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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】シール用部材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3284 20160101AFI20240509BHJP
   F16J 15/34 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
F16J15/3284
F16J15/34 F
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022565886
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(86)【国際出願番号】 KR2021008256
(87)【国際公開番号】W WO2022005198
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0081160
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520481127
【氏名又は名称】フローサーブ・ケーエスエム・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ホ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュ・ファン・キム
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-124727(JP,A)
【文献】特開昭63-053316(JP,A)
【文献】特開平05-271928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/3284
F16J 15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)複数の円柱形または多角柱形グラファイトをモールドに互いに離隔して平行に配置する段階;
(b)前記グラファイト間の空間にシリコンカーバイド及びバインダーを含む組成物を充填する段階;
(c)前記モールドの内部を加圧して成形体を製造する段階;
(d)前記成形体を所望の形状に加工する段階;及び
(e)前記加工された成形体を焼結する段階;を含み、
前記複数の円柱形または多角柱形グラファイトは、摩耗面に垂直方向に配置され、摩耗面に露出するシリコンカーバイドを含む基材面と複数の円柱形または多角柱形グラファイトの断面とが平面をなすように加工することを特徴とする摩擦が発生するシール部に用いられるシール用部材の製造方法。
【請求項2】
前記複数の円柱形または多角柱形グラファイト間の間隔のうち、最小間隔が最大間隔の60%以上となるように配置されたことを特徴とする、請求項1に記載の方法
【請求項3】
前記複数の円柱形または多角柱形グラファイト間の間隔のうち、最小間隔が最大間隔の80%以上となるように配置されたことを特徴とする、請求項2に記載の方法
【請求項4】
前記シール用部材のいずれかの断面において、複数の円柱形または多角柱形グラファイトが占める面積が全体断面積の5~50%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法
【請求項5】
前記複数の円柱形または多角柱形グラファイトは、断面の最大幅が10μm~2000μmであることを特徴とする、請求項1に記載の方法
【請求項6】
前記シール用部材は、円筒形の管状を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法
【請求項7】
前記シリコンカーバイドは、反応焼結シリコンカーバイド、固相焼結シリコンカーバイド、及び液相焼結シリコンカーバイドからなる群より選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の方法
【請求項8】
前記シール用部材は、回転体と固定体との間をシーリングすることを特徴とする、請求項1に記載の方法
【請求項9】
前記シール用部材は、回転機器の軸封装置に用いられることを特徴とする、請求項に記載の方法
【請求項10】
前記(b)段階は、グラファイト間の空間にシリコンカーバイド及びバインダーを含む組成物を充填して接触材を形成し、その上部にシリコンカーバイド及びバインダーを含む組成物をさらに充填して母材を形成する段階を含むことを特徴とする、請求項に記載のシール用部材の製造方法。
【請求項11】
前記接触材の長さは、全シール用部材の全長を基準として50%以下であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記シール用部材は、円筒形の管状を有することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年7月1日付け韓国特許出願第10-2020-0081160号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、シール用部材の摩擦面をグラファイトとシリコンカーバイドとで複合体から構成し、潤滑性と耐摩耗性を同時に有するようにしたシール用部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
