(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】基板処理装置、基板処理装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20240509BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240509BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/68 N
H01L21/304 642A
H01L21/304 648A
H01L21/304 648G
(21)【出願番号】P 2022098738
(22)【出願日】2022-06-20
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】柴田 哲弥
【審査官】小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0177788(US,A1)
【文献】特開2019-050349(JP,A)
【文献】特開平10-303283(JP,A)
【文献】特開平11-176912(JP,A)
【文献】特開平10-125765(JP,A)
【文献】特開2018-195735(JP,A)
【文献】特開2018-179761(JP,A)
【文献】特開平02-302879(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0080937(US,A1)
【文献】米国特許第06391113(US,B1)
【文献】特開2002-267616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 21/683
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板が浸漬されて前記複数の基板を一括して処理する処理液を貯留する処理槽;
前記複数の基板を一括して保持する機能を有する機構である基板保持機構;
前記基板保持機構を前記処理液に浸漬する機能と、前記基板保持機構を前記処理液から取り出す機能と、を有する機構である昇降器;および
前記基板保持機構に対して前記処理槽と反対側から前記処理槽の内部および前記基板保持機構を撮像して画像データを生成するカメラ
を含む基板処理装置を制御する方法であって、
前記基板保持機構が前記複数の基板を保持しない状態において、前記カメラが前記基板保持機構および前記内部を撮像して第1の前記画像データを生成する第1工程と、
前記第1の前記画像データが示す第1の領域において、少なくとも前記基板保持機構が撮像された領域である第2の領域を特定する第2工程と、
前記第1の領域であって前記第2の領域以外の第3の領域において分布する、前記第1の前記画像データの階調度を、前記階調度の閾値と比較する第3工程と
を備える、基板処理装置の制御方法。
【請求項2】
前記第2工程において、前記第1の領域において前記基板保持機構の影が撮像された第4の領域が特定され、
前記第3工程において、前記第3の領域は前記第1の領域から前記第2の領域および前記第4の領域を除外して得られる、
請求項1に記載の基板処理装置の制御方法。
【請求項3】
前記第2の領域は、前記第1の領域において前記昇降器の少なくとも一部が撮像された領域を含む、請求項1に記載の基板処理装置の制御方法。
【請求項4】
前記第2工程において、前記第1の領域において前記昇降器の前記少なくとも一部の影が撮像された第4の領域が特定され、
前記第3工程において、前記第3の領域は前記第1の領域から前記第2の領域および前記第4の領域を除外して得られる、
請求項3に記載の基板処理装置の制御方法。
【請求項5】
前記第1工程は前記処理槽から前記処理液が排出された状態で実行される、請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の、基板処理装置の制御方法。
【請求項6】
前記第1工程は前記処理槽に前記処理液が貯留された状態で実行され、
前記第1の前記画像データは、異なる時刻において前記内部を撮像して生成される複数の第2の前記画像データを用いた時間的な平滑化によって得られる、請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の、基板処理装置の制御方法。
【請求項7】
複数の基板が浸漬されて前記複数の基板を一括して処理する処理液を貯留する処理槽;
前記複数の基板を一括して保持する機能を有する機構である基板保持機構;
前記基板保持機構を前記処理液に浸漬する機能と、前記基板保持機構を前記処理液から取り出す機能と、を有する機構である昇降器;
前記基板保持機構に対して前記処理槽と反対側から前記処理槽の内部および前記基板保持機構を撮像して画像データを生成するカメラ;および
制御部
を備え、
前記制御部は、
前記基板保持機構が前記複数の基板を保持しない状態において、前記カメラが前記基板保持機構および前記内部を撮像して第1の前記画像データを生成し、
前記第1の前記画像データが示す第1の領域において、前記基板保持機構が撮像された領域である第2の領域を特定し、
前記第1の領域から前記第2の領域を除外して得られる第3の領域における前記第1の前記画像データの階調度を、前記階調度の閾値と比較する、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置および基板処理装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1,2では、複数の基板に対して一括して処理を実行するバッチ式の基板処理装置が提案されている。特許文献1,2において、基板処理装置は処理液を貯留する処理槽を含む。処理槽に貯留された処理液へ複数の基板を浸漬させることにより、複数の基板に対する一括した処理が行われる。
【0003】
