(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】車両用の位置特定装置、及び、車両
(51)【国際特許分類】
G01S 19/49 20100101AFI20240509BHJP
G01S 19/41 20100101ALI20240509BHJP
G01C 21/28 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
G01S19/49
G01S19/41
G01C21/28
(21)【出願番号】P 2021555156
(86)(22)【出願日】2020-02-12
(86)【国際出願番号】 EP2020053604
(87)【国際公開番号】W WO2020182398
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】102019203332.6
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーロン ラモン エーヴァート
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-193965(JP,A)
【文献】特開2002-161321(JP,A)
【文献】特開2005-156246(JP,A)
【文献】特開2008-145247(JP,A)
【文献】特開2014-201197(JP,A)
【文献】国際公開第2017/164118(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00- 5/14
G01S 19/00-19/55
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの航法衛星の少なくとも1つの航法衛星信号(8)を受信するように構成された受信装置(7)、特にアンテナと、
受信された前記航法衛星信号(8)に依存して、前記受信装置(7)の、航法衛星信号に基づく位置を座標系において記述する第1の信号を形成するように構成された処理装置(11)と、
加速度及び/又は角速度を検出するように構成された少なくとも1つの慣性センサ(13,14)と、
前記第1の信号と、検出された加速度と、検出された角速度とに依存して、前記受信装置(7)の適合位置を座標系において特定するように構成された計算ユニット(15)と、
内部に少なくとも前記計算ユニット(15)が配置された第1のハウジング(17)と、
を備える、車両用の位置特定装置であって、
前記第1のハウジング(17)から独立した第2のハウジング(18)が設けられており、前記第1のハウジング(17)と前記第2のハウジング(18)とは、互いに空間的に別個に配置されており、前記第2のハウジング(18)内には、前記少なくとも1つの慣性センサ(13,14)が配置されており、
前記受信装置(7)は、補正サービス衛星システム(22)の少なくとも1つの補正サービス衛星信号(21)を受信するように構成されており、又は、
前記位置特定装置(6)は、受信機(20)、特にアンテナを有し、前記受信機(20)は、前記補正サービス衛星信号(21)を受信するように構成されており、
いずれの場合にも、前記位置特定装置(6)は、受信された前記補正サービス衛星信号(21)に依存して、第1の補正値を記述する第2の信号を形成するように構成された評価装置(24)を有し、
前記計算ユニット(15)は、前記補正サービス衛星システム(22)の第2の補正値を記述する第3の信号を受信するように構成されており、
前記第3の信号は、他の車両の一部である通信装置(26)によって送出された無線信号(25)であり、
少なくとも1つの他の慣性センサ(13,14)が設けられている、
ことを特徴とする位置特定装置。
【請求項2】
前記位置特定装置(6)は、車両(1)、特に自動車(1)の一部であり、前記第1のハウジング(17)と前記第2のハウジング(18)とは、互いに空間的に別個に前記車両(1)内に配置されている、請求項1に記載の位置特定装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの慣性センサ(13,14)は、特に、前記第2のハウジング(18)内に配置された又は前記第2のハウジング(18)自体によって形成されたセラミックハウジング内に配置されている、請求項1又は2に記載の位置特定装置。
【請求項4】
