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特許7485630光変換インク組成物、カラーフィルタ、及び画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】光変換インク組成物、カラーフィルタ、及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20240509BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20240509BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
G02B5/20
G02F1/1335 505
G09F9/30 349A
G02B5/20 101
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021057058
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2021162866
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】10-2020-0037983
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514217912
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132,Yakchon-ro,Iksan-si Jeollabuk-do 570-977,Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】チェ,セファ
(72)【発明者】
【氏名】カン,ドクキ
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-131613(JP,A)
【文献】国際公開第2018/224459(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0327661(US,A1)
【文献】特開2012-033550(JP,A)
【文献】特開2019-159326(JP,A)
【文献】特開2019-112516(JP,A)
【文献】特開2018-092180(JP,A)
【文献】特開2016-111292(JP,A)
【文献】特表2012-525717(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0017492(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0102857(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G02F 1/1335
G09F 9/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ドット、硬化性モノマー、及び界面活性剤を含む光変換インク組成物であって
前記量子ドットは、表面上に下記の化学式1a~1eで表される化合物のうちの一つ以上を含む配位子層を有するものであり、
前記界面活性剤は、反応性シリコン系界面活性剤を含み、
前記光変換インク組成物の全体100重量%に対し、1重量%以下の量で溶剤を含む、光変換インク組成物:
【化1】

前記式中、
R’及びR’’は、それぞれ独立して、水素原子;カルボキシル基;フェニル基;又はチオール基で置換若しくは非置換のC~C20のアルキル基であり、
R’とR”とは、同時に水素原子;フェニル基;又は非置換のC~C20のアルキル基ではなく、
、R、及びRは、それぞれ独立して、C~C22のアルキル基又はC~C22のアルケニル基であり、
は、C~C22のアルキレン基、C~Cのシクロアルキレン基又はC~C14のアリーレン基であり、
A及びBは、それぞれ独立して、存在しないか、又はC~C22のアルキレン基、O、NR又はSであり、
Rは、水素又はC~C22のアルキル基であり、
Xは、カルボキシル基、リン酸基、チオール基、アミン基、テトラゾール基、イミダゾール基、ピリジン基又はリポアミド基であり、
nは、1~20の整数であり、
p、q、t、及びuは、それぞれ独立して、1~100の整数であり、
rは、1~10の整数である。
【請求項2】
前記反応性シリコン系界面活性剤は、末端にアクリレート基を有するシリコン系界面活性剤である、請求項1に記載の光変換インク組成物。
【請求項3】
前記反応性シリコン系界面活性剤は、下記の化学式2~3で表される化合物のうちの一つ以上を含む、請求項1に記載の光変換インク組成物:
【化2】

前記式中、
及びRは、それぞれ独立して、
【化3】

であり、
は、
【化4】

であり、
Lは、ウレタン基を有する2~3価連結基であり、
Y及びZは、それぞれ独立して、エステル基又はC~Cのオキシアルキレン基であり、
及びRは、それぞれ独立して、水素又はメチル基であり、
gは、0~1の整数であり、
hは、1~2の整数であり、
k、l、m、i、及びjは、それぞれ独立して、1~20の整数である。
【請求項4】
前記界面活性剤は、光変換インク組成物の全体100重量%に対し、0.005~2重量%の量で含まれる、請求項1に記載の光変換インク組成物。
【請求項5】
前記反応性シリコン系界面活性剤は、界面活性剤の全体100重量%に対し、20重量%以上の量で含まれる、請求項1に記載の光変換インク組成物。
【請求項6】
散乱粒子、光重合開始剤、及び酸化防止剤からなる群より選ばれる一つ以上を更に含む、請求項1に記載の光変換インク組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の光変換インク組成物の硬化物を含む、光変換画素。
【請求項8】
請求項に記載の光変換画素を含むカラーフィルタ。
【請求項9】
請求項に記載のカラーフィルタが備えられたことを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変換インク組成物、カラーフィルタ、及び画像表示装置に係り、より詳しくは、溶剤を実質的に含まなくても量子ドットの分散性に優れ且つ量子ドットの光特性に優れる厚膜を形成することができると共に塗膜の密着性が向上した光変換インク組成物、これを用いて形成されるカラーフィルタ、及び前記カラーフィルタを備えた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタは、白色光から赤色、緑色、及び青色の3種の色を抽出して微細な画素単位で機能させる薄膜フィルム型光学部品である。
【0003】
これに関して、近年、優れたパターン特性だけではなく、高い色再現率を示すために、量子ドットを含む自発光感光性樹脂組成物を用いたカラーフィルタの製造方法が提案された。
【0004】
通常知られた量子ドットを含む自発光感光性樹脂組成物を用いたフォトリソグラフィ方法は、コーティング、露光、現像、及び硬化によって色フィルタを形成する方法である。このようなフォトリソグラフィ方法は、色フィルタの精巧性や再現性の面では優れるものの、画素を形成するためにそれぞれの色に対してコーティング、露光、現像、及び硬化する過程がそれぞれ要求されることから製造工程及び手間並びにコストが増大し、且つ工程間の制御因子が多くなって歩留まりの管理が困難であるという不具合がある。
【0005】
このため、前記フォトリソグラフィ方法に代えて、赤色、緑色、及び青色を含む複数の色を一度に着色することができるインクジェット(inkjet)方法が提案されている。
【0006】
近年、モニタ、TVなどでの高い色再現率(NTSCに対する色濃度)の要求に伴い、量子ドットの発光輝度の向上が必要となっている。このような発光輝度の向上のためには、膜厚を厚くする方法がある。しかし、大韓民国登録特許第10-1475520号で開示する量子ドット及び溶剤を含むインク組成物では膜厚を厚くするのに限界がある。
【0007】
このような側面から、溶剤を実質的に含まない量子ドット含有の無溶剤型又は低溶剤型のインク組成物が要求されている。しかし、量子ドットを無溶剤型又は低溶剤型のインク組成物で製造する場合には、均一な分散が難しくなり量子ドットの凝集を生じさせて量子ドットの光特性が低下したり、粘度が高くなってジェッティング性が不良になることがある。特に、膜厚を厚くするためにインク組成物中の量子ドットの含量を上げると、量子ドットの凝集がさらに深化して量子ドットの光特性低下が酷くなり且つ塗膜の密着性が低下するという問題点があった。
【0008】
したがって、溶剤を用いないか又は溶剤を少量用いても量子ドットの分散性に優れ、且つ量子ドットの光特性に優れる厚膜を形成することができると共に塗膜の密着性が向上したインク組成物の開発が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一目的は、溶剤を実質的に含まなくても量子ドットの分散性に優れ且つ量子ドットの光特性に優れる厚膜を形成することができると共に塗膜の密着性が向上した光変換インク組成物を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、前記光変換インク組成物の硬化物を含む光変換画素を提供することである。
【0011】
