(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】遠心分離機および遠心分離機を動作させる方法
(51)【国際特許分類】
B04B 1/08 20060101AFI20240509BHJP
B04B 11/02 20060101ALI20240509BHJP
B04B 13/00 20060101ALI20240509BHJP
B04B 7/14 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B04B1/08
B04B11/02
B04B13/00
B04B7/14
(21)【出願番号】P 2022561571
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(86)【国際出願番号】 EP2021058440
(87)【国際公開番号】W WO2021204623
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-12-02
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509005513
【氏名又は名称】アルファ-ラヴァル・コーポレート・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ペール-グスタフ・ラーション
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-066382(JP,A)
【文献】特表2020-523195(JP,A)
【文献】特表2019-516548(JP,A)
【文献】特表2002-537997(JP,A)
【文献】特開昭59-199066(JP,A)
【文献】特表2013-517939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B 1/00-15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生成物を相対的重相と相対的軽相とに分離するための遠心分離機(1)であって、回転軸(x)の周りを回転可能な遠心回転子(4)を備え、
前記遠心回転子(4)が、
内部空間(8)を取り囲む回転子壁(7)と、
前記内部空間(8)中に設けられた円錐台形分離ディスク(9)のスタックと、
前記内部空間(8)に前記生成物を導くための入口(10)と、
前記内部空間(8)から前記相対的軽相を排出するための第1の出口(11)と、
前記内部空間(8)から前記相対的重相を排出するための第2の出口(12)と
を備え、
前記第2の出口(12)が、前記回転子壁(7)の内側に沿って、前記内部空間(8)の径方向外側領域(8a)から前記内部空間(8)の径方向内側領域(8b)に向かって延びる複数の出口チャネル(14)を備え、前記出口チャネル(14)の各々が、前記径方向外側領域(8a)から前記相対的重相の流れを移送するように構成されており、
当該遠心分離機(1)は、複数の温度センサ(20)を備え、各温度センサ(20)が、前記出口チャネル(14)のそれぞれ1つの少なくとも近傍に設けられて、
それぞれの前記出口チャネル(14)の近傍における温度を検知し、
検知した温度を表す信号を提供する
ように構成されている、遠心分離機(1)。
【請求項2】
前記温度センサ(20)の各々が、それぞれの前記出口チャネル(14)に隣接し、前記分離ディスク(9)のスタックに向かって曲がっている前記出口チャネル(14)の側に位置している、請求項1に記載の遠心分離機(1)。
【請求項3】
前記遠心回転子(4)が、前記分離ディスク(9)のスタックと前記回転子壁(7)の上部(7a)との間の前記内部空間(8)中に設けられた分離要素(17)を備え、前記出口チャネル(14)が、前記分離要素(17)と前記回転子壁(7)の前記上部(7a)の内側との間に設けられている、請求項1または2に記載の遠心分離機(1)。
【請求項4】
前記出口チャネル(14)の各々が、前記分離要素(17)中にそれぞれの溝を備えている、請求項3に記載の遠心分離機(1)。
【請求項5】
前記出口チャネル(14)の各々がそれぞれのパイプによって形成されている、請求項3に記載の遠心分離機(1)。
【請求項6】
前記温度センサ(20)の各々が、前記分離要素(17)中の凹部(21)中に設けられている、請求項3から5のいずれか一項に記載の遠心分離機(1)。
【請求項7】
前記温度センサ(20)の各々が、前記温度センサ(20)から前記信号を受け取って受け取った前記信号を評価するように構成される処理装置(30)と通信する、請求項1から6のいずれか一項に記載の遠心分離機(1)。
【請求項8】
前記処理装置(30)が、前記温度センサ(20)からの前記信号を比較することにより前記評価を実施して、最低検知温度を提供する前記温度センサ(20)の信号に対応する温度基準値を作成するように構成されている、請求項7に記載の遠心分離機(1)。
