(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】ポリ不飽和物の選択的水素化
(51)【国際特許分類】
C07C 5/05 20060101AFI20240509BHJP
B01J 23/72 20060101ALI20240509BHJP
C07C 9/02 20060101ALI20240509BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240509BHJP
【FI】
C07C5/05
B01J23/72 Z
C07C9/02
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020567208
(86)(22)【出願日】2019-06-03
(86)【国際出願番号】 EP2019064378
(87)【国際公開番号】W WO2019233961
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-06-03
(32)【優先日】2018-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397035070
【氏名又は名称】ビーピー ピー・エル・シー・
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】ベアタウス,ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】デ ヨング,クライン
(72)【発明者】
【氏名】デ ヨング,ペトラ
(72)【発明者】
【氏名】サンリー,ジョン,グレン
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-528684(JP,A)
【文献】特開昭48-76803(JP,A)
【文献】再公表特許第93/25510(JP,A1)
【文献】特表2004-529759(JP,A)
【文献】特開平9-278678(JP,A)
【文献】特公昭50-20044(JP,B2)
【文献】米国特許第3076858(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
B01J 21/00-38/74
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ不飽和炭化水素化合物の水素化方法であって、前記方法は1つまたはそれ以上のポリ不飽和炭化水素化合物を含む供給材料を水素の存在下で銅および炭素を含む触媒と接触させることからなり、触媒が炭素含有担体材料上に銅を含み、前記炭素含有担体材料がグラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーおよびナノプレートレットから選択される方法。
【請求項2】
炭素含有担体材料が
グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーおよびナノプレートレットから選択される炭素系担体材料である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒が、それらの金属形成または酸化物の形成のいずれかで、銀、金、カリウム、ナトリウム、亜鉛、マンガン、クロムまたはそれらの混合物から選択される1つまたはそれ以上の金属促進剤または改質剤をさらに含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
触媒が、担持触媒の総重量に基づいてl~15重量%の量の銅を含む請求項l~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
1つまたはそれ以上のポリ不飽和炭化水素化合物を含む供給材料が、少なくとも1つのジ-オレフィンを含む請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
1つまたはそれ以上のポリ不飽和炭化水素化合物を含む供給材料が、少なくとも1つのモノ-オレフィン、および少なくとも1つのジ-オレフィンを含む請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
1つまたはそれ以上のポリ不飽和炭化水素化合物を含む供給材料が、少なくとも1つのアルキンを含む請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
1つまたはそれ以上のポリ不飽和炭化水素化合物を含む供給材料が、ブタン、ブタジエン、および任意にブチンを含む請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
モノ-オレフィンに対する供給材料中のジ-オレフィンの割合が5%v/v未満である請求項6に記載の方法。
【請求項10】
モノ-オレフィンに対する供給材料中のジ-オレフィンの割合が1%v/v未満である請求項6に記載の方法。
【請求項11】
接触工程が、少なくとも50℃および300℃未満の温度で行われる請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
接触工程が、大気圧またはそれ以上の圧力で行われる請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
炭素含有担体上に銅触媒を製造するための方法であって、炭素含有担体は炭素含有担体材料であってグラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーおよびナノプレートレットから選択され、
(a)銅を含有する1つまたはそれ以上の化合物を炭素含有担体に含浸させること、および
(b)非還元性雰囲気下での銅を含む化合物を分解するために、(a)からの含浸担体を加熱することと、
(c)任意に、酸素含有流下などの非還元性雰囲気下で、(b)からの担体を処理することと、および
(d)100℃~500℃の温度で担体上の金属を還元すること、
とを含む方法。
【請求項14】
炭素含有担体上に銅を含む水素化触媒であって、炭素含有担体は炭素含有担体材料であってグラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーおよびナノプレートレットから選択され、担体上の銅粒子の表面平均粒子サイズが0.5~20nmの範囲である炭素含有担体上に銅を含む水素化触媒。
【請求項15】
担体上の銅粒子の表面平均粒子サイズがlnm~10nmの範囲である請求項14に記載の触媒。
【請求項16】
担体上の銅粒子の表面平均粒子サイズが2nm~8nmの範囲である請求項14に記載の触媒。
【請求項17】
1つまたはそれ以上のジ-オレフィンの水素化方法において、炭素含有担体は炭素含有担体材料であってグラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーおよびナノプレートレットから選択され、モノ-オレフィン水素化よりもジ-オレフィン水素化に対する選択性を高める炭素含有担体上の銅触媒の使用。
【請求項18】
1つまたはそれ以上のジ-オレフィンの水素化方法における触媒の安定性を改善する炭素含有担体上の銅触媒の使用であり、炭素含有担体は炭素含有担体材料であってグラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーおよびナノプレートレットから選択される使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅および炭素を含む触媒、ならびにポリ不飽和化合物、例えば、ジ-オレフィンおよびアルキンの選択的水素化のための方法におけるその使用、ならびに触媒の調製方法およびその使用に関する。特定の実施形態では、本発明は、炭素含有担体上に銅触媒を使用することによる、プロピレン、ブチレンおよび/またはエチレンなどの過剰のモノ-オレフィンの存在下で、場合によりブタジエンクなどのジ-オレフィンの選択的水素化に関する。
【0002】
混合物の成分の選択的水素化は、多数の化学プロセスのための精製供給原料の製造において望ましい。これが有用である可能性のある例は、炭化水素の熱分解または接触分解によって得られる生成物の分離、または炭化水素の混合物、例えばC4炭化水素からなる留分が製造される炭化水素コーキング作業である。さらに、分画は、ブチレン、ブタンおよび少量の1,3-ブタジエンからなる分画物をもたらし、後者は前者の有用な適用を妨害する。別の例において、望ましくないジ-オレフィン不純物は、ブタンの脱水素後に形成される1,3-ブタジエン不純物を含むブチレンリッチ流などのアルカンの脱水素によって生成されるモノ-オレフィン流中に見出され得る。
【0003】
