(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】抗FcRn抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240509BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240509BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240509BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240509BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240509BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240509BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240509BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240509BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240509BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20240509BHJP
A61K 47/61 20170101ALI20240509BHJP
A61K 47/62 20170101ALI20240509BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20240509BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240509BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240509BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20240509BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240509BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20240509BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240509BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240509BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C07K16/28
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K47/60
A61K47/61
A61K47/62
A61P7/04
A61P17/00
A61P17/02
A61P17/04
A61P25/00
A61P25/02
A61P37/06
A61P43/00
C12N15/13 ZNA
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022051897
(22)【出願日】2022-03-28
(62)【分割の表示】P 2020093532の分割
【原出願日】2013-05-13
【審査請求日】2022-04-26
(32)【優先日】2012-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514232085
【氏名又は名称】ユーシービー バイオファルマ エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィニー、ヘレン マーガレット
(72)【発明者】
【氏名】ローソン、アラステア デイヴィッド グリフィス
(72)【発明者】
【氏名】ショー、ステヴァン グレアム
(72)【発明者】
【氏名】スミス、ブライアン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】タイソン、ケリー ルイーズ
(72)【発明者】
【氏名】ケヴォーキアン、ララ
(72)【発明者】
【氏名】マイアー、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】サーカー、カウシク
(72)【発明者】
【氏名】アザーフォールド、ポール アラン
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-523351(JP,A)
【文献】特表2007-501847(JP,A)
【文献】特表2009-524664(JP,A)
【文献】J. Immunol., 2007, Vol.178, p.5390-5398
【文献】mAbs, 2012-MAR-APR, Vol.4, p.208-216
【文献】Int. Immunol., 2001, Vol.13, p.1551-1559
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00- 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変領域を有する重鎖又は重鎖フラグメントを含む抗FcRn抗体又はそのFcRn結合フラグメントであって、
該抗FcRn抗体又はそのFcRn結合フラグメントはヒト化されていて、
前記可変領域は、3つのCDRを含み、CDR H1は配列番号1の配列を有し、CDR H2は配列番号2の配列を有し、CDR H3は配列番号3の配列を有し、
可変領域を有する軽鎖又は軽鎖フラグメントをさらに含み、前記可変領域は、3つのCDRを含み、CDR L1は配列番号4の配列を有し、CDR L2は配列番号5の配列を有し、CDR L3は配列番号6の配列を有する、
前記抗FcRn抗体又はそのFcRn結合フラグメント。
【請求項2】
pH6及びpH7.4にて測定した場合、ヒトFcRnに対する結合親和性が100pM以下である、請求項
1に記載の抗FcRn抗体又はそのFcRn結合フラグメント。
【請求項3】
ヒトFcRnに結合する、請求項1
又は2に記載の抗FcRn抗体又はそのFcRn結合フラグメント。
【請求項4】
ヒトIgGのヒトFcRnへの結合を遮断する、請求項1~
3のいずれかに記載の抗FcRn抗体又はそのFcRn結合フラグメント。
【請求項5】
β2ミクログロブリンに結合しない、請求項1~
4のいずれかに記載の抗FcRn抗体又はそのFcRn結合フラグメント。
【請求項6】
ポリマーにコンジュゲートされている、請求項1~
5のいずれかに記載の抗FcRn抗体又はそのFcRn結合フラグメント。
【請求項7】
ポリマーがデンプン、アルブミン及びポリエチレングリコール(PEG)から選択される、請求項
6に記載の抗FcRn抗体又はそのFcRn結合フラグメント。
【請求項8】
ポリマーが5~50kDaの範囲の分子量を有するPEGである、請求項
7に記載の抗FcRn抗体又はそのFcRn結合フラグメント。
【請求項9】
抗体が完全長抗体である、請求項1~
8のいずれかに記載の抗FcRn抗体又はそのFcRn結合フラグメント。
【請求項10】
完全長抗体がIgG1、IgG4及びIgG4Pからなる群から選択される、請求項
9に記載の抗FcRn抗体又はそのFcRn結合フラグメント。
【請求項11】
請求項1~
5、
9及び
10のいずれかに記載の抗FcRn抗体又はそのFcRn結合フラグメントの重鎖及び/又は軽鎖(単数又は複数)をコードする、単離されたDNA分子。
【請求項12】
請求項1~
5、
9及び
10のいずれかに記載の抗FcRn抗体又はそのFcRn結合フラグメントの重鎖及び/又は軽鎖(単数又は複数)をコードする、クローニングベクター又は発現ベクター。
【請求項13】
請求項
12に記載のクローニングベクター又は発現ベクターを1つ又は2つ以上含む宿主細胞。
【請求項14】
請求項
13に記載の宿主細胞を培養すること及び前記抗FcRn抗体又はそのFcRn結合フラグメントを単離することを含む、抗FcRn抗体又はそのFcRn結合フラグメントの製造方法。
【請求項15】
請求項1~
10のいずれかに記載の抗FcRn抗体又はその結合フラグメントを、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体の1つ又は複数と組み合わせて含む、医薬組成物。
【請求項16】
治療に用いるための、請求項1~
10のいずれかに記載の抗FcRn抗体もしくはその結合フラグメント又は請求項
15に記載の組成物。
【請求項17】
自己免疫性疾患の処置に使用するための、請求項1~
10のいずれかに記載の抗FcRn抗体もしくはその結合フラグメント又は請求項
15に記載の組成物。
【請求項18】
自己免疫疾患の処置に用いるための医薬を製造するための、請求項1~
10のいずれかに記載の抗FcRn抗体もしくはその結合フラグメントの使用、ただし前記自己免疫疾患は以下から選択される:
重症筋無力症、視神経脊髄炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎 (CIDP)、ギランバレー症候群、パラプロテイン血症多発性神経障害、難治性てんかん、特発性血小板減少性紫斑(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura)、溶血性貧血、グッドパスチャー症候群、ABO不適合、ループス腎炎、腎血管炎、強皮症、線維性肺胞炎、拡張型心筋症、グレーブス病、1型糖尿病、自己免疫性糖尿病、天疱瘡、狼瘡、ANCA血管炎、皮膚筋炎、シェーグレン病、関節リウマチ、自己抗体関連脳炎、抗リン脂質抗体症候群(APS)、 自己免疫性蕁麻疹、好中球減少症、傍腫瘍性小脳変性症、原発性胆汁性肝硬変、スティッフパーソン症候群、白斑及び温式特発性溶血性貧血。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、FcRnに特異的な抗体、それを含む製剤、治療における各々の使用、前記抗体を発現し、任意選択に製剤化するプロセス、抗体をコードするDNA及び前記DNAを含む宿主に関する。
【背景技術】
【0002】
FcRnは、膜タンパク質FcRnα鎖及びβ2ミクログロブリン(β2M)の非共有結合複合体である。成体哺乳動物において、FcRnは、IgGアイソタイプの抗体に結合し、それを回収する受容体として作用することによって血清抗体レベルを維持するのに重要な役割を果たす。IgG分子は内皮細胞によって取り込まれ、それらがFcRnに結合する場合、再利用され、例えば循環内に経細胞輸送される。対照的に、FcRnに結合しないIgG分子は細胞に入り、それらが分解されるリソソーム経路に向かう。His435がアラニンに変異されるバリアントIgG1は、FcRn結合の選択的損失を生じ、血清半減期を著しく減少させる(Firanら 2001、International Immunology 13:993)。
【0003】
FcRnは、自己抗体により少なくとも部分的に引き起こされる特定の自己免疫障害のための潜在的治療標的であると仮定されている。特定のこのような障害のための現在の処置はプラスマフェレーシスを含む。時々、プラスマフェレーシスは、疾患の長時間の管理の間、免疫抑制療法と共に利用される。血漿交換は有害な自己抗体を取り除くための最短の答えを与える。しかしながら、例えば、プレドニゾン、シクロホスファミド、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、リツキシマブ又はこれらの混合物などの医薬の使用によって免疫系による自己抗体の産生を抑制することも望まれ得る。
【0004】
プラスマフェレーシスにより処置され得る疾患の例には、ギランバレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、グッドパスチャー症候群、過粘稠度症候群、クリオグロブリン血症、パラプロテイン血症、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重症筋無力症、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)/溶血性尿毒症症候群、ウェゲナー肉芽腫症、ランバート-イートン症候群、抗リン脂質抗体症候群(APS又はAPLS)、顕微鏡的多発血管炎、移植された腎臓における再発性の巣状及び分節性糸球体硬化症、HELLP症候群、PANDAS症候群、レフサム病、ベーチェット症候群、HIV関連神経障害、乳児及び新生児におけるグレーブス病、尋常性天疱瘡、多発性硬化症、横紋筋融解症及び同種免疫疾患が含まれる。
【0005】
プラスマフェレーシスは時々、例えば緊急時に重篤な副作用を減少させるためにFcを含む治療を取り除くための救援治療として使用される。
【0006】
プラスマフェレーシスは特定の医学的状態において有用であるが、治療に関連した潜在的リスク及び合併症が存在する。かなり大きな静脈内カテーテルの挿入は、出血、肺の破裂(カテーテル挿入の側に応じる)を引き起こす場合があり、カテーテルが非常に長い時間残ったままになると、静脈に対して感染及び/又は損傷を引き起こす場合があり、手順を繰り返す機会が限られる。
【0007】
手順は更に、そのカテーテルに関連して複雑になり、例えば患者の血液がプラスマフェレーシス機器を通して身体の外側にある場合、血液は凝固する傾向がある。この傾向を減少させるために、1つの一般的なプロトコルにおいて、血液を循環させながら、クエン酸塩が注入される。クエン酸塩は血液中でカルシウムに結合し、カルシウムは血液を凝固させるのに不可欠である。クエン酸塩は血液が凝固するのを防ぐのに非常に効果的であるが、その使用は生命に驚異的な低いカルシウムレベルを引き起こし得る。これはクボステック兆候又はトルソー兆候を使用して検出され得る。この合併症を防ぐために、患者がプラスマフェレーシスを受けている間、カルシウムが静脈内に注入され、加えて、口からのカルシウム補足も与えられ得る。
【0008】
手順の他の合併症には、低血圧、輸血反応又は輸血感染疾患のリスクを伴う血液製剤に対する潜在曝露、患者の免疫系の抑制及び針の穿刺による出血又は血腫が含まれる。
【0009】
更に、プラスマフェレーシスを提供する器具は限定されており、手順は非常に高価である。
【0010】
プラスマフェレーシスの代替は、1000人以上の献血者の血漿から抽出されたプールされたポリクローナルIgGを含有する血液製剤である静脈用免疫グロブリン(IVIG)である。この治療は静脈内投与であり、2週から3ヶ月の範囲で継続する。
【0011】
IVIG処置の合併症には、頭痛、皮膚炎、治療製品の汚染に由来するウイルス感染、例えばHIV又は肝炎、肺水腫、アレルギー反応、急性腎不全、静脈血栓症及び無菌性髄膜炎が含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
それ故、低侵襲性であり、患者を医学的合併症にほとんど曝さない、自己免疫障害のための治療についての重要で満たされていない要求が存在する。
【0013】
それ故、低侵襲性であり、患者を医学的合併症にほとんど曝さない、免疫学的障害及び/又は自己免疫障害のための治療についての重要で満たされていない要求が存在する。
【0014】
従って、FcRnに対するIgGの結合を遮断又は減少させる薬剤が、このような自己免疫及び炎症性疾患の処置又は防止に有用であり得る。抗FcRn抗体は以前にWO2009/131702、WO2007/087289及びWO2006/118772において記載されている。
【0015】
しかしながら、改良された抗FcRn抗体についての要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
それ故、一態様において、可変領域を有する重鎖又は重鎖フラグメントを含む抗FcRn抗体又はその結合フラグメントであって、前記可変領域が、配列番号1、配列番号2及び配列番号3から独立して選択される1、2又は3つのCDRを含み、例えばCDR H1は配列番号1であり、CDR H2は配列番号2であり、CDR H3は配列番号3である、抗FcRn抗体又はその結合フラグメントが提供される。
【0017】
別の態様において、本明細書において定義される配列又は配列の組合せ、例えば同種対可変領域を含む、抗体又はフラグメントが提供される。
【0018】
本開示の抗体は、FcRnに対するIgGの結合を遮断し、循環抗体の半減期を減少させることを含む、FcRnの1つ又は複数の生物学的機能を減少させるのに有用であると考えられる。このことは、患者が自己抗体などの抗体をより迅速に除くことを可能にするという点で有益であり得る。
【0019】
重要なことに、本発明の抗体は、同等で高い結合親和性でpH6及びpH7.4の両方にてヒトFcRnに結合できる。従って、有益には、抗体は、エンドソームを有さなくても、FcRnに結合し続け、それにより、IgGに対するFcRn結合の遮断を最大化する(機構の例示については
図10を参照のこと)。
【0020】
一実施形態において、本開示に係る抗体又は結合フラグメントは、例えば配列番号4、配列番号5及び配列番号6から独立して選択される1、2又は3つのCDRを含み、特にCDR L1が配列番号4であり、CDR L2が配列番号5であり、CDR L3が配列番号6である、可変領域を有する軽鎖又は軽鎖フラグメントを含む。
【0021】
一実施形態において、本開示に係る抗体又は結合フラグメントは配列番号1~6のCDR配列を含み、例えばCDR H1は配列番号1であり、CDRE H2は配列番号2であり、CDR H3は配列番号3であり、CDR L1は配列番号4であり、CDR L2は配列番号5であり、CDR L3は配列番号6である。
【0022】
本開示はまた、本明細書に記載されている抗体又はフラグメントをコードする、DNAなどのポリヌクレオチドに拡張する。
【0023】
前記ポリヌクレオチドを含む宿主細胞も提供される。
【0024】
本明細書に提供される抗体又はフラグメントを発現する方法は、抗体又はフラグメントをPEGなどのポリマーにコンジュゲートする方法である。
【0025】
本開示はまた、前記抗体及びフラグメントを含む医薬組成物に関する。
【0026】
一実施形態において、治療有効量の本明細書に記載される抗体、フラグメント又は組成物を投与するステップを含む、処置方法が提供される。
【0027】
本開示はまた、処置、特に免疫学的及び/又は自己免疫障害の処置に使用するための本開示に係る抗体、フラグメント又は組成物に拡張する。
【0028】
それ故、本開示は、抗体、そのフラグメント及びIgGを異化するための身体の生来の機構を促進することによって達成される、病原性IgGを除去するための方法を提供する。
【0029】
本質的に、本開示に係る抗体及びフラグメントは身体内のIgGを再利用する系を遮断する。
【0030】
本発明の治療は、プラスマフェレーシスが治療又はIVIg治療であり、それが患者に有益である、特定の疾患のための置き換え又は補足を提供する可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1A】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1B】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1C】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1D】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1E】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1F】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1G】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1H】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1I】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1J】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1K】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1L】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1M】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1N】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1P】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1Q】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1R】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1S】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1T】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1U】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1V】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1W】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1X】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1Y】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1Z】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1AA】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1BB】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1CC】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1DD】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1EE】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図1FF】特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図2A】特定の配列のアラインメントを示す図である。
【
図2B】特定の配列のアラインメントを示す図である。
【
図3A】本開示に係るFab’フラグメント及びそのPEG化型に対するヒトMDCK II上での結合の比較を示す図である。
【
図3B】本開示に係るFab’フラグメント及びそのPEG化型に対するヒトMDCK II上での結合の比較を示す図である。
【
図4】MDCK II細胞上でIgG再利用を阻害する本開示に係るFab’フラグメント及びそのPEG化型を示す図である。
【