【請求項9】
前記処理装置(30)が、予め決められたしきい値だけ前記温度基準値を超える前記温度センサ(20)のうちの任意の1つからの信号を識別するように構成されている、請求項8に記載の遠心分離機(1)。
【請求項10】
前記処理装置(30)は、前記信号が予め決められたしきい値だけ前記温度基準値を超えたことに応答して、前記相対的重相の流れ、および/または、前記遠心回転子中の前記相対的重相に働く圧力を制御する少なくとも1つの制御弁(31、32)を含む、請求項9に記載の遠心分離機(1)。
【請求項11】
前記処理装置(30)が、前記遠心回転子(4)の上に搭載され、前記温度センサ(20)の各々と通信する内部プロセッサユニット(33)を備え、前記内部プロセッサユニット(33)が、前記複数の温度センサ(20)からの信号を集めるように構成されている、請求項7から10のいずれか一項に記載の遠心分離機(1)。
【請求項12】
前記遠心分離機(1)が、前記内部プロセッサユニット(33)に電気エネルギーを供給する電流源(40)を備えている、請求項11に記載の遠心分離機(1)。
【請求項13】
前記処理装置(30)が外部プロセッサユニット(34)を備え、前記内部プロセッサユニット(33)が、前記外部プロセッサユニット(34)と通信して、前記信号の前記評価を実施するように構成される前記外部プロセッサユニット(34)に集めた信号のパッケージを転送するように構成されている、請求項11または12に記載の遠心分離機(1)。
【請求項14】
内部空間(8)を取り囲む回転子壁(7)と前記内部空間(8)中に設けられた円錐台形分離ディスク(9)のスタックとを備えた遠心回転子(4)を備える遠心分離機(1)を動作させる方法であって、
回転軸(x)の周りに前記遠心回転子(4)を回転させるステップと、
前記内部空間(8)に入口(10)を介して生成物を導くステップと、
前記内部空間(8)から第1の出口(11)を介して前記生成物の相対的軽相を排出するステップと、
前記回転子壁(7)の内側に沿って、前記内部空間(8)の径方向外側領域(8a)から延びる複数の出口チャネル(14)を備える第2の出口(12)を介して、前記内部空間(8)から前記生成物の相対的重相を排出するステップであって、それによって、前記出口チャネル(14)の各々を通して前記径方向外側領域(8a)から前記相対的重相の流れを移送する、ステップと、
を含んでなる、遠心分離機(1)を動作させる方法において、
前記出口チャネル(14)の各々の近傍で温度を検知するステップと、
それぞれの前記出口チャネル(14)の検知温度を表す、各出口チャネル(14)用の信号を提供するステップと
というさらなるステップによって特徴付けられている、遠心分離機(1)を動作させる方法。
【請求項15】
前記出口チャネル(14)の信号を比較するステップと、
最低検知温度を有する前記出口チャネル(14)の検知温度を表す信号に対応する温度基準値を作成するステップと、
その後、予め決められたしきい値だけ前記温度基準値を超える前記出口チャネル(14)のうちの任意の1つの信号を識別するステップと
によって、提供される信号を評価するさらなるステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記信号が予め決められたしきい値だけ前記温度基準値を超えたことに応答して、前記相対的重相の流れおよび前記遠心回転子(4)の内部空間(8)中の圧力を制御するさらなるステップを含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルによる遠心分離機に関する。本発明はまた、請求項14のプリアンブルによる遠心分離機を動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような遠心分離機の出口チャネルを通る比較的重い成分の一定の流れは、遠心分離機の仕事を連続的で効果的にするための重要な要因と考えられる。相対的重相と相対的軽相の間の境界レベルが、遠心回転子の内部空間に正確に位置決めされることが重要である。
【0003】
出口チャネルを通る流れが大きすぎる場合、境界レベルが、出口チャネルの入口開口に対してはるか遠くに位置することになる。このことによって、湿った相対的重相がもたらされる可能性があり、これが次に出口チャネルを通る生成物損失をもたらす。
【0004】
代わりに、出口チャネルを通る相対的重相の流れが小さすぎる場合、境界レベルが内向きに動き、出口チャネルの入口開口から離れた中に位置する場合がある。このことによって、相対的重相が乾燥しすぎ、これが次に流れの減少をもたらし、最終的には出口チャネルのうちの1つまたは複数を塞ぐことになる。
【0005】
