(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】リチウム硫黄電池、および、リチウム硫黄電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20240510BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240510BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240510BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20240510BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240510BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240510BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20240510BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240510BHJP
H01M 10/0565 20100101ALN20240510BHJP
H01M 4/36 20060101ALN20240510BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M10/0568
H01M4/38 Z
H01M4/58
H01M10/0585
H01M4/139
H01M10/0565
H01M4/36 A
(21)【出願番号】P 2021502318
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2020007760
(87)【国際公開番号】W WO2020175555
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2019034605
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業(先端的低炭素化技術開発(ALCA))、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 正義
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 彩
(72)【発明者】
【氏名】玉手 亮多
(72)【発明者】
【氏名】上野 和英
(72)【発明者】
【氏名】獨古 薫
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-168435(JP,A)
【文献】特開2012-109223(JP,A)
【文献】特開2014-041811(JP,A)
【文献】特開2016-122657(JP,A)
【文献】特表2015-506899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/052-10/0587
H01M 4/13-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄系正極活物質と、炭素粒子と、リチウム塩および正極溶媒を含む正極電解液と、を有する複合正極と、
負極活物質を有する負極と、
前記複合正極と前記負極との間に配設されている、リチウム塩および電池溶媒を含む電池電解液を有するスペーサと、を具備し、
前記複合正極に含まれる硫黄の質量Sに対する、前記複合正極に含まれる前記正極電解液の容量Eの比である、E/Sが、7μL/mg以下であることを特徴とするリチウム硫黄電池。
【請求項2】
前記正極電解液および前記電池電解液が、グライム系溶媒和イオン液体、または、スルホニル基含有化合物系濃厚電解液であり、
前記スルホニル基含有化合物系濃厚電解液は、リチウム塩1モルに対する正極溶媒の量が、1.3モル以上5モル以下であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム硫黄電池。
【請求項3】
前記複合正極が、ポリマーを更に有する自立性のある正極シートであり、
前記正極シートの破断伸度が5%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリチウム硫黄電池。
【請求項4】
前記スペーサが、高分子ゲル電解質からなる自立性のあるスペーサシートであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のリチウム硫黄電池。
【請求項5】
前記硫黄系正極活物質が、単体硫黄、多硫化リチウムまたは硫化リチウムの少なくともいずれであり、
前記炭素粒子が、多孔質グラファイトまたはアスペクト比500以上のカーボンナノチューブの少なくともいずれかであり、
前記ポリマーが、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体であり、
