(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】表示装置におけるレーザの制御方法
(51)【国際特許分類】
G09G 3/02 20060101AFI20240510BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20240510BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20240510BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20240510BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
G09G3/02 Q
G02B26/10 104Z
G03B21/00 Z
G03B21/14 A
H04N5/74 H
(21)【出願番号】P 2019220991
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 祐司
【審査官】植田 高盛
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-101115(JP,A)
【文献】特開2014-174292(JP,A)
【文献】特開2015-108750(JP,A)
【文献】特開2019-128419(JP,A)
【文献】特開2018-060220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00-3/08、3/12、3/16、3/19-3/26、
3/30、3/34、3/38
G03B 21/00-21/10、21/12-21/30、
33/00-33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光により生成された映像を表示する表示装置
におけるレーザの制御方法であって、
レーザの電流-光出力特性を予め取得し、前記電流-光出力特性が所望の形に近づくように補正する変換テーブルを
作成して記憶部に
記憶させるステップと、
制御部が前記記憶部から前記変換テーブルを読み出し、前記変換テーブルを用いて変換したデータに基づいて前記レーザを発光させる
ステップと、を有し、
前記変換テーブルは、予め取得した前記電流-光出力特性のデータにおいて電流に対応する入力階調に対して光出力に対応する出力階調が非線形である部分が存在する場合には、前記出力階調が線形に近づくように階調のデータを入れ替えられるように作成し、
かつ予め取得したデータに所望の出力階調になる入力階調が存在しない場合には、前記所望の出力階調に近い出力階調となる入力階調を前記変換テーブルに設定する表示装置
におけるレーザの制御方法。
【請求項2】
前記レーザを発光させるステップにおいて、前記制御部は、
前記電流-光出力特性のひずみを補正する計算を行わない請求項1に記載の表示装置
におけるレーザの制御方法。
【請求項3】
前記変換テーブルは、周囲温度に対応して複数作成され、前記記憶部に記憶されている請求項1又は2に記載の表示装置
におけるレーザの制御方法。
【請求項4】
前記レーザを複数有し、
前記変換テーブルは、前記レーザ毎に作成され、前記記憶部に記憶されている請求項1乃至3の何れか一項に記載の表示装置
におけるレーザの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置におけるレーザの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を2次元走査することにより、画像をスクリーンに投影する表示装置(所謂レーザプロジェクタ)が知られている。このような表示装置では、例えば、レーザ光を反射するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーを駆動して、その反射方向を順次変化させることにより、レーザ光を2次元走査する。
【0003】
このような表示装置には、明るさ補正や階調補正を行うものがある。補正機能は、表示装置により異なるが、明るさ補正、コントラスト補正を備えているものが多い。明るさ補正は、例えば、光源の光量を変えることにより実現し、コントラスト補正は、例えば、上下の階調をより強調するような階調補正を行う。
【0004】
