IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鉄住金エンジニアリング株式会社の特許一覧

特許7485841摩擦材、滑り免震装置、及び摩擦材の貼付方法
<>
  • 特許-摩擦材、滑り免震装置、及び摩擦材の貼付方法 図1
  • 特許-摩擦材、滑り免震装置、及び摩擦材の貼付方法 図2
  • 特許-摩擦材、滑り免震装置、及び摩擦材の貼付方法 図3
  • 特許-摩擦材、滑り免震装置、及び摩擦材の貼付方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】摩擦材、滑り免震装置、及び摩擦材の貼付方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
F16F15/02 L
F16F15/02 E
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023137540
(22)【出願日】2023-08-25
【審査請求日】2023-09-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】山崎 伸介
(72)【発明者】
【氏名】野呂 直以
(72)【発明者】
【氏名】尾上 紘司
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特許第7320150(JP,B1)
【文献】特開2021-085454(JP,A)
【文献】特開2010-054050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1摺動面を備える球座部と、前記第1摺動面に摺接する第2摺動面を備える摺動子と、を有する滑り免震装置に設けられる摩擦材であって、
前記摩擦材は繊維を含み、少なくとも一部が伸ばされた状態で前記第1摺動面に配置され、前記第1摺動面の全面および前記第1摺動面よりも広い領域を覆い、前記第1摺動面の縁に設けられて前記球座部の側に折れ曲がる折り曲げ部を備え、
前記折り曲げ部は、前記一部が伸ばされることで生じる弾性力により、前記縁に密着する、
ことを特徴とする摩擦材。
【請求項2】
第1摺動面を備える球座部と、前記第1摺動面に摺接する第2摺動面を備える摺動子と、を有する滑り免震装置に設けられる摩擦材であって、
前記摩擦材は、前記第1摺動面の形状に沿う立体形状であり、
前記第1摺動面の全面および前記第1摺動面よりも広い領域を覆い、前記第1摺動面の縁に設けられて前記球座部の側に折れ曲がる折り曲げ部を備え、
前記折り曲げ部は、前記摩擦材の一部が伸ばされることで生じる弾性力により、前記縁に密着する、
ことを特徴とする摩擦材。
【請求項3】
第1摺動面を備える球座部と、前記第1摺動面に摺接する第2摺動面を備える摺動子と、を有する滑り免震装置に設けられる摩擦材であって、
前記摩擦材は繊維を含み、少なくとも一部が伸ばされた状態で前記第2摺動面に配置され、
前記第2摺動面の全面を覆い、且つ、前記第2摺動面よりも広い領域を覆い、前記第2摺動面の縁に設けられて前記摺動面の外側に折れ曲がる折り曲げ部を備え、
前記折り曲げ部は、前記一部が伸ばされることで生じる弾性力により、前記縁に密着する、
ことを特徴とする摩擦材。
【請求項4】
請求項に記載の摩擦材と、
第1摺動面を備える球座部と、
前記第1摺動面に摺接する第2摺動面を備える摺動子と、
を備える、
ことを特徴とする滑り免震装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の摩擦材と、
第1摺動面を備える球座部と、
前記第1摺動面に摺接する第2摺動面を備える摺動子と、
を備える、
ことを特徴とする滑り免震装置。
【請求項6】
前記第1摺動面と前記摩擦材との間には接着材が配置されている、ことを特徴とする請求項に記載の滑り免震装置。
【請求項7】
第1摺動面を備える球座部と、前記第1摺動面に摺接する第2摺動面を備える摺動子と、を有する滑り免震装置に貼付される摩擦材の貼付方法であって、
前記第1摺動面の縁に設けられて前記球座部の側に折れ曲がる折り曲げ部を備え、
前記摩擦材は、前記第1摺動面に押し付けられることで、前記第1摺動面に沿った立体形状が形成された状態で、かつ、前記第1摺動面の全面および前記第1摺動面よりも広い領域を覆う状態で、かつ、前記折り曲げ部が前記縁に密着する状態で、前記第1摺動面に貼付される、ことを特徴とする摩擦材の貼付方法。
【請求項8】
前記立体形状は、前記摩擦材を治具によって前記第1摺動面に押し付けることで形成される、
ことを特徴とする請求項に記載の摩擦材の貼付方法。
【請求項9】
前記治具は、前記第1摺動面に沿った立体形状のゴム体である、ことを特徴とする請求項に記載の摩擦材の貼付方法。
