Fletcher,Adsorption Science&Technology,2017,1-16,section entitled「Experimental-Adsorbents」に開示されており、その開示は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0030】
用語「エアロゲル」は、ゲルから誘導され、液体成分が気体(空気)で置き換えられた、合成、高度に多孔質、超軽量の材料を説明するために使用される。換言すれば、エアロゲルは、分散媒として気体(空気)を有するゲルである。歴史的に、最も通常的な調製方法は、臨界温度より高い温度及び臨界圧より高い圧力で湿潤ゾル-ゲルを乾燥させることによっていた。この種類の乾燥により、ゲル内に含有される液体、例えば、水は追い出され、ゲルの固体マトリックス構造を損傷することなく多孔質構造が得られる。エアロゲルの体積の最大99.98体積%が、孔からなり得る。したがって、エアロゲルの、例えば最大99.98体積%、例えば90~98.5体積%、又は約97体積%が、空気であり得る。エアロゲルは、マイクロ多孔質又はナノ多孔質の、連続気泡固体、剛性及び乾燥材料である。典型的には、それらは多孔質固体ネットワークを含み、このような構造により、超軽量である。得られたエアロゲルは、低密度に加えて、断熱特性、すなわち低熱伝導率を有する。ここで、他の製造方法が、同様の製品を製造するために使用される。
【0031】
エアロゲルは、無機又は有機材料、例えば、シリカ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、アルミナ、クロミア、二酸化スズ、二酸化リチウム、セリア、及び五酸化バナジウム、並びにこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物、並びに有機炭素含有ポリマー(カーボンエアロゲル)に基づき得る。
【0032】
本発明のエアロゲルは親水性であり、好ましくは親水性シリカエアロゲルである。
【0033】
このような親水性シリカエアロゲルは、典型的には、シリカをアルカリ金属ケイ酸塩溶液から沈殿させ、沈殿したシリカをすすぎ、すすいだシリカを回収し、これを、超臨界乾燥条件又は亜超臨界乾燥条件を使用して乾燥させることによって、又は、これを、含んだ水をCO2若しくは好適な有機溶媒、例えばエタノールと交換した後に上述のように乾燥させることとによって、調製される。
【0034】
あるいは、親水性シリカエアロゲルは、例えば、米国特許第6,365,638号、特に、第3欄第20~62行、並びに第4欄第1~63行の実施例1及び2、特に実施例1に開示されているように、亜臨界条件下で調製され得る。これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
本発明における使用に好適な親水性粉末及び/又はゲルは、通常、レーザー光散乱法により(例えば、ASTM D4464-15により)測定して、3nm~500μm、好ましくは1~100μm、より好ましくは1~50μm、更により好ましくは1~40μmの範囲の平均粒径を有する粒子、及び/又はこれらの集塊を含む。
【0036】
上記の親水性粉末及び/又はゲルは、典型的には、沈殿した多孔質一次シリカ粒子の凝集体及び集塊を含む。
【0037】
凝集体/集塊のサイズは、例えば、レーザー光散乱法((ASTM D4464-15)によって測定して、1μm~3000μmの範囲であり得る。凝集体/集塊形成する一次シリカ粒の粒径の粒径は、例えば、光散乱法((ASTM D4464-15)によって測定して、1nm~500nm、好ましくは、1又は3~50nmの範囲であり得る。
【0038】
好ましい態様によれば、本発明の非晶質多孔質親水性シリカ成分は、約1~40μmの粒径分布、約2μmのd(10)、約4~6μmのd(50)、及び約10~14μmのd(90)を有する。好ましくは、これは、約1~50μmの孔径分布を有する。加えて、好ましくは、約95~97%の空隙率を有し、このパラメータは、本明細書に開示される方法を使用することによって測定する。好ましくは、特性は、組み合わせて存在する。
【0039】
上記の非晶質多孔質親水性シリカ及びシリカエアロゲルは、典型的には、0.02~0.2g/cm3の密度、及び/又は典型的には、100g/cm2~1500g/cm2以上、好ましくは100若しくは200~1000m2/g、より好ましくは200~800m2/g、の範囲のBET表面積、及び/又は、約20℃及び大気圧で0.001~0.15W/m・K、例えば0.005若しくは0.01~0.05若しくは0.1W/m・Kの熱伝導率を有する。
【0040】
BET表面を測定する方法は、方法ISO9277など、当該技術分野において周知である。
【0041】
粉末及び/又はゲルの孔径は、気体吸着(典型的には窒素)によって測定され得る。これらの方法は、当該技術分野において周知である。典型的には、孔径は、マイクロメートル又はナノメートルの範囲、好ましくはナノメートルの範囲内である。好適な孔径分布は、0.1~100nm、あるいは1~75nm、あるいは1~50nmである。典型的には、これらの値は、ASTM D4222-03(2015)e1又はASTM D4641-12を用いることによって測定し得る。
【0042】
本明細書の上記に開示されるように、本発明の親水性粉末又はゲル成分は、高度に多孔質である。したがって、典型的には、空隙率(粒子内/粒子間空隙率)は、90%超である。
【0043】
上記の非晶質多孔質親水性シリカの固体部分は、通常、90%超の非晶質親水性二酸化ケイ素からなる。
【0044】
これらは、典型的には、水などの液体分散媒に分散されたとき、安定な相を形成するが、それらは、語句の厳密な意味では、水溶性ではない。
【0045】
逆に、疎水性シリカ系エアロゲルの固体部分は、通常、90%超の疎水化非晶質二酸化ケイ素からなる。疎水性エアロゲルは、水溶性でもなく水分散性でもない。それらは分離して、水表面上に層を形成する。
【0046】
シロキサンポリマー、シリコーン樹脂及び/又はシリコーン系エラストマーに基づくバインダー
本発明において使用される親水性粉末及び/又はゲルは、1つ以上のシロキサンポリマー、シリコーン樹脂、シリコーン系エラストマー、及びこれらの混合物を含むバインダーと共に処理される/組み合わせられる。上記バインダーは、ケイ素結合加水分解性基を含有するシラン又はシロキサンなどの1つ以上の架橋剤成分を更に含み得る。したがって、バインダーは、上述の成分を組み合わせて含有する、及び任意選択的に以下に開示される更なる成分を含有する組成物であり得る。
【0047】
シロキサンポリマーは、式(1)の複数の基を含む直鎖及び/又は分枝状オルガノポリシロキサンを含み得る:
R’eSiO4-e/2 (1)
[式中、各R’は、同一でも異なっていてもよく、1~18個の炭素原子を有する炭化水素基、1~18個の炭素原子を有する置換炭化水素基、又は最大18個の炭素原子を有する炭化水素オキシ基を示し、eは、平均して1~3、好ましくは1.8~2.2の値を有する]。
【0048】
本出願の目的で、「置換された」とは、炭化水素基中の1個以上の水素原子が別の置換基で置き換えられていることを意味する。このような置換基の例としては、塩素、フッ素、臭素及びヨウ素などのハロゲン原子;クロロメチル基、ペルフルオロブチル基、トリフルオロエチル基、及びノナフルオロヘキシル基などのハロゲン原子含有基;酸素原子;(メタ)アクリル基及びカルボキシル基などの酸素原子含有基;窒素原子;アミノ官能基、アミド官能基、及びシアノ官能基などの窒素原子含有基;硫黄原子;並びにメルカプト基などの硫黄原子含有基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
基R’の特に好ましい例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ビニル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基、塩素又はフッ素で置換されたプロピル基、例えば3,3,3-トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、β-(ペルフルオロブチル)エチル基若しくはクロロシクロヘキシル基が挙げられる。好ましくは、基R’のうちの少なくともいくつか、より好ましくは実質的に全てが、メチルである。いくつかのR’基は、フェニル基又はフルオロ基であり得る。1つの代替例では、ポリジオルガノシロキサンは、主として、1分子当たり少なくとも2つの反応性基を有するポリジアルキルシロキサン及び/又はポリジアルキルアルキルフェニルシロキサンである。反応性基は、カルビノール基(C-OH)、シラノール基(Si-OH)、ケイ素加水分解性基、例えば、アルコキシ基(Si-OR)、アルケニル基(Si-アルケニル、例えばビニル)及び/又はケイ素結合水素基である。本明細書で定義されるオルガノポリシロキサンポリマーはまた、「シリコーンポリエステル」、「シリコーンアクリレート」、「シリコーンポリエーテル」、及び「シリコーンエポキシ」と呼ばれるものなどのシロキサン及び/又はシラン変性有機ポリマーを含むことも理解され得る。
【0050】
本開示によるシリコーン樹脂は、概して、以下の一般式の以下の基(R1R2R3SiO1/2)a(R4R5SiO2/2)b(R6SiO3/2)c(SiO4/2)dを用いて表され得る(多くの場合、それぞれ、M単位、D単位、T単位、又はQ単位と呼ばれる)。式中、a+b+c+d=1、(式中、a、b、c及びdはモル分率である)であり、樹脂は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより標準ポリスチレン基準で約50~1,000,000、あるいは5000~500,000の重量平均分子量を有する。
【0051】
樹脂は、それらを含む組成物に応じて、反応性であっても非反応性であってもよい。これにより、各R1~R6は独立して、一価炭化水素基、カルビノール基、アルコキシ基(好ましくはメトキシ基若しくはエトキシ基)又はアミノ基から選択される。好適な例示的一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、オクチル基、ウンデシル基、及びオクタデシル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基、及びヘキセニル基などのアルケニル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基などのシクロアルキル基;並びにフェニル基、トリル基、キシリル基などのアリール基、ベンジル基、及び2-フェニルエチル基、並びにこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
この成分中の反応性基は、末端、側枝(非末端)、又は末端及び側枝の両方に位置し得る。好適な樹脂の例は、実質的にM単位(R1R2R3SiO1/2)及びQ単位(SiO4/2)のみを含むMQ樹脂である。これらは、少量のD単位(R12R5SiO2/2)及び/又はT単位(R6SiO3/2)を含み得る。
【0053】
シリコーン系エラストマーは、1分子当たり少なくとも2つの-OH基を有するシロキサンポリマー、又は1分子当たり少なくとも2つの-OH基を有するポリマー混合物、架橋剤、及び任意選択的に縮合硬化触媒の反応生成物である、好適なシリコーンエラストマー生成物を含み得る。好ましい代替例では、シリコーン系エラストマーは、25℃で5,000~500,000mPa.sの粘度を有する、1分子当たり少なくとも2つのOH基を有するシロキサンポリマー、又は1分子当たり少なくとも2つのOH基を有するポリマー混合物、及びポリマーと反応する少なくとも1つの自己触媒架橋剤の反応生成物である。
【0054】
