(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】多層型血管グラフト
(51)【国際特許分類】
A61F 2/06 20130101AFI20240509BHJP
【FI】
A61F2/06
(21)【出願番号】P 2020567838
(86)(22)【出願日】2019-06-07
(86)【国際出願番号】 US2019036076
(87)【国際公開番号】W WO2019237014
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-02-25
(32)【優先日】2018-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512106355
【氏名又は名称】ネオグラフト・テクノロジーズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アヨッテ、ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ディン、アン ティ
(72)【発明者】
【氏名】エル クルディ、モハメッド
(72)【発明者】
【氏名】ファレル、ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】マックグラス、ジョナサン
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/073624(WO,A1)
【文献】特開平05-269196(JP,A)
【文献】特表2017-501810(JP,A)
【文献】特表2007-508112(JP,A)
【文献】特表2009-525138(JP,A)
【文献】Roya M. Nezarati et al.,Electrospun vascular grafts with improved compliance matching to native vessels,JOURNAL OF BIOMEDICAL MATERIALS RESEARCH B: APPLIED BIOMATERIALS,VOL 103B, ISSUE 2,2015年02月,pp.314-323
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/06
A61L 27/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者用の生体断片性グラフト装置であって、
内壁及び外壁を含む第1管部分を画定する電界紡糸繊維の第1多孔性構造を有する内層体と、
内壁及び外壁を含む第2管部分を画定する前記電界紡糸繊維の第2多孔性構造を有する外層体であって、前記第2管部分が前記第1管部分を取り囲む、該外層体とを含み、
前記第1多孔性構造及び前記第2多孔性構造が、細胞の内方成長、前記グラフト装置との組織一体化及び内皮化を促進し、
前記内層体及び前記外層体の少なくとも一方が、経時的に1以上の断片に物理的に分解するように構成された生体断片性材料を含み、
前記グラフト装置が、2MPaから16MPaの範囲
の2%
歪みに基づく割線弾性係数と、3mmから30mmの範囲の前記第1管部分の内径と、0.3mmから2.5mmの範囲の合計壁厚とを有
し、
前記グラフト装置が、第1の所定期間中の第1の伸展性と、第2の所定期間中の第2の伸展性とを有する伸展性範囲を含み、前記第2の伸展性は、前記第1の伸展性よりも高く、前記第1の伸展性が、2%/100mmHg以下であり、前記第2の伸展性が、4%/100mmHg以上であることを特徴とするグラフト装置。
【請求項2】
請求項1に記載のグラフト装置であって、
前記内層体及び外層体が、それぞれ、前記グラフト装置に強度及びねじれ耐性を提供するように設定されたデュロメータ硬さを有することを特徴とするグラフト装置。
【請求項3】
請求項2に記載のグラフト装置であって、
前記電界紡糸繊維が、1μmから20μmの範囲の太さを有することを特徴とするグラフト装置。
【請求項4】
請求項1に記載のグラフト装置であって、
前記電界紡糸繊維が、5μmから10μmの範囲の太さを有することを特徴とするグラフト装置。
【請求項5】
請求項1に記載のグラフト装置であって、
前記第1多孔性構造及び前記第2多孔性構造が、10μmから50μmの範囲
の細孔径を有することを特徴とするグラフト装置。
【請求項6】
請求項1に記載のグラフト装置であって、
前記第1多孔性構造及び前記第2多孔性構造が、20μmから30μmの範囲
の細孔径を有することを特徴とするグラフト装置。
【請求項7】
請求項1に記載のグラフト装置であって、
前記生体断片性材料の質量の減少量は、その初期質量の20%以下であることを特徴とするグラフト装置。
【請求項8】
請求項1に記載のグラフト装置であって、
前記生体断片性材料が、移植後、少なくとも6か月間にわたって、初期レベルの物理的支持を提供するように構成されることを特徴とするグラフト装置。
【請求項9】
請求項8に記載のグラフト装置であって、
前記物理的支持が、2%/100mmHg以下の血圧による応力下での前記グラフト装置の拡張を制限するように構成されることを特徴とするグラフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年6月8日出願の米国仮出願第62/682,766号明細書及び2018年10月15日出願の同第62/745,862号明細書に対する優先権を主張するものである。上記出願の開示内容は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(関連出願)
本出願は、
2018年6月8日出願の米国仮特許出願第62/682,766号明細書、2013年7月11日出願の米国特許出願第13/979,243号明細書、2014年4月24日出願の同第14/354,025号明細書、2014年8月12日出願の同第14/378,263号明細書、2015年9月11日出願の同第14/851,946号明細書、2016年3月18日出願の同第15/023,265号明細書、2016年5月12日出願の同第15/036,304号明細書、2016年6月24日出願の同第15/108,276号明細書、2016年6月29日出願の同第15/108,970号明細書、2016年8月4日出願の同第15/228,339号明細書、2016年11月7日出願の同第15/344,998号明細書、2017年1月24日出願の同第15/414,216号明細書、2017年2月13日出願の同第15/431,311号明細書、2017年3月8日出願の同第15/453,115号明細書、2017年4月27日出願の同第15/499,242号明細書、2017年12月15日出願の同第15/843,482号明細書、2016年12月20日出願の国際特許出願第PCT/US2016/067879号明細書、2017年6月9日出願の同第PCT/US2017/036800号明細書、2016年9月20日出願の米国特許第9,445,874号明細書、2017年3月28日出願の同第9,603,729号明細書、2017年4月18日出願の同第9,622,849号明細書、2017年5月23日出願の同第9,656,417号明細書、及び2018年1月16日出願の同第9,867,690号明細書に関連する。上記出願の開示内容は、参照により本明細書中に援用される。
【0003】
(技術分野)
本発明は、概してグラフト装置に関し、より詳細には、哺乳類患者用の心血管バイパスを提供するためのグラフト装置に関する。
【背景技術】
【0004】
米国では循環器系の疾患が主要な死因となっており、閉塞性動脈疾患の治療のために年間約55万本の血管グラフトが移植されている。移植の成功のほとんどは、自家伏在静脈の使用によって達成されているが、自家静脈に対する需要は、その供給力を大きく上回っている。グラフトに自家血管を使用できない場合、例えば、血液透析用の動静脈アクセス、又は、膝上の末梢動脈バイパス等の大径(例えば少なくとも6mm)の血管が必要とされる用途では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の人工グラフトがよく使用されている。
【0005】
例えば、脱細胞化されたウシ由来の異種移植片、又は、ヒトの屍体由来の同種移植片等の他の種類のグラフトは、動脈瘤、石灰化、及び血栓症を引き起こしやすいため、臨床的に広く受け入れられていない。膝下施術及び冠動脈バイパス術等の小径(例えば約4mm)のグラフト血管が必要とされる状況では、合成グラフト及びアログラフトは開存性を容認できないほど低いため、患者自身の血管(すなわち、内胸動脈、橈骨動脈、胃大網動脈、及び伏在静脈)が主に使用されている。したがって、拡張(慢性的な径の増大)、石灰化、血栓症、及び内膜過形成に対する抵抗を有する、容易に利用可能で汎用性が高く良好な開存性を有する血管グラフトが存在すれば、必要性の高い、かつ増加する臨床上のニーズに対処できるであろう。
【発明の概要】
【0006】
これらの理由及びその他の理由から、哺乳類患者用の改良されたグラフト装置を提供するシステム、方法、及び装置が必要とされている。このシステム、方法、及び装置は、長期開存性を改善し、外科手術及び装置による合併症(例えば、グラフト装置のねじれによって生じる合併症、又は、動脈瘤の形成をもたらすグラフトの不十分な耐久性によって生じる合併症)を低減(例えば最小限化)することができる。
【0007】
本発明の概念に基づく実施形態は、哺乳類患者用のグラフト装置と、該グラフト装置を製造するためのシステム及び方法とに関する。
【0008】
本発明の概念に係る一態様によれば、患者用のグラフト装置は、内壁及び外壁を含む第1管部分を画定する第1多孔性繊維構造を有する内層体と、内壁及び外壁を含む第2管部分を画定する第2多孔性繊維構造を有する外層体であって、第2管部分が第1管部分を取り囲む、該外層体と、少なくとも第1管部分の内壁及び外壁を貫通する複数のマクロ細孔とを含む。内層体及び/又は外層体は、経時的に1以上の破片に物理的に分解するように構成された生体断片性材料(例えば、1以上の生体断片性材料)を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、マクロ細孔は、グラフト装置の内皮化を促進するように構成されている。マクロ細孔は、グラフト装置内で微小血管が成長するための経路を提供することができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、複数のマクロ細孔は、10μmから200μmの範囲の内径を有する。複数のマクロ細孔は、30μmから100μmの範囲の内径を有してもよい。複数のマクロ細孔は、50μmから60μmの範囲の内径を有してもよい。複数のマクロ細孔は、互いに同様な内径を有してもよい。複数のマクロ細孔は、互いに異なる内径を有してもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、複数のマクロ細孔における互いに隣接するマクロ細孔間の距離が、200μmから1500μmの範囲の距離である。
【0012】
いくつかの実施形態では、1以上のマクロ細孔は、その長さ方向に沿って比較的均一な直径を有する。
【0013】
いくつかの実施形態では、1以上のマクロ細孔は、内向き及び/又は外向きのテーパ角度を有する。テーパ角度は、約7.5°であってもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、複数のマクロ細孔は、金属ピン、レーザ、機械的除去ツール、電気アーク、溶解可能材料、負に帯電したシェルと正に帯電したフィーチャを有するマンドレル等のマンドレル、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される装置又は手段を用いて形成されたマクロ細孔を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、内層体及び外層体は、それぞれ、グラフト装置に強度及びねじれ耐性を提供するように設定されたデュロメータ硬さを有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、内層体の少なくとも1つの構成要素は、外層体の少なくとも1つの構成要素のデュロメータ硬さよりも低いデュロメータ硬さを有する。内層体の少なくとも1つの構成要素のデュロメータ硬さが、ショア硬さ20Aからショア硬さ90Aの範囲であり、内層体の少なくとも1つの構成要素のデュロメータ硬さが、ショア硬さ35Dからショア硬さ70Aの範囲であってもよい。内層体の少なくとも1つの構成要素のデュロメータ硬さが、ショア硬さ40Aからショア硬さ87Aの範囲であり、内層体の少なくとも1つの構成要素のデュロメータ硬さが、ショア硬さ40Dからショア硬さ65Aの範囲であってもよい。内層体の少なくとも1つの構成要素のデュロメータ硬さが、ショア硬さ77Aからショア硬さ85Aの範囲であり、内層体の少なくとも1つの構成要素のデュロメータ硬さが、ショア硬さ50Dからショア硬さ60Aの範囲であってもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、内層体及び外層体は、それぞれ、グラフト装置に強度及びねじれ耐性を提供するように設定された厚さを有する。
【0018】
いくつかの実施形態では、内層体は、外層体の厚さよりも薄い厚さを有する。内層体は、200μmから800μmの範囲の厚さを有し、外層体は、300μmから1200μmの範囲の厚さを有してもよい。内層体は、300μmから600μmの範囲の厚さを有し、外層体は、500μmから900μmの範囲の厚さを有してもよい。内層体は、400μmから500μmの範囲の厚さを有し、外層体は、600μmから700μmの範囲の厚さを有してもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、内層体又は外層体の少なくとも一方は、微細構造形態を有する少なくとも1つの構造要素を含み、微細構造形態が、早期の環境応力亀裂に抵抗するように構成された1以上の繊維を含む。1以上の繊維は、1μmから20μmの範囲の太さを有してもよい。1以上の繊維は、5μmから10μmの範囲の太さを有してもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、内層体又は外層体の少なくとも一方が、微細構造形態を有する少なくとも1つの構造要素を含み、微細構造形態が、細胞の内方成長、及び/又は、グラフト装置との組織一体化を促進するように設定されたバルク細孔径を含む。バルク細孔径は、10μmから50μmの範囲であってもよい。バルク細孔径は、20μmから30μmの範囲であってもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、内層体又は外層体の少なくとも一方が、微細構造形態を有する少なくとも1つの構造要素を含み、微細構造形態が、細胞の内方成長、及び/又は、グラフト装置との組織一体化を促進するように設定されたバルク気孔率を含む。バルク気孔率は、30%から90%の範囲であってもよい。バルク気孔率は、40%から60%の範囲であってもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、内層体又は外層体の少なくとも一方が、微細構造形態を有する少なくとも1つの構造要素を含み、微細構造形態が、細胞の内方成長、及び/又は、グラフト装置との組織一体化を促進するように設定された内腔表面を含む。内腔表面は、10μmから50μmの範囲の均一に分布した孔径を有する複数の細孔を含んでもよい。複数の細孔の孔径は、20μmから40μmの範囲であってもよい。
【0023】
本発明の概念に係る他の態様によれば、患者の血管に移植するためのグラフト装置は、内壁及び外壁を含む第1管部分を画定する第1多孔性構造を有する内層体、又は、内壁及び外壁を含む第2管部分を画定する第2多孔性構造を有する外層体のうちの少なくとも一方を含む。内層体及び外層体の少なくとも一方は、経時的に1以上の破片に物理的分解するように構成された生体断片性材料を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、グラフト装置は、内層体又は外層体の両方を含み、外層体の第2管部分が、内層体の第1管部分を取り囲んでいる。
【0025】
いくつかの実施形態では、破片は、患者の再構築組織内に一体化された状態に維持される。破片は、少なくとも1年間にわたって、再構築組織内に一体化された状態に維持されてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、破片が、大幅な質量減少を示すことなく、再構築組織内に一体化された状態に維持される。質量減少は、初期質量の20%以下の減少を含んでもよい。質量減少は、初期質量の10%以下の減少を含んでもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、生体断片性材料が、酸化に起因する材料脆化、ポリエーテルソフトセグメントの加水分解開裂に起因する材料弱化、電界紡糸中に材料繊維上に残留した残留機械的応力、細胞の浸潤、増殖、及び細胞外マトリクスの合成に起因して移植後に発生した導入機械的応力、及び、これらの任意の組み合わせからなる群から選択される事象の後に分解するように構成された1以上のPDMSベースのポリエーテルポリウレタンを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、材料が、気孔率、細孔径、繊維表面積、繊維径、繊維間結合面積、繊維間結合距離、及びこれらの任意の組み合わせから選択される材料特性のうち、少なくとも1つを制御するように構成された電界紡糸法を用いて製造される。
