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特許7485664機能性ジエンエラストマーおよびゴム組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】機能性ジエンエラストマーおよびゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/22 20060101AFI20240509BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240509BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240509BHJP
   C08L 19/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C08C19/22
C08K3/36
C08K3/04
C08L19/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021524173
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 FR2019052647
(87)【国際公開番号】W WO2020094993
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】1860355
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】モレソ エマ
(72)【発明者】
【氏名】マムリ カーヒナ
(72)【発明者】
【氏名】サリ アンヌ-フレデリーク
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-535807(JP,A)
【文献】特表2017-501240(JP,A)
【文献】特表2017-522422(JP,A)
【文献】特表2019-504148(JP,A)
【文献】特表2016-505697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/00 - 19/44
C08F 8/00 - 8/50
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖のイミダゾール官能基を、ジエンエラストマーの構成反復単位の最大で4%のモル含有率で有するジエンエラストマーであって、ジエンエラストマーが、エチレンとエチレン単位を含む1,3-ジエンとのコポリマーであり、エチレン単位が、ジエンエラストマーの構成反復単位の少なくとも50モル%に相当し、1,3-ジエンが1,3-ブタジエンまたはイソプレンであるジエンエラストマー。
【請求項2】
側鎖のイミダゾール官能基が式(III)を有する、請求項1に記載のジエンエラストマー。
【化1】
(式中、記号Y1、Y2、Y3およびY4は、同一であっても異なってもよく、水素原子または置換基であり、但し、記号の1つは、ジエンエラストマーのジエン単位への連結を表し、
3およびY4が、各々、水素原子であり、Y1が水素原子または炭素鎖である。)
【請求項3】
ジエン単位の一部が、炭素-炭素二重結合および式(IV)の基に対して反応性である基を含有する修飾剤をグラフトさせることにより修飾されたジエンエラストマーである、請求項1又は2に記載のジエンエラストマー。
【化2】
(式中、記号Z1、Z2、Z3およびZ4は、同一であっても異なってもよく、水素原子または置換基を表し、但し、記号Z1、Z2、Z3およびZ4の少なくとも1つは反応性基への連結を表し、
3およびZ4が、各々、水素原子を表し、Z1は、水素原子または炭素鎖である。)
【請求項4】
修飾剤が、1,3-双極性化合物であり、前記1,3-双極性化合物が芳香族ニトリルモノオキシドであり、前記芳香族ニトリルモノオキシドが、単一のニトリルオキシド双極子およびニトリルオキシド双極子により置換されているベンゼン環を含有する、請求項3に記載のジエンエラストマー。
【請求項5】
ベンゼン環が、双極子に対してオルト位で置換されている、請求項4に記載のジエンエラストマー。
【請求項6】
1,3-双極性化合物が式(V)の単位を含有する、請求項4又は5に記載のジエンエラストマー。
【化3】
(式中、同一であっても異なってもよい6個の記号R1~R6のうち4個が、水素原子または置換基であり、但し、第5の記号は式(IV)の基への連結を表わし、および第6の記号は双極子への直接連結を表す)。
【請求項7】
1、R3およびR5が、各々、炭化水素ベースの基を表す、請求項6に記載のジエンエラストマー。
【請求項8】
式(IV)の基への連結を表わす前記第5の記号が、式(IV)の基に炭素鎖を介して結合している、請求項6又は7に記載のジエンエラストマー。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のジエンエラストマー、および
カーボンブラック、シリカ、またはカーボンブラックとシリカとの混合物を含む強化充填材
を含むゴム組成物。
【請求項10】
請求項9に記載のゴム組成物を含むタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にタイヤで使用されることが意図される強化されたジエンゴム組成物に使用することができる、高度に飽和したジエンエラストマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ジエンエラストマーは、タイヤのためのゴム組成物において公知の方法で使用される。それらは、複数のゴム成分のアセンブリーを形成することが意図されるゴム組成物で、さらに特定して使用することもできる。そういうものとして、互いに重なり合ったゴム組成物の複数の層で形成されるゴムラミネートが挙げられる。複数のゴム成分のアセンブリーは、一般に未硬化の状態で実施され、それは、ゴム成分を構成するゴム組成物が、架橋される前に集成されることを意味する。特にゴム成分の流動を最小化することによりアセンブリーの寸法安定性を保証するために、ゴム組成物は、未硬化の状態で高い機械的強度を示さなければならない。