前記処理装置(11)及び/又は前記評価装置(24)は、前記第1のハウジング(17)内に配置されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の位置特定装置。
【請求項5】
前記処理装置(11)及び/又は前記評価装置(24)は、前記第1のハウジング(17)の外側に配置されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の位置特定装置。
【請求項6】
前記処理装置(11)は、前記受信装置(7)内に組み込まれており、及び/又は、前記評価装置(24)は、前記受信機(20)内に組み込まれている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の位置特定装置。
【請求項7】
前記計算ユニット(15)は、フィールドバス(16)、特にCANバス又はFlexRayバス、イーサネット及び/又は無線コネクションを用いて、通信技術的に前記少なくとも1つの慣性センサ(13,14)に接続されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の位置特定装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの慣性センサ(13,14)は、制御装置(19)、特にエアバッグ制御装置(19)及び/又は横滑り防止制御装置(19)に接続されている、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の位置特定装置。
【請求項9】
前記計算ユニット(15)は、制御装置(29)内、特にエアバッグ制御装置(29)内、横滑り防止制御装置(29)内及び/又は車両中央制御装置(29)内に組み込まれている、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の位置特定装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの慣性センサ(13,14)は、前記車両のセンタトンネルの領域に配置されている、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の位置特定装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの慣性センサ(13,14)は、前記車両(1)のシャシ又は車体に配置されている、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の位置特定装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の位置特定装置(6)が設けられていることを特徴とする車両、特に自動車(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの航法衛星の少なくとも1つの航法衛星信号を受信するように構成された受信装置、特にアンテナと、受信された航法衛星信号に依存して、受信装置の、航法衛星信号に基づく位置を座標系において記述する第1の信号を形成するように構成された処理装置と、加速度及び/又は角速度を検出するように構成された少なくとも1つの慣性センサと、一方では第1の信号に依存して、他方では検出された加速度及び/又は検出された角速度に依存して、受信装置の適合位置を座標系において特定するように構成された計算ユニットと、内部に少なくとも計算ユニットが配置された第1のハウジングと、を備える、車両用の位置特定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
全地球航法衛星システム(GNSS)は、座標系において、受信装置、例えばアンテナの位置を特定することが可能である。このために、航法衛星システムは、航法衛星信号を送出するように構成された複数の航法衛星を有する。受信装置は、航法衛星信号を受信するように構成されている。
【0003】
従来技術から、いわゆるVMPセンサ(Vehicle Motion and Position Sensor:車両モーション及びポジションセンサ)が公知である。VMPセンサは、車両用のセンサ又はセンサモジュールである。VMPセンサは、処理装置を有する。この処理装置は、車両の受信装置に少なくとも通信技術的に接続されており又は接続可能であり、受信装置によって受信された航法衛星信号に依存して、受信装置の、航法衛星信号に基づく位置を座標系において記述する第1の信号を形成又は生成するように構成されている。さらに、公知のVMPセンサは、少なくとも1つの慣性センサを有し、慣性センサは、加速度及び/又は角速度を検出するように構成されている。さらに、VMPセンサは、計算ユニットを有し、計算ユニットは、一方では第1の信号に依存して、他方では検出された加速度及び/又は検出された角速度に依存して、受信装置の適合位置を座標系において特定するように構成されている。
