(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】三次元の歯科構造のカラー画像の比較
(51)【国際特許分類】
A61C 19/04 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
A61C19/04 J
A61C19/04 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021166571
(22)【出願日】2021-10-11
【審査請求日】2022-08-05
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596032878
【氏名又は名称】イボクラール ビバデント アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ ユッゼル
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリック ジョン
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン ニードリッヒ
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/162164(WO,A1)
【文献】特表2013-534449(JP,A)
【文献】特開2012-166030(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105167874(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/04
A61C 9/00
A61C 13/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然歯(100)の形状および光学的特性を再現する目標データセット(DS-S)を測定し(S101);
デジタル歯モデル(200)の形状および光学的特性を再現する実データセット(DS-I)を作成するために、デジタル歯モデル(200)をレンダリングし(S102);
前記実データセット(DS-I)から第1の比較値を判定し(S104);
前記目標データセット(DS-S)から第2の比較値を判定し(S105); 同じ座標系内で実データセット(DS-I)との重ね合わせが実行されるように目標データセット(DS-S)をスケーリングするか、同じ座標系内で目標データセット(DS-S)との重ね合わせが実行されるように実データセット(DS-I)をスケーリング、第1および第2の比較値が座標系の1つの領域の中から取得され,
前記第1および第2の比較値に基づいて相違(ΔE
S,I)を判定する(S106)、ステップを有してなる三次元の歯科構造を比較する方法。
【請求項2】
第1および第2の比較値が座標系内で格子に沿ってあるいは線に沿って取得される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1および第2の比較値のユークリッド距離に基づいて相違(ΔE
S,I)を判定する請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
目標データセット(DS-S)および/または実データセット(DS-I)の画像ノイズがフィルタによって削減される請求項1ない3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
目標データセット(DS-S)および/または実データセット(DS-I)が二次元画像を含む請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
目標データセット(DS-S)および/または実データセット(DS-I)が複数の視野角からの複数の二次元画像を含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
異なった二次元画像内の複数の第1および第2の比較値に基づいて相違(ΔE
S,I)が判定される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
目標データセット(DS-S)および/または実データセット(DS-I)が三次元の形状を含む請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
それぞれ三次元形状の表面上の同じ位置にある複数の第1および第2の比較値に基づいて相違(ΔE
S,I)が判定される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
座標系は二次元あるいは三次元座標系である請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
目標データセットが電子カメラおよび/または3Dスキャナを使用して測定される請求項1ないし10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
自然歯に基づいて目標データセットを測定するセンサを備えていて、請求項1ないし11のいずれかに記載の方法を実行するために適する、三次元の歯科構造を比較するためのコンピュータ装置。
【請求項13】