多くの場合、特に重合反応の場合、後続の処理の目的のために、モノ-オレフィン流の純度を維持するか、または増加させることが望ましい。例えば、「ブチル」ゴムの合成において一般に使用される1-ブチレン流が1%以上のジ-オルクフィンを有することは望ましくない。同様に、他のモノ-オレフィン供給流は、ジ-オレフィンによる汚染によって負の影響を受ける。
【0004】
下流処理の利益のために、モノ-オレフィン流の精製において多数の努力がなされてきた。例えば、モノ-オレフィン流からのアルキンおよびジ-オレフィン不純物の除去において、特定の担持パラジウムおよび銅触媒が使用されてきた。パラジウム触媒は、優れた活性を有することが見出されているが、銅代替物および迅速な不活性化と比較して、ジ-オレフィンおよびモノ-オレフィンよりもアルキンに対する選択性が低く、理論に束縛されず、このような不活性化は、触媒上の炭素質副生成物の堆積によって引き起こされると考えられる。選択性および安定性を改善するために、銀または金が改質剤としてパラジウム触媒に添加されている。例えば、特許文献1は、エチレン中のアセチレンを除去するために使用されるPdAg/Al2O3触媒を開示しており、長い処理時間にわたってエチレンがわずかに失われるだけである。しかし、ドーパント金属の添加も触媒活性に負の影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
特にシリカ、アルミナまたはチタニア担体を含む特定の銅系触媒は、ジ-オレフィンおよびモノ-オレフィンを含有する供給物中のアルキンの選択的水素化のための高度に選択的な触媒として同定されている。銅表面上のエチレン官能基よりもアセチレンの強い吸着は、選択的部分水素化に重要であると提案されている。しかしながら、銅触媒は、パラジウム代替物と比較して、歴史的に低い活性を示してきた。
【0006】
選択的水素化反応における銅触媒の活性を改善するために、促進剤として作用するさらなる金属が触媒に含まれている。例えば、特許文献2は、特別なグレードのガンマアルミナ上に担持され、銀、白金、パラジウム、マンガン、コバルト、ニッケル、クロムおよびモリブデンから選択される少なくとも1つの金属によって活性化された銅触媒を使用して、ジ-オレフィン性不飽和を失うことなく、炭化水素流からアセチレンを除去することを開示している。これらの触媒は、以前に可能であったよりも少ないジ-オレフィン損失で、より低いアセチレンレベルに達することが見出された。
【0007】
モノ-オレフィンの存在下でのジ-オレフィン除去の例としては、1-ブチレンの存在下での1,3-ブタジエンの選択的水素化における、特許文献3に開示されているような、CuNiCr/SiO2およびCuNiMg/軽石触媒の使用が挙げられ、それぞれ150日および200日の運転後でさえ、触媒の活性および選択性の変化はほとんどない。
【0008】
特許文献4は、低温でブチレンおよびブタンの存在下でブタジエンを選択的に還元することが分かったCuCr2O2/Al2O3触媒を開示している。約40時間の連続運転後、触媒の活性は著しく低下することが分かった。それにもかかわらず、触媒を水素で定期的にパージすることによって、数カ月以上の長い運転期間にわたって活性および選択性を維持することができた。
【0009】
促進銅水素化触媒には、その特性を改善するために、さらなる添加剤が使用されている。例えば、水素化反応に使用される銅触媒は、触媒表面へのポリマー堆積のために短いサイクル時間を示すことが見出された。これは、高いアルキン濃度を有する供給材料において、または触媒がパージせずに連続的に使用される場合に、とりわけ一般的であり得る。特許文献5は、1,3-ブタジエンを含み得る、オレフィン流中のアセチレン化合物の選択的水素化を開示し、これは、アルミナ上に担持されたパラジウム、ルテニウムまたはニッケルなどの第VIII族金属によって促進される銅触媒を使用する。触媒を銀および/または金で改質することにより、ポリマー形成が減少し、所望のオレフィンの収率が改善され、浸出によって引き起こされる銅および促進剤金属の損失が防止されることが見出された。酸化亜鉛の添加はまた、触媒活性、オレフィンの収率、触媒サイクル時間を改善し、浸出による銅およびパラジウムの損失を減少させることが示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第6,054,409号明細書
【文献】米国特許第4,440,956号明細書
【文献】米国特許第3,481,999号明細書
【文献】米国特許第2,964,579号明細書
【文献】米国特許出願公開第2003/0036669号明細書
【非特許文献】
【0011】
【文献】Brunauer,S,Emmett,PH,& Teller,E,J. Amer. Chem.Soc.60,309(1938)
【文献】Barrett,E P,Joyner,LG & Halenda P P J. Am Chem. Soc.,1951 73 373-380
【文献】P.Munnik et al.,Chemical Reviews 2015,115,6687-6718
【文献】M.Bender,ChemBioEng Reviews 2014,1,136-147
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
経時的に高性能であることは、工業触媒の実施において重要な側面である。これまでの様々な銅触媒による選択的水素化反応の例では、活性/不活性化の問題を被っていたが、これを解決するためには、例えば、負荷のかかるパージ工程や改質剤/促進剤の使用が必要である。ジ-オレフィンやアルキンなどの多価不飽和炭化水素化合物を水素化することができる触媒、特に、存在してもよいモノ-オレフィンの水素化に対して高い選択性を有し、かつ長期間の運転にわたって安定性のある触媒に関する技術的な必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、ポリ不飽和炭化水素化合物の水素化、例えば、モノ-オレフィン水素化上でのジ-オレフィン水素化、のための長い運転時間にわたる高い触媒安定性および高い選択性が、炭素含有担体上の銅などの銅および炭素を含む触媒を使用して達成され得るという驚くべき発見に基づく。さらに、このような銅および炭素含有触媒は、モノ-オレフィンよりも1,3-ブタジエンなどのジ-オレフィンの水素化に対して非常に優れた選択性を示し、その選択性は、可動時間の増加に伴って驚くほど増加することがわかった。さらに、触媒はまた、促進剤金属の存在を必要とせずに効果的に使用でき、追加のパージ工程を必要とせずに、従来の銅水素化触媒と比較して優れた安定性および寿命を示す。
【0014】
したがって、第1の態様において、本発明は、ポリ不飽和炭化水素化合物、特にジ-オレフィンおよびアルキン、より詳細にはジ-オレフィンの水素化のための方法を提供し、前記方法は、1つまたはそれ以上のポリ不飽和炭化水素化合物を含む供給材料を、水素の存在下で銅および炭素を含む触媒と接触させることを含み、好ましくは、触媒は、炭素含有担体上の銅触媒である。
【0015】
別の態様では、本発明は、炭素含有担体上に銅触媒を製造するための方法を提供し、該方法は、
(a)銅を含有する1つまたはそれ以上の化合物を炭素含有担体に含浸させる工程と、および
(b)含浸担体を(a)から非還元性雰囲気下で加熱して、銅を含有する化合物を分解する工程と、
(c)場合により、(b)からの担体を、酸素含有流下などの非還元性雰囲気下で処理する工程とおよび
(d)100℃から500℃の温度で担体上の金属を還元する工程と、を含む。
【0016】
さらに別の態様では、本発明は、炭素含有担体上での銅触媒の使用を提供して、1つまたはそれ以上のジ-オレフィンの水素化方法におけるモノ-オレフィン水素化よりもジ-オレフィン水素化に対する選択性を高める。
【0017】
さらに別の態様では、本発明は、ポリ不飽和炭化水素化合物の水素化方法を提供し、前記方法は、1つまたはそれ以上のポリ不飽和炭化水素化合物を含む供給材料を、水素の存在下で銅および炭素を含む触媒と接触させることを含む。好ましい実施形態において、ポリ不飽和炭化水素化合物は、ジ-オレフィン、アルキン、およびそれらの混合物から選択され、特に好ましい実施形態において、本発明は、ジ-オレフィンの水素化方法を提供する。
【0018】
本発明において、「ポリ不飽和炭化水素化合物」等とは、少なくとも1つのアルキン結合、2つまたはそれ以上のオレフィン結合、または少なくとも1つのアルキン結合と少なくとも1つのオレフィン結合との組み合わせを含む炭化水素化合物を意味し、本発明において、「ジ-オレフィン」、「ジ-オレフィン系炭化水素化合物」等とは、2つのオレフィン結合を含む炭化水素化合物を意味し、「アルキン」、「アルキン系炭化水素化合物」等とは、少なくとも1つのアルキン結合を含む炭化水素化合物を意味し、本発明において、「モノ-オレフィン」、「モノ-オレフィン系炭化水素化合物」等とは、1つのオレフィン結合を含む炭化水素化合物を意味する。本発明の目的のために、芳香族環の存在は、炭化水素化合物の不飽和に寄与するとは考えられないが、芳香族環に結合した任意の基上に存在する不飽和は、炭化水素化合物の不飽和に寄与する、例えば、スチレンはモノ-オレフィンと考えられ、フェニルアセチレンはアルキンと考えられる。
