(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】神経変性障害の治療のための医薬組成物の連続的投与
(51)【国際特許分類】
A61K 31/198 20060101AFI20240510BHJP
A61K 31/165 20060101ALI20240510BHJP
A61K 31/277 20060101ALI20240510BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20240510BHJP
A61K 31/12 20060101ALI20240510BHJP
A61K 31/223 20060101ALI20240510BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240510BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240510BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240510BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240510BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
A61K31/198
A61K31/165
A61K31/277
A61K31/4439
A61K31/12
A61K31/223
A61P25/14
A61P25/16
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K9/06
A61K9/08
(21)【出願番号】P 2020551353
(86)(22)【出願日】2019-03-22
(86)【国際出願番号】 SE2019050260
(87)【国際公開番号】W WO2019182506
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-15
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】524121502
【氏名又は名称】イントランス・メディカル・システムズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRANCE MEDICAL SYSTEMS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボルソイ,ロジャー
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-521263(JP,A)
【文献】特表2017-527623(JP,A)
【文献】Parkinsonism and Related Disorders,2015年,Vol.21,p.871-876
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬としての使用のための、ドーパミン補充剤、ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤(DDI)、およびカテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)阻害剤を含む医薬組成物であって、ここにおいてドーパミン補充剤がレボドパ、薬学的に許容されるその塩、メレボドパまたはエチレボドパであり、ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤がカルビドパ、ベンセラジドおよびそれらの組合せからなる群から選択され、COMT阻害剤がエンタカポン、トルカポン、オピカポンおよびそれらの組合せからなる群から選択され、前記ドーパミン補充剤の1日総投与量が、
a.前記ドーパミン補充剤の前記1日総投与量の20~35%である、第1の投与量の医薬組成物を投与するステップ;および
b.合計して前記ドーパミン補充剤の前記1日総投与量となる第2の投与量の医薬組成物を連続的に投与するステップであって、ここにおいて第2の投与量の医薬組成物が、液体の医薬組成物、懸濁剤またはゲルである、ステップ
により投与される、医薬組成物。
【請求項2】
a.前記ドーパミン補充剤の前記1日総投与量の20~35%である、第1の投与量の医薬組成物
を投与するステップ;
b.合計して前記ドーパミン補充剤の前記1日総投与量となる第2の投与量の医薬組成物を連続的に投与するステップであって、前記第2の投与量の第1の部分は最初にあらかじめ決定された時間連続的に投与され、その後前記第2の投与量の第2の部分が連続的に投与され、前記第1のおよび第2の部分の合計は、合計して前記第2の投与量となり、前記第2の部分について、より低い量の前記ドーパミン補充剤が、時間単位あたり投与される、継続投与するステップ
を含む方法によって投与されるものである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤がカルビドパである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記ドーパミン補充剤、前記ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤(DDI)および前記カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)阻害剤、ならびに任意選択で好適なアジュバントが、単一の医薬組成物中に含有される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬組成物が第1、第2および第3の部を含み、前記第1の部が前記ドーパミン補充剤を含み、前記第2の部が前記ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤(DDI)を含み、前記第3の部が前記カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)阻害剤を含み、各部が任意選択で好適なアジュバントを含むか、または前記医薬組成物が、前記ドーパミン補充剤および前記ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤(DDI)を含む第1の部分ならびに前記COMT阻害剤を含む第2の部分を含み、各部が任意選択で好適なアジュバントを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記第1の投与量の前記ドーパミン補充剤、前記ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤(DDI)および前記カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)阻害剤、ならびに任意選択で好適なアジュバントが個々に投与されるか、または前記ドーパミン補充剤および前記ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤(DDI)が同時に投与され、前記COMT阻害剤が、前記ドーパミン補充剤および前記ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤(DDI)
と同時に投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記ドーパミン補充剤の前記1日総投与量が、200から3500mg、例えば400~3000mgである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
パーキンソン病を患っている患者に投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記患者が、運動亢進症の感受性を患っているか、または運動亢進症になる傾向を有する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
第2の投与量の医薬組成物の投与が、24時間連続的に実施される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
第2の投与量の医薬組成物の投与が、12~18時間、例えば13~17時間または14~16時間、連続的に実施される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記第1の投与量が、午前5時と午前10時との間のような朝に投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記第1の投与量の医薬組成物が、経口用医薬組成物、液体の医薬組成物、懸濁剤またはゲルである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記第1の投与量が、経口、静脈内、皮下、腸内または経皮投与される、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記第2の投与量が、静脈内、皮下、腸内または経皮投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
第1の容器および少なくとも1つのさらなる容器を含むキットであって、前記第1のおよび前記少なくとも1つのさらなる容器が、それぞれ、医薬としての使用のための、請求項1から15のいずれか1項に記載の医薬組成物の第1のおよび第2の投与量を含み、
a.前記第1の投与量は、前記ドーパミン補充剤の前記1日総投与量の20~35%を含み;
b.前記第2の投与量は、合計して前記ドーパミン補充剤の前記1日総投与量となり;
少なくとも前記第2の投与量は、液体の医薬組成物、懸濁剤またはゲルである、キット。
【請求項17】
前記第1のおよび第2の投与量の両方が、液体の医薬組成物、懸濁剤またはゲルの形態である、請求項16に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
神経変性障害は、ニューロンが、通常、再生されないかまたはそれ自身置換されないとき、したがって損傷したニューロンを置換することができないときに、生じる。進行性の変性および/または神経性細胞の死は、多くの場合、運動の問題(例えば運動失調)または精神機能の問題(例えば認知症)をもたらす。多くの神経変性障害は、現在、不治であると考えられている。神経変性障害の例には、パーキンソン病(「PD」)、アルツハイマー病(「AD」)およびハンチントン病(「HD」)が挙げられる。
【0002】
パーキンソン病は、ドーパミン作動性経路の進行性の変性という特徴を有し、それ自身が患者において、動作緩慢(例えば動作緩徐)、強剛、振戦およびバランスの不均衡の症状として表れる、脳内の神経伝達物質ドーパミンの濃度の低減をもたらす。
【0003】
生化学的には、ドーパミン(3,4-ジヒドロキシフェネチルアミン)は、ドーパミン前駆体の代謝により形成される。例えばドーパミンは、脳および末梢循環の両方において、酵素である芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(DOPA脱炭酸酵素(DDC)としても周知である)による、前駆体レボドパ(L-ドパ;L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン)の脱炭酸によって形成される。レボドパは、順に、酵素であるチロシン水酸化酵素(TH)により、アミノ酸であるL-チロシンから生成される。
【0004】
ドーパミンは、主に2つの代謝経路によって、すなわち(i)酵素であるモノアミン酸化酵素(MAO)およびカテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)による3,4-ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)を介して、ならびに(ii)酵素であるカテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)およびモノアミン酸化酵素(MAO)による3-メトキシチラミンを介して、ホモバニリン酸(HVA)に代謝される。
【0005】
PDの最も一般的な治療は、脳内のドーパミンの濃度を回復させることを目的とする。ドーパミンは血液脳関門を通過しないため、ドーパミンの投与は有効ではない。しかし、前駆体であるレボドパは、血管脳関門を通過し、脳内でドーパミンに変換されるため、レボドパの投与は、長期にわたり、および現在もなお、PD治療の第一選択薬である。
【0006】
レボドパの血漿濃度の変動がPD症状の変動と相関することは、十分に立証されている。治療濃度域は、個々の患者間で異なり、すべての患者は、個々の薬物動態(PK)プロファイルを有する。パーキンソン病を患う患者の大部分は、「午後のウェアリングオフ(afternoon wearing off)」として周知のものを示す。これらの患者は、通常の朝の投薬に続き、午後にレボドパの血漿濃度の増大を必要とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
本発明は、ある特定の神経変性障害(例えばパーキンソン病(PD))を含むある特定のドーパミン関連疾患、障害および状態を治療するための、ならびに/またはそのような治療に有用な薬剤を投与するための、活性物質もしくは医薬組成物を投与する方法または計画を提供する。投与は、1日1回の用量である第1の用量を投与し、続けて第2の用量を連続的投与することにより行われる。
【0008】
本発明は、患者の1日総用量を減少させ、患者中のドーパミン補充剤の漸増を促進する。多くの患者が1日の後半または夕方により高い用量を必要とするため、後者はPDを患う患者にとって重要であることが示されている。第1の用量も、1日総用量の20~35%である高いものとするべきである。高い第1の用量を使用することにより、本発明は継続用量が有意に低減されるときでさえも、ドーパミン補充剤のバイオアベイラビリティ(生体利用効率)を十分に高いレベルに保持することができることが示された。
【0009】
第1の態様では、本発明は、医薬としての使用のための、ドーパミン補充剤、ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤(DDI)、およびカテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)阻害剤を含む医薬組成物であって、ドーパミン補充剤の1日総投与量が、
a.ドーパミン補充剤の1日総投与量の20~35%である、医薬組成物の第1の投与量を投与するステップ;および
b.合計してドーパミン補充剤の1日総投与量となる医薬組成物の第2の投与量を連続的に投与するステップ
により投与される、医薬組成物に関する。
【0010】
第2の態様では、本発明は、第1の容器および少なくとも1つのさらなる容器を含むキットであって、第1のおよび少なくとも1つのさらなる容器が、それぞれ、医薬としての使用のための、請求項1から22のいずれか1項に記載の医薬組成物の第1のおよび第2の投与量を含み、
a.第1の投与量は、ドーパミン補充剤の1日総投与量の20~35%を含み;
b.第2の投与量は、合計してドーパミン補充剤の1日総投与量となり、
少なくとも第2の投与量は、液体の医薬組成物、懸濁剤またはゲルである、キットに関する。
【0011】
第3の態様では、本発明は、ドーパミン補充剤、ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤(DDI)およびカテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)阻害剤、ならびに任意選択で好適なアジュバントを含む医薬組成物により、それを必要とする患者にドーパミン補充剤の1日総投与量を投与する方法であって、
a.ドーパミン補充剤の1日総投与量の20~35%を含む、医薬組成物の第1の投与量を投与するステップ;および
b.合計してドーパミン補充剤の1日総投与量となる医薬組成物の第2の投与量を連続的に投与するステップ
を含む、方法に関する。
【0012】
本明細書に記載されているすべての実施形態は、他に記載のない限り、すべての態様に適用可能である。
【0013】
一部の実施形態では、本開示は、(i)ドーパミン補充剤、(ii)ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤(DDI)および(iii)COMT阻害剤の各々を含む薬剤の組合せを対象に投与することは、特に1つまたは複数の薬剤が、腸内投与、皮下、経皮もしくは静脈内、または医薬ゲル、溶液もしくは懸濁剤により送達されるとき、ある特定の予期されない利点をもたらし、および/または神経変性障害(例えばPD)を治療するための以前の計画に関連する1つもしくは複数の問題を解決するという識見を包含する。