【請求項10】
前記第1摺動面と前記摩擦材との間には接着材が配置されている、ことを特徴とする請求項に記載の摩擦材の貼付方法。
【請求項11】
前記球座部が普通鋼製であり、
前記第1摺動面に前記摩擦材を配置する前に、前記第1摺動面にブラスト処理し、ブラスト処理後に塗装して塗装面を形成する、
ことを特徴とする請求項7から10のいずれか一項に記載の摩擦材の貼付方法。
【請求項12】
前記球座部がステンレス鋼製であり、
前記第1摺動面に前記摩擦材を配置する前に、前記第1摺動面における前記摩擦材の配置面を目荒らしするための予備処理を行う、
ことを特徴とする請求項7から10のいずれか一項に記載の摩擦材の貼付方法。
【請求項13】
前記予備処理は、ブラスト処理である、
ことを特徴とする請求項12に記載の摩擦材の貼付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦材、滑り免震装置、及び摩擦材の貼付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物に地震による振動が伝播することを抑えるために、滑り免震装置が用いられることがある。
例えば、特許文献1では、滑り免震装置の摺動面に、摩擦材と、摺動面にグリスを塗布するための油路と、が設けられた構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6723426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の構造では、油路が設けられた上で、更に摩擦材が貼付されていた。
このため、前記従来の構造には、油路を設けることによる費用面における課題がある。
また、前記従来の構造には、滑り免震装置の供用中に、摩擦材が変形して油路に食い込むことで、摩擦材の潤滑性が低下する課題もある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、費用を抑えつつ、潤滑性の低下を抑えた技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>本発明の態様1に係る摩擦材は、第1摺動面を備える球座部と、前記第1摺動面に摺接する第2摺動面を備える摺動子と、を有する滑り免震装置に設けられる摩擦材であって、前記摩擦材は繊維を含み、少なくとも一部が伸ばされた状態で前記第1摺動面に配置されることを特徴とする。
【0007】
態様1によれば、滑り免震装置において、第2摺動面に摺接する第1摺動面に設けられる摩擦材は、少なくとも一部が伸ばされた状態で配置される。
すなわち、摩擦材は、第1摺動面に押し付けられること等により、第1摺動面の表面に沿って変形した状態で配置される。
これにより、摩擦材を第1摺動面に密着した状態で配置することができる。
よって、摩擦材と第1摺動面との間に隙間が生じ、又は摩擦材と第1摺動面との間にずれが生じること等を抑え、第1摺動面と第2摺動面との間に十分な潤滑性を付与することができる。
よって、第1摺動面又は第2摺動面に、潤滑材を補給するための油路を不要とすることができる。
このため、滑り免震装置の費用を抑えることができる。
【0008】
<2>本発明の態様2に係る摩擦材は、第1摺動面を備える球座部と、前記第1摺動面に摺接する第2摺動面を備える摺動子と、を有する滑り免震装置に設けられる摩擦材であって、前記摩擦材は、前記第1摺動面の形状に沿う立体形状であることを特徴とする。
【0009】
態様2によれば、滑り免震装置において、摩擦材は、第1摺動面の形状に沿う立体形状である。
これにより、摩擦材を第1摺動面に密着した状態で配置することができる。
よって、摩擦材と第1摺動面との間に隙間が生じ、又は摩擦材と第1摺動面との間にずれが生じること等を抑え、第1摺動面と第2摺動面との間に十分な潤滑性を付与することができる。
よって、第1摺動面又は第2摺動面に、潤滑材を補給するための油路を不要とすることができる。
このため、滑り免震装置の費用を抑えることができる。
【0010】
<3>本発明の態様3に係る摩擦材は、上記態様のいずれかにおいて、前記第1摺動面の全面を覆い、且つ、前記第1摺動面よりも広いことを特徴とする。
【0011】
態様3によれば、滑り免震装置において、摩擦材は、第1摺動面の全面を覆い、且つ、第1摺動面よりも広い。
これにより、摩擦材が捲れることを抑えることができる。
【0012】
<4>本発明の態様4に係る摩擦材は、上記態様のいずれか1つにおいて、前記第1摺動面の縁に設けられ、前記球座部の側に折れ曲がる折り曲げ部を備えることを特徴とする。
【0013】
態様4によれば、滑り免震装置において、摩擦材は、折り曲げ部を備える。
この折り曲げ部は、摩擦材が設けられる第1摺動面の縁に設けられる。
