(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】光ファイバの引き出し装置、光ファイバの引き出し方法、及び光ファイバの検査方法
(51)【国際特許分類】
B65H 49/20 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
B65H49/20
(21)【出願番号】P 2021551289
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2020036808
(87)【国際公開番号】W WO2021065867
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2019180412
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】羅 声楊
(72)【発明者】
【氏名】松永 達
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-071952(JP,A)
【文献】特開平08-210948(JP,A)
【文献】特表2003-515143(JP,A)
【文献】特開2007-070078(JP,A)
【文献】実開平04-035104(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 49/20
G01M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバが巻回されて回転軸周りに回転可能とされるボビンから前記光ファイバを引き出す光ファイバの引き出し装置であって、
前記光ファイバの一端部を保持し、所定の方向に前記ボビンが回転する状態で前記一端部側から前記ボビンに巻回された前記光ファイバの所定部位を引き出した後に、前記所定の方向と反対方向に前記ボビンが回転する状態で前記光ファイバの前記所定部位の一部を前記ボビンに戻す第1引き出し部と、
前記第1引き出し部が前記一端部側から前記光ファイバの前記所定部位を引き出した後に、前記光ファイバの他端部を保持し、前記第1引き出し部が前記光ファイバの前記所定部位の前記一部を前記ボビンに戻すときに、前記他端部側から前記ボビンに巻回された前記光ファイバの他の所定部位を引き出す第2引き出し部と、
を備える
ことを特徴とする光ファイバの引き出し装置。
【請求項2】
前記回転軸周りに前記ボビンを回転させるボビン駆動部を更に備え、
前記ボビン駆動部は、前記第1引き出し部が前記一端部側から前記光ファイバの前記所定部位を引き出すときに、前記所定の方向に前記ボビンを回転させ、
前記第1引き出し部が前記光ファイバの前記所定部位の前記一部を前記ボビンに戻すときに、前記所定の方向と反対方向に前記ボビンを回転させる
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバの引き出し装置。
【請求項3】
前記第1引き出し部及び前記第2引き出し部の少なくとも一方は、前記光ファイバを前記回転軸と非平行な方向に引き出す
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバの引き出し装置。
【請求項4】
前記第1引き出し部は、前記ボビンから引き出す前記光ファイバの前記所定部位に生じる張力が所定の範囲内となるように前記光ファイバの前記所定部位を引き出し、前記ボビンに戻す前記光ファイバの前記所定部位の前記一部に生じる張力が前記所定の範囲内となるように前記光ファイバの前記所定部位の前記一部を前記ボビンに戻し、
前記第2引き出し部は、前記光ファイバの前記他の所定部位に生じる張力が前記所定の範囲内となるように、前記光ファイバの前記他の所定部位を引き出す
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光ファイバの引き出し装置。
【請求項5】
前記第1引き出し部及び前記第2引き出し部の少なくとも一方は、前記光ファイバを巻き取ることで前記光ファイバを引き出す
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光ファイバの引き出し装置。
【請求項6】
前記第1引き出し部及び前記第2引き出し部の少なくとも一方は、所定の軸方向において互いに対向する一対の挟持片からなる挟持部を有し、
前記挟持部は、前記一対の挟持片によって前記所定の軸方向に前記光ファイバの端部を挟持し、前記端部を挟持する状態で前記所定の軸周りに回転して前記所定の軸を基準とする外周面に前記光ファイバを巻き取ることで前記光ファイバを引き出す
ことを特徴とする請求項5に記載の光ファイバの引き出し装置。
【請求項7】
前記一対の挟持片は、切り欠きを有し、
前記切り欠きは、少なくとも前記一対の挟持片が前記一端部を挟持した状態において前記所定の軸を基準とする前記挟持部の前記外周面に前記所定の軸方向における一端から他端まで延在する溝を形成する
ことを特徴とする請求項6に記載の光ファイバの引き出し装置。
【請求項8】
自重によって垂れ下がる前記一端部
における前記回転軸と平行な方向の位置を示す信号を出力する位置検出部を更に備え、
前記第1引き出し部は、前記信号に基づいて自重によって垂れ下がる前記一端部を保持する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の光ファイバの引き出し装置。
【請求項9】
自重によって垂れ下がる前記他端部
における前記回転軸と平行な方向の位置を示す別の信号を出力する別の位置検出部を更に備え、
前記第2引き出し部は、前記別の信号に基づいて自重によって垂れ下がる前記他端部を保持すること
を特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の光ファイバの引き出し装置。
【請求項10】
光ファイバの引き出し装置によって、光ファイバが巻回されて回転軸周りに回転可能とされるボビンから前記光ファイバを引き出す光ファイバの引き出し方法であって、
前記光ファイバの引き出し装置は、
前記光ファイバの一端部を保持し、所定の方向に前記ボビンが回転する状態で前記一端部側から前記ボビンに巻回された前記光ファイバの所定部位を引き出した後に、前記所定の方向と反対方向に前記ボビンが回転する状態で前記光ファイバの前記所定部位の一部を前記ボビンに戻すことが可能な第1引き出し部と、
前記第1引き出し部が前記一端部側から前記光ファイバの前記所定部位を引き出した後に、前記光ファイバの他端部を保持し、前記第1引き出し部が前記光ファイバの前記所定部位の前記一部を前記ボビンに戻すときに、前記他端部側から前記ボビンに巻回された前記光ファイバの他の所定部位を引き出すことが可能な第2引き出し部と、
を備え、
前記第1引き出し部が前記光ファイバの
前記一端部を保持する第1保持ステップと、
前記第1保持ステップ後に、
前記第1引き出し部が前記所定の方向に前記ボビンが回転する状態で前記一端部側から前記ボビンに巻回された前記光ファイバの
前記所定部位を引き出する第1引き出しステップと、
前記第1引き出しステップ後に、
前記第2引き出し部が前記光ファイバの
前記他端部を保持する第2保持ステップと、
前記第2保持ステップ後に、
前記第1引き出し部が前記所定の方向と反対方向に前記ボビンが回転する状態で前記光ファイバの前記所定部位の
前記一部を前記ボビンに戻すとともに、
前記第2引き出し部が前記他端部側から前記ボビンに巻回された前記光ファイバの
前記他の所定部位を引き出す第2引き出しステップと、
を備える
ことを特徴とする光ファイバの引き出し方法。
【請求項11】
前記第1引き出しステップにおいて、
前記第1引き出し部は、前記ボビンから引き出す前記光ファイバの前記所定部位に生じる張力が所定の範囲内となるように前記光ファイバの前記所定部位を引き出し、
前記第2引き出しステップにおいて、
前記第1引き出し部は、前記ボビンに戻す前記光ファイバの前記所定部位の前記一部に生じる張力が前記所定の範囲内となるように前記光ファイバの前記所定部位の前記一部を前記ボビンに戻すとともに、
前記第2引き出し部は、前記光ファイバの前記他の所定部位に生じる張力が前記所定の範囲内となるように前記光ファイバの前記他の所定部位を引き出す
ことを特徴とする請求項10に記載の光ファイバの引き出し方法。
【請求項12】
前記第1引き出しステップにおいて、
前記第1引き出し部は、前記光ファイバを巻き取ることで前記一端部側から前記光ファイバの前記所定部位を引き出す
ことを特徴とする請求項10または11に記載の光ファイバの引き出し方法。
【請求項13】
前記第2引き出しステップにおいて、
前記第2引き出し部は、前記光ファイバを巻き取ることで前記他端部側から前記光ファイバの前記他の所定部位を引き出す
ことを特徴とする請求項10から12のいずれか1項に記載の光ファイバの引き出し方法。
【請求項14】
請求項10から13のいずれか1項に記載の光ファイバの引き出し方法によって光ファイバが巻回されるボビンから前記光ファイバの前記一端部側及び前記他端部側を引き出した後に、前記光ファイバの前記一端部及び前記他端部を測定装置に接続して当該測定装置によって前記ボビンに巻回される前記光ファイバの特性を測定する測定ステップを備える
ことを特徴とする光ファイバの検査方法。
【請求項15】
