(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】パッシブエントリ/パッシブスタート(PEPS)の電力管理およびデータ帯域幅の改善
(51)【国際特許分類】
H04B 1/3822 20150101AFI20240509BHJP
B60R 25/24 20130101ALI20240509BHJP
H04W 4/38 20180101ALI20240509BHJP
H04W 84/10 20090101ALI20240509BHJP
【FI】
H04B1/3822
B60R25/24
H04W4/38
H04W84/10 110
(21)【出願番号】P 2021542213
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(86)【国際出願番号】 US2019060992
(87)【国際公開番号】W WO2020154013
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-10-19
(32)【優先日】2019-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507364997
【氏名又は名称】サイプレス セミコンダクター コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Cypress Semiconductor Corporation
【住所又は居所原語表記】198 Champion Court, San Jose, CA 95134, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】テッサ ロナン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクター シミレイスキー
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター ウィハルジャ
(72)【発明者】
【氏名】キラン ウルン
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/071674(WO,A1)
【文献】特開2018-199971(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0267131(US,A1)
【文献】特開2017-172202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/3822
B60R 25/24
H04W 4/38
H04W 84/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサデバイスであって、前記センサデバイスは、
複数のアンテナに結合されており、前記複数のアンテナを介して無線信号を受信し、前記複数のアンテナで受信される前記無線信号の位相および大きさを求めるためのプロセッサと、
マイクロコントローラユニット(MCU)から無線通信プロトコルを受信するための入出力部(I/O)であって、前記無線通信プロトコルは、スレーブデバイスと動作可能に無線通信するマスタデバイスに対応する入出力部(I/O)と、
を含み、
受信される前記無線信号は、前記マスタデバイスが前記スレーブデバイスと協調して無線通信している間、前記マスタデバイスから前記センサデバイスによって受信され、
受信される前記無線信号の位相および大きさは、前記センサデバイスに対する前記マスタデバイスの位置に対応
し、
受信される前記無線信号は、データパケットを含み、
前記プロセッサは、前記データパケットに対して巡回冗長検査(CRC)を実行するためのものである、
センサデバイス。
【請求項2】
前記I/Oは、前記マイクロコントローラユニットから前記無線通信プロトコルを受信するためのバスに結合されている、
請求項1記載のセンサデバイス。
【請求項3】
前記バスは、コントローラエリアネットワーク(CAN)バスである、
請求項2記載のセンサデバイス。
【請求項4】
前記I/Oは、前記MCU
に無線信号の位相および大きさ情報を
送信するためのものである、
請求項1記載のセンサデバイス。
【請求項5】
前記複数のアンテナの各々は、前記マスタデバイスから前記無線信号を受信するように構成されており、前記アンテナの各々での受信信号間の位相および大きさの差は、各アンテナに対する前記マスタデバイスの位置に対応する、
請求項1記載のセンサデバイス。
【請求項6】
前記無線信号は、パッシブエントリ/パッシブスタート(PEPS)自動車アプリケーションの一部として受信されている、
請求項1記載のセンサデバイス。
【請求項7】
前記無線通信プロトコルは、BluetoothLowEnergy(BLE)である、
請求項1記載のセンサデバイス。
【請求項8】
システムであって、前記システムは、
通信ハブデバイスと、
バスと、
前記通信ハブデバイスおよび前記バスに結合されたマイクロコントローラユニット(MCU)と、
前記バスに結合された複数のセンサと、
を含み、
前記通信ハブデバイスは、無線通信プロトコルを介してマスタデバイスとの接続を確立するためのものであり、
前記複数のセンサは、前記通信ハブデバイスと動作可能に通信している前記マスタデバイスから複数の傍受信号を受信するためのものであり、
前記MCUは、前記通信ハブデバイスから無線通信プロトコル情報を受信し、前記バスを介して前記複数のセンサに前記無線通信プロトコル情報を送信するためのものであり、
前記MCUは、前記複数のセンサの各々から位相および大きさ情報を受信し、受信した前記位相および大きさ情報に基づいて、前記システムに対する前記マスタデバイスの相対位置を計算するためのものであ
り、
前記センサは、前記マスタデバイスと前記通信ハブデバイスとの間の接続に同期されており、
1つのセンサが前記マスタデバイスと前記通信ハブデバイスとの間の接続への同期に失敗した場合、前記MCUは、前記通信ハブデバイスから通信プロトコル情報を要求し、受信された前記通信プロトコル情報を失敗した前記センサに送信して同期を再試行するためのものである、
システム。
【請求項9】
前記バスは、コントローラエリアネットワーク(CAN)バスである、
請求項8記載のシステム。
【請求項10】
前記MCUは、前記複数のセンサのサブセットから受信された位相および大きさに基づいて、前記システムに対する前記マスタデバイスの位置を計算するためのものである、
請求項8記載のシステム。
【請求項11】
前記複数のセンサの前記サブセットは、前記マスタデバイスから
破損していない無線信号を受信
したセンサを含む、
請求項10記載のシステム。
【請求項12】
前記複数のセンサの前記サブセットは、前記マスタデバイスから無線信号を受信
した全てのセンサを含む、
請求項10記載のシステム。
【請求項13】
前記マスタデバイスは、キーフォブである、
請求項8記載のシステム。
【請求項14】
前記マスタデバイスは、スマートフォンである、
