(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】サンプルを検査および/またはイメージングするための荷電粒子ビーム装置および方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/244 20060101AFI20240509BHJP
H01J 37/04 20060101ALI20240509BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
H01J37/244
H01J37/04 Z
H01J37/28 B
(21)【出願番号】P 2022570171
(86)(22)【出願日】2021-03-09
(86)【国際出願番号】 EP2021055854
(87)【国際公開番号】W WO2021233583
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-11-16
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501493587
【氏名又は名称】アイシーティー インテグレーテッド サーキット テスティング ゲゼルシャフト フィーア ハルプライタープリーフテヒニック エム ベー ハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100176418
【氏名又は名称】工藤 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】ウィンクラー ディーター
(72)【発明者】
【氏名】ヴェラート ベルント
(72)【発明者】
【氏名】シャビンガー ビルギット
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-282761(JP,A)
【文献】特開2000-173520(JP,A)
【文献】特表2014-527690(JP,A)
【文献】特開2016-143513(JP,A)
【文献】特開2017-037843(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109300759(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/28
G01N 23/203
G01T 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルをイメージングおよび/または検査するための荷電粒子ビーム装置であって、
一次荷電粒子ビームを出射するためのビームエミッタであり、前記荷電粒子ビーム装置が、信号粒子を放出させるために、前記一次荷電粒子ビームを光軸に沿って前記サンプルに導くように構成される、ビームエミッタと、
前記サンプルに衝突する前に前記一次荷電粒子ビームを減速させるための減速電界型装置であり、前記減速電界型装置が、対物レンズおよびプロキシ電極を含み、前記プロキシ電極が、前記一次荷電粒子ビームおよび前記信号粒子の通過を可能にする開口を含む、減速電界型装置と、
前記プロキシ電極と前記対物レンズの間にある軸外後方散乱粒子用の第1の検出器と、
前記第1の検出器の信号を増幅するための前置増幅器であり、前記前置増幅器が、(i)前記第1の検出器と統合されるか、(ii)前記荷電粒子ビーム装置の真空ハウジングの内部で前記第1の検出器に隣接して配置されるか、(iii)前記荷電粒子ビーム装置の真空ハウジング内に固定して装着されるかのうちの少なくとも1つである、前置増幅器と
を含
み、
前記第1の検出器が、前記光軸に対して15°と30°との間の角度で前記サンプルから後方散乱された荷電粒子を少なくとも検出するように大きさを合わせられた環状検出面を有する、荷電粒子ビーム装置。
【請求項2】
前記第1の検出器が、前記一次荷電粒子ビームの通過を可能にする孔と、前記孔を少なくとも部分的に囲む検出面とを有するインレンズ検出器である、請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項3】
前記第1の検出器が、前記対物レンズと前記プロキシ電極との間に配置された、または前記対物レンズに装着された支持体を含み、前記前置増幅器が、前記支持体に装着される、請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項4】
前記第1の検出器が、検出面をもつ半導体検出器を含み、前記前置増幅器が、前記荷電粒子ビーム装置の前記真空ハウジングの内部に前記検出面から3cm以下の距離で配置される、請求項1~3のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項5】
前記前置増幅器によって供給され
る事前増幅信号を増幅するための増幅器であり、前記増幅器が、前記荷電粒子ビーム装置の前記真空ハウジングの外に配置される、増幅器をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項6】
前記第1の検出器が、複数の検出器セグメントを含み、前記前置増幅器が、マルチチャネル前置増幅器である、請求項1~3のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項7】
前記環状検出面が、セグメント化され、少なくとも4つの検出セグメントを含む、請求項6に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項8】
前記プロキシ電極が、前記一次荷電粒子ビームおよび前記信号粒子の通過を可能にする1つの開口を含み、前記1つの開口が、前記光軸に対して0°~20°以上の角度で前記サンプルから後方散乱された荷電粒子の通過を可能にするように大きさを合わせられる、請求項1~3のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項9】
前記1つの開口が、前記光軸に対して0°~45°以上の角度で前記サンプルから後方散乱された荷電粒子の通過を可能にするように大きさを合わせられる、請求項
8に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項10】
前記1つの開口が、前記光軸が中心で交差する丸いまたは円形の開口であり、2mm以上および6mm以下の開口直径を有する、請求項
8に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項11】
前記第1の検出器が、前記対物レンズと前記プロキシ電極との間に配置された、前記一次荷電粒子ビームおよび前記信号粒子の少なくとも一方に影響を与えるためのさらなる電極として機能するように構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項12】
前記第1の検出器が、所定の電位に設定されるように構成された導電性表面を含む、請求項
11に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項13】
前記第1の検出器によって設けられた前記さらなる電極が、接地電位に設定されるように構成される、請求項
11に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項14】
前記サンプルから放出された二次荷電粒子用の第2の検出器をさらに含み、前記第2の検出器が、前記
一次荷電粒子
ビームの進行方向において前記対物レンズの
上流に設けられる、請求項1~3のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項15】
請求項1に記載の前記荷電粒子ビーム装置を含む走査電子顕微鏡であって、
前記ビームエミッタが、一次電子ビームを出射するように構成された電子源であり、
前記走査電子顕微鏡が、
サンプルを支持するためのサンプルステージと、
前記サンプルの表面にわたって所定の走査パターンで前記一次電子を走査するための走査偏向器と
をさらに含む、
走査電子顕微鏡。
【請求項16】
荷電粒子ビーム装置によりサンプルをイメージングおよび/または検査するための方法であって、
一次荷電粒子ビームを出射することと、
信号粒子を生成するために、前記一次荷電粒子ビームを光軸に沿って前記サンプルに導くことと、
対物レンズ、および前記対物レンズと前記サンプルの間に配置されたプロキシ電極を含む、減速電界型装置により前記一次荷電粒子ビームを集束および減速させることと、
前記プロキシ電極と前記対物レンズの間に配置された第1の検出器により軸外後方散乱粒子を検出することと、
真空環境において前記第1の検出器に隣接して装着された前置増幅器により、前記第1の検出器の信号を事前増幅することと
を含
み、
前記第1の検出器が、前記光軸に対して15°と30°との間の角度で前記サンプルから後方散乱された荷電粒子を少なくとも検出するように大きさを合わせられた環状検出面を有する、方法。
【請求項17】
前記第1の検出器が、前記対物レンズと前記サンプルとの間に配置された、または前記対物レンズに装着された支持体を含み、前記前置増幅器が、前記支持体に装着される、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記プロキシ電極が、前記一次荷電粒子ビームおよび前記信号粒子の通過を可能にする1つの開口を含み、前記1つの開口が、前記光軸に対して0°~20°以上の角度で前記サンプルから後方散乱された荷電粒子の通過を可能にするように大きさを合わせられる、請求項
