(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】分析装置、分析方法および分析プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
G01N35/10 D
(21)【出願番号】P 2021551501
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2020037623
(87)【国際公開番号】W WO2021066165
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2019182496
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592031097
【氏名又は名称】PHC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石黒 正敏
(72)【発明者】
【氏名】東 美幸
(72)【発明者】
【氏名】早川 将義
(72)【発明者】
【氏名】清水 宏之
(72)【発明者】
【氏名】浅野 敬
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/033312(WO,A1)
【文献】特開2016-166793(JP,A)
【文献】国際公開第2016/002394(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0199772(US,A1)
【文献】特開平01-196574(JP,A)
【文献】特開2019-120510(JP,A)
【文献】特開2017-096894(JP,A)
【文献】特開2012-181136(JP,A)
【文献】国際公開第2020/075803(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項7】
オーダー情報に基づいて、生体サンプルに対して複数の測定処理を実施し得る分析装置に、
ピアスノズルユニットが、前記生体サンプルが収容される密封されたサンプル容器に穿孔して前記生体サンプルを採取し、所定の貯留部に吐出するステップと、
サンプルノズルユニットが、前記貯留部が保持する前記生体サンプルを、1以上のキュベットへ分注するステップと、
を実行させ、
前記ピアスノズルユニットから前記貯留部に吐出する前記生体サンプルの分量は、1以上の血液凝固時間測定処理を含む前記オーダー情報に含まれる前記血液凝固時間測定処理の各々に要する検体の総量以上であって、再検査に係る前記測定処理の実施に要する分量を含まない;
前記サンプルノズルユニットは、開口したサンプル容器からサンプルを採取し得るものであり、前記ピアスノズルユニットが前記密封されたサンプル容器から前記生体サンプルを採取する位置と、前記サンプルノズルユニットが前記開口したサンプル容器から前記生体サンプルを採取する位置とが同じである;又は、
前記ピアスノズルユニットから前記生体サンプルを吐出させる前記貯留部の位置と、前記サンプルノズルユニットが前記生体サンプルを採取する前記貯留部の位置とが同じである
分析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置、分析方法および分析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検体に含まれる成分を検出する検体分析装置において、再検予定が「無」である第一動作モードが選択された場合、分析に要する量の検体を分析容器であるキュベットに供給し、再検予定が「有」である第二動作モードが選択された場合、分析に要する量よりも多い量の検体を留保容器であるキュベットに供給する手法が提案されていた(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば血液の凝固時間は、検体によって異なる。一般的な自動分析装置においては、まず初期的な測定時間を設定して測定し、異常により測定時間以内に測定が完了しない場合は、別途再検査が行われる。しかしながら、様々な種類の測定を行う複合分析装置においては、仮に再検査が起こり得るとしても、予め検体を通常よりも多く確保しておくのは不都合がある。すなわち、予備的に多量の検体を確保すると、例えば複数の検査項目がオーダーされる場合には、他の検査が実施できなくなるおそれがある。特に血液凝固時間測定においては、使用する検体の量が比較的多いため、不都合が大きい。また、一般的に、複数回や多量の採血による被験者の負担を軽減するため、一回の採血により多くの検査項目を実施できることが望まれている。同様に、処理速度を担保しつつ装置を小型化することも望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、複数種類の分析を行う複合分析装置において、検体に不足が生じることを抑制し、又は処理速度を担保しつつ装置を小型化するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る複合分析装置は、オーダー情報に基づいて、生体サンプルに対して複数の測定処理を実施し得る。また、複合分析装置は、生体サンプルが収容される密封されたサンプル容器に穿孔して生体サンプルを採取し、所定の貯留部に吐出するピアスノズルユニットと、貯留部が保持する生体サンプルを、1以上のキュベットへ分注するサンプルノズルユニットと、オーダー情報に基づいて、ピアスノズルユニットとサンプルノズルユニットの動作を制御する制御装置とを備える。そして、制御装置が、ピアスノズルユニットから貯留部に吐出させる生体サンプルの分量は、1以上の血液凝固時間測定処理を含むオーダー情報に含まれる測定処理の各々に要する検体の総量以上であって、再検査に係る血液凝固時間測定処理の実施に要する分量を含まないようにしてもよい。また、サンプルノズルユニットは、開口したサンプル容器からサンプルを採取し得るものであり、ピアスノズルユニットが密封されたサンプル容器から生体サンプルを採取する位置と、サンプルノズルユニットが開口したサンプル容器から生体サンプルを採取する位置とが同じであってもよい。また、ピアスノズルユニットから生体サンプルを吐出させる貯留部の位置と、サンプルノズルユニットが生体サンプルを採取する貯留部の位置とが同じであってもよい。
