(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】治療器
(51)【国際特許分類】
A61F 7/03 20060101AFI20240510BHJP
A61N 1/36 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
A61F7/08 331
A61N1/36
(21)【出願番号】P 2019138693
(22)【出願日】2019-07-29
【審査請求日】2022-07-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・令和1年7月1日の販売開始をもって、新規性喪失とする ・令和1年7月1日のウェブサイト掲載をもって、新規性喪失とする
(73)【特許権者】
【識別番号】591032518
【氏名又は名称】伊藤超短波株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】中村 竜也
(72)【発明者】
【氏名】村岡 遼
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-305580(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1395000(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/03
A61N 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温熱治療および電位治療を行う治療子と、
治療に関する第1の指示や、治療に先立って治療子の温度を上昇させるプレヒートに関する第2の指示を受け付ける入力手段と、前記第2の指示を受け付けた後、プレヒートの動作時間である第1の時間の経過前に、前記第1の指示に基づいて治療の動作時間である第2の時間の計測を開始する制御手段と、を有する本体部と、を備え
、前記制御手段は計測されたプレヒート時間と前記第2の時間の合計が所定の最大時間である第3の時間を超えないように前記第2の時間を制御する治療器。
【請求項2】
前記制御手段はタイマーを有し、前記第1の時間の経過前に、前記第1の指示を前記入力手段が受け付けた場合に、前記タイマーはリセットされ、前記第2の時間の計測を開始する請求項1に記載の治療器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温熱治療器、または電位治療器や低周波治療器他の機能を有する温熱治療器などの治療器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
温熱治療器は、電気式マットのヒーター線に電力が供給されることによって、使用者の身体を暖め、疲労回復や血行を促進するといった温熱効果を与える温熱治療を行う治療器であり、例えば温熱電位治療器は温熱治療器と、電極間、又は電極とアースの間に高電圧をかけて電界を発生させ、その電界内に使用者の身体を置くことで、頭痛や肩こりの緩解といった効果が得られる電位治療器を組み合わせた治療器である。
【0003】
このような温熱治療器と電位治療器を組み合わせた治療器では、一般的な構成として、特許文献1に開示されているように、温熱治療用の発熱体と電位治療用の電床を両方内装したマットと、温熱治療および電位治療またはその組み合わせ治療を制御するコントローラーからなる。
【0004】
温熱治療器との組み合わせ治療器は他には例えば、低周波治療器との組み合わせがあり、この場合は、治療用低周波信号を人体に供給するパッドにヒーターを備え、低周波治療と共に温熱治療を行う治療器が特許文献2に開示されている。
【0005】
このような組み合わせ治療器では、使用者の操作によって各々の治療手段について、出力、治療器の使用時間または治療する時間である治療時間等が設定されて使用される。例えば温熱治療、電位治療、低周波の出力や治療時間の設定等である。また、特許文献2に開示されているように、使用者が治療を開始する前にあらかじめ温熱機能によってパッドを暖める、いわゆるプレヒートを行うことによって、使用者が冷たさを感じず、快適に治療器を利用でき、さらに治療効果を向上させるのに効果的な機能をもたせている。温熱電位治療器においても、使用者が治療開始前のマットに入る前にあらかじめプレヒートでマットを暖めておく機能により、治療効果向上が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-344号公報