16または
17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の検出器が、実質的に前記荷電粒子ビーム装置のカラムの電位に設定されるさらなる電極として機能する、請求項
16または
17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の実施形態は、1つまたは複数の荷電粒子ビーム、特に、電子ビームを用いて、サンプルをイメージングおよび/または検査するための装置に関する。具体的には、サンプルに衝突する前に荷電粒子ビームを減速させるように構成された減速電界型装置を有する荷電粒子ビーム装置が記載される。実施形態は、特に、3D構造または高アスペクト比の構造をもつサンプルを、後方散乱電子(BSE)を検出することによって検査するための電子ビーム検査システムに関する。実施形態は、さらに、荷電粒子ビーム装置によりサンプルを検査および/またはイメージングするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子ビーム装置は、複数の産業分野において、限定はしないが、製造中の半導体装置の限界寸法測定、半導体装置の欠陥レビュー、半導体装置の検査、リソグラフィ用の露光システム、検出装置、および試験システムを含む、多くの役割を有する。したがって、マイクロメートルおよびナノメートルスケールでの試料またはサンプルの構造化、試験、および検査への高い要望がある。
【0003】
マイクロメートルおよびナノメートルスケールのプロセス制御、検査、または構造化は、多くの場合、電子顕微鏡など、荷電粒子ビーム装置により生成および集束される荷電粒子ビーム、例えば、電子ビームを用いて行われる。荷電粒子ビームは、短い波長のため、例えば、光子ビームと比較して優れた空間分解能を提供する。
【0004】
近年、3D構造または大きいアスペクト比(開口幅に対する深さの大きい比などの)を有する構造をもつサンプルを検査および/またはイメージングすることがますます関心を引き起こしている。3D FinFETおよび3D NANDのようなデバイスは、大きいアスペクト比をもつ構造を有し、その構造は、一次電子ビームがサンプル表面にぶつかったときに生成される二次電子(SE)、すなわち、低エネルギー信号電子を使用する場合、走査電子顕微鏡(SEM)でイメージングすることが困難である。SEは、高アスペクト比をもつ構造からほとんど脱出することができず、多くの場合、妥当な信号対雑音比で検出することができない。特に、高アスペクト比のトレンチおよびコンタクトホールの限界寸法(CD)測定は難題である。後方散乱電子(BSE)、すなわち、サンプルから後方散乱される、より高いエネルギーの電子を使用する画像モードが、多くの場合、特に半導体産業において、イメージングおよび/または検査の品質を高めるために使用される。
【0005】
最新の荷電粒子ビーム検査システムにおいて、二次荷電粒子と後方散乱荷電粒子の両方を高い検出効率で検出することが有利であろう。これにより、実質的にx-y面内に延びるサンプル表面と、z方向に深さを有する3D構造の両方を高い分解能で正確に検査することが可能になる。いくつかのシステムでは、光軸に対して様々な角度でサンプルから出る後方散乱荷電粒子は、主に、サンプルの近くに、例えば、対物レンズとサンプルとの間に配置された第1の検出器で検出される。他方、二次荷電粒子は、主に、サンプルからより離れた距離にある、例えば、ビーム源と対物レンズとの間に配置された第2の検出器で検出される。しかしながら、低エネルギー信号荷電粒子の検出効率を大幅に低下させることなしに高いBSE検出効率を得ることは、達成が困難である。
【0006】
上述に鑑みて、当技術分野における問題のうちの少なくともいくつかを克服する、サンプルを検査および/またはイメージングするための荷電粒子ビーム装置ならびに方法を提供することは有益であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述に照らして、独立請求項によるサンプルを検査および/またはイメージングするための荷電粒子ビーム装置、ならびに荷電粒子ビーム装置によりサンプルを検査および/またはイメージングするための方法が提供される。さらなる態様、利点、および特徴が、従属請求項、説明、および添付の図面から明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様によれば、サンプルをイメージングおよび/または検査するための荷電粒子ビーム装置が提供される。荷電粒子ビーム装置は、一次荷電粒子ビームを出射するためのビームエミッタであり、荷電粒子ビーム装置が、信号粒子を放出させるために、一次荷電粒子ビームを光軸に沿ってサンプルに導くように構成される、ビームエミッタと、サンプルに衝突する前に一次荷電粒子ビームを減速させるための減速電界型装置であり、減速電界型装置が、対物レンズおよびプロキシ電極を含み、プロキシ電極が、一次荷電粒子ビームおよび信号粒子の通過を可能にする開口を含む、減速電界型装置と、プロキシ電極と対物レンズの間にある軸外後方散乱粒子用の第1の検出器と、第1の検出器の信号を増幅するための前置増幅器であり、前置増幅器が、(i)第1の検出器に統合されるか、(ii)荷電粒子ビーム装置の真空ハウジングの内部で第1の検出器に隣接して配置されるか、(iii)荷電粒子ビーム装置の真空チャンバ内に固定して装着されるかのうちの少なくとも1つである、前置増幅器とを含む。
【0009】
別の態様によれば、本明細書に記載の荷電粒子ビーム装置を含む走査電子顕微鏡が提供される。ビームエミッタは、一次電子ビームを出射するように構成された電子源であり、走査電子顕微鏡は、サンプルを支持するためのサンプルステージと、サンプルの表面にわたって所定の走査パターンで一次電子を走査するための走査偏向器をさらに含む。
【0010】
別の態様によれば、荷電粒子ビーム装置によりサンプルをイメージングおよび/または検査するための方法が提供される。この方法は、一次荷電粒子ビームを出射することと、信号粒子を生成するために、一次荷電粒子ビームを光軸に沿ってサンプルに導くことと、対物レンズ、および対物レンズとサンプルの間に配置されたプロキシ電極を含む、減速電界型装置により一次荷電粒子ビームを集束および減速させることと、プロキシ電極と対物レンズの間に配置された第1の検出器により軸外後方散乱粒子を検出することと、荷電粒子ビーム装置の内部の真空環境において第1の検出器に隣接して装着された前置増幅器により、第1の検出器の信号を事前増幅することとを含む。
【0011】
サンプルをイメージングおよび/または検査するための荷電粒子ビーム装置がさらに記載される。荷電粒子ビーム装置は、一次荷電粒子ビームを出射するためのビームエミッタであり、荷電粒子ビーム装置が、信号粒子を放出させるために、一次荷電粒子ビームを光軸に沿ってサンプルに導くように構成される、ビームエミッタと、サンプルに衝突する前に一次荷電粒子ビームを減速させるための減速電界型装置であり、減速電界型装置が、対物レンズおよびプロキシ電極を含む、減速電界型装置と、プロキシ電極と対物レンズの間にある軸外後方散乱粒子用の第1の検出器とを含む。プロキシ電極は、一次荷電粒子ビームおよび信号粒子の通過を可能にする1つの開口を有し、1つの開口は、光軸に対して0°~20°以上の角度(α)でサンプルから後方散乱された荷電粒子の通過を可能にするように大きさを合わせられる。
【0012】
サンプルをイメージングおよび/または検査するための荷電粒子ビーム装置がさらに記載される。荷電粒子ビーム装置は、一次荷電粒子ビームを出射するためのビームエミッタであり、荷電粒子ビーム装置が、信号粒子を放出させるために、一次荷電粒子ビームを光軸に沿ってサンプルに導くように構成される、ビームエミッタと、サンプルに衝突する前に一次荷電粒子ビームを減速させるための減速電界型装置であり、減速電界型装置が、対物レンズおよびプロキシ電極を含み、プロキシ電極が、一次荷電粒子ビームおよび信号粒子の通過を可能にする開口を含む、減速電界型装置と、プロキシ電極と対物レンズの間にある軸外後方散乱粒子用の第1の検出器であり、第1の検出器が、一次荷電粒子ビームに影響を与えるためのさらなる電極として機能するように構成され、第1の検出器が、光軸の方に向けられた導電性内面および対物レンズの方に向けられた導電性上面の少なくとも一方を含み、所定の電位に設定されるように構成される、第1の検出器とを含む。
【0013】
荷電粒子ビーム装置によりサンプルをイメージングおよび/または検査するための方法がさらに記載される。この方法は、一次荷電粒子ビームを出射することと、信号粒子を生成するために、一次荷電粒子ビームを光軸に沿ってサンプルに導くことと、対物レンズ、および対物レンズとサンプルの間に配置されたプロキシ電極を含む、減速電界型装置により一次荷電粒子ビームを集束および減速させることであり、プロキシ電極が、一次荷電粒子ビームおよび信号粒子の通過を可能にする1つの開口を有し、1つの開口が、光軸に対して0°~20°以上の角度(α)でサンプルから後方散乱された荷電粒子の通過を可能にするように大きさを合わせられる、集束および減速させることと、プロキシ電極と対物レンズの間に配置された第1の検出器により軸外後方散乱粒子を検出することとを含む。
【0014】
実施形態はまた、開示される方法を実行するための装置に関し、記載の方法の特徴の各々を実行するための装置部分を含む。方法の特徴は、ハードウェア構成要素によって、適切なソフトウェアによりプログラムされたコンピュータによって、両者の任意の組合せによって、または任意の他の方法で実行され得る。その上、実施形態はまた、記載の装置を製造する方法と、記載の装置を動作させる方法とに関する。この方法は、装置のあらゆる機能を実行するための方法の特徴を含む。