【0014】
多くの実施形態では、腸内投与は、典型的に、外部のアクセスポイントを介する十二指腸および/または空腸への投与である。
【0015】
一部の特定の実施形態では、本発明は、少なくとも約10mg/mlのレボドパおよび少なくとも約1mg/mlまたは2.5mg/mlのドーパミン脱炭酸酵素阻害剤を含み、少なくとも約5mg/mlまたは10mg/mlのCOMT阻害剤をさらに含む、腸内投与のための医薬ゲル組成物を提供する。
【0016】
一部の特定の実施形態では、本発明は、少なくとも約10mg/mlのレボドパおよび少なくとも約1mg/mlまたは2.5mg/mlのドーパミン脱炭酸酵素阻害剤を含み、ゲル組成物が少なくとも約10mg/mlのCOMT阻害剤をさらに含む、静脈内または皮下投与のための医薬液体組成物を提供する。
【0017】
ある特定の組成物および/または方法では、1つもしくは複数の活性物質(例えばレボドパおよび/もしくは1つもしくは複数のDDI[例えばカルビドパ]および/もしくは1つもしくは複数のCOMT阻害剤[例えばエンタカポン])が提供され得、ならびに/または薬学的に許容されるそれらの塩の形態、および/もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物で利用され得る。一部の特定の実施形態では、ある特定の組成物および/または方法は、固形形態で提供および/または利用され得る1つまたは複数の活性化合物を利用することができ、一部のそのような実施形態では、固形形態は、結晶形態であり得るかそれを含み得、一部のそのような実施形態では、固形形態は非晶形態であり得るかそれを含み得る。一部の実施形態では、固形形態は、非晶形態または特定の単結晶形態を含むかまたはそれからなる。
【0018】
一部の実施形態では、本発明による組成物は、多くとも200mg/mlのレボドパ、多くとも50mg/mlのドーパミン脱炭酸酵素阻害剤、および多くとも200mg/mlのCOMT阻害剤を含む。
【0019】
例示的なドーパミン脱炭酸酵素阻害剤には、カルビドパ、ベンセラジド、α-ジフルオロメチルドパ[(2S)-2-アミノ-2-[3,4-ジヒドロキシフェニル)-メチル]-3,3-ジフルオロプロパン酸]およびα-メチルドパ[(S)-2-アミノ-3-[3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-メチル-プロパン酸]が挙げられる。
【0020】
一部の実施形態では、ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤は、カルビドパ、ベンセラジド、またはそれらの任意の組合せである。
【0021】
一部の実施形態では、ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤は、カルビドパである。
一部の実施形態では、COMT阻害剤は、エンタカポン、トルカポン、オピカポンおよびそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0022】
一部の実施形態では、COMT阻害剤は、エンタカポンである。
一部の実施形態では、ドーパミン補充剤は、レボドパ、薬学的に許容されるその塩または誘導体、例えばレボドパメチルエステルである。
【0023】
一部の実施形態では、医薬組成物は、カルビドパのようなDDIを含み、カルビドパのヒドラジンへの分解を阻害することが可能である物質をさらに含む。
【0024】
一部の実施形態では、カルビドパのヒドラジンへの分解を阻害することが可能である物質は、エンタカポンを含む。
【0025】
一部の実施形態では、医薬組成物は、約20mg/mlのレボドパ、5mg/mlのカルビドパ、および20mg/mlのエンタカポンを含む。
【0026】
一部の実施形態では、ドーパミン補充剤とDDIとの間の重量比は、およそ1/10である。別の実施形態では、比は、およそ1/4である。
【0027】
一部の実施形態では、1つまたは複数のCOMT阻害剤および少なくとも1つのさらなる活性化合物を含む本明細書に記載されているような医薬組成物は、例えばCOMT阻害剤を有しない(または、一部の実施形態では、異なる絶対量または相対量を含有する)他の同等の組成物で観察されるものに対して、少なくとも1つのさらなる活性化合物の安定性が増大する(例えば分解が低減する)という特徴を有する。一部のそのような実施形態では、安定性は、経時的に(例えば特定の期間が経過した後)、および/または特定の保存条件下で評価される。例えば一部の実施形態では、そのような安定性の増大は、例えば冷蔵条件下(例えば組成物が約15℃を下回る温度、および好ましくは約0℃から約15℃、約0℃から約12℃、約0℃から約10℃、約0℃から約8℃、または約2℃から約8℃の範囲で維持される条件)で、少なくとも1週、2週、5週、7週、10週、15週、20週以上延長した期間にわたり観察される。
【0028】
一部の実施形態では、提供される組成物は、約5.7以下のpHという特徴を有するものを含むおよび/もしくはそれから調製され、ならびに/または約5.7以下のpHで維持される。一部の実施形態では、1つまたは複数の活性剤(例えばレボドパ、DDI、COMT阻害剤等)を含むそのような提供される組成物は、例えばpHの値が異なる、関係する参照組成物と比較して、1つまたは複数のそのような活性剤の安定性が改善されているという特徴を有する。
【0029】
一部の実施形態では、組成物は、(例えば窒素パージを介して)脱酸素化される。一部の実施形態では、1つまたは複数の活性剤を含むそのような提供される組成物は、例えばそのような脱酸素化の存在および/または継続期間が異なる関係する参照組成物と比較して、1つまたは複数のそのような活性剤の安定性が改善されているという特徴を有する。
【0030】
一部の実施形態では、医薬組成物は、抗酸化剤(例えばアスコルビン酸またはクエン酸)を含む。一部の実施形態では、1つまたは複数の活性剤を含むそのような提供される組成物は、例えばそのような抗酸化剤の存在および/または量(例えば絶対もしくは相対値)が異なる関係する参照組成物と比較して、1つまたは複数のそのような活性剤の安定性が改善されているという特徴を有する。
【0031】
一部の実施形態では、脱酸素化は、低下されたpHまたは抗酸化剤と合わせられる。
一部の実施形態では、提供される組成物は、EDTAのような金属キレート剤を実質的に含まず(例えば検出可能なおよび/または物質的なレベルを欠く)、一部の実施形態では、提供される組成物は、いかなる金属キレート剤も実質的に含まない。
【0032】
一部の実施形態では、医薬組成物は、光保護容器(light-protected container)中に提供される。
【0033】
一部の実施形態では、1つまたは複数の活性物質(例えばレボドパ、ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤(例えばカルビドパ)およびCOMT阻害剤(例えばエンタカポン))は、粒子の形態であり、例えば約80μm以下の最大粒子径を有し、粒子は、一部の実施形態では、担体(例えば水性担体)中に懸濁していてもよく、一部のそのような実施形態では、担体は、中程度のせん断速度で測定すると少なくとも300mPasの粘度を有する。
【0034】
一部の実施形態では、ゲル組成物の粘度は、少なくとも1800mPasである。別の実施形態では、粘度は、2200から4500mPasの範囲である。
【0035】
担体は典型的に多糖型であり得、例えばセルロース、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびそれらの塩、キサンタンガム、カラギーナンならびにそれらの組合せから選択されてもよいが、担体はまた、ポリビニルピロリドン(PVP;ポビドン)またはポリアクリル酸(PAA;カルボマー)のような合成ポリマーであってもよい。例示的な担体は、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(NaCMC)である。
【0036】
一部の実施形態では、医薬組成物は、約2%(w/w)の微粒子化したレボドパ、約0.5%(w/w)の微粒子化したカルビドパ、約2%(w/w)の微粒子化したエンタカポン、および約2.92%(w/w)のカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。
【0037】
一部の実施形態では、医薬組成物のpH値は、約5.0から約5.5と等しいまたはそれよりも大きな最低pH値となるように選択され、12日後の25℃での水性担体の粘度は、中程度のせん断速度で少なくとも300mPasである。
【0038】
一部の実施形態では、医薬組成物の担体は、NaCMCであり、pH値は、5.5±0.2である。
【0039】
本発明の一部の態様は、神経変性障害(例えばパーキンソン病)の治療のための医薬組成物を提供する。
【0040】
本発明の一部の態様では、パーキンソン病を治療する方法であって、上記のような本発明のある特定の態様による医薬組成物を腸内投与するステップを含む、方法が提供される。
【0041】
一部の実施形態では、医薬組成物は、1日あたり約16時間未満の期間にわたり連続的に投与される。
【0042】
一部の実施形態では、医薬組成物は、1日あたり約16時間を超える期間、例えば24時間にわたり、連続的に投与される。
【0043】
一部の実施形態では、医薬組成物は、長期治療として1日を超えて連続的に投与される。
一部の実施形態では、医薬組成物は、レボドパ、ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤およびCOMT阻害剤を含み、COMT阻害剤とドーパミン脱炭酸酵素阻害剤との重量比は、約10:1から約2:1、または約5:1から約3:1である。
【0044】
一部の実施形態では、医薬組成物は、レボドパ、ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤およびCOMT阻害剤を含み、ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤とレボドパとの重量比は、少なくとも約1:10である。
【0045】
一部の実施形態では、医薬組成物は、レボドパ、ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤およびCOMT阻害剤を含み、レボドパ、ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤およびCOMT阻害剤は、粒子の形態であり、粒子は水性担体中に懸濁し、約80μm以下の粒子径を有する。
【0046】
一部の実施形態は、従属請求項において記載されている。
本発明のより完全な理解、ならびにさらなるその特性および利点は、添付の図面と併せて読まれる以下の詳細な記載を参照することにより得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】400mg/日から2000mg/日のTrigelの用量に続く、シュミレーションされたレボドパの血漿濃度を示す図である。朝の用量は、1日総用量の25%であった。漸増は、より高い用量でより明白である。
【
図2】800mg/日から2000mg/日のTrigelの用量に続く、シュミレーションされたレボドパの血漿濃度を示す図である。朝の用量は、1日総用量の20%であり、継続用量は5時間後(正午)に20%低減された。線形傾向(μg/h)は、平坦な(定常の)レボドパの血漿濃度を示す。
【
図3】400mg/日から1200mg/日のTrigelの用量に続く、シュミレーションされたレボドパの血漿濃度を示す図である。朝の用量は、1日総用量の25%であり、1つの継続的な流速を続けた。線形傾向は、わずかな漸増を示す。漸増は、低用量についてDuodopa処置で見られた漸増と類似する。
【発明を実施するための形態】
【0048】
定義
本明細書で使用される場合、「活性化剤」という用語は、薬剤が存在しない(または薬剤を異なるレベルで用いる)ときに観察されるものと比べて、その存在またはレベルが標的のレベルまたは活性の上昇と相関する薬剤を表す。一部の実施形態では、活性化剤は、その存在またはレベルが、特定の参照レベルまたは活性(例えば周知の活性化剤、例えば陽性対照の存在のような適切な参照条件下で観察されるもの)と同等であるかまたはそれよりも大きい標的のレベルまたは活性と相関するものである。
【0049】
本明細書で使用される場合、「投与」という用語は、対象または系への組成物の投与を表す。動物対象への(例えばヒトへの)投与は、任意の適切な経路によるものであり得る。例えば一部の実施形態では、投与は、気管支(気管支内注入を含む)、頬側、経腸、皮下(interdermal)、動脈内、皮内、胃内、髄内、筋肉内、鼻内、腹腔内、脊髄内、静脈内、脳室内、特定の器官内(例えば肝内)、粘膜、鼻腔、経口、直腸内、皮下(subcutaneous)、舌下、局所、気管(気管内注入を含む)、経皮、腟内および硝子体内であってもよい。一部の実施形態では、投与は、間欠投薬を伴ってもよい。一部の実施形態では、投与は、少なくとも選択された期間、連続的投薬(例えば灌流)を伴ってもよい。当該技術分野において周知であるように、抗体療法は、一般的に、非経口(例えば静脈内または皮下注入により)投与される。
【0050】
本明細書で使用される場合、「およそ」または「約」という用語は、1つまたは複数の目的の値に適用される場合、記載されている参照値に類似する値を表す。ある特定の実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、他に記載のない限り、またはそうでないことが文脈から明らかでない限り(そのような数が、可能な値の100%を超えるときを除き)、記載されている参照値の25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以下の中にいずれかの方向で(それを超えるまたはそれ未満で)当てはまる値の範囲を表す。
【0051】
「関連する」という用語が本明細書で使用される場合、一方の存在、レベルおよび/または形態が他方のものと相関する場合、2つの事象または実体は、互いに「関連する」。例えば特定の実体(例えばポリペプチド、遺伝子シグネチャー、代謝産物等)は、その存在、レベルおよび/または形態が、疾患、障害または状態の発生率および/または感受性と(例えば適切な母集団全体で)相関している場合、特定の疾患、障害または状態と関連すると考えられる。一部の実施形態では、2つ以上の実体は、これらが互いに物理的近接であるおよび/またはあり続けるように直接または間接的に相互作用している場合、互いに物理的に「関連する」。一部の実施形態では、互いに物理的に関連する2つ以上の実体は、互いに共有結合しており、一部の実施形態では、互いに物理的に関連している2つ以上の実体は、互いに共有結合していないが、例えば水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、磁力およびそれらの組合せの手段により、非共有結合的に関連している。
【0052】
本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、組成物とともに投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルを表す。一部の例示的な実施形態では、担体には、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油等のような、石油、動物、植物または合成起源の油を含む、例えば水または油のような滅菌液を挙げることができる。一部の実施形態では、担体は、1つまたは複数の固形成分であるかまたはそれを含む。
【0053】
本明細書で使用される場合、「併用療法」という用語は、対象が2つ以上の治療レジメン(例えば2つ以上の治療剤)に同時に曝露する状況を表す。一部の実施形態では、2つ以上の薬剤は、同時に投与されてもよく、一部の実施形態では、そのような薬剤は逐次投与されてもよく、一部の実施形態では、そのような薬剤は、重複する投薬レジメンにおいて投与される。
【0054】
本発明による「組成物」または「医薬組成物」は、同時投与または同じレジメンの一部としての投与のための、本明細書に記載されているような2つ以上の薬剤の組合せを表す。薬剤の組合せが物理的な混合物となることは、すべての実施形態においては必要とされていない、すなわち、組成物の成分の各々を別個の共薬剤(co-agent)として投与することが可能であるが、当該分野の多くの患者または実践者は、2つ以上の成分の、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤中の混合物である組成物を調製することが有利であり、組合せの構成成分を同時に投与することが可能となることを見出すであろう。