請求項8記載のシステム。
【請求項15】
前記複数のセンサ、前記MCUおよび前記通信ハブデバイスは、パッシブエントリ/パッシブスタート(PEPS)自動車アプリケーションの一部である、
請求項8記載のシステム。
【請求項16】
スレーブデバイスに対するマスタデバイスの位置を求めるための方法であって、前記方法は、
前記スレーブデバイスにより、前記マスタデバイスとの無線通信を確立するように要求するステップと、
前記スレーブデバイスにより、前記マスタデバイスから確認応答を受信するステップと、
前記スレーブデバイスにより、前記スレーブデバイスと前記マスタデバイスとの間の無線通信を確立するステップと、
複数のセンサにより、前記スレーブデバイスから、前記スレーブデバイスと前記マスタデバイスとの間の前記無線通信に対応する無線通信プロトコルを受信するステップと、
前記複数のセンサにより、前記マスタデバイスから無線データパケットを受信するステップと、
前記複数のセンサにより、前記無線通信の位相および大きさを計算するステップと、
前記複数のセンサに結合されたマイクロコントローラユニット(MCU)により、前記無線通信の位相および大きさから、前記スレーブデバイスに対する前記マスタデバイスの相対位置を計算するステップと、
前記複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサが、前記スレーブデバイスとマスタデバイスとの間の前記無線通信への同期に失敗したことを検出するステップと、
前記MCUにより、非同期の前記センサに無線通信を再送信するステップと、
を含む方法。
【請求項17】
前記スレーブデバイスから前記無線通信プロトコルを受信するステップは、前記MCUおよび前記MCUと前記複数のセンサの各々との間に結合されたバスを介して行われる、
請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記無線データパケットは、CTEパケットを含む、
請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記方法は、パッシブエントリ/パッシブスタート(PEPS)自動車アプリケーションの一部として実行される、
請求項16記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年1月21日に出願された米国仮特許出願第62/794908号および2019年2月13日に出願された米国仮特許出願第62/804907号の優先権および利益を主張する、2019年6月28日に出願された米国非仮特許出願第16/457047号の国際出願であり、上記した文献は全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、マスタデバイス、スレーブデバイスおよび接続された複数のセンサ間の無線通信を用いたパッシブエントリおよびパッシブスタートの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
パッシブエントリ/パッシブスタート(PEPS)アプリケーションを使用することで、ユーザは、より速く、より直感的に、車両などのデバイスとのインタフェースを行うことができる。しかしながら、車両などのPEPS対応デバイスのシステムおよび環境では、車が検出したデバイスとの接続に問題が生じる可能性がある。そのため、ユーザを検出することができる複数のセンサを備え、これらの複数のセンサによってユーザの位置または位置関連情報を計算することができるシステムが望まれている。また、複数のセンサを使用するシステムが複雑になると、バッテリ寿命を維持し、システム全体の操作性を確保するために、省電力技術が必要になる場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】一実施形態による、パッシブエントリ/パッシブスタート用にマスタデバイスから無線情報を受信するためのセンサを含む自動車システムの図である。
【
図2A】一実施形態による、複数のセンサによって、マスタデバイスから、当該複数のセンサのうちの1つではないスレーブデバイスへの無線信号を傍受するためのシステムを示す図である。
【
図2B】一実施形態による、複数のセンサによって、マスタデバイスから、当該複数のセンサのうちの1つではないスレーブデバイスへの無線信号を傍受するためのシステムを示す図である。
【
図3A】一実施形態による、無線システムにおけるAoAデバイスによる位置計算に使用されるパケットを示す図である。
【
図3B】一実施形態による、少なくとも1つのセンサによるマスタからスレーブデバイスへの無線信号の傍受のための無線通信システムの種々の構成要素間の通信ハンドシェイクを示す図である。
【
図4】一実施形態による、センサをマスタデバイスからの無線通信に同期させるための方法および位置計算のために無線データパケットを使用するための方法を示す図である。
【
図5A】一実施形態による、マスタデバイスからスレーブデバイスへの無線信号の傍受を使用して、システム内の少なくとも1つのセンサからの良好データおよび不良データを認識するための方法を示す図である。
【
図5B】一実施形態による、潜在的に不良なセンサからのデータを無視するための方法を示す図である。
【
図6】一実施形態による、システム内のセンサによってタイミングおよび信号障害を認識するための方法を示す図である。
【
図7】一実施形態による、無線システムにおける欠落パケットを認識して修正する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下の説明では、通信スキームおよび技術の種々の実施形態を充分に理解するために、特定のシステム、構成要素、方法などの例のような多数の特定の詳細が説明される。しかしながら、少なくとも一部の実施形態は、これらの特定の詳細を伴わずに実施されうることが当業者には明らかであろう。他の例では、本明細書に記載の技術を不必要に曖昧にすることを回避するために、周知の構成要素もしくは方法は、詳細には説明されていないか、または単純なブロック図形式で提示されている。したがって、以下に記載される特定の詳細は、単なる例示である。特定の実現形態は、これらの例示的な詳細とは異なる場合があるが、それでも、本発明の精神および範囲内にあることが企図されている。
【0006】
「実施形態」、「一実施形態」、「例示的な実施形態」、「一部の実施形態」および「種々の実施形態」への説明における言及は、言及されている特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。さらに、種々の説明の箇所において「実施形態」、「一実施形態」、「例示的な実施形態」、「一部の実施形態」および「種々の実施形態」という表現が登場するが、必ずしも全てが同一の実施形態を指しているわけではない。
【0007】