出口チャネルのうちの1つまたは複数が塞がれたことによって、分離ディスクのスタックの部分的または完全な閉塞さえもがもたらされ、したがって分離性能の損失がもたらされる場合がある。1つまたは複数の出口チャネルの閉塞を解消するため、周辺出口ポートを介した遠心回転子の内部空間の完全な排出が通常必要であり、製造時間および生成物の損失がもたらされる。
【0006】
国際公開第2011/093784号(特許文献1)は、分離チャンバを含む回転子と、分離する成分の混合物用の入口チャネルと、少なくとも1つの分離した軽い成分を受け入れるための第1の出口チャネルと、少なくとも1つの分離した重い成分を受け入れるための第2の出口チャネルとを備える密封遠心分離機を開示する。分離した重い成分を前記第2の出口チャネルから前記分離チャンバ部分へ再循環させるための再循環手段が設けられ、同様に、前記第2の出口チャネルを流れる重い成分の密度、流量、またはそれらの組合せを監視する第1の監視手段、および前記第1の監視手段からの制御信号に応答して再循環流量を制御する第1の制御手段が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2011/093784号
【文献】国際公開第2018/228992号
【文献】国際公開第2019/166276号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上で議論した問題を改善し、特に、相対的重相の流れの減少または閉塞の検出を可能にすることである。特に、遠心回転子中の相対的重相用の個別出口チャネルの流れの減少または閉塞の検出を可能にする遠心分離機が狙いである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、遠心分離機が複数の温度センサを備え、各温度センサが出口チャネルのそれぞれ1つの少なくとも近傍に設けられて、それぞれの出口チャネルの近傍における温度を検知し、検知温度を表す信号を提供するように構成されることを特徴とする、最初に規定される遠心分離機によって達成される。
【0010】
本発明は、出口チャネル中の相対的重相の流れが減少するまたは塞がれる場合、遠心回転子の出口チャネル中および周辺の温度が上昇するという、本発明者の洞察に依拠する。温度の上昇は、空気摩擦に基づく。遠心回転子の回転に起因して、周囲の空気と遠心回転子の間の摩擦が遠心回転子を加熱することになる。回転子壁の内側に沿って出口チャネル中の相対的重相の流れがある限り、流れが出口チャネルおよび出口チャネルの近傍の遠心回転子を冷却する。しかし、出口チャネルを通る流れが減少するまたは閉塞さえすると、流れの冷却効果が低下し、温度が上昇することになる。本発明によれば、温度のこの上昇を、温度センサによって検知することができる。1つまたは複数の温度センサによって提供される信号は、こうして、操作者もしくは制御システムへの警告として、または、1つまたは複数の出口チャネルを通る流れの増加を可能にするように構成される何らかの手段への入力信号として使用することができる。
【0011】
こうして、温度センサによって、出口チャネルのうちの1つまたは複数内での早い段階の流れの減少または閉塞を検出し、たとえば、処理装置の部分を形成することができる制御システムが、相対的重相が乾燥しすぎる前に予防的対抗策を取るのを可能にすることができる。
【0012】
本発明の実施形態によれば、出口チャネルは、回転子壁の上部の内側に沿って、内部空間の径方向外側領域から内部空間の径方向内側領域に向かって、または代わりに、回転子壁の下部の内側に沿って、内部空間の径方向外側領域から内部空間の径方向内側領域に向かって延びることができる。
【0013】
本発明の実施形態によれば、温度センサの各々は、それぞれの出口チャネルに隣接することができ、分離ディスクのスタックに向かって曲がっている出口チャネルの側に位置する。分離ディスクのスタックに向かって曲がっているそれぞれの出口チャネルの側に温度センサを設けることによって、出口チャネル中の相対的重相の温度を検知することができる。
【0014】
本発明の実施形態によれば、遠心回転子は、分離ディスクのスタックと回転子壁の上部との間の内部空間中に設けられる分離要素を備えることができ、出口チャネルは、分離要素と回転子壁の上部の内側との間に設けられる。出口チャネルは、こうして、回転子壁の内側に対して直接位置することができる。回転子壁と出口チャネルの間の効果的な熱伝達を、こうして確実にすることができる。
【0015】
分離要素は、出口チャネルを保持することができ、または、出口チャネルを画定もしくは規定することができる。
【0016】
本発明の実施形態によれば、分離要素は、分離ディスクのスタック上の上部要素として設けられる円錐台形要素、または、回転子壁の下部の内側に設けられる円錐台形要素であってよい。
【0017】
本発明の実施形態によれば、出口チャネルの各々が、分離要素中にそれぞれの溝を備えることができる。分離要素は、回転子壁の上部または下部などといった、回転子壁の内側に隣接することができ、各溝は、回転子壁の内側と一緒に出口チャネルを形成することができる。