請求項1ないし11のいずれかに記載の方法を実行するように請求項12に記載のコンピュータ装置を動作させる命令を含んだコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、三次元の歯科構造のカラー画像を比較する方法と、三次元の歯科構造を比較するコンピュータ装置およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科補綴物を自然に忠実に製造するためには、人工的な歯科補綴物の外観と患者の自然歯との間の相違を正確に判定することが必要である。その相違が正確に検出される場合にのみ、歯科補綴物が自然歯の外観に相当するように歯科補綴物を適合させて製造することが可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、仮想的な歯科構造と天然の歯科構造の間の画像の相違についての信頼性の高い値を判定することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記の課題は、独立請求項の対象によって解決される。技術的に好適な実施形態が、従属請求項、発明の詳細な説明、および添付図面の対象である。
【0005】
第1の態様によれば、前記の技術的課題は、自然歯の形状および光学的特性を再現する目標データセットを測定し;デジタル歯モデルの形状および光学的特性を再現する実データセットを作成するために、デジタル歯モデルをレンダリングし;前記実データセットから第1の比較値を判定し;前記目標データセットから第2の比較値を判定し;前記第1および第2の比較値に基づいて相違を判定する、ステップを有してなる三次元の歯科構造を比較する方法によって解決される。一つの画像点上あるいは限定された数の画像点上において差を比較することによって、レンダリングをそれらの点上だけに制限することができ、それによって著しい速度向上が達成される。比較測定を簡略化するために、同じ視野角を有する自然歯およびデジタル歯モデルの二次元画像を導出し、二次元のカラー画像の重ね合わせから比較値を判定することができる。
【0006】
この方法の技術的に好適な実施形態によれば、同じ座標系内で実データセットとの重ね合わせが実行されるように目標データセットをスケーリングするか、同じ座標系内で目標データセットとの重ね合わせが実行されるように実データセットをスケーリングする。前記のスケーリングは、実データセットおよび/または目標データセットの形状に基づいて実行することができる。それによって例えば、比較値を簡便かつ確実に判定し得るという技術的な利点が達成される。
【0007】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、座標系の異なった位置にある複数の第1および第2の比較値に基づいて相違が判定される。そのために、複数の第1および第2の比較値を、目標データセットと実データセットの座標系の該当する位置で判定することができる。それによって例えば、判定された相違の精度が改善されるという技術的な利点が達成される。
【0008】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、第1および第2の比較値が座標系の1つの領域の中から取得される。前記の領域は、座標系中の四角形あるいは円形の平面とすることができる。それによって予め定義された面領域内で相違を判定して定量化することができる。それによって例えば、特定の画像点を面として統合することができ、その結果色比較を単純化および高速化し、ある領域全体にわたって正確な相違の数値を判定することができるという技術的な利点が達成される。
【0009】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、第1および第2の比較値が座標系内で格子に沿ってあるいは線に沿って取得される。それによって例えば、少数のステップによって領域全体から比較値を取得できるという技術的な利点が達成される。
【0010】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、第1および第2の比較値のユークリッド距離に基づいて相違を判定する。それによって例えば、標準化されかつ正確な相違のための尺度が得られるという技術的な利点が達成される。
【0011】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、目標データセットおよび/または実データセットの画像ノイズがフィルタによって削減される。それによって例えば、画像ノイズを削減してより大きな面積をさらに良好に比較できるという技術的な利点が達成される。
【0012】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、目標データセットおよび/または実データセットが二次元画像を含む。それによって例えば、より少ない演算労力によって相違を判定できるという技術的な利点が達成される。
【0013】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、目標データセットおよび/または実データセットが複数の視野角からの複数の二次元画像を含む。それによって例えば、方法の精度が高められるという技術的な利点が達成される。
【0014】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、異なった二次元画像内の複数の第1および第2の比較値に基づいて相違が判定される。それによって例えば、方法の精度がさらに高められるという技術的な利点が達成される。
【0015】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、目標データセットおよび/または実データセットが三次元の形状を含む。それによって例えば、形状全体にわたって相違を比較できるという技術的な利点が達成される。