前記測定ステップにおいて、前記ボビンから前記光ファイバの前記一端部側及び前記他端部側を引き出した後に、前記光ファイバの前記一端部及び前記他端部の少なくとも一方を切断して前記光ファイバの一部を得、その後に、前記ボビンに巻回される前記光ファイバの前記一端部及び前記他端部を前記測定装置に接続する
ことを特徴とする請求項14に記載の光ファイバの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの引き出し装置、光ファイバの引き出し方法、及び光ファイバの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、光ファイバの製造工程において、搬送性等の観点から光ファイバはボビンに巻回される。そして、このようにボビンに巻回された光ファイバに対して、OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)等を用いた各種検査が行われる。下記特許文献1には、ボビンに巻回された光ファイバの特性測定装置が記載されている。
【0003】
下記特許文献1の特性測定装置では、ボビンから出される光ファイバの一端に、光源が接続された光ファイバが接続され、ボビンから出される光ファイバの他端に、光検出器が接続された光ファイバが接続される。そして、この特性測定装置は、光源から出射する光をボビンから出される光ファイバの一端に入射させ、光検出器が受光する光量等に基づいてボビンに巻回された光ファイバの特性を測定している。
【0004】
【発明の概要】
【0005】
上記特許文献1に記載の特性測定装置のように、ボビンに巻回された光ファイバに対して行う特性測定では、当該測定を行う準備として、光ファイバの一端側及び他端側をボビンからある程度の長さ引き出す必要がある。一般的に、光ファイバの一端側及び他端側をボビンから引き出す作業は作業者によって行われる。このため、光ファイバの一端側及び他端側をボビンから引き出せる光ファイバの引き出し装置が望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、光ファイバの一端側及び他端側をボビンから引き出せる光ファイバの引き出し装置、光ファイバの引き出し方法、及び光ファイバの検査方法を提供することを目的とする。
【0007】
上記目的の達成のため、本発明は、光ファイバが巻回されて回転軸周りに回転可能とされるボビンから前記光ファイバを引き出す光ファイバの引き出し装置であって、前記光ファイバの一端部を保持し、所定の方向に前記ボビンが回転する状態で前記一端部側から前記ボビンに巻回された前記光ファイバの所定部位を引き出した後に、前記所定の方向と反対方向に前記ボビンが回転する状態で前記光ファイバの前記所定部位の一部を前記ボビンに戻す第1引き出し部と、前記第1引き出し部が前記一端部側から前記光ファイバの前記所定部位を引き出した後に、前記光ファイバの他端部を保持し、前記第1引き出し部が前記光ファイバの前記所定部位の前記一部を前記ボビンに戻すときに、前記他端部側から前記ボビンに巻回された前記光ファイバの他の所定部位を引き出す第2引き出し部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、上記目的の達成のため、本発明は、光ファイバが巻回されて回転軸周りに回転可能とされるボビンから前記光ファイバを引き出す光ファイバの引き出し方法であって、前記光ファイバの一端部を保持する第1保持ステップと、前記第1保持ステップ後に、所定の方向に前記ボビンが回転する状態で前記一端部側から前記ボビンに巻回された前記光ファイバの所定部位を引き出す第1引き出しステップと、前記第1引き出しステップ後に、前記光ファイバの他端部を保持する第2保持ステップと、前記第2保持ステップ後に、前記所定の方向と反対方向に前記ボビンが回転する状態で前記光ファイバの前記所定部位の一部を前記ボビンに戻すとともに、前記他端部側から前記ボビンに巻回された前記光ファイバの他の所定部位を引き出す第2引き出しステップと、を備えることを特徴とする。
【0009】
この光ファイバの引き出し装置、及び光ファイバの引き出し方法では、光ファイバの一端部を保持し、所定の方向にボビンが回転する状態で一端部側からボビンに巻回された光ファイバの所定部位を引き出す。次に、光ファイバの他端部を保持する。そして、上記の所定の方向と反対方向にボビンが回転する状態で他端部側からボビンに巻回された光ファイバの他の所定部位を引き出す。この際、引き出してあった光ファイバの所定部位の一部をボビンに戻すため、ボビンはこのように戻される光ファイバを巻き取る。つまり、ボビンは一端部側から引き出されていた光ファイバの所定部位の一部を巻き取る。更に、ボビンは巻回されている光ファイバを他端部側に繰り出す。そして、他端部側からボビンに巻回された光ファイバの他の所定部位が引き出される。上記のようにボビンが巻き取る光ファイバは、一端部側から引き出されていた光ファイバの所定部位の一部である。従って、この光ファイバの引き出し装置、及び光ファイバの引き出し方法によれば、光ファイバの一端側及び他端側をボビンから引き出すことができる。また、この光ファイバの引き出し装置、及び光ファイバの引き出し方法では、ボビンが回転する状態で光ファイバを引き出すため、引き出された光ファイバに捩じれが生じることを抑制し得る。なお、ボビンは、例えば、光ファイバを引き出す際に引き出される光ファイバに生じる張力によって回転されてもよい。
【0010】
上記の光ファイバの引き出し装置は、前記回転軸周りに前記ボビンを回転させるボビン駆動部を更に備え、前記ボビン駆動部は、前記第1引き出し部が前記一端部側から前記光ファイバの前記所定部位を引き出すときに、前記所定の方向に前記ボビンを回転させ、前記第1引き出し部が前記光ファイバの前記所定部位の前記一部を前記ボビンに戻すときに、前記所定の方向と反対方向に前記ボビンを回転させることとしてもよい。
【0011】
このような構成にすることで、ボビンを回転させるボビン駆動部を備えない場合と比べて、光ファイバを引き出す際に光ファイバに生じる張力を低減し得る。
【0012】
前記第1引き出し部及び前記第2引き出し部の少なくとも一方は、前記光ファイバを前記回転軸と非平行な方向に引き出すこととしてもよい。
【0013】
このような構成にすることで、光ファイバを回転軸と平行な方向に引き出す場合と比べて、例えば意図せずボビンから光ファイバが引き出されて引き出された光ファイバに捩じれが生じることを抑制し得る。
【0014】
前記第1引き出し部は、前記ボビンから引き出す前記光ファイバの前記所定部位に生じる張力が所定の範囲内となるように前記光ファイバの前記所定部位を引き出し、前記ボビンに戻す前記光ファイバの前記所定部位の前記一部に生じる張力が前記所定の範囲内となるように前記光ファイバの前記所定部位の前記一部を前記ボビンに戻し、前記第2引き出し部は、前記光ファイバの前記他の所定部位に生じる張力が前記所定の範囲内となるように、前記光ファイバの前記他の所定部位を引き出すこととしてもよい。
【0015】
この光ファイバの引き出し装置によれば、光ファイバを引き出す際に光ファイバが弛んで当該光ファイバが他の部材等に引っかかることを抑制し得る。また、この光ファイバの引き出し装置によれば、光ファイバを引き出す際に光ファイバに生じる張力が過度に大きくなることを抑制し得る。
【0016】
前記第1引き出し部及び前記第2引き出し部の少なくとも一方は、前記光ファイバを巻き取ることで前記光ファイバを引き出すこととしてもよい。
【0017】
このような構成にすることで、第1引き出し部や第2引き出し部が光ファイバを巻き取らないで光ファイバを引き出す場合と比べて、光ファイバの引き出し装置が大型化することを抑制し得る。
【0018】
第1引き出し部及び第2引き出し部の少なくとも一方が光ファイバを巻き取ることで光ファイバを引き出す場合、前記第1引き出し部及び前記第2引き出し部の少なくとも一方は、所定の軸方向において互いに対向する一対の挟持片からなる挟持部を有し、前記挟持部は、前記一対の挟持片によって前記所定の軸方向に前記光ファイバの端部を挟持し、前記端部を挟持する状態で前記所定の軸周りに回転して前記所定の軸を基準とする外周面に前記光ファイバを巻き取ることで前記光ファイバを引き出すこととしてもよい。
【0019】
この場合、前記一対の挟持片は、切り欠きを有し、前記切り欠きは、少なくとも前記一対の挟持片が前記端部を挟持した状態において前記所定の軸を基準とする前記挟持部の前記外周面に前記所定の軸方向における一端から他端まで延在する溝を形成することとしてもよい。
【0020】
この光ファイバの引き出し装置では、所定の軸を基準とする挟持部の外周面に巻き付けられた光ファイバは、上記の溝を横切り、所定の軸を基準とする挟持部の外周面と当該外周面に巻き付けられた光ファイバとの間の一部に隙間が形成される。従って、この光ファイバの引き出し装置は、挟持部に溝が形成されない場合と比べて、挟持部に巻き取られた光ファイバを把持し易くし得、引き出した光ファイバの取り扱いを容易にし得る。例えば、ボビンと挟持部との間において光ファイバを切断する場合、挟持部に巻き取られた光ファイバにおける溝を横切る部位を把持した後、挟持部による光ファイバの挟持を解くことで、引き出した光ファイバを輪状の状態で採取できる。
【0021】