また、折り曲げ部は、球座部の側に折れ曲がる部分である。
これにより、摩擦材が捲れることを、より効果的に抑えることができる。
【0014】
<5>本発明の態様5に係る摩擦材は、第1摺動面を備える球座部と、前記第1摺動面に摺接する第2摺動面を備える摺動子と、を有する滑り免震装置に設けられる摩擦材であって、前記摩擦材は繊維を含み、少なくとも一部が伸ばされた状態で前記第2摺動面に配置されることを特徴とする。
【0015】
態様5によれば、滑り免震装置において、第1摺動面に摺接する第2摺動面に設けられる摩擦材は、少なくとも一部が伸ばされた状態で配置される。
すなわち、摩擦材は、第2摺動面に押し付けられること等により、第2摺動面の表面に沿って変形した状態で配置される。
これにより、摩擦材を第2摺動面に密着した状態で配置することができる。
よって、摩擦材と第2摺動面との間に隙間が生じ、又は摩擦材と第2摺動面との間にずれが生じること等を抑え、第1摺動面と第2摺動面との間に十分な潤滑性を付与することができる。
よって、第1摺動面又は第2摺動面に、潤滑材を補給するための油路を不要とすることができる。
このため、滑り免震装置の費用を抑えることができる。
更に、摩擦材が滑り免震装置の摺動子に設けられることで、摩擦材の交換時に、滑り免震装置から摺動子を取り外すことができる。
よって、摩擦材の交換を容易にすることができる。
【0016】
<6>本発明の態様6に係る滑り免震装置は、態様1から態様5のいずれか1つに係る摩擦材と、第1摺動面を備える球座部と、前記第1摺動面に摺接する第2摺動面を備える摺動子と、を備えることを特徴とする。
【0017】
態様6によれば、滑り免震装置が、態様1~5のいずれかに係る摩擦材を備える。
これにより、第1摺動面と第2摺動面との間に十分な潤滑性を付与することができる。
よって、第1摺動面又は第2摺動面に、潤滑材を補給するための油路を不要とすることができる。
このため、滑り免震装置の費用を抑えることができる。
【0018】
<7>本発明の態様7に係る滑り免震装置は、態様6において、前記第1摺動面と前記摩擦材との間には接着材が配置されていることを特徴とする。
【0019】
態様7によれば、第1摺動面と摩擦材との間には接着材が配置されている。
これにより、摩擦材を第1摺動面に、より確実に、強固に貼付することができる。
【0020】
<8>本発明の態様8に係る摩擦材の貼付方法は、第1摺動面を備える球座部と、前記第1摺動面に摺接する第2摺動面を備える摺動子と、を有する滑り免震装置に貼付される摩擦材の貼付方法であって、前記摩擦材は、前記第1摺動面に押し付けられることで、前記第1摺動面に沿った立体形状が形成された状態で、前記第1摺動面に貼付されることを特徴とする。
【0021】
態様8によれば、摩擦材は、第1摺動面に押し付けられることで、第1摺動面に沿った立体形状が形成された状態で、第1摺動面に貼付される。
これにより、摩擦材を第1摺動面に密着した状態で配置することができる。
よって、摩擦材と第1摺動面との間に隙間が生じ、又は摩擦材と第1摺動面との間にずれが生じること等を抑え、第1摺動面と第2摺動面との間に十分な潤滑性を付与することができる。
よって、第1摺動面又は第2摺動面に、潤滑材を補給するための油路を不要とすることができる。
このため、滑り免震装置の費用を抑えることができる。
【0022】
<9>本発明の態様9に係る摩擦材の貼付方法は、態様8において、前記立体形状は、前記摩擦材を治具によって前記第1摺動面に押し付けることで形成されることを特徴とする。
【0023】
態様9によれば、立体形状は、摩擦材を治具によって第1摺動面に押し付けることで形成される。
これにより、摩擦材を形成する材料が立体形状でなくとも、立体形状の形成を容易に行うことができる。
【0024】
<10>本発明の態様10に係る摩擦材の貼付方法は、態様9において、前記治具は、前記第1摺動面に沿った立体形状のゴム体であることを特徴とする。
【0025】
態様10によれば、治具は、第1摺動面に沿った立体形状のゴム体である。
これにより、治具によって摩擦材を第1摺動面に押し付けた時、治具は第1摺動面の表面形状に合わせて弾性変形することができる。
したがって、摩擦材を第1摺動面の全面に均等に押し付けることができる。
よって、摩擦材をより効果的に第1摺動面に沿うようにすることができる。
【0026】
<11>本発明の態様11に係る摩擦材の貼付方法は、上記態様のいずれか1つにおいて、前記第1摺動面と前記摩擦材との間には接着材が配置されていることを特徴とする。
【0027】
態様11によれば、第1摺動面と摩擦材との間には接着材が配置されている。
これにより、摩擦材を第1摺動面に、より確実に、強固に貼付することができる。
【0028】
