(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】ドネペジルエーテルパルミテートまたはその薬学的に許容される塩
(51)【国際特許分類】
C07D 211/22 20060101AFI20240509BHJP
A61K 31/445 20060101ALI20240509BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C07D211/22 CSP
A61K31/445
A61P25/28
(21)【出願番号】P 2023511541
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 KR2021007936
(87)【国際公開番号】W WO2022035048
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】10-2020-0102535
(32)【優先日】2020-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514052597
【氏名又は名称】チョン クン ダン ファーマシューティカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナム,ドンヒョク
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジェミン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ソヒョン
(72)【発明者】
【氏名】カン,ソンクォン
(72)【発明者】
【氏名】パク,シンジョン
【審査官】薄井 慎矢
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-280248(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0202756(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D A61K A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1で表される化合物またはその薬学的に許容される塩:
[式1]
【化1】
前記式において、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ハロアルキル、C
1-C
6アルコキシ、またはアリールであり;および
R
3は、C
12-C
16アルキルである。
【請求項2】
下記式2で表される2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(テトラデシルオキシ)アセテートまたはその薬学的に許容される塩:
[式2]
【化2】
。
【請求項3】
下記式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む認知症の予防または治療用徐放性医薬組成物、
[式1]
【化3】
前記式において、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ハロアルキル、C
1-C
6アルコキシ、またはアリールであり;および
R
3は、C
12-C
16アルキルである。
【請求項4】
下記式2の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む認知症の予防または治療用徐放性医薬組成物。
[式2]
【化4】
【請求項5】
前記組成物が2~20週毎に投与される注射用であることを特徴とする、請求項3または4に記載の認知症の予防または治療用徐放性医薬組成物。
【請求項6】
前記組成物が筋肉注射用であることを特徴とする、請求項3または4に記載の認知症の予防または治療用徐放性医薬組成物。
【請求項7】
ドネペジル遊離塩基および2-(テトラデシルオキシ)アセチルクロリドを反応させる工程を含む2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(テトラデシルオキシ)アセテートの製造方法。
【請求項8】
2-(テトラデシルオキシ)アセチルクロリドは、
(i)1-テトラデカノール、クロロ酢酸ナトリウムおよび水酸化カリウムを混合し、2-(テトラデシルオキシ)酢酸ナトリウムを得る工程;
(ii)前記2-(テトラデシルオキシ)酢酸ナトリウムをHCl水溶液と反応させ、2
-(テトラデシルオキシ)酢酸を得る工程;および
(iii)前記2-(テトラデシルオキシ)酢酸を塩化オキサリルと反応させる工程を含んで製造されることを特徴とする、請求項7に記載の2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(テトラデシルオキシ)アセテートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なドネペジルエーテルパルミテート(Donepezil ether
palmitate)またはその薬学的に許容される塩、並びにそれらを主成分とする徐放性医薬組成物に関する。具体的には、体内に投与した時、活性成分であるドネペジルの血中濃度が一定に維持され、副作用のリスクなく長期間にわたって活性成分を供給することができるドネペジルエーテルパルミテートまたはその薬学的に許容される塩、並びにそれを含む注射用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
認知症とは、記憶障害、知能の低下、性格の変化、および行動異常を示す複雑な認知障害に関連する疾病を指す。すなわち、認知症は、脳の退行性神経疾患であって、中枢神経系の退行性疾患を誘発させるゆっくりとした神経細胞死により、神経ネットワークの不可逆的な機能障害をもたらし、最終的には当該人体の機能に永久的な損失を招く。
【0003】
認知症の発症機序は、完全には解明されていないのが現状であるが、認知症患者の脳では、健常者よりアセチルコリン(Acetylcholine、以下、「ACh」)を合成するコリンアセチルトランスフェラーゼ(Choline acetyltransferase、以下、「ChAT」)が20~30%程減少していることが知られており、神経伝達物質であるアセチルコリン濃度が16~30%程減少していることが知られている。以上の研究の結果、間接的な治療法である神経伝達物質であるアセチルコリンを加水分解する酵素であるアセチルコリンエステラーゼ(Acetylcholinesterase、以下、「AChE」)を阻害する阻害剤を用いる研究が進められてきている。
