(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】アクション決定のためのシステム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
G05B23/02 X
G05B23/02 301Y
(21)【出願番号】P 2021563099
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(86)【国際出願番号】 EP2020061008
(87)【国際公開番号】W WO2020216718
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-11-25
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ホーレンダー
(72)【発明者】
【氏名】フェリクス・レンダーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ・ビチーク
(72)【発明者】
【氏名】マルク-ステファン・ストルエンプフラー
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ・リッツェルマン
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク・シュテイケルト
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/38283(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0076209(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0320388(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0041845(US,A1)
【文献】特開2015-148867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレータアクション決定のためのシステムであって、
入力ユニットと、
処理ユニットと、
出力ユニットと
を備え、
前記入力ユニットが、工業プロセスの動作と関連した一定期間にわたる複数の過去のオペレータアクションに関する情報を前記処理ユニットに提供するように構成されており、
前記入力ユニットが、前記工業プロセスの動作と関連した前記期間にわたる複数の過去のプロセスイベントに関する情報を前記処理ユニットに提供するように構成されており、前記複数の過去のプロセスイベントに関する前記情報が複数のアラームを含み、
前記処理ユニットが、前記期間にわたって均等に出現する1つまたは複数のアラームを無視するように構成され、
前記処理ユニットが、前記期間に対して所定の短い時間間隔内の複数同一アラームを単一アラームへクラスタ化するように構成され、
前記入力ユニットが、新たなプロセスイベントに関する情報を前記処理ユニットに提供するように構成され、
前記処理ユニットが、前記複数の過去のオペレータアクションと前記複数の過去のプロセスイベントの少なくとも一部との間の相関を決定するように構成されており、前記相関の決定が、アラームとオペレータアクションとの間の関係を検出する統計分析を含み、前記相関の決定が、オペレータアクション対アラーム行列の決定を含み、前記相関の決定が、複数のルールおよび前記複数のルールにそれぞれ関連した確率を決定する前記オペレータアクション対アラーム行列の統計的反転を含み、
前記処理ユニットが、主成分分析を適用して最重要ルールを残すように前記複数のルールに対してフィルタリングを行うように構成されており、前記フィルタリングが、著しく多数のルールをトリガするアラームに対応する1つまたは複数のルールの削除を含み、
前記処理ユニットが、前記新たなプロセスイベントに関する前記情報から少なくとも1つの推奨オペレータアクションを決定するように構成されており、前記少なくとも1つの推奨オペレータアクションの決定が、前記最重要ルールにそれぞれ関連した確率によって順序付けられた前記最重要ルールの活用を含み、
前記出力ユニットが、前記少なくとも1つの推奨オペレータアクションを出力するように構成される、システム。
【請求項2】