【0016】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、それぞれ三次元形状の表面上の同じ位置にある複数の第1および第2の比較値に基づいて相違が判定される。それによって例えば、歯全体にわたって相違を判定できるという技術的な利点が達成される。
【0017】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、座標系は二次元あるいは三次元座標系である。それによって例えば、特に適合する座標系を使用して、目標データセットおよび実データセット内の画像点を正確に参照できるという技術的な利点が達成される。
【0018】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、電子カメラあるいは3Dスキャナを使用して目標データセットが測定される。電子カメラあるいは3Dスキャナが、目標データセットを測定するためのセンサを構成する。それによって例えば、目標データセットを簡便かつ高速な方式で取得できるという技術的な利点が達成される。
【0019】
第2の態様によれば、自然歯に基づいて目標データセットを測定するセンサを備えていて第1の態様に係る方法を実行するために適する、三次元の歯科構造を比較するためのコンピュータ装置によって、前述した技術的な課題が解決される。それによって、前述した第1の態様と同様な技術的な利点が達成される。
【0020】
第3の態様によれば、前記第1の態様に係る方法ステップを実行するように前記第2の態様に係るコンピュータ装置を動作させる命令を含んだコンピュータプログラムによって、前述した技術的な課題が解決される。それによって、第1の態様に係る方法と同様な技術的な利点が達成される。
【0021】
本発明の種々の実施例が添付図面に示さており、後述する説明中においてより詳細に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】目標データセットと実データセットの検出を概略的に示した説明図である。
【
図2】複数の視野角からの目標データセットと実データセットの検出を概略的に示した説明図である。
【
図3】実データセット上における目標データセットのスケーリングを概略的に示した説明図である。
【
図4】相互に重なるようにスケーリングされたデータセットから相違を計算する複数の方法を概略的に示した説明図である。
【
図5】平面状の領域にわたって判定された多様な差値を示した説明図である。
【
図6】目標データセットと実データセットの間の色差を示した説明図である。
【
図7】別の目標データセットと別の実データセットの間の色差を示した説明図である。
【
図8】三次元の歯科構造を比較する方法を示したブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1には、目標データセットDS-Sと実データセットDS-Iの検出が概略的に示されている。目標データセットDS-Sは、自然歯100の形状および光学的特性を二次元あるいは三次元で再現する。目標データセットDS-Sは、例えば患者の歯100の可視領域を捕捉する電子校正されたカメラ103によって検出される。そのカメラの標準化された目標データセットDS-S中の色値が、後に目標/実際比較のための共通の基礎を形成する。カメラの使用に際してRAWフォーマットの画像を使用することが好適であり、その画像フォーマットにより直接的なセンサの測定値を利用することができる。そのフォーマットは、その後Lab(L
*a
*b
*)色空間に変換することができる。その目標データセットDS-Sからその後目標画像を検出することができ、その目標画像に歯科補綴物の外観を適合させる。
【0024】
本物の歯の測定は、口腔内カメラを使用して実施することができる。この場合、色情報が三次元の形状と共に目標データセットDS-S内に関連付けられる。三次元の目標データセットDS-Sからその後歯の目標画像を導出することができる。目標データセットは、1枚あるいは複数枚の画像を含むこともできる。
【0025】
他方、デジタル歯モデル200は、設計案に関する歯科補綴物の外形および内部構造を再現する。歯科補綴物の内部構造は、異なった補綴物原料からなる複数の層を構成のために含むことができる。例えば、歯科補綴物の切端および歯科補綴物内部の象牙質コアの空間的な領域を決定することができる。追加的に、残留する自然歯のプレパラート、ならびに例えばセメントあるいは接着剤等の結合層を考慮することもできる。割り当てられた補綴物原料の物理的および光学的パラメータは既知である。
【0026】
デジタル歯モデル200の全体的な構造が、異なる空間領域、層あるいはサブボリュームへの物理的および光学的材料特性の割り当てを含めてレンダリング/シミュレーションソフトウェアに伝達される。そこからレンダリング/シミュレーションソフトウェアが実データセットDS-Iを作成し、その実データセットから標準化された色および半透明性数値を有する実画像を導出することができる。従って実データセットDS-Iは、設計される歯科補綴物のためのデジタル歯モデル200の形状および光学的特性を再現する。しかしながら、実データセットDS-Iが1枚あるいは複数の画像を含むこともできる。
【0027】
光と設計される歯科補綴物100と使用される補綴物原料との相互作用の物理的補正シミュレーションを使用して、レンダリングが実行される。その際、コンピュータ支援された歯科補綴物100の外観を作成するために、個々の補綴物原料の既知の光学的パラメータが使用される。
【0028】
