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特許7485888活性成分として抗がんウイルス、免疫チェックポイント阻害剤及びヒドロキシ尿素を含む、がんを処置するための医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】活性成分として抗がんウイルス、免疫チェックポイント阻害剤及びヒドロキシ尿素を含む、がんを処置するための医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/768 20150101AFI20240510BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240510BHJP
   A61K 31/17 20060101ALI20240510BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240510BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
A61K35/768 ZNA
A61K39/395 U
A61K31/17
A61P35/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022503941
(86)(22)【出願日】2019-08-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-09
(86)【国際出願番号】 KR2019010850
(87)【国際公開番号】W WO2021040065
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-03-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520211498
【氏名又は名称】バイオノックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100211199
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 雄二
(72)【発明者】
【氏名】ファン, テ-ホ
(72)【発明者】
【氏名】チョー, モン
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-527465(JP,A)
【文献】国際公開第2018/106068(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/195552(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/003194(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0114612(US,A1)
【文献】特表2021-515753(JP,A)
【文献】Molecular Therapy,2010年,Vol.18, No.12,p.2085-2093
【文献】Clin. Transl. Med.,2018年,Vol.7,#35
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分として:
腫瘍溶解性ウイルス;
免疫チェックポイント阻害剤;及び
ヒドロキシ尿素
を含み、
前記腫瘍溶解性ウイルスが、チミジンキナーゼ遺伝子が欠失したワクシニアウイルスであり
前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、抗CTLA4抗体、抗PD-L2抗体、LTF2コントロール抗体、抗LAG3抗体、抗A2aR抗体、抗TIGIT抗体、抗TIM-3抗体、抗B7-H3抗体、抗B7-H4抗体、抗VISTA抗体、抗CD47抗体、抗BTLA抗体、抗KIR抗体、抗IDO抗体及びその組合せからなる群から選択されるいずれか1つである、がんを処置するための医薬組成物。
【請求項2】
前記ワクシニアウイルスが以下のワクシニアウイルス株:Western Reserve(WR)、New Yorkワクシニアウイルス(NYVAC)、Wyeth(The New York City Board of Health;NYCBOH)、LC16m8、Lister、Copenhagen、Tian Tan、USSR、TashKent、Evans、International Health Division-J(IHD-J)及びInternational Health Division-White(IHD-W)のうちの1つである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記ワクシニアウイルスが野生型ウイルスの少なくとも1つの遺伝子をさらに欠失させたものであるか又は野生型ウイルスに少なくとも1つの外来遺伝子を挿入したものである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
野生型ウイルスの少なくとも1つの前記遺伝子が、ワクシニア増殖因子遺伝子、WR53.5遺伝子、F13.5L遺伝子、F14.5遺伝子、A56R遺伝子、B18R遺伝子及びその組合せからなる群から選択されるいずれか1つである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
少なくとも1つの前記外来遺伝子が、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)、HSV-TKバリアント、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、シトシンデアミナーゼ(CD)、カルボキシルエステラーゼ1、カルボキシルエステラーゼ2、インターフェロンベータ(INF-β)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)又はソマトスタチン受容体2をコードする遺伝子である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記がんが、肺がん、結腸直腸がん、前立腺がん、甲状腺がん、乳がん、脳がん、頭頸部がん、食道がん、皮膚がん、胸腺がん、胃がん、結腸がん、肝がん、卵巣がん、子宮がん、膀胱がん、直腸がん、胆嚢がん、胆道がん、膵がん及びその組合せからなる群から選択されるいずれか1つである、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
がんを処置するためのキットであって:
活性成分として腫瘍溶解性ウイルスを含む第1の組成物;
活性成分としてヒドロキシ尿素を含む第2の組成物;及び
活性成分として免疫チェックポイント阻害剤を含む第3の組成物
を含み、
前記腫瘍溶解性ウイルスが、チミジンキナーゼ遺伝子が欠失したワクシニアウイルスであ
前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、抗CTLA4抗体、抗PD-L2抗体、LTF2コントロール抗体、抗LAG3抗体、抗A2aR抗体、抗TIGIT抗体、抗TIM-3抗体、抗B7-H3抗体、抗B7-H4抗体、抗VISTA抗体、抗CD47抗体、抗BTLA抗体、抗KIR抗体、抗IDO抗体及びその組合せからなる群から選択されるいずれか1つである、キット。
【請求項8】
免疫チェックポイント阻害剤及びヒドロキシ尿素とともに用いられるためのものであり、がんを処置するための、腫瘍溶解性ウイルスを含む医薬組成物であって、
前記腫瘍溶解性ウイルスが、チミジンキナーゼ遺伝子が欠失したワクシニアウイルスであ
前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、抗CTLA4抗体、抗PD-L2抗体、LTF2コントロール抗体、抗LAG3抗体、抗A2aR抗体、抗TIGIT抗体、抗TIM-3抗体、抗B7-H3抗体、抗B7-H4抗体、抗VISTA抗体、抗CD47抗体、抗BTLA抗体、抗KIR抗体、抗IDO抗体及びその組合せからなる群から選択されるいずれか1つである、医薬組成物。
【請求項9】
前記腫瘍溶解性ウイルスを、前記免疫チェックポイント阻害剤及び前記ヒドロキシ尿素と同時に、逐次的に、又は逆順に併用投与するためのものである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記ヒドロキシ尿素が前記腫瘍溶解性ウイルスの投与の前、その間又は後に投与されるためのものである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記ヒドロキシ尿素が、前記腫瘍溶解性ウイルスの投与の3~5日前に投与され、前記腫瘍溶解性ウイルスの投与の後の9~28日間、1日に1回連続的に投与されるためのものである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、前記腫瘍溶解性ウイルスの投与後に投与されるためのものである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、前記腫瘍溶解性ウイルスの投与の後の1~10週間、少なくとも週1回連続的に投与されるためのものである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記ヒドロキシ尿素が10mg/kg/日~90mg/kg/日の用量で投与されるためのものである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記腫瘍溶解性ウイルスを1×10pfu~1×1010pfuの用量で投与するためのものである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記腫瘍溶解性ウイルスを7~30日の間隔で個体に投与するためのものである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記ヒドロキシ尿素が腹腔内又は静脈内に投与されるためのものである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記腫瘍溶解性ウイルスを腫瘍内、腹腔内又は静脈内に投与するためのものである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