前記複数の過去のオペレータアクションに関する前記情報がGUIレベルの1つまたは複数のオペレータアクションを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記複数の過去のプロセスイベントに関する前記情報が1つまたは複数のシステム状態を含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記1つまたは複数のシステム状態が、1つもしくは複数の現在のシステム状態および/または1つもしくは複数の予測システム状態を含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記新たなプロセスイベントがアラームである、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記相関の決定が、前記期間中に滅多に発生しないアラームの選択を含む、請求項3、請求項4、または請求項3に従属するときの請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記相関の決定が、前記複数の過去のオペレータアクションに関する前記情報および前記複数の過去のプロセスイベントに関する前記情報のベクトル表現を得る自然言語処理および単語埋込みの活用を含み、かつオペレータアクションおよびイベントが、関連オペレータアクションおよびイベントが他のマッピングに関する特徴空間において共に近くにマッピングされると、相関していると決定される、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記相関の決定が、ニューラルネットワークの活用を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
オペレータアクション決定のための方法であって、
a) 工業プロセスの動作と関連した一定期間にわたる複数の過去のオペレータアクションに関する情報を処理ユニットに提供するステップと、
b) 前記工業プロセスの動作と関連した前記期間にわたる複数の過去のプロセスイベントに関する情報を前記処理ユニットに提供するステップであって、前記複数の過去のプロセスイベントに関する前記情報が複数のアラームを含み、前記処理ユニットが、前記期間にわたって均等に出現する1つまたは複数のアラームを無視するように構成され、前記処理ユニットが、前記期間に対して所定の短い時間間隔内の複数同一アラームを単一アラームへクラスタ化するように構成される、ステップと、
c) 新たなプロセスイベントに関する情報を前記処理ユニットに提供するステップと、
d) ステップa)で提供した前記複数の過去のオペレータアクションとステップb)で提供した前記複数の過去のプロセスイベントの少なくとも一部との間の相関を前記処理ユニットによって決定するステップであって、前記相関の決定が、アラームとオペレータアクションとの間の関係を検出する統計分析を含み、前記相関の決定が、オペレータアクション対アラーム行列の決定を含み、前記相関の決定が、複数のルールおよび前記複数のルールにそれぞれ関連した確率を決定する前記オペレータアクション対アラーム行列の統計的反転を含
む、ステップと、
e) ステップc)で提供した前記新たなプロセスイベントに関する前記情報から少なくとも1つの推奨オペレータアクションを前記処理ユニットによって決定するステップであって、前記少なくとも1つの推奨オペレータアクションの決定が
、最重要ルールにそれぞれ関連した確率によって順序付けられた前記最重要ルールの活用を含む、ステップと、
f) 前記少なくとも1つの推奨オペレータアクションを出力ユニットによって出力するステップと
を含
み、
前記ステップd)が、主成分分析を適用して前記最重要ルールを残すように前記複数のルールに対してフィルタリングを行うステップを含み、前記フィルタリングが、著しく多数のルールをトリガするアラームに対応する1つまたは複数のルールの削除を含む、方法。
【請求項10】
プロセッサによって実行されると請求項9に記載の方法を実施するように構成される、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステムを制御するためのコンピュータプログラム要素。
【請求項11】
請求項10に記載のコンピュータプログラム要素を記憶したコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクション決定のためのシステム、アクション決定のための方法、ならびにコンピュータプログラム要素およびコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
プロセスプラントは、多くのプロセス制御システム、例えば化学、石油および他の工業プロセスに使用されるものを有することができる。1つまたは複数のプロセスコントローラが、バルブ、バルブポジショナ、リレー、スイッチ、温度、圧力、位置、流量等を監視する様々なセンサといった様々なフィールドデバイスに通信的に結合される。プロセスコントローラは、フィールドデバイスによって行われるプロセス測定を示すデータ信号を受信しており、これらは、制御信号を生成して制御ルーチンを実装するために使用できる。
【0003】