エチレンと1,3-ジエンのコポリマーなどの高度に飽和したジエンエラストマーは、それらを含有するゴム組成物、例えば、例えば、特許出願WO2014/114607およびWO2016/087248に記載されているようにトレッドまたはラミネートを構成するゴム組成物に、価値のある性質を付与する。
【発明の概要】
【0003】
本出願人は、驚くべきことに、高度に飽和したジエンエラストマーを含有するゴム組成物の未硬化の状態における機械的強度の性質が、さらに改善され得て、そのことは、特に複数のゴム成分のアセンブリーの製造におけるこれらのゴム組成物の使用を、さらにより有利にすることを発見した。この目標は、置換されたまたは非置換のイミダゾール官能基を有する高度に飽和したジエンエラストマーを使用することにより達成される。
したがって、本発明の第1の主題は、側鎖(pendent)のイミダゾール官能基を、ジエンエラストマーの構成反復単位の最大で4%のモル含有率で有するジエンエラストマーであって、ジエンエラストマーが、エチレン単位を含むエチレンと1,3-ジエンのコポリマーであり、エチレン単位が、ジエンエラストマーの構成反復単位の少なくとも50モル%に相当し、1,3-ジエンが1,3-ブタジエンまたはイソプレンである、ジエンエラストマーである。
本発明の第2の主題は、本発明によるジエンエラストマーおよびカーボンブラック、シリカまたはカーボンブラックとシリカの混合物を含有する強化充填材を含むゴム組成物である。
本発明はまた、本発明によるゴム組成物を含むタイヤに関する。
【発明を実施するための形態】
【0004】
I.本発明の詳細な説明
略記号「phr」は、エラストマーの(数種類のエラストマーが存在すればエラストマーの合計の)100部当たりの質量部を意味する。
さらに、「a~bの間」という表現により表示される値の任意の間隔は、「a」を超えて「b」未満の範囲の値を表し(すなわち、限界aおよびbは除外される)、一方それに対して「a~b」という表現により表示される任意の間隔の値は、「a」から「b」までに広がる範囲の値を意味する(すなわち、厳密な限界aおよびbを含む)。
説明で言及される化合物は、化石または生物に基づく起源のものであることもある。後者の場合に、それらは、部分的にまたは完全に、バイオマスから生ずるかまたはバイオマスから生ずる再生可能な出発原料から得ることができる。
本発明によるエラストマーは、エチレンと1,3-ジエンのコポリマーであり、1,3-ジエンは1,3-ブタジエンまたはイソプレンである。それは、少なくとも50モル%のエチレン単位を含むという必須の特徴を有し、モルパーセンテージは、ジエンエラストマーの構成反復単位の合計数に対するものである。周知の様式で、エチレン単位は、式-(CH2-CH2)-を有する。好ましくは、エチレン単位は、ジエンエラストマーの構成反復単位の少なくとも65モル%に相当する。さらにより優先的に、エチレン単位は、ジエンエラストマーの構成反復単位の70モル%超に相当する。
【0005】
本発明によるエラストマーは、ジエンエラストマーであるという別の必須の特徴も有する。用語「ジエンエラストマー」は、ジエン単位を含むエラストマーを意味すると理解される。用語「ジエン単位」は、炭素-炭素二重結合を含有して、重合反応によりエラストマーの成長鎖へのジエンモノマーの挿入から生ずる単位を意味すると理解される。適切な場合、本発明によるジエンエラストマーは、1,3-ブタジエンまたはイソプレンの挿入から生ずるジエン単位を含有する。周知の様式で、1,3-ブタジエンの重合は、式-(CH2-CH=CH-CH2)-の1,2-ブタジエン単位または式-(CH2-CH(CH=CH2))-の1,4-ブタジエン単位を生じ得る。やはり周知の様式で、イソプレンの重合は、式-(CH2-C(CH3)=CH-CH2)-の1,4-イソプレン単位または式-(CH2-CH(C(CH3)=CH2))-の3,4-イソプレン単位またはその他に式(CH2-C(CH3)(CH=CH2))-の1,2-イソプレン単位を生じ得る。本発明では、本発明によるジエンエラストマーは、典型的には、1,3-ブタジエンの挿入から生ずる1,4-ブタジエン単位として、好ましくはトランス-1,4-ブタジエン単位、または1,2-ブタジエン単位、またはその他に、イソプレンの挿入から生ずる単位として、1,4-イソプレン単位または3,4-イソプレン単位を含有する。1,3-ジエンは、好ましくは1,3-ブタジエンである。
【0006】
本発明の特定の一実施形態により、本発明によるエラストマーは、式(I)または(II)、好ましくは式(I)の単位を含有するエチレンと1,3-ブタジエンのコポリマーである。エチレンと1,3-ブタジエンのコポリマー中における6員の環状構造の存在は、例えば、文献、Macromolecules 2009、42(11)、3774-3779に記載されているように、エチレンおよび1,3-ブタジエンであるモノマーの非常に特別の挿入から生ずる。
【0007】
【化1】

本発明によるエラストマーは、それがエチレンと1,3-ブタジエンのコポリマーである場合、好ましくは、UA、UB、UC、UDおよびUE単位を、それぞれのモルパーセンテージm、n、o、pおよびqにより含有する。UA単位はエチレン単位であり、UBおよびUC単位は、それぞれ1,4-ブタジエン単位および1,2-ブタジエン単位であり、UDおよびUE単位は、それぞれ、式(I)および(II)のものである。UA、UB、UC、UDおよびUE単位は、エラストマー内にランダムに分布する。m、n、o、pおよびqの値は、m+n+o+p+qの合計が100に等しいことに基づいて計算され、但し、
・ m≧50
・ 0<o+p≦25
・ n+o>0
・ o+p+q≧10
・ q≧0
・ m、n、o、pおよびqは、0~100の範囲の数である
である。
mの値は、優先的に少なくとも65であり、より優先的に70を超える。
【0008】
m、n、o、pおよびqの値は、下に示した範囲に従って、より優先的に変化する。
・ m≧65、より好ましくはm>70