種々の実施形態では、本明細書に記載の通信スキームおよび技術は、1つ以上のデバイスおよび/またはそのコントローラによって実行される1つ以上の方法を含みうる。当該方法の操作は、特定の順序で以下に示し説明しているが、各方法の操作は、特定の操作が異なる順序で実行されうるように、または特定の操作が少なくとも部分的に、同時にかつ/または他の操作と並行して実行されうるように変更されうる。他の実施形態では、別個の操作の命令またはサブ操作は、断続的および/または交互に実行されうる。したがって、説明される技術の種々の方法の実施形態、ならびにその中の操作の順序は、限定的な意味ではなく、例示的な意味でみなされるべきである。
【0008】
図1は、パッシブエントリ/パッシブスタート(PEPS)アプリケーションにおける位置計算または位置関連情報に使用されうるセンサ150を含む自動車システム100を示している。PEPSアプリケーションにより、ユーザ(またはユーザが保持もしくは使用しているデバイス)の位置に基づいて、ユーザが車両にアクセスし(エントリを獲得し)、その車両を始動することが可能となりうる。携帯電話またはキーフォブなどのデバイスが車両に近づくと、車両でのアプリケーションが開始されうる。車両の動作のユーザ設定は編成可能である。ドアのロックを解除することができる。エアコンまたは暖房をオンにすることができる。さらなる他の設定またはアプリケーションが、車両に対するそれらの位置に基づいて、ユーザのために開始または「プリロード」されうる。ユーザが車両にアクセスし、PEPSに使用されるデバイスが内部にある場合、車両内のデバイスの位置により、ユーザは、実際にデバイスを使用せずに車を始動することができる。車内に配置されたセンサにより、デバイスが正しい位置にあることを判別し、車両を始動することができる。別の実施形態では、車内のデバイスの位置により、車が動き出すまで車のロックを防止することができる。これにより、ユーザが車内でキーをロックすることを防止することができる。
【0009】
センサ150は、スレーブデバイス120と動作可能に通信しているマスタデバイス(図示せず)から無線データを受信することができる。センサ150は、アレイ内に複数のアンテナを含みうる。各アンテナは、無線情報を受信するためのものである。センサ150の各アンテナでの無線信号の位相および大きさを使用して、センサへの信号の受信角度、センサからの送信機の距離、またはセンサに対する送信機の位置を求めることができる。スレーブデバイス120およびマスタデバイスにより接続を確立することができるが、センサ150は、無線データパケットを傍受し、無線信号の位相および振幅、受信角度(AoA)、センサ150からの送信機(マスタデバイス)の距離、またはセンサもしくはセンサを含むシステム100に対する送信機の位置などの位置関連情報を計算するために適切に構成されたパケットを使用することができる。スレーブデバイスと動作可能に通信しうるのはマスタデバイスのみであるが、通信パラメータのタイミングおよびプロトコル情報がスレーブデバイス120によってセンサ150に共有されると、センサによる傍受が生起可能となる。通信パラメータは、バスに結合されたMCU130から、バス、例えばCANバス135を介して、センサ150と共有されうる。MCU130を使用して、接続パラメータをセンサ150に送信することができるが、MCU130を使用して、少なくとも1つのセンサ150に対するマスタデバイスの位置の種々の特性を求めるために、処理された無線データパケットを受信することもできる。処理された無線パケットは、センサ150の各々のアンテナで受信される無線信号の位相/大きさ、無線信号のAoA、マスタデバイスのセンサからの距離、またはセンサ150もしくはシステム100に対するマスタデバイスの位置を含みうる。
【0010】
種々の実施形態において、受信角度、距離、または位置の計算を、様々なシステム要素によって実現することができる。他の実施形態では、受信角度のみが、無線信号の位相および大きさから計算されうる。距離および位置が計算されない場合もある。さらに他の実施形態では、センサを使用して、無線信号の位相および大きさを測定し、受信角度、計算された距離を求め、位置を求めることができる。センサはこれらのアクションのサブセットのみを実行でき、一方で、MCUなどの別のデバイスは他のアクションを実行できる。全てのアクションをシステムの要素が実行する必要はない。
【0011】
図2Aは、サブシステム218の一部として形成されうる複数のセンサ250によって、マスタデバイス210からBLEハブ(通信ハブデバイス)220への無線信号215を傍受するためのシステム200の実施形態を示している。センサ250は、各々がブリッジデバイス240に結合された出力部を備えたセンサ251、253、255および257を含むことができ、ブリッジデバイス240は、ブリッジ241、243、245および247を含むことができる。センサ250は、アレイ内に複数のアンテナを含みうる。各アンテナは、無線情報を受信するためのものである。センサ250の各アンテナでの無線信号の位相および大きさを使用して、センサへの信号の受信角度、センサからの送信機の距離、またはセンサに対する送信機の位置を求めることができる。センサ250は、ユニバーサル非同期受信機/送信機(UART)またはシリアル周辺機器インタフェース(SPI)接続を介して、ブリッジ240と動作可能に通信しうる。他の実施形態では、ブリッジ240は、他の通信プロトコルを使用して、センサ250と通信しうる。ブリッジ240は、UART通信を介してセンサ250から情報を受信し、その情報を、コントローラエリアネットワーク(CAN)バス235を介してボディ制御MCU230に再送信しうる。また、CANバス235を使用して、BLEハブ220とマスタデバイス210との間の無線通信のためのタイミングおよびプロトコル情報をセンサ250に送信することができる。センサ250に提供されるタイミングおよびプロトコル情報により、センサ250が無線信号215を傍受し、無線デバイス210の位置を示す情報をセンサ250のうちの少なくとも1つに提供することが可能になりうる。当該情報は、サブシステム218に対するマスタデバイスの絶対位置または相対位置を計算するために、ボディ制御MCU230によって処理されうる。上記のように、種々の形態の位置関連データを、システム200の種々の要素によって計算し、求めることができる。
【0012】
図2Bは、センサ250がマスタデバイス210からBLEハブ220への信号215を傍受するシステム201の実施形態を示している。マスタデバイス210とBLEハブ220との間で動作可能な通信が確立され、タイミングおよびプロトコル情報がBLEハブ220からセンサ250に配信されると、センサ250は、無線通信に同期して、マスタデバイス210とBLEハブ220との間の無線信号215に対応する傍受信号217を受信することができる。傍受信号217と無線信号215とは同一でありうるが、これらが受信されるデバイスによって、またデバイスがどのような処理を行うかという点で異なる。マスタデバイス210は、センサ250と動作可能に通信しなくてもよい。しかしながら、無線信号215によってBLEハブ220に渡された無線情報は、センサ250によって無線信号217として受信され、マスタデバイス210の位置および/または移動関連データの処理および計算のためにMCU230に送信されうる。