【0007】
様々な測定を行う複合分析装置においては、仮に血液凝固時間測定の再検査用の検体を予備的に確保すると測定に使用する検体の量が不足するおそれがある。上述のように、ピアスノズルユニットから貯留部に吐出させる生体サンプルの分量は、オーダー情報に含まれる測定処理の各々に要する検体の総量以上であって、再検査に係る血液凝固時間測定処理の実施に要する分量を含まない量にすることで、検体に不足が生じることを抑制できるようになる。また、ピアスノズルユニットとサンプルノズルユニットとが同じ位置からサンプルを採取することで装置を小型化することができ、ピアスノズルユニットが貯留部に生体サンプルを保持させ、サンプルノズルユニットが貯留部から分注できるようにすれば、密封されたサンプル容器に穿孔する際にも並行して貯留部から生体サンプルを分注できるため、開口したサンプル容器から単に生体サンプルを採取する場合と比較して、密封されたサンプル容器に穿孔した上で生体サンプルを採取する場合であっても処理時間の低下を抑制できる。
【0008】
また、複合分析装置は、キュベットを保持し、当該キュベットに貯留された血液の凝固の程度を表すデータを制御装置へ出力する凝固測定ユニットをさらに備えていてもよい。そして、制御装置は、初期的に定められた測定時間が経過した場合であって、凝固測定ユニットが出力するデータに基づいて血液が凝固していないと判断されるときは、測定時間を延長して測定処理を続行するようにしてもよい。測定時間を延長するため、初期的な測定時間が経過した場合に、より長い測定時間を設定して再検査を行うような必要はない。したがって、上述した貯留部には、再検査のために検体を確保しておく必要はない。すなわち、貯留部に吐出される検体は、再検査に係る測定処理の実施に要する分量を含まない量にしても不都合はない。
【0009】
また、制御装置は、先行する処理対象の生体サンプルについて、サンプルノズルユニットに、貯留部から生体サンプルを採取させ、キュベットへ分注させる処理と、後続の処理対象の生体サンプルについて、ピアスノズルユニットに、密封されたサンプル容器から採取させ、貯留部へ吐出させる処理とを、並列に実行させるようにしてもよい。このようにすれば、連続して複数の検体に対して様々な測定処理を行う場合に、全体の所要時間を短縮することができる。また、1つのサンプル容器に対して穿孔を繰り返し行う必要がなく、蓋のごみが検体に混入することを抑制できる。
【0010】
サンプルノズルユニットは、開口したサンプル容器からサンプルを採取し得るものであり、ピアスノズルユニットが密封されたサンプル容器から生体サンプルを採取する位置と、サンプルノズルユニットが開口したサンプル容器から生体サンプルを採取する位置とが同じとし、且つ、ピアスノズルユニットから生体サンプルを吐出させる貯留部の位置と、サンプルノズルユニットが生体サンプルを採取する貯留部の位置とが同じであってもよい。さらに、ピアスノズルユニット及びサンプルノズルユニットは、平面視上において異なる点を中心とする弧状の可動範囲を有し、ピアスノズルユニットが密封されたサンプル容器から生体サンプルを採取する位置、及びサンプルノズルユニットが開口したサンプル容器から生体サンプルを採取する位置と、ピアスノズルユニットから生体サンプルを吐出させる貯留部の位置、及びサンプルノズルユニットが生体サンプルを採取する貯留部の位置とは、それぞれ平面視上においてピアスノズルユニットの可動範囲とサンプルノズルユニットの可動範囲との交点に位置するようにしてもよい。このようにすれば、ピアスノズルユニット及びサンプルノズルユニットは貯留部に一時的に生体サンプルを貯留することができると共に、サンプルノズルユニットは貯留部からさらに生体サンプルを分注することができる。すなわち、密封されたサンプル容器に穿孔する際にも並行して貯留部から生体サンプルを分注できるため、開口したサンプル容器から単に生体サンプルを採取する場合と比較して、密封されたサンプル容器に穿孔した上で生体サンプルを採取する場合であっても処理時間の低下を抑えることができる。また、装置の小型化が可能となる。
【0011】
なお、課題を解決するための手段に記載の内容は、本発明の課題や技術的思想を逸脱しない範囲で可能な限り組み合わせることができる。また、課題を解決するための手段の内容は、コンピュータ等の装置若しくは複数の装置を含むシステム、コンピュータが実行する方法、又はコンピュータに実行させるプログラムとして提供することができる。該プログラムはネットワーク上で実行されるようにすることも可能である。なお、当該プログラムを保持する記録媒体を提供するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
複数種類の分析を行う複合分析装置において、検体に不足が生じることを抑制するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、複合分析装置の外観の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、複合分析装置の測定ユニット収容部の内部の構成の一例を示す平面図である。
【
図3】
図3は、サンプルラックの一例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、ラック設置部の一例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、ピアスノズルユニットの一例を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、第2キュベット搬送ユニットの一例を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、凝固テーブルの一例を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、一時置きポートの一例を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、キュベットの搬送経路、並びに検体や試薬の吸引位置及び吐出位置を説明するための図である。