回転体である軸と固定体である軸カップリングとが結合されて用いられる装置、特にポンプや船舶用軸のように流体の漏れ(leakage)を防止する必要がある回転機械装置では、回転体と固定体との隙間をシーリング(sealing)させる装置が必須である。
【0004】
前記のようなシーリング装置には、潤滑性と耐摩耗性が同時に要求され、したがって、潤滑性と耐摩耗性を同時に満たすことができるシール用部材が用いられる。このようなシール用部材としては、図1に示す形態の回転機器の軸封装置であるメカニカルシール用部材が挙げられる。前記メカニカルシール用部材は、回転機器の軸封装置に用いられ、軸封装置の高速回転に抵抗をほとんど与えないながらも流体を封止して遮断させる機能を果たす。
【0005】
具体的に、図1に示すように、軸封装置は、ハウジングに結合されるグランドリング2にはリング状のハウジング側シール部材1をパッキン3と共に密着させ、シャフト4には固定カラー5にスプリング6で弾設されたシャフト側シール部材1'を密着させ、ハウジングとシャフトのシール部材1、1'が互いに密着した状態で回転させることにより、内外空間の流体の漏れを防止した状態で回転を可能にする。このような装置において、前記シール用部材1、1 'には相互間に高い摩擦力が発生するようになる。したがって、高い硬度、耐摩耗性及び耐化学的安定性が必須であり、同時に円滑な機械作動のために優れた潤滑性が共に要求される。また、熱変形を防ぐために熱伝導性まで優れなければならない。
【0006】
このような物性を満たすための従来の技術では、グラファイト粒子をシリコンカーバイドに分散させ、自己潤滑効果を向上させ、高い熱伝導度と低い摩擦係数を有するシール用シリコンカーバイド部材を製造する方法;多孔性のグラファイト基材に溶融シリコンを浸透させた後、シリコンとカーボンの化学的反応によりシリコンカーバイドを生成させ、シリコンカーバイドとグラファイト複合体を形成し、潤滑性を改善する方法;10~75μm以下のグラファイト粒子を自己焼結シリコンカーバイド基材内に2~30重量%で分散させ、機械的強度と潤滑性を改善する方法などが知られている。
【0007】
しかしながら、このような方法はシリコンカーバイド基材に相当な量のグラファイト粒子が分散するので、潤滑性は増加するが、シリコンカーバイド-グラファイト複合体の硬度及び耐摩耗性を減少させ、製品の比重及び機械的強度を低下させる欠点があった。
【0008】
また、グラファイト粒子を均一に制御し、シリコンカーバイド基材内に微細なグラファイト粒子を均一に分散させることが困難であるため、局所的に不均一に分散したグラファイト粒子がシリコンカーバイド基材の機械的特性及び潤滑性の均一度を低下させる悪影響を引き起こす問題があった。
【0009】
また、長期間使用時、摩耗量の増加と不均一な摩耗による摩耗面の状態悪化を避けられなくなり、シール用部材の寿命を短縮させる欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国登録特許第5,422,322号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、従来技術の前記のような問題を解決するために鋭意努力を行ったところ、シリコンカーバイド基材内にグラファイト粒子を均一に分散させる方法を見出し、本発明を完成した。
【0012】
本発明は、硬度、耐摩耗性及び耐化学的安定性に優れ、同時に円滑な機械作動のための潤滑性に優れ、熱変形を防ぐための熱伝導性まで優れたシール用部材を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、前記実用部材を製造する効率的な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明は、
シリコンカーバイドを含む基材;及び
前記基材に分散配置された複数の円柱形または多角柱形グラファイト;を含むシール用部材を提供する。
【0015】
また、本発明は
(a)複数の円柱形または多角柱形グラファイトをモールドに互いに離隔して配置する段階;
(b)前記グラファイト間の空間にシリコンカーバイド及びバインダーを含む組成物を充填する段階;
(c)前記モールドの内部を加圧して成形体を製造する段階;
(d)前記成形体を所望の形状に加工する段階;及び
(e)前記加工された成形体を焼結する段階;を含むシール用部材の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のシール用部材は、優れた硬度、耐摩耗性及び耐化学的安定性を提供し、同時に円滑な機械作動のために優れた潤滑性を提供する。また、熱変形を防ぐための優れた熱伝導性を提供する。そのため、回転機械装置において回転体と固定体との隙間のシーリング(sealing)に有用に用いられることができる。
【0017】
また、本発明のシール用部材の製造方法は、極めて効率的に前記のような特性を有するシール用部材を製造することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】回転機器の軸封装置であるメカニカルシール用部材の使用形態を示す斜視図である。
図2】本発明のシーリング部材の一実施形態を示す断面図である。
