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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】船舶用エンジンアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/00 20060101AFI20240509BHJP
   B63H 20/24 20060101ALI20240509BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20240509BHJP
【FI】
F02B37/00 301H
B63H20/24 100
F01N13/08 Z
F02B37/00 301G
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021515610
(86)(22)【出願日】2019-09-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 GB2019052587
(87)【国際公開番号】W WO2020058678
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】1815311.4
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519042375
【氏名又は名称】コックス パワートレイン リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】マーティン セルウェイ
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-037833(JP,A)
【文献】実開平02-087931(JP,U)
【文献】米国特許第07806110(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/00
B63H 20/24
F01N 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶を推進するための船舶用エンジンアセンブリにおいて、前記船舶用エンジンアセンブリは、
推進装置を駆動するように構成された内燃機関と、
タービン出口を有するタービン部を備えるターボチャージャと、
前記ターボチャージャを支持するための支持構造と、
前記タービン出口に連結されたターボチャージャの排気導管であって、使用時において前記内燃機関と実質的に同じ高さ又は前記内燃機関より低い位置に位置決めされている排気導管出口を備える、ターボチャージャの排気導管と、
前記船舶用エンジンアセンブリの脚部で形成されている排気システムであって、前記ターボチャージャの排気導管出口に連結されている排気システム入口を形成している排気システムとを備え、
前記ターボチャージャの排気導管は、剛性材料から形成されており、かつ、前記ターボチャージャの排気導管を前記排気システム入口に堅固に装着するように、前記脚部で形成されている前記排気システム入口に連結されており又は前記内燃機関と前記脚部の間に設けられたアダプタ部材に連結されており、前記ターボチャージャの排気導管は、前記船舶用エンジンアセンブリ内の前記ターボチャージャに対する主たる支持体として作用し、前記脚部で形成されている前記排気システム入口前記ターボチャージャを支持するための前記支持構造の機能を提供する、船舶用エンジンアセンブリ。
【請求項2】
前記ターボチャージャの排気導管は、前記ターボチャージャの前記船舶用エンジンアセンブリへの任意の他の接続部よりも大きな剛性を有する、請求項1に記載の船舶用エンジンアセンブリ。
【請求項3】
前記ターボチャージャからのいくつかの機械力のうちの多くは、前記ターボチャージャの前記船舶用エンジンアセンブリへの任意の他の接続部よりも、前記ターボチャージャの排気導管を通して相互作用される、請求項1又は2に記載の船舶用エンジンアセンブリ。
【請求項4】
前記ターボチャージャからのいくつかの機械力の実質的に全てが、前記ターボチャージャの排気導管を通して相互作用される、請求項1~3のいずれか一項に記載の船舶用エンジンアセンブリ。
【請求項5】
前記ターボチャージャの排気導管は、金属材料から形成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の船舶用エンジンアセンブリ。
【請求項6】
