(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】遠心圧縮機用静止羽根
(51)【国際特許分類】
F04D 29/44 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
F04D29/44 X
F04D29/44 L
F04D29/44 S
(21)【出願番号】P 2021565998
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(86)【国際出願番号】 EP2020025211
(87)【国際公開番号】W WO2020224807
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】102019000006674
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517029381
【氏名又は名称】ヌオーヴォ・ピニォーネ・テクノロジー・ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】Nuovo Pignone Tecnologie S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャッキ、マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ルベキーニ、フィリッポ
(72)【発明者】
【氏名】アルノーネ、アンドレア
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-124624(JP,A)
【文献】特表2018-526569(JP,A)
【文献】特開2003-307200(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0019416(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16、
17/00-19/02、
21/00-25/16、
29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心圧縮機用の静止羽根(100)であって、
外面に隣接するガス流を誘導するように構成された前記外面と、
ガス流を受けるように配置され、前縁(102)と、尖った頂点(125)を有する少なくとも1つの突起(120)と、を有するフロント部分(110)と、
後縁(104)と、
を備え、
前記突起(120)が、前記頂点(125)の2つの対向する側面において前記前縁(102)の少なくとも2つの斜め区画(103)を画定し、前記斜め区画(103)が、前記静止羽根(100)のスパン方向に対して斜めであり、前記少なくとも2つの斜め区画(103)が、2つの対向して回転する縦渦(V)を起こすように構成され、
前記前縁
(102)の前記頂点(125)
が、前記前縁(102)から前記後縁(104)に向かって延びる断面において、鋭い縁を形成し、
前記前縁(102)のうち、前記頂点(125)の
前記スパン方向の各側の少なくとも一部が、前記前縁(102)から前記後縁(104)に向かって延びる断面において、丸みを帯びた縁
を形成する、静止羽根(100)。
【請求項2】
前記縦渦(V)は、最小値以上最大値以下の直径を有し、前記直径の前記最小値が、式0.1b/Nで求められ、前記直径の前記最大値が、式1.0b/Nで求められ、bが、前記静止羽根(100)の中央スパン方向寸法であり、Nが、縦渦(V)の個数である、請求項1に記載の静止羽根(100)。
【請求項3】
前記外面が、正圧面(112)及び負圧面(114)で構成され、前記フロント部分(110)が、前記正圧面(112)に隣接する正圧側ガス流と、前記負圧面(114)に隣接する負圧側ガス流とに前記ガス流を分けるように配置され、前記フロント部分(110)が、前記負圧側ガス流にしか前記縦渦(V)を起こさないように構成されている、請求項1又は2に記載の静止羽根(100)。
【請求項4】
前記斜め区画(103)が、真っ直であるか又は曲がっている、請求項1から3のいずれか1項に記載の静止羽根(100)。
【請求項5】