【0055】
本明細書で使用される場合、「同等」という用語は、互いに同一ではあり得ないが、観察された差異および類似性に基づき結論を合理的に引き出すことができるように、そこで比較することが許容されるのに十分に類似している2つ以上の薬剤、実体、状況、条件のセット等を表す。一部の実施形態では、同等な条件、状況、個体または集団のセットは、複数の実質的に同一の特徴および1つまたは少数の異なる特性があるという特徴を有する。当業者は、任意の所与の状況において、2つ以上のそのような薬剤、実体、状況、条件のセット等が同等と考えられるためにどの程度の同一性が必要とされるかを、文脈において理解するであろう。例えば、当業者は、状況、個体または集団の異なるセットの下でまたはそれらを用いて得られた結果または観察された現象における差異が、これらの異なる特性の変動により生じるかまたはそれを示すという合理的な結論を保証するのに十分な数および種類の実質的に同一な特性があるという特徴を有するときに、状況、個体、または集団のセットは互いに同等であることを認識するであろう。
【0056】
本明細書で使用される場合、「ドーパミン補充剤(dopamine replacement agent)」という用語は、ヒトへの投与が、そのような投与が存在しないときに観察されるものと比較して、脳内のドーパミンレベルの増大と相関する薬剤を表す。一部の実施形態では、ドーパミン補充剤は、血管脳関門を通過する能力という特徴を有する。一部の実施形態では、ドーパミン補充剤は、ドーパミンの代謝前駆体(例えばレボドパ、メレボドパ、エチレボドパ等およびそれらの組合せ)、ドーパミンアゴニスト(例えばアポモルヒネ、ブロモクリプチン、カベルゴリン、ジヒドロエルゴクリスチンメシル酸塩、ペルゴリド、ピリベジルプラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチン等およびそれらの組合せ)、ドーパミンの分解を遮断する薬剤(例えばセレギリン、ラサギリン等のようなMAO-B阻害剤およびそれらの組合せ)および/または他にドーパミン産生を刺激する薬剤(例えばブジピン)からなる群から選択される。これらの薬剤の多様な市販の製剤および調合剤は当該技術分野で周知であり、ある特定の経口(例えばカプセル剤または錠剤)、経皮(例えばパッチ)、非経口(例えば特に注入のための、皮下、静脈内、脊髄内等)、および/または他の(例えばゲルおよび特に腸内用ゲル)製剤が挙げられる。
【0057】
本明細書で使用される場合、「剤形」という用語は、対象への投与のための、活性剤の物理的に分離した単位(例えば治療または診断剤)を表す。各単位は、事前に決定された量の活性剤を含有する。一部の実施形態では、そのような量は、適切な母集団に投与されるとき、所望のまたは有益な転帰と相関することが決定されている投薬レジメンによる(すなわち、治療的投薬レジメンによる)投与に適切な単位投与量(または、その分画全体)である。当業者は、特定の対象に投与される治療用組成物または薬剤の総量が1人または複数の担当医により決定され、複数の剤形の投与を伴い得ることを認識する。
【0058】
本明細書で使用される場合、「投薬レジメン」という用語は、典型的に期間により分けられ、対象に個々に投与される、単位用量のセット(典型的に1つを超える)を表す。一部の実施形態では、所与の治療剤は、1つまたは複数の用量を伴い得る、推奨される投薬レジメンを有する。一部の実施形態では、投薬レジメンは、それらの各々が同じ長さの期間により互いに分けられている複数の用量を含み、一部の実施形態では、投薬レジメンは、複数の用量を含み、少なくとも2つの異なる期間で個々の用量が分けられている。一部の実施形態では、投薬レジメン内のすべての用量は、同一の単位投与量である。一部の実施形態では、投薬レジメン内の異なる用量は、異なる量である。一部の実施形態では、投薬レジメンは、第1の投与量における第1の用量、続けて第1の投与量とは異なる第2の投与量における1つまたは複数のさらなる用量を含む。一部の実施形態では、投薬レジメンは、第1の投与量における第1の用量、続けて第1の投与量と同一の第2の投与量における1つまたは複数のさらなる用量を含む。一部の実施形態では、投薬レジメンは、適切な母集団全体に投与される(すなわち、治療的投薬レジメンである)とき、所望のまたは有益な転帰と相関する。
【0059】
本明細書で使用される場合、「賦形剤」という用語は、医薬組成物中に含まれ得、例えば所望の一貫性または安定効果をもたらすまたはそれらに寄与する、非治療剤を表す。好適な医薬賦形剤には、例えばデンプン、ブドウ糖、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセリン、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。
【0060】
本明細書で使用される場合、「ゲル」という用語は、そのレオロジー特性が、例えば溶液、固形等と区別される、粘弾性の材料を表す。一部の実施形態では、材料または組成物は、その貯蔵弾性率(G’)がその弾性率(G”)よりも大きい場合、ゲルと考えられる。一部の実施形態では、組成物は、例えば粘性溶液中のもつれた分子と区別されるような、溶液中に化学的または物理的に架橋されたネットワークが存在する場合、ゲルと考えられる。一部の実施形態では、ゲル組成物は、マトリックス内に懸濁しているかまたは他の方法で分布している、第1の材料の粒子であり得るまたはそれを含み得る。一部の実施形態では、マトリックスは、多糖型であるかそれを含み、例えばセルロース、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびそれらの塩、キサンタンガム、カラギーナンならびにそれらの組合せから選択され、担体はまた、ポリビニルピロリドン(PVP;ポビドン)またはポリアクリル酸(PAA;カルボマー)のような合成ポリマーであってもよい。例示的な担体は、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(NaCMC)である。
【0061】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、提供される組成物が、例えば実験用、診断用、予防用、化粧用、および/または治療用目的のために投与されるか、または投与され得る、任意の生物を表す。典型的な患者には、動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、および/またはヒトのような哺乳動物)が挙げられる。一部の実施形態では、患者は、ヒトである。一部の実施形態では、患者は、1つまたは複数の障害または状態(例えばドーパミン関連疾患、障害または状態、例えばPDのような神経変性障害)を患うか、それに感受性である。一部の実施形態では、患者は、疾患、障害または状態の1つまたは複数の症状を示す。一部の実施形態では、患者は、1つまたは複数の疾患、障害または状態と診断されている。一部の実施形態では、患者は、疾患、障害または状態を診断するおよび/または処置するための、ある特定の治療を受けているまたは受けていた。
【0062】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、活性剤が任意選択で1つまたは複数の薬学的に許容される担体と一緒に配合されている組成物を表す。一部の実施形態では、活性剤は、適切な母集団に投与されるとき、事前に決定された治療効果を達成するという統計学的に有意な確率を示す治療レジメンにおける投与に適切な単位投与量で存在する。一部の実施形態では、医薬組成物は、以下:経口投与、例えば水薬(水性もしくは非水性の液剤もしくは懸濁剤)、錠剤、例えば頬側、舌下および全身性吸収を対象としたもの、ボーラス、散剤、顆粒剤、舌への適用のためのペースト剤;非経口投与、例えば皮下、筋肉内、静脈内もしくは硬膜外注入により、例えば滅菌された溶液もしくは懸濁剤、または徐放製剤として;局所適用、例えばクリーム剤、軟膏、または皮膚、肺もしくは口腔に適用される制御放出パッチもしくはスプレー剤として;膣内もしくは直腸内、例えばペッサリー、クリーム剤もしくはフォーム剤として;舌下;接眼;経皮;あるいは経鼻、経肺および他の粘膜表面に適用されるものを含む、固形または液体形態における投与のために特に配合されてもよい。
【0063】
本明細書で使用される場合、「せん断速度」という用語は、平行な内側表面が互いにずれる材料物質の進行性の変形が、一部の材料に適用される速度を表す。本明細書で使用される場合、「中程度のせん断速度」は、水性担体が中程度にアジテートされるときのせん断速度であり、典型的に、およそ500s-1未満であるがおよそ20s-1より高いせん断速度に対応し、ここで担体はほぼ静止している。
【0064】
「安定」という用語は、本明細書の組成物に適用されるとき、組成物が、指定された条件のセット下である期間にわたり、それらの物理的構造および/または活性の1つまたは複数の態様を維持することを意味する。一部の実施形態では、期間は、少なくとも約1時間であり、一部の実施形態では、期間は、約5時間、約10時間、約1(1)日、約1(1)週、約2(2)週、約1(1)カ月、約2(2)カ月、約3(3)カ月、約4(4)カ月、約5(5)カ月、約6(6)カ月、約8(8)カ月、約10(10)カ月、約12(12)カ月、約24(24)カ月、約36(36)カ月以上である。一部の実施形態では、期間は、約1(1)日から約24(24)カ月、約2(2)週から約12(12)カ月、約2(2)カ月から約5(5)カ月等の範囲内である。一部の実施形態では、指定された条件は、周囲条件(例えば室温および大気圧)である。一部の実施形態では、指定された条件は、生理的条件(例えばインビボまたは約37℃、例えば血清中またはリン酸緩衝生理食塩水中)である。一部の実施形態では、指定された条件は、冷蔵下(例えば約4℃、-20℃もしくは-70℃であるかまたはそれを下回る)である。一部の実施形態では、指定された条件は、暗所である。
【0065】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、対象の特徴または特性の完全なまたはほぼ完全な範囲または程度を呈する、定性的状態を表す。生物学分野の当業者は、生物学的および化学的現象は、完了するおよび/もしくは完全なものへと進行すること、または絶対的な結果を達成するかもしくは避けることは、あったとしても稀であることを理解するであろう。「実質的に」という用語は、したがって、多くの生物学的および化学的現象に固有である、完全性の潜在的な欠如を捕捉するために、本明細書で使用される。
【0066】
本明細書で使用される場合、「治療剤」または「活性剤」(例えば「活性化合物」)という句は、一般的に、生物に投与されるとき、所望の薬学的効果を引き出す任意の薬剤を表す。一部の実施形態では、薬剤は、適切な集団全体で統計学的に有意な効果を示す場合、治療剤であると考えられる。一部の実施形態では、適切な集団は、モデル生物の集団であってもよい。一部の実施形態では、適切な集団は、ある特定の年齢群、性別、遺伝的背景、既存の臨床的状態等のような、多様な基準により定義されてもよい。一部の実施形態では、治療剤は、疾患、障害および/または状態の1つまたは複数の症状または特性を、緩和する、改善する、軽減する、阻害する、予防する、発現を遅延する、重症度を低減する、および/または発生率を低減するために使用することができる物質である。一部の実施形態では、「治療剤」は、ヒトへの投与のために市販できるようになる前に、政府機関により承認されているか、または承認を必要とする薬剤である。一部の実施形態では、「治療剤」は、ヒトへの投与のために処方箋を必要とする薬剤である。
【0067】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、投与されたものに対して所望の効果をもたらす量を意味する。一部の実施形態では、該用語は、疾患、障害および/または状態を患うかまたは感受性である集団へと治療的投薬レジメンに従って投与されるとき、疾患、障害および/または状態を処置するのに十分な量を表す。一部の実施形態では、治療有効量は、疾患、障害および/または状態の1つまたは複数の症状の発生率および/もしくは重症度を低減する、ならびに/または発現を遅延するものである。当業者は、「治療有効量」という用語が、特定の個体において実際に成功裡の処置が達成されることを必要とするものではないことを認識するであろう。むしろ、治療的有効量は、そのような処置を必要とする患者に投与されるとき、多数の対象において特定の所望の薬学的反応をもたらす量であってもよい。一部の実施形態では、治療有効量への参照は、1つまたは複数の特定の組織(例えば疾患、障害または状態に侵されている組織)または体液(例えば血液、唾液、血清、汗、涙、尿等)中で測定されるような量への参照であってもよい。当業者は、一部の実施形態では、特定の薬剤または治療の治療有効量が、単一用量中に配合され得るおよび/または投与され得ることを認識するであろう。一部の実施形態では、治療有効量は、複数の用量中に、例えば投薬レジメンの一部として、配合され得るおよび/または投与され得る。
【0068】
本明細書で使用される場合、「治療」(また、「治療する」または「治療すること」)という用語は、特定の疾患、障害および/または状態(例えばがん)の1つまたは複数の症状、特性および/または原因を、部分的にまたは完全に、緩和する、改善する、軽減する、阻害する、発現を遅延する、重症度を低減する、および/または発生率を低減する物質(例えば抗受容体チロシンキナーゼ抗体または受容体チロシンキナーゼアンタゴニスト)の任意の投与を表す。そのような治療は、関係する疾患、障害および/もしくは状態の徴候を呈しない対象、ならびに/または疾患、障害および/もしくは状態の初期の徴候のみを呈する対象へのものであってもよい。代わりにまたはさらに、そのような治療は、関係する疾患、障害および/または状態の1つまたは複数の立証された徴候を呈する対象へのものであってもよい。一部の実施形態では、治療は、関係する疾患、障害および/または状態を患うと診断された対象へのものであってもよい。一部の実施形態では、治療は、関係する疾患、障害および/または状態の発症のリスクの増大と統計学的に相関する1つまたは複数の感受性因子を有することが周知である対象へのものである。
【0069】
本明細書で使用される場合、「単位用量」という表現は、単一用量として、および/または物理的に分離した医薬組成物の単位で投与される量を表す。多くの実施形態では、単位用量は、活性剤の事前に決定された量を含有する。一部の実施形態では、単位用量は、
薬剤の単一用量全体を含有する。一部の実施形態では、1つを超える単位用量は、総単一用量を達成するために投与される。一部の実施形態では、複数の単位用量の投与は、意図された効果を達成するために、必要とされる、または必要とされることが予期される。単位用量は、例えば事前に決定された量の1つもしくは複数の治療剤を含有する液体(例えば許容される担体)の容積、事前に決定された量の1つもしくは複数の固形形態の治療剤、事前に決定された量の1つもしくは複数の治療剤を含有する徐放製剤または薬物送達デバイス等であってもよい。単位用量は、治療剤に加えて多様な成分のいずれかを含む製剤で存在し得ることが認識されよう。例えば許容される担体(例えば薬学的に許容される担体)、希釈剤、安定剤、緩衝剤、防腐剤等は、後に記載されているように含まれてもよい。当業者は、多くの実施形態では、特定の治療剤の適切な1日総用量が、一部のまたは複数の単位用量を含み得、例えば確実な根拠のある医学的判断の範囲内で、担当医により決定され得ることを認識するであろう。一部の実施形態では、任意の特定の対象または生物についての特定の有効用量レベルは、治療される障害および障害の重症度;採用された特定の活性化合物の活性;採用された特定の組成物;対象の年齢、体重、健康全般、性別および食事;採用された特定の活性化合物の投与時間および排出率;治療の継続期間;採用された特定の化合物と組み合わされたかまたはそれと同時に使用される薬物および/またはさらなる治療、ならびに医学分野において公知の同様の因子を含む、多様な因子に依存し得る。
【0070】
「継続投与する」という用語は、医薬組成物が連続的に投与されることを意味し得るが、投薬ポンプを使用する高頻度のマイクロドージングも含む。後者の典型的な例は、ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤(DDI)、例えばレボドパを、投薬ポンプを使用した連続流のマイクロドーズによる投与量あたり最大5mg投与することである。