がんを有する非ヒト個体に腫瘍溶解性ウイルス、免疫チェックポイント阻害剤及びヒドロキシ尿素を投与することを含み、
前記腫瘍溶解性ウイルスが、チミジンキナーゼ遺伝子が欠失したワクシニアウイルスであ
前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、抗CTLA4抗体、抗PD-L2抗体、LTF2コントロール抗体、抗LAG3抗体、抗A2aR抗体、抗TIGIT抗体、抗TIM-3抗体、抗B7-H3抗体、抗B7-H4抗体、抗VISTA抗体、抗CD47抗体、抗BTLA抗体、抗KIR抗体、抗IDO抗体及びその組合せからなる群から選択されるいずれか1つである、がんの処置のための方法。
【請求項20】
がんを処置するための医薬の製造のための、腫瘍溶解性ウイルス、免疫チェックポイント阻害剤及びヒドロキシ尿素を含む組成物の使用であって、
前記腫瘍溶解性ウイルスが、チミジンキナーゼ遺伝子が欠失したワクシニアウイルスであ
前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、抗CTLA4抗体、抗PD-L2抗体、LTF2コントロール抗体、抗LAG3抗体、抗A2aR抗体、抗TIGIT抗体、抗TIM-3抗体、抗B7-H3抗体、抗B7-H4抗体、抗VISTA抗体、抗CD47抗体、抗BTLA抗体、抗KIR抗体、抗IDO抗体及びその組合せからなる群から選択されるいずれか1つである、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分として腫瘍溶解性ウイルス、免疫チェックポイント阻害剤及びヒドロキシ尿素を含む、がんを処置するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍溶解性ウイルスは、優れた腫瘍特異的標的化能力、がん細胞での増殖能力及び殺がん細胞能力を有する。近年、腫瘍溶解性ウイルスに基づく様々な臨床試験が実行されている。2015年に、単純ヘルペスウイルスに基づく腫瘍溶解性ウイルスであるタリモジンラヘルパレプベク(T-Vec)が進行した黒色腫のための治療剤として首尾よく商品化されたので、腫瘍溶解性ウイルス分野の時代が米国及び欧州で開始した。
【0003】
近年、腫瘍溶解性ウイルスの有用性はそれら自身の有効性を超え、このウイルスは腫瘍免疫を活性化し、それによって別の免疫療法剤と併用される治療剤としてのそれらの可能性を示す。腫瘍溶解性ウイルスの開発の初期段階であった2000年までは、そのがん細胞特異的増殖によってもたらされるウイルスの直接殺作用は比較的より重要であった。しかし、以降の臨床試験は、腫瘍溶解性ウイルスの鍵機構が、直接的な殺がん細胞作用よりも腫瘍免疫の活性化であることを見出した。この知見に基づいて、腫瘍溶解性ウイルスが免疫チェックポイント阻害剤などの免疫療法剤と併用投与される療法が近年開発されている。免疫が抑制される腫瘍微小環境を免疫療法に好適な腫瘍微小環境に腫瘍溶解性ウイルスが変換するので、そのような療法が可能であることが知られている。
【0004】
ワクシニアウイルスベースの腫瘍溶解性ウイルスに関するいくつかの臨床試験で、腫瘍溶解性ウイルス療法は、急性腫瘍壊死、永続的応答又は完全応答をもたらすことができるが、一部の場合には、進行性疾患又は早朝死亡などの予測困難な結果(薬力学変動)につながることがある。例えば、ワクシニアウイルスに基づくPexa-vecの場合、フェーズ1臨床試験では、一部の患者は腫瘍溶解性ウイルス療法から1カ月以内に早期に死亡し、これは持続的な全身炎症応答及び主要臓器機能障害と関連付けられた。したがって、腫瘍溶解性ウイルスの治療効果を増強するために、がん細胞、患者の免疫状態及び腫瘍溶解性ウイルスの間の相互作用を理解することが必要であり、この理解に基づいて、腫瘍溶解性ウイルスの臨床有効性を増加させることが可能な技術の研究の必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、腫瘍溶解性ウイルスの抗がん効果を増強するための研究を実行した結果として、本発明者らは、腫瘍溶解性ウイルスが単独で投与されるか又は腫瘍溶解性ウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤が同時投与される従来の場合と比較して、腫瘍溶解性ウイルス、免疫チェックポイント阻害剤及びヒドロキシ尿素ががんの個体に同時投与される場合に優れた抗がん効果及び安全性が得られることを見出し、それによって本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様では、活性成分として腫瘍溶解性ウイルス、免疫チェックポイント阻害剤及びヒドロキシ尿素を含む、がんを処置するための医薬組成物が提供される。
【0007】
本発明の別の態様では、活性成分として腫瘍溶解性ウイルスを含む第1の組成物、活性成分としてヒドロキシ尿素を含む第2の組成物、及び活性成分として免疫チェックポイント阻害剤を含む第3の組成物を含む、がんを処置するためのキットが提供される。
【0008】
本発明のさらに別の態様では、がんを処置するための方法であって、がんの個体に腫瘍溶解性ウイルス、免疫チェックポイント阻害剤及びヒドロキシ尿素を投与するステップを含む方法が提供される。
【0009】
本発明のさらに別の態様では、がんの予防又は処置のための、腫瘍溶解性ウイルス、免疫チェックポイント阻害剤及びヒドロキシ尿素を含む組成物の使用が提供される。
【0010】
本発明のさらに別の態様では、がんを予防又は処置するための医薬の製造のための、腫瘍溶解性ウイルス、免疫チェックポイント阻害剤及びヒドロキシ尿素を含む組成物の使用が提供される。
【発明の効果】
【0011】
活性成分として腫瘍溶解性ウイルス、免疫チェックポイント阻害剤及びヒドロキシ尿素を含む、本発明のがんを処置するための医薬組成物は、腫瘍溶解性ウイルスが単独で投与されるか又は腫瘍溶解性ウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤が同時投与される従来の場合と比較して優れた抗がん効果及び安全性を有する。したがって、活性成分として腫瘍溶解性ウイルス、免疫チェックポイント阻害剤及びヒドロキシ尿素を含む本発明の医薬組成物は、がんの処置のために効果的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】マウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)に腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-)、PD-1阻害剤及びHUを投与し、その後0、4、10、14、17及び21日目に腫瘍体積を測定することによって得られた結果を例示する図である。
図2】マウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)に腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-)、CTLA-4阻害剤及びHUを投与し、その後0、4、10、14及び17日目に腫瘍体積を測定することによって得られた結果を例示する図である。
図3】マウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)に腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-)、PD-1阻害剤及びHUを投与し、その後0、4、10、14、17及び21日目に腫瘍体積を測定することによって得られた結果を例示する図である。
図4】マウス乳がん細胞移植マウス(4T1)に腫瘍溶解性ウイルス(WR VVtk-)、CTLA-4阻害剤及びHUを投与し、その後0、3、7、10及び14日目に腫瘍体積を測定することによって得られた結果を例示する図である。
図5】マウス乳がん細胞移植マウス(4T1)に腫瘍溶解性ウイルス(WOTS-418)、PD-L1阻害剤及びHUを投与し、その後0、3、7、10、14及び18日目に腫瘍体積を測定することによって得られた結果を例示する図である。
図6】マウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)にWestern Reserve株ワクシニアウイルス(WR)、CTLA-4阻害剤及びHUを投与し、その後0、3及び7日目に腫瘍体積を測定することによって得られた結果を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[発明を実施するための最良の形態]
以後、本発明を詳細に記載する。
【0014】
本発明の一態様では、活性成分として腫瘍溶解性ウイルス、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)及びヒドロキシ尿素を含む、がんを処置するための医薬組成物が提供される。
【0015】
医薬組成物に含まれる腫瘍溶解性ウイルス、免疫チェックポイント阻害剤及びヒドロキシ尿素は、同時に、逐次的に又は逆順に同時投与することができる。
【0016】
具体的には、腫瘍溶解性ウイルス、免疫チェックポイント阻害剤及びヒドロキシ尿素は、同時に投与することができる。さらに、ヒドロキシ尿素を最初に、続いて免疫チェックポイント阻害剤を、その後腫瘍溶解性ウイルスを投与することができる。ヒドロキシ尿素を最初に、続いて腫瘍溶解性ウイルスを、その後免疫チェックポイント阻害剤を投与することができる。ヒドロキシ尿素を最初に、続いて腫瘍溶解性ウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤を同時投与することができる。
【0017】
さらに、腫瘍溶解性ウイルスを最初に、続いてヒドロキシ尿素を、その後免疫チェックポイント阻害剤を投与することができる。腫瘍溶解性ウイルスを最初に、続いて免疫チェックポイント阻害剤を、その後ヒドロキシ尿素を投与することができる。腫瘍溶解性ウイルスを最初に、続いてヒドロキシ尿素及び免疫チェックポイント阻害剤を同時投与することができる。
【0018】
さらに、免疫チェックポイント阻害剤を最初に、続いてヒドロキシ尿素を、その後腫瘍溶解性ウイルスを投与することができる。免疫チェックポイント阻害剤を最初に、続いて腫瘍溶解性ウイルスを、その後ヒドロキシ尿素を投与することができる。免疫チェックポイント阻害剤を最初に、続いて腫瘍溶解性ウイルス及びヒドロキシ尿素を同時投与することができる。
【0019】