任意選択的にシラン又はシロキサン系架橋剤を含む、シロキサンポリマー、シリコーン樹脂、シリコーン系エラストマー、及びこれらの混合物は、他の共バインダー及び/又は硬化剤と組み合わせて使用し得る。有機(共)バインダー及び/又は硬化剤が使用される場合、このような組み合わせはまた、ハイブリッドバインダー系とも呼ばれる。
【0055】
用語「バインダー」、「共バインダー」、及び/又は「硬化剤」は、化学反応及び物理的改質によって、フィルム形成につながるネットワークを、それ自体(バインダー)によって、又は他の同様のバインダー(共バインダー)と共に、及び/又は他の同様でないバインダー(硬化剤)と共に、生じさせる化学物質及び/又は化学的組成物を指すために使用される。
【0056】
本発明の組成物に使用するのに好適なバインダーは、溶解性/分散性/乳化性液体を含有(溶媒含有であるとも呼ばれる)し得、又は溶解性/分散性/乳化性液体不含(無溶媒であるとも呼ばれる)であり得る。
【0057】
エマルジョンバインダーは、均質なシロキサンポリマー、及び/又は水中などのシリコーン樹脂系液相、並びに任意選択的に界面活性剤を含み得る。典型的には、「水中油型」エマルジョンでは、均質なシロキサンポリマー及び/又はシリコーン樹脂系液相は、分散相を形成し、水などはエマルジョンの連続相を形成する。
【0058】
分散バインダーは、水又は有機溶媒又は非反応性シリコーン系流体中の不均質な液相を含み;不均質な液相は、シリコーン系流体(存在する場合)に加えて、1つ以上のシロキサンポリマー、及び/又はシリコーン樹脂系のもの、並びに任意選択的に界面活性剤を含有し得る。
【0059】
溶液バインダーは、シロキサンポリマー、水に溶解したシリコーン樹脂系組成物、相溶性有機溶媒又は非反応性シリコーン系流体を含有する。上記の溶液バインダーは、シリコーン系流体(存在する場合)に加えて、1つ以上のシロキサンポリマー及び/又はシリコーン樹脂系組成物を含有し得る。相溶性有機溶媒が使用される場合、上記溶媒は、芳香族又は非芳香族溶媒、特にキシレン、メトキシプロピルアセテート(PMA)、アジピン酸、グルタル酸、及びコハク酸のエステルなどの二塩基性エステル(DBE)、又はエタノールなどのアルコールであり得る。シリコーン系流体は、例えば、25℃で100~50,000mPa.sの粘度を有するトリメチルシリル末端ポリジメチルシロキサンであり得る。
【0060】
無溶媒バインダーは、1つ以上のケイ素含有化合物を含有する均質な液体を含有する。
【0061】
固体バインダーは、1つ以上のケイ素含有材料を含有する均質な固体を含有する。これは、粉末、ペレット、又はブロックの形態であり得る。
【0062】
シロキサンポリマーが2つ以上のシラノール基及び/又はSi加水分解性反応性基を含む場合、関係するバインダーは縮合硬化性であり、架橋性化合物、縮合硬化触媒、及び任意選択的に補強充填剤又は非補強充填剤及び/又はシリコーン樹脂を更に含む。充填剤からは、上述の親水性シリカ粉末及び/又はエアロゲルが除かれる。
【0063】
シロキサンポリマーがSi-アルケニル基及び/又はSi-反応性基を有する場合、関係するバインダーは付加硬化性であり、架橋性化合物、付加硬化触媒、並びに任意選択的に硬化抑制剤、補強充填剤若しくは非補強充填剤、及び/又はシリコーン樹脂を含む。充填剤からは、上述の親水性シリカ粉末及び/又はエアロゲルが除かれる。
【0064】
バインダーがシリコーン系エラストマーを含有する場合、バインダー組成物は、シリコーン水系エラストマー(SWBE)エマルジョンであり得る。
【0065】
一実施形態では、親水性粉末及び/又はゲルは、例えば、上記の付加硬化組成物又はシリコーン水系エラストマー(SWBE)のエマルジョンに基づき得るエマルジョン型バインダーに導入される。このようなエマルジョン型バインダーは、好ましくは、界面活性剤、バインダー、及び水から構成される。
【0066】
Si-カルビノールバインダーは、シリコーン及び/又はシロキサン化合物に基づくものであり、-C-OH(末端)基を有する。
【0067】
ヒドロシリル化シロキサンバインダーは、上記の付加硬化組成物から構成される。これらは、それらを使用する用途に応じて、熱、UV光/電子ビーム(EB)によって硬化され得る。
【0068】
ハイブリッド組成物は、例えば本明細書に記載されるケイ素含有材料を含み、それだけでなく、好適な共バインダー又は硬化剤も含有し得、好ましくは、1,6-ヘキサメチレンジアミンなどのアミノ硬化剤、カルボン酸、例えばサリチル酸、イソシアネート、例えば、トルエンジイソシアネート、具体的には有機アミン、有機エポキシ樹脂ビスフェノールA-エピクロロヒドリンエポキシ樹脂、有機カルボン酸、有機アセタール、有機無水物ベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸無水物、有機アルデヒド、ポリオレフィンポリエチレン又はポリプロピレン、熱硬化性及び熱可塑性バインダーから選択される、無機又は有機バインダーを含み得る。
【0069】
本発明の組成物は、1.0~80.0重量%の親水性粉末及び/又はゲル並びに20.0~99.0重量%のバインダー、好ましくは1.0~20.0重量%の親水性粉末及び/又はゲル並びに80.0~99.0重量%のバインダー、より好ましくは5.0~10.0重量%の親水性粉末及び/又はゲル並びに90.0~95.0重量%のバインダーを含む。
【0070】
溶液、分散体、又はエマルジョン型バインダーの場合、組成物は、バインダーの総重量に基づいて、15.0~90.0重量%、好ましくは30.0~60.0重量%の溶解性/分散性/乳化性液体を含有する。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本発明は、ケイ素化合物/組成物系バインダーで処理された親水性粉末及び/又はゲルを含む組成物、並びに絶縁層を形成するためのその使用に関する。
【0072】
存在する場合、本発明における使用に好適な親水性エアロゲルは、シリカエアロゲル、マグネシアエアロゲル、チタニアエアロゲル、ジルコニアエアロゲル、アルミナエアロゲル、クロミアエアロゲル、二酸化スズエアロゲル、二酸化リチウム、セリア、及び五酸化バナジウム、これらのうちの2つ以上の混合物、又はカーボンエアロゲルであり得、好ましくはシリカエアロゲルである。
【0073】
請求項1に定義される本発明の親水性粉末及び/又はゲルは、好ましくは、上記の非晶質多孔質親水性シリカ及び/又は親水性シリカエアロゲルである。
【0074】
典型的には、上記の非晶質多孔質親水性シリカ及び/又は親水性シリカエアロゲルは、粉末の形態である。上述したように、粒径は、1又は3nm~500μmの範囲である。
【0075】
縮合硬化性バインダー
縮合硬化性バインダーは、(ai)少なくとも2つの末端ヒドロキシル基又は加水分解性基を有し、Brookfield粘度計などの回転粘度計により、又はASTM D-445,IP71に基づくガラスキャピラリ粘度計を用いることによって測定し得る、25℃で10~200,000mPa.s、あるいは2000~150000mPa.s、の粘度を有するシロキサンポリマーを含み得る。シロキサンポリマー(ai)は以下の分子式(2)によって記載し得る:
X3-cR7
cSi-O-(R8
ySiO(4-y)/2)z-Si-R7
cX3-c (2)
[式中、
cは、0、1、2、又は3であり、
bは0又は1であり、
zは、300~5000の整数であり、
yは、0、1又は2、好ましくは2である。
R1
ySiO(4-y)/2の少なくとも97%は、y=2で特徴付けられる。
Xは、ヒドロキシル基、又は任意の加水分解性基である]。
【0076】
各R7は、アルキル、アミノアルキル、ポリアミノアルキル、エポキシアルキル、又はアルケニル、あるいはアルキル、アミノアルキル、ポリアミノアルキル、各場合に1基当たり1~10個の炭素原子を有するエポキシアルキル基若しくは各場合に1基当たり2~10個の炭素原子を有するアルケニル基から選択される脂肪族有機基から個々に選択され、又は芳香族アリール基、あるいは6~20個の炭素原子を有する芳香族アリール基であり、最も好ましくはメチル、エチル、オクチル、ビニル、アリル、及びフェニル基である。
【0077】
各R8は、X、アルキル基、あるいは1~10個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基、あるいは2~10個の炭素原子を有するアルケニル基、及び芳香族基、あるいは6~20個の炭素原子を有する芳香族基からなる群から個々に選択される。最も好ましくは、メチル基、エチル基、オクチル基、トリフルオロプロピル基、ビニル基、及びフェニル基である。いくつかのR8基は、ポリマー主鎖から分枝する、上述のように末端基を有し得るシロキサンであり得る。
【0078】
最も好ましいR8は、メチルである。
【0079】
シロキサンポリマー(ai)の各X基は、同じでも異なっていてもよく、ヒドロキシル基であっても縮合性基若しくは加水分解性基であってもよい。用語「加水分解性基」は、室温で水によって加水分解されるケイ素に結合した任意の基を意味する。最も好ましいX基は、ヒドロキシル基又はアルコキシ基である。例示的なアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ オクタデシルオキシ、及び2-エチルヘキソキシ、メトキシメトキシ又はエトキシメトキシなどのジアルコキシ基、及びエトキシフェノキシなどのアルコキシアリールオキシ基である。最も好ましいアルコキシ基は、メトキシ基あるいはエトキシ基である。
【0080】
シロキサンポリマー(ai)は、式(2)によって表わされる単一のシロキサンであってもよく、又は上記式によって表されるシロキサンの混合物であってもよい。成分(ai)に関する用語「シロキサンポリマー混合物」は、任意の個々のシロキサンポリマー(ai)又はシロキサンポリマー(ai)の混合物を含むことを意味する。
【0081】
架橋剤(bi)
縮合硬化性バインダー中の架橋剤(bi)は、1つ以上のシラン又はシロキサンであり得、ケイ素結合加水分解性基、例えばアシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、オクタノイルオキシ基及びベンゾイルオキシ基);ケトキシミノ基(例えば、ジメチルケトキシモ(ketoximo)基及びイソブチルケトキシミノ(isobutyl-ketoximino)基);アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、イソブトキシ基及びプロポキシ基)、並びにアルケニルオキシ基(例えば、イソプロペニルオキシ基及び1-エチル-2-メチルビニルオキシ基)を含む、1つ以上のシラン又はシロキサンであり得る。
【0082】
シロキサン系架橋剤(bi)の分子構造は、存在する場合、直鎖、分枝状、又は環式であり得る。
【0083】
存在する場合、架橋剤(bi)は、好ましくは、基剤成分中のシロキサンポリマー(ai)の縮合性基に対して反応性である、1分子当たり少なくとも3つ又は4つのケイ素結合縮合性基(好ましくはヒドロキシル基及び/又は加水分解性基)を有する。触媒パッケージの架橋剤(bi)がシランであり、かつ、当該シランが1分子当たり3つのケイ素結合加水分解性基を有する場合、第4の基は、好適には非加水分解性ケイ素結合有機基である。これらのケイ素結合有機基は、好適には、任意選択的にフッ素及び塩素などのハロゲンによって置換されたヒドロカルビル基である。このような第4の基の例としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基);シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基);アルケニル基(例えば、ビニル基及びアリル基);アリール基(例えば、フェニル基及びトリル基);アラルキル基(例えば、2-フェニルエチル基)並びに前述の有機基中の水素の全部又は一部をハロゲンで置き換えることにより得られた基が挙げられる。ただし、好ましくは、第4のケイ素結合有機基は、メチル基である。
【0084】