【0019】
本発明において、1つまたはそれ以上のポリ不飽和炭化水素化合物を含む供給材料がジ-オレフィンを含む場合、ジ-オレフィンは共役または非共役であってもよく、共役ジ-オレフィンの存在は、一般に、ポリ不飽和化合物中に存在する炭素鎖の長さに依存して変化する。特定の実施形態では、ジ-オレフィンは、1,3-ジ-オレフィンを含むか、またはそれからなる。
【0020】
好ましくは、供給材料は、少なくとも2つの不飽和炭化水素化合物を含み、ここで、不飽和炭化水素化合物の少なくとも1つは、ポリ不飽和炭化水素化合物である。例えば、供給材料は、少なくとも2つの不飽和炭化水素化合物を含むことができ、ここで、少なくとも1つはポリ不飽和炭化水素化合物であり、そして少なくとも1つはモノ-オレフィン化合物である。あるいは、供給材料は、少なくとも2つの異なるポリ不飽和炭化水素化合物、例えば、少なくとも1つのジ-オレフィン炭化水素化合物および少なくとも1つのアルキン炭化水素化合物を含むことができる。
【0021】
触媒または方法の範囲を限定することなく、いくつかの実施形態では、供給材料は、少なくとも1つのモノ-オレフィン、および少なくとも1つのジ-オレフィンを含む、1つまたはそれ以上のポリ不飽和炭化水素化合物を含む。他の実施形態において、供給材料は、少なくとも1つのモノ-オレフィン、および少なくとも1つのアルキンを含む、1つまたはそれ以上のポリ不飽和炭化水素化合物を含む。他の実施形態において、供給材料は、少なくとも1つのジ-オレフィンおよび少なくとも1つのアルキンを含む、1つまたはそれ以上のポリ不飽和炭化水素化合物を含む。
【0022】
1つまたはそれ以上のポリ不飽和炭化水素化合物を含む供給材料は、典型的には、2~16個の炭素原子を有する炭化水素化合物を主として含む。いくつかのまたはすべての実施形態において、1つまたはそれ以上のポリ不飽和炭化水素化合物を含む供給材料は、本質的に、2~16個の炭素原子を有する。いくつかのまたはすべての実施形態において、1つまたはそれ以上のポリ不飽和炭化水素化合物を含む供給材料は、本質的に、2~10個の炭素原子を有する。いくつかのまたはすべての実施形態において、1つまたはそれ以上のポリ不飽和炭化水素化合物を含む供給材料は、本質的に、2~8個の炭素原子を有する。いくつかのまたはすべての実施形態において、1つまたはそれ以上のポリ不飽和炭化水素化合物を含む供給材料は、本質的に、2~6個の炭素原子を有する。いくつかのまたはすべての実施形態において、1つまたはそれ以上のポリ不飽和炭化水素化合物を含む供給材料は、本質的に、2~4個の炭素原子を有する。
【0023】
本発明の利点は、モノ-オレフィン化合物よりもポリ不飽和炭化水素化合物の水素化に対する比較的高いレベルの選択性を達成する能力である。したがって、本発明のこの方法は、モノ-オレフィン流中のジ-オレフィンの含有量を減少させるため、またはモノ-オレフィン流中のアルキンの含有量を減少させるため、またはモノ-オレフィン流中のジ-オレフィンおよびアルキンの含有量を減少させるための方法の一部として展開されてもよい。理論に束縛されることを望まないが、アルキン化合物を含む化合物は、ジ-オレフィンのモノ-オレフィンへの水素化よりも、モノ-オレフィンへの水素化の影響を受けやすく、ジ-オレフィンは、モノ-オレフィンのアルカンへの水素化よりもモノ-オレフィンへの水素化の影響を受けやすく、したがって、本発明の方法は、モノ-オレフィン流中のアルキンの含有量を低減するための方法の一部として、またはモノ-オレフィン流中のアルキンおよびジ-オレフィンの含有量を低減するための方法の一部として、またはジ-オレフィン流中のアルキンの含有量を低減するための方法の一部として展開されてもよい。
【0024】
本発明の方法に対する供給組成物の非限定的な例としては、ブタジエンおよび/またはブチンを含むブテン組成物、プロピンを含むプロピレン組成物、アセチレンを含むエチレン組成物、フェニルアセチレンを含むスチレン組成物、およびブチンを含むブタジエン組成物が挙げられる。特定の実施形態では、供給材料は、1-ブテン、1,3-ブタジエン、および1-ブチンを含む。
【0025】
モノ-オレフィンが、ポリ不飽和炭化水素化合物を含む供給材料中に存在する場合、モノ-オレフィンに対する供給材料中のポリ不飽和炭化水素化合物の割合は、特に限定されない。しかしながら、本発明の特定の利点は、モノ-オレフィン流の汚染物質としてのジ-オレフィンのレベルを低減することであり、したがって、一部またはすべての実施形態において、モノ-オレフィンに対する供給材料中のジ-オレフィンの割合は、25%v/v未満、典型的には10%v/v未満、好ましくは5%v/v未満、例えば1%v/v未満であり、典型的には0.001%v/v超、例えば0.01%v/v超、またはさらには0.1%v/v超である。
【0026】
いくつかのまたはすべての実施形態において、本発明の方法は、1つまたはそれ以上のジ-オレフィンを水素の存在下で、銅および炭素を含む触媒と接触させることを含み、ここで、1つまたはそれ以上のジ-オレフィンはまた、1つまたはそれ以上のモノ-オレフィンを含む供給材料中に含有される。
【0027】
本発明の選択的水素化用触媒は、銅と炭素とを含む。
【0028】
好ましくは、触媒は、炭素含有担体材料上に銅を含む。本発明のいくつかのまたはすべての実施形態において、触媒は、炭素系担体上に銅を含む。銅触媒中の炭素の含有させること、特に触媒に炭素含有担体を使用することは、ジ-オレフィンなどのポリ不飽和物の水素化に対するその選択性に関して、銅触媒上に特に望ましい特性を与えることが見出された本発明に従って使用されるこのような担持触媒では、顕著な長期安定性も観察されており、特定の理論に束縛されることなく、担持触媒の長期安定性は、コーキングに対する高い抵抗性の結果であると考えられる。さらに、触媒構造は、炭素含有担体上に担持されたこのような銅触媒を使用する典型的な反応条件下で比較的安定であることが見出された。
【0029】
いくつかのまたはすべての実施形態において、触媒は、炭素系担体上に銅を含む触媒であり、前記触媒は、1つまたはそれ以上の改質剤、促進剤、分散助剤または結合剤をさらに含み得る。
【0030】
いくつかのまたはすべての実施形態において、触媒は、1つまたはそれ以上の他の金属促進剤または改質剤と組み合わせた銅を含む。いくつかのまたはすべての実施形態において、触媒は、それらの金属形態または酸化物の形態のいずれかで、銀、金、亜鉛、マンガン、クロムまたはそれらの混合物などの1つまたはそれ以上の遷移金属をさらに含み得る。一部または全部の実施形態において、触媒は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの混合物を含むことができ、非限定的な例には、カリウムまたはナトリウムが含まれる。いくつかのまたはすべての実施形態において、触媒は、それらの金属形成または酸化物の形成のいずれかで、銀、金、マンガン、クロム、カリウムおよびナトリウム、またはそれらの混合物から選択される1つまたはそれ以上の他の金属促進剤または改質剤を含み得る。
【0031】
いくつかのまたはすべての実施形態において、触媒の総金属含有量は、銅および存在し得る任意の5つの金属促進剤および/または改質剤を含めて、触媒の総重量に基づいて、0.05~50重量%、例えば、元素基準で0.1~40重量%、例えば、0.5~30重量%である。
【0032】
いくつかのまたはすべての実施形態において、触媒は、炭素含有担体に担持され、触媒の総重量に基づいて、元素基準で、0.05~50重量%、好ましくは0.05~30重量%、例えば0.5~20重量%、例えば1~15重量%の範囲の量の銅を含む。
【0033】
改質剤および促進剤が存在する実施形態では、これらは、触媒の総重量に基づいて、元素基準で、0.05~25重量%、例えば0.1~15重量%、例えば0.5~10重量%の量で存在してもよい。
【0034】
担持触媒は、当技術分野で公知の任意の適切な方法によって調製することができる。例えば、このような触媒は、含浸、沈殿またはゲル化によって、好ましくは含浸によって調製することができる。適切な含浸方法は、例えば、炭素含有担持材料に、酸化物形態に熱分解可能な銅の化合物を含浸させることを含む。当技術分野で周知の初期湿潤技術または過剰溶液技術を含む任意の適切な含浸技術を使用することができる。初期湿潤技術はいわゆるものであるが、それは、過剰な液体を伴わずに、担体の全表面をちょうど湿潤させるのに必要な最小体積の溶液を提供するように、含浸溶液の体積を予め決定することを必要とするからである。名前が示すような過剰溶液技術は、過剰の含浸溶液を必要とし、溶媒は、その後、通常、蒸発によって除去される。