【
図10】
図10は、複合分析装置が備えるコンピュータの一例を表すブロック図である。
【
図11】
図11は、ピアッシング動作を伴う測定開始時の処理の一例を示す処理フロー図である。
【
図13】
図13は、測定時間延長処理の一例を示す処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態に係る複合分析装置について、図面を用いて説明する。
【0015】
<装置構成>
図1は、複合分析装置1000の外観の一例を示す図である。複合分析装置1000は、生化学的分析や免疫学的分析のように、測定精度の異なる複数種類の分析を行う分析装置である。複合分析装置1000は、例えば、LPIA(Latex Photometric Immunoassay:ラテックス近赤外比濁法)や、血液の凝固時間測定等を行うことができる。複合分析装置1000は、測定ユニット収容部100と、タンク等収容部200と、モニタ300とを備える。測定ユニット収容部100は、本実施形態に係る複数の測定ユニット等を収容する。タンク等収容部200には、純水、洗浄水及び排液をそれぞれ貯留するタンクや、廃棄されるキュベットを集積する廃棄ボックス、測定ユニットが行う処理を制御するコンピュータ等を収容する。モニタ300は、コンピュータと接続され、測定の進捗状況や結果等を出力する。また、モニタ300は、例えばタッチパネルのように、使用者による入力操作が可能な入出力装置であってもよい。
【0016】
図2は、複合分析装置1000の測定ユニット収容部100の内部の構成の一例を示す平面図である。測定ユニット収容部100は、サンプルラックを設置するためのラック設置部10と、キュベット供給口21にキュベットを供給するキュベットフィーダー20と、採血管の蓋に穿孔すると共に検体を吸引し、定められた位置に吐出するピアスノズルユニット30と、検体を吸引し、定められた位置に吐出するサンプルノズルユニット33と、試薬瓶から試薬を吸引し、定められた位置に吐出する試薬ノズルユニット36と、キュベットを搬送する第1キュベット搬送ユニット40及び第2キュベット搬送ユニット45と、LPIAによる測定を行うためのLPIAテーブル50と、凝固時間測定試験を行うための凝固テーブル53と、キュベットを一時的に保持する一時置きポート56と、試薬瓶を保持する試薬テーブル60と、試薬瓶の蓋を開閉する試薬蓋開閉ユニット65と、第1キュベット搬送ユニット40及び試薬ノズルユニット36が接続されたレール70と、キュベット廃棄口80とを備える。
【0017】
ラック設置部10には、サンプルラック11が載置され、所定の機構によってテーブル上を搬送される。
図3は、サンプルラックの一例を示す斜視図である。サンプルラック11は、複数の保持孔12を一列に備える。また、保持孔12の各々は、血液検体等を収容するサンプル容器13を保持し得る。なお、サンプル容器13は、例えば、生体サンプル(検体とも呼ぶ)を収容するサンプルカップ、血液を収容する採血管、二重採血管、栓を有する採血管、サンプルを希釈したり混合したりするための上乗せカップ等の種々の容器であってもよく、これらは保持孔12に保持された状態において高さが異なるようにしてもよい。また、サンプルラック11は、コンピュータによる制御に基づいてラック設置部10上で搬送され、所望のサンプル容器13が、ラック設置部10上の所定の採取位置に配置される。採取位置は、ピアスノズルユニット30及びサンプルノズルユニット33が平面視において円弧状に移動する軌道上に存在する。また、サンプルは、ピアスノズルユニット30によって一時置きポートに保持されたキュベットに分注されたり、サンプルノズルユニット33によってLPIAテーブル50の保持孔に保持されたキュベットに分注されたりする。また、サンプル容器13の外面には、バーコード又は二次元コード等によって検体の識別情報が表示されたラベルが貼付されたり、このような識別情報が直接印字されるようにしてもよい。また、サンプルラック11の側面の一端には、サンプルラック11を特定するための識別情報が付されている。
【0018】
図4は、ラック設置部の一例を示す斜視図である。ラック設置部10は、サンプルラック11が載置されるテーブルに設けられたスリット14と、突出片15と、搬送装置16と、容器識別装置17と、容器種判定装置18と、テーブルの下に設けられたラック検知装置(図示せず)と、搬送装置16に設けられたカバー19とを備える。ラック検知装置は、例えばラック設置部10のテーブルの下に設けられた磁器センサである。なお、サンプルラック11は、例えばその長手方向の両端の底面付近に磁石を備えており、ラック検知装置と接続されるコンピュータは、ラック検知装置を介してサンプルラック11の存在を検知できるものとする。スリット14は、複合分析装置1000に向かって前後方向に設けられている。突出片15は、スリット14から突出したりスリット14内に収容されたりすると共にスリット14に沿って移動し、前後方向にサンプルラックを搬送する。搬送装置16は、サンプルラックの左右端部を保持し、左右方向にサンプルラックを搬送する。容器識別装置17は、例えばレーザダイオードが発するレーザ光を受光素子で受光し読み取るレーザ式のバーコードリーダや、コンピュータの画像認識ソフトと接続されたカメラ等であり、サンプル容器13の側面に貼付される識別情報を読み取る。また、容器種別判定装置18は、例えば、上下(高さ)方向に複数設けられる赤外線センサである。容器種別判定装置18は、サンプルラック11が保持するサンプル容器13の高さを検知し、高さに応じてサンプル容器13の種類を判定する。搬送装置16は、複合分析装置1000に向かって左側に搬送装置16を備え、右側に容器識別装置17及び容器種判定装置18を備える。容器識別装置17及び容器種判定装置18は、それぞれ搬送装置16と接続され、一体として移動する。
【0019】