【0029】
いくつかの実施形態では、生体断片性材料の物理的分解が、環境応力亀裂を含む。生体断片性材料に、残留機械的応力及び/又は導入機械的応力が存在することにより、環境応力亀裂が促進されてもよい。生体断片性材料に、残留機械的応力及び/又は導入機械的応力が存在しないことにより、環境応力亀裂が抑制されてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、生体断片性材料が、グラフト装置に物理的支持を提供するように構成される。生体断片性材料は、移植後、第1の所定期間にわたって、初期レベルの物理的支持を提供するように構成されてもよい。生体断片性材料は、第1の所定期間の経過後、後続レベルの物理的支持を提供するように構成されてもよい。後続レベルの物理的支持は、初期レベルの物理的支持よりも小さくてもよい。第1の所定期間は、約1年間であってもよい。第1の所定期間は、約6か月間であってもよい。第1の所定期間は、約3か月間であってもよい。物理的支持は、血圧による応力下でのグラフト装置の拡張を制限するように構成されてもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、グラフト装置は、2MPaから16MPaの範囲の2%歪みに基づく割線弾性係数を有する。グラフト装置は、約2MPa、約4MPa、約6MPa、約8MPa、約10MPa、約12MPa、約14MPa、又は約16MPaの2%歪みに基づく割線弾性係数を有してもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、グラフト装置は、0.03MPaから0.4MPaの範囲の降伏強度を有する。
【0033】
いくつかの実施形態では、グラフト装置は、2MPaから8MPaの範囲の極限強度を有する。
【0034】
いくつかの実施形態では、グラフト装置は、第1の所定期間中の第1の伸展性と、第2の所定期間中の、第1の伸展性よりも高い伸展性を有する第2の伸展性とを有する伸展性範囲を含む。第1の伸展性が、2%/100mmHg以下であり、第2の伸展性が、4%/100mmHg以上であってもよい。第1の所定期間は、8週間以上であってもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、グラフト装置は、移植から0日~30日後の期間を含む急性再構築フェーズを有する。急性再構築フェーズの間、動脈圧下でのグラフト装置の膨張及び/又は塑性的な拡張が制限されてもよい。急性再構築フェーズの間、グラフト装置内で、血流が、より高速であり、途切れのない状態に維持されてもよい。急性再構築フェーズの間、マクロファージ及び線維芽細胞が、グラフト装置に侵入してもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、グラフト装置は、移植から30日~180日後の期間を含む亜慢性再構築フェーズを有する。物理的分解が、亜慢性再構築フェーズ中に進行する分解を含み、破片が、高度に血管新生された繊維状組織の連続体内に埋め込まれてもよい。亜慢性再構築フェーズの間、グラフト装置の内腔の内面において、新生内膜の安定化及び内皮の形成がなされてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、グラフト装置は、移植から少なくとも180日後の期間を含む慢性再構築フェーズを有する。慢性再構築フェーズの間、グラフト装置の内腔の内面において、新生内膜の成熟化及び弾性板の形成がなされてもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、グラフト装置は、約4.0mm、約4.5mm、約5.0mm、約5.5mm、約6.0mm、約6.5mm、約7.0mm、約7.5mm、又は約8.0mmの初期径を有する。
【0039】
いくつかの実施形態では、グラフト装置は、約4.0mmの初期径を有する。グラフト装置は、移植から30日後に、4.02±0.38mmの再構築径を有してもよい。グラフト装置は、移植から90日後に、3.63±0.86mmの再構築径を有してもよい。グラフト装置は、移植から180日後に、3.3±0.25mmの再構築径を有してもよい。グラフト装置は、移植から365日後に、3.59±0.37mmの再構築径を有してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、本発明の概念のグラフト装置の側面図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明の概念のテーパ形状を有するグラフト装置の側断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の概念のグラフト装置の側断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の概念のグラフト装置を製造するための例示的なシステムの概略図である。
【
図3A】
図3Aは、本発明の概念の改質アセンブリの側面図である。
【
図3C】
図3Cは、本発明の概念のグラフト装置の一部を除去する、本発明の概念の改質アセンブリの拡大図である。
【
図4】
図4は、本発明の概念のグラフト装置の開発を補助するために出願人が実施した実験のデータを示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の概念のグラフト装置の開発を補助するために出願人が実施した実験のデータを示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の概念のグラフト装置の開発を補助するために出願人が実施した実験のデータを示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の概念のグラフト装置の開発を補助するために出願人が実施した実験のデータを示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の概念のグラフト装置の開発を補助するために出願人が実施した実験のデータを示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の概念のグラフト装置の開発を補助するために出願人が実施した実験のデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
ここで、添付の図面に例を示す本発明の技術の実施形態を、より詳細に説明する。同様の構成要素には、同様の参照番号が用いられている。しかしながら、本明細書は、本開示を特定の実施形態に限定することを意図したものではなく、本明細書に記載の実施形態における様々な改変、等価物、及び/又は代替物を含むものと解釈されるべきである。
【0042】
本明細書で使用される「備えている(comprising)」(並びに、「備える(comprise)」及び「備える(comprises)」など、「備えている(comprising)」という語の任意の形態)、「有している(having)」(並びに、「有する(have)」及び「有する(has)」など、「有している(having)」という語の任意の形態)、「含んでいる(including)」(並びに、「含む(includes)」及び「含む(include)」など、「含んでいる(including)」という語の任意の形態)、又は「含有している(containing)」(並びに、「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」など、「含有している(containing)」という語の任意の形態)という語句は、記載される特徴、完全性、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素が存在することを示すものであり、1つ又は複数のその他の特徴、完全性、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらのグループが存在することや、追加されることを排除するものではないことは理解されるであろう。
【0043】
更に、本明細書では、様々な限界、要素、構成要素、領域、層、及び/又は部分について述べるために、「第1」「第2」「第3」等の用語を使用することがあるが、これらの限界、要素、構成要素、領域、層、及び/又は部分が、これらの用語によって制限されることはないことも理解されるであろう。これらの用語は、単に、1つの限界、要素、構成要素、領域、層、又は部分を、別の限界、要素、構成要素、領域、層、又は部分と区別するために使用しているに過ぎない。したがって、以下で述べる第1限界、第1要素、第1構成要素、第1領域、第1層、又は第1部分は、本願の教示を逸脱することなく、第2限界、第2要素、第2構成要素、第2領域、第2層、又は第2部分と称することもできる。
【0044】
更に、ある要素が、別の要素「上にある」、又は別の要素に「取り付けられている」、「接続されている」、或いは「結合されている」と述べる際には、ある要素が、別の要素上に直接載っている場合も、間に何も挟まず別の要素の上方にある場合も、別の要素に接続されている場合も、別の要素に結合されている場合も含まれるし、1以上の要素が間に介在している場合も含まれると理解されるであろう。これに対して、ある要素が別の要素に「直接載っている」、「直接取り付けられている」、「直接接続されている」、又は「直接結合されている」と述べる際には、その間に介在する要素は存在しない。要素間の関係を説明するために使用されるその他の言葉(例えば、「間」と「直接の間」、「隣接する」と「直接隣接する」など)も、同様に解釈されるものとする。
【0045】
更に、第1要素が第2要素の「中」、「上」、及び/又は「内部」にあると述べる際には、第1要素は、第2要素の内部空間内に位置する、第2要素の一部分の内部(例えば第2要素の壁面内など)に位置する、第2要素の外面及び/又は内面上に位置する、又はこれらのうちの1以上を組み合わせた状態で位置する可能性があることも理解されるであろう。
【0046】
本明細書に用いる「近位(近接)」とは、第1構成要素又は第1位置の第2構成要素又は第2位置に対する近接性を記述するために使用される場合、第2構成要素中又は第2位置中、第2構成要素上又は第2位置上、及び/又は第2構成要素内部又は第2位置内部と同様に、第2構成要素又は第2位置に近位の1以上の位置も含むと解釈されるものとする。例えば、所定の解剖学的部位に対して近接配置された所定の構成要素(例えば、所定の標的組織位置)は、該解剖学的部位中、該解剖学的部位上、該解剖学的部位内部に配置された構成要素と同様に、該解剖学的部位に対して近接配置された構成要素も含む。
【0047】
例えば、図示されているように、ある要素及び/又は特徴と別の要素及び/又は特徴との関係を説明するために、「の下」、「の下方」、「の下側」、「の上方」、「の上側」等の、空間的な相対関係を表す用語を使用が使用されることある。これらの空間的な相対関係を表す用語は、図面に示す方向だけでなく、使用時及び/又は動作時の装置における異なる方向をも包含すると意図されていることも更に理解されるであろう。例えば、他の要素又は特徴「の下」及び/又は「の下方」に位置すると説明される要素は、図中の装置がひっくり返された場合には、その別の要素又は特徴の「上方」に位置することになる。装置は、別の方向へ向けられても(例えば、90度回転させられても、他の方向へ回転させられても)よく、本明細書で使用する空間的な相対関係を表す用語は、それに応じて解釈される。
【0048】
本明細書で使用する「低下する」、「低下している」、及び「低下」等の用語は、ゼロまでの低下を含めた量の低下を含む。「発生の可能性を低下させる」とあれば、発生を防止することも含むものとする。同様に、「防ぐ」、「防いでいる」、及び「防止」といった用語は、それぞれ、「低下する」、「低下させる」、及び「低下」としての働きも含むものとする。
【0049】
本明細書で使用する「及び/又は」という用語は、特定の2つの特徴又は構成要素が、他方と組み合わせた場合と、他方と組み合わせなかった場合について、それぞれ具体的に開示されていると解釈されるものとする。例えば、「A及び/又はB」は、(i)A、(ii)B、及び(iii)A及びBのそれぞれが本明細書に個々に記載されている場合と同じく、それぞれが具体的に開示されていると解釈されるものとする。
【0050】
本明細書では、特に明記しない限り、「及び」は「又は」を、「又は」は「及び」を意味できるものとする。例えば、ある特徴が、A、B、又はCを有すると記載されている場合、該特徴は、A、B、及びC、並びに、A、B、Cからなる任意の組み合わせを有してもよい。同様に、ある特徴が、A、B、及びCを有すると記載されている場合、該特徴は、A、B、又はCのうち、1つ又は2つのみを有してもよい。
【0051】
本開示で使用する「~に構成されている(~とされている)」という表現は、状況に応じて、例えば、「~に適している」、「~の能力を有する」、「~に設計されている」、「~に適応されている」、「~に作られている」、及び「~が可能である」などに置き換えられてもよい。「~に構成されている(~とされている)」という表現は、ハードウェアが「特別に~として設計されている」という意味のみを含んでいるわけではない。代替的に、いくつかの状況では、「~に構成されている装置」という表現は、該装置が、他の装置又は他の要素と共に動作「できる」ことを意味してもよい。
【0052】
本明細書で使用する「閾値」とは、最大レベル、最小レベル、及び/又は望ましい状態又は望ましくない状態に相関する値の範囲を意味する。いくつかの実施形態では、あるシステムパラメータは、望ましい効果(例えば、効果的な治療)を引き起こすため、及び/又は望ましくない事象(例えば、装置及び/又は臨床的に有害な事象)を防止又は低減するために、最小閾値以上、最大閾値以下、閾値範囲内、及び/又は閾値範囲外に維持される。いくつかの実施形態では、あるシステムパラメータは、第1閾値以上(例えば、組織に望ましい治療効果をもたらすための第1温度閾値以上)かつ第2閾値以下(例えば、組織への望ましくない損傷を防ぐための第2温度閾値以下)に維持される。いくつかの実施形態では、ある閾値は、例えば、患者の多様性、システムの多様性、許容範囲等を考慮するような、セーフティマージンを含んで決定される。本明細書に記載する「閾値を超える」とは、あるパラメータが、最大閾値を上回る、最小閾値を下回る、閾値範囲内に達する、及び/又は閾値範囲外に達することに関する。
【0053】
本明細書に記載する「室圧」とは、本発明の概念に係るシステム及び装置の周辺環境の圧力を意味するものとする。陽圧は、室圧より高い圧力や、単純に、バルブ等の流体通路の構成要素の両端間における正の差分圧力など、他の圧力より高い圧力を含意する。陰圧は、室圧より低い圧力や、単純に、バルブ等の流体通路の構成要素の両端間における負の差分圧力など、他の圧力より低い圧力を含意する。陰圧は、真空を含意することはあるが、真空未満の圧力を含意することはない。本明細書で使用する「真空」という用語は、完全真空を指すものとして使用されることもあれば、部分真空を指すものとして使用されることもあれば、或いは上述した任意の陰圧を指すものとして使用されることもある。
【0054】
本明細書において非円形の幾何学的形状を説明する際に使用される「直径」という用語は、説明されている幾何学的形状を近似した仮想円の直径であると解釈されるものとする。例えば、ある構成要素における断面など、断面について述べている際には、「直径」という用語は、説明されている構成要素の断面と同じ断面積を有する仮想円の直径を意味すると解釈されるものとする。
【0055】
本明細書で使用する構成要素の「長軸」及び「短軸」という用語は、それぞれ、その構成要素を完全に包囲することができる最小体積の仮想円筒の長さ及び直径を意味する。
【0056】
本明細書で使用する「流体」という用語は、例えば、内腔及び/又は開口部から排出される材料等の、液体、ガス、ジェル、又は任意の流動可能な材料を指すこともある。
【0057】
明確化のために別個の実施形態と関連して説明されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組合せで提供されてもよいと理解されよう。反対に、簡単のために単一の実施形態と関連して説明されている本発明の種々の特徴は、別個に提供されてもよいし、任意の好適な部分による副組合せ(sub-combination)で提供されてもよい。例えば、(独立か従属かに関わらず)いずれかの請求項に記載される全ての特徴は、任意の方法で組合せられてもよいことが理解されよう。
【0058】
本発明の少なくともいくつかの図及び説明は、本発明への明確な理解に関連する要素に焦点を当てるために簡略化されているが、その一方で、明確化のために排除された当業者が理解できるであろう他の要素もまた、本発明の一部を構成してもよいことを理解されたい。しかし、そのような要素は当技術分野で周知であって、必ずしも本発明に対するより良い理解を容易にするものではないため、本明細書にはそのような要素の説明は記載していない。
【0059】
本開示で定義される用語は、本開示の特定の実施形態を説明するためにのみ使用されるものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。単数形で示される用語は、文脈によって明確に否定されない限り、複数形も同様に含むことを意図している。本明細書で使用される技術用語又は科学用語を含むすべての用語は、本明細書で特に定義されない限り、当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。一般的に使用されている辞書で定義されている用語は、関連技術の文脈上の意味と同じ又は同様の意味を持つものとして解釈されるべきであって、本明細書で明示的に定義されない限り、理想的又は誇張された意味を持つものとして解釈されるべきではない。いくつかの場合では、本開示で定義された用語は、本開示の実施形態が除外されるように解釈されるべきではない。