本発明のまた他の目的は、前記光変換画素を含むカラーフィルタを提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、前記カラーフィルタを備えた画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一方、本発明は、量子ドット、硬化性モノマー、及び界面活性剤を含み、
前記量子ドットは、表面上に下記の化学式1a~1eで表される化合物のうちの一つ以上を含む配位子層を有するものであり、
前記界面活性剤は、反応性シリコン系界面活性剤を含む、光変換インク組成物を提供する。
【0014】
【化1】
【0015】
前記式中、
R’及びR’’は、それぞれ独立して、水素原子;カルボキシル基;フェニル基;又はチオール基で置換若しくは非置換のC~C20のアルキル基であり、
R’とR”とは、同時に水素原子;フェニル基;又は非置換のC~C20のアルキル基ではなく、
、R、及びRは、それぞれ独立して、C~C22のアルキル基又はC~C22のアルケニル基であり、
は、C~C22のアルキレン基、C~Cのシクロアルキレン基又はC~C14のアリーレン基であり、
A及びBは、それぞれ独立して、存在しないか、又はC~C22のアルキレン基、O、NR又はSであり、
Rは、水素又はC~C22のアルキル基であり、
Xは、カルボキシル基、リン酸基、チオール基、アミン基、テトラゾール基、イミダゾール基、ピリジン基又はリポアミド基であり、
nは、1~20の整数であり、
p、q、t、及びuは、それぞれ独立して、1~100の整数であり、
rは、1~10の整数である。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記反応性シリコン系界面活性剤は、末端にアクリレート基を有するシリコン系界面活性剤であってよい。
【0017】
本発明の一実施形態において、前記反応性シリコン系界面活性剤は、下記の化学式2~3で表される化合物のうちの一つ以上を含んでよい。
【0018】
【化2】
【0019】
前記式中、
及びRは、それぞれ独立して、
【0020】
【化3】
【0021】
であり、
は、
【0022】
【化4】
【0023】
であり、
Lは、ウレタン基を有する2~3価の連結基であり、
Y及びZは、それぞれ独立して、エステル基又はC~Cのオキシアルキレン基であり、
及びRは、それぞれ独立して、水素又はメチル基であり、
gは、0~1の整数であり、
hは、1~2の整数であり、
k、l、m、i、及びjは、それぞれ独立して、1~20の整数である。
【0024】
本発明の一実施形態において、前記界面活性剤は、光変換インク組成物の全体100重量%に対し、0.005~2重量%の量で含まれてよい。
【0025】
本発明の一実施形態において、前記反応性シリコン系界面活性剤は、界面活性剤の全体100重量%に対し、20重量%以上の量で含まれてよい。
【0026】
本発明の一実施形態に係る光変換インク組成物は、散乱粒子、光重合開始剤、及び酸化防止剤からなる群より選ばれる一つ以上を更に含んでよい。
【0027】
本発明の一実施形態に係る光変換インク組成物は、溶剤を1重量%以下の量で含んでよい。
【0028】
他の一方で、本発明は、前記光変換インク組成物の硬化物を含む光変換画素を提供する。
【0029】
また他の一方で、本発明は、前記光変換画素を含むカラーフィルタを提供する。
【0030】
また他の一方で、本発明は、前記カラーフィルタが備えられたことを特徴とる画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る光変換インク組成物は、表面上に特定構造のポリエチレングリコール系配位子を有する量子ドットを含み、界面活性剤として前記ポリエチレングリコール系配位子と相溶性に優れ且つ硬化性モノマーとの反応性に優れる反応性シリコン系界面活性剤を含有して、溶剤を実質的に含まなくても量子ドットの分散性に優れ且つ量子ドットの光特性に優れる厚膜を形成することができると共に塗膜の密着性が向上する。したがって、本発明に係る光変換インク組成物は、インクジェット印刷方式でカラーフィルタを製造する際に有効に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0033】
本発明においてある部材が他の部材の「上に」位置しているとするとき、これは、ある部材が他の部材に接している場合だけではなく、両部材の間にまた他の部材が存在する場合も含む。
【0034】
本発明においてある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特にこだわりなどない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでよいことを意味する。
【0035】
本発明の一実施形態は、量子ドット(A)、硬化性モノマー(B)、及び界面活性剤(C)を含み、前記量子ドット(A)は、表面上に特定構造のポリエチレングリコール系配位子を含む配位子層を有するものであり、前記界面活性剤(C)は、反応性シリコン系界面活性剤を含む光変換インク組成物に関する。
【0036】
量子ドット(A)
本発明の一実施形態において、前記量子ドットは、表面上に下記の化学式1a~1eで表される化合物のうちの一つ以上を含む配位子層を有するものである。
【0037】
【化5】
【0038】
前記式中、
R’及びR’’は、それぞれ独立して、水素原子;カルボキシル基;フェニル基;又はチオール基で置換若しくは非置換のC~C20のアルキル基であり、
R’とR”とは、同時に水素原子;フェニル基;又は非置換のC~C20のアルキル基ではなく、
、R、及びRは、それぞれ独立して、C~C22のアルキル基又はC~C22のアルケニル基であり、
は、C~C22のアルキレン基、C~Cのシクロアルキレン基又はC~C14のアリーレン基であり、
A及びBは、それぞれ独立して、存在しないか、又はC~C22のアルキレン基、O、NR又はSであり、
Rは、水素又はC~C22のアルキル基であり、
Xは、カルボキシル基、リン酸基、チオール基、アミン基、テトラゾール基、イミダゾール基、ピリジン基又はリポアミド基であり、
nは、1~20の整数であり、
p、q、t、及びuは、それぞれ独立して、1~100の整数であり、
rは、1~10の整数である。
【0039】
本明細書において用いられるC~C20のアルキル基は、炭素数1~20個からなる直鎖状若しくは分岐状の1価炭化水素を意味し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、n-デシル、n-ウンデシルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
本明細書において用いられるC~C22のアルキル基は、炭素数1~22個からなる直鎖状若しくは分岐状の1価炭化水素を意味し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドコサニルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
本明細書において用いられるC~C22のアルケニル基は、一つ以上の炭素-炭素二重結合を有する炭素数4~22個からなる直鎖状若しくは分岐状の1価不飽和炭化水素を意味し、例えば、ブテニレン、ペンテニレン、ヘキセニレン、ヘプテニレン、オクテニレン、ノネニレン、デセニレン、ウンデセニレン、ドデセニレン、トリデセニレン、テトラデセニレン、ペンタデセニレン、ヘキサデセニレン、ヘプタデセニレン、オクタデセニレンなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
前記C~C20のアルキル基、C~C22のアルキル基、及びC~C22のアルケニル基は、一つ又はそれの以上の水素がC~Cのアルキル基、C~Cのアルケニル基、C~Cのアルキニル基、C~C10のシクロアルキル基、C~C10のヘテロシクロアルキル基、C~C10のヘテロシクロアルキルオキシ基、C~Cのハロアルキル基、C~Cのアルコキシ基、C~Cのチオアルコキシ基、アリール基、アシル基、ヒドロキシ、チオ(thio)、ハロゲン、アミノ、アルコキシカルボニル、カルボキシ、カルバモイル、シアノ、ニトロなどで置換されてよい。
【0043】
本発明の前記化学式1aで表される化合物は、量子ドットの光特性及び分散性と、低粘度の具現の面から、R’がチオール基で置換若しくは非置換のC~C20のアルキル基であり、且つR’’がカルボキシル基である化合物であってよい。
【0044】
本発明の一実施形態において、前記化学式1aで表される化合物の具体例としては、2-(2-メトキシエトキシ)酢酸(WAKO社製)、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(WAKO社製)、{2-[2-(カルボキシメトキシ)エトキシ]エトキシ}酢酸(WAKO社製)、2-[2-(ベンジルオキシ)エトキシ]酢酸、(2-(カルボキシメトキシ)エトキシ)酢酸(WAKO社製)、(2-ブトキシエトキシ)酢酸(WAKO社製)、カルボキシ-EG6-ウンデカンチオールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
本発明の前記化学式1bで表される化合物は、量子ドットの光特性及び分散性と、低粘度の具現の面から、RはC~C22のアルキル基又はC~C20のアルケニル基であり、且つpは1~50の整数である化合物であってよい。特に、前記化学式1b中のpが前記範囲を超える場合、光変換インク組成物の粘度に影響を及ぼし得る。