前記正極シートが、前記炭素粒子を、1質量%以上20質量%以下含み、前記ポリマーを、5質量%以上30質量%以下含むことを特徴とする請求項3に記載のリチウム硫黄電池。
【請求項6】
前記炭素粒子が、前記カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項5に記載のリチウム硫黄電池。
【請求項7】
前記炭素粒子が、前記多孔質グラファイトおよび前記カーボンナノチューブであり、
前記正極シートが、前記カーボンナノチューブを、1質量%以上含むことを特徴とする請求項5に記載のリチウム硫黄電池。
【請求項8】
前記正極電解液のリチウム塩の濃度が、前記電池電解液のリチウム塩の濃度よりも高いことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のリチウム硫黄電池。
【請求項9】
前記E/Sが、0.1μL/mg以上5μL/mg以下であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のリチウム硫黄電池。
【請求項10】
硫黄系正極活物質と、炭素粒子と、リチウム塩および正極溶媒とを含む正極電解液と、分散溶媒と、ポリマーと、を含む正極スラリーを作製する工程と、
前記正極スラリーの前記分散溶媒を蒸発することによって、自立性のある正極シートを作製する工程と、
前記正極シートと、電池電解液を含むスペーサと、負極活物質を含む負極と、を積層することによって、積層シートを作製する工程と、を具備することを特徴とするリチウム硫黄電池の製造方法。
【請求項11】
前記正極電解液および前記電池電解液が、グライム系溶媒和イオン液体、または、スルホニル基含有化合物系濃厚電解液であり、
前記スルホニル基含有化合物系濃厚電解液は、リチウム塩1モルに対する正極溶媒の量が、1.3モル以上5モル以下であり、
前記分散溶媒が、メチルイソブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランまたは、N-メチルピロリドンであることを特徴とする請求項10に記載のリチウム硫黄電池の製造方法。
【請求項12】
前記正極スラリーを作製する工程において、
前記硫黄系正極活物質と、前記炭素粒子と、を含む複合粒子が作製され、
前記複合粒子に前記正極電解液を加えられ、混練されることを特徴とする請求項10または請求項11に記載のリチウム硫黄電池の製造方法。
【請求項13】
前記炭素粒子が、アスペクト比500以上のカーボンナノチューブを含み、
前記複合粒子と前記正極電解液との混練物に、さらに、前記ポリマーが加えられ、
前記正極シートは、破断伸度が5%以上であることを特徴とす
る請求項12に記載のリチウム硫黄電池の製造方法。
【請求項14】
前記炭素粒子が、多孔質グラファイトおよびアスペクト比500以上のカーボンナノチューブであり、
前記正極シートは、前記カーボンナノチューブを、1質量%以上含んでいることを特徴とする請求項10から請求項13のいずれか1項に記載のリチウム硫黄電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄系正極活物質を含有する正極を具備するリチウム硫黄電池、および、硫黄系正極活物質を有する正極を具備するリチウム硫黄電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話および電気自動車の開発に伴い、高容量の二次電池が要望されている。二次電池としては、リチウムイオン二次電池が広く普及している。
【0003】
リチウムイオン電池よりさらに高容量の二次電池として、リチウム硫黄電池が着目されている。
【0004】
これに対して、硫黄系正極活物質を有するリチウム硫黄電池の理論容量は、1672mAh/gであり、正極活物質としてLiCoO2を有するリチウムイオン電池の理論容量137mAh/gの10倍と非常に大きい。また硫黄は、低コストであり、かつ、資源が豊富である。
【0005】
日本国特開2014-41811号公報には、エーテル化合物とリチウムイオンとが錯体を形成している溶媒和イオン液体(SIL:Solvate Ionic. Liquid)に、フッ素系溶媒を添加した電解液を有するリチウム硫黄二次電池が開示されている。溶媒和イオン液体は、多硫化リチウムの溶解度が小さく、サイクル試験における充放電容量の減少および充放電効率の低下が小さい。溶媒和イオン液体に補助溶媒であるフッ素系溶媒を添加することよって電解液のイオン導電率が向上している。
【0006】
米国特許第9614252号明細書(日本国特開2016-122657号公報)には、リチウム塩1モルに対して非水溶媒の量が3モル以下の高濃度電解液を含むリチウム電池が開示されている。高濃度電解液を用いることで、正極活物質に酸素を用いても、負極の炭素材料への可逆的なリチウムイオンの挿入/離脱を実現している。電解液の溶媒としては、ジメトキシエタン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ブチロラクトン、およびスルホラン等のリチウム二次電池用として一般的な非プロトン性有機溶媒が列挙されている。
【0007】
国際公開第2013/096751号には、カーボンナノチューブのシートを正極として用いるリチウム硫黄電池が開示されている。