平均キャンバーラインを有し、前記突起(120)が順方向(D)に突き出し、前記順方向(D)が、前記平均キャンバーラインの区画(128)の前端における接線に対して-20°以上20°以下の角度を画定し、前記区画(128)が、前記静止羽根(100)の前記フロント部分(110)に位置し、前記静止羽根(100)の前記前縁から始まっている、請求項1から4のいずれか1項に記載の静止羽根(100)。
【請求項6】
前記順方向(D)が、前記平均キャンバーラインの前記区画(128)にほぼ接する、請求項5に記載の静止羽根(100)。
【請求項7】
それぞれ異なる順方向に突き出す複数の前記突起(120)を有し、各々の前記順方向が、前記平均キャンバーラインの区画(128)の前端における接線に対して-20°以上20°以下の角度を画定し、前記区画(128)が、前記静止羽根(100)の前記フロント部分(110)に位置し、前記静止羽根(100)の前記前縁から始まっている、請求項5又は6に記載の静止羽根(100)。
【請求項8】
前記突起(120)が、最小値以上最大値以下の範囲の前記順方向に沿った延長部を有し、前記延長部の前記最小値が、式0.2b/Mで求められ、前記延長部の前記最大値が、式2.0b/Mで求められ、bは、前記静止羽根(100)の中央スパン方法寸法であり、Mは、前記フロント部分(110)にある尖った突起(120)の個数である、請求項
5から7のいずれか1項に記載の静止羽根(100)。
【請求項9】
前記突起(120)が対称又は非対称である、請求項1から8のいずれか1項に記載の静止羽根(100)。
【請求項10】
前記前縁(102)が、前記突起(120)の前記頂点(125)において60°未満の頂点角を有する、請求項1から9のいずれか1項に記載の静止羽根(100)。
【請求項11】
前記前縁(102)が、前記突起(120)の前記頂点(125)において50°未満の頂点角を有する、請求項10に記載の静止羽根(100)。
【請求項12】
前記静止羽根(100)が少なくとも1つの頂点翼と少なくとも1つのトラフ翼との間で縁形状が変化するスパン方向可変翼を形成し、前記頂点翼が、前記突起(120)に位置し、前記突起(120)の前記頂点(125)を画定する尖った前縁(102、102a)を有し、前記トラフ翼が、前記突起の傍らに位置し、前記突起(120)の隣にトラフ(126)を画定する丸い前縁(102、102b)を有する、請求項1から11のいずれか1項に記載の静止羽根(100)。
【請求項13】
前記前縁(102)
のうち、前記頂点(125)を含
み前記スパン方向
に延びる部分が、前記前縁(102)から前記後縁(104)に向かって延びる断面において、鋭い縁を形成し、前記
前縁(102)のうち前記部分を除く他の部分が、
前記丸みを帯びた縁を形成する、請求項1から12のいずれか1項に記載の静止羽根(100)。
【請求項14】
前記前縁(102)
の前記頂点(125)
が、前記鋭い縁を形成し、
前記前縁(102)のうち、前記頂点
(125)を除
く部分が、前記丸みを帯びた縁を形成する、請求項1から12のいずれか1項に記載の静止羽根(100)。
【請求項15】
多段遠心圧縮機の戻り流路羽根として使用されるように配置されている、請求項1から14のいずれか1項に記載の静止羽根(100)。
【請求項16】
遠心圧縮機のディフューザ羽根として使用されるように配置されている、請求項1から14のいずれか1項に記載の静止羽根(100)。
【請求項17】
少なくとも、請求項1から16のいずれか1項に記載の静止羽根(100)を備えるガス処理プラントのための遠心圧縮機(2100)。
【請求項18】
前記遠心圧縮機が多段であり、複数の圧縮機段(10)を有し、少なくとも1つの圧縮機段(10)がロータ(20)と、ディフューザ(25)と、戻り流路(30)と、を有し、前記遠心圧縮機が、前記少なくとも1つの圧縮機段(10)の前記戻り流路(30)に少なくとも一列の円形配列で配置された、複数の前記静止羽根(100)を備える、請求項17に記載の遠心圧縮機(2100)。
【請求項19】
前記遠心圧縮機が多段であり、複数の圧縮機段(10)を有し、少なくとも1つの圧縮機段(10)がロータ(20)と、ディフューザ(25)と、戻り流路(30)と、を有し、前記遠心圧縮機が、前記少なくとも1つの圧縮機段(10)の前記ディフューザ(25)に、少なくとも一列の円形配列で配置された、複数の前記静止羽根(100)を備える、請求項17に記載の遠心圧縮機(2100)。