ラック設置部10において、サンプルラック11は、破線の矢印に沿って搬送される。使用者は、複合分析装置1000に向かって右側に、サンプルラック11を搬入する。突出片15は、スリット14に沿ってラック設置部10の奥へサンプルラック11を搬送する。そして、先行するサンプルラック11を搬送装置16で左側へ搬送すると共に、後続のサンプルラック11やそこに保持されたサンプル容器13に貼付された識別情報を容器識別装置17が読み取り、サンプル容器13の種類を容器種判定装置18が判定する。カバー19は、サンプルラック11に保持されるサンプル容器13の各々を囲うように設けられる壁面であり、サンプリング中に使用者がノズルに接触しないよう手指の挿入を防ぐ。
【0020】
キュベットフィーダー20は、所定形状のキュベットを、複合分析装置1000で使用するために供給する。キュベットは、その内部で検体に所定の反応を起こさせ、分析を行うための容器である。キュベットフィーダー20は、ホッパ(図示せず)に投入されるキュベットを、所定の機構により、スロープ状の出口の端部であるキュベット供給口21から1つずつ所定の向きで供給する。
【0021】
図5は、ピアスノズルユニット30の一例を示す斜視図である。ピアスノズルユニット30は、コンピュータによる制御に基づいて、鉛直方向に上下すると共に回転する軸31によって所定の可動範囲で動作する。また、ポンプ(図示せず)と接続されたノズル32を備え、ラック設置部10に設置されたサンプルラック11が保持する密封されたサンプル容器13の蓋に穿孔すると共に、サンプル容器13から生体サンプルを採取し、一時置きポート56が保持するキュベット(一時置き用のキュベットとも呼ぶ)に生体サンプルを吐出する。すなわち、ノズル32は、1つのノズルで穿孔と吸引及び吐出とを行う。
【0022】
サンプルノズルユニット33も、コンピュータによる制御に基づいて、鉛直方向に上下すると共に回転する軸によって所定の可動範囲で動作する。また、ポンプと接続されたノズルを備え、サンプルラック11の開口したサンプル容器13又は一時置き用のキュベットから生体サンプルを採取し、LPIAテーブル50が保持するキュベットへ吐出する。すなわち、サンプルノズルユニット33は、サンプルラック11が保持する開口したサンプル容器13(図示せず)からもサンプルを採取し得る。
【0023】
試薬ノズルユニット36は、コンピュータによる制御に基づいてレール70に沿って移動すると共に、鉛直方向に延びる軸に沿って上下に移動する。また、ポンプと接続された2本のノズルにより、試薬テーブル60が保持する試薬瓶から試薬を採取して所定のキュベットへ吐出する。なお、2本のノズルは、互いに独立して鉛直方向に上下し、試薬を吸引及び吐出することができる。
【0024】
図6は、第2キュベット搬送ユニットの一例を示す斜視図である。第2キュベット搬送ユニット45は、コンピュータによる制御に基づいて動作し、キュベットを把持するチャック(グリッパ)46を備える。チャック46は、レール47に沿って直線的に移動すると共に、鉛直方向に延びる軸48に沿って上下に移動する。
【0025】
第1キュベット搬送ユニット40も、コンピュータによる制御に基づいて動作し、キュベットを把持するチャックを備える。チャックは、レール70に沿って直線的に移動すると共に、鉛直方向に延びる軸に沿って上下に移動する。
【0026】
LPIAテーブル50は、複数のキュベットを円形状に保持するための保持孔を有する。LPIAテーブル50においては、例えばラテックス凝集法による抗原量の測定を実施する。LPIAテーブル50は、所定の回転軸を中心に、コンピュータの制御に基づいて回転するディスク状のテーブルである。LPIAテーブル50には、その円周に沿ってリング状に、キュベットを保持するための保持孔が複数並んでいる。キュベットは、所定の着脱位置において第1キュベット搬送ユニット40によって着脱される。また、キュベットには、所定の分注位置において試薬が注入される。
【0027】
図7は、凝固テーブルの一例を示す斜視図である。凝固テーブル53は、例えば、血液凝固時間測定を実施する際にキュベットを載置するテーブルである。凝固テーブル53は、キュベットを保持するための複数の保持孔54を、平面視においてレール70が延在する方向に対してほぼ垂直な方向に一列に備える。また、保持孔54は、光源と受光部と含むセンサ部55を有する。なお、センサ部55は保持孔54ごとに設けられる。そして、保持孔54が保持するキュベットの内容物の、所定の波長の光の吸光度又は透過率を測定し、コンピュータに出力する。コンピュータは、吸光度又は透過率に基づいて、キュベットの内容物の凝固の程度を判定できる。
【0028】
また、凝固テーブル53は、平面視において、レール70が延在する方向に対してほぼ垂直な方向にテーブル部分をスライドさせる駆動部を備える。そして、コンピュータは、所望の保持孔54を、予め定められたキュベットの着脱位置に移動させることができる。このとき、保持孔54及びセンサ部55はテーブル部分と一体として移動し、テーブル部分が移動しても保持されているキュベットの各々について吸光度等を測定し続けることができる。また、第1キュベット搬送ユニット40は、上述した着脱位置において、保持孔54にキュベットを保持させたり、保持孔54からキュベットを取り外したりする。凝固テーブル53の保持孔54へは、LPIAテーブル50の保持孔において試薬やサンプルが分注されたキュベットが、第1キュベット搬送ユニット40によって搬送される。
【0029】
図8は、一時置きポート56の一例を示す斜視図である。一時置きポート56は、一時的に検体を貯留する貯留部として機能する。一時置きポート56は、キュベットを一時的に保持する保持孔57を有する。本実施形態では、ピアスノズルユニット30が、サンプルラック11のサンプル容器13から一時置き用のキュベットに、検体を分注する。そして、サンプルノズルユニット33が、一時置き用のキュベットからLPIAテーブル50が保持するキュベットに、さらに検体を分注する。
【0030】