【0004】
アセチルコリンエステラーゼは、体内の副交感神経の活性を媒介する神経伝達物質の一つであるアセチルコリンをコリンとアセテートで加水分解する酵素であって、小胞体膜で形成され、細胞膜に移動してその機能を果たす。前記酵素は、コリン作動性神経およびその周辺、特に神経筋接合部に最も多く分布しており、血漿、肝臓およびその他の組織からも発見される重要な酵素である。
現在使用されている認知症治療剤は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤がほとんどであり、ドネペジル(Donepezil、商品名:アリセプト)、タクリン(Tacrine、商品名:コグネックス)、リバスチグミン(Rivastigmin、商品名:エクセロン)、ガランタミン(Galantamine、商品名:レミニール)などがこれに属する。
第1世代のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤としてタクリンがあり、これは抗認知症治療薬として承認された最初の薬である。しかし、タクリンの作用持続期間が短いため、1日4回投与する必要があり、肝毒性が発症する問題がある。
【0005】
第2世代のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤としては、ドネペジルがあり、下記式で表される化合物である。ドネペジルは、1996年に米国で認知症治療剤として承認を受け、軽度および重度以上のアルツハイマー型認知症治療剤として知られており、ほとんどが錠剤形態で経口投与されている。
【化1】
【0006】
ところが、ドネペジル錠剤を経口投与した際、一部の患者において下痢、悪心、食欲不振、筋痙攣(muscle convulsion)などの消化器系の副作用が生じることが知られている。また、現在市販されているドネペジル塩酸塩の経口製剤は、就寝時に1日1回5mgから投与開始し、4~6週間使用後に10mgに増量し、1日1回投与するのが一般的である。しかしながら、このような方式で治療を行う場合、特に認知症患者において連日経口投与による服薬順守が低下するという欠点がある。
【0007】
最近、嚥下困難な患者のために口腔内で崩壊する錠剤が市販されている。また、経口投与が困難な場合には、軟膏製剤を経皮投与することが提案されている(日本特開平第11-315016号)。また、認知症の症状がかなり進行した状態で口から薬を服用することが困難な場合を解決するための軟膏剤および坐剤などが提案された。ところが、これらの剤形も同様に長期間にわたって有効成分を連続的に投与しなければならないという問題がある。
【0008】
薬物の投与頻度を減らし、患者の利便性およびコンプライアンスを向上させながら薬物の濃度を長期間持続的に安定に保つためには、徐放型注射剤を製剤化する方法がある。しかしながら、徐放性注射剤を投与した際には、体内で薬物を生物学的活性を維持しながら、持続的かつ均一に長期間放出されるようにすることは非常に困難である。
【0009】
特に、徐放性注射剤の場合、薬物の高い初期バースト(initial burst)が起こるが、毒性反応を始めとする副作用を引き起こす可能性があるので、高い初期バーストを排除または少なくとも最小限に抑えることが必要である。
【0010】
したがって、ドネペジルの高い初期バーストを抑制し、長期間にわたって持続的にドネペジルを放出することができる製剤開発の必要性が求められている。
【0011】
そこで、本発明者らは、ドネペジルにエーテルパルミテート基を導入することにより、ドネペジルの高い初期バーストを減少させつつ、体内でドネペジルが持続的かつ均一に放出されるドネペジルエーテルパルミテートを開発することにより、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、体内に投与した時、副作用のリスクが少なく、認知症患者の薬物治療コンプライアンスを向上させることができるドネペジルエーテルパルミテートまたはその薬学的に許容される塩、並びにそれらを含む医薬組成物を提供する。
【0013】
具体的には、本発明は、ドネペジルの初期バーストを減少させることにより、薬物毒性などの副作用に対するリスクを低減させ、体内でドネペジルが長期間均一に放出され、認知症患者の薬物治療効果を向上させることができる、ドネペジルエーテルパルミテートお
よびそれを含む徐放性医薬組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、下記式1で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0015】
【0016】
前記式において、
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-C6アルキル、C1-C6ハロアルキル、C1-C6アルコキシ、またはアリールであり;および
R3は、C12-C16アルキルである。
【0017】
また、本発明は、前記式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む認知症の予防または治療用徐放性医薬組成物を提供する。
【0018】
また、本発明は、下記式2で表される2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(テトラデシルオキシ)アセテートまたはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0019】
【0020】
また、本発明は、前記式2の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む認知症の予防または治療用徐放性医薬組成物に関するものである。
【0021】
前記式2の化合物の化学名は、「2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(テトラデシルオキシ)アセテート」であり、本発明では、ドネペジルにエーテルパルミテート基を導入した前記化合物をドネペジルエーテルパルミテート(DEP)とする。
【0022】
本発明のドネペジルエーテルパルミテートは、ドネペジル遊離塩基および2-(テトラデシルオキシ)アセチルクロリドを反応させて製造することができる。
【0023】
前記2-(テトラデシルオキシ)アセチルクロリドは、(i)1-テトラデカノール、クロロ酢酸ナトリウムおよび水酸化カリウムを混合し、2-(テトラデシルオキシ)酢酸ナトリウムを得る工程;(ii)前記2-(テトラデシルオキシ)酢酸ナトリウムをHCl水溶液と反応させ、2-(テトラデシルオキシ)酢酸を得る工程;および(iii)前記2-(テトラデシルオキシ)酢酸を塩化オキサリルと反応させる工程を含んで製造することができる。