・ n+o+p+q≧15、より好ましくは20
・ 10≧p+q≧2
・ 1≧n/(o+p+q)
・ qがゼロでない場合、20≧p/q≧1
【0009】
本発明の別の特定の実施形態により、本発明によるエラストマーは、少なくとも70%が3,4配置であるイソプレン単位を含有するエチレンとイソプレンのコポリマーである。エチレンとイソプレンのコポリマーでは、イソプレン単位が優先的に、ジエンエラストマーの構成反復単位の少なくとも10モル%、特にジエンエラストマーの構成反復単位の10~35モル%、より優先的にジエンエラストマーの構成反復単位の10モル%~30モル%未満に相当する。
本発明の実施形態の任意の1つにより、エチレンと1,3-ジエンの共重合から生ずる単位は、本発明によるエラストマー中に好ましくはランダムに分布している。
【0010】
本発明によるエラストマーは、側鎖基を有するという他のはっきりした特徴も有する。側鎖基はイミダゾール官能基である。側鎖のイミダゾール官能基は、ジエンエラストマー中に、ジエンエラストマーの構成反復単位の最大で4モル%のモル含有率で存在する。好ましくは、側鎖のイミダゾール官能基のモル含有率は、ジエンエラストマーの構成反復単位の最大で3モル%である。好ましくは、側鎖のイミダゾール官能基のモル含有率は、ジエンエラストマーの構成反復単位の少なくとも0.05モル%である。より優先的に、側鎖のイミダゾール官能基のモル含有率は、ジエンエラストマーの構成反復単位の0.05モル%~3モル%に広がる範囲内で変化する。側鎖のイミダゾール官能基のモル含有率のこれらの優先的な範囲は、本発明の実施形態の任意の1つに適用することができる。本出願においては、ジエンエラストマーの構成反復単位は、典型的にはそれらが側鎖のイミダゾール官能基を有するように修飾された単位を含む、エチレンと1,3-ジエンの共重合から生ずる単位である。
好ましくは、側鎖のイミダゾール官能基は、式(III)
【0011】
【化2】
を有する。
式(III)中、同一であることもまたは異なることもある、記号Y1、Y2、Y3およびY4は、水素原子または置換基を表し、但し、記号Y1、Y2、Y3およびY4の1つはジエンエラストマーのジエン単位への連結を表す。好ましくは、単一の記号が、エラストマーのジエン単位への連結を表す。連結は、直接であり、その場合には、イミダゾール官能基の5員環は、ジエン単位に共有結合を介して結合しているか、または連結は間接であり、その場合には、1つの基がイミダゾール官能基の5員環を、ジエン単位に共有結合で結合している。本出願において、用語「基」は、鎖を形成するように共有結合で結合した原子の配列を意味すると理解される。
【0012】
3もY4もエラストマーのジエン単位への連結を表示しない場合、Y3およびY4は、それらが結合する2個の炭素原子と一緒になって、環、特に芳香環を形成することができる。
好ましくは、記号Y2は、エラストマーのジエン単位への連結を表す。
好ましくは、記号Y3およびY4は各々水素原子である。
好ましくは、記号Y1は、水素原子または優先的にアルキル基である炭素鎖を表す。本出願においては、炭素鎖は、1個または複数の炭素原子を含有する鎖を意味すると理解される。Y1は水素原子またはアルキル基であることが有利である。記号Y1がアルキル基を表す場合、アルキル基は、優先的に1~6個の炭素原子を含有するアルキル基、より優先的にはメチルである。
【0013】
非常に特に優先的な実施形態により、記号Y2は、エラストマーのジエン単位への連結を表示し、記号Y3およびY4は、各々水素原子であり、および記号Y1は、水素原子または炭素鎖、優先的にアルキル基、より優先的に1~6個の炭素原子を含有するアルキル基、さらにより優先的にはメチルを表す。
本発明の実施形態の任意の1つにより、側鎖のイミダゾール官能基は、好ましくは本発明によるエラストマー中にランダムに分布している。
本発明の特定の一実施形態により、本発明によるエラストマーは、エラストマーの各々が本発明によるものである限り、それらの微細構造およびそれらの巨視的構造により識別され得る数種のエラストマーの混合物であってもよい。
本発明の特に優先的な一実施形態により、本発明によるエラストマーは、ジエン単位の一部が、炭素-炭素二重結合および式(IV)
【0014】
【化3】
の基に対して反応性の基を含有する修飾剤をグラフトすることにより修飾されたジエンエラストマーであり、式(IV)の基においては、同一であっても異なってもよい記号Z1、Z2、Z3およびZ4が水素原子または置換基を表し、但し、記号Z1、Z2、Z3およびZ4の少なくとも1つは反応性基への連結を表す。好ましくは、単一の記号が、反応性基への連結を表す。
【0015】
3もZ4も反応性基への連結を表示しない場合、Z3およびZ4は、それらが結合している2個の炭素原子と一緒になって環、特に芳香族環を形成することができる。連結が直接であって、その場合に、イミダゾール官能基が反応性基に共有結合を介して結合しているか、または連結が間接であって、その場合に、1つの基が共有結合でイミダゾール官能基の5員の環を反応性基に結合する。
式(IV)において、記号Z2は、好ましくは、反応性基への連結を表す。
好ましくは、記号Z3およびZ4は、各々水素原子を表す。
好ましくは、記号Z1は、水素原子または優先的にアルキル基である炭素鎖を表す。有利には、Z1は、水素原子またはアルキル基である。記号Z1がアルキル基を表す場合、アルキル基は、優先的に1~6個の炭素原子を含有するアルキル基、より優先的にはメチルである。
より優先的に、記号Z2は、反応性基への連結を表示して、記号Z3およびZ4は、各々水素原子であり、および記号Z1は水素原子または炭素鎖を表し、炭素鎖は優先的には、アルキル基、より優先的には1~6個の炭素原子を含有するアルキル基、さらにより優先的にはメチルである。
【0016】
本発明によるエラストマーは、本発明のこの特に優先的な実施形態により、出発のジエンエラストマーを、修飾剤のグラフト反応により修飾することにより得られる修飾されたジエンエラストマーである。出発のジエンエラストマーは、典型的には、種々の公知の合成方法により、特にメタロセン錯体を含む触媒システムの存在下で得ることができるエチレンと1,3-ジエンのコポリマーである。この関係で、メタロセン錯体ベースの触媒システムを挙げることができて、その触媒システムは、文献EP1092731、EP1554321、EP1656400、EP1954705およびEP1957506に本出願人の名で記載されている。