何れの補正の場合も、例えば、プリセットの何パターンかの階調テーブルか、何パターンかの階調変換式を表示装置内に保有している。中にはγ補正のように表示装置自身が持っている階調の特性を補償するような機能を持ったものもあるが、γ補正のカーブはやはり何通りかのプリセットである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の補正機能では、レーザのI-L特性のばらつきを適切に補正することは困難である。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、レーザのI-L特性のばらつきを補正可能な表示装置におけるレーザの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本表示装置におけるレーザの制御方法は、レーザ光により生成された映像を表示する表示装置におけるレーザの制御方法であって、レーザの電流-光出力特性を予め取得し、前記電流-光出力特性が所望の形に近づくように補正する変換テーブルを作成して記憶部(16)に記憶させるステップと、制御部(11、12)が前記記憶部から前記変換テーブルを読み出し、前記変換テーブルを用いて変換したデータに基づいて前記レーザを発光させるステップと、を有し、前記変換テーブルは、予め取得した前記電流-光出力特性のデータにおいて電流に対応する入力階調に対して光出力に対応する出力階調が非線形である部分が存在する場合には、前記出力階調が線形に近づくように階調のデータを入れ替えられるように作成し、かつ予め取得したデータに所望の出力階調になる入力階調が存在しない場合には、前記所望の出力階調に近い出力階調となる入力階調を前記変換テーブルに設定する。
【0009】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0010】
開示の技術によれば、レーザのI-L特性のばらつきを補正可能な表示装置におけるレーザの制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る表示装置を例示するブロック図である。
【
図2】表示装置を構成する光走査部を例示する平面図である。
【
図3】本実施形態に係る表示装置を例示する外観図(その1)である。
【
図4】本実施形態に係る表示装置を例示する外観図(その2)である。
【
図5】レーザダイオードのI-L特性を例示する図である。
【
図7】レーザダイオードの温度特性を例示する図である。
【
図8】I-L特性(入力階調に対する出力階調)について示す図である。
【
図10】スクリーンにおける光センサの配置を説明する図である。
【
図11】光センサの構成について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0013】
図1は、本実施形態に係る表示装置を例示するブロック図である。
図2は、表示装置を構成する光走査部を例示する平面図である。
図3及び
図4は、本実施形態に係る表示装置を例示する外観図である。
【0014】
(表示装置の概略構成)
まず、
図1~
図4を参照して、表示装置1の概略構成について説明する。表示装置1は、主要な構成要素として、回路部10と、光源部20と、光走査部30と、光学部40と、スクリーン50と、光センサ60とを有し、これらは筐体100に格納されている。表示装置1は、レーザ光により生成された映像を表示する装置であり、例えば、レーザ走査型プロジェクタである。
【0015】
回路部10は、光源部20や光走査部30を制御する部分であり、例えば、システムコントローラ11やCPU(Central Processing Unit)12、バッファ回路13、ミラー駆動回路14、レーザ駆動回路15、メモリ16(例えば、フラッシュメモリ)等により構成できる。システムコントローラ11には、表示装置1の外部からビデオ信号が入力される。
【0016】
光源部20は、LDモジュール21と、減光フィルタ24とを有する。
【0017】
LDモジュール21は、電流に応じて光出力が変化するレーザ211R、211G、及び211Bや、レーザ211R、211G、及び211Bの夫々の直近の光量をモニタする光量検出センサ215、夫々のレーザの直近の温度をモニタする温度センサ217等を備えている。
【0018】
レーザ211Rは、例えば、赤色半導体レーザであり、波長λR(例えば、640nm)の光を出射できる。レーザ211Gは、例えば、緑色半導体レーザであり、波長λG(例えば、530nm)の光を出射できる。レーザ211Bは、例えば、青色半導体レーザであり、波長λB(例えば、445nm)の光を出射できる。光量検出センサ215としては、例えば、フォトダイオード等を用いることができる。温度センサ217としては、例えば、サーミスタを用いることができる。
【0019】
光走査部30は、例えば、圧電素子によりミラー310を駆動させるMEMS(Micro Electro Mechanical System)である。ミラー310は、レーザ211R、211G、及び211Bから出射された光(合成後の光)を反射させ、映像信号に応じて入射光を水平方向及び垂直方向の2次元に走査してスクリーン50に結像させる走査手段として機能する。
【0020】
具体的には、
図2に示すように、ミラー310は、軸を構成する捻れ梁331及び332により両側から支持されている。捻れ梁331及び332と直交する方向に、ミラー310を挟むように、駆動梁351及び352が対をなして設けられている。駆動梁351及び352の夫々の表面に形成された圧電素子により、捻れ梁331及び332を軸として、ミラー310を軸周りに揺動させることができる。ミラー310が捻れ梁331及び332の軸周りに揺動する方向を、以後、水平方向と呼ぶ。駆動梁351及び352による水平駆動には、例えば共振振動が用いられ、高速にミラー310を駆動できる。水平変位センサ391は、ミラー310が水平方向に揺動している状態におけるミラー310の水平方向の傾き具合を検出するセンサである。
