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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】空調機、および空調設備
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/044 20060101AFI20240510BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20240510BHJP
   F24F 11/74 20180101ALI20240510BHJP
【FI】
F24F3/044
F24F7/06 B
F24F7/06 C
F24F11/74
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019123745
(22)【出願日】2019-07-02
(65)【公開番号】P2021008998
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000218915
【氏名又は名称】株式会社島津理化
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中田 収
(72)【発明者】
【氏名】大関 貴臣
(72)【発明者】
【氏名】市村 佑介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 政規
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-019439(JP,A)
【文献】特開2003-065559(JP,A)
【文献】特開2007-085626(JP,A)
【文献】特開2014-043956(JP,A)
【文献】米国特許第05598715(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/044
F24F 7/06
F24F 11/00 - 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度が調節された気体を空調対象室へ供給するための空調機と、
前記空調対象室の内部から前記空調対象室の外部へ排気される気体の流量を計測する排気量計測部と、を備え、
前記空調機は、
気体を取り込む入力部と、
気体を供給する出力部と、
前記入力部から取り込んだ気体を温度調節して前記出力部に供給する温調送風部と、
前記入力部と前記出力部との間を連通させるダクトと、
前記ダクトを通じて前記出力部から前記入力部へ向かって流れる気体の流動状態を制御する第1流量制御部と、
前記空調対象室に至る流路上に設けられ、前記出力部から前記空調対象室に供給する気体の流量を制御する第2流量制御部と、
を備え、
前記出力部から前記空調対象室に供給される気体の量が前記空調対象室から排気される気体の量に相当するように、前記第1流量制御部及び前記第2流量制御部が前記排気量計測部によって計測される気体の流量に基づいて動作するように構成されている、空調設備であって、
複数の前記空調設備が複数の空調対象室に個別に対応するように設けられ、複数の前記空調設備のそれぞれが対応する前記空調対象室を空調する、空調設備。
【請求項2】
請求項1に記載の空調設備において、
前記入力部が、外気を取り込む外気吸気部に接続されている、空調設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機、および空調設備に関する。
【背景技術】
【0002】
有害または有毒な揮発性物質を扱う空間の空調に際しては、空調の対象である空調対象室から気体を排気しつつ、外部から空調対象室に温度あるいはさらに湿度が調節された気体を供給する空調設備が用いられている。また、空調対象室から排気する気体の量に応じて、空調対象室内に供給する気体の量を変更し、空調対象室内の気圧を一定に保つ空調設備も用いられている。(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭59-205539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来においては、空調対象室から排気する気体の量が増減しても空調対象室内の気圧を一定に保つには、外部から空調対象室に温度調節された気体を供給する空調機の給気ファンの回転数等を、空調対象室の気圧に応じて適切に制御する必要があった。このため、給気ファンの回転数の調整が可能な高価な空調機を含む、高価な空調設備が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様による空調機は、気体を取り込む入力部と、気体を供給する出力部と、前記入力部から取り込んだ気体を温度調節して前記出力部に供給する温調送風部と、前記温調送風部が前記出力側に供給した気体のうちの所定の量の気体を前記入力部に移送する環気部と、を備える。