【0008】
しかし、カーボンナノチューブの表面に硫黄を核形成する工程、および、カーボンナノチューブをシート化する工程は、繁雑である。さらに、カーボンナノチューブシートの内部には、電解液が充填される広い空間があるため、正極に含まれる硫黄の質量Sに対する正極に含まれる電解液の容量Eの比であるE/S(μL/mg)が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2014-41811号公報
【文献】特開2016-122657号公報
【文献】国際公開第2013/096751号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の実施形態は、製造が容易であり、かつ、容量、エネルギー密度の高いリチウム硫黄電池、および、容量、エネルギー密度の高いリチウム硫黄電池の容易な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態のリチウム硫黄二次電池は、 硫黄系正極活物質と、炭素粒子と、リチウム塩および正極溶媒を含む正極電解液と、を有する複合正極と、負極活物質を有する負極と、前記複合正極と前記負極との間に配設されている、リチウム塩および電池溶媒を含む電池電解液を有するスペーサと、を具備し、前記複合正極に含まれる硫黄の質量Sに対する、前記複合正極に含まれる前記正極電解液の容量Eの比である、E/Sが、7μL/mg以下である。
【0012】
実施形態のリチウム硫黄二次電池の製造方法は、硫黄系正極活物質と、炭素粒子と、リチウム塩および正極溶媒とを含む正極電解液と、分散溶媒と、ポリマーと、を含む正極スラリーを作製する工程と、前記正極スラリーの前記分散溶媒を蒸発することによって、自立性のある正極シートを作製する工程と、前記正極シートと、電池電解液を含むスペーサと、負極活物質を含む負極と、を積層することによって、積層シートを作製する工程と、を具備する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態によれば、製造が容易であり、かつ、容量、エネルギー密度の高いリチウム硫黄電池、および、容量、エネルギー密度の高いリチウム硫黄電池の容易な製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態のリチウム硫黄電池の構成を示す断面図である。
【
図2】第1実施形態のリチウム硫黄電池の放電特性を示す図である。
【
図3】リチウム硫黄電池のE/Sとエネルギー密度との関係を示す図である。
【
図5】第1実施形態の変形例1のリチウム硫黄電池の充放電特性を示す図である。
【
図6】第1実施形態の変形例2のリチウム硫黄電池の充放電特性を示す図である。
【
図7】第1実施形態の変形例3のリチウム硫黄電池の充放電特性を示す図である。
【
図8】第2実施形態のリチウム硫黄電池の充放電特性を示す図である。
【
図9】第2実施形態の変形例のリチウム硫黄電池の充放電特性を示す図である。
【
図10】第3実施形態のリチウム硫黄電池の放電特性を示す図である。
【
図11】第4実施形態のリチウム硫黄電池の充放電特性を示す図である。
【
図12】第4実施形態のリチウム硫黄電池のサイクル特性を示す図である。
【
図13】第5実施形態のリチウム硫黄電池の充放電特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
図1に示すように本実施形態のリチウム硫黄電池(以下「電池」ともいう。)10は、複合正極11と、負極(アノード)12と、電池電解液14を含むスペーサ13と、を具備する。
【0016】
コイン型の電池10では、複合正極11と負極12とがスペーサ13を間に挾んで積層された状態で、コインセルケース15に封入されている。負極12の上にスプリング16が配設され、蓋17でコインセルケース15は封止されている。コインセルケース15の側壁にはガスケット18が介装されている。
【0017】
複合正極11は、硫黄系正極活物質である単体硫黄(S8)と、炭素粒子であるカーボンナノチューブ(CNT)と、ポリマーと、正極電解液19と、を有する。ポリマーを含む複合正極11は、自立性のある正極シートである。「自立性」は、基板または担体の補助なしで独立したシートとして取り扱うことができることを意味する。すなわち、「自立性」は、「自己支持性」と同じ意味を持つ。
【0018】
正極電解液19は、リチウム塩および正極溶媒を含む[Li(SL)2][TFSA]である。すなわち、リチウム塩は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド (Li[TFSA])であり、正極溶媒は、スルホラン(SL)である。
【0019】
ポリマーは、ビニリデンフルオライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体であるPVDF-HFPである。
【0020】