【0021】
又、駆動梁351及び352の外側には、駆動梁371及び372が対をなして設けられている。駆動梁371及び372は、表面の圧電素子が形成されたカンチレバーを複数本ミアンダ形状に連結することで形成されており、駆動梁371及び372の夫々の表面に形成された圧電素子により、ミラー310を水平方向と直交する方向である垂直方向に揺動させることができる。垂直変位センサ395及び396は、ミラー310が垂直方向に揺動している状態におけるミラー310の垂直方向の傾き具合を検出するセンサである。なお、光走査部30は、例えば、ユニット150(
図3(b)参照)において、駆動回路等と共にセラミックパッケージに搭載され、セラミックカバーに覆われている。
【0022】
なお、捻れ梁331及び332の長手方向(軸方向)は、結晶方位<100>面から約5°傾いている。又、駆動梁371及び372を形成するカンチレバーの長手方向は、捻れ梁331及び332の長手方向(軸方向)と平行に形成されており、同様に結晶方位<100>面より約5°傾いている。
【0023】
光学部40は、光走査部30にて走査された光をスクリーン50に投射するための光学系であり、例えば、
図3(b)等に示すように、反射ミラー41、反射ミラー42、反射ミラー43、凹面ミラー44等を含んで構成できる。光走査部30から光学部40に入射した光は、凹面ミラー44により略平行光とされてスクリーン50に結像し、スクリーン50に映像信号に応じた画像が描画される。スクリーン50は、スペックルと呼ばれる粒状に見える画像のノイズを除去する機能(マイクロレンズアレイ等)を備えていることが好ましい。
【0024】
光センサ60は、スクリーン50上に設けられており、レーザ光の水平走査の往路(第一の方向)及び復路(第二の方向)のそれぞれにおいて、光センサ60に照射されたレーザ光を検出する。光センサ60としては、例えば、フォトダイオード等を用いることができる。
【0025】
(表示装置の概略動作)
次に、表示装置1の概略動作について説明する。システムコントローラ11は、例えば、ミラー310の振れ角制御を行うことができる。システムコントローラ11は、例えば、水平変位センサ391、垂直変位センサ395及び396で得られるミラー310の水平方向及び垂直方向の傾きをバッファ回路13を介してモニタし、ミラー駆動回路14に角度制御信号を供給できる。そして、ミラー駆動回路14は、システムコントローラ11からの角度制御信号に基づいて、駆動梁351及び352、駆動梁371及び372に所定の駆動信号を供給し、ミラー310を所定角度に駆動(走査)できる。
【0026】
又、システムコントローラ11は、例えば、ディジタルの映像信号をレーザ駆動回路15に供給できる。そして、レーザ駆動回路15は、システムコントローラ11からの映像信号に基づいて、レーザ211R、211G、及び211Bに所定の電流を供給する。これにより、レーザ211R、211G、及び211Bが映像信号に応じて変調された赤色、緑色、及び青色の光を発し、これらを合成することでカラーの画像を形成できる。
【0027】
CPU12は、例えば、レーザ211R、211G、及び211Bの根元の出射光量を光量検出センサ215の出力によりモニタし、LDモジュール21に光量制御信号を供給できる。レーザ211R、211G、及び211Bは、CPU12からの光量制御信号に基づいて、所定の出力(光量)になるように電流制御される。
【0028】
なお、光量検出センサ215は、レーザ211R、211G、及び211Bの出射光量を独立に検出する3つのセンサを含む構成にできる。或いは、光量検出センサ215は、1つのセンサのみから構成してもよい。この場合には、レーザ211R、211G、及び211Bを順次発光させて、1つのセンサで順次検出することで、レーザ211R、211G、及び211Bの出射光量の制御が可能となる。
【0029】
又、CPU12は、レーザ211R、211G、及び211Bの温度を温度センサ217の出力によりモニタしている。そして、CPU12は、温度センサ217の出力に基づいて、温度に応じた適切な光量制御信号をLDモジュール21に供給できる。
【0030】
レーザ211R、211G、及び211Bから出射された各波長の光は、ダイクロイックミラー等により合成され、減光フィルタ24により所定の光量に減光されてミラー310に入射する。ミラー310は、入射光を2次元に走査し、走査光は光学部40を介してスクリーン50に照射され、スクリーン50に2次元像が形成される。なお、光センサ60の機能については、後述する。
【0031】
(レーザの階調制御)
レーザダイオードは入力する電流量に応じて、LED発光するLED発光領域と、レーザ発光するLD発光領域の2つに分けられる。通常、レーザダイオードとして用いる領域は後者である。LD発光領域における電流-光出力特性(所謂I-L特性)は線形ではない。
【0032】
図5は、レーザダイオードのI-L特性を例示する図である。