特許文献1,2では、基板処理装置の内部を監視するために撮像部(カメラ)が設けられる。特許文献1では、処理槽に貯留された処理液を撮像部が撮像し、撮像画像に基づいて処理液の沸騰状態を制御部が特定する。特許文献2では、処理槽の内部を鉛直上方からカメラが撮像し、その撮像画像に基づいて処理槽の内部の基板片の有無が判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-50349号公報
【文献】米国特許出願公開第2007/0177788号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
処理液へ複数の基板を浸漬するに際して、複数の基板を一括して保持する機能を有する機構(以下「基板保持機構」と称される)が利用される。基板保持機構は複数の基板を処理液に浸漬し、処理液から取り出される。処理液によって一括して処理された複数の基板は他の機構によって基板保持機構から他所へ移動される。このとき、カメラは処理槽の内部を撮像する。当該撮像によって得られた画像データは、当該内部において基板の破片あるいは基板それ自身(以下「欠損部」と称される)が存在しているかの確認に利用される。
【0006】
この確認は、基板保持機構から移動された複数の基板における破損や欠落の有無を判断する観点で望ましい。当該内部において欠損部の存在が確認されることは、基板保持機構から移動された複数の基板において破損や欠落があると推測される根拠となり得るからである。
【0007】
例えば同じ処理液へと複数の基板の第1群と第2群とが入れ替わりで浸漬される場合には、基板保持機構は当該処理液を貯留する処理槽に対する昇降(これは「上下の移動」とも理解され得る)動作を繰り返す。かかる基板保持機構の昇降を阻害せず、かつ死角を小さくして処理槽の内部を撮像する観点から、カメラは基板保持機構の上方に配置される。
【0008】
第1群が基板保持機構から移動されてから第2群が基板保持機構へと載置されるまでの間、基板保持機構は処理槽に対して上部に位置し続ける場合がある。このような状況では、基板保持機構が処理液に浸漬されているか、処理槽の上方へと処理液から取り出されているかによらず、カメラと処理槽との間には基板保持機構が介在する。このような場合には、カメラは基板保持機構越しに処理槽の内部を撮像することになる。
【0009】
撮像された内部において欠損部が存在しているか否かの判断は、画像データにおいて暗いと判断される領域の広さに基づいて行うことができる。しかし上述の様にカメラが基板保持機構越しに処理槽の内部を撮像する場合、基板保持機構も撮像される。よって撮像された基板保持機構が当該判断において欠損部として誤って判断される可能性がある。
【0010】
そこで、本開示は、処理槽の内部を撮像する際に基板保持機構が撮像されても、基板保持機構が欠損部として判断される可能性を低減する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様に係る基板処理装置の制御方法は、基板処理装置を制御する方法であって、前記基板処理装置は、複数の基板が浸漬されて前記複数の基板を一括して処理する処理液を貯留する処理槽;前記複数の基板を一括して保持する機能を有する機構である基板保持機構;前記基板保持機構を前記処理液に浸漬する機能と、前記基板保持機構を前記処理液から取り出す機能と、を有する機構である昇降器;および、前記基板保持機構に対して前記処理槽と反対側から前記処理槽の内部および前記基板保持機構を撮像して画像データを生成するカメラを含む。
【0012】
前記方法は、前記基板保持機構が前記複数の基板を保持しない状態において、前記カメラが前記基板保持機構および前記内部を撮像して第1の前記画像データを生成する第1工程と、前記第1の前記画像データが示す第1の領域において、少なくとも前記基板保持機構が撮像された領域である第2の領域を特定する第2工程と、前記第1の領域であって前記第2の領域以外の第3の領域において分布する、前記第1の前記画像データの階調度を、前記階調度の閾値と比較する第3工程とを備える。
【0013】
第2の態様に係る基板処理装置の制御方法は、第1の態様に係る基板処理装置の制御方法であって、前記第2工程において、前記第1の領域において前記基板保持機構の影が撮像された第4の領域が特定され、前記第3工程において、前記第3の領域は前記第1の領域から前記第2の領域および前記第4の領域を除外して得られる。
【0014】
第3の態様に係る基板処理装置の制御方法は、第1の態様に係る基板処理装置の制御方法であって、前記第2の領域は、前記第1の領域において前記昇降器の少なくとも一部が撮像された領域を含む。
【0015】
第4の態様に係る基板処理装置の制御方法は、第3の態様に係る基板処理装置の制御方法であって、前記第2工程において、前記第1の領域において前記昇降器の前記少なくとも一部の影が撮像された第4の領域が特定され、前記第3工程において、前記第3の領域は前記第1の領域から前記第2の領域および前記第4の領域を除外して得られる。
【0016】
第5の態様に係る基板処理装置の制御方法は、第1の態様から第4の態様のいずれかに係る基板処理装置の制御方法であって、前記第1工程は前記処理槽から前記処理液が排出された状態で実行される。
【0017】
第6の態様に係る基板処理装置の制御方法は、第1の態様から第4の態様のいずれかに係る基板処理装置の制御方法であって、前記第1工程は前記処理槽に前記処理液が貯留された状態で実行され、前記第1の前記画像データは、異なる時刻において前記内部を撮像して生成される複数の第2の前記画像データを用いた時間的な平滑化によって得られる。
【0018】
第7の態様に係る基板処理装置は、複数の基板が浸漬されて前記複数の基板を一括して処理する処理液を貯留する処理槽;前記複数の基板を一括して保持する機能を有する機構である基板保持機構;前記基板保持機構を前記処理液に浸漬する機能と、前記基板保持機構を前記処理液から取り出す機能と、を有する機構である昇降器;前記基板保持機構に対して前記処理槽と反対側から前記処理槽の内部および前記基板保持機構を撮像して画像データを生成するカメラ;および、制御部を備える。前記制御部は、前記基板保持機構が前記複数の基板を保持しない状態において、前記カメラが前記基板保持機構および前記内部を撮像して第1の前記画像データを生成し、前記第1の前記画像データが示す第1の領域において、前記基板保持機構が撮像された領域である第2の領域を特定し、前記第1の領域から前記第2の領域を除外して得られる第3の領域における前記第1の前記画像データの階調度を、前記階調度の閾値と比較する。