【0060】
本発明の概念に基づく実施形態は、哺乳類患者用のグラフト装置と、該グラフト装置を製造するためのシステム及び方法とに関する。
【0061】
本明細書は、第1の解剖学的位置から第2の解剖学的位置にかけて、例えば、動脈内の或る位置から該動脈又は該動脈とは異なる他の動脈の或る位置にかけて、血液又は他の体液等の流体を送達するための、哺乳類患者に移植されるグラフト装置を提供する。本発明に係るグラフト装置によれば、炎症、内膜過形成、及び血栓症が防止される。グラフト装置は、動脈様導管を経時的に形成する一連の生物学的作用を可能とする多層構造を有してもよい。グラフト装置は、有用な方法で移植された場合に機械的特性が変化する、複数レベルの気孔率を有する多層ポリマーマトリクスを含んでもよい。グラフト装置は、例えばヒドロゲル等の一時的な封止剤を含んでもよい。
【0062】
本明細書に記載の血管用グラフト装置は、現行の血管グラフトの問題点を解決することができ、例えば、破壊的炎症の低減、内膜過形成の低減、及び血栓症の防止を実現することができる。現行の血管グラフトの問題点は、生着不全をもたらす恐れがあり、その場合、追加の医療介入が必要となる。本明細書に記載のグラフト装置は、組み込まれたストレインリリーフによって制御された特性を有する、均一及び/又は不均一に生体断片化する足場(scaffold)と、再吸収可能な封止剤とから構成されてもよい。グラフト装置の血液接触面は、血栓耐性を有してもよい。グラフト装置は、経時的に完全に組み込まれてもよい。すなわち、患者自身の細胞は、グラフト装置を浸潤及び被覆し、それにより、慢性的に自律機能を達成することができる自己宿主組織内で、グラフト装置を置換及び/又は統合してもよい。
【0063】
グラフト装置の移植後、細胞の浸潤、増殖、融合、分化、及び一体化などの再構築機構、並びに、それに続くマトリクス合成及び再配列によって、新しい血管(例えば、新生動脈又は新生静脈)が次第に形成される。これらの機構によって、動脈圧下又は静脈圧下での血液の流れを補助するために、グラフト装置の既存構造の一部又は全体を最終的に置き換える新構造が形成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のグラフト装置は、移植前に細胞又は他の生物学的因子(例えば、成長因子又は他のタンパク質)を予備的に封入させなくとも、宿主を媒介とする再生プロセスによって、もっぱら宿主組織の再構築を補助する。これらの実施形態では、グラフト装置に任意の機械的前処理が施されなくてもよい。結果として生じる再構築された新生動脈は、収縮性又は合成性を有し、自律信号に応答することができる、融合性内皮と構造性平滑筋層とを含む。新生動脈はまた、多構造エラスチン繊維、コラーゲン繊維、プロテオグリカン、及びグリコサミノグリカン等のタンパク質成分を含み、動脈圧と血液の流れを長期間にわたって補助するのに充分な弾力性と応従性を有する機械的特性を呈してもよい。いくつかの実施形態では、グラフト装置は、線維芽細胞成分及び筋線維芽細胞成分を主に含む成熟した線維性コラーゲン皮膜の形成をもたらす標準的な免疫応答によって形成される組織内に組み込まれる。
【0064】
本発明の概念に係るグラフト装置は、内層体及び外層体を含んでもよい。内層体及び外層体は、異なる構成材料(例えば生体材料)を含み、異なるタイミング(例えば、患者に移植されてから異なる時間が経過したタイミング)で、互いに同様な機能及び/又は互いに異なる機能が発揮されるように構成されてもよい。内層体及び/又は外層体は、それぞれ、例えば、互いに異なる材料及び/又は異なる構成を有する1以上の材料を含む1以上の副層(以下単に「層」と呼称する)を有する繊維マトリクス等の繊維マトリクスを含んでもよい。各層は、生分解性、生体吸収性、生体耐久性(biodurable)、生体侵食性(bioerodible)、及び/又は生体断片性(biofragmentable)を有してもよい。
【0065】
本明細書における生分解は、酵素活性によって媒介され得る酸化及び加水分解の結果として、ポリマー材料が、化学分解によって、徐々にではあるが連続的に分解するプロセスを含む。
【0066】
本明細書における生体吸収は、分解したポリマーが、食作用、及び/又は、リンパ若しくは静脈輸送によって、肺、腎臓、又は肝臓へ送達されることで宿主から除去され、最終的に体外へ排出されるプロセスを含む。
【0067】
本明細書における生体断片化は、生体材料の構造的構成要素が物理的に分解することに起因して、生体材料を含むグラフト装置(例えば、1以上の生体材料を含む単層又は多層を有するグラフト装置)の構造的完全性が失われ、それにより、1以上の生体材料断片が生成されるプロセスを含む。生体材料断片は、少なくとも1年間(例えば、少なくとも2年間、又は、少なくとも3年間)にわたって、再構築された宿主組織内に一体化された状態に維持されるように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、生体材料断片は、質量が大幅に減少することなく(例えば、初期質量の20%を上回る減少を示すことなく、又は、初期質量の10%を上回る減少を示すことなく)、再構築された宿主組織内に一体化された状態に維持されるように構成された1以上の材料(例えば1以上のポリマー)を含む。例えば、グラフト装置は、酸化に起因する材料脆化、ポリエーテルソフトセグメントの加水分解開裂に起因する材料弱化、電界紡糸中に材料繊維上に残留した残留機械的応力、細胞の浸潤、増殖、及び細胞外マトリクスの合成に起因して移植後に発生する導入機械的応力、パルス状動脈圧からの周期応力、及びこれらの任意の組み合わせから選択される群のうち1以上の事象の後に分解するように構成された1以上のPDMSベースのポリエーテルポリウレタンを含んでもよい。
【0068】
残留機械的応力及び/又は導入機械的応力は、生体材料(例えばポリエーテルポリウレタン生体材料)の環境応力亀裂(ESC)を促進し得る。ESCは、熱可塑性ポリマー(例えばアモルファス)における予期せぬ脆性破壊の主要因である。ESCは、ポリマーの化学組成、結合性、結晶化度、表面粗さ、分子量、及び/又は残留応力に依存し得る。残留応力及び/又は機械的応力が存在しない場合、ESCの発生速度は(例えば大幅に)減少する。ESCは、生体断片化のメカニズムを表し、生体材料の生体断片化の進行速度を制御する手段を可能にする。例えば、高分子生体材料をアニーリングすることにより残留応力を減少させることができ、それにより、ESCの発生を遅らせることができる。他の例としては、ポリマー中のポリエーテルソフトセグメント(例えば、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリ(テトラメチレンオキサイド)、及びポリ(ヘキサメチレンオキサイド))の量を減少させることによって、ESCに対する感受性を低下させることができる。追加として又は代替として、生体材料の構造によって、生体断片化の進行速度を変化させる手段が提供されてもよい。例えば、電界紡糸法を用いて生体材料を製造することにより、気孔率、細孔径、繊維表面積、繊維径、繊維間結合面積、繊維間結合距離、及びこれらの任意の組み合わせから選択される材料特性のうちの少なくとも1つを制御する手段を提供することができる。いくつかの実施形態では、生体材料は、グラフト装置内での均一及び/又は不均一な生体断片化を促進するのに充分な細胞浸潤を促進するように、40%から60%の範囲の気孔率を有する。追加として又は代替として、生体材料は、生体材料内への邪魔されない細胞遊走を更に促進するために、20μmから30μmの範囲の径を有する細孔及び/又は相互接続された細孔(interconnected pores)を含んでもよい。生体材料の構造(例えば、in-vivo環境に曝されている領域)の表面積及び/又は繊維径を制御することによって、生体断片化の進行速度を変化させる更なる手段を提供することができる。例えば、繊維径を増大させることによりESCの発生を遅らせることができ、それにより、生体断片化の進行速度を減少させることができる。他の例としては、生体材料内の繊維間結合面積を増加させること、及び/又は、生体材料内の繊維間結合距離を減少させることによって、ESCの発生を遅らせることができ、それにより、生体断片化の進行速度を減少させることができる。
【0069】
生体断片化が起きると、一体化された組織は、より強いレベルの生体力学的応力に曝され、それにより、in-situでの細胞分化及び組織成熟(例えば、細胞外マトリクスの生成、凝縮、収縮、及び強化)が促進される。更に、生体材料繊維が受ける機械的応力が減少するにつれて、生体断片化の進行速度を減少させることができる。
【0070】
生体断片化中に生じる酵素プロセス及び細胞プロセスによって、異物を分解し、その後、除去することができる。異物の除去によって生体材料断片のサイズを小さくすることができ、それにより、リンパ系を介して生体材料断片を送達することが可能となる。生体断片化によって、再構築組織内に少なくとも1年にわたって(例えば、少なくとも2年にわたって、又は、少なくとも3年にわたって)一体化された状態に維持される1以上の断片を生成することができる。代替として又は追加として、生体吸収性及び/又は生分解性を有する1以上の生体材料断片を、サイズを小さくし、リンパ系を介してマクロファージ及び多核巨細胞内に送達することにより、生体吸収性及び/又は生分解性を有する生体材料断片を、1年以下にわたって(例えば、9か月以下にわたって、又は、6か月以下にわたって)再構築組織内に留めることができる。
【0071】
グラフト装置の各層は、様々な期間にわたって、互いに同様な動作又は互いに異なる動作をするように構成されてもよい。グラフト装置の各層は、例えば、生分解性、生体吸収性、生体耐久性、生体侵食性、及び/又は生体断片性を有する1以上の層、若しくは、生体断片性を有する1以上の層及び/又は生体耐久性を有する1以上の層を含む層等の1以上の層(例えば副層)を含んでもよい。グラフト装置の各層は、電界紡糸装置、溶融紡糸装置、溶融電界紡糸装置、霧化アセンブリ、噴霧器、電気噴霧器、熱溶解積層装置、焼結積層装置、3Dプリンタ、織機、組紐機、編機、及び/又は他の繊維マトリクス送達装置のうちの1以上が適用される繊維マトリクスを含んでもよい。
【0072】
生体断片性を有する1以上の層を組み込むことにより、移植後の所定期間にわたって、グラフト装置に初期レベルの物理的支持を提供することができ、所定期間の経過後、物理的支持は大幅に減少する。一実施形態では、この所定期間は約1年間である。他の実施形態では、この所定期間は約6か月間である。他の実施形態では、この所定期間は約3か月間である。生体断片性を有する1以上の層は、集合的に(例えば1以上の他の層と組み合わせて)又は単独で、血圧による応力下でのグラフト装置の大幅な拡張を防止又は制限するのに充分な物理的支持を提供することができる。グラフト装置は、2MPaから16MPaの範囲(例えば、2MPaから14MPaの範囲、又は、3MPaから10MPaの範囲)の2%歪みに基づく割線弾性係数を有してもよい。いくつかの実施形態では、グラフト装置は、約2MPa、約4MPa、約6MPa、約8MPa、約10MPa、約12MPa、約14MPa、又は約16MPaの2%歪みに基づく割線弾性係数を有する。グラフト装置は、0.03MPaから0.4MPaの範囲(例えば、0.05MPaから0.3MPaの範囲、又は、0.07MPaから0.2MPaの範囲)の降伏強度を有してもよい。グラフト装置は、2MPaから8MPaの範囲(例えば、3MPaから5MPaの範囲、又は、3.5MPaから4.5MPaの範囲)の極限強度を有してもよい。これらの特性は、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、及びこれらの任意の組み合わせ、或いは、加水分解的に不安定な他のポリマー又は酵素反応性を有する他のポリマー等の従来の生体吸収性材料を用いて達成することができる。しかし、より迅速に再吸収されるように構成されたポリマーは、ポリマーが完全に再吸収される前に、より強い炎症応答を誘起する恐れがあり、その場合、より大きな増殖応答の累積をもたらす。
【0073】
本発明の概念に係るグラフト装置は、冠動脈グラフト及び/又は末梢動脈グラフトを含んでもよい(すなわち、患者の冠動脈及び/又は末梢動脈に血液を供給するように構成及び配置されてもよい)。臨床施術では、端側吻合は、通常、グラフト装置の一端を、酸素を含む血流源に取付け、他端を、疾患動脈に取付ける目的で(例えば、冠動脈バイパス術では、グラフト装置を大動脈と疾患冠動脈との間に取付ける目的で)行われる。或いは、例えば、グラフト装置を複数の疾患動脈に直列で取付ける場合には、側側吻合を用いることができる。
【0074】
本発明に係るグラフト装置は、約2%/100mmHg以下、約5%/100mmHg以下、又は、約8%/100mmHg以下の伸展性範囲(compliance range)内で血液を比較的円筒形状に押し込める機能、動脈圧に耐える(例えば、約5%を超える恒久的な拡張を生じることなく、180mmHg以上の圧力に耐える)機能、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される機能を発揮するように構成及び配置された1以上のフィーチャを含んでもよい。グラフト装置は、比較的円筒形の形状を有し、円筒の内径は、バイパスされる導管の直径の約±5%であってもよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、グラフト装置は、第1の所定期間中の第1の伸展性から、第2の所定期間中の、第1の伸展性よりも高い伸展性を有する第2の伸展性まで経時的に変化する伸展性範囲を有する。第1の伸展性は、5%/100mmHg以下(例えば、4%/100mmHg以下、3%/100mmHg以下、2%/100mmHg以下、又は、1%/100mmHg以下)の伸展性を有してもよい。第1の所定期間は、少なくとも8週間(例えば、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも20週間、又は、少なくとも26週間)であってもよい。第2の伸展性は、第1の伸展性よりも高い伸展性を有し、少なくとも4%/100mmHg(例えば、少なくとも6%/100mmHg、少なくとも8%/100mmHg、少なくとも10%/100mmHg)の伸展性を有してもよい。伸展性範囲は、移植から短期間経過後の第1の(低い)伸展性範囲から、移植から長期間経過後の第2の(高い)伸展性範囲へ変化することができる。例えば、伸展性範囲は、移植から約6週間は約2%/100mmHg以下であり、移植から約26週間は約2%/100mmHgよりも大きくてもよい。他の例では、伸展性範囲は、移植から約12週間は約5%/100mmHg以下であり、移植から約16週間は約5%/100mmHgよりも大きくてもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、グラフトの入口での断面積の急激な減少を防ぐために、グラフト装置は、バイパスされる導管の直径よりも大きい直径を有する。グラフト装置の内径は、バイパスされる導管の内径よりも約2%大きいか、バイパスされる導管の内径よりも約4%大きいか、又は、バイパスされる導管の内径よりも約6%以下の大きさで大きくてもよい。いくつかの実施形態では、
図1Bに示すように、グラフト装置の(少なくとも)内壁に、グラフト装置の入口から出口にかけて内径が徐々に減少するテーパが形成されている。いくつかの実施形態では、グラフト装置の内径は、バイパスされる導管(例えば血管)の内径とほぼ等しい。いくつかの実施形態では、グラフト装置は、グラフト装置を血管(例えば、大動脈血管又はバイパスされる導管)に接続するために縫合糸が配置される領域において、より高い強度及び/又は耐久性(例えば引裂き抵抗)を提供するように構成される。例えば、グラフト装置の近位端又は遠位端に隣接する位置では、グラフト装置の他の位置と比較して、グラフト装置の円筒壁の断面積が大きいか、空隙率が小さいか、又は、繊維間結合領域が大きい。いくつかの実施形態では、グラフト装置の近位端又は遠位端に隣接する位置では、グラフト装置の円筒壁の断面積は、バイパスされる導管の断面積(すなわち肉厚)とほぼ等しい。いくつかの実施形態では、グラフト装置の近位端又は遠位端に隣接する位置では、グラフト装置の内腔の断面積は、バイパスされる導管の内腔の断面積よりも約20%以下の大きさで大きい。いくつかの実施形態では、グラフト装置は、新生動脈の形成中に動脈圧に耐えることができる軸方向及び周方向への強度、ねじれ耐性、充分な耐久性、複合構造及び/又は異方性構造、或いは、これらの任意の組み合わせを有するように構成及び配置される。いくつかの実施形態では、グラフト装置は、移植から少なくとも12週間にわたって、大幅な拡張を防止するのに充分な強度を保持する。いくつかの実施形態では、グラフト装置は、移植から約12週間後に径方向について0.07MPa以上の降伏強度を保持し、及び/又は、移植から約24週間後に径方向について0.03MPa以下の降伏強度を保持する。
【0077】
次に
図1を参照すると、本発明の概念のグラフト装置の側面図が示されている。グラフト装置100は、内層体105及び外層体110を含む。いくつかの実施形態では、グラフト装置100は、内層体105又は外層体110のいずれかを含む(すなわち、グラフト装置100は、
