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特許7485688銅、酸化亜鉛、アルミナ、及びシリカを含有する触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】銅、酸化亜鉛、アルミナ、及びシリカを含有する触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/80 20060101AFI20240509BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20240509BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240509BHJP
   B01J 35/61 20240101ALI20240509BHJP
   C07C 31/04 20060101ALI20240509BHJP
   C07C 29/154 20060101ALI20240509BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240509BHJP
【FI】
B01J23/80 Z
B01J37/03 B
B01J37/08
B01J35/61
C07C31/04
C07C29/154
C07B61/00 300
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2021553858
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-15
(86)【国際出願番号】 GB2020050669
(87)【国際公開番号】W WO2020212681
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】1905293.5
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア-ディーゲス、モニカ
(72)【発明者】
【氏名】グレン、ポーリーン エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】マクラウド、ノーマン
(72)【発明者】
【氏名】ミストリー、ニーティシャ
(72)【発明者】
【氏名】ニコルソン、マイケル トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ロロフ-スタンドリング、シモーネ
(72)【発明者】
【氏名】スタンウェイ、メラニー アンドレア
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101306369(CN,A)
【文献】国際公開第2013/183577(WO,A1)
【文献】特開2000-126597(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101322940(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 23/80
B01J 37/03
B01J 37/08
B01J 35/60
C07C 31/04
C07C 29/154
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物触媒粉末から形成される成形ユニットの形態の炭素酸化物の変換反応に使用するために好適な触媒であって、酸化亜鉛、アルミナ、及びシリカと組み合わされた30~70重量%の酸化銅を含み、Si:Alの原子比が0.005~0.15:1の範囲であり、BET表面積が105m/g以上、銅表面積が37m/g触媒を超える、触媒。
【請求項2】
前記触媒が、50~70重量%の範囲の量の酸化銅を含むメタノール合成触媒である、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
CuO:ZnOの重量比が、2:1~3.5:1の範囲である、請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
前記触媒が、20~30重量%の酸化亜鉛を含有する、請求項2又は3に記載の触媒。
【請求項5】
前記触媒が、5~20重量%の範囲の量のアルミナを含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項6】
前記触媒が、40m/g触媒以上の銅表面積を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項7】
前記触媒が、Mg、Co、Mn、V、Ti、Zr又は希土類の化合物から選択される1つ以上の促進剤化合物を1~5重量%の範囲の量で更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項8】
前記触媒中のシリカの量が、0.05~1.50重量%の範囲である、請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項9】
前記Si:Alの原子比が、0.03~0.07:1の範囲である、請求項1~8のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項10】
前記Si:Cuの原子比が、0.001~0.018:1の範囲である、請求項1~9のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項11】
窒素物理吸着によって求められる、前記触媒のBET表面積が、107m/g以上である、請求項1~10のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項12】