【0018】
本発明の実施形態によれば、出口チャネルの各々は、それぞれのパイプによって形成することができる。パイプは、回転子壁の上部または下部などといった、回転子壁の内側に隣接すること、特に、分離要素と前記内側との間に配置することができる。たとえば、パイプは、分離要素と前記内側との間にクランプすることができる。分離要素は、代わりに、上で述べたように、溝を備えることができ、パイプを溝の中に設けることができる。
【0019】
本発明の実施形態によれば、温度センサの各々は、分離要素中の凹部に設けることができる。凹部は、溝の底面などといった、溝の中に設けることができる。温度センサは、この場合、相対的重相から温度センサへの熱の伝達を確実にするために、相対的重相と直接接触すること、または、パイプを介して相対的重相と接触することができる。凹部は、代わりに、分離要素の外面に設けることができ、次いでパイプと接触することができる。
【0020】
本発明の実施形態によれば、温度センサの各々は、温度センサから信号を受け取って、受け取った信号を評価するように構成される処理装置と通信することができる。こうして、評価した信号によって、相対的重相が乾燥しすぎる前に、処理装置が、予防的対抗策を取ることができる。
【0021】
本発明の実施形態によれば、処理装置は、温度センサからの信号を比較することにより前記評価を実施して、最低検知温度を提供する温度センサの信号に対応する温度基準値を作成するように構成することができる。最低温度を温度基準値として使用することによって、事前に温度基準を準備する必要がない。
【0022】
本発明の実施形態によれば、処理装置は、予め決められたしきい値だけ温度基準値を超える温度センサのうちの任意の1つからの信号を識別するように構成することができる。予め決められたしきい値だけ温度基準値を超えるのは、したがって、相対的重相が乾燥しすぎるのを防ぐために対抗策が必要であることを示すことができる。
【0023】
本発明の実施形態によれば、処理装置は、前記信号が予め決められたしきい値だけ温度基準値を超えたことに応答して、相対的重相の流れ、および/または、遠心回転子中の相対的重相に働く圧力を制御する少なくとも1つの制御値を含むことができる。処理装置は、こうして、信号が、予め決められたしきい値だけ温度基準値を超えるとき、相対的重相の流れを増加するため制御弁を開くように構成することができる。制御弁はすべての出口チャネルに共通な制御弁であってよい。または、各出口チャネルが、各出口チャネル中の相対的重相の流れの個別制御を可能にする、それぞれ個別の制御弁を含むことができる。
【0024】
本発明の実施形態によれば、処理装置は、遠心回転子の中または上に搭載され、温度センサの各々と通信する内部プロセッサユニットを備えることができ、内部プロセッサユニットは、複数の温度センサからの信号を集めるように構成される。温度センサからの信号は、遠心回転子の上または中に配置される内部プロセッサによって、集めて、好適なデータパッケージ中に記憶することができる。内部プロセッサによって信号を評価することも可能となる場合がある。内部プロセッサは、この場合、たとえば1つの制御弁または各出口チャネル用に1つの複数の個別の制御弁に、1つまたは複数の好適な制御信号を分配することができる。
【0025】
本発明の実施形態によれば、遠心分離機は、内部プロセッサユニットに電気エネルギーを供給する電流源を備えることができる。
【0026】
本発明の実施形態によれば、処理装置が外部プロセッサユニットを備えることができ、内部プロセッサユニットは、外部プロセッサユニットと通信して、信号の前記評価を実施するように構成される外部プロセッサユニットに集めた信号のパッケージを転送するように構成される。外部プロセッサは、信号の任意の好適な評価を実施することを可能にする十分な計算力を備えることができる。
【0027】
目的はまた、
出口チャネルの各々の近傍で温度を検知するステップと、
それぞれの出口チャネルの検知温度を表す、各出口チャネル用の信号を提供するステップと、いうさらなるステップによって特徴付けられる、最初に規定される方法によって達成される。
【0028】
方法および出口チャネル中の相対的重相の温度の検知によって、出口チャネルのうちの1つまたは複数内で早い段階の相対的重相の流れの減少または閉塞を効果的に信頼性高く検出することが可能になる。早い検出によって、処理装置の部分を形成することができるたとえば制御システムが、相対的重相が乾燥しすぎる前に、予防的対抗策を取ることが可能になる。
【0029】
本発明によれば、方法は、
出口チャネルの信号を比較するステップと、
最低検知温度を有する出口チャネルの検知温度を表す信号に対応する温度基準値を作成するステップと、
その後、予め決められたしきい値だけ温度基準値を超える出口チャネルのうちの任意の1つの信号を識別するステップと