【0013】
図1、
図2Aおよび
図2Bに示されている両方の実施形態では、4つのセンサが示されている。本実施形態は、例示であって、限定を意図するものではない。種々の実施形態では、4つより多いかまたは少ないセンサを使用することができる。説明のために、アクセスおよび制御用のPEPSシステムを備えた自動車の4つのコーナー部に対応する4つのセンサが示されている。しかし、4つより多いかまたは少ないセンサ、および自動車の4つのコーナー部に対応しない場所に配置されたセンサの存在が理解される。さらに、図示の実施形態は、車両の外部に配置されたセンサを示しているが、追加のセンサを、車内のマスタデバイスの位置関連情報を計算できるように配置することもできる。
【0014】
本明細書に記載の実施形態および説明では、受信角度(AoA)が参照されている。ただし、送信機(マスタデバイス)に複数のアンテナが実装され、それぞれが各センサの単一のアンテナで受信した信号をブロードキャストする場合には、放射角度(AoD)を使用することもできる。これは、マスタデバイスの信号送信アンテナが各センサの複数のアンテナで受信した信号を送信するAoAの構成とは、対照的である。一部のアプリケーションでは、マスタデバイスがセンサよりも大きなフォームファクタを有することが有利でありうる。これらのアプリケーションでは、AoDが優先されうる。
【0015】
また、
図2Aおよび
図2Bに示される実施形態では、マスタデバイス210は、スマートフォンとして示されている。しかしながら、BLEハブに送信される信号は、BLE機能を備えた任意のデバイスによって送信でき、これには、キー、キーフォブ、タブレット、または無線センサを備えたシステムへのアクセスを制御または許可するために使用されうるその他のモバイルデバイスが含まれる。
【0016】
図3Aは、マスタデバイス210から送信され、BLEハブ220およびセンサ250によって受信されうる例示的なコンスタントトーン拡張(CTE)パケット300を示している。CTEパケットには、パケットID303を含む第1の部分(バイト)が含まれうる。パケットID303は、正しいパケットが位置計算のために処理されることを保証するために、BLEハブ220およびセンサ250によって使用されうる。異なるセンサからのパケットIDが一致しない場合、またはセンサ250によって受信されたパケットIDが予想されるパケットIDと一致しない場合、誤った情報で位置計算を破損させないことを保証するために、パケットIDに含まれるパケットデータを無視することができる。CTEパケット300はまた、巡回冗長検査(CRC)セクション305を含みうる。CRCセクション305は、ファームウェアによって生成されたCRCデータを含むことができ、このCRCデータを使用して、パケットが破損していないことまたは「不良」でないことが保証される。CRCがパケットの不良を示している場合、パケットは無視されるか、または置換(再送信)パケットが要求されうる。CRCの不合格はまた、パケットがCTEパケット(例えば、制御パケット)ではないこと、ならびにパケットがセンサ250またはMCU230による計算または位置関連情報での使用を意図していないことを示しうる。CTEパケット300はまた、そのペイロードとして、CTEセクション307を含みうる。CTEセクション307は、一連の非白色化された0または1を含みうるものであり、これらは、角度、距離および位置の計算に使用される位相/振幅情報を抽出するためにセンサによって使用される。パケットのCRC部分はまた、ハードウェアによって、プログラマブルロジックによって、または何らかのレベルの処理から導出された値を生成するための任意の手段によって生成されうる。
【0017】
図3Bは、無線通信および角度、距離および位置計算のためのシステムの種々の構成要素間の通信を示しており、当該構成要素には、マスタ(例えば、無線デバイス210など)、BLEハブ(例えば、BLEハブ220)、MCU(例えばMCU230)、および少なくとも1つのセンサ(センサ250など)が含まれる。マスタ210は、パケット300などのパケットをBLEハブ220に通信することができる。パケット300は、MCU230による位置決定で使用するためのパケットID、CRC領域およびCTE領域を含みうる。マスタ210とBLEハブ220との間の接続が確立されると、BLEハブ220は、BLE接続フラグをMCU230に送信することができる。BLE接続フラグは、BLEハブとMCUとの間の接続を介してMCUに直接に通信されうる。別の実施形態では、BLEハブとMCUとの間の接続は、追加の中間デバイス(図示せず)を介して行われうる。次に、MCU230は、BLEハブ220に接続データを要求することができる。接続データには、接続が行われたときに、BLEハブによってマスタ210から無線信号を受信するためのタイミング情報が含まれうる。BLEハブ220は、接続データをMCUに返すことができ、MCUは、次に、CANバスなどのバスを介して接続情報をセンサ250に通信することができる。
【0018】
センサ250が接続データを取得すると、センサ250は、マスタデバイス210とBLEハブ220との間の無線通信に同期することができる。この場合、センサ250は、傍受によって、BLEハブと同時にマスタ210からパケットを受信するように構成可能である。次に、受信信号の位相および大きさに関する情報がバスを介してMCU230に渡され、受信角度の計算、距離の計算、または位置の決定に使用可能となる。種々の実施形態において、上述したように、受信信号の位相および大きさの処理は、種々のデバイスにおいて実現されうる。一実施形態では、受信信号の位相および大きさのみが、センサによってバスを介してMCUに送信される。次に、MCUが、位相および大きさを提供した種々のセンサへの受信角度を計算する。他の実施形態では、センサにより位相および大きさが処理され、MCUに提供される角度値が生成されうる。さらに他の実施形態では、センサは、位相情報および大きさ情報を処理して、距離および位置を提供し、そのデータを、バスを介してMCUに提供することができる。さらに、特定の実施形態では、MCUに提供される値、すなわち位相/大きさ、受信角度、距離、または位置の値は、信頼性指標を伴っていてもよい。
【0019】
また、接続間隔については、センサとマスタデバイスとの間の無線通信への同期を行うことができる。BLEハブがMCUを介してセンサに接続間隔を渡し、これにより、センサが「ウェイクアップ」して、予測される際に、マスタデバイスからのCTEパケットを待ち受けることができる。センサは、パケットを受信してデータをMCUに送信した後、スリープ状態に戻ることができる。本実施形態では、センサは、マスタデバイスからパケットを受信するために必要な場合にのみ起動する。システムは一緒にウェイクアップし、一緒にスリープ状態に戻ることで、大幅な省電力を実現する。
【0020】