【0046】
前記化学式1bで表される化合物は、チオール(thiol)基を有し、チオール基が量子ドットの表面に結合してよい。チオール基の場合、カルボン酸などの通常の量子ドットが有する配位子層化合物に比べて量子ドットの表面との結合力に優れて、量子ドットのダングリングボンド(dangling bond)のような表面欠点による消光及び表面酸化による消光を抑制して光特性(発光特性)や信頼性を向上させる長所がある。
【0047】
本発明の一実施形態において、前記化学式1bで表される化合物は、量子ドットの光特性及び分散性と、低粘度の具現の面から、下記の化学式1-1~1-6で表される化合物から選ばれる一つ以上の化合物であってよい。
【0048】
【化6】
【0049】
本発明の前記化学式1cで表される化合物は、量子ドットの光特性及び分散性と、低粘度の具現の面から、qは1~50の整数であり、且つrは1~8の整数である化合物であってよい。特に、前記化学式1cでq及びrが前記範囲を超える場合、光変換インク組成物の粘度に影響を及ぼし得る。
【0050】
前記化学式1cで表される化合物は、チオール(thiol)基を有し、且つチオール基が量子ドットの表面に結合してよい。チオール基の場合、カルボン酸などの通常の量子ドットが有する配位子層化合物に比べて量子ドットの表面との結合力に優れて、量子ドットのダングリングボンド(dangling bond)のような表面欠点による消光及び表面酸化による消光を抑制して光特性(発光特性)と信頼性を向上させる長所がある。
【0051】
本発明の一実施形態において、前記化学式1cで表される化合物は、量子ドットの光特性及び分散性と、低粘度の具現の面から、下記の化学式1-7~1-12で表される化合物から選ばれる一つ以上の化合物であってよい。
【0052】
【化7】
【0053】
本発明の前記化学式1dで表される化合物は、量子ドットの光特性及び分散性と、低粘度の具現の面から、RbはC~C22のアルキル基又はC~C20のアルケニル基であり、且つtは1~50の整数である化合物であってよい。特に、前記化学式1d中、tが前記範囲を超える場合、光変換インク組成物の粘度に影響を及ぼし得る。
【0054】
前記化学式1dで表される化合物は、アミン(amine)基を有し、且つアミン基が量子ドットの表面に結合してよい。アミン基の場合、カルボン酸などの通常の量子ドットが有する配位子層化合物に比べて量子ドットの表面との結合力に優れて、量子ドットのダングリングボンド(dangling bond)のような表面欠点による消光及び表面酸化による消光を抑制して光特性(発光特性)と信頼性を向上させる長所がある。
【0055】
本発明の一実施形態において、前記化学式1dで表される化合物は、量子ドットの光特性及び分散性と、低粘度の具現の面から、下記の化学式1-13~1-18で表される化合物から選ばれる一つ以上の化合物であってよい。
【0056】
【化8】
【0057】
本発明の前記化学式1eで表される化合物は、量子ドットの光特性及び分散性と、低粘度の具現の面から、Rcは、C~C22のアルキル基又はC~C22のアルケニル基であり、Rdは、C~C22のアルキレン基、C~Cのシクロアルキレン基又はC~C14のアリーレン基であり、A及びBは、それぞれ独立して、存在しないか、又はC~C22のアルキレン基、O、NR又はSであり、Rは、水素又はC~C22のアルキル基であり、Xは、カルボキシル基、リン酸基、チオール基、アミン基、テトラゾール基、イミダゾール基、ピリジン基又はリポアミド基であり、uは、1~50の整数である化合物であってよい。特に、前記化学式1e中、uが前記範囲を超える場合、光変換インク組成物の粘度に影響を及ぼし得る。
【0058】
本発明の一実施形態において、前記化学式1eで表される化合物は、量子ドットの光特性及び分散性と、低粘度の具現の面から、下記の化学式1-19~1-25で表される化合物から選ばれる一つ以上の化合物であってよい。
【0059】
【化9】
【0060】
本発明の前記化学式1a~1eで表される化合物は、有機配位子であって量子ドットの表面に配位結合されて量子ドットを安定化させる役割を遂行してよい。
【0061】
通常的に製造された量子ドットは、表面上に配位子層を有するものが一般的であり、製造直後の配位子層はオレイン酸(oleic acid)、ラウリン酸(lauric acid)などからなる。この場合、本発明に係る量子ドットが前記化学式1a~1eで表される化合物を配位子層として含む場合よりも量子ドットとの弱い結合力による量子ドット表面の非結合欠陥のため表面保護効果が低下することがある。また、オレイン酸の場合、高揮発性化合物(VOC;volatile organic compound)であるn-ヘキサンのような脂肪族炭化水素系溶剤、ベンゼンのような芳香族炭化水素系溶剤には分散され易いが、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)のような溶剤への分散性が悪い。本発明に係る量子ドットは、前記化学式1a~1eで表される化合物を配位子層として含み、PGMEAのような溶剤への分散性に極めて優れ、光特性を向上させる効果が奏される。
【0062】
また、前記量子ドットは、前記化学式1a~1eで表される化合物のうちの一つ以上のポリエチレングリコール系配位子を含むことで、溶剤を実質的に含まないか少量含んでも良好な分散特性を奏することができる。
【0063】
前記化学式1a~1eで表される化合物は、量子ドットの総表面積に対し、5%以上の表面を覆っていてよい。
【0064】
このとき、前記化学式1a~1eで表される化合物の含量は、量子ドット1モルに対し、0.1~10モルであってよい。
【0065】
前記化学式1a~1eで表される化合物を含む配位子層は、0.1nm~2nmの厚さ、例えば、0.5nm~1.5nmの厚さを有してよい。
【0066】
本発明の一実施形態において、前記量子ドットとは、ナノ大きさの半導体物質を称するものであってよい。原子が分子をなし、分子がクラスタという小さい分子の集合体を構成してナノ粒子をなすが、このようなナノ粒子が半導体特性を呈しているときにこれを量子ドットという。前記量子ドットは、外部からエネルギーを受けて励起状態になると、当該量子ドットの自ら該当するエネルギーバンドギャップに応じたエネルギーを放出するようになる。例えば、本発明に係る光変換インク組成物は、かかる量子ドットを含むことにより、入射した青色光の緑色光及び赤色光への光変換が可能である。
【0067】
本発明の一実施形態において、前記量子ドットは、非カドミウム系量子ドットであってよい。
【0068】
前記非カドミウム系量子ドットは、光による刺激で発光し得る量子ドット粒子であれば特に限定されない。例えば、II-VI族半導体化合物;III-V族半導体化合物;IV-VI族半導体化合物;IV族元素又はこれを含む化合物;及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるものであってよく、これらは、単独で又は2種以上混合して用いてよい。
【0069】
具体的に、前記II-VI族半導体化合物は、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる二元素化合物;ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる三元素化合物;及びHgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる四元素化合物からなる群より選ばれるものであってよいが、これらに限定されるものではない。
【0070】
前記III-V族半導体化合物は、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる二元素化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる三元素化合物;及びGaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる四元素化合物からなる群より選ばれるものであってよいが、これらに限定されるものではない。
【0071】
前記IV-VI族半導体化合物は、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる二元素化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる三元素化合物;及びSnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる四元素化合物からなる群より選ばれる一つ以上であってよいが、同様にこれらに限定されるものではない。
【0072】
これらに限定されるものではないが、前記IV族元素又はこれを含む化合物は、Si、Ge、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる元素;及びSiC、SiGe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる二元素化合物からなる群より選ばれるものであってよい。
【0073】