架橋剤として使用され得るシラン及びシロキサンとしては、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、アルキルトリアルコキシシラン、例えば、メチルトリメトキシシラン(MTM)及びメチルトリエトキシシラン、アルケニルトリアルコキシシラン、例えば、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン(iBTM)が挙げられる。他の好適なシランとしては、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、アルコキシトリオキシモシラン(alkoxytrioximosilane)、アルケニルトリオキシモシラン(alkenyltrioximosilane)、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ジブトキシジアセトキシシラン、フェニル-トリプロピオンオキシシラン(phenyl-tripropionoxysilane)、メチルトリス(メチルエチルケトキシモ(methylethylketoximo))シラン、ビニル-トリス-メチルエチル-ケトキシモ)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシイミノ)シラン、メチルトリス(イソプロペンオキシ)シラン、ビニルトリス(イソプロペンオキシ)シラン、エチルポリシリケート、n-プロピルオルトシリケート、エチルオルトシリケート、ジメチルテトラアセトキシジシロキサンが挙げられる。使用される架橋剤はまた、上記のうちの2つ以上の任意の組み合わせを含み得る。
【0085】
触媒(ci)
第3の成分は、硬化反応を触媒するための好適な縮合触媒である。これらは、典型的には、組成物中の他の成分に応じて選択される、スズ系触媒又はチタネート/ジルコネート触媒である。スズ触媒の例としては、スズトリフレート、有機スズ金属触媒、例えば、トリエチルスズタートレート、スズオクトエート、スズオレエート、スズナフテート、ブチルスズトリ-2-エチルヘキソエート、スズブチレート、カルボメトキシフェニルスズトリスベレート、イソブチルスズトリセロエート、及びジオルガノスズ塩、特に、ジオルガノスズジカルボキシレート化合物、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジメチルスズジブチレート、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルスズジアセテート、ジメチルスズビスネオデカノエート、ジブチルスズジベンゾエート、第一スズオクトエート、ジメチルスズジネオデカノエート(DMTDN)及びジブチルスズジオクトエートが挙げられる。
【0086】
チタネート及び/又はジルコネート系触媒は、一般式Ti[OR22]4[式中、各R22は同一でも異なっていてもよく、1~10個の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状であり得る一価の、第一級、第二級又は第三級脂肪族炭化水素基を表す]による化合物を含み得る。任意選択的に、チタネートは、部分不飽和基を含有し得る。なお、R22の好ましい例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第三級ブチル基及び分枝状第二級アルキル基、例えば2,4-ジメチル-3-ペンチル基が挙げられるが、これらに限定されない。各R22が同一である場合、好ましくは、R22は、イソプロピル基、分枝状第二級アルキル基又は第三級アルキル基、特に第三級ブチル基である。
【0087】
あるいは、チタネート又はジルコネートは、キレート化され得る。キレート化は、アルキルアセチルアセトネート、例えばメチル又はエチルアセチルアセトネートなどの、任意の好適なキレート剤により得る。
【0088】
縮合硬化性バインダーはまた、1つ以上の微粉化補強充填剤及び/又は非補強充填剤(di)を含み得る。疑念の回避のために、充填剤(di)には、上述の親水性粉末及び/又はゲルが含まれない。(di)の補強充填剤としては、炭酸カルシウム、高表面積ヒュームドシリカ、及び/又は、例えば籾殻灰を含む沈殿シリカを挙げ得る。縮合硬化性バインダーはまた、1つ以上の非補強充填剤(di)、例えば、破砕石英、珪藻土、硫酸バリウム、酸化鉄、二酸化チタン及びカーボンブラック、タルク、珪灰石を含み得る。単独で又は上記に加えて使用され得る他の充填剤としては、アルミナイト、硫酸カルシウム(無水石膏)、石膏、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム(水滑石)などの粘土、グラファイト、炭酸銅、例えばマラカイト、炭酸ニッケル、例えばザラカイト(zarachite)、炭酸バリウム、例えば毒重石、及び/又は炭酸ストロンチウム、例えばストロンチウム石が挙げられる。
【0089】
加えて、補強充填剤及び/又は非補強充填剤(di)は、表面処理され、それらを疎水性にし得る。このような目的に使用される処理剤は、脂肪酸若しくはステアレートなどの脂肪酸エステルであり得、又はオルガノシラン、オルガノシロキサン、若しくはオルガノシラザンヘキサアルキルジシラザン若しくは短鎖シロキサンジオールを用いて、充填剤を疎水性にし得、これにより、他のシーラント成分との均質混合物の取り扱い及び入手を容易にし得る。充填剤の表面処理によって、それらをシロキサンポリマー(ai)によって容易に湿潤化し得、基剤成分のシリコーンポリマー(ai)に均質に導入し得る。これにより未硬化組成物の室温での機械的特性が改善される。
【0090】
縮合硬化バインダーはまた、レオロジー改質剤;接着促進剤、顔料、熱安定剤、難燃剤、UV安定剤、鎖延長剤、電気伝導性及び/又は熱伝導性充填剤及び/又は防黴剤及び/又は殺生物剤を含み得、縮合硬化バインダーは、1部又は2部のオルガノポリシロキサンシーラント組成物のいずれかとして提供され得る。2部組成物は、第1の部にてポリマーと充填剤(必要な場合)とを含み、第2の部にて、触媒と架橋剤とが、使用直前に適切な比(例えば、1:1~10:1)で混合されるために提供される。更なる添加剤は、2部組成物の第1の部又は第2の部のいずれかに提供され得る。
【0091】
付加硬化性バインダー
付加硬化性バインダー(aii)に使用されるシロキサンポリマーは、概して、縮合硬化性バインダーのためのものと同じであり、-OH基又は加水分解性基がSi-アルケニル基又はSi-H基、好ましくはSi-アルケニル基によって置き換えられている。典型的には、ポリマーは、1分子当たり2つ以上のSi-アルケニル基を有する。
【0092】
オルガノポリシロキサン(aii)の25℃での粘度は、典型的には、10,000~1,000,000mPa.s、あるいは、あるいは10,000~500,000mPa.s、あるいは10,000~100,000mPa.sの範囲内である。別途記載のない限り、ブルックフィールド粘度計などの回転粘度計を用いて、又はキャピラリーレオメーターを用いて、全ての粘度を測定する。
【0093】
使用され得るオルガノポリシロキサン(aii)の例としては、ビニルジメチルシロキシ末端封鎖ジメチルシロキサン-ビニルメチルシロキサンコポリマー、ビニルジメチルシロキシ末端封鎖ポリジメチルシロキサン、ビニルメチルヒドロキシシロキシ末端封鎖ジメチルシロキサン-ビニルメチルシロキサンコポリマー、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0094】
オルガノポリシロキサン(aii)は、単一のポリマー、又は2つ以上の異なるポリマーの組み合わせのいずれかであり得る。
【0095】
オルガノポリシロキサン(aii)は、バインダー成分の総重量に基づいて5~95重量%、あるいはバインダー成分の総重量に基づいて35~85重量%、あるいはバインダー成分の総重量に基づいて40~80重量%、更にあるいはバインダー成分の総重量に基づいて50~80重量%の濃度でバインダー成分中に存在する。
【0096】
付加硬化性バインダーは、1分子当たり少なくとも2個のケイ素結合水素原子を含有するオルガノポリシロキサンを更に含む。成分(bii)の分子構造に関して特別な制限はなく、直鎖状、分枝状、環式、又は三次元網目様の分子構造を有し得る。成分(aii)の25℃での粘度に関して特別な制限はないが、この成分は、25℃で、1~100,000mPa.sの範囲の粘度を有することが推奨され得る。×成分(bii)に使用されるケイ素結合有機基は、メチル、エチル、プロピル、ブテニル、ペンテニル、ヘキシルなどのアルキル基;フェニル、トリル、キシリルなどのアリール基;3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピルなどのハロゲン化アルキル基によって例示され得、好ましくはメチル基及びフェニル基である。
【0097】
成分(bii)は、以下の化合物によって例示され得る:分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンポリシロキサン;分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサンとジメチルシロキサンとのコポリマー;分子鎖両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖ジメチルシロキサン;分子鎖両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサンとジメチルシロキサンとのコポリマー;分子鎖両末端がジメチルフェニルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサンとメチルフェニルシロキサンとのコポリマー;環式メチルハイドロジェンポリシロキサン;(CH3)2HSiO1/2シロキサン単位とSiO4/2単位とからなるコポリマー;(CH3)2HSiO1/2シロキサン単位、(CH3)3SiO1/2シロキサン単位、及びSiO4/2単位からなるコポリマー、上記オルガノポリシロキサンの一部又は全てのメチル基が、エチル、プロピルなどのアルキル基で置換されたもの;フェニル、トリルなどのアリール基で置換されたもの;3,3,3-トリフルオロプロピルなどのハロゲン化アルキル基で置換されたもの;又は上記オルガノポリシロキサンのうちの2つ以上の混合物。
【0098】
オルガノポリシロキサン(bii)は、概して、バインダー成分の総重量に基づいて、0.1~15重量%の量でバインダー成分中に存在する。
【0099】
オルガノポリシロキサン(bii)は、概して、成分(bii)のケイ素結合水素原子のモル数の、成分(aii)のアルケニル基のモル数に対する比が(0.7:1.0)~(5.0:1.0)、好ましくは(0.9:1.0)~(2.5:1.0)、最も好ましくは(0.9:1.0)~(2.0:1.0)の範囲となる量でバインダー成分中に存在する。
【0100】
典型的には、成分(aii)中の不飽和基の数及び成分(bii)中のSi-H基の数に応じて、成分(bii)は、バインダー成分の0.1~40重量%、あるいはバインダー成分の0.5~20重量%、あるいはバインダー成分の0.5~10重量%、更にあるいはバインダー成分の1重量%~5重量%の量で存在する。
【0101】
成分(cii)は、元素周期表の白金族金属又は遷移金属、例えば、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、及びイリジウム、並びにこれらの化合物から選択される触媒を含む1つ以上の付加反応触媒である。成分(cii)は、成分(aii)のビニル基と、成分(bii)のSi-H基との間の反応を触媒し、組成物が硬化するときに架橋ネットワークをもたらす。
【0102】
本明細書で使用される触媒は、好ましくは、白金系触媒、例えば塩化白金酸、アルコール又はケトンに溶解した塩化白金酸、熟成させたこれらの溶液、塩化白金酸-オレフィン錯体、塩化白金酸アルケニルシロキサン錯体、塩化白金酸ジケトン錯体、白金黒、及び担体に担持された白金、並びにこれらの混合物から選択される。