前記ターボチャージャの排気導管は、前記内燃機関と前記脚部の間に設けられているアダプタ部材を介して前記排気システム入口に堅固に接続されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の船舶用エンジンアセンブリ。
【請求項7】
前記船舶用エンジンアセンブリが、前記内燃機関から前記ターボチャージャに排気ガスを送るように構成された排気マニホールドを更に備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の船舶用エンジンアセンブリ。
【請求項8】
前記ターボチャージャは、可撓性のある接続構成を介して前記排気マニホールドに接続されている、請求項7に記載の船舶用エンジンアセンブリ。
【請求項9】
前記ターボチャージャは、1つ以上の熱膨張継手を介して前記排気マニホールドに装着される、請求項8に記載の船舶用エンジンアセンブリ。
【請求項10】
前記ターボチャージャは、更に、前記ターボチャージャから前記内燃機関に圧縮空気を送るように構成された可撓性のあるホースを介して前記内燃機関に接続されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の船舶用エンジンアセンブリ。
【請求項11】
前記ターボチャージャの排気導管が、前記ターボチャージャの排気導管を冷却するための冷却装置を備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の船舶用エンジンアセンブリ。
【請求項12】
前記ターボチャージャの排気導管は、前記ターボチャージャの排気導管を冷却するために、そこを通る冷却剤流路を備える、請求項11に記載の船舶用エンジンアセンブリ。
【請求項13】
前記冷却剤流路は、排気流路の周囲を流れるように配置されている、請求項12に記載の船舶用エンジンアセンブリ。
【請求項14】
前記冷却剤流路は、前記排気流路を実質的に囲むように配置されている、請求項13に記載の船舶用エンジンアセンブリ。
【請求項15】
前記船舶用エンジンアセンブリが、使用時において前記内燃機関の下方に位置決めされるように配置された推進装置を更に備える、請求項1~14のいずれか一項に記載の船舶用エンジンアセンブリ。
【請求項16】
前記船舶用エンジンアセンブリが、前記内燃機関に連結されかつ前記推進装置を駆動するように構成されたクランクシャフトを更に備える、請求項15に記載の船舶用エンジンアセンブリ。
【請求項17】
前記クランクシャフトは、使用時において実質的に垂直であることが意図される、請求項16に記載の船舶用エンジンアセンブリ。
【請求項18】
前記内燃機関はディーゼルエンジンである、請求項1~17のいずれか一項に記載の船舶用エンジンアセンブリ。
【請求項19】
前記ターボチャージャの排気導管は、前記排気導管の剛性を高めるための支持支柱部を備える、請求項1~1のいずれか一項に記載の船舶用エンジンアセンブリ。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の船舶用エンジンアセンブリを備える船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用エンジンアセンブリに関する。特に、本発明は、ターボチャージャを装着するための新規な手段を有する船舶用エンジンアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶を推進するために、船舶の船尾部に船舶用エンジンアセンブリが取り付けられることが多い。エンジンアセンブリは、内燃機関と、推進装置と、排気システムとを備える。船舶用エンジンアセンブリでは、1つ以上のターボチャージャを有するディーゼル内燃機関を使用することができる。
【0003】
従来、各ターボチャージャの重量は、少なくともほとんどの部分で、ターボチャージャが装着されている排気マニホールドによって支えられている。船外機のターボチャージャは、典型的には、その重量の大部分を有し、移動又は振動による加速力は、主として、それが接続されている排気マニホールドを通して相互作用する。このような構成では、船舶の環境、特に船外機アセンブリの環境において、厳しい実装要件を満たすことは困難となり得る。更に、船舶用エンジンアセンブリにおける熱管理も課題を提起し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来技術に関連する1つ以上の課題を克服するか、又は少なくとも軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、船舶を推進するための船舶用エンジンアセンブリにおいて、船舶用エンジンアセンブリは、推進装置を駆動するように構成された内燃機関と、タービン出口を有するタービン部分を備えるターボチャージャと、タービン出口に連結されたターボチャージャの排気導管とを備え、ターボチャージャの排気導管は、船舶用エンジンアセンブリ内のターボチャージャに対する主たる支持体として作用する、船舶用エンジンアセンブリを提供する。