図1Bを参照して以下で説明するような単層を含む)。内層体105は、内壁及び外壁を含む第1管部分を画定する繊維構造を有する。外層体110は、内壁及び外壁を含む第2管部分を画定する繊維構造を有する。外層体110は、グラフト装置100の長さ方向に沿って、内層体105を(周方向に)取り囲んでもよい。グラフト装置100は、第1端101及び第2端102を更に含み、第1端101及び第2端102が、第1の身体位置と第2の身体位置との間に配置されるように構成されてもよい。グラフト装置100は、2つの身体位置の間にグラフト装置100が接続されているとき(例えば、動脈バイパス術で、2つの血管の間にグラフト装置100が接続されているとき)に血液又は他の流体を送達するために、第1端101から第2端102に延びる内腔103を含んでもよい。グラフト装置100、内層体105、及び/又は外層体110は、それぞれ、例えば、酸素、細胞内栄養(cellular nutrient)、生化学的信号、細胞、水、血液、血漿、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1以上の材料等に対して透過性を示す1以上の部分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、グラフト装置100は、以下で述べるように、
図2及び
図2A、及び/又は、
図3のグラフト装置100と同様の構造及び配置を有する。
【0078】
内層体105及び/又は外層体110は、強靭で応従性を有する新生動脈をもたらすグラフトの再構築を補助するために、内層体105内及び/又は外層体110内への宿主細胞の遊走(例えば、急速な細胞の浸潤、遊走、増殖、分化、及び/又は融合)を促進するように設定された気孔率を有する、1以上の繊維の層(例えば、1以上の繊維の副層)を含んでもよい。内層体105は、第1多孔性繊維構造を含み、外層体110は、第2多孔性繊維構造を含む。いくつかの実施形態では、内層体105及び外層体110は、互いに同様の多孔性繊維構造を含む(例えば、内層体105の第1多孔性繊維構造の気孔率が、外層体110の第2多孔性繊維構造の気孔率と同様である)。いくつかの実施形態では、内層体105及び外層体110は、互いに異なる多孔性繊維構造を含む(例えば、内層体105の第1多孔性繊維構造の気孔率が、外層体110の第2多孔性繊維構造の気孔率よりも高い又は低い)。いくつかの実施形態では、内層体105及び外層体110は単層を含む。
【0079】
内層体105及び/又は外層体110は、複数の孔(本明細書では「マクロ細孔」と呼称する)からなる細孔104を含んでもよい。細孔104は、内層体105及び/又は外層体110の内側及び/又は外側の副層内に配置されてもよい。複数の細孔104(例えば、細孔104の大部分)は、10μmから200μmの範囲(例えば、30μmから100μmの範囲、又は、50μmから60μmの範囲)の内径IDPを有してもよい。いくつかの実施形態では、複数の細孔104(概して「細孔104」)は、互いに同様な内径を有する。いくつかの実施形態では、複数の細孔104は、互いに異なる内径を有してもよい(例えば、複数の細孔104の細孔同士が、互いに異なる内径を有してもよい)。細孔104は、(例えば、内表面の円弧に沿って細孔の中心間を測定して、)約200μmから約1500μmの範囲(例えば、約400μmから約1500μmの範囲)の距離を離されて配置(例えば、内層体105及び外層体110内部に生成又は配置)されてもよい。血管グラフトのマクロ細孔の気孔率(macroporosity)は、グラフトの修復及び/又は内皮化を促進するように構成された有益な特徴であると同定されている。細孔104の径は、周囲の組織被膜と内腔103との間に接続を形成するための、微小血管のための経路を提供するように(例えば、グラフト装置100内で微小血管が成長するための経路を提供するように)選択されてもよい。内皮細胞は、これらの微小血管を介して、内腔103で集合することができる。細孔104の細孔間距離は、治癒の最終段階を示す、融合性の(すなわち、内腔103の表面を内皮細胞で完全に覆った)内皮を形成できるように選択されてもよい。
【0080】
内層体105及び/又は外層体110の1以上の部分は、それぞれ対応する内層体105及び/又は外層体110の1以上の他の部分と異なる特性(例えば、機械的特性、物理的特性、及び/又は化学的特性)を有してもよい。いくつかの実施形態では、内層体105及び/又は外層体110は、生体吸収速度、生分解速度、生体断片化速度、構造設計、表面エネルギー、微細構造形態、細孔の径及び形状(例えば、以下で説明するマクロ細孔の径及び形状)、透過性、異方性、親油性、表面処理、弾性係数、デュロメータ硬さ、降伏強度、伸び率、極限強度、寸法、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される異なる特性を有する2以上の部分を含む。
【0081】
グラフト装置100は、伸び(例えば伸長)及び/又はねじれ耐性が向上するように構成された、長手方向の伸展性が向上した周部又は他の部分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、1つの層(例えば、内層体105又は外層体110)の少なくとも1つの構成要素は、移植から第1の所定期間にわたって或る速度(例えば、或る平均速度)で分解及び/又は断片化し、その後、それに続く第2の所定期間にわたって異なる速度で分解及び/又は断片化する。いくつかの実施形態では、1つの層の少なくとも1つの構成要素は、第1の所定期間にわたって第1の所定速度で分解し、第2の所定期間にわたってより低い第2の所定速度で分解する。例えば、第1の所定期間にわたって、1か月につき8%を上回って分解し、それに続く第2の所定期間中の分解にわたって、1か月につき8%を下回って分解してもよい。いくつかの実施形態では、1つの層(例えば、内層体105又は外層体110)の少なくとも1つの構成要素は、移植から約12週間後に元の65%以上の降伏強度を維持し、移植から約6か月後に元の35%未満の降伏強度を維持する。いくつかの実施形態では、1つの層(例えば、内層体105又は外層体110)の少なくとも1つの構成要素は、或る応力下で、或る速度で分解及び/又は断片化し、その後、比較的低い応力下で、上記速度と異なるより低い速度で分解及び/又は断片化するように構成される。例えば、1つの層(例えば、内層体105又は外層体110)の少なくとも1つの構成要素は、in-vivoの環境応力亀裂に対する感受性の増加をもたらす酸化及び/又は加水分解を受けるポリマーを有してもよい。
【0082】
1つの層(例えば、内層体105又は外層体110)の少なくとも1つの構成要素は、グラフト装置100にストレインリリーフ及び/又はねじれ耐性を提供するように構成されることができる。いくつかの実施形態では、グラフト装置100が長さ方向に沿って局所的又は均一なねじれ耐性を有するように、外層体110に1つ又は複数の溝部が切り込まれている。追加として又は代替として、グラフト装置100が長さ方向に沿って局所的又は均一なねじれ耐性を有するように、内層体105と外層体110との間に1以上の押出成形型ポリマーフィラメントが配置されてもよい。1以上のフィラメントは、渦巻き状、セグメント、個々の環、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される構成を有してもよい。
【0083】
1つの層(例えば、内層体105又は外層体110)の少なくとも1つの構成要素は、タンパク質の吸着及び組織の一体化を促進するように構成された疎水性材料を含んでもよい。疎水性材料は、65°より大きい(例えば、90°より大きい、又は、110°より大きい)水接触角度を有してもよい。追加として又は代替として、1つの層(例えば、内層体105又は外層体110)の少なくとも1つの構成要素は、血栓耐性を向上させるように構成された親水性材料を含んでもよい。親水性材料は、65°以下(例えば40°以下)水接触角度を有してもよい。
【0084】
内層体105及び/又は外層体110は、1μmから20μmの範囲(例えば、5μmから10μmの範囲)の繊維径を有する複数の繊維を含む。内層体105及び/又は外層体110は、例えば、内層体105及び/又は外層体110の強度を向上させるために、内層体105及び/又は外層体110のクリープを低減するために、或いは、早期の環境応力亀裂(例えば、所望の時間が経過する前に発生する環境応力亀裂)に抵抗するために、相互接続された繊維及び/又は結合繊維を含んでもよい。いくつかの実施形態では、内層体105及び/又は外層体110は、0μm2から700μm2の範囲(例えば、25μm2から300μm2の範囲)の面積を有する繊維間結合を含む。いくつかの実施形態では、内層体105及び/又は外層体110は、0μm2から100μm2の範囲(例えば、25μm2から75μm2の範囲)の面積を有する繊維間結合を含む。いくつかの実施形態では、内層体105及び/又は外層体110は、少なくとも20μm2(例えば、少なくとも30μm2、少なくとも40μm2少なくとも50μm2、又は、少なくとも60μm2)の面積を有する繊維間結合を含む。繊維間結合の密度は、構造物の剛性及び/又は細孔径の分布に影響を与え、その両方は、生体断片性材料のESCに対する感受性に影響を与える。いくつかの実施形態では、細孔径は、細胞の浸潤を促進するように構成される。いくつかの実施形態では、繊維間結合の密度は、細胞の増殖及び細胞外マトリクスの生成から導入される応力に抵抗するように構成される。内層体105及び/又は外層体110は、0μmから50μmの範囲(例えば、20μmから30μmの範囲)の距離で隔てられた繊維間結合を含んでもよい。内層体105及び/又は外層体110は、3μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される近似平均距離で隔てられた繊維間結合を含んでもよい。
【0085】
1つの層(例えば、内層体105又は外層体110)の少なくとも1つの構成要素は、1μmから20μmの範囲(例えば、5μmから10μmの範囲)の厚さを有する1以上の繊維を含む微細構造形態を有してもよい。微細構造形態は、早期の環境応力亀裂に抵抗するように設定されてもよい。追加として又は代替として、1つの層(例えば、内層体105又は外層体110)の少なくとも1つの構成要素は、径方向の早期の環境応力亀裂に最適に抵抗するように構成された円形断面を有する1以上の繊維を含む微細構造形態を有してもよい。いくつかの実施形態では、非円形断面を有する繊維によって、環境応力亀裂が、好ましい方向に促進される。いくつかの実施形態では、1つの層(例えば、内層体105又は外層体110)の少なくとも1つの構成要素の微細構造形態は、繊維径の二乗より大きいか、又は、繊維径の二乗に等しい繊維間結合面積を有し、かつ、該層のバルク強度及び/又は剛性を増加させるように構成される。いくつかの実施形態では、微細構造形態は、繊維径の二乗より小さい繊維間結合面積を有し、該層のバルク伸展性を増加させるように構成される。外層体110は、0μmから60μmの範囲(例えば、15μmから45μmの範囲)の繊維間結合距離を有してもよい。
【0086】
繊維は、張力下で、力の印加方向に、より強く配向されるように構成されることができる。繊維の配向量は、任意の方向に対する繊維間の平均角度によって定量化することができる。所与の力によって生じる配向量は、繊維の弾性率、繊維の太さ、繊維の数、及び/又は初期配向に依存し得る。内層体105の1以上の繊維は、長さ方向に対して20°から70°の範囲(例えば、30°から55°の範囲)の平均角度を有してもよい。外層体110の1以上の繊維は、0°から70°の範囲(例えば、20°から45°の範囲)の平均角度を有してもよい。いくつかの実施形態では、1以上の繊維間の角度は、張力によって強度及び伸展性が最適化されるように構成される。いくつかの実施形態では、内層体105及び/又は外層体110は、30%から80%の範囲の平均配向度を有する。1以上の配向繊維は、配向方向に沿った力に対する耐性を提供するように構成されてもよい。繊維は、動脈圧下でのグラフト装置の拡張に対する耐性を有するために径方向に、及び/又は、伸びに対する耐性を有するために軸方向に、配向されてもよい。いくつかの実施形態では、使用前に繊維マトリクスに予備応力を印加することで、1以上の繊維の平均角度を変化させる。例えば、長手方向への配向度を増加させ、使用中に受ける荷重によるその後の配向を低減させるために、繊維マトリクスが、初期長に対して1%から5%の範囲で伸長されてもよい。
【0087】
1つの層(例えば、内層体105又は外層体110)の少なくとも1つの構成要素は、10μmから50μmの範囲(例えば、20μmから30μmの範囲)のバルク細孔径(bulk pore size)を含む微細構造形態を有してもよい。バルク細孔径は、細胞の内方成長、及び/又は、グラフト装置100との組織一体化を促進することができる。いくつかの実施形態では、1つの層(例えば、内層体105又は外層体110)の少なくとも1つの構成要素は、30%から90%の範囲(例えば、40%から60%の範囲)のバルク気孔率(bulk porosity)を含む微細構造形態を有する。バルク気孔率は、細胞の内方成長、及び/又は、グラフト装置100との組織一体化を促進することができる。内腔表面(lumen surface)は、10μmから50μmの範囲(例えば、20μmから40μmの範囲)で均一に分布した複数の細孔径を含む微細構造形態を有してもよい。細孔径は、仮性内膜及び/又は新生内膜へのアンカリング強度(anchoring strength)を向上することができる。
【0088】
1つの層(例えば、内層体105又は外層体110)の少なくとも1つの構成要素は、内向きにテーパが形成された、外向きにテーパが形成された、及び/又は比較的テーパが形成されていない(例えば、長さ方向に沿って比較的均一な径を有する)、径方向を向いたマクロ細孔を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ヒドロゲル封止剤(例えば、以下で説明される封止剤109)の封止強度を向上させるために、及び、該封止剤をマクロ細孔から除去するのに必要な圧力を増加させるために、1以上のマクロ細孔が外向きにテーパされている(例えば、マクロ細孔の径が、径方向外側にかけて徐々に減少している)。いくつかの実施形態では、1以上のマクロ細孔は、1°以上のテーパ角度、又は、3°以上のテーパ角度(例えば、約7.5°のテーパ角度)を有する。マクロ細孔は、外側の組織被膜と内腔103の表面との間に血管の接続を確立するための経路を提供するように構成されてもよい。マクロ細孔を介する血管の接続は、内皮細胞を供給することができる(例えば、内皮細胞が内腔103で集合することができる)。いくつかの実施形態では、マクロ細孔は、10μmから200μmの範囲(例えば、30μmから100μmの範囲、又は、50μmから60μmの範囲)の平均内径を有する。
【0089】
1つの層(例えば、内層体105又は外層体110)の少なくとも1つの構成要素は、封止前に、1mL/分/cm2から3000mL/分/cm2の範囲(例えば、1000mL/分/cm2から2000mL/分/cm2の範囲、又は、1400mL/分/cm2から1600mL/分/cm2の範囲)の透水性を有してもよい。透水性は、グラフト装置100の壁部を介した、細胞、生化学物質、及びガスの送達を促進することができる。
【0090】
1つの層(例えば、内層体105又は外層体110)の少なくとも1つの構成要素は、低レベル及び/又は高レベルのひずみ下で、軸方向及び/又は周方向について等方的又は異方的な弾性特性を有してもよい。いくつかの実施形態では、1つの層(例えば、内層体105又は外層体110)の少なくとも1つの構成要素は、降伏の0%から50%のひずみレベルで、(例えば、周方向及び/又は軸方向に)0.1MPaから10MPaの範囲の弾性係数を有する(例えば、0.2MPaから5MPaの範囲、又は、0.2MPaから1MPaの範囲の弾性係数を有する)。いくつかの実施形態では、1つの層(例えば、内層体105又は外層体110)の少なくとも1つの構成要素は、降伏の50%のひずみレベルで、(例えば、周方向及び/又は軸方向に)1MPaから20MPaの範囲(例えば、1MPaから10MPaの範囲)の弾性係数を有する。弾性係数は、吻合部での応力集中を低減するために、動脈の弾性係数範囲を模するように設定されてもよい。
【0091】
1つの層(例えば、内層体105又は外層体110)の少なくとも1つの構成要素は、低レベル及び/又は高レベルのひずみ下、並びに/若しくは、低レベル及び/又は高レベルの作動周波数下で、軸方向及び/又は周方向について等方的又は異方的な粘弾性特性を有してもよい。1つの層(例えば、内層体105又は外層体110)の少なくとも1つの構成要素は、0Hzから20Hzの作動周波数範囲下で、(例えば、周方向及び/又は軸方向のいずれかに)1kPa・Sから1MPa・Sの範囲(例えば、5kPa・Sから100kPa・Sの範囲、又は、20kPa・Sから30kPa・Sの範囲)のレベルのフォークトモデルの粘性定数を有してもよい。粘性定数は、吻合部での応力集中を低減するために、動脈の粘弾性率範囲を模するように設定されてもよい。
【0092】
1つの層(例えば、内層体105又は外層体110)の少なくとも1つの構成要素は、1μmから50μmの範囲(例えば、5μmから30μmの範囲、又は、10μmから20μmの範囲)の高さ及び/又は幅のフィーチャを含む表面テクスチャを有してもよい。表面テクスチャの寸法は、細胞の接着、増殖、及び合成を促進するように、或いは、生体材料の宿主組織一体化を媒介するように設定されてもよい。
【0093】