図5】本開示に係るPEG化Fab’フラグメントが、MDCK II細胞において頂部から基底外側のIgG経細胞輸送(trancytosis)を阻害することを示す図である。
【
図6A】本開示に係るFab’フラグメント及びそのPEG化型に対するカニクイザルMDCK IIの結合の比較を示す図である。
【
図6B】本開示に係るFab’フラグメント及びそのPEG化型に対するカニクイザルMDCK IIの結合の比較を示す図である。
【
図7】本開示に係るPEG化Fab’フラグメントが、ヒト及びそのカニクイザル型についてMDCK II細胞上でIgG再利用を阻害することを示す図である。
【
図8】カニクイザルにおける血漿IgGレベルに対する本開示に係る単回投与のPEG化Fab’分子の効果を示す図である。
【
図9】血漿IgGレベルに対する本開示に係る1週間に4回の投与のPEG化Fab’分子の効果を示す図である。
【
図10】遮断タンパク質によって阻害されたFcRnの抗体再利用機能の図表示を示す図である。
【
図11】精製したガンマ1IgG抗体を使用したヒトIgG遮断アッセイに基づいたフローサイトメトリーを示す図である。
【
図12】正常なカニクイザルにおけるFab’PEG単回/間欠IV投与 20mg/Kg 1及び67日 IgG薬物動態を示す図である。
【
図13】正常なカニクイザルにおけるFab’PEG:反復IV投与-週に1回の4×20又は100mg/Kg IgG薬物動態を示す図である。
【
図14】正常なカニクイザルにおけるFab’PEG単回/間欠IV投与-20mg/Kg及び100mg/Kg 1及び67日 IgG薬物動態を示す図である。
【
図15】20mg/Kgの1519.g57 Fab’PEGの2回のIV投与後の4匹のカニクイザルにおける血漿IgGレベルを示す図である。
【
図16】3日毎に1回、20mg/Kgの1519.g57 Fab’PEGの10回のIV投与を与えている4匹のカニクイザルにおける血漿IgGレベルを示す図である。
【
図17】カニクイザルにおける内因性血漿IgGに対する1519.g57IgG4Pの2回の30mg/KgのIV投与の効果を示す図である。
【
図18】カニクイザルにおける血漿IgGに対する30mg/Kg、続いて5mg/Kgの1519.g57 IgG4Pの41日投与の効果を示す図である。
【
図19】カニクイザルにおける血漿IgGに対するビヒクルによる毎日投与の結果を示す図である。
【
図20】CA170_01519.g57Fab’PEG又はPBS IVで処置したhFcRnトランスジェニックマウスの血漿中のIV hIgGの増加したクリアランスを示す図である。
【
図21】CA170_01519.g57IgG1又はIgG4又はPBS IVで処置したhFcRnトランスジェニックマウスの血漿中のIV hIgGの増加したクリアランスを示す図である。
【
図22】CA170_01519.g57Fab’-ヒト血清アルブミン又はPBS IVで処置したhFcRnトランスジェニックマウスの血漿中のIV hIgGの増加したクリアランスを示す図である。
【
図23】CA170_01519.g57FabFv又はPBS IVで処置したhFcRnトランスジェニックマウスの血漿中のIV hIgGの増加したクリアランスを示す図である。
【
図24】CA170_01519.g57Fab又はFab’PEG又はPBS IVで処置したhFcRnトランスジェニックマウスの血漿中のIV hIgGの増加したクリアランスを示す図である。
【
図25】Fab-dsFvと称される、本発明の二重特異性抗体融合タンパク質を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書において利用されるFcRnとは、新生児Fc受容体としても知られている、ヒトIgG受容体アルファ鎖の間の非共有結合複合体を指し、そのアミノ酸配列は、β2ミクログロブリン(β2M)と一緒に番号P55899の下でUniProtにあり、そのアミノ酸配列は番号P61769の下でUniProtにある。
【0033】
本明細書において利用される抗体分子は、抗体又はその結合フラグメントを指す。
【0034】
本明細書において使用される「抗体」という用語は、概して、インタクトな(全)抗体、すなわち2本の重鎖及び2本の軽鎖の要素を含む抗体に関する。抗体は、例えばWO2007/024715に開示されている分子DVD-Ig又はWO2011/030107に記載されているいわゆる(FabFv)2Fcのように更なる結合ドメインを更に含んでもよい。このように本明細書に利用される抗体は、二、三又は四価完全長抗体を含む。
【0035】
抗体の結合フラグメントには、単鎖抗体(すなわち、完全長重鎖及び軽鎖)、Fab、修飾Fab、Fab’、修飾Fab’、F(ab’)
2、Fv、Fab-Fv、Fab-dsFv、単一ドメイン抗体(例えばVH又はVL又はVHH)、scFv、二、三又は四価抗体、Bis-scFv、ダイアボディ、トリボディ、トリアボディ、テトラボディ及び上記のいずれかのエピトープ結合フラグメントが含まれる(例えば、Holliger及びHudson、2005、Nature Biotech.23(9):1126-1136;Adair及びLawson、2005、Drug Design Reviews-Online 2(3)、209-217を参照のこと)。これらの抗体フラグメントを創出し、製造する方法は当該分野において周知である(例えばVermaら、1998、Journal of Immunological Methods、216、165-181を参照のこと)。Fab-FvフォーマットはWO2009/040562において最初に開示されており、そのジスルフィド安定化型、Fab-dsFvはWO2010/035012に最初に開示されており、本明細書の
図25も参照されたい。本発明に使用するための他の抗体フラグメントには、国際特許出願WO2005/003169、WO2005/003170及びWO2005/003171に記載されているFab及びFab’フラグメントが含まれる。多価抗体は複数の特異性、例えば二重特異性を含んでもよいか、又は単一特異性であってもよい(例えばWO92/22583及びWO05/113605を参照のこと)。後者の1つのこのような例は、WO92/22583に記載されているTri-Fab(又はTFM)である。
【0036】
典型的なFab’分子は重鎖及び軽鎖対を含み、該重鎖は可変領域VH、定常ドメインCHl及び天然又は修飾ヒンジ領域を含み、該軽鎖は可変領域VL及び定常ドメインCLを含む。
【0037】
一実施形態において、例えば二量化がヒンジを介してであり得る、F(ab’)2を創出するための本開示に係るFab’の二量体が提供される。
【0038】
一実施形態において、抗体又はその結合フラグメントは結合ドメインを含む。結合ドメインは概して、重鎖から3個及び軽鎖から3個の6個のCDRを含む。一実施形態において、CDRはフレームワーク内にあり、可変領域を一緒に形成する。それ故、一実施形態において、抗体又は結合フラグメントは軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含む抗原に特異的な結合ドメインを含む。
【0039】
1つ又は複数(例えば1、2、3又は4つ)のアミノ酸の置換、付加及び/又は欠失が、FcRnに結合する抗体の能力を顕著に変化させずに本発明によって提供されるCDR又は他の配列(例えば可変ドメイン)に対してなされてもよいことは理解される。任意のアミノ酸の置換、付加及び/又は欠失の効果は、当業者により、例えばFcRnを決定するために本明細書、特に例に記載されている方法を使用することによって容易に試験され得る。
【0040】
1つ又は複数(例えば1、2、3又は4つ)のアミノ酸の置換、付加及び/又は欠失は、本発明によって提供される抗体又はフラグメントに利用されるフレームワーク領域に対してなされてもよく、FcRnに対する結合親和性が保持されるか、又は増加する。
【0041】
抗体可変ドメイン内の残基は、Kabatらによって考案されているシステムに従って慣例的に番号付けされる。このシステムは、Kabatら、1987、免疫学的対象のタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、US Department of Health and Human Services、NIH、USA(本明細書以下において「Kabatら(上記)」)に記載されている。他に示されている場合を除いて、この番号付けシステムが本明細書に使用される。
【0042】
Kabat残基の指定はアミノ酸残基の線形番号付けと常に直接的に対応するわけではない。実際の線形アミノ酸配列は、基礎可変ドメイン構造のフレームワーク又は相補性決定領域(CDR)であるかに関わらず、構造構成成分の短縮又は構造構成成分内への挿入に対応する厳格なKabat番号付けにおけるよりも少ない又は追加のアミノ酸を含んでもよい。残基の正確なKabat番号付けは、抗体の配列と「標準的な」Kabat番号付け配列との相同性の残基のアラインメントによって所与の抗体について決定され得る。
【0043】
重鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムに従って残基31~35(CDR-H1)、残基50~65(CDR-H2)及び残基95~102(CDR-H3)に位置する。しかしながら、Chothia(Chothia,C.及びLesk,A.M.J.Mol.Biol.、196、901-917(1987))に従って、CDR-H1に等価なループは残基26から残基32まで伸長する。それ故、他に示されない限り、本明細書において利用される「CDR-H1」は、Kabat番号付けシステムとChothiaのトポロジカルループ定義との組合せによって記載されている、残基26から35を指すことを意図する。
【0044】
軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムに従って残基24~34(CDR-L1)、残基50~56(CDR-L2)及び残基89~97(CDR-L3)に位置する。
【0045】
本開示の抗体及びフラグメントはFcRnを遮断するので、IgGの再循環においてそのFcRnが機能することを防ぐ。本明細書に利用される遮断とは、受容体を閉塞することなどの物理的に遮断することを指すが、また、抗体又はフラグメントが、例えば立体構造変化の原因となるエピトープに結合することも含み、このことは受容体に対して天然リガンドがもはや結合しないことを意味する。本発明の抗体分子はFcRnに結合するので、IgG定常領域に対するFcRn結合を低下させるか、又は防止(例えば阻害)する。
【0046】
一実施形態において、抗体又はそのフラグメントはIgGに対して競合的にFcRnに結合する。
【0047】
一例において、抗体又はその結合フラグメントはヒトIgGに対するヒトFcRn結合の競合的阻害剤として機能する。一例において、抗体又はその結合フラグメントはFcRn上のIgG結合部位に結合する。一例において、抗体又はその結合フラグメントはβ2Mに結合しない。
【0048】
本開示に使用するための抗体は当該分野において公知の任意の適切な方法を使用して得られ得る。融合タンパク質、細胞(組換え又は天然)を発現するポリペプチド(活性化T細胞など)を含むFcRnポリペプチド/タンパク質は、FcRnを特異的に認識する抗体を作製するために使用され得る。ポリペプチドは、「成熟」ポリペプチド又はその生物学的に活性なフラグメント若しくは誘導体であってもよい。ヒトタンパク質は、番号P55899の下でSwiss-Protに登録されている。ヒトFcRnアルファ鎖の細胞外ドメインは配列番号94に提供される。β2Mの配列は配列番号95に提供される。
【0049】
一実施形態において、抗原は細胞の表面上にFcRnを提示するように操作されるFcRnの変異型であるので、FcRnが細胞内に内在化する動的処理はほとんど又は全く存在せず、例えば、このことは、Oberら 2001 Int.Immunol.13、1551-1559に記載されているようにジロイシンがジアラニンに変異される、FcRnアルファ鎖の細胞質尾部における変異を起こすことによって達成され得る。
【0050】
宿主を免疫化するために使用するためのポリペプチドは、発現系を含む、遺伝的に操作される宿主細胞から当該分野において周知のプロセスによって調製され得るか、又はそれらは天然の生物学的起源から回収され得る。本出願において、「ポリペプチド」という用語は、ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を含む。これらは他に特定されない限り互換的に使用される。FcRnポリペプチドは、一部の場合、例えば親和性タグ又は類似物に融合される融合タンパク質などのより大きなタンパク質の部分であってもよい。
【0051】
動物の免疫化が必要な場合、FcRnポリペプチドに対して生成される抗体は、周知及び慣用のプロトコルを使用して、ポリペプチドを動物、好ましくは非ヒト動物に投与することによって得られ得る。例えば、実験免疫学のハンドブック(Handbook of Experimental Immunology)、D.M.Weir(ed.)、Vol4、Blackwell Scientific Publishers、Oxford、England、1986)を参照のこと。ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ウシ、ラクダ又はブタなどの多くの温血動物が免疫化され得る。しかしながら、マウス、ウサギ、ブタ及びラットが一般に最も好適である。
【0052】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術(Kohler & Milstein、1975、Nature、256:495-497)、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら、1983、Immunology Today、4:72)及びEBV-ハイブリドーマ技術(Coleら、モノクローナル抗体及び癌治療(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)、pp77-96、Alan R Liss,Inc.、1985)などの当該分野において公知の任意の方法によって調製され得る。
【0053】
本発明に使用するための抗体はまた、例えば、Babcook,Jら、1996、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(15):7843-78481、WO92/02551、WO2004/051268及び国際特許出願番号WO2004/106377に記載されている方法によって特異的抗体を作製するために選択される単一のリンパ球から生成された免疫グロブリン可変領域cDNAをクローニングし、発現することによって単一のリンパ球抗体方法を使用して生成され得る。
【0054】
抗体についてのスクリーニングは、ヒトFcRnに対する結合を測定するためのアッセイ及び/又は受容体に対するIgG結合を遮断する能力を測定するためのアッセイを使用して実施され得る。結合アッセイの例は、特に、プレート上に固定化される、ヒトFcRn及びヒトFcの融合タンパク質を使用し、融合タンパク質に結合した抗FcRn抗体を検出するために二次抗体を利用する、ELISAである。好適なアンタゴニスト及び遮断アッセイの例は本明細書の例に記載されている。
【0055】
ヒト化抗体(CDR移植抗体を含む)は、非ヒト種由来の1つ又は複数の相補性決定領域(CDR)及びヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する抗体分子である(例えば、US5,585,089、WO91/09967を参照のこと)。全CDRではなくCDRの特異性決定残基を転移させることだけ必要であり得ることは理解されるであろう(例えば、Kashmiriら、2005、Methods、36、25-34を参照のこと)。ヒト化抗体は、任意選択に、CDRが誘導される非ヒト種由来の1つ又は複数のフレームワーク残基を更に含んでもよい。後者はしばしばドナー残基と称される。
【0056】
本明細書に利用される特異性とは、特異的である抗原のみを認識する抗体又は非特異的である抗原に対する結合と比較して特異的である抗原に対して顕著に高い結合親和性、例えば少なくとも5、6、7、8、9、10倍高い結合親和性を有する抗体を指すことを意図する。結合親和性は本明細書以下に記載されているBIAcoreなどの技術によって測定され得る。一例において、本発明の抗体はβ2ミクログロブリン(β2M)に結合しない。一例において、本発明の抗体はカニクイザルFcRnに結合する。一例において、本発明の抗体はラット又はマウスFcRnに結合しない。
【0057】
本開示に係る特定の抗体のアミノ酸配列及びポリヌクレオチド配列は図面に提供される。
【0058】
一実施形態において、本開示に係る抗体又はフラグメントはヒト化されている。
【0059】
本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体分子」という用語は、重鎖及び/又は軽鎖が、アクセプター抗体(例えばヒト抗体)の重鎖及び/又は軽鎖可変領域フレームワーク内にグラフトされたドナー抗体(例えばマウスモノクローナル抗体などの非ヒト抗体)由来の1つ又は複数のCDR(所望の場合、1つ又は複数の修飾CDRを含む)を含有する、抗体分子を指す。概説のために、Vaughanら、Nature Biotechnology、16、535-539、1998を参照のこと。一実施形態において、全CDRが転移されるのではなく、本明細書上記のCDRのいずれか1つに由来する特異性決定残基の1つ又は複数のみがヒト抗体フレームワークに転移される(例えば、Kashmiriら、2005、Methods、36、25-34を参照のこと)。一実施形態において、本明細書上記のCDRの1つ又は複数に由来する特異性決定残基のみがヒト抗体フレームワークに転移される。別の実施形態において、本明細書上記のCDRの各々に由来する特異性決定残基のみがヒト抗体フレームワークに転移される。
【0060】
CDR又は特異性決定残基がグラフトされる場合、CDRが誘導されるドナー抗体のクラス/種類に関して、マウス、霊長類及びヒトフレームワーク領域を含む、任意の適切なアクセプター可変領域フレームワーク配列が使用されてもよい。
【0061】
好適には、本発明に係るヒト化抗体は、ヒトアクセプターフレームワーク領域及び本明細書において具体的に提供されるCDRの1つ又は複数を含む可変ドメインを有する。それ故、一実施形態において、可変ドメインがヒトアクセプターフレームワーク領域及び非ヒトドナーCDRを含む、ヒトFcRnに結合するヒト化抗体を遮断することが提供される。
【0062】
本発明に使用され得るヒトフレームワークの例は、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAY及びPOM(Kabatら、上記)である。例えば、KOL及びNEWMが重鎖のために使用されてもよく、REIが軽鎖のために使用されてもよく、EU、LAY及びPOMが重鎖及び軽鎖の両方のために使用されてもよい。或いは、ヒト生殖細胞配列が使用されてもよく、それらは、http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/にて利用可能である。
【0063】
本発明のヒト化抗体において、アクセプター重鎖及び軽鎖は、同じ抗体に由来することを必ずしも必要とせず、所望の場合、異なる鎖に由来するフレームワーク領域を有する複合鎖を含んでもよい。
【0064】
本発明のヒト化抗体の重鎖のための1つのこのような適切なフレームワーク領域は、JH4(配列番号56)と一緒にヒトサブグループVH3配列1-3 3-07に由来する。
【0065】
従って、一例において、CDR-H1について配列番号1に示される配列、CDR-H2について配列番号2に示される配列及びCDRH3について配列番号3に示される配列を含み、重鎖フレームワーク領域がJH4と一緒にヒトサブグループVH3配列1-3 3-07に由来するヒト化抗体が提供される。
【0066】
ヒトJH4の配列は以下の通りである:(YFDY)WGQGTLVTVS(配列番号70)。YFDYモチーフはCDR-H3の一部であり、フレームワーク4の一部ではない(Ravetch,JVら、1981、Cell、27、583-591)。
【0067】
一例において、抗体の重鎖可変ドメインは配列番号29に示される配列を含む。
【0068】
本発明のヒト化抗体の軽鎖についての適切なフレームワーク領域は、JK2(配列番号54)と一緒にヒト生殖細胞サブグループVK1配列2-1-(1)A30に由来する。
【0069】
従って、一例において、CDR-L1について配列番号4に示される配列、CDR-L2について配列番号5に示される配列及びCDRL3について配列番号6に示される配列を含み、軽鎖フレームワーク領域が、JK2と一緒にヒトサブグループVK1配列2-1-(1)A30に由来するヒト化抗体が提供される。
【0070】
JK2配列は以下の通りである:(YT)FGQGTKLEIK(配列番号71)。YTモチーフはCDR-L3の一部であり、フレームワーク4の一部ではない(Hieter,PA.ら、1982、J.Biol.Chem.、257、1516-1522)。
【0071】
一例において、抗体の軽鎖可変ドメインは配列番号15に示される配列を含む。
【0072】
本発明のヒト化抗体において、フレームワーク領域はアクセプター抗体の配列と正確に同じ配列を有することを必要としない。例えば、異常な残基は、アクセプター鎖のクラス又は種類について、より頻繁に存在する残基に変更されてもよい。或いは、アクセプターフレームワーク領域内の選択される残基は、それらがドナー抗体内の同じ位置に見られる残基に対応するように変更されてもよい(Reichmannら、1998、Nature、332、323-324を参照のこと)。このような変更はドナー抗体の親和性を戻すための最低限の必要性にとどめられるべきである。変更する必要があり得るアクセプターフレームワーク領域内の残基を選択するためのプロトコルはWO91/09967に記載されている。
【0073】
それ故、一実施形態において、フレームワーク内の1、2、3、4又は5個の残基は代替のアミノ酸残基と置き換えられる。
【0074】
従って、一例において、重鎖の可変ドメインの少なくとも3、24、76、93及び94位の各々における残基(Kabat番号付け)がドナー残基である、ヒト化抗体が提供される。例えば、配列番号29に示される配列を参照のこと。
【0075】
一実施形態において、重鎖可変ドメインの残基3は代替のアミノ酸、例えばグルタミンと置き換えられる。
【0076】
一実施形態において、重鎖可変ドメインの残基24は代替のアミノ酸、例えばアラニンと置き換えられる。
【0077】
一実施形態において、重鎖可変ドメインの残基76は代替のアミノ酸、例えばアスパラギンと置き換えられる。
【0078】
一実施形態において、重鎖の残基93は代替のアミノ酸、例えばアラニンと置き換えられる。
【0079】
一実施形態において、重鎖の残基94は代替のアミノ酸、例えばアルギニンと置き換えられる。
【0080】
一実施形態において、本開示に係るヒト化重鎖可変領域において、残基3はグルタミンであり、残基24はアラニンであり、残基76はアスパラギンであり、残基93はアラニンであり、残基94はアルギニンである。
【0081】
従って、一例において、軽鎖の可変ドメインの少なくとも36、37及び58位の各々における残基(Kabat番号付け)がドナー残基である、ヒト化抗体が提供される。例えば配列番号15に示される配列を参照のこと。
【0082】
一実施形態において、軽鎖可変ドメインの残基36は、代替のアミノ酸、例えばチロシンと置き換えられる。
【0083】