そのため追加的に、歯科補綴物100を取り付ける既存の天然の歯材料、例えば残存歯を考慮することができる。レンダリングに際して、所与の内部構造および選択された補綴物原料に対応して後の歯科補綴物100の光学的印象が計算される。レンダリングのために、可視領域における少なくとも3つの波長について反射数値、透過数値、および吸収数値の計算をコンピュータ支援によって実行することができる。
【0029】
その後、設計される歯科補綴物と対応する自然歯との間の相違を判定するために、目標データセットDS-Sと実データセットDS-Iを相互に比較することができる。
【0030】
図2には、複数の視野角からの目標データセットDS-Sと実データセットDS-Iの検出が概略的に示されている。
【0031】
目標データセットDS-Sは、多様な視野角からの電子カメラ103による隣接歯100のカラー撮影から導出することができる。誤差原因としての未知の機器固有の画像データ処理を排除するために、既知のスペクトル感度を有するカメラ103を使用することが好適である。加えて目標データセットDS-Sの測定のために、カラー撮影の照明要件が正確に知られていることが好適である。そのため、一義的なスペクトルと一義的な光線方向を有する単一の光源を使用することができる。そのことは反射を測定するためのミラーボールによって判定することができる。また、暗室内でリングフラッシュあるいはツインフラッシュを使用することができる。
【0032】
略標準化された色値を得るために例えば基準面(グレーカード)の並行撮影によって、あるいは定義された光源(スペクトル、強度、および配置)を使用することによって、カラー撮影時点の照明要件が既知にされる。基準面と共に、歯の半透明性に関する情報も得ることができる。
【0033】
カメラ103を予め校正することならびに基準の使用も、色測定中の距離の計算のために有効であり得る。
【0034】
カラー撮影は、患者の顔あるいは口の方向において0°の視野角の正面の視野において実行することができる。追加的に、口唇方向の歯の表面への直交方向に対して-90°と+90°の間、あるいは口唇方向の歯の表面への直交方向に対して-45°と+45°の間の視野角からカラー撮影を実行することができる。
【0035】
理想的には、実データセットDS-Iの実画像は、目標画像が撮影された際と同じ視野角でデジタル歯モデル200から導出される。標準化された色値および半透明性数値の比較を実行することを可能にするために、基準面あるいは基準体をレンダリングすることができ、それによって信頼性試験を実行し得るようにする。
【0036】
その場合、異なった視野角から検出および導出された二次元の画像によって比較が実行される。より多くのカラー撮影を目標画像として異なった視野角から取得して対応する実画像と比較するほど、後の目標・実際比較の枠内における相違の判定がより正確になる。
【0037】
図3には、実データセットDS-I上における目標データセットDS-Sのスケーリングが概略的に示されている。この場合、対応する歯の形状が適合するように、目標データセットDS-Sの画像が横および縦方向において回転あるいは埋め込まれる(縮尺される)。その後目標データセットDS-Sと実データセットDS-Iが共通の座標系内に存在する。
【0038】
その後座標系から1つの位置が選択され、その位置における目標データセットDS-Sと実データセットDS-Iの色値が判定される。この場合、実データセットに対する色値LI
*aI
*bI
*と目標データセットに対する色値LS
*aS
*bS
*がLab(L*a*b*)色空間においてそれぞれ取得される。
【0039】
目標データセットDS-Sと実データセットDS-Iの間のユークリッド差ΔES,Iは、色値LI
*aI
*bI
*とLS
*aS
*bS
*の差を判定することによって計算することができる。比較は、最小解像度としてピクセルレベルで実行することができる。
【0040】
【0041】
そのようにして判定された相違を、高い美容性を有する患者固有の補綴物を設計してその後製造するための、多層の歯科補綴物への最適な原料配分を判断するために利用することができる。
【0042】
図4には、相互に重なるようにスケーリングされたデータセットDS-IとDS-Sから相違を計算する複数の方法が概略的に示されている。
【0043】
第1の実施形態において、座標系内の個別の位置が決定され、1つの点におけるデータセットDS-IとDS-Sの2つの色値から相違が計算される。その計算を、別の点に対して反復することができる。
【0044】
第2の実施形態において、相違が1つあるいは複数のライン203に沿って判定される。その目的のため、ライン203に沿って相違がピクセルレベルで判定され、合計値として積算される。それによって方法の精度を高めることができる。
【0045】
第3の実施形態において、複数の水平および垂直のラインからなる格子205に沿って相違が判定される。その目的のため、複数の水平および垂直のライン203に沿って相違がピクセルレベルで判定され、同様に合計値として積算される。それによって異なった方向における相違を判定することができ、方法の精度をさらに高めることができる。
【0046】
第4の実施形態において、特定の領域207内で相違が判定される。その目的のため、特定の領域からピクセルレベルの個別の相違が1つの数値に積算される。この方式によって、例えば歯頚、象牙質領域、および切端に対して相違を判定することができる。個別の相違を個別に重み付けすることができ、従って特に重要な領域には合計値においてより大きな意味を持たせることができる。
【0047】
第5の実施形態において、特定の色スキームに割り当てることができる領域209から相違が判定される。その目的のため、特定の領域からピクセルレベルの個別の相違が1つの数値に積算される。この方式によって、例えば個別の色領域に対して相違が判定される。ここでも個別の相違を個別に重み付けすることができ、従って特に重要な領域には合計値においてより大きな意味を持たせることができる。