【0103】
触媒(cii)は、組成物中に存在するオルガノポリシロキサン(aii)及びオルガノポリシロキサン(bii)を硬化させるのに十分な量で添加される。例えば、触媒は、反応性のオルガノポリシロキサン(aii)及び(bii)の総重量に基づいて、0.1~500重量ppm(百万分率)、あるいは1~200重量ppm、あるいは1~100重量ppmの白金原子を触媒(cii)において提供する白金原子の量で、添加され得る。上記の比に応じて、典型的には、触媒の形態でバインダー組成物の0.01~10重量%、あるいは触媒の形態でバインダー組成物の0.01~5重量%、更にあるいは触媒の形態でバインダー組成物の0.05~2重量%が存在する。
【0104】
成分(dii)は、縮合硬化性バインダーに関して上述した、1つ以上の微粉化補強充填剤及び/又は非補強充填剤である。前述のように、このような充填剤は、疎水処理され、未硬化組成物の室温での機械的特性を改善し得る。更に、この表面処理充填剤により、未処理材料又は原料よりも低い伝導性が得られる。
【0105】
典型的には、使用される充填剤は、BET法により測定された比表面積が約50m2/g~最大450m2/gである微粉末の形態である。
【0106】
任意選択的に、付加硬化性バインダーは、当該技術分野において公知の白金系触媒の1つ以上の任意選択の付加反応抑制剤(e)を含み得る。付加反応阻害剤としては、ヒドラジン、トリアゾール、ホスフィン、メルカプタン、有機窒素化合物、アセチレンアルコール、シリル化アセチレンアルコール、マレエート、フマレート、エチレン性又は芳香族性不飽和アミド、エチレン性不飽和イソシアネート、オレフィン性シロキサン、不飽和炭化水素モノエステル及びジエステル、共役エン-イン、ヒドロペルオキシド、ニトリル、及びジアジリジンが挙げられる。
【0107】
上記の組成物に使用され得る抑制剤(e)は、少なくとも1つの不飽和結合を含有するアセチレンアルコール及びその誘導体からなる群から選択され得る。アセチレンアルコール及びそれらの誘導体の例としては、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ETCH)、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-ブチン-1-オール、3-ブチン-2-オール、プロパルギルアルコール、2-フェニル-2-プロピン-1-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニルシクロペンタノール、1-フェニル-2-プロピノール、3-メチル-1-ペンテン-4-イン-3-オール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0108】
あるいは、抑制剤は、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-ブチン-1-オール、3-ブチン-2-オール、プロパルギルアルコール、2-フェニル-2-プロピン-1-オール、3,5ジメチル-1ヘキシン-3-オール、1-エチニルシクロペンタノール、1-フェニル-2-プロピノール、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0109】
抑制剤(e)は、典型的には、少なくとも1つの不飽和結合基(アルケニル基)が末端位にあり、かつ更にメチル基又はフェニル基がアルファ位にあり得る、アセチレンアルコールであり得る。抑制剤は、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-ブチン-1-オール、3-ブチン-2-オール、プロパルギルアルコール、2-フェニル-2-プロピン-1-オール、1-フェニル-2-プロピノール、及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0110】
抑制剤(e)は、10~50,000重量ppmの範囲で硬化性シリコーンエラストマー組成物中に添加され得る。
【0111】
存在する場合、抑制剤(e)は、抑制剤の白金原子に対するモル比150:1~900:1、あるいは150:1~700:1、あるいは150:1~600:1を提供する量で存在する。
【0112】
付加硬化バインダーはまた、レオロジー改質剤;接着促進剤、顔料、熱安定剤、難燃剤、UV安定剤、鎖延長剤、電気伝導性及び/又は熱伝導性充填剤及び/又は防黴燃剤及び/又は殺生物剤を含み得、付加硬化バインダーは、1部又は2部のオルガノポリシロキサンシーラント組成物のいずれかとして提供され得る。2部組成物は、第1の部にてポリマーと充填剤(必要な場合)とを含み、第2の部にて、触媒と架橋剤とが、使用直前に適切な比(例えば、1:1~10:1)で混合されるために提供される。更なる添加剤は、2部組成物の第1の部又は第2の部のいずれかに提供され得る。
【0113】
シリコーン水性エラストマー(SWBE)バインダー
シリコーン水性エラストマーバインダーは、以下を含み得る:
(i)下記のものの反応生成物の架橋ポリシロキサン分散体;
(i)25℃で5,000~500,000mPa.sの粘度を有する、1分子当たり少なくとも2つの-OH基を有するシロキサンポリマー、又は1分子当たり少なくとも2つの-OH基を有するポリマー混合物、並びに
(ii)(i)(i)と反応性である、及び更に(i)(c)界面活性剤及び(i)(d)水を更に含む、少なくとも1つの自己触媒架橋剤;と共に
下記(ii)乃至(iv)の1つ以上の成分:
(ii)コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、珪藻土、粉砕石英、カオリン、焼成カオリン、珪灰石、ヒドロキシアパタイト、炭酸カルシウム、アルミナ水和物、水酸化マグネシウム、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化アルミニウム、バーミキュライト、酸化亜鉛、マイカ、滑石、酸化鉄、硫酸バリウム、及び消石灰の群から選択される1つ以上の充填剤((親水性粉末及び/又はゲルを除く);
(iii)1つ以上の安定剤;
(iv)1つ以上のレオロジー改質剤。
【0114】
反応生成物(i)は、in-situ樹脂補強剤及びpH安定剤などの1つ以上の添加剤を更に含み得る。分散体は、上記成分を十分に高い剪断の下に混合して、その混合物をゲル相に転換し、次いでそのゲルを所望のシリコーン含有量になるまで水で希釈することによって製造される。
【0115】
上記反応生成物(i)の出発原料として使用されるシロキサンポリマー又はポリマー混合物(i)(i)は、ASTM D4287-00(2010)にしたがって、Brookfield自記粘度計を用い、スピンドル3、2rpmにて25℃で測定して、5,000~500,000mPa.sの範囲の粘度を有する。シロキサンポリマーは、下記の分子式(3)によって記載される:
Z3-nR9
n-AO-(R10
2SiO)z-A-R9
nZ3-n (1)
[式中、nは0、1、2又は3であり、zは500~5000の整数であり、Zは水素原子、ヒドロキシル基、及び任意の縮合性基又は加水分解性基であり、Aは、Si原子又はSi-(CH2)m-SiR10
2基であり、R9は、脂肪族基、アルキル基、アミノアルキル基、ポリアミノアルキル基、エポキシアルキル基、アルケニル基又は芳香族アリール基からなる群から個々に選択され、R10は、Z、脂肪族基、アルキル基、アルケニル基、及び芳香族基からなる群から個々に選択される]。
【0116】
シロキサンポリマー(i)(i)は、式(3)によって表わされる単一のシロキサン若しくは上記式によって表されるシロキサンの混合物であってもよく、又は溶剤/ポリマー混合物であってもよい。「ポリマー混合物」という用語は、これらの種類のポリマー又はポリマーの混合物のうちのいずれかを含むことを意味する。本明細書で使用するとき、「シリコーン含有量」という用語は、分散体の分散相中の原料物質を問わないシリコーンの総量を意味し、これには、シリコーンポリマー、ポリマー混合物、自己触媒架橋剤、in situ樹脂補強剤、及び安定剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
各Z基は、同じでも異なっていてもよく、水素原子、ヒドロキシル基、及び任意の縮合性基又は加水分解性基であり得る。用語「加水分解性基」は、室温で水によって加水分解されるケイ素に結合した任意の基を意味する。加水分解性基Zとしては、水素原子、ハロゲン原子、例えばF、Cl、Br又はI;式-OT[式中、Tは、任意の炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、オクタデシル基、アリル基、ヘキセニル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、β-フェニルエチル基;任意の炭化水素エーテル基、例えば2-メトキシエチル基、2-エトキシイソプロピル基、2-ブトキシイソブチル基、p-メトキシフェニル基、若しくは-(CH2CH2O)2CH3である]の基、又は任意のN,N-アミノ基、例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、若しくはジシクロヘキシルアミノ基;NH2;式-ON=CM1
2又は-ON=CM’[式中、M1は任意の一価炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基、例えば上記Tについて示したものであり、M’は任意の二価炭化水素基であり、両方の価数が炭素に結合しており、例えば、ヘキシレン、ペンチレン、又はオクチレンである]の任意のケトキシム基;式-N(M1)CONM’’2[式中、M1は上記で定義され、M’’は水素原子又は上記M1基のいずれかである]のウレイド基;式OOCM1M’’[式中、M1及びM’’は上記で定義されている]のカルボキシル基、又は式-NM1C=O(M’’)[式中、M1及びM’’は上記で定義されている]のカルボン酸アミド基が挙げられる。Zはまた、式-OSO2(OM1)[式中、M1は上記で定義されたとおりである]のスルホネート基又はスルホネートエステル基;シアノ基;イソシアネート基;式-OPO(OM1)2[式中、M1は上記で定義されている]のホスフェート基又はホスフェートエステル基であり得る。
【0118】
最も好ましいZ基は、ヒドロキシル基又はアルコキシ基である。例示的なアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基及び2-エチルヘキソキシ基;ジアルコキシ基、例えばメトキシメトキシ基又はエトキシメトキシ基、及びアルコキシアリールオキシ基、例えばエトキシフェノキシ基である。最も好ましいアルコキシ基は、メトキシ基又はエトキシ基である。Rは、脂肪族基、アルキル基、アミノアルキル基、ポリアミノアルキル基、エポキシアルキル基、アルケニル有機基、及び芳香族アリール基からなる群から個々に選択される。最も好ましくは、メチル基、エチル基、オクチル基、ビニル基、アリル基、及びフェニル基である。
【0119】
R10は、Z、脂肪族基、アルキル基、アルケニル基、及び芳香族アリール基からなる群から個々に選択される。最も好ましくは、メチル基、エチル基、オクチル基、トリフルオロプロピル基、ビニル基、及びフェニル基である。
【0120】
式(3)のシロキサンポリマーが1分子当たり平均2超の自己触媒型の縮合性基又は加水分解性基を有する場合、架橋ポリマーを形成するため別個に存在する自己触媒架橋剤を有する必要はない。異なるシロキサン分子上の縮合性基又は加水分解性基は、互いに反応して必要な架橋を形成し得る。
【0121】
シロキサンポリマー(i)(i)は、異なる種類の分子、例えば長鎖直鎖状分子及び短直直鎖状分子又は分枝状分子の混合物であり得る。これらの分子は互いに反応して、架橋ネットワークを形成し得る。このようなシロキサンは、より通常的な架橋剤に代わるものであり得、低分子量水素化有機ケイ素、例えばポリメチルハイドロジェンシロキサン、メチルハイドロジェンシロキシ基及びジメチルシロキシ基含有低分子量コポリマー、-(Si((OEt)2)-、(エチルポリシリケート)、(OSiMeC2H4Si(OMe)3)4及び(OSi-MeON=CR’2)4[式中、Meはメチルであり、Etはエチルである]によって例示される。