複合正極11の組成物の質量比(CNT:[Li(SL)2][TFSA]:PVDF-HFP:S8)は、(2:6:1.5:2)である。複合正極11の硫黄量は、2.38mg/cm2である。また、複合正極11に含まれる硫黄の質量Sに対する、複合正極11に含まれる正極電解液19の容量Eの比である、E/Sは、1.91μL/mgと、極めて小さい。これは、後述するように、複合正極11が、混練された正極スラリーのシート化によって作製されているためである。
【0021】
負極12は、リチウムを吸蔵脱離する負極活物質である金属リチウムである。
【0022】
スペーサ13は、電池電解液14を吸収保持する機能を有するセパレータであり、厚さ200μmのガラスフィルタ (東洋濾紙社製:GA-55)である。
【0023】
スペーサ13が含む電池電解液14は、正極電解液19と同じ[Li(SL)2][TFSA]に、フッ素系溶媒であるハイドロフルオロエーテル(HFE)が加えられることによって、希釈されている。
【0024】
HFEは、HF2CF2CH2C-O-CF2CF2H(1,1,2,2-テトラフルオロエチル(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)エーテル)(ダイキン工業社製)である。電池電解液の組成物のモル比は、([Li(SL)2][TFSA]:HFE=1:2)である。
【0025】
<電池特性>
電池10の放電特性(30℃:1stサイクル)を
図2に示す。電流密度は、C/100レートである。なお、C/100レートは、電極の単位面積当たり40μA/cm
2の電流密度に相当する。
【0026】
電池10の放電容量は、1500mAh/g-S以上であった。また、エネルギー密度は、176Wh/kgである。
【0027】
図3に、E/S(μL/mg)とエネルギー密度との関係の一例を示す。E/Sが小さい電池は、硫黄担持量を増加することによって、エネルギー密度を大幅に増やすことができる。このため、E/Sは、7μL/mg以下が好ましく、5μL/mg以下が特に好ましい。E/Sが、前記上限以下であれば、エネルギー密度を高くできる。
【0028】
なお、エネルギー密度をより高くするためには、複合正極11の硫黄量は、2mg/cm2以上であることが好ましく、4mg/cm2以上であることが特に好ましい。複合正極11の硫黄量の上限は、電子伝導性とイオン伝導性とを担保するために、例えば30mg/cm2である。複合正極11の硫黄量が前記範囲下限以上であれば、エネルギー密度を高くできる。
【0029】
<電池の製造方法>
次に、実施形態の電池10の製造方法について説明する。電池10の製造方法は、正極スラリー作製工程(ステップS10)と、正極シート作製工程(ステップS20)と、積層シート作製工程(ステップS30)と、組立工程(ステップS40)を具備する。
【0030】
<ステップS10>正極スラリー作製工程
硫黄系正極活物質である単体硫黄S8と、カーボンナノチューブと、ポリマーと、リチウム塩と正極溶媒とを含む正極電解液19と、分散溶媒と、含む正極スラリーが作製される。
【0031】
硫黄系正極活物質としては、単体硫黄S8に限られるものではなく、金属硫化物、金属多硫化物、および有機硫黄化合物からなる群から選択される少なくとも一つを含む硫黄系正極活物質を有していればよい。金属硫化物としては、硫化リチウム、多硫化リチウムが挙げられる。金属多硫化物としては、TSn (T=Ni, Co, Cu, Fe, Mo, Ti、1≦n≦4) が挙げられる。また、有機硫黄化合物としては、有機ジスルフィド化合物、カーボンスルフィド化合物が挙げられる。異なる種類の正極活物質を混合して用いてもよい。
【0032】
硫黄系正極活物質は、単体硫黄、多硫化リチウムまたは硫化リチウムの少なくともいずれであることが、特に好ましい。
【0033】
カーボンナノチューブは、直径1nm~5nm、長さ0.4μm~600μm、の単層カーボンチューブ(SWCNT)、または、直径10nm~100nm、長さ0.4μm~15μm、の多層カーボンナノチューブ(MWCNT)である。CNTは、多数のチューブが絡み合ったバンドル構造である。しかし、後述するように、溶媒和イオン液体である正極電解液19は、CNTの分散性に優れているため、正極電解液19と混合することによって、バンドル構造は低減する。
【0034】
カーボンナノチューブは、アスペクト比が、500以上が好ましく、10000以上が特に好ましい。前記範囲下限以上であれば、複合正極の厚さが厚くなっても、電子伝導性が担保できる。なお、アスペクト比の上限は、製造が困難であることから、例えば、200000である。
【0035】
ポリマーは、PVDF-HFP、ビニリデンフルオライド(VDF)ホモポリマーであるPVDF、ポリN-イソプロピルアクリルアミド、ポリ(スチレン‐メタクリル酸メチル‐スチレン)トリブロック共重合体、ポリ(スチレン‐アクリル酸ブチル‐スチレン)トリブロック共重合体、ポリ(スチレン‐エチレンオキシド‐スチレン)トリブロック共重合体、または、ポリビニルピロリドンの少なくともいずれかである。
【0036】
なお、複合正極のポリマー含有量は、5質量%以上30質量%以下が好ましく、8質量%以上20質量%以下が特に好ましい。前記範囲下限以上であれば、シート化が容易である。前記範囲上限以下であれば、エネルギー密度が低下することがない。
【0037】