【0035】
含浸溶液のための溶媒は、使用される銅化合物の溶解度に応じて、水溶液、有機溶液、または水性および有機溶媒の混合物であってもよく、適切な有機溶媒の例としては、例えば、アルコール、ケトン、液体パラフィン系炭化水素およびエーテルが挙げられ、適切な水性-有機溶媒としては、アルコール水溶液が挙げられ得る。使用される銅化合物は、典型的には、熱分解性銅化合物である。担持材料上に金属銅もしくは銅酸化物、またはそれらの混合物を形成するように熱分解可能である種々の銅化合物および銅塩は、当技術分野で周知である。使用できる熱分解性銅塩の非限定的な例には、銅の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、および酢酸塩または銅の有機錯体が含まれる。
【0036】
酸添加剤はまた、硝酸などの含浸溶液に含まれてもよい。したがって、含浸溶液は、酸性pH、好ましくは、2pH未満、例えば、約1pHのpHを有してもよい。
【0037】
本発明のいくつかのまたはすべての実施形態において、触媒は、炭素含有担体に担持された銅触媒、すなわち、炭素、例えば、窒化炭素を含む担体材料である。好ましくは、炭素含有担体材料は、炭素系担体、すなわち、炭素を主要元素として含む担体材料である。適切な炭素系担体の例としては、グラファイト、グラフェン、カーボンエアロゲル、カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーおよびカーボンナノプレートレット、ポリマー材料、カーボンブラック、乱層構造炭素、および活性炭が挙げられるが、これらに限定されない。他の適切な炭素含有担体および炭素ベースの担体は、当技術分野で周知である。好ましくは、炭素含有担体は、高い比表面積および有意な細孔容積を有する。
【0038】
炭素含有担体は、粉末、顆粒または成形粒子の形成であってもよい。用語「成形された粒子」は、成形された担体(例えば、押出しによって)を意味することが意図され、そのような成形された粒子が有することができる適切な形状の例は、円筒、球、ジローブ、トリローブ、クアドローブ、中空円筒、ベルサドル、パルリング等を含むことができる。成形粒子の形成は、当技術分野で周知である。炭素含有担体が成形粒子の形成である場合、炭素含有担体の含浸は、成形粒子上で行われてもよく、または粉末上で行われてもよく、その後、含浸後に成形粒子に成形されてもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、炭素ベース担体は、典型的には少なくとも100m2g-1、好ましくは少なくとも200m2g-1、より好ましくは少なくとも300m2g-1、例えば少なくとも400m2g-1のBET表面積を有する。
【0040】
担体の細孔容積は、典型的には0.1mLg-1を超え、より典型的には 0.2mLg-1以上、0.8mLg-1以上のように、好ましくは0.5mLg-1以上の担持材料の細孔半径(含浸前)は、1~000nm、好ましくは1~500nm、より好ましくは1.5~100nm、例えば2.0~50nmである。
【0041】
炭素含有担体の表面積、細孔容積、細孔径分布および平均細孔半径は、窒素またはアルゴン、水銀ポロシメータ、または当該分野において公知の他の方法を使用する物理吸着から決定され得る。使用することができる手順は、英国標準法BS4359:パート 1:1984「ガス吸着(BET)法に関する勧告」、およびBS7591:パート 2:1992「材料の気孔率と気孔サイズ分布」-ガス吸着による評価方法である。得られたデータを、BET方法(圧力範囲0.05~0.20P/P0にわたって)およびBarrett,Joyner & Halenda(BJH)方法(孔径2~100nmについて)をそれぞれ使用して減少させて、表面積および孔径分布を得てもよい。上記のデータ低減方法のための適切な参考文献は、非特許文献1および非特許文献2である。
【0042】
理論に束縛されるものではないが、炭素含有担体中の酸素、窒素または水素、および/またはホウ素含有基などの欠陥またはヘテロ原子の存在は、担体の表面上の小さな銅粒子の合成および/または安定性を改善し得ると考えられる。ヘテロ原子および/または欠陥は、炭素含有担体に天然であり得、この場合、更なる処理は必要または所望されない。
【0043】
しかしながら、ヘテロ原子および/または欠陥は、適切な、固体、液体または気相酸化剤での処理によって、炭素含有担体に導入され得るか、または数/密度が増加し得る。酸化剤は、本願明細書において公知であり、非限定的な例としては、空気、オゾン、H2O2、KMnO4、H2SO4、HNO3、および酸の混合物が挙げられる。理論に束縛されるものではないが、炭素含有担体のこのような処理は、炭素含有担体中の酸素含有表面基および/または欠陥の密度を増加させ、含浸中の銅前駆体と炭素含有担体との相互作用を増強し、担体上への銅分散を容易にすると考えられる。その結果、含浸前に固体、液体または気相酸化剤で炭素担体を処理すると、含浸時に高い銅分散がもたらされる可能性がある。
【0044】
任意の実施形態では、炭素含有担体は、銅を担体に含浸させる前に、酸溶液、例えば硝酸で処理される。いくつかまたはすべての任意の実施形態において、炭素含有担体は、室温250℃の温度、好ましくは高温、典型的には50℃~150℃の範囲、好ましくは70℃~120℃の範囲、および典型的には1分~24時間、例えば10分~5時間、例えば10~120分間の範囲で、酸素基および欠陥を炭素に導入するのに十分な時間、酸化された炭素含有担体を得るために処理される。
【0045】
含浸溶液の使用時に担体に添加する含浸溶液の量は特に制限されず、したがって、初期の湿潤性または過剰な溶液含浸を達成するのに十分な量であってもよい。含浸溶液は、所望の装填を達成するのに適切な金属濃度を有する。例えば、所望の銅重量担持量が得られるように、銅濃度を選択して調整する。好ましくは、非特許文献3に記載されているように、最終金属重量担持が添加された金属の公称量に直接対応するので、触媒の組成を正確に制御することを可能にするので、初期湿潤含浸が使用されることが好ましい。特に好ましい実施形態では、含浸は、酸化された炭素含有担体上に硝酸銅溶液を使用する初期湿潤含浸によって実行される。
【0046】
含浸された担体は、加熱および/または試料を真空下に置くことを含む任意の従来の技術を使用して、好ましくは加熱によって乾燥させることができる。商業的規模では、乾燥は、窒素または空気などの熱い不活性ガスのパージによって達成され得る。
【0047】
次いで、銅含有化合物を熱分解するために、含浸担体を非還元性雰囲気下で加熱する。担体の物理的特性に負の影響を与えることなく、銅含有化合物の熱分解を達成する任意の適切な温度を使用することができる。担体の物理的特性に悪影響を与えることなく銅含有化合物の熱分解を達成する任意の適切な温度を使用することができる。いくつかのまたはすべての実施形態において、含浸担体は、例えば、100℃~700℃の範囲の温度、例えば100℃~400℃の範囲、または150℃~300℃の範囲、例えば200℃~250℃の範囲で加熱される。試料は、銅化合物またはそれらの混合物を金属銅または酸化銅に分解するのに十分な時間で加熱することができ、必要とされる実際の時間量は、使用される銅化合物、担体および適用される温度に依存して変化するが、30~90分など、10分~5時間であってもよい。試料は、不活性ガス、例えば、窒素、ヘリウムまたはアルゴン、好ましくは窒素の流れの下で加熱することができる。
【0048】
次いで、含浸された担体は、任意に、酸素含有雰囲気下などの非還元下で、周囲温度と同等以上の温度、好ましくは高温で処理されてもよく、理論によって束縛されることを望まないが、この任意の処理は、担体上の適切な粒径および高分散銅粒子を達成するのを助け、および/または担体上に堆積された銅を不活性化すると考えられる。非還元性雰囲気は、好ましくは酸素含有雰囲気であり、このような酸素含有雰囲気は、不活性希釈ガス、例えば窒素を含むことができ、酸素含有雰囲気は、15~25%v/v酸素を適切に含むことができ、残りは好ましくは不活性希釈ガスで構成される。特定の実施形態では、酸素含有雰囲気は空気である。
【0049】
非還元性雰囲気下での処理は、非還元ガス流下、例えば酸素例流下、30℃~800℃などの高温、好ましくは50℃~450℃の範囲で含浸担体を処理することによって都合よく達成することができる。
【0050】
続いて、担体上の銅を還元して、使用前に活性触媒を得る。銅触媒の還元は、当技術分野で公知の銅触媒を還元する任意の適切な方法によって、反応器中で都合よく行うことができる。銅触媒を還元する1つのこのような適切な方法は、高温で水素含有ガス下で触媒を還元することである。
【0051】