【0048】
図5には、平面状の領域にわたってピクセルレベルで判定された、目標データセットDS-Sと実データセットDS-Iの間の多様な差値が示されている。L
*a
*b
*空間内の各個別の色値に差値が発生し、それから合計相違を計算することができる。
【0049】
図6および
図7には、異なった目標データセットDS-Sと実データセットDS-Iの間の色差が示されている。目標データセットから、例えば最も明るい色あるいは最も暗い色およびそれに対応するLab値等の所要の色分布および閾値を判定することができる。それによってデジタル歯モデルあるいはデジタル補綴物の異なった体積領域に対して初期の原料割り当てを行うことができ、1番目の目標画像が導出されるという利点を有する。
【0050】
画像内の相違値の分布から、歯モデル200の内部アーキテクチャの三次元の変化および/または異なった空間領域への原料割り当てを判定することができる。
【0051】
図8には、三次元の歯科構造を比較する方法のブロック線図が示されている。ステップS101において、自然歯の形状と光学的特性を再現する目標データセットDS-Sが測定される。ステップS102において、デジタル歯モデル200の形状と光学的特性を再現する実データセットDS-Iを作成するためにデジタル歯モデル200がレンダリングされる。ステップS103において、実データセットDS-Iおよび/または目標データセットDS-Sが共通の座標系上で形状に基づいてスケーリングされる。ステップS104において、スケーリングされた実データセットDS-Iから座標系の1つの位置において第1の比較値が判定される。ステップS105において、スケーリングされた目標データセットDS-Sから座標系の同じ位置において第2の比較値が判定される。続いてステップS106において、第1および第2の比較値に基づいて相違が判定される。
【0052】
しかしながら、第1および第2の比較値を取得するために、実データセットDS-Iおよび/または目標データセットDS-Sをその他の方式で重ね合わせあるいは評価することもできる。第1の比較値は、実データセットDS-Iと目標データセットDS-Sの重なりの中の1つの共通の位置において取得することができ、例えばその位置の色値を取得することができる。第2の比較値も、実データセットDS-Iと目標データセットDS-Sの重なりの中の1つの共通の位置において判定することができる。
【0053】
実データセットDS-Iに基づいた実画像と目標データセットDS-Sに基づいた目標画像にわたって同じ座標系が設定される。その場合、最高の重ね合わせと適合を達成するために、縮尺によって歯の目標画像をレンダリングの実画像に適合させることができる。共通の画像座標内の画像点から、Lab値を比較して相違ΔES,Iを判定する。
【0054】
第1および第2の比較値として、目標画像および実画像の中央あるいは面重心からの測定値を使用することもできる。この場合、共通の座標系へのスケーリングを省略することができる。また、実データセットDS-Iと目標データセットDS-Sからの最大値あるいは最小値を第1および第2の比較値として使用することもできる。
【0055】
比較のために、点、測定線、格子、測定フィールド(タイル)、歯頚、象牙質、切端等の領域、または類似の色領域にわたって延在する色ゾーンを使用することができる。最小単位の、すなわち最も高精度な方式は、ピクセルレベルにおける比較である。
【0056】
その後、予め定義された目標データセットに対する相違よりも小さな相違を有する実データセットに基づいて歯科補綴物を製造することができる。そのため、多様な補綴物原料を使用して歯科補綴物100を印刷する、3Dプリンタ等の製造装置を使用することができる。しかしながら、一般的に多様な補綴物原料を用いて歯科補綴物を製造することができる他の製造装置を使用することもできる。
【0057】
この方法のために、計算ステップを実行してその後製造装置によって歯科補綴物100を製造するコンピュータ装置を使用することができる。コンピュータ装置は、追加的に目標データセットを測定するためのセンサを含むことができる。そのため前記コンピュータ装置は、そのコンピュータ装置に必要な方法ステップを実行させるように動作する命令を含んだコンピュータプログラムを実行する。前記のコンピュータ装置がプロセッサとデジタルメモリを備え、前記デジタルメモリ内にデータセットと方法ステップを実行して製造装置を適宜に制御するコンピュータプログラムが記憶される。
【0058】
この方法によれば、半透明性数値を含めて実物および仮想の三次元の構造の(二次元の)カラー画像を重ね合わせて両方の構造を相互に比較することによって、仮想の三次元の歯科構造の色外観を使用して実物の三次元の歯科構造の色検出を実行することができる。
【0059】
本発明の個々の実施形態に関連して説明および図示した全ての特徴を、多様な組み合わせで本発明の対象とすることができ、それによって同時に有効な利点が達成される。
【0060】
全ての方法ステップは、各方法ステップを実行するために適した装置を使用して実行することができる。対象である特徴によって実行される全ての機能は、この方法における方法ステップとすることができる。
【0061】
本発明の保護範囲は添付の特許請求の範囲によって定義され、説明中に記述されたあるいは図示された特徴によって限定されるものではない。
【符号の説明】
【0062】
100 歯
103 カメラ
200 歯モデル
203 ライン
205 格子
207 領域
209 領域
DS-I 実データセット
DS-S 目標データセット