【0006】
ターボチャージャの排気導管は、ターボチャージャの船舶用エンジンアセンブリへの任意の他の接続部よりも大きな剛性を有しうる。
【0007】
ターボチャージャの排気導管は、ターボチャージャを支持構造に堅固に装着するように構成することができる。
【0008】
ターボチャージャからのいくつかの機械力のうちの多くは、ターボチャージャの船舶用エンジンアセンブリへの任意の他の接続部よりも、ターボチャージャの排気導管を通して相互作用されうる。
【0009】
ターボチャージャからのいくつかの機械力の実質的に全てが、ターボチャージャの排気導管を通して相互作用されうる。
【0010】
ターボチャージャの排気導管は、剛性材料、例えば、金属材料から形成されうる。
【0011】
船舶用エンジンアセンブリは、支持構造を更に備えうる。ターボチャージャは支持構造に接続されうる。
【0012】
船舶用エンジンアセンブリは、排気システム入口を有する排気システムを備えうる。ターボチャージャの排気導管は、排気システム入口に連結することができる。
【0013】
排気システムは、支持構造体の機能を提供しうる。
【0014】
ターボチャージャの排気導管は、アダプタ部材を介して支持構造に装着することができる。
【0015】
船舶用エンジンアセンブリは、内燃機関からターボチャージャに排気ガスを送るように構成された排気マニホールドを更に備えうる。
【0016】
ターボチャージャは、可撓性のある接続構成を介して排気マニホールドに接続されうる。
【0017】
ターボチャージャは、1つ以上の熱膨張継手を介して排気マニホールドに装着されうる。
【0018】
ターボチャージャは、タービン入口とタービン出口とを有するタービン部分を備えうる。ターボチャージャは、圧縮機入口と圧縮機出口とを有する圧縮機部分を備えうる。
【0019】
排気マニホールドは、内燃機関からタービン入口に排気ガスを送るように構成されうる。
【0020】
ターボチャージャの排気導管は、排気導管入口及び排気導管出口を有する排気流路を規定することができる。排気導管入口は、タービン出口に連結されうる。
【0021】
ターボチャージャは、更に、ターボチャージャから内燃機関に圧縮空気を送るように構成された可撓性のあるホースを介して内燃機関に接続されうる。
【0022】
ターボチャージャの排気導管は、ターボチャージャの排気導管を冷却するための冷却装置を備えうる。
【0023】
ターボチャージャの排気導管は、ターボチャージャの排気導管を冷却するために、そこを通る冷却剤流路を備えうる。
【0024】
また、冷却剤流路は、排気流路の周囲を流れるように配置されうる。
【0025】
冷却剤流路は、排気流路を実質的に囲むように配置されうる。
【0026】
船舶用エンジンアセンブリが、使用時において内燃機関の下方に位置決めされるように配置された推進装置をさらに備えうる。
【0027】
船舶用エンジンアセンブリが、内燃機関に連結されかつ推進装置を駆動するように構成されたクランクシャフトを更に備えうる。
【0028】
クランクシャフトは、使用時において実質的に垂直であることが意図されうる。
【0029】
内燃機関はディーゼルエンジンとしうる。
【0030】
排気導管出口は、使用時において内燃機関と実質的に同じ高さ又は内燃機関より低い位置に位置決めされうる。
【0031】
ターボチャージャの排気導管は、排気導管の剛性を高めるための支持支柱部を備えうる。
【0032】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様による船舶用エンジンアセンブリを備える船舶が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、船舶用エンジンアセンブリを備えた小型船舶の概略側面図である。
図2a図2aは、傾斜位置にある船舶用エンジンアセンブリの模式図を示す。
図2b図2bは、船舶用エンジンアセンブリの様々な位置調整された位置の一つと、水域内の船舶の対応する向きとを示す。
図2c図2cは、船舶用エンジンアセンブリの様々な位置調整された位置の一つと、水域内の船舶の対応する向きとを示す。
図2d図2dは、船舶用エンジンアセンブリの様々な位置調整された位置の一つと、水域内の船舶の対応する向きとを示す。