【発明の効果】
【0019】
第1の態様に係る基板処理装置の制御方法、第3の態様に係る基板処理装置の制御方法、および第7の態様にかかる基板処理装置は、処理槽の内部を撮像する際に基板保持機構が撮像されても、基板保持機構が欠損部として判断される可能性を低減する。
【0020】
第2の態様に係る基板処理装置の制御方法の制御方法は、基板保持機構の影による誤判断の可能性を低減する。第4の態様に係る基板処理装置の制御方法の制御方法は、昇降器の少なくとも一部の影による誤判断の可能性を低減する。
【0021】
第5の態様に係る基板処理装置の制御方法の制御方法および第6の態様に係る基板処理装置の制御方法の制御方法は、処理槽104aに貯留される処理液の液面による反射光が異物の判別に影響を与える可能性を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施の形態にかかる基板処理装置の構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図2】処理槽が貯留する処理液への基板の浸漬および当該処理液からの基板の取り出しを示す側面図である。
【
図3】処理槽が貯留する処理液への基板の浸漬および当該処理液からの基板の取り出しを示す側面図である。
【
図4】処理槽と、リフタと、支持片の一部とを示す平面図である。
【
図5】カメラの撮像によって得られる画像データを模式的に示す図である。
【
図6】カメラの撮像によって得られる画像データを模式的に示す図である。
【
図7】異物が存在するかを判別する工程群を示すフローチャートである。
【
図8】基板が処理される工程群を示すフローチャートである。
【
図9】第1画像データを生成する工程群を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付される図面の参照を伴って実施の形態が説明される。なお、図面は概略的に示され、説明の便宜のために適宜、構成の省略、または、構成の簡略化がなされる、図面に示される構成の大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されてはおらず、適宜に変更され得る。
【0024】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号が付されて図示され、それらの名称と機能とについては同様である。したがって、それらについての詳細な説明は、重複を避けるために省略される場合がある。
【0025】
以下に記載される説明において、「第1」または「第2」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられ、これらの序数によって生じ得る順序に限定されはしない。
【0026】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表す。等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表す。
【0027】
形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸や面取りなどを有する形状も表す。
【0028】
一の構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」または「有する」という表現が用いられる場合、該表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。
【0029】
「連結」という表現は、特に断らない限り、2つの要素が接している状態のほか、2つの要素が他の要素を挟んで離れている状態も含む表現である。
【0030】
「A,BおよびCの少なくともいずれか一つ」という表現が用いられる場合、該表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A,BおよびCのうち任意の2つ、ならびに、A,BおよびCの全てを含む。
【0031】
<基板処理装置の構成の概要>
図1は、実施の形態にかかる基板処理装置1の構成の一例を概略的に示す平面図である。以下の各図における方向を統一的に示すために、
図1に示すように右手系のXYZ直交座標軸が設定される。ここでXY平面が水平面を表す。また、Z軸が鉛直軸を表し、より詳しくはZ方向が鉛直上方向である。-X方向はX方向と反対の方向であり、-Y方向はY方向と反対の方向であり、-Z方向はZ方向と反対の方向である。
【0032】
基板処理装置1は複数の基板Wに対して一括して処理を行うバッチ式の処理装置である。基板処理装置1は、載置部2と、ロボット4と、姿勢変換機構5と、プッシャ6と、搬送機構8と、処理ユニット10と、制御部9とを備える。
【0033】
制御部9は、例えば、基板処理装置1の動作を統括して制御することができる。制御部9は、例えば、演算部、メモリおよび記憶部等を有する。演算部は、例えば、1つ以上の中央演算ユニット(Central Processing Unit:CPU)等で構成される。メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性の記憶媒体で構成される。記憶部は、例えば、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)またはソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等の不揮発性の記憶媒体で構成される。記憶部は、例えば、プログラムおよび各種情報等を記憶することができる。演算部は、例えば、記憶部に記憶されたプログラムを読み込んで実行することで、各種の機能を実現することができる。このとき、RAMは、例えば、ワークスペースとして使用され、一時的に生成もしくは取得される情報等を記憶する。制御部9で実現される機能的構成の少なくとも一部は、例えば、専用の電子回路等のハードウェアで実現されてもよい。