【0024】
本発明の医薬組成物は、非経口投与用、例えば、筋肉注射、静脈注射、皮下注射、皮内注射、静脈点滴注射(intravenous drip infusion)製剤として剤形化することができ、好ましくは、筋肉注射用製剤として剤形化することができる。
【0025】
本発明の医薬組成物は、2~20週ごとに投与することが好ましく、4~16週ごとに投与することがより好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明のドネペジルエーテルパルミテートまたはその薬学的に許容される塩、並びにそれを主成分として含む徐放性医薬組成物は、体内投与後、ドネペジルの初期バースト(initial burst)が少ないので、毒性反応を始めとする副作用のリスクを最小限にできる効果があり、ドネペジルが血中で長期間有効濃度を維持し、単回投与だけでも治療効果を奏するので、認知症患者の薬物治療コンプライアンスを向上させる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】ドネペジル(D)をラットに投与した後、血中のドネペジルの濃度を測定した結果である。
【
図2】ドネペジルエーテルパルミテート(DEP)をラットに投与した後、血中ドネペジルの濃度を測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
定義
【0029】
本明細書において「アルキル」は、第一級、第二級、第三級または第四級炭素原子を有する炭化水素であり、直鎖状、分岐状もしくは環状、またはこれらの組み合わせであってもよい飽和脂肪族基を含む。例えば、アルキル基は、1~20個の炭素原子(すなわち、C1-C20アルキル)、1~10個の炭素原子(すなわち、C1-C10アルキル)、または1~6個の炭素原子(すなわち、C1-C6アルキル)を有してもよい。適切なアルキル基の例としては、メチル(Me、-CH3)、エチル(Et、-CH2CH3)、1-プロピル(n-Pr、n-プロピル、-CH2CH2CH3)、2-プロピル(i-Pr、i-プロピル、-CH(CH3)2)、1-ブチル(n-Bu、n-ブチル、-CH2CH2CH2CH3)、2-メチル-1-プロピル(i-Bu、i-ブチル、-CH2CH(CH3)2)、2-ブチル(s-Bu、s-ブチル、-CH(CH3)CH2CH3)、2-メチル-2-プロピル(t-Bu、t-ブチル、-C(CH3)3)、1-ペンチル(n-ペンチル、-CH2CH2CH2CH2CH3)、2-ペンチル(-CH(CH3)CH2CH2CH3)、3-ペンチル(-CH(CH2CH3)2)、2-メチル-2-ブチル(-C(CH3)2CH2CH3)、3-メチル-2-ブチル(-CH(CH3)CH(CH3)2)、3-メチル-1-ブチル(-CH2CH2CH(CH3)2)、2-メチル-1-ブチル(-CH2CH(CH3)CH2CH3)、1-へキシ
ル(-CH2CH2CH2CH2CH2CH3)、2-へキシル(-CH(CH3)CH2CH2CH2CH3)、3-へキシル(-CH(CH2CH3)(CH2CH2CH3))、2-メチル-2-ペンチル(-C(CH3)2CH2CH2CH3)、3-メチル-2-ペンチル(-CH(CH3)CH(CH3)CH2CH3)、4-メチル-2-ペンチル(-CH(CH3)CH2CH(CH3)2)、3-メチル-3-ペンチル(-C(CH3)(CH2CH3)2)、2-メチル-3-ペンチル(-CH(CH2CH3)CH(CH3)2)、2,3-ジメチル-2-ブチル(-C(CH3)2CH(CH3)2)、3,3-ジメチル-2-ブチル(-CH(CH3)C(CH3)3)、およびオクチル(-(CH2)7CH3)が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0030】
「アルコキシ」は、前記にて定義したようなアルキル基が酸素原子を介して親化合物に結合したものである式-O-アルキルを有する基を指す。アルコキシ基のアルキル残基は、例えば、1~20個の炭素原子(すなわち、C1-C20アルコキシ)、1~12個の炭素原子(すなわち、C1-C12アルコキシ)、1~10個の炭素原子(すなわち、C1-C10アルコキシ)、または1~6個の炭素原子(すなわち、C1-C6アルコキシ)を有してもよい。適切なアルコキシ基の例としては、メトキシ(-O-CH3または-OMe)、エトキシ(-OCH2CH3または-OEt)、およびt-ブトキシ(-OC(CH3)3または-O-tBu)が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0031】
本願にて使用される用語「ハロ」および「ハロゲン」は、ハロゲンを意味し、クロロ、フルオロ、ブロモ、およびヨードを含む。
【0032】
「ハロアルキル」は、前記にて定義するようなアルキル基の水素原子中、1個以上がハロゲン原子で置換されたアルキル基である。ハロアルキル基のアルキル残基は、1~20個の炭素原子(すなわち、C1-C20ハロアルキル)、1~12個の炭素原子(すなわち、C1-C12ハロアルキル)、1~10個の炭素原子(すなわち、C1-C10ハロアルキル)、または1~6個の炭素原子(すなわち、C1-C6ハロアルキル)を有してもよい。ハロアルキル基の例としては、-CF3、-CHF2、-CFH2,および-CH2CF3が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0033】
「アリール」は、環の原子それぞれが炭素である、単環式、二環式または多環式である、置換または非置換の1価または2価芳香族炭化水素基を含む。好ましくは、アリール環は、6-~20-員環、6-~14-員環、6-~10-員環、またはより好ましくは、6-員環である。アリール基は、2個以上の炭素が2個の隣接した環に共通の2個以上の環状環を有する多環式環系であってもよく、ここで環中、1個以上は、芳香族であり、例えば、他の環状環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、および/またはヘテロシクロアルキルであってもよい。アリール基としては、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、インデン、インダン、フェノール、アニリンなどが挙げられる。
【0034】