リチウム塩として、(LiBF4)、(Li[FSA]:リチウムビス(フルオロスルホニル)アミド)、または、(LiClO4)を用いてもよい。
【0038】
正極溶媒には、高濃度化しても、粘度は指数関数的に増加するものの、イオン導電率が、1次関数(直線)的にしか減少しないスルホニル基含有化合物を用いることができる。正極溶媒としては、スルホラン(SL)、3-メチルスルホラン、エチルメチルスルホン(EMS)、および、エチルイソプロピルスルホンの少なくともいずれかであることが好ましい。また、スルホニル基含有化合物系濃厚電解液である正極電解液19は、リチウム塩1モルに対する正極溶媒の量が、1.3モル以上5モル以下であることが好ましい。
【0039】
分散溶媒は、メチルイソブチルケトン(MP:4-メチル-2-ペンタノン)である。正極電解液19である[Li(SL)2][TFSA]の10%重量減少温度は、約220℃であるのに対して、MPの10%重量減少温度は、40℃である。10%重量減少温度は、窒素雰囲気、大気圧において、室温から昇温速度10℃/分にて温度を上げていった場合に、重量が10%減少する温度である。
【0040】
分散溶媒としては、蒸発による除去が容易であるために、10%重量減少温度が正極電解液19よりも180℃以上低い有機溶剤から選択することが好ましい。分散溶媒には、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、または、N-メチルピロリドン等を用いることもできる。
【0041】
なお、正極スラリーに含まれる分散溶媒は、複合正極に対して100質量%以上10000質量%以下であることが好ましく、200質量%以上5000質量%以下であることが特に好ましい。前記範囲下限以上であれば、良好なコーティング特性のスラリーとなり、前記範囲上限以下であればコーティング後の不均一化を防ぐことができる。
【0042】
例えば、CNTと硫黄とが、30分間、乳鉢を用いて混練される。次に、アルゴン雰囲気下において155℃6時間、加熱することによって、CNTを含む複合粒子が作製される。次に、室温に冷却後、CNTを含む硫黄に正極電解液19[Li(SL)2][TFSA]を加えて、30分間、乳鉢を用いて混練される。
【0043】
CNTは難分散性であるが、正極電解液19と混練してから、分散溶媒によって希釈されることによって、バンドル構造が低減する。正極スラリーは、正極電解液19と分散溶媒とを含む状態において、機械的分散工程が行われる。
【0044】
さらに、ポリマーとしてPVDF-HFPを添加してから、室温で1時間、撹拌される。次に、室温で1時間の超音波分散処理が行われ、さらに、1時間、撹拌することによって、正極スラリーが作製される。
【0045】
以上の説明のように、正極スラリー作製工程S10においては、硫黄系正極活物質とカーボンナノチューブとを含む複合粒子が作製され、複合粒子に正極電解液を加えて混練されてから、分散溶媒が加えられることが好ましい。
【0046】
ここで、「混練」とは、単に「混ぜる」ことを意味するのではなく、複合粒子を正極電解液とともに、練る(knead)作業である。なお、ポリマーは、分散溶媒とともに混練後に添加されてもよいし、正極電解液とともに添加され混練されてもよい。
【0047】
<ステップS20>正極シート作製工程
正極スラリーの分散溶媒を蒸発することによって、正極シートが作製される。分散溶媒を短時間で蒸発するために、真空乾燥法を用いてもよい。
【0048】
例えば、正極スラリーを、基体にコーティングしてから、室温にて24時間放置したり真空乾燥したりすることによって、分散溶媒が蒸発するため、正極シートが配設された基体が得られる。正極シートの厚さは、50μm~1000μmである。なお、分散溶媒は、PVDF-HFPを含む複合正極に対して400質量%加えられていた。
【0049】
図4に、参考として、後述するイオン液体を溶媒とし硫黄を含まない正極シートの引張特性を示す。
【0050】
測定には、引張試験機を用い、25℃において、引張速度10mm/分、試料幅10mm、試料長50mmである。
【0051】
正極シートの質量比は、(CNT:[Li(G4)][TFSA]:PVDF-HFP)は、(X:12:3)である。ポリマーを含まない正極スラリーは、分散溶媒を蒸発しても、シート化できなかった。
【0052】
CNTの含有量が多いと、シートは硬く、破断伸度が小さいが破断強度は大きい。これに対して、CNTの含有量が少ないと、シートは軟らかく、破断伸度が大きいが破断強度は小さい。
【0053】
シートは、破断伸度が5%以上であると、取り扱いが容易である。特に、破断伸度が100%以上200%以下であるシートは、巻回しても破断したり、大きく伸びたりすることが殆どないため、例えば、ロール状に巻回することも可能であり、取り扱いが容易である。
【0054】
カーボンナノチューブは、複合正極の1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、特に好ましくは、5質量%以上20質量%以下である。前記範囲下限以上であれば電子伝導性が担保され、前記範囲上限以下であれば、破断伸度が大きい。
【0055】