【0034】
載置部2は収納器Fが載置される機能を有する。収納器Fは複数の基板Wを収納する機能を有する。収納器Fは、未処理の基板Wを収納した状態で載置部2に載置されたり、処理済の基板Wを収納するために空の状態で載置部2に載置されたりする。収納器Fの例としては、水平姿勢の複数枚(たとえば25枚)の基板WをZ方向に積層した状態で収納可能に構成されたFOUP(Front Opening Unified Pod)を挙げることができる。
【0035】
プロセス空間3は載置部2に対してY方向側で隣接する。プロセス空間3内には、ロボット4、姿勢変換機構5、プッシャ6、搬送機構8および処理ユニット10が配置されている。
【0036】
載置部2とプロセス空間3とは、開閉自在なシャッタを装備する隔壁(図示省略)により区画される。当該シャッタは、制御部9の制御によって開閉され、載置部2とプロセス空間3とを空間的に分離したり、相互に連通させたりする。載置部2とプロセス空間3とが連通する状態で、収納器Fからプロセス空間3へと未処理の基板Wが搬入されたり、処理済の基板Wが収納器Fへと搬出されたりする。
【0037】
プロセス空間3と収納器Fとの間での基板Wの搬入および搬出は、ロボット4によって行われる。ロボット4は水平面内で旋回自在に構成されている。ロボット4は、シャッタが開いた状態で、姿勢変換機構5と収納器Fとの間で複数枚の基板Wを受け渡しする。当該受け渡しは模式的に白抜き矢印で示される。
【0038】
姿勢変換機構5は、ロボット4を介して収納器Fから基板Wを受け取った後、複数枚の基板Wの姿勢を水平姿勢から起立姿勢へと変換する。姿勢変換機構5は、ロボット4を介して収納器Fに基板Wを受け渡す前に、複数枚の基板Wの姿勢を起立姿勢から水平姿勢へと変換する。
【0039】
処理ユニット10は姿勢変換機構5に関してロボット4とは反対側(同図中の-X方向側)に配置される。搬送機構8は処理ユニット10に関して姿勢変換機構5とは反対側(同図中の-X方向側)に配置される。
【0040】
処理ユニット10は一方向(同図中の-Y方向)にこの順に並んで配置される処理部101,102,103,104,105を含む。搬送機構8は、プッシャ6に対向した位置(以下「待機位置」という)から処理部101,102,103,104,105が配列された方向およびその反対方向に沿って、水平方向に移動可能である。
【0041】
プッシャ6は、姿勢変換機構5と搬送機構8との間に配置される。プッシャ6は、姿勢変換機構5と搬送機構8との間で起立姿勢の複数枚の基板Wを受け渡しする。
【0042】
搬送機構8は一対のアーム81を備える。この一対のアーム81の位置によって、複数の基板Wの一括された保持と当該保持の解除とを切り替えることができる。各アーム81は、その下縁が互いに接近する方向に水平軸周りに揺動して、複数の基板Wを一括して挟んで保持する。各アーム81は、その下縁が互いに離れる方向に水平軸周りで揺動して、複数の基板Wの保持が解除される。
【0043】
搬送機構8はY方向および-Y方向のいずれに沿っても移動可能であるので、一対のアーム81は処理部101,102,103,104,105の各々に対向した位置(以下「処理位置」とも称される)および待機位置に位置決めされる。
【0044】
待機位置では、プッシャ6を介して姿勢変換機構5とアーム81との間での基板Wの受け渡しが可能である。
【0045】
処理ユニット10は昇降器40a,40b,40cを有する。昇降器40aにはリフタ20aが取り付けられる。昇降器40bにはリフタ20bが取り付けられる。昇降器40cにはリフタ20cが取り付けられる。リフタ20a,20b,20cのいずれもが、複数の基板Wを保持する基板保持機構として機能する。
【0046】
昇降器40aおよびリフタ20aは、処理部103,104の間でY方向および-Y方向のいずれに沿っても移動可能であり、処理部103,104に対応する処理位置へと位置決めされる。昇降器40aおよびリフタ20aは、処理部103,104における基板Wの処理に利用される。
【0047】
昇降器40bおよびリフタ20bは、処理部101,102の間でY方向および-Y方向のいずれに沿っても移動可能であり、処理部101,102に対応する処理位置へと位置決めされる。昇降器40bおよびリフタ20bは、処理部101,102における基板Wの処理に利用される。
【0048】
昇降器40cおよびリフタ20cは、処理部105における基板Wの処理に利用される。
【0049】
処理部101は処理槽101bを含む。処理部103は処理槽103bを含む。処理槽101b,103bはZ方向に向けて開口する。処理槽101b,103bには、複数の基板Wを一括して処理する所定の薬液が貯留される。
【0050】
処理槽101bが貯留する薬液へ浸漬された基板Wは当該薬液による処理を受ける。処理槽103bが貯留する薬液へ浸漬された基板Wは当該薬液による処理を受ける。当該薬液が処理槽101b,103b同士で異なるか否かは不問である。
【0051】
処理部102は処理槽102aを含む。処理部104は処理槽104aを含む。処理槽102a,104aはZ方向に向けて開口する。処理槽102aには、処理槽101bに貯留される薬液を基板Wから洗滌する処理液たるリンス液(たとえば純水)が貯留される。処理槽104aには、処理槽103bに貯留される薬液を基板Wから洗滌する処理液たるリンス液(たとえば純水)が貯留される。処理槽102aが貯留するリンス液へ浸漬された基板Wは当該リンス液による洗滌を受ける。処理槽104aが貯留するリンス液へ浸漬された基板Wは当該リンス液による洗滌を受ける。
【0052】