上記の光ファイバの引き出し装置は、前記回転軸方向における自重によって垂れ下がる前記一端部の位置を示す信号を出力する位置検出部を更に備え、前記第1引き出し部は、前記信号に基づいて自重によって垂れ下がる前記一端部を保持することとしてもよい。また、上記の光ファイバの引き出し装置は、前記回転軸方向における自重によって垂れ下がる前記他端部の位置を示す別の信号を出力する別の位置検出部を更に備え、前記第2引き出し部は、前記別の信号に基づいて自重によって垂れ下がる前記他端部を保持することとしてもよい。
【0022】
また、本発明の光ファイバの検査方法は、上記の光ファイバの引き出し方法によって光ファイバが巻回されるボビンから前記光ファイバの前記一端部側及び前記他端部側を引き出した後に、前記光ファイバの前記一端部及び前記他端部を測定装置に接続して当該測定装置によって前記ボビンに巻回される前記光ファイバの特性を測定する測定ステップを備えることを特徴とするものである。
【0023】
前記測定ステップにおいて、前記ボビンから前記光ファイバの前記一端部側及び前記他端部側を引き出した後に、前記光ファイバの前記一端部及び前記他端部の少なくとも一方を切断して前記光ファイバの一部を得、その後に、前記ボビンに巻回される前記光ファイバの前記一端部及び前記他端部を前記測定装置に接続することとしてもよい。
【0024】
以上のように、本発明によれば、光ファイバの一端側及び他端側をボビンから引き出せる光ファイバの引き出し装置、光ファイバの引き出し方法、及び光ファイバの検査方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るボビンを概略的に示す正面図である。
【
図2】
図1に示すボビンを概略的に示す側面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る光ファイバの引き出し装置を概略的に示す図である。
【
図4】
図3に示す第1引き出し部を拡大して示す図である。
【
図5】
図4に示す第1引き出し部を軸方向から見る図である。
【
図6】光ファイバの引き出し方法のステップを示すフローチャートである。
【
図7】第1引き出し部が光ファイバを巻き取った状態を
図4と同様の方法で示す図である。
【
図8】第1引き出し部が光ファイバを巻き取った状態を
図5と同様の方法で示す図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る第1引き出し部を概略的に示す図である。
【
図10】
図9に示す第1引き出し部を別の方向から見る図である。
【
図11】第1引き出し部が光ファイバを巻き取った状態を
図10と同様の方法で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る光ファイバの引き出し装置、及び光ファイバの引き出し方法の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができる。なお、以下で参照する図面では、理解を容易にするために、各部材の寸法を変えて示す場合がある。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るボビンを概略的に示す正面図であり、
図2は、
図1に示すボビンを概略的に示す側面図である。なお、
図1、
図2において、上側は上方側であり、下側は下方側である。ボビン10は、光ファイバが所定の巻回方向に巻回される部材である。
図1、
図2に示すように、本実施形態のボビン10は、シャフト11と、第1フランジ12と、第2フランジ13と、を有する。
【0028】
シャフト11は、回転軸10aに沿って延在する円筒状の部材であり、シャフト11の外径は回転軸10aに沿って概ね一定とされている。シャフト11の一端部には、シャフト11の外周面から径方向の外方に向かって突出するリブ14が形成されている。このリブ14は、シャフト11の全周に亘って延在している。
【0029】
第1フランジ12及び第2フランジ13は、シャフトの外周面から径方向の外方に向かって突出する板状部材である。第1フランジ12及び第2フランジ13の外形は、回転軸10aを中心とする概ね円形とされる。第1フランジ12と第2フランジ13とは、回転軸10a方向において所定の間隔を開けて離隔している。第2フランジ13は、シャフト11におけるリブ14側と反対側の端部に位置し、第1フランジ12は、回転軸10a方向においてリブ14と第2フランジ13との間に位置している。回転軸10a方向における第1フランジ12と第2フランジ13と距離は、回転軸10a方向における第1フランジ12とリブ14との距離よりも大とされる。第1フランジ12には、当該第1フランジ12を基準とする第2フランジ13側とリブ14側とを連通する連通口16が形成されている。本実施形態の連通口16は、第1フランジ12の外縁からシャフト11側に向かって延在する切り欠きとされている。なお、連通口16は、特に限定されるものではなく、第1フランジ12の厚さ方向に貫通する貫通孔とされてもよい。ボビン10を構成する材料として、例えば樹脂が挙げられる。
【0030】
本実施形態では、シャフト11における第1フランジ12と第2フランジ13との間の部位及び第1フランジ12とリブ14との間の部位に、光ファイバ1が巻回される。具体的には、シャフト11における第1フランジ12と第2フランジ13との間の部位には、光ファイバ1の長手方向における一方側が所定の巻回方向で巻回される。この部位から光ファイバ1の一端部E1が出されている。このため、シャフト11における第1フランジ12と第2フランジ13との間の部位は、光ファイバ1の長手方向における一端部E1側が巻回されて光ファイバ1の一端部E1が出される第1巻回部11aと理解できる。また、光ファイバ1の長手方向における他方側は、連通口16を介してシャフト11における第1フランジ12とリブ14との間の部位に導出され、この部位に上記の所定の巻回方向で巻回される。この部位から光ファイバ1の他端部E2が出されている。このため、シャフト11における第1フランジ12とリブ14との間の部位は、光ファイバ1の長手方向における他端部E2側が巻回されて光ファイバ1の他端部E2が出される第2巻回部11bと理解できる。ここで、
図1、
図2には、回転軸10aが概ね水平方向に延在する状態のボビン10が記載されており、光ファイバ1の一端部E1及び他端部E2は、自重によって垂れ下がっている。なお、上記のように、シャフト11は回転軸10aに沿って延在する円筒状の部材であるため、光ファイバ1は、回転軸10aを中心とした所定の巻回方向でボビン10に巻回されている。このようなボビン10は、回転軸10a周りの所定の方向、例えば
図2における時計回りに回転することで、巻回されている光ファイバ1を一端部E1側に繰り出すことができる。また、このボビン10は、回転軸10a周りの上記所定の方向と反対方向、例えば
図2における反時計回りに回転することで、巻回されている光ファイバ1を他端部E2側に繰り出すことができる。
【0031】
なお、ボビン10は、光ファイバ1が巻回され、回転軸10a周りの所定の方向に回転することで光ファイバ1を一方の端部側に繰り出すことができ、回転軸10a周りの上記所定の方向と反対方向に回転することで光ファイバ1を他方の端部側に繰り出すことができればよい。例えば、第1巻回部11aと第2巻回部11bとが第1フランジ12によって仕切られていなくてもよい。例えば、リブ14に替わって第1フランジ12がシャフト11の一端部に形成されてもよい。
【0032】
また、ボビン10に巻回される光ファイバ1は特に限定されるものではない。光ファイバ1は、例えば、コアとクラッドからなる光ファイバ裸線であってもよく、光ファイバ裸線の外周が被覆層で囲われた光ファイバであってもよい。
【0033】
次に、本実施形態に係る光ファイバ1の引き出し装置20について説明する。
【0034】
図3は、本実施形態に係る光ファイバの引き出し装置を概略的に示す図である。
図3に示すように、本実施形態の光ファイバ1の引き出し装置20は、ボビン駆動部30と、位置検出部40と、第1引き出し部50と、第2引き出し部70と、制御部COと、記憶部MEと、を主な構成として備える。
【0035】
制御部COは、例えば、マイクロコントローラ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large-scale Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの集積回路やNC(Numerical Control)装置から成る。また、制御部COは、NC装置を用いた場合、機械学習器を用いたものであってもよく、機械学習器を用いないものであってもよい。以下に説明するように、光ファイバ1の引き出し装置20の幾つかの構成が制御部COによって制御される。
【0036】
また、制御部COには、記憶部MEが接続されている。記憶部MEは、情報を記憶し、当該記憶した情報を読み出し可能に構成される。この記憶部MEには、後述する制御部COによる引き出し装置20の制御に必要な情報が記憶され、制御部COは適宜記憶部MEに記憶される情報を参照する。記憶部MEとして、例えばROM等の半導体メモリ、磁気ディスク等が挙げられる。
【0037】