請求項1の触媒の製造方法であって、(i)水性媒体中で、銅及び亜鉛化合物の共沈物を含む均質な混合物を、アルミナ及びシリカと形成する工程であって、前記アルミナはアルミナゾルによって供給される、工程と、(ii)前記均質な混合物を回収し、洗浄し、乾燥させて乾燥組成物を形成する工程と、(iii)前記乾燥組成物を焼成し成形して前記触媒を形成する工程を含む、方法。
【請求項13】
前記共沈物が、沈殿容器中で銅及び亜鉛化合物を含有する酸性水溶液を混合し、前記酸性水溶液をアルカリ沈殿剤水溶液と合わせることによって調製される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記銅及び亜鉛化合物が硝酸塩であり、前記アルカリ沈殿剤がアルカリ金属炭酸塩を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記沈殿が、40~80℃の範囲の温度で行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記共沈物が、別のエージング容器中で、10~80℃の範囲の温度でエージングされる、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記アルミナゾルが、前記酸性金属溶液又はアルカリ沈殿剤水溶液とは別に前記沈殿容器に添加される、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記アルミナゾルが、分散したときに、5~200nmの範囲のD50平均粒径を有するコロイド状に分散したベーマイトの分散液である、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記触媒中のシリカが、シリカ修飾アルミナゾルを含むシリカゾル、及び/又は水溶性ケイ素化合物、又は有機ケイ酸塩に由来する、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
シリカゾルが、前記酸性金属溶液及び/若しくは前記アルミナゾルに添加される、並びに/又は前記沈殿容器及び/若しくは前記エージング容器に添加される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
アルカリ金属ケイ酸塩が、前記アルカリ沈殿剤水溶液及び/若しくは前記アルミナゾルに添加される、並びに/又は前記沈殿容器及び/若しくはエージング容器添加される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記乾燥工程が、90~150℃の範囲の温度で行われる、請求項12~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記成形組成物が、2.5~10mmの範囲の直径、及び0.5~2.0の範囲のアスペクト比(長さ/直径)を有する円筒形ペレットである、請求項12~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記焼成が、275~450℃の範囲の温度で行われる、請求項12~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒、又は請求項12~24のいずれか一項に記載の方法に従って調製された触媒の存在下で、一酸化炭素及び二酸化炭素のうちの少なくとも1つを含有し、水素及び/水蒸気を更に含有する炭素酸化物含有プロセスガスを反応させることを含む、炭素酸化物変換プロセス。
【請求項26】
前記プロセスが、メタノール合成及び水性ガスシフト反応から選択される、請求項25に記載の炭素酸化物変換プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅含有触媒、それらの製造、及び、例えば水性ガスシフト反応及びメタノール合成などの炭素酸化物の変換反応における使用に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
炭素酸化物変換プロセスは、水性ガスシフト反応による合成ガスの操作、及びメタノールなどのアルコールの製造において非常に重要である。これらの反応を下に示す。
CO+HO→CO+H
CO+2H→CHOH
CO+3H→CHOH+H
【0003】
触媒はまた、水性ガス逆シフト反応及びメタノールの水蒸気改質に使用して、水素と炭素酸化物を生成することができる。
【0004】
そのような反応のための触媒は概ね、酸化銅と、通常、変換反応プロセスの条件下で実質的に還元されない酸化亜鉛を含む1つ以上の酸化物材料との均質な混合物(intimate mixture)のペレット状の小さな分離した粒子を形成することによって製造される。均質な混合物は、概ね、銅化合物と他の酸化物材料に変換可能な化合物を沈殿させるか、及び/又は他の酸化物材料又はそれに変換可能な化合物の存在下で銅化合物を沈殿させ、続いて、焼成して沈殿した銅化合物及び他の成分を必要に応じて酸化物に変換する。したがって、ペレットは酸化物粉末から形成される。活性触媒を生成するために、当該ペレットを還元条件で処理して、ペレット中の酸化銅を金属銅に還元する。還元工程は、通常、炭素酸化物変換プロセスが実施される反応器中で行われ、したがって、通常、銅が酸化銅の形態で存在する触媒前駆体を反応器に充填し、還元は、その中に適切な還元ガス混合物を通すことによって行われる。
【0005】
触媒の活性は概ね、金属銅表面積に関連し、表面積が高いほどより高い初期活性を与える。しかしながら、使用中の触媒の選択性及び寿命は、反応中の熱、反応物質、及び副生成物によって影響を受ける。
【0006】
米国特許第6048820号には、酸化銅、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、及び二酸化ケイ素を含み、任意で酸化ジルコニウム、酸化ガリウム、及び酸化パラジウムを含む銅系触媒が開示されており、そこでは、触媒の総重量を100%として、上記酸化物は、上述の順序で、それぞれ、20~60重量%、10~50重量%、2~10重量%、0.3~0.9重量%、0~40重量%、0~10重量%、及び0~10重量%を占め、また、二酸化ケイ素は、コロイダルシリカ又は水に溶解させたシリカに由来している。触媒は、可溶性の銅、亜鉛及びアルミニウム化合物の共沈によって調製され、480~690℃で焼成されている。しかしながら、これらの触媒の初期触媒活性は比較的低い。