本発明のこの特に優先的な実施形態により、本発明によるエラストマーは、ジエン単位および修飾剤をグラフトさせることにより修飾されたジエン単位の両方を含む。
【0017】
好ましくは、修飾剤は、1,3-双極性化合物である。用語「1,3-双極性化合物」は、IUPACにより与えられた定義によって理解される。それは、単一の双極子および式(IV)の基を含む特徴を有する。双極子は、炭素-炭素二重結合に関して修飾剤の反応性基の構成要素となる。双極子は、典型的には、ジエン単位の炭素-炭素二重結合と反応する。出発のジエンエラストマーを修飾剤と一緒にすると、出発のジエンエラストマーのジエン単位の一部の修飾をもたらす。本発明の要求のために使用される1,3-双極性化合物は、好ましくは、芳香族ニトリルモノオキシドである。用語「芳香族ニトリルモノオキシド化合物」は、単一のニトリルオキシド双極子およびニトリルオキシド双極子で置換されたベンゼン環を含有する芳香族化合物を意味すると理解され、それは、双極子の炭素原子が共有結合によりベンゼン環の炭素原子に直接結合していることを意味する。有利には、ベンゼン環は、双極子にオルト位で置換されている。
有利には、1,3-双極性化合物は式(V)の単位を含有し、式中、同一であっても異なってもよい6個の記号R1~R6のうち4個が水素原子または置換基であり、但し、第5の記号は式(IV)の基への連結を表し、第6の記号は双極子への直接連結を表す。
【0018】
【化4】
【0019】
式(V)において、R1およびR5の記号は、好ましくは両方とも水素原子以外であり、そのことは、1,3-双極性化合物のより大きい安定性、したがって1,3-双極性化合物のより容易な使用を与えることを可能にする。
式(V)において、記号R1、R3およびR5は、各々、好ましくは、炭化水素ベースの基、より優先的にはアルキル基、さらにより優先的にはメチルまたはエチル基を表す。
式(V)において、R2およびR4の記号は、各々優先的に水素原子である。
【0020】
式(V)においては、記号R1、R3およびR5は、各々好ましくは、炭化水素ベースの基、より優先的にはアルキル基、さらにより優先的にはメチルまたはエチル基を表し、記号R2およびR4は、各々優先的に水素原子である。ベンゼン環がこのように置換されて、1,3-双極性化合物の合成は、特に文献WO2015/059269に記載されたように、市販の前駆体、例えばメシチレンを使用する比較的容易な合成経路を使用して実施することができる。
式(V)において、第5の記号は、式(IV)の基に、好ましくは、優先的に1~6個の炭素原子、より優先的に1~3個の炭素原子を含有する炭素鎖を介して結合する。第5の記号が式(IV)の基に結合することを可能にする、優先的に1~6個の炭素原子、より優先的に1~3個の炭素原子を含有する炭素鎖は、有利には、アルカンジイル鎖、より良好にはメタンジイル鎖である。
本発明の実施形態の任意の1つにより、1,3-双極性化合物は、有利には、式(V-a)の化合物2,4,6-トリメチル-3-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)ベンゾニトリルオキシドまたは式(V-b)の化合物2,4,6-トリエチル-3-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)ベンゾニトリルオキシド、より有利には、式(V-a)の化合物である。
【0021】
【化5】
本発明によるジエンエラストマーは、ゴム組成物で、特にタイヤのために使用することができる。
本発明によるジエンエラストマーを含むゴム組成物の別の必須の特徴は、それが強化充填材を含むことである。
ゴム組成物は、それがタイヤを製造するために使用され得るゴム組成物を強化することができるために知られている「強化」充填材、例えば、カップリング剤が公知の様式で関連するカーボンブラックもしくはシリカ、または他に、ゴム組成物中に、等しくても等しくなくてもよい質量による量である、これらの2種のタイプの充填材の混合物を含有する。そのような強化充填材は、典型的には、ナノ粒子からなり、その(質量)平均サイズはマイクロメートル未満、一般に、500nm未満、最もしばしば20~200nmの間、特におよびより優先的には20~150nmの間である。強化充填材は、25~200phrの間の含有率で使用され得る。強化充填材の含有率は、ゴム組成物の予測される使用に応じて、当業者により調整される。
【0022】
適当なカーボンブラックは、全てのカーボンブラック、特にタイヤで従来使用されているカーボンブラック(タイヤグレードのカーボンブラックと称される)である。後者のなかで、より特に、100、200および300シリーズの強化カーボンブラック、または500、600または700シリーズのカーボンブラック(ASTM規格)、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347、N375、N550、N683およびN772のカーボンブラックなどが挙げられるであろう。これらのカーボンブラックは、単離された状態で、市販のままで、または任意の他の形態で、例えば、使用される幾種かのゴム添加剤のための支持体として使用することができる。
【0023】
使用されるシリカは、当業者に知られている任意の強化シリカ、特に450m2/g未満、好ましくは30~400m2/g、特に60~300m2/gの間のBET表面積およびさらにCTAB特異的表面積の両方を有する任意の沈殿したまたはヒュームドシリカであってもよい。高度に分散性の沈殿シリカ(「HDS」)として、例えば、Evonik社からのUltrasil 7000およびUltrasil 7005シリカ、Solvay社からのZeosil1165MP、1135MPおよび1115MPシリカ、PPG社からのHi-SilEZ150Gシリカ、Huber社からのZeopol8715、8745および8755シリカまたは特許出願WO03/016387に記載された高特異的表面積を有するシリカが挙げられるであろう。