内層体105は、外層体110のデュロメータ硬さより低いデュロメータ硬さを有してもよい。いくつかの実施形態では、内層体105の少なくとも1つの構成要素は、ショア硬さ20Aからショア硬さ90Aの範囲のデュロメータ硬さを有し、外層体110の少なくとも1つの構成要素は、ショア硬さ35Dからショア硬さ70Dのデュロメータ硬さを有する。いくつかの実施形態では、内層体105の少なくとも1つの構成要素は、ショア硬さ40Aからショア硬さ87Aの範囲のデュロメータ硬さを有し、外層体110の少なくとも1つの構成要素は、ショア硬さ40Dからショア硬さ65Dの範囲のデュロメータ硬さを有する。いくつかの実施形態では、内層体105の少なくとも1つの構成要素は、ショア硬さ77Aからショア硬さ85Aの範囲のデュロメータ硬さを有し、外層体110の少なくとも1つの構成要素は、ショア硬さ50Dからショア硬さ60Dの範囲のデュロメータ硬さを有する。内層体105及び外層体110のデュロメータ硬さは、それぞれ、グラフト装置100に充分な強度及び/又はねじれ耐性を提供するように設定されてもよい。
【0094】
内層体105は、外層体110の厚さより薄い厚さを有してもよい。いくつかの実施形態では、内層体105は、200μmから800μmの範囲の厚さを有し、外層体110は、300μmから1200μmの範囲の厚さを有する。いくつかの実施形態では、内層体105は、300μmから600μmの範囲の厚さを有し、外層体110は、500μmから900μmの範囲の厚さを有する。いくつかの実施形態では、内層体105は、400μmから500μmの範囲の厚さを有し、外層体110は、600μmから700μmの範囲の厚さを有する。内層体105及び外層体110の厚さは、それぞれ、グラフト装置100に充分な強度及び/又はねじれ耐性を提供するように設定されてもよい。
【0095】
内層体105は、外層体110の親水性より高い親水性を有してもよい。いくつかの実施形態では、内層体105は、0°から65°の範囲の水接触角度を有し、外層体110は、50°から130°の範囲の水接触角度を有する。いくつかの実施形態では、内層体105は、20°から50°の範囲の水接触角度を有し、外層体110は、65°から120°の範囲の水接触角度を有する。いくつかの実施形態では、内層体105は、30°から40°の範囲の水接触角度を有し、外層体110は、90°から110°の範囲の水接触角度を有する。内層体105及び外層体110の水接触角度は、それぞれ、グラフト装置100の血栓耐性及び組織一体化を促進するように設定されてもよい。
【0096】
或いは、内層体105は、外層体110の疎水性より高い疎水性を有してもよい。いくつかの実施形態では、内層体105は、50°から130°の範囲の水接触角度を有し、外層体110は、0°から65°の範囲の水接触角度を有する。いくつかの実施形態では、内層体105は、65°から120°の範囲の水接触角度を有し、外層体110は、20°から50°の範囲の水接触角度を有する。いくつかの実施形態では、内層体105は、90°から100°の範囲の水接触角度を有し、外層体110は、30°から40°の範囲の水接触角度を有する。内層体105及び外層体110の水接触角度は、それぞれ、グラフト装置100の接着耐性を向上させタンパク質の吸着を促進するように設定されてもよい。
【0097】
内層体105及び/又は外層体110は、例えば、一部又は全部が架橋されたゼラチン、一部又は全部が架橋されたコラーゲン、一部又は全部が架橋されたエラスチン、一部又は全部が架橋されたフィブリン、一部又は全部が架橋されたポリエチレングリコール、一部又は全部が架橋されたポリエチレンオキシド、一部又は全部が架橋されたコンドロイチン硫酸、一部又は全部が架橋されたデルマタン硫酸、一部又は全部が架橋されたヘパラン硫酸、一部又は全部が架橋されたアルギン酸、一部又は全部が架橋されたアルブミン、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される封止剤等のヒドロゲル封止剤(封止剤109)を更に含んでもよい。内層体105及び外層体110は、グルタルアルデヒド、ゲネピン、ホルムアルデヒド、トランスグルタミナーゼ、ジビニルスルホン、塩化カルシウム、及びこれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つによって部分的に架橋されるゼラチンヒドロゲルを用いて封止されてもよい。
【0098】
内層体105は、外層体110のヒドロゲルの耐久性より高い耐久性を有するヒドロゲルを用いて封止されてもよい。いくつかの実施形態では、内層体105は、1か月から6か月の範囲の期間で完全に分解するように構成されたヒドロゲルで封止され、外層体110は、2週から4か月の範囲の期間で完全に分解するように構成されたヒドロゲルで封止される。いくつかの実施形態では、内層体105は、2か月から4か月の範囲の期間で完全に分解するように構成されたヒドロゲルで封止され、外層体110は、1か月から3か月の範囲の期間で完全に分解するように構成されたヒドロゲルで封止される。いくつかの実施形態では、内層体105は、2か月から3か月の範囲の期間で完全に分解するように構成されたヒドロゲルで封止され、外層体110は、6週から2か月の範囲の期間で完全に分解するように構成されたヒドロゲルで封止される。内層体105のヒドロゲル封止剤の耐久性は、血液漏れに対する封止を促進するように設定され、外層体110のヒドロゲル封止剤の耐久性は、周辺組織との一体化を促進するように設定されてもよい。
【0099】
或いは、内層体105は、外層体110のヒドロゲルの耐久性より低い耐久性を有するヒドロゲルを用いて封止されてもよい。いくつかの実施形態では、内層体105は、2週から4か月の範囲の期間で完全に分解するように構成されたヒドロゲルで封止されて、外層体110は、1か月から6か月の範囲の期間で完全に分解するように構成されたヒドロゲルで封止される。いくつかの実施形態では、内層体105は、1か月から3か月の範囲の期間で完全に分解するように構成されたヒドロゲルで封止されて、外層体110は、2か月から4か月の範囲の期間で完全に分解するように構成されたヒドロゲルで封止される。いくつかの実施形態では、内層体105は、6週から2か月の範囲の期間で完全に分解するように構成されたヒドロゲルで封止され、外層体110は、2か月から3か月の範囲の期間で完全に分解するように構成されたヒドロゲルで封止される。内層体105のヒドロゲル封止剤の耐久性は、新生内膜の形成を促進するように設定され、外層体110のヒドロゲル封止剤の耐久性は、新生内膜の形成中、充分な封止を確保するように設定されてもよい。
【0100】
内層体105は、外層体110の表面粗さより低い表面粗さを有してもよい。いくつかの実施形態では、内層体105は、ISOグレードスケール(N)でN=6からN=11の範囲の表面粗さを有し、外層体110は、N=12の表面粗さを有する。いくつかの実施形態では、内層体105は、N=10の表面粗さを有し、外層体110は、N=9からN=11の範囲の表面粗さを有する。いくつかの実施形態では、内層体105は、N=9からN=10の範囲の表面粗さを有し、外層体110は、N=10からN=11の範囲の表面粗さを有する。内層体105及び外層体110の表面粗さは、それぞれ新生内膜の形成及びグラフト装置100の周辺組織との一体化を促進するように設定されてもよい。
【0101】
内層体105及び外層体110は、それぞれ、デュロメータ硬さ、弾性率、分子量、分子量分布、降伏強度、極限強度、伸び率、クリープ耐性、応力緩和耐性、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される互いに同様な又は互いに異なる特性を有する、互いに同様な又は互いに異なる生体断片性材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、内層体105は、外層体110の弾性率より75%低い弾性率を有する。例えば、内層体105は、ねじれ耐性を向上させるべく圧縮性をより高めるために、より低い弾性率を有するように構成され、外層体110は、たわみ及び動脈応力下で、構造的完全性を保持するための強度を維持することができる。いくつかの実施形態では、内層体105は、内層体105の軸方向への柔軟性及び伸展性、並びに、外層体110の拡張耐性を最適化するために、外層体110の伸び率より25%高い伸び率を有する。いくつかの実施形態では、内層体105は、新生動脈が動脈圧に曝される速度を最適化するために、外層体110の応力緩和耐性より低い応力緩和耐性を有する。例えば、内層体105のより低い応力緩和耐性によって、再構築組織が完全に成長するまでの間、再構築組織を動脈圧に徐々に曝すことを可能にし、外層体110は、新生動脈が完全に発達するまでの間、構造的完全性を維持するために、より強い応力緩和耐性を有してもよい。
【0102】
内層体105及び/又は外層体110は、1以上の生体吸収性、生分解性、生体断片性、及び/又は生体耐久性を有する材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、内層体105は、第1の所定速度で生分解及び/又は生体断片化するように構成され、外層体110は、(例えば、第1の所定速度と異なる)第2の所定速度で生分解及び/又は生体断片化するように構成される。例えば、外層体110は、内層体105よりも低い速度で生分解及び/又は生体断片化するように構成することができ、それにより、外層体110内に含まれるあらゆる再構築組織構造及び内層体105を持続的に支持し、動脈圧に曝されている間、経時的に組織構造の幾何学的完全性又は物理的完全性を維持することができる。いくつかの実施形態では、外層体110は、少なくとも30000ダルトンの平均分子量を有するホモポリマーを含む繊維マトリクスを含み、内層体105は、外層体110の平均分子量より10%以上大きい平均分子量を有するホモポリマー、コポリマー、ポリマーアロイ、及び/又は層状ポリマーを含む繊維マトリクスを含む。いくつかの実施形態では、外層体110は、少なくとも35000ダルトンの平均分子量を有し、内層体105は、外層体110の平均分子量より10%以上大きい平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、外層体110は、少なくとも40000ダルトンの平均分子量を有し、内層体105は、外層体110の平均分子量より10%以上大きい平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、外層体110は、より迅速に、血管の機能的構成要素(例えば、内皮の形成、抗血栓性、中膜組織の成長、及び/又は血管活性)に再構築されるように構成及び配置され、一方、内層体105は、より遅い速度で、血管の機能的構成要素に再構築され、再構築中は(例えば、動脈圧に抵抗して支持するために)血管を持続的に支持する。いくつかの実施形態では、内層体105は、少なくとも30000ダルトンの平均分子量を有するホモポリマー、コポリマー、ポリマーアロイ、及び/又は層状ポリマーを含む繊維マトリクスを含み、外層体110は、内層体105の平均分子量より10%以上大きい平均分子量を有するホモポリマーを含む繊維マトリクスを含む。いくつかの実施形態では、内層体105は、少なくとも35000ダルトンの平均分子量を有し、外層体110は、内層体105の平均分子量より10%以上大きい平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、内層体105は、少なくとも40000ダルトンの平均分子量を有し、外層体110は、内層体105の平均分子量より10%以上大きい平均分子量を有する。
【0103】
グラフト装置100は、
図3を参照して以下で述べるように、電界紡糸法を用いて製造されてもよい。電解紡糸装置は、ノズルとコレクタとの間の電圧を利用して、ポリマー溶液から繊維を作製する。ノズル電圧及びコレクタ電圧の各々は、繊維がどのように作製されるかについて影響を与え得る。いくつかの実施形態では、繊維の堆積を制御するために、ノズル電圧が7kVから18kVの範囲に制御され、コレクタ電圧が-0.5kVから-3.5kVの範囲に制御される。いくつかの実施形態では、繊維の堆積を制御するために、ノズル電圧が5kVから20kVの範囲に制御され、コレクタ電圧が0kVから-5kVの範囲に制御される。
【0104】
いくつかの実施形態では、内層体105及び外層体110は、それぞれ複数の副層(例えば2つ以上の副層)の同心構造を有する。各副層内で、繊維の特性は、プロセス中の変数を変更することで、及び/又は、完成したマトリクスを変数増大環境(variable aging environment)に曝すことで、生体吸収速度、生分解速度、及び/又は生体断片化速度に影響を与えるように変更されてもよい。例えば、電界紡糸中にノズルに印加される電圧を変化させることで、射出される繊維が受ける力が変化し、(例えば電圧変化を介して)繊維径を変化させることができる。繊維径が変化すると、生分解及び/又は生体断片化に対する感受性もまた変化する(例えば、小径の繊維は、大径の繊維よりも高い感受性を有する)。いくつかの実施形態では、ノズル電圧を20kV以上から5kV以下へ変化させることにより、電圧変化の間、繊維径の漸増をもたらす。いくつかの実施形態では、ノズル電圧は、18kVから7kVへ変化される。いくつかの実施形態では、繊維径は、ポリマーの流量又は粘度によって選択される。ポリマーの流量を減少させて繊維径を減少させると、生体吸収、生分解、及び/又は生体断片化に対する繊維の感受性を高めることができる。
【0105】
或いは、繊維径は、電界紡糸中に溶液の粘度を変化させることで制御されてもよい。粘度が減少すると、繊維径もまた減少し、これにより、生体吸収、生分解、及び/又は生体断片化に対する繊維の感受性を高めることができる。これは、溶液温度を変化させることで、及び/又は、溶媒濃度に対するポリマーの希釈度を増加させることで達成することができる。溶液温度は、溶液を含む血管を双方向的に加熱及び/又は冷却することで変化させることができ、これは、例えば、生理食塩水等の伝熱性流体を循環させるなどの様々な方法で達成することができる。ポリマー溶液の濃度は、濃度の異なる2本のシリンジを同時にノズルに測り取ることで、漸次変化させられてもよい。低粘度シリンジの比率を増加させ、高粘度シリンジの比率を低下させることで、それらの組み合わせの粘度が低下し、それにより、繊維径を減少させることができる。
【0106】
内層体105及び/又は外層体110の少なくとも1つの繊維は、デュロメータ硬さ、分子量、表面張力、弾性係数、降伏強度、伸び率、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される異なる特性を有する2以上の材料を含む同心円状層を有してもよい。例えば、繊維は、互いに比較的同様な肉厚又は互いに異なる肉厚を有する2つの異なる材料による共押出し繊維であってもよい。いくつかの実施形態では、多層構造は、周囲の層よりも生体吸収速度、生分解速度、及び/又は生体断片化速度が低い中間層を含む。いくつかの実施形態では、内層体105及び/又は外層体110は、異なる酸化特性及び加水分解特性を有する1以上の材料を含む。
【0107】
内層体105及び/又は外層体110は、ハードセグメント及びソフトセグメントを有するブロック共重合体を含んでもよい。いくつかの実施形態では、内層体105及び/又は外層体110のブロック共重合体は、ハードセグメント(例えば、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI))の含有率よりも、ソフトセグメント(例えば、相溶化剤としてPHMOが添加されたポリジメチルシロキサン(PDMS)、又は、PHMOが添加されていないポリジメチルシロキサン等)の含有率が高い。いくつかの実施形態では、内層体105及び/又は外層体110のブロック共重合体は、50%のソフトセグメントと50%のハードセグメントとを含む。いくつかの実施形態では、内層体105及び/又は外層体110のブロック共重合体は、60%のソフトセグメントと40%のハードセグメントとを含む。いくつかの実施形態では、内層体105及び/又は外層体110のブロック共重合体は、67.5%のソフトセグメントと32.5%のハードセグメントとを含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、内層体105及び/又は外層体110は、シロキサン含有セグメント化熱可塑性ポリウレタン、芳香族ポリカーボネートシリコーン熱可塑性ポリウレタン、脂肪族ポリカーボネートシリコーン熱可塑性ポリウレタン、延伸ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテル熱可塑性ポリウレタン、シリコーン、ポリエステルテレフタレート、シリコーンポリウレタン、ポリエーテルポリカプロラクトン、ポリ(スチレン-ブロックアミド-イソブチレン-ブロック-スチレン)、ポリエステルウレタン尿素、ポリグリセロールセバケート、シルクフィブロイン、PMMA、ポリブチルメタクリレート、シアノアクリレート、FEP、ポリ(エーテルケトン)、PEVA、ポリ(オレフィン)、PVDF、PLA、PLLA、PGA、PLGA、PEUU、P4HB、PEG、PEO、フィブリン、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、キトサン、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、生体断片性、生体吸収性、生分解性、生体侵食性、及び/又は生体耐久性を有する材料を含む。いくつかの実施形態では、内層体105及び/又は外層体110は、生体断片化及びそれに続く組織一体化を促進するように構成された材料を含む(例えば、内層体105が、酸化可能なポリエーテル成分(例えば、PHMO又はPTMO)又は加水分解可能な成分(例えば、ポリカーボネート)を含むポリマーを有する)。