【0071】
詳細な説明
以下の記載は、本発明の例示および例証のためのみのものであり、本発明を記載されている特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0072】
別途定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
【0073】
特許出願および刊行物を含む、本明細書で引用されているすべての参照文献は、その全体を参照により組み込まれる。
【0074】
上述のように、本発明は、ある特定のドーパミン関連疾患、障害および状態を治療するために組成物を投与するための、新規の方法または計画、およびキットに関する。多くの実施形態では、本発明は、神経変性疾患(例えばパーキンソン病、以降で高頻度でPDと称される)を治療するための組成物および/または方法論に関する。特に、本発明は、ドーパミン補充剤、COMT阻害剤(例えばエンタカポン、オピカポン、トルカポン等およびそれらの組合せ)と、ドーパミン補充剤(例えばレボドパ、メレボドパ、エチレボドパ、ブジピンおよびそれらの組合せ)およびドーパミン脱炭酸酵素(例えばカルビドパ、ベンセラジド、およびそれらの組合せ)とを一緒に伴う、医薬組成物の文脈における連続的投与に関する。多くの実施形態では、すべての3つの成分は、腸内、静脈内、皮下または経口で、多くの場合同一の組成物中で(すなわち、同一の単位剤形で)投与される。しかし、組成物の成分は、別個にまたは任意の組合せで投与されてもよい。
【0075】
(連日投与の方法)
本発明は、1日総用量のドーパミン補充剤を患者に投与する方法に関する。ドーパミン補充剤は、ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤(DDI)およびカテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)阻害剤と一緒に、異なる化合物が個々にまたは組み合わせて投与され得る医薬組成物中で投与され、方法は:
a.ドーパミン補充剤の1日総投与量の20~35%である、医薬組成物の第1の投与量を投与するステップ;および
b.合計してドーパミン補充剤の1日総投与量となる医薬組成物の第2の投与量を連続的に投与するステップ
を含む。
【0076】
第1の投与は、個々の成分が別個にまたは組み合わせて投与され得るとしても、1つの用量として投与される。PDのような神経変性疾患を患う患者は、通常、朝により明白な症状を有し、したがって、第1の用量は、可及的速やかにドーパミン補充剤を臨床レベルを超えて増大させることを目的とし、したがって、第1の用量は、ドーパミン補充剤を多く含む。第1の用量は、1日総用量の20~35%、好ましくは25~30%とするべきである。第1の用量のレボドパの血漿濃度に対する効果を
図1に示し、ここで最初の濃度のピークが示されている。第1の用量は、ドーパミン補充剤を下方の臨床値を超えて増大させるのに十分高いが運動亢進症のレベルを超えない、ドーパミン補充剤の投与量を有するべきである。下方の臨床レベルおよび運動亢進症レベルのこれらの2つのレベルは、患者に依存し、したがって、第1の用量は、個々の患者に好適なものとなるように調節すべきである。
【0077】
第2の用量は、次いで、好適な期間、患者に連続的に投与される。この期間は、12~18時間、例えば13~17時間または14~16時間であってもよい。一実施形態では、第2の用量は、18時間を超えて、例えば24時間投与される。第2の用量は、合計して1日総用量となり、第2の用量は、それゆえ、1日総用量の65~80%としてもよい。第2の用量の投与量は、はるかに低い。全体として、このことは、十分な治療効果を伴いながら、ドーパミン補充剤の1日総投与量の30~40%の減少をもたらす。
【0078】
第2の用量の組成物は、連続的投与を促進するために、ゲル、液体または懸濁剤であり、投与速度は15~100mg/hであってもよい。本発明者らは、第2の用量の投与中、レボドパの血漿中濃度の漸増を確認した。このことを
図1に示す。
【0079】
理論により拘束されるものではないが、この現象の理由は、DDIと異なり、COMT阻害剤がCOMTにより強固に結合し、それにより、より長い期間、阻害されたCOMTの蓄積がもたらされるからであると考えられている。したがって、阻害効果は時間とともに増大し、レボドパまたはドーパミン補充剤の増大をもたらす。この現象は、2つの好ましい効果を有する。第1は、多くの患者が1日の後半または夕方により高いまたは補完的な用量を必要とするため、ドーパミン補充剤の濃度が増大および蓄積することは、患者にとって役立つということである。本方法により、用量の一時的な増大または補完的な用量は不要となる。第2の効果は、1日総用量が低減し得るということである。
【0080】
ドーパミン補充剤、ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤(DDI)およびカテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)阻害剤は、各々別個に、組み合わせて、または一緒に投与してもよい。別個にまたは2つの組合せで投与する場合、別個の部を投与する間の時間は、阻害剤の予防効果が失われるような実質的なものとすべきではない。典型的に、時間差は数分を超えるべきではなく、例えば5分を超えるべきではない。一実施形態では、ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤(DDI)およびカテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)阻害剤は、一緒に投与される。別の実施形態では、ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤(DDI)およびドーパミン脱炭酸酵素阻害剤(DDI)(the dopamine decarboxylase inhibitor (DDI))は一緒に投与され、カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)阻害剤は、別個に、しかし数分以内に投与される。
【0081】
一実施形態では、第2の用量は、第1の部分および第2の部分の2つ以上の部分で、与えられるかまたは投与されてもよい。第2の用量の第1の部分は、最初に、好適な期間、例えば3~8時間、例えば4~6時間、連続的に投与されてもよい。該期間後、継続用量は低減され、第2の用量の第2の部分は、1日総用量が達成されるまで連続的に投与される。第2の部分について、時間あたり、第1の部分より少なくとも10%低いような、例えば第1の部分の20~30%の減少のような、より低い量のドーパミン補充剤が投与される。これは勿論、患者による。そのような投与レジメンについての経時的なレボドパの血漿濃度を、
図2に示す。この種類の投与は、運動亢進症を患うまたは運動亢進症に感受性のPD患者に特に好適である。さらに、この方法は、1日総用量をなおさらに低下させる。
【0082】
第1および第2の用量の組成物は、両方とも、ゲル、液体または懸濁剤であってもよく、好適なポンプを使用して投与してもよく、ここで投与量はポンプにより調節される。
【0083】
本組成物または本方法は、200から3500mgまたは400から3000mgのような、任意の1日総用量に好適である。ドーパミン補充剤のなおより明白な漸増は、800mg以上および1000mg以上のような、より高い用量について見られる。
【0084】
本方法は、PDを患う患者にとって、および運動亢進症への感受性をさらに患うかまたは運動亢進症になる傾向を有するPD患者にとっても、好ましく好適である。
【0085】
PDのような神経変性疾患を患う患者は通常、朝に、ドーパミンまたはドーパミン補充剤の低いレベルを有する。第1の用量は、したがって、通常、非限定的な様式で午前5時から午前10時、または午前6時から午前9時の間のいつかと定義され得る、朝に投与される。
【0086】
本発明による組成物は、固形、液体、溶液、ゲルまたは懸濁剤の形態であってもよい。固形は、例えば錠剤または粉末であってもよく、該錠剤または粉末は、好ましくは経口投与のためのものである。第1の用量の組成物は、固形、液体、懸濁剤またはゲルの形態であってもよい。一実施形態では、第1の用量の組成物は、液体、溶液、懸濁剤またはゲルである。第1の用量は、経口、静脈内、皮下、腸内または経皮、好ましくは経口または腸内投与されてもよい。
【0087】
第2の用量をより容易に連続的に投与するため、第2の用量の組成物は、液体、溶液、ゲルまたは懸濁剤の形態とすべきである。第2の用量は、静脈内、皮下、腸内または経皮であってもよい。
【0088】
本方法の利点は、本方法が1日総用量を平均で少なくとも30%低下させることを可能にするということである。さらに、方法は、方法を患者および運動亢進症に感受性の患者に適合させ、ドーパミン補充剤の自然なまたは本来備わった増大をもたらす。
【0089】
(24時間投与の方法)
代わりの治療レジメンには、継続した24時間投与が伴う。該治療レジメンは、夜間に明白なパーキンソン症状を患い、ドーパミン補充剤を絶え間なく必要とする患者に好適である。ドーパミン補充剤、DDIおよびCOMT阻害剤を含む本発明の組成物は連続的に投与され、患者が起床したときに第1回の用量を開始する。投与量は、次いで、連続的に投与されるより低い第2の投与量に変えられる。該第2の投与量は、患者が就寝するまで維持され、投与量は、患者の睡眠中に維持される第3の投与量へとなお再び低下する。ドーパミン補充剤の必要性は、睡眠中は有意により低いため、第3の投与量は、有意により低い。一実施形態では、第1回の用量は、ドーパミン補充剤の1日総用量の10~25%であり得、第2の投与量は1日総用量の50~70%であり、第3の用量は10~40%であり、3つの投与量は合計して24時間の総投与量となる。
【0090】
(投与のためのキット)
第1の容器および少なくとも1つのさらなる容器を含むキットであって、第1のおよび少なくとも1つのさらなる容器が、それぞれ、医薬としての使用のための本発明による医薬組成物の第1のおよび第2の投与量を含み、
a.第1の投与量は、ドーパミン補充剤の1日総投与量の20~35%を含み;
b.第2の投与量は、合計してドーパミン補充剤の1日総投与量となり、
少なくとも第2の投与量は、液体の医薬組成物、懸濁剤またはゲルである、キット。
【0091】
キットのさらなる一実施形態では、第1のおよび第2の投与量の両方は、液体の医薬組成物、溶液、懸濁剤またはゲルの形態である。別のものでは、第2の投与量は、第2のおよび第3の容器である2つの容器に分けられ、これらの容器の第3のものは、より低い濃度のドーパミン補充剤を有する医薬組成物を含む。該第3の容器の医薬組成物は、時間単位あたり、より低い投与量のドーパミン補充剤をもたらすことを意図されている。
【0092】
(ドーパミン関連疾患、障害または状態)
多くの実施形態では、本開示は、1つまたは複数のドーパミン関連疾患、障害または状態の治療に関する。一部の実施形態では、本開示は、レボドパ反応性の患者の治療に特に関する。
【0093】
上記のように、ドーパミンは神経伝達物質である。ドーパミンは、神経系においていくつかの重要な役割を果たし、数種の重要な疾患、障害または状態は、ドーパミン系の機能不全に関連する。一部の実施形態では、ドーパミン関連疾患、障害または状態は、疾患、障害または状態が存在しないときに観察されるものに対して、1つまたは複数の関係する神経系領域または組織(例えば脳内またはその特定の領域)において、ドーパミンのレベルおよび/または活性の変化に関連することがある。多くの実施形態では、そのような変化したレベルは、低下したレベルである。
【0094】
例示的なドーパミン関連疾患、障害または状態には、白化症、アルツハイマー病、弱視、アンジェルマン症候群、前部虚血性視神経症、失語症、背部痛、うつ病、ドーパミンベータ水酸化酵素欠損症、薬物(例えばアルコール、コカイン、オピエート)依存/乱用、失読症、ジストニック型脳性麻痺、ハンチントン病、低血圧性失神、衝動制御障害、髄様癌、運動神経疾患、運動障害、多系統萎縮、起立性低血圧、起立耐性失調、パーキンソン病、プリオン病、下肢静止不能症候群、網膜疾患、統合失調症、脊髄損傷、脊髄性筋萎縮、脊髄小脳失調症、卒中、甲状腺癌、甲状腺新生物、トゥレット症候群等を挙げることができる。
【0095】
一部の実施形態では、ドーパミン関連疾患、障害または状態は、1つまたは複数の増殖性障害(例えばがん)、炎症状態、神経変性疾患等、およびそれらの組合せであり得るまたはそれらを含み得る。
【0096】
多くの実施形態では、ドーパミン関連疾患、障害または状態は、神経変性障害(例えばPD、AD、HD)である。
【0097】
本開示の実施形態は、特にPDの治療に関係する。一般的に、本明細書に記載されているような治療を投与されている患者は、PDの任意の段階であり得る。しかし、多くの実施形態では、PD患者は中等度から進行期であり、例えばホーンおよびヤール(H&Y)のII期以上と一致する。一部の実施形態では、PD患者は、運動性の変動および運動亢進症/ジスキネジアを経験している。一部の実施形態では、PD患者は、本明細書に記載されているような1つまたは複数の従来の治療(例えば間欠投薬および/または活性剤への患者の曝露を含むもの)を用いた前治療を受けている。一部の特定の実施形態では、PD患者は、前に経口レボドパ療法を受け、運動性の変動を経験していることがある。一部の実施形態では、本開示は、そのような運動性の変動が、少なくともある程度、波状的ドーパミン作動性刺激に起因する可能性があり、一部の状況では、経口レボドパ療法の短い半減期および/または不安定な吸収(例えば胃内容排出に起因し得るような)により悪化することを提唱する。一部の態様では、本開示は、本明細書で提供されるある特定の組成物(具体的には、(a)ドーパミン補充剤;(b)DDI;および(c)COMT阻害剤の各々を活性剤として含むものを含む)が、そのような患者の治療において多様な利点を提供することができるという識見を提供する。いかなる特定の理論に拘束されるものではないが、そのような組成物は、これらの(または他の患者において)実質的に継続的なドーパミン作動性刺激を達成することができ、それにより治療転帰を改善することができ、特に、運動性の変動が発生するまたは悪化するリスクを減少し得ることが提唱されている。
【0098】
患者は、1日あたり少数の錠剤を用いて治療されることができるが、典型的には抗パーキンソン医薬の混合物を受ける。患者は、レボドパカルビドパ経腸ゲル(DUODOPA(登録商標)、DUOPA(登録商標))、アポモルヒネ、DBSおよび/またはそれらのパッチもしくは組合せのような、より継続的なドーパミン作動性刺激を用いても治療されることができる。
【0099】
ドーパミン関連疾患、障害または状態のための現在の推奨療法には、多くの場合、ドーパミン、投与後にドーパミンに代謝的に変換される前駆体(例えばレボドパ、メレボドパ、エチレボドパ)、または別の種類のドーパミン補充剤の投与が挙げられる。特に、代謝前駆体のレボドパは、特にPDのような神経変性ドーパミン関連疾患、障害または状態の治療において、一般的に投与される。
【0100】
(ドーパミン補充剤)
上記のように、多くのドーパミン関連疾患、障害または状態は、1つまたは複数の関係する組織または部位におけるドーパミンレベルの低下と関係する。推奨療法には、多くの場合、ドーパミン、または投与後にドーパミンへと代謝的に変換される前駆体化合物の投与が挙げられる。特に、ドーパミンが血管脳関門を通過しないことを考慮すると、血管脳関門を通過する代わりの薬剤は、PDのような神経変性ドーパミン関連疾患、障害または状態の治療に特に望ましい。そのような薬剤は、本明細書において「ドーパミン補充剤」と称され、例えばドーパミンの代謝前駆体(例えばレボドパ、メレボドパ、エチレボドパ等およびそれらの組合せ)、ドーパミンアゴニスト(例えばアポモルヒネ、ブロモクリプチン、カベルゴリン、ジヒドロエルゴクリスチンメシル酸塩、ペルゴリド、ピリベジルプラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチン等およびそれらの組合せ)、ドーパミンの分解を遮断する薬剤(例えばMAO-B阻害剤、例えばセレギリン、ラサギリン等、およびそれらの組合せ)および/または他にドーパミン産生を刺激する薬剤(例えばブジピン)が挙げられる。これらの薬剤の多様な市販の製剤および調合剤は当該技術分野で周知であり、ある特定の経口(例えばカプセル剤または錠剤)、経皮(例えばパッチ)、非経口(例えば特に注入のための、皮下、静脈内、脊髄内等)、および/または他の(例えばゲル、および特に腸内用ゲル)製剤が挙げられる。
【0101】
レボドパ療法は、現在、PDの治療についての標準治療である。
