(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】CD-19を標的とするキメラ抗原受容体
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20240509BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240509BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240509BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240509BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240509BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240509BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240509BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240509BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
A61K35/17 ZNA
A61P35/00
A61P35/02
C12N5/0783
C12N5/10
C12N15/13
C12N15/62 Z
C07K16/28
C07K19/00
(21)【出願番号】P 2021215427
(22)【出願日】2021-12-29
(62)【分割の表示】P 2020191748の分割
【原出願日】2015-06-01
【審査請求日】2022-01-20
(32)【優先日】2014-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510002280
【氏名又は名称】アメリカ合衆国
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】コッヘンデーファー、ジェイムズ エヌ.
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/154760(WO,A1)
【文献】特表2010-513303(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0266551(US,A1)
【文献】国際公開第2013/123061(WO,A1)
【文献】特表2016-514462(JP,A)
【文献】Molecular Immunology,1997年,Vol.34, No.16-17,P.1157-1165
【文献】Human Gene Therapy,2010年,Vol.21, No.1,P.75-86
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるがんを治療又は予防するための医薬組成物であって、前記医薬組成物が、有効成分として、CD19に対するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する宿主細胞を含む細胞集団を含み、前記CARが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12又は配列番号13のアミノ酸配列を含み、
前記宿主細胞がT細胞又はNK細胞である、医薬組成物。
【請求項2】
前記CARが配列番号10のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
対象におけるがんを治療するための医薬組成物である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記がんがCD19を発現する、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記がんがB細胞性悪性腫瘍である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記B細胞性悪性腫瘍が白血病、リンパ腫、又は多発性骨髄腫である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
CD19に対するキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸、又は、該核酸を含むベクターを含む細胞であって、前記CARが、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12又は配列番号13のアミノ酸配列を含む、細胞。
【請求項8】
CD19に対するキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸、又は、該核酸を含むベクターを含む、細胞であって、前記CARが、配列番号1のアミノ酸配列を含む、細胞。
【請求項9】
前記細胞が、真核生物細胞である、請求項7又は8に記載の細胞。
【請求項10】
前記細胞が、末梢血リンパ球(PBL)又は末梢血単核細胞(PMBC)である、請求項7~9のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項11】
対象におけるがんを治療又は予防するための医薬組成物であって、該医薬組成物が、有効成分として請求項7~10のいずれか一項に記載の細胞と、医薬上許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項12】
該医薬組成物が、対象におけるがんを治療するためのものである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
がんを治療することが、CD19発現細胞に対する抗原特異的反応を引き起こす
ことを含む、請求項
12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
対象においてCD19発現細胞に対する抗原特異的反応を引き起こすための医薬組成物であって、該医薬組成物が、有効成分として請求項7~10のいずれか一項に記載の細胞と、医薬上許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項15】
CD19発現細胞がB細胞である、請求項13
又は14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記医薬組成物における前記細胞が、T細胞である、請求項
11~
15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記T細胞がCD19発現細胞
に対して細胞障害性
である、請求項
16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記医薬組成物における前記細胞が、NK細胞である、請求項
11~
15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
CARを発現する細胞の製造方法であって、該方法が以下の工程を含む、方法:
CD19に対するCARをコードする核酸、又は、該核酸を含むベクターを細胞に導入する工程であって、前記CARが、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12又は配列番号13のアミノ酸配列を含む、工程。
【請求項20】
CARを発現する細胞の製造方法であって、該方法が以下の工程を含む、方法:
CD19に対するCARをコードする核酸、又は、該核酸を含むベクターを細胞に導入する工程であって、前記CARが、配列番号1のアミノ酸配列を含む、工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は2014年6月2日出願の米国仮特許出願第62/006,313号(参照により組み込
まれる)の利益を主張する。
連邦政府の助成による研究又は開発に関する陳述
本発明は、連邦政府の支援を受け、プロジェクト番号Z01 BC001415の下、米国国立衛生研究所、米国国立がん研究所によりなされた。本発明において、連邦政府は一定の権利を有する。
【0002】
電子提出された物件の参照による組み込み
本明細書と同時提出され以下のとおり特定される、コンピューターで読み取り可能なヌクレオチド/アミノ酸配列表は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:58,356バイトのASCII(テキスト)ファイル1件、名称「720755_ST25.TXT」、2015年6月1日作成
。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
B細胞性悪性腫瘍、例えばリンパ腫や白血病などは、B細胞の分化及び活性化の制御が崩壊した場合に生じる。成熟B細胞の悪性腫瘍には、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ
腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、ホジキン
リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫及び慢性リンパ性白血病が含まれる(Shaffer et al., Nature Reviews Immunology, 2:920-933(2002))。標準的治療
、例えば、化学療法、治療用モノクローナル抗体(例えば、Rituximab(RITUXANTM))や同種幹細胞移植(allogeneic stem cell transplantation(alloHSCT))などは、B細胞
性悪性腫瘍を治癒しない(例えば、Dreger et al., Leukemia, 21(1):12-17(2007)
;Gribben, J.G., Blood, 109(11):4617-4626(2007);及びArmitage, J.O., Blood,
110(1):29-36(2007)を参照)。特に、モノクローナル抗体は、単剤として治療的でなく、alloHSCTは、高レベルの死亡率及び罹病率と関連する(例えば、Dreger et al.,
上記, Armitage et al., 上記、及びMcLaughlin et al., Journal of Clinical Oncology, 16(8):2825-2833(1998)を参照)。
【0004】
T細胞は、抗原認識部分とT細胞活性化ドメインから構成される融合タンパク質であるキメラ抗原受容体(CARs)を発現するよう遺伝子操作できる(例えば、Kershaw et al., 上記, Eshhar et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90(2):720-724(1993)、及びSadelain et al., Curr. Opin. Immunol., 21(2):215-223(2009)を参照)。B細胞系統
の悪性腫瘍のために、CD19を標的とするCARsを利用した養子T細胞アプローチが開発され
ている(例えば、Jensen et al., Biology of Blood and Marrow Transplantation, 16:1245-1256(2010);Kochenderfer et al., Blood, 116(20):4099-4102(2010);Porter et al., The New England Journal of Medicine, 365(8):725-733(2011);Savoldo et al., Journal of Clinical Investigation, 121(5):1822-1826(2011), Cooper et al., Blood, 101(4):1637-1644(2003);Brentjens et al., Nature Medicine, 9(3):279-286(2003);Kalos et al., Science Translational Medicine, 3(95):95ra73(2011);Cheadle et al., Journal of Immunology, 184(4):1885-1896(2010);Brentjens et al., Clinical Cancer Research, 13(18 Pt 1):5426-5435(2007);Kochenderfer et al., Blood, 116(19):3875-3886(2010);Brentjens et al., Blood, 118(18):4817-4828(2011);及びKochenderfer et al., Blood, December 8,
2011(epublication ahead of print(2012))を参照)。B細胞抗原CD19は、その発現
が正常及び悪性B細胞に限定されることから、CARsのための標的として選択されている(
例えば、Nadler et al., Journal of Immunology, 131(1):244-250(1983)を参照)
。
【0005】