【0004】
さらに、公知のVMPセンサは、1つのハウジング又は第1のハウジングを有し、公知のVMPセンサの場合には、計算ユニットと、慣性センサと、処理装置とが、第1のハウジング内に配置されている。従って、公知のVMPセンサと、車両の、VMPセンサの処理装置に少なくとも通信技術的に接続された受信装置とが、冒頭において言及したタイプの位置特定装置を形成する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の開示
請求項1に記載の特徴を有する本発明に係る位置特定装置は、第1のハウジングが必要とする構造スペースが、既に公知の位置特定装置の第1のハウジングと比較して低減されているという利点を有し、これにより、本発明に係る位置特定装置の第1のハウジングは、省スペースに、例えば、車両内に配置可能である。本発明によれば、このために、位置特定装置は、第1のハウジングから独立した第2のハウジングを有し、第1のハウジングと第2のハウジングとが互いに空間的に別個に配置されており、第2のハウジング内に慣性センサが配置されているように設計されている。第2のハウジングが第1のハウジングから独立していることにより、第1のハウジングと第2のハウジングとの間の直接的な機械的接続は存在しない。別個に配置するとは、第1のハウジングが第2のハウジングの完全に外側に配置されており、第2のハウジングが第1のハウジングの完全に外側に配置されていることと解される。さらに、別個に配置するとは、内部に第1のハウジング及び第2のハウジングの両方が配置されたメインハウジングが設けられていないことと解される。即ち、位置特定装置には、メインハウジングが設けられていない。メインハウジングとは、この場合、その主要な役割が第1のハウジングと第2のハウジングとを例えば自動車の内室に収容し保持することにある構成部品であると解される。第1の信号を形成するために、処理装置は、例えば、受信装置によって受信された信号を前処理するように構成されている。特に、処理装置は、受信された信号が航法衛星信号であるか否かを判別し、第1の信号として航法衛星信号のみを形成し又は計算ユニットに供給するように構成されている。特に、処理装置自体は、受信された航法衛星信号に依存して、受信装置の、航法衛星信号に基づく位置を特定し、第1の信号として航法衛星信号に基づく位置を供給するように構成されている。例えば、計算ユニット、処理装置又は受信装置の構成とは、本明細書においては、前述した役割又は機能を実施するために必要な、位置特定装置のそれぞれの装置とは別の装置又は要素との、それぞれの必要な接続状態でもあると解される。従って、処理装置は、例えば、受信装置に信号技術的に接続されており、これにより、受信された航法衛星信号を検出することができる。このことは、前述した別の装置にも同様に該当する。
【0006】
好適な一実施形態によれば、位置特定装置は、車両、特に自動車の一部であり、第1のハウジングと第2のハウジングとは、互いに空間的に別個に車両内に配置されている。従って、車両に配置された受信装置の適合位置又は車両の適合位置は、位置特定装置によって正確に特定可能である。
【0007】
好ましくは、慣性センサは、特に、第2のハウジング内に配置された又は第2のハウジング自体によって形成されたセラミックハウジング内に配置されている。これにより、セラミックハウジング内に配置された慣性センサは、温度変動から少なくとも実質的に保護されている。特にこのために、第2のハウジングに加えて、内部に慣性センサを配置した、この慣性センサに対応づけられたセラミックハウジングが設けられており、セラミックハウジングは、この場合、第2のハウジングの内側に配置されている。これに代わる手段においては、第2のハウジング自体がセラミックハウジングとして形成される。従って、内部に慣性センサが配置されたセラミックハウジングは、この場合、第2のハウジングである。
【0008】