用語「Cx-y」または「Cx-Cy」は、アルキル、ハロアルキル、アルコキシのような化学的残基と共に使用される場合、鎖内にx~y個の炭素を含有する基を含むものとみなされる。C0アルキルは、基が末端位置にある場合には、水素、内部にある場合には、結合を示す。例えば、C1-C20アルキル基は、鎖内に1~20個の炭素原子を含有する。
【0035】
以下、実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明の理解を助けるための例示の目的で提供されたものに過ぎず、本発明の範囲が以下の実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
[実施例1]
2-(テトラデシルオキシ)アセチルクロリド(EPS-Cl)の合成
【化4】
【0037】
1)2-(テトラデシルオキシ)酢酸ナトリウム(EPS-Na)の製造
反応部に1-テトラデカノール(1-tetradecanol)400gを投入し、60℃で溶解させた後、クロロ酢酸ナトリウム(sodium chloroacetate)108.7gとノルマルヘプタン(n-heptane)108mLを投入した。反応液に水酸化カリウム(Potassium hydroxide)78.5gを投入し、85℃まで昇温し、3時間攪拌した。反応液にノルマルヘプタン(n-heptane)980mLとエタノール(EtOH)2.2Lを注入し、60℃で1時間攪拌した後、室温で冷却した後、濾過し、2-(テトラデシルオキシ)酢酸ナトリウム化合物263.3gを得た。
【0038】
(1H NMR(CD3OD、400 MHz)δ 3.83(s、2H)、3.48(t、J = 6.9 Hz、2H)、1.65~1.57(m、2H)、1.37~1.29(m、22H)、0.90(t、J = 6.9 Hz、3H))。
【0039】
2)2-(テトラデシルオキシ)酢酸(EPS-acid)の製造
反応部に前記「1)」にて製造した2-(テトラデシルオキシ)酢酸ナトリウム263.3gをエチルアセテート(EtOAc)2.2Lに投入し、攪拌した後、2M HCl水溶液1.45Lを注入し、常温で2時間攪拌した。分液して有機層を得た後、1.45Lの精製水で2回洗浄した。得られた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液1.45Lで洗浄した。有機層を得た後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、減圧濃縮した。濃縮された化合物をノルマルヘキサン(n-hexane)1.63Lで溶解した後、0℃で1時間攪拌した。析出された固体を濾過し、2-(テトラデシルオキシ)酢酸化合物110.6gを得た。
【0040】
(1H NMR(CDCl3、400 MHz)δ 4.11(s、2H)、3.56(t、J = 6.7 Hz、2H)、1.66~1.59(m、2H)、1.36~1.25(m、22H)、0.88(t、J = 7.2 Hz、3H))。
【0041】
3)2-(テトラデシルオキシ)アセチルクロリド(EPS-Cl)の製造
反応部に前記「2)」にて製造された2-(テトラデシルオキシ)酢酸50.0gを投入した後、ジクロロメタン(Dicholoromethane)500mLとジメチルホルムアミド(Dimethylformamide)0.5mLを注入し、溶解させた。反応液に塩化オキサリル(oxalyl chloride)16.5mLを注入し、室温で3時間攪拌した。反応終了後、減圧蒸留を介して溶媒を除去し、2-(テトラデシルオキシ)アセチルクロリド化合物53.4gを得た。
【0042】
(1H NMR(CDCl3、400 MHz)δ 4.39(s、2H)、3.56(t、J = 6.6 Hz、2H)、1.64~1.57(m、2H)、1.36~1.25(m、22H)、0.88(t、J = 6.8 Hz、3H))。
【0043】
[実施例2]
ドネペジルエーテルパルミテート(DEP)[2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(テトラデシルオキシ)アセテート]の製造
【化5】
【0044】
反応部にドネペジル遊離塩基(free base)(Jinan Chenghui-Shuangda Chemical Co.、Ltdで購入)63.3gを投入した後、THF(tetrahydrofuran)190mLおよびDMPU(1,3-dimethyl-3,4,5,6-tetrahydro-2(1H)-pyrimidinone)127mLを注入して溶解させ、-20℃まで冷却した。反応液にNaHMDS(1.0M THF溶液)183.5mLを30分間注入し、-20℃で1時間攪拌した。反応液を前記「実施例1-3)」にて製造した2-(テトラデシルオキシ)アセチルクロリド53.4gが-20℃のTHF(tetrahydrofuran)380mLおよびDMPU(1,3-dimethyl-3,4,5,6-tetrahydro-2(1H)-pyrimidinone)253mLに溶解された溶液に40分間注入した後、同一温度で1時間攪拌した。
【0045】
反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液630mLを注入し、セライトに濾過した後、エチルアセテート(EtOAc)630mLで洗浄し、濾過した。分液して有機層を得た後、エチルアセテート(EtOAc)630mLを用いて水相を逆抽出した。合せた有機層を5%塩化ナトリウム水溶液630mLで3回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、減圧濃縮した。濃縮液にノルマルヘキサン(n-hexane)630mLを注入し、40℃で攪拌し、再び室温まで下げ、1時間スラリー攪拌した。溶液を濾過し、得られた濾過液を減圧濃縮した。濃縮液をシリカカラムで精製した後、ノルマルヘプタン(n-heptane)630mLで再結晶することにより、ドネペジルエーテルパルミテート33.1gを得た。
【0046】
(1H NMR(CDCl3、400 MHz)δ 7.32~7.21(m、5H)、6.96(s、1H)、6.59(s、1H)、4.37(s、2H)、3.88(s、3H)、3.87(s、3H)、3.64(t、J = 6.7 Hz、2H)、3.47(s、2H)、3.25(s、2H)、2.87~2.84(m、2H)、2.27(d、J = 7.1 Hz、2H)、1.90(t、J =10.7 Hz、2H)、1.71~1.63(m、4H)、1.55~1.44(m、1H)、1.41~1.2
5(m、24H)、0.88(t、J = 6.8 Hz、3H))。
【0047】
[実施例3]
2-(ドデシルオキシ)アセチルクロリド(EMS-Cl)の合成