<12>本発明の態様12に係る摩擦材の貼付方法は、上記態様のいずれか1つにおいて、前記球座部が普通鋼製であり、前記第1摺動面に前記摩擦材を配置する前に、前記第1摺動面にブラスト処理し、ブラスト処理後に塗装して塗装面を形成することを特徴とする。
【0029】
態様12によれば、球座部が普通鋼製である場合、第1摺動面に摩擦材を配置する前に、第1摺動面にブラスト処理し、ブラスト処理後に塗装して塗装面を形成する。
これにより、球座部が普通鋼製である場合に、摩擦材と第1摺動面との接着性を向上させることができる。
【0030】
<13>本発明の態様13に係る摩擦材の貼付方法は、上記態様いずれか1つにおいて、前記球座部がステンレス鋼製であり、前記第1摺動面に前記摩擦材を配置する前に、前記第1摺動面における前記摩擦材の配置面を目荒らしするための予備処理を行うことを特徴とする。
【0031】
態様13によれば、球座部がステンレス鋼製である場合、第1摺動面に摩擦材を配置する前に、第1摺動面における摩擦材の配置面を目荒らしするための予備処理を行う。
これにより、球座部がステンレス鋼製である場合に、摩擦材と第1摺動面との接着性を向上させることができる。
【0032】
<14>本発明の態様14に係る摩擦材の貼付方法は、上記態様において、前記予備処理は、ブラスト処理であることを特徴とする。
【0033】
態様14によれば、球座部がステンレス鋼製である場合に行う予備処理は、ブラスト処理である。
これにより、球座部がステンレス鋼製である場合に、摩擦材と第1摺動面との接着性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、費用を抑えつつ、潤滑性の低下を抑えた技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】実施形態に係る滑り免震装置の構成を示す断面図である。
図2図1に示す滑り免震装置において、球座部と沓とが略水平方向に相対移動した状態を示す図である。
図3】摩擦材が球座部に貼付される例である。
図4】摩擦材が摺動子に貼付される例である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る摩擦材Fを説明する。
本実施形態に係る摩擦材Fは、滑り免震装置100に設けられる。
以下、まずは滑り免震装置100について説明する。
【0037】
(滑り免震装置100について)
図1は、本実施形態に係る滑り免震装置100の構成を示す断面図である。
図1に示す滑り免震装置100は、高層ビルや橋梁をはじめとした建築物である上部構造体Uと、地盤に設置される基礎構造である下部構造体Lと、の間に設けられる。
滑り免震装置100は、上部構造体Uの設置場所において地震が発生した際に、下部構造体L側の揺れが上部構造体Uに伝播されることを抑える。
図1に示す滑り免震装置100は、球面滑り支承であり、球座部10と、摺動子20と、沓30と、摩擦材Fと、を備える。
【0038】
球座部10は、下部構造体Lの上部に配置される。
球座部10は、第1摺動面S1を備える。
第1摺動面S1は、球座部10の上方に設けられる凸型球面状の滑り面である。
第1摺動面S1は、後述する摺動子20の第2摺動面S2と摺接する。
摺動子20は、球座部10の上に配置される。
摺動子20は、第2摺動面S2と、第3摺動面S3と、を備える。
第2摺動面S2は、摺動子20の下方に設けられる凹型窪み状の滑り面である。
第2摺動面S2は、第1摺動面S1に摺接する。
なお、本実施形態において、第1摺動面S1と第2摺動面S2とが摺接するとは、第1摺動面S1と第2摺動面S2との間に摩擦材Fが配置された状態を含むものとする。
また、摺動子20は、球座部10に対して回転可動できる程度の大きさである。
第3摺動面S3は、摺動子20の上方に設けられる凸型球面状の滑り面である。
第3摺動面S3は、後述する沓30の第4摺動面S4と摺接する。
【0039】
沓30は、摺動子20の上であって、上部構造体Uの下に配置される。
沓30は、第4摺動面S4を備える。
第4摺動面S4は、沓30のうち、下方に設けられる凹型窪み状の滑り面である。
第4摺動面S4は、第3摺動面S3に摺接する。
なお、本実施形態において、第3摺動面S3と第4摺動面S4とが摺接するとは、第3摺動面S3と第4摺動面S4との間に摩擦材Fが配置された状態を含むものとする。
【0040】
本実施形態において、球座部10、摺動子20、及び沓30は、例えば、普通鋼製又はステンレス鋼製である。
上述の各構成を備える滑り免震装置100においては、例えば、滑り免震装置100の設置場所において地震が発生した際、第1摺動面S1と第2摺動面S2とが互いに摺動し、第3摺動面S3と第4摺動面S4とが互いに摺動する。
【0041】