図3】本発明のシーリング部材の一実施形態及び接触材の断面を示す図である。
図4】本発明のシーリング部材の一実施形態を示す斜視図である。
図5】本発明のシーリング部材の製造方法の一実施形態を示す斜視図である。
図6】本発明のシーリング部材の一実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例について添付の図面を参照して詳細に説明する。しかし、本発明は、色々と異なる形態で具現されることができ、ここで説明する実施例に限定されない。明細書の全体を通じて類似する部分については同一の図面符号を付す。
【0020】
図2図3図4及び図6は、本発明のシーリング部材の一実施形態を示す図である。本発明のシール(seal)用部材はシリコンカーバイドを含む基材110b;及び前記基板に分散配置された複数の円柱形または多角柱形グラファイト110a;を含む特徴を有する。
【0021】
本発明の一実施形態において、前記複数の円柱形または多角柱形グラファイトは、図5に示すように、一方向に配向した状態で配置されることができる。ここで、一方向とは、前方、後方、側方などを意味する。
【0022】
本発明の一実施形態において、前記複数の円柱形または多角柱形グラファイトは平行に配置されることができる。
【0023】
本発明の一実施形態において、前記複数の円柱形または多角柱形グラファイト間の間隔のうち、最小間隔が最大間隔の60%以上となるように配置されることができ、より好ましくは、最小間隔が最大間隔の80%以上となるように配置されることができ、さらにより好ましくは90%以上となるように配置されることができる。
【0024】
従来のシール用部材は、シリコンカーバイド基材に相当な量のグラファイト粒子が分散した接触材とシリコンカーバイドを主材料とする母材とを接合した形態で製造された。
【0025】
しかし、前記のような接触材は、シリコンカーバイド粒子、グラファイト粒子及びバインダーを含むスラリーを製造して用いたため、シリコンカーバイド基材内にグラファイト粒子を均一に分散させることは非常に困難であった。したがって、局所的に不均一に分散したグラファイト粒子がシリコンカーバイド基材の機械的特性及び潤滑性の均一度を低下させる悪影響を引き起こす問題があった。
【0026】
また、前記のような問題によりシリコンカーバイド-グラファイト複合体の硬度及び耐摩耗性が減少し、長期間使用時、摩耗量の増加と不均一な摩耗による摩耗面の状態悪化を避けられない欠点があった。
【0027】
本発明者らは、グラファイトを円柱形または多角柱形に加工し、これらをシリコンカーバイド基材内に分散配置することにより、前記のような従来技術の欠点を解消し、接触材の硬度及び耐摩耗性を向上させると共に潤滑性も向上させることができるシール用部材を完成した。
【0028】
本発明においてシール用部材は、硬度、耐摩耗性及び耐化学的安定性と同時に円滑な機械作動のための潤滑性も備えているので、このような物性が要求されるシーリングに制限なく用いられることができる。また、シール用部材の形態は、要求される使用形態により多様に製造することができるので、特に限定されない。
【0029】
本発明の一実施形態において、前記シール用部材のいずれかの断面において複数の円柱形または多角柱形グラファイトが占める面積は、全体断面積の5~50%であってもよく、より好ましくは20~40%であってもよい。
【0030】
本発明の一実施形態において、前記複数の円柱形または多角柱形グラファイトは、断面の最大幅は10μm~2000μm(円柱形の場合は直径に該当する)であるものが用いられることができる。このとき、前記最長はシール用部材の大きさ、形状などを考慮して調節することができる。
【0031】
前記多角柱は、三角柱、四角柱、5~10角柱などを意味する。前記円柱形または多角柱形は、これと同様の形態を含むことができる。
【0032】
本発明の一実施形態において、前記シール用部材の形態はシールに使用される形態であれば特に限定されない。一例として、前記シール用部材は、図3、4及び6に示すように、円筒形の管状を有してもよい。
【0033】
本発明の一実施形態において、前記シール用部材は、図6に示すように、母材120と接触材110とを含み、前記接触材110がシリコンカーバイドを含む基材110b及び前記基材に分散配置された複数の円柱形または多角柱形グラファイト110aを含む形態であってもよい。
【0034】
前記母材120は、シリコンカーバイドを含む基板で形成されることができるが、これに限定されるものではない。前記母材120と接触材のシリコンカーバイド基材は、同一の組成で構成されてもよく、異なる組成で構成されてもよい。
【0035】
本発明の一実施形態において、前記母材と接触材は境界面から外側に延びる形態を有してもよい。
【0036】
前記接触材の長さは、全シール用部材の長さを基準として50%以下、40%以下、30%以下、20%以下であってもよい。
【0037】
前記シール用部材の形態は、シーリングに使用される形態であれば特に限定されない。一例として、前記シール用部材は、図6に示すように、円筒形の管状を有してもよい。
【0038】
本発明の一実施形態において、前記シール用部材は、図1図3に示すように、摩擦が発生するシール部に用いられることができる。また、回転体と固定体との間をシーリングする用途として用いられることができる。具体的に、シール用部材は、回転機器の軸封装置に用いられることができる。