【請求項20】
前記遠心圧縮機が多段であり、複数の圧縮機段(10)を有し、少なくとも1つの圧縮機段(10)がロータ(20)と、ディフューザ(25)と、戻り流路(30)と、を有し、前記遠心圧縮機が、前記少なくとも1つの圧縮機段(10)の前記ディフューザ(25)に、及び前記戻り流路(30)に、少なくとも一列の円形配列で配置された、複数の前記静止羽根(100)を備える、請求項17に記載の遠心圧縮機(2100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の主題は、油及びガス産業のための遠心圧縮機の分野に関する。具体的には、本明細書に開示の主題は、例えば多段遠心圧縮機において戻り流路を画定するのに使用され得る遠心圧縮機用の静止羽根に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機では、ロータが、遠心圧縮機を遠心的に圧縮するために、軸を中心に円周方向にガス流を加速させる。静止羽根は、通常、ガス流を圧縮に続いて真っ直にするために、具体的には速度の半径方向円周成分を補正するために、ロータの1つ以上のインペラの下流に置かれている。
【0003】
例えば、1つ以上のインペラを有する多段圧縮機では、静止羽根は、第1のロータからガス流を受け取り、それを第2のロータに向け、それをこの工程で真っ直にするために、2つの連続するインペラ間の戻り流路に置かれている。
【0004】
静止羽根の形状は、遠心圧縮機の運用条件によって決まる流れ条件に応じて、流体と様々に作用し合う。
【0005】
通常、圧縮機の設計上の運用速度で羽根を中心とした滑らかな流れをもたらすように、静止羽根設計が最適化される。しかしながら、これらの羽根は、遠心圧縮機がその運用上の設計速度で作動しない場合、例えば、始動時又は停止時、又は遠心圧縮機速度の途切れのない変化を必要とする運用条件において、損失をもたらす可能性がある。
【0006】
これらの条件では、1つの運用条件だけに合わせて最適化された先行技術の静止羽根は、局所的な流れ剥離又は全体もの流れ剥離をもたらす傾向があり、これにより、失速域又は再循環域を生じさせ、遠心圧縮機の性能に影響を与える。
【0007】
したがって、流れ剥離を回避するか又は少なくとも流れ剥離を減じる、より広範囲の運用条件にわたって作動することができる静止羽根を提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0008】
ある態様によれば、本明細書に開示の主題は、遠心圧縮機用静止羽根に関する。静止羽根は、ガス流を受けるように配置され、外面に隣接するガス流を誘導するように構成された外面を有するフロント部分を備え、このフロント部分は、ガス流中に少なくとも1つの縦渦を起こすように構成されている。
【0009】
別の態様によれば、本明細書に開示の主題は、少なくとも1つの静止羽根を備える遠心圧縮機に関し、このような静止羽根は、ガス流を受けるように配置され、外面に隣接するガス流を誘導するように構成されたフロント部分を備え、このフロント部分は、ガス流中に少なくとも1つの縦渦を起こすように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の開示の実施形態とそれに付随する利点の多くは、添付図面に関連して考えながら以下の発明を実施するための形態を参照することによって、理解が深まるにつれてすぐにより完全に分かるようになるであろう。
【
図1】本明細書に開示の静止羽根のそれぞれの実施形態を含む、本明細書に開示の遠心圧縮機のそれぞれの実施形態のメリディオナル概略図を示す。
【
図2】本明細書に開示の静止羽根のそれぞれの実施形態を含む、本明細書に開示の遠心圧縮機のそれぞれの実施形態のメリディオナル概略図を示す。
【
図3】本明細書に開示の静止羽根のそれぞれの実施形態を含む、本明細書に開示の遠心圧縮機のそれぞれの実施形態のメリディオナル概略図を示す。
【
図4】本明細書に開示の静止羽根の一実施形態の予想図を示す。
【