ボビン駆動部30は、ボビン10を回転軸10a周りに回転させる部材である。本実施形態のボビン駆動部30は、シャフト31と、軸受部32と、モータ33とを備え、回転軸10aが概ね水平方向に延在する状態で、ボビン10を回転軸10a周りに回転させる。シャフト31は概ね水平方向延在する円柱状の部材とされ、シャフト31の外径はボビン10における円筒状のシャフト11の内径と概ね同じとされる。シャフト31は、ボビン10のシャフト11の内部空間に挿入され、当該シャフト31にボビン10が固定される。このため、シャフト31は回転軸10aに沿って延在し、回転軸10aは概ね水平方向に延在する。シャフト31が回転軸10a周りに回転することでボビン10も回転軸10a周りに回転する。シャフト31は、軸受部32によって回転軸10a周りに回転可能に支持される。シャフト31には、モータ33が接続される。シャフト31は、このモータ33よって回転軸10a周りに回転される。モータ33は、制御部COからの制御信号により、シャフト31の回転速度及び回転方向を調節することで、ボビン10の回転速度及び回転方向を調節する。なお、ボビン駆動部30は、ボビン10を回転軸10a周りに回転させることができればよい。例えば、ボビン駆動部30は、モータ33の駆動力をシャフト31に伝達する動力伝達部を更に備えていてもよい。
【0038】
位置検出部40は、回転軸10a方向における自重によって垂れ下がる一端部E1の位置を検出する部材である。本実施形態の位置検出部40は、光を出射する発光面及び発光面から出射する光を受光する受光面を有するセンサ41と、画像処理部42とを備える。センサ41は、回転軸10aと概ね平行な方向に延在し、ボビン10の下方において発光面と受光面との間に光ファイバ1の一端部E1が位置するように配置される。このため、発光面から出射する光の一部は一端部E1によって遮られ、または反射し、センサ41の受光面には、一端部E1が射影される。また、センサ41は、回転軸10aと垂直で第1フランジ12を通る面、及び回転軸10aと垂直で第2フランジ13を通る面と交わっている。このような位置検出部40では、センサ41は、受光面に射影される一端部E1の射影像を一次元の画像として画像処理部42に出力する。画像処理部42は、この画像に基づいて回転軸10a方向における一端部E1の位置を検出し、この検出した位置を示す信号を制御部COに出力する。このようにして、位置検出部40は、回転軸10a方向における自重によって垂れ下がる一端部E1の位置を検出する。画像処理部42の構成として、例えば制御部COと同様の構成が挙げられ、制御部COが画像処理部42を兼ねてもよい。
【0039】
なお、位置検出部40は、回転軸10a方向における自重によって垂れ下がる一端部E1の位置を検出できればよい。例えば、位置検出部40は、上記センサ41と同様に受光面と発光面とを有するセンサと、当該センサを回転軸10a方向に移動させるとともにセンサの位置を示す信号を出力するセンサ移動部と、を備える構成とされてもよい。この場合、センサが一端部E1を横切る際、発光面から出射する光の一部が一端部E1によって遮られ、または反射し、当該センサの受光量が変化する。このため、例えば、センサ移動部は、センサの受光量が所定の量よりも小さくなる又は大きくなるときのセンサの位置を示す信号を制御部COに出力する。このような位置検出部40であっても、一端部E1の位置を検出できる。また、位置検出部40は、センサ41に替わってボビン10の下方を撮影するカメラを備えてもよい。この場合、カメラは撮影した画像を画像処理部42に出力する。画像処理部42は、カメラから入力する画像に基づいて回転軸10a方向における一端部E1の位置を検出し、この検出した位置を示す信号を制御部COに出力する。ここで、本実施形態では、回転軸10aと垂直かつ水平な方向における一端部E1の位置は、予め記憶部MEに記憶されている。
【0040】
第1引き出し部50は、一端部E1を保持し、一端部E1側からボビン10に巻回された光ファイバ1の所定部位を引き出し、引き出した光ファイバ1の所定部位の一部をボビン10に戻す部材である。また、第2引き出し部70は、他端部E2を保持し、他端部E2側からボビン10に巻回された光ファイバ1の他の所定部位を引き出す部材である。本実施形態では、第1引き出し部50及び第2引き出し部70は、同様の構成とされる。このため、以下では、第1引き出し部50について説明し、第2引き出し部70についてはその説明を適宜省略する。
【0041】
図4は、
図3に示す第1引き出し部50を拡大して示す図である。
図3、
図4に示すように、本実施形態の第1引き出し部50は、挟持部51と、支持部55と、駆動部56とを備える。また、第1引き出し部50は、不図示の移動装置によって、センサ41よりも下方における所望の位置や不図示の処理装置等の近傍に配置可能とされている。制御部COは、この移動装置に、第1引き出し部50を所望の位置に配置させる。移動装置として、例えば、支持部55を把持するロボットアームなどが挙げられる。
【0042】
挟持部51は、軸51a方向において互いに対向する一対の挟持片52からなる。本実施形態では、軸51aは回転軸10aと概ね平行に延在し、一対の挟持片52のそれぞれは本体部52aと当接部52bとを有する。それぞれの本体部52aは、軸51aを中心とする円形の板状部材とされ、これら本体部52aの外径は概ね同じとされる。それぞれの当接部52bは、本体部52aにおける他方の本体部52aと対向する側の面に取り付けられるシート状の弾性部材とされる。それぞれの当接部52bの外形は、軸51aを中心とする円形とされ、これら当接部52bの外径は概ね同じであり、本体部52aの外径よりも小とされる。このため、それぞれの挟持片52における他方の挟持片52と対向する側の面には、外縁に沿う凹部61が形成される。つまり、それぞれの挟持片52は、他方の挟持片52と対向する側の面に、凹部61を有していると理解できる。また、これら当接部52bは、軸51a方向において、互いに重なっている。なお、それぞれの挟持片52は、凹部61を有していなくてもよい。また、軸51aの延在方向は限定されるものではなく、例えば、軸51aは回転軸10aと概ね垂直かつ概ね水平方向に延在していてもよい。本体部52aを構成する材料として、例えばアルミ等の金属が挙げられ、当接部52bを構成する材料として、例えばゴムが挙げられる。
【0043】
図5は、
図4に示す第1引き出し部50を軸51a方向から見る図である。
図5に示すように、それぞれの挟持片52は、本体部52aの外縁から当接部52bの外縁よりも軸51a側まで延在する切り欠き60を有する。本実施形態では、軸51a方向から見る場合のそれぞれの挟持片52における切り欠き60の外縁は概ね一致している。なお、それぞれの挟持片52は、切り欠き60を有していなくてもよい。
【0044】
また、
図4に示すように、それぞれの挟持片52には、本体部52aから他の挟持片52側と反対側において軸51aに沿って延在する円柱状のシャフト53が固定される。それぞれのシャフト53は、支柱54に軸51a周りに回転可能に支持され、これらのシャフト53には、当該シャフト53に生じるトルクを計測するとともに計測値に応じた信号を制御部COに出力する不図示のトルクセンサが取り付けられている。なお、このトルクセンサは、一方のシャフト53のみに取り付けられてもよい。
【0045】
支持部55は、挟持部51を支持する部材である。本実施形態では、支持部55は水平方向に延在する板状部材とされ、支持部55の上面55Sは、軸51aと概ね平行な平面とされる。上記のそれぞれの支柱54は、支持部55の上面55S上に移動可能に取り付けられる。具体的には、それぞれの支柱54が軸51aと平行な方向に移動して一対の挟持片52の当接部52bが互いに当接する状態と、一対の挟持片52の当接部52bが離隔する状態とに切り替えられるように、それぞれの支柱54は上面55S上に取り付けられる。このように、それぞれの支柱54が支持部55に取り付けられることで、挟持部51が支持部55によって支持される。なお、挟持部51は支持部55と離隔している。
【0046】
本実施形態の駆動部56は、それぞれの挟持片52を軸51aに沿って移動させ、挟持部51を軸51a周りに回転させる部材である。駆動部56は、一対のシリンダ57と、一対のモータ58とを備える。一方のシリンダ57は、一方の支柱54を軸51aに沿って移動さ、他方のシリンダ57は他方の支柱54を軸51aに沿って移動させる。一方のモータ58は一方の挟持片52を軸51a周りに回転させ、他方のモータ58は他方の挟持片52を軸51a周りに回転させる。一対のシリンダ57は、当該一対のシリンダの間に2つの支柱54が位置するとともに軸51aと概ね平行となるように、支持部55の上面55S上に取り付けられる。一方のロッド57rの先端は、一方の支柱54に固定され、他方のロッド57rの先端は、他方の支柱54に固定される。それぞれのシリンダ57は、ロッド57rを移動させることで当該ロッド57rの先端が固定される支柱54を軸51aに沿って移動させる。そして、第1引き出し部50は、一対のシリンダ57によって、挟持部51を、一対の挟持片52の当接部52bが互いに当接する状態と、一対の挟持片52の当接部52bが離隔する状態とに切り替え可能とされている。一対のシリンダ57は、制御部COからの制御信号により、ロッド57rの押し出し量を調節して、一対の挟持片52の当接部52bが互いに当接する状態と、一対の挟持片52の当接部52bが離隔する状態とを切り替える。なお、シリンダ57の数は1つとされもよい。この場合、例えば、シリンダ57のロッド57rが接続されない支柱54は、支持部55に固定される。
【0047】