【化6】
【0048】
1)2-(ドデシルオキシ)酢酸ナトリウム(EMS-Na)の製造
反応部に1-ドデカノール(1-dodecanol)96.0gを投入した後、60
℃で溶解させた後、クロロ酢酸ナトリウム(sodium chloroacetate)30.0gとノルマルヘプタン(n-heptane)30mLを投入した。反応液に水酸化カリウム(Potassium hydroxide)22.8gを投入し、85℃まで昇温し、2時間攪拌した。反応液にノルマルヘプタン(n-heptane)270mLとエタノール(EtOH)600mLを注入し、60℃で20分間攪拌した後、室温で冷却した後、濾過し、2-(ドデシルオキシ)酢酸ナトリウム化合物69.2gを得た。
【0049】
(1H NMR(CD3OD、400 MHz)δ 3.83(s、2H)、3.47(t、J = 6.9 Hz、2H)、1.64~1.57(m、2H)、1.37~1.29(m、18H)、0.90(t、J = 6.9 Hz、3H))。
【0050】
2)2-(ドデシルオキシ)酢酸(EMS-acid)の製造
反応部に前記「1)」にて製造した2-(ドデシルオキシ)酢酸ナトリウム 68.0gをエチルアセテート(EtOAc)904mLに投入し、攪拌した後、2M HCl水溶液904mLを注入し、常温で1時間攪拌した。分液して有機層を得た後、904mLの精製水で2回洗浄した。得られた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液904mLで洗浄した。有機層を得た後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、減圧濃縮した。濃縮された化合物をノルマルヘキサン(n-hexane)300mLで溶解した後、0℃で1時間攪拌した。析出された固体を濾過し、冷却させたノルマルヘキサン(n-hexane)60mLで洗浄し、2-(ドデシルオキシ)酢酸化合物36.2gを得た。
【0051】
(1H NMR(CDCl3、400 MHz)δ4.11(s、2H)、3.56(t、J = 6.7 Hz、2H)、1.66~1.59(m、2H)、1.36~1.25(m、18H)、0.87(t、J = 6.9 Hz、3H))。
【0052】
3)2-(ドデシルオキシ)アセチルクロリド(EMS-Cl)の製造
反応部に前記「2)」にて製造された2-(ドデシルオキシ)酢酸35.4gを投入した後、ジクロロメタン(Dicholoromethane)354mLとジメチルホルムアミド(Dimethylformamide)0.35mLを注入し、溶解させた。反
応液に塩化オキサリル(oxalyl chloride)14.9mLを注入し、室温で2時間攪拌した。反応終了後、減圧蒸留を介して溶媒を除去し、2-(ドデシルオキシ)アセチルクロリド化合物38.1gを得た。
【0053】
(1H NMR(CDCl3、400 MHz)δ 4.39(s、2H)、3.57(t、J = 6.6 Hz、2H)、1.64~1.57(m、2H)、1.36~1.26(m、18H)、0.88(t、J = 6.8 Hz、3H))。
【0054】
[実施例4]
ドネペジルエーテルミリステート(DEM)[2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(ドデシルオキシ)アセテート]の製造
【化7】
【0055】
反応部にドネペジル遊離塩基(free base)(Jinan Chenghui-Shuangda Chemical Co.、Ltdで購入)50.0gを投入した後、THF(tetrahydrofuran)150mLおよびDMPU(1,3-dimethyl-3,4,5,6-tetrahydro-2(1H)-pyrimidinone)100mLを注入し、溶解させ、-20℃まで冷却した。反応液にNaHMDS(1.0M THF溶液)145mLを30分間注入し、-20℃で1時間攪拌した。反応液を前記「実施例3-3)」にて製造した2-(ドデシルオキシ)アセチルクロリド38.1gが-20℃のTHF(tetrahydrofuran)500mLに溶解された溶液に30分間注入した後、同一温度で30分間攪拌した。
【0056】
反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液500mLを注入し、セライト100gを投入し、10分間攪拌した。反応液を濾過した後、エチルアセテート(EtOAc)500mLで洗浄し、濾過した。分液して有機層を得た後、エチルアセテート(EtOAc)500mLを用いて水相を逆抽出した。合せた有機層を5%塩化ナトリウム水溶液500mLで3回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、減圧濃縮した。濃縮液にノルマルヘキサン(n-hexane)500mLを注入し、スラリー攪拌した。溶液を濾過し、得られた濾過液を減圧濃縮した。濃縮液をシリカカラムで精製した後、ノルマルヘプタン(n-heptane)750mLで再結晶し、ドネペジルエーテルミリステート26.7gを得た。
【0057】
(1H NMR(CDCl3、400 MHz)δ 7.32~ 7.21(m、5H)、6.96(s、1H)、6.59(s、1H)、4.37(s、2H)、3.87(s、3H)、3.87(s、3H)、3.64(t、J = 6.7 Hz、2H)、3.47(s、2H)、3.25(s、2H)、2.87~2.84(m、2H)、2.2
7(d、J = 7.1 Hz、2H)、1.91(t、J =10.8 Hz、2H)、1.71~1.63(m、4H)、1.55~1.44(m、1H)、1.41~1.25(m、20H)、0.88(t、J = 6.8 Hz、3H))。
【0058】
[実施例5]
2-(トリデシルオキシ)アセチルクロリド(EPDS-Cl)の合成
【化8】
【0059】
1)2-(トリデシルオキシ)酢酸ナトリウム(EPDS-Na)の製造
反応部に1-トリデカノール(1-tridecanol)100.0gを投入し、60℃で溶解させた後、クロロ酢酸ナトリウム(sodium chloroacetate)29.1gとノルマルヘプタン(n-heptane)30mLを投入した。反応液に水酸化カリウム(Potassium hydroxide)21.0gを投入し、85℃まで昇温し、3時間攪拌した。反応液にノルマルヘプタン(n-heptane)262mLとエタノール(EtOH)581mLを注入し、室温で冷却した後、16時間攪拌した。溶液を濾過し、2-(トリデシルオキシ)酢酸ナトリウム化合物73.1gを得た。
【0060】