今日までに報告されている抗CD19 CAR療法と関連するデメリットの一つは、血清サイトカインレベルの上昇と関連する顕著な毒性をそれらが誘導し得ることである。ヒト抗マウス免疫応答の発生もまた、マウス配列を含む現在の抗CD19 CARsと関連する潜在的リスク
である(例えば、Jensen et al., 上記;Lamers et al., Blood, 117(1):72-82(2011);及びMaus et al., Cancer Immunol Res, 2:112-120(2014)を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、B細胞性悪性腫瘍を治療するための方法で使用され得る組成物であって、ヒト
における毒性及び免疫原性が低い組成物が必要とされている。本発明はそのような組成物及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の簡単な要旨
本発明は、CD19に対する単離又は精製されたキメラ抗原受容体(CAR)であって、配列
番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番
号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12又は配列番号13のアミノ酸配列を含む、CARを提供する。
【0008】
さらに、本発明は、前記CARsをコードする単離又は精製された核酸配列、そのような核酸配列を含むベクター、そのようなベクターを含む単離されたT細胞、及びそのような単
離されたT細胞を悪性CD19発現B細胞集団とin vivo又はex vivoにて接触させることによる悪性B細胞を破壊する方法を提供する。
【0009】
本発明はまた、配列番号4又は配列番号9に存在する以下の要素:(i)細胞外スペーサ
ー、(i)ヒトCD8α分子に由来する膜貫通ドメイン、並びに(iii)ヒトCD28分子、ヒトCD27分子及びヒトCD3ζ分子に由来する細胞内T細胞シグナリングドメイン、を含む単離又
は精製されたCARも提供する。
【0010】
本発明は、配列番号10又は配列番号11に存在する以下の要素:(i)細胞外スペーサー
、(i)ヒトCD8α分子に由来する膜貫通ドメイン、並びに(iii)ヒトCD28分子、ヒトCD27分子及びFcεRIガンマ鎖に由来する細胞内T細胞シグナリングドメイン、を含む単離又は精製されたCARを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面の各図の簡単な説明
【
図1】
図1は、実施例2に記載するような表示のCARsを発現するT細胞のin vitro生存を説明する実験結果を表すグラフである。培養7日目において、表示のCARsを発現するT細胞のパーセンテージは以下のとおりであった:FMC63-28Z, 71%;FMC63-CD828Z, 88%;及びFMC63-CD8BBZ, 87%。
【
図2】
図2A~2Dは、T細胞表面上における、CD27細胞内シグナリングドメインを含む表示の完全ヒト(fully human)CARsの発現を説明するFACsプロット像である。プロットは、生存CD3+ リンパ球に対してゲーティングされる。
【
図3】
図3A及び3Bは、T細胞表面上における47G4-CD828Z CARの発現(
図3A)を非形質導入コントロール(
図3B)と比較して説明するFACsプロット像である。プロットは、生存CD3+ リンパ球に対してゲーティングされる。
【
図4】
図4A及び4Bは、CD19+ T細胞株CD19-K562(
図3A)及びNALM6(
図3B)において、FMC63-28Z、FMC63-CD828Z又はFMC63-CD8BBZ CARsを発現するT細胞によるTNF産生を説明する実験結果を表すグラフである。標準的なTNF ELISAを実施して、培養上清中のTNF量(pg/mL)を測定した。TNFレベルは、各CARを発現する各培養物中、T細胞フラクションに対して正規化した。結果は、2人の異なるドナーからの正規化TNFレベルの平均及び平均の標準誤差を示す。
【
図5】
図5は、CD19+ T細胞株CD19-K562及びNALM6において、47G4-CD828Z CARを発現するT細胞によるIFNγ産生を説明する実験結果を表すグラフである。A549、TC71及びCCRF-CEMはCD19ネガティブ細胞株である。
【
図6-1】
図6A及び6Bは、表示のCARsが形質導入されたT細胞が、CD107aの上方制御により測定されるように、CD19特異的な様式で脱顆粒したことを説明するFACsプロットである。
【
図6-2】
図6C及び6Dは、表示のCARsが形質導入されたT細胞が、CD107aの上方制御により測定されるように、CD19特異的な様式で脱顆粒したことを説明するFACsプロットである。
【
図7】
図7A~7Cは、表示のCARsを発現するT細胞が、カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(carboxyfluorescein diacetate succinimidyl ester(CFSE))蛍光により測定されるように、CD19に応答して増殖し得ることを説明するFACsプロットである。表示のCARsを発現するT細胞を、IL-2不含培地中、CD19+ 細胞株CD19-K562(黒塗り曲線)又はCD19ネガティブ細胞株NGFR-K562(白曲線(open curve))のいずれかと4日間培養した。すべてのプロットは、生存CD3+CAR+リンパ球に対してゲーティングされる。
【
図8】
図8は、FMC63-CD828Z CARをコードするMSGV-FMC63-CD828Zプラスミドが形質導入されたT細胞が、初代慢性リンパ性白血病(CLL)細胞に対して細胞傷害性であることを説明する実験結果を表すグラフである。
【
図9】
図9は、FMC63-28Z CAR又は47G4-CD8CD28Z CARのいずれかを発現するT細胞が、NSG免疫不全マウスにおいてNALM6腫瘍サイズを低下させることを説明する実験結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本発明は、単離又は精製されたキメラ抗原受容体(CAR)であって、抗原認識部分及びT細胞活性化部分を含むCARを提供する。キメラ抗原受容体(CAR)は、T細胞シグナリング
又はT細胞活性化ドメインと連結された、抗体の抗原結合ドメイン(例えば、一本鎖可変
フラグメント(scFv))を含む、人工的に構築されたハイブリッドタンパク質又はポリペプチドである。CARsは、モノクローナル抗体の抗原結合特性を利用して、MHC非拘束性の
様式で、選択されたターゲットに対するT細胞の反応性と特異性を再指示(redirect)す
る能力を有する。MHC非拘束性の抗原認識は、CARsを発現するT細胞に、抗原プロセシングとは独立して抗原を認識する能力を付与し、そのため主要な腫瘍エスケープ機構をバイパスする。さらに、T細胞で発現させる場合、CARsは、有利には、内在性T細胞受容体(TCR
)のアルファ及びベータ鎖と二量体化しない。
【0013】
「単離され」とは、ある物質(例えば、タンパク質又は核酸)がその天然の環境から取り出されることを意味する。「精製され」とは、所与の物質(例えば、タンパク質又は核酸)が、天然から取り出されたものであるか(例えば、ゲノムDNA及びmRNA)又は合成さ
れたものであるか(例えば、cDNA)、且つ/或いは実験室条件下で増幅されたものであるかにかかわらず、純度が増加していることを意味し、ここで、「純度」とは、相対的な用語であって「絶対的純度」ではない。しかしながら、核酸及びタンパク質は、希釈剤又はアジュバントとともに製剤化されてよく、実用的な目的のために依然として単離されてよいことが理解されるべきである。例えば、タンパク質は、細胞へと導入するために使用さ
れる場合、典型的には、許容される担体又は希釈剤と混合される。
【0014】
本発明のCARは、CD19(Bリンパ球抗原CD19、B4及びCVID3としても知られる)に対する
抗原認識部分を含む。CD19は、造血系のBリンパ球及び濾胞樹状細胞によってのみ発現さ
れる細胞表面分子である。これは、発現されるB系統制限的な抗原のうち最初のものであ
り、大部分のプレB細胞、並びに大部分の非T細胞性の急性リンパ性白血病細胞及びB細胞
型慢性リンパ性白血病細胞上に存在する(Tedder and Isaacs, J. Immun., 143:712-717(1989))。CD19は、CD21及びCD81とともにB細胞補助受容体として主に作用する(Bradbury et al., J. Immunol., 149(9):2841-2850(1992);Horvath et al., J. Biol. Chem., 273(46):30537-30543(1998);及びImai et al., J. Immunol., 155(3):1229-1239(1995))。活性化に際し、CD19の細胞質側末端がリン酸化され、それにより、Srcファミリーキナーゼによる結合及びPI-3キナーゼの動員が導かれる。CD19はまた、他の細胞シグナリングタンパク質と相互作用することが示されており、それらは、例えば、B
細胞における主要なSrcキナーゼであるLynチロシンプロテインキナーゼ(Fujimoto et al., Immunity, 13:47-57(2000))、CD82(Imai et al., 上記)、補体レセプター2(complement receptor 2)(Bradbury et al., 上記;及びHorvath et al., 上記)、及びVAV2(Doody et al., EMBO J., 19(22):6173-6184(2000))などである。
【0015】
本発明のCARは、CD19に対するモノクローナル抗体又はその抗原結合部分、を含む抗原
認識部分(antigen recognition moiety)を含む。本明細書で使用する場合、用語「モノクローナル抗体」とは、B細胞の単一クローンにより産生され、同じエピトープに結合す
る抗体をいう。対照的に、「ポリクローナル抗体」とは、様々なB細胞により産生され、
同じ抗原の様々なエピトープに結合する抗体集団をいう。本発明のCARの抗原認識部分は
、抗体全体又は抗体フラグメントであり得る。抗体全体は、典型的には、4つのポリペプ
チドからなる:重(H)鎖ポリペプチドの2つの同一コピー及び軽(L)鎖ポリペプチドの2つの同一コピー。各重鎖は、1つのN末端可変(VH)領域と3つのC末端定常(CH1、CH2及びCH3)領域を含み、各軽鎖は、1つのN末端可変(VL)領域と1つのC末端定常(CL)領域を
含む。各1対の軽鎖と重鎖の可変領域は、抗体の抗原結合部位を形成する。VH領域とVL領
域は、同じ一般的構造を有し、各領域は、配列が相対的に保存されている4つのフレーム
ワーク領域を含む。フレームワーク領域は3つの相補性決定領域(CDRs)により繋がれる
。CDR1、CDR2及びCDR3として知られる3つのCDRsは、抗体の「超可変領域」を形成し、こ
れは抗体結合に関与する。
【0016】
用語「抗体のフラグメント」、「抗体フラグメント」、「抗体の機能的フラグメント」及び「抗原結合部分(antigen-binding portion)」は、本明細書において互換的に使用
され、抗原と特異的に結合する能力を保持する、抗体の1つ以上のフラグメント又は部分
を意味する(一般に、Holliger et al., Nat. Biotech., 23(9):1126-1129(2005)を参照)。本発明のCARの抗原認識部分は、任意のCD19結合抗体フラグメントを含み得る。
抗体フラグメントは、望ましくは、例えば、1つ以上のCDRs、可変領域(又はその部分)
、定常領域(又はその部分)、又はそれらの組み合わせを含む。抗体フラグメントの例としては、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価のフラグメントであるFabフラグ
メント;(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価のフラグメントであるF(ab’)2フラグメント;(iii)抗体の単一ア
ームのVL及びVHドメインからなるFvフラグメント;(iv)Fvフラグメントの2つのドメイ
ン(すなわち、VL及びVH)が単一のポリペプチド鎖として合成されることを可能にする合成リンカーによって結合された、該2つのドメインからなる一価の分子である一本鎖Fv(scFv)(例えば、Bird et al., Science, 242:423-426(1988);Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:5879-5883(1988);及びOsbourn et al., Nat. Biotechnol., 16:778(1998)を参照)、並びに(v)ダイアボディ(ポリペプチド鎖の二量体であ
って、各ポリペプチド鎖はペプチドリンカーによりVLと結合されたVHを含み、該ペプチド
リンカーは同一ポリペプチド鎖上のVHとVL間で対合させるには短すぎるものであり、それにより、異なるVH-VLポリペプチド鎖上の相補的なドメイン間での対合が促されて、2つの機能的な抗原結合部位を有する二量体分子が生じる)が挙げられるが、これらに限定されない。抗体フラグメントは、当分野で既知であり、例えば、米国特許出願公報第2009/0093024 A1号などに、より詳細に記載される。好ましい実施態様において、本発明のCARの抗原認識部分は抗CD19一本鎖Fv(scFv)を含む。