図5】本明細書に開示の静止羽根のそれぞれの実施形態の運用上の構成の正面概略図を示す。
【
図6】本明細書に開示の静止羽根のそれぞれの実施形態の運用上の構成の正面概略図を示す。
【
図7】本明細書に開示の静止羽根のそれぞれの実施形態の運用上の構成の部分上面図を示す。
【
図8】本明細書に開示の静止羽根のそれぞれの実施形態の正面概略図を示す。
【
図9】本明細書に開示の静止羽根のそれぞれの実施形態の正面概略図を示す。
【
図10】本明細書に開示の静止羽根のそれぞれの実施形態の正面概略図を示す。
【
図11】本明細書に開示の様々な実施形態による、特定の静止羽根の特定の上面概略図を示す。
【
図12】本明細書に開示の様々な実施形態による、特定の静止羽根の特定の上面概略図を示す。
【
図13】本明細書に開示の様々な実施形態による、特定の静止羽根の特定の上面概略図を示す。
【
図14】本明細書に開示の様々な実施形態による、特定の静止羽根の特定の上面概略図を示す。
【
図15】本明細書に開示の様々な実施形態による、特定の静止羽根の特定の上面概略図を示す。
【
図16】本明細書に開示の様々な実施形態による、特定の静止羽根の特定の上面概略図を示す。
【
図17】本明細書に開示の様々な実施形態による、特定の静止羽根の特定の上面概略図を示す。
【
図18】本明細書に開示の様々な実施形態による、特定の静止羽根の特定の上面概略図を示す。
【
図19】本明細書に開示の静止羽根のそれぞれの実施形態の断面図を示す。
【
図20】本明細書に開示の静止羽根のそれぞれの実施形態の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に開示の主題は、インペラから来るガス流を真っ直にするために、圧縮機においてロータのインペラの下流に位置付けられる静止羽根に関するものである。静止羽根は、ガス流の流れに追従し、静止羽根の上面(「負圧面」としても知られる)にくっ付いたままである、1つ以上の縦渦をガス流中に起こすように構成されたフロント部分を有する。
【0012】
縦渦は、ガス流の方向に平行に延びる渦であり、ガス流がほぼ螺旋状の軌道で移動する「渦チューブ」を画定する。縦渦は、上面からのガス流の剥離を防ぐか又は遅らせることにより静止羽根の失速の実体を遅らせかつ/又は低減するために、静止羽根の上面上のガス流の境界層をごちゃ混ぜにし、境界層に再びエネルギを与える。「縦渦」とその発生は、教科書などから、例えば、Cambridge University Pressにより2004年に出版、また2007年に電子出版されたE.M.Greitzer,C.S.Tan and M.B.Grafの書籍「Internal Flow・Concepts and Applications」などから知られている。
【0013】
より詳細には、縦渦は、静止羽根のフロント部分に位置する1つ以上の尖った突起によって起こされ、羽根の上面に沿ったガス流によって下流に運ばれる。
【0014】
ここで、その1つ以上の例を図に示している、本開示の実施形態について詳しく述べる。各例は、本開示を限定するものではなく、本開示の説明として提供するものである。実際には、本開示の範囲又は趣旨から逸脱しない限り、本開示に様々な修正及び変形を加えることができるということが、当業者には分かってくるであろう。本明細書全体を通して「ある実施形態」又は「一実施形態」又は「いくつかの実施形態」と言うとき、一実施形態に関して述べられる特定の特徴、構造、又は特性が、開示の主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な個所における「ある実施形態では」又は「一実施形態では」又は「いくつかの実施形態では」という句が現れると、それは、必ずしも同じ実施形態を指しているものではない。また、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態において、適していればいかなる様式でも組み合わされ得る。
【0015】
様々な実施形態の要素を提示する際、冠詞「a」、「an」、「the」、及び「前記(said)」は、その要素の1つ以上があることを意味することを目的とするものである。「備える(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という用語は、非排他的であることが意図され、挙げられた要素以外に更に要素があってもよいことを意味するものである。