【文献】特開2004-305580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特に冬季など、治療器の治療子が冷えて低温になっていた場合に冷えた治療子を使用しての治療には使用者は抵抗があり、治療器の使用を遠ざける要因であった。冷えた治療子を温める場合、特に温熱治療が可能な治療器においては事前に温熱の出力を行って治療子を適度に温める操作が必要である。この操作は出力の選択やレベルの選択などの治療時と同等の複雑な操作が必要であり、この複雑な操作も治療を遠ざける要因となっていた。
【0008】
冷えた治療子を事前に温めるプレヒートが採用されている場合では、プレヒート中に治療を開始することができず、プレヒートが終了するのを待って治療器を操作して治療を開始しなければならず、時間を効率的に使用できず治療効率が低下するだけでなく、治療開始が長引いて面倒くささから治療器の使用を遠ざけるさらなる要因ともなっていた。
【0009】
前記の温熱治療器の規格である家庭用熱療法治療器規格(JIS T 2008:2018)では、タイマーの定格時間は8時間以下とされている。したがって、温熱電位治療器において前記プレヒート機能を使用する場合、プレヒート終了後に8時間以内の治療を実施しなければならないが、使用者によってはプレヒート中にマットを使用して実質的に治療を開始する場合がある。
【0010】
また、組合せ家庭用医療機器規格(JIS T 2009:2018)においては、組合せとなる複数の機能を構成する部分の出力を同時に発生してはならないという規格があり、こちらの規格に対しても考慮が必要である。
【0011】
プレヒート中に治療の操作を行うことで、プレヒートの時間経過後に当該治療を自動的に開始させるような構成も考えられるが、前記のようにプレヒート中に使用者が治療器の使用を開始した場合はプレヒート中の使用時間と治療時間の総和によって使用者が治療を継続することとなり、結果的に規格上の治療時間の上限をオーバーする問題もあり、最悪の場合は治療効率がかえって低下する問題も発生しうる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記課題を解決するために、プレヒート時間と治療時間を分ける、すなわち、プレヒートを強制的に終了してから治療開始するという処理にすることで前記規格を満足する温熱電位治療器を実現するとともに効率的な治療を行える治療器を実現できる。より具体的には、(1)本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を講じている。温熱治療および電位治療を行う治療子と、治療に関する第1の指示や、治療に先立って治療子の温度を上昇させるプレヒートに関する第2の指示を受け付ける入力手段と、前記第2の指示を受け付けた後、プレヒートの動作時間である第1の時間の経過前に、前記第1の指示に基づいて治療の動作時間である第2の時間の計測を開始する制御手段と、を有する本体部を備え、前記制御手段は計測されたプレヒート時間と前記第2の時間の合計が所定の最大時間である第3の時間を超えないように前記第2の時間を制御する。
【0013】
これにより、使用者は冷えた治療子を事前に温めるプレヒートを効率的に使用でき、時間を効率的に使用でき、治療効率を向上させることができる。
【0014】
(2)さらに、別の実施例として、前記の構成に加え、前記制御手段はタイマーを有し、前記第1の時間の経過前に、前記第1の指示を前記入力手段が受け付けた場合に、前記タイマーはリセットされ、前記第2の時間の計測を開始する機能を備える。
【0015】
これにより、プレヒート中であっても治療開始の操作がされた場合に、即座に治療開始ができるので時間を効率的に使用でき、治療効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、電位治療および温熱治療を行う治療器にプレヒート機能を備えた治療器において、プレヒート機能の時間を考慮した操作体系あるいは治療時間の制御により、規格上の制限を満足しかつ効果的で効率的な治療を行うという効果を得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の本体部および治療子で構成される治療器を説明する説明図である。(コントローラー+電床マット)
【
図2】本発明の治療器の本体部を説明する説明図である。
【