一実施形態において、軽鎖可変ドメインの残基37は、代替のアミノ酸、例えばグルタミンと置き換えられる。
【0084】
一実施形態において、軽鎖可変ドメインの残基58は、代替のアミノ酸、例えばバリンと置き換えられる。
【0085】
一実施形態において、本開示に係るヒト化重鎖可変領域において、残基36はチロシンであり、残基37はグルタミンであり、残基58はバリンである。
【0086】
一実施形態において、本開示は、本明細書に開示されている配列と80%類似又は同一である、例えば、関連配列、例えば、可変ドメイン配列、CDR配列又はCDRを除く可変ドメイン配列の一部又は全てにわたって85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%類似又は同一である抗体配列を提供する。一実施形態において、関連配列は配列番号15である。一実施形態において、関連配列は配列番号29である。
【0087】
一実施形態において、本発明は、重鎖の可変ドメインが、配列番号29に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の類似性又は同一性を有する配列を含む、重鎖を含むヒトFcRnに結合する抗体分子を提供する。
【0088】
一実施形態において、本発明は、軽鎖の可変ドメインが、配列番号15に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性又は類似性を有する配列を含む、軽鎖を含むヒトFcRnに結合する抗体分子を提供する。
【0089】
一実施形態において、本発明は、抗体が、配列番号29に示される配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の類似又は同一である重鎖可変ドメインを有するが、抗体分子が、CDR-H1について配列番号1に示される配列、CDR-H2について配列番号2に示される配列及びCDR-H3について配列番号3に示される配列を有する、ヒトFcRnに結合する抗体分子を提供する。
【0090】
一実施形態において、本発明は、抗体が、配列番号15に示される配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の類似又は同一である軽鎖可変ドメインを有するが、抗体分子が、CDR-L1について配列番号4に示される配列、CDR-L2について配列番号5に示される配列及びCDR-L3について配列番号6に示される配列を有する、ヒトFcRnに結合する抗体分子を提供する。
【0091】
一実施形態において、本発明は、抗体が、配列番号29に示される配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の類似又は同一である重鎖可変ドメイン及び配列番号15に示される配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%類似又は同一である軽鎖可変ドメインを有するが、抗体分子は、CDR-H1について配列番号1に示される配列、CDR-H2について配列番号2に示される配列、CDR-H3について配列番号3に示される配列、CDR-L1について配列番号4に示される配列、CDR-L2について配列番号5に示される配列及びCDR-L3について配列番号6に示される配列を有する、ヒトFcRnに結合する抗体分子を提供する。
【0092】
本明細書で使用される「同一性」とは、並べられた配列における任意の特定の位置にて、アミノ酸残基が配列間で同一であることを示す。本明細書で使用される「類似性」とは、並べられた配列における任意の特定の位置にて、アミノ酸残基が配列間で類似の種類であることを示す。例えば、ロイシンはイソロイシン又はバリンと置換されてもよい。多くの場合、互いに置換され得る他のアミノ酸には、限定されないが、以下が含まれる:
- フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン(芳香族側鎖を有するアミノ酸)、
- リシン、アルギニン及びヒスチジン(塩基性側鎖を有するアミノ酸)、
- アスパラギン酸及びグルタミン酸(酸性側鎖を有するアミノ酸)、
- アスパラギン及びグルタミン(アミド側鎖を有するアミノ酸)、並びに
- システイン及びメチオニン(硫黄含有側鎖を有するアミノ酸)。同一性及び類似性の程度は容易に計算され得る(分子計算生物学(Computational Molecular Biology)、Lesk,A.M.、ed.、Oxford University Press、New York、1988;バイオコンピューティング.インフォマティクス及びゲノムプロジェクト(Biocomputing.Informatics and Genome Projects)、Smith,D.W.、ed.、Academic Press、New York、1993;配列データのコンピュータ解析(Computer Analysis of Sequence Data)、Part 1、Griffin,A.M.、及びGriffin,H.G.、eds.、Humana Press、New Jersey、1994;分子生物学における配列解析(Sequence Analysis in Molecular Biology)、von Heinje,G.、Academic Press、1987、配列解析プライマー(Sequence Analysis Primer)、Gribskov,M.及びDevereux,J.、eds.、M Stockton Press、New York、1991、NCBIから入手可能なBLAST(商標)ソフトウェア(the BLASTTM software available from NCBI)(Altschul,S.F.ら、1990、J.Mol.Biol.215:403-410;Gish,W. & States、D.J.1993、Nature Genet.3:266-272.Madden,T.L.ら、1996、Meth.Enzymol.266:131-141;Altschul,S.F.ら、1997、Nucleic Acids Res.25:3389-3402;Zhang、J. & Madden、T.L. 1997、Genome Res.7:649-656)。
【0093】
本発明の抗体分子は、完全長重鎖及び軽鎖又はそのフラグメントを有する完全抗体分子を含んでもよく、限定されないが、Fab、修飾Fab、Fab’、修飾Fab’、F(ab’)2、Fv、単一ドメイン抗体(例えばVH又はVL又はVHH)、scFv、二、三又は四価抗体、Bis-scFv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ及び上記のいずれかのエピトープ結合フラグメントであってもよい(例えば、Holliger及びHudson、2005、Nature Biotech.23(9):1126-1136;Adair及びLawson、2005、Drug Design Reviews-Online 2(3)、209-217を参照のこと)。これらの抗体フラグメントを創出し、製造する方法は、当該技術分野において周知である(例えば、Vermaら、1998、Journal of Immunological Methods、216、165-181を参照のこと)。本発明に使用するための他の抗体フラグメントは、国際特許出願WO2005/003169、WO2005/003170及びWO2005/003171に記載されているFab及びFab’フラグメントを含む。多価抗体は、複数の特異性、例えば二重特異性を含んでもよいか、又は単一特異性であってもよい(例えば、WO92/22853、WO05/113605、WO2009/040562及びWO2010/035012を参照のこと)。
【0094】
一実施形態において、本開示の抗体分子は、例えば軽鎖及び重鎖のそれぞれについて配列番号15及び29に示される可変領域を含む抗体Fab’フラグメントである。一実施形態において、抗体分子は、配列番号22に示される配列を含む軽鎖及び配列番号36に示される配列を含む重鎖を有する。
【0095】
一実施形態において、本開示の抗体分子は、例えば軽鎖及び重鎖のそれぞれについて配列番号15及び29に示される可変領域を含む完全長IgG1抗体である。一実施形態において、抗体分子は、配列番号22に示される配列を含む軽鎖及び配列番号72に示される配列を含む重鎖を有する。
【0096】
一実施形態において、本開示の抗体分子は、例えば軽鎖及び重鎖のそれぞれについて配列番号15及び29に示される可変領域を含む完全長IgG4フォーマットである。一実施形態において、抗体分子は、配列番号22に示される配列を含む軽鎖及び配列番号87に示される配列を含む重鎖を有する。
【0097】
一実施形態において、本開示の抗体分子は、例えば軽鎖及び重鎖のそれぞれについて配列番号15及び29に示される可変領域を含む完全長IgG4Pフォーマットである。一実施形態において、抗体分子は、配列番号22に示される配列を含む軽鎖及び配列番号43に示される配列を含む重鎖を有する。
【0098】
本明細書で利用されるIgG4Pは、アミノ酸241がプロリンで置き換えられる野生型IgG4アイソタイプの変異であり、例えば、Angalら、Molecular Immunology、1993、30(1)、105-108に記載されているように241位におけるセリンがプロリンに変化している場所を参照のこと。
【0099】
一実施形態において、本開示に係る抗体は、例えば、WO2009/040562、WO2010035012、WO2011/030107、WO2011/061492及びWO2011/086091(これらの全ては本明細書に参照により組み込まれる)に記載されているように、免疫グロブリン部分、例えばFab又はFab’フラグメントを含むFcRn結合抗体融合タンパク質、及びそれらに直接又は間接的に連結された1つ又は2つの単一ドメイン抗体(dAb)として提供される。
【0100】
一実施形態において、融合タンパク質は、例えばジスルフィド結合によって任意選択に連結された可変重(VH)及び可変軽(VL)対として2つのドメイン抗体を含む。
【0101】
一実施形態において、融合タンパク質のFab又はFab’エレメントは、単一ドメイン抗体(単数又は複数)と同じ又は類似の特異性を有する。一実施形態において、Fab又はFab’は、単一ドメイン抗体(単数又は複数)と異なる特異性を有する。すなわち、融合タンパク質は多価である。一実施形態において、本発明に係る多価融合タンパク質はアルブミン結合部位を有し、例えばその中のVH/VL対はアルブミン結合部位を提供する。1つのこのような実施形態において、重鎖は配列番号50に示される配列を含み、軽鎖は配列番号46又は配列番号78に示される配列を含む。このFab-dsFvフォーマットは本明細書において
図25に示される。
【0102】
一実施形態において、本開示に係るFab又はFab’はPEG分子又はヒト血清アルブミンにコンジュゲートされている。
【0103】
CA170_01519g57及び1519及び1519.g57は、本明細書において互換的に利用され、多くの異なるフォーマットで使用され得る抗体可変領域の特異的対を指すために使用される。これらの可変領域は、配列番号29に示される重鎖配列及び配列番号15に示される軽鎖配列である(
図1)。
【0104】
本発明の抗体分子の定常領域ドメインは、存在する場合、抗体分子の提案される機能、特に必要とされ得るエフェクター機能を考慮して選択されてもよい。例えば、定常領域ドメインは、ヒトIgA、IgD、IgE、IgG又はIgMドメインであってもよい。特に、抗体分子が治療的使用を意図し、抗体エフェクター機能が必要とされる場合、特にIgG1及びIgG3アイソタイプのヒトIgG定常領域ドメインが使用されてもよい。或いは、抗体分子が治療目的を意図し、抗体エフェクター機能が必要とされない場合、IgG2及びIgG4アイソタイプが使用されてもよい。これらの定常領域ドメインの配列バリアントも使用されてもよいことが理解されるであろう。例えば、Angalら、Molecular Immunology、1993、30(1)、105-108に記載されているように、241位におけるセリンがプロリンに変化されているIgG4分子が使用されてもよい。また、抗体は様々な翻訳後修飾を受けてもよいことは当業者により理解されるであろう。これらの修飾の種類及び程度は、多くの場合、抗体を発現するために使用される宿主細胞系及び培養条件に依存する。このような修飾は、グリコシル化の変化、メチオニン酸化、ジケトピペラジン形成、アスパラギン酸異性化及びアスパラギン脱アミドを含んでもよい。頻繁な修飾は、(Harris、RJ.Journal of Chromatography 705:129-134、1995に記載されているように)カルボキシペプチダーゼの作用に起因するカルボキシ末端塩基性残基(リシン又はアルギニンなど)の損失である。従って、抗体重鎖のC末端リシンは存在しなくてもよい。
【0105】
一実施形態において、抗体重鎖はCH1ドメインを含み、抗体軽鎖はCLドメイン、カッパ又はラムダのいずれかを含む。
【0106】
一実施形態において、軽鎖は配列番号22に示される配列を有し、重鎖は配列番号43に示される配列を有する。
【0107】
一実施形態において、軽鎖は配列番号22に示される配列を有し、重鎖は配列番号72に示される配列を有する。
【0108】
一実施形態において、抗体分子由来のC末端アミノ酸は翻訳後修飾の間に切断される。
【0109】
一実施形態において、抗体分子由来のN末端アミノ酸は翻訳後修飾の間に切断される。
【0110】
本発明によって提供される抗体、特に重鎖配列gH20(配列番号29)及び/又は軽鎖配列gL20(配列番号15)を含む抗体が結合しているヒトFcRnの特異的領域又はエピトープも本発明によって提供される。
【0111】
ヒトFcRnポリペプチドのこの特定の領域又はエピトープは、本発明によって提供される抗体のいずれか1つと組み合わせて、当該分野において公知の任意の適切なエピトープマッピング法によって識別され得る。このような方法の例は、抗体によって認識されるエピトープの配列を含有する抗体に特異的に結合できる最小のフラグメントを有する本発明の抗体への結合に関して、FcRnに由来する様々な長さのペプチドをスクリーニングすることを含む。FcRnペプチドは、合成的に又はFcRnポリペプチドのタンパク質分解によって作製され得る。抗体に結合するペプチドは、例えば、質量分光分析によって識別され得る。別の例において、NMR分光法又はX線結晶学が、本発明の抗体が結合しているエピトープを識別するために使用されてもよい。一旦識別されると、本発明の抗体に結合するエピトープフラグメントは、必要とされる場合、同じエピトープに結合する更なる抗体を得るための免疫原として使用されてもよい。
【0112】
一実施形態において、本開示の抗体は、以下に示されているようなヒトFcRnアルファ鎖細胞外配列に結合する:
【化1】
【0113】
下線の残基は、ヒトFcRnとヒトIgGのFc領域との相互作用に重要であることが知られているものであり、太字で強調されているこれらの残基は、FcRnと、重鎖配列gH20(配列番号29)及び軽鎖配列gL20(配列番号15)を含む本開示の1519抗体との相互作用に関与するものである。
【0114】
一例において、本発明は、配列番号94の残基V105、P106、T107、A108及びK109からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸並びに配列番号94のP100、E115、E116、F117、M118、N119、F120、D121、L122、K123、Q124、G128、G129、D130、W131、P132及びE133からなる群から選択される少なくとも1つの残基、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の残基を含むヒトFcRnのエピトープに結合する抗FcRn抗体分子を提供する。
【0115】
一例において、抗体分子のエピトープは、β2Mとの複合体においてFcRnアルファ鎖細胞外配列(配列番号94)を使用してX線結晶学によって決定される。
【0116】
一例において、本発明は、配列番号94の残基V105、P106、T107、A108及びK109からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸並びに配列番号94のE115、E116、F117、M118、N119、F120、D121、L122、K123及びQ124からなる群から選択される少なくとも1つの残基、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の残基を含む、ヒトFcRnのエピトープに結合する抗FcRn抗体分子を提供する。
【0117】
一例において、本発明は、配列番号94の残基V105、P106、T107、A108及びK109からなる群から選択される少なくとも2、3、4又は5個のアミノ酸並びに配列番号94のE115、E116、F117、M118、N119、F120、D121、L122、K123及びQ124からなる群から選択される少なくとも1つの残基を含む、ヒトFcRnのエピトープに結合する抗FcRn抗体分子を提供する。
【0118】
一例において、本発明は、配列番号94の残基V105、P106、T107、A108及びK109からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸並びに配列番号94のP100、E115、E116、F117、M118、N119、F120、D121、L122、K123、Q124、G128、G129、D130、W131、P132及びE133からなる群から選択される少なくとも1つの残基を含む、ヒトFcRnのエピトープに結合する抗FcRn抗体分子を提供する。
【0119】
一例において、本発明は、配列番号94の残基V105、P106、T107、A108及びK109からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸並びに配列番号94のP100、M118、N119、F120、D121、L122、K123、Q124及びG128からなる群から選択される少なくとも1つの残基を含む、ヒトFcRnのエピトープに結合する抗FcRn抗体分子を提供する。
【0120】
一例において、本発明は、配列番号94の残基V105、P106、T107、A108及びK109並びに配列番号94のP100、M118、N119、F120、D121、L122、K123、Q124及びG128からなる群から選択される少なくとも1つの残基を含む、ヒトFcRnのエピトープに結合する抗FcRn抗体分子を提供する。
【0121】
一例において、本発明は、配列番号94の残基V105、P106、T107、A108及びK109並びに配列番号94のP100、E115、E116、F117、M118、N119、F120、D121、L122、K123、Q124、G128、G129、D130、W131、P132及びE133からなる群から選択される少なくとも1つの残基を含む、ヒトFcRnのエピトープに結合する抗FcRn抗体分子を提供する。
【0122】
一例において、本発明は、配列番号94の残基P100、V105、P106、T107、A108及びK109並びに配列番号94のE115、E116、F117、M118、N119、F120、D121、L122、K123、Q124、G128、G129、D130、W131、P132及びE133からなる群から選択される少なくとも1つの残基を含む、ヒトFcRnのエピトープに結合する抗FcRn抗体分子を提供する。
【0123】
一例において、「少なくとも1つの残基」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16個の残基であってもよい。
【0124】
一例において、本発明は、配列番号94の残基100、105~109、115~124及び129~133を含む又はそれらからなる、ヒトFcRnのエピトープに結合する抗FcRn抗体分子を提供する。
【0125】
本発明に係る抗体分子、特に、配列番号29に示される重鎖配列及び配列番号15に示される軽鎖配列を含む抗体分子の結合を交差遮断する抗体は、FcRn活性を遮断するのに同様に有用であり得る。従って、本発明はまた、ヒトFcRnに対する本明細書上記の抗体分子のいずれか1つの結合を交差遮断する、及び/又はこれらの抗体のいずれか1つによってヒトFcRnへの結合を交差遮断される、抗FcRn抗体分子を提供する。一実施形態において、このような抗体は本明細書上記の抗体と同じエピトープに結合する。別の実施形態において、交差遮断中和抗体は、本明細書上記の抗体が結合しているエピトープと隣接及び/又は重複しているエピトープに結合する。
【0126】
交差遮断抗体は、例えば、ヒトFcRnへの交差遮断抗体の結合が本発明の抗体の結合を防ぐ、又はその逆である、競合的ELISA又はBIAcoreアッセイを使用することによって、当該分野における任意の好適な方法を使用して識別され得る。このような交差遮断アッセイは、単離された天然若しくは組換えFcRn又は適切な融合タンパク質/ポリペプチドを使用してもよい。一例において、結合及び交差遮断は組換えヒトFcRn細胞外ドメイン(配列番号94)を使用して測定される。一例において、組換えヒトFcRnアルファ鎖細胞外ドメインは、β2ミクログロブリン(β2M)(配列番号95)との複合体において使用される。
【0127】
一実施形態において、IgGに対するFcRn結合を遮断し、重鎖が配列番号29に示される配列を含み、軽鎖が配列番号15に示される配列を含む、ヒトFcRnへの抗体の結合を交差遮断する抗FcRn抗体分子が提供される。一実施形態において、本発明によって提供される交差遮断抗体は、配列番号29に示される重鎖配列及び配列番号15に示される軽鎖配列を含む抗体の結合を、80%超、例えば85%超、例えば90%超、特に95%超、阻害する。
【0128】
或いは又は更に、本発明のこの態様に係る抗FcRn抗体は、配列番号29に示される重鎖配列及び配列番号15に示される軽鎖配列を含む抗体によってヒトFcRnへの結合を交差遮断され得る。従って、IgGへのFcRn結合を遮断し、配列番号29に示される重鎖配列及び配列番号15に示される軽鎖配列を含む抗体によってヒトFcRnへの結合を交差遮断される抗FcRn抗体分子も提供される。一実施形態において、本発明のこの態様によって提供される抗FcRn抗体は、配列番号29に示される重鎖配列及び配列番号15に示される軽鎖配列を含む抗体によってヒトFcRnへ結合することを、80%超、例えば85%超、例えば90%超、特に95%超、阻害する。
【0129】
一実施形態において、本発明によって提供される交差遮断抗体は完全にヒトである。一実施形態において、本発明によって提供される交差遮断抗体はヒト化されている。一実施形態において、本発明によって提供される交差遮断抗体は、100pM以下のヒトFcRnに対する親和性を有する。一実施形態において、本発明によって提供される交差遮断抗体は、50pM以下のヒトFcRnに対する親和性を有する。親和性は本明細書以下に記載されている方法を使用して測定され得る。
【0130】
抗体又はフラグメントなどの生体分子は酸性及び/又は塩基性官能基を含有するので、分子を正味の正又は負電荷にする。全体の「観察される」電荷の量は、実体の絶対的アミノ酸配列、3D構造における荷電基の局所環境及び分子の環境条件に依存する。等電点(PI)は、特定の分子又はその溶媒接触可能表面が正味の電荷を保有しないpHである。一例において、本発明のFcRn抗体及びフラグメントは適切な等電点を有するように操作されてもよい。これにより、より強力な特性、特に好適な溶解度及び/又は安定化プロファイル及び/又は改良された精製特性を有する抗体及び/又はフラグメントが導かれ得る。
【0131】