処理部105は、例えば減圧雰囲気中で有機溶剤、例えばイソプロピルアルコールを、基板Wに供給することによって基板Wを乾燥させる。
【0053】
処理槽103b,104aに対する基板Wの浸漬および取り出しは、昇降器40aおよびリフタ20aによって実現される。昇降器40aはリフタ20aを処理槽103bに貯留された薬液に浸漬する機能と、リフタ20aを当該薬液から取り出す機能と、リフタ20aを処理槽104aに貯留されたリンス液に浸漬する機能と、リフタ20aを当該リンス液から取り出す機能とを有する。
【0054】
処理槽101b,102aに対する基板Wの浸漬および取り出しは、昇降器40bおよびリフタ20bによって実現される。昇降器40bはリフタ20bを処理槽101bに貯留された薬液に浸漬する機能と、リフタ20bを当該薬液から取り出す機能と、リフタ20bを処理槽102aに貯留されたリンス液に浸漬する機能と、リフタ20bを当該リンス液から取り出す機能とを有する。
【0055】
処理部105に対する基板Wの投入および取り出しは、昇降器40cおよびリフタ20cによって実現される。
【0056】
リフタ20aは、昇降器40aによってZ方向へ上昇して処理槽103b,104aよりも上方に位置する状態で、搬送機構8との間で複数の基板Wが受け渡しされる。リフタ20bは、昇降器40bによってZ方向へ上昇して処理槽101b,102aよりも上方に位置する状態で、搬送機構8との間で複数の基板Wが受け渡しされる。リフタ20cは、昇降器40cによってZ方向へ上昇して処理部105よりも上方に位置する状態で、搬送機構8との間で複数の基板Wが受け渡しされる。
【0057】
具体的には例えば当該状態において搬送機構8が処理位置に移動してリフタ20a,20b,20cのいずれかとX方向に沿って並び、上述の保持および解除によって当該受け渡しが実行される。
【0058】
処理部101,103においては、例えば処理液たる薬液による基板Wの処理が行われる。処理部102,104においては、例えば基板W上の薬液のすすぎ(以下では「洗滌」と表現される)が行われる。処理部105においては、例えば乾燥処理が行われる。
【0059】
図2は-X方向に沿って見た、処理槽104aが貯留する処理液への基板Wの浸漬および当該処理液からの基板Wの取り出しを示す側面図である。
図3はY方向に沿って見た、処理槽104aが貯留する処理液への基板Wの浸漬および当該処理液からの基板Wの取り出しを示す側面図である。
【0060】
図示の煩雑を避けるため、
図2において昇降器40aは省かれている。
図2および
図3においては処理槽104aにリンス液Qが貯留される場合が例示される。
【0061】
図2および
図3において、基板Wがリフタ20aと共にリンス液Qへ浸漬された状態は、一点鎖線を用いて示される。
図2および
図3において、基板Wがリフタ20aと共にリンス液Qから取り出されている状態は、浸漬の前であるか後であるかが区別されることなく、実線を用いて示される。
図2において二点鎖線は、基板Wがリフタ20aと共にリンス液Qから取り出されている状態と、リンス液Qに浸漬されている状態との間の遷移を模式的に示す。
【0062】
リフタ20aは複数の棒21と板22とを含む。例えばリフタ20aは3本の棒21を含む。棒21の各々は複数の基板Wを間隔を空けて支持する。例えば棒21の各々には、図において明示されないが、X方句において相互に離れた25個の溝が設けられる。
【0063】
板22は例えばX方向に対して垂直に広がる。いずれの棒21の端(例えば-X方向の端)も、板22に連結される。複数の棒21および板22を含むことにより、リフタ20aは複数の基板Wを保持する機能を担う。リフタ20b,20cもリフタ20aと同様に構成され、複数の基板Wを保持する機能を担う。
【0064】
図2においては処理部104が有するカメラ30も示される。
図1においては図示の煩雑を避けるためにカメラ30は省略される。カメラ30は処理槽104aに対して、リフタ20aよりもZ方向側に配置される。カメラ30はリフタ20aに対して処理槽104aと反対側から処理槽104aの内部を撮像する。
【0065】
カメラ30は制御部9の制御によって処理槽104aの内部を撮像して画像データを生成する。画像データは制御部9に伝達され、後述される判別処理に供せられる。
【0066】
処理部102は、処理槽102aに対してリフタ20bよりもZ方向側に配置されるカメラ30を有してもよい。この場合、処理槽104aに対してリフタ20aよりもZ方向側に配置されるカメラ30が省略されてもよい。あるいは処理部105に対してリフタ20cよりもZ方向側に配置されるカメラ30が設けられてもよい。基板処理装置1は、上述された制御部9と、一つまたは複数のカメラ30とを有する。
【0067】
図3を参照して、昇降器40aは支持片41、昇降ガイド42、モータ43、サーボアンプ44を含む。
【0068】
支持片41はリフタ20aの板22を、-X方向側から支持する。昇降ガイド42は支持片41の昇降、具体的にはZ方向への支持片41の移動および-Z方向への支持片41の移動を案内する。例えば昇降ガイド42は、モータ43の回転軸に連結されたボールねじと、当該ボールねじに嵌まるタップが掘られ、かつ板22が連結された棒(いずれも不図示)を有する。モータ43は制御部9の制御の下でサーボアンプ44によって駆動され、支持片41を昇降させる。制御部9はサーボアンプ44を介してモータ43を制御してリフタ20aを所定の位置へ移動させる。
【0069】
例えばモータ43はステッピングモータである。サーボアンプ44は制御部9から回転する指示を受けてモータ43を駆動する他、支持片41の上下位置、ひいてはリフタ20aの上下位置に関する情報をモータ43から制御部9へ伝達する。
【0070】
昇降器40b,40cも昇降器40aと同様に構成され、それぞれリフタ20b,20cを昇降させて所定の位置に移動させる。
【0071】
<リフタと搬送機構との間での基板の受け渡し>
基板Wが処理部101,102,103,104,105における処理を受ける流れは、下記のように区分される工程で例示される:
(i)プッシャ6が搬送機構8へ基板Wを受け渡す;
(ii)搬送機構8が処理部101に対する処理位置までY方向へ移動する;
(iii)昇降器40bによって処理槽101bの上方に位置したリフタ20bへ、搬送機構8から基板Wが受け渡される;
(iv)昇降器40bがリフタ20bを降ろし、リフタ20bおよびこれに保持される基板Wを、処理槽101bが貯留する薬液へ浸漬する;
(v)昇降器40bがリフタ20bを上昇させ、リフタ20bおよびこれに保持される基板Wを、処理槽101bが貯留する薬液から取り出す;
(vi)昇降器40bが処理部102に対する処理位置まで-Y方向へ移動する;
(vii)昇降器40bがリフタ20bを降ろし、リフタ20bおよびこれに保持される基板Wを、処理槽102aが貯留するリンス液へ浸漬する;
(viii)昇降器40bがリフタ20bを上昇させ、リフタ20bおよびこれに保持される基板Wを、処理槽102aが貯留するリンス液から取り出す;
(ix)搬送機構8が処理部102に対する処理位置まで移動する;
(x)昇降器40bによって処理槽102aの上方に位置したリフタ20bから、搬送機構8へ、基板Wが受け渡される;
(xi)搬送機構8が処理部103に対する処理位置まで-Y方向へ移動する;
(xii)昇降器40aによって処理槽103bの上方に位置したリフタ20aへ、搬送機構8から基板Wが受け渡される;
(xiii)昇降器40aがリフタ20aを降ろし、リフタ20aおよびこれに保持される基板Wを、処理槽103bが貯留する薬液へ浸漬する;
(xiv)昇降器40aがリフタ20aを上昇させ、リフタ20aおよびこれに保持される基板Wを、処理槽103bが貯留する薬液から取り出す;
(xv)昇降器40aが処理部104に対する処理位置まで-Y方向へ移動する;
(xvi)昇降器40aがリフタ20aを降ろし、リフタ20aおよびこれに保持される基板Wを、処理槽104aが貯留するリンス液Qへ浸漬する;
(xvii)昇降器40aがリフタ20aを上昇させ、リフタ20aおよびこれに保持される基板Wを、リンス液Qから取り出す;
(xviii)搬送機構8が処理部104に対する処理位置まで移動する;
(xix)昇降器40aによって処理槽104aの上方に位置したリフタ20aから、搬送機構8へ、基板Wが受け渡される;
(xx)搬送機構8が処理部105に対する処理位置まで-Y方向へ移動する;
(xxi)昇降器40cによって処理部105の上方に位置したリフタ20cへ、搬送機構8から基板Wが受け渡される;
(xxii)リフタ20cが基板Wを処理部105に投入し、基板Wを乾燥させる。
【0072】
カメラ30は工程(xix)の後、例えば工程(xix)の後であって工程(xxi)の前において、処理槽104aの内部を撮像する。処理部102がカメラ30を有するとき、当該カメラ30は工程(x)の後、例えば工程(x)の後であって工程(xii)の前において、処理槽102aの内部を撮像する。
【0073】
<画像データに基づく処理>
図4は-Z方向に沿って見た処理槽104aと、リフタ20aと、支持片41の一部とを示す平面図である。
図4においては、処理槽104a内に欠損部Dが存在する場合が例示される。後述される画像データにおける領域300,30A,30B,30Cが、鎖線で併記される。
【0074】
カメラ30は少なくとも、処理槽104aの内側および当該内側とカメラ30との間にZ方向に沿って存在する物体と、存在する場合には欠損部Dとを撮像する。この撮像の際にはリフタ20aは基板Wを保持していない。当該物体は具体的にはリフタ20aと、昇降器40aの少なくとも一部(例えば支持片41のX方向側の一部)とである。
【0075】
領域30Aは画像データにおいて当該物体が撮像された領域である。領域30Aは平面視上、具体的には-Z方向に沿って見て広がる。
【0076】
領域30Aは、少なくともリフタ20aが撮像された領域であり、リフタ20aが撮像された領域と昇降器40aの少なくとも一部とが撮像された領域である、ともいえる。
【0077】
領域300は処理槽104aの内側が撮像された領域である。但し、理解を容易とするため、領域300の外郭は処理槽104aの内側よりも、更にやや内側に描かれている。
【0078】
領域30Cは、(I)領域300であって領域30A以外の領域、あるいは(II)領域300であって領域30A,30B以外の領域である。(I)の場合には領域30Cは領域300から領域30Aが除外されて残置する領域であり、(II)の場合には領域30Cは領域300から領域30A,30Bが除外されて残置する領域であるということもできる。かかる観点から領域30A,30Bは以下において除外領域30A,30Bとも称され、領域30Cは以下にいて残置領域30Cとも称される。
【0079】
(I)の場合.
図5は、領域30Cが、領域300から領域30Aが除去された領域である場合に、カメラ30の撮像によって得られる画像データG1を模式的に示す。
図5において欠損部Dが領域30Cにおいて占める領域D1が描かれる。
【0080】
領域30Cにおいて分布する画像データG1の階調度を、階調度の閾値と比較して領域D1の存否を判断することができる。分布する階調度を閾値と比較して領域を特定する技術自体は周知であるので、ここではその詳細は割愛される。例えば欠損部Dは基板Wの一部またはその全体であり、欠損部Dが存在しない処理槽104aの内部と比較して、暗い。以下の説明において、明度が高い程高い階調度が採用される。第1の閾値よりも低い階調度を示す領域として領域D1が特定される。
【0081】
領域D1が存在するときには処理槽104aにおいて欠損部Dが存在すると判別される。より一般的に言えば、領域D1の存否を判断することが、処理槽104aにおける異物の存否の判別に寄与する。
【0082】
そして領域D1の存否は領域300から除外領域30Aが除去されて残置する残置領域30Cにおいて判断されるので、基板保持機構として機能するリフタ20aや支持片41が撮像されていても、これらが欠損部Dとして判断される可能性が低減される。
【0083】
(II)の場合.