【0007】
中国特許第101306369号には、Cu、Zn、Al及びSiの酸化物を含むメタノール合成触媒が開示されており、そこでは、シリカ修飾アルミナが担体として採用され、Cu及びZnが活性成分であり、構成成分の元素のモル比は次のように、Cu:Zn:Al:Si=(5~6):(2~3):(0.8~1):(0.0016~0.05)である。触媒の調製に使用される方法は3つの工程に分けられ、先ず、共沈法を用いてAlとSi化合物の共沈物を形成し、次に、共沈法を用いて、CuとZn化合物の共沈物を形成し、最後に、得られた2つの共沈物を特定の割合に従って混合し、エージングし、次いで濾過し、洗浄し、乾燥させて、焼成する。本発明者らは、この経路によって調製された触媒の安定性が比較的低いことを見出した。
【0008】
米国特許第9314774号には、銅、亜鉛、アルミニウム、及びケイ素を含むメタノール合成触媒が開示されており、その銅に対する亜鉛のモル比は0.5~0.7、銅に対するケイ素のモル比は0.015~0.05であり、銅に由来するピークに対する亜鉛に由来するピークの最大強度の比は0.25以下であり、銅に由来するピークの半値幅(2θ)は0.75~2.5である。触媒は、銅、亜鉛、アルミニウム、及びケイ素を含む前駆体の300℃~450℃の温度での焼成によって製造され、ここで、(A)銅に対する亜鉛のモル比は0.5~0.7、(B)銅に対するケイ素のモル比は0.015~0.05である。本発明者らは、そのような触媒の初期活性が比較的低いことを見出した。
【0009】
本発明者らは、銅含有触媒組成物中のアルミナがアルミナゾルに由来するアルミナとシリカとの組合せが、驚くほど高い初期活性を与え、また、シリカを含まない触媒又はアルミナが可溶性アルミニウム塩に由来するシリカ含有触媒と比較して、不活化に対する改善された耐性を示すことを見出した。
【0010】
したがって、本発明は、酸化物触媒粉末から形成される成形ユニットの形態の炭素酸化物の変換反応における使用に好適な触媒を提供し、当該触媒は、酸化亜鉛、アルミナ、及びシリカと組み合わされた30~70重量%の酸化銅を含み、ここで、Si:Alの原子比は、0.005~0.15:1の範囲であり、BET表面積は105m/g以上であり、銅表面積は37m/g触媒を超える。
【0011】
本発明は、触媒の製造方法を更に提供し、方法は、
(i)水性媒体中で、銅及び亜鉛化合物の共沈物を含む均質な混合物を、アルミナ及びシリカと形成する工程であって、アルミナはアルミナゾルによって供給される、工程と、
(ii)均質な混合物を回収し、洗浄し、乾燥させて乾燥組成物を形成する工程と、
(iii)乾燥組成物を焼成及び成形して触媒を形成する工程と、を含む。
【0012】
本発明は、触媒を使用した炭素酸化物変換プロセスを更に含む。
【0013】
触媒の酸化銅含有量(CuOとして表される)は、30~70重量%の範囲である。この範囲において、50~70重量%、好ましくは60~70重量%の範囲の酸化銅含有量がメタノール合成における一般的な使用であり、一方、水性ガスシフト反応では、酸化銅含有量は概ねより低く、特に30~60重量%の範囲である。
【0014】
特に明記しない限り、触媒中の金属酸化物の重量パーセントは、無損失ベースで求められる。触媒中の金属酸化物の含有量は、触媒上に残留する炭酸塩化合物及び水分の量の違いに起因する触媒間の変動を排除するために、無損失ベースで適切に求められる。無損失ベースで金属酸化物の含有量を求めるための特に適切な方法は、金属酸化物の含有量を測定する前に、触媒を空気中、900℃で2時間加熱して、揮発性物質を除去することである。加熱処理した触媒は、無水条件下で保存され得る。触媒の金属酸化物の含有量は、既知の技術を使用して蛍光X線分光法(XRF)などの任意の適切な元素分析技術を用いて求めることができる。
【0015】
好ましい触媒前駆体組成物は、酸化物触媒に焼成する前に、その中に分散したアルミナ又は水和アルミナ、シリカ又は含水シリカと共にCu及びZnのヒドロキシ炭酸塩を含む混合金属炭酸塩を含有する固体を含む。Cu:Znの重量比(CuO:ZnOとして表される)は、1:1以上であるが、好ましくは、メタノール合成触媒では2:1~3.5:1、特に2.5:1~2.75:1の範囲であり、水性ガスシフト触媒では1.4:1~2.0:1の範囲である。メタノール合成触媒では、触媒は、好ましくは、20~30重量%の酸化亜鉛を含有する。
【0016】
触媒はアルミナを含有し、それは、5~20重量%、好ましくは5~15重量%、より好ましくは8~11重量%の範囲の量である。触媒中のアルミナは、アルミナゾルに由来し、主にベーマイトAlOOHとして、及び/又はγアルミナなどの遷移アルミナとして存在する。触媒中のアルミナは、結晶性アルミノケイ酸塩としては存在しない。本出願人は、アルミナゾルをベースとした触媒が焼成及び成形後により高いBET及び銅表面積を有し、それにより、可溶性アルミニウム化合物を使用して調製された触媒よりも高い初期活性を与えることを見出した。
【0017】
触媒は、37m/g触媒を超える、好ましくは40m/g触媒以上、より好ましくは45m/g触媒以上、最も好ましくは50m/g触媒以上の銅表面積を有する。最大で約60m/g触媒の銅表面積を実現することができる。これらの表面積は、得られたそのままの触媒について適切に求められる。銅表面積は、欧州特許第0202824(A)号に記載されているように、リアクティブフロンタルクロマトグラフィーを使用して容易に得ることができる。特に好適な方法は以下の通りであり、先ず、触媒の成形ユニットを粉砕して、0.6~1.00mmの粒径に篩い分けする。約2.0gの粉砕材料をガラス管に量り取り、68℃に加熱して、ヘリウムで2分間パージする。次いで、触媒をヘリウム中5vol%のH流の中で、4℃/分で230℃まで加熱して、完全に還元されるまでこの温度で30分間保持する。還元した触媒をヘリウム下で68℃に冷却する。次いで、還元した触媒に、ヘリウムガス中に2.5vol%のNOを含有する混合物を通す。発生したガスをガスクロマトグラフに通して、Nの発生を測定する。これにより、還元されていない触媒1グラム当たりの銅表面積を計算することができる。