(1H NMR(CD3OD、400 MHz)δ 3.83(s、2H)、3.47(t、J = 6.9 Hz、2H)、1.64~1.57(m、2H)、1.37~1.29(m、20H)、0.90(t、J = 6.8 Hz、3H))。
【0061】
2)2-(トリデシルオキシ)酢酸(EPDS-acid)の製造
反応部に前記「1)」にて製造した2-(トリデシルオキシ)酢酸ナトリウム72.2gをエチルアセテート(EtOAc)386mLに投入し、攪拌した後、2M HCl水溶液386mLを注入し、常温で1時間攪拌した。反応液にエチルアセテート(EtOAc)145mLをさらに注入し、常温で2時間攪拌した。分液して有機層を得た後、386mLの精製水で2回洗浄した。得られた有機層を10%塩化ナトリウム水溶液386mLで洗浄した。有機層を得た後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、減圧濃縮した。濃縮物をノルマルヘキサン(n-hexane)290mLで40℃で溶解させた後、常温で1時間攪拌し、再び0~5℃で1時間攪拌した。析出された固体を濾過し、冷却させたノルマルヘキサン(n-hexane)60mLで洗浄し、2-(トリデシルオキシ)酢酸化合物41.3gを得た。
【0062】
(1H NMR(CDCl3、400 MHz)δ 4.10(s、2H)、3.56(t、J = 6.7 Hz、2H)、1.66~1.59(m、2H)、1.37~1.26(m、20H)、0.88(t、J = 6.8 Hz、3H))。
【0063】
3)2-(トリデシルオキシ)アセチルクロリド(EPDS-Cl)の製造
反応部に前記「2)」にて製造された2-(トリデシルオキシ)酢酸41.0gを投入した後、ジクロロメタン(Dicholoromethane)410mLとジメチルホルムアミド(Dimethylformamide)0.4mLを注入し、溶解させた。反応液に塩化オキサリル(oxalyl chloride)16.3mLを注入し、室温で2時間攪拌した。反応終了後、減圧蒸留を介して溶媒を除去し、2-(トリデシルオキシ)アセチルクロリド化合物43.9gを得た。
【0064】
(1H NMR(CDCl3、400 MHz)δ 4.39(s、2H)、3.57(t、J = 6.6 Hz、2H)、1.64~1.57(m、2H)、1.36~1.26(m、20H)、0.88(t、J = 6.8 Hz、3H))。
【0065】
[実施例6]
ドネペジルエーテルペンタデカノエート(DEPD)[2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(トリデシルオキシ)アセテート]の製造
【化9】
【0066】
反応部にドネペジル遊離塩基(free base)(Jinan Chenghui-Shuangda Chemical Co.、Ltdで購入)54.8gを投入した後、THF(tetrahydrofuran)164mLおよびDMPU(1,3-dimethyl-3,4,5,6-tetrahydro-2(1H)-pyrimidinone)110mLを注入し、溶解させ、-20℃まで冷却した。反応液にNaHMDS(1.0M THF溶液)159mLを30分間注入し、-20℃で1時間攪拌した。反応液を前記「実施例5-3)」にて製造した2-(トリデシルオキシ)アセチルクロリド43.9gが-20℃のTHF(tetrahydrofuran)548mLに溶解された溶液に30分間注入した後、同一温度で30分間攪拌した。
【0067】
反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液548mLを注入し、セライト110gを投入し、10分間攪拌した。反応液を濾過した後、エチルアセテート(EtOAc)548mLで洗浄し、濾過した。分液して有機層を得た後、エチルアセテート(EtOAc)548mLを用いて水相を逆抽出した。合せた有機層を5%塩化ナトリウム水溶液548mLで3回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、減圧濃縮した。濃縮液にノルマルヘキサン(n-hexane)548mLを注入し、スラリー攪拌した。溶液を濾過し、得られた濾過液を減圧濃縮した。濃縮液をシリカカラムで精製した後、ノルマルヘプタン(n-heptane)1.37Lで再結晶し、ドネペジルエーテルペンタデカノエート27.2gを得た。
【0068】
(1H NMR(CDCl3、400 MHz)δ 7.32~7.21(m、5H)
、6.96(s、1H)、6.59(s、1H)、4.37(s、2H)、3.87(s、3H)、3.87(s、3H)、3.64(t、J = 6.7 Hz、2H)、3.47(s、2H)、3.25(s、2H)、2.87~2.84(m、2H)、2.27(d、J = 7.1 Hz、2H)、1.91(t、J =10.8 Hz、2H)、1.71~1.63(m、4H)、1.55~1.44(m、1H)、1.43~1.25(m、22H)、0.88(t、J = 6.8 Hz、3H))。
【0069】
[実施例7]
2-(ペンタデシルオキシ)アセチルクロリド(EHDS-Cl)の合成
【化10】
【0070】
1)2-(ペンタデシルオキシ)酢酸ナトリウム(EHDS-Na)の製造
反応部に1-ペンタデカノール(1-pentadecanol)200gを投入した後、70℃~80℃で溶解させ、ノルマルヘプタン(n-heptane)51mLを注入した。反応液にクロロ酢酸ナトリウム(sodium chloroacetate)51.0gと水酸化カリウム(potassium hydroxide)36.8gを投入した。反応液を90℃まで昇温し、4時間攪拌した。反応液にエタノール(EtOH)1Lとノルマルヘプタン(n-heptane)450mLを注入し、60℃で1時間攪拌した。反応液を再び常温まで冷却させ、15時間攪拌した。反応液を濾過し、エタノール(EtOH)150mLおよびノルマルヘプタン(n-heptane)75mLの混合液で洗浄し、2-(ペンタデシルオキシ)酢酸ナトリウム化合物130.7gを得た。
【0071】
(1H NMR(CD3OD、400 MHz)δ 3.83(s、2H)、3.47(t、J = 6.9 Hz、2H)、1.64~1.57(m、2H)、1.37~1.29(m、24H)、0.90(t、J = 6.9 Hz、3H))。
【0072】
2)2-(ペンタデシルオキシ)酢酸(EHDS-acid)の製造