なお、硫黄を含む正極シートの引張特性およびステップS20において作製された正極シートの引張特性は、
図4に示した硫黄を含まない正極シートの引張特性と略同じであった。
【0056】
<ステップS30>積層シート作製工程
正極シートと、電池電解液を含むスペーサシートと、負極活物質を含む負極シートと、を積層することによって、積層シートが作製される。
【0057】
すでに説明したように、スペーサシートは、セパレータであるガラスフィルタである。スペーサシートには、電池電解液が添加されている。電池電解液は、正極電解液19と略同じであるが、希釈溶媒HFEが添加されていることが好ましい。
【0058】
セパレータには、電池電解液を吸収保持するガラス繊維、セラミックもしくはポリマーからなる多孔性シートまたは不織布を用いてもよい。
【0059】
多孔性シートは、例えば、微多孔質のポリマー等で構成される。このような多孔性シートを構成するポリマーとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン;PP/PE/PPの3層構造をした積層体、ポリイミド、アラミドが挙げられる。特にポリオレフィン系微多孔質セパレータおよびガラス繊維製セパレータは、有機溶媒に対して化学的に安定であるという性質があり、電解液との反応性を低く抑えることができることから好ましい。
【0060】
セパレータの厚みは限定されないが、自動車用二次電池においては、単層または多層で全体の厚みが4μm~60μmであることが好ましい。また、セパレータは、孔径が10μm以下(例えば、10nm~100nm)であり、空孔率は20%~95%であることが好ましい。
【0061】
希釈溶媒としては、フッ素系溶媒が好ましい。例えば、クロロフルオロカーボン(CFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、パーフルオロポリエーテル(PFPE)またはハイドロフルオロポリエーテル(HFPE)が挙げられ、好ましくはハイドロフルオロカーボン(HFC)またはハイドロフルオロエーテル(HFE)であり、より好ましくはハイドロフルオロエーテル(HFE)である。
【0062】
希釈溶媒は、リチウム塩1モルに対し、0.3モル以上10モル以下であることが好ましく、0.5モル以上5モル以下であることが特に好ましい。前記範囲下限以上であれば十分な粘度低下が起こり、前記範囲上限以下であれば十分なリチウムイオン濃度を担保できる。
【0063】
負極12は、厚さ200μmのリチウム金属シートである。
【0064】
なお、負極12は、リチウムイオンを吸蔵脱離する負極活物質を含んでいればよい。
【0065】
負極活物質としては、金属材料または炭素材料等の従来公知の負極材料を用いることができる。金属材料は、チタン酸リチウム、リチウム金属、ナトリウム金属、リチウムアルミ合金、リチウムスズ合金、リチウムケイ素合金、ナトリウムケイ素合金、リチウムアンチモン合金等である。炭素材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、グラフェン、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、ハードカーボン等であり、結晶性でも非結晶性でもよい。
【0066】
負極活物質としては、炭素材料、リチウム、または、リチウム遷移金属複合酸化物が、容量および入出力特性に優れた電池を構成できることから好ましい。
【0067】
<ステップ40>組立工程
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、2032型のコインセルケース15(SUS304製の厚さ3.2mm)に積層シートを封入し、負極12の上にスプリング16を配置した。スプリング16の上から蓋17でコインセルケース15を封止した。
【0068】
以上の説明のように、複合正極11は、電解液を含むスペーサと積層される前に、すでに、電解液(正極電解液19)を含んでいる電解液含有正極である。複合正極11は、CNT、正極電解液19、正極活物質およびポリマーを含有する。
【0069】
正極電解液19のリチウム塩の濃度は、希釈溶媒を含む電池電解液のリチウム塩の濃度よりも高い。
【0070】
本実施形態の製造法によれば、自立性のある正極シートとスペーサと負極シートとを積層することによって、積層シートが作製できるため、製造が容易である。
【0071】
<第1実施形態の変形例>
第1実施形態の変形例のリチウム硫黄電池10A等は、リチウム硫黄電池10と類似し、同じ効果を有しているので、同じ機能の構成要素には、同じ符号を付し説明は省略する。
【0072】
<変形例1>
本変形例の電池10Aの複合正極11Aの組成物の質量比(CNT:[Li(SL)2][TFSA]:PVDF-HFP:S8)は、(2:12:3:2)である。複合正極11Aの硫黄量は、3.59mg/cm2である。また、複合正極11Aに含まれる硫黄の質量Sに対する、複合正極11Aに含まれる正極電解液19の容量Eである、E/Sは、3.8μL/mgであり、電池10Aのエネルギー密度は、100Wh/kgである。
【0073】