【0024】
現在の記述で、BET特異的表面積は、公知の方法で、Journal of the American Chemical Society、Vol. 60、page309、 February 1938に記載されたBrunauer-Emmett-Tellerの方法を使用して、ガス吸着により決定され、より特定して、French Standard NF ISO 9277 of December 1996(多点(5点)体積法-ガス;窒素-脱ガス;1時間160℃-相対圧力p/p0範囲;0.05~0.17で)に従って決定される。CTAB特異的表面積は、French Standard NF T45-007 of November 1987(方法B)に従って決定される外部表面積である。
【0025】
シリカをジエンエラストマーに結合するために、シリカ(その粒子の表面)とジエンエラストマーの間における、化学的および/または物理的性質の満足な接続を提供することを意図して、周知の方法で、少なくとも二官能性のカップリング剤、特にシラン、(または結合剤)が使用される。特に少なくとも二官能性であるオルガノシランまたはポリオルガノシロキサンが使用される。使用は、特に、例えば、特許出願WO03/002648(またはUS2005/016651)およびWO03/002649(またはUS2005/016650)に記載されたような、それらの特異的構造に依存して「対称的」または「非対称の」と称されるシランポリスルフィドでなされる。
【0026】
特に適当なものは、下の定義には限定されないであるが、一般式(VI):
Z-A-Sx-A-Z (VI)
[式中、
- xは2~8(好ましくは2~5)の整数であり;
- A記号は、同一であっても異なってもよく、2価の炭化水素ベースのラジカル(好ましくは、C1-C18アルキレン基またはC6-C12アリーレン基、より特にC1-C10、特にC1-C4アルキレン、特にプロピレン)を表し;
- Z記号は、同一であっても異なってもよく、下の3つの式:
【0027】
【化6】
(式中、
- R1ラジカルは、置換されているかまたは非置換であり、互いに同一であるかまたは異なり、C1-C18アルキル、C5-C18シクロアルキルまたはC6-C18アリール基(好ましくはC1-C6アルキル、シクロヘキシルまたはフェニル基、特にC1-C4アルキル基、より特にメチルおよび/またはエチル)を表し;
- R2ラジカルは、置換されているかまたは非置換であり、互いに同一であるかまたは異なり、C1-C18アルコキシルまたはC5-C18シクロアルコキシル基(好ましくはC1-C8アルコキシルおよびC5-C8シクロアルコキシルから選択される基、さらにより好ましくはC1-C4アルコキシルから選択される基、特にメトキシルおよびエトキシル)を表す)
のうち1つに対応する]
に対応するシランポリスルフィドである。
【0028】
より特に、シランポリスルフィドの例として、ビス((C1-C4)アルコキシル(C1-C4)アルキルシリル(C1-C4)アルキル)ポリスルフィド(特にジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド)、例えば、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)またはビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドなどが挙げられるであろう。特に、これらの化合物のなかで、式[(C25O)3Si(CH2322のTESPTと略記されるビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、または式[(C25O)3Si(CH23S]2のTESPDと略記されるビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドが使用される。
【0029】
カップリング剤の含有率は、組成物中で使用されるシリカの含有率により当業者によって調整される。
本発明によるゴム組成物において、強化充填材は、カーボンブラックもしくはシリカまたはカーボンブラックとシリカの混合物を含む。
本発明の一実施形態により、シリカは、ゴム組成物の強化充填材の質量の50質量%超に相当する。この実施形態により、強化充填材は、カーボンブラックも含んでもよく、カーボンブラックは、好ましくは、20phr未満、より優先的には10phr未満(例えば、0.5~20phrの間、特に2~10phrの間)の含有率で使用される。指示された間隔内で、カーボンブラックの着色する性質(黒色の着色剤)およびUV-安定化の性質は有益であり、その上、強化無機充填材が原因となる有害に影響する典型的な性能品質がない。
別の本発明の別の実施形態により、カーボンブラックは、ゴム組成物の強化充填材の質量の50質量%超に相当する。
【0030】
ゴム組成物は、本発明による以外のエラストマー、特にゴム組成物中で従来使用されているジエンエラストマーを含有することもできる。ゴム組成物は、50phrを超えて、より優先的に80phrを超えて、本発明の実施形態の任意の1つにより規定された本発明によるエラストマーを優先的に含む。
ゴム組成物は、ゴム組成物中に存在するエラストマーを架橋させる目的のための架橋システムを含有することもできる。架橋システムは、加硫システムまたは例えば、タイヤを製造するために使用され得るゴム組成物中で従来使用されている1種または複数のペルオキシド化合物ベースであることができる。架橋システムは、優先的に加硫システムであり、すなわちイオウベースであり(またはイオウ供与体ベース)、第一級加硫促進剤ベースのシステムである。このベースの加硫システムに追加するものは、種々の公知の第二級の加硫促進剤または加硫活性剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸または等価の化合物、またはグアニジン誘導体(特にジフェニルグアニジン)、または、あとで記載されるような、最初の非製造段階および/または製造段階中に組み込まれる公知の加硫遅延剤でもある。イオウは、0.5~12phr、特に0.5~10phrの間の優先的な含有率で使用される。第一級の加硫促進剤は、0.5~10phrの間、より優先的に0.5~5.0phrの間の優先的な含有率で使用される。