【0018】
焼成触媒の特性は、特に触媒がメタノール合成用である場合に、Mg、Co、Mn、V、Ti、Zr又は希土類の化合物から選択される1つ以上の促進剤化合物を添加することによって更に向上させることができる。マグネシウム化合物が好ましく、触媒は、1~5重量%の範囲の量の酸化マグネシウムを含有してもよい。したがって、触媒は、好適には、銅、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、及びケイ素の酸化物から本質的になる。
【0019】
シリカは、Si:Alの原子比0.005~0.15:1の範囲で触媒中に提供される。したがって、触媒中のシリカの量は比較的低く、0.05~1.50重量%、好ましくは0.2~1.20重量%、より好ましくは0.3~0.8重量%の範囲である。シリカの量が多いほど触媒の活性成分が希釈され、触媒上に酸性部位が生成して、メタノール生成における選択性を低下させる。触媒中のシリカの量は、Si:Alの原子比が0.03~0.07:1の範囲である場合が最適と思われる。触媒中のSi:Cuの原子比は、0.001~0.018:1、又は0.004~0.017:1の範囲であってもよいが、好ましくは0.007~0.009:1の範囲である。触媒中のシリカは、シリカ修飾アルミナゾルを含むシリカゾル、及び/又は例えばケイ酸カリウムのようなアルカリ金属ケイ酸塩などの水溶性ケイ素化合物のいずれかに由来する。オルトケイ酸テトラメチル及びオルトケイ酸テトラエチルなどのアルキルケイ酸塩を含む有機ケイ酸塩も使用することができる。シリカは、使用中に銅を安定化させ、それにより、シリカを含まない触媒と比較して触媒の長期間の活性を改善する。
【0020】
窒素物理吸着によって求められる、成形触媒のBET表面積は、105m/g以上、好ましくは107m/g以上、より好ましくは109m/g以上、最も好ましくは110m/g以上、特に115m/g以上である。最大で約140m/gのBET表面積を実現することができる。BET表面積は、粉砕ペレットについて適切に求められる。成形されていない粉末のBET表面積はより高く、120~160m/gの範囲である。そのような非常に高いBET表面積は、部分的にはアルミナゾルをベースとした調製方法の結果として得られ、高度に分散した銅に安定した担体を提供すると考えられる。
【0021】
触媒中で、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、及び存在する場合の促進剤酸化物は、炭素酸化物変換プロセスの条件下では実質的に金属に還元されず、概ね、触媒中に酸化物として存在する。酸化銅は、使用の前にエクソサイチュ又はインサイチュのいずれかで還元されて、触媒活性を有する銅金属結晶を形成する。
【0022】
酸化銅含有触媒は、水性媒体中で、銅及び亜鉛化合物の共沈物を含む均質な混合物を、アルミナ及びシリカと形成するであって、アルミナはアルミナゾルによって供給される、工程を含む方法で調製される。共沈物は、適切な比の銅及び亜鉛化合物を含有する酸性水溶液を混合し、この酸性水溶液をアルカリ沈殿剤水溶液と合わせることによって調製することができる。銅及び亜鉛化合物は、好ましくは硝酸塩である。Mg又はZrの硝酸塩などの促進剤化合物を銅及び亜鉛化合物の酸性溶液中に含めてもよい。アルカリ沈殿剤は、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属水酸化物、又はこれらの混合物であってもよい。アルカリ沈殿剤は、好ましくはアルカリ金属炭酸塩を含む。カリウム又はナトリウム沈殿剤を使用することができるが、沈殿した組成物からナトリウムよりも容易に洗浄によって除去されることが認められたため、カリウム沈殿剤が好ましい。酸性溶液中の銅及び亜鉛化合物とアルカリ沈殿剤との反応により、銅-亜鉛混合共沈物の沈殿が生じる。沈殿は、10~80℃の範囲の温度で行うことができるが、好ましくは、焼成後により高い銅表面積を与える小さな結晶子を生成することが認められたことから、高温、すなわち、40~80℃、より好ましくは50~80℃、特に60~80℃の範囲で行われる。
【0023】
酸性溶液及びアルカリ性溶液は、沈殿容器内の一方に他方を加えてもよいが、好ましくは、沈殿容器内のpHが6~9、好ましくは6~7に維持されるように沈殿容器に同時に加え、その後、得られた共沈物のスラリーを好ましくは別のエージング容器中で、10~80℃、好ましくは40~80℃、より好ましくは50~80℃、特に60~80℃の範囲の温度でエージングして、銅及び亜鉛の結晶性化合物、好ましくは結晶性ヒドロキシ炭酸塩化合物を形成する。共沈スラリーのエージングは、バッチで行ってもよく、又は沈殿した材料の水性スラリーを選択された時間で1つ以上の撹拌容器中に保持して半連続的な手順で行ってもよい。液体中の共沈物の懸濁は、単に撹拌することによって懸濁させることができ、撹拌の勢いは粒子の沈降する傾向及び粘度に依存する。あるいは、共沈スラリーは、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2008/047166号に記載されているようにパルスフロー反応器内でエージングしてもよい。共沈スラリーの反応及び後処理の条件を選択して、例えば、マナセアイト(Manasseite)、ローザサイト(Rosasite)、オーリチャルサイト(Aurichalcite)、又はマラカイト(Malachite)タイプの結晶性化合物を生成することができる。共沈及びエージングは、好ましくは、XRDによって求められるマラカイト[Cu(CO)(OH)]、菱亜鉛鉱[ZnCO]及び/又は亜鉛マラカイト[(Cu/Zn)(CO)(OH)]相を生成するように行われる。