さらに、ヒドロキシ尿素を最初に、続いて腫瘍溶解性ウイルスを、続いて免疫チェックポイント阻害剤を、その後ヒドロキシ尿素を再び投与することができる。ヒドロキシ尿素を最初に、続いて免疫チェックポイント阻害剤を、続いて腫瘍溶解性ウイルスを、その後ヒドロキシ尿素を再び投与することができる。ヒドロキシ尿素を最初に、続いて腫瘍溶解性ウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤の同時投与を、その後ヒドロキシ尿素を再び投与することができる。
【0020】
さらに、ヒドロキシ尿素を最初に、続いて腫瘍溶解性ウイルスを、続いてヒドロキシ尿素を再び、その後免疫チェックポイント阻害剤を投与することができる。ヒドロキシ尿素を最初に、続いて免疫チェックポイント阻害剤を、続いてヒドロキシ尿素を再び、その後腫瘍溶解性ウイルスを投与することができる。
【0021】
さらに、ヒドロキシ尿素を最初に、続いて腫瘍溶解性ウイルスを、続いてヒドロキシ尿素を再び、続いて免疫チェックポイント阻害剤を、その後ヒドロキシ尿素を再び投与することができる。ヒドロキシ尿素を最初に、続いて免疫チェックポイント阻害剤を、続いてヒドロキシ尿素を再び、続いて腫瘍溶解性ウイルスを、その後ヒドロキシ尿素を再び投与することができる。
【0022】
さらに、腫瘍溶解性ウイルスを最初に、続いてヒドロキシ尿素を、続いて免疫チェックポイント阻害剤を、その後ヒドロキシ尿素を再び投与することができる。免疫チェックポイント阻害剤を最初に、続いてヒドロキシ尿素を、続いて腫瘍溶解性ウイルスを、その後ヒドロキシ尿素を再び投与することができる。
【0023】
腫瘍溶解性ウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、サイトメガロウイルス、バキュロウイルス、アデノ随伴ウイルス、粘液腫ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、パルボウイルス、コクサッキーウイルス、セネカウイルス、ワクシニアウイルス又はオルソポックスウイルスに由来することができる。好ましくは、腫瘍溶解性ウイルスは、ワクシニアウイルス、単純ヘルペスウイルス又はアデノウイルスに由来することができる。
【0024】
ワクシニアウイルスは、限定されずに、以下のワクシニアウイルス株:Western Reserve(WR)、New Yorkワクシニアウイルス(NYVAC)、Wyeth(The New York City Board of Health;NYCBOH)、LC16m8、Lister、Copenhagen、Tian Tan、USSR、Tashkent、Evans、International Health Division-J(IHD-J)及びInternational Health Division-White(IHD-W)のうちの1つであってよい。本発明の一実施形態では、Western Reserve株ワクシニアウイルス及びWyeth株ワクシニアウイルスが使用された。
【0025】
腫瘍溶解性ウイルスは、野生型ウイルス又は組換えウイルスであってよい。具体的には、組換えウイルスは、野生型ウイルスの少なくとも1つの遺伝子を欠失させるか又は野生型ウイルスに少なくとも1つの外来遺伝子を挿入することによって得ることができる。ここでは、野生型ウイルスの少なくとも1つの遺伝子は、チミジンキナーゼ(TK)、ワクシニア増殖因子(VGF)、WR53.5、F13.5L、F14.5、A56R、B18R及びその組合せからなる群から選択されるいずれか1つをコードする、ウイルス病原性に関係がある遺伝子であってよい。
【0026】
さらに、少なくとも1つの外来遺伝子は、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)、HSV-TKバリアント、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、シトシンデアミナーゼ(CD)、カルボキシルエステラーゼ1、カルボキシルエステラーゼ2、インターフェロンベータ(INF-β)、ソマトスタチン受容体2及びその組合せからなる群から選択されるいずれか1つをコードする、免疫促進遺伝子であってよい。
【0027】
具体的には、組換えウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、サイトメガロウイルス、バキュロウイルス、アデノ随伴ウイルス、粘液腫ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、パルボウイルス、コクサッキーウイルス、セネカウイルス、ワクシニアウイルス又はオルソポックスウイルスのTK遺伝子を欠失させることによって得ることができる。本発明の一実施形態では、Western Reserve株ワクシニアウイルスのTK遺伝子を欠失させることによって得られた組換えワクシニアウイルスを使用し、この組換えウイルスは「WR VVtk-」と命名した。さらに本発明の一実施形態では、Wyeth株ワクシニアウイルスのTK遺伝子を欠失させることによって得られた組換えウイルスを使用し、この組換えウイルスは「Wyeth VVtk-」と命名した。
【0028】
さらに、組換えウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、サイトメガロウイルス、バキュロウイルス、アデノ随伴ウイルス、粘液腫ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、パルボウイルス、コクサッキーウイルス、セネカウイルス、ワクシニアウイルス又はオルソポックスウイルスのTK遺伝子及びVGF遺伝子を欠失させることによって得ることができる。
【0029】
さらに、組換えウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、サイトメガロウイルス、バキュロウイルス、アデノ随伴ウイルス、粘液腫ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、パルボウイルス、コクサッキーウイルス、セネカウイルス、ワクシニアウイルス又はオルソポックスウイルスのTK遺伝子を欠失させ、HSV-TK遺伝子を挿入することによって得ることができる。
【0030】
さらに、組換えウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、サイトメガロウイルス、バキュロウイルス、アデノ随伴ウイルス、粘液腫ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、パルボウイルス、コクサッキーウイルス、セネカウイルス、ワクシニアウイルス又はオルソポックスウイルスのTK遺伝子を欠失させ、HSV-TKバリアント遺伝子を挿入することによって得ることができる。本発明の一実施形態では、Western Reserve株ワクシニアウイルスのTK遺伝子を欠失させ、欠失位置に配列番号1で表され、HSV-TKバリアントをコードする遺伝子を挿入することによって得られる組換えウイルスを使用し、この組換えウイルスは「WOTS-418」と命名した。
【0031】
さらに、組換えウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、サイトメガロウイルス、バキュロウイルス、アデノ随伴ウイルス、粘液腫ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、パルボウイルス、コクサッキーウイルス、セネカウイルス、ワクシニアウイルス又はオルソポックスウイルスのTK遺伝子を欠失させ、GM-CSF遺伝子を挿入することによって得ることができる。
【0032】
さらに、組換えウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、サイトメガロウイルス、バキュロウイルス、アデノ随伴ウイルス、粘液腫ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、パルボウイルス、コクサッキーウイルス、セネカウイルス、ワクシニアウイルス又はオルソポックスウイルスのTK遺伝子を欠失させ、G-CSF遺伝子を挿入することによって得ることができる。
【0033】
さらに、組換えウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、サイトメガロウイルス、バキュロウイルス、アデノ随伴ウイルス、粘液腫ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、パルボウイルス、コクサッキーウイルス、セネカウイルス、ワクシニアウイルス又はオルソポックスウイルスのTK遺伝子を欠失させ、シトシンデアミナーゼ(CD)遺伝子を挿入することによって得ることができる。
【0034】
さらに、組換えウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、サイトメガロウイルス、バキュロウイルス、アデノ随伴ウイルス、粘液腫ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、パルボウイルス、コクサッキーウイルス、セネカウイルス、ワクシニアウイルス又はオルソポックスウイルスのTK遺伝子を欠失させ、ソマトスタチン受容体2遺伝子を挿入することによって得ることができる。
【0035】
さらに、組換えウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、サイトメガロウイルス、バキュロウイルス、アデノ随伴ウイルス、粘液腫ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、パルボウイルス、コクサッキーウイルス、セネカウイルス、ワクシニアウイルス又はオルソポックスウイルスのTK遺伝子を欠失させ、そこに単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)、HSV-TKバリアント、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、シトシンデアミナーゼ(CD)、又はソマトスタチン受容体2を各々コードする遺伝子からなる群から選択される任意の2つ以上の遺伝子を挿入することによって得ることができる。
【0036】