【0017】
モノクローナル抗体の抗原結合部分又はフラグメントは、当該部分がCD19と結合する限り、任意のサイズのものであり得る。これに関して、CD19に対するモノクローナル抗体(本明細書中、「抗CD19モノクローナル抗体」とも称する)の抗原結合部分又はフラグメントは、望ましくは、約5個から18個の間(例えば、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、又は前記値のいずれか2つによって規定される範囲)のアミノ酸を含
む1つ以上のCDRsを含む。
【0018】
一実施態様において、本発明のCARは、抗CD19モノクローナル抗体の可変領域を含む抗
原認識部分を含む。抗CD19モノクローナル抗体は、哺乳動物(マウス、ラット又はヒトを含むが、これらに限定されない)から得られるか又は由来し得る。好ましくは、抗原認識部分は、マウス又はヒト抗CD19モノクローナル抗体の可変領域を含む。これに関して、抗原認識部分は、マウス又はヒト抗CD19モノクローナル抗体の軽鎖可変領域、重鎖可変領域、又は軽鎖可変領域と重鎖可変領域の両方、を含む。好ましくは、本発明のCARの抗原認
識部分は、マウス又はヒト抗CD19モノクローナル抗体の軽鎖可変領域と重鎖可変領域を含む。FMC63抗体(Nicholson et al., Molecular Immunology, 34(16-17):1157-1165(1997)に記載)は、本発明で使用され得るマウス抗CD19モノクローナル抗体の一例である
。FMC63モノクローナル抗体の可変領域は、臨床試験で試験されているCARsに利用されて
いる(例えば、Kochenderfer et al., Nature Review Clinical Oncol., 10(5);267-276(2013);Porter et al., New Eng. J. Med., 365(8):725-733(2011);Kalos et
al., Science Translational Medicine, 3(95):95ra73(2011);Kochenderfer et al., Blood, 116(20):4099-4102(2010);及びKochenderfer et al., Blood, 119(12):2709-2720(2012)を参照)。47G4抗体(米国特許出願公報第2010/0104509号に記載
)は、本発明で使用され得るヒト抗CD19モノクローナル抗体の一例である。
【0019】
別の実施態様において、本発明のCARはシグナル配列を含む。シグナル配列は、抗原認
識部分(例えば、抗CD19抗体の可変領域)のアミノ末端に配置されてよい。シグナル配列は、任意の適切なシグナル配列を含んでよい。一実施態様において、シグナル配列は、ヒト顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)受容体シグナル配列又はCD8αシグナル配列である。例えば、マウス抗CD19 scFvを含む本発明のCARは、GM-CSFシグナル配列を含み得、一方、ヒト抗CD19 scFvを含む本発明のCARは、CD8αシグナル配列を含み得る
。
【0020】
別の実施態様において、本発明のCARは細胞外スペーサー配列を含む。細胞外スペーサ
ー配列は、抗体柔軟性を高める短いアミノ酸配列であり(例えば、Woof et al., Nat. Rev. Immunol., 4(2):89-99(2004)を参照)、抗原認識部分(例えば、抗CD19 scFv)
とT細胞活性化部分との間に配置されてよい。細胞外スペーサー配列は、任意の膜貫通タ
ンパク質の細胞外領域の全部又は一部を含み得る。一実施態様において、例えば、細胞外スペーサー配列は、ヒトCD8α分子又はヒトCD28分子に由来する。
【0021】
本発明のCARはまた、膜貫通ドメインを含む。膜貫通ドメインは、当分野で既知の任意
の分子に由来するか又は得られる任意の膜貫通ドメインであり得る。例えば、膜貫通ドメインは、CD8α分子又はCD28分子から得られるか又は由来することができる。CD8は、T細
胞受容体(TCR)の補助受容体として働く膜貫通糖タンパク質であり、主として、細胞傷
害性T細胞の表面に発現する。CD8の最もよく見られる形態は、CD8αとCD8β鎖から構成されるダイマーとして存在する。CD28は、T細胞上に発現し、T細胞活性化に必要な共刺激シグナル(co-stimulatory signals)を提供する。CD28は、CD80(B7.1)及びCD86(B7.2)に対する受容体である。好ましい実施態様において、CD8α及びCD28はヒト由来である。
【0022】
本発明のCARはT細胞活性化部分を含む。T細胞活性化部分は、少なくとも1つの細胞内(すなわち、細胞質)T細胞シグナリングドメイン(「共刺激ドメイン(costimulatory domain)」とも称する)を含む。CARsで用いられる最も一般的な細胞内T細胞シグナリングドメインは、CD3ゼータ(CD3ζ)であり、これはTCRsと関連してシグナルを生じ、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motifs(ITAMs))を含む。好ましくは、T細胞活性化部分は、複数(すなわち、2以上)の細胞内T細胞
シグナリングドメインを含む。細胞内T細胞シグナリングドメインは、CD28分子、CD3ゼータ(ζ)分子若しくはその改変バージョン、ヒト高親和性IgE受容体(FcεRI)ガンマ鎖
、CD27分子、OX40分子、4-1BB分子、又は当分野で既知の他の細胞内シグナリング分子か
ら得られるか又は由来することができる。上述のように、CD28は、T細胞共刺激に重要なT細胞マーカーである。4-1BBは、CD137としても知られ、強力な共刺激シグナルをT細胞に
伝達し、分化を促進し、Tリンパ球の長期生存を高める。CD27は、TNF受容体スーパーファミリーのメンバーであり、T細胞免疫の生成及び長期維持に必要である。ヒト高親和性IgE受容体(FcεRI)は、1つのアルファ鎖、1つのベータ鎖、及びジスルフィド架橋で連結される2つのガンマ鎖からなる4量体の受容体コンプレックスである。FcεRIは、マスト細胞及び好塩基球で恒常的に発現され、好酸球で誘導可能である。好ましい実施態様において、細胞内T細胞シグナリングドメインはヒト由来である。
【0023】
本発明のCARは、上記膜貫通ドメインのいずれか1つ、並びに上記細胞内T細胞シグナリ
ングドメインのいずれか1つ以上(例えば、1、2、3又は4つ)を任意の組み合わせで含み
得る。例えば、本発明のCARは、CD28膜貫通ドメインと、CD28及びCD3ζの細胞内T細胞シ
グナリングドメインとを含み得る。或いは、例えば、本発明のCARは、CD8α膜貫通ドメインと、CD28、CD3ζ、FcεRIガンマ鎖及び/又は4-1BBの細胞内T細胞シグナリングドメイ
ンとを含み得る。別の実施態様において、本発明のCARは、CD8α膜貫通ドメインと、CD28、CD3ζ及びCD27の細胞内T細胞シグナリングドメインとを含み得る。さらに別の実施態様において、本発明のCARは、CD28膜貫通ドメインと、CD27、4-1BB及びFcεRIガンマ鎖の細胞内T細胞シグナリングドメインとを含み得る。
【0024】
本発明はさらに、本発明のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離又は精製された
核酸配列を提供する。「核酸配列」は、DNA又はRNAのポリマー、すなわちポリヌクレオチドを包含するよう意図されており、一本鎖又は二本鎖であり得、非天然の又は改変されたヌクレオチドを含み得る。本明細書で使用する場合、用語「核酸」及び「ポリヌクレオチド」とは、リボヌクレオチド(RNA)又はデオキシリボヌクレオチド(DNA)のいずれかである、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態をいう。これらの用語は、分子の一次構造をいい、従って、二本鎖及び一本鎖DNA、並びに二本鎖及び一本鎖RNAを含む。当該用語は、等価物として、ヌクレオチドアナログ及び改変ポリヌクレオチド(例えば、メチル化及び/又はキャッピングされたポリヌクレオチドなどであるが、これらに限定されない)から作製されるRNA又はDNAいずれかのアナログを含む。
【0025】
本発明のCARは、CARがその生物活性(例えば、抗原と特異的に結合する、哺乳動物において疾患細胞を検出する、又は哺乳動物において疾患を治療若しくは予防するなどの能力)を保持するならば、任意の数のアミノ酸を含み得る。例えば、CARは、50以上(例えば
、60以上、100以上、又は500以上)のアミノ酸であるが、1,000未満(例えば、900以下、800以下、700以下、又は600以下)のアミノ酸を含み得る。好ましくは、CARは、約50から約700アミノ酸(例えば、約70、約80、約90、約150、約200、約300、約400、約550、又は
約650アミノ酸)、約100から約500アミノ酸(例えば、約125、約175、約225、約250、約275、約325、約350、約375、約425、約450、又は約475アミノ酸)、又は前記値のいずれか2つによって規定される範囲である。
【0026】
本発明の範囲には、本明細書に記載の本発明のCARの機能的部分が含まれる。CARに関して使用される場合、用語「機能的部分(functional portion)」とは、本発明のCARの任
意の部分又はフラグメントであって、その部分又はフラグメントがCAR(その部分又はフ
ラグメントはこれの一部である)(親CAR)の生物活性を保持するものをいう。機能的部
分は、例えば、親CARと類似の程度に、同程度に、又はより高い程度に、標的細胞を認識
する能力、又は疾患を検出、治療若しくは予防する能力を保持する、CARの部分を包含す
る。親CARをコードする核酸配列に関連して、CARの機能的部分をコードする核酸配列は、親CARの例えば約10%、25%、30%、50%、68%、80%、90%、95%又はそれ以上を含む
タンパク質をコードし得る。
【0027】
CARの機能的部分は、当該部分のアミノ末端若しくはカルボキシ末端又は両端に、更な
るアミノ酸であって、親CARのアミノ酸配列には見られないものを含み得る。望ましくは
、更なるアミノ酸は、機能的部分の生物学的機能(例えば、標的細胞を認識する、がんを検出する、がんを治療又は予防するなど)を妨害しない。さらに望ましくは、更なるアミノ酸は、親CARの生物活性と比較して、CARの生物活性を増強する。
【0028】
本発明はまた、本発明のCARの機能的変異体も提供する。本明細書で使用する場合、用
語「機能的変異体(functional variant)」とは、本発明のCARと実質的又は顕著な配列
同一性又は類似性を有するCAR、ポリペプチド又はタンパク質であって、当該機能的変異
体がCAR(当該機能的変異体はこれの変異体である)の生物活性を保持するものをいう。
機能的変異体は、例えば、親CARと類似の程度に、同程度に、又はより高い程度に、標的
細胞を認識する能力を保持する、本明細書に記載のCAR(親CAR)の変異体を包含する。親CARをコードする核酸配列に関連して、CARの機能的変異体をコードする核酸配列は、親CARをコードする核酸配列と、例えば、約10%同一、約25%同一、約30%同一、約50%同一
、約65%同一、約80%同一、約90%同一、約95%同一、又は約99%同一であり得る。
【0029】
機能的変異体は、例えば、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を有する本発明のCARのアミノ酸配列を含み得る。フレーズ「保存的アミノ酸置換(substitution)」又は「保存的変異」とは、1つのアミノ酸の、共通の特性を備えた別のアミノ酸による置き換えをい
う。個々のアミノ酸間の共通の特性を定義する機能的な方法は、相同的な生物の対応するタンパク質間のアミノ酸変化の正規化された頻度を分析することである(Schulz, G. E. and Schirmer, R. H., Principles of Protein Structure, Springer-Verlag, New York
(1979))。そのような分析により、グループ内のアミノ酸が優先的に互いを交換し、それ故、タンパク質の全体構造への影響において互いに最も類似するアミノ酸のグループが定義され得る(Schulz, G. E. and Schirmer, R. H., 上記)。保存的変異の例としては
、同じアミノ酸サブグループ内でのアミノ酸のアミノ酸置換、例えば、アルギニンのリジンでの置換及びその逆(正電荷が維持され得るように);アスパラギン酸のグルタミン酸での置換及びその逆(負電荷が維持され得るように);トレオニンのセリンでの置換(遊離-OHが維持され得るように);並びにアスパラギンのグルタミンでの置換(遊離-NH2が
維持され得るように)、が挙げられる。
【0030】
或いは又はさらに、機能的変異体は、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換を有する
親CARのアミノ酸配列を含み得る。「非保存的変異」は、異なるグループ間のアミノ酸置