図2は、図1に示す滑り免震装置100において、球座部10と沓30とが略水平方向に相対移動した状態を示す図である。
図2に示すように、上部構造体Uと下部構造体Lとが略水平方向に相対移動することで、滑り免震装置100は、下部構造体L側の揺れが上部構造体Uに伝播されることを抑える。
【0042】
(摩擦材Fについて)
本実施形態に係る摩擦材Fは、例えば、図1に示すように、第1摺動面S1と第2摺動面S2との間に配置される。
摩擦材Fは、第3摺動面S3と第4摺動面S4との間に配置されてもよい。
以下、第1摺動面S1と第2摺動面S2との間に配置される摩擦材Fについて説明するが、第3摺動面S3と第4摺動面S4との間に配置される摩擦材Fも同様である。
【0043】
摩擦材Fは、第1摺動面S1と第2摺動面S2との間に潤滑性を付与するために配置される。
このため、本実施形態に係る滑り免震装置100においては、例えば、グリス等の潤滑油が用いられないことが好ましい。
したがって、本実施形態において、第1摺動面S1及び第2摺動面S2の表面には、供用中に潤滑油を補給するための溝(油路)が設けられないことが好ましい。
このことで、例えば、滑り免震装置100の供用中において、摩擦材Fが前記溝に食い込むように変形することを抑え、変形による潤滑性の低下を抑えることが好ましい。
【0044】
本実施形態において、摩擦材Fは繊維を含む。
換言すれば、摩擦材Fは、繊維により形成される。
ここで、摩擦材Fの素材は、例えば、PTFE(polytetrafluoroethylene、ポリテトラフルオロエチレン)である。摩擦材Fは、例えば、二重織物により形成される。二重織物は、例えば、PTFE繊維と、PTFE繊維よりも引張強度の高い繊維(高強度繊維)とにより形成される。
ここで、「PTFE繊維よりも引張強度の高い繊維」としては、ナイロン6・6、ナイロン6、ナイロン4・6などのポリアミドやポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルやパラアラミドなどの繊維が挙げられる。
また、メタアラミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ガラス、カーボン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、LCP、ポリイミド、PEEKなどの繊維が挙げられる。
また、熱融着繊維や綿、ウールなどの繊維が用いられてもよい。
その中でも、耐薬品性、耐加水分解性に優れ、引張強度の極めて高いPPS繊維が好ましい。
摩擦材Fは、二重織物以外のPTFE繊維を含む織物でもよい。
摩擦材Fは、PTFEのみを素材としてもよい。
摩擦材Fは、PTFEと他の樹脂の複合素材を素材としてもよい。
摩擦材Fは、PTFEを素材とする摩擦材と他の樹脂を素材とする摩擦材との積層構造であってもよい。
【0045】
図3は、摩擦材Fが球座部10に貼付される例を示す図である。 図3に示す摩擦材Fは、第1摺動面S1に貼付されることで、第1摺動面S1と第2摺動面S2との間に配置される。
【0046】
図4は、摩擦材Fが摺動子20に貼付される例を示す図である。
図4に示す摩擦材Fは、第2摺動面S2に貼付されることで、第1摺動面S1と第2摺動面S2との間に配置される。
【0047】
ただし、本発明は図3,4に示す例に限定されるものではない。
摩擦材Fは、第1摺動面S1及び第2摺動面S2の両方に貼付されてもよい。
摩擦材Fが第1摺動面S1又は第2摺動面S2のいずれか一方に貼付される場合、第1摺動面S1及び第2摺動面S2のうち、摩擦材Fが貼付されない方は、鏡面加工されることが好ましい。
摩擦材Fが第1摺動面S1に貼付される場合と第2摺動面S2に貼付される場合のそれぞれについて以下に説明する。
【0048】
(摩擦材Fが第1摺動面S1に貼付される場合)
摩擦材Fが第1摺動面S1に貼付される場合、摩擦材Fは、例えば、第1摺動面S1の形状に沿う立体形状である。
摩擦材Fの立体形状は、摩擦材Fを形成する織物を第1摺動面S1に押し付けることによって形成される。
この場合、摩擦材Fは、少なくとも一部が伸ばされた状態で第1摺動面S1に配置される。
摩擦材Fは、少なくとも一部が伸ばされた状態で第1摺動面S1に配置されることで、元の状態と比べて面積が増加する。
【0049】
摩擦材Fの立体形状は、例えば、図3に示すように、摩擦材Fを治具Jによって第1摺動面S1に押し付けることで形成される。
治具Jは、例えば、第1摺動面S1に沿った立体形状のゴム体である。
摩擦材Fが弾性変形する場合には、摩擦材Fは、治具Jを撤去すると、復元変形して元の形状に戻ってしまう。
このため、摩擦材Fは、接着材Gによって第1摺動面S1に接着されることが好ましい(詳細は後述する)。
ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、摩擦材Fの立体形状は、摩擦材Fを形成する織物を第1摺動面S1の形状に合わせて立体的に縫製することで形成されてもよい。
【0050】
また、第1摺動面S1に配置される摩擦材Fは、第1摺動面S1の全面を覆い、且つ、第1摺動面S1よりも広くすることが好ましい。
これにより、摩擦材が捲れることを抑えることができる。
【0051】
また、第1摺動面S1に配置される摩擦材Fは、図3に示すように、第1摺動面S1の縁に設けられ、球座部10の側に折れ曲がる折り曲げ部Fbを備えることが好ましい。
折り曲げ部Fbが設けられることで、例えば、摩擦材Fが捲れることを、より効果的に抑えることができる。
摩擦材Fが第1摺動面S1に貼付される場合、第1摺動面S1と摩擦材Fとの間には、例えば、図3に示すように、接着材Gが配置されている。
換言すれば、摩擦材Fは、例えば、第1摺動面S1に対して接着される。
接着材Gには、熱硬化性樹脂(例えば,エポキシ系)が好適に用いられる。
熱硬化性樹脂(例えば,エポキシ系)によれば、接着強度を高くすることができる。
【0052】
(摩擦材Fが第2摺動面S2に貼付される場合)
摩擦材Fが第2摺動面S2に貼付される場合、摩擦材Fは、例えば、第2摺動面S2の形状に沿う立体形状である。
摩擦材Fの立体形状は、摩擦材Fを形成する織物を第2摺動面S2に押し付けることによって形成される。
この場合、摩擦材Fは、少なくとも一部が伸ばされた状態で第2摺動面S2に配置される。
摩擦材Fは、少なくとも一部が伸ばされた状態で第2摺動面S2に配置されることで、元の状態と比べて面積が増加する。
【0053】
摩擦材Fの立体形状は、例えば、図4に示すように、摩擦材Fを治具Jによって第2摺動面S2に押し付けることで形成される。
治具Jは、例えば、第2摺動面S2に沿った立体形状のゴム体である。
摩擦材Fが弾性変形する場合には、摩擦材Fは、治具Jを撤去すると、復元変形して元の形状に戻ってしまう。
このため、摩擦材Fは、接着材Gによって第2摺動面S2に接着されることが好ましい(詳細は後述する)。
ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、摩擦材Fの立体形状は、摩擦材Fを形成する織物を第2摺動面S2の形状に合わせて立体的に縫製することで形成されてもよい。
【0054】
また、第2摺動面S2に配置される摩擦材Fは、第2摺動面S2の全面を覆い、且つ、第2摺動面S2よりも広くすることが好ましい。
これにより、摩擦材が捲れることを抑えることができる。
【0055】
また、第2摺動面S2に配置される摩擦材Fは、図4に示すように、第2摺動面S2の縁に設けられ、摺動子20の側に折れ曲がる折り曲げ部Fbを備えることが好ましい。
折り曲げ部Fbが設けられることで、例えば、摩擦材Fが捲れることを、より効果的に抑えることができる。
摩擦材Fが第2摺動面S2に貼付される場合、第2摺動面S2と摩擦材Fとの間には、例えば、図4に示すように、接着材Gが配置されている。
換言すれば、摩擦材Fは、例えば、第2摺動面S2に対して接着される。
接着材Gには、熱硬化性樹脂(例えば,エポキシ系)が好適に用いられる。
熱硬化性樹脂(例えば,エポキシ系)によれば、接着強度を高くすることができる。
【0056】
(摩擦材Fの貼付方法)
次に、本実施形態に係る摩擦材Fの貼付方法について説明する。
上述のように、球座部10は、例えば、普通鋼製又はステンレス鋼製である。
球座部10の第1摺動面S1に摩擦材Fが貼付される工程について、球座部10が普通鋼製である場合とステンレス鋼製である場合とに分けて以下に説明する。
なお、摩擦材Fの貼付方法は、第2摺動面S2、第3摺動面S3及び第4摺動面S4においても、球座部10の第1摺動面S1への貼付と同様である。
【0057】
(球座部10が普通鋼製である場合)
球座部10が普通鋼製である場合、摩擦材Fの貼付方法は、ブラスト処理工程と、塗装工程と、貼付工程と、を備える。
ブラスト処理工程は、第1摺動面S1上に摩擦材Fを配置する前に、第1摺動面S1にブラスト処理する工程である。
ここで、上述のように、第1摺動面S1には、溝(油路)が設けられていないため、ブラスト処理に用いられた研磨材が前記溝に堆積せず、研磨材の除去が不要である。
塗装工程は、ブラスト処理工程が行われた後の第1摺動面S1を塗装して、塗装面を形成する工程である。
塗装工程において、第1摺動面S1に塗装される塗料は、高防食性能を有するものが好ましく、例えば、亜鉛を含有する塗料が好適に用いられる。
ここで、亜鉛を含有する塗料は、所謂、ジンクリッチペイントである。
ジンクリッチペイントには、有機ジンクリッチペイント及び無機ジンクリッチペイントが含まれる。
貼付工程は、摩擦材Fを第1摺動面S1に貼付する工程である。