芳香族アミノ酸であるレボドパは、白色の結晶性化合物であり、水に難溶性であり、分子量は197.2である。レボドパは、化学的に、(-)-L-α-アミノ-β-(3,4-ジヒドロキシベンゼン)プロパン酸と呼ばれる。レボドパの実験式はC9H11NO4であり、その構造式は、以下のものである:
【0102】
【0103】
レボドパは、ドーパミンへの代謝前駆体であるだけでなく、両方ともドーパミンのようにカテコールアミンクラスの一員である、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)およびエピネフリン(アドレナリン)のような他の神経伝達物質への代謝前駆体である。
【0104】
レボドパの投薬および投与は、特にPDを患う患者に対しては、課題が生じることがある。個体がPDの臨床症状を発現する前に、個体は脳内でドーパミンニューロンの50から60%を既に失っており、結果として、ドーパミン濃度がおよそ70から80%、対応して減少している。初期の疾患では、生存しているニューロンはなお、レボドパの短い半減期および高頻度の予測不能な経口医薬の経腸吸収によるレボドパの血漿レベルの変動にも関わらず、レボドパを取り込み、それをドーパミンとして保存し、ドーパミンを継続的かつ比較的定常的な様式で、経時的にゆっくりと放出することが可能である。しかし、進行性の疾患では、より多くのドーパミンニューロンが死滅し、この緩衝能力は失われる。
【0105】
したがって患者は、時間とともに、レボドパの有益な効果が数時間続き、次いで減少または弱まるという、運動性の変動として周知の現象に気づきはじめる。ドーパミンニューロンがより多く失われるにつれて、患者の臨床反応は、レボドパの血液濃度の変動をよりしっかりと反映することとなり、最終的に、レボドパの反応は1または2時間のみ持続し、その後弱まることがある。緩衝能力を失うことにより、ドーパミン受容体は、レボドパの血漿レベルの変動に起因する、ドーパミン濃度の変動に曝露することとなる。脳内のレボドパ由来のドーパミン濃度が非常に高いとき、患者はジスキネジア(方向転換運動)を経験し、脳のドーパミン濃度が非常に低いとき、PD症状が再発する。このことは、経時的に次第に狭まる治療濃度域を創出する。患者がジスキネジアを呈すると、より多くのドーパミン医薬の追加は、ジスキネジアを増大させ、一方でドーパミン医薬の減少は、PD症状が再発するオフタイムを増大させる。
【0106】
経口レボドパ製剤で得られる波状のドーパミン刺激は、従来の徐放経口レボドパ製剤よりいくぶん低減されるのみである。代わりの製剤および投薬計画は、有効なレボドパ投与の改善を期待して、探索し続けられている。本開示は、特にDDIおよびCOMT阻害剤と組み合わせた、改善されたレボドパ投与を達成するための技術であって、具体的には、対象への驚くべき利益を伴いながらこれらの薬剤の各々に対する制御された曝露を達成する組成物および方法を提供することによる、技術を提供する。さらに、一部の実施形態では、本開示は、組合せ組成物(例えばレボドパ、DDIおよびCOMT阻害剤[特にエンタカポン]の各々を含む組成物)であって、本明細書で示されるように、一部の実施形態では同一な3つの薬剤の代わりの製剤と比較してさえもレボドパの安定性を非常に改善する、組合せ組成物を提供する。
【0107】
一部の実施形態では、本発明に従って、レボドパは経口投与されてもよい。一部の実施形態では、本発明に従って、レボドパは腸内投与されてもよい。
【0108】
一部の実施形態では、本発明に従って、レボドパは錠剤形態で投与されてもよい。一部の実施形態では、本発明に従って、レボドパはゲル形態で投与されてもよい。一部の特定の実施形態では、レボドパは、ゲル形態で腸内投与されてもよい。
【0109】
レボドパおよびその組成物の投与のための多様な形態は、当該技術分野において周知である。一部のそのような組成物は、レボドパの代謝分解に関連する酵素の特定の阻害剤を含む。例えば、PARCOPA(登録商標)錠剤はレボドパおよびカルビドパの両方を含有し、溶解および嚥下を援助するための水を必要としない、舌上で速やかに崩壊するという特徴を有し;SINEMET(登録商標)およびSINEMET(登録商標)CRはレボドパおよびカルビドパを含有する徐放錠剤であり;KINSON(登録商標)錠剤はレボドパおよびカルビドパの両方を含有し;MADOPAR(登録商標)錠剤はレボドパおよびベンセラジド塩酸塩を含有し;STALEVO(登録商標)は、レボドパ、カルビドパおよびエンタカポンを含有する錠剤である。
【0110】
さらに、DUODOPA(登録商標)は、レボドパの連続的な注腸を提供すると記載されている、レボドパおよびカルビドパの4対1の比での組合せを含有する経腸ゲルである。このゲル形態の使用は、経口製剤で観察されるものに対して、患者(例えば進行したPDを有する)について運動性の変動を低減し、「オン」時間を増大させることが報告されている。レボドパの血漿濃度は治療濃度域内で一定のレベルに保持されるため、運動性の変動および運動亢進症-ジスキネジアは、DUODOPA(登録商標)を受けている患者において(経口療法を受けている患者に対して)低減されると考えられている。DUODOPA(登録商標)は、挿入された管を介して、十二指腸内へと直接投与される。レボドパは、アミノ酸についての高能力の輸送系を通り、腸から急速かつ有効に吸収される。レボドパは、DUODOPA(登録商標)ゲルを介して投与されるとき、錠剤で投与されるときと同一のバイオアベイラビリティ(81~98%)を有する。しかし、個体内でのレボドパ/ドーパミンの血漿濃度の変動は、レボドパがDUODOPA(登録商標)ゲルを介して投与されるとき(錠剤を介するものと比較して)相当に小さく、そのような低減された変動は、DUODOPA(登録商標)ゲルにより達成される連続的な経腸投与に貢献する可能性があり、胃内容排出率の吸収率に対する影響を避けることができると提唱されている。最初の朝の高用量のDUODOPA(登録商標)経腸ゲルを用いると、レボドパ/ドーパミンの治療的血漿レベルは、10~30分以内に達成される。
【0111】
STALEVO(登録商標)錠剤を含む特に利用可能なレボドパの医薬組成物は、例えば米国特許第6,500,867(B1)号および第6,797,732(B2)号に記載されている。レボドパ、カルビドパおよびエンタカポンを含む経口医薬組成物は、WO2008/053297、WO2012/147099、US2006/0222703およびWO2009/098661に記載されている。レボドパのある特定のゲル組成物、および特にDUODOPA(登録商標)のような腸内用ゲル形態は、例えばUS5,635,213およびEP0670713 B1に記載されている。
【0112】
PARCOPA(登録商標)についての処方情報は、PARCOPA(登録商標)が3つの力価:カルビドパ25mgおよびレボドパ100mgを含有するPARCOPA(登録商標)25/100;カルビドパ10mgおよびレボドパ100mgを含有するPARCOPA(登録商標)10/100;ならびにカルビドパ25mgおよびレボドパ250mgを含有するPARCOPA(登録商標)25/250で供給されることを示す。不活性成分は、アスパルテーム、クエン酸、クロスポビドン、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、微結晶セルロース、天然のおよび人工のミント風味および炭酸水素ナトリウムである。PARCOPA(登録商標)10/100および25/250は、FD&C blue #2 HTアルミニウムレーキも含有する。PARCOPA(登録商標)25/100は、黄色10酸化鉄も含有する。PARCOPA(登録商標)は、特発性パーキンソン病(振戦麻痺)、脳炎後パーキンソニズム、ならびに一酸化炭素中毒および/またはマンガン中毒による神経系の損傷に続き得る二次性パーキンソニズムの症状の治療に適応がある。PARCOPA(登録商標)は、これらの状態において、悪心および嘔吐が低減され、投与量の滴定がより速やかで、反応がいくぶん穏やかで、追加のピリドキシン(ビタミンB6)を伴う、より低用量のレボドパの投与を可能とすると示されている。推奨される投薬には、1日3回のPARCOPA(登録商標)25/100 1錠を用いて開始することが伴う。この投与スケジュールでは、1日あたりカルビドパ75mgが提供される。投与量は、必要であれば、毎日または1日毎に1錠、1日あたり8錠のPARCOPA(登録商標)25/100の投与量に達するまで、増大してもよい。PARCOPA(登録商標)10/100を使用する場合、投与量は、1日3または4回、1錠で開始してもよい。しかし、このことは、多くの患者について十分な量のカルビドパを提供しないであろう。投与量は、毎日または1日毎に1錠、合計8錠(2錠、1日4回)に達するまで、増大してもよい。
【0113】
SINEMET(登録商標)錠剤とともに提供される処方情報は、SINEMET(登録商標)錠剤を、「カルビドパおよびレボドパの組合せ」として記載しており、「パーキンソン病の治療」に適応があるとしている。SINEMET(登録商標)錠剤は、カルビドパ25mgおよびレボドパ100mgを含有し、1日3回投与される。投与量は、必要であれば、毎日または1日毎に1錠、8錠の最大1日量まで、増大してもよい。SINEMET(登録商標)は、他にレボドパに曝露している対象に投与するべきでなく、SINEMET(登録商標)の投薬は、レボドパの他の投与が中止された少なくとも12時間後まで開始するべきではない。
【0114】
KINSON(登録商標)錠剤についての処方情報は、KINSON(登録商標)錠剤がレボドパ100mgおよび無水カルビドパ25mgを含有することを示している。錠剤は、以下の不活性成分:微結晶セルロース、トウモロコシデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム(sodium starch glycollate)、精製滑石、ポビドン、ステアリン酸マグネシウム、キノリンイエローCI 47005も含有する。KINSON(登録商標)錠剤は、PDおよびパーキンソン症候群の治療に承認されている。KINSON(登録商標)錠剤は、パーキンソニズムの症状の多く、特に強剛および動作緩徐を軽減するのに有用であると言われており、パーキンソン病および症候群に関連する、振戦、嚥下障害、流涎(sialorrhoea)、および姿勢動揺の管理において高頻度に役立つとも報告されている。多くの他のレボドパ/カルビドパ組合せ製品のように、KINSON(登録商標)は、他のレボドパ療法を受けている患者への投与は推奨されず、レボドパ投与は、KINSON(登録商標)を用いた治療の開始の少なくとも12時間前に中止されるべきである。用量を各個々の患者に合わせるために、滴定投薬が推奨されるが、末梢ドーパミン脱炭酸酵素はカルビドパにより1日あたりおよそ70~100mgに飽和されること、およびこの量未満を受けている患者は、悪心および嘔吐をより経験しやすいことに留意されたい。
【0115】
MADOPAR(登録商標)は、その処方情報によると、「ベンセラジド塩酸塩/レボドパ」を含有する、「パーキンソン病に使用される薬」として記載されている。MADOPAR(登録商標)錠剤は、レボドパ50mgおよびベンセラジド塩酸塩12.5mgを含有し、推奨される投薬は、1日に4から8カプセルである。
【0116】
STALEVO(登録商標)錠剤とともに提供される処方情報は、STALEVO(登録商標)錠剤を、「カルビドパ、レボドパおよびエンタカポンの組合せ」として記載しており、これらが「パーキンソン病の治療」における使用のためのものであると示している。STALEVO(登録商標)錠剤は、カルビドパ50mg、レボドパ200mgおよびエンタカポン200mgを含有し、最大推奨投薬は、24時間以内に6錠である。
【0117】
DUOPOPA(登録商標)とともに提供される処方情報は、ゲルが、ゲル1mLあたりレボドパ20mgおよびカルビドパ一水和物5mgを含有することを示している。不活性成分には、カルメロースナトリウムおよび精製水が含まれる。DUOPOPA(登録商標)は、最適化された経口治療にも関わらず重度の運動性の変動を伴う進行した特発性パーキンソン病の治療について、米国で承認されている。常置の経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)管を挿入する前に、一時的な経鼻十二指腸管を介して投与されたDUOPOPA(登録商標)に対する好ましい臨床反応を確認することが推奨される。DUOPOPA(登録商標)はまた、患者の小腸へと直接送達されてもよい。DUOPOPA(登録商標)は、連続的な日中の経腸投与を意図されている。外部経腹腔管(outer transabdominal tube)および内部腸管(inner intestinal tube)を備えた経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)による、常置型管(permanent tube)による、携帯型ポンプ(具体的には、CADD-legacy DUOPOPA(登録商標)ポンプ(CE 0473))を用いた十二指腸内への直接の投与が、特に長期投与について推奨される。PEGが何らかの理由で好適でない場合、代わりに、放射線学的胃空腸吻合術(radiological gastrojejunostomy)が検討されることがある。常置の管を用いた治療を開始する前に、患者がこの治療の方法に好ましく反応するか知るため、および用量を調節するために、一時的な経鼻十二指腸管を使用することが推奨される。用量は、典型的に個々の患者について最適な臨床反応へと調節され、このことは、オフエピソードの数およびオフ時間(動作緩徐)を最小化し、障害をもたらすジスキネジアを伴うオン時間を最小化することにより、日中の機能的なオン時間を最大化することを意味する。少なくとも最初は、DUOPOPA(登録商標)は最初に単剤療法として与えられる(すなわち、他の治療を同時に受けていない患者に投与される)ことが推奨される。
【0118】
一部の実施形態では、本開示は、レボドパの腸内投与のための医薬ゲル組成物を提供および/または利用する。一部の実施形態では、そのような組成物は、約10mg/ml、約15mg/ml、約20mg/ml、約25mg/ml、約30mg/ml、約35mg/ml、約40mg/ml、約45mg/ml、約50mg/ml、約55mg/ml、約60mg/ml、約65mg/ml、約70mg/ml、約75mg/ml、約80mg/ml、約85mg/ml、約90mg/ml、約95mg/ml、約100mg/ml、約105mg/ml、約110mg/ml、約115mg/ml、約120mg/ml、約125mg/ml、約130mg/ml、約135mg/ml、約140mg/ml、約145mg/ml、または約150mg/mlのレボドパを含む。一部の実施形態では、そのような組成物は、約10mg/mlから約150mg/ml、10mg/mlから約140mg/ml、10mg/mlから約130mg/ml、10mg/mlから約120mg/ml、10mg/mlから約110mg/ml、10mg/mlから約100mg/ml、約10mg/mlから約90mg/ml、約10mg/mlから約85mg/ml、約10mg/mlから約80mg/ml、約10mg/mlから約75mg/ml、約10mg/mlから約70mg/ml、約10mg/mlから約65mg/ml、約10mg/mlから約60mg/ml、約10mg/mlから約55mg/ml、約10mg/mlから約50mg/ml、または約20mg/mlから約50mg/mlのレボドパを含む。
【0119】
一部の実施形態では、本開示は、レボドパの経口投与のための医薬組成物を提供または利用することができる。一部の実施形態では、そのような組成物は、約50mg、約75mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、または約300mgのレボドパを含む。
【0120】
(ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤(DDI))
レボドパは、30から60分である体内での短い半減期を有し、レボドパ単独を取り込むと、レボドパが脳に達する前に、90%超がドーパミンに代謝される。よって、レボドパを投与するための多くのプロトコールが大用量の投与を伴い、このことは、次いで、多くの場合悪心および他の有害な副作用を伴うことのある、脳外での高いドーパミンの濃度をもたらす。レボドパのバイオアベイラビリティを増大させ、その副作用を低減するため、レボドパは、したがって通常、ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤(DDI)、典型的にカルビドパ(L-2-ヒドラジノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン酸)またはベンセラジド(DL-2’-(2,3,4-トリヒドロキシベンジル)セリンヒドラジド)とともに投与され、これは脳の外でレボドパのドーパミンへの変換を阻害し、血管脳関門を通過しない。