反応部に前記「1)」にて製造した2-(ペンタデシルオキシ)酢酸ナトリウム130.4gをエチルアセテート(EtOAc)678mLに投入し、攪拌した後、2M HCl水溶液678mLを注入し、常温で1時間攪拌した。反応液にエチルアセテート(EtOAc)255mLをさらに注入し、常温で1時間攪拌した。分液して有機層を得た後、678mLの精製水で2回洗浄した。得られた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液678mLで洗浄した。有機層を得た後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、減圧濃縮した。濃縮された化合物をノルマルヘキサン(n-hexane)800mLで40℃で溶解させた後、常温で1時間攪拌した。反応液を再び0℃で1時間攪拌した。析出された固体を濾過し、冷却させたノルマルヘキサン(n-hexane)150mLで洗浄し、2-(ペンタデシルオキシ)酢酸化合物72.6を得た。
【0073】
(1H NMR(CDCl3、400 MHz)δ4.11(s、2H)、3.56(t、J = 6.7 Hz、2H)、1.69~1.56(m、2H)、1.37~1.25(m、24H)、0.88(t、J = 6.8 Hz、3H))。
【0074】
3)2-(ペンタデシルオキシ)アセチルクロリド(EHDS-Cl)の製造
反応部に前記「2)」にて製造された2-(ペンタデシルオキシ)酢酸72.0gを投入した後、ジクロロメタン(Dicholoromethane)720mLとジメチルホルムアミド(Dimethylformamide)0.7mLを注入し、溶解させた。反応液に塩化オキサリル(oxalyl chloride)25.9mLを注入し、室温で2時間攪拌した。反応終了後、減圧蒸留を介して溶媒を除去し、2-(ドデシルオキシ)アセチルクロリド化合物76.6gを得た。
【0075】
(1H NMR(CDCl3、400 MHz)δ 4.39(s、2H)、3.57(t、J = 6.6 Hz、2H)、1.64~1.57(m、2H)、1.39~1.25(m、24H)、0.88(t、J = 6.8 Hz、3H))。
【0076】
[実施例8]
ドネペジルエーテルヘプタデカノエート(DEHD)[2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(ペンタデシルオキシ)アセテート]の製造
【化11】
【0077】
反応部にドネペジル遊離塩基(free base)(Jinan Chenghui-Shuangda Chemical Co.、Ltdで購入)86.7gを投入した後、THF(tetrahydrofuran)260mLおよびDMPU(1,3-dimethyl-3,4,5,6-tetrahydro-2(1H)-pyrimidinone)173mLを注入し、溶解させ、-20℃まで冷却した。反応液にNaHMDS(1.0M THF溶液)251mLを30分間注入し、-20℃で1時間攪拌した後、常温まで昇温させた。反応液を前記「実施例7-3)」にて製造した2-(ペンタデシルオキシ)アセチルクロリド76.6gが-20℃のTHF(tetrahydrofuran)870mLに溶解された溶液に30分間注入した後、同一温度で30分間攪拌した。
【0078】
反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液867mLを注入し、セライトに濾過した後、エチルアセテート(EtOAc)867mLで洗浄し、濾過した。分液して有機層を得た後、エチルアセテート(EtOAc)867mLを用いて水相を逆抽出した。合せた有機層
を5%塩化ナトリウム水溶液867mLで3回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、減圧濃縮した。濃縮液にノルマルヘキサン(n-hexane)867mLを注入し、40℃で攪拌し、再び室温まで下げ、1時間スラリー攪拌した。溶液を濾過し、得られた濾過液を減圧濃縮した。濃縮液をシリカカラムで精製した後、ノルマルヘプタン(n-heptane)2.6Lで再結晶し、ドネペジルエーテルヘプタデカノエート55.2gを得た。
【0079】
(1H NMR(CDCl3、400 MHz)δ 7.32~7.21(m、5H)、6.96(s、1H)、6.59(s、1H)、4.37(s、2H)、3.87(s、3H)、3.87(s、3H)、3.64(t、J = 6.7 Hz、2H)、3.47(s、2H)、3.25(s、2H)、2.87~2.84(m、2H)、2.27(d、J = 7.1 Hz、2H)、1.91(t、J =10.8 Hz、2H)、1.71~1.63(m、4H)、1.53~1.45(m、1H)、1.41~1.25(m、26H)、0.88(t、J = 6.8 Hz、3H))。
【0080】
[実施例9]
2-(ヘキサデシルオキシ)アセチルクロリド(ESS-Cl)の合成
【化12】
【0081】
1)2-(ヘキサデシルオキシ)酢酸ナトリウム(ESS-Na)の製造
反応部に1-ヘキサデカノール(1-hexadecanol)104.1gを投入した後、60℃で溶解させ、クロロ酢酸ナトリウム(sodium chloroacetate)25.0gを投入した。反応液を10分間攪拌した後、ノルマルヘプタン(n-heptane)25mLと水酸化カリウム(potassium hydroxide)19.0gを投入した。反応液を80℃~90℃まで昇温し、3時間攪拌した。反応液にエタノール(EtOH)333mLとノルマルヘプタン(n-heptane)167mLを注入し、60℃で20分間攪拌した。反応液を常温まで冷却し、濾過し、エタノール(EtOH)167mLおよびノルマルヘプタン(n-heptane)37mLの混合液で洗浄し、2-(ヘキサデシルオキシ)酢酸ナトリウム化合物70.9gを得た。
【0082】
(1H NMR(CD3OD、400 MHz)δ 3.83(s、2H)、3.47(t、J = 6.8 Hz、2H)、1.64~1.57(m、2H)、1.37~1.29(m、26H)、0.90(t、J = 6.8 Hz、3H))。
【0083】
2)2-(ヘキサデシルオキシ)酢酸(ESS-acid)の製造
【0084】
反応部に前記「1)」にて製造した2-(ヘキサデシルオキシ)酢酸ナトリウム70.0gをエチルアセテート(EtOAc)1.4Lに投入し、攪拌した後、2M HCl水溶液931mLを注入し、常温で1時間攪拌した。分液して有機層を得た後、931mLの精製水で2回洗浄した。得られた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液931mLで洗浄した。有機層を得た後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、減圧濃縮した。濃縮