【0109】
図1に示すように、外層体110は、内層体105の一部を露出させるために、内層体105を、渦巻状又は螺旋状で、周方向に取り囲むように構成及び配置されてもよい。いくつかの実施形態では、外層体110は、内層体105を完全に取り囲むように適用され、その後、外層体110を所望の形状に成形するために(例えば、図示のように、外層体110に、渦巻状、或いは螺旋状の溝部115を凹設するために)、ツール(例えば、以下で述べる鋸又は他のツール)を用いて外層体110の1以上の部分が除去される。他の実施形態では、外層体110は、例えば、外層体110が、内層体105に対して図示のように(例えば、3Dプリンタを用いて溝部115を固定形成して)配置される場合のように、材料を除去するステップを必要とすることなく、所望のパターンで内層体105に適用される。グラフト装置100の溝部115は、他の機能を有するだけでなく、内層体105にねじれ耐性を提供するように、又は、内層体105を露出するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、溝部115は、外層体110に沿って配置された、円周状の溝、部分的に円周状の溝、及び/又は円周をセグメント化した形状の溝を有する一連の複数の溝を含む。溝部115は、クラムシェル状、オープン・セルメッシュ状及び/又はクローズド・セルメッシュ状、同心円状、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される形状を有してもよい。いくつかの実施形態では、溝部115の所望の形状は、移植直前に追加又は除去することができる。溝部115は、ピッチ及び/又は厚さが一定でなくてもよい。いくつかの実施形態では、溝部115は、個々の位置に分離されている。
【0110】
溝部115は、図示の山部116及び谷部117を画定する。山部116は、150μmから2000μmの範囲(例えば、300μmから1000μmの範囲)の高さを有してもよい。谷部117は、150μmから2000μmの範囲(例えば、300μmから1000μmの範囲)の幅を有してもよい。ピッチ118は、400μmから4000μmの範囲(例えば、600μmから2400μmの範囲)の距離を有してもよい。山部116は、グラフト装置100が所定半径の周りに配置されたとき、グラフト装置100の50%を超える楕円化を防止するように、又は、そのような楕円化に抵抗するように構成することができる。山部116の強度は、グラフト装置100の内径に依存する定数と断面の極慣性モーメント(I)の積に正比例し得る。グラフト装置100がより小さい径(例えば、6mm以下の径)を有するいくつかの実施形態では、グラフト装置100は、より低い高さを有する山部116と、より狭い幅を有する谷部117と、より短い距離を有するピッチ118とを含む。グラフト装置100がより大きい径(例えば、6mm以上の径)を有するいくつかの実施形態では、グラフト装置100は、より高い高さを有する山部116と、より広い幅を有する谷部117と、より長い距離を有するピッチ118とを含む。細孔104は、山部116及び/又は谷部117に配置されてもよい。
【0111】
内腔103の径は、3mmから30mmの範囲(例えば、4mmから6mmの範囲)であってもよい。いくつかの実施形態では、内腔103及び/又は外層体110は、グラフト装置100の長さ方向に沿って径が比較的一定な表面を含む。いくつかの実施形態では、内腔103及び/又は外層体110は、径が一定でない表面(例えば、グラフト装置100の少なくとも一部分に沿ってテーパ形状を有する表面)を含む。
【0112】
図1のグラフト装置100は、連続的な単管構造で示されているが、いくつかの実施形態では、グラフト装置は、複数のセグメントを有する(例えば、グラフト装置は、二股、三股、又は、四股であるか、或いは、1以上の流出管に接続された1以上の流入管を有する他の構造を含む)。
【0113】
更に
図1Aを参照すると、本発明の概念の
図1のグラフト装置の端面図が示されている。グラフト装置100は、厚さT
D及び内径ID
ILを有する。いくつかの実施形態では、グラフト装置100は、300μmから2500μmの範囲(例えば、350μmから1050μmの範囲)の厚さT
Dを有する。いくつかの実施形態では、グラフト装置100は、3mmから30mmの範囲(例えば、4mmから6mmの範囲)の範囲の内径ID
ILを有する。内層体105は厚さT
ILを有し、外層体110は厚さT
OLを有する。いくつかの実施形態では、内層体105は、300μmから2000μm(例えば、350μmから400μm等)の範囲の厚さT
ILを有し、外層体110は、700μmから2000μmの範囲(例えば、750μmから850μmの範囲)の範囲のT
OLを有する。グラフト装置100の厚さT
Dは、内層体105の厚さT
IL及び外層体110の厚さT
OLの和であってもよい。
【0114】
以下では、グラフト装置100の製造方法の一例を説明する。以下では、グラフト装置100の製造方法の一例を説明する。内層体105及び外層体110を含むグラフト装置100は、例えば、
図3のシステム10を参照して以下で説明されるグラフト装置のように、1以上のツール及び/又は他の装置を用いて製造することができる。
【0115】
内層体105は、マンドレル(以下で説明されるマンドレル250)に適用される1以上の材料を含んでもよい。1以上の材料は、(例えば、電界紡糸プロセスで)内層体105が所望の長さ及び厚さを有する管状繊維マトリクスを含むまで適用されてもよい。その後、外層体110は、外層体110が内層体105を取り囲む所望の長さ及び厚さを有する繊維マトリクスを含むまで、1以上の材料を、内層体105を取り囲むように(例えば、内層体105がマンドレル250に対して配置される状態に維持される場合のように、内層体105の全部又は一部を取り囲むように)適用することで形成されてもよい。
【0116】
その後、外層体110の1以上の部分が(例えば、鋸、レーザ、及び/又は他の切削ツールを用いて)除去されてもよい。いくつかの実施形態では、矩形状、V字状、又は他の形状を有する溝部(すなわち、図示の溝部115)が、外層体110の長さ方向の全部又は一部に沿って形成され、それにより、山部116及び谷部117が形成される。溝部115は、グラフト装置100に沿って螺旋状に配置される溝(例えば、一定のピッチ及び/又は一定でないピッチを有する溝)を含んでもよい。溝部115は、外層体110の壁部の全体を貫通してもよいし(
図1に示す)、又は、外層体110の壁部の一部のみを貫通してもよい。いくつかの実施形態では、溝部115は、外層体110の壁部の全体を貫通し(例えば、外層体110の外側の壁から内側の壁まで延び)、更に、内層体105の少なくとも一部まで延びてもよい(例えば、少なくとも内層体105の最外部まで延びてもよい)。いくつかの実施形態では、溝部115は、外層体110の壁部の全体を貫通していない。いくつかの実施形態では、内層体105内に、溝部(例えば、外層体110の溝部115に追加される第2の溝部)が形成されている(例えば、溝が、内層体105の内側の壁から延びている)。
【0117】
細孔は、例えば、以上で説明した細孔104のように、グラフト装置100に形成及び/又は作製されてもよい。細孔104は、例えば、以上で説明した、谷部117から内層体105を貫通して内腔103まで延びる細孔104のように、1以上の位置に配置されてもよい。細孔104は、グラフト装置100の融点以上に加熱した金属ピンをグラフト装置100に挿し入れて、開口部を溶融形成することで細孔104を形成する方法、レーザを用いてグラフト装置100の材料をアブレーションすることで細孔104を形成する方法、ドリル等の機械的な切削ツールを用いてグラフト装置100の材料を切削することで細孔104を形成する方法、グラフト装置100の内腔103と外表面との間に橋絡された電界アークを用いて細孔104を形成する方法、グラフト装置100を(例えば、電界紡糸法を用いて)製造する前に、細孔104の形状を有する溶解可能な材料をマンドレルに印刷することで細孔104を形成する方法(例えば、電界紡糸完了時に、材料が溶解して、電界紡糸繊維マトリクスの表層が除去される方法)、及び、マンドレル(例えば、負に帯電したシェルと、マンドレルの表面に設けられる正に帯電したフィーチャ(ドット等)とを有し、電界紡糸中、正に帯電したフィーチャによって、フィーチャ領域への繊維状マトリクスの堆積が防止されているマンドレル)を用いて細孔104を形成する方法に従ってグラフト装置100(例えば、内層105及び/又は外層110)に形成及び/又は作製されてもよいが、これらの方法に限定されるものではない。
【0118】
グラフト装置100は、細孔104を形成した後、ゼラチン溶液中に沈降されてもよい。いくつかの実施形態では、グラフト装置100内の空気を除去するために、(例えば真空トラップによって)真空が印加される。いくつかの実施形態では、ゼラチン溶液をグラフト装置100の全体に行きわたらせるために(例えば、より均一にゼラチン溶液を適用するために)、グラフト装置100に、(例えば真空トラップによって)真空が印加される。いくつかの実施形態では、ゼラチン溶液をグラフト装置100の全体に行きわたらせるために、グラフト装置100に超音波が適用される。いくつかの実施形態では、ゼラチン溶液は架橋剤(例えばグルタルアルデヒド)を更に含む。ゼラチン溶液は、例えば、細孔104及び/又は溝部115をゼラチン溶液で満たすために、グラフト装置100内に取り入れられてもよい。いくつかの実施形態では、1以上の溝部115の少なくとも一部が、ゼラチン溶液で満たされている(例えば、1以上の溝部115の全部が、ゼラチン溶液で満たされている)。いくつかの実施形態では、1以上の溝部115は、ゼラチン溶液で満たされていない。いくつかの実施形態では、グラフト装置100の内層体及び/又は外層体の表面に、ゼラチン溶液の層が形成されている。いくつかの実施形態では、グラフト装置100の内層体及び/又は外層体の表面に、ゼラチン層は形成されない。
【0119】
グラフト装置100は、経時的に宿主組織内に完全に組み込まれるように構成されてもよい。患者の細胞は、グラフト装置100内で、浸潤、増殖し、及び/又は、細胞外マトリクスを合成し、自己組織を用いて再構築を行うことができる。非再吸収性の構造性足場の機械的特性は、再構築期間にわたって拡張を防ぐのに充分な耐久性を提供することができる。その後、足場は物理的に破壊されてもよく(すなわち生体断片化してもよく)、それにより、一体化組織は内部の血圧による周期応力を受ける。
【0120】
出願人は、本発明の概念のシステム、方法、及び装置を用いて、ヒツジに対して実験を行った。実験に用いた装置は、7.8±1.7μmの繊維径及び25.8±2.8N/cmの引張弾性率(5%のひずみレベル下で計算)を有する、AortechBiomaterials社の電気紡糸製ElastEon(商標登録)コポリマーから形成したポリマーマトリクスを含む。出願人は、グラフト装置100の再構築は、急性再構築フェーズ(例えば、移植から1か月以内の再構築)、亜慢性再構築フェーズ(例えば、移植から1か月~6か月の再構築)、慢性再構築フェーズ(例えば、移植から6か月以降の再構築)の3つのフェーズで発生することを観測した。
【0121】
次に
図4を参照する。出願人は、グラフト装置100の移植から3か月~6か月間のデータを収集し、一体化された組織は、例えば、その後の拡張に抵抗できるような、充分な強度を有することを示した。図示の通り、A列(移植から30日後)は、急性再構築フェーズで収集されたデータを示し、B列(移植から90日後)及びC列(移植から180日後)は、亜慢性再構築フェーズで収集されたデータを示し、また、D列(移植から365日後)及びE列(移植後から730日後)は、慢性再構築フェーズで収集されたデータを示している。また、1行目は、大腿動脈バイパス移植術が施された慢性的なヒツジモデル(chronic sheep femoral bypass implant model)を血管造影法を用いて経時的に撮影した一連の画像であり、2行目は、同ヒツジモデルから経時的に採取され、モバット・ペンタクローム染色が施された、グラフトの中間位置における切片の低倍率画像であり、また、3行目は、同ヒツジモデルから経時的に採取され、ヘマトキシリン・エオジン染色が施された、グラフトの中間位置における切片の高倍率画像である。
【0122】
急性再構築フェーズ中に出願人によって観察されたように、動脈圧下でのグラフト装置の膨張及び/又はそれに続く塑性的な拡張は、防止、或いは制限され、それにより、血流がより高速であって途切れのない状態に維持されていた。グラフト装置の内腔の内面には、仮性内膜の形成が見られた。マクロファージ及び線維芽細胞は、グラフトの生体断片性材料内に入り込むことが観測された。亜慢性再構築フェーズ中に出願人によって観察されたように、グラフト装置の生体断片性材料は、高度に血管新生された繊維状組織の連続体内に埋め込まれるにつれて、徐々に物理的断片化を示した。ポリマー材料が生体断片化すると、成長中の組織が、グラフト装置に物理的支持を提供するようになった。内腔の内面では、新生内膜の安定化及び新しい内皮の形成が見られた。亜慢性再構築フェーズの後期には、弾性線維は、再構築されたグラフト装置の新生中膜層を覆う動脈様の外弾性板(EEL)及び内弾性板(IEL)に似た構造に、組織化及び凝縮した。慢性再構築フェーズ中に出願人によって観察されたように、内腔の内面で、新生内膜の成熟化及び新しい弾性板の形成が見られた。また、グラフト装置は、拍動による周期応力を受けていた。移植から365日後では、内腔の安定化及び組織の成熟化が更に見られた。
【0123】
次に
図5を参照する。出願人は、亜慢性再構築フェーズの後期には、新生中膜に、平滑筋細胞及び筋線維芽細胞が集合することを実証するデータを収集した(これは、α-平滑筋アクチン(a-SMA)の発現により証明される)。加えて、内皮は、90日目までに、グラフト装置内でコンフルエンスに達した。
図5には、参考として、グラフト装置の一部を表す「W」の符号、及び、グラフト装置の内腔の一部を表す「L」の符号を付している。すべての経過日数で、グラフトに関連した炎症は限定的であった。この炎症は、マクロファージ及び異物巨細胞によって媒介される、最小度から軽度の局所的異物反応であるとした。炎症が限定的であることは、CD163を用いた免疫組織化学的染色法によって、マクロファージの経時的な存在及び局在が示されることで確認された。
【0124】
次に
図6を参照する。出願人は、CD31及びフォン・ヴィレブランド因子(vWF)を用いた免疫組織化学的染色法によるデータを収集し、それにより、全コホートの処理済SVGで、内腔を取り囲む細胞が内皮細胞を含むことが確認された。慢性再構築フェーズでは、ポリマー材料は、生体断片化し、組織化が進行する繊維筋組織内に埋め込まれ続けていた。この再構築組織による成熟と休眠が続くことで、グラフト装置は、最終的に動脈圧下での拡張を防ぐ役割を担う、組織の連続体内に一体化された。また、EEL、IEL、及び新生中膜は、成熟と安定化を続け、それにより、再構築されたグラフト装置は、動脈用の特徴を有する安定した導管の様相となった。
【0125】
次に
図7を参照する。出願人は、血管造影法を用いて、グラフト装置の幾何学的安定性を定量化するためのデータを収集した。いくつかの実施形態では、グラフト装置の幾何学的安定性のベースライン(例えば、患者の体内への移植後に起こる再構築の前の初期内径及び/又は初期外径)は、約4.0mm、約4.5mm、約5.0mm、約5.5mm、約6.0mm、約6.5mm、約7.0mm、約7.5mm、又は約8.0mmである。ここで、出願人は、グラフト装置の幾何学的安定性のベースラインが、約4.0mmであることを観察した。移植から30日後では、グラフト装置の幾何学的安定性のベースライン(例えば再構築後の直径)は、4.02±0.38mmであった。移植から90日後では、グラフト装置の幾何学的安定性のベースラインは、3.63±0.86mmであった。移植から180日後では、グラフト装置の幾何学的安定性のベースラインは、3.3±0.25mmであった。移植から365日後では、グラフト装置の幾何学的安定性のベースラインは、3.59±0.37mmであった。移植から730日後では、グラフト装置の幾何学的安定性のベースラインは、3.74±0.46mmであった。
【0126】
次に
図8を参照する。出願人は、グラフト装置の組織形態計測を定量化するためのデータを収集した。出願人は、新生内膜過形成(IH)を制御することで、腔内狭窄の進行が防止され得ることを観察した。グラフト装置の全体的な再構築応答は、繊維性結合組織被膜から外膜への変化を伴う。繊維性結合組織被膜から外膜への変化は、動脈圧下での拡張に対するバットレス化、制御不能なIHの防止、又は、グラフトが新生内膜の再構築により経時的に中膜を成長させるように被膜を変化させることによっても達成することができる。
【0127】
次に
図9を参照する。出願人は、EELとIELとの間に安定した新生中膜が成長したことを実証するデータを収集した。また、新生中膜では平滑筋細胞が集合し、新生中膜は、内皮細胞で覆われている。出願人により、このプロセスは、予測可能で再現性があることが観察された。
【0128】
グラフト装置100と一体化する組織は、血液漏れを防止するための封止を提供してもよい。いくつかの実施形態では、グラフト装置100は、移植中の血液漏れ、及び/又は、宿主組織が充分に内成長するまでの血液漏れを、一時的に防止するように構成された封止を含む。例えば、グラフト装置100は、移植から2、3か月以内に再吸収されるように意図され、かつ、グルタルアルデヒドで部分的に架橋された、ETSPグレードの市販のゼラチンを含んでもよい。
【0129】