図3】本発明の治療器の本体部の制御部の第1の実施例の動作を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の治療器の本体部の制御部の第2の実施例の動作を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の本体部および治療子で構成される治療器において治療子にセンサーを備えた第3の実施例の構成の説明図である。
【
図6】本発明の治療器の本体部の制御部の第3の実施例の動作を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の温熱治療と電位治療の交互モードの動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態においては治療器として、電位治療器と温熱治療器の組み合わせである温熱電位治療器を例に挙げて説明するが、温熱治療器との組み合わせは電位治療器であっても、低周波治療器であっても、負電荷治療器やその他の治療器との組み合わせで使用する治療器であってもよい。
【0019】
図1は本体部11、治療子12、および電床コード13で構成される本発明による治療器1のブロック図である。本体部11はいわゆるコントローラーであり、治療子12を用いた温熱治療、電位治療の設定を行う。治療子12は温熱治療および電位治療機能を備えた電床マットであり、電床コード13と接続するためのプラグ131を備え、電床コード13を通じて本体部11と接続される。本体部11には温熱治療を行うために治療子12の電熱線121に電流を供給する温熱回路部111、電位治療を行うために治療子12の電位線122に電位を与える電位回路部112、温熱治療、電位治療の各動作を操作部114で入力された値に従って制御するための制御手段である制御部113、温熱治療、電位治療の各レベルや治療時間、動作モードの入力手段である操作部114、操作部114で入力された値に従って温熱、電位の治療レベル、治療時間、動作モード等を表示し使用者に知らしめる表示部115からなる。この他に本体部11には各部に電力供給するための電源部116を備え、電源コードを通じて商用電源と接続されるが、本発明の本質的な部分ではないので説明を省略する。治療子12は温熱治療を行うための電熱線121、電位治療を行うための電位線122を備え、電床コード13を通じて本体部11の対応する回路部である、温熱回路部111、電位回路部112と接続され、各エネルギーの供給を受けて治療動作を行う。
【0020】
図2は本発明による本体部11の外観6面図である。
図2の本体部11は温熱治療と電位治療を行えるように、電源スイッチ1161、治療モード選択スイッチ1141、電位治療の電位出力レベル選択スイッチ1142、温熱治療の温熱出力レベル選択スイッチ1143、タイマースイッチ1144、治療を開始するスタートスイッチ1145、治療前にあらかじめ治療子12を暖めておくためのプレヒートを行うプレヒートスイッチ1146、治療モード表示部1151、温熱レベル表示部1152、電位レベル表示部1153、タイマー表示部1154を備える。さらに電床コード13が本体部11から直接延伸し、プラグ131を通じて治療子12と接続する。
【0021】
本体部11から延伸する電床コード13のプラグ131を通じて本体部11と治療子12を接続する。
図2の電源スイッチ1161をオンにすると、本体部11が起動し、再度押すとすべての出力が停止され、本体部11は電源オフとなる。すなわち電源スイッチ1161は緊急停止ボタンとしても機能する。
【0022】
治療モード選択スイッチ1141は、温熱治療を行うための出力(以下、「温熱出力」という)のみを行う温熱モード、電位治療を行うための出力(以下、「電位出力」という)のみを行う電位モード、温熱出力と電位出力を交互に行う交互モードのいずれかを選択する。なお交互モードの場合、温熱出力を一定時間継続した後は、組合せ家庭用医療機器の規格上の要求条件(JIS T 2009:2018)に従って温熱出力と電位出力を交互に繰り返す動作となり同時に両出力が使用者に出力されることはない。
【0023】
電位治療の電位出力レベル選択スイッチ1142は例えば、押すたびに低、中、高、が切り替わる3段階の設定でもよいし、プラスボタン、マイナスボタンによる増減でレベル設定する設定でもよいし、数値で直接レベルを設定できる形式でもよい。同様に温熱出力レベル選択スイッチ1143も、低、中、高という3段階を切り替える設定でもよいし、プラスボタン、マイナスボタンによる増減でレベル設定する設定でもよいし、数値で直接レベルを設定できる形式でもよい。
【0024】