換、例えば、トリプトファンのリジンでの置換、又はセリンのフェニルアラニンでの置換などを伴う。この場合、非保存的アミノ酸置換が、機能的変異体の生物活性を妨害又は阻害しないことが好ましい。非保存的アミノ酸置換は、親CARと比較して機能的変異体の生
物活性が増大するように、機能的変異体の生物活性を増強し得る。
【0031】
本発明のCAR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、1つ以上の天然に存在するアミノ酸の代わりに合成アミノ酸を含み得る。かかる合成アミノ酸は、当分野で公知であり、例えば、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、α-アミノn-デカン酸、
ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、トランス-3-及びトランス-4-ヒドロ
キシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、β-フェニルセリン β-ヒドロキシフェニ
ルアラニン、フェニルグリシン、α-ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シク
ロヘキシルグリシン、インドリン-2-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’-ベンジル-N’-メチル-リジン、N’,N’-ジベンジル-リジン、6-ヒドロキシリジン、オルニチン、α-アミノシクロペンタンカルボン酸、α-アミノシクロヘキサンカルボン酸、α-アミノシクロヘプタンカルボン酸、α-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、α,γ-ジアミノ酪酸、α,β-
ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン及びα-tert-ブチルグリシンが挙げられる。
【0032】
本発明のCAR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、グリコシル化、アミド化
、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N-アシル化、環化(例えば、ジスルフィド架橋を介して)、又は酸付加塩に変換され、且つ/或いは任意選択で二量体化若しくは重合化、又はコンジュゲート化され得る。
【0033】
本発明はまた、関心のある任意の標的分子に対するCAR(すなわち、任意の抗原認識部
分を含む)であって、前記細胞外スペーサー、膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞シグナリ
ングドメインのいずれか1つを任意の組み合わせで含むCARを提供する。例えば、本発明のCARは、(i)細胞外スペーサー、(i)ヒトCD8α分子に由来する膜貫通ドメイン、並びに(iii)ヒトCD3ゼータ(CD3ζ)分子及びヒトCD28分子に由来する細胞内T細胞シグナリングドメインを含み得る(配列番号1のCARで用いられるように)。別の実施態様において、本発明のCARは、(i)細胞外スペーサー、(i)ヒトCD8α分子に由来する膜貫通ドメイン、並びに(iii)ヒトCD28分子、ヒトCD27分子及びヒトCD3ζ分子に由来する細胞内T細胞
シグナリングドメインを含み得る(配列番号4のCARで用いられるように)。別の実施態様において、本発明のCARは、(i)細胞外スペーサー、(i)ヒトCD8α分子に由来する膜貫通ドメイン、並びに(iii)ヒトCD28分子、ヒトCD27分子及びFcεRIガンマ鎖に由来する
細胞内T細胞シグナリングドメインを含み得る(配列番号10のCARで用いられるように)。さらに別の実施態様において、本発明のCARは、(i)細胞外スペーサー、(i)ヒトCD8α分子に由来する膜貫通ドメイン、並びに(iii)ヒトCD28分子及びFcεRIガンマ鎖に由来
する細胞内T細胞シグナリングドメインを含み得る(配列番号12のCARで用いられるように)。
【0034】
好ましい実施態様において、本発明のCARは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、又は配列番号13のアミノ酸配列を含むか、又は該アミノ酸配列からなる。
【0035】
本発明のCARは、当分野で既知の方法を用いて作製され得る。例えば、核酸配列、ポリ
ペプチド及びタンパク質は、標準的な組換えDNA方法論を用いて組換え的に産生され得る
(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 3rded., Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY, 2001;及びAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and John Wiley & Sons, NY, 1994を参照)。さらに、CARをコードする合成的に産生される核酸配列は、植物、
細菌、昆虫又は哺乳動物(例えば、ラット、ヒトなど)などの供給源から単離及び/又は精製され得る。単離及び精製の方法は当分野で周知である。或いは、本明細書に記載の核酸配列は商業的に合成され得る。これに関して、核酸配列は、合成、組換え、単離及び/又は精製され得る。
【0036】
本発明はまた、本発明のCARをコードする核酸配列を含むベクターを提供する。ベクタ
ーは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルス又はアデノウイルス)、又はファージであり得る。適切なベクター及びベクターの調製方法は当分野で周知である(例えば、Sambrook et al., 上記、及びAusubel et al., 上記を参
照)。
【0037】
本発明のCARをコードする核酸配列に加えて、ベクターは、好ましくは、プロモーター
、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、転写ターミネーター、内部リボソーム侵入部位(IRES)などの、宿主細胞における核酸配列の発現を提供する発現調節配列を含む。例示的な発現調節配列は当分野で既知であり、例えば、Goeddel, Gene Expression Technology:Methods in Enzymology, Vol. 185, Academic Press, San Diego, Calif.(1990)
に記載される。
【0038】
種々の異なるソースからの、構成的、誘導性及び抑制性プロモーターを含む多数のプロモーターが当分野で周知である。プロモーターの代表的なソースには、例えば、ウイルス、哺乳動物、昆虫、植物、酵母及び細菌が含まれ、これらソースからの適切なプロモーターは、容易に入手可能であるか、或いは、例えば、ATCCなどの寄託機関及び他の商業的又は個人的なソースなどから一般に入手可能な配列に基づいて合成的に作製され得る。プロモーターは、一方向性(すなわち、一方向で転写を開始させる)又は二方向性(すなわち、3’又は5’のいずれかの方向で転写を開始させる)であり得る。プロモーターの非限定的な例としては、例えば、T7バクテリア発現系、pBAD(araA)バクテリア発現系、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、及びRSVプロモーターが挙げられる。誘導性プロモーターには、例えば、Tet系(米国特許第5,464,758号及び第5,814,618号)、エクジソン誘導性(Ecdysone inducible)系(No et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 93:3346-3351(1996))、T-REXTM系(Invitrogen, Carlsbad, CA)、LACSWITCHTM
系(Stratagene, San Diego, CA)、及びCre-ERTタモキシフェン誘導性リコンビナーゼ系(Indra et al., Nuc. Acid. Res., 27:4324-4327(1999);Nuc. Acid. Res., 28:e99(2000);米国特許第7,112,715号;及びKramer & Fussenegger, Methods Mol. Biol., 308:123-144(2005))が含まれる。
【0039】
本明細書で使用する場合、用語「エンハンサー」とは、例えば、それが作動可能(operably)に連結された核酸配列などの転写を増加させるDNA配列をいう。エンハンサーは、
核酸配列のコーディング領域から何キロベースも離れて位置することができ、制御因子の結合、DNAメチル化パターン、又はDNA構造の変化を仲介し得る。種々の異なるソースからの多数のエンハンサーが当分野で周知であり、クローニングされたポリヌクレオチドとして又はクローニングされたポリヌクレオチド内で(例えば、ATCCなどの寄託機関及び他の商業的又は個人的なソースなどから)入手可能である。プロモーター(例えば、一般に使用されるCMVプロモーターなど)を含む多くのポリヌクレオチドはまた、エンハンサー配
列も含む。エンハンサーは、コーディング配列の上流、内部、又は下流に位置し得る。用語「Igエンハンサー」とは、イムノグロブリン(Ig)遺伝子座内にマップされるエンハンサー領域に由来するエンハンサー要素をいう(そのようなエンハンサーとしては、例えば、重鎖(mu)5'エンハンサー、軽鎖(カッパ)5'エンハンサー、カッパ及びmu イントロ
ンエンハンサー、並びに3'エンハンサーなどが挙げられる(一般に、Paul W.E.(ed), Fundamental Immunology, 3rd Edition, Raven Press, New York(1993), pages 353-363;及び米国特許第5,885,827号を参照)。
【0040】
ベクターはまた、「選択可能マーカー遺伝子(selectable marker gene)」を含み得る。本明細書で使用する場合、用語「選択可能マーカー遺伝子」とは、核酸配列であって、該核酸配列を発現する細胞が、対応する選択剤の存在下、特異的に選択される又はされないようにすることを可能にするものをいう。適切な選択可能マーカー遺伝子は、当分野で既知であり、例えば、国際特許出願公報WO 1992/08796及びWO 1994/28143;Wigler et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:3567(1980);O'Hare et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:1527(1981);Mulligan & Berg, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:2072(1981);Colberre-Garapin et al., J. Mol. Biol., 150:1(1981);Santerre et
al., Gene, 30:147(1984);Kent et al., Science, 237:901-903(1987);Wigler et al., Cell, 11:223(1977);Szybalska & Szybalski, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 48:2026(1962);Lowy et al., Cell, 22:817(1980);並びに米国特許第5,122,464号及び第5,770,359号に記載される。
【0041】
いくつかの実施態様において、ベクターは、「エピソーム発現ベクター」又は「エピソーム」であり、これは、宿主細胞において複製可能であり、適切な選択圧の存在下で、宿主細胞内において、DNAの染色体外セグメントとして存続する(例えば、Conese et al., Gene Therapy, 11:1735-1742(2004)を参照)。代表的な市販のエピソーム発現ベクタ
ーには、エプスタイン・バーウイルス由来核抗原1(Epstein Barr Nuclear Antigen 1)
(EBNA1)及びエプスタイン・バーウイルス(EBV)複製起点(oriP)を利用するエピソームプラスミドが含まれるが、これに限定されない。Invitrogen(Carlsbad, CA)のベクターpREP4、pCEP4、pREP7及びpcDNA3.1、並びにStratagene(La Jolla, CA)のpBK-CMVは、EBNA1及びoriPの代わりにT抗原及びSV40複製起点を使用するエピソームベクターの非限定的な例を示す。
【0042】
他の適切なベクターには、宿主細胞のDNA中にランダムに組み込まれ得るか、又は発現
ベクターと宿主細胞染色体との間の特異的組換えを可能にする組換え部位を含み得る、組込み(integrating)発現ベクターが含まれる。かかる組込み発現ベクターは、所望のタ
ンパク質の発現をもたらすために、宿主細胞染色体の内因性発現調節配列を利用し得る。部位特異的な様式で組込むベクターの例としては、例えば、Invitrogen(Carlsbad, CA)のflp-in系(例えば、pcDNATM5/FRT)、又はcre-lox系(例えば、Stratagene(La Jolla,