第2の態様による空調機は、第1の態様による空調機において、さらに、前記出力部から前記空調対象室に流すべき気体の量に関する情報を受信する受信部を有し、前記受信部で受信した情報に基づいて、前記出力部から前記空調対象に流す気体の流量を制御する。
第3の態様による空調設備は、第2の態様による空調機と、空調対象室から排気される気体の量を計測する排気量計測部と、前記排気量計測部が計測した気体の量に関する情報を、前記空調機の前記受信部に送信する送信部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、供給する気体の量を容易に変更可能な簡便な空調機を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態の空調機を備えた空調設備の概略構成を示す図。
図2】空調設備の変形例の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(一実施形態の空調機および空調設備)
図1は、一実施形態の空調機2を備えた空調設備1の概略構成を示す図である。破線で囲って示した空調機2は、温調送風部3を有している。温調送風部3の吸気側には、ダクト9bを介して入力部4が接続されている。温調送風部3の供給側(温調送風部3から気体が吹き出す側)には、ダクト9cを介して出力部5が接続されている。入力部4には、例えば図1に示したように、外気吸気部14およびダクト9aを介して外気が取り入れられる。
【0009】
温調送風部3は、冷却機構、加熱機構、加湿器、および送風ファンを備え、入力部4から気体を取り込み、温度および湿度を調整して出力部5に供給する。温調送風部3は、除塵フィルタを備えていても良い。温調送風部3は、一例として市販されている通常の外気処理エアコンであっても良い。
出力部5からは、温度および湿度が制御された気体が、例えば図1に示したようにダクト9d、9e、第2流量制御部10、および供給口15を介して、空調対象室30に供給される。
【0010】
一実施形態の空調機2は、所定の量の気体を出力部5から入力部4に移送する、ダクト8a、8bおよび第1流量制御部7を有している。温調送風部3が出力部5に供給した気体のうちの一部は、ダクト8a、8bおよび第1流量制御部7を通って、入力部4に移送(環気)される。以下では、ダクト8a、8bおよび第1流量制御部7を、併せてまたは個々に「環気部」6とも呼ぶ。
なお、図中に破線で示した矢印は、その近傍のダクト8a、8b、9e、9f、または温調送風部3内での気体の移動方向を示している。
【0011】
第1流量制御部7および第2流量制御部10はいずれも、一例として、ダンパ開閉型の可変風量装置(VAV:variable air volume system)を備えている。
第1流量制御部7は受信部11を備え、受信部11が受信した信号S2(制御指令)に基づいてダンパの開閉量が制御され、第1流量制御部7が出力部5から入力部4に向かって流す気体の流量が制御される。
【0012】
第2流量制御部10は受信部12を備え、受信部12が受信した信号S3(制御指令)に基づいてダンパの開閉量が制御され、第2流量制御部10が出力部5から空調対象室30に向かって流す気体の流量が制御される。
本明細書では、「気体の量」とは、例えば、大気圧下における気体の体積を言う。また、「気体の流量」とは、大気圧下において単位時間当たりに流れる気体の体積を言う。
【0013】
一実施形態の空調設備1においては、空調機2は、空調機械室31内に設置されている。空調機械室31は、床35bと、床(天井)35cと、壁36a、36aにより仕切られた空間である。一方、空調機2による空調の対象となる空間である空調対象室30は、床35aと床(天井)35bと、壁36a、36bにより仕切られた空間である。空調対象室30の天井35bは、空調機械室31の床35bである。
上述のとおり、空調機2により温調された気体は、出力部5から、ダクト9d、9e、第2流量制御部10、および供給口15を介して、空調対象室30に供給される。供給口15は、空調対象室30の天井35bに設けられた通気部である。
【0014】
空調対象室30内には、揮発性の有害物質または有毒物質を取り扱うための設備であるドラフトチャンバ20が設置されている。ドラフトチャンバ20には、流量計21を介してダクト9fが接続されており、ダクト9fの他端は、排気機械室32内に設置された排気ファン25に接続されている。排気機械室32は、床35cと、床(天井)35dと、壁36a、36aにより仕切られた空間である。
【0015】
排気ファン25により、ドラフトチャンバ20内の気体は、ダクト9fおよびダクト9gを通って、排気機械室32外の排気部26から外部に排気される。排気に際し、ドラフトチャンバ20内で扱われていた有害物質または有毒物質は、ドラフトチャンバ20内またはダクト9fの一部に設置されている吸着フィルタ等の除去装置により除去される。