【0122】
有利には、シロキサンポリマー(i)(i)はまた、式(3)のシロキサンポリマーの混合物を含み、これは、α,ω-ヒドロキシシロキシ末端シロキサン及びα,ω-ビス(トリオルガノシロキシ)末端シロキサンの混合物、α,ω-ヒドロキシルシロキシ末端シロキサン及びα-ヒドロキシ,ω-トリオルガノシロキシ末端シロキサンの混合物、α,ω-ジアルコキシシロキシ末端シロキサン及びα,ω-ビス(トリオルガノシロキシ)末端シロキサンの混合物、α,ω-ジアルコキシシロキシ末端シロキサン及びα,ω-ヒドロキシシロキシ末端シロキサンの混合物、α,ω-ヒドロキシシロキシ末端シロキサン及びα,ω-ビス(トリオルガノシロキシ)末端ポリ(ジオルガノ)(ハイドロジェンオルガノ)シロキサンコポリマーの混合物によって例示されるが、これらに限定されない。本発明のシロキサンポリマーはまた、上記の式(3)のシロキサンポリマーと、下記式の繰り返し単位の組み合わせを含む液体分枝状メチルポリシロキサンポリマー(「MDT流体」)との混合物を含み得:
(CH3)3SiO1/2 (「M」)
(CH3)2SiO (「D」)
CH3SiO3/2 (「T」)
0.1~8重量%のヒドロキシル基を含有し得る。流体は、例えば米国特許第3,382,205号に記載されているように、対応するクロロシラン又はアルコキシシランの共加水分解によって調製され得る。添加されるMDT流体の割合は、得られたポリマーの物理的特性及び接着性の改善を達成するために、式(3)のポリマー100重量部当たり50重量部以下、好ましくは1~20重量部とする必要がある。
【0123】
本発明のシロキサンポリマーはまた、式(3)のシロキサンポリマーと、下記式の繰り返し単位の組み合わせを含む液体又は固体分枝状メチルポリシロキサンポリマー樹脂との混合物を含み得:
(CH3)3SiO1/2 (「M」)
(CH3)2SiO (「D」)
CH3SiO3/2 (「T」)
SiO4/2 (「Q」)
0.1~8重量%のヒドロキシル基を含有し得、流体は、例えば米国特許第2,676,182号に記載されているように、対応するクロロシラン又はアルコキシシランの共加水分解によって調製され得る。MDTQ流体/樹脂は、得られたポリマーの物理的特性及び接着性を改善するために、式(3)のポリマー100重量部当たり50重量部以下、好ましくは1~10重量部の割合で添加され得る。MDTQ流体/樹脂は、MDT流体及び式(3)のポリマーと混合され得る。
【0124】
最後に、シロキサンポリマー(i)(i)は、有機ポリマー/溶媒混合物を形成するために、式(3)のシロキサンポリマーと、相容性のある有機溶媒との混合物を含み得る。これらの有機溶媒は、有機ホスフェートエステル、アルカン、例えばヘキサン又はヘプタン;高級パラフィン;及び芳香族溶媒、例えばトルエン又はベンゼンによって例示される。ポリマー溶媒混合物はまた、MDT流体及び/又はMDTQ流体と共に式(3)のポリマーに添加され得る。上記のポリマー又はポリマー/溶剤の混合物は全て、乳化前にこれらの成分を混合するか、あるいは成分を個々に乳化して、生成されたエマルジョンを混合することによって調製され得る。
【0125】
(i)(i)と反応して反応生成物(i)を形成する少なくとも1つの自己触媒架橋剤(i)(ii)は、シロキサンポリマー100重量部当たり1~5重量部の量で存在する。「自己触媒架橋剤」という用語は、触媒種として作用する少なくとも1つの基を有する分子を意味する。場合によっては、所望の物理的特性を有するエラストマーを製造するのに自己触媒架橋剤を1つしか必要としないことがあるが、当業者であれば、優れた結果を達成するために、2つ以上の自己触媒架橋剤を反応混合物に添加し得るということは理解されよう。加えて、単複の自己触媒架橋剤を従来の触媒と共に添加し得る。しかし、自己触媒架橋剤を従来の触媒と共に添加することは、本発明の実施のためには必要ではなく、本発明が実施を意図する組成物は、実際、従来の触媒を含まないことがある。
【0126】
典型的な自己触媒架橋剤としては、R-Si-(Q)3又はSi-(Q)4[式中、Qはカルボン酸基、OC(O)R4、例えばアセトキシ基であり、R4は1~8個の炭素原子のアルキル基、好ましくはメチル基、エチル基、又はビニル基である]などの三官能性又は四官能性化合物が挙げられる。他の好ましいQ基は、ヒドロキシルアミン、ON(R4)2[式中、各Rは1~8個の炭素原子の同じ又は異なるアルキル基である]、例えばON(CH2CH3)2である。Qはまた、ON=C(R4)2[式中、各R4は1~8個の炭素原子の同じ又は異なるアルキル基である]などのオキシム基、例えばON=C(CH3)(CH2CH3)であり得る。更に、Qは、N(R13)2[式中、R13は1~8個の炭素原子の同じ又は異なるアルキル基、又は環式アルキル基である]などのアミン基、例えばN(CH3)2又はNH(シクロヘキシル)であり得る。最後に、Qは、アセトアミド基、NRC(O)R4[式中、R4は1~8個の炭素原子のアルキル基である]、例えばN(CH3)C(O)CH3であり得る。
【0127】
加えて、上記化合物の部分加水分解生成物はまた、自己触媒架橋剤として機能し得る。これには、例えば次式の二量体、三量体、四量体などが含まれる:
【化1】
[式中、Q及びR
4は、前段落で定義されている]。
【0128】
また、自己触媒架橋剤としても有用なものは、ポリジオルガノポリシロキサン分子の主鎖上のペンダント基位置若しくは末端位置のいずれか又はそれらの両方の位置に位置する3つ以上の(Q)部位を含有する、ポリマー種又はコポリマー種である。ペンダント基の例としては、次式の組成物が挙げられる:
【化2】
[式中、R
4は1~8個の炭素原子の同じ又は異なるアルキル基であり、aは0又は正の整数、bは2より大きい整数である]。概して、ペンダント又は末端のQ基のいずれかを有するポリマー組成物は、本発明の実施に使用され得、特に次式の化合物が使用され得る:
Q
3-nR
14
nSiO(R
14
2SiO)
zSiR
14
nQ
3-n
[式中、nは0、1、2、又は3であり、zは正の整数であり、R
14は、分子に少なくとも3つのQ基が存在する限りにおいて、Q、又は独立して1~8個の炭素原子の同じ又は異なるアルキル鎖である]。Q基は上記のとおりである。
【0129】
有効な自己触媒架橋剤は、スズカルボキシレート又はアミンなどの更なる触媒の非存在下、機能性シリコーンポリマーと混合したとき、不粘着エラストマーを形成する化合物である。自己触媒架橋剤において、アセトキシ基、オキシム基、ヒドロキシルアミン基(アミノキシ基)、アセトアミド基及びアミド基は、本発明が意図する反応におけるSi-O-Si結合の形成を触媒する。
【0130】
当業者ならば、出発ポリマー自体を自己触媒架橋部であらかじめエンドブロックすることができるかもしれないということは理解できるように思われる。任意選択的に、更に、自己触媒架橋剤をこのような組成物に添加し得る。
【0131】
界面活性剤(c)は、非イオン性界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、あるいはこれらの混合物から選択され得る。界面活性剤(c)は、シロキサンポリマー(i)(i)の0.5~10重量部の量、好ましくは2~10重量部の量で本発明の組成物中に存在する。
【0132】
最も好ましくは、当技術分野においてポリシロキサンの乳化に有用であることが知られている非イオン性界面活性剤である。有用な非イオン性界面活性剤は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタンエステル、ポリオキシアルキレンエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びエトキシ化アミドなどである。
【0133】
ポリシロキサンの乳化に有用であることが当技術分野で知られているカチオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤はまた、本発明の界面活性剤としても有用である。好適なカチオン性界面活性剤は、脂肪族脂肪アミン及びその誘導体、例えば、ドデシルアミンアセテート、オクタデシルアミンアセテート、及びタロー脂肪酸のアミンのアセテート;、脂肪鎖を有する芳香族アミンの同族体、例えばドデシルアナリン;脂肪族ジアミンから誘導された脂肪族アミド、例えばウンデシル-イミダゾリン;二置換アミンから誘導された脂肪アミド、例えばオレイルアミノジエチルアミン;エチレンジアミンの誘導体;第四級アンモニウム化合物、例えばタロートリメチルアンモニウムクロリド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロリド、及びジヘキサデシルジメチルアンモニウムクロリド;アミノアルコールのアミド誘導体、例えばβ-ヒドロキシエチルステアリルアミド;長鎖脂肪酸のアミン塩;二置換ジアミンの脂肪アミドから誘導された第四級アンモニウム塩基、例えばオレイルベンジル-アミノエチレンジエチルアミン塩化水素塩;ベンゾイミダゾリンの第四級アンモニウム塩基、例えばメチルヘプタデシルベンゾイミダゾール臭化水素塩;ピリジニウム及びその誘導体の塩基性化合物、例えばセチルピリジニウムクロリド;スルホニウム化合物、例えばオクタデシルスルホニウムメチルサルフェート;ベタインの第四級アンモニウム化合物、例えばジエチルアミノ酢酸及びオクタデシルクロロメチルエーテルのベタイン化合物;エチレンジアミンのウレタン、例えばステアリン酸とジエチレントリアミンとの縮合生成物;ポリエチレンジアミン及びポリプロパノールポリエタノールアミンである。
【0134】
好適なアニオン性界面活性剤は、カルボン酸、リン酸及びスルホン酸、及びこれらの塩誘導体である。本発明において有用なアニオン性界面活性剤は、アルキルカルボキシレート;アシルラクチレート;アルキルエーテルカルボキシレート;n-アシルサルコシネート;n-アシルグルタメート;脂肪酸-ポリペプチド縮合物;アルカリ金属スルホリシネート、脂肪酸のスルホン化グリセロールエステル、例えばヤシ油酸のスルホン化モノグリセリド;一価スルホン化アルコールエステルの塩、例えばナトリウムオレイルイセチオネート;アミノスルホン酸のアミド、例えばオレイルメチルタウリドのナトリウム塩;脂肪酸ニトリルのスルホン化生成物、例えばパルミトニトリルスルホネート;スルホン化芳香族炭化水素、例えばナトリウムα-ナフタレンモノスルホネート;ナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒドとの縮合生成物;ナトリウムオクタヒドロ-アントラセンスルホネート;アルカリ金属アルキルサルフェート、8個以上の炭素原子のアルキル基を有するエーテルサルフェート、及び8個以上の炭素原子の1つ以上のアルキル基を有するアルキルアリールスルホネートである。
【0135】
好適な両性界面活性剤は、グリシネート、ベタイン、スルタイン及びアルキルアミノプロピオネートである。これらとしては、ココアンフ-グリシネート、ココアンフォカルボキシ-グリシネート、ココアミドプロピルベタイン、ラウリルベタイン、ココアミドプロピルヒドロキシスルタイン、ラウリルスルタイン及びココアンフォジプロピオネートが挙げられる。
【0136】
市販の本発明に有用な両性界面活性剤は、SHEREX CHEMICAL CO.(Dublin,OH)製のREWOTERIC(登録商標)AM TEG、AM DLM-35、AM B14 LS、AM CAS、及びAM LPである。
【0137】
界面活性剤をシロキサンポリマーに添加することに加えて、混合物はまた、所定量の水も含む。水は、シロキサンポリマーの0.5~30重量部の量、好ましくは2~10重量部の量で混合物中に存在する。水はまた、ゲル相を希釈するために、混合後に任意の量で添加され得る。