貼付工程においては、まず、第1摺動面S1に接着材Gを配置する。
次に、摩擦材Fを、治具Jによって第1摺動面S1に押し付ける。
このとき、まず、摩擦材Fの端の部分は、球座部10の外側に固定される。
摩擦材Fは、治具Jによって第1摺動面S1に押し付けられることで、第1摺動面S1に沿った立体形状となり、第1摺動面S1に貼付される。
このように摩擦材Fが貼付された後、第1摺動面S1の縁で摩擦材Fを折り曲げると、折り曲げ部Fbを形成することができ、好ましい。
上記各工程により、第1摺動面S1に摩擦材Fが貼付される。
【0058】
(球座部10がステンレス鋼製である場合)
球座部10がステンレス鋼製である場合、摩擦材Fの貼付方法は、予備処理工程と、貼付工程と、を備える。
予備処理工程は、第1摺動面S1上に摩擦材Fを配置する前に、第1摺動面S1における摩擦材Fの配置面を目荒らしするための工程である。
予備処理工程において行われる予備処理は、例えば、ブラスト処理である。
ここで、第1摺動面S1には、溝(油路)が設けられていないため、ブラスト処理に用いられた研磨材が前記溝に堆積せず、研磨材の除去が不要である。
貼付工程は、摩擦材Fを第1摺動面S1に貼付する工程である。
貼付工程は、球座部10が普通鋼製である場合と同様である。
上記各工程により、第1摺動面S1に摩擦材Fが貼付される。
【0059】
以上説明したように、本実施形態に係る滑り免震装置100において、第2摺動面S2に摺接する第1摺動面S1に設けられる摩擦材Fは、少なくとも一部が伸ばされた状態で配置される。
すなわち、摩擦材Fは、第1摺動面S1に押し付けられること等により、第1摺動面S1の表面に沿って変形した状態で配置される。
これにより、摩擦材Fを第1摺動面S1に密着した状態で配置することができる。
よって、摩擦材Fと第1摺動面S1との間に隙間が生じ、又は摩擦材Fと第1摺動面S1との間にずれが生じること等を抑え、第1摺動面S1と第2摺動面S2との間に十分な潤滑性を付与することができる。
よって、第1摺動面S1又は第2摺動面S2に、潤滑材を補給するための油路を不要とすることができる。
このため、滑り免震装置100の費用を抑えることができる。
【0060】
又は、摩擦材Fは、第1摺動面S1の形状に沿う立体形状である。
これにより、摩擦材Fを第1摺動面S1に密着した状態で配置することができる。
よって、摩擦材Fと第1摺動面S1との間に隙間が生じ、又は摩擦材Fと第1摺動面S1との間にずれが生じること等を抑え、第1摺動面S1と第2摺動面S2との間に十分な潤滑性を付与することができる。
よって、第1摺動面S1又は第2摺動面S2に、潤滑材を補給するための油路を不要とすることができる。
このため、滑り免震装置100の費用を抑えることができる。
【0061】
また、摩擦材Fは、第1摺動面S1の全面を覆い、且つ、第1摺動面S1よりも広いことが好ましい。
これにより、摩擦材Fが捲れることを抑えることができる。
【0062】
また、摩擦材Fは折り曲げ部Fbを備えることが好ましい。
折り曲げ部Fbは、摩擦材Fが設けられる第1摺動面S1の縁に設けられる。
また、折り曲げ部Fbは、球座部10の側に折れ曲がる部分である。
これにより、摩擦材Fが捲れることを、より効果的に抑えることができる。
【0063】
また、滑り免震装置100において、第1摺動面S1に摺接する第2摺動面S2に設けられる摩擦材Fは、少なくとも一部が伸ばされた状態で配置される。
すなわち、摩擦材Fは、第2摺動面S2に押し付けられること等により、第2摺動面S2の表面に沿って変形した状態で配置される。
これにより、摩擦材Fを第2摺動面S2に密着した状態で配置することができる。
よって、摩擦材Fと第2摺動面S2との間に隙間が生じ、又は摩擦材Fと第2摺動面S2との間にずれが生じること等を抑え、第1摺動面S1と第2摺動面S2との間に十分な潤滑性を付与することができる。
よって、第1摺動面S1又は第2摺動面S2に、潤滑材を補給するための油路を不要とすることができる。
このため、例えば、滑り免震装置100の費用を抑えることができる。
更に、摩擦材Fが滑り免震装置100の摺動子20に設けられることで、摩擦材Fの交換時に、滑り免震装置100から摺動子20を取り外すことができる。
よって、摩擦材Fの交換を容易にすることができる。
【0064】
また、本実施形態に係る滑り免震装置100は、上述の摩擦材Fを備える。
これにより、第1摺動面S1と第2摺動面S2との間に十分な潤滑性を付与することができる。
よって、第1摺動面S1又は第2摺動面S2に、潤滑材を補給するための油路を不要とすることができる。
このため、滑り免震装置100の費用を抑えることができる。
【0065】
また、第1摺動面S1と摩擦材Fとの間には接着材Gが配置されている。これにより、摩擦材Fを第1摺動面S1に、より確実に、強固に貼付することができる。