CA)のpExchange-6 Core Vectors中に見出され得るものなど)の構成要素が挙げられる
。宿主細胞染色体中にランダムに組込むベクターの例としては、例えば、Invitrogen(Carlsbad, CA)のpcDNA3.1(T抗原の非存在下で導入される場合)、及びPromega(Madison,
WI)のpCI又はpFN10A(ACT)FLEXITMが挙げられる。
【0043】
ウイルスベクターも使用され得る。代表的なウイルス発現ベクターには、アデノウイルスベースのベクター(例えば、Crucell, Inc.(Leiden, The Netherlands)から入手可能なアデノウイルスベースのPer.C6系)、レンチウイルスベースのベクター(例えば、Life
Technologies(Carlsbad, CA)のレンチウイルスベースのpLP1)、及びレトロウイルス
ベクター(例えば、Stratagene(La Jolla, CA)のpFB-ERVプラスpCFB-EGSH)が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施態様において、ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。
【0044】
本発明のCARをコードする核酸を含むベクターは、CARを発現することが可能な宿主細胞(任意の適切な原核又は真核細胞を含む)へと導入され得る。好ましい宿主細胞は、容易且つ確実に増殖でき、合理的に速い増殖速度を有し、充分特徴付けられた発現系を有し、容易且つ効率的に形質転換又はトランスフェクトされ得るものである。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「宿主細胞」とは、発現ベクターを含み得る任意のタイ
プの細胞をいう。宿主細胞は、真核生物細胞(例えば、植物、動物、真菌又は藻類)であり得、或いは原核生物細胞(例えば、細菌又は原生生物)であり得る。宿主細胞は、培養細胞又は初代細胞(すなわち、ヒトなどの生物から直接単離されたもの)であり得る。宿主細胞は、接着細胞又は浮遊細胞(すなわち、懸濁液中で増殖する細胞)であり得る。適切な宿主細胞は当分野で既知であり、例えば、DH5α E. coli細胞、チャイニーズハムス
ター卵巣細胞、サルVERO細胞、COS細胞、HEK293細胞などが含まれる。組換え発現ベクタ
ーを増幅又は複製する目的のために、宿主細胞は、原核生物細胞(例えば、DH5α細胞)
であってよい。組換えCARを産生する目的のために、宿主細胞は哺乳動物細胞であり得る
。宿主細胞は好ましくはヒト細胞である。宿主細胞は任意の細胞タイプのものであり得、任意の組織タイプに由来し得、任意の発生段階のものであり得る。一実施態様において、宿主細胞は、末梢血リンパ球(PBL)、末梢血単核細胞(PMBC)、ナチュラルキラー(NK
)又はT細胞であり得る。好ましくは、宿主細胞はT細胞である。適切な哺乳動物宿主細胞を選択するための方法、並びに細胞の形質転換、培養、増幅、スクリーニング及び精製のための方法は、当分野で既知である。
【0046】
本発明は、本明細書に記載の本発明のCARをコードする核酸配列を発現する単離されたT細胞を提供する。本発明のT細胞は、例えば、培養T細胞(例えば初代T細胞)、又は培養T細胞株由来のT細胞、又は哺乳動物から得られたT細胞など、任意のT細胞であり得る。哺
乳動物から得られる場合、T細胞は、多数の供給源(血液、骨髄、リンパ節、胸腺、又は
他の組織若しくは体液を含むが、これらに限定されない)から得ることができる。T細胞
はまた、濃縮(enriched)又は精製され得る。T細胞は好ましくはヒトT細胞(例えば、ヒトから単離されたもの)である。T細胞は、任意の発生段階のものであり得、これには、CD4+/CD8+ダブルポジティブT細胞、CD4+ヘルパーT細胞(例えば、Th1及びTh2細胞)、CD8+
T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、腫瘍浸潤細胞、メモリーT細胞、ナイーブT細胞な
どが含まれるが、これらに限定されない。一実施態様において、T細胞は、CD8+ T細胞又
はCD4+ T細胞である。T細胞株は、例えば、American Type Culture Collection(ATCC, Manassas, VA)及びGerman Collection of Microorganisms and Cell Cultures(DSMZ)などから入手可能であり、例えば、Jurkat細胞(ATCC TIB-152)、Sup-T1細胞(ATCC CRL-1942)、RPMI 8402細胞(DSMZ ACC-290)、Karpas 45細胞(DSMZ ACC-545)、及びそれら
の誘導体が含まれる。
【0047】
本発明のCARをコードする核酸配列は、「トランスフェクション」、「形質転換」又は
「形質導入」により細胞に導入され得る。本明細書で使用する場合、用語「トランスフェクション」、「形質転換」又は「形質導入」とは、物理的又は化学的な方法を使用することにより、宿主細胞に1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを導入することをいう。多くの
トランスフェクション技術が当分野で既知であり、例えば、リン酸カルシウムDNA共沈殿
(例えば、Murray E.J.(ed.), Methods in Molecular Biology, Vol. 7, Gene Transfer and Expression Protocols, Humana Press(1991)を参照);DEAE-デキストラン;エ
レクトロポレーション;カチオン性リポソーム介在トランスフェクション;タングステン粒子促進性の微粒子銃(microparticle bombardment)(Johnston, Nature, 346:776-777(1990));及びリン酸ストロンチウムDNA共沈殿(Brash et al., Mol. Cell Biol., 7:2031-2034(1987))が含まれる。ファージ又はウイルスベクターは、適切なパッケー
ジング細胞(その多くが市販されている)内での感染粒子の増殖後に、宿主細胞に導入され得る。
【0048】
特定の理論又はメカニズムに拘束されるものではないが、本発明のCARsは、CD19に対する抗原特異的反応を引き起こすことにより、以下の1つ以上を提供すると考えられる:CD19発現がん細胞の標的化及び破壊、がん細胞の減少又は排除、腫瘍部位(複数可)への免
疫細胞の浸潤の促進、並びに抗がん反応の増強/拡張。従って、本発明は、悪性B細胞を
破壊する方法であって、前記単離されたT細胞の1つ以上を、CD19を発現する悪性B細胞集
団と接触させることを含み、それにより、CARが産生され、悪性B細胞上でCD19と結合し、悪性B細胞が破壊される、方法を提供する。上述のように、B細胞性悪性腫瘍の治療は、典型的には、化学療法、治療用モノクローナル抗体及び同種幹細胞移植を伴う;しかしながら、そのような治療を受けている患者では高い再発率が一般的である。上述のように、CD19は悪性B細胞により高度に発現されており(例えば、Nadler et al., 上記を参照)、本発明の方法は、当分野で既知の任意のB細胞性悪性腫瘍を治療するために使用することが
できる。成熟B細胞の悪性腫瘍には、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキッ
トリンパ腫、多発性骨髄腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、リ
ンパ形質細胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫及び慢性リンパ性白血病が含まれるが、これらに限定されない(Shaffer et al., 上記)。
【0049】
本明細書に記載の本発明の抗CD19 CARをコードする核酸配列を発現する、1つ以上の単
離されたT細胞は、CD19を発現する悪性B細胞集団とex vivo、in vivo又はin vitroで接触させ得る。「ex vivo」とは、自然条件の変更を最小限にとどめた人工的な生体外部の環
境にて、細胞若しくは組織内、又は細胞若しくは組織上で実施される方法をいう。対照的に、用語「in vivo」とは、正常なインタクトな状態にある生体内で実施される方法をい
い、他方、「in vitro」方法は、通常の生物学的環境から単離されている生物構成要素を用いて実施される。本発明の方法は、好ましくは、ex vivo及びin vivoの構成要素を伴う。これに関して、例えば、上記の単離されたT細胞は、本発明の抗CD19 CARをコードする
核酸配列を発現するための条件下、ex vivoで培養され得、次いで、B細胞性悪性腫瘍に罹患した哺乳動物(好ましくはヒト)に直接移植(transferred)され得る。そのような細
胞移植方法は、当分野で「養子細胞移植(adoptive cell transfer(ACT))」と称され
ており、当該移植では、免疫が誘発された細胞が新しいレシピエント宿主へと受動的に移植され、免疫が誘発されたドナー細胞の機能性が新たな宿主に移入される。B細胞性悪性
腫瘍などの血液がんを含む様々なタイプのがんを治療するための養子細胞移植方法が当分野で既知であり、例えば、Gattinoni et al., Nat. Rev. Immunol., 6(5):383-393(2006);June, CH, J. Clin. Invest., 117(6):1466-76(2007);Rapoport et al., Blood, 117(3):788-797(2011);及びBarber et al., Gene Therapy, 18:509-516(2011))などに開示される。
【0050】
T細胞が哺乳動物に投与される場合、細胞は、該哺乳動物に対して同種異系又自家性で
あり得る。「自家性(autologous)」の投与方法では、細胞(例えば、造血幹細胞又はリンパ球)を哺乳動物から取り出し、保存し(任意選択で改変し)、同じ哺乳動物へと戻す。「同種異系(allogeneic)」の投与方法では、哺乳動物は、遺伝的に類似するが同一ではないドナーから細胞(例えば、造血幹細胞又はリンパ球)を受け取る。好ましくは、細胞は、哺乳動物に対して自家性である。
【0051】
T細胞は、望ましくは、医薬組成物などの組成物の形態でヒトに投与される。或いは、
本発明のCARをコードする核酸配列、又はCARをコードする核酸配列を含むベクターは、医薬組成物などの組成物へと製剤化され得、ヒトに投与され得る。本発明の医薬組成物は、本発明のCARを発現するT細胞集団を含み得る。本発明のCARをコードする核酸配列、又は
本発明のCARを発現する宿主細胞に加えて、医薬組成物は、他の医薬上活性な薬剤又は薬
物、例えば、化学療法剤、例えば、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチンなどを含み得る。好ましい実施態様において、医薬組成物は、本発明のCARを発現する単離されたT細胞、より好ましくは本発明のCARを発現するT細胞集団を含む。
【0052】
本発明のT細胞は、塩(例えば、医薬上許容される塩)の形態で提供され得る。適切な
医薬上許容される酸付加塩には、鉱酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸
、硝酸及び硫酸)由来の塩、及び有機酸(例えば、酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、及びp-トルエンスルホン酸などのアリールスルホン酸)由来の塩が含まれる。
【0053】
担体の選択は、特定の本発明のCAR、CARをコードする核酸配列、ベクター又はCARを発
現する宿主細胞によって、及び本発明のCAR、CARをコードする核酸配列、ベクター又はCARを発現する宿主細胞を投与するために使用される特定の方法によって、一部決定されよ
う。従って、本発明の医薬組成物の適切な製剤は多様である。例えば、医薬組成物は保存剤(preservatives)を含み得る。適切な保存剤としては、例えば、メチルパラベン、プ
ロピルパラベン、安息香酸ナトリウム及び塩化ベンザルコニウムが挙げられてよい。任意選択で、2種以上の保存剤の混合物を使用してもよい。保存剤又はその混合物は、典型的
には、組成物全体の約0.0001重量%から約2重量%の量で存在する。
【0054】
さらに、緩衝剤が組成物中に使用されてよい。適切な緩衝剤としては、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウム、並びに種々の他の酸及び塩が挙げられる。任意選択で、2種以上の緩衝剤の混合物を使用してもよい。緩衝剤又はその混合物
は、典型的には、組成物全体の約0.001重量%から約4重量%の量で存在する。
【0055】
投与可能な(例えば、非経口投与可能な)組成物を調製するための方法は、当業者に既知であり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins;21st ed.(2005)においてより詳細に記載される。
【0056】
本発明のCAR、CARをコードする核酸配列、ベクター又はCARを発現する宿主細胞、を含