【0015】
本開示の上述で列挙した特徴を詳細に理解できるように、上述で簡潔に要約したもののより詳細な説明が、実施形態を参照することによって得られる。添付の図面は、本開示の実施形態に関し、以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本明細書に記載の実施形態による荷電粒子ビーム装置の概略図である。
【
図2】
図1の荷電粒子ビーム装置のプロキシ電極および第1の検出器の拡大図である。
【
図3】本明細書に記載の実施形態による荷電粒子ビーム装置のプロキシ電極の上面図である。
【
図4a】本明細書に記載の荷電粒子ビーム装置の第1の検出器の斜視底面図および斜視上面図である。
【
図4b】本明細書に記載の荷電粒子ビーム装置の第1の検出器の斜視底面図および斜視上面図である。
【
図5】本明細書に記載の実施形態による荷電粒子ビーム装置の概略図である。
【
図6】本明細書に記載の実施形態による荷電粒子ビーム装置によりサンプルをイメージングおよび/または検査するための方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、様々な実施形態を詳細に参照し、その1つまたは複数の例が図に示される。以下の説明の範囲内で、同じ参考番号は同じ構成要素を指す。一般に、個々の実施形態に関する相違点のみが説明される。各例は説明のために提供されるものであり、限定を意味するものではない。さらに、ある実施形態の一部として図示または記載された特徴を、他の実施形態で使用して、または他の実施形態とともに使用して、さらに、さらなる実施形態をもたらすことができる。説明はそのような変形および変更を含むことが意図される。
【0018】
本出願の保護の範囲を限定することなく、以下では、荷電粒子ビーム装置またはその構成要素は、例示的に、信号電子を検出するように構成された電子ビーム装置と呼ばれる。信号電子は、特に、二次電子および/または後方散乱電子、特に、二次電子と後方散乱電子(SEとBSE)の両方を包含する。しかしながら、本明細書に記載の実施形態は、サンプル画像または検査結果を得るために、イオンの形態の二次荷電粒子および/または後方散乱荷電粒子などの他の粒子を検出する装置および構成要素に適用できることを理解されたい。その結果、本明細書に記載の実施形態において、荷電粒子は、電子に限定されない。
【0019】
本明細書で言及される「試料」、「サンプル」、または「ウエハ」は、限定はしないが、半導体ウエハ、半導体ワーク、およびメモリディスクなどのような他のワークを含む。「サンプル」は、特に、構造化されるかまたは材料が堆積される任意のワークとすることができる。試料、サンプル、またはウエハは、検査および/またはイメージングされるべき表面、例えば、構造化されるかまたは層もしくは材料パターンが堆積されている表面を含むことができる。例えば、サンプルは、検査されるべき複数の電子デバイスが設けられている基板またはウエハとすることができる。いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の装置および方法は、電子ビーム検査(EBI)、限界寸法測定、および欠陥レビュー用途に関連し、本明細書に記載の装置および方法は、スループットの向上および検出精度の改善を得るために有利に使用することができる。いくつかの実施形態によれば、電子ビーム検査(EBI)、限界寸法測定(CD)ツール、および/または欠陥レビュー(DR)ツールを提供することができ、高い分解能、大きい視野、および高い走査速度を達成することができる。
【0020】
図1は、本明細書に記載の実施形態による、サンプルをイメージングおよび/または検査するための荷電粒子ビーム装置10の概略図を示す。荷電粒子ビーム装置10は、一次荷電粒子ビーム、特に、電子ビームを出射するためのビームエミッタ150を含む。荷電粒子ビーム装置10は、サンプルから信号粒子を放出させるために、一次荷電粒子ビーム105を光軸101に沿ってサンプル140に導くように構成される。サンプル140は、サンプルステージ50に載置することができ、サンプルステージ50は実質的にx-y面内に延びるサンプル支持体表面を含む。
【0021】
ビームエミッタ150は、冷電界エミッタ(CFE)、ショットキーエミッタ、TFE、または高電流および/または高輝度荷電粒子源、特に、電子源とすることができる。高電流とは、100mradで5μA以上と想定される。
【0022】
荷電粒子ビーム装置10は、サンプル140に衝突する前に一次荷電粒子ビーム105を減速させるための減速電界型装置100をさらに含み、減速電界型装置100は、対物レンズ110およびプロキシ電極130を含む。本明細書で使用される「プロキシ電極」は、サンプルの近くに、特に、対物レンズ110とサンプル140(またはサンプルステージ50)との間に配置された電極として理解され得る。言い換えれば、プロキシ電極130は、一次荷電粒子ビーム105の伝搬方向において対物レンズ110の下流に配置され、一般に、サンプル表面にぶつかる前に一次荷電粒子ビームが通る最後の電極である。例えば、動作中のプロキシ電極130とサンプル140との間の距離D1(
図2参照)は、5mm以下、特に3mm以下、さらに特に1mm以下、またはさらに200μm以下とすることができる。
【0023】
本明細書に記載のいくつかの実施形態によれば、荷電粒子ビーム装置は、サンプルから放出される信号粒子を生成するために、荷電粒子ビーム装置のカラム内の一次ビームを光軸101に沿ってサンプルに導くように構成され、信号粒子は、衝突時に生成された二次粒子と、サンプルから反射された後方散乱粒子とを含む。プロキシ電極130は1つの開口131を含み、1つの開口131は、一次荷電粒子ビーム105をサンプルの方に通過させることができ、サンプルから来る反対方向の信号粒子を1つの開口131へ通過させることができる。一般に、1つの開口131は、光軸101と位置合わせされる。具体的には、荷電粒子ビーム装置の光軸101は、プロキシ電極130の1つの開口131と中心で交差することができる。
【0024】
通常、一次荷電粒子ビーム105は、イメージングおよび/また検査されるサンプルにぶつかる前に、荷電粒子ビーム装置のカラムを通って進む。カラムの内部は排気することができ、すなわち、荷電粒子ビーム装置は、一般に、真空ハウジング102を含み、その結果、一次荷電粒子ビームは、準大気圧、例えば、1mbar以下、特に、1×10-5mbar以下、またはさらに1×10-8mbar以下(超高真空)の圧力を有する環境を通って伝搬する。ビームエミッタおよび対物レンズは、荷電粒子ビーム装置の真空ハウジング102の内部に配置することができる。プロキシ電極130は、真空ハウジング102の前端に隣接して設けられてもよく、および/またはサンプルステージが設けられるサンプルチャンバ内に突き出てもよい。サンプルチャンバは、準大気圧(例えば、高真空)用に構成することができるが、荷電粒子ビーム装置の真空ハウジング102は、いくつかの実施形態では、超高真空用に構成することができる。
【0025】
一次荷電粒子ビーム105がサンプルに衝突すると、異なる反応が、サンプル上またはサンプル内で生じる。例えば、二次粒子がサンプルから放出される。サンプルに衝突する一次ビームは、特に、一次荷電粒子ビームの粒子によって供給されるエネルギーによって、サンプル内の他の粒子を解離させる。これらの二次粒子は、サンプルから放出された後、サンプルを出て、適切な検出器によって検出され得る。しかし、一次荷電粒子ビームは、さらなる効果を引き起こす。一次ビームの粒子は、サンプルから跳ね返り(表面から、または特定の深さまでサンプル内に入った後のいずれか)、サンプルから反射される。サンプルから跳ね返り、サンプルを出た一次荷電粒子ビームの粒子は、後方散乱粒子として示される。後方散乱粒子は、サンプルに関する空間的情報を得るために様々な後方散乱角度で検出することができる。一般に、二次粒子および後方散乱粒子は、一緒にして、信号粒子または信号電子と呼ばれる。
【0026】
後方散乱電子の検出は、半導体産業における3D構造のイメージングおよび検査にとって特に有益である。例えば、3D FinFETおよび3D NANDのようなデバイスは、大きいアスペクト比をもつ構造を有し、それは、二次粒子のみを使用する荷電粒子ビーム装置ではイメージングすることが困難である。大きいアスペクト比とは、サンプルの構造の深さと構造の開口幅の比が約5:1以上、例えば、10:1、またはさらに20:1以上であるとして理解され得る。単純化した例では、構造は、サンプル内の概ね円筒形の孔とすることができ、以下でより詳細に説明するように、サンプル内への深さと、概ね円筒形の孔の直径にほぼ対応する幅とを備える。
【0027】
二次電子などの二次粒子は、大きいアスペクト比の構造から容易に脱出することができず、一般に、妥当な信号対雑音比で検出することができない。特に、高アスペクト比のトレンチおよびコンタクトホールのCD測定は難題である。しかしながら、本明細書に記載の実施形態では、大きいアスペクト比をもつ構造をイメージングおよび/または検査するために、後方散乱粒子を使用することができる。後方散乱粒子は深い構造から脱出するのに十分なエネルギーを有しているので、後方散乱粒子は孔およびトレンチを出ることができ、サンプルから後方散乱粒子を抽出するために高い抽出場を使用する必要がない可能性がある(二次電子とは異なる)。さらに、一次ビームの適切な(中程度の)ランディングエネルギーの下で、後方散乱粒子は、側壁を通過することができ、サンプルを出ることができ、その結果、より多くの後方散乱粒子が、全体の後方散乱粒子信号に寄与することができる。効率的な後方散乱粒子検出器が有利に使用され、小さい角度の後方散乱粒子(高アスペクト比の特徴から反射された)、ならびに周囲の材料を通過した大きい角度の後方散乱粒子を検出することができる。