一方のモータ58には、一方の挟持片52に固定されるシャフト53が接続され、このモータ58は、このシャフト53を軸51a周り回転させて、一方の挟持片52を軸51a周りに回転させる。他方のモータ58には、他方の挟持片52に固定されるシャフト53が接続され、このモータ58は、このシャフト53を軸51a周りに回転させて、他方の挟持片52を軸51a周りに回転させる。一対のモータ58は同期して駆動し、一方の挟持片52と他方の挟持片52が同期して同じ回転方向に概ね同じ速度で回転する。つまり、一対のモータ58によって、挟持部51が軸51a周りに回転する。このため、挟持部51は、軸51a方向から見る場合の一対の挟持片52における切り欠き60の外縁がずれることが抑制されながら軸51a周りに回転する。一対のモータ58は、制御部COからの制御信号により、シャフト53の回転速度及び回転方向を調節することで、挟持部51の回転速度及び回転方向を調節する。なお、モータ58の数は1つとされてもよい。この場合、例えば、モータ58は、ギヤ等から構成される伝達部材を介して、一方の挟持片52に固定されるシャフト53及び他の挟持片52に固定されるシャフト53に接続される。
【0048】
図3に示すように、第2引き出し部70は、ボビン10における第2巻回部11bの下方において、光ファイバ1の他端部E2が挟持部51における一対の挟持片52の間に位置するように配置される。なお、挟持部51における一対の挟持片52が最も離隔した状態における一対の挟持片52間の距離は、ボビン10の第2巻回部11bにおける回転軸10a方向の幅よりも大とされる。このため、他端部E2の位置が回転軸10a方向に移動しても他端部E2を一対の挟持片52の間に位置させることができる。なお、第2引き出し部70は、第1引き出し部50と同様に、移動装置によって所望の位置や不図示の処理装置等の近傍に配置可能とされている。
【0049】
次に、本実施形態に係る光ファイバ1の引き出し方法、及び光ファイバ1の検査方法について説明する。具体的には、光ファイバ1の一端部E1側及び他端部E2側をボビン10から引き出す方法、及び光ファイバ1の検査方法について説明する。
【0050】
図6は、本実施形態に係る光ファイバ1の引き出し方法、及び光ファイバ1の検査方法のステップを示すフローチャートである。
図6に示すように、本実施形態の光ファイバ1の引き出し方法は、第1保持ステップST1と、第1引き出しステップST2と、第2保持ステップST3と、第2引き出しステップST4と、を備える。また、光ファイバ1の検査方法は、これらステップによりボビン10から一端部E1側及び他端部E2側が引きだされた光ファイバ1の一端部E1及び他端部E2を測定装置に接続して当該測定装置によってボビン10に巻回される光ファイバ1の特性を測定する測定ステップST5を備える。
【0051】
<第1保持ステップST1>
本ステップは、
図3に示す光ファイバ1の引き出し装置20における第1引き出し部50によってボビン10に巻回される光ファイバ1の一端部E1を保持するステップである。本実施形態では、制御部COは、位置検出部40に、回転軸10a方向における自重によって垂れ下がる一端部E1の位置を検出させる。そして、制御部COは、記憶部MEに記憶される情報及び位置検出部40から入力する信号に基づいて、不図示の移動装置を制御し、光ファイバ1の一端部E1が挟持部51における一対の挟持片52の当接部52b間に位置するように第1引き出し部50を移動させる。このようにして移動した第1引き出し部50における軸51aとボビン10の回転軸10aとは概ね平行に維持される。次に、制御部COは、第1引き出し部50のシリンダ57に、挟持部51における一対の挟持片52の当接部52bを互いに当接させる。この挟持部51は、一対の挟持片52によって軸51a方向に一端部E1を挟持する。このようにして、第1引き出し部50は、挟持部51によって光ファイバ1の一端部E1を保持する。このため、第1引き出し部50は、回転軸10a方向における自重によって垂れ下がる一端部E1の位置を示す信号に基づいて一端部E1を保持すると理解できる。
【0052】
<第1引き出しステップST2>
本ステップは、所定の方向にボビン10が回転する状態で一端部E1側からボビン10に巻回された光ファイバ1の所定部位を引き出すステップである。
【0053】
制御部COは、ボビン駆動部30におけるモータ33に、ボビン10を回転軸10a周りに所定の速度で回転させる。ボビン10の回転方向である所定の方向は、ボビン10に巻回された光ファイバ1が一端部E1側に繰り出される方向である。
【0054】
また、制御部COは、第1引き出し部50のモータ58に、挟持部51を所定の回数だけ回転させる。挟持部51は、一端部E1を挟持している。このため、挟持部51が回転することで、
図7に示すように、軸51aを基準とする挟持部51の外周面に光ファイバ1が巻き付けられる。つまり、第1引き出し部50は、上記の方向にボビン10が回転する状態で、挟持部51のこの外周面に光ファイバ1を巻き取り、一端部E1側からボビン10に巻回された光ファイバ1の所定部位を引き出す。この際、第1引き出し部50は、ボビン10の回転軸10aと非平行な方向であって、回転軸10a概ね垂直な方向に光ファイバ1を引き出す。制御部COは、挟持部51が所定の回数だけ回転したとき、ボビン駆動部30におけるモータ33に、ボビン10の回転を停止させる。なお、この所定の回数は、ボビン10に巻回された光ファイバ1の所定部位が引き出されるような回数とされる。ここで、光ファイバ1のうちボビン10から引き出される部位の条長をLとし、挟持部51の直径をDとし、挟持部51の回転数をnとする場合、Lは概ねD×π×nとなる。
【0055】
本実施形態では、このように挟持部51によって光ファイバ1を巻き取る際、制御部COは、シャフト53に生じるトルクを計測する不図示のトルクセンサから入力する信号に基づいて、この計測値が所定の範囲内となるようにモータ58を制御する。巻き取る光ファイバ1に生じる張力は、シャフト53に生じるトルクが大きくなるにつれて大きくなる傾向にある。このため、制御部COは、上記のようにモータ58を制御することで、挟持部51が巻き取る光ファイバ1に生じる張力が所定の範囲内となるようにできる。つまり、第1引き出し部50は、ボビン10から引き出す光ファイバ1の上記の所定部位に生じる張力が所定の範囲内となるように光ファイバ1の上記の所定部位を引き出す。なお、制御部COは、モータ58に、挟持部51を所定の速度で回転させてもよい。
【0056】
ここで、前述のように、挟持部51の挟持片52は、他方の挟持片52と対向する側の面に、外縁に沿う凹部61を有している。そして、一対の挟持片52の当接部52bを互いに当接させて一端部E1を挟持することで、軸51aを基準とする挟持部51の外周面に凹部61からなる溝62が形成される。このため、第1引き出し部50は、挟持部51に巻き取られる光ファイバ1をこの溝62内に収容させることができる。なお、それぞれの挟持片52における他方の挟持片52と対向する側の面には、少なくとも一端部E1を挟持する状態で挟持部51における軸51aを基準とする外周面に溝62を形成する凹部61を有していると理解できる。
【0057】
また、前述のように、一対の挟持片52は、本体部52aの外縁から当接部52bの外縁よりも軸51a側まで延在する切り欠き60を有している。また、挟持部51は、軸51a方向から見る場合の一対の挟持片52における切り欠き60の外縁がずれることが抑制されながら回転する。このため、
図8に示すように、少なくとも一端部E1を挟持した状態において軸51aを基準とする挟持部51の外周面に軸51a方向における一端から他端まで延在する溝63が切り欠き60によって形成される。つまり、一対の挟持片52は、このような溝63を形成する切り欠き60を有していると理解できる。そして、挟持部51に巻き取られた光ファイバ1はこの溝63を横切る。
【0058】
<第2保持ステップST3>
本ステップは、第2引き出し部70によってボビン10に巻回される光ファイバ1の他端部E2を保持するステップである。制御部COは、第1保持ステップST1での第1引き出し部50のシリンダ57と同様に、第2引き出し部70のシリンダ57を制御する。そして、挟持部51における一対の挟持片52に光ファイバ1における自重によって垂れ下がる他端部E2を保持させる。このため、第2引き出し部50は、自重によって垂れ下がる他端部E2を保持すると理解できる。
【0059】
<第2引き出しステップST4>
本ステップは、第1引き出しステップST2における所定の方向と反対方向にボビン10が回転する状態で第1引き出しステップST2において引き出した光ファイバ1の所定部位の一部をボビン10に戻すとともに、他端部E2側からボビン10に巻回された光ファイバ1の他の所定部位を引き出すステップである。
【0060】
制御部COは、ボビン駆動部30におけるモータ33に、ボビン10を回転軸10a周りに所定の速度で回転させる。ボビン10の回転方向は、ボビン10に巻回された光ファイバ1が他端部E2側に繰り出される方向である。
【0061】
また、制御部COは、第1引き出し部50のモータ58に、挟持部51を所定の回数だけ回転させる。この回転方向は、第1引き出しステップST2における回転方向と逆方向であり、この回転数は、第1引き出しステップST2における回転数よりも小とされる。このため、第1引き出しステップST2において引き出した光ファイバ1の所定部位の一部がボビン10に戻される。この際、回転しているボビン10は、第1引き出し部50によって一端部E1側から引き出されていた光ファイバ1の所定部位の一部を巻き取る。そして、制御部COは、第1引き出し部50における挟持部51が所定の回数だけ回転したとき、ボビン駆動部30におけるモータ33に、ボビン10の回転を停止させる。