された化合物をノルマルヘキサン(n-hexane)900mLで40℃で溶解させた後、常温で1時間攪拌した。反応液を再び0℃で1時間攪拌した。析出された固体を濾過し、冷却させたノルマルヘキサン(n-hexane)210mLで洗浄し、2-(ヘキサデシルオキシ)酢酸化合物44.7gを得た。
【0085】
(1H NMR(CDCl3、400 MHz)δ4.10(s、2H)、3.57(t、J = 6.7 Hz、2H)、1.66~1.59(m、2H)、1.37~1.26(m、26H)、0.88(t、J = 6.8 Hz、3H))。
【0086】
3)2-(ヘキサデシルオキシ)アセチルクロリド(ESS-Cl)の製造
反応部に前記「2)」にて製造された2-(ヘキサデシルオキシ)酢酸44.3gを投入した後、ジクロロメタン(Dicholoromethane)880mLとジメチルホルムアミド(Dimethylformamide)0.5mLを注入し、溶解させた。反応液に塩化オキサリル(oxalyl chloride)15.2mLを注入し、室温で2時間攪拌した。反応終了後、減圧蒸留を介して溶媒を除去し、2-(ヘキサデシルオキシ)アセチルクロリド化合物47.0gを得た。
【0087】
(1H NMR(CDCl3、400 MHz)δ 4.39(s、2H)、3.56(t、J = 6.6 Hz、2H)、1.64~1.57z(m、2H)、1.36~1.25(m、26H)、0.88(t、J = 6.8 Hz、3H))。
【0088】
[実施例10]
ドネペジルエーテルステアレート(DES)[2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(ヘキサデシルオキシ)アセテート]の製造
【化13】
【0089】
反応部にドネペジル遊離塩基(free base)(Jinan Chenghui-Shuangda Chemical Co.、Ltdで購入)50.9gを投入した後、THF(tetrahydrofuran)152mLおよびDMPU(1,3-dimethyl-3,4,5,6-tetrahydro-2(1H)-pyrimidinone)102mLを注入し、溶解させ、-20℃まで冷却した。反応液にNaHMDS(1.0M THF溶液)147mLを30分間注入し、-20℃で1時間攪拌した後、常温まで昇温させた。反応液を前記「実施例9-3)」にて製造した2-(ヘキサデシルオキシ)アセチルクロリド47.0gが-20℃のTHF(tetrahydrofuran)508mLに溶解された溶液に30分間注入した後、同一温度で30分間攪拌した。
【0090】
反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液509mLを注入し、セライトを投入し、濾過した後、エチルアセテート(EtOAc)500mLで洗浄し、濾過した。分液して有機層を得た後、エチルアセテート(EtOAc)500mLを用いて水相を逆抽出した。合せた有機層を5%塩化ナトリウム水溶液509mLで3回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、減圧濃縮した。濃縮液にノルマルヘキサン(n-hexane)509mLを注入し、40℃で攪拌し、再び室温まで下げ、1時間スラリー攪拌した。溶液を濾過し、得られた濾過液を減圧濃縮した。濃縮液をシリカカラムで精製した後、ノルマルヘプタン(n-heptane)1.5Lで再結晶し、ドネペジルエーテルステアレート28.7gを得た。
【0091】
(1H NMR(CDCl3、400 MHz)δ 7.32~7.21(m、5H)、6.96(s、1H)、6.59(s、1H)、4.38(s、2H)、3.87(s、3H)、3.87(s、3H)、3.64(t、J = 6.7 Hz、2H)、3.47(s、2H)、3.25(s、2H)、2.87~2.84(m、2H)、2.27(d、J = 7.1 Hz、2H)、1.91(t、J =10.9 Hz、2H)、1.71~1.63(m、4H)、1.52~1.45(m、1H)、1.41~1.25(m、28H)、0.88(t、J = 6.7 Hz、3H))。
【0092】
[実施例11]
ドネペジル組成物の製造
以下、表1の構造を有するドネペジル(D)、実施例2(DEP)、実施例4(DEM)、実施例6(DEPD)、実施例8(DEHD)および実施例10(DES)を用いて液相の組成物を製造した。
【表1】
【0093】
以下、表2の組成および含有量により前記表1の主成分、ヒマシ油(castor oil)およびベンジルベンゾエート(benzyl benzoate)を混合し、常温で0.5~3時間攪拌し、液相の組成物を製造した。
【表2】
【0094】
[実験例1]
薬物動態評価
平均300gの雄SDラット(rat)4匹に、ドネペジル(D)剤形は、ドネペジルとして4mg/kgの用量で、DEP、DEM、DEPD、DEHD、およびDES剤形は、それぞれドネペジルとして40mg/kgに相当する用量で筋肉注射し、SDラットの血漿試料中のドネペジルの濃度をLC-MS/MSを用いて解析した。
【0095】
解析の結果、DEP、DEM、DEPD、DEHDおよびDES剤形中、 DEPを投与したときの放出パターンが徐放性組成に最も好ましく、ドネペジルおよびDEPに対する結果を以下、表3および
図1および2に示した。
【表3】
【0096】
前記表3および
図1に示すように、ドネペジル(D)組成物を投与すると、 投与直後
、薬物が速く放出され、Cmaxが27.5ngh/mLと高く、副作用または毒性を誘発する可能性が高いことが確認された。また、3日以内に薬物の放出が終了し、徐放性組成物として適してないことが確認された。
【0097】
その反面、表3および
図2に示すように、実施例2(DEP)の組成物を投与すると、ドネペジルとして約10倍に相当する量を投与したにもかかわらず、投与後、急激な薬物放出なしにCmaxが7.9ngh/mLと低く、Cmaxと維持濃度間の差が少ないことが確認された。また、ドネペジル(D)組成物を投与した場合とは異なり、DEP組成物は、単回投与でも8週以上の期間にわたって有効な血中濃度を維持することが確認された。
【0098】
結局のところ、ドネペジルエーテルパルミテート(DEP)は、ドネペジルよりもより優れた放出パターンを示すことが分かる。ドネペジルパルミテート(DEP)を体内に投与すると、投与後、急激な薬物放出なしに長期間徐放性が維持可能であり、毒性反応をは
じめとする副作用のリスクを最小限に抑え、且つ、単回投与だけでも長時間にわたって有効な治療薬濃度を維持することができる優れた特性を有することが分かる。