タイマースイッチ1144で治療時間を設定する。時間設定はボタンを押すたびに切り替わる設定でもよいし、数値で直接設定する形式でもよい。スタートスイッチ1145を押すと温熱出力又は電位出力が供給されて治療が開始されると同時にタイマーによる治療時間の計測が開始される。治療中に、再度治療モード選択スイッチ1141を押すと、タイマーが一時的に停止するとともに出力が停止し、温熱モードや電位モードなど治療モードを変更できる。スタートスイッチ1145を押すことでタイマーによる時間の計測と治療が再開される。またタイマーが満了しても出力は停止される。家庭用熱療法治療器の規格上の要求条件(JIS T 2008:2018)、家庭用電気治療器の規格上の要求条件(JIS T 2003:2018)に基づき、温熱モード、電位モード各々タイマーは最大8時間までの設定である。交互モードの場合も温熱、電位各々合計で各規格を超えない時間配分としており、例えば全体で最大12時間としている。このように途中で治療モードが変更された場合において、上記ではタイマーは一時的に停止したがこれに限定されず、時間の計測を続けてもよい。治療時間は上記のように数時間単位であって非常に長い一方で治療モードを選択する時間はせいぜい数分程度で無視できる。タイマーの一時停止機能が不要となってタイマーの装置や制御の簡略化やコストダウンができる。あるいはタイマーはモード変更に基づいてリセットされて治療時間をゼロから計測してもよい。途中で治療モードを誤って設定した場合など、正しい治療モードでの治療を確実に行うためにはタイマーはリセットできる方がよい。
【0025】
プレヒートスイッチ1146を押すと、あらかじめ定められた固定時間の温熱出力を行う。固定時間は治療子12を十分に暖める時間(第1の時間またはプレヒート時間と称する)、例えば1時間が設定される。第1の時間は例えば30分であってもこれ以外の時間であってもよい。このように治療子12を事前に一定の時間で温めるために使用するモードをプレヒートと称する。このとき温熱レベルの指定がなければ、あらかじめ定めた値、例えば最大出力や最大出力の50%の出力で出力される。温熱レベルの変更は可能であってもよい。通常プレヒートは所定のプレヒート時間である第1の時間にわたって継続され、プレヒート時間経過後にプレヒートは終了する。プレヒート終了後に使用者は治療モード選択スイッチ1141で各モードを選択し、温熱出力レベル選択スイッチ1143によるレベル選択、およびタイマースイッチ1144で治療時間を選択し、スタートスイッチ1145を押すことにより、治療を開始する。すなわち、プレヒート使用時はプレヒートの時間が経過するまで使用者は待たなければならずプレヒートの途中でプレヒートを中断して直ちに治療を開始することができなかった。あるいは、再度プレヒートスイッチ1146を押すことによってプレヒートを停止させ、その後に治療を開始しなければならなかった。そこで本発明においては、プレヒート中であっても治療開始を指示する第1の指示によってプレヒートを中止して、使用者は第1の時間の経過を待たずして治療を開始することができる。具体的には、第1の時間を計測の途中で治療モード選択スイッチ1141、温熱出力レベル選択スイッチ1143、タイマースイッチ1144、電位出力レベル選択スイッチ1142、またはプレヒートスイッチ1146を押すとプレヒート時間の計測とプレヒートは停止する。その後、治療モード選択スイッチ1141で各モードを選択し、温熱出力レベル選択スイッチ1143や電位出力レベル選択スイッチ1142によるレベル選択、およびタイマースイッチ1144で治療時間を選択し、スタートスイッチ1145を押すことにより、治療とタイマーによる治療時間(第2の時間)の計測が開始される。本実施例として治療モード選択スイッチ1141他のスイッチ操作など、治療に関する操作によりタイマーとプレヒートが停止される構成を示している。このように治療に関する操作によって少なくともプレヒートが停止する制御が次の理由により好適である。例えばタイマーは停止するがプレヒートは継続される場合では、治療に関する操作がされた後に使用者が操作を中断した場合やスタートスイッチ1145を押し忘れた場合など、タイマーは停止しているにも関わらずプレヒートは継続されることとなり、使用者の負担や治療子12の劣化や破損、あるいは火災等を考慮すると望ましくない。逆に少なくともプレヒートが停止される制御ではこのような問題は発生しない。本実施例では治療モード選択スイッチ1141他のスイッチを操作するとタイマーやプレヒートが停止する構成であったがこれに限定されず、これらのスイッチ操作ではタイマーやプレヒートは中断されず、或いはプレヒートのみが中断されてタイマーはプレヒート時間の計測を継続し、スタートスイッチ1145を操作することによってプレヒート時間の経過前であってもタイマーが治療時間の計測を開始するような構成でもよい。この場合はプレヒートもスタートスイッチ1145の操作によって停止する構成が望ましい。尚、タイマー満了もしくは、治療モード選択スイッチ1141を押すことで出力が停止する。また、治療中のプレヒートスイッチ1146は無効である。