前記量子ドットは、均質な(homogeneous)単一構造;コア-シェル(core-shell)、グラディエント(gradient)構造などのような二重構造;又はこれらの混合構造を有するものであってよい。好ましくは、前記量子ドットは、コア及びコアを覆うシェルを含むコア-シェル構造を有するものであってよい。
【0074】
具体的に、前記コア-シェルの二重構造において、それぞれのコアとシェルをなす物質は、前述した互いに異なる半導体化合物からなるものであってよい。例えば、前記コアは、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、及びInAlPSbからなる群より選ばれる一つ以上を含み、前記シェルは、ZnSe、ZnS、及びZnTeからなる群より選ばれる一つ以上を含んでよいが、これらに限定されるものではない。
【0075】
例えば、コア-シェル構造の量子ドットは、InP/ZnS、InP/ZnSe、InP/GaP/ZnS、InP/ZnSe/ZnS、InP/ZnSeTe/ZnS、及びInP/MnSe/ZnSなどが挙げられる。
【0076】
前記量子ドットは、湿式化学工程(wet chemical process)、有機金属化学蒸着工程(MOCVD、metal organic chemical vapor deposition)、又は分子線エピタキシ工程(MBE、molecular beam epitaxy)によって合成されてよいが、これらに限定されるものではなく、湿式化学工程(wet chemical process)によって合成したほうがより光特性に優れる量子ドットが得られるため、好ましい。
【0077】
前記湿式化学工程とは、有機溶剤に前駆体物質を入れて粒子を成長させる方法である。湿式化学工程では、結晶が成長するときに有機溶剤が自然に量子ドット結晶の表面に配位し、分散剤の役割をして結晶の成長を調節するようになるので、有機金属化学蒸着工程や分子線エピタキシのような気相蒸着法よりも容易且つ低廉な工程によってナノ粒子の成長を制御することができる。そのため、前記湿式化学工程を用いて前記量子ドットを製造したほうが好ましい。
【0078】
湿式化学工程によって量子ドットを製造する場合、量子ドットの凝集を抑え且つ量子ドットの粒子の大きさをナノレベルに制御するために有機配位子が用いられる。このような有機配位子としては、一般的にオレイン酸が用いられてよい。
【0079】
本発明の一実施形態において、前記量子ドットの製造過程で用いられたオレイン酸は、前記化学式1a~1eで表される化合物のうちの一つ以上のポリエチレングルコール系化合物によって配位子交換方法により置き換えられる。
【0080】
前記配位子交換は、本来の有機配位子、すなわちオレイン酸を有する量子ドットを含有する分散液に、交換したい有機配位子、すなわち前記化学式1a~1eで表される化合物のうちの一つ以上のポリエチレングリコール系化合物を添加しこれを常温~200℃で30分~3時間撹拌して、化学式1a~1eで表される化合物のうちの一つ以上のポリエチレングリコール系化合物が結合された量子ドットを収得することで行われてよい。必要に応じて前記化学式1a~1eで表される化合物のうちの一つ以上のポリエチレングリコール系化合物が結合された量子ドットを分離し精製する過程を更に行ってもよい。
【0081】
前記量子ドットは、光変換インク組成物の全体100重量%に対し、1~60重量%、好ましくは、5~50重量%の範囲で含まれてよい。前記量子ドットが前記範囲内で含まれると、発光効率に優れ、且つコーティング層の信頼性に優れるという利点がある。前記量子ドットが前記範囲未満で含まれると、光変換効率が不十分になることがあり、また前記範囲を超えると、相対的に青色光の放出が低下して色再現性が落ちる問題が生じることがある。
【0082】
硬化性モノマー(B)
本発明の一実施形態において、前記硬化性モノマー(B)は、光及び後述する光重合開始剤の作用で重合し得る化合物であって、単官能単量体、2官能単量体、その他の多官能単量体などが挙げられ、特に、下記の化学式4で表される化合物を含むものが低粘度の具現の面から、好ましい。
【0083】
【化10】
【0084】
前記式中、
は、C~C20のアルキレン基、フェニレン基又はC~C10のシクロアルキレン基であり、
は、水素又はメチル基であり、
fは、1~15の整数である。
【0085】
本明細書において用いられるC~C20のアルキレン基は、炭素数1~20個からなる直鎖状若しくは分岐状の2価炭化水素を意味し、例えば、メチレン、エチレン、n-プロピレン、イソプロピレン、n-ブチレン、イソブチレン、n-ペンチレン、n-ヘキシレン、n-ヘプチレン、n-オクチレン、n-ノニレンなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
本明細書において用いられるC~C10のシクロアルキレン基は、炭素数3~10個からなる単環式又は融合環式の2価炭化水素を意味し、例えば、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレンなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
前記C~C20のアルキレン基、フェニレン基、及びC~C10のシクロアルキレン基は、一つ又はそれの以上の水素がC~Cのアルキル基、C~Cのアルケニル基、C~Cのアルキニル基、C~C10のシクロアルキル基、C~C10のヘテロシクロアルキル基、C~C10のヘテロシクロアルキルオキシ基、C~Cのハロアルキル基、C~Cのアルコキシ基、C~Cのチオアルコキシ基、アリール基、アシル基、ヒドロキシ、チオ(thio)、ハロゲン、アミノ、アルコキシカルボニル、カルボキシ、カルバモイル、シアノ、ニトロなどで置換されてよい。
【0088】
本発明の一実施形態において、Rは、C~C20のアルキレン基であってよい。
【0089】
前記化学式4で表される化合物の具体例としては、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ビスアクリロイルオキシノナン、トリプロピレングリコールジアクリレートなどが挙げられる。
【0090】
本発明に係る光変換インク組成物は、前記化学式4で表される硬化性モノマーの他にも本発明の目的を逸脱しない限度内で当該分野において通常用いられる硬化性モノマーを更に含んでよい。例えば、単官能単量体、2官能単量体、その他の多官能単量体などが挙げられ、これらのうち2官能単量体が好ましく用いられる。
【0091】
前記単官能単量体の種類は別に限定されず、例えば、ノニルフェニルカルビトールアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-エチルヘキシルカルビトールアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、N-ビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0092】
前記2官能単量体の種類は別に限定されず、例えば、ビスフェノールAのビス(アクリロイルオキシエチル)エーテルなどが挙げられる。
前記多官能単量体の種類は別に限定されず、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシレイテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシレイテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシレイテッドジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロポキシレイテッドジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0093】
前記硬化性モノマー(B)は、前記光変換インク組成物の全体100重量%に対し、20~90重量%、好ましくは、30~80重量%の範囲で含まれてよい。前記硬化性モノマーが前記範囲内で含まれると、画素部の強度や平滑性の面で好ましいという利点がある。前記硬化性モノマーが前記範囲未満で含まれると、画素部の強度がやや低下することがあり、また、前記硬化性モノマーが前記範囲を超えて含まれると、平滑性がやや低下することがあるため、前記範囲内で含まれることが好ましい。
【0094】
界面活性剤(C)
本発明の一実施形態において、前記界面活性剤は、反応性シリコン系界面活性剤を含む。
【0095】
前記反応性シリコン系界面活性剤は、光を照射することで光重合開始剤から発生する活性ラジカル、酸などによって重合し得る反応性基を有する化合物であって、前記反応性基により量子ドットが多量含有された厚膜を形成しても量子ドットの凝集による相殺が減って発光効率の低下を防止することができ、且つ塗膜の密着性を向上させることができる。また、前記反応性シリコン系界面活性剤は、前記ポリエチレングリコール系配位子との相溶性に優れ且つ前記硬化性モノマーとの反応性に優れて、光変換インク組成物の分散性、感度、及び工程性を向上させる。
【0096】
前記反応性シリコン系界面活性剤は、末端にアクリレート基を有するシリコン系界面活性剤であってよい。例えば、前記反応性シリコン系界面活性剤は、末端に1個以上、好ましくは、1~8個、より好ましくは、1~4個のアクリレート基を有するシリコン系界面活性剤であってよい。
【0097】