図5に、電池10Aの放電特性(30℃)示す。電流密度は、C/50レートである。なお、C/50レートは、電極の単位面積当たり120μA/cm
2の電流密度に相当する。
【0074】
電池10Aの放電容量は、3rdサイクルでも、700mAh/g-S以上であった。
【0075】
<変形例2>
本変形例の電池10A1の複合正極11A1の組成物の質量比(CNT:[Li(SL)2][TFSA]:PVDF-HFP:S8)は、(1:11:2.7:1)である。複合正極11Aの硫黄量は、1.02mg/cm2である。また、複合正極11Aに含まれる硫黄の質量Sに対する、複合正極11Aに含まれる正極電解液19の容量Eである、E/Sは、7μL/mgである。
【0076】
図6に、電池10A1の放電特性(30℃)示す。電流密度は、C/20レートである。電池10A1の放電容量(2サイクル目)は、1000mAh/g-Sであった。
【0077】
<変形例3>
本変形例の電池10A2の複合正極11A2は、炭素粒子としてカーボンナノチューブだけでなく、多孔質グラファイトであるケッチェンブラック(KB)を有する。
【0078】
本変形例の電池10A2の複合正極11A2の組成物の質量比(KB:CNT:[Li(SL)2][TFSA]:PVDF-HFP:S8)は、(18:1:13:12:56)である。複合正極11A2の硫黄量は、1.11mg/cm2である。また、複合正極11A2に含まれる硫黄の質量Sに対する、複合正極11A2に含まれる正極電解液19の容量Eである、E/Sは、0.15μL/mgである。
【0079】
KBは、CNTよりも分散性が良いため、少量の正極電解液19しか含んでいない複合正極11A2が作製できる。なお、E/Sは、下限が技術的な問題から、例えば、0.1μL/mgであり、上限がエネルギー密度担保のため、例えば、7μL/mgである。
【0080】
図7に、電池10A2の放電特性(30℃)示す。電流密度は、C/48レートである。電池10A2の放電容量は、10thサイクル後でも、1100mAh/g-Sであった。
【0081】
CNTを含まない正極シートは、ポリマーを含んでいるため、自立性はあるが、破断強度が小さい。このため、CNTが複合正極11A2の1質量%以上含まれていることが好ましい。ただし、CNTの含有量が少ない正極シート、または、CNTを含まない正極シートであっても、例えば、アルミニウムからなる保持シートを基板として正極シートを作製し、スペーサシートと積層後に、保持シートを剥離することによって、正極シートの破断を防止できる。
【0082】
例えば、KBだけでCNTを含まない正極を具備する電池では、E/S=3.1の場合でも、E/S=0.5の場合でも、初期サイクルの放電容量は、1300mAh/g-S以上であった。
【0083】
<第2実施形態>
第2実施形態のリチウム硫黄電池10Bは、リチウム硫黄電池10と類似しているので、同じ機能の構成要素には、同じ符号を付し説明は省略する。
【0084】
電池10Bでは、スペーサ13Bだけが電池10Aと異なる。電池10Bの複合正極11Bの組成物の質量比(CNT:[Li(SL)2][TFSA]:PVDF-HFP:S8)は、(2:12:3:2)であり、電池10Aと同じである。
【0085】
電池10Bのスペーサ13Bは、電池電解液を含む高分子ゲル電解質からなるシート(電解質シート)である。PVDF-HFPと、正極電解液19[Li(SL)2][TFSA]と、分散溶媒であるアセトンと、を混合することによって、スペーサスラリーが作製される。スペーサスラリーをコーティングしてから、アセトンを蒸発することによってスペーサ13Bが作製された。アセトンを短時間で蒸発するために、真空乾燥法を用いてもよい。分散溶媒には、テトラヒドロフランまたは、N-メチルピロリドン等を用いることもできる。厚さ86μmのスペーサ13Bの組成物の質量比([Li(SL)2][TFSA]:PVDF-HFP)は、(80:20)である。なお、電池電解液は、フッ素溶媒によって希釈されていない。正極シートと電解質シートとは、集電体の上に正極スラリーとスペーサスラリーとを連続してコーティングして作製してもよい。
【0086】
図8に、電池10Bの放電特性(30℃)示す。電流密度は、C/20レートである。なお、C/20レートは、電極の単位面積当たり76μA/cm
2の電流密度に相当する。
【0087】
電池10Bの放電容量は、4thサイクル後でも、1000mAh/g-S以上であった。
【0088】
<第2実施形態の変形例>
第2実施形態の変形例のリチウム硫黄電池10B1は、リチウム硫黄電池10Bと類似し、同じ効果を有しているので、同じ機能の構成要素には、同じ符号を付し説明は省略する。
【0089】
本変形例の電池10B1の複合正極11B1は、複合正極11A2と同じである。また、スペーサは、電池10Bのスペーサ13と同じである。
【0090】
図9に、電池10B1の放電特性(30℃)示す。電流密度は、C/48レートである。電池10B1の放電容量は、4thサイクルでも、750mAh/g-S以上であった。
【0091】
<第3実施形態>
第3実施形態のリチウム硫黄電池10Cは、リチウム硫黄電池10と類似しているので、同じ機能の構成要素には、同じ符号を付し説明は省略する。
【0092】