制御室内のユーザまたはオペレータはフィールドデバイスおよびプロセスコントローラからの情報にアクセスでき、そしてコンピュータシステム上で適切なソフトウェアを走らせることにより、プロセスの現在の状態を見ること、動作状態を変更すること、プロセス制御ルーチンの設定を変更すること、プロセスコントローラおよび/またはフィールドデバイスの動作を修正することなどの、各種のタスクを行うことができる。
【0004】
更には、そのようなプロセスプラントは、フィールドデバイスおよびプロセスコントローラを監視する多数のアラームシステムを有する。アラームデータもユーザおよびオペレータに提供され、これは、即時のアクションを必要とする設備またはプロセス状態を識別する重要な補助を形成する。制御システムの個々のコンポーネントもサブシステムも、アラームを生成するように設計される。したがって何万ものデータ信号およびアラームデータが発生し得る。しかしながら、深刻な状況の間にあまりに多くのアラームが生成される場合、ユーザ/オペレータは、自身が未熟であればおそらく混乱することがあり、殺到するアラームの中で実際に重要であるアラームが確認されないもしくは無視されたままとなることがあり、またはオペレータが誤った決定/アクションを取りもしくは矛盾したアクションを行い得る。これは、通常と異なるアラームまたはイベントがちょうど発生したまたは発生しているときに特に問題となる。
【0005】
歴史的に、熟練オペレータはこの状況に対処することができたが、長年の経験を持つ熟練オペレータでさえ、経験し得る殺到するアラームを処理するのに苦労する。これらの熟練オペレータが退職するにつれて、若いまたは未熟なオペレータにとって状況は悪化する。
【0006】
この状況に取り組む必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それ故、そのようなプロセス環境内でとられるべきアクションを決定する改善された能力を有することが有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は独立請求項の対象により解決され、更なる実施形態が従属請求項に組み込まれる。
【0009】
第1の態様において、
- 入力ユニットと、
- 処理ユニットと、
- 出力ユニットと
を備える、アクション決定のためのシステムが提供される。入力ユニットは、工業プロセスの動作と関連した一定期間にわたる複数の過去のアクションに関する情報を処理ユニットに提供するように構成される。入力ユニットは、工業プロセスの動作と関連した一定期間にわたる複数の過去のプロセスイベントに関する情報を処理ユニットに提供するように構成される。入力ユニットは、新たなプロセスイベントに関する情報を処理ユニットに提供するように構成される。処理ユニットは、複数の過去のアクションの少なくとも一部と過去のプロセスイベントの少なくとも一部との間の相関を決定するように構成される。処理ユニットは、新たなプロセスイベントに関する情報から少なくとも1つの推奨アクションを決定するように構成されており、同決定は、決定した相関の活用を含む。出力ユニットは、少なくとも1つの推奨アクションを出力するように構成される。
【0010】
以上において、アクションは、過去のアクションであれ推奨アクションであれ、ログを取ることができるものであれば何でもよい。したがって、アクションは工業処理システムからであり得る。アクションは、特定の電話番号に電話することでもあり得る。アクションは、特定のアプリケーション(例えば:CMMS、排出監視、振動監視等)を開くことであり得る。アクションは、特定のページ上の特定の文書(例えばpdf/html/Word文書等)を開くことであり得る。アクションは、特定の人またはユーザグループにメッセージを送ることであり得る。アクションは、2つ以上のアクションである点で、「アクショングループ」でもあり得、例えば一連の複数アクションであり得る。また、過去のアクションは、工業プロセスと関連した検査活動に関し得る。
【0011】
以上において、出力ユニットは分散制御システム(DCS)自体の一部であり得、例えば出力ユニットは、ルーチンアクション(例えばバルブの閉鎖および/または開放)を直接実行することを可能にされ得る。出力ユニットはオペレータ用コンソールであり得、特定の図(例えば関連するアラームリスト、傾向図、プロセスグラフィック)が開かれて、オペレータが状況を評価して更なるアクションを取るのを援助する。出力ユニットは、DCSの外側のアクションに関し(例えば同僚に電話する、作業指示書を作成する、同僚に電子メールする、緊急サービスを呼ぶ等のために使用され)得る。
【0012】
言い換えれば、工業プロセスプラントに対する過去のアクションおよび、アラームなどのイベントに基づいてアクションを決定するための、例えば通常と異なるアラームまたはイベントが生じたときに、適切なアクションが決定されることを可能にし、かつ状況を修復する最善の行動方針が決定されることを可能にする、システムが提供される。