図6は、残置領域30Cが、領域300から除外領域30A,30Bが除去された領域である場合に、カメラ30の撮像によって得られる画像データG2を模式的に示す。
図6において欠損部Dが残置領域30Cにおいて占める領域D2が描かれる。
【0084】
除外領域30Bは、リフタ20aの影が撮像されて領域300において占める領域である。ここでは除外領域30Bは支持片41の影が撮像されて領域300において占める領域も含む。これらの影は、処理槽104a、リフタ20a、および昇降器40aに対する外光(図示省略)に由来する。例えば当該外光は処理槽104aの内部を全体的に明るくするものの、当該内部のうちリフタ20aおよび昇降器40aによって遮られる部分を局所的に暗くする。
【0085】
当該影は暗いため、階調度を用いた判断において、当該影も欠損部Dであるかのような誤判断の可能性がある。残置領域30Cが除外領域30Bを含まないことは、かかる可能性の低減に寄与する。
【0086】
この場合も領域D1と同様にして、領域30Cにおいて分布する画像データG2の階調度を閾値と比較して、領域D2の存否を判断することができる。領域D2の存否を判断することが、処理槽104aにおける異物の存否の判別に寄与する。
【0087】
そして領域D2の存否は領域300から除外領域30A,30Bが除去されて残置する残置領域30Cにおいて判断されるので、基板保持機構として機能するリフタ20aや支持片41が撮像されていても、これらやこれらの影が欠損部Dとして判断される可能性が低減される。
【0088】
<除外領域の特定>
除外領域30A,30Bは例えば、第1の閾値よりも大きい第2の閾値を用いて、以下のように特定される。カメラ30により、リフタ20aや支持片41は例えば処理槽104aよりも暗く撮像される。第2の閾値よりも階調度が低く(明度が低く)かつ第1の閾値よりも階調度が高い(明度が高い)領域を除外領域30Aとして特定することができる。
【0089】
リフタ20aや支持片41の影は、例えばリフタ20aや支持片41よりも暗く撮像される。よって第2の閾値を小さくすることにより、第2の閾値よりも階調度が低く(明度が低く)かつ第1の閾値よりも階調度が高い(明度が高い)領域を除外領域30A,30Bとして特定することができる。第1の閾値および第2の閾値は、例えば予め決定され、あるいは例えば画像データにおける階調値の分布に応じて決定される。
【0090】
あるいは除外領域30A,30Bは例えば予め特定されてもよい。リフタ20a、支持片41の形状は設計仕様として既知であるので除外領域30Aは予め特定され得る。除外領域30Bは領域300において除外領域30Aに対してマージンを採って拡げた領域として予め特定され得る。
【0091】
<異物の有無の判別>
(I)、(II)のいずれの場合においても、例えば領域D1,D2の面積が第3の閾値よりも大きいときに、異物が存在すると判断される。これは異物、例えば欠損部Dが存在しないにも拘わらず、欠損部Dが存在するとして誤検出する可能性の低減に寄与する。このような、所定の範囲にある階調度が分布する領域の面積と、閾値との比較自体は周知であるので、ここではその詳細は割愛される。
【0092】
除外領域30A,30Bの特定における誤差、または残置領域30Cにおいて分布する階調値と第3の閾値との比較における誤差によって、第3の閾値よりも大きいと判断された小さな領域D1,D2の複数が特定される場合が想定される。複数の領域D1または複数の領域D2が得られる場合、第3の閾値と比較される面積は、例えば複数の領域D1の総面積や、複数の領域D2の総面積ではない。それぞれが纏まった個別の領域D1,D2の面積を第3の閾値と比較することは、複数の領域D1(または領域D2)を集約して大きな領域D1(または領域D2)が存在すると誤認する可能性の低減に寄与する。
【0093】
図7は処理槽104aにおいて異物が存在するかを判別する工程群を示すフローチャートである。当該フローチャートには、その意義を反映して「異物判別処理」との標題が付記される。当該工程群は、この順に実行されるステップS11,S12,S13を有する。
【0094】
ステップS11は、制御部9の制御の下でカメラ30が撮像することにより、第1画像データを生成する工程である。第1画像データは上述の例では画像データG1,G2として例示される。第1画像データの生成は例えばカメラ30自体が行い、第1画像データは制御部9における処理に供せられるべく制御部9に与えられる。
【0095】
ステップS12は除外領域30Aを特定する工程、または除外領域30A,30Bを特定する工程である。これらの特定は上述の方法によって制御部9において行われる。
図7においては図示の簡単のため、除外領域30A,30Bの両方が特定される場合が例に取って示される。
【0096】
ステップS13は残置領域30Cにおいて異物を判別する工程である。ステップS12において除外領域30Aのみが特定された場合、当該判別は制御部9による領域D1と第2の閾値との比較によって行われる。ステップS12において除外領域30A,30Bが特定された場合、当該判別は制御部9による領域D2と第2の閾値との比較によって行われる。
【0097】
例えば領域D1の面積または領域D2の面積が、第3の閾値よりも大きい場合、異物、具体的には例えば欠損部Dが存在すると判断される。
【0098】
このようなステップS11,S12,S13の実行により、基板保持機構として機能するリフタ20aや支持片41が、あるいはそれらの影が撮像されても、これらが欠損部Dとして判断される可能性が低減されつつ、欠損部Dの存否を判別できる。
【0099】
<撮像時の基板保持機構の位置>
図8は処理槽104aにおいて基板Wが処理される工程群を示すフローチャートである。当該フローチャートには、その意義を反映して「処理槽での基板処理」との標題が付記される。
図8で示された工程群の実行は、
図7で示された工程群の実行に先行する。
【0100】
図8で示された工程群は、この順に実行されるステップS21、S22,S23,S24,S25を有する。
【0101】
ステップS21はリフタ20aへ基板Wを載置する工程であり、上述の工程(xii)に相当する。かかる載置は搬送機構8によって実行される。
【0102】
ステップS22は処理槽104aへ、より具体的には処理槽104aに貯留されるリンス液Qへ、基板Wを浸漬する工程である。ステップS22は上述の工程(xvi)に相当する。かかる浸漬は昇降器40aによって実行される。