【0024】
触媒は、アルミナゾルを使用して調製される。アルミナゾルは、ベーマイト及び擬ベーマイトを含む水酸化アルミニウムの水性コロイド分散液である。分散液のpHは<7が好適であり、好ましくは3~4の範囲である。好適には、アルミナゾルを沈殿容器に加える。アルミナゾルは、それにより触媒の特性が向上することが認められたことから、好ましくは、酸性金属溶液又はアルカリ沈殿剤水溶液とは別に沈殿容器に加える。アルミナゾルは市販されており、又は既知の方法によって調製してもよい。ゾル中のアルミナ濃度は、30~200g/リットルである。特に好適なアルミナゾルとしては、分散したときに5~200nm、好ましくは5~100nm、より好ましくは5~50nmの範囲のD50平均粒径を有するコロイド状に分散したベーマイトの分散液が挙げられる。そのようなゾルは市販されている。
【0025】
触媒はシリカを含有する。シリカゾルをシリカ供給源として使用する場合、それは酸性金属溶液に加えてもよく、及び/又は沈殿容器及び/又はエージング容器及び/又はアルミナゾルに加えてもよい。特に好適なシリカゾルとしては、10~20nmの範囲の粒径を有するコロイド状に分散したシリカの水性分散液が挙げられる。分散液のpHは<7であり、好ましくは2~4の範囲である。ゾル中のシリカ濃度は、100~400g/リットルである。そのようなゾルは、例えば、日産化学のスノーテックス-O及びGraceのLudox HSAとして市販されている。あるいは、シリカをシリカ修飾アルミナゾルとして加えてもよい。特に好適なシリカ修飾アルミナゾルとしては、コロイド状に分散したシリカ修飾ベーマイトの分散液が挙げられる。そのようなゾルは、例えば、SasolのSiral 5Dとして市販されている。
【0026】
アルカリ金属ケイ酸塩などの水溶性ケイ酸塩をシリカ供給源として使用する場合、それはアルカリ沈殿剤水溶液、及び/又はアルミナゾル、及び/又は沈殿容器及び/又はエージング容器に加えてもよい。好適なアルカリ金属ケイ酸塩は、可溶性ケイ酸ナトリウム及び可溶性ケイ酸カリウムである。そのようなアルカリケイ酸塩は、例えば、PQ CorporationのKasil 1、PQ CorporationのKasolv 16又はZaclon LLCのZacsil 18として市販されている。アルカリ金属ケイ酸塩を触媒中のシリカ供給源として使用する場合、それにより、触媒の洗浄、回収、及び廃棄溶液の大量での再処理が改善されることから、好ましくは、アルカリ金属ケイ酸塩中のアルカリ金属は、沈殿剤溶液中のアルカリ金属と同じである。アルカリ金属ケイ酸塩溶液中のSiOとして表されるケイ素の量は、15~30wt%の範囲である。
【0027】
式中のRがC~Cアルキルである式Si(OR)のアルキルシリケートなどの有機ケイ酸塩をシリカ供給源として使用する場合、それは水と接触したときに加水分解されるため、アルミナゾル又は沈殿及び/又はエージング容器に加えることが好ましい。
【0028】
共沈及びエージングの後、均質な混合物は、例えば、濾過、デカント、又は遠心分離などの既知の方法を使用して母液を分離して回収し、洗浄して残留する可溶性の塩を除去する。
【0029】
均質な混合物の洗浄は、プレートフレームフィルタプレスなどの従来の装置を使用して、例えば、塩を含まない水で1回以上混合物を再スラリー化して、又は回収前にArtisan増粘剤若しくはShriver増粘剤を使用した動的クロスフロー濾過によって行われる。メタノール合成触媒においては、アルカリ金属が触媒の性能に有害であるため、回収して乾燥させた混合物のアルカリ金属の含有量は、無損失ベースの乾燥材料でそれぞれのアルカリ金属酸化物として計算して、望ましくは0.2wt%未満、好ましくは0.1wt%未満に低減されなければならない。
【0030】
回収した均質な混合物を乾燥させて、乾燥組成物を形成する。乾燥は、湿った混合物を、最高温度に達するまで段階に分けて、又は長時間にわたって連続的に加熱することを含む。乾燥工程は、オーブン、回転乾燥機、噴霧乾燥機などの従来の乾燥装置又は同様の装置を使用して、空気又は不活性ガス下で90~150℃、好ましくは90~130℃の範囲の温度で行われる。
【0031】
乾燥組成物は、概ね粉末の形態である。平均粒径(篩分画、例えば重量平均粒径によって求められる)は、10~300μm(ミクロン)の範囲である。乾燥組成物は、銅及び亜鉛の1つ以上のヒドロキシ炭酸塩、並びにアルミナ及びシリカを含む。
【0032】
乾燥組成物を焼成し、成形して触媒を形成する。乾燥組成物を、成形する前に、例えば加熱して焼成し、銅及び亜鉛化合物、並びに任意の促進剤化合物を、それらのそれぞれの酸化物に変換してもよく、また、あまり好ましくはないが、乾燥組成物を、焼成する前に成形ユニットに形成してもよい。この後者の方法は、成形ユニットの焼成によって概ねそれらの強度が低下し、また、ペレットの密度の制御がより困難になるため、あまり好ましくない。本発明において、焼成は、275~450℃、好ましくは275~400℃、より好ましくは275~350℃の範囲の温度で行われる。より低い温度はペレット安定性をより低くし、また、より高い温度は高い銅の分散によって生成される初期活性を著しく低下させる。焼成は、空気又は窒素などの不活性ガス下で行うことができるが、空気又は他の酸素不含有ガスが好ましい。焼成した生成物は概ね粉末の形態である。
【0033】
成形ユニットは、好ましくはペレットである。したがって、任意で粉末をペレット化プロセスを改善することができる予備圧縮した後に、乾燥又は焼成した粉末をペレット化する。ペレットは、好適には円筒形ペレットである。炭素酸化物変換プロセス用の円筒形ペレットは、好適には、2.5~10mm、好ましくは3~10mmの範囲の直径、及び0.5~2.0の範囲のアスペクト比(すなわち、長さ/直径)を有する。あるいは、成形ユニットはリングの形態であってもよい。特に好適な実施形態では、成形ユニットは、その長さに沿って走る2本以上、好ましくは3~7本の溝を有する円筒の形態である。1本以上の縦溝を有する好適なドーム構造を持つ円筒形が、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2010/029325号に記載されている。