出願人は、グラフト装置100の内側表面が循環血液から取り込まれた1以上のタンパク質で覆われ、薄状フィブリン膜が仮性内膜を形成し始めていることを観察した。同時に、繊維マトリクスの内側表面と外側表面の両方では、マクロファージ及び多核巨細胞が蓄積しており、これらの細胞は、再吸収性ヒドロゲル封止剤を、酵素的に分解/加水分解し出すことができる。移植から数週間が経過するまでに、相当数の細胞(例えば、マクロファージ、線維芽細胞、及び筋線維芽細胞等)が、繊維マトリクス及び細孔104内に浸潤する。また、この期間では、線維芽細胞及び筋線維芽細胞が仮性内膜に集合し、仮性内膜が新生内膜へと再構築される。移植から約6週間~約10週間後までには、繊維マトリクス及び細孔104は細胞へ完全に浸潤し、大部分の封止剤が再吸収される。これらの細胞は、細胞自身の循環支持(circulatory support)をリクルートし、繊維マトリクスの周囲及び細孔104の内部に小血管が形成される。また、細胞は、経時的に増殖及び細胞外マトリクス合成を行い、それにより、繊維マトリクスに応力を与える。更に、繊維は、生物学的環境に曝されて酸化することで脆化し、それにより、繊維に亀裂が入り始める。この亀裂が進行すると、繊維マトリクスの生体断片化が生じる。生体断片化が生じると、繊維マトリクスの内部及び周囲の組織が、循環血液による拍動応力に曝されることとなる。インプラントの内部及び周囲の組織は、拡張に抵抗するために、充分に厚く成熟することとなる。組織は、拍動応力に応答して再構築し始め、その結果、動脈様の特徴が生じる。細孔104内で成長する微小血管が更に新生内膜へ向かうと、内表面に向かって新しい内皮細胞が送達され、内表面に沿って広がる。
【0130】
次に
図1Bを参照すると、本発明の概念のテーパ形状を有するグラフト装置の断面図が示されている。グラフト装置100の内径IDは、グラフト装置100の長さに沿ってテーパされていてもよい。例えば、第1の部分101の内径ID
1は、第2の部分102の内径ID
2よりも大きくてもよい。グラフト装置100は、(例えば、内腔103に断面積の急激な減少が存在せず、かつ、流路が大幅なデッドスペースを有さないことを確実にするために、)グラフト装置100の近位端及び遠位端で同等に一致するような、グラフト装置100の長さに依存し得るテーパ角度A
1を有してもよい。いくつかの実施形態では、テーパ角度A
1は、arctan(0.45D/L)にほぼ等しい。ここで、Dはグラフト装置100の最大内径であり、Lはグラフト装置100の長さである。いくつかの実施形態では、テーパ角度A
1は、少なくとも1°以上(例えば、少なくとも3°以上、又は、少なくとも5°以上)である。図示の通り、
図1Bのグラフト装置100は単層を含む。いくつかの実施形態では、
図1Bのグラフト装置100は、例えば、
図1及び
図1Aを参照して上記で説明した内層体105及び外層体110等の多層を含む。
【0131】
次に
図2を参照すると、本発明の概念のグラフト装置の断面図が示されている。
図2のグラフト装置100は、内層体105と、それを取り囲む外層体110とを含み、図示の通り、螺旋状の溝部115が外層体110を貫通している。
図2のグラフト装置100は、上述の
図1のグラフト装置100に対応する構成要素(例えば細孔104)と同様の構成及び配置を有する1以上の構成要素を含んでもよい。
【0132】
グラフト装置100は、1以上のコーティング(すなわち、内層体105の内側表面に配置されて示されているコーティング108)を含んでもよい。コーティング108は、抗血栓性(すなわち血栓耐性)を有するコーティングであってもよい。コーティング108は、例えば、フィブリン、フィブリンゲル、デンプンベース化合物、イガイ接着タンパク質、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される材料を含むコーティング等の、接着性コーティング又は接着性を呈するコーティングを含んでもよい。コーティング108は、脱水ゼラチン(例えば、内層体105及び/又は外層体110の2以上の部分に粘着性をもたらすために、グラフト装置100の1以上の部分を脱水するように構成された脱水ゼラチン)を含んでもよい。コーティング108は、親水性コーティング及び/又は疎水性コーティングを含んでもよい。コーティング108は、放射線不透過性コーティング及び/又は超音波反射性コーティング等の可視化可能なコーティングを含んでもよい。いくつかの実施形態では、コーティング108、内層体105、及び/又は外層体110は、薬物や他の薬剤(例えば、血栓形成を防止するように構成された薬剤等)を溶出するように構成された材料を含む。いくつかの実施形態では、コーティング108は、ヘパリンを含む。いくつかの実施形態では、コーティング108は、抗血栓性、抗増殖性、抗石灰化性、血管弛緩性、接着性、水和性、可視化性、耐水性、水和性、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される機能及び特性を提供するように構成及び配置される。いくつかの実施形態では、コーティング108は、グラフト装置100の1以上の層の1以上の表面(例えば、内層体105の内側表面及び/又は外側表面、並びに/或いは、外層体110の任意の層の表面)に配置される。コーティング108は、例えば、コーティング108が適用される材料の生体吸収速度、生分解速度、生体侵食速度、及び/又は生体断片化速度よりも低い速度で溶出されるように、緩やかに溶出されるように(例えば、コーティングの材料の排出が緩やかになるように)構成及び配置されたコーティングを含んでもよい。
【0133】
コーティング108は、手動で、又は、
図3のシステム10を参照して後に説明するような1以上の装置を用いて適用されることができる。いくつかの実施形態では、コーティング108は、電界紡糸装置、溶融紡糸装置、溶融電界紡糸装置、3Dプリンタ、熱溶解積層装置、噴霧器、織機、組紐機、編機、浸漬機械、鋳造機械、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される装置を用いて適用される。
【0134】
いくつかの実施形態では、コーティング108は、外科手術器具(例えば、円筒状の内皮切除刀)を用いて動脈又は静脈から採取された組織等の組織を含む。これらの実施形態では、コーティング108は、内皮層からの細胞を含む、20μmから50μmの範囲の厚さを有してもよい。
【0135】
更に
図2Aを参照すると、
図2に示す本発明の概念のグラフト装置の一部の拡大横断面図が示されている。
図1Aを参照して上記で説明したように、グラフト装置100はT
Dの厚さを有し、内層体105はT
ILの厚さを有し、また、外層体110はT
OLの厚さを有してもよい。外層体110は、山部116と谷部117とを交互に含み、隣接する山部116間(又は谷部117間)の距離を有するピッチ118を含む、渦巻状又は螺旋状に配向された溝部115を含んでもよい。いくつかの実施形態では、山部116は、図示の通り、面取りされた1以上の縁を含む(例えば、対称的に傾斜した縁を形成するために、山部116の1以上の縁が切欠される)。いくつかの実施形態では、図示の通り、山部116と谷部117との交差部は、面取りされた(又は丸められた)1以上の縁1161を含む(例えば、対称的に傾斜した縁を形成するために、谷部117の1以上の上縁が切欠される)。
【0136】
いくつかの実施形態では、谷部117は、内層体105の一部を含む(例えば、谷部117が内層体105の一部内に延びている)。いくつかの実施形態では、細孔104は、谷部117の底部から内層体105を貫通するように配置されている。細孔104は、
図1を参照して上記で説明したように、内径ID
Pを有してもよい。
【0137】
次に
図3を参照すると、本発明の概念の1以上の層を有するグラフト装置を製造するための例示的なシステムの概略図が示されている。システム10は、繊維マトリクス送達アセンブリである電界紡糸装置400を含む。システム10は、内層体105を取り囲む外層体110を有する1以上のグラフト装置100を製造するように構成及び配置される。
【0138】
システム10は、マンドレル250を含み、内層体105は該マンドレル250周りに適用されてもよい(
図3では、既に内層体105がマンドレル250に送達されている)。マンドレル250は、直線状、テーパ状、又は湾曲状の形状を有するマンドレルを含んでもよい。マンドレル250は、内層体105及び/又は外層体110を作製した後に除去されるように、径方向に圧縮可能(例えば収縮可能)又は溶解可能であってもよい。マンドレル250は、内層体105から除去される前に、位相を変化させるように構成及び配置されてもよい(例えば、内層体105からの除去を補助するために、生体断片性材料が、低温溶融、昇華、及び/又は凍結乾燥されてもよい)。いくつかの実施形態では、マンドレル250は、例えば、2017年5月23日出願の米国特許第9,656,417号明細書(参照によって、その全体が本明細書に組み込まれている)に記載の流体マンドレル等の流体マンドレルである。マンドレル250は、2つのパーツを含んでもよい(例えば、ステンレス鋼のコアと、その周りを取り囲む静的散逸性のプラスチックシェル(例えばポリウレタンシェル)とを含む2ピース構造であってもよい)。マンドレル250は、金属マンドレル(例えば、SUS304ステンレス鋼又はSUS316ステンレス鋼で構成されたマンドレル)を含んでもよい。マンドレル250は、鏡面状の表面仕上げ(例えば、約0.1μmから約0.8μmの範囲のRaを有する表面仕上げ)を有してもよい。マンドレル250は、最大80cmの長さ、又は、最大95cmの長さを有してもよい(例えば、70cmから80cmの範囲の長さを有する)。
【0139】
内層体105は、グラフトの伸展性が動脈の伸展性とよりマッチングするように構成された、より低いデュロメータ硬さを有する材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、内層体105は、ショア硬さ90Aのデュロメータ硬さを有するElastEonを含む。いくつかの実施形態では、内層体105は、ショア硬さ82Aのデュロメータ硬さを有するElastEonを含む。いくつかの実施形態では、内層体105は、ショア硬さ77Aのデュロメータ硬さを有するElastEonを含む。いくつかの実施形態では、外層体110は、ショア硬さ90Aのデュロメータ硬さを有するElastEonを含む。いくつかの実施形態では、外層体110は、ショア硬さ55Dのデュロメータ硬さを有するElastEonを含む。
【0140】
内層体105は、ノズル427から、ポリマー溶液を5mL/時から40mL/時の範囲(例えば、10mL/時から15mL/時の範囲)の流速でディスペンスすることで形成することができる。内層体105は、350μmから500μmの範囲の厚さを有してもよい。外層体110は、その後、ノズル427から、ポリマー溶液を5mL/時から40mL/時の範囲(例えば、10mL/時から15mL/時の範囲)の流速でディスペンスすることで形成することができる。外層体110は、500μmから800μmの範囲の厚さを有してもよい。外層体110は、40%から80%の範囲の気孔率(例えば、50.4%の平均気孔率、又は、46.9%の平均気孔率等)を有してもよい。内層体105及び/又は外層体110は、1μmから20μmの範囲の径を有する繊維(例えば、平均径が約5μmの繊維、又は、平均径が約10μmの繊維)のマトリクスを含んでもよい。いくつかの実施形態では、内層体105及び/又は外層体110は、少なくとも5μmの径を有する繊維を含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、システム10は、内層体105及び外層体110の接着性を向上するように構成された表面改質が発揮されるように構成及び配置される。いくつかの実施形態では、システム10は、内層体105及び/又は外層体110の1以上の層の表面エネルギーを改変するために、内層体105及び/又は外層体110のそれぞれ対応する層に表面改質が発揮されるように構成及び配置される。表面改質には、プラズマイオン化、界面活性剤処理、脂質処理、及びこれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0142】
改質アセンブリ605は、導管625を介して、供給部(供給部620)に操作可能に取付けされている。導管625は、管(例えば流体輸送用の管)、1以上の導管(例えば1以上のワイヤ)、1以上の光ファイバ、及びこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。供給部620は、1以上の薬剤(例えば薬剤502)のためのリザーバ、電力供給源(例えばレーザ式電力供給源)、光エネルギー源(例えばレーザ)、音エネルギー源(例えば超音波エネルギー源)、圧縮流体のためのリザーバのうちの1以上を含んでもよい。いくつかの実施形態では、改質要素627は、例えば、外層体110の改質用薬剤、内層体105の改質用薬剤、及び/又はグラフト装置100の改質用薬剤を送達するように構成されたノズル等のノズルを含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、改質要素627は、ポリマー材料111に含まれる1以上の溶媒が既に適用された層の露出を防止するために、或いは最小限に抑えるために、後続の層(例えば、内層体105及び/又は外層体110)の適用の前に、ワックス又は他の保護物質を有する薬剤502を内層体105及び/又は外層体110に送達するように構成された構成要素を含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、改質要素627は、内層体105及び/又は外層体110を改質するように(例えば、システム10によって製造されたグラフト装置100のパフォーマンスを向上させるように)構成される。このような、グラフト装置100に改質が施される実施形態では、改質要素627は、ロボット装置(例えば、溝部115を形成するように構成されたロボット装置、細孔104を形成するように構成されたロボット装置、又は、溝部115の縁又はグラフト装置100の端を位置決めするためのロボット装置)、ノズル(例えば、薬剤502を送達するように構成されたノズル)、エネルギー送達要素(例えば、溝部115及び/又は細孔104を形成するように、及び/又は、グラフト装置100の1以上の構成要素をトリミングするように構成されたレーザエキシマダイオード又は他の要素等のレーザ送達要素等のエネルギー送達要素)、流体ジェット(例えば、グラフト装置100の製造中に流体を送達するように構成された液体ジェット(例えば水ジェット))又はガスジェット(エアジェット)、切断要素(例えば、溝部115及び細孔104を形成するように、並びに/或いは、内層体105及び/又は外層体110をトリミングするように構成された切断要素)、メカニカルアブレーダ(例えば、溝部115を形成するように構成されたアブレーダ)、超音波エネルギー等の音エネルギーを送達するように構成された要素、溝部115を形成するための3Dプリンタ、編機、組紐機、織機、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される構成要素を含んでもよい。改質要素627による内層体105、外層体110、及び/又はグラフト装置100の他の構成要素の改質は、内層体105の適用中、(例えば、外層体110の適用前等の)内層体105の適用後、外層体110の適用中、及び/又は外層体110の適用後に行われてもよい。いくつかの実施形態では、改質要素627は、溝部115及び/又は細孔104を形成するために、並びに/或いは、内層体105及び/又は外層体110を切断又はトリミングするために(例えば、グラフト装置100の端をトリミングするために)使用される。
【0145】
いくつかの実施形態では、システム10の改質アセンブリ605は、溝部115及び/又は細孔104を形成するように構成された、並びに/若しくは、内層体105及び/又は外層体110を切断又はトリミングするように構成された、ベンチマウント型装置及び/又は手持ち型装置等の、電界紡糸装置400とは別個の追加的構成要素である。いくつかの実施形態では、改質アセンブリ605は、例えば、ベンチマウント型レーザ装置又は手持ち型レーザ装置等のレーザを含む。いくつかの実施形態では、改質アセンブリ605は、例えば、
図3A又は
図3Bに示されるような、ベンチマウント型鋸刃等の鋸刃を含む。いくつかの実施形態では、改質アセンブリ605は、例えば、ベンチマウント型装置等のメタルピンを含む。改質アセンブリ605を用いたグラフト装置100の改質は、電界紡糸装置400から除去されてから(例えば、移植施術前及び/又は移植施術中に)行われてもよい。
【0146】
内層体105及び/又は外層体110へのレーザ処置又は改質は、内層体105及び/又は外層体110の一部に、物理的な変化(例えば、固化、軟化、溶融、硬化、弾性バイアス形成、膨張、及び/又は収縮)、及び/又は、化学的な変化(例えば、架橋、酸化、脱水、及び/又は分解)を与えることができる。
【0147】
ノズル427は、ステンレス鋼(例えば、不導体化処理が施されたSUS304ステンレス鋼)で構成されてもよい。ノズル427を取り囲む所定体積の空間は、2012年11月12日に同時係属出願された米国特許出願第15/036,304号明細書(その全体が参照によって本明細書に組み込まれている)に記載されているような、電界紡糸プロセスを妨害する恐れのある物体又は物質がない状態に維持されてもよい。ノズル427とマンドレル250との間に印加される電圧だけでなく、ノズルの形状及び配向方向もまた、繊維の作製を制御するために選択されてもよい。
【0148】