信頼性指標を使用して、MCU、または位置関連データを計算するものに対し、特定のセンサからのデータに与える重みに関する情報を提供できる。例えば、干渉が少なく、信号強度が強い場合、マスタデバイスがセンサに近いことを示すことで、高い信頼性を得ることができる。逆に、干渉が大きく、信号強度が低く、マスタデバイスがセンサから遠く離れていることを示すことで、信頼性が低くなる可能性がある。複数のパケットが欠落しているセンサの場合、または再同期が必要な場合、信頼性が低いことが示されうる。MCU、またはシステムの他の演算素子は、閾値に基づいて、信頼度の低いデータを提供するセンサを無視することができる。別の実施形態では、最も信頼性の高いセンサのみを使用することができる。または他の実施形態では、重みは、全てのセンサまたは信頼性指標閾値を有するセンサに適用されうる。センサは、MCUから送信された位置関連データに対する外部影響を全て抽出したものとして処理するために、信頼性指標をMCUに渡すことができる。別の実施形態では、センサは、信頼性指標、ならびにRSSI、信号対雑音比(SNR)、信号対干渉プラス雑音比(SINR)または信号対雑音プラス干渉比(SNIR)を含む、種々の外部影響に関する情報を送信することができる。さらに他の実施形態では、外部の影響に関する情報のみをMCUに渡すことができる。上記の全ての情報を送信する必要はない。むしろ、アプリケーションの要件に基づいて、全て渡すか、何も渡さないか、またはそのサブセットをMCUに渡すことができる。
【0021】
非CTEパケット(
図3AのCTEパケット300に合致しないパケット)がマスタによって送信され、BLEハブおよびセンサ250によって受信される場合、CRCは不合格となりうる。この場合、位相/大きさ、角度または到着、距離、または位置情報などのAoA関連情報はMCUに提供されない。
【0022】
マスタデバイスは、
図3Aおよび
図3Bに示すように、パケットペイロードでコンスタントトーン拡張(CTE)を送信するように構成できる。当該構成を使用して、位置計算で使用されうるレガシーBLEデバイスをサポートすることができる。CTEデータは、非白色化された0または1のストリームでありうる。パケットには、パケットIDも含まれている。パケットIDは、複数のセンサによって受信および処理されたパケットが同期されることを保証しうる。種々のセンサが受信するパケットのタイミングにエラーまたは曖昧さが生じると、センサに対するマスタデバイスの計算および追跡された位置にエラーが発生する可能性がある。例えば、タイミング情報が調整されていない場合、1つのセンサが他のセンサとは異なるMCUの位置データを生成して、タイミングの不一致によって誤った位置情報が含まれることで、マスタデバイスの計算された位置に重大なエラーが発生する可能性がある。
【0023】
センサは、パケットIDを使用して、マスタデバイスによる再試行を検出することもできる。パケットIDが、パケットが再試行であることを示している場合、CTEは処理されない場合がある。そのペイロードは前のパケットと同じであり、別のチャネルで送信される。ただし、再試行パケットのパケットは、同じ情報を別のチャネルで送信したものであるため、CTEは無効になり、センサはCTEデータを無視できるため、処理要件および電力要件が軽減される。
【0024】
図4は、
図2Aおよび
図2Bに示したような、BLEハブおよびセンサを含むシステムに対するマスタデバイスの位置を計算するための方法400を示している。マスタデバイス(例えば、
図2Aおよび
図2Bのマスタデバイス210)は、ステップ402において、スレーブデバイス(例えば、BLEハブ220)をスキャンする。スレーブデバイスは、マスタデバイスによる受信のために、スレーブデバイスがその存在をブロードキャストするアドバタイズメントレートを有しうる。ステップ405に示されているように、スレーブデバイスがマスタデバイスによって検出されない場合、マスタは、スキャンを継続する。一実施形態では、スマートフォンまたはキーフォブが車両のBLEハブを認識しない場合、その消費電力を最適化しながらパフォーマンスを維持するために、一定の間隔でスキャンを継続することができる。動作時の省電力技術については、以下で説明する。ステップ405でマスタデバイスによってスレーブデバイスが検出された場合(BLEハブがスマートフォンまたはキーフォブによって検出された場合)、ステップ408でマスタ/スレーブ接続が確立される。次に、スレーブデバイスは、ステップ410において、接続パラメータ(タイミングおよびプロトコル情報)をセンサに送信することができる。BLEハブ220などのスレーブデバイスは、センサに直接に接続されなくてもよい。本実施形態では、接続は、MCU230などのコントローラに通知される。次に、MCUは、接続パラメータを要求し、CANバスなどのバスを介してセンサにブロードキャストしうる。次に、接続パラメータが、UARTまたはブリッジデバイス240などのインタフェースによって受信され、センサによって処理される。センサ250のコントローラとバスとの間の直接接続部、ブリッジ240とセンサ250との間の3次中間デバイス、またはセンサ250のプロセッサと併置される通信インタフェース回路などの他の構成を実装することができる。
【0025】
スレーブデバイス(BLEハブ220)から接続パラメータを受信すると、ステップ412において、センサは、マスタデバイスがスレーブデバイスと動作可能に通信しているときに、マスタデバイスに同期し、マスタデバイスから無線情報を受信できるように構成される。次に、マスタデバイスは、ステップ414で無線パケットを送信することができる。無線パケットは、位置関連情報の計算に使用されるCTEパケットでありうる。無線パケットには、制御パケットなどの非CTEパケットも含まれうる。これらのパケットは、受信されるが、位置計算のためにセンサによって処理されない。同時進行で、スレーブデバイスは、ステップ416でマスタデバイスから無線パケットを受信し、センサは、ステップ418で、マスタから同じ無線パケットを傍受して受信する。センサは、ステップ420で、位置関連情報を計算するために受信された無線パケットを処理し、ステップ422で、当該情報および信頼性指標をMCUに送信することができる。ステップ424において、MCU(ホスト)は、センサから受信した情報を処理し続け、システムに対するマスタデバイスの角度、距離、または位置を計算することができる。
【0026】
マスタデバイスから送信されたパケットは、BLEハブまたはセンサによって常に正しく受信されるとは限らない。不良パケットにより、位置検出もしくはPEPSシステムの動作に失敗するかまたは不正確な結果が生成される可能性がある。データが低品質であると、計算または位置関連情報にエラーが生じ、ユーザエクスペリエンスに影響を与える可能性がある。品質データおよびデータ処理を保証するために、各パケットには、パケットの先頭にパケットIDが含まれうる。パケットIDに続いて、ファームウェアで計算された巡回冗長検査(CRC)がパケットに含まれうる。CRCは、ハードウェアにおいて、プログラマブルロジック、または処理された値を提供する既知の手段によって計算することもできる。センサにより、受信したパケットIDバイトに対してCRCチェックを実行して、パケットが破損しているかどうかを判別できる。パケットが破損していると識別された場合、センサにより、パケット内のCRCバイトに続きうるCTEの処理を回避することができる。CRCチェックおよびこれに続くCTEの処理の回避により、位置の計算に破損したデータを使用することを回避でき、また処理要件を減らすことによってオンチップの消費電力を削減することもできる。センサがCTEを処理する必要がない場合、センサは低電力モードに入ってもよい。