【0026】
別の実施例(2)について説明する。本実施例ではプレヒートスイッチ1146を押してからのプレヒート動作は同様となり、タイマー満了、もしくは治療モード選択スイッチ1141またはプレヒートスイッチ1146を押したことによるプレヒート終了後、必要に応じてタイマースイッチ1144で治療時間を選択、治療モード選択スイッチ1141で温熱モードを選択して、スタートスイッチ1145を押して治療開始した場合、プレヒート満了時間あるいは計測されたプレヒート時間とタイマースイッチ設定時間の和を計算し、規格上の最大時間8時間を超える場合には、8時間からプレヒート満了時間あるいは計測されたプレヒート時間を除いた時間が実際の治療時間としてタイマーに設定される。プレヒート中に使用者が治療器1の使用を開始する、即ちプレヒート時間経過前に使用者が治療器1の使用を開始する場合があり、この場合は最大でプレヒート時間と治療時間の合計において使用者が治療器1を使用して、第2の時間の設定によっては規格上の最大時間である8時間を超える場合があり望ましくない。すなわちプレヒート時間と治療時間の合計が所定の最大時間、例えば本実施例のように8時間を超えないように制御するのが望ましい。プレヒートが使用されて治療時間として8時間が設定されて場合は、設定された治療時間を変更する制御、例えば治療時間からプレヒート時間を差し引いた時間を設定できるように構成が望ましい。仮にプレヒート時間が1時間の場合は治療時間として使用者によって8時間が選択された場合であっても治療時間は7時間に自動的に変更して設定され、プレヒート時間が30分の場合は治療時間を7時間半に変更して設定する制御ができる。または同様な制御として、プレヒート時間を考慮して治療時間として所定の最大時間である8時間からプレヒート時間を差し引いた時間以上に設定できないような構成、或いは所定の最大時間である8時間からプレヒート時間を差し引いた時間以下の時間のみが選択できる構成でもよい。例えばプレヒートが1時間で、所定の最大時間が8時間である場合は、治療時間として7時間以上を、プレヒートが30分の場合は治療時間として7時間半を超えて設定できないような構成、即ち、それぞれ7時間以内、または7時間半以内の治療時間のみ選択できる構成でもよい。あるいは、プレヒートの使用の有無によらず、プレヒートが使用できる治療器においては、治療時間として設定できる最長の時間(例えば8時間)から、プレヒート時間(例えば1時間)を差し引いた時間を選択できる構成や、治療時間として設定できる最長の時間(例えば8時間)を設定できなくするような構成でもよい。治療開始後は同様にタイマー満了もしくは、治療モード選択スイッチ1141を押すことで治療モードは終了する。交互モードが治療モード選択スイッチ1141で選択された場合にも、同様の処理としてよい。
【0027】
別の実施例(3)について説明する。本実施例では治療子12にセンサーを設けてプレヒート中に使用者が治療子12を利用して治療開始したかどうかを検知する機構を備え、プレヒート中に利用開始の検知があった場合、その時点から自動的に治療動作を開始する。すなわち、あらかじめ治療モード選択スイッチ1141によるモード選択と、タイマースイッチ1144によるタイマー時間設定を行っておき、プレヒートスイッチ1146の押し下げでプレヒート動作を開始する。センサーによって利用開始の感知(後述の温度センサーによる温度低下等)があると、スタートスイッチ1145による自発的な治療開始動作がなくてもスタートスイッチ1145を押した場合と同様の治療動作に移行するものとする。この場合、明確にプレヒートと治療時間を区別できるため、温熱治療において治療時間のタイマー値を最大の8時間に設定した場合、あるいは交互モードで最大の12時間に設定した場合もそのままで規格上も問題なく十分な治療時間を確保できる。
【0028】