【0103】
ステップS23は、処理槽104aにおける基板Wの処理に必要な時間を確保する工程である。ステップS23においては、ステップS22が実行されてから所定時間が経過したか否が判断される。当該判断が否定的であれば、つまりステップS22が実行されてから所定時間が経過していなければステップS23が繰り返し実行される。当該判断が肯定的であれば、つまりステップS22が実行されてから所定時間が経過したときには、ステップS24が実行される。
【0104】
ステップS24は処理槽104aから基板Wを引き上げる工程である。かかる引き上げによってリンス液Qから基板Wが取り出される。ステップS24は上述の工程(xvii)に相当する。かかる引き上げ(あるいは取り出し)は昇降器40aによって実行される。
【0105】
ステップS25はリフタ20aから基板Wを移動する工程である。ステップS25は、より具体的には、基板Wをリフタ20aから搬送機構8へ受け渡す工程である。ステップS25は上述の工程(xix)に相当する。かかる移動(あるいは受け渡し)は搬送機構8によって実行される。
【0106】
図8で示された工程群はステップS26を更に有してもよい。ステップS26の有無によらず処理槽104aにおける基板Wの処理は実現される。ステップS26が省略可能であることは、ステップS26を示す枠が破線であることによって示される。
【0107】
ステップS26はステップS25の後に実行される。ステップS26は、ステップS25の実行によって基板Wを保持しなくなったリフタ20aを、処理槽104aへ、より具体的にはリンス液Qへ浸漬する工程である。ステップS26が実行される場合の利点が以下に説明される。
【0108】
ステップS25の実行で
図8のフローチャートが終了する場合、その後にステップS11においてカメラ30が撮像する際、リフタ20aには基板Wは配置されず、かつリフタ20aおよび支持片41は処理槽104aからZ方向へ離れて位置する(
図3において実線で示されたリフタ20aおよび支持片41の位置を参照)。
【0109】
ステップS26の実行で
図8のフローチャートが終了する場合、その後にステップS11においてカメラ30が撮像する際、リフタ20aには基板Wは配置されず、かつリフタ20aおよび支持片41は処理槽104aとZ方向においてほぼ同じ位置にある(
図3において鎖線で示されたリフタ20aおよび支持片41の位置を参照)。
【0110】
リフタ20aおよび支持片41は、これらがカメラ30に近いほど大きく撮像される。ステップS25の実行で
図8のフローチャートが終了する場合と比較して、ステップS26の実行で
図8のフローチャートが終了する場合の方が、除外領域30A、あるいは除外領域30A,30Bが、領域300に占める割合は小さい。これは処理槽104aにおける欠損部Dの検出において、判断の対象となる残置領域30Cを広くする観点で有利である。
【0111】
<処理槽中の液の影響>
処理槽104aにリンス液Qが貯留されている状態では、リンス液Qの液面による反射光が画像データに影響を与える。当該反射光は液面が揺らぐことによって時間的にも空間的にも変動する。当該変動は上述された異物の判別に影響を与える可能性がある。
【0112】
ステップS11においてカメラ30が複数回の撮像を行って複数の第2画像データを得てもよい。複数の第2画像データの時間的な平滑化によって第1画像データを得ることは、リンス液Qの液面による反射光が異物の判別に影響を与える可能性を低減することに寄与する。
【0113】
図9は第2画像データを利用して第1画像データを生成する工程群を示すフローチャートである。当該工程群はこの順に実行されるステップS111,S112を有する。ステップS111,S112はステップS11に含まれる。
【0114】
ステップS111は複数の第2画像データを生成する工程である。当該複数の第2画像データは複数の異なる時刻において、処理槽104aの内部を撮像して生成される。
【0115】
ステップS112は複数の第2画像データから第1画像データを生成する工程である。具体的には複数の第2画像データの時間的な平滑化を行って第1画像データが生成される。かかる平滑化はたとえば複数の第2画像データにおいて相互に対応する画素の平均値を算出して得られる。当該平均値は例えば算術平均、幾何平均によって算出される。
【0116】
カメラ30による処理槽104aの内部の撮像は、処理槽104aからリンス液Qが排出された状態で実行されてもよい。この場合には、工程(xix)の後、カメラ30による撮像の前に、リンス液Qを排出する工程が実行される。
【0117】
この場合には、生成される画像データは、リンス液Qの液面による反射光の影響を受けない。処理槽104aからリンス液Qが排出された状態で実行される撮像も、リンス液Qの液面による反射光が異物の判別に影響を与える可能性を低減することに寄与する。
【0118】
処理部104に関する上述の説明は、処理部102,105においても妥当する。具体的には処理部102にカメラ30が設けられるときには、上述の説明においてリフタ20aをリフタ20bと読み替え、処理槽104aを処理槽103bと読み替え、昇降器40aが昇降器40bと読み替えられる。
【0119】
<変形>
上記実施形態において、例えば、除外領域30A,30B、残置領域30Cのいずれもが特定されずに異物の存否が判断されてもよい。例えば画像データG1のうち除外領域30Aの面積に相当する値が第3の閾値として採用され、領域300において分布する階調度のうち第1の閾値よりも大きい階調度を示す領域の面積と第3の閾値とが比較されてもよい。あるいは例えば画像データG2のうち除外領域30A,30Bの面積に相当する値が第3の閾値として採用され、領域300において分布する階調度のうち第1の閾値よりも大きい階調度を示す領域の面積と第3の閾値とが比較されてもよい。これらの場合、第3の閾値は例えば、リフタ20aや支持片41の設計値から予め設定され得る。
【0120】
なお、上記各実施形態および各種変形例をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0121】
1 基板処理装置
9 制御部
20a,20b リフタ(基板保持機構)
30 カメラ
30A,30B,30C,300 領域
40a,40b 昇降器
102a,104a 処理槽
Q リンス液(処理液)
W 基板