それ故、一態様において、本発明は、最初に識別された抗体の等電点と異なる等電点を有するように操作されるヒト化FcRn抗体を提供する。抗体は、例えば、酸性アミノ酸残基を1つ又は複数の塩基性アミノ酸残基と置換することなどのアミノ酸残基を置換することによって操作されてもよい。或いは、塩基性アミノ酸残基が導入されてもよいか、又は酸性アミノ酸残基が除去されてもよい。或いは、分子が許容し難い高pI値を有する場合、酸性残基が、必要な場合、pIを下げるために導入されてもよい。pIを操作する場合、抗体又はフラグメントの所望の活性を保持することに注意が払われなければならないことが重要である。それ故、一実施形態において、操作された抗体又はフラグメントは、「修飾されていない」抗体又はフラグメントと同じ又は実質的に同じ活性を有する。
【0132】
**ExPASY http://www.expasy.ch/tools/pi_tool.html及びhttp://www.iut-arles.up.univ-mrs.fr/w3bb/d_abim/compo-p.htmlなどのプログラムが、抗体又はフラグメントの等電点を予測するために使用されてもよい。
【0133】
本発明の抗体分子は、好適には、特にナノモル範囲で高い結合親和性を有する。親和性は、単離された天然又は組換えFcRn又は好適な融合タンパク質/ポリペプチドを使用して、本明細書の例に記載されているようにBIAcoreを含む、当該分野において公知の任意の適切な方法を使用して測定され得る。一例において、親和性は、本明細書の例に記載されている組換えヒトFcRn細胞外ドメイン(配列番号94)を使用して測定される。一例において、親和性は、β2ミクログロブリン(β2M)(配列番号95)と会合する組換えヒトFcRnアルファ鎖細胞外ドメイン(配列番号94)を使用して測定される。好適には、本発明の抗体分子は、単離されたヒトFcRnに対して約1nM又はそれ未満の結合親和性を有する。一実施形態において、本発明の抗体分子は、約500pM以下の結合親和性(すなわち、より高い親和性)を有する。一実施形態において、本発明の抗体分子は、約250pM以下の結合親和性を有する。一実施形態において、本発明の抗体分子は、約200pM以下の結合親和性を有する。一実施形態において、本発明は、約100pM以下の結合親和性を有する抗FcRn抗体を提供する。一実施形態において、本発明は、約100pM以下の結合親和性を有するヒト化抗FcRn抗体を提供する。一実施形態において、本発明は、50pM以下の結合親和性を有する抗FcRn抗体を提供する。
【0134】
重要なことに、本発明の抗体は、同等の結合親和性でpH6及びpH7.4の両方にてヒトFcRnに結合できる。従って、有益には、抗体は、エンドソームを有さなくても、FcRnに結合し続け、それにより、IgGに対するFcRn結合の遮断を最大化する(機構の例示については
図10を参照のこと)。
【0135】
一実施形態において、本発明は、pH6及びpH7.4にて測定した場合、100pM以下の結合親和性を有する抗FcRn抗体を提供する。
【0136】
本発明の抗体又は結合フラグメントの親和性並びに結合剤(抗体など)が結合を阻害する程度は、従来技術、例えば、Scatchardら(Ann.KY.Acad.Sci.51:660-672(1949))により記載されているものを使用して当業者によって、又はBIAcoreなどのシステムを使用して表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定され得る。表面プラズモン共鳴に関して、標的分子は固相上に固定化され、フローセルと共に流している移動相においてリガンドに曝露される。固定化された標的に結合しているリガンドが存在する場合、局所屈折率が変化し、反射光の強さの変化を検出することによってリアルタイムでモニターされ得る、SPR角の変化が生じる。SPR信号の変化の速度は、結合反応の会合及び解離段階について見かけの速度定数を得るように分析され得る。これらの値の比は見かけの平衡定数(親和性)を与える(例えば、Wolffら、Cancer Res.53:2560-65(1993)を参照のこと)。
【0137】
本発明において、試験抗体分子の親和性は典型的に、以下のようにSPRを使用して決定される。試験抗体分子は固相上で捕捉され、β2Mとの非共有結合複合体におけるヒトFcRnアルファ鎖細胞外ドメインは移動相において捕捉抗体の上を流れ、ヒトFcRnに対する試験抗体分子の親和性が決定される。試験抗体分子は、任意の適切な方法を使用して、例えば、抗Fc又は抗Fab’特異的捕捉剤を使用して固相チップ表面上で捕捉され得る。一例において、親和性がpH6にて決定される。一例において、親和性がpH7.4にて決定される。
【0138】
本発明によって提供される抗体の親和性は、当該分野において公知の任意の好適な方法を使用して変化されてもよいことは理解されるであろう。従って、本発明はまた、FcRnに対して改良された親和性を有する、本発明の抗体分子のバリアントに関する。このようなバリアントは、CDRを変異させること(Yangら、J.Mol.Biol.、254、392-403、1995)、鎖シャッフリング(Marksら、Bio/Technology、10、779-783、1992)、大腸菌(E.coli)の変異誘発系の使用(Lowら、J.Mol.Biol.、250、359-368、1996)、DNAシャッフリング(Pattenら、Curr.Opin.Biotechnol.、8、724-733、1997)、ファージディスプレイ(Thompsonら、J.Mol.Biol.、256、77-88、1996)及びセクシャルPCR(Crameriら、Nature、391、288-291、1998)を含む多くの親和性成熟プロトコルによって得られ得る。Vaughanら(上記)は親和性成熟のこれらの方法を説明している。
【0139】
一実施形態において、本発明の抗体分子はヒトFcRn活性を遮断する。FcRnを遮断する抗体の能力を決定するのに好適なアッセイは本明細書の例に記載されている。抗体が循環IgG分子とのFcRn相互作用を遮断するかどうかを決定するのに好適なアッセイは本明細書の例に記載されている。インビトロで再循環するIgGを遮断する抗体分子の能力を決定するための好適なアッセイは本明細書以下に記載されている。
【0140】
所望の場合、本発明に使用するための抗体は、1つ又は複数のエフェクター分子(単数又は複数)にコンジュゲートされてもよい。エフェクター分子は、単一のエフェクター分子又は2つ以上のこのような分子を含んでもよいので、本発明の抗体に結合できる単一部分を形成するように連結されることは理解されるであろう。エフェクター分子に連結された抗体フラグメントを得ることが望ましい場合、これは、抗体フラグメントが直接的に又はカップリング剤を介してのいずれかでエフェクター分子に連結される、標準的な化学又は組換えDNA手順によって調製され得る。このようなエフェクター分子を抗体にコンジュゲートするための技術は当該分野において周知である(Hellstromら、Controlled Drug Delivery、第2版、Robinsonら、eds、1987、pp.623-53;Thorpeら、1982、Immunol.Rev.、62:119-58及びDubowchikら、1999、Pharmacology and Therapeutics、83、67-123を参照のこと)。特定の化学的手順には、例えば、WO93/06231、WO92/22583、WO89/00195、WO89/01476及びWO03/031581に記載されているものが含まれる。或いは、エフェクター分子がタンパク質又はポリペプチドである場合、例えばWO86/01533及びEP0392745に記載されている組換えDNA手順を使用して連結が達成され得る。
【0141】
本明細書で使用されるエフェクター分子という用語は、例えば、抗腫瘍剤、薬物、毒素、生物学的に活性なタンパク質、例えば酵素、他の抗体又は抗体フラグメント、合成又は天然に存在するポリマー、核酸及びそのフラグメント、例えばDNA、RNA及びそれらのフラグメント、放射性核種、特に放射性ヨウ化物(radioiodide)、放射性同位体、キレート金属、ナノ粒子及び蛍光化合物などのレポーター基又はNMR若しくはESR分光法によって検出され得る化合物を含む。
【0142】
エフェクター分子の例には、細胞毒素又は細胞に有害である(例えば死滅させる)任意の作用物質を含む細胞毒性薬が含まれ得る。例には、コンブレスタチン(combrestatin)、ドラスタチン、エポチロン、スタウロスポリン、マイタンシノイド、スポンギスタチン(spongistatin)、リゾキシン、ハリコンドリン、ロリジン、ヘミアステリン、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン並びにそれらの類似体又は相同体が含まれる。
【0143】
エフェクター分子にはまた、限定されないが、代謝拮抗薬(例えばメトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオテパクロラムブシル(thioepa chlorambucil)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC及びcis-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(以前はダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン(AMC)、カリケアマイシン又はデュオカルマイシン)及び抗有糸分裂剤(例えばビンクリスチン及びビンブラスチン)が含まれる。
【0144】
他のエフェクター分子は、111In及び90Y、Lu177、ビスマス213、カリフォルニウム252、イリジウム192及びタングステン188/レニウム188などのキレート放射性核種又は限定されないが、アルキルホスホコリン、トポイソメラーゼI阻害剤、タキソイド及びスラミンなどの薬物を含んでもよい。
【0145】
他のエフェクター分子は、タンパク質、ペプチド及び酵素を含む。対象の酵素には、限定されないが、タンパク質分解酵素、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼが含まれる。対象のタンパク質、ポリペプチド及びペプチドには、限定されないが、免疫グロブリン、アブリン、リシンA、緑膿菌外毒素又はジフテリア毒素などの毒素、インスリン、腫瘍壊死因子、α-インターフェロン、β-インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子又は組織プラスミノゲン活性化因子などのタンパク質、血栓剤又は血管新生阻害剤、例えばアンギオスタチン若しくはエンドスタチン又はリンホカイン、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、神経成長因子(NGF)若しくは他の成長因子などの生物反応修飾物質及び免疫グロブリンが含まれる。
【0146】
他のエフェクター分子は、例えば診断に有用な検出可能な物質を含んでもよい。検出可能な物質の例には、種々の酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射性核種、陽電子放出金属(陽電子放出断層撮影法における使用のため)、及び非放射性常磁性金属イオンが含まれる。概して、診断として使用するための抗体にコンジュゲートされ得る金属イオンについて米国特許第4,741,900号を参照のこと。好適な酵素には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ又はアセチルコリンエステラーゼが含まれ、好適な補欠分子族には、ストレプトアビジン、アビジン及びビオチンが含まれ、好適な蛍光材料には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル及びフィコエリトリンが含まれ、好適な発光材料には、ルミノールが含まれ、好適な生物発光材料には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンが含まれ、好適な放射性核種には、125I、131I、111In及び99Tcが含まれる。
【0147】
別の例において、エフェクター分子は、インビボで抗体の半減期を増加でき、及び/又は抗体の免疫原性を減少でき、及び/又は上皮バリアにわたって抗体の免疫系への送達を向上できる。この種類の好適なエフェクター分子の例には、WO05/117984に記載されているものなどのポリマー、アルブミン、アルブミン結合タンパク質又はアルブミン結合化合物が含まれる。
【0148】
一実施形態において、FcRnから独立しているエフェクター分子によって提供される半減期が有益である。
【0149】
エフェクター分子がポリマーである場合、それは、概して、合成又は天然に存在するポリマー、例えば任意選択に置換された直鎖若しくは分岐鎖ポリアルキレン、ポリアルケニレン若しくはポリオキシアルキレンポリマー又は分岐若しくは非分岐多糖、例えばホモ-又はヘテロ-多糖であってもよい。
【0150】
上述の合成ポリマーに存在し得る特定の任意選択の置換基には、1つ又は複数のヒドロキシ、メチル又はメトキシ基が含まれる。
【0151】
合成ポリマーの特定の例には、任意選択に置換された直鎖又は分岐鎖ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)ポリ(ビニルアルコール)又はそれらの誘導体、特に、メトキシポリ(エチレングリコール)などの任意選択に置換されたポリ(エチレングリコール)又はそれらの誘導体が含まれる。
【0152】
特定の天然に存在するポリマーには、ラクトース、アミロース、デキストラン、グリコーゲン又はそれらの誘導体が含まれる。
【0153】
一実施形態において、ポリマーは、ヒト血清アルブミン又はそのフラグメントなどのアルブミン又はそのフラグメントである。
【0154】
本明細書で使用される「誘導体」は、反応性誘導体、例えばマレイミドなどのチオール選択的反応基を含むことを意図する。反応基は、直接的に又はリンカーセグメントを介してポリマーに連結され得る。このような基の残基は、一部の場合、抗体フラグメントとポリマーとの間の連結基として製品の一部を形成することは理解されるであろう。
【0155】
ポリマーのサイズは、所望の場合、変化されてもよいが、一般に、500Da~50000Da、例えば5000~40000Da、例えば20000~40000Daの範囲の平均分子量である。ポリマーのサイズは、特に、製品の意図する使用、例えば腫瘍などの特定の組織に局在化する能力又は延長した循環半減期に基づいて選択されてもよい(概説のために、Chapman、2002、Advanced Drug Delivery Reviews、54、531-545を参照のこと)。それ故、例えば、腫瘍の処置に使用するために、例えば、製品が循環したままで、組織に浸透することを意図する場合、例えば、約5000Daの分子量を有する低分子量ポリマーを使用することが有利であり得る。製品が循環中に存在したままである用途に関して、例えば、20000Da~40000Daの範囲の分子量を有する、より高い分子量のポリマーを使用することが有利であり得る。
【0156】
好適なポリマーには、特に、約15000Da~約40000Daの範囲の分子量を有する、ポリ(エチレングリコール)若しくは特に、メトキシポリ(エチレングリコール)などのポリアルキレンポリマー又はそれらの誘導体が含まれる。
【0157】
一例において、本発明に使用するための抗体は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)部分に結合される。1つの特定の例において、抗体は抗体フラグメントであり、PEG分子は、抗体フラグメント内に局在化する任意の利用可能なアミノ酸側鎖又は末端アミノ酸官能基、例えば任意の遊離アミノ、イミノ、チオール、ヒドロキシル又はカルボキシル基を介して結合され得る。このようなアミノ酸は抗体フラグメント内に天然に存在し得るか、又は組換えDNA法を使用してフラグメント内で操作され得る(例えばUS5,219,996、US5,667,425、WO98/25971、WO2008/038024を参照のこと)。一例において、本発明の抗体分子は、修飾が、エフェクター分子の結合を可能にするために、その重鎖の1つ又は複数のアミノ酸のC末端への付加である、修飾されたFabフラグメントである。好適には、更なるアミノ酸は、エフェクター分子が結合され得る1つ又は複数のシステイン残基を含有する修飾されたヒンジ領域を形成する。多部位が2つ以上のPEG分子を結合するために使用されてもよい。
【0158】
好適には、PEG分子は、抗体フラグメントに局在化した少なくとも1つのシステイン残基のチオール基を介して共有結合する。修飾された抗体フラグメントに結合された各々のポリマー分子は、フラグメントに局在化するシステイン残基の硫黄原子に共有結合され得る。共有結合は一般に、ジスルフィド結合又は特に、硫黄-炭素結合である。チオール基が適切に活性化されたエフェクター分子の結合点として使用される場合、例えばマレイミド及びシステイン誘導体などのチオール選択的誘導体が使用されてもよい。活性化ポリマーは上記のポリマー修飾抗体フラグメントの調製における出発材料として使用されてもよい。活性化ポリマーは、α-ハロカルボン酸又はエステル、例えばヨードアセトアミド、イミド、例えばマレイミド、ビニルスルホン又はジスルフィドなどのチオール反応基を含有する任意のポリマーであってもよい。このような出発材料は、(例えば、Nektar、以前はShearwater Polymers Inc.、Huntsville、AL、USAから)商業的に得られてもよいか、又は従来の化学的手順を使用して市販の出発材料から調製されてもよい。特定のPEG分子には、20Kメトキシ-PEG-アミン(Nektar、以前はShearwater、Rapp Polymere、及びSunBioから入手可能)及びM-PEG-SPA(Nektar、以前はShearwaterから入手可能)が含まれる。
【0159】
一実施形態において、抗体は、例えばEP0948544又はEP1090037に開示されている方法に従って、PEG化されている、すなわち、それに共有結合しているPEG(ポリ(エチレングリコール))を有する、修飾されたFabフラグメント、Fab’ フラグメント又はdiFabである[「ポリ(エチレングリコール)化学、バイオ技術及び生体医学応用(Poly(ethyleneglycol) Chemistry, Biotechnical and Biomedical Applications)」、1992、J.Milton Harris (ed)、Plenum Press、New York、「ポリ(エチレングリコール)化学及び生物学的応用(Poly(ethyleneglycol) Chemistry and Biological Applications)」、1997、J.Milton Harris及びS.Zalipsky(eds)、American Chemical Society、Washington DC並びに「生体医科学についてのバイオコンジュゲーションタンパク質カップリング技術(Bioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences)」、1998、M.Aslam及びA.Dent、Grove Publishers、New York;Chapman,A. 2002、Advanced Drug Delivery Reviews 2002、54:531-545も参照のこと]。一例において、PEGはヒンジ領域においてシステインに結合される。一例において、PEG修飾Fabフラグメントは、修飾されたヒンジ領域において単一のチオール基に共有結合したマレイミド基を有する。リシン残基はマレイミド基に共有結合され得、リシン残基上のアミン基の各々は、約20,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)ポリマーに結合され得る。Fabフラグメントに結合したPEGの全分子量は、従って、約40,000Daであり得る。
【0160】
特定のPEG分子には、PEG2MAL40K(Nektar、以前はShearwaterから入手可能)としても知られている、N,N’-ビス(メトキシポリ(エチレングリコール)MW20,000)修飾リシンの2-[3-(N-マレイミド)プロピオンアミド]エチルアミドが含まれる。
【0161】
PEGリンカーの代替源には、GL2-400MA3(以下の構造におけるmは5である)及びGL2-400MA(mは2である)を供給するNOFが含まれ、nは約450である:
【化2】
【0162】
すなわち、各PEGは約20,000Daである。
【0163】
それ故、一実施形態において、PEGは、SUNBRIGHT GL2-400MA3として知られている2,3-ビス(メチルポリオキシエチレン-オキシ)-1-{[3-(6-マレイミド-1-オキソヘキシル)アミノ]プロピルオキシ}ヘキサン(2アーム分岐PEG、-CH2)3NHCO(CH2)5-MAL、Mw40,000である。
【0164】
更に以下の種類の代替のPEGエフェクター分子:
【化3】
がDr Reddy、NOF及びJenkemから入手可能である。
【0165】
一実施形態において、鎖内のアミノ酸226、例えば重鎖のアミノ酸226(連続番号付けにより)、例えば配列番号36のアミノ酸226において又は周囲でシステインアミノ酸残基を介して結合される、PEG化される(例えば本明細書に記載されているPEGを有する)抗体が提供される。
【0166】
一実施形態において、本開示は、1つ又は複数のPEGポリマー、例えば1つ又は2つのポリマー、例えば40kDaポリマー(単数又は複数)を含むFab’PEG分子を提供する。
【0167】
本開示に係るFab’-PEG分子は、それらがFcフラグメントとは独立した半減期を有するという点で特に有益であり得る。一例において、本発明は、治療有効量の抗FcRn抗体又はその結合フラグメントを投与するステップを含む、ヒトFcRnを遮断することによって改善される疾患を処置する方法であって、該抗体又はその結合フラグメントが、FcRnに対するFc結合とは独立した半減期を有する、方法を提供する。
【0168】
一実施形態において、PEG分子、デンプン分子又はアルブミン分子などのポリマーにコンジュゲートされたFab’が提供される。
【0169】
一実施形態において、PEG分子、デンプン分子又はアルブミン分子などのポリマーにコンジュゲートされたscFvが提供される。
【0170】
一実施形態において、抗体又はフラグメントは、例えば半減期を増加させるためにデンプン分子にコンジュゲートされている。デンプンをタンパク質にコンジュゲートする方法は、本明細書に参照により組み込まれているUS8,017,739に記載されている。
【0171】
一実施形態において、
・血漿IgG濃度の70%減少を引き起こし、
・血漿アルブミン濃度の20%以下の減少を伴い、及び/又は
・低い血漿IgG濃度の長期間の維持を達成するために反復投与の可能性を有する、
抗FcRn結合分子が提供される。
【0172】
本発明はまた、本発明の抗体分子の重鎖及び/又は軽鎖(単数又は複数)をコードする単離されたDNA配列を提供する。好適には、DNA配列は本発明の抗体分子の重鎖又は軽鎖をコードする。本発明のDNA配列は、例えば、化学的処理によって作製される合成DNA、cDNA、ゲノムDNA又はそれらの任意の組合せを含んでもよい。
【0173】
本発明の抗体分子をコードするDNA配列は当業者に周知の方法により得られ得る。例えば、抗体重鎖及び軽鎖の一部又は全てをコードするDNA配列は、所望の場合、決定されたDNA配列から、又は対応するアミノ酸配列に基づいて合成され得る。
【0174】