【0031】
ゴム組成物は、それに加えて、タイヤのためのゴム組成物で使用されることが知られている他の添加剤、例えば、可塑剤、抗オゾン剤または抗酸化剤を含有することができる。
本発明によるゴム組成物は、典型的には、適当な混合機で、当業者に周知の2つの引き続く調製段階を使用して;130℃~200℃の間の最高温度までの高温における熱機械的作動または混練の第1段階(「非製造」段階)、それに続く、より低い温度まで、典型的には、110℃未満、例えば、40℃~100℃の間の機械的作動の第2段階(「製造」段階)で製造され、その仕上げ段階中の架橋システムが組み込まれる。
本発明によるゴム組成物は、未硬化の状態(架橋または加硫前)または硬化された状態(架橋または加硫後)のいずれかであることができて、タイヤの半完成物品で使用することができる。
本発明によるタイヤの必須の特徴は、それが、本発明によるゴム組成物を含むことである。
【0032】
まとめると、本発明は、以下の様式1~35の任意の1つの様式に従って、有利に実行される。
様式1:ジエンエラストマーの構成反復単位の最大で4%のモル含有率で側鎖のイミダゾール官能基を有するジエンエラストマーであって、そのジエンエラストマーは、エチレン単位を含むエチレンと1,3-ジエンとのコポリマーであり、エチレン単位はジエンエラストマーの構成反復単位の少なくとも50モル%に相当し、1,3-ジエンは1,3-ブタジエンまたはイソプレンであるジエンエラストマー。
様式2:エチレン単位がジエンエラストマーの構成反復単位の少なくとも65モル%に相当する、様式1によるジエンエラストマー。
様式3:エチレン単位が、ジエンエラストマーの構成反復単位の70モル%超に相当する、様式1または2によるジエンエラストマー。
様式4:1,3-ジエンが1,3-ブタジエンである、様式1~3の任意の1つの様式によるジエンエラストマー。
様式5:式(I)または(II)、好ましくは式(I)の単位を含有するエチレンと1,3-ブタジエンのコポリマーである、様式1~4の任意の1つの様式によるジエンエラストマー。
【0033】
【化7】

様式6:少なくとも70%が3,4配置であるイソプレン単位を含有するエチレンとイソプレンのコポリマーである、様式1~3の任意の1つの様式によるジエンエラストマー。
様式7:イソプレン単位が、ジエンエラストマーの構成反復単位の少なくとも10モル%に相当する、様式6によるジエンエラストマー。
様式8:エチレンと1,3-ジエンの共重合から生ずる単位が、本発明によるエラストマー中で好ましくはランダムに分布している、様式1~7の任意の1つの様式によるジエンエラストマー。
様式9:側鎖のイミダゾール官能基のモル含有率が、ジエンエラストマーの構成反復単位の最大で3%である、様式1~8の任意の1つの様式によるジエンエラストマー。
様式10:側鎖のイミダゾール官能基のモル含有率が、ジエンエラストマーの構成反復単位の少なくとも0.05モル%である、様式1~9の任意の1つの様式によるジエンエラストマー。
【0034】
様式11:側鎖のイミダゾール官能基が式(III)を有する、様式1~10の任意の1つの様式によるジエンエラストマー
【0035】
【化8】
(式中、記号Y1、Y2、Y3およびY4は、同一であっても異なってもよく、水素原子または置換基を表し、但し、記号の1つはジエンエラストマーのジエン単位への連結を表す)。
様式12:Y2がジエンエラストマーのジエン単位への連結を表す、様式11によるジエンエラストマー。
様式13:Y3およびY4が各々水素原子である、様式11または12によるジエンエラストマー。
様式14:Y1が、水素原子または優先的にアルキル基である炭素鎖である、様式11~13の任意の1つの様式によるジエンエラストマー。
【0036】
様式15:Y1により表されるアルキル基が1~6個の炭素原子を含有する、様式14によるジエンエラストマー。
様式16:Y1により表されるアルキル基がメチル基である、様式14または15によるジエンエラストマー。
様式17:ジエン単位の一部が、炭素-炭素二重結合および式(IV)の基に対して反応性である基を含有する修飾剤をグラフトさせることにより修飾されたジエンエラストマーである、様式1~16の任意の1つの様式によるジエンエラストマー
【0037】
【化9】
(式中、記号Z1、Z2、Z3およびZ4は、同一であっても異なってもよく、水素原子または置換基を表し、但し、記号Z1、Z2、Z3およびZ4の少なくとも1つは反応性基への連結を表す)。
様式18:Z2が反応性基への連結を表す、様式17によるジエンエラストマー。
様式19:Z3およびZ4が各々水素原子を表す、様式17および18のいずれか1つの様式によるジエンエラストマー。
様式20:Z1が水素原子または優先的にアルキル基である炭素鎖である、様式17~19の任意の1つの様式によるジエンエラストマー。
【0038】
様式21:アルキル基が1~6個の炭素原子を含有するZ1により表される、様式20によるジエンエラストマー。
様式22:Z1により表されるアルキル基がメチル基である、様式20および21の任意の1つの様式によるジエンエラストマー。
様式23:修飾剤が1,3-双極性化合物である、様式17~22の任意の1つの様式によるジエンエラストマー。
様式24:1,3-双極性化合物が、芳香族ニトリルモノオキシドであり、その芳香族化合物は単一のニトリルオキシド双極子およびニトリルオキシド双極子により置換されているベンゼン環を含有する、様式23によるジエンエラストマー。
【0039】
様式25:ベンゼン環が、双極子に対してオルト位で置換されている、様式24によるジエンエラストマー。
様式26:1,3-双極性化合物が式(V)の単位を含有する、様式23~25の任意の1つの様式によるジエンエラストマー
【0040】
【化10】