具体的に、前記反応性シリコン系界面活性剤は、シロキサン結合を有し、末端に反応性アクリレート基を含む化合物であって、下記の化学式2~3で表される化合物のうちの一つ以上を含んでよい。
【0098】
【化11】
【0099】
前記式中、
及びRは、それぞれ独立して、
【0100】
【化12】
【0101】
であり、
は、
【0102】
【化13】
【0103】
であり、
Lは、ウレタン基を有する2~3価の連結基であり、
Y及びZは、それぞれ独立して、エステル基又はC~Cのオキシアルキレン基であり、
R4及びRは、それぞれ独立して、水素又はメチル基であり、
gは、0~1の整数であり、
hは、1~2の整数であり、
k、l、m、i、及びjは、それぞれ独立して、1~20の整数である。
【0104】
本明細書において用いられるC~Cのオキシアルキレン基は、炭素数1~6個からなる直鎖状若しくは分岐状の2価炭化水素で鎖炭素のうちの一つ以上が酸素で置換された官能基を意味し、例えば、オキシメチレン、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン、オキシペンチレン、オキシヘキシレンなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0105】
前記ウレタン基、エステル基、及びC~Cのオキシアルキレン基は、一つ又はそれ以上の水素がC~Cのアルキル基、C~Cのアルケニル基、C~Cのアルキニル基、C~C10のシクロアルキル基、C~C10のヘテロシクロアルキル基、C~C10のヘテロシクロアルキルオキシ基、C~Cのハロアルキル基、C~Cのアルコキシ基、C~Cのチオアルコキシ基、アリール基、アシル基、ヒドロキシ、チオ(thio)、ハロゲン、アミノ、アルコキシカルボニル、カルボキシ、カルバモイル、シアノ、ニトロなどで置換されてよい。
【0106】
前記反応性シリコン系界面活性剤の市販製品としては、BYK-UV3570、BYK-UV3530、BYK-UV3500(以上、BYK社製)、TEGO Rad 2100、TEGO Rad 2200N、TEGO Rad 2250、TEGO Rad 2300、TEGO Rad 2500、TEGO Rad 2600、TEGO Rad 2700(以上、デグサ社製)などを例に挙げられる。
【0107】
前記界面活性剤は、前記反応性シリコン系界面活性剤の他に、当該技術分野において一般に用いられる界面活性剤を更に含んでよい。かかる更なる界面活性剤としては、例えば、市販品としてのダウコーニング東レシリコーン社製のDC3PA、DC7PA、SH11PA、SH21PA、SH8400など、GE東芝シリコーン社製のTSF-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4446、TSF-4460、TSF-4452などの非反応性シリコン系界面活性剤、大日本インキ化学工業社製のメガファックF-470、F-471、F-475、F-482、F-489、F-554などのフルオロ系界面活性剤がある。
【0108】
前記界面活性剤は、光変換インク組成物の全体100重量%に対し、0.005~2重量%、好ましくは、0.01~1.5重量%の範囲で含んでよい。前記界面活性剤が前記範囲内で含まれると、塗膜の平坦性が良好になる。前記界面活性剤が前記範囲未満で含まれると、インク組成物の拡がり性や平坦化が不足して表面粗さが増加し表面に噴火口が生じることがあり、また前記範囲を超えて含まれると、インク組成物の拡がり性が過度になってノズルから露出したインクが隔壁表面及び隣接の開口部に溢れ出したり飛び散って汚染が生じることがある。
【0109】
前記反応性シリコン系界面活性剤は、界面活性剤の全体100重量%に対し、20重量%以上、好ましくは、30重量%以上の量で含んでよい。前記反応性シリコン系界面活性剤が前記範囲内で含まれると、量子ドットのシェル表面に置換されて、厚膜で量子ドットの分散安定性を向上し且つ密着性を増加させることができ、また前記範囲未満で含まれると、厚膜で量子ドットの光特性が低下し且つ塗膜の密着性も低下することがある。
【0110】
散乱粒子(D)
本発明の一実施形態に係る光変換インク組成物は、散乱粒子(D)を更に含んでよい。
【0111】
前記散乱粒子は、量子ドットから放出された光の経路を増加させて全体的な光効率を高める役割をする。
【0112】
前記散乱粒子としては、通常の無機材料を用いてよく、好ましくは、金属酸化物を用いてよい。
【0113】
前記金属酸化物は、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Mo、Cs、Ba、La、Hf、W、Tl、Pb、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Ti、Sb、Sn、Zr、Nb、Ce、Ta、In、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれた1種の金属を含む酸化物であってよいが、これらに限定されない。
【0114】
具体的に、Al、SiO、ZnO、ZrO、BaTiO、TiO、Ta、Ti、ITO、IZO、ATO、ZnO-Al、Nb、SnO、MgO、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれた1種であってよい。必要に応じて、アクリレートなどの不飽和結合を有する化合物で表面処理された材質も用いてよい。
【0115】
散乱粒子は、50~1000nmの平均粒径を有してよく、好ましくは、100~500nm、より好ましくは、150~300nmの範囲の平均粒径を有してよい。このとき、粒子の大きさが小さ過ぎると、量子ドットから放出された光の十分な散乱効果を期待することができず、これと逆に大き過ぎると、組成物中に沈んだりして均一な品質の光変換層表面を得ることができないため、前記範囲内で適宜調節して用いる。
【0116】
本発明において平均粒径とは、数平均粒径のことであってよく、例えば、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)又は透過電子顕微鏡(TEM)によって観察した像から求めることができる。具体的に、FE-SEM又はTEMの観察画像から幾つかのサンプルを抽出し、これらのサンプルの径を測定して算術平均した値から得ることができる。
【0117】
前記散乱粒子は、前記光変換インク組成物の全体100重量%に対し、0.5~20重量%、好ましくは、1~15重量%の範囲で含んでよい。前記散乱粒子が前記範囲内で含まれると、発光強さの増加効果が極大化するため好ましい。なお、前記範囲未満で含まれると、得ようとする発光強さの確保が多少難しくなることがあり、また前記範囲を超えると、青色照射光の透過度が低下するため発光効率に問題が生じることがある。
【0118】
光重合開始剤(E)
本発明の一実施形態に係る光変換インク組成物は、光重合開始剤(E)を更に含んでよい。
【0119】
本発明の一実施形態において、前記光重合開始剤(E)は、前記硬化性モノマーを重合させ得るものであれば、その種類は特に制限されずに用いてよい。特に、前記光重合開始剤は、重合特性、開始効率、吸収波長、入手性、価格などの観点から、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ビイミダゾール系化合物、オキシム系化合物、及びチオキサントン系化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を用いることが好ましい。
【0120】
前記光重合開始剤は、前記光変換インク組成物の全体100重量%に対し、0.01~20重量%、好ましくは、0.5~15重量%の範囲で含まれてよい。前記光重合開始剤が前記範囲内で含まれると、前記光変換インク組成物が高感度化して露光時間が短縮することで生産性が向上するため好ましい。また、本発明に係る光変換インク組成物を用いて形成した画素部の強度と前記画素部の表面での平滑性が良好になるという利点がある。
【0121】
前記光重合開始剤(E)は、本発明に係る光変換インク組成物の感度を向上させるために、光重合開始補助剤(e1)を更に含んでよい。前記光重合開始補助剤が含まれると、感度が一層高められて生産性が向上するという利点がある。
【0122】
前記光重合開始補助剤(e1)は、例えば、アミン化合物、カルボン酸化合物、チオール基を有する有機黄化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物が好ましく用いられてよいが、これらに限定されるものではない。
【0123】
前記光重合開始補助剤(e1)は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜追加して用いてよい。
【0124】
添加剤(F)
本発明の一実施形態に係る光変換インク組成物は、前記した成分の他、添加剤を更に含んでよい。
【0125】
前記添加剤は、酸化防止剤、光酸発生剤、熱酸発生剤、分散剤、充填剤、硬化剤、密着促進剤などであってよく、これらは、単独で又は2種以上組み合わせて用いてよい。
前記添加剤は、前記光変換インク組成物の全体100重量%に対し、0.05~10重量%、具体的に、0.1~10重量%、より具体的に、0.1~5重量%の範囲で用いてよいが、これに限定されるものではない。
【0126】