さらに、組換えウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、サイトメガロウイルス、バキュロウイルス、アデノ随伴ウイルス、粘液腫ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、パルボウイルス、コクサッキーウイルス、セネカウイルス、ワクシニアウイルス又はオルソポックスウイルスのTK遺伝子及びVGF遺伝子を欠失させ、そこにHSV-TK、HSV-TKバリアント、GM-CSF、G-CSF、CD、又はソマトスタチン受容体2を各々コードする遺伝子及びその組合せからなる群から選択される任意の1つの遺伝子を挿入することによって得ることができる。
【0037】
本明細書で使用されるように、用語「遺伝子欠失」は、遺伝子の部分的若しくは完全な欠失のために、又はそこへの外来遺伝子の挿入のために遺伝子が発現されないことを意味する。部分的欠失が遺伝子で起こる場合、遺伝子によって発現されるポリペプチドのN末端又はC末端の一部のアミノ酸が欠失してもよい。
【0038】
本明細書で使用されるように、用語「チミジンキナーゼ(TK)」は、チミジンキナーゼと呼ばれてヌクレオチド生合成に関与する酵素を指す。TKは、細胞及びウイルスの両方でヌクレオチド生合成のために使用される酵素である。ここで、細胞については、正常な細胞はもはや分裂せず、したがってTKはそこに存在しない;毛包細胞などの速やかに分裂する細胞であっても、TKはウイルスが利用するのに十分な量で存在しない。これらの視点から、ウイルスはその中のTK遺伝子の欠失によってTKが存在するがん細胞の存在下だけで増殖が許され、そのためがん細胞を選択的に死滅させることができる。
【0039】
本明細書で使用されるように、用語「ワクシニア増殖因子(VGF)」は上皮増殖因子と配列相同性を有し、感染細胞周囲の細胞増殖を刺激するポリペプチドを指す。ワクシニアウイルスは増殖細胞でより良好に複製し、したがってin vivoウイルス複製のために有利に使用することができる。腫瘍溶解性ウイルスをがん細胞だけでより特異的に増殖させるために、ウイルスはTK遺伝子の欠失に加えてVGF遺伝子の欠失をさらに受けることができる。
【0040】
本明細書で使用されるように、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子と呼ばれる「GM-CSF」という用語は、マクロファージ、T細胞、肥満細胞、ナチュラルキラー細胞、内皮細胞及び線維芽細胞によって分泌されるタンパク質を指す。GM-CSFは、顆粒球(好中球、好塩基球、好酸球)及び単球を産生するように幹細胞を刺激する。さらに、GM-CSFはマクロファージの数を速やかに増加させ、それによって免疫応答を誘導する。GM-CSFはヒト起源であってよく、GenBank:AAA52578.1の配列を有するタンパク質であってよい。
【0041】
本明細書で使用されるように、シトシンデアミナーゼと呼ばれる「CD」という用語は、ウラシル及びアンモニアへのシトシンの加水分解性脱アミノを触媒する酵素を指す。
【0042】
本明細書で使用されるように、顆粒球コロニー刺激因子と呼ばれる「G-CSF」という用語は、炎症又はエンドトキシンによる刺激の後にマクロファージ、線維芽細胞、内皮細胞などによって産生されるサイトカインを指す。G-CSFは、好中球の産生を促進する。G-CSFはヒト起源(rhGCSF)であってよく、GenBank:AAA03056.1の配列を有するタンパク質であってよい。
【0043】
本明細書で使用されるように、用語「ソマトスタチン受容体2」は、ヒトのSSTR2遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。ソマトスタチン受容体2は主に腫瘍で発現され、ソマトスタチン受容体2を過剰発現する神経内分泌腫瘍の患者は向上した予後を示す。ソマトスタチン受容体2は、がん細胞を含む多くの細胞でアポトーシスを刺激する能力を有する。
【0044】
本明細書で使用されるように、用語「ヒドロキシ尿素」は、以下の式を有する化合物を指す。
【0045】
【化1】
【0046】
ヒドロキシ尿素は、DNA合成を阻害する抗がん剤として知られる;しかし、その正確な機構は解明されていない。さらに、ヒドロキシ尿素は、ヒドロキシ尿素を含有する市販薬の形で医薬組成物に含まれてもよい。ヒドロキシ尿素を含有する市販薬の例は、ヒドロキシ尿素(登録商標)、ヒドレア(Hydrea)(登録商標)、ドロキシア(Droxia)(商標)、ミロセル(Mylocel)(商標)、シクロス(Siklos)(登録商標)及びヒドリン(Hydrine)(登録商標)カプセルを限定されずに含むことができる。ヒドロキシ尿素は経口的にとることができ、その非経口投与も可能である。
【0047】
腫瘍溶解性ウイルスの投薬量は、個体の状態及び体重、疾患の重症度、薬物のタイプ、投与の経路及び期間によって異なり、当業者が適切に選択することができる。投薬量は、患者が1×10~1×1018のウイルス粒子、感染性ウイルス単位(TCID50)又はプラーク形成単位(pfu)でワクシニアウイルスを受けるようなものであってよい。具体的には、投薬量は、患者が1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×1010、5×1010、1×1011、5×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015、1×1016、1×1017又はそれ以上のウイルス粒子、感染性ウイルス単位又はプラーク形成単位で腫瘍溶解性ウイルスを受けるようなものであってよく、上記の数値の間の様々な数値及び範囲がその中に含まれてもよい。好ましくは、腫瘍溶解性ウイルスは1×10~1×1010pfuの用量で投与することができる。より好ましくは、ワクシニアウイルスは1×10以上及び1×10pfu未満の用量で投与することができる。本発明の一実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは1×10又は1×10pfuで投与された。
【0048】
さらに、ヒドロキシ尿素は1mg/kg/日~100mg/kg/日、又は10mg/kg/日~90mg/kg/日の用量で投与することができる。具体的には、ヒドロキシ尿素は10mg/kg/日~90mg/kg/日、15mg/kg/日~80mg/kg/日、20mg/kg/日~70mg/kg/日、25mg/kg/日~65mg/kg/日、又は30mg/kg/日~60mg/kg/日の用量で投与することができる。本発明の一実施形態では、ヒドロキシ尿素は30mg/kg/日又は60mg/kg/日で投与された。投薬量によって、ヒドロキシ尿素は分割用量によって1日につき数回投与することができる。具体的には、ヒドロキシ尿素は1日につき1~4回又は1日につき1~2回投与することができる。
【0049】
免疫チェックポイント阻害剤は、T細胞の活性化に干渉するがん細胞の機構を阻害する物質を指し、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、抗CTLA4抗体、抗PD-L2抗体、LTF2コントロール抗体、抗LAG3抗体、抗A2aR抗体、抗TIGIT抗体、抗TIM-3抗体、抗B7-H3抗体、抗B7-H4抗体、抗VISTA抗体、抗CD47抗体、抗BTLA抗体、抗KIR抗体、抗IDO抗体及びその組合せからなる群から選択されるいずれか1つであってよい。
【0050】
がん細胞は、免疫応答を回避する機構として免疫チェックポイントシステムを乗っ取る。具体的には、がん細胞は免疫応答を回避するために免疫チェックポイント受容体を使用し、免疫チェックポイント受容体の代表例にはPD-L1、PD-1、CTLA-4などが含まれる。これらのがん細胞が免疫を回避することを阻止するために、がんの処置のために免疫チェックポイント受容体に特異的に結合する分子である免疫チェックポイント阻害剤が使用される。第1の免疫チェックポイント阻害剤はイピリムマブ(エルボイ(Yervoy)(登録商標))であり、それは細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)に特異的に結合するモノクローナル抗体である。次に開発された免疫チェックポイント治療薬は、プログラム細胞死-1(PD-1)及びそのリガンド、すなわちプログラム死リガンド-1(PD-L1)に対するモノクローナル抗体であった。代表薬物として、抗PD-1抗体、例えばニボルマブ(オプジーボ(Opdivo)(登録商標))及びペムブロリズマブ(ケイツルーダ(Keytruda)(登録商標))、並びに抗PD-L1抗体、例えばアベルマブ(バベンシオ(Bavencio)(登録商標))、アテゾリズマブ(テセントリク(Tecentriq)(登録商標))及びデュルバルマブ(イムフィンチ(Imfinzi)(登録商標))を指摘することができる。
【0051】
さらに、様々な免疫チェックポイント受容体に特異的に結合するモノクローナル抗体、例えば、グルココルチコイド誘導TNFR関連タンパク質(GITR)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有-3(TIM-3)、並びに腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー4(TNFRSF4)に関して研究が実行されている。
【0052】
免疫チェックポイント阻害剤の投与は、各製造業者によって設定された使用法及び用量に従って実行することができる。免疫チェックポイント阻害剤は、0.1mg/kg~10mg/kg、又は1mg/kg~5mg/kgの用量で投与することができる。例えば、活性成分としてニボルマブを含有するオプジーボ注射剤の場合、2週間間隔で3mg/kgを60分間の静脈内点滴注入を通して投与することができる;併用療法としてのその使用法及び用量は、1mg/kgが30分間の静脈内点滴注入を通して投与されるようなものであってよい。さらに、活性成分としてペムブロリズマブを含有するケイツルーダ注射剤の場合、200mgを3週間間隔で30分間の静脈内点滴注入を通して投与することができる。このように、同じ抗PD-1抗体であっても、その使用法及び用量は製品によって異なる。したがって、その投与は、好ましくは各製造業者によって設定された使用法及び用量に従って実行される。
【0053】
がんは、固形がん又は血液がんであってよい。具体的には、血液がんは、リンパ腫、急性白血病及び多発性骨髄腫からなる群から選択されるいずれか1つであってよい。固形がんは、肺がん、結腸直腸がん、前立腺がん、甲状腺がん、乳がん、脳がん、頭頸部がん、食道がん、皮膚がん、胸腺がん、胃がん、結腸がん、肝がん、卵巣がん、子宮がん、膀胱がん、直腸がん、胆嚢がん、胆道がん、膵がん及びその組合せからなる群から選択されるいずれか1つであってよい。