む組成物は、包接錯体(例えば、シクロデキストリン包接錯体)又はリポソームとして製剤化され得る。リポソームは、特定の組織に宿主細胞(例えば、T細胞又はNK細胞)又は
本発明の核酸配列を標的化するために機能し得る。リポソームはまた、本発明の核酸配列の半減期を増加させるためにも使用され得る。リポソームを調製するための多くの方法が利用可能であり、例えば、Szoka et al., Ann. Rev. Biophys. Bioeng., 9, 467(1980)並びに米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,837,028号及び同第5,019,369号に記載されるものなどである。
【0057】
組成物は、本発明の組成物のデリバリーが、治療されるべき部位の感作の前に、感作を引き起こすのに十分な時間で生じるように、時限放出(time-released)、遅延放出(delayed release)及び徐放(sustained release)デリバリーシステムを用い得る。多くの
タイプの放出デリバリーシステムが利用可能であり、当業者に既知である。かかるシステムは、組成物の反復投与を回避することができ、それにより、対象及び医師の利便性を向上させることができ、本発明の特定の組成物実施態様に特に適切であり得る。
【0058】
組成物は、望ましくは、B細胞性悪性腫瘍を治療又は予防するのに有効な量で、本発明
のCARをコードする核酸配列を発現する宿主細胞、又はそのような核酸配列を含むベクタ
ーを含む。本明細書で使用する場合、用語「治療」、「治療すること」などとは、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることをいう。好ましくは、該効果は治療的であり、すなわち、該効果は、疾患、及び/又は疾患に起因する有害な症状を部分的に又は完全に治癒する。このような目的で、本発明の方法は、本発明のCARを発現する宿主細胞、又
はCARをコードする核酸配列を含むベクター、を含む組成物の「治療上有効量」を投与す
ることを含む。「治療上有効量」とは、所望の治療結果を達成するために、必要な投与量及び期間で、有効な量をいう。治療上有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別及び体重、並びにCARが個体において所望の応答を引き出す能力などの要因によって変動し得る。例
えば、本発明のCARの治療上有効量は、多発性骨髄腫細胞上でCD19と結合し、それらを破
壊する量である。
【0059】
或いは、薬理学的及び/又は生理学的効果は予防的であり得、すなわち、該効果は、疾患又はその症状を完全に又は部分的に予防する。これに関して、本発明の方法は、本発明のCARを発現する宿主細胞、又はCARをコードする核酸配列を含むベクター、を含む組成物の「予防上有効量」を、B細胞性悪性腫瘍にかかりやすい哺乳動物に投与することを含む
。「予防上有効量」とは、所望の予防結果(例えば、疾患発症の予防)を達成するために、必要な投与量及び期間で、有効な量をいう。
【0060】
哺乳動物(例えばヒト)に投与される宿主細胞の典型的な量は、例えば、100万から1000億細胞の範囲にあり得る;しかしながら、この例示的範囲より少ない又は多い量も本発
明の範囲内である。例えば、本発明の宿主細胞の一日の用量(daily dose)は、約100万
から約500億細胞(例えば、約500万細胞、約2500万細胞、約5億細胞、約10億細胞、約50
億細胞、約200億細胞、約300億細胞、約400億細胞、又は前記値のいずれか2つによって規定される範囲)、好ましくは約1000万から約1000億細胞(例えば、約2000万細胞、約3000万細胞、約4000万細胞、約6000万細胞、約7000万細胞、約8000万細胞、約9000万細胞、約100億細胞、約250億細胞、約500億細胞、約750億細胞、約900億細胞、又は前記値のいず
れか2つによって規定される範囲)、より好ましくは約1億細胞から約500億細胞(例えば
、約1億2000万細胞、約2億5000万細胞、約3億5000万細胞、約4億5000万細胞、約6億5000
万細胞、約8億細胞、約9億細胞、約30億細胞、約300億細胞、約450億細胞、又は前記値のいずれか2つによって規定される範囲)であり得る。
【0061】
治療又は予防の有効性は、処置患者の定期的な評価によってモニタリングされ得る。状態に応じて、数日間又はそれ以上にわたる反復投与のために、病徴の所望の抑制が生じるまで処置が反復される。しかしながら、他の投与レジメンが有用な場合があり、それも本発明の範囲内である。所望の投与量は、組成物の単回ボーラス投与により、組成物の複数回ボーラス投与により、又は組成物の継続的注入投与により、デリバリーされ得る。
【0062】
本発明のCARを発現する宿主細胞、又はCARをコードする核酸配列を含むベクター、を含む組成物は、標準的な投与技術(経口、静脈内、腹腔内、皮下、肺内、経皮、筋肉内、鼻腔内、口腔、舌下又は坐剤投与を含む)を使用して哺乳動物に投与され得る。組成物は、好ましくは、非経口投与に適している。本明細書で使用する場合、用語「非経口」は、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、膣内及び腹腔内投与を含む。より好ましくは、組成物は、静脈内、腹腔内又は皮下注射による末梢全身性デリバリー(peripheral systemic delivery)を使用して哺乳動物に投与される。
【0063】
本発明のCARを発現する宿主細胞、又はCARをコードする核酸配列を含むベクター、を含む組成物は、1種以上の更なる治療剤とともに投与でき、それらは、哺乳動物に共投与さ
れ得る。「共投与する(coadministering)」とは、本発明のCARが1種以上の更なる治療
剤の効果を増強でき、又は1種以上の更なる治療剤が本発明のCARの効果を増強できるように、十分に近接した時間で、1種以上の更なる治療剤と、本発明の宿主細胞又は本発明の
ベクターを含む組成物とを投与することを意味する。これに関して、本発明の宿主細胞又は本発明のベクターを含む組成物を最初に投与でき、且つ1種以上の更なる治療剤を2番目に投与でき、又は1種以上の更なる治療剤を最初に投与でき、且つ本発明の宿主細胞又は
本発明のベクターを含む組成物を2番目に投与できる。或いは、本発明の宿主細胞又は本
発明のベクターを含む組成物と1種以上の更なる治療剤とは、同時に投与され得る。本発
明の宿主細胞又は本発明のベクターを含む組成物と共投与され得る例示的な治療剤は、IL-2である。
【0064】
本発明のCARを発現する宿主細胞、又はCARをコードする核酸配列を含むベクター、を含む組成物が、哺乳動物(例えばヒト)に投与されると、CARの生物活性は、当分野で既知
の任意の適切な方法によって測定され得る。本発明の方法によれば、CARは悪性B細胞上のCD19と結合し、悪性B細胞が破壊される。悪性B細胞表面におけるCARとCD19との結合は、
当分野で既知の任意の適切な方法(例えば、ELISA及びフローサイトメトリーを含む)を
用いてアッセイされ得る。CARが悪性B細胞を破壊する能力は、当分野で既知の任意の適切な方法、例えば、Kochenderfer et al., J. Immunotherapy, 32(7):689-702(2009)
及びHerman et al. J. Immunological Methods, 285(1):25-40(2004)などに記載さ
れる細胞傷害性アッセイなどを用いて測定され得る。CARの生物活性はまた、CD107a、IFNγ、IL-2及びTNFなどの特定のサイトカインの発現をアッセイすることにより測定され得
る。
【0065】
当業者は、本発明のCARが、CARの治療又は予防効力を改変によって増加させるように、任意の数の方法で改変され得ることを容易に理解するであろう。例えば、CARは、直接的
に、又はリンカーを介して間接的にかのいずれかで、標的化部分(targeting moiety)にコンジュゲート化され得る。化合物(例えばCAR)を標的化部分にコンジュゲート化する
実務は当分野で既知である。例えば、Wadwa et al., J. Drug Targeting 3:111(1995)及び米国特許第5,087,616号を参照。
【0066】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、当然ながら、その範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【実施例】
【0067】
実施例1
本実施例は、本発明の抗CD19キメラ抗原受容体(CARs)を作製するための方法を実証する。
【0068】
一連の抗CD19 CARsを設計及び合成した。CARsはすべて、マウスモノクローナル抗体FMC63(Nicholson et al., Molecular Immunology, 34(16-17):1157-1165(1997))又は完全ヒト(fully human)モノクローナル抗体47G4(米国特許出願公報第2010/0104509号
)のいずれかに由来する一本鎖可変フラグメント(scFv)から構成される抗原認識ドメインを含んだ。CARsは、ヒト顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)受容体由
来のシグナル配列、又はヒトCD8分子由来のシグナル配列を含んだ。CARsは、ヒトCD3ゼータ(CD3ζ)分子、ヒトCD28分子、ヒト4-1BB分子、ヒトCD27分子、及び/又はFcεRIガンマ鎖に由来する2つ以上の細胞内T細胞シグナリングドメイン(又は「共刺激ドメイン」)の組み合わせを含んだ。
【0069】
より詳細には、FMC63由来scFv、GM-CSF受容体シグナル配列、CD8細胞外及び膜貫通構成要素、並びにヒトCD3ζ及びCD28分子の細胞内T細胞シグナリングドメインを含むCARをコ
ードするプラスミド(FMC63-CD828Zと示す)を、出発物質としてプラスミドMSGV-FMC63-28Z(Kochenderfer et al., Journal of Immunotherapy, 32(7):689-702(2009)に記
載)を用いて構築した。最初にMSGV-FMC63-28Zプラスミドを制限酵素NotI及びBmgBI(New
England Biolabs, Ipswich, MA)で切断し、このプラスミドのCD28部分全体を取り除い
た。次に、ヒトCD8分子の細胞外領域の一部と膜貫通領域のすべて、CD28分子の細胞質部
分、及びCD3ζ分子の細胞質部分、をコードするDNAフラグメント(Invitrogen, Carlsbad, CAにより合成)を、切断されたMSGV-FMC63-28Zプラスミドにライゲーションした。ヒトCD8、CD28及びCD3ζの配列は、National Center for Biotechnology Informationのウェ
ブサイトから得た。CARs中に含めるための各分子の部分に関するガイダンスは、Kochenderfer et al., Journal of Immunotherapy, 32(7):689-702(2009)から得た。
【0070】
完全ヒト47G4モノクローナル抗体(米国特許出願公報第2010/0104509号に記載)の配列を利用することにより、完全ヒト抗CD19 CARsを作製した。47G4抗体は、ヒトカッパ軽鎖
導入遺伝子とヒト重鎖導入染色体を保持するKM系統マウスにワクチン接種することにより作製された。47G4抗体の軽鎖及び重鎖可変領域の配列を、米国特許出願公報第2010/0104509号から得た。5’から3’へと以下の要素を含む47G4 scFvを設計した:CD8シグナル配列、47G4抗体軽鎖可変領域、アミノ酸配列GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号14)を含むリンカーペプチド(Cooper et al., Blood, 101(4):1637-1644(2003)を参照)、及び47G4
抗体重鎖可変領域。次いで、5’から3’へと以下の構成要素を含むCARをコードするDNA配列を設計した:上記47G4 scFv、ヒトCD8分子の細胞外領域の一部と膜貫通領域のすべて、及びヒトCD28分子とヒトCD3ζ分子の細胞質部分。このCARを47G4-CD828Zと表し、Invitrogen(Carlsbad, CA)により配列を合成した。
【0071】
標準的な方法を用いて、pRRLSIN.cPPT.MSCV.coDMF5.oPREレンチウイルスプラスミド(Yang et al., Journal of Immunotherapy, 33(6):648-658(2010)に記載)を改変して、プラスミドのcoDMF5部分を上記47G4-CD828Z CAR配列と置き換えた。得られたプラスミ
ドをLSIN-47G4-CD8CD28Zと示す。
【0072】
標準的な方法を用いて上記MSGV-FMC63-CD828Zプラスミドを改変することにより、MSGV-47G4-CD8BBZと表されるプラスミドを構築した。MSGV-47G4-CD8BBZプラスミドは、5’から3’へと以下を含むCAR(47G4-CD8BBZと表される)をコードする:上記47G4 scFv、ヒトCD8分子の細胞外領域の一部と膜貫通領域のすべて、アミノ酸配列RFSVVKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL(配列番号15)を含むヒト4-1BB(CD137)分子の一部、及びCD3ζ分子の細胞質部分。