試薬テーブル60は、所定の試薬を収容する試薬瓶を保持する保持部が複数設けられたテーブルである。保持部は、試薬テーブル60上に円形に並んで設けられている。なお、保持部は、二重の同心円状に設けられていてもよく、保持部の数や円の数は特に限定されない。試薬は、例えばラテックスや、凝固時間試薬であるが、これらには限定されない。測定原理の種類に応じて、試薬テーブルの構成は、適宜変更することができる。また、試薬テーブル60は、コンピュータによる制御に基づいて、時計回り又は反時計回りに回転すると共に、所定の位置で停止する。そして、所定の採取位置において試薬ノズルユニット36で試薬瓶から試薬が採取される。測定方法によって使用する試薬の種類や数は異なるが、試薬テーブル60を回転させることにより、所望の試薬瓶が配置された保持部を所定の採取位置に移動させることができ、測定に応じて使用することができる。なお、複合分析装置1000は、試薬瓶のラベルに付されたバーコード又は二次元コード等の識別情報を光学的に読み取る読取装置を備え、所望の試薬瓶を特定することができるようにしてもよい。複合分析装置1000が試薬瓶に貼付された識別情報を読み取り、試薬テーブル60上の試薬瓶の配置を自動的に記憶するようにすれば、使用者は設置場所を気にすることなく測定に必要な試薬瓶を設置するだけで準備を完了することができ、利便性が向上する。また、試薬テーブル60は、複数の保持部を備えており、試薬瓶を入れ替えることなく複数の項目について測定することができるため利便性が高い。
【0031】
また、試薬蓋開閉ユニット65は、コンピュータによる制御に基づいて、所定の可動範囲で動作し、試薬瓶の蓋を開閉するためのユニットである。例えば、試薬瓶の蓋はヒンジで接続され、蓋に対してほぼ垂直な方向に突出する凸部が設けられている。試薬蓋開閉ユニット65の先端部は、平面視において試薬テーブル60の径方向に沿って移動する。そして、試薬蓋開閉ユニット65の先端部は、試薬テーブル60の回転により試薬瓶が移動する軌道上に変位すると共に、蓋から突出する凸部と接触して蓋を開ける。また、試薬蓋開閉ユニット65の先端部は、所定の駆動機構により、鉛直方向にも変位する。先端部は、蓋を鉛直下方に押圧することにより、試薬瓶を閉蓋することができる。
【0032】
レール70は、直線状のレールである。試薬ノズルユニット36及び第1キュベット搬送ユニット40はそれぞれレール70に接続され、レール70が延在する方向に沿ってレール70とほぼ平行に移動する。
【0033】
キュベット廃棄口80は、タンク等収容部200内に格納された廃棄ボックスにキュベットを集積するために、第1キュベット搬送ユニット40がキュベットを放下する投入口である。タンク等収容部200内には、キュベット廃棄口80から廃棄ボックスの上方へ向けて、廃棄されたキュベットを案内する管やスロープを設けるようにしてもよい。
【0034】
図9は、キュベットの搬送経路、並びに検体や試薬の吸引位置及び吐出位置を説明するための図である。
図9においては、経路を破線で示し、位置を黒い円で示している。キュベットの着脱位置や内容物の採取位置及び吐出位置は、平面視における経路の交点に設けられる。なお、
図9においては、ラック設置部10上におけるサンプルラック11及びサンプル容器13の移動経路、LPIAテーブル50の回転によるキュベットの移動経路、及び試薬テーブル60の回転による試薬瓶の移動経路は図示していない。
【0035】
キュベットフィーダー20は、キュベット供給位置P1にキュベットを供給する。また、第2キュベット搬送ユニット45は、軌跡L1に沿ってキュベットを搬送する。第2キュベット搬送ユニット45は、キュベット供給位置P1から、一時置き位置P2にキュベットを移動させる。また、ピアスノズルユニット30は、軌跡L2に沿ってノズルを円弧状に移動させる。そして、ピアスノズルユニット30は、サンプリング位置P3においてサンプル容器13から検体を採取すると共に、一時置き位置P2でキュベットに検体を吐出する。なお、ピアスノズルユニット30は、洗浄位置P4においてノズルを洗浄する。サンプルノズルユニット33は、軌跡L3に沿ってノズルを円弧状に移動させる。そして、サンプルノズルユニット33は、一時置き位置P2又はサンプリング位置P3でサンプルを採取すると共に、分注位置P5でキュベットへサンプルを吐出する。なお、サンプルノズルユニット33は、洗浄位置P6においてノズルを洗浄する。また、第1キュベット搬送ユニット40は、軌跡L4に沿ってキュベットを搬送し、キュベット供給位置P1、LPIAテーブル50の着脱位置P7、凝固テーブル53の着脱位置P8、及びキュベット廃棄位置P9の間でキュベットを移動させる。また、試薬ノズルユニット36は、軌跡L5に沿って2本のノズルを平行に移動させる。そして、試薬ノズルユニット36は、試薬テーブル60の採取位置P10において、試薬瓶から試薬を採取する。また、試薬ノズルユニット36は、LPIAテーブル50の注入位置P11において、キュベットへ試薬を吐出する。なお、試薬ノズルユニット36は、洗浄位置P13においてノズルを洗浄する。また、第2キュベット搬送ユニット45は、軌跡L1上のキュベット放下位置P14においてキュベットを放下し、スロープ状の部分を介してキュベットをキュベット廃棄位置P9に移動させてもよい。
【0036】
上述の通り、ピアスノズルユニット30は、例えば栓を有する採血管のようなサンプル容器13の蓋に穿孔して、内部の検体を採取する。採血管の蓋は、ゴム栓や、開栓時に内容物の飛散を防止する覆いをさらに有するオーバーキャップ、アルミ栓等があり、ピアッシング(穿孔)を行うぶんだけ採取には時間を要する。また、複数回の穿孔により蓋のごみが検体に混入する可能性も高まり、複数回の穿孔に適さない種類の蓋もある。本実施形態に係る複合分析装置1000は、サンプルノズルユニット33が一時置き用のキュベットから測定項目のオーダーに従って必要な量の検体をLPIAテーブル50のキュベットへ分注する間に、ピアスノズルユニット30は後続のサンプル容器13から測定項目のオーダーに従って必要な量の検体をまとめて採取する。このように並列に動作することにより、連続して複数の測定処理を行う場合に、全体の所要時間を短縮することができる。また、蓋のごみが検体に混入することを抑制できる。
【0037】