電池10Cの複合正極11Cは、ポリマーを含んでいない。また、スペーサ13Cは電池電解液を含んだ多孔質金属、多孔質セラミックまたは多孔質樹脂からなるセパレータである。
【0093】
電池10Cの複合正極11Cは、電池10の複合正極11と類似の方法によって作製される。しかし、ポリマーを含んでいない複合正極11Cは自立性が無いゲルであった。このため、正極スラリーは、集電体である発泡アルミニウム箔にコーティングされた。複合正極11Cの組成物の質量比(CNT:[Li(SL)2][TFSA]:S8)は、(15:63:22)である。複合正極11Cの硫黄量は、9.9mg/cm2である。E/Sは、1.8μL/mgであり、電池10Cのエネルギー密度は、231Wh/kgである。
【0094】
電池電解液は、HFEの添加によって希釈されている。電池電解液の組成は、(([Li(SL)2][TFSA])+4HFE)である。
【0095】
図10に、電池10Cの放電特性(30℃)示す。電流密度は、C/165レートである。なお、C/165レートは、電極の単位面積当たり100μA/cm
2の電流密度に相当する。
【0096】
電池10Cの放電容量(1st サイクル)は、1000mAh/g-S以上である。また、電池10Cのエネルギー密度は、231Wh/kgである。
【0097】
<第4実施形態>
第4実施形態のリチウム硫黄電池10Dは、リチウム硫黄電池10等と類似しているので、同じ機能の構成要素には、同じ符号を付し説明は省略する。
【0098】
電池10Dでは、正極電解液19Dおよび電池電解液が、エーテル化合物とリチウムイオンとが錯体を形成しているグライム系溶媒和イオン液体である。
【0099】
具体的には、正極電解液19Dおよび電池電解液は、エーテル化合物であるテトラグライム(G4)が、リチウム塩TFSAと錯体を形成したグライム系溶媒和イオン液体[Li(G4)][TFSA])である。
【0100】
電池10Dの複合正極11Dの組成物の質量比(CNT:[Li(G4)][TFSA]:PVDF-HFP:S8)は、(2:12:3:2)である。ポリマーを含む複合正極11Dは、E/Sが4.2μL/mgであり、自立性のある正極シートである。
【0101】
図11、
図12に、電池10Dの放電特性(30℃)示す。電流密度は、C/8レートである。なお、C/8レートは、電極の単位面積当たり170μA/cm
2の電流密度に相当する。
【0102】
電池10Dは、90サイクル後でも、放電容量730mAh/g、クーロン効率98.4%であった。
【0103】
なお、グライム系溶媒和イオン液体を構成するリチウム塩として、(LiBF4)、(Li[FSA])、または、(LiClO4)を用いてもよい。グライム系溶媒和イオン液体を構成するエーテル化合物として、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、メチルモノグライム、エチルモノグライム、エチルジグライム、または、ブチルジグライムを用いてもよい。
【0104】
グライム系溶媒和イオン液体は、特にCNTの分散性に優れているため、正極溶媒および電池溶媒として特に好ましい。
【0105】
<第5実施形態>
第5実施形態のリチウム硫黄電池10Eは、リチウム硫黄電池10Dと類似しているので、同じ機能の構成要素には、同じ符号を付し説明は省略する。
【0106】
電池10Eは、電池10Dとは、スペーサ13Eが、電解質シートである点だけが異なる。例えば、電池10Eの複合正極11Eは、電池10Dの複合正極11Dと同じである。
【0107】
電解質シートであるスペーサ13Eの組成物の質量比([Li(G4)][TFSA]:PVDF-HFP)は、(80:20)である。
【0108】
図13に、電池10Eの放電特性(30℃)示す。電池10Eの放電容量は、3サイクル後でも600mAh/g以上である。
【0109】
なお、電池10、10A~10Eは、コイン型に限られるものではなく、公知の各種の構造、例えば、巻回型、またはラミネート型等でもよい。また電池10等は複数の単位セル(正極/電解液/負極)を有していてもよいし、複数の単位セルからなるユニットを複数個有していてもよい。
【0110】
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更、組み合わせ、および、応用が可能である。
【0111】
本出願は、2019年2月27日に日本国に出願された特願2019-34605号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の内容は、本願明細書、請求の範囲、図面に引用されたものである。また、平成29年、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、先端的低炭素化技術開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願である。
【符号の説明】
【0112】
10、10A~10E・・・リチウム硫黄電池
11、11A~11E・・・複合正極
12・・・負極
13、13B、13C、13E・・・スペーサ
14・・・電池電解液
19、19D・・・正極電解液