図5の例では、A部、B部、及びC部においてI-L特性の傾きが線形ではない。A部は、電流量が小さい閾値電流付近である。B部では、光出力が折れ曲がり、傾きの正負が逆転するキンクがみられている。C部は、電流量が大きい高階調領域であり、I-L特性の傾きが小さくなり飽和するようになる。
【0033】
加えて、レーザダイオード毎に、特性がばらつくことも多い。これに対し、低階調から高階調までを等間隔のステップで電流を増やしたときの光出力は、
図5と同様に線形ではなくなるために、カラーチャートを表示すると
図6のように正しいグラデーションが描けなくなる。
図6の上側が期待される階調であるが、
図5のA部、B部、及びC部に対する階調では、正しいグラデーションが描けず、
図6の下側のようなひずんだ階調となる。
【0034】
表示装置1を用いる環境は、アプリケーションにより様々で、周囲環境が明るい場合もあれば、暗い場合もある。周囲の環境が暗い場合には、表示装置1の光量も絞られる。しかし、正しいグラデーションが描けないと、このような環境では色を正しく再現できないとことになる。
【0035】
更に、I-L特性は温度によっても異なる。
図7は、レーザダイオードの温度特性を例示する図である。レーザダイオードは
図7に示すような温度特性を持っており、温度により傾きに加えて線形性も異なる。
図7の例では、25℃では略線形であるが、60℃では高階調領域のI-L特性が徐々に飽和している。つまり、低温では比較的線形であるが高温では非線形となり、高階調領域のI-L特性の傾きが寝てくる。
【0036】
従って、高温時には、たとえ最大光量を光量制御により一定にしていたとしても、中間階調の持ち上がった、階調を正しく再現できない投影画像となってしまう。このため、表示装置1へ入力されるビデオ信号に対する出力映像の階調が期待したものにならない場合がある。
【0037】
表示装置1では、上記のようなレーザダイオードのI-L特性の非線形性に起因する問題を解決するため、レーザの階調制御を行っている。
【0038】
具体的には、表示装置1では、I-L特性補整用の複数の変換テーブルを予め作成し、記憶部であるメモリ16に記憶しておく。そして、CPU12は、状況に応じた適切な変換テーブルを選択し、メモリ16から変換テーブルを読み出し、システムコントローラ11に受け渡す。そして、システムコントローラ11は、表示装置1に入力されるビデオ信号に対して選択された変換テーブルを適用し、変換したデータをレーザ駆動回路15に供給する。
【0039】
変換テーブルは、例えば、ビデオ信号の最低階調0~最大階調255の256階調に対して、1対1の出力階調を持つ。変換テーブルを作成するには、まず、使用する各レーザ(レーザ211R、211G、及び211B)の補正前のI-L特性を取得する。このとき、最低階調0と最大階調255の光量は制御済みで期待値になっているものとする。
【0040】
ここでは、計算を容易化するため、一例として、最低階調0から最大階調255を、最大階調255で正規化する。例えば、最大階調255時の光出力がLmax[mW]であったとすると、階調nにおける正規化光量In(n)は、In(n)=I(n)×255/Lmaxとなる。ここで、I(n)は階調nにおける光出力[mW]である。例えば、
図8のI-L特性が得られる。
図8では、入力階調がIに、出力階調がLに対応する。
【0041】
次に、
図8の入力階調及び出力階調に基づいて変換テーブルを作成する。
図8より、例えば、出力階調3を得るための入力階調は5であり、出力階調4を得るための入力階調は3である。そこで、
図9に示すように、出力階調3に対応する変換テーブルの値を5とし、出力階調4に対応する変換テーブルの値を3とする。適切な入力階調がないときには、出力階調が近い値を設定する。これにより、例えば、
図9の変換テーブルが得られる。
【0042】
変換前のI-L特性(
図8の出力階調)と、変換後のI-L特性(
図9の出力階調)とを比較すると、変換後のI-L特性(
図9の出力階調)の方が線形に近づいていることがわかる。なお、変換テーブルは、レーザ211R、211G、及び211B毎に作成する。
【0043】
温度によりI-L特性が異なる場合には、上記と同様の方法で、複数の温度について変換テーブルを予め取得しておき、制御部(システムコントローラ11及びCPU12)が温度センサ217で検出した周囲の温度変化に合わせて変換テーブルの切替えを実施することが好ましい。変換テーブルを作成する温度は、表示装置の仕様により異なるが、例えば、-5℃、10℃、25℃、40℃、65℃等の温度を選択できる。
【0044】
このように、表示装置1は、レーザの電流-光出力特性が所望の形に近づくように補正する変換テーブルを記憶した記憶部と、記憶部から変換テーブルを読み出し、変換テーブルを用いて変換したデータに基づいてレーザを発光させる制御部(システムコントローラ11及びCPU12)とを有している。
【0045】
変換テーブルは、入力階調に対する出力階調の1対1のテーブルを設定することができ、設定可能な階調の上下限以外の制限はない。変換テーブルは、予めレーザの電流に対する光出力を複数階調のデジタルデータとして取得し、複数階調のデジタルデータが線形に近づくように所定の階調のデータが入れ替えられるように作成する。
【0046】