いくつかのまたはすべての実施形態において、触媒は、100℃~450℃の範囲の温度で水素含有ガス流下で還元され、還元温度は、250℃~450℃、350℃~450℃、または375℃~425℃、例えば約400℃であってもよく、または200℃未満などのより低い温度が使用されてもよい。
【0052】
水素含有ガスが還元のために使用される実施形態において、これは、純粋な水素、または水素と不活性希釈ガスとの混合物、例えば、2~50vol%、例えば、2~20vol%、または2~10vol%、またはさらに4~6vol%の水素などの1~80vol%の範囲の濃度の水素であり得る。
【0053】
別の態様では、本発明は、炭素含有担体上に銅触媒の製造方法を提供する、該方法は次の工程、
(a)銅を含有する1つまたはそれ以上の化合物と炭素含有担体を含浸すること、および
(b)非還元性雰囲気下で(a)からの含浸担体を加熱して、銅を含む化合物を分解することと、
(c)非還元性雰囲気下で、任意に、(b)からの担体を、酸素含有流下で処理すること、
(d)100℃から500℃の温度で担体上の金属を還元することと、を含む方法である。
【0054】
ジ-オレフィンの水素化のための実施形態において、触媒は、好ましくは、工程(a)~(d)を含む上記の製造方法から得ることができる。
【0055】
理論に束縛されることを望まないが、含浸および還元に続いて、Cu0粒子は、1つまたはそれ以上の微結晶(単結晶相を有する単結晶粒子に対応する)から作製され得る炭素含有担体上に形成されると考えられる。銅微結晶のサイズおよび分布は、好適には、X線回折(XRD)によって決定され得るが、Cu(酸化物)粒子の表面平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)、高角度環状暗視野走査透過型電子顕微鏡(HAADF-STEM)X線光電子分光法、水素または亜酸化窒素を使用する化学吸着、または当技術分野で公知の他の方法によって好適に決定され得る。
【0056】
担持触媒を調製するための上記の好ましい方法を使用して、25nm未満、または10nm未満でさえあるように粒子を制御することが可能であることが見出された。したがって、いくつかのまたはすべての実施形態において、担体上の銅粒子の表面平均粒径は、25nm未満、好ましくは20nm未満であり、好適には、l0nm未満であり得る。いくつかの実施形態において、担体上の銅粒子の表面平均粒子サイズは、1nm未満であり得る。理論に束縛されることは望まないが、10nm以下のサイズを有する粒子については、触媒選択性は、およそ0.5nmのサイズまでの粒径の効果ではないと考えられる。また、触媒担体として炭素を用いることにより、触媒非活性化を実質的に軽減することができる。したがって、いくつかのまたはすべての実施形態において、担体上の銅粒子の表面平均粒径は、0.5~20nmの範囲、好ましくは1~10nmの範囲、より好ましくは2nm~8nmの範囲、例えば3nm~6nmである。
【0057】
本発明に従って使用される担持銅触媒は、選択的ジ-オレフィン水素化触媒として特に有利であることが見出された。したがって、さらなる態様において、本発明はまた、炭素含有担体上に担持された銅を含む水素化触媒を提供し、ここで、担体上の銅の表面平均粒径は10nm未満である。
【0058】
触媒を非還元性雰囲気、好ましくは酸素含有流と接触させる工程を組み込むことによって、および/または還元工程の温度を変化させることによって、炭素含有担体上の10nm未満でのCu0微結晶および粒子サイズの制御が達成され得ることが見出された。
【0059】
上記のように製造された水素化触媒は、本発明の方法に従って、ジ-オレフィンの水素化を触媒するために使用され得る。本発明の方法の一部として、1つまたはそれ以上のジ-オレフィンを含む供給材料を、水素の存在下で、および任意に1つまたはそれ以上のモノ-オレフィンの存在下でも、担持触媒と接触させる。
【0060】
一部またはすべての実施形態において、水素は、気相で水素化反応に供給されてもよい。いくつかの実施形態では、水素ガスは、単独で、または任意で1つまたはそれ以上の不活性希釈ガスと組み合わせて、反応に供給される。不活性ガスは、ヘリウム、アルゴンまたは窒素、好ましくは窒素であってよい。一部またはすべての実施形態において、水素は、適切な液体溶媒中に、またはポリ不飽和炭化水素化合物を液相で含む供給材料中に溶解および/または同調されてもよく、適切な溶媒の例としては、ポリ不飽和炭化水素化合物と混和可能な炭化水素溶媒が挙げられる。
【0061】
存在するジ-オレフィン、水素および任意の任意のモノ-オレフィンは、単一の供給流中で別々に、または好ましくは組み合わせて反応器に供給することができる。したがって、いくつかの好ましい実施形態では、水素、ジ-オレフィン、任意にモノ-オレフィン、および残りの不活性希釈剤を含む混合供給流が使用される。好ましい実施形態において、好ましくは、モノ-オレフィンは、ジ-オレフィンと比較してモル過剰で存在する。好ましい実施形態において、モノ-オレフィンに対する供給物中のジ-オレフィンの比率は、5%v/v未満、例えば、1%v/v未満である。
【0062】
触媒を供給ガスと接触させる前に、触媒を非触媒材料で希釈することができる。この非触媒材料は、当技術分野で公知の任意の適切な材料、例えば、SiCであり得る。触媒および不活性物質は、ジ-オレフィンの水素化に対して触媒活性を保持する任意の比率、例えば、5:l~l:l0、好ましくはl:l~l:3の担持触媒材料対非触媒材料の体積比率で混合することができる。
【0063】
触媒を供給材料と接触させる前に、触媒を活性化するために、予め還元し、空気に曝すことによって不活性化しておけば、触媒を還元するか、または再還元することができる。これは、上記の触媒の還元について開示されたのと同じ条件下で行うことができる。実施形態では、還元は、水素含有ガス中で150~250℃で1~2時間行われる。あるいは、触媒は、反応器への供給流中の水素の存在の結果として、in-situで還元的に活性化され得る。
【0064】
担持触媒と反応供給物との接触は、反応選択性に負の影響を与えることなく、または反応物/生成物分解または有意な量の望ましくない副生成物形成の危険性をもたらすことなく、所望のレベルの活性を与える任意の適切な温度で実施され得る。担持触媒と反応供給材料との接触は、気相、液相、または混合気相および液相で行うことができ、担持触媒を液相で反応供給材料と接触させる場合、適切な溶媒、例えば適切な炭化水素溶媒を発明させることができる。適切には、少なくとも約50℃および約300℃未満の温度を使用することができる。好ましくは、接触工程は、少なくとも約80℃、より好ましくは少なくとも約100℃、さらにより好ましくは少なくとも約110℃で行われる。他の好ましい実施形態では、接触工程は、約225℃未満、好ましくは約200℃未満の温度で実施される。触媒は、任意の適切な圧力で反応供給物と接触させることができる。実施形態において、接触工程は、約大気圧または大気圧より高い圧力で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、50kPa絶対圧~30,000kPa絶対圧、100kPa絶対圧~10,000kPa絶対圧、または250kPa絶対圧~5000kPa絶対圧の圧力で実施される。
【0065】
接触工程中に使用される温度および圧力は、1つまたはそれ以上の傾斜段階において、所望の温度および圧力までの期間にわたって導入され得る。しかし、これは、反応物の変換または選択性に材料的利点を有することは見出されておらず、したがって、典型的な反応条件下では、触媒構造の有意な変化は誘発されないことを示唆する。炭素担体を使用することにより、経時的に優れた安定性を提供する安定で不活性触媒を製造できることが見出された。
【0066】
本発明の触媒は、同じ反応条件下で従来のチタニア上の銅触媒と比較した場合、優れたジ-オレフィン選択性を示す。特に、ブチレン中の1,3-ブタジエンに対する優れた反応物選択性が1つの特定の例として見出され、1,3-ブタジエンがブチレンおよび他のモノ-オレフィンよりも銅表面上により強く吸着され、それによってモノ-オレフィン水素化を回避することを示す。
【0067】
炭素-炭素三重結合を含むアルキンは、例えば、非特許文献4において議論されているように、一般に、ジ-オレフィンよりも水素化に対してより反応性がある。1つまたはそれ以上のジ-オレフィンが水素化されるか、または過剰の1つまたはそれ以上のモノ-オレフィンから選択的に除去される場合、典型的には、存在する任意のアルキンも水素化され、したがって除去される。したがって、本発明の方法は、モノ-オレフィン流からの、ジ-オレフィンに加えて、アルキンの除去にも有用である。
【0068】