【0016】
排気ファン25によりドラフトチャンバ20内の気体が排気されると、ドラフトチャンバ20が設置されている空調対象室30内の気体の量が減少し、気圧が低下してしまう。そこで、空調機2は、排気ファン25により排気された気体の量に相当する空調された気体を供給口15から空調対象室30内に供給する。
【0017】
ドラフトチャンバ20に設けられている流量計21は、排気ファン25により排気される気体の量を計測する。流量計21として、例えば差圧式、超音波式、ピトー管式等の流量計を用いることができる。流量計21により計測された排気される気体の量は、信号S5として、ドラフトチャンバ20に設けられている制御盤22に送られる。制御盤22は、信号S5に基づいて、第1流量制御部7の受信部11に送信する信号S2、および第2流量制御部10の受信部12に送信する信号S3を生成し、送信する。すなわち、制御盤22は、信号S2および信号S3を送信する送信部としても機能する。
【0018】
第2流量制御部10は、受信部12が受信した信号S3に基づいてダンパの開閉量等を制御することにより、出力部5からダクト9d、9e、および供給口15を介して空調対象室30に供給する気体の量を制御する。信号S3は、流量計21により計測された排気される気体の量(以下、「排気量」という)自体を示す信号であっても良く、排気量と等量の気体を空調対象室30に供給するために必要な第2流量制御部10内のダンパの開閉量を示す信号であっても良い。
【0019】
第1流量制御部7は、受信部11が受信した信号S2に基づいてダンパの開閉量等を制御することにより、環気部6により出力部5から入力部4に移送される気体の量を制御する。信号S2は、例えば、温調送風部3が入力部4から出力部5に送風する流量から、上記の排気量を差し引いた量を示す信号であっても良く、その差し引いた量の気体を出力部5から入力部4に移送するために必要な第1流量制御部7内のダンパの開閉量を示す信号であっても良い。
温調送風部3が入力部4から出力部5に送風する流量は、信号S2を生成する制御盤22内に、例えば固定値として記憶されていても良い。
【0020】
ドラフトチャンバ20に設けられている制御盤22は、排気ファン25に信号S4を送り、流量計21により計測された排気量が、ユーザーが設定した排気すべき量と一致するように排気ファン25を制御しても良い。
制御盤22は、排気ファン25により排気される排気量が所定値より少ない場合には、空調機2内の温調送風部3に信号S1を送り、温調送風部3を停止させても良い。
【0021】
あるいは、制御盤22は、排気ファン25により排気される気体の量に応じて、温調送風部3に信号S1を送り、温調送風部3が入力部4から出力部5に送る風量を制御しても良い。この場合には制御盤22は、この制御するべき風量を温調送風部3が入力部4から出力部5に送風する流量として、上述の信号2を生成しても良い。
【0022】
以上の一実施形態の空調機2においては、温調送風部3で温度および湿度が調整された気体のうち、空調対象室30に供給されなかった分は、排気されることなく、入力部4に移送され、再度温調送風部3に供給される。従って、一実施形態の空調機2は、温調した気体を廃棄することなく、すなわちエネルギーを無駄に消費することなく、効率良く気体の空調を行うことができる。
【0023】
上記について別の観点から見ると、出力部5の気体を入力部4に移送することにより、温調送風部3が入力部4から取り込む気体の温度および湿度を、外気よりも、温調送風部3が目標とする温度および湿度に近づけることができる。これにより、空調設備1に供給されるべき外気の温度および湿度の条件を緩和することができる。すなわち、以上の一実施形態の空調機2および空調設備1は、従来に比べ、より広い温度範囲および湿度範囲の環境条件で使用可能となる。
【0024】
以上の一実施形態においては、空調機2は空調機械室31内に、排気ファン25は排気機械室32内に、それぞれ設置されるものとした。しかし、空調機2および排気ファン25の設置場所はこれに限られるものではなく、空調機2および排気ファン25を共に空調機械室31内に設置しても良い。あるいは、空調機2または排気ファン25は、屋外に設置してもよい。
【0025】
以上の一実施形態においては、第1流量制御部7および第2流量制御部10は、ダンパ開閉型の可変風量装置を備えるものとした。しかし、第1流量制御部7および第2流量制御部10は、これに限られるものではなく、送風ファンを内蔵し、送風ファンの回転数を制御することで風量を制御する方式のものであっても良い。
【0026】
なお、空調機2から空調対象室30に供給する気体の量の制御が、第2流量制御部10による流量の制御のみで達成される場合には、第1流量制御部7を設けなくても良い。この場合、環気部6は、出力部5と入力部4とを繋ぐダクト8a、8bにより構成される。第2流量制御部10により、空調対象室30への供給の供給量が制限されると、出力部5内の気圧が上がるため、ダクト8a、8bを介して、出力部5から入力部4に気体が流れる。