図3図3は一実施形態による船舶用エンジンアセンブリの概略断面を示す図である。
図4図4は、図3の船舶用エンジンアセンブリの一部の側面図を示す。
図5図5は、図4のターボチャージャの排気導管の斜視等角図を示す。
図6図6は、図5のターボチャージャの排気導管の別の斜視等角図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0035】
まず、図1を参照すると、船外機アセンブリの形態の、船舶用エンジンアセンブリ2を備えた船舶1の概略側面図が示されている。船舶1は、連絡船又はスキューバダイビングボートなどの、船舶用エンジンアセンブリと共に使用するのに適した任意の種類の船舶としうる。図1に示す船舶用エンジンアセンブリ2が船舶1の船尾部に取り付けられている。船舶用エンジンアセンブリ2は、通常、船舶1の船体内に受け入れられている燃料タンク3に接続されている。リザーバ又はタンク3からの燃料は、燃料ライン4を介して船舶用エンジンアセンブリ2に供給される。燃料ライン4は、燃料タンク3と船舶用エンジンアセンブリ2との間に配置された、1つ以上のフィルタと低圧ポンプと(水が船舶用エンジンアセンブリ2に入るのを防止するための)セパレータタンクを集合的に配置したものとしうる。
【0036】
以下に更に詳細に説明するように、船舶用エンジンアセンブリ2は、概ね、上側部分21と中間部分22と下側部分23の3つの部分に分割されている。中間部分22及び下側部分23は、しばしば、集合的に脚部として知られ、この脚部は排気システムを収容する。プロペラ8は、船舶用エンジンアセンブリ2のギアボックスとしても知られる、下側部分23において、プロペラシャフト9上に回転可能に配置されている。当然のことながら、作動中、プロペラ8は、少なくとも部分的には水中に沈められており、船舶1を推進するために、様々な回転速度で作動させることができる。推進装置は、プロペラ8の形態で、使用時に内燃機関の下方に位置決めされるように配置されている。
【0037】
典型的には、船舶用エンジンアセンブリ2は、ピボットピンによって、船舶1の船尾部に回動可能に接続されている。ピボットピンの回りの枢動により、操作者が、公知の方法で、水平軸線の回りで船舶用エンジンアセンブリ2を傾斜させて位置調整することができる。更に、当技術分野でよく知られているように、船舶用エンジンアセンブリ2は、船舶1の船尾部にも回動可能に装着されており、これにより、略直立軸線を中心に回動して、船舶1を操縦することができる。
【0038】
傾斜とは、船舶用エンジンアセンブリ2全体が完全に水中から出て上昇することができるように、船舶用エンジンアセンブリ2を十分に上昇させる動きである。船舶用エンジンアセンブリ2を傾斜動作は、船舶用エンジンアセンブリ2の電源を切った状態又は中立状態で行う。しかしながら、いくつかの例では、船舶用エンジンアセンブリ2は、浅い海域での動作を可能にするように、傾斜範囲での船舶用エンジンアセンブリ2の限定的な運転を可能にするように構成することができる。従って、船舶用エンジンアセンブリは、主に、脚部の長手軸線が実質的に垂直方向にある状態で作動させられる。船舶用エンジンアセンブリ2の脚部の長手軸線と実質的に平行である船舶用エンジンアセンブリ2のエンジンのクランクシャフトは、船舶用エンジンアセンブリ2の通常作動中では概ね垂直方向に配向されるであろうが、特定の作動条件下、特に浅い水中で船舶で作動される場合では、非垂直方向に配向されうる。エンジンアセンブリの脚部の長手軸線に実質的に平行に配向されている船舶用エンジンアセンブリ2のクランクシャフトは、垂直クランクシャフト配置とも呼ばれ得る。エンジンアセンブリの脚部の長手軸線に対して実質的に垂直に配向された船舶用エンジンアセンブリ2のクランクシャフトは、水平クランクシャフト配置と呼ぶこともできる。
【0039】
前述したように、適切に作動させるためには、船舶用エンジンアセンブリ2の下側部分23及びプロペラ8が水中に延びている必要がある。しかしながら、極めて浅い水域では、又は、トレーラから船舶を進水させる際、船舶用エンジンアセンブリ2の下側部分23はが下方に傾斜位置にある場合に、海底で引きずられたり、ボートが傾斜したりすることがある。船舶用エンジンアセンブリ2を傾斜させて図2aに示す位置のように上方に傾斜した位置に傾けることによって、下側部分23及びプロペラ8の損傷を防止する。
【0040】
対照的に、位置調整は、図2b~図2dの3つの例に示すように、船舶用エンジンアセンブリ2を完全に下降した位置から数度上方へ比較的小さな範囲にわたって移動させる機構である。位置調整は、対応する船舶1の燃費と加速と高速動作の最良の組合せを提供する方向にプロペラ8の推力を導くのに役立つであろう。