したがって、別の態様では、本発明はまた、1つまたはそれ以上のジ-オレフィンの水素化のための方法において、モノ-オレフィン水素化よりもジ-オレフィン水素化に対する選択性を増加させるために、炭素含有担体上に銅を含む、本明細書に記載されるような触媒の使用を提供する。
【0069】
本発明の触媒の性能を、反応条件下で長時間にわたって試験した。注目すべきことに、コーキングに対するそれらの抵抗性に起因する、本明細書に記載の触媒について長期安定性が観察された。
【0070】
したがって、別の態様では、本発明はまた、1つまたはそれ以上のジ-オレフィンの水素化方法における触媒安定性を増加させるために、炭素含有担体上に銅を含む、本明細書に記載されるような触媒の使用を提供する。
【0071】
次に、以下の非限定的な実施例を参照して本発明を説明する。
【実施例】
【0072】
以下に記載する実施例では、以下の方法で分析を行った。
【0073】
N2物理吸着
N2物理吸着等温線を、Micromeritics,TriStar 3000 V6.08装置で-196℃で測定した。測定の前に、試料を動的真空下で14時間、150℃でガス放出した。特定の表面積は、マルチ-ポイントBrunauer-Emmet‐Teller(BET)解析(0.05<P/P0<0.25)を用いて計算した。総細穴体積は、0.99のP/P0での単一点細穴体積と、吸収枝に適用されたBarrett‐Joyner-Halenda(BJH)解析によって決定された細穴直径分布として計算した。
【0074】
TPR-TCD
熱伝導度検出器(TCD)を備えたMicromeritics Autochem II ASAP 2920を用いて、最終Cu/C触媒に関する温度プログラム還元(TPR)測定を行った。測定の前に、試料を、室温に冷却する前に、Ar流下で120℃で0.5時間乾燥した。次に、5%H2/Ar流下で(1mL min-1 mgcat
-1)で、温度を2℃ min-1で400℃に上た。この手順の間にH2消費量をTCDを使用して測定し、それぞれの試料のCuの量に正規化した。
【0075】
還元度は、還元率CuIIO+H2→Cu0+H20を仮定して、H2使用量から計算した。すべての触媒は200℃で完全に還元することができた。
【0076】
X線回折
Lynxeye検出器を備えたBruker D8粉末X線回折装置でin-situでX線回折を行った。使用した放射はCo-Kα12(λ=0.179026nm)で、30kV,45mA,V20可変スリットで動作させた。回折図は、合成における最終還元工程の直後に最初に採取した。グローブボックス内にX線回折標本ホルダーを装填し、続いて気密透明ドーム状キャップ(A100B33,Bruker AXS)で密閉し、Ar雰囲気下で回折図を収集した。回折図は、典型的には、5~95o20から室温で、0.1o刻みで収集され、30.9o20でのグラファイト炭素の(002)回折の強度に正規化された。バックグラウンド減算または平滑化は行われなかった。ピーク デコンボリューション ソフトウェア(Topas V5,Bruker AXS)を用いて銅結晶子サイズを計算し、シェイプファクタk=0.1のシェラー式をCuo(111)の(50.7o20)回折とCuo(200)の(59.3o20)(Patterson 1939)回折に適用した。
【0077】
TEMおよびHAADF-STEM
TEM画像はTecnai 20(FEI)顕微鏡で、HAADF-STEMはTalos F200X(FEI)顕微鏡で、いずれも200kVで動作した。電子線誘起粒子成長を避けるために、nm2s-1当たり~5電子の最大電子線量率でTEM画像を取得した。TEM試料は、触媒を微粉末に粉砕することによって調製し、これをホーリー炭素被覆銅TEMグリッド(Agar 300メッシュCu)上に直接堆積した。表面平均粒子径(PS)は、少なくとも250の個々のサイズを異なる範囲で測定することによってTEM分析によって求めた。PSは、PS=√((Σ1
nDi
2)/(Σ1
n))を用いて計算され、ここで、Diはith微粒子の直径である。
【0078】
ガスクロマトグラフィー(GC)
排ガス混合ガスの組成をオンラインガスクロマトグラフィーで分析した(GC)。フレームイオン化検出器(Perichrom PR 2100、セバコニトリル25%Chromosorb PAW 80/100 Meshで満たしたカラム)を用いて、15分毎にデータを取得した。GCピーク面積は、予め混合したキャリブレーションガスを用いて、ブタジエン、トランス-2-ブチレン、cis-2-ブチレン、1-ブチレン、n-ブタン、プロプレンおよびプロパンについてキャリブレーションした。気相濃度を測定ピーク範囲で計算した。モノ-オレフィンプロピレンの水素化を正確に定量するために、プロパンの形成に続いてGCを行った。ブタジエン反応ガスはcis-2-ブチレン微量不純物を約0.25%含んでいた。プロピレン反応ガスは約0.025%のプロパン不純物を含んでいた。これらの微量については、反応速度論に対する有意な影響は予想されない。これらの微量化合物の生成物分析については、反応測定下の測定値から初期濃度を差し引く。ブランク測定を行い、ブタジエン流およびGC分析におけるゆらぎを決定した。ここでは、±1.1%ブタジエンの標準偏差が見出された。GC検出限界は、流出ガス中の各分析物について約0.2ppmであり、ブタジエンからのブタン形成<0.01%に相当した。
【0079】
実施例1-酸化炭素担体
触媒は、未変性および改質高表面積グラファイトの両方を(HSAG)を担体として使用して調製した。炭素担体は、大部分がグラファイトシートからなり、2~50nmの範囲の孔径分布を有する。表面積約500m2g-1および0.7mLg-1全細孔容積を有するプリスチンHSAG(P-HSAG)は、Timcal Ltd.から入手した。P-HSAG担体を粉砕し、動的真空下、170℃で1.5時間乾燥して、吸収された水を除去し、最後に、さらに使用するまで、Ar充填グローブボックス中に貯蔵した。
【0080】
必要に応じて、最初のHSAG担体は、液相HNO3酸化によって前処理された。10gのHSAGを400mLのHNO3(sq)(68%)、1Lの丸底フラスコ中に懸濁した。フラスコに還流冷却器を備え、加熱マントルを用いて加熱した。最終温度は約25分後に80℃に達し、その後110分間保持した。続いて、この懸濁液を冷脱イオンH2Oで約2Lに希釈することによって反応を停止させた。酸化された炭素材料は、母液をデカントする前に、30分間沈降させた。炭素を、中性pHに達するまで脱イオンH2Oで洗浄して、残留HNO3を除去した。最終デカンテーションの後、炭素をビーカーに集め、120℃で一晩乾燥した。得られた酸化HSAG(Ox-HSAG)担体を破砕し、動的真空下で170℃で1.5時間乾燥させた、吸収された水分を除去し、更なる使用時までAr充填グローブボックスに保存する。BET表面積は426±2m2g-1で、総細穴体積は0.62mLg-1であった。
【0081】
実施例2-0.6nmのCu/C触媒
0.6nmのCuクラスタを有する炭素含有担体(ここからCu/Cと呼ぶ)上に担持された銅触媒を、2.7重量%のCu負荷で調製した。ここで、実施例1の乾燥Ox-HSAG担体の約2gを、わずかな真空下で、丸底フラスコ中で初期の湿潤に含浸させた。~1pHで0.1M HNO3中のCu(NO3)2の水溶液を用いた。シリンジによって前駆体溶液を添加した。Cu濃度は、所望のCu重量負荷を得るために調整した。含浸物を24時間撹拌して、Cu含有量を均質化した。次に、含浸物を、動的真空下で撹拌しながら、室温で一晩乾燥させた。乾燥した含浸物をプラグフロー反応器に移し、0.5℃min-1で230およびN2流下(100mL min-1g-1)で230℃で1時間保持し、硝酸塩前駆体を分解した。試料を冷却し、空気にゆっくり暴露して、明確で高分散性のCuII種を得た。0.6nmのCu0クラスタを、200℃で触媒反応器内で還元することによってin-situで調製した。触媒試験で使用される実際の触媒のX線回折およびHAADF-STEM分析を可能にするために、同一条件下で試料についてex-situ還元を行った。
【0082】
ex-situ還元処理後、アルゴン雰囲気下でのX線回折では銅微結晶は観察されなかった。不動態化後、X線回折ではCuOまたはCu2O微結晶は観察されなかった。粒径が0.6±0.3nmであを決定するために、HHAADF-STEMを用いた。銅粒子分散体の分析を含む種々の分析の結果を、以下の表1に提供する。
【0083】
実施例3-3nmのCu/C触媒
6.3重量%のCu装填量で、3nmの粒子サイズを有するCu/C触媒を調製した。ここでは、実施例1の乾燥Ox-HSAG担体約2gを、わずかに真空下、丸底フラスコ中で初期の湿潤に含浸させた。~1pHの0.1MHNO3中のCu(NO3)2の水溶液を使用した。シリンジによって前駆体溶液を添加した。Cu濃度は、所望のCu重量負荷を得るために調整した。含浸物を24時間撹拌して、金属含有量を均質化した。次に、含浸物を、動的真空下で撹拌しながら、室温で一晩乾燥させた。乾燥した含浸物をプラグフロー反応器に移し、0.5℃min-1で230℃に加熱し、N2流下(100mL min-1g)