【0039】
本発明のシーリング部材の製造方法を例を挙げて説明すると、次の通りである。しかし、前記シーリング部材の製造方法は、以下に例示された方法に限定されず、この分野の周知及び慣用技術によって製造されることができる。
【0040】
本発明のシーリング部材の製造方法は、
(a)複数の円柱形または多角柱形グラファイトをモールドに互いに離隔して配置する段階;
(b)前記グラファイト間の空間にシリコンカーバイド及びバインダーを含む組成物を充填する段階;
(c)前記モールドの内部を加圧して成形体を製造する段階;
(d)前記成形体を所望の形状に加工する段階;及び
(e)前記加工された成形体を焼結する段階;を含むことができる。
【0041】
本発明において前述したシール用部材とこの部分に記載されたシール用部材の製造方法は同一の技術的特徴を有するので、関連内容は両発明に共通に適用されることができる。そのため、以下において重複する内容は省略する。
【0042】
前記(a)段階において、複数の円柱形または多角柱形グラファイトは、一定の間隔を有するように配置されることができるが、これに限定されるものではない。実際の使用用途の必要に応じて特定の部分の密度をより高く配置されることもでき、このような形態以外にも様々な形態で配置されることもできる。
【0043】
また、前記複数の円柱形または多角柱形グラファイトは互いに平行に配置されることができるが、これらに限定されるものではなく、平行でない様々な形態で配置されることもできる。前記平行は完全な形態の平行のみを意味するのではなく、平行に類似する形態で配置されることを含む概念として理解されなければならない。また、製造上の限界で完全に平行に配置することは困難であるので、実質的平行配置も含む概念として理解されなければならない。
【0044】
前記(a)段階において円柱形または多角柱形グラファイトは、(b)段階においてシリコンカーバイドを含む組成物を充填するとき、円柱形または多角柱形グラファイトが動いてはならない。したがって、図5に示すように、複数の円柱形または多角柱形グラファイトを互いに離間した状態で固定することができる固定溝12が形成されたグラファイト固定部材10を用いて行うことができる。また、複数の円柱形または多角柱形グラファイトを互いに離間した状態で固定したプレートを用いて行うことができる。また、グラファイトプレートを上から彫刻して、下部がグラファイトプレートに固定され、互いに離間した複数の円柱形または多角柱形グラファイトを形成したものを用いることもできる。しかし、これらに限定されるものではなく、グラファイトを一定の間隔で固定することができる方法であれば、公知の方法が制限なく適用されることができる。
【0045】
前記のような方法を用いる場合には、円柱形または多角柱形のグラファイトを均一な間隔を有するように配置することが可能となり、必要に応じて特定の部分の密度をより高く配置することも可能であるので、好ましい。
【0046】
前記(a)段階において、モールドとは、本発明で製造しようとするシール用部材形状のモールドを意味し、例えば、図5に示すモールド20のような形態が用いられることができるが、これに限定されるものではない。
【0047】
前記(b)段階において、シリコンカーバイド及びバインダーを含む組成物としては、スラリー形態に製造されたものであるか、またはシリコンカーバイドとバインダーを混合して顆粒形態に製造した顆粒組成物が用いられることができる。前記顆粒組成物は、噴霧乾燥などの公知の製造方法で製造されることができる。
【0048】
スラリー形態の組成物は通常の溶媒を含むことができる。前記バインダーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンクリコール(PEG)、メチルセルロース(MC)、ポリビニルアセテート(PVAc)、ポリアクリルアミド(PAA)などからなる群より選択される1種以上であってもよいが、これに限定されるものではなく、シリコンカーバイド粒子を結合させることができる成分であれば制限なく用いられることができる。本発明では、特にポリビニルアルコール(PVA)が好ましく用いられることができる。
【0049】
前記シリコンカーバイド及びバインダーを含む組成物には、この分野において通常用いる分散剤、可塑剤、潤滑剤、消泡剤などの追加成分がさらに含まれることができる。
【0050】
前記シリコンカーバイドは、この分野において公知のものが用いられることができ、例えば、反応焼結シリコンカーバイド、固相焼結シリコンカーバイド、液相焼結シリコンカーバイドなどからなる群より選択される1種以上が用いられることができる。
【0051】
前記(b)段階において、グラファイト間の空間にシリコンカーバイド及びバインダーを含む組成物を充填する段階は、充填物を密度あるように充填するために超音波を適用するなど、この分野において用いられる公知の方法を制限なく用いることができる。
【0052】
前記(c)段階において、加圧は200~1200kg/cmの圧力で行うことができ、好ましくは300~1000kg/cmで行うことができる。
【0053】
前記(d)段階において、成形体を所望の形状に加工する段階は、この分野において公知の様々な形態で行うことができ、代表的にグリーン加工により行うことができる。
【0054】