たとえば並列に動作するとは、ピアスノズルユニット30による検体採取工程、および、一時置き用のキュベットへの吐出工程、ノズルの洗浄工程(一連の工程をピアスノズルユニット動作という)と、サンプルノズルユニット33による一時置き用のキュベットからの検体採取工程、および、LPIAテーブル50が保持するキュベットへの吐出工程、ノズルの洗浄工程(一連の工程をサンプルノズルユニット動作という)とが、並列に行われていることが挙げられる。ピアスノズルユニット動作とサンプルノズルユニット動作の各工程は上記に限らず、工程の種類や順序、タイミングは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0038】
また、試薬ノズルユニット36及び第1キュベット搬送ユニット40は、共用するレール70に沿って移動する。複合分析装置1000においては、凝固テーブル53の着脱位置P8、LPIAテーブル50の着脱位置P7、キュベット供給位置P1、キュベット廃棄位置P9は、レール70とほぼ平行な直線上に配置されている。また、試薬テーブル60の採取位置P10、LPIAテーブル50の試薬の注入位置P11も、レール70とほぼ平行な直線上に配置されている。例えば第1キュベット搬送ユニット40を平面視における左側に退避させることで、試薬ノズルユニット36のノズルをLPIAテーブル50の注入位置P11まで移動させることができる。また、例えば試薬ノズルユニット36を平面視における右側に退避させることで、第1キュベット搬送ユニット40のチャックをキュベットフィーダー20のキュベット供給口21まで移動させることができる。複数の測定ユニットを備える複合分析装置が、測定する検査項目の順序を自由に指定できるランダム測定を実施する場合において、第1キュベット搬送ユニット40や試薬ノズルユニット36の移動を単純な直線的動作にすることで、移送する機構を小型化して装置全体のコストを抑制できると共に、省電力化できる。さらに、レール70を第1キュベット搬送ユニット40及び試薬ノズルユニット36で共用することができ、装置全体の大型化を抑制できる。さらに、所定の測定時間や空間を効率良く使用することが可能となり、高い測定処理能力を達成することができる。
【0039】
なお、ピアスノズルユニット30及びサンプルノズルユニット33の可動範囲は、円弧状に限らず、曲線の繋がった一部分である弧状であればよく、当業者であれば適宜選択して設計できる。上述した円弧状の軌道の半径に相当する、ノズルユニットの水平方向に延びる部分の長さを伸縮させながらノズルユニットを回動させ、ノズルの先端に例えばクロソイド曲線状の弧を描かせるようにしてもよい。
【0040】
<コンピュータ>
図10は、複合分析装置が備えるコンピュータ(制御装置とも呼ぶ)の一例を表すブロック図である。コンピュータ201は、プロセッサ210と、記憶装置220とを備え、入出力インターフェースを介して測定ユニット収容部100に収容される各測定ユニットやモニタ300等と接続されている。
【0041】
プロセッサ210は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算装置であり、所定のプログラムを実行することにより本実施の形態に係る処理を行う。
図10の例では、プロセッサ210の中に機能ブロックを示している。すなわち、プロセッサ210は、装置制御部211、データ取得部212、凝固判定部213、及び延長判定部214として機能する。装置制御部211は、使用者が入力する測定項目のオーダー情報に基づいて検体に対し指定された分析を行うように、複合分析装置1000を制御する。データ取得部212は、所定の入出力インターフェースを介して、測定ユニットに設けられたセンサ等が出力するデータを取得する。凝固判定部213は、凝固テーブル53のセンサ等から取得する各キュベットの吸光度に基づいて、キュベット内の血液の凝固の程度を判定する。延長判定部214は、所定のタイミングで、凝固判定部213の判定に基づいて各キュベットの測定を終了させるか延長するか判定する。
【0042】
記憶装置220は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の主記憶装置、又はHDD(Hard-disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、eMMC(embedded Multi-Media Card)、フラッシュメモリ等の補助記憶装置である。主記憶装置は、プロセッサ210の作業領域を確保したり、センサが出力したデータ等を一次的に記憶する。また、補助記憶装置は、本実施形態に係るプログラムや測定ユニットから取得したデータ、その他のデータを記憶する。
【0043】
<測定開始処理>
図11は、ピアッシング動作を伴う測定開始時の処理の一例を示す処理フロー図である。複合分析装置1000の装置制御部211は、サンプルラック11をラック設置部10の所定位置へ搬送させ、容器識別装置17を介してサンプルラック11に付された識別情報、サンプルラック11が保持するサンプル容器13に付された識別情報を読み取る(
図11:S1)。なお、サンプルラック11に付される識別情報に基づいて、当該サンプルラック11に栓を有する採血管が保持されているか否かを判断できるものとする。
【0044】
本実施形態では、S1において読み取った当該サンプル容器13のラック情報が、栓を有する採血管を保持するラックであることを示す場合に、後続の処理が実施される。なお、ラック情報が、栓を有しないサンプル容器13を保持するラックであることを示す場合は、例えばサンプルノズルユニット33によりサンプル容器13から直接分注を行う。また、サンプル容器13に付される識別情報に対応付けて、当該サンプル容器13に収容されている検体に対して測定すべき検査項目のオーダー情報が予めコンピュータ201に入力されているものとする。
【0045】
図12は、オーダー情報の一例を示す図である。オーダー情報は、サンプルラック11の識別情報と関連付けて、各サンプルラック11について予め入力される。