によって、提供される信号を評価するさらなるステップを含むことができる。
【0030】
最低温度を温度基準値として使用するのは、事前に温度基準を準備する必要がないために有利となる場合がある。予め決められたしきい値だけ温度基準値を超えた場合、相対的重相の流れが小さすぎることの信頼性の高い表示を得ることができる。
【0031】
本発明によれば、方法は、
前記信号が予め決められたしきい値だけ温度基準値を超えたことに応答して、相対的重相の流れおよび遠心回転子中の内部空間中の圧力を制御するステップ
というさらなるステップを含むことができる。
【0032】
制御は、相対的重相の流れおよび/または圧力を増減するために1つまたは複数の制御弁を制御することによって、ならびに、内部空間中の圧力を維持するため出口制御弁を同時に制御することによって実施することができる。
【0033】
相対的重相の流れを増減するために、処理装置は、遠心回転子の内部空間中にある差圧を得るため1つまたは複数の制御弁を制御することと出口制御弁を制御することの組合せを実施することができる。差圧が相対的重相に働いて、内部空間から出口チャネルを通る相対的重相のある種の流れを作ることができる。この差圧は、こうして、相対的重相に駆動圧を形成することができる。
【0034】
本発明は、ここで、様々な実施形態の記載によって、およびここに添付される図面を参照してより詳細に説明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明による遠心分離機の第1の実施形態を開示する断面図である。
【
図2】
図1中の遠心分離機の遠心回転子を開示する斜視図である。
【
図4】
図3中の線IV-IVに沿った断面図である。
【
図5】遠心回転子中の温度センサを開示する図である。
【
図6】遠心分離機の処理装置を開示する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、生成物を相対的重相と相対的軽相とに分離するための遠心分離機1の第1の実施形態を開示する。
【0037】
第1の実施形態によれば、遠心分離機1は、固定フレーム2、固定フレーム2によって支持されるスピンドル3、およびスピンドル3に取り付けられる遠心回転子4を備える。スピンドル3および遠心回転子4は、駆動ユニット5によって、回転軸xの周りに固定フレーム2に対して回転可能である。回転軸xは、遠心分離機1の動作期間、垂直に延びることができる。固定フレーム2は、遠心回転子4を囲んで囲繞する固定ケーシング6を備えることができる。
【0038】
遠心回転子4は、
図2~
図4を参照してより詳細に記載されるが、内部空間8を取り囲む回転子壁7および内部空間8中に設けられる円錐台形分離ディスク9のスタックを備える。第1の実施形態によれば、回転子壁7は、上部7aおよび下部7bを備える。
【0039】
内部空間8は、径方向外側領域8aおよび径方向内側領域8bを備える。遠心分離機1の使用期間に、内部空間8中の分離された軽いフェーズと重いフェーズの間の境界レベル8´は、外部領域8aと内部領域8bの間の境と考えることができる。
図4を参照されたい。
【0040】
第1の実施形態によれば、回転子壁7の上部7aと下部7bは、内部空間8の径方向外側領域8aで互いに隣接する。
【0041】
遠心回転子4は、内部空間8に生成物を導くための入口10、内部空間8から相対的軽相を排出するための第1の出口11および内部空間8から相対的重相を排出するための第2の出口12をやはり備える。
【0042】
第1の実施形態では、遠心回転子4の入口10は、
図1に図示されるように、スピンドル3を通して入口チャネル10´と一直線の回転軸xに沿って延びる。
【0043】
遠心回転子4は、回転子壁7の下部7aの径方向外側部を通って延びることができる、複数の周辺出口ポート13をやはり備えることができる。周辺出口ポート13は、従来技術で知られている様式で、内部空間8からのスラッジを間欠的に放出するように動作可能であってよい。
【0044】
第2の出口12は、回転子壁7の内側に沿って、内部空間8の径方向外側領域8aから内部空間8の径方向内側領域8bに向かって延びる複数の出口チャネル14を備える。出口チャネル14の各々は、径方向外側領域8aから相対的重相の流れを移送するように構成される。
【0045】
出口チャネル14は、回転子壁7の内側に等間隔に分布させることができる。加えて、出口チャネル14の各々は、回転軸xと平行なそれぞれの平面に延びることができる。
【0046】
第1の実施形態では、出口チャネル14は、
図4に見ることができるように、回転子壁7の上部7aの内側に沿って、径方向外側領域8aから境界レベル8´を通して延びる。出口チャネル14は、出口チャンバ15に向けて、または出口チャンバ15まで延びることができ、出口チャンバ15は、第2の出口12および遠心回転子4からなってよい。出口チャンバ15は、固定ケーシング6に取り付けることができる、固定排出コンジット16に隣接することができる。固定排出コンジット16は、従来技術で知られている様式で、出口チャンバ15から密封することができる。