【0054】
さらに、本発明の医薬組成物は、生理的に許容される担体をさらに含むことができる。さらに、本発明の医薬組成物は、医薬組成物の調製で一般的に使用される好適な賦形剤及び希釈剤をさらに含むことができる。さらに、医薬組成物は、従来の方法によって注射剤の形で製剤化することができる。
【0055】
非経口投与のための調製物として製剤化される場合、医薬組成物は、無菌水溶液、非水性溶液、懸濁液、乳剤、フリーズドライ調製物、坐薬などに製剤化することができる。非水性溶液又は懸濁液の場合、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルなどの注射用エステルなどを使用することができる。坐薬の基剤として、ウィテップゾール(Witepsol)(商標)、マクロゴール、ツイーン(Tween)(商標)61、カカオ脂、ラウリン系脂肪、グリセロゼラチンなどを使用することができる。
【0056】
投与経路、投薬量及び投与の頻度に関して、医薬組成物は、患者の状態及び副作用の有無;並びに最適な投与経路、投薬量及び投与の頻度によって様々な方法及び量で対象に投与することができ、したがって、好適な範囲内で当業者が選択することができる。さらに、医薬組成物はその治療効果が処置する疾患について知られている別の薬物若しくは生理活性物質と併用投与することができるか、又は他の薬物との併用調製物の形で製剤化することができる。
【0057】
医薬組成物は非経口的に投与することができ、そのような投与は任意の好適な方法、例えば腫瘍内、腹腔内、皮下、皮内、結節内、静脈内又は動脈内投与によって実行することができる。これらの中で、腫瘍内、腹腔内又は静脈内投与が好ましいかもしれない。他方、医薬組成物の投薬量は投与スケジュール、全投薬量及び患者の健康状態によって決定することができる。
【0058】
本発明の別の態様では、活性成分として腫瘍溶解性ウイルスを含む第1の組成物、活性成分としてヒドロキシ尿素を含む第2の組成物、及び活性成分として免疫チェックポイント阻害剤を含む第3の組成物を含む、がんを処置するためのキットが提供される。
【0059】
腫瘍溶解性ウイルス、免疫チェックポイント阻害剤及びヒドロキシ尿素は、医薬組成物について上で記載される通りである。
【0060】
第1の組成物の投薬量は、個体の状態及び体重、疾患の重症度、薬物のタイプ、投与の経路及び期間によって異なり、当業者が適切に選択することができる。投薬量は、患者が1×10~1×1018のウイルス粒子、感染性ウイルス単位(TCID50)又はプラーク形成単位(pfu)で腫瘍溶解性ウイルスを受けるようなものであってよい。具体的には、投薬量は、患者が1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×1010、5×1010、1×1011、5×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015、1×1016、1×1017又はそれ以上のウイルス粒子、感染性ウイルス単位又はプラーク形成単位で腫瘍溶解性ウイルスを受けるようなものであってよく、上記の数値の間の様々な数値及び範囲がその中に含まれてもよい。好ましくは、腫瘍溶解性ウイルスは1×10~1×1010pfuの用量で投与することができる。より好ましくは、腫瘍溶解性ウイルスは1×10以上及び1×10pfu未満の用量で投与することができる。本発明の一実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは1×10又は1×10pfuで投与された。
【0061】
さらに、第2の組成物は、1mg/kg/日~100mg/kg/日、又は10mg/kg/日~90mg/kg/日の用量で投与することができる。具体的には、第2の組成物は、10mg/kg/日~90mg/kg/日、15mg/kg/日~80mg/kg/日、20mg/kg/日~70mg/kg/日、25mg/kg/日~65mg/kg/日又は30mg/kg/日~60mg/kg/日の用量で投与することができる。本発明の一実施形態では、第2の組成物は30mg/kg/日又は60mg/kg/日で投与された。投薬量によって、第2の組成物は分割用量によって1日につき数回投与することができる。具体的には、第2の組成物は1日につき1~4回又は1日につき1~2回投与することができる。
【0062】
第3の組成物の投与は、各製造業者によって設定される、第3の組成物に含まれる免疫チェックポイント阻害剤の使用法及び用量に従って実行することができる。第3の組成物の投薬量は、0.1mg/kg~10mg/kg、又は1mg/kg~5mg/kgであってよい。
【0063】
がんは、固形がん又は血液がんであってよい。具体的には、血液がんは、リンパ腫、急性白血病及び多発性骨髄腫からなる群から選択されるいずれか1つであってよい。固形がんは、肺がん、結腸直腸がん、前立腺がん、甲状腺がん、乳がん、脳がん、頭頸部がん、食道がん、皮膚がん、胸腺がん、胃がん、結腸がん、肝がん、卵巣がん、子宮がん、膀胱がん、直腸がん、胆嚢がん、胆道がん、膵がん及びその組合せからなる群から選択されるいずれか1つであってよい。
【0064】
第1の組成物、第2の組成物及び第3の組成物は、生理的に許容される担体をさらに含むことができる。さらに、本発明の医薬組成物は、医薬組成物の調製で一般的に使用される好適な賦形剤及び希釈剤をさらに含むことができる。さらに、医薬組成物は、従来の方法によって注射剤の形で製剤化することができる。
【0065】
非経口投与のための調製物として製剤化される場合、第1の組成物、第2の組成物、及び第3の組成物は、無菌水溶液、非水性溶液、懸濁液、乳剤、フリーズドライ調製物、坐薬などに製剤化することができる。非水性溶液又は懸濁液の場合、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルなどの注射用エステルなどを使用することができる。坐薬の基剤として、ウィテップゾール(商標)、マクロゴール、ツイーン(商標)61、カカオ脂、ラウリン系脂肪、グリセロゼラチンなどを使用することができる。
【0066】
投与経路、投薬量及び投与頻度に関して、第1の組成物、第2の組成物、及び第3の組成物は、患者の状態及び副作用の有無;並びに最適な投与経路、全投薬量及び投与頻度によって様々な方法及び量で対象に投与することができ、したがって、好適な範囲内で当業者が選択することができる。さらに、医薬組成物はその治療効果が処置する疾患について知られている別の薬物又は生理活性物質と併用投与することができるか、又は他の薬物との併用調製物の形で製剤化することができる。
【0067】
第1の組成物、第2の組成物及び第3の組成物は非経口的に投与することができ、そのような投与は任意の好適な方法、例えば腫瘍内、腹腔内、皮下、皮内、結節内、静脈内又は動脈内投与によって実行することができる。これらの中で、腫瘍内、腹腔内又は静脈内投与が好ましいかもしれない。他方、第1の組成物、第2の組成物及び第3の組成物の投薬量は投与スケジュール、全投薬量及び患者の健康状態によって決定することができる。
【0068】
さらに、第1の組成物は個体に2回投与することができ、投与は、7~30日の間隔で実行することができる。具体的には、第1の組成物は、7日、14日、21日又は30日の間隔で投与することができる。
【0069】
第2の組成物は、第1の組成物の投与の前後に投与することができる。具体的には、第2の組成物は、第1の組成物の投与の3~5日前から開始して1日に1回連続的に投与することができ、第1の組成物の投与から24時間以内又はその24時間後に開始して9~28日間、1日に1回連続的に投与することができる。本発明の一実施形態では、第2の組成物は、第1の組成物の投与の1~3日前から開始して1日に1回連続的に投与することができ、第1の組成物の投与の後に13日間、17日間、18日間又は28日間、1日に1回投与することができる。
【0070】
第3の組成物は、第1の組成物の投与の後の1~10週間、少なくとも週1回連続的に投与することができる。詳細には、第3の組成物は、第1の組成物の投与の後の1~8週間、少なくとも週2回連続的に投与することができる。
【0071】
本発明のさらに別の態様では、がんを処置するための方法であって、がんの個体に腫瘍溶解性ウイルス、免疫チェックポイント阻害剤及びヒドロキシ尿素を投与するステップを含む方法が提供される。
【0072】
腫瘍溶解性ウイルス、免疫チェックポイント阻害剤及びヒドロキシ尿素は、医薬組成物について上で記載される通りである。
【0073】
腫瘍溶解性ウイルス、免疫チェックポイント阻害剤及びヒドロキシ尿素は、同時に、逐次的に、又は逆順に同時投与することができる。具体的には、腫瘍溶解性ウイルス、免疫チェックポイント阻害剤及びヒドロキシ尿素は、同時に投与することができる。さらに、ヒドロキシ尿素を最初に、続いて免疫チェックポイント阻害剤を、その後腫瘍溶解性ウイルスを投与することができる。ヒドロキシ尿素を最初に、続いて腫瘍溶解性ウイルスを、その後免疫チェックポイント阻害剤を投与することができる。ヒドロキシ尿素を最初に、続いて腫瘍溶解性ウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤を同時投与することができる。
【0074】
さらに、腫瘍溶解性ウイルスを最初に、続いてヒドロキシ尿素を、その後免疫チェックポイント阻害剤を投与することができる。腫瘍溶解性ウイルスを最初に、続いて免疫チェックポイント阻害剤を、その後ヒドロキシ尿素を投与することができる。腫瘍溶解性ウイルスを最初に、続いてヒドロキシ尿素及び免疫チェックポイント阻害剤を同時投与することができる。
【0075】
さらに、免疫チェックポイント阻害剤を最初に、続いてヒドロキシ尿素を、その後腫瘍溶解性ウイルスを投与することができる。免疫チェックポイント阻害剤を最初に、続いて腫瘍溶解性ウイルスを、その後ヒドロキシ尿素を投与することができる。免疫チェックポイント阻害剤を最初に、続いて腫瘍溶解性ウイルス及びヒドロキシ尿素を同時投与することができる。
【0076】
さらに、ヒドロキシ尿素を最初に、続いて腫瘍溶解性ウイルスを、続いて免疫チェックポイント阻害剤を、その後ヒドロキシ尿素を再び投与することができる。ヒドロキシ尿素を最初に、続いて免疫チェックポイント阻害剤を、続いて腫瘍溶解性ウイルスを、その後ヒドロキシ尿素を再び投与することができる。ヒドロキシ尿素を最初に、続いて腫瘍溶解性ウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤の同時投与を、その後ヒドロキシ尿素を再び投与することができる。