【0013】
プロセスプラントは、多くのアラームおよびイベントが発生して、しばしばイベントが殺到して、何千もの時変データ信号を有し得る。しかしながら、これらの信号、アラームおよびイベントの少数しかプラントの特定の問題に関連していない。
【0014】
何年もの経験を持つオペレータがこの大量の情報の流入に対処してこれらの状況における適切なアクションを決定できるが、しかしながらこれらの人々が退職するにつれてオペレータ、特に若いオペレータが正しいアクションを取ることは一層難しくなっている。また、高リスクな状況において間違ったアクションを取ることは高くつく。時には、そのような若いオペレータは矛盾して行動して、誤った行動方針を取る。したがって、開発されたシステムは、過去の、アラームなどのイベントおよび信号の流入を考慮し、かつ熟練オペレータがどのように行動して情報の全てを処理するかを考慮して、現在存在するオペレータの誰もこれまでに目撃したことがない、新たなプロセスイベントを基にして適切なアクションが決定されることを可能にする。しかしまた、オペレータが正しいとほとんど確信している比較的平凡なアクションが、オペレータが何をするべきか分かっているが、そのアクションを確認してもらうときに状況における「第2の一対の目」を提供するシステムによって確認される。したがって、新たなオペレータが、より確信して行動し、そしてより迅速により効果的になることができる。
【0015】
一例では、複数の過去のプロセスアクションに関する情報は1つまたは複数のオペレータアクションを含む。
【0016】
一例では、複数のプロセスアクションに関する情報はGUIレベルの1つまたは複数のアクションを含む。
【0017】
一例では、複数のプロセスイベントに関する情報は1つまたは複数のアラームを含む。
【0018】
一例では、複数のプロセスイベントに関する情報は1つまたは複数のシステム状態を含む。
【0019】
一例では、1つまたは複数のシステム状態は、1つもしくは複数の現在のシステム状態および/または1つもしくは複数の予測システム状態を含む。
【0020】
一例では、新たなプロセスイベントはアラームである。
【0021】
一例では、1つまたは複数のアラームは複数のアラームを含み、かつ処理ユニットは、過去のプロセスイベントの少なくとも一部を決定するように構成されており、同決定は、複数回出現する1つまたは複数のアラームを無視することを含む。
【0022】
一例では、1つまたは複数のアラームは複数のアラームを含み、かつ処理ユニットは、過去のプロセスイベントの少なくとも一部を決定するように構成されており、同決定は、期間にわたって均等に出現する1つまたは複数のアラームを無視することを含む。
【0023】
一例では、1つまたは複数のアラームは複数のアラームを含み、かつ処理ユニットは、過去のプロセスイベントの少なくとも一部を決定するように構成される。同決定は、期間に対して所定の短い時間間隔内の複数同一アラームを単一アラームへクラスタ化することを含む。
【0024】
一例では、1つまたは複数のアラームは複数のアラームを含み、かつ相関の決定は、アラームとアクションとの間の関係を検出する統計分析を含む。
【0025】
一例では、1つまたは複数のアラームは複数のアラームを含み、かつ相関の決定は、期間中に滅多に発生しないアラームの選択を含む。
【0026】
一例では、1つまたは複数のアラームは複数のアラームを含み、かつ相関の決定は、アクション対アラーム行列の決定を含む。
【0027】
一例では、相関の決定は、複数のルールおよび関連した確率を決定するアクション対アラーム行列の統計的反転を含む。少なくとも1つの推奨アクションの決定は、そのため複数のルールおよび関連した確率の活用を含む。
【0028】
一例では、処理ユニットは、著しく多数のルールをトリガするアラームに対応する1つまたは複数のルールを削除するように構成される。少なくとも1つの推奨アクションの決定は、そのため1つまたは複数のルールの削除後に残る複数のルールおよび関連した確率の活用を含む。
【0029】
一例では、処理ユニットは、主成分分析を適用して最重要ルールをフィルタリングするように構成される。少なくとも1つの推奨アクションの決定は、そのため最重要ルールの活用を含む。
【0030】
一例では、相関の決定は、複数の過去のアクションに関する情報および複数の過去のプロセスイベントに関する情報のベクトル表現を得る自然言語処理および単語埋込みの活用を含む。アクションおよびイベントは、関連アクションおよびイベントが他のマッピングに関する特徴空間において共に近くにマッピングされると、相関していると決定される。
【0031】
一例では、相関の決定は、ニューラルネットワークの活用を含む。
【0032】
第2の態様において、