好適な一実施形態によれば、受信装置は、少なくとも1つの補正サービス衛星の少なくとも1つの補正サービス衛星信号を受信するように構成されており、又は、位置特定装置は、受信機、特にアンテナを有し、受信機が補正サービス衛星信号を受信するように構成されているように設計されている。前述のどちらの場合も、位置特定装置は、受信された補正サービス衛星信号に依存して、補正値を記述する第2の信号を形成するように構成された評価装置を有する。計算ユニットは、この場合、好ましくは、適合位置を特定する際に第2の信号を考慮するように構成されている。これにより、特定された適合位置の精度が高められる。即ち、特定された適合位置の、受信装置の実際の位置からの偏差がわずかであることが達成される。受信装置が補正サービス衛星信号を受信するように構成されている場合には、位置特定装置の構成部品の数が少なくて済むという利点が得られる。位置特定装置が受信機を有する場合には、有利には航法衛星信号又は補正サービス衛星信号を受信するために適当であって、互いに異なる受信装置又は受信機が選択可能であるという利点が得られる。
【0009】
好適な一実施形態によれば、処理装置及び/又は評価装置は、第1のハウジング内に配置されるように設計されている。これにより、処理装置及び/又は評価装置は、第1のハウジングによって保護されている。さらに、第1のハウジング内に配置された処理装置及び/又は第1のハウジング内に配置された評価装置は、通信技術的に簡単に計算ユニットに接続可能である。
【0010】
好ましくは、処理装置及び/又は評価装置は、第1のハウジングの外側に配置されている。従って、第1のハウジングが占める構造スペースがさらに低減されるという利点が得られる。第1のハウジングは、従って、特に省スペースに、例えば、車両内に配置可能である。
【0011】
好適な一実施形態によれば、処理装置は、受信装置内に組み込まれるように、及び/又は、評価装置は、受信機内に組み込まれるように、設計されている。従って、処理装置が通信技術的に簡単に受信装置に接続可能であり、又は、評価装置が通信技術的に簡単に受信機に接続可能であるという利点が得られる。
【0012】
好ましくは、計算ユニットは、フィールドバス、特にCANバス又はFlexRayバス、イーサネット及び/又は無線コネクションを用いて、通信技術的に慣性センサに接続されている。これにより、慣性センサと計算ユニットとの通信技術的な接続が確実に保証される。
【0013】
好ましくは、慣性センサは、制御装置、特にエアバッグ制御装置及び/又は横滑り防止制御装置に接続されている。制御装置は、この場合、検出された加速度及び/又は検出された角速度に依存して、車両のエアバッグ又は車両の運転支援システムを駆動制御するように構成されている。検出された加速度及び/又は検出された角速度は、従って、一方では計算ユニットによって、他方では制御装置によって適合位置を特定するために使用される。これにより、制御装置及び計算ユニットの両方にそれぞれ1つの専用の慣性センサが対応づけられている場合と比較して、慣性センサ又は構成部品の数が低減される。特に、慣性センサは、制御装置内に組み込まれている。この場合、慣性センサも制御装置も、第2のハウジング内に配置されている。これに代わる手段においては、慣性センサと制御装置とは、互いに別個に形成される。制御装置は、この場合、好ましくは、第2のハウジングの外側に配置される。
【0014】
好適な一実施形態によれば、計算ユニットが、制御装置内、特にエアバッグ制御装置内、横滑り防止制御装置内及び/又は車両中央制御装置内に組み込まれるように設計されている。第1のハウジングは、この場合、制御装置のハウジングである。計算ユニットが、いずれにせよ設けられている制御装置内に組み込まれていることにより、位置特定装置によって必要とされる構造スペースがさらに低減される。ここで付言しておくと、内部に計算ユニットが組み込まれた制御装置が、慣性センサに接続された制御装置である必要はない。例えば、計算ユニットは、車両中央制御装置内に組み込まれ、慣性センサは、エアバッグ制御装置及び/又は横滑り防止制御装置に接続される。
【0015】
好ましくは、位置特定装置は、少なくとも1つの他の慣性センサを有する。これにより、計算ユニットが適合位置を特定するために供給する加速度データ又は角速度データの数が増加する。これにより、適合位置を特定する際の精度が高められる。特に、慣性センサは両方とも、第2のハウジング内に配置されている。好ましくは、慣性センサの一方が加速度を検出するように構成されており、慣性センサの他方が角速度を検出するように構成されている。
【0016】