【0028】
既知の装置では、いくつかの開口、すなわち、光軸に対して小さい角度でサンプルを出る信号粒子のための中央開口、および光軸に対して大きい角度でサンプルを出る信号粒子(軸外BSE)のための少なくとも1つのさらなる開口をもつプロキシ電極が使用される。しかしながら、異なる角度で伝搬する信号粒子のための複数の開口をもつプロキシ電極は、全体的な検出効率を低下させることがある。
【0029】
上述を考慮して、本明細書に記載の実施形態は、光軸101に対して0°~20°以上の角度αでサンプルから後方散乱された荷電粒子の通過を可能にするように大きさを合わせられた1つの開口131をもつプロキシ電極130を含む。特に、プロキシ電極は、複数の開口の代わりに1つの単一開口のみを有することができる。具体的には、本明細書に記載されているように、以下の粒子がプロキシ電極の同じ開口を通って伝搬する。(a)一次荷電粒子ビーム、(b)二次粒子と、実質的に光軸に沿って(例えば、光軸に対して0°と5°との間の角度で)サンプルを出る後方散乱粒子とを含む「軸方向」信号粒子、および(c)光軸に対して15°を超える角度で伝搬する大きい角度の後方散乱電子を含む、光軸に対してより大きい角度で(例えば、5°と20°との間の角度で)サンプルを出る「軸外」信号粒子。その結果、実質的に、サンプルに関する価値のある情報を伝える信号粒子はプロキシ電極の本体によって阻止されず、小さい角度の後方散乱粒子と大きい角度の後方散乱粒子の両方は、プロキシ電極の同じ開口131を通過した後、信号粒子の伝搬方向においてプロキシ電極の下流で検出することができる。
【0030】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態において、プロキシ電極130の1つの開口131は、光軸に対して0°~45°以上の角度αで、またはさらに0°~65°以上の角度で、サンプルから後方散乱された荷電粒子の通過を可能にするように大きさを合わせられる。その結果、さらに、光軸に対して非常に大きい角度でサンプルから後方散乱された信号粒子は、プロキシ電極の本体によって阻止されるリスクなしに、プロキシ電極130の1つの開口131を通って伝搬することができる。これは、サンプルの構造に関する貴重な情報を伝える信号粒子、特に軸外後方散乱粒子の検出効率を高める。
【0031】
いくつかの実施形態では、プロキシ電極130の1つの開口131は、光軸101が中心で交差することができる丸いまたは円形の開口である。いくつかの実施態様では、プロキシ電極は、荷電粒子ビーム装置の動作中、サンプル表面のすぐ近くに、例えば、5mm以下、特に3mm以下、さらに特に1mm以下、またはさらに200μm以下の第1の距離D1(
図2参照)に配置される。第1の距離D1が小さいと、さらに、大きい角度の後方散乱電子が、1つの開口131を通って伝搬することができる。他方、第1の距離D1は、一般に、少なくとも100μmであり、その結果、サンプルとプロキシ電極との間に抽出領域を設けることによって、サンプルから信号電子を抽出することが依然として可能である。代替としてまたは追加として、1つの開口131の直径D4は、1mm以上、特に3mm以上、またはさらに5mm以上とすることができる。1つの開口131の直径D4が大きいと、さらに、大きい角度の後方散乱電子も1つの開口131を通って伝搬することが可能になる。他方、1つの開口の直径D4は、8mm以下にすることができ、その結果、所定の電位U
proxyをプロキシ電極に印加することによって、サンプルと、プロキシ電極の1つの開口131との間の抽出領域に、所定の電界を生成することができる。
【0032】
荷電粒子ビーム装置は、軸外後方散乱粒子用の第1の検出器120をさらに含み、第1の検出器120は、プロキシ電極130と対物レンズ110との間に配置される。「軸外後方散乱粒子」は、光軸に対してある角度で、例えば、5°以上の角度で後方散乱された粒子である。その結果、軸外後方散乱電子(一般に、数keVまたは数十keVの粒子エネルギーを有する)は、後方散乱電子の伝搬方向においてプロキシ電極130のすぐ下流の位置で第1の検出器120によって検出され得る。これにより、軸外後方散乱粒子の検出効率が高まる。
【0033】
例えば、第1の検出器120は、後方散乱電子検出器、特に半導体検出器、特にPINダイオードとすることができる。特に、第1の検出器120は、信号を個々に処理する、例えば、個々に混合する、および/または組み合わせることができる複数の検出セグメントを含むマルチチャネル後方散乱電子検出器とすることができる。例えば、複数の検出セグメントからの信号は、合成イメージングのために組み合わせることができ、および/またはトポグラフィコントラストを改善するために個々に処理することができる。
【0034】
任意に、サンプルから放出されたさらなる信号粒子、特に、二次荷電粒子、および/または実質的に光軸に沿ってまたは小さい角度で後方散乱される軸方向後方散乱電子を検出するように構成された第2の検出器(
図1には図示せず)を、信号粒子の進行方向において対物レンズの下流に配置することができる。第2の検出器は、二次電子検出器とすることができる。その結果、二次荷電粒子および/または実質的に光軸に沿って伝搬する軸方向後方散乱粒子は、対物レンズとビームエミッタとの間の位置で第2の検出器によって検出され得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、第1の検出器120は、後方散乱電子検出器、特に、光軸101のまわりに環状に延びることができる検出面125をもつインレンズ検出器とすることができる。いくつかの実施形態では、第1の検出器120は、一次荷電粒子ビーム105の通過を可能にする孔を有し、孔を囲む環状の検出面を有するインレンズ検出器である。
【0036】
いくつかの実施態様において、第1の検出器120の検出面125は、光軸に対して15°と30°との間の角度で、特に10°と35°との間の角度で、さらに特に7°と40°との間の角度で、またはさらに大きい範囲の角度で、少なくともサンプルから後方散乱された荷電粒子を検出するように大きさを合わせることができる。例えば、
図2に例示的に示されるように、第1の検出器120は、15°以下の第1の角度(α1)と、30°以上の第2の角度(α2)との間の範囲でサンプルから後方散乱された荷電粒子を検出するように大きさを合わせられた検出面125を有することができる。軸方向後方散乱粒子、および光軸に対して非常に小さい角度(例えば、5°以下の角度)の後方散乱粒子は、第1の検出器の孔を通って伝搬することができ、第1の検出器によって検出されない。軸方向後方散乱粒子は、任意に、信号粒子の伝搬方向において対物レンズの下流の第2の検出器によって検出することができる。光軸に対して非常に大きい角度(例えば、35°以上または45°以上の角度)で後方散乱された荷電粒子は、検出されることなく、第1の検出器の検出面125の半径方向外側の第1の検出器の支持体にぶつかる可能性があり、またはプロキシ電極130の本体によって既に阻止されている可能性がある。いくつかの実施形態では、プロキシ電極130の1つの開口131のサイズは、第1の検出器の検出面125のサイズに適合することができ、その結果、検出面の半径方向外側の第1の検出器にぶつかるはずである非常に大きい角度で後方散乱された荷電粒子は、プロキシ電極によって阻止される。
【0037】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態において、減速電界型装置100は、静電磁気対物レンズ(または磁気対物レンズ)と、プロキシ電極130とを含む。一般に、減速電界型装置では、カラムの内部の電子エネルギーは、サンプルに衝突する前に最終ランディングエネルギーまで低減される。減速電界型装置の総合性能は、カラムエネルギーのランディングエネルギーに対する比である浸入係数(immersion factor)によって決定され得る。浸入係数が大きいほど、分解能に関して性能が良好である。
【0038】
いくつかの実施形態では、減速電界型装置100は、サンプルから放出された二次粒子のための抽出場を生成するように構成される。例えば、一次荷電粒子ビームの減速レンズとして機能する減速電界型装置100は、サンプルによって放出された二次粒子の加速レンズとして機能することができる。減速電界型装置は、一次荷電粒子ビームを減速させ、二次粒子を加速させるために動作パラメータを調節するように制御することができる。低いランディングエネルギーでは、減速電界型装置の集束力(focal power)は、衝突の前に一次電子を減速させる対物レンズとプロキシ電極の組合せ効果に基づく。
【0039】
本明細書に記載の実施形態の文脈において、荷電粒子ビーム装置のための減速電界型装置とは、サンプルに打ち当たる直前に低いランディングエネルギーに減速される当初高い電子エネルギーをもつ荷電粒子ビームに作用するための装置を説明する。加速後のカラム内の電子エネルギーと、サンプルに衝突する前のランディングエネルギーとの間の比は、約4以上、例えば、8以上とすることができる。ランディングエネルギーは、10keV以下、例えば、5keV以下、例えば1keVとすることができる。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、プロキシ電極は、サンプルまたはサンプルステージに最も近いビーム作用電極として理解することができる。一例では、プロキシ電極と、サンプルステージまたはサンプルとの間の距離は、対物レンズと、サンプルステージまたはサンプルとの間の距離よりも小さい。