a) 工業プロセスの動作と関連した一定期間にわたる複数の過去のアクションに関する情報を処理ユニットに提供するステップと、
b) 工業プロセスの動作と関連した一定期間にわたる複数の過去のプロセスイベントに関する情報を処理ユニットに提供するステップと、
c) 新たなプロセスイベントに関する情報を処理ユニットに提供するステップと、
d) ステップa)で提供した複数の過去のアクションの少なくとも一部とステップb)で提供した過去のプロセスイベントの少なくとも一部との間の相関を処理ユニットによって決定するステップと、
e) ステップc)で提供した新たなプロセスイベントに関する情報から少なくとも1つの推奨アクションを処理ユニットによって決定し、同決定が、ステップd)で決定した相関の活用を含む、ステップと、
f) 少なくとも1つの推奨アクションを出力ユニットによって出力するステップと
を含む、アクション決定のための方法が提供される。
【0033】
別の態様によれば、コンピュータプログラム要素であって、コンピュータプログラム要素が処理ユニットによって実行されると、前記したような方法ステップを行うように適合される、前記したような装置またはシステムを制御する、コンピュータプログラム要素が提供される。
【0034】
別の態様によれば、前記したようなコンピュータ要素を記憶したコンピュータ可読記憶媒体も提供される。
【0035】
以上の態様および例は、以下に記載される実施形態から明らかになり、かつそれらを参照しつつ説明されることになる。
【0036】
例証的な実施形態が、以下の図面を参照しつつ以下に記載されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】プロセス環境内のアクション決定のためのシステムおよび方法の一例を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本開示は、アクション決定のためのシステムおよび方法に関する。一例では、本システムは、入力ユニット、処理ユニットおよび出力ユニットを備える。入力ユニットは、工業プロセスの動作と関連した一定期間にわたる複数の過去のアクションに関する情報を処理ユニットに提供するように構成される。入力ユニットは、工業プロセスの動作と関連した一定期間にわたる複数の過去のプロセスイベントに関する情報を処理ユニットに提供するようにも構成される。入力ユニットは、新たなプロセスイベントに関する情報を処理ユニットに提供するようにも構成される。処理ユニットは、複数の過去のアクションの少なくとも一部と過去のプロセスイベントの少なくとも一部との間の相関を決定するように構成される。処理ユニットは、新たなプロセスイベントに関する情報から少なくとも1つの推奨アクションを決定するようにも構成されており、同決定は、決定した相関の活用を含む。出力ユニットは、推奨アクションを出力するように構成される。
【0039】
したがって、出力ユニットは、1つまたは複数の推奨アクションを出力する際に自動的に動作して、バルブが開閉されるなどのアクションが人間の介入なしで発生することを可能にすることができる。または出力ユニットは、作業管理システム内の過去の記録に基づいて特定の機器を検査するために技術者を行かせることを推奨するアクションを出力できる。または出力ユニットは、誰かに電話もしくは警告することを推奨するアクションを出力できる。
【0040】
一例では、処理ユニットは、機械学習アルゴリズムを実装して、複数の過去のアクションの少なくとも一部と過去のプロセスイベントの少なくとも一部との間の相関を決定するように構成される。
【0041】
一例によれば、複数の過去のプロセスアクションに関する情報は1つまたは複数のオペレータアクションを含む。
【0042】
一例によれば、複数のプロセスアクションに関する情報はGUIレベルの1つまたは複数のアクションを含む。
一例では、GUIレベルのアクションは、傾向を開くことを含む。
一例では、GUIレベルのアクションは、フェースプレートを開くことを含む。
一例では、GUIレベルのアクションは、設定値を変更することを含む。
一例では、GUIレベルのアクションは、コア制御アクションと異なるアクションを含む。
【0043】
一例によれば、複数のプロセスイベントに関する情報は1つまたは複数のアラームを含む。
【0044】
一例によれば、複数のプロセスイベントに関する情報は1つまたは複数のシステム状態を含む。
【0045】
一例によれば、1つまたは複数のシステム状態は、1つもしくは複数の現在のシステム状態および/または1つもしくは複数の予測システム状態を含む。
【0046】
一例によれば、新たなプロセスイベントはアラームである。
【0047】
一例によれば、1つまたは複数のアラームは複数のアラームを含む。処理ユニットは、過去のプロセスイベントの少なくとも一部を決定するように構成されており、同決定は、複数回出現する1つまたは複数のアラームを無視することを含む。