【0138】
反応生成物(i)は、更に、in-situ樹脂補強剤、安定剤、例えばpH安定剤、充填剤などの1つ以上の添加剤を含み得、またこれらと同様のものを混合物に添加し得る。反応生成物(i)は、上記成分を十分高い剪断の下で混合してその混合物をゲル相に転換し、次いでそのゲルを所望のシリコーン含有量になるまで水で希釈することによって製造される。
【0139】
(i)(i)25℃で5,000~500,000mPa.sの粘度を有する、1分子当たり少なくとも2つの-OH基を有するシロキサンポリマー、又は1分子当たり少なくとも2つの-OH基を有するポリマー混合物と、(i)(ii)(i)(i)と反応性の少なくとも1つの自己触媒架橋剤との反応生成物であって、更に(c)界面活性剤及び(d)水を含む、反応生成物は;典型的には、添加剤を除き(すなわち((i)(i)+(i)(ii)+(c)+(d)の生成物が100重量%である)ことに基づき)、70~90重量%の(i)(i)+(i)(ii)の反応生成物、3~10重量%の(c)、及び7~20重量%の成分(d)を含む。あるいは、添加剤を除き(すなわち((i)(i)+(i)(ii)+(c)+(d)の生成物が100重量%である)ことに基づき)、80~90重量%の(i)(i)+(i)(ii)の反応生成物、3~8重量%の(c)、及び7~15重量%の成分(d)である。
【0140】
加えて、in situ樹脂補強剤、例えばメチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、ノルマルプロピルオルトシリケート(NPOS)を、自己触媒架橋剤と共に添加し得る。in situ樹脂補強剤をポリジオルガノポリシロキサン/自己触媒架橋剤混合物に添加することで、高度に分枝状の架橋構造を有するin situ樹脂が形成され、その結果、エラストマーの物理的特性、特に引張特性、伸び及び硬度特性が改善されると考えられる。これによりまた、結果として得られたエラストマーの透明性が改善される。
【0141】
安定剤はまた、組成物に添加され得る。これらには、任意の好適な安定剤、例えば、pH安定剤が含まれ得、又はポリマー若しくはニートのアミノシランを含有する任意のアミノシランが安定剤として機能する。ニートのアミノシランとしては、次式の化合物が挙げられる:
(R15O)3-nR15
nnSiQ1NR15
yH2-y
[式中、n及びyは独立して、0、1、又は2であり;R15は、1~8個の炭素原子の同じ又は異なるアルキル鎖であり、Q1は(CH2)b又は{(CH2)bN(R15)}wであり、式中、bは1~10の整数であり、wは0~3である]。
【0142】
ポリマーのアミノシラン、例えばシラノール機能性シロキサン流体及びアミノシランの反応生成物、又はシラノール機能性シロキサン流体及びアルコキシシラン及びアミノシランの反応生成物はまた、本発明の実施に使用され得る。例えば、特に有用な1つのポリマーアミノシシロキサンは、次式を有する:
【化3】
[式中、zは3~40である]。
【0143】
本発明のバインダー成分を調製するには、シロキサンポリマー(i)(i)及び自己触媒架橋剤(i)(ii)を混合する。次いで、水(d)及び界面活性剤(c)を、シロキサンポリマー(i)(i)に添加し、自己触媒架橋剤(i)(ii)を、高固形成分ゲル相が形成されるまで混合する。低剪断混合機、例えばTurrello(商標)、Neulinger(商標)又はRoss(商標)ミキサーを含む、任意のタイプの混合機を使用し得る。ゲルはまた、優れた貯蔵保存性を示し、長期間保存し得、又は更に必要に応じて輸送し得る。組成物の他の成分は、予備硬化分散体(pre-cured dispersion)の調製時に導入し得、あるいは使用前に任意の好適な順序で組成物に添加し得、また、混合後、得られた組成物を所望のシリコーン含有量になるまで水で希釈し得る。分散体単独及び組成物のいずれも、長期間保存し得、かつ優れた凍結/解凍安定性を示す。
【0144】
次いで、架橋ポリシロキサン分散組成物を、使用前に他の成分と混合し得、又は分注し得、水分が蒸発するとエラストマー膜を形成する。基材を処理する方法は、架橋ポリシロキサン分散体を基材に適用することを含み得る。そのため、基材を処理する方法は、架橋ポリシロキサン分散組成物を基材に適用して、シリコーンラテックスエラストマーを基材表面に形成した後、架橋ポリシロキサン分散組成物から水を蒸発させることを、更に含み得る。この水蒸発の工程は、架橋ポリシロキサン分散組成物を適用する時の基材の場所の周囲条件又は大気条件の下で行なってもよい。あるいは、水蒸発の工程は、1つ以上のヒーターによって得られる人工加熱条件下で行なってもよい。
【0145】
調製されると、上述の反応生成物(i)は、任意の好適な順序でバインダー成分のうちの他の成分と混合され得る。重量%で決定される全てのバインダー成分の総量が最大で100重量%になるということは理解されよう。架橋ポリシロキサン分散バインダー成分は、典型的には、上記のように、30~80重量%、あるいは30~60重量%、あるいは35~50重量%の反応生成物(i)を含む。
【0146】
架橋ポリシロキサン分散バインダー組成物はまた、1つ以上の充填剤(親水性粉末及び/又はゲル以外)を含む。好適な充填剤としては、例えば、コロイダルシリカ、燃焼生成されたシリカ粉末(ヒュームドシリカ)及び沈降法で生成されたシリカ粉末(沈降シリカ)、半補強剤、例えば珪藻土又は石英粉末が挙げられる。非珪質の充填剤、例えば炭酸カルシウム、アルミナ水和物、水酸化マグネシウム、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化アルミニウム、バーミキュライト、酸化亜鉛、マイカ、滑石、酸化鉄、硫酸バリウム、消石灰、カオリン、焼成カオリン、珪灰石(ウォラストナイト)、及びヒドロキシアパタイトを、添加し得る。
【0147】
単独で又は上記に加えて使用され得る他の充填剤としては、本明細書に上記の非補強充填剤が挙げられる。必要な場合、シロキサンポリマー(i)(i)に可溶性である液体アルコキシシランもまた、充填剤とシロキサンポリマーとを相溶化するために、充填剤と共に添加され得る。
【0148】
典型的には、充填剤は、バインダー組成物中に存在する場合、シロキサンポリマー(i)(i)100重量部当たり10~200重量部の充填剤、あるいはシロキサンポリマー(i)(i)100重量部当たり15~100重量部の充填剤の量で存在する。疎水化剤は、上述の充填剤を処理して、上記のように疎水性にするために提供され得る。揮発性有機アミン及び揮発性無機塩基は、シリカの安定剤として有用であり、熱安定性エラストマー、例えば、(R7)3-xN(H)X[式中、x=0、1、2又は3であり、R7はアルキル基又はアリール基である]、例えば(CH3)2NHをもたらし、又は式中、R7はアルコール基であり、例えば、N(CH2CH2OH)3若しくはNH(CH2CH2OH)2をもたらす。揮発性有機アミンとしては、シクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノメチルプロパノール、ジエチルアミノエタノール、アミノメチルプロパノール、アミノブタノール、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノエチルプロパンジオール、アミノメチルプロパンジオール、ジイソプロパノールアミン、モルホリン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、アニリン、及び尿素が挙げられる。揮発性有機アミンに加えて、揮発性無機塩基、例えばアンモニア及び炭酸アンモニウムもまた、熱安定エラストマーをもたらす。
【0149】
バインダー組成物はまた、1以上のレオロジー改質剤、例えば天然材料及び改質天然材料、例えばデンプン、変性デンプン、セルロース、変性セルロース、タンパク質、及び変性タンパク質などを含有し得る。あるいは、レオロジー改質剤は、例えば、(メタ)アクリル酸のホモポリマー及びそれらのメタクリル酸エステルとのコポリマーの(任意選択的に疎水処理した)アルカリ膨潤性エマルジョン、疎水変性したエトキシ化ウレタン樹脂、ダイマー脂肪酸及びトリマー脂肪酸及び/又はイミダゾリンを含め、合成のものであり得る。更に、レオロジー改質剤は、使用する場合、組成物の0.25重量%~5重量%の量で存在する。
【0150】
本発明の親水性粉末及び/又はゲルは、上記の任意のバインダー材料のブレンドと、又はそれらの組み合わせを更なる共バインダー若しくは硬化剤として機能する更なるバインダー材料と混合されたものであり得る。バインダーは、シロキサンポリマー組成物又はシリコーン樹脂組成物を、好ましくは有機バインダーと組み合わせて含むハイブリッドバインダー系であり得る。有機バインダーとの好適なハイブリッドの組み合わせは、例えば、(i)有機アミン及び/若しくはアミン基を有するシリコーン樹脂、並びに/又はアミン基及びエポキシ硬化剤を有するシロキサンポリマー、(ii)有機アミン及び/若しくはアミン基を有するシリコーン樹脂、並びに/又はアミン基及びイソシアネート硬化剤を有するシロキサンポリマー、(iii)有機アルコール及び/若しくはカルビノール基を有するシリコーン樹脂、並びに/又はカルビノール基及びイソシアネート硬化剤を有するシロキサンポリマー、(iv)有機アミン及び/若しくはアミン基を有するシリコーン樹脂、並びに/又はアミン基及びカルボン酸硬化剤を有するシロキサンポリマーである。本発明のバインダーは、溶液、分散体、又はエマルジョンの形態で親水性粉末及び/又はゲルに添加され得、これにより、溶解性/分散性/乳化性液体を含有する。
【0151】
バインダーが溶液として適用される場合、それは、水、芳香族若しくは非芳香族溶媒、アルコール、エーテル、油、シリコーン若しくはシロキサン流体、又はこれらの組み合わせの液体溶解性溶液、キシレン、メトキシプロピルアセテート(PMA)、二塩基性エステル(DBE)、例えばアジピン酸、グルタル酸、及びコハク酸のエステル、又はアルコール例えばエタノール、又はシリコーン系流体の形態であり得る。シリコーン系流体は、例えば、25℃で100~50,000mPa.sの粘度を有するトリメチルシリル末端ポリジメチルシロキサンであり得る。
【0152】
バインダーが分散体又はエマルジョンとして適用される場合、それは、分散性/乳化性液体として、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、又はイソプロパノールなどの共溶媒と組み合わせ得る、水中の分散体又はエマルジョンの形態であり得る。
【0153】
あるいは、本発明のバインダーは、溶解性/分散性/乳化性液体を含まない。このようなバインダーはまた、無溶媒とも呼ばれる。好ましくは、バインダーは、無溶媒シロキサン又はシリコーン系バインダーである。市販の無溶媒アルコキシシロキサンバインダー製品は、DOW CORNING(登録商標)(Midland,MI,USA)のUS-CF-2403樹脂である。
【0154】
使用前に、バインダーは、1部組成物として保存され得るが、あるいは、例えば、部が、基材上に直接適用されることによって、又は例えば塗料組成物の更なる成分に導入されることによって必要に応じて一緒に混合され、使用されるとき、使用直前まで2つ以上の部にて保存され得る。各部は、固体又は液体のいずれかであり得る。バインダーが2つ以上の部にて保存されるとき、使用直前に、これらの部は一緒に混合され硬化性組成物を形成する。2つ以上の部は、架橋剤及び触媒の両方としては同じ部にない反応性ポリマー(又は樹脂)が存在する場合、任意の組み合わせで提供するバインダー成分を含有し得る。例えば、ポリマー/樹脂は、上記の親水性粉末及び/又はゲルと、任意の補強充填剤又は非補強充填剤とによる第1の部にあり得、第2の部は硬化パッケージを含有し得る。あるいは、3部の組成物が存在し得、ポリマーの一部が第1の部に上記のように、親水性粉末及び/又はゲルと共に保存されており;第2の部は、残りのポリマー及び補強又は非補強充填剤を含み得、第3の部は架橋剤及びポリマーを含む。