(式中、同一であっても異なってもよい6個の記号R1~R6のうち4個は、水素原子または置換基であり、但し、第5の記号は式(IV)の基への連結、および第6の記号は双極子への直接の連結を表す)。
様式27:R1およびR5が、両方とも、水素原子以外のものである、様式26によるジエンエラストマー。
様式28:R1、R3およびR5が、各々、炭化水素ベースの基、好ましくは、アルキル基、より優先的にメチルまたはエチル基を表す、様式26および27のいずれか1つの様式によるジエンエラストマー。
様式29:R2およびR4が、各々水素原子である、様式26~28の任意の1つの様式によるジエンエラストマー。
様式30:第5の記号が、式(IV)の基に炭素鎖、好ましくはアルカンジイル鎖、より優先的にはメタンジイル鎖を介して結合している、様式26~29の任意の1つの様式によるジエンエラストマー。
【0041】
様式31:様式1~30の任意の1つの様式に記載のジエンエラストマーおよびカーボンブラックもしくはシリカまたはカーボンブラックとシリカの混合物を含有する強化充填材を含むゴム組成物。
様式32:シリカが強化充填材の質量の50質量%超に相当する、様式31によるゴム組成物。
様式33:カーボンブラックが強化充填材の質量の50質量%超に相当する、様式31によるゴム組成物。
様式34:ゴム組成物が、架橋システム、好ましくは加硫システムも含む、様式31~33の任意の1つの様式によるゴム組成物。
様式35:様式31~34の任意の1つの様式に記載のゴム組成物を含むタイヤ。
本発明の上記の特徴およびその他も、非限定的な例証として示す、本発明の幾つかの実施例についての以下の記載を読むと、より明確に理解されるであろう。
【0042】
II.本発明の実施例
II.1 使用された測定および試験
1)非架橋試験片の応力-伸び曲線の取得
1a)非架橋ゴム組成物からなるスラブの調製
組成物をカレンダーに通す、そのロールは2.9mmの厚さのシートの形態になるように75℃である。このシートを、2枚のポリエステルシートの間で、10分間110℃で鋳型中において圧力下で成形して、次に鋳型から引き出して、最終的に開放空気中で冷却する。このようにして2.5mmの厚さのスラブを得る。
1b)得られたスラブの状態調節
調製時および引張り試験時の間、各スラブは、少なくとも5時間および8日を超えない持続時間の間、周囲雰囲気で貯蔵する。
1c)これらのスラブからの試験片の調製
次に、直ちに、各試験片を、スラブの形状からダンベルの形状に切り、このようにして鋳型から引き出すと、それは、厚さE=2.5mm、長さL=26mmおよび幅W=6mmのロッドにより互いに接続した2つの端部を有する。切断は、試験片の縦の方向Lがカレンダー方向に平行になるように実施する。
1d)引張り試験
少なくとも3個の同一の試験片を、実施される引張り試験の各々について同じ条件下で試験する。
【0043】
各引張り試験は、各試験片を一定速度で引っ張って、張力における変化をINSTRON 4501引張り試験機の移動する顎の変位の関数として記録することに存する。この機械は、力のセンサーおよびこの移動する顎の変位を測定する手段を備えている。各試験片は、その最も広い部分で2バールに等しい締め付け圧力P下に保たれる。
各引張り試験は、周囲温度で、空気状態を調節した実験室中23℃(±2℃)および50%(±10%)の湿度で実施する。移動する顎の変位の一定速度は100mm/分である。張力の変化および移動する顎の変位を、各試験中に記録する。
各試験片について、以下のパラメーターを計算する。
- 相対変形α(%)=100×D/L(Dはmmにおける移動する顎の変位であり、各試験中に機械のセンサーにより測定される。L=26mmは、「打ち抜き」により課せられた試験片の初期長である)、および
- 見かけの応力F/S0(MPa)、機械のセンサーにより測定される力(Nにおける)の、試験片の初期断面S0に対する比を表す(S0=W.E、mm2、W=6mmは「打ち抜き」により課せられた幅であり、E=2.5mmは、引張り前の試験片の厚さである)。
各相対変形度について、対応する応力の平均を、3個の同一の試験片について計算し、このようにして応力(3回測定の平均)-変形グラフを、試験された試験片の各々についてプロットした。ベースの対照を100として結果を示す。100を超える値は対照の値を超える値を示す。
【0044】
2)エラストマーの微細構造および官能基含有率の、核磁気共鳴(NMR)による決定
微細構造は1H NMRにより決定される。グラフトされたニトリルオキシド化合物のモル含有率もNMR分析により決定される。「ロック(lock)」シグナルを得る目的で、試料を重水素化されたテトラヒドロフランTHFに溶解する。スペクトルを、「5mm BBFO Z-grad CryoProbe」を備えた500MHzのBruker分光計で取得する。定量的1H NMR実験では、単純な30°パルス配列および各取得の間5秒の反復時間を使用する。2D NMR実験は、炭素およびプロトン原子のケミカルシフトによって、グラフトされた単位の性質を確認することを可能にした。
【0045】
II.2 エラストマーの調製
6種のエラストマーE1、E2、E3、E4、E5、およびE6を、下で示すように調製する。
エラストマーE1は、エチレン単位および式(I)の環状単位がコポリマーの構成反復単位の79.3モル%および7モル%をそれぞれ表すエチレンと1,3-ブタジエンのコポリマーであるジエンエラストマーである。ブタジエン単位は、それぞれ63%および37%の含有率で1,2および1,4形態にある。ジエンエラストマーE1には、イミダゾール官能基がない。それは本発明によらない。それは、メタロセン[Me2Si(Flu)2Nd(μ-BH42Li(THF)]および助触媒ブチルオクチルマグネシウムに基づく触媒システムの存在下で、以下の手順に従って調製される。
助触媒(0.36mmol/l)および次にメタロセン(0.07モル/l)を、メチルシクロヘキサンを含有する反応装置に加える。アルキル化時間は10分であり、反応温度は20℃である。次に、エチレンおよび1,3-ブタジエンを、反応装置に、それぞれ80%および20%のモル量で連続的に加える。重合を、80℃で8バールの圧力下に実施する。重合反応を、冷却、反応装置の脱ガスおよびエタノールの添加により停止させる。酸化防止剤をポリマー溶液に添加する。コポリマーを、オーブン中真空下で一定質量まで乾燥することにより回収する。