図12に示す表は、ポジション、検体ID、ボリューム、残り時間、FDP、Dダイマー、アンチトロンビン、プロトロンビン時間、活性化トロンボプラスチン時間、フィブリノゲンの各列を含む。ポジションの列には、サンプルラック11における保持孔12の位置を示す通し番号が付されている。検体IDの列には、各保持孔12に保持されるサンプル容器13が収容する検体を識別するための識別情報が入力される。ボリュームの列には、各検体について実施される検査に要する検体の量の合計が算出されて登録される。残り時間は、検査に要する残り時間が算出されて登録される。FDP、Dダイマー、アンチトロンビン、プロトロンビン時間、活性化トロンボプラスチン時間、フィブリノゲンの各列は、それぞれ検査項目を表し、検体に対して当該検査を行うか否かを示す情報が入力される。
図12において検査項目名の下に示すように、各検査項目には、検査に必要な検体の容量が定められている。また、
図12の例では、マル印が入力されている検査項目を実施する。検査ごとに、必要とされる検体の量が定められており、オーダー情報に基づいて、検体ごとに必要とされる総量が算出できる。なお、総量には、分注する過程で一時置き用のキュベットやノズルに付着し、検査に用いることができない検体の容量であるデットボリュームを50μL含む。
【0046】
また、装置制御部211は、第1キュベット搬送ユニット40に、キュベットフィーダー20が供給するキュベットをLPIAテーブル50の着脱位置へセットさせる(S2)。また、装置制御部211は、第2キュベット搬送ユニット45に、キュベットフィーダー20が供給するキュベットを一時置きポート56の着脱位置へセットさせる(S3)。S3においては、一時置きポート56に保持されていた使用済みのキュベットを廃棄した後に、新たなキュベットをセットする。なお、S2及びS3の順序は逆であっても良いし、並列に行うようにしても良い。
【0047】
その後、装置制御部211は、ピアスノズルユニット30に、ラック設置部10の採取位置に存在するサンプル容器13から検体を吸引させる(S4)。本ステップでは、装置制御部211は、ピアスノズルユニット30のノズル32を上昇させ、検体のサンプリング位置P3へ旋回させる。そして、装置制御部211は、ノズル32を下降させると共にサンプル容器13に穿孔し、サンプル容器13に収容されている検体を吸引する。ここで、吸引する量は、
図12のボリュームの列に示した、実施される検査に使用する検体の総量である。なお、本ステップで吸引する検体のうち、検査に使用できる正味の量は、処理の過程で一時置き用のキュベットやノズルに付着する相当量分(すなわち、デットボリューム)減少する。本ステップでは、正味の量が検査に要する検体の総量となるように、プラスアルファを加えた量を吸引する。ただし、プラスアルファの量は、当該デットボリュームであり、例えば、凝固時間測定に使用される検体量には使用されない量である。すなわち、実施される検査に使用する検体の総量以上であるが、いわゆる再検査に係る前記血液凝固時間測定処理の実施に要する分量は含まない。具体的には、100μL以下、好ましくは80μL以下、より好ましくは50μL以下、更に好ましくは30μL以下等が挙げられる。これにより、検査項目の再検査に必要とされる量(すなわち、再検査用の予備)を予備的に貯留する必要が無いので好ましい。
【0048】
また、装置制御部211は、ピアスノズルユニット30を一時置きポート56へ移動させ、一時置き用のキュベットへ検体を吐出させる(S5)。本ステップでは、装置制御部211は、ピアスノズルユニット30のノズル32を上昇させ、検体の一時置き位置P2へ旋回させる。そして、装置制御部211は、ノズル32を下降させ、一時置き用のキュベットへ検体を吐出する。
【0049】
また、装置制御部211は、オーダー情報の検査項目に基づいて、試薬ノズルユニット36に、試薬テーブル60から所定の試薬を吸引させる。また、装置制御部211は、試薬ノズルユニット36をLPIAテーブル50の注入位置P11に移動させて所定のキュベットに試薬を吐出させる(S6)。なお、装置制御部211は、LPIAテーブル50を回転させ、S6において注入位置P11で試薬が注入されたキュベットを、分注位置P5へ移動させておく。
【0050】
また、装置制御部211は、サンプルノズルユニット33に、一時置き用のキュベットから検体を吸引させる。また、装置制御部211は、LPIAテーブル50の分注位置P5へ移動させて所定のキュベットへ検体を吐出させる(S7)。このようにして、検体に対しオーダーされた検査項目の測定を開始することができる。なお、装置制御部211は、LPIAテーブル50のキュベットを、第1キュベット搬送ユニット40によって、凝固テーブル53へ適宜搬送させる。
【0051】
S6及びS7の処理は、オーダー情報に含まれる検査項目の数に応じて繰り返し行われる。また、一連のピアッシング動作は、検体の数だけ繰り返し行われる。また、先行する検体についてS6及びS7の処理を行う間に、後続の検体についてS4及びS5の処理を行うことができる。すなわち、先行する検体の一時置きポート56からの分注処理(すなわち、穿孔を伴わない複数の分注)と、後続の検体のサンプル容器13からの採取処理(すなわち、穿孔を伴う吸引)は、異なる検体に対して並列に実行し得る。このようにすれば、連続して複数の検体に対して様々な測定処理を行う場合に、全体の所要時間を短縮することができる。また、1つのサンプル容器13に対して穿孔を繰り返し行う必要がなく、蓋のごみが検体に混入することを抑制できる。
【0052】
また、特に様々な測定を行う複合分析装置においては、仮に再検査用の量を予備的に確保すると検体の量が不足するおそれがある。本実施形態では、S4において、検査に要する検体の総量のみを確保することで、検体の不足を避けることができる。なお、凝固時間測定には、ラテックス凝集法による測定よりも多くの検体を使用する。例えば、ラテックス凝集法による測定においては1つの検査項目について数μLの検体で測定できるのに対し、凝固時間測定においては、数十μLの検体が必要になる。すなわち、複数の凝固時間測定試験を行う場合は、再検査用の検体を確保することがより困難になる。したがって、特に凝固時間測定がオーダーされている場合には、実施される検査に使用する検体の総量に加え、上述したデッドボリュームに相当する量のみを追加して、サンプル容器から一時置き用のキュベットへ移動させるようにしてもよい。すなわち、サンプル容器から一時置き用のキュベットへ移動させる検体の容量には、凝固時間測定において再検査に使用する検体は含まない。