【0121】
(カルビドパ)
芳香族アミノ酸の脱炭酸の阻害剤であるカルビドパは、白色の結晶性化合物であり、水に難溶性であり、分子量は244.2である。カルビドパは、化学的に、(-)-L-α-ヒドラジノ-α-メチル-β-(3,4-ジヒドロキシベンゼン)プロパン酸一水和物と呼ばれる。
【0122】
カルビドパは、多くの場合、分子量226.3を有する一水和物形態で存在および/または利用される。カルビドパの実験式はC10H14N2O4×H2Oであり、その構造式は、以下のものである:
【0123】
【0124】
多くの実施形態では、カルビドパの重量または重量パーセントによる量への参照は、カルビドパ一水和物の重量(または重量パーセント)で見出される量として理解され得る(すなわち、カルビドパ一水和物の列挙された重量と等しい量として理解され得るまたは理解される)。
【0125】
カルビドパは、患者への投与のために、多様な形態で利用可能である。例えばカルビドパは、Lodosynという名の下で、経口錠剤として市販されている。Lodosyn錠剤は、カルビドパ25mgを含有し、特発性パーキンソン病(振戦麻痺)、脳炎後パーキンソニズム、ならびに一酸化炭素中毒および/またはマンガン中毒による神経系の損傷に続き得る二次性パーキンソニズムの症状の治療において、カルビドパ-レボドパまたはレボドパを伴う使用に適応がある。特に、Lodosynは、カルビドパ-レボドパの投与量がカルビドパの十分な1日投与量(通常毎日70mg)未満を提供する患者において、カルビドパ-レボドパを伴う使用のためのものである。Lodosynは、特に、カルビドパおよびレボドパの必要投与量が各医薬の別個の滴定を要する偶発的な患者における、レボドパを伴う使用のためのものであると言われている。カルビドパ-レボドパまたはレボドパを伴うLodosynの使用は、関係するレボドパの形態/レジメンの投与で観察されるものよりも、悪心および嘔吐が低減され、投与量の滴定がより速やかで、反応がいくぶん穏やかな、より低用量のレボドパの投与を可能とすることが示されている。しかし、レボドパへの著しく異常な(「オン-オフ」)反応を有する患者は、カルビドパの追加による利益を示していないことに留意されたい。Lodosynは、滴定により投与されるべきである。大半の患者は、カルビドパの1日投与量が1日70mg以上であるという条件で、1:10の割合のカルビドパとレボドパに反応すると言われている。Lodosynを(カルビドパの唯一の供給源としてか、またはレボドパ/カルビドパ製品との組合せのいずれかで)受けている対象に投与されるべき最大1日投与量は、200mgを超えるべきではない。
【0126】
上述のように、カルビドパは、レボドパとの組合せで提供されるある特定の形態(例えば経口形態および腸内用ゲル形態)でも利用可能である。
【0127】
一部の実施形態では、本開示は、カルビドパを含むかまたはそれからなる医薬活性剤を含む医薬組成物(例えば腸内投与のための)を、提供および/または利用する。一部の実施形態では、本開示は、医薬組成物を提供および/または利用する。ある特定の実施形態では、本開示は、ドーパミン補充剤(例えばレボドパ)、COMT阻害剤(例えばエンタカポン)または両方との組合せでカルビドパを含むかまたはそれからなる医薬活性剤を含む組成物(例えば腸内投与のための)を提供する。
【0128】
一部の実施形態では、本開示は、約0.5mg/ml、約1.0mg/ml、約1.5mg/ml、約2.0mg/mg、2.5mg/ml、約3.0mg/mg、約3.5mg/mg、約4.0mg/mg、約4.5mg/mg、約5mg/ml、約5.5mg/mg、約6.0mg/mg、約6.5mg/mg、約7.0mg/mg、約7.5mg/ml、約8.0mg/mg、約8.5mg/mg、約9.0mg/mg、約9.5mg/mg、約10mg/ml、約12.5mg/ml、約15mg/ml、約17.5mg/ml、または約20mg/mlのカルビドパを含む組成物(例えば腸内投与のための)を提供および/または利用する。一部の実施形態では、そのような組成物は、約2.5mg/mlから約25mg/ml、約2.5mg/mlから22.5mg/ml、約2.5mg/mlから約20mg/ml、約2.5mg/mlから約17.5mg/ml、約2.5mg/mlから約15mg/ml、約2.5mg/mlから約12.5mg/ml、または約2.5mg/mlから約10mg/mlのカルビドパを含む。
【0129】
(ベンセラジド)
ベンセラジドは、芳香族アミノ酸の脱炭酸の阻害剤であり、分子量は257.2である。ベンセラジドは、化学的に、(RS)-2-アミノ-3-ヒドロキシ-N’-(2,3,4-トリヒドロキシベンジル)プロパンヒドラジドと呼ばれる。ベンセラジドの実験式はC10H15N3O5であり、その構造式は、以下のものである:
【0130】
【0131】
上記のように、ベンセラジドは、ある特定の市販の医薬製品、および特にレボドパとの組合せ製品(具体的には上述のMADOPAR(登録商標)であり、ある特定の管轄区ではPROLOPA(登録商標)としても市販されている)中に含まれる。
【0132】
一部の実施形態では、本発明は、ベンセラジドを含有する1つまたは複数の利用可能な医薬製品を利用することができる。しかし、ある特定の実施形態では、本開示は、新規の組成物中のベンセラジドを提供および/または利用する。ある特定の実施形態では、本開示は、例えば腸内用ゲルを介した、ベンセラジドの腸内投与を意図する。一部の実施形態では、本開示は、ベンセラジドを含むかまたはそれからなる医薬活性剤を含む組成物(例えば腸内投与のための)を提供する。ある特定の実施形態では、本開示は、ドーパミン補充剤(例えばレボドパ)、COMT阻害剤(例えばエンタカポン)または両方との組合せでベンセラジドを含むかまたはそれからなる医薬活性剤を含む、組成物(例えば腸内投与のための)を提供する。
【0133】
一部の実施形態では、本開示は、ベンセラジドの腸内投与のための医薬組成物を提供および/または利用する。一部の実施形態では、そのような組成物は、約2.5mg/ml、約5.0mg/ml、約7.5mg/ml、約10mg/ml、約12.5mg/ml、約15mg/ml、約17.5mg/ml、または約20mg/mlのベンセラジドを含む。一部の実施形態では、そのような組成物は、約2.5mg/mlから約25mg/ml、約2.5mg/mlから22.5mg/ml、約2.5mg/mlから約20mg/ml、約2.5mg/mlから約17.5mg/ml、約2.5mg/mlから約15mg/ml、約2.5mg/mlから約12.5mg/ml、または約2.5mg/mlから約10mg/mlのベンセラジドを含む。
【0134】
一部の実施形態では、本開示は、ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤の腸内投与のための医薬組成物を提供および/または利用する。一部の実施形態では、そのような組成物は、約2.5mg/ml、約5.0mg/ml、約7.5mg/ml、約10mg/ml、約12.5mg/ml、約15mg/ml、約17.5mg/ml、または約20mg/mlの1つまたは複数のドーパミン脱炭酸酵素阻害剤を含む。一部の実施形態では、そのような組成物は、約2.5mg/mlから約25mg/ml、約2.5mg/mlから22.5mg/ml、約2.5mg/mlから約20mg/ml、約2.5mg/mlから約17.5mg/ml、約2.5mg/mlから約15mg/ml、約2.5mg/mlから約12.5mg/ml、または約2.5mg/mlから約10.0mg/mlの、1つまたは複数のドーパミン脱炭酸酵素阻害剤を含む。
【0135】
一部の実施形態では、本開示は、DDIの経口投与のための医薬組成物を提供または利用することができる。一部の組成物は、約12.5mgから約75mgの、1つまたは複数のDDIを含む。
【0136】
(カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)阻害剤)
一部の実施形態では、本発明の特性は、組成物中の、および特に、任意選択で1つまたは複数の他の活性剤と(例えばレボドパとおよび/またはDDIと)組み合わせた腸内用ゲル組成物中のCOMT阻害剤の投与を通して、ある特定の有益な効果が達成され得、および/または問題が避けられ得るという認識を含む。本開示は、例えば医薬組成物中のCOMT阻害剤の腸内投与が、ドーパミン前駆体を用いた、および特にレボドパを用いた治療を受けている対象に特に利益を有することを示す。
【0137】
一部の実施形態では、そのような投与は、レボドパの投与のための他の形態および/またはレジメン(例えば単独、DDI(例えばカルビドパ)との組合せ、および/または異なる形態)とともに必要とされるものに対して、患者のレボドパに対する曝露を低減することを可能とする。
【0138】
代わりにまたはさらに、そのような投与は、レボドパおよびDDI(例えばカルビドパ)を用いた治療を受けている対象において、負の効果(例えばヒドラジンレベル)を低減することができる。なおさらに、本開示は、COMT阻害剤(例えばエンタカポン)が組成物中に含まれるとき、ある特定の組成物について、改善された保存安定性の特徴を具体的に示す。
【0139】
一部の態様では、本開示は、レボドパおよびカルビドパを含有する医薬組成物についてのそのような改善された保存安定性の特徴を立証し、すなわち、本開示は、COMT阻害剤(例えばエンタカポン)がレボドパおよびカルビドパを含む組成物中に含まれるとき、COMT阻害剤を有しない他の同等の組成物と比較して、そのような改善された保存安定性の特徴を示す。本開示を読む当業者により理解されるように、本明細書で例証される知見は、COMT阻害剤、DDI阻害剤および/またはドーパミン前駆体の他の組合せに合理的に一般化することができる。
【0140】
なおさらに、本開示は、ドーパミン前駆体(例えばレボドパ)、DDI(例えばカルビドパ)およびCOMT阻害剤(例えばエンタカポン)を含むある特定の組成物の、そのような組成物の腸内投与が他の形態での同等の組合せで観察されるものよりも大きな程度でドーパミン前駆体のバイオアベイラビリティを強化するという点における、驚くべき特性を記述する。
【0141】
PD患者では、レボドパは、末梢投与後に、酵素であるカテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)により3-O-メチルドパ(3-OMD;3-メトキシ-4-ヒドロキシ-L-フェニルアラニン)へ直接代謝されることもある。体内のレボドパの半減期をさらに増大させるために、カテコール-O-メチル基転移酵素阻害剤、典型的にエンタカポン((2E)-2-シアノ-3-(3,4-ジヒドロキシ-5-ニトロフェニル)-N,N-ジエチル-プロパ-2-エンアミド)は、レボドパおよびカルビドパと併せて投与されている。カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)阻害剤としてのエンタカポンは、欧州特許第0444899(B1)号に記載されている。レボドパ/カルビドパ医薬の付加物として使用される別のCOMT阻害剤は、トルカポン(3-ジヒドロキシ-4’-メチル-5-ニトロベンゾフェノン)である。レボドパへの追加療法のために近年開発されたCOMT阻害剤は、オピカポン(2,5-ジクロロ-3-[5-(3,4-ジヒドロキシ-5-ニトロフェニル]-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-4,6-ジメチルピリジン-1-オキシド)である。
【0142】
カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)の阻害剤であるエンタカポンは、ニトロ-カテコール構造の化合物であり、分子量は305.3である。エンタカポンの化学名は、(E)-2-シアノ-3-(3,4-ジヒドロキシ-5-ニトロフェニル)-N,N-ジエチル-2-プロペンアミドである。エンタカポンの実験式はC14H15N3O5であり、その構造式は、以下のものである:
【0143】
【0144】
一部の実施形態では、本開示は、エンタカポンの医薬組成物を提供および/または利用する。一部の実施形態では、そのような組成物は、約5.0mg/ml、約10mg/ml、約15mg/ml、約20mg/ml、約25mg/ml、約30mg/ml、約35mg/ml、約40mg/ml、約45mg/ml、約50mg/ml、約55mg/ml、約60mg/ml、約65mg/ml、約70mg/ml、または約75mg/mlのエンタカポンを含む。一部の実施形態では、そのような組成物は、約5.0mg/mlから約100mg/ml、約5.0mg/mlから約90mg/ml、約5.0mg/mlから約85mg/ml、約5.0mg/mlから約80mg/ml、約5.0mg/mlから約75mg/ml、約5.0mg/mlから約70mg/ml、約5.0mg/mlから約65mg/ml、約5.0mg/mlから約60mg/ml、約5.0mg/mlから約55mg/ml、約5.0mg/mlから約50mg/ml、約5.0mgから約45mg/ml、約5.0mg/mlから約40mg/mlのエンタカポンを含む。
【0145】
一部の実施形態では、本開示は、エンタカポンの経口投与のための医薬組成物を提供または利用することができる。一部の実施形態では、そのような組成物は、約12.5mgから約250mgのエンタカポンを含む。
【0146】
オピカポンは、カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)の阻害剤であり、分子量は413.17である。オピカポンの化学名は、(4Z)-4-[3-(2,5-ジクロロ-4,6-ジメチル-1-オキシドピリジン-1-イウム-3-イル)-2H-1,2,4-オキサジアゾール-5-イリデン]-2-ヒドロキシ-6-ニトロシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-オンである。オピカポンの実験式はC15H10Cl2N4O6であり、その構造式は、以下のものである:
【0147】
【0148】
一部の実施形態では、本開示は、オピカポンの医薬組成物を提供および/または利用する。一部の実施形態では、そのような組成物は、約0.5mg/ml、約1.0mg/ml、約1.5mg/ml、約2.0mg/ml、約2.5mg/ml、約3.0mg/ml、約4.0mg/ml、約5.0mg/ml、約6.0mg/ml、約7.0mg/ml、約8.0mg/ml、約9.0mg/ml、または約10mg/mlのオピカポンを含む。一部の実施形態では、そのような組成物は、約0.5mg/mlから約10mg/ml、約0.5mg/mlから約9.0mg/ml、約0.5mg/mlから約8.5mg/ml、約0.5mg/mlから約8.0mg/ml、約0.5mg/mlから約7.5mg/ml、約0.5mg/mlから約7.0mg/ml、約0.5mg/mlから約6.5mg/ml、約0.5mg/mlから約6.0mg/ml、約0.5mg/mlから約5.5mg/ml、または約0.5mg/mlから約5.0mg/mlのオピカポンを含む。
【0149】
一部の実施形態では、本開示は、オピカポンの経口投与のための医薬組成物を提供または利用することができる。一部の実施形態では、そのような組成物は、約10mgから約100mgのオピカポンを含む。
【0150】
トルカポンは、カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)の阻害剤であり、分子量は273.2である。オピカポンの化学名は、(3,4-ジヒドロキシ-5-ニトロフェニル)(4-メチルフェニル)メタノンである。オピカポンの実験式はC14H11NO5であり、その構造式は、以下のものである:
【0151】
【0152】
一部の実施形態では、本開示は、トルカポンの医薬組成物を提供および/または利用する。一部の実施形態では、そのような組成物は、約5.0mg/ml 約10mg/ml、約15mg/ml、約20mg/ml、約25mg/ml、約30mg/ml、約35mg/ml、約40mg/ml、約45mg/ml、約50mg/ml、約55mg/ml、約60mg/ml、約65mg/ml、約70mg/ml、または約75mg/mlのトルカポンを含む。一部の実施形態では、そのような組成物は、約10mg/mlから約100mg/ml、約10mg/mlから約90mg/ml、約10mg/mlから約85mg/ml、約10mg/mlから約80mg/ml、約10mg/mlから約75mg/ml、約10mg/mlから約70mg/ml、約10mg/mlから約65mg/ml、約10mg/mlから約60mg/ml、約10mg/mlから約55mg/ml、約10mg/mlから約50mg/ml、または約5.0mg/mlから約40mg/mlのトルカポンを含む。