【0155】
本発明の組成物は、典型的には、1.0~80.0重量%の親水性粉末及び/又はゲル並びに20.0~99.0重量%のバインダー、好ましくは1.0~20.0重量%の親水性粉末及び/又はゲル並びに80.0~99.0重量%のバインダー、より好ましくは5.0~10.0重量%の親水性粉末及び/又はゲル並びに90.0~95.0重量%のバインダーを含む。
【0156】
有機(シリコン不含)共バインダー又は硬化剤が存在する場合、これらは、組成物の総量の2~40重量%の量で存在し得る。
【0157】
溶液、分散体、又はエマルジョン型バインダーの場合、組成物は、バインダーの総重量に基づいて、15.0~90.0重量%、好ましくは30.0~60.0重量%の溶解性/分散性/乳化性液体を含有する。
【0158】
上述の成分、材料に加えて、組成物はまた、非多孔質粒子も含み得る。好ましい非多孔質粒子は、例えば、ヒュームドシリカの粒子である。上記の親水性粉末及び/又はゲルとは異なり、ヒュームドシリカは非多孔質であり、塗料又はシーラントなどの用途において、増粘剤及び/又は補強材料として使用されている。これらの材料は、絶縁性充填剤としては知られていない。
【0159】
上述の成分に加えて、本発明の組成物はまた、増粘剤、顔料、更なる触媒、更なる補強充填剤及び/又は非補強充填剤、難燃剤、更なる水又は溶媒、泡安定剤、及び/又は任意の他の更なる絶縁性充填剤(すなわち、上記で定義された親水性粉末及び/又はゲルを除く)から選択される1つ以上の添加剤を含み得、絶縁性充填剤は、好ましくは、任意の好適な材料、好ましくはガラス、有機材料、セラミック、プラスチック及び/又はカーボンの、中空球、ビーズ、又はナノチューブを含み、組成物中のこのような添加剤の量は、典型的には、全組成物の重量に基づいて、0.1~80重量%の範囲、好ましくは0.1~60重量%の範囲、より好ましくは0.1~50重量%の範囲である。そこで、本発明の必須のバインダー並びに親水性粉末及び/又はゲル成分の上述の量は、これによって適合される。
【0160】
したがって、本発明の組成物は、下記のものを含み得る:
0.1~50重量%、好ましくは0.1~10.0重量%の増粘剤、
0.1~80重量%、好ましくは1.0~50重量%の顔料、
0.1~80重量%、好ましくは1.0~50重量%の更なる補強充填剤及び/又は非補強充填剤、
0.1~20重量%、好ましくは0.1~5.0重量%の更なる触媒、
0.1~50重量%、好ましくは1.0~10.0重量%の難燃剤、
更なる水又は溶媒、
0.1~20重量%、好ましくは0.1~5.0重量%の泡安定剤、並びに/又は
0.1~60重量%、好ましくは0.1~20.0重量%の更なる絶縁性充填剤、
ただし、重量%は、組成物の総重量に基づいている。
【0161】
更なる絶縁性充填剤は、任意の好適な材料、好ましくはガラス、有機材料、セラミック、プラスチック及び/又はカーボンの、中空球、ビーズ、又はナノチューブを含む。
【0162】
本発明の組成物は、液体であっても固体であってもよい。
【0163】
本発明のケイ素系バインダーとブレンドされ得る他の無機又は有機バインダー系は、水性系、溶媒系、無溶媒系、又は分散/エマルジョン系であり得る。好適な溶媒は、キシレン、メトキシプロピルアセテート(PMA)、二塩基性エステル(DBE)、例えばアジピン酸、グルタル酸、及びコハク酸のエステル、アルコール、例えばエタノール、並びに流体、例えばSi系流体から選択され得る。シリコーン系流体は、例えば、25℃で100~50,000mPa.sの粘度を有するトリメチルシリル末端ポリジメチルシロキサンであり得る。
【0164】
本発明はまた、本明細書で定義された親水性粉末及び/又はゲル並びにケイ素系バインダーを、組成物を含む複合体に提供する。
【0165】
更に、本発明は、請求項1に定義される組成物を調製する方法であって、
親水性粉末及び/又はゲルを、上述のケイ素化合物を含むバインダーと混合することと、
混合物を分散又は乳化することと、を含む、方法を提供する。
【0166】
本発明はまた、断熱材料又は遮音材料、塗料、コーティング、発泡物品、成形物品、注入物品、ガスケット、シーラント、接着剤、船舶及び配管としての、本発明の組成物の使用も提供する。
【0167】
このような絶縁性組成物を有利に使用し得る産業としては、船舶、建築物及び建造物、並びに自動車、コンテナ、及び移動式住居用途をはじめとする、輸送用途が挙げられる。また、上記の組成物を含む、又はそれからなる材料を硬化させて、製品を形成することと、断熱及び/又は遮音のための製品を使用することと、を含む方法も提供される。上記のように、断熱及び/又は遮音は、塗料、コーティング、発泡物品、注入物品、ガスケット、シーラント、接着剤、船舶及び配管からなる群から選択される用途に使用されている。また、本明細書における組成物を含む、又はそれからなる材料を上記基材に適用することによって得られた、コーティング基材も提供される。
【0168】
また、本明細書に記載の組成物を含む、又はこれらからなる材料から得られた製品、並びに製品を含む物品、又は製品からなる物品も提供される。後者の場合、製品が断熱及び/又は遮音のために使用される場合、特に好ましい。本明細書ではまた、上記の組成物を含む、又はそれからなる材料でコーティングされた、基材表面も提供される。
【0169】
また、本明細書に記載の組成物からなる、又はそれを含むコーティング組成物を基材に適用することによって、基材を断熱に又は遮音にする方法も提供される。コーティング組成物は、塗料、コーティング、シーラント、接着剤、又はガスケットなどであり得る。また、物品を断熱性又は遮音性にする方法であって、物品を作製するために配合物において上記の組成物を組み合わせることと、次いで物品を配合物により作製することと、を含む方法も提供される。物品は、ガスケット、音響タイルなどであり得る。
【0170】
組成物の性質に応じて、任意の好適な適用方法が使用され得、例えば、コーティング組成物は、混合、噴霧、注入、ロール処理、浸漬、紡糸、又はナイフ装置によって適用され得る。
【0171】
上記のバインダー組成物を使用して、例えば、更なる成分なしで基材に適用され得る。しかし、バインダー組成物はまた、複数部組成物のうちの単一部として保存され得る。例えば、スプレーガンにより噴霧する場合、バインダーは、基材に適用する前に混合チャンバ内で混合される複数の組成物のうちの1つの部としてスプレーガンに提供され得る。
【0172】
本発明はまた、本明細書に開示される組成物を使用することによって作製されたコーティング、製品、及び物品における亀裂形成の傾向を低減するための、本明細書で定義された非晶質多孔性親水性シリカ及び/又は親水性シリカエアロゲルの使用にも関する。
【0173】
本発明はまた、本明細書に定義されるバインダーとの相溶性を改善するための、及び/又は、上記バインダーを使用することによってして作製されたコーティング、製品及び物品における亀裂形成の傾向を低減するための、非晶質多孔性親水性シリカ及び/又は親水性シリカエアロゲルの使用にも関する。
【0174】
その結果、上記コーティング、製品及び物品の絶縁特性が改善され得る。
【0175】
コーティング、製品及び物品における亀裂形成の傾向の低減、すなわち、換言すれば、より良好な耐亀裂性に関連する技術的効果は、直径10cmの型などのプラスチック型にコーティング材料のフィルムを適用し、8mmなどの適切なフィルム厚さを用いることによって判定され得る。次いで、技術的効果は、フィルムの形成後、例えば、フィルムの適用、及び標準条件、すなわち、周囲温度(20℃)及び周囲(大気)圧力、及び空気中40~60%などの許容可能な湿度で保存の1週間後、亀裂の数を(目視検査により)観察することによって評価され得る。
【0176】
本発明の更なる態様を、以下の段落で開示する。番号付けされた段落への言及は、以下の項における段落に関するものである。
【0177】
段落1.組成物であって、1つ以上のシロキサンポリマー、シリコーン樹脂、シリコーン系エラストマー、及びこれらの混合物を含み、任意選択的に、ケイ素結合加水分解性基を含有するシラン及び/又はシロキサンを含む1つ以上の架橋剤成分を含む、バインダーと、親水性粉末及び/又はゲルであって、20℃及び大気圧で0.001~0.15W/m・Kの熱伝導率及び200~1500m2/gの表面積(SBET)を有する1つ以上の非晶質多孔質親水性シリカ、1つ以上の親水性エアロゲル、及びこれらの混合物から選択される、親水性粉末及び/又はゲルと、を含む、組成物。
【0178】
段落2.親水性非晶質多孔質親水性シリカが、0.1~100nmの孔径分布を有する、段落1に記載の組成物。
【0179】
段落3.親水性エアロゲルが、無機又は有機エアロゲル、特にシリカエアロゲル、マグネシアエアロゲル、チタニアエアロゲル、ジルコニアエアロゲル、アルミナエアロゲル、クロミアエアロゲル、二酸化スズエアロゲル、二酸化リチウムエアロゲル、セリアエアロゲル、及び五酸化バナジウムエアロゲル、及びこれらのいずれか2つ以上の混合物、又は有機炭素含有ポリマーに基づくエアロゲル(カーボンエアロゲル)である、段落1又は2に記載の組成物。
【0180】
段落4.バインダーが、少なくとも1つであるが好ましくは少なくとも2つのカルビノール基(C-OH)若しくはシラノール基(Si-OH)若しくはSi加水分解性基、又はこれらの混合を有する、1つ以上のシロキサンポリマー及び/又はシリコーン樹脂を含有する、段落1~3のいずれか1つに記載の組成物。
【0181】
段落5.シロキサンポリマー及び/又はシリコーン樹脂が2つ以上のシラノール基及び/又はSi加水分解性反応性基を含み、関係するバインダーは縮合硬化性であり、架橋性化合物、縮合硬化触媒、及び任意選択的に補強充填剤又は非補強充填剤を更に含む、段落4に記載の組成物。
【0182】
段落6.バインダーが、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのアルケニル基(Si-アルケニル)及び/又はケイ素結合水素(Si-H)を有する、1つ以上のシロキサンポリマー及び/又はシリコーン樹脂を含有する、段落1、2又は3に記載の組成物。
【0183】
段落7.バインダー、シロキサンポリマー及び/又はシリコーン樹脂が少なくとも1つであるが好ましくは少なくとも2つのアルケニル基(Si-アルケニル)及び/又はケイ素結合水素を有する2つ以上を含み、関係するバインダーは付加硬化性であり、架橋性化合物、Pt族硬化触媒、任意選択的に補強充填剤又は非補強充填剤を更に含む、段落6に記載の組成物。
【0184】
段落8.バインダーが、a)溶液、特に水、有機溶媒、又は非反応性シリコーン若しくはシロキサン流体中の溶液であって、任意選択的に界面活性剤を含有する、溶液、b)エマルジョン、特に、水中のエマルジョンであって、任意に界面活性剤を含有する、エマルジョン、又はc)分散体、特に、水若しくは有機溶媒若しくは非反応性シリコーン若しくはシロキサン流体中の分散体であって、任意選択的に界面活性剤を含有する、分散体である、段落1~7のいずれか1つに記載の組成物。
【0185】
段落9.溶液、分散体、又はエマルジョン型バインダーが、バインダーの総重量に基づいて、15.0~90.0重量%、好ましくは30.0~60.0重量%の溶解性/分散性/乳化性液体を含有する、段落8に記載の組成物。
【0186】
段落10.バインダーが、シリコーン系エラストマーを含む、段落1~9のいずれか1つに記載の組成物。
【0187】
段落11.バインダーが、バインダー及び/又は硬化剤としての使用に好適な、更なる無機又は有機成分、特にエポキシ樹脂、アミノ基含有成分、カルボン酸、イソシアネート、具体的には、有機アミン、有機エポキシ樹脂、有機イソシアネート、有機カルボン酸、有機アセタール、有機無水物、有機アルデヒド、ポリオレフィン、熱硬化性及び/又は熱可塑性成分を更に含む、段落1~10のいずれか1つに記載の組成物。
【0188】
段落12.無機又は有機バインダー系、特に水性系、溶媒系、無溶媒系又はエマルジョン系、固体バインダー系、特に粉末及びペレットバインダー系とブレンドされている、段落11に記載の組成物。