アクセプターフレームワーク配列をコードするDNAは、当業者に広範に利用可能であり、それらの既知のアミノ酸配列に基づいて容易に合成され得る。
【0175】
分子生物学の標準技術が、本発明の抗体分子をコードするDNA配列を調製するために使用されてもよい。所望のDNA配列はオリゴヌクレオチド合成技術を使用して完全に又は部分的に合成されてもよい。部位特異的変異誘発法及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術が必要に応じて使用されてもよい。
【0176】
好適なDNA配列の例は本明細書に提供される。
【0177】
1519軽鎖可変領域をコードする好適なDNA配列の例は、配列番号16、配列番号17及び配列番号90に提供される。1519重鎖可変領域をコードする好適なDNA配列の例は、配列番号30、配列番号31及び配列番号92に提供される。
【0178】
1519軽鎖(可変及び定常)をコードする好適なDNA配列の例は、配列番号23、配列番号75及び配列番号91に提供される。
【0179】
1519重鎖(可変及び定常、フォーマットに依存する)をコードする好適なDNA配列の例は、配列番号37、38及び76(Fab’)、配列番号72又は85(IgG1)、配列番号44又は93(IgG4P)及び配列番号88(IgG4)に提供される。
【0180】
従って、一例において、本発明は、配列番号37に示される配列を含む、本発明の抗体Fab’フラグメントの重鎖をコードする単離されたDNA配列を提供する。配列番号23に示される配列を含む、本発明の抗体Fab’フラグメントの軽鎖をコードする単離されたDNA配列も提供される。
【0181】
一例において、本発明は、本発明のIgG4(P)抗体の重鎖及び軽鎖をコードする単離されたDNA配列であって、重鎖をコードするDNAが配列番号44又は配列番号93に示される配列を含み、軽鎖をコードするDNAが配列番号75又は配列番号91に示される配列を含む、DNA配列を提供する。
【0182】
一例において、本発明は、本発明のFab-dsFv抗体の重鎖及び軽鎖をコードする単離されたDNA配列であって、重鎖をコードするDNAが配列番号51又は配列番号80に示される配列を含み、軽鎖をコードするDNAが配列番号47又は配列番号79に示される配列を含む、DNA配列を提供する。
【0183】
本発明はまた、本発明の1つ又は複数のDNA配列を含む、クローニング又は発現ベクターに関する。従って、本発明の抗体をコードする1つ又は複数のDNA配列を含む、クローニング又は発現ベクターが提供される。好適には、クローニング又は発現ベクターは、本発明の抗体分子の軽鎖及び重鎖のそれぞれをコードする2つのDNA配列並びに好適なシグナル配列を含む。一例において、ベクターは重鎖と軽鎖との間に遺伝子間配列を含む(WO03/048208を参照のこと)。
【0184】
ベクターが構築され得る一般的な方法、トランスフェクション法及び培養法は当業者に周知である。これに関して、参照が、「分子生物学における現在のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」、1999、F.M.Ausubel(ed)、Wiley Interscience、New York及びCold Spring Harbor Publishingによって作成されたManiatis Manualに対してなされる。
【0185】
本発明の抗体をコードする1つ又は複数のDNA配列を含む1つ又は複数のクローニング又は発現ベクターを含む宿主細胞も提供される。任意の好適な宿主細胞/ベクター系が、本発明の抗体分子をコードするDNA配列の発現のために使用されてもよい。細菌、例えば大腸菌及び他の微生物系が使用されてもよいか、又は真核生物、例えば哺乳動物、宿主細胞発現系もまた、使用されてもよい。好適な哺乳動物宿主細胞には、CHO、骨髄腫又はハイブリドーマ細胞が含まれる。
【0186】
本発明に使用するための好適な種類のチャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)には、CHO-DG44細胞及びCHO-DXB11細胞などのdhfr-CHO細胞を含むCHO及びCHO-K1細胞が含まれ得、それは、DHFR選択可能マーカー又はグルタミン合成酵素選択可能マーカーと共に使用され得るCHOK1-SV細胞と共に使用されてもよい。抗体の発現に使用する他の細胞種類には、リンパ球細胞系、例えばNSO骨髄腫細胞及びSP2細胞、COS細胞が含まれる。
【0187】
本発明はまた、本発明の抗体分子をコードするDNAからタンパク質の発現を導くのに好適な条件下で本発明のベクターを含有する宿主細胞を培養するステップ、及び抗体分子を単離するステップを含む、本発明に係る抗体分子を作製するプロセスを提供する。
【0188】
抗体分子は重鎖又は軽鎖ポリペプチドのみを含んでもよく、この場合、重鎖又は軽鎖ポリペプチドのみをコードする配列が、宿主細胞をトランスフェクトするために使用するために必要とされる。重鎖及び軽鎖の両方を含む産物の作製に関して、細胞系が2つのベクターでトランスフェクトされてもよく、第1のベクターは軽鎖ポリペプチドをコードし、第2のベクターは重鎖ポリペプチドをコードする。或いは、単一ベクターが使用されてもよく、該ベクターは軽鎖及び重鎖ポリペプチドをコードする配列を含む。
【0189】
本開示に係る抗体及びフラグメントは宿主細胞から良好なレベルで発現される。それ故、抗体及び/又はフラグメントの特性は商業的プロセスにつながる。
【0190】
それ故、宿主細胞を培養し、抗体又はそのフラグメントを発現し、該抗体又はそのフラグメントを単離し、任意選択にそれらを精製して、単離された抗体又はフラグメントを提供するプロセスが提供される。一実施形態において、このプロセスは、エフェクター分子を単離された抗体又はフラグメントにコンジュゲートするステップ、例えば特に本明細書に記載されているPEGポリマーにコンジュゲートするステップを更に含む。
【0191】
一実施形態において、不純物がカラム上に保持され、抗体が溶出されるように、非結合様式において陰イオン交換クロマトグラフィーを実施するステップを含む、抗体(特に本発明に係る抗体又はフラグメント)を精製するプロセスが提供される。
【0192】
一実施形態において、精製は、FcRnカラム上での親和性捕捉を利用する。
【0193】
一実施形態において、精製は、シバクロンブルー又はアルブミン融合若しくはコンジュゲート分子を精製するための類似物を利用する。
【0194】
プロセスに使用するための好適なイオン交換樹脂には、Q.FF樹脂(GE-Healthcareによって供給される)が含まれる。このステップは約pH8で実施され得る。
【0195】
このプロセスは、例えば4.5などの約4~5のpHにて実施される、陽イオン交換クロマトグラフィーを利用する最初の捕捉ステップを更に含んでもよい。陽イオン交換クロマトグラフィーは、例えば、CaptoS樹脂又はSPセファロースFF(GE-Healthcareによって供給される)などの樹脂を利用してもよい。次いで抗体又はフラグメントは、例えば200mMの濃度にて塩化ナトリウムなどのイオン性塩溶液を利用する樹脂から溶出され得る。
【0196】
それ故、クロマトグラフステップ(単数又は複数)は、必要に応じて、1つ又は複数の洗浄ステップを含んでもよい。
【0197】
精製プロセスもまた、透析濾過ステップなどの1つ又は複数の濾過ステップを含んでもよい。
【0198】
それ故、一実施形態において、精製された抗FcRn抗体又はフラグメント、例えば、特に、エンドトキシン及び/又は宿主細胞タンパク質若しくはDNAを含まず又は実質的に含まずに、実質的に精製された形態で、ヒト化抗体又はフラグメント、特に本発明に係る抗体又はフラグメントが提供される。
【0199】
上記で使用される精製形態は、少なくとも90%の純度、例えば91、92、93、94、95、96、97、98、99%w/w又はそれ以上の純度を指すことを意図する。
【0200】
エンドトキシンを実質的に含まないとは、概して、1EU/mg抗体産物又はそれ未満、例えば0.5又は0.1EU/mg産物のエンドトキシン含有量を指すことを意図する。
【0201】
宿主細胞タンパク質又はDNAを実質的に含まないとは、概して、400μg/mgの抗体産物又はそれ未満、例えば100μg/mg又はそれ未満、必要に応じて特に20μg/mgの宿主細胞タンパク質及び/又はDNA含有量を指すことを意図する。
【0202】
本発明の抗体分子はまた、診断、例えばインビボ診断及びFcRnに関与する疾患状態の画像化に使用されてもよい。
【0203】
本発明の抗体は病態の処置及び/又は予防に有用であるので、本発明はまた、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体の1つ又は複数と組み合わせて本発明の抗体分子を含む医薬又は診断組成物を提供する。従って、医薬を製造するための本発明の抗体分子の使用が提供される。組成物は、普通、薬学的に許容される担体を通常含む無菌の医薬組成物の一部として供給される。本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤を更に含んでもよい。
【0204】
本発明はまた、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体の1つ又は複数と一緒に本発明の抗体分子を添加し、混合するステップを含む、医薬又は診断組成物を調製するプロセスを提供する。
【0205】
抗体分子は、医薬若しくは診断組成物中の唯一の活性成分であってもよいか、又はステロイド若しくは他の薬物分子、特に半減期がFcRn結合と独立している薬物分子などの他の抗体成分若しくは非抗体成分を含む他の活性成分を伴ってもよい。
【0206】
医薬組成物は、好適には、治療有効量の本発明の抗体を含む。本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、対象とする疾患若しくは状態を処置、改善若しくは防止するため、又は検出可能な治療若しくは防止効果を示すために必要とされる治療剤の量を指す。任意の抗体に関して、治療有効量は、細胞培養アッセイ又は動物モデル、通常、齧歯動物、ウサギ、イヌ、ブタ又は霊長類のいずれかにおいて最初に見積もられ得る。動物モデルはまた、適切な濃度範囲及び投与経路を決定するために使用されてもよい。次いでこのような情報は、ヒトにおける有用な用量及び投与経路を決定するために使用されてもよい。
【0207】
ヒト対象のための正確な治療有効量は、疾患状態の重症度、対象の全体的な健康、年齢、対象の体重及び性別、食事、投与時間及び頻度、薬物の組合せ(単数又は複数)、反応感度及び治療に対する忍容性/応答に依存する。この量は慣例の実験によって決定され得、臨床医の判断内である。一般に、治療有効量は、0.01mg/kg~500mg/kg、例えば0.1mg/kg~200mg/kg、例えば100mg/Kgである。医薬組成物は、用量当たり本発明の所定量の活性剤を含有する単位用量形態で簡便に提示され得る。
【0208】
本開示に係る抗体の治療用量はインビボで明らかな毒性効果を示さない。
【0209】
本発明に係る抗体又はフラグメントの一実施形態において、単回用量は循環IgGレベルの最大で70%の減少を提供できる。
【0210】
循環IgGの最大の治療的減少は関連する治療用量の投与の約1週間後に観察され得る。IgGのレベルは、更なる治療用量が送達されない場合、約6週間超で回復し得る。
【0211】
有益には、インビボでのIgGのレベルは、本開示に係る抗体又はフラグメントの連続的な用量の投与によって適切に低いレベルにて維持され得る。
【0212】
組成物は、患者に個々に投与されてもよいか、又は他の薬剤、薬物若しくはホルモンと組み合わせて(例えば同時、連続又は別々に)投与されてもよい。
【0213】
一実施形態において、本開示に係る抗体又はフラグメントは、ステロイド、特にプレドニゾンなどの免疫抑制剤治療と共に利用される。
【0214】
一実施形態において、本開示に係る抗体又はフラグメントは、リツキシマブ又は他のB細胞治療と共に利用される。
【0215】
一実施形態において、本開示に係る抗体又はフラグメントは、任意のB細胞若しくはT細胞調節剤又は免疫調節剤と共に利用される。例には、メトトレキサート、ミコフェノラート及びアザチオプリンが含まれる。
【0216】
本発明の抗体分子が投与される用量は、処置される状態の性質、存在する炎症の程度及び抗体分子が予防的に使用されるか又は現存の状態を処置するためであるかどうかに依存する。
【0217】
用量の頻度は、抗体分子の半減期及びその効果の期間に依存する。抗体分子が短い半減期(例えば2~10時間)を有する場合、1日当たり1又は複数回の用量を与えることが必要であり得る。或いは、抗体分子が、長い半減期(例えば2~15日)及び/又は長く続く薬物動態(PD)プロファイルを有する場合、1日当たり1回、1週間当たり1回又は更に1若しくは2ヶ月毎に1回の投薬を与えることを必要とするのみであってもよい。
【0218】
一実施形態において、用量は、隔週、すなわち1ヶ月に2回送達される。
【0219】
本明細書において利用される半減期は、循環中、例えば血清/血漿中の分子の持続時間を指すことを意図する。
【0220】
本明細書において利用される薬物動態は、本開示に係る分子の生物学的作用のプロファイル、特に持続時間を指す。
【0221】
薬学的に許容される担体は、組成物を受容する個体に有害な抗体の産生をそれ自体で誘導すべきではなく、毒性であるべきではない。好適な担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー及び不活性ウイルス粒子などの、大きく、ゆっくり代謝される巨大分子であってもよい。
【0222】
薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩及び硫酸塩などの鉱酸塩又は酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩及び安息香酸塩などの有機酸の塩が使用されてもよい。
【0223】
治療組成物中の薬学的に許容される担体は、水、生理食塩水、グリセロール及びエタノールなどの液体を更に含有してもよい。更に、湿潤剤又は乳化剤又はpH緩衝物質などの補助物質がこのような組成物中に存在してもよい。このような担体により、医薬組成物が、患者が摂取するための錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル、シロップ、スラリー及び懸濁剤として製剤化され得る。
【0224】
好適な投与形態には、例えば注射又は注入による、例えばボーラス注射又は持続注入による非経口投与に好適な形態が含まれる。製品が注射又は注入用である場合、それは、油性又は水性ビヒクル中の懸濁剤、液剤又は乳剤の形態をとってもよく、それは、懸濁化剤、防腐剤、安定剤及び/又は分散剤などの製剤化剤(formulatory agent)を含有してもよい。或いは、抗体分子は適切な滅菌液を用いて使用前に再構成するための乾燥形態であってもよい。
【0225】
一旦製剤化されると、本発明の組成物は対象に直接投与されてもよい。処置される対象は動物であってもよい。しかしながら、1つ又は複数の実施形態において、組成物はヒト対象への投与に適合される。
【0226】
好適には、本開示に係る製剤において、最終製剤のpHは抗体又はフラグメントの等電点の値と類似しておらず、例えばタンパク質のpIが8~9又はそれ以上の範囲である場合、7のpHの製剤が適切であり得る。理論により束縛されることを望まないが、このことは最終的に、改良された安定性、例えば抗体又はフラグメントが溶液中に存在している最終製剤を提供すると考えられる。
【0227】
一例において、4.0~7.0の範囲のpHにおける医薬製剤は、1~200mg/mLの本開示に係る抗体分子、1~100mMの緩衝液、0.001~1%の界面活性剤、a)10~500mMの安定剤、b)10~500mMの安定剤及び5~500mMの等張化剤、又はc)5~500mMの等張化剤を含む。
【0228】
本発明の医薬組成物は、限定されないが、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、脳室内、経皮的、経皮性(例えば、WO98/20734を参照のこと)、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下、膣内又は直腸経路を含む、任意の数の経路によって投与されてもよい。皮下噴射器もまた、本発明の医薬組成物を投与するために使用されてもよい。典型的に、治療組成物は、液体の液剤又は懸濁剤のいずれかとして注射剤として調製されてもよい。注射前に液体ビヒクル中の液剤又は懸濁剤に好適な固体形態もまた、調製されてもよい。
【0229】
組成物の直接送達は、一般に、皮下、腹腔内、静脈内若しくは筋肉内の注射により、又は組織の間質空間への送達により達成される。組成物はまた、病変内に投与されてもよい。投薬処置は単回用量スケジュール又は複数回用量スケジュールであってもよい。
【0230】
組成物中の活性成分は、抗体分子であることが理解されるだろう。従って、それは消化管内で分解しやすい。それ故、組成物が消化管を使用した経路によって投与される場合、組成物は分解から抗体を保護するが、それが消化管から吸収されると、抗体を放出する薬剤を含有することを必要とする。
【0231】
薬学的に許容される担体の十分な説明はRemington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company、N.J.1991)において入手可能である。
【0232】
一実施形態において、製剤は吸入を含む局所投与のための製剤として提供される。
【0233】
好適な吸入調製剤には、吸入可能粉末、推進剤ガスを含有する計量エアロゾル又は推進剤ガスを含有しない吸収可能液剤が含まれる。活性物質を含有する本開示に係る吸入可能粉末は、上述の活性物質のみ又は上述の活性物質と生理的に許容される賦形剤との混合物を含んでもよい。
【0234】
これらの吸入可能な粉末には、単糖(例えばグルコース又はアラビノース)、二糖(例えばラクトース、サッカロース、マルトース)、オリゴ糖及び多糖(例えばデキストラン)、多価アルコール(例えばソルビトール、マンニトール、キシリトール)、塩(例えば塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)又は互いとのこれらの混合物が含まれてもよい。単糖又は二糖が好適には使用され、ラクトース又はグルコースの使用は特にそれらの水和物の形態に限らない。
【0235】
肺内に堆積させるための粒子は、10ミクロン未満、例えば1~9ミクロン、例えば1~5μmの粒径を必要とする。活性成分(抗体又はフラグメントなど)の粒径が最重要である。
【0236】
吸入可能なエアロゾルを調製するために使用され得る推進ガスは当該分野において公知である。好適な推進ガスは、n-プロパン、n-ブタン又はイソブタンなどの炭化水素及びメタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパン又はシクロブタンの塩素化及び/又はフッ素化誘導体などのハロ炭化水素の中から選択される。上述の推進ガスはそれら独自で又はそれらの混合物で使用されてもよい。
【0237】
特に好適な推進ガスは、TG11、TG12、TG134a及びTG227の中から選択されるハロゲン化アルカン誘導体である。上述のハロゲン化炭化水素のうち、TG134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)及びTG227(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)並びにそれらの混合物が特に好適である。
【0238】
推進ガスを含有する吸入可能なエアロゾルはまた、共溶媒、安定剤、表面活性剤(界面活性剤)、酸化防止剤、滑沢剤及びpHを調整する手段などの他の成分を含有してもよい。全てのこれらの成分は当該分野において公知である。
【0239】
本発明に係る推進剤ガスを含有する吸入可能なエアロゾルは、5重量%までの活性物質を含有してもよい。本発明に係るエアロゾルは、例えば、0.002~5重量%、0.01~3重量%、0.015~2重量%、0.1~2重量%、0.5~2重量%又は0.5~1重量%の活性成分を含有する。
【0240】
或いは、肺への局所投与はまた、例えば噴霧器、例えば圧縮器に接続された噴霧器(例えば、Pari Respiratory Equipment,Inc.、Richmond、Vaによって製造されているPari Master(R)圧縮器に接続されたPari-LC-Jet Plus(R)噴霧器)などの装置を利用した液体の液剤又は懸濁剤の製剤の投与によってもよい。
【0241】
本発明の抗体は、例えば液剤又は懸濁剤の形態で、溶媒中に分散されて送達されてもよい。それは、適切な生理溶液、例えば、生理食塩水又は他の薬理学的に許容される溶媒若しくは緩衝液中に懸濁されてもよい。当該分野において公知の緩衝液は、約4.0~5.0のpHを達成するように、1mlの水当たり、0.05mg~0.15mgのエデト酸2ナトリウム、8.0mg~9.0mgのNaCl、0.15mg~0.25mgのポリソルベート、0.25mg~0.30mgの無水クエン酸及び0.45mg~0.55mgのクエン酸ナトリウムを含有してもよい。懸濁液は、例えば、凍結乾燥抗体を利用できる。
【0242】
治療用の懸濁剤又は液剤の製剤はまた、1つ又は複数の賦形剤を含有してもよい。賦形剤は当該分野において周知であり、緩衝液(例えばクエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液及び重炭酸緩衝液)、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質、タンパク質(例えば血清アルブミン)、EDTA、塩化ナトリウム、リポソーム、マンニトール、ソルビトール及びグリセロールを含む。液剤又は懸濁剤はリポソーム又は生分解性ミクロスフェア内に封入されてもよい。製剤は一般に、無菌製造プロセスを利用して、実質的に無菌形態で提供される。
【0243】
これは、製剤に使用される緩衝化溶媒/溶液の濾過による作製及び滅菌、無菌緩衝溶媒溶液中の抗体の無菌懸濁及び当業者によく知られた方法による無菌容器内での製剤の調剤を含んでもよい。
【0244】
本開示に係る噴霧可能な製剤は、例えば、ホイルエンベロープに詰められた単回用量単位(例えば密封されたプラスチック容器又はバイアル)として提供され得る。各バイアルは、溶媒/溶液緩衝液のある体積、例えば2mLの単位用量を含有する。
【0245】
本明細書に開示される抗体は噴霧による送達に好適であり得る。
【0246】
また、本発明の抗体は遺伝子治療の使用によって投与されてもよいことも想定される。これを達成するために、適切なDNA構成成分の制御下で抗体分子の重鎖及び軽鎖をコードするDNA配列が、抗体鎖がDNA配列から発現され、インサイチュでアセンブルされるように患者内に導入される。
【0247】