【0041】
船舶1が平面上にある場合、すなわち、船舶1の重量が、静水揚力ではなく、流体力学的揚力によって主に支持される場合、船首上げ構成は、抗力が比較的少なく、比較的大きな安定性及び効率をもたらす。これは、例えば図2bに示すように、ボート又は船舶1の中心線が約3度~5度で上向きである場合に一般的に当てはまる。
【0042】
傾斜が多すぎると、図2cに示す位置などのように、水中で船舶の船首が高すぎる状態になる。この形態では、船舶1の船体が水を押しており、その結果、より多くの空気抵抗が生じるので、性能と経済性は減少する。上方への傾斜が多すぎると、プロペラが通気し、性能がさらに低下することもある。さらに厳しい場合には、船舶1が水中で跳び、操作者と乗客がボード外に投げてしまう可能性がある。
【0043】
下方に傾斜すると、船舶1の船首が下がり、立ち上がりからの加速に役立つ。図2dに示すように、下方への傾斜が多すぎると、船舶1が水中を「かきわけ(plough)」、燃費が落ちて速度が上がりにくくなる。高速では、下方への傾斜により船舶1が不安定になることさえある。
【0044】
船舶用エンジンアセンブリ2は、前述の傾斜及び位置調整動作を行うための傾斜及び位置調整機構7を備える。この実施形態では、傾斜及び位置調整機構7は、電気制御システムを介して船舶用エンジンアセンブリ2を傾斜させて位置調整するように作動させることができる流体圧アクチュエータ13を備える。あるいは、図3に示す流体圧アクチュエータを使用するのではなく、操作者が手で船舶用エンジンアセンブリ2を回動させる、手動傾斜及び位置調整機構を提供することも実現可能である。
【0045】
図3を参照すると、一実施形態による船舶用エンジンアセンブリ2の概略断面が示されている。
【0046】
上述したように、船舶用エンジンアセンブリ2は、概ね3つの部分に分割されている。発動機としても知られる上側部分21は、船舶1に動力を供給するための内燃機関30を備える。カウリング31が内燃機関30の周囲に配置されている。
【0047】
上側部分21又は発動機に隣接して下方に延びている、中間部分22が設けられている。下側部分23は、中間部分22に隣接しして下方に延びており、中間部分22は、上側部分21を下側部分23に接続している。中間部分22は、内燃機関30とプロペラシャフト9の間に延びている駆動シャフト36を収容している。通気防止プレート11は、表面空気がプロペラ8の負圧側に吸い込まれるのを防止している。
【0048】
中間部分22及び下側部分23は、排気システム24を形成し、この排気システムは、内燃機関30から下側部分23に向かって排気を輸送するための排気ガス流路を規定している。
【0049】
排気システム24は、プロペラ8を収容することに加えて、1つ以上の排気ガス出口を規定している。例示的な実施形態において、下側部分23は、プロペラ駆動シャフト9に隣接する第1の排気出口32を提供する。プロペラ8が内燃機関30によって駆動されて船舶1を推進すると、プロペラ8によって生成された負圧により、中間部分22を通って第1の排気出口32に向かって排気ガスを吸引する。この構成により、水中における大部分の排気ガスを第1の排気出口32を通して排出する。
【0050】
追加の排気ガス出口を設けることもでき、出口は、水線の下及び上方の両方に設けられる。これにより、プロペラ排気出口32を通って排出されない残りの排気ガスを、船舶用エンジンアセンブリ2から排出することができる。特に、追加の排気ガス出口を設けることにより、プロペラ8によって生成される負圧がない場合(すなわち、プロペラ8がアイドル状態の場合)に、排気ガスを船舶用エンジンアセンブリ2からより容易に排出することができる。例示的な図示の実施形態では、第2の排気ガス出口33が中間部分22に設けられている。船舶が平面上にあるとき、図2bに例示されているように、第2の排気ガス出口33は、水線の上方に位置決めされるように配置される。
【0051】
ここで図4を参照すると、発動機21は、外部のカウリング31が取り外された状態で概略的に示されている。
【0052】
船舶用エンジンアセンブリ2は、空気を船舶用エンジンアセンブリ2の空気入口ダクト38内に引き込む空気入口を有し、空気は空気フィルタ40を介して入口ダクト38内に引き込まれる。船舶用エンジンアセンブリ2には、内燃機関30の出力を向上させるためのターボチャージャ42が設けられている。ターボチャージャは、タービン入口44及びタービン出口45を有するターボチャージャタービン部分43と、圧縮機入口47及び圧縮機出口48を有するターボチャージャ圧縮機部分46とから形成される。