好ましくは、複数の慣性センサのうち少なくとも1つの慣性センサは、車両のセンタトンネルの領域に配置されている。この領域は、有利には、車両の加速度及び/又は角速度を検出するために適している。
【0017】
好適な実施形態によれば、少なくとも1つの慣性センサが、車両のシャシ又は車体に配置されるように設計されている。好ましくは、シャシ又は車体に配置された慣性センサは、加速度センサである。シャシに配置するために、慣性センサは、例えば、車両長手方向部材に配置されている。車体に配置するために、慣性センサは、例えば、車両のAピラー、Bピラー、Cピラー又はDピラーに配置されている。特に、一方の慣性センサはシャシに配置されており、他方の慣性センサは車体に配置されている。好ましくは、車体又はシャシに配置された慣性センサは、エアバッグ制御装置及び/又は横滑り防止制御装置に接続されている。
【0018】
好ましくは、計算ユニットは、回転数センサに通信技術的に接続されている。回転数センサとは、回転数センサに対応づけられて車輪の角周波数を検出するように構成されたセンサであると解される。好ましくは、計算ユニットは、操舵角度センサに接続されている。操舵角度センサとは、操舵角度として予め定められた目標操舵角度を検出するように構成された、特に、ステアリングホイールに対応づけられたセンサであると解される。計算ユニットは、特に好適には、第1の信号と、検出された加速度と、検出された角速度と、第2の信号と、角周波数及び/又は操舵角度とに依存して、適合位置と、車両の速度と、車両の軌道とを決定するように構成されている。さらに、計算ユニットには、高精度の時刻、例えば世界時が供給される。この時刻は、通常、航法衛星信号及び/又は補正サービス衛星信号に含まれている。
【0019】
本発明に係る車両、特に自動車は、請求項14に記載の特徴を有し、本発明に係る位置特定装置が設けられていることを特徴とする。従って、既に記載した利点が得られる。好適な他の特徴及び特徴の組合せは、上記の説明及び特許請求の範囲から得られる。
【0020】
以下に、本発明を図面に基づき詳細に説明する。同一の要素及び対応する要素には、同一の参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1の実施形態による位置特定装置を備えた自動車を示す図である。
【
図2】第2の実施形態による位置特定装置を備えた自動車を示す図である。
【
図3】第3の実施形態による位置特定装置を備えた自動車を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、自動車1を概略図において示している。自動車1は、操舵可能な2つの前輪3を備えた前輪軸2と、2つの後輪5を備えた後輪軸4とを有する。さらに、自動車1は、位置特定装置6を有する。
【0023】
位置特定装置6は、自動車1に配置された受信装置7を有し、受信装置7は、航法衛星システム9の航法衛星(図示せず)から航法衛星信号8を受信するように構成されている。受信装置7は、本実施形態においてはアンテナであり、アンテナは、自動車1の車体に、例えば、車体の外側に配置されている。位置特定装置6はさらに、処理装置11を有する。処理装置11は、受信装置7によって受信された航法衛星信号8に依存して、受信装置7の、航法衛星信号に基づく位置を記述する第1の信号を生成又は形成するように構成されている。本実施形態においては、処理装置11は、高周波線路12を用いて受信装置7に接続されており、これにより、処理装置11に航法衛星信号8が供給される。
【0024】
さらに、位置特定装置6は、少なくとも1つの慣性センサを有する。
図1の図示によれば、2つの慣性センサ13,14が設けられており、第1の慣性センサ13は、加速度センサ13として構成されており、第2の慣性センサ14は、角速度センサ14として構成されている。慣性センサ13,14は、自動車1に少なくとも間接的に取り付けられており、これにより、慣性センサ13,14は、内部に慣性センサ13,14が配置された自動車1の領域において、自動車1の加速度又は角速度を検出する。
【0025】
位置特定装置6はさらに、計算ユニット15を有し、計算ユニット15は、第1の信号と、検出された加速度と、検出された角速度とに依存して、受信装置7の適合位置を特定するように構成されている。特に、計算ユニット15は、受信装置7の特定された適合位置に依存して、自動車1の他の部分の適合位置を特定するように構成されている。このことは、受信装置7の自動車1における空間的に既知の配置構成により、問題なく可能である。