本発明の一実施形態に係る光変換インク組成物は、溶剤を実質的に含まず、含むとしても光変換インク組成物の全体100重量%に対し、1重量%以下の量で含む。本発明の一実施形態に係る光変換インク組成物は、溶剤を含まない無溶剤型であるか、1重量%以下と極少量含む低溶剤型であるにも拘わらず、量子ドットの光特性及び分散性に優れ、且つ低粘度の具現が可能である。
【0127】
また、本発明の一実施形態に係る光変換インク組成物は、樹脂成分を実質的に含まず、含むとしても光変換インク組成物の全体100重量%に対し、0.5重量%以内で含む。本発明の一実施形態に係る光変換インク組成物は、樹脂成分を含まないことで低い粘度を具現することができ、インクのノズルジェッティング特性に優れる。
【0128】
本発明の一実施形態は、上述した光変換インク組成物の硬化物を含む光変換画素に関する。
【0129】
また、本発明の一実施形態は、上述した光変換画素を含むカラーフィルタに関する。
【0130】
本発明に係る光変換インク組成物のパターン形成方法は、上述した光変換インク組成物をインクジェット方式で所定の領域に塗布するステップ、及び該塗布された光変換インク組成物を硬化させるステップを含んでなる。
【0131】
先ず、本発明に係る光変換インク組成物をインクジェット噴射機に注入して基板の所定の領域をプリントする。
【0132】
前記基板は制限されず、一例として、ガラス基板、シリコン基板、ポリカーボネート基板、ポリエステル基板、芳香族ポリアミド基板、ポリアミドイミド基板、ポリイミド基板、Al基板、GaAs基板などの表面が平坦な基板などが挙げられる。これらの基板は、シランカップリング剤などの薬品による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング処理、スパッタリング処理、気相反応処理、真空蒸着処理などの前処理を施してよい。基板としてシリコン基板などを用いる場合、シリコン基板などの表面には、電荷結合素子(CCD)、薄膜トランジスター(TFT)などが設けられてよい。また、隔壁マトリックスが設けられてもよい。
【0133】
インクジェット噴射機の一例であるピエゾインクジェットヘッドから噴射され基板上で適切な相(phase)を形成するために、粘度、流動性、量子ドット粒子などの特性がインクジェットヘッドと釣り合う必要がある。本発明で用いられたピエゾインクジェットヘッドは特に制限されないが、約10~100pL、好ましくは、約20~40pLの液滴大きさを有するインクを噴射する。
【0134】
本発明に係る光変換インク組成物の粘度は、約3~30cPが好適であり、より好ましくは、7~20cPの範囲で調節される。
【0135】
本発明の一実施形態に係るカラーフィルタは、前記パターン形成方法によって形成される着色パターン層を含む。すなわち、カラーフィルタは、基板上に上述した光変換インク組成物を所定のパターンで塗布した後に硬化させて形成される着色パターン層を含むことを特徴とする。カラーフィルタの構成及び製造方法は、当該技術分野において周知であるので、その詳しい説明を省略する。
【0136】
本発明の一実施形態は、上述したカラーフィルタが備えられた画像表示装置に関する。
本発明に係るカラーフィルタは、通常の液晶表示装置(LCD)だけでなく、エレクトロルミネッセンス表示装置(EL)、プラズマ表示装置(PDP)、電界放出表示装置(FED)、有機発光素子(OLED)などの各種の画像表示装置に適用可能である。
【0137】
本発明に係る画像表示装置は、上述したカラーフィルタを備えたことを除いては、当該技術分野において周知の構成を含む。
【0138】
以下、実施例、比較例及び実験例によって本発明をより具体的に説明することにする。なお、これらの実施例、比較例及び実験例は、単に本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらに限定されるものではないことは当業者にとって自明である。
【0139】
合成例1:配位子置換量子ドット(A1)の合成
インジウムアセテート(Indium acetate)0.4mmol(0.058g)、パルミチン酸(palmitic acid)0.6mmol(0.15g)、及び1-オクタデセン(1-octadecene)20mLを反応器に入れ、真空下、120℃で加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に置換した。280℃で加熱した後、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン(TMS3P)0.2mmol(58μl)及びトリオクチルホスフィン1.0mLの混合溶液を素早く注入し、1分間反応させた。
【0140】
亜鉛アセテート2.4mmol(0.448g)、オレイン酸4.8mmol、及びトリオクチルアミン20mLを反応器に入れ、真空下、120℃で加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に置換し、反応器を280℃に昇温させた。先に合成したInPコア溶液2mLを入れ、次いで、トリオクチルホスフィン中のセレニウム(Se/TOP)4.8mmolを入れた後、最終混合物を2時間反応させた。常温に素早く冷却させた反応溶液にエタノールを入れ、遠心分離して得た沈澱を減圧ろ過後に減圧乾燥して、InP/ZnSeコア-シェルを形成させた。
【0141】
次いで、亜鉛アセテート2.4mmol(0.448g)、オレイン酸4.8mmol、及びトリオクチルアミン20mLを反応器に入れ、真空下、120℃で加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に置換し、反応器を280℃に昇温させた。先に合成したInP/ZnSeコア-シェル溶液2mLを入れ、次いで、トリオクチルホスフィン中の硫黄(S/TOP)4.8mmolを入れた後、最終混合物を2時間反応させた。常温に素早く冷却させた反応溶液にエタノールを入れ、遠心分離して得た沈澱を減圧ろ過後に減圧乾燥して、InP/ZnSe/ZnSコア-シェル構造の量子ドットを収得した後、クロロホルムに分散させた。
【0142】
得られたナノ量子ドットの光発光スペクトルの最大発光ピークは535nmであり、量子ドット溶液5mLを遠心分離チューブに入れ、エタノール20mLを入れて沈澱させた。遠心分離によって上層液は捨て、沈殿物に2mLのクロロホルムを入れて量子ドットを分散させた後、0.50gの(2-ブトキシエトキシ)酢酸を入れ、窒素雰囲気下、60℃で加熱しながら一時間反応させた。
【0143】
次いで、反応物に25mLのn-ヘキサンを入れて量子ドットを沈澱させた後、遠心分離を施して沈殿物を得た。
【0144】
合成例2:配位子置換量子ドット(A2)の合成
インジウムアセテート(Indium acetate)0.4mmol(0.058g)、パルミチン酸(palmitic acid)0.6mmol(0.15g)、及び1-オクタデセン(1-octadecene)20mLを反応器に入れ、真空下、120℃で加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に置換した。280℃で加熱した後、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン(TMS3P)0.2mmol(58μl)及びトリオクチルホスフィン1.0mLの混合溶液を素早く注入し、5分間の反応後、反応溶液を常温に素早く冷却させた。吸収最大波長560~590nmを示した。
【0145】
亜鉛アセテート2.4mmol(0.448g)、オレイン酸4.8mmol、及びトリオクチルアミン20mLを反応器に入れ、真空下、120℃で加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に置換し、反応器を280℃に昇温させた。先に合成したInPコア溶液2mLを入れ、次いで、トリオクチルホスフィン中のセレニウム(Se/TOP)4.8mmolを入れた後、最終混合物を2時間反応後に常温に下げて、InP/ZnSeコア-シェルを形成させた。
【0146】
次いで、亜鉛アセテート2.4mmol(0.448g)、オレイン酸4.8mmol、及びトリオクチルアミン20mLを反応器に入れ、真空下、120℃で加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に置換し、反応器を280℃に昇温させた。先に合成したInP/ZnSeコア-シェル溶液2mLを入れ、次いで、トリオクチルホスフィン中の硫黄(S/TOP)4.8mmolを入れた後、最終混合物を2時間反応させた。常温に素早く冷却させた反応溶液にエタノールを入れ、遠心分離して得た沈澱を減圧ろ過後に減圧乾燥して、InP/ZnSe/ZnSコア-シェル構造の量子ドットを収得した後にクロロホルムに分散させた。
【0147】
得られたナノ量子ドットの光発光スペクトルの最大発光ピークは635nmであり、合成された量子ドット溶液5mLを遠心分離チューブに入れ、エタノール20mLを入れて沈澱させた。遠心分離によって上層液は捨て、沈殿物に2mLのクロロホルムを入れて量子ドットを分散させた後、0.65gのカルボキシ-EG6-ウンデカンチオールを入れ、窒素雰囲気下、60℃で加熱しながら一時間反応させた。
【0148】
次いで、反応物に25mLのn-ヘキサンを入れて量子ドットを沈澱させた後、遠心分離を実施して上層液は捨てて沈殿物を得た。
【0149】