【0073】
プラスミドMSGV-FMC63-CD828ZのCD28配列を、MSGV-47G4-CD8BBZに含まれるものと同じ4-1BB配列と置き換えることにより、FMC63-CD8BBZ CARと表されるCARをコードするプラス
ミド(MSGV-FMC63-CD8BBZと表される)を構築した。
【0074】
SP6 scFvをコードするDNA(Ochi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80(20):6351-6355(1983))を、MSGV-FMC63-CD828Zレトロウイルスベクターに、FMC63 scFvをコードするDNAを切り出した後にライゲーションして、MSGV-SP6-CD828Zを形成し、これは、ハプテン2, 4, 6-トリニトロベンゼンスルホン酸を認識し、いくつかの実験においてネガティブコントロールとして機能した。
【0075】
上記方法を用いて作製された抗CD19 CARsのすべてを表1に記載する。
【0076】
【0077】
本実施例の結果は、完全ヒトモノクローナル抗CD19抗体及びマウスモノクローナル抗CD19抗体に基づく抗CD19 CARsの作製を実証する。
【0078】
実施例2
本実施例は、本発明のCARsをコードする核酸配列を発現するT細胞の作製方法を実証す
る。
【0079】
上記CARsをコードする、複製能力のない(replication incompetent)ガンマレトロウ
イルス又はレンチウイルスを作製及び使用して、T細胞に形質導入した。複製能力のない
ガンマレトロウイルスを一時的に産生するために、293GPパッケージング細胞(Burns et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 90(17):8033-8037(1993))に、実施例1に記載のCARsをコードするプラスミドを、RD114エンベロープタンパク質をコードするプラスミ
ド(Porter et al., Human Gene Therapy, 7(8):913-919(1996))とともに、LIPOFE
CTAMINETM 2000(Life Technologies, Carlsbad, CA)を用いてトランスフェクトした。
トランスフェクトされた細胞を、抗生物質不含D10培地中、37℃、6~8時間インキュベー
トした。次いで、トランスフェクションのために使用される培地を、新鮮なD10培地と置
き換え、細胞をさらに36~48時間インキュベートした。トランスフェクションの間及びトランスフェクション後、293GP細胞は、ポリ-D-リジンコーティングディッシュ(BD Biosciences, San Jose, CA)上で培養した。レトロウイルスを含む上清をディッシュから取り除き、遠心分離して細胞デブリを除去した。上清を-80℃で保存した。
【0080】
実施例1に記載のCARsそれぞれをコードするレンチウイルスを含む上清を、Yang et al., Journal of Immunotherapy, 33(6):648-658(2010))に記載のプロトコルを用いて作製した。
【0081】
末梢血単核細胞(PBMC)を解凍し、T細胞培地で1回洗浄した。50 ng/mLの抗CD3モノク
ローナル抗体OKT3(Ortho, Bridgewater, NJ)及び300 IU/mLのIL-2を含むT細胞培地中、1×106細胞/mLの濃度でPBMCを懸濁した。この上清20 mLを75 cm2の培養フラスコ(Corning, Corning, NY)に添加した。フラスコを37℃、5%CO2にて直立で培養した(例えば、Kochenderfer et al., Journal of Immunotherapy, 32(7):689-702(2009)を参照)。
【0082】
T細胞のガンマレトロウイルス形質導入は、最初に、RETRONECTINTM(Takara/Clontech Laboratories, Mountain View, CA)をPBS中10 g/mLの濃度で溶解することにより実施し
、このRetroNectinTMのPBS溶液(2 mL)を非組織培養コーティング(nontissue-culturecoated)6ウェルプレート(BD Biosciences)の各ウェルに添加した。プレートを室温(RT)、2時間インキュベートした。インキュベーション後、RETRONECTINTM溶液をアスピレーションし、2%ウシ血清アルブミン(BSA)を加えたハンクス平衡塩溶液(Hanks’ balanced salt solution(HBSS))からなるブロッキング溶液(2 mL)を各RETRONECTINTMコー
ティングウェルに添加した。プレートを室温、30分間インキュベートした。ブロッキング溶液をアスピレーションし、HBSS+2.5%HEPESの溶液ですすいだ。ガンマレトロウイルス上清を急速解凍し、T細胞培地中、1:1希釈した。次いで、希釈上清(2 mL)を各RETRONECTINTMコーティングウェルに添加した。
【0083】
上清添加後、プレートを32℃、2時間、2000×gで遠心分離した。次いで、上清をウェルからアスピレーションし、OKT3及びIL-2とともに2日間培養した2×106T細胞を各ウェルに添加した。T細胞をレトロウイルスコーティングプレートに添加する際、それらを、300 IU/mLのIL-2を加えたT細胞培地中、1 mLあたり0.5×106細胞の濃度で懸濁した。T細胞を各ウェルに添加後、プレートを1000×gで10分間遠心分離し、37℃、一晩インキュベートし
た。24~30時間インキュベーション後、T細胞をプレートから取り除き、300 IU/mLのIL-2を加えた新鮮なT細胞培地中、1 mLあたり0.5×106細胞の濃度で懸濁し、37℃、5%CO2で
培養した。
【0084】
T細胞のレンチウイルス形質導入のために、硫酸プロタミンと300 IU/mLのIL-2を加えたレンチウイルス上清中に活性化PBMCを懸濁した。細胞を1200×g、1時間遠心分離した。次いで、細胞を37℃、3時間培養した。次に、上清をRPMI(Mediatech, Inc., Manassas, VA
)+10%ウシ胎児血清(Invitrogen, Carlsbad, CA)及びIL-2で1:1希釈した。希釈上清中で細胞を一晩培養し、次いで、それらを、IL-2とともに5%ヒトAB血清を加えたAIM V培地の培養液に戻した。
【0085】
形質導入されたT細胞上のFMC63ベースのCARsの発現を評価した。具体的には、形質導入されたT細胞をFACsバッファー(0.1%アジ化ナトリウムと0.4%BSAを加えたリン酸緩衝生理食塩水(PBS))で洗浄し、懸濁した。FMC63 scFvを検出するために、ビオチン標識ポ
リクローナルヤギ抗マウスF(ab)2抗体(抗Fab, Jackson Immunoresearch, West Grove,
PA)を添加した。細胞を4℃、25分間インキュベートし、1回洗浄した。細胞をFACsバッ
ファーに懸濁し、通常のマウスIgG(Invitrogen, Carlsbad, CA)でブロッキングした。
次いで、細胞をフィコエリトリン(PE)標識ストレプトアビジン(BD Pharmingen, San Diego, CA)、抗CD4、抗CD8及び抗CD3で染色した。フローサイトメトリーの取得はLSR II
フローサイトメーター(BD Biosciences)を用いて実施し、FlowJoソフトウェア(Treestar, Inc. Ashland, OR)を用いて分析を実施した。形質導入されたT細胞上の47G4ベース
のCARsの発現は、ビオチン標識ポリクローナルヤギ抗マウスF(ab)2抗体の代わりにビオチン標識プロテインL(GenScript, Piscataway, NJ)を用いた以外は、ほぼ同じ方法を用いて評価した。
【0086】
CAR発現(CAR+)T細胞のパーセンテージは、各実験において、抗Fab抗体又はプロテイ
ンLで染色されたCAR形質導入培養物中のT細胞のパーセンテージから、抗Fab又はプロテインLで染色された、同じドナー由来で同様に培養された非形質導入T細胞のパーセンテージを減算して算出した。
【0087】
培養7日目、マウスFMC63抗体由来のscFvを含むCARsを発現するT細胞のパーセンテージ
は以下のとおりであった:FMC63-28Z, 71%;FMC63-CD828Z, 88%;及びFMC63-CD8BBZ, 87%。
図1に示すように、FMC63-28Z CARを発現するT細胞は、IL-2含有培養物中、FMC63-CD828Z CAR又はFMC63-CD8BB CARを発現するT細胞と比較して、より短いin vitro生存を呈した。FMC63-CD828Z、FMC63-CD8BBZ及びFMC63-CD827Zをコードするガンマレトロウイルスが形質導入されたT細胞では高レベルのCAR発現も検出された。
【0088】
47G4抗体由来のscFvを含むCARsは、ヒトT細胞表面にて高レベルで発現した。特に、
図2A~2Dは、CD27細胞内シグナリングドメインを含む47G4ベースのCARsの発現を示し、一方
、
図3A及び3Bは、47G4-CD828Z CARの発現を示す。
【0089】
本実施例の結果は、T細胞が本発明の抗CD19 CARsを発現するよう操作可能であることを実証する。
【0090】
実施例3
本実施例は、CD19に対する本発明のCARsの特異性を決定するために使用される一連の実験を記載する。
【0091】
患者サンプル及び細胞株
National Cancer Institute(NCI)のSurgery Branchにおいて治験審査委員会承認プロトコルに登録したメラノーマ、慢性リンパ性白血病(CLL)又はリンパ腫患者から非白血
病性(non-leukemic)PBMCサンプルを得た。5人の異なる患者由来の細胞を使用した。ド
ナー1はCLLを有し、ドナー2は正常ドナーであり、ドナー3及びドナー5はともにリンパ腫
を有し、ドナー4はメラノーマを有した。10%DMSO(Sigma, St. Louis, MO)を加えた90
%FBS中にPBMCを凍結保存した。標的細胞として初代CLL細胞を使用した実験では、CLLを
有する患者由来の非操作(unmanipulated)のPBMCを使用した。以下のCD19発現不死化細
胞株を使用した:NALM-6(急性リンパ性白血病、DSMZ, Braunschweig, Germanyから)及
びCD19-K562。以下のCD19ネガティブ細胞株を使用した:A549(肺癌、ATCCから)、CCRF-CEM(T細胞白血病、ATCCから)、MDA231(乳癌、ATCCから)及びTC71(ユーイング肉腫、Dr. M. Tsokos, National Cancer Institute, Bethesda, MDから提供)。すべての細胞株はR10培地中で維持した。アッセイにおける標的としてCLL PBMCを使用する場合、アッセ
イ前12~18時間、細胞をR10培地中で培養した。
【0092】
インターフェロン及びTNFの酵素結合免疫吸着アッセイ(Enzyme-linked Immunosorbent Assays(ELISA))
臨床試験において、CAR FMC63-28Zを発現するT細胞注入を受けた患者における低血圧及び他の毒性の発生により、本発明のCARsを発現するT細胞によるTNF産生とFMC63-28Zを発
現するT細胞によるTNF産生との比較が促された。
【0093】
標的細胞をIL-2不含T細胞培地で洗浄し、1 mLあたり1×106細胞で懸濁した。各標的細
胞タイプのうち100,000標的細胞を、96ウェル丸底プレート(Corning, Tewksbury, MA)
の2ウェルそれぞれに添加した。T細胞単独を含有するウェルも調製した。プレートを37℃、18~20時間インキュベートした。インキュベーション後、標準的な方法を用いて、IFN
γ又はTNF ELISAアッセイを実施した(Pierce, Rockford, IL)。いくつかの実験では、TNFレベルを、所与のCARを発現する一晩培養物中のT細胞のパーセンテージで除することにより、TNF ELISAの結果を正規化した。CAR発現は、実施例2に記載するように決定した。
【0094】
細胞表面CAR発現について正規化した場合、
図4A及び4Bに示すように、FMC63-28Zを発現するT細胞は、FMC-CD828Z CAR及びFMC63-CD8BBZ CARよりも多くのTNFを一貫して産生した。FMC63-28Z CARとFMC63-CD828Z CARとの唯一の違いは、FMC63-28ZのヒトCD28細胞外及び膜貫通構成要素を、FMC63-CD828ZではヒトCD8タンパク質由来の細胞外及び膜貫通構成要
素と置き換えたことである。T細胞の持続性及び炎症性サイトカイン産生におけるFMC63-28ZとFMC63-CD828Zとの顕著な相違により、その後のCAR設計におけるCD8細胞外スペーサー及び膜貫通構成要素の使用が導かれた。
【0095】
表2及び3(単位はすべてpg/mL IFNγである)に示すように、抗CD19 CARsが形質導入されたT細胞は、それらをCD19発現細胞株CD19-K562とともに一晩培養した場合、多量のIFN