なお、第1流量制御部7を設けることにより、出力部5が過度に陽圧になる等の圧力変動を防止することができる。
【0027】
また、空調対象室30側に、供給口15を介して流入する気体の量を制御する機能が備わっている場合には、空調機2は第2流量制御部10を有しなくても良い。この場合においても、空調対象室30側の制御機能により制限される流量を超える流量の気体は、環気部6により、空調機2内の出力部5から入力部4に移送される。従って、空調機2が空調対象室30に供給する気体の量は、容易に変更可能となっている。
また、空調対象室30側の制御機能により制限される流量を超える流量の気体についても、排気することなく、入力部4に移送するため、エネルギー効率の高い空調を実現することができる。
【0028】
また、第1流量制御部7および第1流量制御部10のいずれについても、厳密に流量を制御するに限らず、気体の流れに対する抵抗を増減して、気体の流動状態を変更するものであっても良い。
【0029】
以上の一実施形態においては、空調対象室30内に設置されたドラフトチャンバ20を介して、空調対象室30からの排気が行われるものとした。しかし、空調対象室30の排気は、空調対象室30自体に設置された排気口等の排気設備を介して行わる構成とすることもできる。この場合には、その排気設備が、流量計21および制御盤22を備え、上述の信号S1~S4を送信する。
また、空調対象室30は、上述のように、床、天井および壁で仕切られた空間に限られるわけではなく、密閉または半密閉された装置内の空間であっても良い。
【0030】
以上の一実施形態において、入力部4は、外気吸気部14と温調送風部3の吸気側とを繋ぐダクト9a、9bと、環気部6の一部であるダクト8bとが分岐する部分であれば、どのような形状の部分であっても良い。入力部4は、例えば、ダクト9aとダクト9bとダクト8bとが接続された分岐ボックスであっても良い。また、ダクト9aとダクト9bとダクト8bとを繋ぐ分岐継手であっても良い。
入力部4は、温調送風部3の吸気側にダクトを介さずに設けられた分岐部であっても良い。
【0031】
同様に、出力部5は、温調送風部3の供給側と第2流量制御部10とを繋ぐダクト9d、9eと、環気部6の一部であるダクト8aとが分岐する部分であれば、どのような形状の部分であっても良い。出力部5は、例えば、ダクト9dとダクト9eとダクト8aとが接続された分岐ボックスであっても良い。また、ダクト9dとダクト9eとダクト8aとを繋ぐ分岐継手であっても良い。
出力部5は、温調送風部3の供給側にダクトを介さずに設けられた分岐部であっても良い。
【0032】
(変形例の空調設備)
図2は、変形例の空調設備1aの概略構成を示す図である。変形例の空調設備1aは、多くの構成が上述の一実施形態の空調設備1と共通するので、以下では、共通する構成には同一の符号を付して、適宜、説明を省略する。
【0033】
変形例の空調設備1aにおいても、使用する空調機2の構成は、図1に示した上述の一実施形態の空調設備1と同様である。従って、図2においては、空調機2はその全体概要を示すに留め、空調機2の内部の構成の図示は省略する。
【0034】
変形例の空調設備1aでは、複数の空調対象室30a~30cのそれぞれに対して、空調機2、排気ファン25およびそれらを繋ぐダクト9e、9f等がそれぞれ設けられている点が、一実施形態の空調設備1と異なっている。
換言すれば、変形例の空調設備1aは、位置実施形態の空調設備1が複数配置されたものであるとも言える。
変形例の空調設備1aでは、それぞれ独立して運転可能な複数の空調機2が、これらの複数の空調対象室30a~30cのいずれか1つを空調する。空調対象室30a~30cおよび空調機2の数は、図示した3個に限られるものではなく、任意の個数であって良い。
【0035】
従来の複数の空調対象室を有する空調設備においては、いわゆるセントラル空調給気方式が採用されることが一般的であった。すなわち、1つに集約された空調機からダクトを介して各空調対象室に空調された気体が供給されていた。従って、従来においては、複数の空調対象室のそれぞれから排気される気体の量が変動した場合、給排気量のバランスを維持することが容易ではなかった。
【0036】
変形例の空調設備1aでは、複数の空調対象室30a~30cのそれぞれに対して、供給する気体の量を容易に変更可能な空調機2が設置される。従って、各空調対象室30a~30cから排気される気体の量が変動した場合であっても、各空調対象室30a~30cの給排気量のバランスを容易に維持することができる。
【0037】
また、変形例の空調設備1aでは、従来のセントラル空調給気方式に比べて、空調設備を構築するためのイニシャルコストを抑えることも可能である。これには、複数の空調対象室30a~30cのそれぞれを跨ぐようなダクトの設置が不要になることに加え、複数の空調対象室を1つに集約された空調機で空調する際に必要な制御プログラムの開発が不要になることによるコストダウンも含まれる。