【0053】
<測定時間延長処理>
図13は、測定時間延長処理の一例を示す処理フロー図である。複合分析装置1000のデータ取得部212は、凝固テーブル53に保持された各キュベットについて吸光度を示す情報を取得し、記憶装置220に記憶させる(
図13:S11)。また、凝固判定部213は、予め定められた判定時点が到来したか判断する(S12)。なお、本実施形態では、例えば、所定の判定時点を、測定の開始から30秒、60秒、120秒、180秒、210秒の時点とする。判定時点が到来していないと判断された場合(S12:NO)、S11に戻り処理を繰り返す。一方、判定時点が到来したと判断された場合(S12:YES)、凝固判定部213は、キュベット内の検体が凝固したか判断する(S13)。凝固判定部213は、吸光度と所定の閾値との大小関係に基づいて凝固したか否か判断する。キュベット内の検体が凝固していないと判断された場合(S13:NO)、凝固判定部213は、初期的に定められた所定の測定時間が経過したか判断する(S14)。本実施形態では、例えば初期的な測定時間を210秒とする。なお、本実施形態では、当該測定時間を入替周期として、凝固テーブル53におけるキュベットの交換のスケジュールを組み立てる。すなわち、測定時間が経過するまでは、測定が完了してもキュベットを廃棄しない。このようにすれば、単位時間当たりの処理性能を担保することができる。また、所定の測定時間が経過していないと判断された場合(S14:NO)、S11に戻り処理を繰り返す。
【0054】
一方、所定の測定時間が経過したと判断された場合(S14:YES)、測定時間を延長して再検モードに移行する(S15)。再検モードにおいては、測定終了時間を360秒まで延長し、測定を継続する。すなわち、データ取得部212は、凝固テーブル53に保持された各キュベットについて吸光度を示す情報を取得し、記憶装置220に記憶させる(S16)。S16の処理は、S11と同様である。その後、データ取得部212は、測定を終了するか判断する(S17)。本ステップでは、測定を開始してから、延長後の測定終了時間である360秒が経過したか判断する。測定終了時間が経過していないと判断された場合(S17:NO)、S16の処理に戻り測定を継続する。一方、S17において測定終了時間が経過したと判断された場合(S17:YES)、又はS13において凝固したと判断された場合(S13:YES)は、装置制御部211は当該キュベットを廃棄させる(S18)。本ステップでは、凝固テーブル53をスライドさせて測定が終了したキュベットを着脱位置に移動させ、第1キュベット搬送ユニット40にキュベットを把持させてキュベット廃棄口80まで移送し、放下させる。
【0055】
血液が凝固するまでに要する時間は、正常な検体の場合はPTで10~12秒程度、APTTで25~40秒程度である。測定時間延長処理においては、一般的に所定の反応が終了する測定時間(例えば210秒)を基準として、測定ユニットに載置するキュベットの入れ替えのスケジュールを決定しておき、基準となる時間を超えても終了しない場合に測定時間を延長して測定処理を続行する。このようにすれば、安全を見て1つの検体の測定時間を長めにとっておく必要はなく、処理効率の低下を抑制できる。また、仮に、基準となる測定時間で測定を一旦終了させ、所定の反応が完了していない場合には当該検体について再度測定をやり直すような処理であると、やり直しに時間がかかる点や反応が終了しなかった検体を無駄にしてしまう点で効率が悪い。当初の測定終了時間が経過しても反応が終了していない場合に、測定を継続するという処理を採用することにより、本実施形態では時間の無駄や検体の無駄を省くことができ、処理効率の向上につながる。このような延長処理は、血液の凝固に限らず、何らかの反応の進行の程度を判断する処理に適用することができる。このような測定時間延長処理と組み合わせることにより、ピアッシング動作において再検用の予備の検体を確保しなくてもオーダーされた測定を実施できるようになり、検体の不足が生じることがなくなる。
【0056】
<その他>
上述の実施形態および変形例は例示であり、本発明は上述した構成には限定されない。また、実施形態および変形例に記載した内容は、本発明の課題や技術的思想を逸脱しない範囲で可能な限り組み合わせることができる。
【0057】
また、本発明は、上述した処理を実行する方法やコンピュータプログラム、当該プログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体を含む。当該プログラムが記録された記録媒体は、プログラムをコンピュータに実行させることにより、上述の処理が可能となる。
【0058】
ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータから読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータから取り外し可能なものとしては、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、光ディスク、磁気テープ、メモリカード等がある。また、コンピュータに固定された記録媒体としては、HDDやSSD(Solid State Drive)、ROM等がある。
【符号の説明】
【0059】
1000:複合分析装置
100:測定ユニット収容部
10:ラック設置部
11:サンプルラック
20:キュベットフィーダー
30:ピアスノズルユニット
33:サンプルノズルユニット
36:試薬ノズルユニット
40:第1キュベット搬送ユニット
45:第2キュベット搬送ユニット
50:LPIAテーブル
53:凝固テーブル
60:試薬テーブル
70:レール
80:キュベット廃棄口
200:タンク等収容部
201:コンピュータ(制御装置)
210:プロセッサ
211:装置制御部
212:データ取得部
213:凝固判定部
214:延長判定部
220:記憶装置
300:モニタ