本発明はまた、自己免疫疾患、例えば、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、急性壊死性出血性白質脳炎、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛、アミロイドーシス、ANCA関連血管炎、強直性脊椎炎、抗GBM/抗TBM腎炎、抗リン脂質症候群(APS)、自己免疫性血管浮腫、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性自律神経障害、自己免疫性肝炎、自己免疫性高脂血症、自己免疫性免疫不全、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性心筋炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、自己免疫性甲状腺疾患、自己免疫性蕁麻疹、軸索及びnal神経障害、バロー病、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、キャッスルマン病、セリアック病、シャーガス病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、慢性再発性多発性骨髄炎(Chronic recurrent multifocal ostomyelitis)(CRMO)、チャーグ-ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡/良性粘膜類天疱瘡、クローン病、コーガン症候群、寒冷凝集素症、先天性心ブロック、コクサッキー心筋炎、CREST病、本態性混合型クリオグロブリン血症、脱髄性神経障害、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、デビック病(視神経脊髄炎)、拡張型心筋症、円板状ループス、ドレスラー症候群、子宮内膜症、好酸球性血管中心性線維症、好酸球性筋膜炎、結節性紅斑、実験的アレルギー性脳脊髄炎、エバンス症候群、線維化性肺胞炎、ジャイアント細胞動脈炎(側頭動脈炎)、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)(ウェゲナーを参照)、グレーブス病、ギランバレー症候群、橋本脳炎、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、ヘルペス妊娠性疱疹、低ガンマグロブリン血症、特発性低補体性尿細管間質性腎炎(Idiopathic hypocomplementemic tubulointestitial nephritis)、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、IgG4関連疾患、IgG4関連硬化性疾患、免疫調節リポタンパク質、炎症性大動脈瘤、炎症性偽腫瘍、封入体筋炎、インスリン依存性糖尿病(1型)、間質性膀胱炎、若年性関節炎、若年性糖尿病、川崎症候群、キュットネル腫瘍、ランバート-イートン症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、木質結膜炎、リニアIgA病(LAD)、狼瘡(SLE)、ライム病、慢性縦隔線維症、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、ミクリッツ症候群、混合性結合組織病(MCTD)、モーレン潰瘍、ミュシャ-ハーバーマン病、結合組織増殖症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、視神経脊髄炎(デビック)、好中球減少症、眼部瘢痕性類天疱瘡、視神経炎、オーモンド病(後腹膜線維症)、回帰性リウマチ、PANDAS(連鎖球菌(Streptococcus)に関連する小児自己免疫性神経精神障害)、傍腫瘍性小脳変性症、異常タンパク性多発ニューロパチー、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、パリーロンベルグ症候群、パーソナージュ-ターナー症候群、扁平部炎(周辺性ブドウ膜炎)、尋常性天疱瘡、大動脈周囲炎、動脈周囲炎、末梢神経障害、静脈周囲脳脊髄炎、悪性貧血、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、I型、II型及びIII型多腺性自己免疫症候群、多発筋痛リウマチ、多発性筋炎、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、プロゲステロン性皮膚炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、乾癬、乾癬性関節炎、特発性肺線維症、壊疽性膿皮症、赤芽球癆、レイノー現象、反射性交感神経性ジストロフィー、ライター症候群、再発性多発性軟骨炎、レストレスレッグス症候群、後腹膜線維症(オーモンド病)、リウマチ熱、関節リウマチ、リーデル甲状腺炎、サルコイドーシス、シュミット症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、精子及び精巣自己免疫、スティッフパーソン症候群、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、交感性眼炎、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、トロサ-ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織疾患(UCTD)、ブドウ膜炎、血管炎、水疱性皮膚病、白斑、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、温式特発性溶血性貧血及びウェゲナー肉芽腫症(現在、多発血管炎性肉芽腫症(GPAと呼ばれる)の抑制に使用するための抗体分子(又はそれを含む組成物)を提供する。
【0248】
一実施形態において、本開示に係る抗体又はフラグメントは、てんかん又は発作の処置又は予防に利用される。
【0249】
一実施形態において、本開示に係る抗体又はフラグメントは、多発性硬化症の処置又は予防に利用される。
【0250】
一実施形態において、本開示の抗体及びフラグメントは、以下を含む同種免疫疾患/兆候に利用される:
・抗HLA抗体に起因する移植ドナーミスマッチ
・胎児及び新生児同種免疫性血小板減少症、FNAIT(又は新生児同種免疫性血小板減少症、NAITP若しくはNAIT若しくはNAT、又は胎母同種免疫性血小板減少症、FMAITP若しくはFMAIT)。
【0251】
更なる兆候には、ヒト患者からのFcを含有する生物薬剤の急速なクリアランス及び抗FcRn治療と他の治療-IVIg、リツキサン、プラスマフェレーシスとの組合せが含まれる。例えば、抗FcRn治療はリツキサン治療後に利用されてもよい。
【0252】
実施形態において、本開示の抗体及びフラグメントは、
・慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)
・ギランバレー症候群
・パラプロテイン血症性ニューロパチー
・視神経脊髄炎(NMO、NMOスペクトル障害又はNMOスペクトル障害)、及び
・重症筋無力症
などの神経学的障害に利用される。
【0253】
実施形態において、本開示の抗体及びフラグメントは、
・水疱性類天疱瘡
・尋常性天疱瘡
・ANCA関連血管炎
・拡張型心筋症
などの皮膚疾患に利用される。
【0254】
実施形態において、本開示の抗体及びフラグメントは、
・特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
・血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
・温式特発性溶血性貧血
・グッドパスチャー症候群
・抗HLA抗体に起因する移植ドナーミスマッチ
などの免疫学、血液学障害に利用される。
【0255】
一実施形態において、障害は、重症筋無力症、視神経脊髄炎、CIDP、ギランバレー症候群、パラプロテイン血症多発性神経障害、難治性てんかん、ITP/TTP、溶血性貧血、グッドパスチャー症候群、ABO不適合、ループス腎炎、腎血管炎、強皮症、線維性肺胞炎、拡張型心筋症、グレーブス病、1型糖尿病、自己免疫性糖尿病、天疱瘡、強皮症、狼瘡、ANCA血管炎、皮膚筋炎、シェーグレン病及び関節リウマチから選択される。
【0256】
一実施形態において、障害は、自己免疫性多腺性内分泌症候群(autoimmune polyendocrine syndrome)1型(APECED又はウィテカー症候群)及び2型(シュミット症候群)、全身性脱毛症、筋無力症クリーゼ、甲状腺発症、甲状腺関連眼疾患、甲状腺眼症、自己免疫性糖尿病、自己抗体関連脳炎及び/又は脳症、落葉状天疱瘡、表皮水疱症、疱疹状皮膚炎、シデナム舞踏病、急性運動性軸索型ニューロパチー(AMAN)、ミラーフィッシャー症候群、多巣性運動ニューロパチー(MMN)、眼球クローヌス、炎症性筋疾患、アイザック症候群(自己免疫性神経筋緊張症)、腫瘍随伴症候群及び辺縁系脳炎から選択される。
【0257】
本開示に係る抗体及びフラグメントは処置又は予防に利用されてもよい。
【0258】
本発明はまた、個体における望ましくない抗体の濃度を減少させる方法であって、本明細書に開示されている治療有効量の抗FcRn抗体又はその結合フラグメントを個体に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0259】
一実施形態において、本開示は、例えば、レポーター分子にコンジュゲートした、診断用の試薬として抗体又はそのフラグメントの使用を含む。それ故、標識されている本開示に係る抗体又はフラグメントが提供される。一態様において、本開示に係る抗体又はフラグメントを含むカラムが提供される。
【0260】
それ故、以下のような使用のための試薬として使用するための抗FcRn抗体又は結合フラグメントが提供される:
1)FcRnタンパク質(又はそのフラグメント)の精製-このFcRnタンパク質はマトリクスにコンジュゲートされ、親和性カラムとして、又は(抗FcRnの修飾形態として)沈殿剤として(例えば、任意選択に抗Fc試薬によって沈殿される、Fcの付加によって修飾され(又は完全長IgGとして作製され)得る別の分子によって認識されるドメインで修飾された形態として)使用される。
2)生きた又は固定した、細胞上又は細胞中(インビトロでの細胞又は組織若しくは細胞切片中)のFcRnの検出及び/又は定量化。このための使用は、抗FcRn処置の効果を追跡するために、バイオマーカーとしてFcRnの定量化を含んでもよい。これらの目的のために、候補が、(例えば、完全長IgG又は一部の他の部分のような、遺伝子融合タンパク質又は化学コンジュゲートとして、Fcドメインの付加、例えば検出の目的に使用される蛍光タグの付加によって)修飾形態で使用されてもよい。
3)(1)及び(2)に例示した方法によって修飾された候補に結合することによって標識されたFcRn保有細胞の精製又は分類。
【0261】
また、FcRn活性を遮断する抗体分子などの試験分子の能力、特にIgGを再利用する細胞の能力を評価するのに好適なアッセイが本発明によって提供される。このようなアッセイは抗体分子又は低分子などのFcRn活性の阻害剤を識別するのに有用であり得、またそれ自体は、このような阻害剤の作製においてバッチ放出アッセイとして有用であり得る。
【0262】
一態様において、ヒトFcRn活性を遮断する抗体分子などの試験分子の能力、特にIgGを再利用するヒトFcRnの能力を評価するのに好適なアッセイが提供され、その方法は、
a)ヒトFcRnアルファ鎖及びヒトβ2ミクログロブリン(β2M)を組換え発現する非ヒト哺乳動物細胞表面上に被覆するステップ、
b)試験分子及びIgGの両方のFcRnへの結合を可能にするのに十分な時間、約pH5.9などの弱酸性条件下で、細胞を、試験分子及び細胞により再利用されるIgGと接触させ、任意選択に、IgGが再利用される前に試験分子を添加し、試験分子のFcRnへの結合を可能にするのに十分な時間、インキュベートするステップ、
c)微酸性緩衝液で洗浄するステップ、及び
d)細胞により内在化した及び/又は再利用されたIgGの量を検出するステップ
を含む。
【0263】
一態様において、ヒトFcRn活性を遮断する抗体分子などの試験分子の能力、特にIgGを再利用するヒトFcRnの能力を評価するのに好適なアッセイが提供され、その方法は、
a)ヒトFcRnアルファ鎖及びヒトβ2ミクログロブリン(β2M)を組換え発現する非ヒト哺乳動物細胞を表面上に被覆するステップ、
b)試験抗体分子及びIgGの両方のFcRnへの結合を可能にするのに十分な時間、約pH5.9などの弱酸性条件下で、細胞を、試験抗体分子及び細胞により再利用されるIgGと接触させ、任意選択に、IgGが再利用される前に試験抗体分子を添加し、試験抗体分子のFcRnへの結合を可能にするのに十分な時間、インキュベートするステップ、
c)微酸性緩衝液で洗浄して、未結合のIgG及び試験抗体分子を除去するステップ、及び
d)細胞により再利用されたIgGの量を検出するステップ
を含む。
【0264】
一態様において、ヒトFcRn活性を遮断する抗体分子などの試験分子の能力、特にIgGを再利用するヒトFcRnの能力を評価するのに好適なアッセイが提供され、その方法は、
a)ヒトFcRnアルファ鎖及びヒトβ2ミクログロブリン(β2M)を組換え発現する非ヒト哺乳動物細胞を表面上に被覆するステップ、
b)試験抗体分子及びIgGの両方のFcRnへの結合を可能にするのに十分な時間、約pH5.9などの弱酸性条件下で、細胞を、試験抗体分子及び細胞により再利用されるIgGと接触させ、任意選択に、IgGが再利用される前に試験抗体分子を添加し、試験抗体分子のFcRnへの結合を可能にするのに十分な時間、インキュベートするステップ、
c)微酸性緩衝液で洗浄して、未結合のIgG及び試験抗体分子を除去するステップ、
d)約pH7.2などの中性緩衝液中で細胞をインキュベートするステップ、
e)上清内に放出されたIgGの量を決定することによって細胞によって再利用されたIgGの量を検出するステップ
を含む。
【0265】
好適な細胞には、メイディン-ダービーイヌ腎臓細胞(MDCK)II細胞が含まれる。ヒトFcRnアルファ鎖及びヒトβ2ミクログロブリン(β2M)によるMDCK II細胞のトランスフェクションは、Claypoolら、2002、Journal of Biological Chemistry、277、31、28038-28050によって以前に記載されている。この論文はまた、これらのトランスフェクト細胞によるIgGの再利用を記載している。
【0266】
試験の間に細胞を支持するための培地には、MEM(Gibco#21090-022)、1×非必須アミノ酸(Gibco 11140-035)、1×ピルビン酸ナトリウム(Gibco#11360-039)及びL-グルタミン(Gibco#25030-024)を含む完全培地が含まれる。
【0267】
酸性洗浄液は、HBSS+(PAA#H15-008)を取り、pH5.9+/-0.5に到達するまで1MのMESを加えることによって調製できる。BSA約1%も加えてもよい(Sigma#A9647)。
【0268】
中性洗浄液は、HBSS+(PAA#H15-008)を取り、pH7.2+/-0.5に到達するまで10MのHepesを加えることによって調製できる。BSA約1%も加えてもよい(Sigma#A9647)。
【0269】
酸性緩衝液で細胞を洗浄することにより、未結合の試験抗体及び未結合のIgGが除去され、更なる分析を実施することができる。ステップ(b)に使用した酸性条件は、IgGのFcRnへの結合及びそのIgGの内在化及び再利用を促す。
【0270】
細胞の表面上のみの試験抗体又はフラグメント及びIgGの量は、中性洗浄液で細胞を洗浄し、試験抗体又はIgGの量を検出するために上清/洗浄物を分析することによって決定できる。重要なことに、溶解緩衝液は利用されない。細胞によって内在化されたIgGの量を決定するために、抗体がまず、中性洗浄液により細胞の表面から除去され得、細胞は溶解緩衝液によって溶解され、次いで内部含有量が分析される。細胞によって再利用されたIgGの量を決定するために、好適な時間、中性条件下で細胞をインキュベートし、周囲の緩衝液をIgG含有量について分析する。細胞の表面及び内部抗体含有量が必要とされる場合、細胞表面上の抗体の存在を維持するために細胞を酸性洗浄液で洗浄でき、続いて細胞溶解及び合わせた材料の分析が行われる。
【0271】
IgGの内在化及び再利用の両方を測定することが望まれる場合、試料は二連で実施され、別々に行われた内在化及び再利用について試験される。
【0272】
好適な溶解緩衝液には、150mMのNaCl、20mMのTris、pH7.5、1mMのEDTA、1mMのEGTA、1%のTriton-X100が含まれ、各10mlについて、製造業者のガイドラインに記載されているようにプロテアーゼ阻害剤/リン酸阻害剤を加える。
【0273】
典型的に、再利用されるIgGが標識され、一例において、ビオチン化ヒトIgGが使用されてもよい。次いで例えば、0.2ug/mLのMSD遮断緩衝液にてストレプトアビジンスルホ-タグ検出抗体(MSD#r32ad-5など)25mLを利用してIgGが検出されてもよい。遮断緩衝液は、500mMのTris、pH7.5、1.5MのNaCl及び0.2%のTween-20及び1.5%のBSAを含んでもよい。
【0274】
或いは、IgGはフルオロフォア又は同様の標識で予め標識されてもよい。
【0275】
一実施形態において、好適な表面は、96ウェルプレート又は類似物などのプラスチックプレート又はウェル、スライドガラス又は膜である。一例において、細胞は単層の形成を生じる密度にて表面上に被覆される。
【0276】
一実施形態において、本明細書に記載されているアッセイは、膜の上下にわたってpH勾配を用いた(例えば膜の一方の側は酸性条件であり、膜の下側は中性条件である)、その膜の上下にわたる抗体の経細胞輸送の測定ではない。
【0277】
一例において、試験抗体又はフラグメント及びIgGは、例えば、結合を可能にする酸性条件下で周囲温度にて約1時間、ステップ(b)において細胞とインキュベートされてもよい。
【0278】
一例において、試験抗体又はフラグメントは、例えば、再利用されるIgGを加える前に結合を可能にする酸性条件下で周囲温度にて約1時間、ステップ(b)において細胞とインキュベートされてもよい。続いて、細胞によって再利用されるIgGは、例えば、結合を可能にする酸性条件下で周囲温度にて約1時間、ステップ(b)において細胞とインキュベートされてもよい。
【0279】
中性条件は上清内へのIgGの放出を促進する。
【0280】
本明細書の文脈において含む(comprising)は、包含する(including)を意味することを意図する。
【0281】
技術的に適切な場合、本発明の実施形態は組み合わされてもよい。
【0282】
実施形態は特定の特徴/要素を含むものとして本明細書に記載されている。この開示はまた、前記特徴/要素を含む又は実質的に含む別々の実施形態に拡張する。
【0283】
特許及び出願などの技術的参考文献が本明細書に参照により組み込まれる。
【0284】
本発明は更に、添付の図面を参照して、以下の例において例示目的のみとして記載されている。
【0285】
図1は、特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す。
図2は、特定の配列のアラインメントを示す。
図3は、本開示に係るFab’フラグメント及びそのPEG化型に対するヒトMDCK II上での結合の比較を示す。
図4は、MDCK II細胞上でIgG再利用を阻害する本開示に係るFab’フラグメント及びそのPEG化型を示す。
図5は、本開示に係るPEG化Fab’フラグメントが、MDCK II細胞において頂部から基底外側のIgG経細胞輸送を阻害することを示す。
図6は、本開示に係るFab’フラグメント及びそのPEG化型に対するカニクイザルMDCK IIの結合の比較を示す。
図7は、本開示に係るPEG化Fab’フラグメントが、ヒト及びそのカニクイザル型についてMDCK II細胞上でIgG再利用を阻害することを示す。
図8は、カニクイザルにおける血漿IgGレベルに対する本開示に係る単回投与のPEG化Fab’分子の効果を示す。
図9は、血漿IgGレベルに対する本開示に係る1週間に4回の投与のPEG化Fab’分子の効果を示す。
図10は、遮断タンパク質によって阻害されたFcRnの抗体再利用機能の図表示を示す。
図11は、精製したガンマ1IgG抗体を使用したヒトIgG遮断アッセイに基づいたフローサイトメトリーを示す。
図12は、正常なカニクイザルにおけるFab’PEG単回/間欠IV投与 20mg/Kg 1及び67日 IgG薬物動態を示す。
図13は、正常なカニクイザルにおけるFab’PEG:反復IV投与-週に1回の4×20又は100mg/Kg IgG薬物動態を示す。
図14は、正常なカニクイザルにおけるFab’PEG単回/間欠IV投与-20mg/Kg及び100mg/Kg 1及び67日 IgG薬物動態を示す。
図15は、20mg/Kgの1519.g57 Fab’PEGの2回のIV投与後の4匹のカニクイザルにおける血漿IgGレベルを示す。
図16は、3日毎に1回、20mg/Kgの1519.g57 Fab’PEGの10回のIV投与を与えている4匹のカニクイザルにおける血漿IgGレベルを示す。
図17は、カニクイザルにおける内因性血漿IgGに対する1519.g57IgG4Pの2回の30mg/KgのIV投与の効果を示す。
図18は、カニクイザルにおける血漿IgGに対する30mg/Kg、続いて5mg/Kgの1519.g57 IgG4Pの41日投与の効果を示す。
図19は、カニクイザルにおける血漿IgGに対するビヒクルによる毎日投与の結果を示す。
図20は、CA170_01519.g57Fab’PEG又はPBS IVで処置したhFcRnトランスジェニックマウスの血漿中のIV hIgGの増加したクリアランスを示す。
図21は、CA170_01519.g57IgG1又はIgG4又はPBS IVで処置したhFcRnトランスジェニックマウスの血漿中のIV hIgGの増加したクリアランスを示す。
図22は、CA170_01519.g57Fab’-ヒト血清アルブミン又はPBS IVで処置したhFcRnトランスジェニックマウスの血漿中のIV hIgGの増加したクリアランスを示す。
図23は、CA170_01519.g57FabFv又はPBS IVで処置したhFcRnトランスジェニックマウスの血漿中のIV hIgGの増加したクリアランスを示す。
図24は、CA170_01519.g57Fab又はFab’PEG又はPBS IVで処置したhFcRnトランスジェニックマウスの血漿中のIV hIgGの増加したクリアランスを示す。
図25は、Fab-dsFvと称される、本発明の二重特異性抗体融合タンパク質を示す。
【実施例】
【0286】
B細胞培養及び抗体スクリーニングのための材料を生成するために以下の免疫化を実施した:
Sprague Dawleyラットを、変異ヒトFcRn(L320A;L321A)(Oberら、2001 Int.Immunol.13、1551-1559)及びマウスβ2Mを共発現するNIH3T3マウス線維芽細胞の3回の皮下注射により免疫化し、ヒトFcRn細胞外ドメインの4回目の最後の追加免疫をした。HEK-293細胞上での変異FcRnへの両方の結合について、及びAlexafluor488により標識したヒトIgGの結合を防ぐその能力について血清をモニターした。両方の方法をフローサイトメトリーによって実施した。結合に関して、フィコエリトリン(PE)により標識した抗マウス又はラットFc特異的二次試薬を、血清中のIgGの結合を明らかにするために使用した。
【0287】
Zublerら(1985)に記載されているものと同様の方法を使用してB細胞培養物を調製した。手短に述べると、約5000個の細胞/ウェルの密度でB細胞を、10%FCS(PAA laboratories ltd)、2%HEPES(Sigma Aldrich)、1%L-グルタミン(Gibco BRL)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液(Gibco BRL)、0.1%β-メルカプトエタノール(Gibco BRL)、2~5%活性化ウサギ脾細胞培養上清及びガンマ線を照射したEL-4-B5マウス胸腺腫細胞(5×104個/ウェル)を補足した200μl/ウェルのRPMI1640培地(Gibco BRL)を含むバーコード化した96ウェル組織培養プレート中で、5%CO2雰囲気下、37℃にて7日間、培養した。