【0027】
図5Aは、センサによって不良パケットを検出するための方法500の一実施形態を示している。最初に、パケットは、ステップ502でマスタデバイスからセンサによって受信される。センサは、パケットの品質をチェックするために、ステップ504でパケットに対してCRCを実行することができる。ステップ507でパケットが良好である場合、パケットは、ステップ510でAoAの処理方法でCTEペイロードを使用することによって処理され、ステップ512でホスト(MCU)に送信されうる。ステップ507でパケットが良好でない場合、パケットIDが間違っているか、CRCが不合格であるか、またはパケットタイプがCTEパケットではないかのいずれかの理由で、ステップ514において、パケットは不良としてフラグが立てられ、新規のパケットが(再送信のために)要求されうる。この場合、MCUは、センサが受信すべき無線パケットを再送信するコマンドを、マスタデバイスのスレーブデバイス(BLEハブ)に送信することができる。
【0028】
図5Bは、MCUによる不良パケットを検出するための方法501の別の実施形態を示している。データは、ステップ522でセンサからMCUによって受信されうる。当該データは、525で適切かどうかを確認するために処理されうる。計算された位置がセンサから予想された位置と一致した場合、データは良好であると判別できる。この場合、位置関連情報は、ステップ528で計算されうる。ステップ525でデータが良好でない場合、センサからのデータはステップ530で無視することができ、ステップ532でタイマが開始される。ステップ535でタイマが完了すると、MCUは、センサがデータを再び提供することを可能にしうる。当該遅延は、正常に動作していないセンサまたは位置計算に充分な品質のデータを提供していないセンサからの不良データによる、センサとMCUとの間のバスの帯域幅要件および混雑を軽減するための遅延でありうる。センサが不良データを何度も提供した場合または相当の長さの期間にわたって提供した場合、同期が開始されて、センサと、マスタデバイスからの無線情報を傍受して位置計算のためにMCUにデータを提供するその機能とをリフレッシュすることができる。
【0029】
センサは、マスタデバイスから受信した全てのパケットにおいてアンテナのスイッチングおよび位相/大きさの処理を有効化するように構成することができる。センサが受信するパケットには、位置計算に使用されるCTEパケットが含まれうる。ただし、パケットは、BLEハブおよびMCUとの通信に使用される制御パケットまたはその他のパケットの場合もある。センサは、パケットタイプを区別するように装備されていない場合があり、非CTEパケットを処理して、位置計算の位相および大きさを求める場合がある。非CTEパケットは、センサが処理してBLEハブに送信するために必要な情報を有していないため、CTEデータを有しない受信かつ処理されたパケットにより、誤った位置情報が生成される可能性がある。
【0030】
マスタデバイスは、CTEパケットでのみパケットIDおよびCRCデータを送信できる。この機構により、センサは、CRCを実行することが可能となり、不合格を生じさせる。CRCが不合格となることにより、センサは、非CTEパケットを破損または不良パケットとして扱い、非CTEパケットを位置計算から削除することができる。パケットが非CTEパケットとして識別されても、不良パケットではない場合、再送信は要求されない場合がある。
【0031】
MCUがBLEハブからタイミングおよびプロトコルの情報ならびに接続パラメータを受信すると、当該情報は、可能な限り速やかにセンサに伝達されうる。一実施形態では、この通信は、CANバスを介して行われる。タイミングおよびプロトコル情報をセンサに送信する際の遅延を減らすことで、マスタデバイスの位置を計算および追跡する際の待機時間を減らすことができる。BLEハブからMCUを介してタイミングおよびプロトコル情報を受信したセンサは、MCUによって受信されたマスタデバイス無線通信との適切な同期を示す応答を提供しうる。MCUは、センサからの個々の応答を処理して、マスタデバイスとBLEハブとの間の接続と適切に同期されているセンサを識別しうる。
【0032】
同期の失敗は、タイミングの不一致が原因である可能性があり、これにより、センサがマスタデバイスからの信号を受信できなくなる可能性がある。タイミングの不一致が生じると、全てのセンサに障害が生じる。これは、BLEハブによって提供される接続パラメータが機能していないか、または正しくないことを示している可能性がある。タイミングの不一致の場合、MCUは、BLEハブからタイミングおよびプロトコル情報を再要求し、(CANバスなどを経由して)センサに再ブロードキャストすることができる。
【0033】
システムの遅延が決定論的でない場合、タイミング障害が発生する可能性がある。これは、MCUからセンサにタイミングおよびプロトコル情報を配信するために使用されるバスが混雑している場合に発生する可能性がある。一実施形態では、CANバスは、自動車アプリケーションの全てまたは大部分の電子機器に使用することができる。CANバス上のトラフィックのレベルにより、容易に規定できない遅延が通信に生じる可能性がある。これを考慮して、本発明の一実施形態には、PEPSシステム(または距離もしくは位置推定のためにAoAもしくはAoDを使用する同様のシステム)内の全てのデバイスを同じBluetooth(BT)マスタクロックに同期させることが含まれうる。本実施形態では、MCUは、次のBTイベントが発生するまでの時間ではなく、次のBTイベントの発生時点に基づいてタイミング情報を送信しうる。別の実施形態では、タイマを使用してバスを介した通信の遅延を求めることができ、MCUからセンサに送信されるタイミングパラメータは、オフセットを考慮してタイマの値に基づいて調整することができる。
【0034】
タイミングの不一致が生じていない場合、マスタデバイスおよび周囲の要素に対する相対的な位置に基づき、全てではなく一部のセンサが不合格になることで、信号障害が発生する可能性がある。信号障害が検出された場合、MCUは、ロジックを使用して、マスタデバイスの位置を計算および追跡するのに充分なデータがセンサから受信されているかどうかを判別できる。使用されるデータには、センサの数、システム、マスタ、または相互に関連する良好なデータを送信しているセンサの位置、各センサデータに関連付けられた信頼性指標が含まれうるので、信号障害のないセンサからの充分なデータがあれば、位置関連情報を計算および追跡することができる。充分な数のセンサが信号を受信できないか、または一連の不良パケットが原因で、充分な情報がない場合、MCUは、BLEハブに2回目の同期データを要求し、それを2回目の同期試行でセンサに配信することができる。