【0062】
このように第1引き出し部50から光ファイバ1をボビン10に戻しつつボビン10に光ファイバ1を巻き取らせる際、制御部COは、不図示のトルクセンサから入力する信号に基づいて、第1引き出し部50から戻す光ファイバ1に生じる張力が所定の範囲内となるように、モータ58を制御する。つまり、第1引き出し部50は、ボビン10に戻す光ファイバ1の上記の所定部位の一部に生じる張力が所定の範囲内となるように光ファイバ1の上記の所定部位の一部をボビン10に戻す。
【0063】
また、制御部COは、第2引き出し部70のモータ58に、挟持部51を軸51a周りに回転させる。挟持部51は、他端部E2を挟持している。このため、挟持部51が回転することで、第1引き出しステップST2における第1引き出し部50の挟持部51と同様に、軸51aを基準とする挟持部51の外周面に光ファイバ1が巻き付けられる。つまり、第2引き出し部70は、挟持部51のこの外周面に光ファイバ1を巻き取り、他端部E2側からボビン10に巻回された光ファイバ1の他の所定部位を引き出す。この際、第2引き出し部70は、ボビン10の回転軸10aと非平行な方向であって、回転軸10a概ね垂直な方向に光ファイバ1を引き出す。制御部COは、第1引き出し部50における挟持部51が所定の回数だけ回転したとき、第2引き出し部70のモータ58に、挟持部51の回転を停止させる。
【0064】
このように第2引き出し部70の挟持部51によって光ファイバ1を巻き取る際、制御部COは、不図示のトルクセンサから入力する信号に基づいて、巻き取る光ファイバ1に生じる張力が所定の範囲内となるように、モータ58を制御する。つまり、第2引き出し部70は、光ファイバ1の上記の他の所定部位に生じる張力が所定の範囲内となるように、光ファイバ1の上記の他の所定部位を引き出す。
【0065】
また、第1引き出し部50の挟持部51と同様に、第2引き出し部70の挟持部51が他端部E2を挟持する状態では、軸51aを基準とする挟持部51の外周面に凹部61からなる溝62が形成される。そして、第2引き出し部70は、挟持部51に巻き取られる光ファイバ1をこの溝62内に収容させることができる。
【0066】
ここで、本ステップにおいてボビン10が巻き取る光ファイバ1は、第1引き出しステップST2において第1引き出し部50によって一端部E1側から引き出されていた光ファイバ1の所定部位の一部である。つまり、第2引き出しステップST4が終了した後のボビン10では、光ファイバ1の引き出しを開始する前と比べて、一端部E1側から光ファイバ1が引き出された状態である。このようにして、光ファイバ1の一端部E1側及び他端部E2側がボビン10から引き出される。
【0067】
なお、ボビン10から引き出される光ファイバ1のうち、一端部E1側の長さは、引き出した光ファイバ1の所定部位の長さから光ファイバ1の他端部E2側を引き出す際に戻した光ファイバ1の長さを減算した長さである。このようにしてボビン10から引き出す一端部E1側の長さ及び他端部E2側の長さは、例えば、ボビン10と後述する処理装置の距離、当該処理装置が行う処理等に応じて適宜設定される。この一端部E1側の長さと他端部E2側の長さは異なっていてもよく、概ね同じとされてもよい。
【0068】
<測定ステップST5>
本ステップは、光ファイバ1の特性を測定するステップである。まず、光ファイバ1の引き出し装置20は、このようにして引き出した光ファイバ1の両端部を不図示の処理装置の近傍に位置させる。具体的には、制御部COは、不図示の移動装置を制御し、第1引き出し部50及び第2引き出し部70を処理装置の近傍まで移動させる。この際、制御部COは、第1引き出し部50のモータ58及び第2引き出し部70のモータ58に、挟持部51に巻き取られた光ファイバ1が当該挟持部51から繰り出されるように挟持部51を回転させる。なお、制御部COは、第1引き出しステップST2や第2引き出しステップST4と同様に、第1引き出し部50及び第2引き出し部70の挟持部51から繰り出される光ファイバ1に生じる張力が所定の範囲内となるように、これらモータ58を制御する。そして、制御部COは、第1引き出し部50及び第2引き出し部70が処理装置の近傍まで移動した際にこれらモータ58の回転を停止する。処理装置は、例えば、ボビン10と第1引き出し部50の挟持部51との間において光ファイバ1の一端部E1を切断して、光ファイバ1から切り離された当該光ファイバ1の一部、例えば数m程度の短尺の光ファイバを第1サンプルとして採取する。このようにして採取された第1サンプルは、例えば、第1測定装置に搬送され、当該第1測定装置は、第1サンプルを用いて、光ファイバの構造パラメータや光学的パラメータを測定する。また、処理装置は、このように第1サンプルを得た後に、ボビン10に巻かれている長尺の光ファイバ1の一端部E1及び他端部E2に被覆層の除去や端面を平坦な面にする加工等の所定の処理を行い、これら一端部E1及び他端部E2を不図示の第2測定装置に接続する。そして、一端部E1及び他端部E2が接続される第2測定装置は長尺の光ファイバ1の特性を測定する。この第2測定装置として、例えばOTDRが挙げられる。また、処理装置は、上記の短尺の光ファイバを採取した後に挟持部51に残る光ファイバを採取して当該光ファイバを第2サンプルとして保管する。このため、ボビン10から光ファイバ1の一端部E1側及び他端部E2側を引き出した後に、処理装置は光ファイバ1の一端部E1を切断して光ファイバ1の一部として第1サンプル及び第2サンプルを得、その後に、ボビン10に巻回される光ファイバ1の一端部E1及び他端部E2を第2測定装置に接続すると理解できる。
【0069】
このようにして、本実施形態では、光ファイバ1の検査が行われる。
【0070】
なお、処理装置は、ボビン10から光ファイバ1の一端部E1側及び他端部E2側が引き出された後に、光ファイバ1の一端部E1及び他端部E2を第2測定装置に接続すればよい。例えば、処理装置は、光ファイバ1の一端部E1及び他端部E2の少なくとも一方を切断して光ファイバ1の一部を得、その後に、ボビン10に巻回される光ファイバ1の一端部E1及び他端部E2を第2測定装置に接続してもよい。また、処理装置によって得られる光ファイバ1の一部はサンプルでなくてもよい。また、処理装置は、光ファイバ1の一部を得ずに、ボビン10に巻回される光ファイバ1の一端部E1及び他端部E2を第2測定装置に接続してもよい。また、光ファイバ1の一部としての第1サンプルや第2サンプルの採取、ボビン10に巻回される光ファイバ1の一端部E1及び他端部E2の第2測定装置への接続等は、作業者が行ってもよい。
【0071】
以上説明したように、本実施形態の光ファイバ1の引き出し方法は、第1保持ステップST1と、第1引き出しステップST2と、第2保持ステップST3と、第2引き出しステップST4と、を備える。また、本実施形態の光ファイバ1の引き出し装置20は、第1引き出し部50と、第2引き出し部70と、を備える。そして、本実施形態の光ファイバ1の引き出し方法、及び光ファイバ1の引き出し装置20によれば、上記のように、光ファイバ1の一端側である一端部E1側及び他端側である他端部E2側をボビン10から引き出すことができる。
【0072】
また、本実施形態の光ファイバ1の引き出し方法、及び光ファイバ1の引き出し装置20では、ボビン10が回転する状態で光ファイバ1を引き出すため、引き出された光ファイバ1に捩じれが生じることを抑制し得る。
【0073】
また、本実施形態の光ファイバ1の引き出し装置20は、回転軸10a周りにボビン10を回転させるボビン駆動部30を更に備える。ボビン駆動部30は、第1引き出し部50が一端部E1側から光ファイバ1の所定部位を引き出すときに、所定の方向にボビン10を回転させる。また、ボビン駆動部30は、第2引き出し部70が他端部E2側から光ファイバ1の他の所定部位を引き出すときに、所定の方向と反対方向にボビン10を回転させる。このため、本実施形態の光ファイバ1の引き出し装置20は、ボビン10を回転させるボビン駆動部30を備えない場合と比べて、光ファイバ1を引き出す際に光ファイバ1に生じる張力を低減し得る。
【0074】
また、本実施形態の光ファイバ1の引き出し装置20では、第1引き出し部50及び第2引き出し部70は、光ファイバ1をボビン10の回転軸10aと非平行な方向に引き出す。このため、光ファイバ1を回転軸10aと平行な方向に引き出す場合と比べて、例えば意図せずボビン10から光ファイバ1が引き出されて引き出された光ファイバ1に捩じれが生じることを抑制し得る。なお、ねじれを抑制する観点では、光ファイバ1をボビン10の回転軸10aと概ね垂直な方向に引き出すことが好ましい。
【0075】
また、本実施形態の光ファイバ1の引き出し装置20では、第1引き出し部50は、ボビン10から引き出す光ファイバ1の所定部位に生じる張力が所定の範囲内となるように光ファイバ1の所定部位を引き出す。また、第1引き出し部50は、ボビン10に戻す光ファイバ1の所定部位の一部に生じる張力が所定の範囲内となるように光ファイバ1の所定部位の一部をボビン10に戻す。また、第2引き出し部70は、光ファイバ1の他の所定部位に生じる張力が所定の範囲内となるように、光ファイバ1の他の所定部位を引き出す。このため、本実施形態の光ファイバ1の引き出し装置20は、光ファイバ1を引き出す際に光ファイバ1が弛んで当該光ファイバ1が他の部材等に引っかかることを抑制し得る。また、本実施形態の光ファイバ1の引き出し装置20は、光ファイバ1を引き出す際に光ファイバ1に生じる張力が過度に大きくなることを抑制し得る。