【0016】
ある態様によれば、また
図4を参照すると、本明細書に開示の主題では、遠心圧縮機用の静止羽根100を提供し、具体的には、メタン、エタン、プロパン、エチレン、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、水素、冷媒ガス、又はこれらの物質の混合物などのガスを処理するプラントに使用される多段遠心圧縮機用の静止羽根100を提供する。
【0017】
図1、
図2、及び
図3のそれぞれでは、遠心圧縮機のインペラ20の下流に設置された本明細書に開示の主題による、静止羽根100の異なる実施形態をそれぞれが備える、遠心圧縮機の段10の異なる実施形態を示す。遠心圧縮機は、非常に多種多様なガス及びガス混合物を広範囲の運用条件(圧力及び温度)で取り扱う、生産、運輸、精錬、石油科学、及び化学の産業を含む、様々な異なる油及びガス用途で採用され得る。
【0018】
より詳細には、
図1では、遠心圧縮機の戻り流路30に静止羽根100が設置されて、静止羽根100が、遠心圧縮機そのものの戻り流路羽根として働く、一実施形態を示す。
図2では、静止羽根100がディフューザ25に設置されて、遠心圧縮機そのものディフューザ羽根として働く、一実施形態を示す。
図3では、静止羽根100が、遠心圧縮機のディフューザ25及び戻り流路30の両方を少なくとも部分的に貫通し、ディフューザ25と戻り流路30との間を180°向きを変えて延在する、一実施形態を示す。
【0019】
図2の実施形態の変形形態によれば、本明細書に開示の主題による羽根がディフューザにも戻り流路にもある、ということが分かるはずである。
【0020】
例えばインペラ20から来るガス流は、遠心圧縮機段10の長手方向軸「Z」に対する半径方向成分及び円周方向成分を含む速度を有する。静止羽根100は、遠心圧縮機段10に固定されているか、あるいは遠心圧縮機段10において、ディフューザ25及び/又は戻り流路30に所定位置で配置されるように構成されている。
【0021】
遠心圧縮機段10における静止羽根100の位置は、静止羽根100が上述のガス流によって包囲され、その円周方向速度成分を減らすか又は打ち消すようにそれを逸らすように整えられ、位置付けられている。静止羽根100は、少なくとも遠心圧縮機がその設計運用速度で作動するときに、ガス流をその外面にくっ付いた状態に維持し、前縁102から後縁104への流れ剥離を制限又は回避するように、整え、位置付けられている。
【0022】
より詳細には、静止羽根100は、静止羽根100そのものの前縁102から後縁104にガス流を誘導するように構成された曲がった外面を有する。静止羽根100の外面は、静止羽根100の「下側」で前縁102と後縁104との間に延在する正圧面112と、静止羽根100の「上側」で前縁102と後端104との間に延在する負圧面114とで構成されている。正圧面112は、通常の運用条件下で、ガス流を取り囲む圧力よりも高い圧力を受ける静止羽根100の外面の一部に相当する。負圧面114は、通常の運用条件下で、ガス流を取り囲む圧力よりも低い圧力を受ける外面の一部に相当する。通常、負圧面114は、凸状であり、正圧面112は、凹状であるか、又は負圧面114よりも低い凸面を有する。
【0023】
静止羽根100は、例えばインペラ20から来るガス流を受け、正圧面112に隣接する正圧側ガス流と、負圧面114に隣接する負圧側ガス流とにガス流を分けるように配置されたフロント部分110を備える。
【0024】
フロント部分110は、静止羽根100の外面に隣接するガス流中に少なくとも1つの縦渦「V」を起こすように構成されている。フロント部分110が、
図5及び
図7に示すように、少なくとも一対の対向回転渦「V」を起こすように構成されていると好ましい。
図6に示すあり得る実施形態では、フロント部分110は、複数対の対向回転縦渦「V」を起こすように構成されている。
【0025】
フロント部分110が負圧側ガス流だけにしか縦渦「V」を起こさないように構成されていると好ましい。具体的には、静止羽根100のフロント部分110及び正圧面112は、正圧側ガス流を縦渦がほぼない状態に維持するように構成されている。