【0041】
本明細書に記載の実施形態によれば、大きい角度の後方散乱粒子を少ない検出損失で検出できるようにすることは、1つの開口131を後方散乱粒子検出のための入射窓として有するプロキシ電極を使用することによって達成される。プロキシ電極は、さらに、減速電界型装置の最終構成要素として一次荷電粒子ビームを減速させるために使用することができる。プロキシ電極は、さらに、二次粒子のための抽出場強度を制御できてもよい。
【0042】
減速電界型装置は、荷電粒子ビーム装置のサンプルとカラムとの間に、一般に、5keV以上、15keVまたはさらに30keV以上、例えば、約35keVのかなり大きい電位差を与えるので、1つの開口131を通過する後方散乱粒子は、第1の検出器120に到達する前に加速され、それは、高効率検出に有利である。第1の検出器120は、加速電極として機能することができ、それぞれの電位に設定され得る。後方散乱粒子の加速は、低いランディングエネルギー(例えば、10keV未満、例えば、3keV未満、またはさらに1keV)で後方散乱粒子を検出する場合、または後方散乱粒子がサンプル材料を通って進むときにそのエネルギーの一部を失った場合、特に有益である。カラムが接地電位である場合には、pinダイオードのような半導体検出器による検出は、検出器ならびに検出器エレクトロニクスを接地電位に設定することができるので、実践的であり得る。
【0043】
図2は、本明細書に記載の実施形態による荷電粒子ビーム装置のプロキシ電極130および第1の検出器120の拡大断面図である。
図3は、プロキシ電極130を概略上面図で示し、
図4aおよび
図4bは、第1の検出器120を概略上面図および概略底面図で示す。
【0044】
図2および
図3に示されるように、サンプルステージに最も近い電極であるプロキシ電極130は、一次荷電粒子ビーム105および信号粒子の通過を可能にする1つの開口131を有し、1つの開口131は、光軸101に対して0°~20°以上の角度でサンプルから後方散乱された荷電粒子の通過を可能にするように大きさを合わせられる。特に、1つの開口131は、3mm以上、特に4mm以上、またはさらに6mm以上の直径D4を有する丸い開口とすることができる。その結果、軸外後方散乱電子と、実質的に軸方向に伝搬する二次電子とを含む、サンプルに関する貴重な情報を伝える実質的にすべての信号電子は、プロキシ電極の同じ開口を通って伝搬することができる。軸外後方散乱電子は、検出されるために第1の検出器120に向かって伝搬し、および/または二次電子は、検出されるために任意の第2の検出器に向かって伝搬する。軸外後方散乱電子を検出するように構成された第1の検出器120は、プロキシ電極と対物レンズとの間に配置される。
【0045】
第1の検出器120は、15°の(またはそれより小さい)第1の角度(α1)と、30°の(またはそれより大きい)第2の角度(α2)との間の角度範囲で、特に、10°の(またはそれより小さい)第1の角度(α1)と、35°の(またはそれより大きい)第2の角度(α2)との間の角度範囲で後方散乱される軸外後方散乱電子を検出するように大きさを合わせられた検出面125をもつインレンズ検出器とすることができる。検出面125は、実質的に環状に成形することができる。
【0046】
検出面125が、
図4bにさらに詳細に示される。
図4は、下からの斜視図で、すなわち、サンプルから見た第1の検出器120を示す。検出面125は、環状とすることができ、第1の検出器において、例えば、検出面125の中心に設けられた孔123のまわりに延びることができる。一次荷電粒子ビームおよび軸方向信号粒子は、孔123を通って逆方向に伝搬することができる。いくつかの実施態様では、検出面125は、セグメント化されてもよく、複数の検出セグメント126、特に2つ以上の検出セグメント、さらに特に4つ以上の検出セグメントを含むことができる。少なくとも2つの検出セグメントが、光軸に対して異なる角度範囲、10°~20°の第1の角度範囲、および20°~30°の第2の角度範囲などの信号粒子を検出するために設けられてもよく、これらの角度範囲の値は例として理解されるべきである。具体的には、検出セグメントは、
図4bに概略的に示されているように、光軸101に対して少なくとも2つの異なる半径方向範囲をカバーするように設けることができる。代替としてまたは追加として、少なくとも2つの検出セグメントが、異なる方位角範囲を検出するために設けられてもよい。例えば、第1の検出セグメントは、リングセクション(例えば、180°をカバーする第1のリングセクション)の形状を有することができ、第2の検出セグメントは、別のリングセクション(例えば、
図4bに概略的に示されるように、残りの180°をカバーする第2のリングセクション)の形状を有することができる。いくつかの実施形態では、2つより多いリングセクション、例えば、上部、下部、左、および右のセグメント、すなわち、それぞれ、90°にわたって延びる4つのリングセクションを設けることができる。各検出器セグメントは、信号粒子の定義された部分(例えば、極および/または方位角)を検出し、それにより、トポグラフィコントラストを作り出すことができる。コントラストは、主として、トポグラフィ特徴の傾斜側面の陰影によってもたらされる。異なる方位角範囲をカバーするいくつかの検出セグメントを設けることによって、トポグラフィコントラストを高めることができ、3次元特徴を、改善された精度および/または分解能で検査および/またはイメージングすることができる。
図4bに示された実施形態では、4つの検出セグメントが、2つの異なる半径方向範囲および2つの異なる方位角範囲をカバーするために設けられている。
【0047】
いくつかの実施形態では、第1の検出器120の孔123は、1.5mm以上、特に2mm以上の直径を有することができる。代替としてまたは追加として、孔123は、10mm以下、特に6mm以下の直径を有することができる。具体的には、孔123は、2mm~5mmの直径を有することができる。直径が小さいと、第1の検出器による後方散乱荷電粒子の検出効率が高まるが、例えば第1の検出器の帯電または汚染に起因する不安定性のリスクも増加する可能性がある。直径が大きいと、後方散乱粒子の検出効率は低下するが、例えば、一次荷電粒子ビームを孔の縁部から距離を置いて孔を通して導くことができるので、不安定性が減少する。代替としてまたは追加として、第1の検出器120の検出面125は、12mm以上、および/または20mm以下、特に約15mmの直径を有することができる。
【0048】
いくつかの実施態様では、プロキシ電極130と第1の検出器120との間の第2の距離D2は、3mm以上および/または6mm以下、特に4mm以上および/または5mm以下である。第2の距離D2が小さいと、不安定性のリスク、例えば、アーク放電のリスクが増加するが、よりコンパクトな減速電界型装置を提供し、得られる分解能を向上させることができる。第2の距離が大きいと、第1の検出器の収容が容易になり、不安定性のリスクが減少するが、分解能が低下するとともに装置がコンパクトでなくなる可能性がある。
【0049】
いくつかの実施態様では、サンプルと第1の検出器との間の第3の距離D3は、3mm以上および/または12mm以下、特に4mm以上および10mm以下とすることができる。上述の範囲の第3の距離D3では、良好なトポグラフィコントラストとともに良好な分解能が得られる。
【0050】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態において、第1の検出器120は、対物レンズとプロキシ電極130との間に配置された、一次荷電粒子ビームおよび/または信号粒子に影響を与えるように構成されるさらなる電極122(プロキシ電極130に加えて設けられる)として機能するように構成される。具体的には、第1の検出器120は、第1の検出器120の孔を通って伝搬する一次荷電粒子ビームに影響を与えるために、および/または1つの開口131を通って伝搬する信号粒子に影響を与えるために、所定の電位Udetに設定されるように構成することができる。本明細書では、プロキシ電極は、「下部電極」と呼ぶ場合もあり、第1の検出器は、「上部電極」と呼ぶ場合もある。
【0051】
いくつかの実施形態では、第1の検出器120によって設けられるさらなる電極122は、それぞれの電圧接続を介して所定の電位Udetに設定されるように構成される。具体的には、さらなる電極122は、荷電粒子ビーム装置のカラム電位に対応することができる、および/またはプロキシ電極の電位Uproxyと異なることができる、および/またはサンプルの電位Usampleと異なることができる接地電位に設定されるように構成することができる。
【0052】
具体的には、いくつかの実施形態では、さらなる電極122および/またはカラムは、装置の動作の間、接地電位に設定することができ、プロキシ電極130および/またはサンプル140は、例えば、3keVと35keVとの間の高電圧電位に設定することができる。さらなる電極122とプロキシ電極130との間の電圧差は、サンプルに衝突する前に一次荷電粒子ビームを減速させることができる、および/またはプロキシ電極の1つの開口を通り抜ける信号粒子を加速することができる。
【0053】