【0035】
マスタデバイスとBLEハブとの間の通信に既に同期されているセンサは、MCUから同期情報を受信および/または処理する必要はない。そのため、この情報は無視することができ、センサの電力を節約することができ、センサが確認の送信を試行しないため、バスのトラフィックを減らすことができる。
【0036】
図6は、タイミング(全てのセンサに障害が生じる)および信号(全てのセンサに障害が生じるわけではない)が原因で障害が生じたセンサを含む、障害が生じたセンサを認識する方法600を示している。ステップ602で同期を試行した後、マスタデバイスとの動作可能な通信において、スレーブデバイス(すなわち、BLEハブ)からホストデバイス(すなわち、MCU)によってセンサにタイミングおよびプロトコルが提供され、センサは、傍受によって、マスタデバイスからCTEパケットの受信を試行することができる。ステップ605で同期が成功した場合(全てのセンサが良好なパケットを受信した場合)、データがセンサからMCUに提供され、ステップ608で位置が計算される。ステップ605で同期が成功しなかった場合、かつ同期せず、マスタデバイスから無線パケットを受信していないセンサが少なくとも1つ存在する場合、方法600により、ステップ611で、全てのセンサにタイミング障害を示す障害が生じているかどうかが判別される。全てのセンサに障害が発生している場合、ステップ614で、BLEハブからMCUを介してセンサに対して新規の接続パラメータが要求され、同期が再試行されうる。
【0037】
全てではなく、一部のセンサに障害が生じた場合、MCUは、ステップ617で、位置を求めるためにマスタデバイスから良好な無線データを正しく受信する充分なセンサがあるかどうかを判別することができる。MCUに適切な情報を提供する充分なセンサが存在する場合、ステップ620で位置を計算することができ、ステップ622で障害が生じたセンサについて、新規の接続情報がBLEハブから要求されうる。ステップ617で、MCUに良好データを提供する充分なセンサが存在しない場合、同期されていないセンサ、良好データを提供しないセンサ、または信頼度が低すぎるセンサに対して、新規の接続パラメータが要求されうる。一部の実施形態では、受信角度、距離、または位置は、充分に接続された(同期された)センサが、信頼性の高い良好データを提供するまで計算されない場合がある。
【0038】
一実施形態では、MCUは、マスタデバイスがセンサに対して移動するときに、センサとマスタデバイスとの間の同期を定期的に開始することができる。センサからのデータ不足による同期の再試行の場合と同様に、マスタデバイスからBLEハブへの通信に既に同期されているセンサは、定期的な同期を無視することができる。
【0039】
センサとMCUとの間の通信が、他のデバイスが通信しているバス(CANバスなど)を介して行われる場合、バスが混雑する可能性がある。MCUおよびセンサを含むシステムは、バスを介した他のデバイスの通信を制御できない場合がある。一実施形態では、MCUは、各センサがバスを介してMCUにパケットレポートを送り返す頻度を制御するために、センサにコマンドを送信することができる。種々の実施形態において、MCUへのレポートのために必要とされるセンサは、バスに接続され、マスタデバイスとの良好な同期接続を有するセンサの数に基づき、MCUによってスケジューリング可能である。MCUはまた、マスタデバイスに対するセンサの相対位置とマスタデバイスからの送信で測定されたRSSIとに基づいてパケットレポートが通信されるように、センサをスケジューリングすることができる。MCUはまた、センサのパケット損失率に基づいて、パケットレポートを通信するためのセンサをスケジューリングすることができる。パケット損失率の高いセンサは、パケット損失率の低いセンサよりも低い頻度でパケットレポートを送信する必要がありうる。同様に、マスタデバイスに近いか、計算RSSI値が低いセンサが優先される場合があり、当該センサは、マスタデバイスから遠いセンサまたは信号干渉が多いセンサよりも高い頻度で、データおよびパケットレポートを送信するように要求される場合がある。
【0040】
パケットが欠落しているセンサは、MCUによって無視される場合があるが、MCUはマスタデバイスに同期され、充分な信頼性で適切なパケットレポートを提供しているセンサの数が不充分な場合、(
図6のステップ602に示された)再同期の試行の率を上げる必要があると判別しうる。マスタデバイスの正確な位置を求めるのに充分な信頼性を備えた、良好なパケットレポートを備えた充分な数のセンサが存在する場合、MCUは、パケットが欠落しているセンサまたはパケット損失率が高いセンサにコマンドを発出して、これらのセンサがパケットレポートをMCUに送信する間隔を短縮させることができる。これにより、センサがパケット情報を処理する速度が低下することで、システムの消費電力が削減され、パケットレポートの処理における潜在的に障害のある、または最適ではないパケットの影響を減らすことによって、位置計算が改善され、優先順位を下げられたセンサとの通信を減らすことによって、バスの混雑を軽減することができる。
【0041】
欠落パケットが非常に多いセンサの場合、当該センサは、バスを介してMCUへの接続タイムアウトを発出する場合がある。タイムアウト値を調整して、障害のあるセンサまたは「デッド」センサを識別する速度を最適化できる。タイムアウトが生じてMCUとの通信が行われると、MCUは、(
図6のステップ602に示されているように)センサが切断された状態でセットアップの再同期の試行を開始できる。センサが繰り返し切断される場合、MCUは、タイムアウトが生じる前にセンサがマスタデバイスと自動的に同期されるように、セットアップレートを上げる必要があると判別することができる。このように、追加の処理を待たずに可能な限り多くのセンサが適切なパケットレポートをMCUに提供するようにすることで、計算または位置関連の情報を改善できる。
【0042】
図7は、センサによって欠落パケットを認識して修正するための方法700を示している。ステップ702で、最初に同期が試行される。同期には、MCUを介してBLEハブからセンサで通信パラメータを受信することが含まれうる。受信した通信パラメータを使用してセンサを構成した後、マスタデバイスからの無線送信は、センサで受信されることもまたは受信されないこともある。ステップ705で、無線送信のパケットがセンサによって受信された場合、同期された傍受が確立され、パケットは、受信角度、距離、または位置計算のために処理されうる。ステップ705で、センサがBLEハブとのマスタデバイスの通信と正常に同期されたものの、パケットが受信されなかった(欠落した)場合、欠落パケットカウンタがステップ710で増分されうる。欠落パケットカウンタの値は、ステップ713において、欠落パケットの閾値数と比較されうる。欠落パケットの閾値は、接続タイムアウトが検出されて同期が再開される前に許容可能な数のパケットが欠落しうるように設定できる。欠落パケットカウンタが欠落パケット閾値に達していない場合、方法700は、ステップ705に戻る。欠落パケットカウンタが欠落パケット閾値に達した場合、ステップ716で接続タイムアウトを決定することができる。接続タイムアウトは、ステップ718でMCUに伝達されてよく、MCUは、ステップ720で同期を再開しうる。