合成例3:配位子置換量子ドット(A3)の合成
インジウムアセテート(Indium acetate)0.4mmol(0.058g)、パルミチン酸(palmitic acid)0.6mmol(0.15g)、及び1-オクタデセン(octadecene)20mLを反応器に入れ、真空下、120℃で加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に置換した。
【0150】
280℃で加熱した後、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン(TMS3P)0.2mmol(58μl)及びトリオクチルホスフィン1.0mLの混合溶液を素早く注入し、0.5分間反応させた。
【0151】
次いで、亜鉛アセテート2.4mmol(0.448g)、オレイン酸4.8mmol、及びトリオクチルアミン20mLを反応器に入れ、真空下、120℃で加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に置換し、反応器を280℃に昇温させた。先に合成したInPコア溶液2mLを入れ、次いで、トリオクチルホスフィン中のセレニウム(Se/TOP)4.8mmolを入れた後、最終混合物を2時間反応させた。常温に素早く冷却させた反応溶液にエタノールを入れ、遠心分離して得た沈澱を減圧ろ過後に減圧乾燥して、InP/ZnSeコア-シェルを形成させた。
【0152】
次いで、亜鉛アセテート2.4mmol(0.448g)、オレイン酸4.8mmol、及びトリオクチルアミン20mLを反応器に入れ、真空下、120℃で加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に置換し、反応器を280℃に昇温させた。先に合成したInP/ZnSeコア-シェル溶液2mLを入れ、次いで、トリオクチルホスフィン中の硫黄(S/TOP)4.8mmolを入れた後、最終混合物を2時間反応させた。常温に素早く冷却させた反応溶液にエタノールを入れ、遠心分離して得た沈澱を減圧ろ過後に減圧乾燥して、InP/ZnSe/ZnSコア-シェル構造の量子ドットを収得した後にクロロホルムに分散させた。固形分は10%に調整した。最大発光波長は520nmであった。
【0153】
合成された量子ドット溶液5mLを遠心分離チューブに入れ、エタノール20mLを入れて沈澱させた。遠心分離によって上層液は捨て、沈殿物に3mLのクロロホルムを入れて量子ドットを分散させた後、1.00gの下記の化学式1-1で表されるmPEG5-SH(フューチャーケム社製)を入れ、窒素雰囲気下、60℃で加熱しながら一時間反応させた。
【0154】
【化14】
【0155】
次いで、反応物に25mLのn-ヘキサンを入れて量子ドットを沈澱させた後、遠心分離を実施して上層液は捨てて沈殿物を得た。
【0156】
合成例4:配位子置換量子ドット(A4)の合成
合成例3で用いた配位子の代わりに、下記の化学式1-2で表されるmPEG7-SH(フューチャーケム社製)を用いたことを除いては、合成例3と同様に実施した。
【0157】
【化15】
【0158】
合成例5:配位子置換量子ドット(A5)の合成
合成例3で用いた配位子の代わりに、下記の化学式1-3で表される化合物を用いたことを除いては、合成例3と同様に実施した。
【0159】
【化16】
【0160】
合成例6:配位子置換量子ドット(A6)の合成
合成例3で用いた配位子の代わりに、下記の化学式1-4で表される化合物を用いたことを除いては、合成例3と同様に実施した。
【0161】
【化17】
【0162】
合成例7:配位子置換量子ドット(A7)の合成
合成例3で用いた配位子の代わりに、下記の化学式1-5で表される化合物を用いたことを除いては、合成例3と同様に実施した。
【0163】
【化18】
【0164】
合成例8:配位子置換量子ドット(A8)の合成
合成例3で用いた配位子の代わりに、下記の化学式1-6で表される化合物を用いたことを除いては、合成例3と同様に実施した。
【0165】
【化19】
【0166】
合成例9:配位子置換量子ドット(A9)の合成
合成例3で用いた1.00gの配位子の代わりに、3.00gの下記の化学式1-7で表される化合物を用いたことを除いては、合成例3と同様に実施した。
【0167】
【化20】
【0168】
合成例10:配位子置換量子ドット(A10)の合成
合成例3で用いた1.00gの配位子の代わりに、3.00gの下記の化学式1-8で表される化合物を用いたことを除いては、合成例3と同様に実施した。
【0169】
【化21】
【0170】
合成例11:配位子置換量子ドット(A11)の合成
合成例3で用いた1.00gの配位子の代わりに、3.00gの下記の化学式1-9で表される化合物を用いたことを除いては、合成例3と同様に実施した。
【0171】
【化22】
【0172】
合成例12:配位子置換量子ドット(A12)の合成
合成例3で用いた1.00gの配位子の代わりに、3.00gの下記の化学式1-10で表される化合物を用いたことを除いては、合成例3と同様に実施した。
【0173】
【化23】
【0174】
合成例13:配位子置換量子ドット(A13)の合成
合成例3で用いた1.00gの配位子の代わりに、3.00gの下記の化学式1-11で表される化合物を用いたことを除いては、合成例3と同様に実施した。
【0175】
【化24】
【0176】
合成例14:配位子置換量子ドット(A14)の合成
合成例3で用いた1.00gの配位子の代わりに、3.00gの下記の化学式1-12で表される化合物を用いたことを除いては、合成例3と同様に実施した。
【0177】
【化25】
【0178】
合成例15:配位子置換量子ドット(A15)の合成
合成例3で用いた1.00gの配位子の代わりに、3.00gの下記の化学式1-13で表される化合物を用いたことを除いては、合成例3と同様に実施した。
【0179】
【化26】
【0180】
合成例16:配位子置換量子ドット(A16)の合成
合成例3で用いた1.00gの配位子の代わりに、3.00gの下記の化学式1-14で表される化合物を用いたことを除いては、合成例3と同様に実施した。
【0181】
【化27】
【0182】
合成例17:配位子置換量子ドット(A17)の合成
合成例3で用いた1.00gの配位子の代わりに、3.00gの下記の化学式1-15で表される化合物を用いたことを除いては、合成例3と同様に実施した。
【0183】
【化28】
【0184】
合成例18:配位子置換量子ドット(A18)の合成
合成例3で用いた1.00gの配位子の代わりに、3.00gの下記の化学式1-16で表される化合物を用いたことを除いては、合成例3と同様に実施した。
【0185】
【化29】
【0186】
合成例19:配位子置換量子ドット(A19)の合成
合成例3で用いた1.00gの配位子の代わりに、3.00gの下記の化学式1-17で表される化合物を用いたことを除いては、合成例3と同様に実施した。
【0187】
【化30】
【0188】
合成例20:配位子置換量子ドット(A20)の合成
合成例3で用いた1.00gの配位子の代わりに、3.00gの下記の化学式1-18で表される化合物を用いたことを除いては、合成例3と同様に実施した。
【0189】
【化31】
【0190】
合成例21:配位子置換量子ドット(A21)の合成
合成例3で用いた1.00gの配位子の代わりに、3.00gの下記の化学式1-19で表される化合物を用いたことを除いては、合成例3と同様に実施した。
【0191】
【化32】
【0192】
合成例22:配位子置換量子ドット(A22)の合成
合成例3で用いた1.00gの配位子の代わりに、3.00gの下記の化学式1-20で表される化合物を用いたことを除いては、合成例3と同様に実施した。
【0193】
【化33】
【0194】
合成例23:配位子置換量子ドット(A23)の合成
合成例3で用いた1.00gの配位子の代わりに、3.00gの下記の化学式1-21で表される化合物を用いたことを除いては、合成例3と同様に実施した。
【0195】
【化34】
【0196】
合成例24:配位子置換量子ドット(A24)の合成
合成例3で用いた1.00gの配位子の代わりに、3.00gの下記の化学式1-22で表される化合物を用いたことを除いては、合成例3と同様に実施した。
【0197】
【化35】
【0198】
合成例25:配位子置換量子ドット(A25)の合成
合成例3で用いた1.00gの配位子の代わりに、3.00gの下記の化学式1-23で表される化合物を用いたことを除いては、合成例3と同様に実施した。
【0199】
【化36】
【0200】
合成例26:配位子置換量子ドット(A26)の合成
合成例3で用いた1.00gの配位子の代わりに、3.00gの下記の化学式1-24で表される化合物を用いたことを除いては、合成例3と同様に実施した。
【0201】
【化37】
【0202】
合成例27:配位子置換量子ドット(A27)の合成
合成例3で用いた1.00gの配位子の代わりに、3.00gの下記の化学式1-25で表される化合物を用いたことを除いては、合成例3と同様に実施した。
【0203】
【化38】
【0204】
比較合成例1:配位子置換量子ドット(A28)の合成