【0026】
縦渦「V」は、最小値~最大値である直径を有し、直径の最小値が式0.1b/Nで求められ、直径の最大値が式1.0b/Nで求められ、bが静止羽根100の中央スパン方向寸法であり、Nが縦渦「V」の個数であると、好ましい。
【0027】
具体的には、フロント部分110は、静止羽根100の中央スパン方向寸法(引いては、静止羽根100が設置される流路の幅の寸法)に比例し、また縦渦「V」の総数に反比例する、直径を有する縦渦「V」を起こすように構成されている。
【0028】
静止羽根100の前縁102が、上述の類の縦渦「V」を起こすように構成された少なくとも1つの斜め区画103を有すると好ましい。具体的には、斜め区画103は、流入ガスでの迎え角を画定し、流入ガス流の圧力を下げることによって、縦渦「V」を引き起こす。斜め区画103の斜め配置により、静止羽根100のスパン方向における圧力の不均一な分布が決まり、これにより、ガス流中にスパン方向速度成分が作られ、これは、
図7に示す縦渦「V」のうちの1つの形成をもたらす。
【0029】
好ましくは、前縁102が複数の斜め区画103を有する。
図4、
図11、及び
図15には、前縁102が2つの斜め区画103を有する静止羽根100の実施形態を示す。
図12及び
図16には、前縁102が4つの斜め区画103を有する静止羽根100の実施形態を示す。
図13及び
図17には、前縁102が8つの斜め区画103を有する静止羽根100の実施形態を示す。
図14及び
図18には、前縁102が6つの斜め区画103を有する静止羽根100の実施形態を示す。静止羽根100の非図示のあり得る実施形態では、前縁102には、斜め区画103が1つしかない。
【0030】
具体的には、斜め区画103は、静止羽根100のスパン方向に対して斜めであるが、真っ直であってもよく(
図4、
図11、
図12、
図13、及び
図14に示すように)、曲がっていてもよい(
図15、
図16、
図17、及び
図18に示すように)。有利には、上記のように構成された斜め区画103が、フロント部分110を包囲するガス流の方向に対しても斜めである。
【0031】
好ましい実施形態において、フロント部分110が、頂点125を有する少なくとも1つの尖った突起120で構成されている。
図4、
図11、及び
図15には、フロント部分110に尖った突起120が1つしかない静止羽根100の実施形態を示す。
図12及び
図16には、フロント部分110が2つの尖った突起120で構成されている静止羽根100の実施形態を示す。
図13及び
図17には、フロント部分110が4つの尖った突起120で構成されている静止羽根100の実施形態を示す。
【0032】
それぞれの尖った突起120は、上記の前縁102の斜め区画103のうちの少なくとも2つを画定する。具体的には、2つの斜め区画103は、頂点125の両側に位置付けられ、2つの対向回転縦渦「V」を起こすように構成されている。
【0033】
図4、
図11、
図12、
図13、及び
図14の実施形態では、尖った突起120は、静止羽根100の中央平面内に三角形状を有し、真っ直な斜め区画103を画定する。
図15、
図16、
図17、及び
図18の実施形態では、尖った突起120は、静止羽根100の中央平面内に咬頭形状を有し、曲がった斜め区画103を画定する。
【0034】
尖った突起120が、フロント部分110に位置する静止羽根100平均キャンバーラインの区画の前端における接線に対して20°~-20°の角度を画定する順方向に突き出し、この区画が、羽根の前縁(尖った突起を除く)から始まり、例えば、平均キャンバーラインの全長の10~20%に達し得ると好ましい。
図4に示す好ましい実施形態では、尖った突起120が突き出す順方向は、フロント部分110に位置する平均キャンバーラインの上述の区画にほぼ接する。
【0035】
非図示のあり得る実施形態では、静止羽根100は、様々な順方向に突き出す複数の尖った突起120で構成され、順方向は、当該平均キャンバーラインの区画の前端における接線に対して20°~-20°の角度を画定し、この区画は、静止羽根100のフロント部分110に位置し、静止羽根100の前縁(尖った突起を除く)から始まる。
【0036】