【0053】
ターボチャージャ圧縮機入口47は、入口ダクト38の下流側端部に接続されており、空気をそこで圧縮できるようになっている。圧縮空気は、圧縮機出口48からダクト52を介して内燃機関30の入口50に流れる。図示の実施例では、ダクト52は、圧縮機出口48から内燃機関30に圧縮空気を送るように構成された可撓性のあるホースとして設けられている。このようにして、フィルタ処理された空気は、内燃機関30に入る前にその内部で圧縮されるようにターボチャージャ圧縮機46に流入することができる。
【0054】
内燃機関30での燃焼に続いて、内燃機関からの排気ガスは、内燃機関30からの排気ガスをターボチャージャタービン入口44に送るように構成された排気マニホールド54に通過する。このようにして、内燃機関30から排出される排気ガスは、空気が内燃機関30に入る前に空気を圧縮するように、ターボチャージャ42のタービンを駆動するために使用される。
【0055】
図示の実施形態では、ターボチャージャ42は、排気マニホールドダクト56を備える、可撓性のある接続構成を介して排気マニホールド54に装着されている。ダクト56は、ターボチャージャ42が熱膨張継手部58を介して排気マニホールド54に装着されるように、熱膨張継手部58を有している。
【0056】
ターボチャージャ42のタービン部分43を駆動した後、排気ガスは、ターボチャージャの排気導管60を介して排気システム24に流れ、1つ以上のガス出口に導かれるようになる。
【0057】
ターボチャージャの排気導管60は、そこを通る排気流路を規定する。ターボチャージャの排気導管60は、排気導管入口62及び排気導管出口64を有する。
【0058】
船舶用途において、ターボチャージャ42を支持する配置は、従来、排気マニホールドを介して達成されてきた。しかしながら、この実装・支持構成は、船舶用エンジンアセンブリの全体の実装に関しては、次善策であることが判明している。
【0059】
本実施形態では、ターボチャージャの排気導管60は、船舶用エンジンアセンブリ2内のターボチャージャ42に対する主たる支持体として作用する。ターボチャージャ42に十分な支持を提供するために、ターボチャージャの排気導管60は、船舶用エンジンアセンブリ2内の支持構造体に装着されている。すなわち、ターボチャージャの排気導管60は、ターボチャージャ42を支持構造体に堅固に装着するように構成されている。
【0060】
船舶用エンジンアセンブリ2の様々な異なる構成要素が、船舶用エンジンアセンブリ2の脚部の一部(例えば、中間部分22の一部)や、内燃機関30の1つ以上の構成要素や、内燃機関30と脚部との間に設けられたアダプタ部材などの、支持構造の機能を提供し得ることが理解されるであろう。
【0061】
排気システム24は、排気システム入口59(図3に図示)を画定し、ターボチャージャの排気導管60の出口64(図6に図示)は、排気システム入口59に連結される。このようにして、接続部は、ターボチャージャの排気導管60を排気システム24に堅固に装着する。図示されていないが、ターボチャージャの排気導管60は、内燃機関30と脚部との間に設けられたアダプタ部材を介して排気システム入口59に堅固に装着することができる。このようにして、支持構造を排気システム24の一部として(すなわちアダプタ部材を介して)設けることができる。
【0062】
ターボチャージャの排気導管60は、好ましくは、ターボチャージャ42の船舶用エンジンアセンブリ2への他のいかなる接続部よりも大きな剛性を有する。すなわち、ターボチャージャの排気導管は、エンジン入口ダクト52又は排気マニホールドダクト56よりも、入口ダクト38の1つ以上、好ましくは全てよりも高い剛性を有する。ターボチャージャの排気導管は、好ましくは、排気マニホールドダクト56よりも高い剛性を有する。
【0063】
この構成により、ターボチャージャ42からのいくつかの機械力の実質的に全てがターボチャージャの排気導管60を通して相互作用されうる。換言すれば、ターボチャージャ42からの力の多くは、ターボチャージャの1つ以上の他の接続部よりも(例えば、入口ダクト38、エンジン入口ダクト52及び/又は排気マニホールドダクト56よりも)、ターボチャージャの排気導管60を通して相互作用される。
【0064】
示されているように、ターボチャージャの排気導管60の配置は、使用時において、排気導管出口64が、内燃機関30と実質的に同じ高さに又はそれよりも低い位置に位置決めされるようになっている。
【0065】