【0288】
標的抗原源として変異FcRnを一過性にトランスフェクトしたHEK-293細胞(表面安定化した)を使用した均一な蛍光ベースの結合アッセイを使用してB細胞培養上清物中のFcRn特異的抗体の存在を決定した。10ulの上清を、Matrix Platemate液体ハンドラーを使用して、バーコード化した96ウェル組織培養プレートから、5000個のトランスフェクトしたHEK-293細胞/ウェルを含有するバーコード化した384ウェルブラックウェルアッセイプレートに移動させた。ヤギ抗ラット又はマウスIgG Fcγ特異的Cy-5コンジュゲート(Jackson)との結合が明らかになった。プレートをApplied Biosystems8200細胞検出システムで読み取った。3800×96ウェル培養プレートから、38個の異なる免疫化動物が表れ、9800個の抗ヒトFcRn結合物を識別した。これは約25億個のB細胞のスクリーニングを表したと推定された。
【0289】
一次スクリーニング後、陽性上清を、Aviso Onyxヒットピッキングロボットを使用して96ウェルのバーコード化したマスタープレート上に固定し、細胞培養プレート中のB細胞を-80Cにて凍結した。次いで、高親和性の抗体を含有するウェル及びヒトIgGのFcRnへの結合を阻害した抗体を識別するためにマスタープレートをBiacoreアッセイでスクリーニングした(以下を参照のこと)。
【0290】
表面プラズモン共鳴技術(SPR)を使用した生体分子相互作用分析を、BIAcoreT200システム(GE Healthcare)で実施した。10mMのNaAc、pH5緩衝液中のヤギ抗ラットIgG、Fcガンマ(Chemicon International Inc.)を、ランニング緩衝液としてHBS-EP+を使用して約19500反応単位(RU)の捕捉レベルまでアミンカップリング化学によりCM5センサーチップ上に固定化した。50mMのリン酸塩、pH6+150mMのNaClを、親和性及び遮断アッセイのためのランニング緩衝液として使用した。B細胞培養上清を、200mMのリン酸塩、pH6+150mMのNaCl中に5に対して1で希釈した。5μl/分にて希釈したB細胞上清の600秒の注射を、固定化した抗ラットIgG、Fcによる捕捉のために使用した。100nMにてヒトFcRnを、30μl/分にて180秒間、捕捉したB細胞培養上清に対して注射し、続いて360秒解離した。ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch)を60秒にわたって注射し、30μl/分にて180秒解離した。
【0291】
抗体の親和性定数(K
D)を決定し、IgG結合を遮断した抗体を決定するためにT200評価ソフトウェア(バージョン1.0)を使用してデータを分析した。代替のアッセイとして、マスタープレート上清もまた、細胞ベースのヒトIgG遮断アッセイにおいてスクリーニングした。マスタープレートからの25ulのB細胞培養上清を96ウェルU底ポリプロピレンプレートに加えた。次いで変異hFcRnトランスフェクトHEK-293細胞(25ulのPBS pH6/1%FCS中の50,000個の細胞/ウェル)を各ウェルに加え、4℃にて1時間、インキュベートした。細胞を150ulのPBS培地で2回洗浄した。次いで細胞を、7.5ug/mlにてAlexafluor488又は649で標識したヒトIgGを含有する50ul/ウェルのPBS/FCS培地中に再懸濁し、4℃にて1時間インキュベートした。次いで細胞を150ulの培地で2回洗浄し、次いで固定剤として1%ホルムアルデヒドを含有する35ul/ウェルのPBS/FCS培地中で再懸濁した。次いでプレートをFACS Canto2フローサイトメーターで読み取った。例のデータを
図11に与える。対象のウェルの選択から抗体可変領域遺伝子の回復を可能にするために、B細胞の異種集団を含有した所与のウェル中の抗原特異的B細胞の識別を可能にするためにデコンボルーションステップを実施しなければならなかった。これは蛍光foci法を使用して達成した。手短に述べると、陽性ウェル由来の免疫グロブリン分泌B細胞を、ビオチン化ヒトFcRnで被覆したストレプトアビジンビーズ(New England Biolabs)及びヤギ抗ラット又はマウスFcγフラグメント特異的FITCコンジュゲート(Jackson)の1:1200の最終希釈物と混合した。37℃にて1時間の静的インキュベーションの後、抗原特異的B細胞周囲の蛍光ハロの存在のためにそのB細胞を識別できた。Olympus顕微鏡を使用して識別した、これらの個々のB細胞を次いで、エッペンドルフマイクロマニピュレーターを用いて採取し、PCRチューブ内に堆積させた。蛍光fociは268個の選択したウェルから生成した。
【0292】
抗体可変領域遺伝子を、重鎖及び軽鎖可変領域特異的プライマーを使用した逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT)-PCRによって単一細胞から回収した。2ラウンドのPCRを、マウスγ1 IgG(VH)又はマウスカッパ(VL)哺乳動物発現ベクター内への可変領域のクローニングを可能にする、3’及び5’末端において制限部位を組み込んだネスティド2°PCRを用いてAviso Onyx液体操作ロボットで実施した。対になった重鎖及び軽鎖構築物を、フェクチン293(Invitrogen)を使用してHEK-293細胞内に共トランスフェクトし、1mlの体積で48ウェルプレート中で培養した。5~7日の発現後、上清を収集し、抗体を更なるスクリーニングに供した。
【0293】
PCRにより、選択したウェルのうちの156個から単一のB細胞由来の重鎖及び軽鎖同種対を首尾よく回収した。クローニングした可変領域遺伝子のDNA配列分析により、組換え抗体の固有のファミリーの数を識別した。発現後、一過性上清を、ヒトIgG FACS遮断(上記)及びIgG再利用アッセイの両方において調べた。一部の場合、精製したマウスγ1 IgGを作製し、試験した(データをそれに基づいて標識した)。
【0294】
再利用アッセイは、96ウェルプレートの25,000個の細胞/ウェルにて沈着したヒトFcRn及びベータ2ミクログロブリンを過剰発現するMDCK II細胞(以下の例4及び5に記載したクローン34)を使用した。これらは37℃、5%CO2にて一晩インキュベートした。細胞をHBSS+Ca/Mg pH7.2+1%BSAを用いて洗浄し、次いで37℃、5%CO2にて1時間、50μlの様々な濃度のHEK-293一過性上清又は精製した抗体とインキュベートした。上清を除去し、50μlのHBSS+Ca/Mg pH5.9+1%BSA中の500ng/mlのビオチン化ヒトIgG(Jackson)を細胞に加え、37℃、5%CO2にて1時間、インキュベートした。次いで細胞をHBSS+Ca/Mg pH5.9中で3回洗浄し、100μlのHBSS+Ca/Mg pH7.2を細胞に加え、37℃、5%CO2にて2時間、インキュベートした。上清を細胞から除去し、抗ヒトIgG捕捉抗体(Jackson)及びストレプトアビジン-スルホタグ露出抗体(MSD)と共にMSDアッセイを使用して全IgGについて分析した。阻害曲線を非線形回帰によって分析してIC50値を決定した。
【0295】
これらのアッセイの実施に基づいて、配列番号1~6に示される6個のCDRを含む抗体のファミリーを選択した。抗体CA170_01519は最適な活性を有し、ヒト化のために選択した。
【0296】
(例1)ヒト化方法
抗体CA170_01519を、ヒト生殖細胞抗体V領域フレームワーク上にラット抗体V領域からCDRをグラフトすることによってヒト化した。抗体の活性を回復させるために、ラットV領域由来の複数のフレームワーク残基もまた、ヒト化配列内に保持した。Adairら(1991)(ヒト化抗体(Humanised antibodies)WO91/09967)によって概説されたプロトコルを使用してこれらの残基を選択した。ヒト生殖細胞(アクセプター)V領域配列を有するラット抗体(ドナー)V領域配列のアラインメントを、設計したヒト化配列と一緒に
図2A及び2Bに示す。ドナーからアクセプター配列にグラフトしたCDRは、Chothia/Kabat定義の組合せが使用されている(Adairら、1991ヒト化抗体(Humanised antibodies.)WO91/09967)CDR-H1を除いて、Kabat(Kabatら、1987)によって定義されている通りである。ヒトV領域VK1 2-1-(1)A30プラスJK2 J領域(V BASE、http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/)を軽鎖CDRのためのアクセプターとして選択した。ヒトV領域VH3 1-3 3-07プラスJH4 J領域(V BASE、http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/)を、重鎖CDRについてのアクセプターとして選択した。
【0297】
複数のバリアント重鎖及び軽鎖V領域配列をコードする遺伝子を設計し、これらをEntelechon GmbHによる自動化合成アプローチによって構築した。重鎖及び軽鎖V領域の両方の更なるバリアントを、オリゴヌクレオチド指定突然変異によりVH及びVK遺伝子を修飾することによって創出した。これらの遺伝子を、哺乳動物及び大腸菌細胞中のヒト化1519Fab’の発現を可能にするために複数のベクター内にクローニングした。バリアント鎖及びそれらの組合せを、大腸菌におけるそれらの発現、親抗体に対するそれらの有効性、それらの生物物理学的特性及び下流プロセシングについての適合性について評価し、gL20軽鎖グラフト及びgH20重鎖グラフトの選択を導いた。最後に選択したgL20及びgH20グラフト配列をそれぞれ
図2A及び2Bに示す。このV領域対合は1519.g57と命名した。
【0298】
グラフトgL20における軽鎖フレームワーク残基は、ドナー残基ロイシン(L36)、フェニルアラニン(F37)及びイソロイシン(I58)がそれぞれ保持されていた、残基36、37及び58(Kabat番号付け)を除いて、全てヒト生殖細胞系列遺伝子由来である。これらの3つの残基の保持はヒト化Fab’の完全な有効性に必須であった。グラフトgH20における重鎖フレームワーク残基は、ドナー残基プロリン(P3)、バリン(V24)、セリン(S76)、トレオニン(T93)及びトレオニン(T94)がそれぞれ保持されていた、残基3、24、76、93及び94(Kabat番号付け)を除いて、全てヒト生殖細胞系列遺伝子由来である。これらの5個の残基の保持は、ヒト化Fab’の完全な有効性に重要であった。
【0299】
大腸菌における発現に関して、ヒト化重鎖及び軽鎖V領域遺伝子を、ヒトC-カッパ定常領域(Klm3アロタイプ)及びヒトガンマ-1CH-1ヒンジ領域(Glm17アロタイプ)をコードするDNAを含有する、UCB発現ベクターpTTOD内にクローニングした。大腸菌FkpA遺伝子もまた、発現プラスミド内に組み込んだので、このシャペロンタンパク質の共発現は、Fab’発現を誘導するためにIPTGを使用した、バッチ供給発酵の間、大腸菌株MXE016(WO2011/086136に開示されている)においてヒト化Fab’の収率を改良することが見出された。1519Fab’軽鎖及び重鎖並びにFkpAポリペプチドは全て、IPTG誘導性tacプロモーターの制御下で単一のマルチシストロンから発現した。
【0300】
哺乳動物細胞における発現に関して、ヒト化軽鎖V領域遺伝子を、ヒトカッパ鎖定常領域(Km3アロタイプ)をコードするDNAを含有する、UCB-Celltechヒト軽鎖発現ベクターpMhCK内でクローニングした。ヒト化重鎖V領域遺伝子を、変異S241P(Angalら、Mol Immunol.1993、30(1):105-8)を安定化するヒンジを有するヒトガンマ-4重鎖定常領域をコードするDNAを含有する、UCB-Celltechヒトガンマ-4重鎖発現ベクターpMhg4P FL内でクローニングした。HEK293懸濁細胞内の軽鎖及び重鎖ベクターの共トランスフェクションを、293フェクチン(12347-019Invitrogen)を使用して達成し、ヒト化組換え1519抗体の発現を与えた。
【0301】
(例1A)1519.g57 Fab’-PEGコンジュゲートの調製
大腸菌のペリプラズムにおいて発現したFab’を、熱抽出によって細胞から抽出した。Fab’は酸性溶出を用いたプロテインG親和性精製によって精製した。Fab’は減少し、40kDaのPEG(SUNBRIGHT GL2-400MA3)によりPEG化された。PEGは抗体フラグメントにおける1つ又は複数のチオール基にマレイミド基を介して共有結合する。PEG化の効果がSE-HPLCにより確認された。Fab’PEGは陽イオン交換クロマトグラフィーによって未PEG化Fab’及びdiFab’から分離した。画分をSE-HPLC及びSDS-PAGEから分析した。不純物のレベルを最小化するためにプールを実施した。最後の試料を濃縮し、所望の緩衝液中に透析濾過した。
【0302】
(例1B)ヒト血清アルブミンとコンジュゲートした1519.g57 Fab’(抗ヒトFcRn)の調製
抗ヒトFcRn Fab’1519.g57を、動物研究のために後で使用されるヒト血清アルブミン(組換え体由来)と化学的にコンジュゲートした。
・ヒト血清アルブミン:出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)において組換え的に作製された20%w/v溶液として提供されるNovozyme製のRecombumin(カタログ番号:200-010)。
・1519.g57Fab’:0.1Mリン酸ナトリウム、2mMのEDTA、pH6.0(反応緩衝液)中に提供される30mg/ml
・Thermofisher製の1,6-ビスマレイミドヘキサン(BMH)(カタログ番号22330)
【0303】
アルブミンの還元:還元緩衝液中で調製した新たに調製したシステアミン塩酸塩(Sigmaカタログ番号:30078)を使用してアルブミンを還元した。アルブミン溶液にシステアミン塩酸塩を10倍のモル過剰にて加え、次いで30分間、37℃の水浴にてインキュベートした。還元後、PD10カラム(GE Healthcareカタログ番号17-0851-01)を使用して溶液を脱塩して、あらゆる過剰な還元剤を除去した。
【0304】
BMHリンカーの添加:
1,6-ビスマレイミドヘキサンのストック溶液を、ジメチルホルムアミドを使用してガラスバイアル中で調製した。BMHの完全な溶解を確実にするためにこの溶液をボルテックスした。BMH溶液をアルブミン濃度に対して10倍モル過剰にて脱塩した還元型アルブミン溶液に加えた。次いでこの溶液を37℃にて30分間インキュベートし、続いて適切な混合を確実にするためにローラ上で室温にて一晩インキュベートした。白色の沈殿物が見られ、それをベンチトップ遠心分離機を使用して沈降させた。反応が完了した後、PD10カラムを使用して溶液を脱塩した。
【0305】
1519.g57 Fab’の還元
還元緩衝液中で調製した新たに調製したシステアミン塩酸塩(Sigmaカタログ番号:30078)を使用して1519.g57 Fab’を還元した。1519.g57 Fab’溶液に、システアミン塩酸塩を10倍モル過剰にて加え、次いで30分間、37℃の水浴にてインキュベートした。還元後、PD10カラム(GE Healthcareカタログ番号:17-0851-01)を使用して溶液を脱塩してあらゆる過剰な還元剤を除去した。
【0306】
還元型Fab及びアルブミン-BMHの混合
等量(モルの点で)の還元型Fab’及びアルブミン-リンカーを加え、室温にて一晩ローラミキサ上でインキュベートした。
【0307】
親和性精製:
次いで、アルブミン-Fabコンジュゲート及び遊離アルブミンに結合したブルーセファロースを使用して上記の混合物を親和性精製した。精製は本明細書に簡潔に述べられている製造業者の指示書に従って実施した:
ブルーセファロースをDPBS pH7.4中で再構成し、PBSで3回洗浄した。洗浄後、Fab及びリンカーが結合したアルブミンの混合物を加え、ローラミキサ上で1時間、室温にてインキュベートした。インキュベーション後、PBSを用いてマトリクスを再び洗浄してあらゆる未結合の材料を除去し、次いで2MのKClを含有するPBS7.4で溶出した。
【0308】
サイズ排除精製:
親和性精製した材料はいくらかの未反応のHSAと共にFabにコンジュゲートしたアルブミンを含有した。これは更なる浄化を必要とし、これはサイズ排除クロマトグラフィー(GE Healthcare製のS200 16×60)を使用して達成した。最後のプールした画分はDPBS pH7.4中に示された。最後の1519.g57Fab-HSAコンジュゲートをDPBS pH7.4中に20mg/mlまで濃縮し、分析的サイズ排除クロマトグラフィー(タンデムにおいてAgilent Zorbax GF250及びGF450)で分析し、主に単量体コンジュゲートであることが見出された。エンドトキシンアッセイもまた、実施し、試料はエンドトキシン含有量の特定した下限値以下であることが見出された。
【0309】
(例2)IgG再利用アッセイにおけるFab’及びFab’PEG候補分子のスクリーニング
機能的細胞アッセイにおいてFcRn活性を遮断する候補Fab’PEG分子の能力を決定するために、分子をIgG再利用アッセイ(例5により詳細に記載されている)においてスクリーニングした。手短に述べると、酸性緩衝液中にビオチン化ヒトIgGを添加する前に、MDCK IIクローン34細胞を候補Fab’又はFab’PEGとプレインキュベートした。細胞を洗浄して全ての過剰なIgGを除去し、次いで、IgGの上清内への放出を促進するために中性pH緩衝液中でインキュベートした。上清内に放出したIgGの量をMSDアッセイによって測定し、EC
50値を算出した。IgG再利用を阻害するヒト化Fab’及びFab’PEG候補分子のEC
50値を以下の表に示す。PEG化すると、全ての候補抗体について有効性の損失が存在するが、この程度は候補に依存して変化する。
【表1】
【0310】
IgG再利用アッセイにおけるFab’及びFab’PEG分子についての平均EC50値。
ヒトFcRn及びベータ2ミクログロブリンで安定にトランスフェクトしたMDCK IIクローン34細胞を96ウェルプレート中で25,000個の細胞/ウェルにし、37℃、5%CO2にて一晩インキュベートした。500ng/mlのビオチン化ヒトIgG(Jackson)を添加する前に細胞をHBSS+(Ca/Mg)pH5.9+1%BSA中で、37℃、5%CO2にて1時間、候補Fab’又はFab’PEGとインキュベートし、更に1時間インキュベートした。細胞をHBSS+pH5.9で洗浄し、次いでHBSS+pH7.2中で37℃、5%CO2にて2時間、インキュベートした。上清を細胞から除去し、MSDアッセイ(抗ヒトIgG捕捉抗体(Jackson)及びストレプトアビジン-スルホタグ露出抗体(MSD)を使用した)を使用して全IgGについて分析した。阻害曲線を非線形回帰(Graphpad Prism(登録商標))によって分析してEC50を決定した。表1は2~7回の実験から合わせたデータを表す。
【0311】
(例3)hFcRn結合に対する親和性
表面プラズモン共鳴技術(SPR)を使用した生体分子相互作用分析を、Biacore T200システム(GE Healthcare)で実施し、ヒトFcRn細胞外ドメインに対する結合を測定した。ヒトFcRn細胞外ドメインは、ヒトFcRnアルファ鎖細胞外ドメイン(配列番号94)とβ2ミクログロブリン(β2M)(配列番号95)との間の非共有複合体として提供した。10mMのNaAc、pH5緩衝液中のAffinipure F(ab’)2フラグメントヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)2フラグメント特異的(Fab’-PEG捕捉について)又はFcフラグメント特異的(IgG1又はIgG4捕捉について)(Jackson ImmunoResearch Lab,Inc.)を、ランニング緩衝液としてHBS-EP+(GE Healthcare)を使用して4000~5000反応単位(RU)の間の捕捉レベルまでアミンカップリング化学によりCM5センサーチップ上に固定化した。
【0312】
50mMのリン酸塩、pH6+150mMのNaCl+0.05%P20又はHBS-P、pH7.4(GE Healthcare)を親和性アッセイのためのランニング緩衝液として使用した。抗hFcRn Fab’-PEG、IgG1又はIgG4Pのいずれかの関連抗体を、ランニング緩衝液中で5μg/ml(Fab’-PEG)、0.3μg/ml(IgG1)又は4μg/ml(IgG4)に希釈した。10μl/分におけるFab’-PEG又はIgG1若しくはIgG4の60秒の注射を、固定化した抗ヒトIgG、F(ab’)2による捕捉のために使用した。ヒトFcRn細胞外ドメインを、30μl/分にて300秒間、捕捉した抗FcRn抗体(Fab’-PEG、IgG1又はIgG4)に対して20nM~1.25nMまで滴定し、続いて1200秒解離した。表面を10μl/分にて2×60秒の50mMのHClにより再生成した。
【0313】
T200評価ソフトウェア(バージョン1.0)を使用してデータを分析した。
【表2】
【表3】
【0314】
これらの実験において、Fab’PEGは、pH6において約42pM及びpH7.4において約56pMの平均親和性を有した。
【表4】
【表5】
【0315】
表3A及び3Bは、pH6及びpH7.4の両方におけるFab’-PEGについて観察されたものと一致する完全長抗体の親和性を示す。
【0316】
(例4)細胞ベースの有効性
ジェネティシン選択マーカーを有するヒトFcRn及びヒトB2M二重遺伝子ベクターで安定にトランスフェクトしていたメイディン-ダービーイヌ腎臓(MDCK)II細胞を使用して細胞ベースのアッセイを実施した。ヒトIgGを再利用でき、経細胞輸送できる安定な細胞クローンを選択し、これを全ての後の研究について使用した。それはMDCK IIクローン34と称される。
【0317】
ヒトFcRnについてのCA170_01519.g57 Fab’PEGの細胞ベースのアッセイ
MDCK IIクローン34細胞及びAlexaFluor488により標識したCA170_01519.g57 Fab’又はCA170_01519.g57 Fab’PEGを使用して定量的フローサイトメトリー実験を実施した。様々な抗体濃度にわたるFcRnに対する抗体の特異的結合を使用してKDを決定した。血漿(pH7.4)又はエンドソーム(pH6)に見出されるものと匹敵する環境pHが抗体結合に対して何らかの効果を有するかどうかを決定するために中性及び酸性緩衝液の両方で分析を実施した。
【0318】
図3は、CA170_01519.g57 Fab’(
図3A)及びFab’PEG(
図3B)についての代表的な結合曲線を示す。平均K
D値(n=2又は3)は、それぞれ、中性緩衝液中で1.66nM及び6.5nM並びに酸性緩衝液中で1.59nM及び5.42nMであった(表4を参照のこと)。
【表6】
【0319】
図3は、酸性及び中性pHにおいてMDCK IIクローン34細胞上で結合するCA170_01519.g57 Fab’(A)及びCA170_01519.g57 Fab’PEG(B)を示す。
【0320】