図1に示した実施形態によれば、計算ユニット15は、フィールドバス16を用いて通信技術的に慣性センサ13,14に接続されている。フィールドバス16は、例えば、CANバス又はFlexRayバスとして構成されている。これに代わる手段においては、計算ユニット15は、有線又は無線により、特にイーサネット又は無線コネクションを用いて、慣性センサ13,14に接続される。計算ユニット15が無線コネクションを用いて慣性センサ13,14に接続されている場合には、計算ユニット15と、慣性センサ13,14とは、加速度又は角速度を少なくとも慣性センサ13,14から計算ユニット15に非接触式に伝送するための適当な通信装置を有する。計算ユニット15は、第1の信号を処理装置11から計算ユニット15に伝送するために、通信技術的に処理装置11に接続されている。
図1の図示によれば、このために、線路30が設けられている。線路30に対して代替的に、第1の信号を非接触式に伝送するための手段も存在する。
【0026】
位置特定装置6はさらに、第1のハウジング17を有する。第1のハウジング17内には、少なくとも計算ユニット15が配置されている。
図1の図示によれば、処理装置11も第1のハウジング17内に位置している。位置特定装置6はさらに、第2のハウジング18を有する。第2のハウジング18内には、慣性センサ13,14のうちの少なくとも一方が配置されている。本実施形態においては、2つの慣性センサ13,14が第2のハウジング18内に位置している。両ハウジングは、自動車1に配置されている。この場合、第1のハウジング17と第2のハウジング18とは、互いに独立している。従って、両ハウジング17,18は、互いに直接的に、機械的には取り付けられていない。さらに、ハウジング17,18は、互いに空間的に別個である。即ち、
図1から看取可能なように、第1のハウジング17は、第2のハウジング18の外側に配置されており、第2のハウジング18は、第1のハウジング17の外側に配置されている。特に、慣性センサ13,14の各々に、それぞれ1つのセラミックハウジング(
図1に図示せず)が対応づけられており、各セラミックハウジング内には、それぞれの慣性センサ13又は14が配置されている。この場合、慣性センサ13,14に対応づけられたセラミックハウジングは、第2のハウジング18の内側に位置している。これに代わる手段又はこれに対して付加的な手段においては、第2のハウジング自体がセラミックハウジングとして形成される。一方では慣性センサ13,14が、他方では計算ユニット15が異なるハウジング内に配置されていることにより、第1のハウジング17と第2のハウジング18とは、省スペースに形成されている。本実施形態においては、第2のハウジング18は、自動車1のセンタトンネルの領域に配置されている。ここから、慣性センサ13,14の特に有利な配置構成が得られる。任意選択的に、位置特定装置6は、他の慣性センサ(図示せず)を有し、この他の慣性センサは、自動車1のシャシ及び/又は車体に配置され、計算ユニット15に通信接続される。
【0027】
本実施形態においては、慣性センサ13,14は、制御装置19に接続されている。制御装置19は、エアバッグ制御装置として構成されている。エアバッグ制御装置は、検出された加速度及び検出された角速度に依存して、自動車1の衝突を算定し、自動車のエアバッグ(図示せず)を操作するように構成されている。エアバッグ制御装置としての態様に代えて、制御装置19は、横滑り防止制御装置として構成される。横滑り防止制御装置は、検出された加速度及び検出された角速度に依存して、自動車1の運転支援システムを駆動制御するように構成されている。特に、制御装置19は、エアバッグ制御装置と横滑り防止制御装置との組合せとして構成されている。
図1の図示によれば、制御装置19は、第2のハウジング18の外側に配置されている。これに代わる手段においては、制御装置19は、第2のハウジング18の内側に配置される。この場合、慣性センサ13,14は、例えば、制御装置19内に組み込まれる。
【0028】
本実施形態においては、位置特定装置6は、自動車1に配置された受信機20を有し、受信機20は、補正サービス衛星システム22から補正サービス衛星信号21を受信するように構成されている。受信機20も、車両1の車体に配置されたアンテナである。受信機20は、高周波線路23を用いて評価装置24に接続されている。評価装置24は、受信機20によって受信された補正サービス衛星信号21に依存して、1つの補正値又は第1の補正値を記述する第2の信号を生成又は形成するように構成されている。この場合、計算ユニット15は、適合位置を特定する際に第1の補正値又は第2の信号を考慮するように構成されている。第1の補正値を考慮することにより、受信装置7の、特定された適合位置と実際の位置との間の差を低減することができる。計算ユニット15は、第2の信号を評価装置24から計算ユニット15に伝送するために、通信技術的に評価装置24に接続されている。