インジウムアセテート(Indium acetate)0.4mmol(0.058g)、パルミチン酸(palmitic acid)0.6mmol(0.15g)、及び1-オクタデセン(1-octadecene)20mLを反応器に入れ、真空下、120℃で加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に置換した。280℃で加熱した後、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン(TMS3P)0.2mmol(58μl)及びトリオクチルホスフィン1.0mLの混合溶液を素早く注入し、5分間の反応後に反応溶液を常温に素早く冷却させた。吸収最大波長560~590nmを示した。
【0205】
亜鉛アセテート2.4mmol(0.448g)、オレイン酸4.8mmol、及びトリオクチルアミン20mLを反応器に入れ、真空下、120℃で加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に置換し、反応器を280℃に昇温させた。先に合成したInPコア溶液2mLを入れ、次いで、トリオクチルホスフィン中のセレニウム(Se/TOP)4.8mmolを入れた後、最終混合物を2時間反応後に常温に下げて、InP/ZnSeコア-シェルを形成させた。
【0206】
次いで、亜鉛アセテート2.4mmol(0.448g)、オレイン酸4.8mmol、及びトリオクチルアミン20mLを反応器に入れ、真空下、120℃で加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に置換し、反応器を280℃に昇温させた。先に合成したInP/ZnSeコア-シェル溶液2mLを入れ、次いで、トリオクチルホスフィン中の硫黄(S/TOP)4.8mmolを入れた後、最終混合物を2時間反応させた。常温に素早く冷却させた反応溶液にエタノールを入れ、遠心分離して得た沈澱を減圧ろ過後に減圧乾燥して、InP/ZnSe/ZnSコア-シェル構造の量子ドットを得た。
【0207】
比較合成例2:配位子置換量子ドット(A29)の合成
インジウムアセテート(Indium acetate)0.4mmol(0.058g)、パルミチン酸(palmitic acid)0.6mmol(0.15g)、及び1-オクタデセン(octadecene)20mLを反応器に入れ、真空下、120℃で加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に置換した。
280℃で加熱した後、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン(TMS3P)0.2mmol(58μl)及びトリオクチルホスフィン1.0mLの混合溶液を素早く注入し、0.5分間反応させた。
【0208】
次いで、亜鉛アセテート2.4mmol(0.448g)、オレイン酸4.8mmol、及びトリオクチルアミン20mLを反応器に入れ、真空下、120℃で加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に置換し、反応器を280℃に昇温させた。先に合成したInPコア溶液2mLを入れ、次いで、トリオクチルホスフィン中のセレニウム(Se/TOP)4.8mmolを入れた後、最終混合物を2時間反応させた。常温に素早く冷却させた反応溶液にエタノールを入れ、遠心分離して得た沈澱を減圧ろ過後に減圧乾燥して、InP/ZnSeコア-シェルを形成させた。
【0209】
次いで、亜鉛アセテート2.4mmol(0.448g)、オレイン酸4.8mmol、及びトリオクチルアミン20mLを反応器に入れ、真空下、120℃で加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に置換し、反応器を280℃に昇温させた。先に合成したInP/ZnSeコア-シェル溶液2mLを入れ、次いで、トリオクチルホスフィン中の硫黄(S/TOP)4.8mmolを入れた後、最終混合物を2時間反応させた。常温に素早く冷却させた反応溶液にエタノールを入れ、遠心分離して得た沈澱を減圧ろ過後に減圧乾燥して、InP/ZnSe/ZnSコア-シェル構造の量子ドットを得た。
【0210】
比較合成例3:配位子置換量子ドット(A30)の合成
合成例3で用いた配位子の代わりに、下記の化学式aで表される化合物(1-ドデカンチオール)を用いたことを除いては、合成例3と同様に実施した。
〔化学式a〕
CH(CH10CHSH 。
【0211】
比較合成例4:配位子置換量子ドット(A31)の合成
合成例3で用いた配位子の代わりに、下記の化学式bで表される化合物を用いたことを除いては、合成例3と同様に実施した。
〔化学式b〕
NCH(CHCHNH
【0212】
製造例1:散乱粒子分散液(C1)の製造
散乱粒子として粒径210nmのTiO2(石原産業社製のCR-63)70.0重量部、分散剤としてDISPERBYK-2001(BYK社製)4.0重量部、及び溶媒として1,6-ヘキサンジオールジアクリレート26重量部をビーズミルにて12時間混合及び分散して、散乱粒子分散液(C1)を製造した。
【0213】
実施例及び比較例:光変換インク組成物の製造
下記の表1~表4の組成でそれぞれの成分を混合して光変換インク組成物を製造した(重量%)。
【0214】
【表1】
【0215】
【表2】
【0216】
【表3】
【0217】
【表4】
【0218】
A1~A31:合成例1~27及び比較合成例1~4で製造された量子ドット
B1:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(シグマアルドリッチ社製)
C1:反応性シリコン系界面活性剤 BYK-UV3570(BYK社製)
C2:反応性シリコン系界面活性剤 BYK-UV3530(BYK社製)
C3:フルオロ系界面活性剤 F-554(大日本インキ化学工業社製)
C4:非反応性シリコン系界面活性剤 SH8400(東レシリコーン社製)
D1:製造例1で製造された散乱粒子分散液
E1:Irgacure OXE-01(BASF社製)
F1:Sumilizer GP(住友化学社製)。
【0219】
実験例:
前記実施例及び比較例で製造された光変換インク組成物を用いて下記のように光変換コーティング層を製造し、このときの膜厚、輝度、分散性、及び粘度を下記のような方法にて測定し、その結果を下記の表5~6に表した。
【0220】
<光変換コーティング層の製造>
実施例及び比較例で製造されたそれぞれの光変換インク組成物をインクジェット方式で5cm×5cmガラス基板の上に塗布した後、紫外線光源としてg、h、i線をいずれも含有する1kWの高圧水銀灯を用いて1000mJ/cmで照射後、180℃の加熱オーブンで30分間加熱して、光変換コーティング層を製造した。
【0221】
(1)膜厚
前記で製造された光変換コーティング層の膜厚を、膜厚測定器(Dektak 6M、Vecco社製)を用いて測定した。
【0222】
(2)輝度
前記で製造された光変換コーティング層を青色(blue)光源(XLamp XR-E LED、Royal blue 450、Cree社製)の上に位置させた後、輝度測定器(CAS140CT Spectrometer、Instrument systems社製)を用いて、青色光の照射時の輝度を測定した。
【0223】
(3)分散性
前記光変換インク組成物の製造過程で、散乱粒子を投入する前の液状試料を目視にて確認して、下記の評価基準に従い評価した。
<評価基準>
○:透明な状態
×:混濁している状態。
【0224】
(4)密着性
前記で製造された光変換コーティング層の密着性はTQC社製のCross Cut Adhesion Test CC1000を用いて評価した。前記光変換コーティング層の表面に1mmの間隔で横方向、縦方向にそれぞれ11列の線を引いて全100個の格子が生じるようにカッティングを行い、TQC社製のテープ(tape)を用いてカッティングした表面の密着性を評価した。このとき、密着性は下記の評価基準に従い評価した。
<評価基準>
○:90個以上のパターンを維持
△:60~89個のパターンを維持
×:59個以下のパターンを維持
【0225】
【表5】
【0226】
【表6】
【0227】
前記表5~表6に表したように、本発明に係るポリエチレングリコール系配位子を有する量子ドットと、界面活性剤として反応性シリコン系界面活性剤を含む、実施例1~30の光変換インク組成物は、溶剤を実質的に含まなくても分散性に優れ且つ量子ドットの光特性に優れる10μmの厚膜を形成することができると共に塗膜の密着性が向上することを確認した。これに対し、本発明に係るポリエチレングリコール系配位子を有さない量子ドットを含む比較例1~2及び13~14と、界面活性剤として反応性シリコン系界面活性剤を含まない比較例3~12の光変換インク組成物は、分散性、輝度、及び密着性を同時に確保し難いことを確認することができた。
【0228】
以上、本発明の特定の部分について詳しく記述したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、このような具体的な記述は単に好適な具現例であるに過ぎず、これらによって本発明の範囲が制限されるものではないことは明らかである。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、前記内容を基に本発明の範疇内で種々の応用および変形を行うことが可能であろう。
【0229】
したがって、本発明の実質的な範囲は、特許請求の範囲とその等価物によって定義されると言えよう。