図3は実施例1の場合の治療器1の動作を説明するフローチャートである。治療器1の電源をONにした後、プレヒートスイッチ1146の操作を判定する(S301)。プレヒートスイッチ1146が押し下げされた場合は固定時間の温熱出力を行い(S302)、プレヒート時間の計測を開始する(S303)。プレヒート時間が満了する(S306)か、あるいは途中で治療モード選択スイッチ1141(S305)、またはプレヒートスイッチ1146(S304)が押された場合は、プレヒートを終了する(S307)。次に治療を開始する場合には、治療動作モードの選択(S311)および治療パラメータの選択(S312)として、治療モード選択スイッチ1141押下げによる選択、温熱出力レベル選択スイッチ1143、電位出力レベル選択スイッチ1142によるレベル設定選択、タイマースイッチ1144による治療時間選択が行われ、スタートスイッチ1145押下げがあったことを判定する(S313)と、モード選択に基づく、温熱治療、電位治療、交互モードの各動作モードで出力が開始され(S314)、治療時間の計測を開始する(S315)。治療時間が満了する(S317)か、もしくは治療モード選択スイッチ1141を押下げ(S316)することで治療器1の出力は停止し治療は終了となる(S318)。プレヒートと治療を明確に区別する操作体系とすることでプレヒートを実施する場合でも、プレヒートが確実に終了してから、治療を開始する動作となることを実現し、温熱治療の治療時間の最大規格を超えないようにしている。
【0029】
図4は実施例2の場合の治療器1の動作を説明するフローチャートである。治療器1の電源がONになった後、プレヒートスイッチ1146の操作を判定する(S401)。プレヒートスイッチ1146が押し下げされた場合は固定時間の温熱出力を行い(S402)、プレヒート時間の計測を開始する(S403)。プレヒート時間が満了する(S406)か、途中で治療モード選択スイッチ1141の操作判定(S405)、またはプレヒートスイッチ1146の操作判定(S404)で該スイッチが押された判定があった場合は、プレヒートを終了する(S408)。ここで、制御部113はプレヒート出力時間を計測開始してから、プレヒート出力終了したところまでの計測された出力時間を保持しておく(S407)。再びプレヒートスイッチ1146を押下げしてプレヒートを開始した場合も、前回以前の出力時間保持値に今回の出力時間を加えて合計値を保持する。保持しているプレヒート時間をリセットする場合は電源をOFFにする。または別途リセットボタン設けてもよい。次に治療を開始する場合には、治療モード選択スイッチ1141で治療モードを選択(S411)および治療パラメータの選択(S412)として、温熱出力レベル選択スイッチ1143、電位出力レベル選択スイッチ1142によるレベル設定選択、タイマースイッチ1144による治療時間選択が行われ、スタートスイッチ1145押下げがあったことを判定する(S413)と、選択した治療モードを判定(S414)し、温熱モードまたは後述の交互モードの場合には、計測・保持(S407)したプレヒート出力時間とタイマー設定値を加算し、合計時間の判定処理(S415)を行う。合計8時間を超える場合には、8時間から計測・保持したプレヒート出力時間を除いた時間を実際の温熱治療のタイマー時間として設定(S416)、治療開始する(S417)。合計8時間を超えない場合には設定されたタイマー値をそのまま温熱治療のタイマー時間として設定、治療開始する(S417)。一方、治療モード選択スイッチ1141で電位モードを選択した場合は、温熱治療の規格を考慮する必要はないので、タイマースイッチ1144で設定したタイマー値をそのまま設定、治療開始する(S417)。交互モードを選択した場合は、温熱と電位の治療時間の各々合計値を計算し、計測・保持したプレヒート出力時間と交互モードの温熱治療時間分の合計値で判定処理(S415)を行う。合計値が8時間を超える場合には、同様に8時間から計測・保持したプレヒート出力時間を除いた時間を温熱治療時間として、それを交互モードの時間に換算してタイマー値として設定(S416)、治療開始する(S417)。8時間を超えない場合には、設定されたタイマー値をそのまま交互モードのタイマー値として設定、治療開始する(S417)。その後は実施例1同様に治療出力開始から治療時間の計測を開始する(S418)。タイマー満了判定(S420)、もしくは治療モード選択スイッチを押下げ(S419)で治療は終了する(S421)。以上の処理によってプレヒート時間から使用者が治療子12の電床マットを使用してしまい、実質的な治療開始となる場合においても、治療時間の最大規格を満足するような動作を実現可能となる。また、自動で治療時間のタイマー設定が内部処理されることで使用者が治療時間を手動で設定しなおす必要はないことも利点となる。
【0030】
図5は実施例3の場合の本体部11、治療子12からなる治療器1である。
図5の治療子12では、