【0048】
一例によれば、1つまたは複数のアラームは複数のアラームを含む。処理ユニットは、過去のプロセスイベントの少なくとも一部を決定するように構成されており、同決定は、期間にわたって均等に出現する1つまたは複数のアラームを無視することを含む。
【0049】
一例によれば、1つまたは複数のアラームは複数のアラームを含む。処理ユニットは、過去のプロセスイベントの少なくとも一部を決定するように構成されており、同決定は、期間に対して所定の短い時間間隔内の複数同一アラームを単一アラームへクラスタ化することを含む。
【0050】
一例によれば、1つまたは複数のアラームは複数のアラームを含み、かつ相関の決定は、アラームとアクションとの間の関係を検出する統計分析を含む。
【0051】
一例によれば、1つまたは複数のアラームは複数のアラームを含み、かつ相関の決定は、期間中に滅多に発生しないアラームの選択を含む。
【0052】
一例によれば、1つまたは複数のアラームは複数のアラームを含み、かつ相関の決定は、アクション対アラーム行列の決定を含む。
【0053】
一例によれば、相関の決定は、複数のルールおよび関連した確率を決定するアクション対アラーム行列の統計的反転を含む。少なくとも1つの推奨アクションの決定は、複数のルールおよび関連した確率の活用を含む。
【0054】
一例によれば、処理ユニットは、著しく多数のルールをトリガするアラームに対応する1つまたは複数のルールを削除するように構成される。少なくとも1つの推奨アクションの決定は、1つまたは複数のルールの削除後に残る複数のルールおよび関連した確率の活用を含む。
【0055】
一例によれば、処理ユニットは、主成分分析を適用して最重要ルールをフィルタリングするように構成され、かつ少なくとも1つの推奨アクションの決定は、最重要ルールの活用を含む。
【0056】
一例によれば、相関の決定は、複数の過去のアクションに関する情報および複数の過去のプロセスイベントに関する情報のベクトル表現を得る自然言語処理および単語埋込みの活用を含む。アクションおよびイベントは、関連アクションおよびイベントが他のマッピングに関する特徴空間において共に近くにマッピングされると、相関していると決定される。
【0057】
一例によれば、相関の決定は、ニューラルネットワークの活用を含む。
【0058】
したがって、システムと関連付けられるのは、
a) 工業プロセスの動作と関連した一定期間にわたる複数の過去のアクションに関する情報を処理ユニットに提供するステップと、
b) 工業プロセスの動作と関連した一定期間にわたる複数の過去のプロセスイベントに関する情報を処理ユニットに提供するステップと、
c) 新たなプロセスイベントに関する情報を処理ユニットに提供するステップと、
d) ステップa)で提供した複数の過去のアクションの少なくとも一部とステップb)で提供した過去のプロセスイベントの少なくとも一部との間の相関を処理ユニットによって決定するステップと、
e) ステップc)で提供した新たなプロセスイベントに関する情報から少なくとも1つの推奨アクションを処理ユニットによって決定し、同決定が、ステップd)で決定した相関の活用を含む、ステップと、
f) 少なくとも1つの推奨アクションを出力ユニットによって出力するステップと
を含む、アクション決定のための方法である。
【0059】
一例では、ステップa)において複数の過去のプロセスアクションに関する情報は1つまたは複数のオペレータアクションを含む。
【0060】
一例では、ステップa)において複数のプロセスアクションに関する情報はGUIレベルの1つまたは複数のアクションを含む。
一例では、GUIレベルのアクションは、傾向を開くことを含む。
一例では、GUIレベルのアクションは、フェースプレートを開くことを含む。
一例では、GUIレベルのアクションは、設定値を変更することを含む。
一例では、GUIレベルのアクションは、コア制御アクションと異なるアクションを含む。
【0061】
一例では、ステップb)において複数のプロセスイベントに関する情報は1つまたは複数のアラームを含む。
【0062】
一例では、ステップb)において複数のプロセスイベントに関する情報は1つまたは複数のシステム状態を含む。
【0063】
一例では、1つまたは複数のシステム状態は、1つもしくは複数の現在のシステム状態および/または1つもしくは複数の予測システム状態を含む。
【0064】
一例では、ステップc)において新たなプロセスイベントに関する情報は、アラームであるプロセスイベントに関する。
【0065】
一例では、ステップb)において複数の過去のプロセスイベントは複数のアラームを含み、かつステップd)において処理ユニットは過去のプロセスイベントの少なくとも一部を決定しており、同決定は、複数回出現する1つまたは複数のアラームを無視することを含む。