【0047】
出口チャンバ15は、こうして、出口チャネル14から相対的重相を受け入れるように構成することができる。相対的重相は、次いで、出口チャンバ15から、したがって遠心回転子8から固定排出コンジット16を介して排出することができる。
【0048】
遠心回転子4は、遠心回転子4の内部空間8中に設けられる分離要素17を備える。第1の実施形態では、分離要素17は、分離ディスク9のスタックと回転子壁7の上部7aとの間に設けられる。出口チャネル14は、分離要素17と回転子壁7の上部7aの内側との間に設けることができる。
【0049】
第1の実施形態によれば、分離要素17は、円錐台形分離ディスク9と同じ円錐角を有する円錐台形要素からなる。
【0050】
第1の実施形態によれば、出口チャネル14の各々は、分離要素17と回転子壁7の上部7aの内側との間に配置されるそれぞれのパイプ18によって形成される。パイプ18は、分離要素17の外面と回転子壁7の上部7aの内側との間にクランプすることができる。
【0051】
代わりに、出口チャネル14の各々は、分離要素17および回転子壁7の内側にもしくは回転子壁7の上部7aの内側にそれぞれの溝を備えることができ、またはそれぞれの溝によって形成することができる。
【0052】
さらなる代替形態によれば、各パイプ18は、分離要素17中のそれぞれの溝の中に配置することができる。
【0053】
遠心分離機1は、複数の温度センサ20を備える。第1の実施形態では、各温度センサ20は、出口チャネル14のそれぞれ1つの近傍に設けられる。各温度センサ20は、それぞれの出口チャネル14の近傍の温度を検知し、検知した温度を表す信号を提供するように構成される。
【0054】
第1の実施形態によれば、温度センサ20の各々は、それぞれの出口チャネル14に隣接し、分離ディスク9のスタックに向かって曲がっている出口チャネル14の側、したがって、回転子壁7の上部7aの内側から離れたところに位置する。
【0055】
さらに、温度センサ20の各々は、分離要素17中の凹部21中に設けることができる。
図4および
図5を参照されたい。
図5は、やはり温度センサ20が、任意選択で、パイプ18を貫通し、したがってパイプ18の壁を通って延びることができることを図示する。この実施形態では、温度センサ20は、こうして、パイプ18を通って流れる相対的重相と直接接触することができる。
【0056】
また、本実施形態では本実施形態に従って、出口チャネル14の各々は、分離要素17中のそれぞれの溝によって構成され、温度センサ20は、分離要素17中の凹部21、特に、分離要素17中の溝の中の凹部中に設けることができる。凹部21は、溝の底部を通って延びることができる。またこの場合に、温度センサ20は、こうして、出口チャネル14の中、すなわち溝の中を流れる相対的重相に直接接触することができる。
【0057】
第1の実施形態によれば、温度センサ20の各々は、処理装置30と通信する。処理装置20は、温度センサ20から信号を受け取って、受け取った信号を評価するように構成される。
図6も参照されたい。さらに、処理装置30は、異なる温度センサ20からの信号を比較することによって受け取った信号の評価を実施し、次いで、最低検知温度を提供する温度センサ20の信号に対応する温度基準値を作成するように構成することができる。この場合、処理装置30は、予め決められたしきい値だけ温度基準値を超える温度センサ20のうちの任意の1つからの信号を識別するように構成することができる。
【0058】
遠心分離機1の使用期間に、温度センサ20のうちの1つからの信号が予め決められたしきい値だけ温度基準値を超える場合、処理装置30は、相対的重相の温度が高すぎ、したがって、関連する出口チャネル14中の相対的重相の流れが減少していること、または低すぎることがわかる。
【0059】
最初に述べたように、固定ケーシング6内に閉じ込められ空気またはガスと遠心回転子4の周りのものとの間の摩擦によって、回転子壁7が温められる。出口チャネル14を通る重いフェーズの妨げられない流れは、回転子壁7を局部的に冷却する。しかし、出口チャネル14のうちの1つの重いフェーズの減少または停止した流れが、回転子壁7中で局所的に温度を上昇させることになる。
【0060】
代わりにまたは追加で、関連する出口チャネル14中の相対的重相の流れが減少するまたは低すぎるとき、温度センサ20の上流の相対的重相、温度センサ20、または回転子壁7を電気的に加熱して、出口チャネル14で十分な局部的温度差を確実にし、予め決められたしきい値だけ温度基準値を超えることを確実にすることができる。
【0061】