図1で示す治療子12の構成に加え、使用者が治療子12を利用して治療開始したことを検知できるようにセンサー123を備えている。センサー123が検知した情報は電床コード13を経由して本体部11の制御部113に送られる。使用者が治療を開始したことを検知する現象として例えば温度とした場合、センサー123は温度センサーが採用される。治療器1のプレヒート期間中に使用者が利用開始したとすると人体が治療子12である電床マットに接触することで、プレヒートによって暖められた電床マットから使用者の人体に熱が移動し、結果として電床マットの温度が下がることになる。従ってセンサー123として温度センサーを治療子12である電床マットに実装して温度を制御部113にてモニタすることで、治療子12を利用開始した時間を比較的容易に知ることができる、以上は、使用者が治療器1の利用開始の検知として温度を対象とした例であるが、例えば電床マットを利用したことについては圧力や使用者の位置で判断してもよいし、その場合は圧力センサーや超音波センサーがセンサー123として採用される。さらにそれ以外の他の検知対象とそれを知覚するセンサーであってもよい。
【0031】
図6は実施例3の場合の治療器1の動作を説明するフローチャートである。治療器1の電源をONにした後、プレヒートスイッチ1146の操作を判定する(S501)。プレヒートスイッチ1146をONにする前に、治療モード選択スイッチ1141で各モードを選択(S512)、および温熱出力レベル選択スイッチ1143、電位出力レベル選択スイッチ1142によるレベル設定選択、タイマースイッチ1144による治療時間選択といった治療パラメータの選択(S513)をしておく。その後プレヒートスイッチ1146の操作判定(S501)において、プレヒートスイッチ1146が押し下げされた場合は、センサモニタを開始し(S502)、固定時間の温熱出力を行い(S503)、プレヒート時間の計測を開始する(S504)。プレヒート時間が満了する(S509)か、途中で治療モード選択スイッチ1141の操作判定(S508)、またはプレヒートスイッチ1146の操作判定(S507)でこれらのスイッチが押された判定があった場合は、センサモニタを終了し(S510)、プレヒートを終了する(S511)。実施例3ではプレヒート期間中、治療モードおよび治療パラメータの設定判定(S505)を行い、設定されている場合は、治療子12(電床マット)のセンサー123から得られるセンサモニタの結果をもとに使用者が利用し始めたかどうかを制御部113にて判定する(S506)。例えば温度センサーを使用する場合、プレヒート開始すると治療子12の温度上昇過程がモニタされるが、使用者が治療子12を利用始めるとその時点で治療子12から使用者人体に熱移動があるため、一時的に温度が下がる或いは温度の上昇率が変化することが観測される。それを利用開始と判断して、モニタ動作を終了(S520)し、先に設定された治療モードと温度設定で、スタートスイッチ1145を押さずとも自動で治療動作(S515)に移行する。その後は実施例1、2同様に治療時間計測を開始(S516)、タイマー満了(S518)するもしくは治療モード選択スイッチ1141を押下げ(S517)することで治療器1の出力は停止し治療は終了(S519)となる。このように使用者の利用開始を検知し、自動でプレヒートから治療モードに移行することで、治療時間の最大規格を満足すること及び、簡便な治療操作を達成している。なお、プレヒート開始前の治療モードと温度設定、タイマー設定がない場合は、前回治療動作時に選択されていればその値を利用し、それがない場合は治療動作への自動以降は行わず(S505 NO判定)、通常のプレヒート動作を行う。
【0032】
実施例1、2、3に温熱治療と電位治療の交互モード実施時について説明する。交互モードでは温熱出力と電位出力がそれぞれ自動的に切り替えられて交互に出力される。交互モード時には温熱モードと電位モードの時間配分およびタイマー設定最大時間として温熱治療時間の総計が規格の8時間を超えないようにしておく。
図7は交互モードの例で、最大タイマー時間を12時間とし、出力開始から2時間は温熱出力のみ行い、その後、電位出力を4分、温熱出力6分を交互に出力する。なお、電位出力と温熱出力の間は、休止期間を設けている。休止期間は例えば2秒とする。これは組合せ家庭用医療機器規格(JIS T 2009:2018)で規定されているように複数の機能構成の出力を同時にしてはならないという規格を満足するためである。このようにすると、交互モード時には治療時に最大タイマー設定時でも温熱モードの合計時間としては8時間を超えることはない。実施例1との組み合わせでは操作手順でプレヒート時間と治療時間を区別しているため特に問題は生じない。実施例2では、プレヒート時間を含めたタイマー時間の修正処理について、温熱出力時間の総計分を考慮した処理とすればよい。あるいは、プレヒート実施時は、最初の温熱時間2時間をスキップし、電位、温熱治療の繰り返しから始めるとしてもよい。実施例3ではプレヒート時間から治療開始をセンサーによって自動検知するため問題なく、いずれの手段との組み合わせにおいても規格上問題ない動作を簡単な操作手段で実現できる。