γを産生したが、ネガティブコントロール細胞株とともに培養した場合には、CARが形質
導入されたT細胞は、バックグラウンドレベルのIFNγしか産生しなかった。47G4-CD828Z CARについてのIFNγ ELSIAの結果を
図5に示す。
【0096】
【0097】
【0098】
高バックグラウンドのIFNγ分泌が、4-1BB部分を含むCARsで一貫して観察された。FMC63-CD827Z CARが形質導入されたT細胞は、CD19特異的な様式でIFNγを産生した。FMC63-CD
827Z細胞を、CD19ネガティブであるNGFR-K562及びCCRF-CEM細胞とともに培養した場合に
は、はるかに低いレベルのIFNγが誘導された。FMC63-CD827Zが形質導入されたT細胞はまた、抗原特異的な様式でTNFを産生した。
【0099】
CD107aアッセイ
試験される各T細胞培養物について、2又は3個の別個のチューブを調製した。1つのチューブはCD19-K562細胞を含み、1つのチューブは非操作の初代CLL細胞を含み、もう一方の
チューブはNGFR-K562細胞を含んだ。いくつかの実験では、CD19-K562チューブを除いた。すべてのチューブは、上記抗CD19 CARsが形質導入されたT細胞、1 mLのAIM VTM培地(Life Technologies, Carlsbad, CA)+5%ヒト血清、滴定濃度(titrated concentration)
の抗CD107a抗体(eBioscience, Inc., San Diego, CA;clone eBioH4A3)、及び1 μLのGolgi Stop(BD Biosciences, Franklin Lakes, NJ)を含んだ。すべてのチューブを37℃
、4時間インキュベートし、次いで、CD3、CD4及びCD8の発現について染色した。
【0100】
CARs FMC63-CD828Z、FMC63-CD827Z、FMC63-CD8BBZ、47G4-CD827Z、47G4-CD82827Z、47G4-CD827BBZ又は47G4-CD8BBZを発現する、異なる対象由来のT細胞は、CD19発現標的細胞での刺激に特異的に反応してCD107aを上方制御しており、47G4-CD827Z、47G4-CD82827Z、47G4-CD827BBZ CARsについてのCD107aアッセイの結果を
図6A~6Dに示す。これは、パーフォリン媒介性細胞傷害の必要条件である、CD19特異的なT細胞脱顆粒の発生を示す(例えば
、Rubio et al., Nature Medicine, 9(11):1377-1382(2003)を参照)。
【0101】
増殖アッセイ
抗CD19 CARsが形質導入されたT細胞が、CD19発現標的細胞で刺激された場合に増殖する能力を評価した。具体的には、0.5×106個の放射線照射(irradiated)CD19-K562細胞、
又は0.5×106個の放射線照射NGFR-K562細胞を、抗CD19 CARが形質導入された0.75×106個の全T細胞と共培養した。T細胞をカルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)(Life Technologies, Carlsbad, CA)で、Mannering et al., J. Immunological Methods, 283(1-2):173-183(2003)に記載されるように標識した。共培養に用いた培地は、AIM VTM培地(Life Technologies, Carlsbad, CA)+5%ヒトAB血清
であった。IL-2は培地に添加しなかった。開始から4日後、死細胞を排除するためにトリ
パンブルーを用いて、各共培養物中の生細胞を計数し、実施例2に記載するようにフロー
サイトメトリーを実施した。
【0102】
図7A~7Cに示すように、CARs FMC63-CD8BBZ、FMC63-CD828Z及び47G4-CD8BBZを発現するT細胞はすべて、ネガティブコントロールNGFR-K562細胞と培養した場合よりもCD19-K562
細胞と培養した場合に、CFSEの大幅な希釈を呈した。これらの結果は、抗CD19 CARsが形
質導入されたT細胞が、CD19発現標的細胞で刺激された場合に特異的に増殖したことを示
す。
【0103】
本実施例の結果は、本発明のCARsを発現するT細胞が、CD19特異的なサイトカイン産生
、脱顆粒及び増殖を呈することを実証する。
【0104】
実施例4
本実施例は、本発明の抗CD19 CARを発現するT細胞が、慢性リンパ性白血病(CLL)細胞を破壊し得ることを実証する。
【0105】
本発明のFMC63-CD828Z CARが形質導入されたT細胞が、CLLを有する患者由来のCD19発現非操作PBMCを破壊できるかどうかを決定するために、細胞傷害性アッセイを実施した。具体的には、標的細胞の細胞傷害性を、例えば、Kochenderfer et al., J. Immunotherapy,
32(7):689-702(2009)及びHermans et al., J. Immunological Methods, 285(1)
:25-40(2004)などに記載のアッセイを用いて、ネガティブコントロールCCRF-CEM細胞
の生存に対してCD19発現標的細胞(すなわち、CLL PBMC)の生存を比較することにより測定した。
【0106】
CCRF-CEM細胞をR10培地中、1.5×106細胞/mLの濃度で懸濁し、蛍光色素5-(及び-6)-
(((4-クロロメチル)ベンゾイル)アミノ)テトラメチルローダミン(CMTMR)(Life Technologies, Carlsbad, CA)を5 Mの濃度で添加した。細胞を混合し、次いで、37℃、30分間インキュベートした。次いで、細胞を細胞傷害性培地で洗浄し、懸濁して、37℃、60分間インキュベートした。次いで、細胞を細胞傷害性培地で2回洗浄し、懸濁した。CLL PBMCをPBS+0.1%BSA中、1×106細胞/mLで懸濁した。蛍光色素カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)(Life Technologies, Carlsbad, CA)
をこの細胞懸濁液に1 Mの濃度で添加した。細胞を37℃、10分間インキュベートした。イ
ンキュベーション後、細胞懸濁液の量と同量のFBSを添加することによりラベリング反応
を停止させ、細胞を室温、2分間インキュベートした。次いで、細胞を細胞傷害性培地で
洗浄し、懸濁した。
【0107】
およそ50,000個のCD19発現CLL PBMC及び50,000個のCCRF-CEM細胞を、様々な数のCAR形
質導入T細胞とともに同一チューブ中で合わせた。すべての実験において、FMC63-CD828Z CARが形質導入されたエフェクターT細胞の細胞傷害性を、SP6-28ZコントロールCARが形質導入されたか又は形質導入されていない、同一対象由来のネガティブコントロールエフェクターT細胞の細胞傷害性と比較した。共培養物は、滅菌5 mLのテストチューブ(BD Biosciences, Franklin Lakes, NJ)中、以下のT細胞:標的細胞の比率で2連にて構築した:20:1、6.7:1、2.2、及び0.7:1。培養物を37℃、4時間インキュベートした。インキュベーション直後に、7-アミノ-アクチノマイシンD(7AAD;BD Biosciences, Franklin Lakes, NJ)を製造者により推奨されるように添加し、フローサイトメトリーの取得をBD FacsCanto
II(BD Biosciences)を用いて実施した。FlowJo Software(Treestar, Inc. Ashland, OR)を用いて分析を実施した。分析は、7AADネガティブ(生存)細胞に対してゲーティングされ、生存CLL標的細胞と生存CCRF-CEMネガティブコントロール細胞のパーセンテージ
を、各T細胞+標的細胞培養物について決定した。
【0108】
各培養物について、生存CLL PBMCの割合を生存CCRF-CEMネガティブコントロール細胞の割合で除することにより、CLL PBMC生存率を決定した。各T細胞プラス標的細胞培養物に
おけるCLL PBMC生存率を、いずれのエフェクターT細胞も含まずCLL標的細胞及びCCRF-CEMネガティブコントロール細胞のみを含むチューブ中のCLL標的細胞の割合:CCRF-CEMネガティブコントロール細胞の割合の比率で除することにより、補正されたCLL PBMC生存率を算出した。この補正は、出発細胞数のばらつき及び自然標的細胞死を勘定に入れるために必要であった。細胞傷害性は、CLL PBMCの細胞傷害率=100 - 補正されたCLL PBMC生存率として算出された。すべてのエフェクター:ターゲット比について、細胞傷害性は2連で決定し、結果を平均化した。
【0109】
細胞傷害性アッセイの結果を
図8に示し、これは、本発明の抗CD19 CARが、悪性B細胞を破壊する方法で使用され得ることを実証する。
【0110】
実施例5
本実施例は、本発明の抗CD19 CARを発現するT細胞が、動物モデルにおいて、悪性B細胞腫瘍増殖を減少させ得ることを実証する。
【0111】
免疫不全NSGマウスに400万個のCD19+ NALM6腫瘍細胞を皮下注射した。6日後、触知可能(palpable)な腫瘍が形成された後、MSGV-FMC63-28Z CARベクター(Kochenderfer et al., Journal of Immunotherapy, 32(7):689-702(2009)に記載)又はLSIN-47G4-CD8CD
28Z CARベクター(実施例1に記載)のいずれかが形質導入されているヒトT細胞を単回静
注することによりマウスを処置した。3日ごとに腫瘍を測定し、未処置マウスにおける腫
瘍と比較した。
【0112】
図9に示す本実施例の結果は、FMC63-28Z CAR又は47G4-CD8CD28Z CARのいずれかを発現
するT細胞が、処置マウスにおいて、腫瘍サイズを顕著に減少させたことを示す。
【0113】
刊行物、特許出願及び特許を含む、本明細書に引用した全ての参考文献は、それぞれの参考文献が参照によって組み込まれることが個々に且つ具体的に示され、その全体が本明細書に記載されているのと同程度まで、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0114】
本発明の説明に関して(特に、以下の特許請求の範囲に関して)、用語「a」及び「an
」及び「the」及び「少なくとも1つ(at least one)」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書に特記がないか文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈すべきである。1つ以上の事項の列挙の後での用語「少なくとも1つ」の使用(例えば、「A及びBの少なくとも1つ」)は、本明細書に特記がないか文脈と明らかに矛
盾しない限り、列挙した事項から選択される1つの事項(A又はB)、又は列挙した事項の
うち2つ以上の任意の組み合わせ(A及びB)を意味すると解釈すべきである。用語「含む
(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」は、特記のない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「~を含むが、それら
に限定されない」を意味する)と解釈すべきである。本明細書中の値の範囲の記述は、本明細書に特記のない限り、その範囲内に入る各個別の値に個々に言及する省略方法として働くことのみを意図しており、各個別の値は、それが本明細書に個々に記述されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に特記がないか文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施できる。本明細書で提供される任意の及び全ての例又は例示的用語(例えば、「など(such as)」)の使用は
、本発明の理解をより容易にすることのみを意図しており、特段特許請求されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書の全ての用語は、特許請求されていない任意の要素を本発明の実施に必須のものとして示していると解釈すべきではない。
【0115】
発明を実施するために本発明者らが知る最良の形態を含む、本発明の好ましい実施態様が本明細書に記載される。これらの好ましい実施態様のバリエーションは、上述の説明を読めば当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者がかかるバリエーションを適宜使用することを予期しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されたのとは異なる方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法によって許容されるとおり、本明細書に添付した特許請求の範囲に記載される主題の全ての改変及び等価物を含む。さらに、その全ての可能なバリエーションでの上記要素の任意の組み合わせが、本明細書に特記がないか文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。
【配列表】