いくつかの実施態様では、第1の検出器120は、所定の電位Udetに設定されるように構成された導電性表面を含む。例えば、第1の検出器は、導電性材料で製作されたハウジングもしくは支持体を含むことができ、または導電性材料で少なくとも部分的に被覆する、例えば金属被覆することができる。導電性表面は、光軸101の方に向けられた導電性内面128、および、対物レンズの方に向けられた、すなわち、一次荷電粒子ビームの上流方向に向けられた導電性上面129の少なくとも一方を含むことができる。第1の検出器の導電性表面は、荷電粒子ビーム装置のカラム電位に対応することができる接地電位に設定することができる。その結果、第1の検出器120または少なくともその導電性部分は、特に、プロキシ電極130と組み合わせて、磁気静電対物レンズの電極のうちの1つとして機能し、第1の検出器120とプロキシ電極との間で一次荷電粒子ビームを減速させること、および/またはプロキシ電極と第1の検出器との間で信号粒子を加速させることができる。例えば、第1の検出器の表面、支持体、またはハウジングは、導電性材料で製作することができ、または例えばメタライゼーションを介して導電性材料を含むことができ、その結果、第1の検出器は所定の電位Udetに設定することができる。
【0054】
いくつかの実施態様では、サンプルに衝突する前に一次荷電粒子ビームを減速させることなどのために、電位差を荷電粒子ビーム装置のプロキシ電極130とカラムとの間に印加することができる。電位差は、3keV以上および/または50keV以下、特に10keV以上および35keV以下とすることができる。特に、荷電粒子ビーム装置のプロキシ電極130と、所定の電位U
columnに設定されるカラムとの間の電位差は、3keVと35keVとの間とすることができる(
図1参照)。
【0055】
第1の検出器120がさらなる電極122として機能する場合、第1の検出器120は、実質的に、カラムの電位に設定することができる。特に、第1の検出器120は接地することができる。プロキシ電極130と、さらなる電極として機能する第1の検出器との間の電位差は、3keV以上および35keV以下とすることができる。
【0056】
第1の検出器120を磁気静電対物レンズ装置の電極として使用することによって、別の電極を省くことができ、プロキシ電極と組み合わせて、よりコンパクトな減速電界型装置を実現することができる。具体的には、対物レンズ110は、磁気または静電対物レンズとすることができ、対物レンズ110は、上部電極として機能する第1の検出器120および下側電極として機能するプロキシ電極130と組み合わせて、磁気静電減速対物レンズ装置を実現することができる。具体的には、対物レンズ110の下流の範囲に第1の検出器に加えて2つの電極を設けることを必要としないので、対物レンズをサンプルのすぐ近くに配置することができ、得られる分解能を高めることができる。さらに、一次荷電粒子ビームのための画定された減速経路は、第1の検出器120とプロキシ電極130との間の範囲内に設けることができる。
【0057】
本明細書に記載の1つの開口をもつプロキシ電極130の態様を、本明細書に記載のさらなる電極として機能する第1の検出器120の態様と組み合わせることは特に有益である。第1の検出器が電極として機能するコンパクトな減速電界型装置からもたらされる高い検出効率および改善された分解能により、3次元特徴を高い精度および高いコントラストで検査することができる。
【0058】
さらなる電極122として機能する第1の検出器120が、本明細書に記載の1つの開口131をもつプロキシ電極130と組み合わせて有利に使用される場合でも、さらなる電極122として機能する第1の検出器120はまた、独立した態様として本明細書に記載される。具体的には、本明細書に記載の荷電粒子ビーム装置は、プロキシ電極と対物レンズとの間に配置された軸外後方散乱粒子用の第1の検出器120を含むことができる。第1の検出器は、一次荷電粒子ビームおよび/または信号粒子に影響を与えるためのさらなる電極として機能するように構成され、所定の電位Udetに設定されるように構成された導電性表面を含む。導電性表面は、光軸の方に向けられた導電性内面、および対物レンズの方に向けられた導電性上面の少なくとも一方を含むことができる。いくつかの実施形態では、さらなる電極122は、装置の動作の間、接地電位に接続することができる。具体的には、さらなる電極122は、装置のカラム電位に対応する所定の電位に設定することができる。
【0059】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態において、ビームエミッタ150は、一次電子ビームを出射するように構成され、荷電粒子ビーム装置は、二次電子および後方散乱電子を生成するために、一次電子ビームを光軸101に沿ってサンプルに導くための電子ビーム光学装置を含む。荷電粒子ビーム装置は、検査されるべきサンプル140を支持するためのサンプルステージ50をさらに含むことができる。
【0060】
特に、本明細書の実施形態は、本明細書に記載の荷電粒子ビーム装置を備えた走査電子顕微鏡に関し得る。そのような荷電粒子ビーム装置において、ビームエミッタは、一次電子ビームを出射するように構成された電子源であり、走査電子顕微鏡は、サンプルステージに支持されたサンプルの表面にわたって所定の走査パターンで一次電子を走査するための走査偏向器をさらに含む。
【0061】
本明細書に記載の実施形態のいずれにも適用することができ、本明細書に記載の他の特徴と組み合わせることができる独立した態様として本明細書に記載されるさらなる態様によれば、荷電粒子ビーム装置は、第1の検出器120の信号を増幅するための前置増幅器121を含む。いくつかの実施態様では、前置増幅器121は、電子増幅器、特に、演算増幅器とすることができる。いくつかの実施形態では、第1の検出器120は、特にPINダイオードを含む、固体または半導体検出器とすることができる。第1の検出器120は電気信号を供給することができ、その電気信号は、前置増幅器で事前増幅される。次いで、事前増幅信号は、信号増幅モジュールおよび/または信号評価モジュール、例えば、
図1に概略的に示されるような信号増幅および評価モジュール160に転送することができる。信号増幅モジュールは、任意であり、評価の前に事前増幅信号をさらに増幅することができる。代替としてまたは追加として、事前増幅信号が、直接評価されてもよい。
【0062】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態において、前置増幅器によって供給される事前増幅信号を増幅するための増幅器(本明細書では「主増幅器160」とも呼ばれる)が設けられる。主増幅器は、荷電粒子ビーム装置の真空ハウジングの外に、特に、大気環境に配置することができる。具体的には、前置増幅器は、荷電粒子ビーム装置の真空ハウジング内に、特に、対物レンズに隣接する、および/または第1の検出器に隣接するカラム内に配置することができ、前置増幅器によって供給される事前増幅信号は、真空の外に配置された主増幅器によってさらに増幅される。
【0063】
第1の検出器120が複数の検出セグメント126を含むマルチチャネル後方散乱電子検出器である場合、前置増幅器121はマルチチャネル前置増幅器とすることができ、および/または主増幅器はマルチチャネル増幅器とすることができる。例えば、第1の検出器120は、4つの(またはそれより多くの)検出セグメントを含み、前置増幅器121は、4つの検出セグメントの信号を事前増幅するために4チャネルの(または4チャネルより多くの)増幅器を含む。
【0064】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態において、前置増幅器120は、第1の検出器120と統合されるか、荷電粒子ビーム装置の真空ハウジング内で(例えば、カラムが備える真空ハウジング、例えば、対物レンズまたは対物レンズの磁気部分に装着される真空ハウジングの内部で)第1の検出器120に隣接して配置されるか、荷電粒子ビーム装置の真空ハウジングの内部に固定して装着される(例えば、カラムの内部に固定して装着される、例えば、対物レンズまたは対物レンズの磁気部分に装着される)かのうちの少なくとも1つである。より具体的には、第1の検出器120は、荷電粒子ビーム装置の真空ハウジングの内部で前置増幅器121に接続されてもよく、同じように固定して装着されている第1の検出器の近くの位置に固定して装着されてもよい。例えば、第1の検出器の検出面と、前置増幅器との間の距離は、3cm以下とすることができる。いくつかの実施形態では、第1の検出器および前置増幅器は、対物レンズに、例えば、対物レンズの磁気部分の下流端に装着されてもよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、第1の検出器120は、前置増幅器121が固定して装着される支持体180、例えば、プレートまたはハウジングを含む。第1の検出器180の支持体180は、荷電粒子ビーム装置のカラムの下流端に隣接して配置することができ、例えば、対物レンズ110に固定することができる。例えば、第1の検出器120および前置増幅器121は、第1の検出器120の共通支持体180に(
図4aに示されるように)、またはさらに単一のチップに、第1の検出器と統合された前置増幅器を含む1つの統合された検出器モジュールとして設けることができる。いくつかの実施形態では、検出器表面125と前置増幅器121の両方を近い距離(例えば、3cm以下)で支持する支持体を含む検出器モジュールが提供される。
【0066】