【0043】
位置または位置関連情報のAoA計算に無線信号の傍受を使用することで、システムのパフォーマンスおよび消費電力に影響を与えうる複数のシナリオが生起可能となる。これらのシナリオおよびパフォーマンスと消費電力を改善するためのツールについて、以下で説明する。
【0044】
マスタデバイスがBLEハブに接続できない場合、マスタデバイスは、種々の省電力操作を実行することができる。マスタデバイスは、様々な理由でBLEハブに接続できないことがある。BLEハブが圏外にありうる場合、例えばマスタデバイスはユーザの携行する電話機またはキーフォブでありうるが、BLEハブがガレージに駐車されているかまたはユーザから遠く離れた車に実装されている場合などである。BLEハブの電源が切れている場合もある。この場合、BLEハブが車に実装されていると、車のバッテリ残量が低すぎて、BLEハブに電力を供給できない場合がある。BLEハブは、バッテリ残量が少なくなると、車内の電源制御回路によって切断され、重要な機能のみが許可される場合がある。マスタデバイスの位置情報は、全てのアプリケーションで重要であるとは限らず、電力制御回路によって、その使用が非アクティブ化される場合がある。さらに他の実施形態では、BLEハブは故障している場合がある。これらの実施形態の全てにおいて、マスタデバイスは、それ自体の電力を節約するために、BLEハブとの通信の試行をシャットダウンするか、または抑制しうる。
【0045】
マスタデバイスがキーフォブである場合、BLEハブのスキャンは、トリガイベント(キーフォブのボタン押下など)または低電力クロックに基づくタイムアウトを受信するまで、非アクティブ化されうる。マスタデバイスが携帯電話などの別の無線デバイスである場合、スキャン間隔は、短いアドバタイズメント間隔でBLEハブからの信号をキャプチャするのに充分な長さである必要があり、一方、バッテリ寿命への悪影響を減らすのに充分な短さである必要がある。一実施形態では、電話上のアプリケーションを使用して、スキャンを開始することができる。マスタデバイスがスマートフォンなどのモバイルデバイスの場合、ユーザの割り込みがスキャンのトリガとなりうる。ユーザの割り込みは、アプリとの対話、デバイスの移動(加速度計で測定)、GPS位置情報、またはデバイスがアクティブであってユーザがPEPSの有効化を希望しうることを判別する他の方法に基づきうる。
【0046】
BLEハブは、バッテリ電圧モニタを含みうるか、またはバッテリ電圧モニタに結合されうる。バッテリ電圧モニタからの情報または信号に応答して、BLEハブはアドバタイズメントレートを増減することができる。特定のバッテリ電圧レベルは、特定のアドバタイズメントレートに対応しうる。
【0047】
一実施形態では、MCUがバスを介した傍受パラメータ(タイミングおよびプロトコル情報)設定を試行するまで、センサをアイドル状態または低電力状態とすることができる。各センサのUARTは、割り込みを実行することができる。さらに別の実施形態では、汎用入出力(GPIO)、またはセンサをウェイクアップするための別の入力を実行することもできる。本実施形態の目標は、マスタデバイスがBLEハブと動作可能に通信していないときに、システムの電力消費を削減することである。
【0048】
同様の実施形態では、マスタデバイス、BLEハブ、MCUおよびセンサを含むシステムが移動している間、センサをアイドルモードまたは低電力モードにすることができる。例えば、説明している当該システムを実装する車が移動している場合、またはユーザ(およびマスタデバイス)が車内にいる場合、PEPSシステムに対するマスタデバイスの計算または位置関連情報は不要となる。車が動いていてエンジンが作動しているときは、電力要件は主要な関心対象ではないが、センサをアイドルモードにすることで、バスの混雑を低減することができる。車の電源が入っている間、センサハブをアイドルモードにすることもできる。別の実施形態では、マスタデバイスが車内にある場合、マスタデバイスの外部検出のために配置されたセンサを非アクティブ化することができる。マスタデバイスが車両外にある場合、車内のマスタデバイスの検出のために構成されたセンサを非アクティブ化することができる。
【0049】
車が停止して車両の電源がオフになると、BLEハブは、アクティブアドバタイズメントモードに戻ってパッシブスタートを有効化することができる。ユーザおよびマスタデバイスが車両内にない場合は、パッシブエントリを有効化することができる。
【0050】
別の使用例では、マスタデバイスは、長期間BLEハブの範囲内にありうる。RSSIは、接続を維持する必要があるかどうかの指標として使用できる。RSSIが非常に高く、ほぼ静的である場合、マスタデバイスが遠くにあり、なかなか近づかないことを示しうる。これは、BLEハブとマスタデバイスとの間の接続が不要であることをMCUに示しうる。したがって、BLEハブは、実質的にそのアドバタイズメントレートを減らすことができる。マスタデバイスがBLEハブ(およびセンサ)に長期間近接している場合、BLEハブは、接続間隔の更新を実行して、接続間隔を短縮し、マスタデバイスからBLEハブ(およびセンサ)に送信される情報を削減することができる。接続間隔が変更されると、センサは、位置計算で使用するCTEパケットではなく、制御パケットとしてパケットを認識し、それに応じた処理を行う必要がある。
【0051】
本明細書で使用される場合、「結合」という用語は、直接に接続されるか、または場合によりPCBトラック/パッド、スイッチ、バス、ハブ、トレースラインおよび/またはプログラミング可能な相互接続部を介した1つ以上の介在構成要素を介して間接的に接続されることを意味する。種々のPCBトラック/パッド、スイッチ、ハブ、トレースおよびプログラミング可能な相互接続部を介して提供される信号は、他の信号と時分割多重化され、1つ以上の共通バスもしくは専用バスおよび/または信号トレースを介して提供されうる。代替的に、バスの各々が1つ以上の単一信号トレースを含んでもよく、1つ以上の信号トレースが代替的にバスの機能を実行してもよい。
【0052】
前述の明細書において、本発明をその特定の例示的な実施形態を参照して説明してきた。しかしながら、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の広範な精神および範囲から逸脱することなく、種々の修正および変更を行うことができることが明らかであろう。したがって、明細書および図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味で捉えられるべきである。