この温度基準値の超過は、したがって、相対的重相が乾燥しすぎるのを防ぐために処置が必要であることを強く示していてよい。そのために、処理装置30は、第1の実施形態によれば、固定排出コンジット16上に設けられる制御弁31を備えることができる。処理装置30は、したがって、制御弁31を制御することによって、予め決められたしきい値だけ温度基準値を超える信号に応答して、固定出口コンジット16を通る相対的重相の流れ、遠心回転子中の相対的重相に働くフェーズおよび/または圧力を制御することができる。
【0062】
代わりにまたは補助的に、処理装置30は、複数の個別の制御弁32を備えることができ、それらの各々1つは、出口チャネル14のそれぞれ1つに設けられ、相対的重相の流れを出口チャネル14中で個別に制御する。処理装置30は、したがって、個別の制御弁32を制御することによって、関連する温度センサ20が予め決められたしきい値だけ温度基準値を超える信号を示す出口チャネル14を通る、および/または他の出口チャネル14を通る相対的重相の流れを制御する。
【0063】
個別の制御弁32によって流れを増加するのは、関連する出口チャネル14中の重いフェーズの流れを調節する1つの可能な方法である。いくつかの個別の制御弁32によって流れを減少させるのは、流れが減少した出口チャネル14中の重いフェーズの流れを調節するだけでなく、他の出口チャネル14中の流れの増加をもたらす、異なった可能な方法である。
【0064】
さらに、処理装置30は、第1の出口11を通る相対的軽相の出口の流れを制御するように配置される出口制御弁31´を備えることができる。
図4を参照されたい。
【0065】
出口制御弁31´を開くことによって、第1の出口11を通る相対的軽相の流れを増加することができ、このことによって、遠心回転子4の内部空間8中の圧力を減らすことができる。出口制御弁31´を閉じることによって、第1の出口11を通る相対的軽相の流れを減らすことができ、このことによって、遠心回転子4の内部空間8中の圧力を上げることができる。出口制御弁31´は、こうして、制御弁31および/または個別の制御弁32を操作するとき、遠心回転子4の内部空間8中の圧力を維持するためのものであってよい。その結果、相対的重相の流れを増減するため、処理装置30は、遠心回転子4の内部空間8中にある差圧を得るため1つまたは複数の制御弁31、32を制御することと出口制御弁31´を制御することの組合せを実施することができる。差圧が相対的重相に働いて、内部空間8から出口チャネル14を通る相対的重相のある種の流れを作ることができる。この差圧は、こうして、相対的重相に駆動圧を形成することができる。
【0066】
第1の実施形態によれば、処理装置30は、内部プロセッサユニット33および外部処理ユニット34を備える。
【0067】
内部プロセッサユニット33は、遠心回転子4またはスピンドル3の中または上に取り付けることができ、温度センサ20の各々と通信することができる。
図6に概略的に示されるように、温度センサ20および内部プロセッサユニット33は、物理的なライン(開示せず)またはワイヤレス通信手段を備える内部通信ネットワークを介して通信することができる。内部プロセッサユニット33は、複数の温度センサ33からの信号を集めるように構成することができる。
【0068】
外部プロセッサユニット34は、遠心回転子4および遠心分離機1の回転部のうちのいずれか1つの外側に、たとえばフレーム2上に、または遠心分離機1から離れて取り付けることができる。内部プロセッサユニット33は、ワイヤレス通信ネットワークを介して、外部プロセッサユニット34と通信することができる。
【0069】
ここでは、プロセッサユニットおよび同様の用語は、特定用途向け集積回路(ASIC)、電子回路、1つもしくは複数のソフトウェアまたはファームウェアプログラムまたはルーチンを実行する中央処理装置(マイクロプロセッサ)および関連するメモリおよび記憶装置(読取り専用、プログラム可能読取り専用、ランダムアクセス、ハードドライブなど)、組合せ論理回路、入出力回路およびデバイス、適切な信号調整およびバッファ回路、ならびに記載される機能性を実現する他の構成要素のうちの1つまたは複数の、任意の1つまたは様々な組合せを意味する。ソフトウェア、ファームウェア、プログラム、命令、ルーチン、コード、アルゴリズム、および同様の用語は、校正およびルックアップテーブルを含む、任意のコントローラが実行可能な命令セットを意味する。ルーチンは、中央処理装置などによって、実行され、検知デバイスおよび他のネットワーク化制御モジュールからの入力を監視するよう動作可能であり、アクチュエータの動作を制御するため制御および診断ルーチンを実行する。
【0070】
内部プロセッサユニット33は、集めた信号のパッケージを形成し、パッケージを外部プロセッサユニット34に転送するように構成することができる。外部プロセッサユニット34は、この場合、温度センサ20からの信号の、上で述べた評価を実施するように構成することができる。
【0071】