【0189】
段落13. 1.0~80.0重量%の親水性粉末及び/又はゲル並びに20.0~99.0重量%のバインダー、好ましくは1.0~20.0重量%の親水性粉末及び/又はゲル並びに80.0~99.0重量%のバインダー、より好ましくは5.0~10.0重量%の親水性粉末及び/又はゲル並びに90.0~95.0重量%のバインダーを含む、段落1~12のいずれか1つに記載の組成物。
【0190】
段落14.親水性粉末及び/又はゲルが、レーザー光散乱法(ASTM D4464-15)によって決定して、0.5μm~3000μmの平均サイズを有する凝集体及び/又は集塊粒子を含む、段落1~13のいずれか1つに記載の組成物。
【0191】
段落15.親水性粉末及び/又はゲルが、0.02~0.2g/cm3の密度、及び又は100m2/g~1500m2/g以上、好ましくは200~1000m2/gの範囲のBET表面積、及び/又は大気圧で0.004~0.05W/m・Kの熱伝導率、及び/又は1~75nmの孔径分布を有する、非晶質多孔質親水性シリカ及び/又は親水性シリカエアロゲルである、段落1~14のいずれか1つに記載の組成物。
【0192】
段落16.増粘剤、顔料、更なる触媒、更なる補強充填剤及び/又は非補強充填剤、難燃剤、更なる水又は溶媒、泡安定剤、及び/又は任意の他の更なる絶縁性充填剤から選択される1つ以上の添加剤も含み、絶縁性充填剤は、好ましくは、任意の好適な材料、好ましくはガラス、有機材料、セラミック、プラスチック及び/又はカーボンの、中空球、ビーズ、又はナノチューブを含み、組成物中のこのような添加剤の量は、典型的には、全組成物の重量に基づいて、0.1~80重量%の範囲、好ましくは0.1~60重量%の範囲、より好ましくは0.1~50重量%の範囲である、段落1~15のいずれか1つに記載の組成物。
【0193】
段落17.断熱材料又は遮音材料、塗料、コーティング、発泡物品、成形物品、注入物品、ガスケット、シーラント、接着剤、船舶及び配管としての、又はそれらにおける、段落1~16のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【0194】
段落18.段落1~16のいずれか1つに記載の組成物を含む、又はそれからなる材料を上記基材上に適用することによって得られた、コーティング基材。
【0195】
段落19.段落1~16のいずれか1つに記載の組成物を含む、又はそれからなる材料から得られた、製品。
【0196】
段落20.段落19に記載の製品を含む、又はそれからなる、物品。
【0197】
段落21.段落1~16のいずれか1つに記載の組成物を含む、又はそれからなる材料により表面コーティングされた、基材。
【0198】
以下の実施例により、本発明を例示する。
【実施例】
【0199】
実施例で用いられた材料は以下のとおりである:
フィルム形成材料:
DOWSIL(商標)8005Waterborne Resin:Dow Corning Corporation(Midland,MI,USA)から入手した水性エラストマーシロキサンエマルジョン。
【0200】
WORLEECRYL(登録商標)CH-X2158:Worlee GmbH(Lauenburg,Germany)から入手した水性アクリルバインダー。
【0201】
DOWSIL(商標)2405Resin:Dow Corning Corporation(Midland,MI,USA)から入手した25℃で300mPa.sの粘度を有するメトキシ官能性DT型シリコーン樹脂。
【0202】
XIAMETER(登録商標)RBL-1551 Part A:Dow Corning Corporation(Midland,MI,USA)から入手した2部付加硬化液体シリコーンゴム組成物の基剤部。
【0203】
XIAMETER(登録商標)RBL-1551 Part B:Dow Corning Corporation(Midland,MI,USA)から入手した2部付加硬化液体シリコーンゴム触媒の硬化パッケージ。
【0204】
DOWSIL(商標)RSN-0804Resin:Dow Corning Corporation(Midland,MI,USA)から入手した、-OH官能性シリコーン樹脂。
【0205】
EPICOTE(登録商標)828:Hexion Inc.(Columbus,OH,US)から入手した未変性ビスフェノールA-エピクロロヒドリンエポキシ樹脂。
【0206】
WORLEECURE(登録商標)VP2246:Worlee GmbH(Lauenburg,Germany)から入手した低粘度高性能脂環式アミンポリマー。
【0207】
DOWSIL(商標)3055Resin:Dow Corning Corporation(Midland,MI,USA)から入手したアミン官能性シリコーン樹脂。
【0208】
絶縁性充填剤:
QUARTZENE(登録商標)Z1:Svenska Aerogel AB(Gaevle,Sweden)から市販の非晶質多孔質親水性シリカ粉末、本明細書に記載の非晶質多孔質親水性シリカの範囲の特性を有する。具体的には、材料(CAS番号112926-00-9)は、2016年10月20日のその製品データシートにて特徴付けられ、20℃及びPatmで0.06~0.10g/mLのタップ密度;20℃及びPatmで0.025~0.03W/m Kの熱伝導率を有し;最高約900℃まで安定であり、200~350m2/gの表面積(BET);1~40μmの粒径分布を有し、約2μmのd(10)、約4~6μmのd(50)、及び約10~14μmのd(90);約1~50nmの孔径分布、及び約95~97%の空隙率を有する。
【0209】
ENOVA(登録商標)IC3120:Cabot Corp.(Boston,MA,US)から入手した疎水性シリカエアロゲル。
【0210】
3M(商標)Microsphere Glass Bubbles K Series K20:3M(St Paul,MI,US)から入手したガラス微小球。
【0211】
増粘剤:
ROHAGIT(登録商標)SD15:Synthomer Essex(UK)から入手したポリアクリレート系増粘剤。
【0212】
触媒:
Dorf Ketal Specialty Catalysts LLC(Houston,TX,US)から入手したチタンn-ブトキシド(TnBT)。
【0213】
調製
以下の実施例では、組成物を以下のように調製した。
【0214】
別途記載のない限り、各実施例の成分を合わせ、固体成分(例えばエアロゲル)を液相に注ぐことによって混合し、次いで、CW Brabender Instruments Inc.(NJ,USA)製のBanburyミキサーにて500rpmで最大20分間混合した。
【0215】
実施例1
これは、本発明の実施例であり、親水性粉末及び/又はゲル並びに増粘剤が導入された水系エマルジョンバインダー中のシリコーンから作製される。
【表1】
【0216】
実施例2(比較例)
これは、実施例1に対する比較例であり、疎水性エアロゲル及び増粘剤が導入された水系エマルジョンバインダー中のシリコーンから作製される。
【表2】
【0217】
実施例3(比較例)
この例は、実施例1に対する比較例であり、ガラスビーズ充填剤材料(非エアロゲル)及び増粘剤が導入された水系エマルジョンバインダー中のシリコーンから作製される。
【表3】
【0218】
実施例4((比較例)
この例は、実施例1に対する比較例であり、疎水性エアロゲル充填剤材料及び増粘剤が導入された水性有機アクリル系バインダーから作製される。
【表4】
【0219】
実施例5((比較例)
この例は、実施例1に対する比較例であり、親水性粉末及び/又はゲル充填剤材料並びに増粘剤が導入された水性有機アクリル系エマルジョンバインダーから作製される。
【表5】
【0220】
実施例6
これは、本発明の実施例であり、親水性粉末及び/又はゲル並びにチタネート触媒が導入されたアルコキシ末端シリコーン樹脂無溶媒バインダーから作製される。
【表6】
【0221】
実施例7
これは、本発明の実施例であり、親水性粉末及び/又はゲルが導入された2部付加硬化シリコーン組成物バインダーンから作製される。
【表7】
【0222】
実施例8((比較例)
これは比較例であり、親水性粉末及び/又はゲル並びに脂環式アミンポリマーが導入されたエポキシ樹脂を含有する。
【表8】
【0223】
実施例9((比較例)
これは比較例であり、実施例8と同じ樹脂及びポリマーを含有するが、非晶質多孔質親水性シリカの代わりに疎水性エアロゲル充填剤材料を含有する。
【表9】
【0224】
実施例10
これは本発明の混成実施例であり、非晶質多孔質親水性シリカ、脂環式アミンポリマー及びシリコーン樹脂が導入されているエポキシ樹脂を含有する。
【表10】
【0225】
上記実施例及び比較例の配合による配合物を、関連する特性について試験した。
【0226】
混和性
各実施例における成分の混和性を目視評価して、以下の指標を用いて、Banburyミキサーによる成分のブレンドの品質、すなわち、バインダーと他の成分との混和性を判定した。それによると;-
-= 非混和性。
+= 混和性及び粘度は、3~7日間の期間にわたって安定して保たれている。
++=混和性及び粘度は、少なくとも3ケ月間安定して保たれている。
【0227】
フィルムの一体性
厚さ約4mmの、各実施例のフィルムを、Q-Lab R-46冷間圧延鋼(Westlake(OH,USA))基材上に適用し、乾燥/硬化させた。周囲温度で3日間乾燥/硬化させた後、フィルム外観を目視評価した。
-- = ひどい亀裂(>mmの亀裂)
- = 亀裂(0.1~1.0mmの亀裂)
++ = 亀裂なし
【0228】
絶縁性特性
絶縁性充填剤の熱伝導率は、フィルム自体の熱伝導率の指標を提供することが判明した。これらの値は、この文書を下書きする時に、それぞれの充填剤のその時のデータセットから取得している。このような測定値は、ASTM E1225-13を用いて決定されることが理解される。
【0229】
フィルム熱安定性(℃)の限度
各実施例組成物の試料を、4mmのフィルムとしてQ-Lab R-46冷間圧延鋼(Westlake(OH,USA))基材上に適用した。フィルムを、24時間にわたって基材表面上で放置し硬化/乾燥させた。硬化/乾燥期間に続き、コーティング基材を、Harry Gestigkeit GMBH(Dusseldorf,GER)製の温度固定ホットプレート型PZ28-3TD上に8時間置いて、8時間中にフィルムが熱的に安定して保たれているか否かを判定した。ホットプレートにより、最初に120℃で試料を測定した。次いで、置き換え試料を、20℃の間隔で最高300℃まで測定し、フィルムのフィルム熱安定性の限度について、変色、層間剥離、及び/又は亀裂が8時間後に目視可能であるときに記録した。
【0230】
判定された結果を、以下の結果表に提示する。
【表11】
該当なし=フィルムが適用可能でもなく評価可能でもない(ゲル化している)の
で分析しなかった
【0231】
シリコーン組成物により、概して、最良の混和性及びフィルムの一体性の結果がもたらされたことが見出された。しかし、いくつかの有機系の系によると、混和性及びフィルムの一体性について同様の結果がもたらされたが、熱安定性に関しては著しく劣っていた。
【0232】
上述したように、本発明の組成物は、塗料、コーティング、例えば安全なタッチコーティング、発泡物品、配管、貯蔵タンク、注入物品、ガスケット、シーラント、接着剤、船舶及び配管用途の製造のために使用し得る。
【0233】
これらにより、断熱、遮音又は隔壁特性がもたらされる。
【0234】
組成物は、固体、粉末形態、又は液体形態であり得る。
【0235】
適用可能な範囲で、これらは、混合、噴霧、ロール処理、浸漬、紡糸、又はナイフ装置を使用して適用され得る。適用されたコーティングは、室温又は高温で乾燥させ得る。
【0236】
このような絶縁性組成物を有利に使用し得る産業としては、船舶、建築物及び建造物、並びに自動車、コンテナ、及び移動式住居用途をはじめとする、輸送用途が挙げられる。