【0153】
一部の実施形態では、本開示は、トルカポンの経口投与のための医薬組成物を提供または利用することができる。一部の実施形態では、そのような組成物は、約12mgから約75mgのトルカポンを含む。
【0154】
COMT阻害剤のレボドパ/カルビドパの治療への追加は、以下の利益をさらに提供する:
i)多様な日常活動の延長を可能とする、レボドパの排出半減期の予期される延長;
ii)ホモシステインの血漿レベルの低減を引き起こす、不活性なレボドパ代謝産物である3-O-メチルドパ(3-OMD)の血漿レベルの低減。血管イベント、認知機能不全のような非運動性症状(NMS)および末梢性ニューロパチーについての問題となるリスク因子にも関わらず、ホモシステインのレベルの上昇が提唱されている;
iii)Lecigonを用いて1日にわたり得られるレボドパの血漿レベルの漸増は、1日の後半の間に高頻度に観察されるパーキンソン症状の悪化に適合する。
【0155】
(腸内用組成物)
医薬組成物中のレボドパの安定性を改善するため、および/またはその送達の一貫性を改善するために、例えばレボドパ投与の1つまたは複数の副作用(例えばジスキネジア)を低減すること、ならびに/または「オフ期間」の頻度および/もしくは長さを低減することを期待して、ある特定の試みがなされている。
【0156】
例えば上述のように、どのレボドパが、外部ポンプを介した注入を通して、レボドパの大半が吸収される小腸の部位(例えば十二指腸または空腸)へと直接連続的に投与されるかに応じて、(特に、後期PD患者の治療のために)注入技術が開発されている。そのような手法は、より継続的な血漿レベルをもたらすと考えられ、次に、オフ期間およびジスキネジアの両方の低減を達成することを意図されている。運動合併症は非生理学的で間欠的な薬物の投与によるものであるため、継続的な送達は運動合併症を低減することができることも、周知である。(Olanowら、www.thelancet.com/neurology、13巻、141~149頁、2014年)しかし、レボドパおよびカルビドパの水溶性の低さにより、患者に対して煩雑かつ非実用的である大用量のレボドパ/カルビドパ溶液を使用しなければならなかった。
【0157】
開発されている他の技術には、例えばEP1670450 B1に記載されているような、クエン酸およびEDTAにより安定化されるレボドパおよびカルビドパの液体組成物が挙げられる。
【0158】
さらに、上述のように、微粒子化したレボドパおよびカルビドパがメチルセルロース増粘剤ゲル中に懸濁しており、組成物が十二指腸内注入により十二指腸に直接送達される、腸内用ゲル技術が開発されている。具体的には、レボドパ20mg/mlおよびカルビドパ5mg/mlを含有する、十二指腸内注入のための腸内用ゲルは、DUODOPA(登録商標)の商標名の下で市販されている。十二指腸内注入のためのそのような医薬製剤は、US5,635,213およびEP0670713 B1に開示されている。長期の24時間のレボドパ/カルビドパの経腸投与は、WO2007/138086 A1に開示されている。DUODOPA(登録商標)は、他のレボドパ形態について観察されるものと比較して、水性媒体中のレボドパの化学的安定性における改善を示す/達成することが報告されている。DUODOPA(登録商標)は、有益な粒子分布(例えば沈殿が存在しない)特性を有し、PDの治療に有用であることも報告されている。
【0159】
本開示は、DUODOPA(登録商標)に対してさえも改善を示す、ある特定の組成物および治療レジメンを提供する。一部の実施形態では、例えば提供される組成物(具体的には、DUODOPA(登録商標)等の医薬ゲル組成物を含む)は、レボドパおよびカルビドパの両方を含み、COMT阻害剤(例えばエンタカポン)をさらに含む。よって、一部の実施形態では、本開示は、ドーパミン補充剤(例えばレボドパ)、DDI(例えばカルビドパ)または両方との組合せでCOMT阻害剤(例えばエンタカポン)を含むかまたはそれからなる医薬活性剤を含む、ゲル組成物(例えば腸内投与のための)を提供する。
【0160】
中でも、本開示は、レボドパの保存および/または投与についての医薬形態としてのDUODOPA(登録商標)の問題の原因を特定する。具体的には、本開示は、DUODOPA(登録商標)が比較的短い貯蔵寿命(例えば冷蔵庫内(例えば2~8℃)で15週、室温(例えば25℃)で16時間)を有することを認識する。DUODOPA(登録商標)は、その貯蔵寿命を延長するために、冷凍保存することさえも推奨される。例えば1つの薬剤カセットは、16時間までのみ使用することができる。
【0161】
DUODOPA(登録商標)の十二指腸内投与は、時に、エンタカポンの経口投与と合わせられ、レボドパのバイオアベイラビリティを増大することができることが報告されている。(https://www.medicines.org.uk/emc/medicine/20786、9月3日、2015年に最終訪問)しかし、本開示は、上述のような予測不能な経口医薬の経腸吸収による薬物の血漿レベルの変動を考慮して、そのような計画の問題の原因を特定する。よって、本開示は、エンタカポンの経口投与を用いて一貫性のある結果をもたらすことが困難であり得ることを認識し、したがって、レボドパ、DDIおよびエンタカポンの3剤組合せの投与についての改善された計画が望ましく、それを開発することができることを、さらに認識する。
【0162】
レボドパ、カルビドパおよびエンタカポンを、アルギニンおよび任意選択でメグルミンと一緒に含む、とりわけ十二指腸内投与のための安定した液体組成物は、WO2012/0666538に開示されている。
【0163】
本開示は、COMT阻害剤(例えばエンタカポン)を含むある特定のゲル組成物(例えば腸内投与のための)を提供することおよび利用することにより、ある特定の有益な効果が達成され得るという識見を包含し、さらに、例えば組成物中に含まれる医薬活性剤がドーパミン補充剤(例えばレボドパ)、DDI(例えばカルビドパ)およびCOMT阻害剤(例えばエンタカポン)の組合せを含むまたはそれからなる、ある特定のそのようなゲル組成物が、これらの薬剤の一部またはすべてを含む他の利用可能な形態と比較して、ある特定の予期されない価値ある特性を有するという識見を包含する。例えば中でも、本開示は、提供された3剤ゲル組成物が、他の形態と比較して、安定した薬物の血漿レベルおよび長い貯蔵寿命をもたらすことができることを示す。
【0164】
一部の実施形態では、本発明により提供される組成物は、DUODOPA(登録商標)のような以前に周知であったレボドパ/カルビドパ腸内用ゲル(以降、簡略して表現するために「LCIG」)とは異なる。中でも、一部の実施形態では、提供された組成物は、例えばそのような薬剤を含む他の組成物(例えばDUODOPA(登録商標))と比較して、含まれる活性剤の安定性が改善されているという特徴を有する。一部の実施形態では、提供された組成物は、患者が、薬剤を含有する他の利用可能な組成物に存在するおよび/またはそれを用いて生じるものと比較して、1つまたは複数の含まれている活性剤のより低いまたはより低頻度の用量を受けるように、含有されてもよいおよび/または投与されてもよい。
【0165】
一部の特定の実施形態では、提供された組成物は、腸内用ゲルであるかまたはそれを含み、レボドパ、DDIおよびCOMT阻害剤を含む。一部の特定の実施形態では、提供された組成物は、腸内用ゲルの1つまたは複数において記載されているおよび/またはDUODOPA(登録商標)として市販されている1つまたは複数の参照組成物と実質的に類似しているが、それらがエンタカポンのようなCOMT阻害剤をそれらの中に含むという点で、そのような参照組成物とは異なる、腸内用ゲル組成物である。
【0166】
LCIGと比較して、本発明のある特定の実施形態により、COMT阻害剤(例えばエンタカポン、オピカポン、トルカポン)を含むことは、毎日のレボドパの服用を約10~30%低減することができ、それにより、ジスキネジアまたは運動性の変動のようなレボドパ関連の副作用を発現している患者のリスクを低減することができる。
【0167】
レボドパ服用の低減も、非常に望ましい。より重度の神経検査的異常(neurographic abnormalities)は、経口治療された患者におけるものよりも、LCIG注入を用いて治療された患者において報告されている。ニューロパチーの変化の重症度の程度は、レボドパの用量の増大と相関する。
【0168】
一部の実施形態では、腸内用ゲル組成物を介したCOMT阻害剤(例えばエンタカポン、トルカポン)の投与は、制御されたエンタカポンまたはトルカポンの送達をもたらすことができる。一部の実施形態では、エンタカポンまたはトルカポンの別個の経口投与は、LCIG投与と合わせられてもよい。
【0169】
一部の実施形態では、本開示は、DDIおよびレボドパの医薬組成物を提供または利用することができる。一部の実施形態では、そのような組成物中のDDIとレボドパとの重量比は、約1:20から約1:2、約1:15から約1:2、約1:10から約1:2、約1:8から約1:4、約1:5から約1:3、約1:15から約1:8、または約1:12から約1:0である。一部の実施形態では、そのような組成物中のDDIとレボドパとの重量比は、約1:12、約1:11、約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、または約1:2である。
【0170】
一部の実施形態では、本開示は、COMT阻害剤およびレボドパの医薬組成物を提供または利用することができる。一部の実施形態では、そのような組成物中のCOMT阻害剤とレボドパとの重量比は、約10:1から約0.5:1、約8:1から約4:1、約5:1から約3:1、約5:1から約0.5:1、約3:1から約0.5:1、または約2:1から約0.5:1である。一部の実施形態では、そのような組成物中のCOMT阻害剤とレボドパとの重量比は、約10:1、約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、約1:1、または約0.5:1である。
【0171】
一部の実施形態では、提供されたゲル形態は、半固形組成物であり、医薬活性成分(例えばレボドパ、DDIおよびCOMT阻害剤)は、本明細書で定義されるような中程度のせん断速度で少なくとも約300mPasの粘度を有する水性担体中に懸濁している、粒子の形態で存在する。
【0172】
一部の実施形態では、腸内用ゲル組成物中の活性成分の粒子は、約80μm、約60μm、約40μm、または約20μm以下の最大粒子径を有してもよい。粒子は、微粒子化されてもよい。さらに、水性担体は、中程度のせん断速度(20と500s-1との間)で少なくとも300mPas、通常300から5000Pasの範囲の粘度を有する。
【0173】
一部の実施形態では、粘度がアジテーション中に低下し、それにより液体の水性担体のポンプ輸送がより容易となるように、担体は可塑性または擬塑性の性質を有してもよい。
【0174】
一部の実施形態では、水性担体は、通常、例えばセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびそれらの塩、キサンタンガム、カラギーナンを含む多糖型、または合成ポリマー、例えばポリビニルピロリドンまたはポリアクリル酸、それらの組合せの、薬学的に許容されるコロイド、水溶性もしくは水膨潤性であるコロイドの分散体または溶液である。
【0175】
一部の実施形態では、ゲル組成物の粘度は、沈殿の傾向を有することなく活性成分の薬物負荷を有するのに十分高いものであり得る。一部の実施形態では、粘度は、ゲルを、例えば移動式ポンプで(例えば合理的なバッテリー消費量で)ポンプ輸送することが可能であるように高すぎないものとしてもよい。
【0176】
ある特定の実施形態では、好適な粘度は、使用されるコロイドの分子量を好適な範囲内で調節することにより、例えば重合の程度を調節することにより、得ることができる。一部の実施形態では、粘度は、水性系中のコロイドの好適な濃度を選択することにより調節することができる。
【0177】
一部の実施形態では、腸内用ゲル組成物の粘度は、少なくとも約1800mPas、または約2200から約4500mPasの範囲内であってもよい。
【0178】
一部の実施形態では、腸内用ゲル組成物は、他の成分をさらに含む。例えば一部の実施形態では、そのような組成物は、1つまたは複数の薬学的に不活性な成分を含んでもよい。一部の実施形態では、他の成分は、金属キレート剤、防腐剤、賦形剤、界面活性剤、エモリエント剤、緩衝剤およびそれらの組合せからなる群から選択されてもよい。
【0179】
一部の実施形態では、腸内用ゲル組成物は、1つまたは複数のドーパミンアゴニスト(例えばブロモクリプチン、カベルゴリン、ペルゴリド、プラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチン、アポモルヒネ、ジヒドロエルゴクリスチンメシル酸塩、ピリベジル)をさらに含む。ドーパミンアゴニストは、ドーパミンの不在下でドーパミン受容体を活性化し、脳内でドーパミンの機能を模倣する。
【0180】
一部の実施形態では、腸内用ゲル組成物は、1つまたは複数のモノアミン酸化酵素B型(MAO-B)阻害剤(例えばラサジリン、セレギリン)をさらに含む。モノアミン酸化酵素B型(MAO-B)は、脳内でドーパミンを分解し、生物起源および生体異物のアミンの酸化的脱アミノ化を触媒する。
【0181】
一部の実施形態では、腸内用ゲル組成物は、1つまたは複数の抗コリン作用薬(例えば抗ヒスタミン、トロピン、トロピン誘導体(例えばトロピンのエーテル))をさらに含む。抗コリン作用薬は、神経細胞内でアセチルコリンのその受容体への結合を遮断し、したがって、神経系中でアセチルコリンを阻害する。
【0182】
一部の実施形態では、腸内用ゲル組成物は、1つまたは複数のグルタミン酸アンタゴニストをさらに含む。
【0183】
一部の実施形態では、腸内用ゲル組成物は、1つまたは複数のアマンタジンまたはアマンタジン誘導体をさらに含む。
【0184】
腸内用ゲル組成物は、担体を水と混合してゲルを形成し、次いで、当業者に公知の方法および装置を使用して、活性化合物(例えばレボドパ、DDIおよびCOMT阻害剤)を水性担体中に微細に分散させることにより、調製することができる。調製された製剤は、次いで、十二指腸内のような腸内投与のために、例えば好適な容器中へと分注される。
【0185】
腸内用ゲル組成物は、直接空腸造瘻術によるか、または経皮内視鏡的胃瘻造設術を介して、経腸投与(例えば腸(例えば十二指腸または空腸)へ直接)を介して投与されてもよい。
【0186】
一部の実施形態では、ゲルは、携帯型ポンプ(例えば蠕動またはシリンジ型)を用いて投与される。例示的な蠕動ポンプは、CADD-Legacy DUODOPA(登録商標)ポンプ(Smiths Medical、MN、米国)という商標名の下で販売されているものである。ゲルは、送達系を創出するためにポンプに取り付けられる、カセット、ポーチまたはバイアル中に含有されてもよい。送達系は、腸内投与のために、十二指腸管または空腸管へと接続される。シリンジ型の送達系の一例は、Cane Crono Infusion Pump(Applied Medical Technology Ltd.、Cambridge、イギリス)という商標名の下で販売されている携帯型ポンプである。
【0187】
一部の実施形態では、本発明の腸内用ゲルは、1日あたり約16時間、約18時間、約20時間、約22時間、約24時間までの期間にわたり、連続的に投与されてもよい。一部の実施形態では、本発明の腸内用ゲルは、1日、1週または1カ月を超えて、連続的に投与されてもよい。
【0188】
一部の実施形態では、腸内用ゲル組成物は、所望の量のその活性剤の1つまたは複数を、1日で(例えば24時間の期間で)送達するように、投与される。
【0189】
(安定性)
本発明のある特定の実施形態の1つの特性は、医薬組成物、および特に腸内用ゲル組成物の、保存安定性または貯蔵寿命に関する。
【0190】
先行技術の腸内用ゲルLCIG(例えばDUODOPA(登録商標))の冷蔵条件下での貯蔵寿命は、基本的に、カルビドパの分解により、およびより具体的には、遺伝毒性であると考えられている、分解産物のヒドラジンのレベルにより、決定される。
【0191】
レボドパは、先行技術のLCIGならびに本発明の腸内用ゲル組成物において比較的安定であることが見出されているが、カルビドパは、エンタカポンをさらに含有する対応する腸内用ゲル組成物において、約50パーセント速く分解されることが見出されている。
【0192】