【0077】
さらに、ヒドロキシ尿素を最初に、続いて腫瘍溶解性ウイルスを、続いてヒドロキシ尿素を再び、その後免疫チェックポイント阻害剤を投与することができる。ヒドロキシ尿素を最初に、続いて免疫チェックポイント阻害剤を、続いてヒドロキシ尿素を再び、その後腫瘍溶解性ウイルスを投与することができる。
【0078】
さらに、ヒドロキシ尿素を最初に、続いて腫瘍溶解性ウイルスを、続いてヒドロキシ尿素を再び、続いて免疫チェックポイント阻害剤を、その後ヒドロキシ尿素を再び投与することができる。ヒドロキシ尿素を最初に、続いて免疫チェックポイント阻害剤を、続いてヒドロキシ尿素を再び、続いて腫瘍溶解性ウイルスを、その後ヒドロキシ尿素を再び投与することができる。
【0079】
さらに、腫瘍溶解性ウイルスを最初に、続いてヒドロキシ尿素を、続いて免疫チェックポイント阻害剤を、その後ヒドロキシ尿素を再び投与することができる。免疫チェックポイント阻害剤を最初に、続いてヒドロキシ尿素を、続いて腫瘍溶解性ウイルスを、その後ヒドロキシ尿素を再び投与することができる。
【0080】
腫瘍溶解性ウイルスの投薬量は、個体の状態及び体重、疾患の重症度、薬物のタイプ、投与の経路及び期間によって異なり、当業者が適切に選択することができる。投薬量は、患者が1×10~1×1018のウイルス粒子、感染性ウイルス単位(TCID50)又はプラーク形成単位(pfu)でワクシニアウイルスを受けるようなものであってよい。具体的には、投薬量は、患者が1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×1010、5×1010、1×1011、5×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015、1×1016、1×1017又はそれ以上のウイルス粒子、感染性ウイルス単位又はプラーク形成単位で腫瘍溶解性ウイルスを受けるようなものであってよく、上記の数値の間の様々な数値及び範囲がその中に含まれてもよい。好ましくは、腫瘍溶解性ウイルスは1×10~1×1010pfuの用量で投与することができる。より好ましくは、腫瘍溶解性ウイルスは1×10以上及び1×10pfu未満の用量で投与することができる。本発明の一実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは1×10又は1×10pfuで投与された。
【0081】
さらに、ヒドロキシ尿素は1mg/kg/日~100mg/kg/日、又は10mg/kg/日~90mg/kg/日の用量で投与することができる。具体的には、ヒドロキシ尿素は10mg/kg/日~90mg/kg/日、15mg/kg/日~80mg/kg/日、20mg/kg/日~70mg/kg/日、25mg/kg/日~65mg/kg/日又は30mg/kg/日~60mg/kg/日の用量で投与することができる。本発明の一実施形態では、ヒドロキシ尿素は30mg/kg/日又は60mg/kg/日で投与された。投薬量によって、ヒドロキシ尿素は分割用量によって1日につき数回投与することができる。具体的には、ヒドロキシ尿素は1日につき1~4回又は1日につき1~2回投与することができる。
【0082】
免疫チェックポイント阻害剤の投与は、各製造業者によって設定された使用法及び用量に従って実行することができる。免疫チェックポイント阻害剤は、0.1mg/kg~10mg/kg、又は1mg/kg~5mg/kgの用量で投与することができる。例えば、活性成分としてニボルマブを含有するオプジーボ注射剤の場合、2週間間隔で3mg/kgを60分間の静脈内点滴注入を通して投与することができる。併用療法としてのその使用法及び用量は、1mg/kgが30分間の静脈内点滴注入を通して投与されるようなものであってよい。さらに、活性成分としてペムブロリズマブを含有するケイツルーダ注射剤の場合、200mgを3週間間隔で30分間の静脈内点滴注入を通して投与することができる。このように、同じ抗PD-1抗体であっても、その使用法及び用量は製品によって異なる。したがって、その投与は、好ましくは各製造業者によって設定された使用法及び用量に従って実行される。
【0083】
さらに、腫瘍溶解性ウイルスは、1~10回又は2~5回投与することができ、個体に7~30日の間隔で投与することができる。具体的には、腫瘍溶解性ウイルスは、7日、14日、21日又は30日の間隔で投与することができる。
【0084】
ヒドロキシ尿素は、腫瘍溶解性ウイルスの投与の前、その間又は後に投与することができる。具体的には、ヒドロキシ尿素は、腫瘍溶解性ウイルスの投与の前後に投与することができる。ヒドロキシ尿素は、腫瘍溶解性ウイルスの投与の3~5日前から開始して1日に1回連続的に投与することができ、腫瘍溶解性ウイルスの投与から24時間以内又はその24時間後に開始して9~28日間、1日に1回連続的に投与することができる。本発明の一実施形態では、ヒドロキシ尿素は、腫瘍溶解性ウイルスの投与の1~3日前から開始して1日に1回連続的に投与することができ、腫瘍溶解性ウイルスの投与の後に13日間、17日間、18日間又は28日間、1日に1回投与することができる。
【0085】
免疫チェックポイント阻害剤は、腫瘍溶解性ウイルスの投与の前、その間又は後に投与することができる。具体的には、免疫チェックポイント阻害剤は、腫瘍溶解性ウイルスの投与後に投与することができる。免疫チェックポイント阻害剤は、腫瘍溶解性ウイルスの投与の後の1~10週間、少なくとも週1回連続的に投与することができる。具体的には、免疫チェックポイント阻害剤は、腫瘍溶解性ウイルスの投与の後の1~8週間、少なくとも週2回連続的に投与することができる。
【0086】
がんは、固形がん又は血液がんであってよい。具体的には、血液がんは、リンパ腫、急性白血病及び多発性骨髄腫からなる群から選択されるいずれか1つであってよい。固形がんは、肺がん、結腸直腸がん、前立腺がん、甲状腺がん、乳がん、脳がん、頭頸部がん、食道がん、皮膚がん、胸腺がん、胃がん、結腸がん、肝がん、卵巣がん、子宮がん、膀胱がん、直腸がん、胆嚢がん、胆道がん、膵がん及びその組合せからなる群から選択されるいずれか1つであってよい。
【0087】
ヒドロキシ尿素は、経口的に又は非経口的に投与することができる。具体的には、ヒドロキシ尿素は非経口的に投与することができ、そのような投与は腹腔内又は静脈内投与によって実行することができる。
【0088】
さらに、免疫チェックポイント阻害剤は、腹腔内又は静脈内に投与することができる。
【0089】
腫瘍溶解性ウイルスは非経口投与することができ、そのような投与は任意の好適な方法、例えば腫瘍内、腹腔内、皮下、皮内、結節内、静脈内又は動脈内投与によって実行することができる。これらの中で、腫瘍内、腹腔内又は静脈内投与が好ましいかもしれない。一方、腫瘍溶解性ウイルス、免疫チェックポイント阻害剤及びヒドロキシ尿素の投薬量は、投与スケジュール、投薬量及び患者の健康状態によって決定することができる。
【0090】
本明細書で使用されるように、用語「個体」は、本発明の医薬組成物を投与することによって緩和、抑制又は処置することができる状態の疾患を有するか又は患っている人を指す。
【0091】
本明細書で使用されるように、用語「投与」は、適当な方法によって物質の有効量を個体に導入することを意味し、ワクシニアウイルス及びヒドロキシ尿素の投与は、物質が標的組織に到達することを可能にする一般的な経路を通して実行することができる。
【0092】
さらに、腫瘍溶解性ウイルス、免疫チェックポイント阻害剤及びヒドロキシ尿素は、その治療効果が処置する疾患について知られている別の薬物又は生理活性物質と併用投与することができるか、又は他の薬物との併用調製物の形で製剤化することができる。
【0093】
本発明のさらに別の態様では、がんの予防又は処置のための腫瘍溶解性ウイルス、免疫チェックポイント阻害剤、及びヒドロキシ尿素を含む組成物の使用が提供される。
【0094】
本発明のさらに別の態様では、がんを処置するための医薬の製造のための、腫瘍溶解性ウイルス、免疫チェックポイント阻害剤、及びヒドロキシ尿素を含む組成物の使用が提供される。
【実施例
【0095】
[発明の形態]
以降、本発明は実施例によりさらに詳細に記載される。しかし、以下の実施例は例示だけが目的であり、本発明の範囲はそれに限定されない。
【0096】
調製実施例1。腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-、WR VVtk-)の生成
調製実施例1.1。シャトルプラスミドベクターの構築
チミジンキナーゼ(TK)遺伝子が欠失している腫瘍溶解性ウイルスを生成するために、野生型ワクシニアウイルス、すなわち、Wyeth株(NYC Department of Health)及びWestern Reserve株を、アメリカ基準株保存機構(ATCC)から購入した。組換えのために、野生型ワクシニアウイルスのTK領域を、ホタルルシフェラーゼリポーター(p7.5プロモーター)遺伝子又はGFP遺伝子を含有するシャトルプラスミドベクターを使用した置換にかけた。
【0097】
調製実施例1.2。腫瘍溶解性ウイルスの生成
腫瘍溶解性ウイルスを得るために、HeLa細胞(ATCC)を1ウェルにつき4×10細胞で6ウェルプレートに播種し、次に、10%ウシ胎児血清を含有するEMEM培地で培養を実行した。その後、野生型ワクシニアウイルスによる処理を0.05のMOIで実行した。2時間後に、培地を2%ウシ胎児血清を含有するEMEM培地で置き換え、次に、Xfect(商標)ポリマー(Clonetech631317、USA)を使用して、調製実施例1.1で構築されて線状化された4μgのシャトルプラスミドベクターで細胞をトランスフェクトした。培養は、4時間実行した。その後、培地を2%ウシ胎児血清を含有するEMEM培地で置き換え、その後、培養を72時間実行した。最後に、感染細胞を収集し、次に凍結解凍を3回繰り返した。その後、細胞を超音波処理によって溶解し、スクロースクッション方法を使用して遊離の腫瘍溶解性ウイルスを得、それらをWyeth VVtk-又はWR VVtk-と命名した。
【0098】
調製実施例2。腫瘍溶解性ウイルス(WOTS-418)の生成