図1の図示によれば、このために、線路31が設けられている。線路31に対して代替的に、第2の信号を非接触式に伝送するための手段も存在する。
【0029】
本実施形態においては、計算ユニット15は、第2の補正値を記述する無線信号25を受信するように構成されている。第2の補正値も、補正サービス衛星システムの補正値、特に補正サービス衛星システム22の補正値である。無線信号25は、通信装置26によって送出された無線信号25である。通信装置26は、他の車両の一部、又は、自動車1の周辺に設けられたインフラストラクチャ設備、例えば交通信号機の一部である。無線信号25を受信するために、計算ユニット15又は位置特定装置は、適当な通信手段、例えば、5Gモジュール、UMTSモジュール又はWLANモジュールを有する。この場合、計算ユニット15は、適合位置を特定する際に第2の補正値を考慮するように構成されている。第2の補正値を考慮することによっても、受信装置7の、特定された適合位置と実際の位置との間の差を低減することができる。
【0030】
本実施形態においては、計算ユニット15はさらに、回転数センサ27に接続されている。この回転数センサ27は、車輪3のうちの1つの車輪に対応づけられており、この車輪3の角周波数を検出するように構成されている。さらに、計算ユニット15は、本実施形態においては、操舵角度センサ28に接続されている。操舵角度センサ28は、ステアリングホイール(図示せず)に対応づけられており、予め定められた目標操舵角度を操舵角度として決定するように構成されている。特に、計算ユニット15は、第1の信号と、検出された加速度と、検出された角速度と、第2の信号と、無線信号25と、角周波数と、決定された操舵角度とに依存して、適合位置と、自動車1の速度と、自動車1の軌道とを決定するように構成されている。さらに、計算ユニット15には、高精度の時刻、例えば世界時が供給される。この高精度の時刻は、通常、航法衛星信号8及び/又は補正サービス衛星信号21に含まれている。
【0031】
図2は、第2の実施形態による位置特定装置6を備えた自動車1を示しており、以下においては、主に
図1に示した位置特定装置6との相違点について検討する。
【0032】
図2に示した位置特定装置6によれば、計算ユニット15は、制御装置29内に組み込まれている。本実施形態においては、処理装置11及び評価装置24も、制御装置29内に組み込まれている。第1のハウジング17は、この場合、制御装置29のハウジングである。制御装置29は、本実施形態においては、車両中央制御装置として構成されている。代替的に又は付加的に、制御装置29は、エアバッグ制御装置又は横滑り防止制御装置として構成される。計算ユニット15を制御装置29内に組み込むことにより、位置特定装置6のために必要とされる構造スペースがさらに低減される。
【0033】
図3は、第3の実施形態による位置特定装置6を備えた自動車1を示しており、以下においては、主に
図2に示した位置特定装置6との相違点について検討する。
【0034】
図3に示した位置特定装置6によれば、処理装置11が受信装置7内に組み込まれている。本実施形態においては、評価装置24も、受信機20内に組み込まれている。従って、処理装置11及び評価装置24は、第1のハウジング17の外側に配置されている。従って、
図3に示した実施形態によれば、計算ユニット15と処理装置11又は評価装置24との間の通信技術的な接続部しか存在しない。特に、処理装置11は、
図3に示した実施形態によれば、受信装置7の、航法衛星信号に基づく位置さえも特定し、航法衛星信号に基づく位置を第1の信号として供給するように構成されている。特に、評価装置24は、第1の補正値さえも特定し、第1の補正値を第2の信号として形成するように構成されている。本実施形態においては、処理装置11又は評価装置24と計算ユニット15とを通信技術的に接続するために、線路30,31が設けられている。これに代わる手段においては、処理装置11又は評価装置24と計算ユニット15とを非接触式に通信技術的に接続するための手段が設けられる。