マンドレル250は、ポリマー送達アセンブリ405及び/又は改質アセンブリ605、並びに、ノズル427及び/又は改質要素627から、それぞれ特定の距離をおいて配置されてもよい。図示の通り、いくつかの実施形態では、マンドレル250は、改質アセンブリ605の上方かつポリマー送達アセンブリ405の下方に配置される。或いは、マンドレル250は、改質アセンブリ605及び/又はポリマー送達アセンブリ405の上方、下方、右方、及び/又は左方のいずれかに配置されてもよい。マンドレル250とノズル427及び/又は改質要素627との間の距離は、20cm以下(例えば15cm以下)であってもよい。いくつかの実施形態では、マンドレル250とノズル427及び/又は改質要素627との間の距離は、12.2cmから12.8cmの範囲(例えば約12.5cm)である。いくつかの実施形態では、複数のノズル427及び/又は複数の改質要素627(例えば、互いに同様の又は互いに異なる構成を有する構成要素)は、マンドレル250に対して様々な方向を向いて配置される。いくつかの実施形態では、例えば、適用パターンが変化した内層体105及び/又は外層体110を形成するために、マンドレル250とノズル427及び/又は改質要素627との間の距離が、マンドレル250に対して各々が伸びる方向について変化する。いくつかの実施形態では、マンドレル250とノズル427(及び/又は改質要素627)との間の距離は、電界紡糸プロセス中に絶えず変化する、及び/又は、電界紡糸プロセスの1以上の期間中に(例えば、グラフト装置100に沿って1以上の特定の位置が)変化する。
【0149】
いくつかの実施形態では、電位が、ノズル427と、マンドレル250、内層体105、及び/又は外層体110との間に印加される。明確化のために、本明細書では、マンドレル250、内層体105、外層体110、及び/又はグラフト装置100の任意の部分に印加される電位のことを、マンドレル250に印加される電位と称する。電位によって、ポリマー送達アセンブリ405からマンドレル250に向かって(例えば、部分的に形成された内層体105及び/又は外層体110に向かって)、少なくとも1つの繊維(電界紡糸繊維)を引き出すことができる。内層体105及び/又は外層体110は、電位によってポリマー送達アセンブリ405から引き出された繊維を収集する、本発明の電界紡糸プロセスのための基板として機能することができる。いくつかの実施形態では、所望の電位を生成するために、マンドレル250に、ノズル427よりも低い電圧が印加される。例えば、ノズル427に正の電圧が印加され、一方で、マンドレル250に負又はゼロの電圧が印加されてもよい。マンドレル250に印加される電圧は、-10kVから-1kVの範囲(例えば、-10kV、-9kV、-8kV、-7kV、-6kV、-5kV、-4.5kV、-4kV、-3.5kV、-3kV、-2.5kV、-2kV、-1.5kV、又は、-1kV)であってもよい。ノズル427に印加される電圧は、+2kVから+20kVの範囲(例えば、+2.5kV、+5kV、+7.5kV、+12kV、+13.5kV、+15kV、+17kV、又は、+20kV)であってもよい。いくつかの実施形態では、ノズル427とマンドレル250との間の電位差は、+5kVから+30kVの範囲であってもよい。この電位差により、ノズル427からマンドレル250、内層体105、及び/又は外層体110に向かって、繊維が引き出される。いくつかの実施形態では、ノズル427は、+15kVから+17kVの範囲の電位で電気的に帯電され、一方で、マンドレル250は、約-2kVの電位で帯電される。
【0150】
ポリマー材料111(例えば、ポリマー材料111a及び/又はポリマー材料111b)は、ポリマー溶液ディスペンサ401中に導入され、その後、ポリマー溶液送達管425を介して、ポリマー送達アセンブリ405に送達される。いくつかの実施形態では、ポリマー溶液ディスペンサ401は、ポリマー材料111aが導入されるポリマー溶液ディスペンサ401aと、ポリマー材料111bが導入されるポリマー溶液ディスペンサ401bとを含む。正に帯電したノズル427と、負に帯電した内層体105、外層体110、及び/又はマンドレル250との間の電位によって、ポリマー送達アセンブリ405のノズル427から、ポリマー溶液を引き出すことができる。電位により流体が帯電するようになることで静電反発が生じ、この静電反発は、ポリマー送達アセンブリ405のノズル427におけるポリマー溶液の流れの表面張力に対して反作用する。ポリマー溶液の流れが臨界点まで引き延ばされると、ポリマー溶液の1以上の流れが、ポリマー送達アセンブリ405のノズル427から、及び/又は、ポリマー送達アセンブリ405の下方の場所から噴出し、この1以上の流れは、負に帯電したマンドレル250に向かって移動する。揮発性溶媒を使用すると、移動中に溶液が実質的に乾燥して、マンドレル250周りに繊維(例えば、内層体105及び/又は外層体110作製するための繊維)が適用される。
【0151】
マンドレル250は、例えば、典型的にはノズル427の軸428に対して直交するように配向された中心軸435等の軸を中心として回転するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、ノズル427の軸428は、中心軸435から水平方向にオフセットされている。中心軸435を中心とした回転によって、内層体105及び/又は外層体110を、マンドレル250及び/又は1以上の適用済の繊維層の全面又は全周に沿って、適用することが可能となる。いくつかの実施形態では、マンドレル250を回転するために、2つのモータ440a、440bが使用される。或いは、電界紡糸装置400は、上述の説明のようにマンドレル250を回転させるように構成された1つのモータを含んでもよい。マンドレル250の回転速度によって、電界紡糸繊維がどのように適用されるかを決定することができる。例えば、内層体105及び/又は外層体110において厚い部分が所望される場合の回転速度は、薄い部分が所望される場合の回転速度より遅くてもよい。いくつかの実施形態では、マンドレル250は、100rpmから400rpmの範囲の速度(例えば、200rpmから300rpmの範囲、又は、240rpmから260rpmの範囲、又は、約250rpm)で回転される。
【0152】
マンドレル250が中心軸435を中心として回転することに加え、ポリマー送達アセンブリ405は、図示の移動距離DSWEEPを超えて移動することができる(例えば、駆動アセンブリ445によって、水平方向(ページの左右方向)に往復運動又は揺動運動できる)。駆動アセンブリ445及び改質アセンブリ605に動作可能に取付けられる駆動アセンブリ645は、直線駆動アセンブリ(例えば、1以上のステッパモータによって駆動される2以上の滑車を含むベルト駆動型駆動アセンブリ)を含んでもよい。追加として又は代替として、ポリマー送達アセンブリ405及び/又は改質アセンブリ605は、中心軸435を中心として回転するように構成及び配置されてもよい(回転手段は図示せず)。駆動アセンブリ445及び/又は駆動アセンブリ645の長さ、並びに、それに対応するポリマー送達アセンブリ405及び改質アセンブリ605に与えられる直線運動は、外層体110が送達される内層体105の長さ、及び/又は、外層体110の改質が適用される内層体105の長さに基づいて変化してもよい。例えば、駆動アセンブリ445の支持付き直線運動(DSWEEPで図示)及び/又は駆動アセンブリ645の支持付き直線運動は、10cmから95cmの範囲で移動できる。マンドレル250の回転速度、並びに、ポリマー送達アセンブリ405及び/又は改質アセンブリ605の並進速度は、比較的一定であってもよい、又は、繊維適用プロセス中に変更されてもよい。いくつかの実施形態では、ポリマー送達アセンブリ405及び/又は改質アセンブリ605は、移動の大部分の間、40mm/秒から200mm/秒の範囲(例えば、約65mm/秒)の比較的一定な並進速度で(例えば前後に)並進する。いくつかの実施形態では、システム10は、並進方向が急変するように(すなわち、方向変化前の減速及び/又は方向変化後の加速が最大となるように)構成及び配置される。
【0153】
ポリマー送達アセンブリ405及び/又は改質アセンブリ605は、適用済の繊維層(例えば、内層体105及び/又は外層体110の適用済の層)の全長又は特定の長さ部分に沿って移動することができる。いくつかの実施形態では、繊維及び/又は改質が、グラフト装置100の意図された長さの全体に加えて、内層体105及び/又は外層体110の一端又は両端から5cm超えた長さに(マンドレル250に)適用される。いくつかの実施形態では、繊維及び/又は改質が、グラフト装置100の意図された長さの全体に加えて、グラフト装置100の一端又は両端から1cm以上超えた長さに適用される。ポリマー送達アセンブリ405及び/又は改質アセンブリ605は、グラフト装置100の長さに沿った特定の部分が、他の部分又は残りの部分と比較して多量の内層体105及び/又は外層体110で補強されるように制御されてもよい。更に、マンドレル250は、ポリマー送達アセンブリ405及び/又は改質アセンブリ605が、それぞれ対応する駆動アセンブリ445及び/又は駆動アセンブリ645によって、繊維が適用される及び/又は改質されるマンドレル250の特定の部分に配置されるように移動している間、中心軸435を中心として回転することができる。
【0154】
また、システム10は、ノズル427及びマンドレル250に電位を印加するように、かつ、システム10の他の構成要素(例えば、駆動アセンブリ445、645及び改質アセンブリ605)に電力を供給するように構成された電力供給源(電力供給源410)を含んでもよい。電力供給源410は、マンドレル250、内層体105、及び/又は外層体110のうちの少なくとも1つに、直接又は間接的に接続されてもよい。電力は、例えば1以上のワイヤ等によって、電力供給源410から各構成要素へ送達される。
【0155】
システム10は、電界紡糸装置400を取り囲む環境チャンバ20を有する環境制御アセンブリを含んでもよい。システム10は、環境チャンバ20内の環境的条件を制御するように(例えば、内層体105及び/又は外層体110の適用中、ポリマー送達アセンブリ405及び/又はマンドレル250の周囲の1以上の環境を制御するように)構成及び配置されてもよい。環境チャンバ20は、入口ポートアセンブリ21及び出口ポートアセンブリ22を含んでもよい。入口ポートアセンブリ21及び/又は出口ポートアセンブリ22は、それぞれ、例えば、ファン、ガス(例えば、乾燥圧縮空気及び/又は不活性ガス)の源、陰圧を有するガスの源、蒸気(例えば、緩衝蒸気、アルカリ性蒸気、及び/又は酸性蒸気を含む蒸気)の源、フィルタ(例えばHEPAフィルタ)、除湿器、加湿器、加熱器、冷却器、静電放電低減型イオン生成器、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1以上の構成要素等の、1以上の構成要素を含んでもよい。環境チャンバ20は、環境チャンバ20内の温度、湿度、及び/又は圧力を監視及び/又は制御するための1以上の環境制御構成要素を含んでもよい。環境チャンバ20は、湿度を低下させるために超乾燥の(例えば、水分又は他の液体の含有量が2ppm未満の)圧縮ガス源(例えば圧縮空気源)を含むマンドレル250に(例えば、内層体105及び/又は外層体110に)、比較的均一な換気を提供するように構成及び配置されてもよい。入口ポートアセンブリ21及び出口ポートアセンブリ22は、(例えば、環境チャンバ20の底部に留まる傾向にあり得る1以上の溶媒(例えばHFIP)の蒸気を除去するために、)環境チャンバ20の頂部から環境チャンバ20の底部へ空気をパージするように配向されてもよい。環境チャンバ20は、環境チャンバ20内の体積を、少なくとも3分毎に1回、少なくとも1分毎に1回、又は、少なくとも30秒毎に1回入れ替えるように構成及び配置されてもよい。出口ポートアセンブリ22は、環境チャンバ20から排出されるハロゲン化溶媒又は他の望ましくない材料を留保するのに好適である1以上のフィルタ(例えば、交換可能なカートリッジフィルタ)を含んでもよい。環境チャンバ20は、初期パージ手順中、環境チャンバ20内を通り抜けるときの流速が、少なくとも30L/分(例えば、少なくとも45L/分、又は、少なくとも60L/分)に維持されるように構成及び配置されてもよい。初期パージ手順の後は、湿度レベルを一定に(例えば、相対湿度を20%から24%に)維持するために、流速が、少なくとも5L/分、少なくとも10L/分、少なくとも20L/分、又は、少なくとも30L/分に維持されてもよい。環境チャンバ20は、更に、温度を制御するように(例えば、相対湿度を20%から24%の範囲に保ったまま、環境チャンバ20内の温度を15℃から25℃の範囲(例えば、16℃から20℃の範囲)に制御するように)構成及び配置されてもよい。いくつかの実施形態では、環境チャンバ20内の1以上の物体又は表面は、電気的に絶縁された材料で構成される、及び/又は、鋭利な縁部又は露出した電気部品を含まない。いくつかの実施形態では、環境チャンバ20内に配置された1つ以上の金属物体は、電気的に接地されている。
【0156】
いくつかの実施形態では、システム10は、例えば、溝部115及び/又は細孔104を形成するために使用されるツール等の、本明細書で説明されるような1以上の図示のツール300を含む。いくつかの実施形態では、ツール300は、グラフト装置100を製造するために使用される材料を光硬化及び/又は光重合するように構成された紫外線光を含む。いくつかの実施形態では、ツール300は、グラフト装置100を製造するために使用される材料の表面特性を変化させるように構成されたプラズマ処置装置を含む。いくつかの実施形態では、ツール300は、グラフト装置100を製造するために使用される材料を、イオンエッチング、イオンミリング、及び/又はイオンスパッタコーティングするように構成されたイオンビーム発生器を含む。いくつかの実施形態では、システム10は、グラフト装置100から溶媒又は他の流体を除去するために使用することができる乾燥アセンブリ310を含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、システム10は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、2012年11月12日に出願人によって同時係属出願された米国特許出願第15/036,304号明細書に記載のような1以上の構成要素又はアセンブリを含む、及び/又は、さもなければ、同明細書に記載のように構成及び配置される。
【0158】
図3のシステム10では、内層体105及び外層体110の繊維を適用するために電界紡糸装置400が説明されているが、別の繊維送達装置が使用されてもよい。また、システム10では、マンドレル250が回転することで周方向への繊維の適用及び改質が行われると示されているが、いくつかの実施形態では、同様に周方向への繊維の適用及び改質を行うために、マンドレル250を中心として、繊維送達要素及び/又は繊維改質要素(例えば、ノズル427及び/又は改質要素627)が(マンドレル250の回転を伴って、又は、マンドレル250の回転を伴わずに)回転される。
【0159】
更に
図3A及び
図3Bを参照すると、本発明の概念の改質アセンブリの側面図及び鋸刃の端面図が、それぞれ示されている。改質アセンブリ605は、(例えば、グラフト装置100の内層体105及び/又は外層体110から材料を除去することで)グラフト装置100の溝部115を形成するように構成された刃部610を有する鋸部を含んでもよい。改質アセンブリ605は、深度ブロック体615を更に含んでもよい。刃部610に対する深度ブロック体615の位置を調節することで、刃部610が内層体105及び/又は外層体110に切り込む深さを制御することができる。
【0160】
刃部610は、刃610a、610b、610c等の、1枚以上の刃を含んでもよい。いくつかの実施形態では、刃部610は、中心刃610aと、中心刃610aのいずれかの側にそれぞれ配置される2枚の側刃610b、610cとを含む。側刃610b、610cは、図示のように、面取り刃として構成されてもよい。
【0161】
更に
図3Cを参照すると、本発明の概念のグラフト装置の一部を除去する改質アセンブリの拡大図が示されている。改質アセンブリ605は、
図3A及び
図3Bを参照して上記で説明したように、刃部610を含んでもよい。グラフト装置100は、マンドレル250の上に挿入され、改質アセンブリ605は、マンドレル250の長さに沿って並進するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、改質アセンブリ605がマンドレル250に沿って並進すると、マンドレル250が回転されるため、刃610a、610b、610cによって、溝部115が、グラフト装置100の長さに沿って形成される。改質アセンブリ605の並進方向及びマンドレル250の回転方向は、それぞれ
図3Cに示している。深度ブロック体615は、グラフト装置100の外表面に突合し、それにより、溝部115の深度を制限することができる。
【0162】
上記で説明された実施形態は、例示としてのみ提示されるものと理解されるべきであって、更なる実施形態が想定される。任意の一実施形態に関連して本明細書で説明された任意の特徴は、単独で使用されても、又は、説明された他の特徴と組み合わせて使用されてもよいし、或いは、任意の他の実施形態の1以上の特徴と組み合わせて使用されても、又は、任意の他の実施形態の任意の組み合わせと組み合わせて使用されてもよい。更に、上記で説明されていない同等物及び改変もまた、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく援用されてもよい。