第1の検出器の近くに、特に、荷電粒子ビーム装置の真空ハウジングの内部に(例えば、カラムの内部に)前置増幅器を配置すること、および/または前置増幅器を第1の検出器と統合して、統合された検出器モジュールを提供することは、検出速度および検出効率を向上させることができるので有益である。第1の検出器の近くの位置に、例えば、支持体180または対物レンズに前置増幅器を固定して装着すると、信号対雑音比がさらに改善され、検出効率が改善される。例えば、信号強度の増加は、前置増幅器を第1の検出器の近くの位置に装着することによって達成することができる。これによって、例えば50MHz以上、またはさらに最大100MHzの高速走査速度による非常に高速なイメージング速度を可能にすることができる。
【0067】
第1の検出器120は、例えば1keVの電子エネルギーに至るまで高い収集効率を提供することができ、および/または例えば3pFに至るまでの低い信号のキャパシタンスを提供することができる。いくつかの実施形態では、第1の検出器と前置増幅器とを含む検出器モジュールは、コンパクトであり得る、例えば、光軸の方向に、2mm以下、特に1.5mm以下の厚さを有することができる。
【0068】
本明細書に記載するように、1つの開口131を有するプロキシ電極130の態様と、第1の検出器120と統合して装着されるか、または第1の検出器120に隣接して配置される前置増幅器121の態様とを組み合わせることは有益である。これらの2つの態様を組み合わせることにより、実質的にすべての関連する信号粒子が、第1の検出器121に達することができ、直接および迅速に事前増幅され、それにより、収集効率がさらに向上し、信号対雑音比が改善するので、軸外後方散乱粒子の収集効率の向上が可能になる。加えて、上述の2つの態様は、有利には、プロキシ電極131(下部電極)に加えて設けられたさらなる(上部)電極としての第1の検出器120を使用することに関連する本明細書に記載の第3の態様と組み合わせられる。第1の検出器120をさらなる電極として使用することにより、対物レンズの下流の構成要素の構成がよりコンパクトになり、したがって、収集効率がさらに向上する。それゆえに、上述の3つの態様を組み合わせることにより、広範囲のエネルギーでの軸外後方散乱粒子の低ノイズ信号検出を可能にし、これを高速のイメージングと組み合わせた荷電粒子ビーム装置が提供される。その結果、3次元構造を、高精度および良好なトポグラフィコントラストで迅速におよび確実に検査することができる。
【0069】
しかしながら、本明細書に記載されるような第1の検出器120の信号を増幅するための前置増幅器121の態様は、他の2つの態様とは無関係に荷電粒子ビーム装置に適用することができることに留意されたい。その結果、本明細書に記載の実施形態は、さらに、以下の特徴、すなわち、一次荷電粒子ビームを出射するためのビームエミッタ150であり、荷電粒子ビーム装置が、信号粒子を放出させるために、一次荷電粒子ビームを光軸に沿ってサンプルに導くように構成される、ビームエミッタ150と、サンプルに衝突する前に一次荷電粒子ビームを減速させるための減速電界型装置100であり、減速電界型装置が、対物レンズ110およびプロキシ電極130を含み、プロキシ電極が、一次荷電粒子ビームおよび信号粒子の通過を可能にする開口を含む、減速電界型装置100と、プロキシ電極と対物レンズとの間にある軸外後方散乱粒子用の第1の検出器と、第1の検出器の信号を増幅するための前置増幅器とを有する、サンプルをイメージングおよび/または検査するための荷電粒子ビーム装置に関する。
【0070】
本明細書に記載の前置増幅器121は、(a)第1の検出器に統合されるか、(b)荷電粒子ビーム装置の真空ハウジング内で第1の検出器に隣接して配置されるか(特に、カラムの内部で、例えば、第1の検出器と一緒に対物レンズに装着される)、(c)荷電粒子ビーム装置の真空ハウジング内に固定して装着される、特に、対物レンズにおいて第1の検出器と一緒に固定して装着される、または対物レンズと(例えば、対物レンズの磁気部分と)統合されるかのうちの少なくとも1つである。前置増幅器と第1の検出器との統合には、前置増幅器が装着される、例えば、固定して装着される第1の検出器120の支持体180が含まれてもよい。支持体180は、対物レンズの下流の位置に設けられたプレートであってもよく、または支持体は、対物レンズの下流端に装着されてもよい。支持体は、第1の検出器の検出面125と前置増幅器の両方を担持することができる。統合には、代替として、検出面と前置増幅回路の両方を支える1つの単一チップが含まれてもよい。
【0071】
第1の検出器「に隣接する」前置増幅器の構成では、検出面と前置増幅器との間の距離は、5cm以下、特に3cm以下とすることができる。前置増幅器と第1の検出器の両方は、荷電粒子ビーム装置の真空ハウジング内に、例えば、その下流端の近くのカラムの内部に設けることができる。
【0072】
第1の検出器の近くの位置に前置増幅器を固定して装着することとは、第1の検出器の近くの位置に前置増幅器を実質的に動かないように位置づけることとして理解することができ、BSE検出器が、サンプルチャンバ内のサンプルの近くの、すなわち、カラムの外の検出位置に対して接近および離間するように旋回または別の形で移動できる他の解決策と区別することを意図する。
【0073】
いくつかの実施形態では、第1の検出器120は、一次荷電粒子ビームの通過を可能にする孔と、孔を少なくとも部分的に囲む検出面とを有するインレンズ検出器である。第1の検出器は、対物レンズとプロキシ電極との間に配置された、または対物レンズに装着されたかもしくはそれと統合された支持体を含むことができ、前置増幅器は、支持体に装着する、特に、支持体に固定して装着することができる。より具体的には、第1の検出器は、検出面をもつ半導体検出器を含むことができ、前置増幅器は、荷電粒子ビーム装置の真空ハウジングの内部に検出面から3cm以下の距離で配置することができる。第1の検出器は、複数の検出器セグメントを含むことができ、前置増幅器はマルチチャネル前置増幅器とすることができる。各検出器セグメントは、それぞれの増幅チャネルに関連付けることができ、その結果、検出器セグメントの信号は、評価する前に個々に増幅することができる。
【0074】
上記のように、前置増幅器を第1の検出器と統合すること、および/または第1の検出器に隣接する第1の検出器の支持体に前置増幅器を固定して装着することにより、収集効率および検出速度が大幅に改善される。
【0075】
図5は、SEMイメージング装置、すなわち、ウエハイメージングシステムなどの荷電粒子ビーム装置10を示す。荷電粒子ビーム装置のカラム20は、第1のチャンバ21、第2のチャンバ22、および第3のチャンバ23を備えることができる。ガンチャンバと呼ぶこともある第1のチャンバは、粒子エミッタ31およびサプレッサ32を有するビームエミッタ150を含む。減速電界型装置110は、第3のチャンバに収容することができ、プロキシ電極130は、カラム20の前端に設けることができる。
【0076】
本明細書に記載のいくつかの実施形態によれば、粒子エミッタ31は、粒子エミッタに電圧を供給するために電源331に接続される。本明細書に記載のいくつかの例では、粒子エミッタに供給される電位は、荷電粒子ビームが20keV以上のエネルギーに加速されるような電位である。その結果、一般に、粒子エミッタは、-20keV以上の負電圧の電位にバイアスされる。上述のように、粒子エミッタ31を負電位にすることは、カラムおよびビーム案内管を接地または中程度の電位にすることができるという利点をもつ典型的な実施形態である。
【0077】
一次荷電粒子ビームは、ビームエミッタ150によって生成され、例えば一次電子ビームである。
図5の例では、ビームは、ビーム制限開孔450に位置合わせされ、ビーム制限開口450は、ビームを整形するように寸法を決められ、すなわち、ビームの一部を阻止する。次いで、ビームは、一次電子ビームを二次電子(および場合によっては軸方向後方散乱電子)から分離するビーム分離器380を通過することができる。一次電子ビームは、対物レンズによってサンプル140に集束される。サンプルは、サンプルステージ50に位置づけることができる。一次電子ビームの衝突によって、例えば、二次電子または後方散乱電子がサンプル140から放出される。第2の検出器398は、二次電子および/または軸方向後方散乱電子を検出することができ、本明細書では第2の検出器として示される場合がある。
【0078】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、コンデンサレンズシステム420と、ビーム整形またはビーム制限開孔450とが設けられる。ビームを開孔に位置合わせするために、2段偏向システム440を、コンデンサレンズシステム420とビーム制限開孔450との間に設けることができる。
【0079】
図5に示されるように、対物レンズは、一次電子ビームをサンプル140に集束させる、磁極片64/63およびコイル62を有する磁気レンズ構成要素を有する。
図5に示される対物レンズは、対物レンズの磁気レンズ構成要素を形成する上部磁極片63、下部磁極片64、およびコイル62を含む。対物レンズの静電レンズ構成要素を形成するために、1つまたは複数の電極を設けることができる。本明細書に記載のいくつかの実施形態によれば、磁気レンズ構成要素と静電レンズ構成要素とは互いに概ね重なり、サンプルの近くに配置されたプロキシ電極130をさらに含む、本明細書では「減速電界型装置」とも呼ぶ、複合レンズを形成する。
【0080】
さらに、走査偏向器アセンブリ370を設けることができる。走査偏向器アセンブリ370は、高ピクセルレート用に構成された磁気走査偏向器アセンブリまたは静電走査偏向器アセンブリとすることができる。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる典型的な実施形態によれば、走査偏向器アセンブリ370は、