好ましくは、それぞれの尖った突起120が、静止羽根100の長手方向平面に対して対称である。静止羽根100のあり得る代替の非図示の実施形態によれば、1つ以上の非対称の尖った突起120で構成され、その尖った突起120に対して斜め区画103が静止羽根100のスパン方向に対して様々な角度を画定する。
【0037】
好ましくは、尖った突起120が、最小値~最大値の範囲の順方向に沿った長手方向の延長部を有する。最小値は、式0.2b/Mで求められ、延長部の最大値は、式2.0b/Mで求められ、bは、静止羽根100の中央スパン方向寸法であり、Mは、フロント部分110にある尖った突起120の個数である。
【0038】
前縁102が、尖った突起120の頂点125において60°未満の頂点角、より好ましくは50°未満の頂点角を有すると好ましい。頂点角は、同じ頂点125に隣接する2つの斜め区画103間の角度と意図されるものである。より詳細には、頂点角は、静止羽根100のキャンバー平面で測定されるはずである。
【0039】
好ましくは、静止羽根100が、スパン方向可変翼を有し、この翼が、尖った突起120に位置する頂点翼と、尖った突起120の隣に位置する(ある程度離れて)、又は2つの尖った突起120間のトラフ126に位置するトラフ翼とで、徐々に切り替わる。より詳細には、頂点翼は、鋭い前縁102aを有し、トラフ翼は、鋭い前縁又は丸い前縁のいずれを有してもよい。
【0040】
図19は、頂点翼として採用され得る鋭い前縁翼を示す。この図では、尖った突起120は、順方向Dに突き出し、通常、順方向は、平均キャンバーラインの区画128の前端における接線に対して20°~-20°の角度を画定し、区画128は、静止羽根100のフロント部分110に位置し、静止羽根100の前縁(尖った突起を除く)から始まり(点129を参照)、
図19の実施形態では、順方向Dは、接線と一致し、すなわち、角度は、0°である。
【0041】
図20では、トラフ翼として採用され得る丸い前縁翼を示す。
【0042】
図8では、スパン方向寸法全体に沿って延在する鋭い前縁102aを有する静止羽根100の一実施形態を示す。
図9では、頂点125に鋭い前縁120aを有する静止羽根100の一実施形態を示し、この前縁120aは、スパン方向寸法の一部ではスパン方向に延在し、次に、静止羽根100両側の丸みのある前縁120に変わる。
図10では、尖った突起120の頂点125にしか鋭い前縁102aがない静止羽根100の一実施形態を示し、この前縁102aは、頂点125の両側の丸い前縁102bにすぐに変わる。
【0043】
別の態様によれば、また
図1、
図2、
図3、及び
図21を参照すると、本明細書に開示の主題では、好ましくは多段式の遠心圧縮機2100を提供し、これは上記の類の複数の静止羽根100を備える。具体的には、遠心圧縮機は、複数の圧縮機段10で構成され、それぞれの圧縮機段10は、インペラ20、ディフューザ25、及び戻り流路30を有し、またそれぞれの圧縮機段10は、ディフューザ25に及び/又は戻り流路30に円形配列で配置された複数の静止羽根100で構成されている。より詳細には、円形配列の静止羽根100は、長手方向軸「Z」を中心とする速度の円周方向成分を有する遠心圧縮機段10のインペラ20からの流入流を受けるために、また速度の円周方向成分を減じるか又は打ち消すように、またきれいな真っ直な流れを続く圧縮機段のロータに届けるようにこの流れの方向を変えるために、長手方向軸「Z」を中心に延在する。
【0044】
図21の実施形態によれば、遠心圧縮機2100は、(例えば、非圧縮)作動流体を受けるための入口2101と、圧縮後に作動流体を放出するための出口2199とを有する。圧縮機2100は、流体連結された例えば3つの圧縮段で構成され、1番目の(又は初期)圧縮段は、インペラ2112とその下流に、次の段につながる環状導管2114を含み、2番目の(又は中間)圧縮段は、インペラ2122とその下流に、次の段につながる環状導管2124を含み、3番目の(又は最終)圧縮段は、インペラ2132とその下流に、次の段につながる環状導管2134を含む。すでに説明したように、作動流体流中に少なくとも1つの縦渦を起こすように構成された1つ以上の静止羽根は、環状導管2114、2124、及び2134のうちの1つ以上又はすべてに位置する。