【0066】
また、本実施形態に係る摩擦材Fの貼付方法において、摩擦材Fは、第1摺動面S1に押し付けられることで、第1摺動面S1に沿った立体形状が形成された状態で、第1摺動面S1に貼付される。
これにより、摩擦材Fを第1摺動面S1に密着した状態で配置することができる。
よって、摩擦材Fと第1摺動面S1との間に隙間が生じ、又は摩擦材Fと第1摺動面S1との間にずれが生じること等を抑え、第1摺動面S1と第2摺動面S2との間に十分な潤滑性を付与することができる。
よって、第1摺動面S1又は第2摺動面S2に、潤滑材を補給するための油路を不要とすることができる。
このため、滑り免震装置100の費用を抑えることができる。
【0067】
また、摩擦材Fの貼付方法において、立体形状は、摩擦材Fを治具Jによって第1摺動面S1に押し付けることで形成される。
これにより、摩擦材Fを形成する材料が立体形状でなくとも、立体形状の形成を容易に行うことができる。
【0068】
また、治具Jは、第1摺動面S1に沿った立体形状のゴム体であることが好ましい。
これにより、治具Jによって摩擦材Fを第1摺動面S1に押し付けた時、治具Jは第1摺動面S1の表面に合わせて弾性変形することができる。
したがって、摩擦材Fを第1摺動面S1の全面に均等に押し付けることができる。
よって、摩擦材Fをより効果的に第1摺動面S1に沿うようにすることができる。
【0069】
また、第1摺動面S1と摩擦材Fとの間には接着材Gが配置されていることが好ましい。
これにより、摩擦材Fを第1摺動面S1に、より確実に、強固に貼付することができる。
【0070】
また、球座部10が普通鋼製である場合、第1摺動面S1に摩擦材Fを配置する前に、第1摺動面S1にブラスト処理し、ブラスト処理後に塗装して塗装面を形成することが好ましい。
これにより、球座部10が普通鋼製である場合に、摩擦材Fと第1摺動面S1との接着性を向上させることができる。
【0071】
また、球座部10がステンレス鋼製である場合、第1摺動面S1に摩擦材Fを配置する前に、第1摺動面S1における摩擦材Fの配置面を目荒らしするための予備処理を行うことが好ましい。
これにより、球座部10がステンレス鋼製である場合に、摩擦材Fと第1摺動面S1との接着性を向上させることができる。
【0072】
また、球座部10がステンレス鋼製である場合に行う予備処理は、例えばブラスト処理である。
これにより、球座部10がステンレス鋼製である場合に、摩擦材Fと第1摺動面S1との接着性を向上させることができる。
【0073】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態において、滑り免震装置100はシングルペンデュラム方式の球面滑り支承としたが、本発明はこれに限定されるものではない。
すなわち、摩擦材Fは、摺動面を有するいずれの滑り免震装置100に用いられてもよい。
摩擦材Fを滑り免震装置100に設ける際、摩擦材Fにシリコン等の潤滑材を予め塗布してもよい。
または、摩擦材Fが設けられた滑り免震装置100の供用中において、潤滑性を向上させるために、摩擦材Fに潤滑材を追加で塗布してもよい。
また、摩擦材Fは、滑り免震装置100の供用中に交換されてもよい。
この場合、滑り免震装置100から摺動子20を取り外し、古い摩擦材Fを取り外した後に、上述の貼付方法によって摩擦材Fを貼付することが好ましい。
また、球座部10に設けられる第1摺動面S1は、凸型球面状の滑り面であると説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。球座部10の備える第1摺動面S1は、凹型窪み状の滑り面であってもよい。このとき、第1摺動面S1と摺接する摺動子20の第2摺動面S2が、凸型球面状の滑り面であってもよい。
【0074】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 球座部
20 摺動子
30 沓
100 滑り免震装置
F 摩擦材
Fb 折り曲げ部
G 接着材
J 治具
L 下部構造体
S1 第1摺動面
S2 第2摺動面
S3 第3摺動面
S4 第4摺動面
U 上部構造体
【要約】
【課題】費用を抑えつつ、潤滑性の低下を抑えた摩擦材、滑り免震装置、及び摩擦材の貼付方法を提供することを目的とする。
【解決手段】第1摺動面S1を備える球座部10と、第1摺動面S1に摺接する第2摺動面S2を備える摺動子20と、を有する滑り免震装置100に設けられる摩擦材Fであって、摩擦材Fは繊維を含み、少なくとも一部が伸ばされた状態で第1摺動面S1に配置されることを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4