一部の実施形態では、本発明のレボドパ/カルビドパ/エンタカポンゲル組成物は、最終カルビドパ分解産物(例えばヒドラジン)の形成を妨げるという驚くべき特性を提供する。一部の実施形態では、本発明の組成物は、先行技術の腸内用ゲルLCIG(例えばDUODOPA(登録商標))と比較して、冷蔵条件における長期の保存後、有利に低下したヒドラジンレベル(例えば約20ppm未満、または約30ppm未満)を有し得る。一部の実施形態では、本発明についての組成物は、先行技術の腸内用ゲルLCIG(例えばDUODOPA(登録商標))と比較して、約50%低いヒドラジンレベルを有し得る。
【0193】
一部の実施形態では、そのようなゲル組成物において、エンタカポンはCOMT阻害剤としてのみならず、カルビドパの分解におけるヒドラジン形成阻害剤としても機能するであろう。
【0194】
冷蔵条件下で約10週、約15週、約20週または約25週の安定性を有する、本発明のレボドパ/カルビドパ/エンタカポン組成物の安定性の増大は、例えば活性成分がなお有意味な治療効果を有するとき、異なる手段により別個に、または任意選択でそれらの2つ以上の組合せにより、達成することができる。一部の実施形態では、例えば室温(例えば25℃)で、約18時間、約20時間、約22時間、約24時間、約26時間、約28時間または約30時間の安定性を有する、本発明のレボドパ/カルビドパ/エンタカポン組成物の安定性の増大。
【0195】
本発明の一部の実施形態によると、腸内用ゲル組成物の安定性は、ゲル組成物のpHを、約5.7以下(すなわち5.7と等しいまたはそれより低い)ように調節することにより増大させることができる。
【0196】
概して、ゲル組成物中の活性物質(主にカルビドパ)の安定性は、pHが低下するにつれて増大する。しかし一方で、ゲル自体の安定性は、pHの低下とともに低減する(粘度が弱まることにより不安定化する)。さらに、ゲル組成物の非常に低いpH値は、患者の腸に対して有害である。
【0197】
本発明の一部の実施形態によると、活性物質ならびにゲル構造および患者の腸の感受性に関する保存安定性の増大は、pHを、約4.5から約5.7、好ましくは4.5から5.5の最適範囲内、例えば約5.0となるように慎重に選択することにより達成されることが見出されている。
【0198】
一部の実施形態では、pHの酸性調節は、塩酸のような鉱酸、または有機酸、例えばクエン酸またはクエン酸緩衝液により実行してもよい。
【0199】
pH安定化の代わりにまたはそれに加えて、ゲル組成物の安定化は、公知の方法、典型的には窒素ガスを用いたパージによりなされる酸素除去により実行してもよい。
【0200】
腸内用ゲル組成物の安定化のさらなる代わりの方法は、1つまたは複数の抗酸化剤、例えばアスコルビン酸またはクエン酸を、ゲル中へと導入することである。使用することのできる他の抗酸化剤は、当業者により、一般的に周知の抗酸化剤から容易に選択され得る。
【0201】
アルミニウムバッグのような減光容器中でのゲル組成物の保存は、カルビドパおよびエンタカポンの分解に対するいくつかの好ましい効果を有することも見出されている。
【0202】
一部の実施形態では、本発明の腸内用ゲル組成物は、約5のpHを有し、窒素ガスで脱酸素化され、好ましくは遮光容器中に提供される。
【0203】
重金属は、カルビドパの分解を触媒することが周知である。先行技術のレボドパ/カルビドパ製剤は、優秀なキレート特性を有するEDTAにより安定化されることが示されているが、本発明の腸内用ゲル組成物の安定性は、驚くべきことに、EDTAにより負の影響を受けることが見出されている。一部の実施形態では、本発明により提供されるゲル組成物は、したがって、好ましくはいかなるキレート剤も含まない。
【0204】
本開示を読む当業者は、エンタカポンの存在下(および具体的には、腸内投与のためのゲル組成物中のエンタカポンの存在下)でのカルビドパの安定性の増大についてのその含まれている実証が、他のCOMT阻害剤の存在に対して、および/または本明細書に記載されているようなゲル形態における組合せ以外の文脈に対して、十分に一般化され得ることを認識するであろう。よって、一部の実施形態では、本開示は、カルビドパおよびCOMT阻害剤を含みまたはそれらからなり、任意選択でレボドパをさらに含む、医薬活性剤を含むゲル組成物(例えば腸内投与のための)を提供する。さらに、一部の実施形態では、本開示は、カルビドパの投与が、エンタカポン(例えば腸内投与のためのゲル組成物の文脈において)または他のCOMT阻害剤の投与と、任意選択で別個の組成物中で合わせられ、(例えばCOMT阻害剤、例えばエンタカポンが存在しない同等の条件下で観察されるものと比較して)患者に有益な効果を伴いながらヒドラジンレベルを低減することができる、治療レジメンを提供する。
【0205】
(組合せ療法)
本明細書に記載されているように、本発明は、(a)ドーパミン補充剤;(b)1つまたは複数のDDIおよび(c)1つまたは複数のCOMT阻害剤を用いた組合せ療法を伴うおよび/または達成する、技術を提供する。本明細書に記載されているように、多くの実施形態では、本開示は、ある特定の治療レジメンおよび形態が既に周知である、個々の薬剤または組合せ薬剤の投与に関する。一部の実施形態では、本開示で具体化された識見は、そのように周知のレジメンおよび/または形態に対して低減された投薬(例えば1日量、選択された期間にわたる総量、および/または投薬の頻度において)を含有するまたはそれを含む、組成物および/または投薬レジメンを提供する。
【0206】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されているように、(a)ドーパミン補充剤(b)DDI;および(c)COMT阻害剤の各々は、同時に投与され、単一の組成物(例えば本明細書に記載されているような腸内用ゲル組成物)中で投与されることすらある。本明細書に含まれる教示は、当業者に、特定の例証的な実施形態に限定されない識見および技術(例えば組成物および方法)を提供する。
【0207】
例えば、本明細書で提供される教示は、当業者に、例えば(a)ドーパミン補充剤(b)DDI;および(c)COMT阻害剤が、ある特定の実施形態で、別個の組成物で投与されるであろうことを示す。一部の実施形態では、各々は、別の組成物中にあってもよい。一部の実施形態では、2つが単一の組成物中に一緒であり、一方で第3のものは別個の組成物中にあってもよい。1つにすぎない特定の例を挙げると、本開示を読む当業者は、DUODOPA(登録商標)とエンタカポンを含む別個の腸内用ゲル組成物および/または別のCOMT阻害剤との同時投与が望ましいであろうことを認識するであろう。
【0208】
勿論、当業者は、本明細書で記述されているすべての利点が、すべてのそのような形態において達成され得るかまたは同一のレベルで達成され得るわけではないことに、すぐに気づくであろう。すなわち、特定の利点は、少なくとも一部、単一の組成物中のすべての3つの薬剤の同時局在に起因し得る。しかし、当業者は、有意な利益はそのような同時局在がなくてさえも達成されることもあることも理解するであろう。例えば、例えば別個のゲルの同時投与(実質的に同時か、または時間は別であるが、それにも関わらず、患者のおよび任意選択で患者内の同一の部位[例えば十二指腸]の、すべての3つの薬剤への曝露を達成するもののいずれか)は、他の利用可能な治療計画に対して有意な利益を良好に提供することができる。
【0209】
本開示を読む当業者は、一部の実施形態では、特に利用される(a)ドーパミン補充剤(b)DDI;および(c)COMT阻害剤についての1つまたは複数の特性に依存して、別個の投薬パターンが一部の文脈において有益であろうことを特に認識するであろう。例えば特定のクラス内の異なる薬剤は、他の薬剤に対するそれらの投与のタイミングが望ましくずらされるように、異なる半減期および/または他の薬学的特性を有してもよい。1つにすぎない特定の例を挙げると、異なるCOMT阻害剤についての異なる薬物動態学的および薬力学的特性が、研究で報告されており(例えばForsbergら、JPET 304巻:498頁、2003年02月01日を参照のこと)、例えばトルカポンはエンタカポンよりも長い作用の継続期間およびより良好な脳透過性を有することが報告されている。具体的には、Forsbergらは、
「静脈内投与(3mg/kg)の後、エンタカポンの排出半減期(t1/2β)(0.8時間)は、トルカポンの排出半減期(2.9時間)よりも明らかに短かった。トルカポンの線条体/血清比は、エンタカポンのものよりも3倍高かった。単一の経口用量(10mg/kg)の後、エンタカポンおよびトルカポンの両方は、末梢組織におけるCOMT阻害について等しい最大の程度をもたらしたが、トルカポンは、エンタカポンよりも効果的に線条体内のCOMTを阻害した。7日間の治療(1日2回、10mg/kg)の後、COMT活性は、エンタカポンの最終用量後8時間以内に、対照の67から101%のレベルに回復した。トルカポンで治療された動物では、末梢組織においてなお大きなCOMT阻害が依然として存在し、阻害の程度は、単一用量後に達成されたものよりも高かった。薬物動態学的および薬力学的モデリングは、エンタカポンおよびトルカポンの両方で、最大の達成可能な阻害に近いCOMT阻害の停滞期が、2000ng/mlを下回る血漿濃度により既に達成されたことを明らかにした。エンタカポンおよびトルカポンは、それぞれ10.7および10.0nMのKi値で、インビトロでラット肝COMTを等しく阻害した」
と報告しており、これらの結果を、「トルカポンが12時間間隔で投与されるときに、末梢のCOMT阻害剤は継続的に阻害されるが、これはエンタカポンでは見られないことを示唆する」と結論づけている。
【0210】
これらの差異に気づき、本開示を読む当業者は、例えばトルカポンをエンタカポンよりも低頻度に投与することが望ましいであろうことを認識するであろう。本開示が、中でも、COMT阻害剤の腸内用ゲルの投与の特定の実用性を示し、(a)ドーパミン補充剤(b)DDI;および(c)COMT阻害剤の各々を含有する組成物のある特定の利点をも示すことを考えると、当業者は、本開示が、トルカポンを含む組合せ組成物(例えばレボドパ、カルビドパおよびトルカポンの各々を含む組成物)を、任意選択で、ゲル形態で、例えば腸内投与のために提供することを認識するであろうし、一部の実施形態では、COMT阻害剤がトルカポンであるとき、エンタカポンと比較して、他の活性剤に対してより低い量のCOMT阻害剤を含むことが望ましいであろうとも認識するであろう。代わりに、同等の比が保たれるであろうが、より低頻度の投薬が利用され、任意選択で、例えば(a)ドーパミン補充剤および(b)DDIを含有する組成物のさらなる投薬について間隔が開けられるであろう。
【0211】
代わりにまたはさらに、本開示を読む当業者は、その教示が、既に利用可能な形態(例えば本明細書で記載されているような)である文脈において、(a)ドーパミン補充剤(b)DDI;および(c)COMT阻害剤の1つまたは複数の投与に適用され得るおよび/または組み合わされ得る程度を認識するであろう。よって、例えば一部の実施形態では、本開示により提供される治療レジメンは、例えば利用可能な市販の形態である文脈において、COMT阻害剤(例えばエンタカポン)を、(a)ドーパミン補充剤(例えばレボドパ)および/または(b)DDI(例えばカルビドパ)との組合せで含む、ゲル組成物の腸内投与を利用することができる。一部のそのような実施形態では、市販の形態の任意の個々の用量(および/または総用量)の経路、タイミングおよび/または量は、本明細書で提供されるようなCOMT阻害剤を含むゲル組成物の腸内投与と組み合わせるとき、異なってもよい。
【0212】
なおさらに、当業者は、一部の実施形態では、本明細書に記載されているような組合せ療法が、患者が(a)ドーパミン補充剤;(b)1つまたは複数のDDIおよび(c)1つまたは複数のCOMT阻害剤の各々を用いたどの治療を受けるかに従って、1つまたは複数の他の治療/治療法とさらに組み合わされてもよいことを、容易に認識するであろう。数例を挙げると、一部の実施形態では、提供される治療は、1つもしくは複数の抗コリン作用薬(例えば抗ヒスタミン、トロピンおよび/もしくはそれらのエステル等、ならびにそれらの組合せ)、1つもしくは複数のグルタミン酸アンタゴニスト、および/または1つもしくは複数のアマンタジン誘導体との組合せで投与される。一部の実施形態では、1つまたは複数のそのような薬剤は、本明細書に記載されているような腸内用ゲル中に含まれる。
【0213】
(バイオアベイラビリティ)
一部の実施形態では、本発明は、レボドパ、DDIおよびCOMT阻害剤の組合せを対象に投与し、ここで組合せ中の1つまたは複数の薬剤が医薬ゲルの腸内投与により投与されることは、1つまたは複数の活性剤の1つまたは複数の薬物動態学的特性(例えば曲線下面積(AUC)、バイオアベイラビリティ(例えば絶対的バイオアベイラビリティ、相対的バイオアベイラビリティ)、半減期等)の予期されない改善をもたらすという識見を包含する。
【0214】
中でも、本開示は、提供された組成物および/または方法が、ドーパミン補充剤(例えばレボドパ)のバイオアベイラビリティの有意な改善を達成することができるという、驚くべき発見を示す。具体的には、(a)レボドパ、(b)カルビドパおよび(c)エンタカポンの3成分の組合せを単一の錠剤中で用いた組合せ療法についての以前の報告では、(a)レボドパおよび(b)カルビドパを含有するが(c)エンタカポンを有しない他の同等の錠剤と比較して、レボドパのバイオアベイラビリティを約10%から約30%増大させることができる。(例えばSTALEVO(登録商標)の製品の特徴の概説、http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/EPAR_-_Product_Information/human/000511/WC500057485.pdf、9月3日、2015年に最終訪問を参照のこと)以下の表1は、COMT阻害剤と組み合わせたときのレボドパのバイオアベイラビリティの増大を観察した、ある特定の文献の報告を概説する。
【0215】
【0216】
以下の実施例の節を参照して見られるように、本開示は、(a)ドーパミン補充剤;(b)DDI;および(a)COMT阻害剤の各々を含むかまたはそれからなる医薬活性剤を含むある特定の発明のゲル組成物(例えば腸内投与のために製剤化された)が、そこで記載されている単一の試験においてさえ55%の平均的な増大(1.5~3.0倍の範囲内の改善)が観察されたように、実に40%、45%、50%、さらには55%を超える、レボドパのアベイラビリティの劇的により大きな増大を達成することができるという驚くべき知見を記述する。
【0217】
以降に、本発明の腸内用ゲル組成物の非限定的な実施形態およびそれらの同等の実験を記載する。
【実施例】
【0218】
実施例1
PKモデルを開発し、400mgから2000mgまでのレボドパの1日総用量についてレボドパの濃度時間曲線をシュミレーションした。シュミレーションの結果を
図1に示す。レボドパの1日総用量の25%を、朝の用量として与えることを仮定する。シュミレーションは、レボドパの血漿レベルの漸増が、より高い用量でより明白であることを示す。
【0219】
本発明による組成物(Lecigon(登録商標))を用いて1日にわたり得られるレボドパの血漿レベルの漸増は、有益なものであり、1日の後半の間に高頻度に観察されるパーキンソン症状の悪化に適合する。午後に運動亢進症となる傾向を示す患者について、漸増は、日中、第2の低減された継続的な流速を用いて低減することができる。継続用量を、治療の5時間後に20%低減した。シュミレーションの結果は非常に平坦な濃度を示し、
図2を参照のこと。
【0220】
シュミレーションにおける線形傾向は、治療開始(正午)の5時間後に第2のより低い継続的な流速を適用するとき、より高いレボドパの用量を必要とする患者について、平坦なプロファイルを得ることができることを明らかに示す。このことは、午後に煩わしい運動亢進症の傾向を有する患者について、特に興味深い。CaneによるCrono Lecigポンプの特性は、必要なときに患者が選択することができる、第2の継続的な流速のプログラムを容易に可能とする。
【0221】
文脈において予期される血漿プロファイルおよび1日にわたる変動を入力するために、プロットを構築し、1つまたは2つの継続的な流速を用いたLecigonのシュミレーションを、Nyholmら、2013年によりDuodopaを使用して公表されたレボドパのプロファイルと比較する、
図3。
【0222】
概説すると、レボドパの血漿濃度プロファイルは、個別化および最適化され、全体の用量範囲にわたり患者の要求に適合することができる。Lecigonを用いて1日にわたり得られるレボドパの血漿レベルの漸増は、有益なものであり、1日の後半の間に高頻度に観察されるパーキンソン症状の悪化に適合する。午後に運動亢進症となる傾向を示す患者について、漸増は、日中、第2の低減された継続的な流速を用いて低減することができる。