【0076】
また、本実施形態の光ファイバ1の引き出し装置20では、第1引き出し部50及び第2引き出し部70は、光ファイバ1を巻き取ることで光ファイバ1を引き出す。このため、本実施形態の光ファイバ1の引き出し装置20によれば、第1引き出し部50や第2引き出し部70が光ファイバ1を巻き取らないで光ファイバ1を引き出す場合と比べて、光ファイバ1の引き出し装置20が大型化することを抑制し得る。
【0077】
また、本実施形態の光ファイバ1の引き出し装置20では、第1引き出し部50及び第2引き出し部70は、軸51a方向において互いに対向する一対の挟持片52からなる挟持部51を有する。挟持部51は、一対の挟持片52によって軸51a方向に一端部E1を挟持する。そして、挟持部51は、光ファイバ1の端部E1,E2を挟持する状態で軸51a周りに回転して軸51aを基準とする外周面に光ファイバ1を巻き取ことで光ファイバ1を引き出す。また、一対の挟持片52は、切り欠き60を有する。切り欠き60は、少なくとも一対の挟持片52が一端部E1を挟持した状態において軸51aを基準とする挟持部51の外周面に軸51a方向における一端から他端まで延在する溝63を形成する。このため、挟持部51の上記の外周面に巻き付けられた光ファイバ1は、上記の溝63を横切り、挟持部51の上記の外周面と当該外周面に巻き付けられた光ファイバ1との間の一部に隙間が形成される。従って、本実施形態の光ファイバ1の引き出し装置20は、挟持部51に溝63が形成されない場合と比べて、挟持部51に巻き取られた光ファイバ1を把持し易くし得、第1引き出し部50や第2引き出し部70によって引き出した光ファイバ1の取り扱を容易にし得る。例えば、ボビン10と挟持部51との間において光ファイバ1を切断する場合、挟持部51に巻き取られた光ファイバ1における溝63を横切る部位を把持した後、挟持部51による光ファイバ1の挟持を解くことで、引き出した光ファイバ1を輪状の状態で採取できる。
【0078】
また、本実施形態の光ファイバ1の引き出し装置20では、制御部COは、位置検出部40から入力する信号に基づいて、第1引き出し部50を移動させ、当該第1引き出し部50に光ファイバ1の一端部E1を保持させる。このため、第1引き出し部50は、回転軸10a方向における自重によって垂れ下がる一端部E1の位置を示す信号に基づいて一端部E1を保持する。また、第2引き出し部70は、他端部E2が一対の挟持片52の間に位置するように配置され、制御部COは、当該第2引き出し部70に光ファイバ1の他端部E2を保持させる。このため、光ファイバ1の引き出し装置20は、自動的に光ファイバ1の一端部E1側及び他端部E2側をボビン10から引き出し得る。
【0079】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図9及び
図10を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して特に説明する場合を除き重複する説明は省略する。
【0080】
本実施形態における光ファイバ1の引き出し方法は、第1実施形態と同様に、第1保持ステップST1と、第1引き出しステップST2と、第2保持ステップST3と、第2引き出しステップST4と、を備える。しかし、本実施形態では、光ファイバ1の引き出し装置20における第1引き出し部の構成が第1実施形態の第1引き出し部50の構成と異なる。
【0081】
図9は、本発明の第2実施形態に係る第1引き出し部を概略的に示す図であり、第1引き出し部を上方側から見る図である。また、
図10は、
図9に示す第1引き出し部を別の方向から見る図であり、後述する所定の軸151a方向から見る図である。
図9、
図10に示すように、本実施形態の第1引き出し部150は、挟持部151と、支持部155と、駆動部156と、基台部159と、を備える。本実施形態の第1引き出し部150は、第1実施形態と同様に、不図示の移動装置によって、センサ41よりも下方における所望の位置に配置可能とされている。制御部COは、この移動装置に、第1引き出し部150を所望の位置に配置させる。移動装置として、例えば、基台部159を把持するロボットアームなどが挙げられる。
【0082】
挟持部151は、所定の軸151a方向と概ね垂直な方向において互いに対向する一対の挟持片152からなる。本実施形態では、軸151aは回転軸10aと概ね平行に延在し、一対の挟持片152のそれぞれは本体部152aと当接部152bとを有する。それぞれの本体部152aは、軸151a方向に延在し、他方の本体部152aと対向する側が平面とされる概ね半円柱状の部材とされる。これら本体部152aにおける他方の本体部152aと対向する側の平面は、概ね平行とされる。それぞれの当接部152bは、本体部152aにおける他方の本体部152aと対向する側の平面に取り付けられるシート状の弾性部材とされる。それぞれの当接部152bの外形は、軸151a方向に長尺な長方形とされ、これら当接部152bの短尺な方向の幅は、本体部152aにおける当接部152bが取り付けられる平面の幅よりも小とされる。そして、挟持片152における他方の挟持片152と対向する側の面には、外縁に沿う凹部161が形成されている。また、これら当接部152bは、一対の挟持片152が対向する方向において、互いに重なっている。本体部152aを構成する材料として、例えばアルミ等の金属が挙げられ、当接部152bを構成する材料として、例えばゴムが挙げられる。
【0083】
支持部155は、挟持部151を支持する部材である。本実施形態では、支持部155は、軸151aと概ね垂直な方向に延在する板状部材とされ、支持部155の一方側の面155Sは、軸151aと概ね垂直な平面とされる。挟持部151の一方の挟持片152は、支持部155の面155S上に固定される。また、他方の挟持片152は、支持部155の面155S上に移動可能に取り付けられる。具体的には、当該他方の挟持片152が一対の挟持片152が対向する方向に移動して一対の挟持片152の当接部152bが互いに当接する状態と、一対の挟持片152の当接部152bが離隔する状態とに切り替えられるように、他方の挟持片152が面155S上に取り付けられる。このように挟持部151が支持部155によって支持される。また、支持部155には、一対の挟持片152が位置する側と反対側において軸151aに沿って延在する円柱状のシャフト153が固定される。このシャフト153には、当該シャフト153に生じるトルクを計測するとともに計測値に応じた信号を制御部COに出力する不図示のトルクセンサが取り付けられている。
【0084】
本実施形態の駆動部156は、上記の他方の挟持片152を一対の挟持片152が対向する方向に移動させ、挟持部151を軸151a周りに回転させる部材である。駆動部156は、上記の他方の挟持片152を一対の挟持片152が対向する方向に移動させるシリンダ57と、挟持部151を支持する支持部155を軸151a周りに回転させるモータ158とを備える。シリンダ157は、支持部155の面155S上に取り付けられる。シリンダ157におけるロッド157rの先端は、上記の他方の挟持片152に固定される。このシリンダ157は、ロッド157rを移動させることで上記の他方の挟持片152を一対の挟持片152が対向する方向に移動させる。そして、第1引き出し部150は、このシリンダ157によって、挟持部151を、一対の挟持片152の当接部152bが互いに当接する状態と、一対の挟持片152の当接部152bが離隔する状態とに切り替え可能とされている。シリンダ157は、制御部COからの制御信号により、この切り替えを行う。
【0085】
モータ158には、支持部155に固定されるシャフト153が接続される。モータ158は、このシャフト153を軸151a周り回転させて、挟持部151を軸151a周りに回転させる。モータ158は基台部159に固定される。モータ158は、制御部COからの制御信号により、軸151a周りのシャフト153の回転速度及び回転方向を調節することで、軸151a周りの挟持部51の回転速度及び回転方向を調節する。
【0086】
本実施形態の第1保持ステップST1では、制御部COは、第1実施形態と同様に、不図示の移動装置を制御する。そして、制御部COは、移動装置に、光ファイバ1の一端部E1が挟持部51における一対の挟持片152の当接部152b間に位置するように、第1引き出し部150を移動させる。次に、制御部COは、第1引き出し部150のシリンダ157を制御し、挟持部151における一対の挟持片152に、一端部E1を挟持させる。
【0087】
また、本実施形態の第1引き出しステップST2では、所定の方向にボビン10が回転している状態で、制御部COは、第1引き出し部150のモータ158に、挟持部151を所定の回数だけ回転させる。挟持部151は、一端部E1を挟持しているため、