【0038】
また、変形例の空調設備1aでは、空調設備1aのメンテナンスについても、空調対象室30a~30cのそれぞれについて独立して行うことができる。このため、空調対象室30a~30cの使用予定に合わせて各室毎にメンテナンスを行うことができ、メンテナンスのための設備管理を簡素化できるという利点がある。また、各空調対象室30a~30cの空調設備が独立しているため、例えば空調対象室30aの空調機2が故障しても、他の空調対象室30b、30cの空調を独自に行うことができるという利点もある。
【0039】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、各実施形態および変形例は、それぞれ単独で適用しても良いし、組み合わせて用いても良い。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【0040】
(態様)
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0041】
(第1項)一態様に係る空調機は、気体を取り込む入力部と、気体を供給する出力部と、前記入力部から取り込んだ気体を温度調節して前記出力部に供給する温調送風部と、前記温調送風部が前記出力部に供給した気体のうちの所定の量の気体を前記入力部に移送する環気部と、を有する。
この構成により、温調送風部3から出力部5に供給された気体のうち、出力部5から外部(空調対象室30等)に供給される気体以外の余剰の気体は、環気部6により入力部4に移送される。これにより、出力部5から外部に供給する気体の量を容易に変更可能な空調機2を簡便に実現することができる。
【0042】
(第2項)他の一態様に係る空調機は、第1項に記載の空調機において、前記環気部は、前記出力部から前記入力部に移送する気体の流動状態を制御する第1流量制御部を有する。
この構成により、出力部5から入力部4に移送する気体の量を制御することができ、出力部5から外部に供給する気体の量を正確に調整することができる。
【0043】
(第3項)他の一態様に係る空調機は、第1項または第2項に記載の空調機において、前記出力部から空調対象室に至る流路上に第2流量制御部を備える。
この構成により、出力部5から外部に供給する気体の量をより正確に調整することができる。
【0044】
(第4項)他の一態様に係る空調機は、第3項に記載の空調機において、前記第2流量制御部は、前記出力部から前記空調対象室に流すべき気体の量に関する情報を受信する受信部を有し、前記受信部で受信した情報に基づいて、前記出力部から前記空調対象室に流す気体の流量を制御する。
この構成により、供給すべき量の気体を、出力部5から外部に正確に供給することができる。
【0045】
(第5項)他の一態様に係る空調設備は、第4項に記載の空調機と、空調対象室から排気される気体の量を計測する排気量計測部と、前記排気量計測部が計測した気体の量に関する情報を、前記空調機の前記受信部に送信する送信部と、を有する。
この構成により、空調設備1が空調すべき空調対象室30に対し、空調対象室30から排気される気体の量に基づいた量の気体を供給することができる。
【0046】
(第6項)他の一態様に係る空調設備は、第5項に記載の空調設備において、前記入力部が、外気を取り込む外気吸気部に接続されている。
この構成においては、空調設備1内の空調機2の入力部4には、外気とともに、出力部5から移送された気体が供給される。出力部5から移送された気体は、既に温調送風部3により空調された気体であるので、入力部4に供給される気体の温度および湿度を、外気に比べて、温調送風部3が目標とする温度および湿度に近付けることができる。従って、空調設備1に供給されるべき外気の温度および湿度の条件を緩和することができ、すなわち、より広い範囲の環境条件で使用可能な空調設備1を実現することができる。
【0047】
(第7項)他の一態様に係る空調設備は、第5項または第6項に記載の空調設備を複数有し、複数の前記空調設備のそれぞれが、複数の空調対象室のいずれか1つを空調する。
この構成により、複数の空調すべき空調対象室30a~30cに対して、それぞれを独立して空調することが可能となる。
【符号の説明】
【0048】
1,1a…空調設備、2…空調機、3…温調送風部、4…入力部、5…出力部、6…環気部、7…第1流量制御部、8a~8b,9a~9g…ダクト、10…第2流量制御部、11,12…受信部、14…外気吸気部、15…供給口、20…ドラフトチャンバ、21…流量計、22…制御盤、25…排気ファン、26…排気部、30、30a~30c…空調対象室、31、31a~31c…空調機械室、32、32a~32c…排気機械室、35a~35d…床(天井)、36a~36d…壁
図1
図2