【0034】
ペレット、特に平坦な又は上記のようにドーム状の端部を有する円筒形ペレットは、望ましくは、ペレットの密度が1.8~2.4g/cm、好ましくは1.9~2.3g/cmの範囲で作製される。ペレットの密度は、ペレットの寸法から体積を計算し、その重量を測定することによって容易に求められる。密度が増加するにつれて、成形ユニット内の格子間の容積が減少し、それにより反応ガスの透過性が低下する。したがって、密度>2.4g/cmでは、銅含有量が高体積であるにもかかわらず、触媒の反応性は最適よりも低い。密度<1.8g/cmでは、圧縮強度が、現代の炭素酸化物変換プロセスにおける長期間の使用には不十分である。
【0035】
本発明は、一酸化炭素及び二酸化炭素のうちの少なくとも1つを含有し、水素及び/又は水蒸気を更に含有する炭素酸化物含有プロセスガスを触媒の存在下で反応させることを含む炭素酸化物変換プロセスを更に含む。したがって、本明細書における用語「炭素酸化物」は、一酸化炭素及び二酸化炭素のうちの少なくとも1つを含む。触媒は、それを好ましくは水素を含む還元ガス流に曝露して、酸化銅を元素銅に変換することにより、インサイチュで予備活性化される。したがって、本発明は好ましくは、(i)それを還元ガス流と接触させて触媒を活性化する工程と、(ii)一酸化炭素及び二酸化炭素のうちの少なくとも1つを含有し、水素及び/又は水蒸気を更に含有する炭素酸化物含有プロセスガスを触媒の存在下で反応させて生成物流を形成する工程を含む。活性化は、水素と炭素酸化物を含む合成ガスなどの水素含有ガスを使用して、80℃超の温度及び1~50bargの範囲の圧力で行われる。最高の還元温度は、望ましくは150~300℃である。
【0036】
本発明は、触媒を使用するプロセス、特に以下のプロセスを含む。
A.炭素酸化物の1つ又は両方(すなわち一酸化炭素及び/又は二酸化炭素)及び水素を含有するガス混合物を、200~320℃の範囲の温度、20~250、特に30~120bar absの範囲の圧力、及び500~20000h-1の範囲の空間速度で触媒上を通過させるメタノール合成。プロセスは、一回通過又は再循環ベースであってもよく、反応ガスと接触する表面との間接的な熱交換による冷却、又は触媒床の細分化と冷却ガスの注入による床間でのガスの冷却を含んでもよい。このプロセスでは、触媒は、好ましくは、アルミナ及びシリカと共に銅、酸化亜鉛、及び任意でマグネシアを含有する。触媒は、天然ガスを水蒸気改質し、及び/又は酸素で自己熱改質して、一酸化炭素、二酸化炭素、及び水素を含有する合成ガスを生成するメタノール合成プロセス、又は合成ガスが一酸化炭素に富み、石炭又はバイオマス又は都市の廃棄物のガス化に由来するプロセスに使用される。触媒は特に、合成ガスが水素及び二酸化炭素から本質的に形成される場合の、特に水素及び/又は二酸化炭素が、水の電気分解による水素及び燃焼ガス又は埋立地ガスなどの排ガスからの回収COなどの再生可能な供給源のみから回収される場合のメタノール合成プロセスに使用される。
【0037】
B.触媒がまた、表面積が50~300m・g-1の遊離アルミナ又は別の酸性触媒も含有し、それにより、合成生成物がジメチルエーテルに比較的富む改変メタノール合成。温度、圧力、及び空間速度は、メタノール合成のためのものと同様であるが、合成ガスは、水素と一酸化炭素を2未満のモル比で含有する。
【0038】
C.一酸化炭素含有ガス(好ましくは乾燥基準で4v/v%未満)と水蒸気(その中の水蒸気の総乾燥ガスに対するモル比は概ね0.3~1.5の範囲である)とを含有するガスを、200~300℃の範囲の出口温度、15~50bar absの範囲の圧力で断熱固定床内の触媒上に通す低温シフト反応。通常、入口ガスは、出口温度が400~500℃の範囲である鉄触媒又はアルミン酸亜鉛触媒などの高温シフト触媒での反応によって一酸化炭素含有量が減少し、続いて間接的な熱交換によって冷却された「高温シフト」の生成物である。低温シフト工程からの出口一酸化炭素含有量は、概ね、乾燥基準で0.1~1.0v/v%の範囲、特には0.5v/v%未満である。
【0039】
D.一酸化炭素と水蒸気を含有するガスを、15~50bar absの範囲の圧力、入口温度が280℃の高温であってもよいが概ねは200~240℃の範囲である入口温度、出口温度が360℃の高温であってもよいが概ね300℃までで触媒に供給する中温シフト。これらの条件はBよりも厳密であり、新しい触媒が特に有利であることが予想される。
【0040】
E.触媒床における反応が熱交換表面との接触で生じる熱交換による低-中温シフト。簡便には冷却剤は部分的又は完全な沸騰が起こるような圧力下の水である。好適な圧力は、15~50bar absであり、得られた水蒸気は、例えば、タービンを駆動するために、又はシフトのためのプロセス水蒸気を提供するために、又はシフトの供給ガスを生成する上流ステージに使用することができる。水は、触媒に囲まれたチューブ内にあってもよく、また逆であってもよい。
【0041】
F.ガス状メタノール流を水蒸気及び/又は二酸化炭素と組み合わせて、概ね250~360℃の範囲の温度、及び概ね10~30bar absの範囲の圧力で触媒上で反応させて、水素と炭素酸化物を含有するガス混合物を生成するメタノール改質。水素は、圧力スイング吸着又は水素透過性膜などの従来の分離方法を使用して、ガス混合物から回収することができる。
【0042】
本発明は、メタノール合成触媒に特に好適である。
【0043】
ここで、以下の実施例を参照して、本発明を更に説明する。
【0044】