-1)で230℃で1時間保持し、硝酸塩前駆体を分解した。試料を冷却し、室温で20vol%O2/N2で処理して、明確で高分散のCuII種を得た。そして、試料をN2で30分間洗浄した。洗浄後、試料を、5vol%H2/N2流下(~1.5mL min-1mgcat
-1)で150℃に加熱することによって還元した。ヒーターランプは、150で2時間保持した状態で2℃min-1であった。次に、同じ条件下で、2℃でmin-1で1時間保持しながら250℃まで昇温た。冷却後、還元した試料を密閉容器中でAr充填グローブボックス(Mbraun Labmaster dp;<lppm H2O;<lppm O2)に移した。
【0084】
2.0nmのCu0微結晶をX線回折で観察した。TEM分析は、炭素全体によく分散した2.7±0.6nmの銅ナノ粒子を示した。銅粒子分散体の分析を含む種々の分析の結果を、以下の表1に提供する。
【0085】
実施例4-6nmのCu/C触媒
6nm粒径のCu/C触媒を6.3重量%のCu負荷で調製した。ここでは、実施例1の乾燥Ox-HSAG担体約2gを、わずかに真空下、丸底フラスコ中で初期の湿潤に含浸させた。~1pHでの0.1MHNO3中のCu(NO3)2の水解を使用した。シリンジによって前駆体溶液を添加した。所望のCu重量負荷を得るためにCu濃度を調整した。含浸物を24時間撹拌して、金属含有量を均質化した。次に、含浸物を、動的真空下で撹拌しながら、室温で一晩乾燥させた。乾燥した含浸物をプラグフロー反応器に移し、0.5℃min-1で230℃に加熱し、N2流下(100mLming-1)で230℃に1時間保持し、硝酸塩前駆体を分解した。試料を冷却し、室温で20vol%O2/N2で処理して、明確で高分散のCuII種を得た。そして、試料をN2で30分間洗浄した。洗浄後、試料を5vol%H2/N2流量(~1.5mL min-1mgcat
-1)で150℃以下に加熱することによって還元した。加熱ランプは、150で2時間保持して、2℃min-1であった。次に、同一の雰囲気下で、2℃min-1で、l時間保持したまま400℃に昇温した。冷却後、還元した試料を密閉容器内で、Ar充填グローブボックス(Mbraun Labmaster dp;<lppm H2O;<lppmO2)に移した。
【0086】
6.0nmのCu0微結晶をX線回折で観察した。TEM分析は、炭素全体によく分散した6.3±2.0nmの銅ナノ粒子を示した。銅粒子分散の分析を含む種々の分析の結果を、以下の表1に提供する。
【0087】
実施例5-13nmのCu/C触媒
13nmの粒子サイズを有するCu/C触媒を12.l重量%のCu負荷で調製した。ここでは、実施例1の乾燥したP-HSAG担体約2gを、わずかに真空下で、丸底フラスコ中で初期の湿潤に含浸させた。~1pHで0.1M HNO3中のCu(NO3)2の水溶液を使用した。シリンジによって前駆体溶液を添加した。Cu濃度は、所望のCu重量負荷を得るために調整した。含浸物を24時間撹拌して、金属含有量を均質化した。次に、含浸物を、動的真空下で撹拌しながら、室温で一晩乾燥させた。乾燥含浸物をプラグフロー反応器に移し、2.0℃ min-1で230℃に加熱し、20%H2/N2流下(100mL min-1g-1)で、230℃で1時間保持した。試料を室温まで冷却し、N2(100mL min-1g-1)で洗浄した。次に、5%O2/N2流下(100mL min-1g-1)で、1℃ min-1で200℃で3時間加熱した。、室温まで冷却し、最終触媒を回収する前に、200℃で、気体流を15%O2/N2流下(100mL min-1g-1)で1時間を保持した。
【0088】
さらに、触媒試験に使用される実際の触媒のX線回折およびTEM分析を可能にするために、ex-situで還元を行った。ここで、13nmのCu/C触媒をプラグフロー反応器に装填し、20%H2/N2流下(200mL min-1/g-1)で、2.0℃min-1で200℃に加熱し、200℃で1時間保持した。冷却後、還元した試料を密閉容器内でAr充填グローブボックス(Mbraun Labmaster dp;<lppm H2O;<lppmO2)に移した。
【0089】
10.9nmのCu0微結晶をX線回折で観察した。TEM分析は12.9±4.8nmの銅ナノ粒子が炭素全体によく分散していたことを示した。銅粒子分散体の分析を含む種々の分析の結果を、以下の表1に提供する。
【0090】
実施例6-19nmのCu/C触媒
19nm粒径のCu/C触媒を6.3重量%のCu負荷で調製した。ここでは、実施例1の乾燥したOx-HSAG担体約2gを、わずかに真空下で、丸底フラスコ中で初期の湿潤に含浸させた。0.1MHO3の中のCu(NO3)2の水溶液を~lpHで使用した。シリンジによって前駆体溶液を添加した。Cu濃度は、所望のCu重量負荷を得るために調整した。含浸物を24時間撹拌して、金属含有量を均質化した。次に、含浸物を、動的真空下で撹拌しながら、室温で一晩乾燥させた。乾燥した含浸物をプラグフロー反応器に移し、0.5℃ min-1で230℃に加熱し、N2流下(100mL min-1g-1)で230℃で1時間保持し、硝酸プリカーサを分解した。試料を冷却し、室温で20vol%O2/N2で処理して、明確で高分散のCuII種を得た。次いで、試料をN2で30分間洗浄した。洗浄後、試料を、5vol%H2/N2流下(~1.5mL min-1mgcat
-1)で150℃に加熱することによって還元した。加熱ランプは、150℃で2時間保持した状態で2℃min-1であった。次に、同じ雰囲気下で2℃min-1で、1時間保持しながら400℃に昇温した。その後、気体流をN2(100mL min-1g-1)に変更し、2℃ min-1で500℃まで温度を上昇させ、500℃で1時間保持した。冷却した後、還元した試料を密閉容器内でAr充填グローブボックス(Mbraun Labmaster20dp;<lppm H2O;<lppm02)に移した。
【0091】
14.0nmのCu0微結晶をX線回折で観察した。TEM分析は19.4±6.9nmの銅ナノ粒子は、炭素全体によく分散していたことを示した。銅粒子分散体の分析を含む種々の分析の結果を、以下の表1に提供する。
【0092】
比較例A
Cu担持量1.7重量%のチタニア含有担体(ここではCu/TiO2と呼ぶ)上に担持した銅触媒を調製した。ここでは、約2gの市販のP25TiO2(例えば、Degussa)を、わずかな真空下で、丸底フラスコ中で初期湿潤に含浸させた。~1PHで0.1 M HNO3中のCu(NO3)2の水溶液を使用した。シリンジによって前駆体溶液を添加した。Cu濃度は、所望のCu重量負荷を得るために調整した。含浸物を24時間撹拌して、金属含有量を均質化した。次に、含浸物を、動的真空下で撹拌しながら、室温で一晩乾燥させた。乾燥した含浸物をプラグフロー反応器に移し、0.5℃ min-1で250℃に加熱し、N2流下(100mL min-1g-1)で、230℃で1時間保持し、硝酸塩前駆体を分解した。試料を冷却し、室温で20vol%O2/N2と処理して明確で分散性の高いCuII種を得た。次に、試料をN2で30分間洗浄した。洗浄後、5vol%H2N2流下(~1.5mL min-1mgcat
-1)で150℃に加熱することによって試料を還元した。加熱ランプは、150℃で2時間保持して、2℃min-1であった。次に、同じ雰囲気下で、1時間保持しながら2℃ min-1で250℃まで昇温した。冷却後、還元した試料を密閉容器内でAr充填グローブボックス(Mbraun Labmaster dp;<lppmH2O;<lppm02)に移した。
【0093】
比較例B
Cu担持量1.7重量%のCu/TiO2触媒を調製した。ここでは、約2gの市販のP25TiO2(例えば、Degussa)を、わずかな真空下で、丸底フラスコ中で初期湿潤に含浸させた。~1pHの0.1M HNO3中のCu(NO3)2の水溶液を使用した。シリンジによって前駆体溶液を添加した。Cu濃度は、所望のCu重量負荷を得るために調整した。含浸物を24時間撹拌して、金属含有量を均質化した。次に、含浸物を、動的真空下で撹拌しながら、室温で一晩乾燥させた。乾燥した含浸物をプラグフロー反応器に移し、0.5℃ min-lで250℃に加熱し、N2流下(100mL min-lg-1)で1時間230℃に保持し、硝酸塩前駆体を分解した。試料を冷却し、室温で20vol%O2/N2で処理して、明確で高分散のCuII種を得た。次いで、試料をN2で30分間洗浄した。洗浄後、試料を5vol%H2/N2流下(~1.5mL min-1mgcat