前記(e)段階において、焼結は1200℃~2200℃の温度で行うことができ、具体的に反応焼結の場合は1500℃~1600℃、常圧焼結の場合は2000℃~2200℃、液相焼結の場合は1700℃~1900℃で行うことができる。また、前記焼結は真空焼結炉により行うことができ、このとき、焼結時間は5分~3時間、好ましくは10分~1時間行うことができる。前記焼結により溶融シリコンの浸透反応が行われる。
【0055】
本発明の一実施形態において、前記(b)段階は、図5に示すように、グラファイト間の空間にシリコンカーバイド及びバインダーを含む組成物を充填して接触材を形成し、その上部にシリコンカーバイド及びバインダーを含む組成物をさらに充填して母材を形成する段階を含むことができる。
【0056】
このようにして製造されたシール用部材は、図6に示す形態を有する。このとき、前記接触材の形成時に用いられるシリコンカーバイド及びバインダーを含む組成物、及び母材の形成時に用いられるシリコンカーバイド及びバインダーを含む組成物は、同一であるか、または異なる組成を有してもよい。
【実施例
【0057】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は本発明を例示するに過ぎず、本発明の範囲及び技術思想の範囲内で種々の変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変形及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然のことである。
【0058】
実施例1:シール用部材の製造
平均粒径が10μmのシリコンカーバイド粉末95重量%とバインダーとして5重量%のポリビニルアルコール(PVA)をボールミルを用いて混合してシリコンカーバイドスラリーを製造した後、前記スラリーを噴霧乾燥させてシリコンカーバイド顆粒を製造した。
【0059】
図5に示すように、複数のグラファイトを互いに離間した状態で固定することができる固定溝12が形成されたグラファイト固定部材10の固定溝12に直径が1mmであり、長さが10mmである円柱形グラファイトを挿入して固定させた後、モールドを結合した。
【0060】
次に、前記で製造された顆粒を前記円柱形グラファイト間の空間に充填して接触材を形成し、接触材の上部空間に前記顆粒を50mm高さでさらに充填して母材を形成した。
【0061】
前記接触材及び母材充填物に500kg/cmの圧力を加えて成形体を製造し、グリーン加工を行った。
【0062】
前記グリーン加工された成形体を1600℃の真空焼結炉で30分間加熱し、溶融シリコンの浸透反応により反応焼結を進行した。前記反応焼結を経たシール用部材を仕上げ研磨、仕上げ加工を経て最終シール用部材を完成した。
【0063】
前記完成したシール用部材の接触材の摩擦面で全体面積対比グラファイト面積は10%と確認された。
【0064】
実施例2~4:シール用部材の製造
下記表1に示すように、円柱形グラファイト直径及び全体面積対比摩擦面のグラファイト面積を異なるように調整して製造したことを除いては、実施例1と同様の方法でシール用部材を製造した。
【0065】
【表1】
【0066】
比較例1:シール用部材の製造
平均粒径が5μmのグラファイト粒子27重量%及び平均粒径が10μmのシリコンカーバイド粉末63重量%、バインダーとしてポリビニルアルコール(PVA)10重量%を混合してスラリーを製造し、噴霧乾燥してグラファイト-シリコンカーバイド顆粒を調製した。
【0067】
前記混合物をシール用部材の形状を作ることができる金型内に20mm高さで充填させ、前記充填物上に平均粒径が10μmのシリコンカーバイド粉末及びバインダーとしてポリビニルアルコールを9:1の重量比で含む組成物を50mm高さに充填した後、プレスで500kg/cmの圧力を加えて成形体を製造し、前記成形体をグリーン加工した。
【0068】
前記グリーン加工された成形体を1600℃の真空焼結炉で30分間加熱し、溶融シリコンの浸透反応により反応焼結を進行した。前記反応焼結を経たシール用部材を仕上げ研磨、仕上げ加工を経て最終シール用部材を完成した。
【0069】
前記完成したシール用部材の接触材の摩擦面で全体面積対比グラファイト面積は30%と確認された。
【0070】
【表2】
【0071】
実験例:シール用部材の物性評価
前記実施例1~4及び比較例1で製造されたシール用部材の物性を以下の方法で評価した。
【0072】
<密度>
AND社GF-6100天秤を用いて、アルキメデス法(Archimedes)でシール用部材の密度を評価した。
【0073】
<摩耗量>
Seal用部材の評価手順に従って、圧力-速度限界(P-V Limit)試験方法で接触材の摩耗量を測定した。
【0074】
【表3】
【0075】
前記表3に記載したように、本発明の実施例1~4のシール用部材は、他の方法で製造された比較例1のシール用部材と比較して密度、耐摩耗性、及び摩耗形態が著しく優れていることが確認された。
【0076】
特に、実施例4は、全体面積対比摩擦面のグラファイト面積が比較例よりも非常に大きいにもかかわらず、密度及び耐摩耗性はより優れていることが確認された。
【符号の説明】
【0077】
1、1' シール部材
2 グランドリング
3 パッキン
4 シャフト
5 固定カラー
6 スプリング
10 グラファイト固定部材
12 固定溝
20 モールド
110a 円柱形または多角柱形グラファイト
110b 基材
120 母材
図1
図2
図3
図4
図5
図6