実施例において、特に明記しない限り、触媒は、混合金属硝酸塩溶液、アルカリ金属沈殿剤溶液、及び水性アルミナゾル分散液を65~70℃に保持した1Lの撹拌した沈殿容器に同時に加えることにより、4~7リットルのスケールで触媒を調製した。共沈スラリーのエージングは、別の撹拌した容器中で最大2時間、再度65~70℃で行った。シリカは、調製プロセスの異なる時点で様々な手段によって触媒に加えた。エージングした沈殿スラリーは、濾過して、脱塩水で洗浄した。洗浄した沈殿物の乾燥及び焼成は、特に明記しない限り、それぞれ110℃及び300~330℃で行った。得られた粉末は成形ユニットに圧密し、その後、それを試験に好適なグリット粒子に粉砕した。
【0045】
使用したゾルは水性であった。ゾルの特性は以下のとおりであった。
【0046】
【表1】
【0047】
上記のようにリアクティブフロンタルクロマトグラフィーを使用して、得られたそのままの状態で、粉砕ペレットのグリットについて、銅表面積を求めた。
【0048】
粒径の測定はディスク遠心分離を用いて行った。
【0049】
金属酸化物の含有量は、無損失ベースで決定して結果を示し、先ず、坩堝内の既知の重量の得られたそのままの触媒粉末を、予め加熱したオーブン中で、空気下、900℃で2時間加熱した。次いで、坩堝を密封され、及び排気されたデシケータ中で冷却し、再秤量して重量損失を求めた。熱処理した触媒を,既知の方法を用いて蛍光X線(WD-XRF)を使用して、金属含有量を分析した。
【0050】
粉砕したペレットのグリットについて、乾燥後に、ASTM Method D 3663-03の表面積の標準試験に従って、Micrometrics 2420 ASAP物理吸着分析装置を用いて、窒素物理吸着により、BET表面積を求めた。窒素を吸着質として使用し、液体窒素温度(77K)で測定を行った。窒素分子の断面積は16.2Åとした。試料を、分析の前に、最適な温度で最低1時間、乾燥窒素ガスでパージして脱ガスした。0.05~0.20の両端値を含むP/Pの相対圧力の領域にわたって、5つの相対圧力/体積のデータペアを取得した。各点の平衡化時間は10秒であった。
【0051】
実施例1
Cu:Zn:Al:Mg:Siのモル比が4.4:1.7:1.0:0.2:0.04で64.4wt%の酸化銅含有量を有する酸化物触媒を、6.3~6.8のpH及び65~70℃の温度で、同時にアルミナゾルとシリカゾルの混合物を沈殿容器に加えながら、銅、亜鉛、及びマグネシウムの硝酸塩を含む混合金属硝酸塩溶液を炭酸カリウム溶液で共沈させることにより調製した。得られた沈殿物を65~70℃で最大2時間エージングし、濾過し、脱塩水で洗浄し、乾燥させ、空気中330℃で6時間焼成した。
【0052】
実施例2
Cu:Zn:Al:Siのモル比が5.1:1.9:1.0:0.04で66.1wt%の酸化銅含有量を有する酸化物触媒を、硝酸マグネシウムを用いずに、空気中300℃、6時間の焼成で実施例1に記載のように調製した。
【0053】
実施例3
Cu:Zn:Al:Mg:Siのモル比が4.5:1.7:1.0:0.2:0.006で64.5wt%の酸化銅含有量を有する酸化物触媒を、空気中305℃、6時間の焼成で実施例1に記載のように調製した。
【0054】
実施例4
Cu:Zn:Al:Mg:Siのモル比が4.5:1.7:1.0:0.2:0.08で64.2wt%の酸化銅含有量を有する酸化物触媒を、空気中305℃、6時間の焼成で実施例1に記載のように調製した。
【0055】
実施例5
Cu:Zn:Al:Mg:Siのモル比が6.7:2.5:1.0:0.3:0.11で66.1wt%の酸化銅含有量を有する酸化物触媒を、空気中305℃、6時間の焼成で実施例1に記載のように調製した。
【0056】
実施例6
Cu:Zn:Al:Mg:Siのモル比が3.3:1.2:1.0:0.1:0.06で62.2wt%の酸化銅含有量を有する酸化物触媒を、空気中305℃、6時間の焼成で実施例1に記載のように調製した。
【0057】
実施例7
Cu:Zn:Al:Mg:Siのモル比が5.4:2.0:1.0:0.2:0.04で65.9wt%の酸化銅含有量を有する酸化物触媒を、6.3~6.8のpH及び65~70℃の温度で、同時にシリカでドープしたアルミナゾルを沈殿容器に加えながら、銅、亜鉛、及びマグネシウムの硝酸塩を含む混合金属硝酸塩溶液を炭酸カリウム溶液で共沈させることにより調製した。得られた沈殿物を65~70℃で最大2時間エージングし、濾過し、脱塩水で洗浄し、乾燥させ、空気中330℃で6時間焼成した。
【0058】
実施例8
Cu:Zn:Al:Siのモル比が4.3:1.7:1.0:0.04で64.6wt%の酸化銅含有量を有する酸化物触媒を、6.3~6.8のpH及び65~70℃の温度で、同時にアルミナゾルを沈殿容器に加えながら、銅と亜鉛の硝酸塩を含む混合金属硝酸塩溶液及びシリカゾルを炭酸カリウム溶液で共沈させることにより調製した。得られた沈殿物を65~70℃で最大2時間エージングし、濾過し、脱塩水で洗浄し、乾燥させ、空気中300℃で6時間焼成した。
【0059】
実施例9
Cu:Zn:Al:Siのモル比が4.0:1.5:1.0:0.03で64.4wt%の酸化銅含有量を有する酸化物触媒を、6.3~6.8のpH及び65~70℃の温度で、同時にアルミナゾルを沈殿容器に加えながら、銅と亜鉛の硝酸塩を含む混合金属硝酸塩溶液を炭酸カリウム溶液で共沈させることにより調製した。シリカゾルを得られた共沈物に加えた。得られた混合物を65~70℃で最大2時間エージングし、濾過し、脱塩水で洗浄し、乾燥させ、空気中300℃で6時間焼成した。
【0060】
実施例10
Cu:Zn:Al:Mg:Siのモル比が4.4:1.7:1.0:0.2:0.04で63.2wt%の酸化銅含有量を有する酸化物触媒を、6.3~6.8のpH及び65~70℃の温度で、同時に可溶性ケイ酸カリウムを含有するアルミナゾルを沈殿容器に加えながら、銅、亜鉛、及びマグネシウムの硝酸塩を含む混合金属硝酸塩溶液を炭酸カリウム溶液で共沈させることにより調製した。得られた沈殿物を65~70℃で最大2時間エージングし、濾過し、脱塩水で洗浄し、乾燥させ、空気中305℃で6時間焼成した。
【0061】
実施例11