最後に、図5及び図6を参照すると、ターボチャージャの排気導管60がより詳細に図示されている。
【0066】
ターボチャージャの排気導管60には、ターボチャージャの排気導管60をターボチャージャ42のタービン出口45に装着するための第1の装着構成66が設けられている。図示の実施形態では、ターボチャージャの排気導管60は、締結具69をそこを通して受け入れるための4つのボア66を備える。
【0067】
ターボチャージャの排気導管60には、ターボチャージャの排気導管60を排気システム24の排気システム入口59に装着するための第2の装着構成68が設けられている。より具体的には、装着構成68は、導管60と排気システム24との間に設けられたアダプタ部材に排気導管出口64を装着する。図示の実施形態では、ターボチャージャの排気導管60は、締結具69をそこを通して受け入れるための4つのボア68を備える。
【0068】
排気導管出口64に隣接して、ターボチャージャの排気導管60は、そこを通るボア70と、追加の冷却剤ダクトをボア70に固定するための第3の装着装置72とを備える。この追加の冷却装置は、船舶用エンジンアセンブリ2の追加の構成要素を冷却することができるように設けることができる。
【0069】
ターボチャージャ42に十分な支持を提供するために、ターボチャージャの排気導管60は、金属材料などの剛性材料から形成される。本実施形態では、ターボチャージャの排気導管60は、アルミニウムから形成されるが、任意の適切な剛性材料を使用することができる。
【0070】
ターボチャージャの排気導管60は、側面視でほぼL字形状となるように湾曲している。ターボチャージャの排気導管60の剛性を高めるために、支持支柱部74を設けうる。図示の実施形態では、支持支柱部74は、導管入口62の近傍から導管出口64の近傍まで延びている。代替的な構成では、支柱部は省略されうることが理解されるであろう。
【0071】
ターボチャージャの出口は、かなりの高温の構成要素である。すなわち、ターボチャージャの排気導管60は、著しい高温の構成要素である。船舶用エンジンアセンブリ2内の空間が限られているため、ターボチャージャの排気導管60はカウリングの近くを延び、カウリングの損傷を招く恐れがある。
【0072】
ターボチャージャの排気導管60には、更に、ターボチャージャの排気導管60を冷却するための冷却装置が設けられている。冷却装置は、ターボチャージャの排気導管60を通る冷却剤流路の形態で設けられ、冷却剤、例えば、水がそれに沿って流れうる。
【0073】
冷却剤流路は、導管入口62に近接する入口76と、導管出口64に近接する出口78とを画定する。より具体的には、冷却剤流路の出口78は、排気導管出口64の周囲に位置決めされて配置され得る、図示された4つの別々の出口などの複数の出口に分割されている。
【0074】
排気出口導管60は、冷却効率を向上させるように、冷却剤流路が排気流路の周囲に延びるように構成されている。別の方法では、冷却剤流路は、排気流路を実質的に取り囲むように(すなわち、冷却剤カバーを提供するように)配置される。
【0075】
実施形態において、冷却剤カバーは、ターボチャージャの排気導管60の内壁と外壁との間に空洞を形成することによって提供される。別の方法をとると、冷却剤カバーは、ターボチャージャの排気導管の外壁と排気流路の外壁との間に空洞を設けることによって形成される。
【0076】
排気出口導管60は、冷却剤流路入口76に近接する導管入口62を有するものとして説明されてきたが、代替の構成では、冷却装置が対向分流の流路を規定するように、冷却剤流路入口76と冷却剤出口78とを切り替えることができることは理解されよう。
【0077】
本発明は、1つ以上の好ましい実施形態を参照して上述されてきたが、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更又は修正を行うことができることが理解されるであろう。
また、本開示は以下の発明を含む。
第1の態様は、
船舶を推進するための船舶用エンジンアセンブリにおいて、前記船舶用エンジンアセンブリは、
推進装置を駆動するように構成された内燃機関と、
タービン出口を有するタービン部分を備えるターボチャージャと、
前記タービン出口に連結されたターボチャージャの排気導管とを備え、
前記ターボチャージャの排気導管は、前記船舶用エンジンアセンブリ内の前記ターボチャージャに対する主たる支持体として作用する、船舶用エンジンアセンブリである。
第2の態様は、
前記ターボチャージャの排気導管は、前記ターボチャージャの前記船舶用エンジンアセンブリへの任意の他の接続部よりも大きな剛性を有する、第1の態様におけるアセンブリである。