【0066】
一例では、ステップb)において複数の過去のプロセスイベントは複数のアラームを含み、かつステップd)において処理ユニットは過去のプロセスイベントの少なくとも一部を決定しており、同決定は、期間にわたって均等に出現する1つまたは複数のアラームを無視することを含む。
【0067】
一例では、ステップb)において複数の過去のプロセスイベントは複数のアラームを含み、かつステップd)において処理ユニットは過去のプロセスイベントの少なくとも一部を決定しており、同決定は、期間に対して所定の短い時間間隔内の複数同一アラームを単一アラームへクラスタ化することを含む。
【0068】
一例では、ステップb)において複数の過去のプロセスイベントは複数のアラームを含み、かつステップd)は、アラームとアクションとの間の関係を検出する統計分析を含む。
【0069】
一例では、ステップb)において複数の過去のプロセスイベントは複数のアラームを含み、かつステップd)は、期間中に滅多に発生しないアラームを選択する。
【0070】
一例では、ステップb)において複数の過去のプロセスイベントは複数のアラームを含み、かつステップd)はアクション対アラーム行列を決定する。
【0071】
一例では、ステップd)は、アクション対アラーム行列の統計的反転を決定して、複数のルールおよび関連した確率を決定することを含み、かつステップe)は、複数のルールおよび関連した確率を活用することを含む。
【0072】
一例では、ステップd)は、著しく多数のルールをトリガするアラームに対応する1つまたは複数のルールを削除することを含み、かつステップe)は、1つまたは複数のルールの削除後に残る複数のルールおよび関連した確率を活用することを含む。
【0073】
一例では、ステップd)は、主成分分析を適用して最重要ルールをフィルタリングし、かつステップe)は、最重要ルールを活用することを含む。
【0074】
一例では、ステップd)は、自然言語処理および単語埋込みを活用して、複数の過去のアクションに関する情報および複数の過去のプロセスイベントに関する情報のベクトル表現を得ることを含み、かつアクションおよびイベントは、関連アクションおよびイベントが他のマッピングに関する特徴空間において共に近くにマッピングされると、相関していると決定される。
【0075】
一例では、ステップd)は、ニューラルネットワークまたは決定木アルゴリズムなどの、機械学習アルゴリズムを活用することを含む。
【0076】
したがって、アクション決定のための新たなシステムおよび方法において、オペレータアクションが取得されてプロセスイベント(例えば、アラーム、現在のシステム状態または予測システム状態)と相関される。GUIレベルのアクションも取得され(傾向を開く、フェースプレートを開く)、したがって相関されるアクションはコア制御アクションだけでない。そのため類似したプロセスイベントが再び発生すると、アクションの推奨を行うことができる。このようにして、将来の完全自律プロセス制御(すなわち、異常状態に応答してそれらを防止する仕方をオペレータから学習できる人工知能ベースのシステム)のための基礎が構築される。
【0077】
換言すれば、イベント(例えば、アラーム)に関するオペレータアクションが訓練目的で取得されて、アラーム合理化の持続的かつ手頃な解決策に備える。これは、過去のアクションを「再生する」こと、およびAIベースの動作のための知識ベースを構築することを許容することによって、オペレータ効率が上げられることも可能にする。このようにして、システムは、提案(推奨アクション)に関して徐々に改善し続ける。これは、例えば、取得した履歴アクションおよびイベントによって促進される手動フィードバックを通じて、例えば過去のプロセスイベントおよび過去のアクションの合理化を通じて強化できる。
【0078】
このように、以前の課題は、プラントオペレータがあまりに多くのアラームを受け、そして重要なアラームが無視されることがあるということであった。熟練オペレータのノウハウが失われるようになり、そして若いオペレータの訓練が不十分でかつ特定のアラームに反応する仕方の最善の実践もないことがある。アラームへの反応は時間がかかりかつ矛盾しており、そして合理化は非常に高くつくため、しばしばアラームは今まで合理化されていない。それは、大部分のアラーム発生が無意味なことを意味する。加えて、重要なアラームが見のがされたかもしれない、すなわちアクションが必要とされたであろうに、それは行われていない。これらが分析にとって追加の障害であるのは、多くの統計的手法がそのような条件下で機能しないからである。
【0079】
ここに記載されるアクション決定のためのシステムおよび方法はこれらの問題に取り組んでいる。
【0080】
アクション決定のためのシステムおよび方法は、
図1によって例証される非常に詳細な実施形態において、以下を含む:
データロギング:アラームもオペレータアクションも記録する;
前処理:重要でない頻繁な項目を削除する;
ルール検出アルゴリズム:アラームとアクションとの間の関係を学習する;
後処理:一致によって発生するルールを削除する;
アクション提案および合理化:検出されたルールを認める/修正する/却下するインタフェース
【0081】
データロギング
アラームロギングに加えて、フェースプレートを開く、傾向を開く、設定値を変更する等のような全てのオペレータアクションを、全ての重要なパラメータを記録しつつ記録し、その結果アクションはログデータから再現可能であろう。記憶のため、アクション(例えばアラームが発生するたびに自動的に傾向を開く)を再び行うために容易に再使用できるフォーマットが使用される。
【0082】
前処理
高頻度で均等に出現するアラームを無視することによって、重要でなくかつ非常に頻繁なアラームが削除される;
所定の短い時間フレーム内の複数同一アラームが1つのアラームへクラスタ化される。
【0083】
ルール検出
アラームとアクションとの間の関係を検出するために統計分析が使用される。まれおよび非常にまれなアラーム(例えば発生が週/月/年に1回未満)に焦点が当てられる;
アクション対アラーム行列が設定される:取られたアクションごとおよびアラームごとに、そのアラームがアクション以前の所定のタイムスパンに何度発生したかが計算される。アクション対アラーム行列は、考え得るルール候補および確率を見つけるために、統計学的に反転される。
【0084】
統計分析以外:関連アラーム/イベントが特徴空間における近い点にマッピングされるというようにアラームおよびイベントのベクトル表現を得るために自然言語処理および単語埋込みが使用される。このようにして、ノウハウが同一区画/機器(例えば幾つかの同一微粉炭機)間で転送できる。また、冗長センサのような密接に関連するセンサ間の関係を考慮できる(現在の手法は名前が異なるや各アラームを別々に扱う);
ニューロンネットワークなどの予測モデルが、単語埋込みに基づいてアラーム/アクション関係を教示される。
【0085】
後処理
アクション対アラーム行列に主成分分析が適用されて(特異値分解を介する低ランク近似)、最重要ルールをフィルタリングする;
一致によって発生するルールは削除される:多くのルールをトリガするアラームに対応するルールは削除され、そしてこれらのルールに対するこれらの例は履歴データにおいて時間によって相関される。
【0086】
アクション提案および合理化
アラームが発生するたびに、検出されたルールに対応して、アクションが確率によって順序付けられてオペレータに提案される。
オペレータおよび/または専門家は、検出されたルールを合理化する可能性を与えられる。これは、ルールの一部が誤っている(例えば同じ誤りを繰り返し犯した若いオペレータのアクションに基づいている)ことがあるので設けられている;
異常事態は(願わくは)毎日起こらない。それ故、ログファイルは、十分な関心を引く異常事態を捕えるために1年より十分に長期間必要とされる。(多くの工業アラームログシステムは或る期間、しばしば1年未満後にアラームを消去する);
迷惑アラーム(高頻度のアラーム)は分析を破壊し得るが、本システムおよび方法はこれに対処する。
【0087】
別の例証的な実施形態において、適切なシステム上で、以前の実施形態の1つに係る方法の方法ステップを実行するように構成されることを特徴とする、コンピュータプログラムまたはコンピュータプログラム要素が提供される。
【0088】
コンピュータプログラム要素は、それ故コンピュータユニット上に記憶され得るが、これも実施形態の一部であり得る。この計算ユニットは、上記した方法のステップを行うようにまたは行うことを誘導するように構成され得る。その上、それは、上記の装置および/またはシステムのコンポーネントを動作させるように構成され得る。計算ユニットは、自動的に動作するようにかつ/またはユーザの命令を実行するように構成できる。コンピュータプログラムはデータプロセッサのワーキングメモリへロードされ得る。データプロセッサは、したがって以前の実施形態の1つに係る方法を実施するように備えられ得る。
【0089】
本発明の更なる例証的な実施形態によれば、CD-ROMなどのコンピュータ可読記憶媒体が提示されており、コンピュータ可読記憶媒体は、その上にコンピュータプログラム要素であって、前項によって記載されたコンピュータプログラム要素が記憶されている。
【0090】
本発明が図面および上記説明に例示および詳細に記載されたが、そのような例示および説明は、例示的または例証的と考えられるべきであり、限定的と考えられるべきでない。本発明は開示した実施形態に限定されない。開示した実施形態の他の変形は、特許請求された発明を実施する当業者によって、図面、本開示および従属請求項の研究から理解および遂行できる。