-1)で150℃に加熱し、還元した。加熱ランプは、150℃で2時間保持した状態で2℃ min-1であった。次に、同一の雰囲気下で、2℃ min-1で1時間保持したまま400℃に昇温した。冷却後、還元した試料を密閉容器内でAr充填グローブボックス(Mbraun Labmaster dp;<lppm H2O;<lppmO2)に移した。
【0094】
比較例C
Au担持量l重量%の炭素含有担体(ここではAu/Cと呼ぶ)に担持した金触媒を調製した。まず、液相酸化処理により酸化カーボンナノチューブ担体を調製した。本明細書において、約2グラムの市販のカーボンナノチューブ(例えば、Baytubes)を、500mLの丸底フラスコにおいて、400mLのHNO3(aq)(68%)に懸濁した。フラスコに還流冷却器を備え、加熱マントルを用いて加熱した。120℃の最終温度を120分間保持した。冷却後、酸化されたカーボンナノチューブ担体を濾過によって収集し、脱イオン水で十分に洗浄し、120℃で一晩乾燥した。
【0095】
次に、コロイド状ポリビニルピロリドン(PVP)安定化Auナノ粒子を用いた堆積方法を用いてAu/C触媒を調製した。ここでは、メタノール中のNaBH4の新しく調製した溶液を、メタノール中のPVP(分子量約29,000)およびHAuCl4・3H2Oを含む溶液5mLに添加した。試薬の量を調整して、NABH4:PVPモノマー:Au前駆体のモル比を10:10:1として得た。得られた溶液を一晩撹拌して、NaBH4の完全な分解を確実にした。次に、コロイド溶液を、少量のメタノール中に懸濁させた酸化カーボンナノチューブ担体に、激しく撹拌しながら添加することによって、コロイドナノ粒子を担体上に固定化した。担体材料の量は、1重量%の金属負荷量を得るように調整した。遠心分離により固体を回収し、メタノールおよびジエチルエーテルで2回洗浄し、続いて60℃で一晩乾燥した。PVPは、過剰のMilli-Q水中で触媒を室温で一晩洗浄することによって、供給されたAuナノ粒子から除去した。最終触媒は乾燥後に回収した。
【0096】
4.9nmのAu0微結晶をX線回折で観察した。分析の結果を以下の表1に示す。
【0097】
比較例D
Au担持量4重量%のAu/C触媒を調製した。まず、Au(en)2Cl3の溶液である金属前駆体を調製した。ここでは、0.125g(0.635mmol)のAuを含有するHAuCl4(17重量%Au)の水溶液0.449mLを、ガラスビーカー中の脱塩H2O中で2.5mLに希釈した。この溶液に、400RPMで撹拌しながら、0.15mL(2.25mmol)の純粋なエチレンジアミンを滴下した。ビーカーは、光への暴露を避けるためにパラフィルムおよびアルミニウム箔で覆った。この過程を400RPMで撹拌しながら30分間反応させた。続いて、この溶液に無水エタノール30mLを加えると、黄色/白色の沈殿物が形成された。懸濁液を一晩放置して固体を沈降させた。翌日、液体をデカントし、黄金色前駆体を一晩放置して暗所で乾燥させた。翌日、金色前駆体を脱塩H2Oに再溶解して総量2.5mLとし、さらに後で使用するまで4℃で保存した。
【0098】
次に金色前駆体液(l.88mL)を脱塩H2Oに溶解し、全量を40mLとした。400RPMで撹拌しながら、0.45mLの1 M NaOH溶液を添加した。続いて、700RPMで攪拌し、懸濁液を2時間攪拌したまま、実施例lの乾燥Ox-HSAG2グラムを、溶液中に一方で分散させた。次に、遠心分離(4000RPMで10分)を繰り返し、液体を3回デカントすることによって、固体を収集した。固体を60℃で一晩乾燥し、次いで室温で24時間真空下においた。Au/C触媒を流動床反応器中で、5℃ min-1で400℃で2時間、20%O2/N2流下(100mL min-1g-1)で加熱した。冷却後、最終触媒を回収し、さらに使用するまで暗所に保存した。
【0099】
28.5nmのAu0微結晶をX線回折で観察した。分析の結果を以下の表1に示す。
【0100】
【0101】
実施例7-顆粒形成
実施例2~6および比較例A~Dの不活性化Cu/C触媒をペレット状にし、粉砕し、篩にかけて、90~212μmの顆粒サイズを得た。
【0102】
反応が物質移動制限ではないことを確証するために、銅触媒を用いた異なる顆粒サイズ(38~90、90~212、および212~425μm)を試験した。異なる顆粒サイズの触媒についての活性プロフィールの有意差は観察されず、反応が内部または外部物質移動制限によって妨害されないことを示した。実施例1のOx-HSAG、SiCおよびグラスウールプラグのみを使用して、ブランク測定を行った。典型的な前処理法の後、300℃までブタジエンまたはプロピレンの消費は観察されなかった。
【0103】
実施例8-触媒希釈、反応器装填および触媒の還元
大気圧下で石英プラグ流反応器(内径4mm)で触媒水素化試験を行った。
【0104】
実施例2~6および比較例A~Dからの触媒試料を、以下の表2に示すように、SiC(顆粒サイズ212~425μm)で希釈した。次いで、所望の触媒を、ガラスフリット上の固定床石英反応器に直接装填した。触媒床の前後に小さなガラスウールプラグを加えて、触媒床が適切な位置に留まることを確実にした。
【0105】
触媒のin-situでの還元は、試料を2℃ min-1で200℃に加熱し、200℃(50mL min-1純H2)でCu0を取得するために、120分保持した。
【0106】
【0107】
実施例9-触媒活性
実施例8に記載のように、充填および還元された触媒のプロピレン供給組成物中の1%ブタジエン中のブタジエンおよびプロピレンの転換は、、30℃~195℃の反応温度で研究された。ガス供給物のガス毎時空間速度(GHSV)が約90,000h-1であった供給ガスは、総流量50mL min-1で、ブタジエン/プロペレン/H2/He=0.15/15/10/24.85mL min-1の組成物を有していた。
【0108】
120℃および150℃でのブタジエンおよびプロピレン転化率の結果を以下の表3に示す。
【0109】
【0110】
実施例10-触媒活性-温度傾斜実験
実施例8に記載のように装填および還元された触媒のジ-オレフィンおよびモノ-オレフィンに対する反応物変換を、連続温度上昇実験にわたって温度の関数として研究した。連続温度上昇実験のために、触媒をたH2流下で30℃まで冷却し、in-situで還元の直後、試料を、1気圧で0.15/15/10/24.85mL min-1の比率でl,3-ブタジエン/プロピレン/H2/Heを含有する予め混合された反応ガス供給物に暴露した。実施例2~6からの触媒については、反応器を0.5℃ min-1~195℃まで加熱し、30℃まで冷却し、同じ速度および雰囲気で再度195℃まで加熱し、比較例A~Dからの触媒については、最高加熱温度は195℃以上であった。温度上昇中、データは7.5℃毎に取得された。上昇の後、触媒を冷却し、空気にゆっくり曝すことによって室温で不活性化した。
【0111】
実施例2~6および比較例A~Dについての結果を表4~12に提供する。以下に提示される表4~7において、ブタジエン転化率は、それぞれの表に示されている最高温度よりも高い温度で計測された通り100%のままであった。
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
表5および6から明らかに分かるように、120℃を超えると、実施例3および4からの触媒によってブタジエンのすべてが効果的に完全に除去されたが、プロピレンの転化率は著しく低く、100倍過剰の1,3-ブタジエン中にプロピレンが供給されたとしても、~0.01-0.02%のプロピレンのみが水素化された。
【0122】
実施例11-安定性試験
実施例3および4からの触媒を、等温実験にわたって時間の関数として研究した。等温実験では、実施例3および実施例4で使用したCu/C触媒は、in-situで還元した後、H2流下で80℃に冷却した。次いで、触媒を、0.15/15/10/24.85mL min-1の比率で1,3-ブタジエン/プロピレン/H2/Heを含有する反応供給ガスに暴露した。次いで、触媒を2℃ min-1で110℃、1気圧で加熱した。最終温度110℃に達したら、反応時間をt0と決定した。触媒を、試料を冷却し、空気にゆっくり暴露することによって室温で不活性化する前に、流上で少なくとも100時間、110℃に保持した。結果を以下の表13および14に示す。
【0123】
【0124】
【0125】
流下の最初の数時間の間、触媒は110℃での温度上昇実験におけるよりも高い転化率を示した。この活性化は、おそらく触媒構造の変化に起因する温度傾斜実験中には明らかでなかった。転化率は、流下の最初の20時間で最も急速に減少し、次いで、転化率は有意に遅い減少速度を示した。
【0126】
安定性試験で観察されたように、担持金属ナノ粒子についての活性の変化の要因は、粒子成長であり得る。したがって、使用済み触媒を100時間後に流下で分析した。実施例3からからの触媒の試料は4.7±2.1nmに成長したが、実施例4からからの触媒の試料はわずかに6.5±1.9nmに成長しただけであった。