チミジンキナーゼ(TK)遺伝子が欠失し、変異した単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV1-TK)遺伝子を発現する腫瘍溶解性ウイルスを生成するために、WesternReserve株野生型ワクシニアウイルスのTK領域を、配列番号1の合成された変異した1型HSV-TK遺伝子(pSE/Lプロモーター)及びホタルルシフェラーゼリポーター(p7.5プロモーター)遺伝子を組み換えたpUC57amp+プラスミド(Genewiz、USA)をシャトルベクターとして使用した置換にかけた。上で構築したシャトルベクターを使用して、腫瘍溶解性ウイルスを調製実施例1.2と同様に得、このウイルスをWOTS-418と命名した。
【0099】
実験的実施例1。マウス腎臓がん細胞移植マウス:Renca(I)における腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-)、PD-1阻害剤及びヒドロキシ尿素の抗がん効果の特定
腫瘍溶解性ウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤の1つであるPD-1阻害剤(CD279、BioXCell)の同時投与の後のヒドロキシ尿素の投与によって引き起こされる追加の効果を特定するために、マウス腎臓がん細胞移植マウスを使用して実験を行った。
【0100】
先ず、ORIENT BIO(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、8週齢)を1週間の順化にかけ、次にRencaがん細胞株(Korea Cell Line Bank)を5×10細胞で同種移植した。それが200mm~300mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、その後腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-)の投与を開始した。腫瘍溶解性ウイルスは、同種異系移植モデルにおいて限定的な増殖を有する。
【0101】
生成されたマウス腎臓がん細胞移植マウスは、5群(n=5)に分割した。食塩水の腹腔内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、マウスPD-1阻害剤を受ける群、腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-、1×10pfu)の腫瘍内投与を受ける群、及び腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-、1×10pfu)とPD-1阻害剤の同時投与を受ける群は陽性対照群として設定した。さらに、腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-、1×10pfu)、PD-1阻害剤及びヒドロキシ尿素(30mg/kg)の同時投与を受ける群は実験群として設定した。ここで、腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍内に1回投与し;PD-1阻害剤は、腹腔内に14、16、18及び20日目に2日おきに1回投与し;ヒドロキシ尿素は腹腔内に1週につき6回投与した。
【0102】
腫瘍体積は、各群のマウスへの薬物投与から0、4、10、14、17及び21日目に測定した。その結果、実験群のマウスの腫瘍体積は、陽性対照群のマウスの腫瘍体積と比較して有意に抑制されることが特定された(図1)。
【0103】
実験的実施例2。マウス腎臓がん細胞移植マウス:Renca(II)における腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-)、CTLA-4阻害剤及びヒドロキシ尿素の抗がん効果の特定
腫瘍溶解性ウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤であるCTLA-4阻害剤(B7-H1、BioXCell)の同時投与の後のヒドロキシ尿素の投与によって引き起こされる追加の効果を特定するために、マウス腎臓がん細胞移植マウスを使用して実験を行った。
【0104】
先ず、ORIENT BIO(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、8週齢)を1週間の順化にかけ、次にRencaがん細胞株(Korea Cell Line Bank)を5×10細胞で同種移植した。それが50mm~150mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、その後腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-)の投与を開始した。腫瘍溶解性ウイルスは、同種異系移植モデルにおいて限定的な増殖を有する。
【0105】
生成されたマウス腎臓がん細胞移植マウスは、5群(n=6)に分割した。食塩水の腹腔内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、CTLA-4阻害剤を受ける群、腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-、1×10pfu)の腫瘍内投与を受ける群、及び腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-、1×10pfu)とCTLA-4阻害剤の同時投与を受ける群は陽性対照群として設定した。さらに、腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-、1×10pfu)、CTLA-4阻害剤及びヒドロキシ尿素(30mg/kg)の同時投与を受ける群は実験群として設定した。ここで、腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍内に1回投与し;CTLA-4阻害剤は、腹腔内に3、5、7及び9日目に2日おきに1回投与し;ヒドロキシ尿素は腹腔内に1週につき6回投与した。
【0106】
腫瘍体積は、各群のマウスへの薬物投与から0、4、7、10、14及び17日目に測定した。その結果、実験群のマウスの腫瘍体積は、陽性対照群のマウスの腫瘍体積と比較して有意に抑制されることが特定された(図2)。これらの結果から、腫瘍溶解性ウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤(CTLA-4阻害剤)の同時投与の後にヒドロキシ尿素も投与される場合に、優れたマウス腎臓がん阻害効果が示されることが特定された。
【0107】
実験的実施例3。マウス腎臓がん細胞移植マウス:Renca(III)における腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-)、PD-L1阻害剤及びヒドロキシ尿素の抗がん効果の特定
腫瘍溶解性ウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤の1つであるPD-L1阻害剤(CD152、BioXCell)の同時投与の後のヒドロキシ尿素の投与によって引き起こされる追加の効果を特定するために、マウス腎臓がん細胞移植マウスを使用して実験を行った。
【0108】
先ず、ORIENT BIO(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、8週齢)を1週間の順化にかけ、次にRencaがん細胞株(Korea Cell Line Bank)を5×10細胞で同種移植した。それが50mm~100mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、その後腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-)の投与を開始した。腫瘍溶解性ウイルスは、同種異系移植モデルにおいて限定的な増殖を有する。
【0109】
生成されたマウス腎臓がん細胞移植マウスは、5群(n=6)に分割した。食塩水の腹腔内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、PD-L1阻害剤(マウスごとに300μg)を受ける群、腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-、1×10pfu)の腫瘍内投与を受ける群、及び腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-、1×10pfu)とPD-L1阻害剤の同時投与を受ける群は陽性対照群として設定した。さらに、腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-、1×10pfu)、PD-L1阻害剤及びヒドロキシ尿素(30mg/kg)の同時投与を受ける群は、実験群として設定した。ここで、腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍内に1回投与し;PD-1阻害剤は腹腔内に0、3、7、10、14、17及び21日目に投与し;ヒドロキシ尿素は腹腔内に1週につき6回投与した。
【0110】
腫瘍体積は、各群のマウスへの薬物投与から0、3、7、10、14、17及び21日目に測定した。その結果、実験群のマウスの腫瘍体積は陽性対照群のマウスの腫瘍体積と比較して有意に抑制されることが特定された(図3)。特に、マウス屠殺の前に腫瘍体積について比較した場合、実験群は、腫瘍溶解性ウイルス及びPD-L1阻害剤の同時投与を受けた群より約46%小さい腫瘍体積を示すことが特定された。
【0111】
これらの結果から、腫瘍溶解性ウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤(PD-L1阻害剤)の同時投与の後にヒドロキシ尿素も投与される場合に、優れたマウス腎臓がん阻害効果が示されることが特定された。
【0112】
実験的実施例4。マウス乳がん細胞移植マウス:4T1(I)における腫瘍溶解性ウイルス(WR VVtk-)、CTLA-4阻害剤及びヒドロキシ尿素の抗がん効果の特定
実験的実施例4.1。マウス乳がん細胞移植マウスの生成及び薬物投与
腫瘍溶解性ウイルス及びCTLA-4阻害剤(B7-H1、BioXCell)の同時投与の後のヒドロキシ尿素の投与によって引き起こされる追加の効果を特定するために、マウス乳がん細胞移植マウスを使用して実験を行った。
【0113】