第1の実施形態によれば、遠心分離機1はまた、内部プロセッサユニット33に電気エネルギーを供給する電流源40を備える。
【0072】
第1の実施形態によれば、電流源40は、
図1に概略的に図示されるが、フレーム2上に取り付けられる固定部材41およびスピンドル3または遠心回転子4上に取り付けられる回転部材42を備えることができる、発電器を備える。そのような発電器の例は、国際公開第2018/228992号(特許文献2)に開示される。
【0073】
代わりに、電流源40は、フレーム2上に取り付けられる固定部材およびスピンドル3または遠心回転子4上に取り付けられる回転部材を備えることができる、回転変圧器を備えることができる。そのような回転変圧器の例は、国際公開第2019/166276号(特許文献3)に開示される。
【0074】
代わりに、電流源40は、
図4に概略的に図示されるが、遠心回転子4の上または中に取り付けられる電池を備えることができる。
【0075】
重いフェーズ、温度センサ20、または回転子壁7の電気的な加熱を行う実施形態では、電流源は、発電器または回転変圧器を好適に備える。
【0076】
遠心分離機1は、以下のように動作することができる。遠心回転子4が、駆動ユニット5によって回転軸xの周りを回転する。生成物がスピンドル3および入口10を通るチャネルを介して内部空間8に導かれる。生成物の相対的軽相が、内部空間8から第1の出口11を介して排出され、生成物の相対的重相が、内部空間8の径方向外側領域8aから第2の出口12を介して、すなわち、出口チャネル14を介して排出される。分離期間に、出口チャネル14の各々の近傍の温度が、出口チャネル14の各々上の温度センサ20によって検知される。温度センサ20は、それぞれの出口チャネル14および出口チャネル14を通って流れる相対的重相の検知した温度を表す、各出口チャネル14用のそれぞれの信号を提供する。信号の検知および提供は、頻繁に、たとえば10秒毎に行うことができる。
【0077】
温度センサ20からの信号は、次いで処理装置30によって集められる。第1の実施形態によれば、集めた信号は、内部プロセッサユニット33によってパッケージに含まれる。パッケージは、内部プロセッサユニット33から外部プロセッサユニット34にワイヤレスで転送される。信号は、外部プロセッサユニット34によって解凍され、次いで、外部プロセッサユニット34は、出口チャネル14の信号を比較することによって信号を評価し、最低検知温度を有する出口チャネル14の検知温度を表す信号に対応する温度基準値を作成する。外部プロセッサユニット34は、次いで、予め決められたしきい値だけ温度基準値を超える出口チャネル14のうちの任意の1つの任意の信号を識別する。温度基準値のそのような超過は、出口チャネルの任意の1つで発生し、外部プロセッサユニット34によって、関連する出口チャネル14を通る相対的重相の流れが低すぎることを示すと解釈される。
【0078】
外部プロセッサユニット34が、個別の制御弁32のうちの任意の1つを制御すること、または共通排出コンジット16上の制御弁31を制御すること、特に、内部空間8中の圧力を維持するため出口制御弁31´を同時に制御することによって、ここで、好適な対抗策を開始することができる。
【0079】
代替形態によれば、出口チャネルは、回転子壁7の下部7bの内側に沿って、内部空間8の径方向外側領域8aから内部空間8の径方向内側領域8bに向かって延びることができる。出口チャネルは、この場合、相対的重相を遠心回転子4から排出することができる内部空間8の底部領域に向けて延びることができる。
【0080】
代替実施形態によれば、処理装置30は、温度センサからの信号の収集および評価の両方のための、ただ1つの処理ユニットを備えることができる。単一のプロセッサユニットは、遠心分離機1の回転部の上または中、たとえば、遠心回転子4またはスピンドル3の上に設けることができる。
【0081】
本発明は、開示される実施形態に限定されないが、添付の特許請求の範囲内で変形および変更することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 遠心分離機
2 固定フレーム
3 スピンドル
4 遠心回転子
5 駆動ユニット
6 固定ケーシング
7 回転子壁
7a 上部
7b 下部
8 内部空間
8a 径方向外側領域
8b 径方向内側領域
9 円錐台形分離ディスク
10 入口
10´ 入口チャネル
11 第1の出口
12 第2の出口
13 周辺出口ポート
14 出口チャネル
15 出口チャンバ
16 共通排出コンジット、固定排出コンジット、固定出口コンジット
17 分離要素
18 パイプ
20 温度センサ
21 凹部
30 処理装置
31 制御弁
31´ 出口制御弁
32 制御弁
33 内部プロセッサユニット、温度センサ
34 外部プロセッサユニット、外部処理ユニット
40 電流源
41 固定部材
42 回転部材