図11に示すように、軸151aを基準とする挟持部51の外周面に光ファイバ1が巻き付けられる。つまり、第1引き出し部150は、上記の所定の方向にボビン10が回転する状態で、挟持部151のこの外周面に光ファイバ1を巻き取り、一端部E1側からボビン10に巻回された光ファイバ1の所定部位を引き出す。そして、挟持部151が所定の回数だけ回転したとき、制御部COは、ボビン駆動部30におけるモータ33に、ボビン10の回転を停止させる。
【0088】
ここで、前述のように、挟持部151の挟持片152における他方の挟持片152と対向する側の面には、外縁に沿う凹部161が形成されている。そして、
図11に示すように、少なくとも一端部E1を挟持した状態において、軸151aを基準とする挟持部151の外周面に軸151a方向における一端から他端まで延在する溝163が凹部161によって形成される。つまり、一対の挟持片152はそれぞれ凹部161を有し、この凹部161は、少なくとも一端部E1を挟持した状態において、軸151aを基準とする挟持部151の外周面に軸151a方向における一端から他端まで延在する溝163を形成すると理解できる。そして、挟持部151に巻き取られた光ファイバ1はこの溝163を横切る。このため、本実施形態の光ファイバ1の引き出し装置20によれば、挟持部151に溝163が形成されない場合と比べて、挟持部151に巻き取られた光ファイバ1を把持し易くし得、第1引き出し部150によって引き出した光ファイバ1の取り扱いを容易にし得る。
【0089】
本実施形態では、このように挟持部151によって光ファイバ1を巻き取る際、制御部COは、第1実施形態と同様に、シャフト153に生じるトルクを計測する不図示のトルクセンサから入力する信号に基づいて、この計測値が所定の範囲内となるようにモータ158を制御する。そして、第1引き出し部50は、光ファイバ1に生じる張力が所定の範囲内となるように、光ファイバ1を引き出す。なお、制御部は、モータ158に挟持部151を所定の速度で回転させてもよい。
【0090】
また、本実施形態の第2引き出しステップST4では、所定の方向と反対方向にボビン10が回転している状態で、制御部COは、第1引き出し部150のモータ158に、挟持部151を所定の回数だけ回転させる。そして、第1引き出し部150は、第1引き出しステップST2において引き出した光ファイバ1の所定部位の一部をボビン10に戻す。ボビン10は第1引き出し部150によって一端部E1側から引き出されていた光ファイバ1の所定部位の一部を巻き取る。そして、第1引き出し部150における挟持部151が所定の回数だけ回転したとき、制御部COは、ボビン駆動部30におけるモータ33に、ボビン10の回転を停止させる。
【0091】
このように第1引き出し部150から光ファイバ1をボビン10に戻しつつボビン10に光ファイバ1を巻き取らせる際、第1引き出し部50は、第1実施形態と同様にして、光ファイバ1に生じる張力が所定の範囲内となるように、光ファイバ1を戻す。
【0092】
第2引き出し部70は、第1実施形態と同様にして、他端部E2側からボビン10に巻回された光ファイバ1の他の所定部位を引き出す。このように、本実施形態の光ファイバの引き出し方法、及び光ファイバの引き出し装置20であっても、光ファイバ1の一端側である一端部E1側及び他端側である他端部E2側をボビン10から引き出すことができる。
【0093】
以上、本発明について、上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0094】
例えば、上記実施形態では、ボビン10が回転する状態で光ファイバ1を巻き取ることで一端部E1側から光ファイバの所定部位を引き出し、引き出した光ファイバの所定部位の一部をボビンに戻す第1引き出し部50,150を例に説明した。また、ボビン10が回転する状態で光ファイバ1を巻き取ることで他端部E2側から光ファイバ1の他の所定部位を引き出す第2引き出し部70を例に説明した。しかし、第1引き出し部は、ボビン10が回転する状態で一端部E1側から光ファイバの所定部位を引き出し、引き出した光ファイバの所定部位の一部をボビンに戻すことができればよい。また、第2引き出し部は、ボビン10が回転する状態で他端部E2側から光ファイバ1の他の所定部位を引き出すことができればよい。例えば、第1引き出し部は、所定の方向に移動することで一端部E1側から光ファイバ1の所定部位を引き出し、所定の方向と反対方向に移動することで引き出した光ファイバ1の所定部位の一部をボビン10に戻す構成とされてもよい。また、第2引き出し部は、所定の方向に移動することで他端部E2側から光ファイバ1の他の所定部位を引き出す構成とされてもよい。このような場合、ボビン10と第1引き出し部との間の光ファイバは、1つ以上のプーリーに架けられてもよく、ボビン10と第2引き出し部との間の光ファイバは、1つ以上のプーリーに架けられてもよい。このような構成にすることで、第1引き出し部及び第2引き出し部の移動方向の自由度を向上し得るとともに、光ファイバの引き出し装置が大型化することを抑制し得る。
【0095】
また、上記実施形態では、トルクセンサを用いて、光ファイバ1に生じる張力が所定の範囲内となるように光ファイバ1の引き出し及び光ファイバ1の戻しを行う第1引き出し部50,150を例に説明した。また、トルクセンサを用いて、光ファイバ1に生じる張力が所定の範囲内となるように光ファイバ1の引き出しを行う第2引き出し部70を例に説明した。しかし、第1引き出し部や第2引き出し部は、トルクセンサ以外のセンサ等を用いて、光ファイバ1に生じる張力が所定の範囲内となるように光ファイバ1の引き出しや光ファイバ1の戻しを行ってもよい。例えば、第1実施形態における第1引き出し部50がモータ58の回転速度を測定するセンサを備える場合、制御部COは、このセンサから入力する信号、モータ58に印加される電圧や電流等に基づいて、モータ58を制御してもよい。また、第1引き出し部や第2引き出し部は、光ファイバ1に生じる張力とは関係なく、光ファイバ1の引き出しや光ファイバ1の戻しを行ってもよい。このような構成にすることで、光ファイバ1の引き出し装置20の構成を簡略化し得る。また、ボビン駆動部30がボビン10の回転速度を調節することで、光ファイバ1に生じる張力が所定の範囲内となるようにしてもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、挟持部51,151によって光ファイバ1の端部を挟持することで当該端部を保持する第1引き出し部50,150及び第2引き出し部70を例に説明した。しかし、第1引き出し部や第2引き出し部は、光ファイバ1の端部を保持することができればよく、第1引き出し部や第2引き出し部における光ファイバ1の端部を保持する構成や方法は、特に限定されるものではない。例えば、作業者が第1引き出し部や第2引き出し部に光ファイバ1の端部を取り付けてもよい。この場合、光ファイバの引き出し装置は、位置検出部40を備えなくてもよく、光ファイバの引き出し装置の構成を簡略化し得る。
【0097】
また、上記実施形態では、回転軸10a方向における自重によって垂れ下がる一端部E1の位置を検出する位置検出部40を備える光ファイバの引き出し装置20を例に説明した。しかし、光ファイバの引き出し装置は、回転軸10a方向における自重によってたれ下がる他端部E2の位置を検出する別の位置検出部を更に備えていてもよい。この別の位置検出部の構成として、例えば、上記実施形態の位置検出部40と同じ構成が挙げられ、別の位置検出部は、回転軸10a方向における自重によって垂れ下がる他端部E2の位置を示す信号を制御部COに出力する。この場合、第2引き出し部70は、移動装置によって所望の位置に配置可能とされてもよい。このような構成にすることで、制御部COは、別の位置検出部から入力する信号に基づいて、第2引き出し部70を移動させ、当該第2引き出し部70に光ファイバ1の他端部E2を保持させることができる。換言すれば、第2引き出し部70は、回転軸10a方向における自重によって垂れ下がる他端部E2の位置を示す信号に基づいて他端部E2を保持できる。従って、このような光ファイバの引き出し装置は、第2引き出し部70の初期の位置によらずに、自動的に光ファイバ1の一端部E1側及び他端部E2側をボビン10から引き出し得る。また、光ファイバの引き出し装置は、一端部E1や他端部E2の位置を検出する位置検出部を備えていなくてもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、ボビン駆動部30を備える光ファイバの引き出し装置20を例に説明した。しかし、光ファイバの引き出し装置は、ボビン駆動部30を備えなくてもよい。この場合、ボビン10を回転軸10a周りに回転可能に支持する。そして、第1引き出し部50は、第1引き出しステップST2において、光ファイバ1の所定部位に生じる張力によってボビン10を回転軸10a周りに回転させつつ一端部E1側から光ファイバ1の所定部位を引き出す。第2引き出し部70は、第2引き出しステップST4において、光ファイバ1の他の所定部位に生じる張力によってボビン10を回転軸10a周りに回転させつつ他端部E2側から光ファイバ1の他の所定部位を引き出す。
【0099】
以上説明したように、本発明によれば、光ファイバの一端側及び他端側をボビンから引き出せる光ファイバの引き出し装置、光ファイバの引き出し方法、及び光ファイバの検査方法が提供され、光ファイバの製造後の検査(性能測定)といった分野での利用は勿論のこと、実際に光ファイバを取り扱う通信等の分野で利用することも期待される。