図5に示されるような単段アセンブリとすることができる。代替として、2段またはさらに3段偏向器アセンブリを設けることができる。各段は、光軸101に沿って異なる位置に設けることができる。
【0081】
いくつかの実施形態によれば、二次電子および/または軸方向後方散乱電子は、サンプルから抽出され、減速電界型装置によって加速される。ビーム分離器380は、一次電子ビームを信号電子から分離する。ビーム分離器は、ウィーンフィルタとすることができる、および/または少なくとも1つの磁気偏向器とすることができ、その結果、信号電子は、光軸101から離れるように偏向される。次いで、信号電子は、ビームベンダ392、例えば、半球形ビームベンダと、レンズシステム394とによって第2の検出器398に導かれ得る。フィルタ396のようなさらなる要素を設けることができる。いくつかの実施形態によれば、第2の検出器398は、サンプルにおける出発角度に応じて信号電子を検出するように構成されたセグメント化検出器とすることができる。
【0082】
本明細書に記載の実施形態によれば、プロキシ電極130は、サンプルの近くの位置に設けられ、プロキシ電極は、本明細書に記載の実施形態のうちのいずれかに従って構成され、その結果、上述の説明を参照することができ、ここでは繰り返さない。
【0083】
図5に示された荷電粒子ビーム装置は、プロキシ電極130の1つの開口を通過した軸外後方散乱粒子(例えば、電子)を検出するための第1の検出器120をさらに含む。第1の検出器120(例えば、シンチレータ、pinダイオード、または他の電子感応デバイス)は、意図した用途に応じて異なる形状を有することができる。例えば、全後方散乱粒子信号のみが対象である場合、リング検出器を設けることができる。いくつかの実施形態によれば、トポグラフィコントラスト検出では、4象限検出器が可能な選択であり得る。いくつかの実施形態では、異なるリングゾーン(追加としてセグメント化され得る)が、角度を有する後方散乱粒子分布の特定の部分(角度セグメンテーションおよび極セグメンテーションなど)を検出するために使用されてもよい。後方散乱粒子の角度分布の特定の部分を検出することによって、深さ情報を収集することができる。深さ情報を収集することにより、サンプル(特に、高アスペクト比をもつ構造)の組成の3D情報の収集が可能になる。後方散乱粒子の角度分布の検出を一次荷電粒子ビームの様々なランディングエネルギーと組み合わせることによって、サンプルトモグラフィを達成することができる。
【0084】
いくつかの実施形態によれば、一次荷電ビーム用の調整可能なエネルギー供給源を設けることができる。通常、一次荷電粒子ビームのエネルギーは、関心のある深さからの後方散乱粒子が、周囲(サンプルの構造の壁など)を透過することができるように十分に高く選ばれる。他方、一次荷電粒子ビームのエネルギーは、より深いサンプル層への透過を避け、望ましくない深さ情報による信号対雑音比の低下を避けるために高すぎないように選ばれる。
【0085】
エミッタ、カラム、および電極の電位は、本明細書に記載の実施形態のいずれかによりシステムに供給することができる。典型的な例として、ビーム案内管(本明細書では「カラム」とも呼ぶ)は、接地電位とすることができる。その結果、電子は、接地電位のカラムを通って進む。カラムのハウジングは、接地電位に定めることができる。接地電位のハウジングが、
図5において参照番号3で示されている。
【0086】
図6は、本明細書に記載の実施形態による荷電粒子ビームによりサンプルを検査および/またはイメージングする方法の流れ図を示す。サンプルは、カラムと、光軸と、本明細書に記載のイメージングおよび/または検査の間サンプルを支持するためのサンプルステージとを有する荷電粒子ビーム装置により供給される荷電粒子ビームによって検査および/またはイメージングされる。
【0087】
この方法は、ボックス510において、一次荷電粒子ビームを出射することを含む。ビームは、ビームエミッタによって、特に電子源によって出射され得る。この方法は、ボックス520において、特に後方散乱粒子および二次粒子を含む信号粒子を生成するために、荷電粒子ビーム装置のカラム内の一次荷電粒子ビームを光軸に沿ってサンプルに導くことを含む。一次荷電粒子ビームをビームエミッタからサンプルに導く、および/または整形するために、光学要素を設けることができる。
図5は、コンデンサレンズシステム、開孔、ビーム分離器などのような光学要素の例を示している。荷電粒子ビーム装置は、例えば、予定の用途または動作モード、サンプル、検査および/またはイメージングされる構造、一次荷電粒子ビームに使用されるエネルギーなどに応じて、追加または代替の光学要素を含むことができることを当業者は理解するであろう。
【0088】
この方法は、ボックス530において、対物レンズ、および対物レンズとサンプルの間に配置されたプロキシ電極を含む、減速電界型装置により一次荷電粒子ビームを集束および減速させることをさらに含み、プロキシ電極は、一次荷電粒子ビームおよび信号粒子の通過を可能にする1つの開口を含むことができる。
【0089】
一次荷電粒子ビームの減速は、一次ビームを約10keV以下、例えば5keV以下、1keVなどのサンプルへのランディングエネルギーに減速させることなど、上記の範囲で実行され得る。一般に、減速電界型装置は、磁気静電対物レンズと、磁気静電対物レンズとサンプルステージの間のプロキシ電極とを含む。一次荷電粒子ビームは、プロキシ電極の1つの開口を通過する。プロキシ電極の1つの開口は、光軸に対して0°~20°以上の角度でサンプルから後方散乱された荷電粒子の通過を可能にするように大きさを合わせられる。
【0090】
一次荷電粒子ビームは、プロキシ電極の1つの開口を通した後、サンプルに衝突し、信号粒子(二次粒子および後方散乱粒子など)を、特にサンプルから離れる方向にサンプルから出させる。後方散乱粒子は、軸方向の小さい角度の後方散乱粒子と、大きい角度の後方散乱粒子とを含むことができる。軸方向後方散乱粒子と軸外後方散乱粒子の両方は、光軸に対して0°~20°以上の後方散乱粒子の通過を可能にするプロキシ電極の1つの開口を通って伝搬することができる。
【0091】
この方法は、ボックス540において、プロキシ電極と対物レンズとの間に配置された第1の検出器により軸外後方散乱粒子を検出することをさらに含む。任意に、サンプルから放出され、第1の検出器の孔を通って伝搬する二次粒子は、第2の検出器で検出することができる。例えば、第2の検出器は、二次粒子の進行方向において対物レンズの後に配置することができる。いくつかの実施形態によれば、第1の検出器および/または第2の検出器は、上述で詳細に説明したような検出器とすることができる。
【0092】
実施態様において、第1の検出器の信号は、荷電粒子ビーム装置の真空環境において、特に、カラムが備える真空ハウジングにおいて、第1の検出器に隣接して装着された前置増幅器で事前増幅することができる。前置増幅器は、(i)例えば、第1の検出器と一緒に共通支持体に設けられることによって、第1の検出器に統合されるか、(ii)荷電粒子ビーム装置の真空ハウジングの内部の第1の検出器の検出面から3cm以下の距離に配置されるか、(iii)荷電粒子ビーム装置の真空ハウジング内に固定して装着されるかのうちの少なくとも1つまたは複数とすることができる。いくつかの実施態様では、第1の検出器は、対物レンズとサンプルとの間に延びる、および/または対物レンズに装着された支持体、例えば、プレートを含み、前置増幅器は支持体に装着される。
【0093】
いくつかの実施形態では、荷電粒子ビーム装置のプロキシ電極とカラムとの間の電位差は、サンプルに衝突する前に一次荷電粒子ビームを減速させるために、3keVと35keVとの間とすることができる。特に、第1の検出器は、実質的にカラムの電位に設定されるさらなる電極として機能することができる。特に、カラムと第1の検出器の両方は、実質的に接地することができる。いくつかの実施態様では、プロキシ電極とさらなる電極との間の電位差は、3keVと35keVとの間とすることができる。
【0094】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態において、第1の検出器の信号は、荷電粒子ビーム装置の真空環境内で、特に、荷電粒子ビーム装置のカラムの内部で第1の検出器に隣接して装着された前置増幅器で増幅することができる。次いで、第1の検出器の事前増幅された信号は、荷電粒子ビーム装置の真空ハウジングの外に配置することができる信号増幅および評価モジュールに導くことができる。信号増幅および評価モジュールは、特に、サンプルを検査および/またはイメージングするためのサンプルに関する空間情報を得るために、事前増幅された信号を評価することができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、サンプルの検査の間、以下の距離のうちの少なくとも1つまたは複数が規定される。サンプルとプロキシ電極との間の第1の距離D1は、200μm以上および3mm以下とすることができる。プロキシ電極と第1の検出器との間の第2の距離D2は、3mm以上および6mm以下、特に4mm以上および5mm以下とすることができる。サンプルと第1の検出器との間の第3の距離D3は、3mm以上および10mm以下、特に4mm以上および9mm以下とすることができる。
【0096】
前述は実施形態に関するが、他のおよびさらなる実施形態を、基本的な範囲から逸脱することなく、考案することができ、その範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。