MDCK IIクローン34細胞を、pH7.4又はpH6のいずれかで、Alexa-fluor488により標識したCA170_01519.g57 Fab’を添加する前にFacs緩衝液(0.2%w/vBSA、0.09%w/vNaN3を含むPBS)中で30分間、又はFab’PEGを添加する前にFacs緩衝液中で1時間、インキュベートした。最終抗体濃度は931nM~0.002nMの範囲であった。細胞を氷冷Facs緩衝液中で洗浄し、次いでGuavaフローサイトメトリー(Millipore、UK)を使用してフローサイトメトリーによって分析した。滴定データセットもまた、非特異的結合を決定するために各抗体フォーマットについてのアイソタイプ対照抗体のために作った。異なる量の蛍光色素を含むビーズから生成した標準曲線から補間値を使用して結合抗体のモル数を計算した。幾何平均蛍光値を細胞及びビーズのフローサイトメトリー分析において決定した。非特異的結合は抗FcRn抗体値から差し引き、生成した特異的結合曲線を、1部位結合方程式(Graphpad Prism(登録商標))を使用して非線形回帰によって分析してKDを決定した。データは2又は3回の実験の代表である。CA170_01519.g57 Fab’PEGは酸性及び中性の両方のpHにおいて細胞で発現したヒトFcRnに結合でき、決定したKD値は当量のFab’分子の約3.5~4倍低い。
【0321】
(例5)機能的細胞ベースのアッセイ
CA170_01519.g57 Fab’PEGはヒトIgGの再利用を阻害する
FcRn発現は主に細胞内であり(Borvak Jら 1998、Int.Immunol.、10(9)1289-98及びCauza Kら 2005、J.Invest.Dermatol.、124(1)、132-139)、エンドソーム及びリソソーム膜に関連している。IgGのFc部分は酸性pH(<6.5)においてFcRnに結合するが、中性生理的pH(7.4)においては結合せず(Rhagavan Mら 1995)、このpH依存性はIgGの再利用を促進する。
【0322】
一旦、そのIgGが飲作用により吸収され、酸性エンドソームに入ると、FcRnに結合したIgGは細胞表面までFcRnと共に再利用されるのに対して、生理的に中性のpHにおいてIgGは放出される(Ober RJら 2004、The Journal of Immunology、172、2021-2029)。あらゆるFcRnに結合していないIgGはリソソーム分解経路に入る。
【0323】
インビトロアッセイは、FcRnのIgG再利用能力を阻害するCA170_01519.g57 Fab’PEG又はFab’の能力を検査するために確立された。手短に述べると、MDCK IIクローン34細胞を、FcRnへの結合を可能にするために、酸性緩衝液(pH5.9)中のビオチン化ヒトIgGを添加する前に、CA170_01519.g57 Fab’又はCA170_01519.g57Fab’PEGの存在又は非存在下でインキュベートした。全ての過剰な抗体を除去し、表面が露出した結合IgGの上清内への放出を可能にする中性pH緩衝液(pH7.2)中で細胞をインキュベートした。再利用され、それにより上清内に放出されたIgGの量を検出するためにMSDアッセイを使用してFcRnの阻害を追跡した。
【0324】
図4は、CA170_01519.g57がMDCK IIクローン34細胞内でIgG再利用を阻害することを示す。MDCK IIクローン34細胞を、96ウェルプレート中に25,000個の細胞/ウェルで播種し、37℃、5%CO
2にて一晩インキュベートした。細胞を、500ng/mlのビオチン化ヒトIgG(Jackson)を添加する前に、37℃、5%CO
2にて1時間、HBSS
+(Ca/Mg)pH5.9+1%BSA中のCA170_01519.g57 Fab’又はFab’PEGとインキュベートし、更に1時間インキュベートした。細胞をHBSS
+pH5.9で洗浄し、次いで37℃、5%CO
2にて、HBSS
+pH7.2中で2時間、インキュベートした。上清を細胞から除去し、MSDアッセイ(抗ヒトIgG捕捉抗体(Jackson)及びストレプトアビジン-スルホタグ露出抗体(MSD)を使用した)を使用して全IgGについて分析した。阻害曲線を非線形回帰(Graphpad Prism(登録商標))によって分析してEC
50を決定した。グラフは6又は7回の実験から合わせたデータを表す。
図4に示したように、CA170_01519.g57 Fab’及びCA170_01519.g57 Fab’PEGは、それぞれ、1.937nM及び6.034nMの平均EC
50値(n=6又は7)を有して濃度依存的にIgG再利用を阻害する。従って、CA170_01519.g57 Fab’PEGは、IgG再利用の阻害においてCA170_01519.g57 Fab’より約3倍低い有効性である。
【0325】
CA170_01519.g57 Fab’PEGはヒトIgGの経細胞輸送を阻害する
FcRnは、頂部から基底外側及び基底外側から頂部の方向の両方において極性上皮細胞層を横切ってIgGを輸送できるので、粘膜関門において循環と管腔との間でIgGを移動させ得るのに重要な役割を果たす(Claypoolら 2004 Mol Biol Cell 15(4):1746-59)。
【0326】
インビトロアッセイは、FcRn依存性IgG経細胞輸送を阻害するCA170_01519.g57 Fab’PEGの能力を検査するために確立された。手短に述べると、MDCK IIクローン34細胞を24ウェルトランスウェルプレート中に播種し、3日間にわたって単層を形成させた。次いで細胞を、FcRnへの結合を促進する酸性緩衝液中のビオチン化ヒトIgGを添加する前に頂端面上でCA170_01519.g57 Fab’PEGとプレインキュベートした。ヒトIgGは頂部から基底外側まで細胞を介して経細胞輸送し、下方チャンバにおいて中性緩衝液中に放出する。次いで基底外側におけるIgGのレベルを、MSDアッセイを使用して測定した。
【0327】
図5は、CA170_01519.g57 Fab’PEGが、MDCK IIクローン34細胞において頂部から基底外側までのIgG経細胞輸送を阻害することを示す。
【0328】
MDCK IIクローン34細胞を、24ウェルトランスウェルプレートの500,000個の細胞/ウェルにて播種し、単層が形成するまで、37℃、5%CO2にて3日間、インキュベートした。HBSS+(Ca/Mg)緩衝液+1%BSA中で頂部区画のpHを5.9に調整し、基底外側を7.2に調整した。頂部区画上の細胞を、37℃、5%CO2にて4時間、示した濃度にて、2.5μg/mlのビオチン化ヒトIgG(Jackson)を添加する前に1時間、CA170_01519.g57 Fab’PEGとプレインキュベートした。次いで基底外側培地を集め、全IgGをMSDアッセイ(抗ヒトIgG捕捉抗体(Jackson)及びストレプトアビジン-スルホタグ露出抗体(MSD)を使用した)によって測定した。阻害曲線を非線形回帰(Graphpad Prism(登録商標))によって分析してEC50を決定した。グラフは3回の実験から合わせたデータを表す。
【0329】
要約すると、
図5は、CA170_01519.g57 Fab’PEGが、25.5nM(n=3)のEC
50値で濃度依存的にヒトIgGの頂部から基底外側までの経細胞輸送を阻害し得ることを示す。
【0330】
CA170_01519.g57 Fab’PEGのインビトロ効果の要約
CA170_01519.g57 Fab’PEGは、IgG再利用及び経細胞輸送の両方を阻害する。IgG再利用アッセイにおいて達成した6nMのEC50は、中性緩衝液中の6.5nM及び酸性緩衝液中の5.42nMのKD値が得られた、細胞親和性結合データに匹敵する。CA170_01519.g57 Fab’PEGは、Fab’のみと比較して有効性のわずかな減少を示すが、評価した多くの他の候補分子と比較して、2つのフォーマット(上記参照)の間で有効性の最も低い低下を示した。IgG経細胞輸送アッセイにおいて、25.5nMのEC50が得られた。この部分におけるデータにより、CA170_01519.g57 Fab’PEGがヒトFcRn機能を阻害できることが明らかに示された。
【0331】
(例6)非ヒト霊長類FcRnとのCA170_01519.g57 Fab’PEGの公差反応
非ヒト霊長類PK/PD研究及び前臨床毒物学におけるCA170_01519.g57 Fab’PEGの使用を検証するために、カニクイザルマカクFcRnを用いてその相対的親和性及び機能的能力を検査した。MDCK II細胞をカニクイザルマカクFcRnで安定にトランスフェクトし、B2M(MDCK II(cm))を、ヒトFcRn及びB2M(MDCK IIクローン34)で安定にトランスフェクトした以前に記載されたMDCK II細胞と共に以下の研究に使用した。
【0332】
カニクイザルFcRnに対するCA170_01519.g57 Fab’PEGの細胞ベースの親和性
カニクイザルFcRnに対するCA170_01519.g57 Fab’PEGの細胞ベースの結合親和性を決定するために、MDCK II(cm)細胞及びAlexaFluor 488により標識したCA170_01519.g57 Fab’又はFab’PEGを使用して定量的フローサイトメトリー実験を実施した。様々な抗体濃度にわたるカニクイザルマカクFcRnへの抗体の特異的結合を使用してKDを決定した。中性及び酸性pHの両方において抗体結合を実施して、中性血漿又は酸性エンドソーム中でFcRnを結合する効果を決定し、それにより、カニクイザルマカクFcRnに対するCA170_01519.g57結合に対していくらかの効果的なpHが存在したことを決定した。
【0333】
図6は、酸性及び中性pHにおいてMDCK II(cm)細胞上で結合するCA170_01519.g57 Fab’(A)及びCA170_01519.g57 Fab’PEG(B)示す。
【0334】
MDCK II(cm)細胞を、pH7.4又はpH6のいずれかで、Alexa-fluor 488により標識したCA170_01519.g57 Fab’を添加する前に30分間、Facs緩衝液(0.2%w/vBSA、0.09%w/vNaN3を含むPBS)中で、又はFab’PEGを添加する前に1時間、Facs緩衝液中でインキュベートした。最終抗体濃度は931nM~0.002nMの範囲であった。細胞を氷冷Facs緩衝液中で洗浄し、次いでGuavaフローサイトメトリー(Millipore、UK)を使用してフローサイトメトリーによって分析した。滴定データセットもまた、非特異的結合を決定するために各抗体フォーマットについてのアイソタイプ対照抗体のために作った。種々の量の蛍光色素を有するビーズから生成した標準曲線から補間値を使用することによって結合した抗体のモル数を計算した。細胞及びビーズのフローサイトメトリー分析においてゲノム平均蛍光値を決定した。非特異的結合は抗FcRn抗体値から差し引き、生成した特異的結合曲線を1部位結合方程式(Graphpad Prism(登録商標))を使用した非線形回帰によって分析してK
Dを決定した。データは2から3回の間の実験の代表である。
【表7】
【0335】
図6は、カニクイザルマカクFcRnに結合するCA17001519.g57 Fab’(
図6A)及びFab’PEG(
図6B)についての代表的な結合曲線を示す。CA17001519.g57 Fab’及びFab’PEGについて得られた平均K
D値を表5に示す。これらの値は、ヒトFcRnに結合するCA170_01519.g57 Fab’及びFab’PEGについて得られたK
D値に匹敵する(表4を参照のこと)。
【0336】
CA170_01519.g57 Fab’PEGはカニクイザルIgGの再利用を阻害する
CA170_01519.g57 Fab’PEGが、カニクイザルFcRnを遮断するのに機能的に活性であるかどうかを決定するために、MDCK II(cm)細胞を使用して、ヒトFcRnアッセイについて以前に記載されているようにカニクイザルマカクIgGの再利用を阻害するCA170_01519.g57 Fab’PEGの能力を検査した。このアッセイは2つの間の比較を可能にするために代表的なヒトアッセイと共に実施した。
【0337】
手短に述べると、MDCK II細胞(クローン34又はcm)を、FcRnへの結合を可能にするために酸性緩衝液中にビオチン化ヒト(h)又はカニクイザルマカク(c)IgGを添加する前にCA170_01519.g57 Fab’PEGとプレインキュベートした。全ての過剰なCA170_01519.g57 Fab’PEG及びビオチン化IgGを除去し、IgGの上清への放出を可能にするために細胞を中性pH緩衝液中でインキュベートした。FcRnの阻害を、MSDアッセイによって上清に存在したIgGの量を検出することによって評価し、阻害パーセントを計算した。
【0338】
図7に示すように、CA170_01519.g57 Fab’PEGは濃度依存的にヒト及びカニクイザルマカクIgG再利用の両方を阻害でき、それぞれ8.448nM及び5.988nMのEC
50値を有する。ヒト及びカニクイザルマカクアッセイにおいてCA170_01519.g57 Fab’PEGによるFcRnの阻害は同等であるが、ヒトがカニクイザルFcRnよりわずかに有効であるように見える。
【表8】
【0339】
図7は、CA170_01519.g57がMDCK IIクローン34細胞及びMDCK II(cm)細胞においてIgG再利用を阻害することを示す。
【0340】
MDCK IIクローン34及びMDCK II(cm)細胞を96ウェルプレート中で25,000個の細胞/ウェルにて播種し、37℃、5%CO2にて一晩インキュベートした。細胞を、500ng/mlのビオチン化ヒト又はカニクイザルIgGを添加する前に、37℃、5%CO2にて1時間、HBSS+(Ca/Mg)pH5.9+1%BSA中のCA170_01519.g57 Fab’又はFab’PEGとプレインキュベートし、更に1時間インキュベートした。次いで細胞をHBSS+ pH5.9で洗浄し、37℃、HBSS+ pH7.2中で5%CO2にて2時間インキュベートした。上清を細胞から除去し、MSDアッセイ(抗ヒトIgG捕捉抗体(Jackson)及びストレプトアビジン-スルホタグ露出抗体(MSD)を使用した)を使用して全IgGについて分析した。阻害曲線を非線形回帰(Graphpad Prism(登録商標))により分析してEC50を決定した。グラフは2回の実験から合わせたデータを表す。
【0341】
(例7)カニクイザルにおける0519g Fab PEGの効果
これは、単一、間欠又は反復投与レジメンにおける、カニクイザルにおける0519g Fab PEGの投与の効果の研究であった。単回投与として又は反復投与において、表7に示した4匹のカニクイザルの群に静脈内注入によって0519g Fab PEGを投与した。血漿IgG及び01519g Fab PEGの薬物動態を、イムノアッセイ(イムノアッセイ法について表7Aを参照のこと)及びLC-MS/MSによってモニターした。血漿アルブミンのアッセイはCovanceにて行った。
【表9】
【表10】
【0342】
血漿IgG濃度に対する効果
イムノアッセイ及びLC-MS/MS血漿IgGデータは十分に一致した。血漿IgGはFab PEGの投与によって減少した(
図12及び
図14を参照のこと)。I相投与群の両方に関して、Fab PEGの単回投与は血漿IgGを約70~80%減少させ、ほぼ7日で最低に達し、63日で投与前のレベルに戻った。67日における再投与は同様の結果を達成した。
【0343】
II相投与群の両方に関して、Fab PEGの週に4回の投与は血漿IgGを約70~80%減少させ、最初の投与のほぼ7日後に再び最低に達した。この結果を
図13に示す。
【0344】
(例8)カニクイザルにおけるCA170_01519.g57 Fab’PEG及びCA170_01519.g57 IgG4Pの効果
内因性血漿IgGに対するCA170_01519g.57 Fab’PEG及びCA170_01519g.57 IgG4Pの効果をカニクイザルにおいて決定した。4匹の動物/処置群で、表8に示したように動物に投与した。血漿IgG及び抗FcRn実体の薬物動態を、イムノアッセイ(イムノアッセイ法について表8Aを参照のこと)及びLC-MS/MSによってモニターした。
【表11】
【表12】
【0345】
血漿IgG濃度に対する効果
イムノアッセイ及びLC-MS/MS血漿IgGデータは十分に一致した。血漿IgGは抗FcRn Fab’PEG又は抗FcRn IgG4Pの投与によって減少した(
図15及び16並びに
図17及び18のそれぞれを参照のこと;対照について
図19を参照のこと)。抗FcRn実体の両方に関して、単回投与は、血漿IgGを約70~80%減少させ、ほぼ7日で最低に達し、62日で投与前のレベルに戻った。記載されているように、63日又は65日における再投与は同様の結果を達成した。
【0346】
抗FcRn Fab’PEG又はIgG4Pの反復投与は、血漿IgGを約60~80%減少させ、投与期間の間、IgGのレベルを維持した。再び、最初の投与のほぼ7日後に最低に達した。この結果を
図16及び18に示す。
【0347】
(例9)hFcRnトランスジェニックマウスにおけるCA170_01519.g57 Fab’PEG、CA170_01519.g57 IgG1、CA170_01519.g57 IgG4P、CA170_01519.g57 Fab’HSA、CA170_01519.g57 FabFv及びCA170_01519.g57 Fabの効果
ヒトIVIGのクリアランスに対する抗体CA170_01519.g57の様々な異なるフォーマットの効果をヒトFcRnトランスジェニックマウスにおいて決定した。試験したフォーマットは、CA170_01519.g57 Fab’PEG、CA170_01519.g57 IgG1、CA170_01519.g57 IgG4P、CA170_01519.g57 Fab’HSA、CA170_01519.g57 FabFv及びCA170_01519.g57 Fabであり、この結果をそれぞれ
図20、21、22、23及び24に示す。活性化合物の単回投与は図に示した通りであった。ヒトIgG(IVIG)のクリアランスに対するそれらの効果を検出するために、マウスに500mg/kgのヒトIVIGを注射し、そのヒトIVIGを、間隔をあけてマウスの尾から取り出した一連の血漿試料中でLCMSMSによって定量した。試験した異なる抗体フォーマットの各々によるhFcRnの遮断の結果、hIVIGの促進したクリアランスが生じ、対照マウスと比較して低濃度の全IgGが観察された。
【0348】
抗FcRn処置はhFcRnトランスジェニックマウスにおいてhIgGのクリアランスを向上させる
ヒト化したFcRnトランスジェニックマウス(B6.Cg-Fcgrt
tm1DcrTg(FCGRT)32Dcr/DcrJ、JAXマウス)に、500mg/kgのヒトIgG(Human IgI 10%Gamunex-c、Talecris Biotherapeutics)を静脈内注入した。24時間後、動物にビヒクル対照(PBS)又は抗FcRnを単回投与として静脈内に投与した。尾端血液試料を、抗FcRn処置に対して-24、8、24、48、72、144及び192時間に採った。hFcRnマウスにおけるヒトIgGの血清レベル及びFcRn阻害剤の薬物動態をLC-MS/MSによって決定した。
図20~24に提示したデータは3~6匹/処置群での平均±SEMである。
【0349】
LC-MS/MSによるヒトIgG、内因性カニクイザルIgG及びFcRn阻害剤の定量化
トリプシン消化後、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)法を使用してヒトIgG、カニクイザルIgG及びFcRn阻害剤(1519.g57 Fab’PEG、1519.g57 IgG4P、1519.g57 IgG1、1519.g57 FavFv、1519.g57 Fab及び1519.g57 Fab’HAS)を定量した。
【0350】
内部標準として使用したスパイクしたウマミオグロブリンを用いて、ブランクマトリクス内に既知の濃度にてスパイクした真の標準材料との比較によって定量を行った。調査した対象の全ての検体に固有の(「プロテオティピック(proteotypic)」)ペプチドを選択し、試料及び校正試料の両方を以下に概説するようにトリプシンにより消化した。
【0351】
手短に述べると、アセトニトリル/トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン及びヨードアセトアミドでのカルバミド-メチル化(全てSigma-Aldrich製、Poole、UK)による変性後、シークエンシンググレード修飾トリプシン(Sequencing Grade Modified Trypsin)(Promega、Southampton、UK)を使用して5μlの血清試料のトリプシン消化を一晩実施した。
【0352】
1.5mL/分にて6分にわたって送達した2~95%(v/v)水/アセトニトリル(0.1%ギ酸)の勾配を用いて、Onyx Monolithic C18カラム(100×4.6mm、Phenomenex、Macclesfield、UK)を使用して検体を分離した。
【0353】
注入量は10μLであり、溶出液の全てを質量分析計ソース内に導入した。
【0354】
質量分析計のソース温度は600℃に維持し、他のソースパラメータ(例えば、衝突エネルギー、デクラスタリング電位、カーテンガス圧力など)を最適化して、対象の各ペプチドの感度の最大化を達成した。対象の各々のプロテオティピックペプチドのための選択的遷移をモニターした。
【0355】
(例10)結晶学及び結合エピトープ
結晶化を容易にするためにFcRnオリゴ糖(oligsaccharide)は排除して、1519g57 Fab’の結晶構造及び脱グリコシル化したヒトFcRn細胞外ドメイン(ベータ2ミクログロブリン配列番号95と会合するアルファ鎖細胞外ドメイン(配列番号94))を決定した。1519.g57 Fab’を10倍モル過剰のN-エチルマレイミドと反応させて、diFab’の形成を防ぎ、いくらかの既存のdiFab’をSEC(Akta FPLCによるS200)によって除去した。ヒトFcRn細胞外ドメインをPNGaseFによって処置して、N結合糖を除去した。このために、PBS(pH7.4)を使用してFcRn試料濃度を5mg/ml及び全量1mlに調整した。200単位のPNGaseF(Roche)をヒトFcRnのこの溶液に添加した。これを37℃にて約18時間インキュベートし、その後、SDS PAGEを使用して脱グリコシル化の程度を調べた。反応の完了時に、脱グリコシル化したFcRnは、50mMの酢酸ナトリウム、125mMのNaCl、pH6.0に交換した緩衝液であった。
【0356】
室温にて60分間、試薬の混合物(Fab’:FcRn::1.2:1、w/w)のインキュベーションによって複合体を形成させ、次いで、SEC(Akta FPLCを使用したS200)を使用して精製した。Qiagenから入手可能である様々な条件(約2000の条件)を使用してスクリーニングを実施した。Formulatrix Rock Imager 1000によってインキュベーション及び画像化を実施した(合計21日間のインキュベーション)。スクリーニングの結果を表9、10及び11に示す。
【表13】
【表14】
【表15】
【0357】
1519g57 Fab’の結合時に、(公開された構造のFcRnとのこの複合体と比較して)FcRn構造の明らかな変化は存在しなかった。結晶構造から、二次構造含有量はα-ヘリックス9.4%;β-シート45.2%;3~10ターン2.5%であると計算した。
【0358】
1519g57 Fab’と相互作用する残基は、全てFcRn α鎖(β2Mではない)内にあり、以下に太字で示す。関連のある残基は全てを含むが、残基の1つがFcを結合するのに重要である。1519g57はFc結合領域と重複する領域で結合し、1519g57 Fab’によるFcRnの遮断は単に競合によりものであり、抗FcRnがその優れた親和性のために効果的であることが示唆される。
【化4】
【0359】
1519g57 Fab’との相互作用に関与する残基(太字)及びIgGのFcとの相互作用に重要な残基(下線)を示す、FcRnα鎖配列。後者の1つ以外は全て前者に含まれる。
【配列表】