先ず、ORIENT BIO(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、8週齢)を1週間の順化にかけ、次に4T1がん細胞株(Korea Cell Line Bank)を1×10細胞で同種移植した。それが50mm~150mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、次に腫瘍溶解性ウイルス(WR VVtk-)の投与を開始した。Western Reserve株ワクシニアウイルス由来腫瘍溶解性ウイルス(WR VVtk-)は、同種移植モデルにおいてWyeth株ワクシニアウイルス由来腫瘍溶解性ウイルスより強力な増殖能力を有する。
【0114】
生成されたマウス乳がん細胞移植マウスは、5群(n=5)に分割した。食塩水の腹腔内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、CTLA-4阻害剤(マウスごとに300μg)を受ける群、腫瘍溶解性ウイルス(WR VVtk-、1×10pfu)の腫瘍内投与を受ける群、及び腫瘍溶解性ウイルス(WR VVtk-、1×10pfu)とCTLA-4阻害剤の同時投与を受ける群は陽性対照群として設定した。さらに、腫瘍溶解性ウイルス(WR VVtk-、1×10pfu)、CTLA-4阻害剤及びヒドロキシ尿素(30mg/kg)の同時投与を受ける群は実験群として設定した。ここで、腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍内に2回投与し;CTLA-4阻害剤は腹腔内に3、5、7及び9日目に投与し;ヒドロキシ尿素は腹腔内に1週につき6回投与した。
【0115】
実験的実施例4.2。腫瘍体積の変化の検査
腫瘍体積は、各群のマウスへの薬物投与から0、3、7、10及び14日目に測定した。その結果、実験群のマウスの腫瘍体積は、陽性対照群のマウスの腫瘍体積と比較して有意に抑制されることが特定された(図4)。
【0116】
実験的実施例4.3。生存の分析
さらに、生存に関しては、実験群のマウスが最高の生存期間及び生存率を示すことが特定された(図5)。これらの結果から、腫瘍溶解性ウイルス及びCTLA-4阻害剤のマウス乳がん細胞移植マウスへの同時投与の後にヒドロキシ尿素も投与される場合に、有意な効果が示されることが特定された。
【0117】
実験的実施例5。マウス乳がん細胞移植マウス:4T1(II)における腫瘍溶解性ウイルス(WOTS-418)、PD-L1阻害剤及びヒドロキシ尿素の抗がん効果の特定
実験的実施例5.1。マウス乳がん細胞移植マウスの生成及び薬物投与
腫瘍溶解性ウイルス及びPD-L1阻害剤(CD152、BioXCell)の同時投与の後のヒドロキシ尿素の投与によって引き起こされる追加の効果を特定するために、マウス乳がん細胞移植マウスを使用して実験を行った。
【0118】
先ず、ORIENT BIO(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、8週齢)を1週間の順化にかけ、次に4T1がん細胞株(Korea Cell Line Bank)を1×10細胞で同種移植した。それが50mm~100mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、その後Western Reserve株ワクシニアウイルス由来腫瘍溶解性ウイルス(WOTS-418)の投与を開始した。Western Reserve株は、同種移植モデルにおいてWyeth株より強力な増殖能力を有する。
【0119】
生成されたマウス乳がん細胞移植マウスは、5群(n=6)に分割した。食塩水の腹腔内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、PD-L1阻害剤(マウスごとに300μg)を受ける群、腫瘍溶解性ウイルス(WOTS-418、1×10pfu)の腫瘍内投与を受ける群、及び腫瘍溶解性ウイルス(WOTS-418、1×10pfu)とPD-L1阻害剤の同時投与を受ける群は陽性対照群として設定した。さらに、腫瘍溶解性ウイルス(WOTS-418、1×10pfu)、PD-L1阻害剤及びヒドロキシ尿素(30mg/kg)の同時投与を受ける群は、実験群として設定した。ここで、腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍内に2回投与し;PD-L1阻害剤は腹腔内に3、5、7及び9日目に投与し;ヒドロキシ尿素は腹腔内に1週につき6回投与した。
【0120】
実験的実施例5.2。腫瘍体積の変化の検査
腫瘍体積は、実験的実施例5.1の各群のマウスへの薬物投与の0、3、7、10及び14日目に測定した。その結果、実験群のマウスの腫瘍体積は陽性対照群のマウスの腫瘍体積と比較して有意に抑制されることが特定された(図5)。特に、マウス屠殺の前に腫瘍体積について比較した場合、実験群は、腫瘍溶解性ウイルス及びPD-L1阻害剤の同時投与を受けた群より約30%小さい腫瘍体積を示すことが特定された。
【0121】
これらの結果から、腫瘍溶解性ウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤(PD-L1阻害剤)の同時投与の後にヒドロキシ尿素も投与される場合に、マウス乳がんの抑制において相乗効果が示されることが特定された。
【0122】
実験的実施例5.3。生存分析
実験的実施例5.1の各群のマウスについて、30日生存率を分析した。その結果、実験群のマウスが陰性及び陽性対照群のマウスより高い生存率を有することが特定された。
【0123】
実験的実施例6。マウス結腸直腸がん細胞移植マウス:CT-26Iにおける腫瘍溶解性ウイルス(WR、WOTS-418)、PD-L1阻害剤及びヒドロキシ尿素についての生存分析
Western Reserve株ワクシニアウイルス(WR)、PD-L1阻害剤及びヒドロキシ尿素の同時投与の後の安全性を特定するために、マウス結腸直腸がん細胞移植マウスを使用して生存期間を分析した。
【0124】
先ず、ORIENT BIO(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウスを1週間の順化にかけ、次にマウス結腸直腸がん(CT-26)細胞株(Korea Cell Line Bank)を皮下に1×10細胞で移植した。7日後、腫瘍溶解性ウイルス(WR)及びPD-L1阻害剤を腹腔内に投与し、その翌日から5日間、ヒドロキシ尿素を毎日投与した。他方、Western Reserve株ワクシニアウイルスは、同種異系移植モデルにおいてWyeth株ワクシニアウイルスより強力な増殖能力を有する。
【0125】
生成されたマウス結腸直腸がん細胞移植マウスは、5群(n=13)に分割した。食塩水の腹腔内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、PD-L1阻害剤(マウスごとに200μg)を単独で受ける群、及び腫瘍溶解性ウイルス(WOTS-418)とヒドロキシ尿素(30mg/kg)の同時投与を受ける群は陽性対照群として設定した。さらに、腫瘍溶解性ウイルス(WR、1×10pfu;又はWOTS-418、1×10pfu)、PD-L1阻害剤及びヒドロキシ尿素の同時投与を受ける群は、実験群として設定した。ここで、腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍内に1回投与し;PD-L1阻害剤は腹腔内に1、4、8及び11日目に投与し;ヒドロキシ尿素は腹腔内に1週につき5回投与した。
【0126】
各群のマウスの生存曲線を分析した。その結果、実験群のマウスが陰性及び陽性対照群のマウスと比較して最長の生存期間を有することが観察された。これらの結果から、腫瘍溶解性ウイルス、免疫チェックポイント阻害剤及びヒドロキシ尿素の同時投与の場合に安全性が向上することが特定された。
【0127】
実験的実施例7。マウス腎臓がん細胞移植マウス:Renca(IV)におけるWestern Reserve株ワクシニアウイルス(WR)、CTLA-4阻害剤及びヒドロキシ尿素による生存分析
Western Reserve株ワクシニアウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤の1つであるCTLA-4阻害剤(B7-H1、BioXCell)の同時投与の後のヒドロキシ尿素の投与によって引き起こされる追加の効果を特定するために、マウス腎臓がん細胞移植マウスを使用して実験を行った。
【0128】
先ず、ORIENT BIO(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、8週齢)を1週間の順化にかけ、次にRencaがん細胞株(Korea Cell Line Bank)を5×10細胞で同種移植した。それが30mm~50mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、その後Western Reserve株ワクシニアウイルス(WR)の投与を開始した。Western Reserve株ワクシニアウイルスは、同種移植モデルにおいてWyeth株ワクシニアウイルスより強力な増殖能力を有する。
【0129】
生成されたマウス腎臓がん細胞移植マウスは、4群(n=4)に分割した。食塩水の腹腔内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、Western Reserve株ワクシニアウイルス(WR、1×10pfu)とヒドロキシ尿素(30mg/kg)の同時投与を受ける群、及びWestern Reserve株ワクシニアウイルスとCTLA-4阻害剤(マウスごとに150μg)の同時投与を受ける群は陽性対照群として設定した。さらに、Western Reserve株ワクシニアウイルス、CTLA-4阻害剤及びヒドロキシ尿素の投与を受ける群は実験群として設定した。ここで、Western Reserve株ワクシニアウイルスは腫瘍内に1回投与し;CTLA-4阻害剤は腹腔内に2、4、6及び8日目に投与し;ヒドロキシ尿素は腹腔内に1週につき4回投与した。
【0130】
腫瘍体積は、各群のマウスへの薬物投与の0、3及び7日目に測定した。その結果、実験群のマウスの腫瘍体積は、陽性対照群のマウスの腫瘍体積と比較して有意に抑制されることが特定された(図6)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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