第3の態様は、
前記ターボチャージャからのいくつかの機械力のうちの多くは、前記ターボチャージャの前記船舶用エンジンアセンブリへの任意の他の接続部よりも、前記ターボチャージャの排気導管を通して相互作用される、第1の態様又は第2の態様におけるアセンブリである。
第4の態様は、
前記ターボチャージャからのいくつかの機械力の実質的に全てが、前記ターボチャージャの排気導管を通して相互作用される、第1の態様~第3の態様のいずれか1つにおけるアセンブリである。
第5の態様は、
前記ターボチャージャの排気導管は、剛性材料、例えば、金属材料から形成される、第1の態様~第4の態様のいずれか1つにおけるアセンブリである。
第6の態様は、
前記船舶用エンジンアセンブリが支持構造を更に備え、前記ターボチャージャが前記支持構造に接続されている、第1の態様~第5の態様のいずれか1つにおけるアセンブリである。
第7の態様は、
前記ターボチャージャの排気導管は、前記ターボチャージャを前記支持構造に堅固に接続するように構成されている、第6の態様におけるアセンブリである。
第8の態様は、
前記船舶用エンジンアセンブリが、排気システム入口を有する排気システムを備え、更に、前記ターボチャージャの排気導管が前記排気システム入口に連結されている、第1の態様~第7の態様のいずれか1つにおけるアセンブリである。
第9の態様は、
前記排気システムが前記支持構造の機能を提供する、第6の態様に係る第8の態様におけるアセンブリである。
第10の態様は、
前記ターボチャージャの排気導管は、アダプタ部材を介して前記支持構造に接続されている、第6の態様~第9の態様のいずれか1つにおけるアセンブリである。
第11の態様は、
前記船舶用エンジンアセンブリが、前記内燃機関から前記ターボチャージャに排気ガスを送るように構成された排気マニホールドを更に備える、第1の態様~第10の態様のいずれか1つにおけるアセンブリである。
第12の態様は、
前記ターボチャージャは、可撓性のある接続構成を介して前記排気マニホールドに接続されている、第11の態様におけるアセンブリである。
第13の態様は、
前記ターボチャージャは、1つ以上の熱膨張継手を介して前記排気マニホールドに装着される、第12の態様におけるアセンブリである。
第14の態様は、
前記ターボチャージャは、更に、前記ターボチャージャから前記内燃機関に圧縮空気を送るように構成された可撓性のあるホースを介して前記内燃機関に接続されている、第1の態様~第13の態様のいずれか1つにおけるアセンブリである。
第15の態様は、
前記ターボチャージャの排気導管が、前記ターボチャージャの排気導管を冷却するための冷却装置を備える、第1の態様~第14の態様のいずれか1つにおけるアセンブリである。
第16の態様は、
前記ターボチャージャの排気導管は、前記ターボチャージャの排気導管を冷却するために、そこを通る冷却剤流路を備える、第15の態様におけるアセンブリである。
第17の態様は、
前記冷却剤流路は、排気流路の周囲を流れるように配置されている、第16の態様におけるアセンブリである。
第18の態様は、
前記冷却剤流路は、前記排気流路を実質的に囲むように配置されている、第17の態様におけるアセンブリである。
第19の態様は、
前記船舶用エンジンアセンブリが、使用時において前記内燃機関の下方に位置決めされるように配置された推進装置を更に備える、第1の態様~第18の態様のいずれか1つにおけるアセンブリである。
第20の態様は、
前記船舶用エンジンアセンブリが、前記内燃機関に連結されかつ前記推進装置を駆動するように構成されたクランクシャフトを更に備える、第19の態様におけるアセンブリである。
第21の態様は、
前記クランクシャフトは、使用時において実質的に垂直であることが意図される、第20の態様におけるアセンブリである。
第22の態様は、
前記内燃機関はディーゼルエンジンである、第1の態様~第21の態様のいずれか1つにおけるアセンブリである。
第23の態様は、
前記排気導管出口は、使用時において前記内燃機関と実質的に同じ高さ又は前記内燃機関より低い位置に位置決めされている、第1の態様~第22の態様のいずれか1つにおけるアセンブリである。
第24の態様は、
前記ターボチャージャの排気導管は、前記排気導管の剛性を高めるための支持支柱部を備える、第1の態様~第23の態様のいずれか1つにおけるアセンブリである。
第25の態様は、
第1の態様~第24の態様のいずれか1つにおける船舶用エンジンアセンブリを備える船舶である。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4
図5
図6