【0033】
上記では交互モードについて説明したが、プレヒートを使用した場合とプレヒートを使用しない場合でそれぞれ異なる交互モードを使用するような構成でもよい。例えばプレヒートを使用しない場合は第1の交互モードが使用されるが、プレヒートを使用した場合は第2の交互モードが使用されるような制御でもよい。第1の交互モードとして
図7のような制御が使用された場合の第2の交互モードとしては、上記のごとく、治療開始直後の出力である最初の出力を電位出力とする交互モードや、最初の出力である温熱出力の時間を短縮した制御が望ましい。プレヒート使用時でも
図7のような第1の交互モードが使用された場合はプレヒートによって十分に治療子12が温まっているにも関わらずさらに2時間の温熱出力がされるので効果的な交互モードでの治療が得られない。そこで、本発明では第2の交互モードの最初の出力を電位出力とする、または第2の交互モードの最初の出力が温熱出力の場合は当該最初の出力である温熱出力の継続時間を第1の交互モードにおける最初の出力である温熱出力の継続時間より短くする制御としている。あるいは、プレヒート機能を有する治療器における交互モードでは最初の出力が電位出力である構成でもよく、特に電位治療の効果を効率よく得ることができ治療効率の向上につながる。
【0034】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な組み合わせ等で構成することが可能である。
また、本発明は、前記課題を解決するために、プレヒート時間と治療時間を分ける、すなわち、プレヒートを強制的に終了してから治療開始するという処理にすることで前記規格を満足する温熱電位治療器を実現するとともに効率的な治療を行える治療器を実現できる。より具体的には、(1)本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を講じている。温熱治療および電位治療を行う治療子と、治療に関する第1の指示や、治療に先立って治療子の温度を上昇させるプレヒートに関する第2の指示を受け付ける入力手段と、前記第2の指示を受け付けた後、プレヒートの動作時間である第1の時間の経過前に、前記第1の指示に基づいて治療の動作時間である第2の時間の計測を開始する制御手段と、を有する本体部を備える。
【符号の説明】
【0035】
1 治療器
11 本体部
111 温熱回路部
112 電位回路部
113 制御部
114 操作部
115 表示部
116 電源部
12 治療子
121 電熱線
122 電位線
123 センサー
13 電床コード
1161 電源スイッチ
1141 治療モード選択スイッチ
1142 電位出力レベル選択スイッチ
1143 温熱出力レベル選択スイッチ
1144 タイマースイッチ
1145 スタートスイッチ
1146 プレヒートスイッチ
1151 治療モード表示部
1152 温熱レベル表示部
1153 電位レベル表示部
1154 タイマー表示部
131 プラグ
S301、S304、S401、S404、S501、S507 プレヒートスイッチ判定処理
S302、S402、S503 プレヒート出力
S303、S403、S504 プレヒートタイマ開始処理
S305、S316、S405、S419、S508、S517 治療モード選択スイッチ判定処理
S306、S406、S509 プレヒートタイマ満了判定処理
S307、S408、S511 プレヒート出力終了処理
S311、S411、S512 治療モード選択処理
S312、S412、S513 治療パラメータ選択処理
S313、S413、S514 スタートスイッチ判定処理
S314、S417、S515 治療出力
S315、S418、S516 治療時間計測開始処理
S317、S420、S518 治療タイマ満了判定処理
S318、S421、S519 治療出力終了処理
S407 プレヒート時間計測合計値処理
S414 治療モード選択判定処理
S415 治療時間判定処理
S416 治療時間補正処理
S502 センサモニタ開始処理
S505 治療モード・治療パラメータ設定判定処理
S506 ユーザー利用開始判定処理
S510、S520 センサモニタ終了処理