【0046】
エラストマーE2、E3およびE4は、1,3-双極性化合物2,4,6-トリメチル-3((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)ベンゾニトリルオキシドを、エラストマーE1に、以下の手順に従ってグラフトさせることにより調製する;混合機内で、ジエンエラストマーE1を2分間110℃で、1,3-双極性化合物と、以下の含有率で混練する;エラストマーE2については2.16phr(1H NMRにより決定されて、ポリマーE2のモノマー単位の100モル当たり0.2モルのグラフト修飾剤のモルグラフト度に対応する)、エラストマーE3について16.16phr(1H NMRにより決定されて、ポリマーE3のモノマー単位の100モル当たり1.5モルのグラフト修飾剤のモルグラフト度に対応する)およびエラストマーE4について14.47phr(1H NMRにより決定されて、ポリマーE4のモノマー単位の100モル当たり1.2モルのグラフト修飾剤のモルグラフト度に対応する)。エラストマーE2、E3およびE4は、本発明によるものである。
【0047】
エラストマーE5は、コポリマーの構成反復単位の73.3モル%のエチレンおよびコポリマーの構成反復単位の26.7モル%のイソプレンを含有するエチレンとイソプレンのコポリマーであるジエンエラストマーである。イソプレンは、3,4、1,2および1,4形態が以下の比率;3,4形態が75%、1,2形態が2%および1,4形態が23%で存在する。
エラストマーE5にはイミダゾール官能基がない。それは本発明によるものではない。それは、メタロセン[Me2Si(Flu)2Nd(μ-BH42Li(THF)]および触媒ブチルオクチルマグネシウムに基づく触媒システムの存在下で、以下の手順に従って調製される。
助触媒(0.18mmol/l)および次にメタロセン(0.06モル/l)を、メチルシクロヘキサンを含有する反応装置に加える。アルキル化時間は10分であり、反応温度は20℃である。次に、エチレンおよびイソプレンを、それぞれ65%および35%のモル量で反応装置に連続的に加える。重合を、80℃、8バールの圧力下で実施する。重合反応を、冷却、反応装置の脱ガスおよびエタノールの添加により停止させる。酸化防止剤をポリマー溶液に加える。コポリマーを、オーブン中真空下で一定質量まで乾燥することにより回収する。
【0048】
エラストマーE6は、以下の手順に従って1,3-双極性化合物2,4,6-トリメチル-3-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)ベンゾニトリルオキシドを、エラストマーE5にグラフトさせることにより調製する。混合機内で、ジエンエラストマーE5を、2分間110℃で1,3-双極性化合物と、13.98phrの含有率(1H NMRにより決定されて、ポリマーE6のモノマー単位の100モル当たり1.7モルのグラフト修飾剤のモルグラフト度に対応する)で混練する。エラストマーE6は本発明によるものである。
【0049】
II.3 ゴム組成物の調製
7通りのゴム組成物C1~C7を調製する。それらの調合を表1に示す。
ゴム組成物を製造するための手順は以下の通りである。ジエンエラストマーを混合機内に導入して(最終の充填度;およそ70体積%)、その初期の槽温度は、およそ110℃であり、続いて強化充填材、および加硫システムを除いて種々の他の成分も導入する。次に、熱機械的稼働(非製造段階)を1ステップで実施して、それは、160℃の最大「降下」温度に到達するまで、およそ5分~6分持続する。このようにして得られる混合物を回収して冷却し、次にイオウおよびスルフェンアミドタイプの促進剤を混合機(ホモフィニッシャー(homofinisher))で25℃で組み込み、全てを適当な時間(例えば、5~12分の間)混合する(製造段階)。
このようにして得られる組成物を、その後、それらの物理的または機械的性質を測定するために、ゴムのスラブ(2~3mmの範囲の厚さで)または薄いシートの形態でカレンダー処理する。
【0050】
ゴム組成物C2、C3、C5およびC7は、本発明によるジエンエラストマー、それぞれ、エラストマーE2、E3、E4およびE6を含有するので、本発明によるゴム組成物である。
強化充填材、それぞれシリカおよびカーボンブラックを含むゴム組成物C1およびC4は、エラストマーE1というイミダゾール官能基のないエチレンと1,3-ブタジエンのコポリマーを含有するので、対照ゴム組成物である。ジエンエラストマーE5を含有するゴム組成物C6も、エチレンとイソプレンのコポリマーの場合における対照ゴム組成物である。
【0051】
II.4 結果
組成物の変形および破断応力の値を、表2にまとめる。
エチレンと1,3-ブタジエンのコポリマーの場合に、ゴム組成物の未硬化の強化は、組成物C2およびC3については対照組成物C1と比較して、および組成物C5については対照組成物C4と比較して、非常に大きく改善される。事実、それらが架橋される前のゴム組成物の破断応力の値は、それらのそれぞれの対照と比較して非常に高い。
エチレンとイソプレンのコポリマーの場合にも、C7の組成物の未硬化の強化は、対照組成物C6と比較して改善される。
驚くべきことに、ジエンエラストマーにおける側鎖のイミダゾール官能基の存在は、それがエチレンと1,3-ブタジエンのコポリマーであってもまたはエチレンとイソプレンのコポリマーであっても、未硬化の強化、例えば、シリカまたはカーボンブラックで強化されたゴム組成物の未硬化の機械的性質を改善することを可能にすることが観察される。本発明によるゴム組成物の未硬化の強化におけるこの増強は、本発明によるエラストマーおよび組成物の使用を、複数のゴム成分のアセンブリーの製造において有利にする。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】