Cu:Zn:Al:Siのモル比が4.2:1.6:1.0:0.03で64.4wt%の酸化銅含有量を有する酸化物触媒を、6.3~6.8のpH及び65~70℃の温度で、同時にアルミナゾルを沈殿容器に加えながら、銅と亜鉛の硝酸塩を含む混合金属硝酸塩溶液を炭酸カリウムとケイ酸カリウムを含む溶液で共沈させることにより調製した。得られた沈殿物を65~70℃で最大2時間エージングし、濾過し、脱塩水で洗浄し、乾燥させ、空気中300℃で6時間焼成した。
【0062】
実施例12
Cu:Zn:Al:Mg:Siのモル比が4.2:1.2:1.0:0.2:0.04で67.8wt%の酸化銅含有量を有する酸化物触媒を、6.3~6.8のpH及び65~70℃の温度で、同時にアルミナゾルとシリカゾルを沈殿容器に加えながら、銅、亜鉛、及びマグネシウムの硝酸塩を含む混合金属硝酸塩溶液を炭酸ナトリウム溶液で共沈させることにより調製した。得られた沈殿物を65~70℃で最大2時間エージングし、濾過し、脱塩水で洗浄し、乾燥させ、空気中300℃で6時間焼成した。
【0063】
比較例1
Cu:Zn:Al:Siのモル比が3.8:2.2:1.0:0.04で56.6wt%の酸化銅含有量を有する酸化物触媒を、米国特許第6048820号の実施例2に概説されている手順に従って調製した。銅、亜鉛、及びアルミニウムの硝酸塩を含有する混合金属硝酸塩溶液、シリカゾル、及び炭酸ナトリウム溶液を同時に沈殿容器中の脱塩水に撹拌しながら室温で加えた。得られた沈殿物を室温で24時間エージングし、濾過し、脱塩水で洗浄し、乾燥させ、空気中600℃で2時間焼成した。
【0064】
比較例2
Cu:Zn:Al:Siのモル比が3.8:2.2:1.0:0.04で56.6wt%の酸化銅含有量を有する酸化物触媒を、305℃、6時間の焼成で比較例1に記載のように調製した。
【0065】
比較例3
Cu:Zn:Al:Siのモル比が3.3:1.5:1.0:0.01で60.1wt%の酸化銅含有量を有する酸化物触媒を、中国特許101306369Aの実施例5に概説されている手順に従って調製した。硝酸アルミニウム溶液を、7.0~7.2のpH及び80℃の温度で炭酸ナトリウム及びケイ酸ナトリウムの溶液で共沈させて沈殿物Aを形成した。この材料は安定したコロイド懸濁液ではなく、数時間で沈殿した。分析から、D50平均粒径が226nmであることが示された。別に、銅と亜鉛の硝酸塩溶液を7.0~7.2のpH及び65~70℃の温度で炭酸ナトリウム溶液で共沈させて沈殿物Bを形成した。沈殿物Aを沈殿物Bに1:7の体積比で加えた。得られた混合物を70℃で2時間エージングし、濾過し、脱塩水で洗浄し、乾燥させ、空気中340℃で4時間焼成した。
【0066】
比較例4
米国特許第4788175号に記載されているCu:Zn:Al:Mgのモル比が4.4:1.6:1.0:0.2で64.2wt%の酸化銅含有量を有する酸化物触媒を、6.3~6.8のpH及び65~70℃の温度で、同時にアルミナゾルを沈殿容器に加えながら、銅、亜鉛及びマグネシウムの硝酸塩を含む混合金属硝酸塩溶液を炭酸カリウムで共沈させることにより調製した。得られた沈殿物を65~70℃で2時間エージングし、濾過し、脱塩水で洗浄し、乾燥させ、空気中330℃で6時間焼成した。
【0067】
比較例5
Cu:Zn:Al:Siのモル比が6.2:3.4:1.0:0.08で59.5wt%の酸化銅含有量を有する酸化物触媒を、米国特許第9314774号の実施例2に概説されている手順に従って調製した。炭酸ナトリウム溶液を、銅、亜鉛及びアルミニウムの硝酸塩とシリカゾルとを含有する混合金属硝酸塩溶液に撹拌しながら室温で加えた。得られた沈殿物を70℃で2時間エージングし、濾過し、脱塩水で洗浄し、乾燥させ、空気中350℃で2時間焼成した。
【0068】
比較例6
Cu:Zn:Zr:Al:Siのモル比が4.8:3.3:1.6:1.0:0.12で42.5wt%の酸化銅含有量を有する酸化物触媒を、米国特許第9314774号の比較例5に概説されている手順に従って調製した。銅、亜鉛、アルミニウム及びジルコニウムの硝酸塩とシリカゾルとを含有する混合金属硝酸塩溶液並びに炭酸ナトリウム溶液を、同時に撹拌しながら室温で脱塩水に加えた。得られた沈殿物を70℃で2時間エージングし、濾過し、脱塩水で洗浄し、乾燥させ、空気中400℃で2時間焼成した。
【0069】
マイクロリアクタ試験
各触媒試料を粉砕し、0.6~1.0mmの粒径分画に篩い分けした。実験には従来のマイクロリアクタを使用した。粉砕した触媒試料を、窒素中2v/v%の水素のガス混合物で、225℃で完全に還元した。次いで、6v/v%のCO、6v/v%のCO、9v/v%のN及び79v/v%のHのガス組成を有するプロセスガス混合物を触媒試料上に導入した。還元した触媒試料を、225℃、40,000L/hr/kg、50bargのプロセスガス混合物に曝露した。一定の時間の後、触媒試料を300℃を超える不活化条件に曝露して過酷な動作条件をシミュレートし、エージング効果を加速させた。生成物ガスのフロー及びスキャン分析を、寿命の開始時及び触媒を不活化条件下に保持した後に行った。フロー及びスキャン分析は、225℃、50bargで質量速度を変化させて行った。赤外線分析器を使用して、反応器からの出口ガス流のv/v%濃度を求めた。フロー及びスキャン分析のデータを用いて、これらの実験で基準触媒として選択した比較例1に対する試験材料の相対活性を計算した。相対活性は、一定の変換率における標準触媒を通る流量に対する各触媒を通る流量の比から計算される。結果を以下の表に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
実施例1~11と同様であるがシリカを含まない様式でアルミナゾルを使用して調製された比較例4は、高い初期活性を有するが、活性の保持に劣る。
【0072】
比較例1、5及び6の硝酸アルミニウムをベースとした生成物は、初期活性及び活性の保持に劣っている。このことは、焼成条件を実施例1に合わせた場合(比較例2)でさえも認められる。
【0073】
硝酸アルミニウムを使用してシリカ-アルミナ共沈物を別々に共沈させて調製した比較例3もまた、活性の保持に劣る触媒を与えた。