このような変換テーブルを用いることで、高次の関数近似が必要なI-L特性や関数近似が困難なI-L特性も容易に補正可能となる。例えば、キンクがあるような複雑な(関数近似のしづらい)I-L特性でも線形に近づけるような補正ができる。
【0047】
又、変換テーブルは、周囲温度に対応して複数作成され、メモリ16に記憶されていることが好ましい。これにより、周囲温度に合わせてI-L特性を補正できる。又、求められる最大光量に合わせて、I-L特性を補正できる。すなわち、周囲温度によらず、常に一定の階調の投影画像を提供できる。又、低光量、高光量によらず、常に一定の階調の投影画像を提供できる。
【0048】
又、表示装置に搭載される個々のレーザにI-L特性のばらつきがあったとしても、それぞれにマッチした変換テーブルを作成できるため、表示装置の個体による階調のばらつきを抑制できる。
【0049】
又、変換テーブルを用いる補正は、テーブル補正であり計算を行わないため、映像処理を行う回路やソフトウェアに対して、面積や負荷の面で有利である。
【0050】
又、ソフトウェアや補正回路の限界により補正ができなくなることが発生しない。例えば、表示装置の階調補正が一次関数補正までしか対応していなかった場合には、I-L特性のひずみを補正することは不可能である。この場合、ソフトウェア又は補正回路をアップデートするのは非現実的であるが、変換テーブルを用いる補正の場合は変換テーブルの設定値を置き換えるだけでよい。
【0051】
なお、変換テーブルはレーザ毎に作成されメモリ16に記憶されていることが好ましいが、少なくともI-L特性の非線形性が比較的大きい赤色レーザについての変換テーブルを記憶していることが好ましい。
【0052】
以上の説明では、変換テーブルを用いてI-L特性を線形に近づくように補正する手法について説明したが、これには限定されず、変換テーブルを用いてI-L特性が所望の形に近づくようにトーンカーブ補正をすることができる。例えば、変換テーブルを用いてγ補正のような好みの階調カーブを設定できる。又、変換テーブルを用いて任意のコントラスト設定ができる。
【0053】
(光センサ60によるレーザ光の検出)
表示装置1では、光センサ60がスクリーン50上に設けられており、レーザ光の水平走査の往路(第一の方向)及び復路(第二の方向)のそれぞれにおいて、光センサ60に照射されたレーザ光を検出する。
【0054】
図10は、スクリーンにおける光センサの配置を説明する図である。
図10に示すように、光センサ60は、スクリーン50における画像の描画領域51の外側(ブランキングエリア)のうち、例えば、描画領域51の左下側に配置される。なお、スクリーン50は、レーザ光による走査領域であり、描画領域51は、表示装置1に入力された画像が投影される領域である。
【0055】
なお、
図10の例では、光センサ60は、描画領域51の下側に配置されるものとしているが、これに限定されない。光センサ60は、描画領域51の下側のブランキングエリアにおいて、描画領域51の水平走査方向の中心部分に配置されても良い。又、光センサ60は、描画領域51の上側のブランキングエリアに配置されても良い。又、光センサ60は、描画領域51の左側又は右側のブランキングエリアに配置されても良い。
【0056】
光センサ60は、ブランキングエリアを走査するレーザ光を基準光線Lとして、水平走査方向の振れ角及び位相ずれの補正と、垂直走査方向の振れ角の補正とを行う。又、光センサ60は、垂直走査方向においてそれぞれが異なる位置に照射される複数の基準光線Lを検出するものとする。
【0057】
なお、本実施形態では、例えば、1フレーム毎に1本の基準光線Lが照射され、スクリーン50を水平方向に走査する。本実施形態では、例えば、ブランキングエリアに照射される基準光線Lの本数は、20フレーム程度を使用して約20本程度としても良い。
【0058】
図11は、光センサの構成について説明する図である。
図11に示すように、光センサ60は、第一の受光領域を形成するPD(Photodiode)61と、第二の受光領域を形成するPD62とを有する。本実施形態では、複数のフォトダイオードPD61及び62によるレーザ光の検出結果に基づき、ミラー310の水平走査方向の振れ角と位相ずれの補正と、垂直走査方向の振れ角の補正を行う。
【0059】
光センサ60では、PD61とPD62とが、ミラー310の垂直走査方向において、重なるように配置されている。つまり、光センサ60は、垂直走査方向に異なる位置に配置された第一の受光領域と第二の受光領域とを含む光検出部である。
【0060】
なお、
図11では、矢印Vが示す方向がミラー310による垂直走査方向であり、矢印Hが示す方向が、ミラー310による水平走査方向である。
【0061】
PD61とPD62は、ミラー310の垂直走査方向の振れ角の補正に用いられ、PD62は、ミラー310の水平走査方向の振れ角の補正及び位相ずれの補正に用いられる。
【0062】
光センサ60では、PD61とPD62は、垂直走査方向において、幅Ovが重なり合うように配置されている。以下の説明では、PD61における幅Ovと対応する領域を重なり領域611と呼び、PD62における幅Ovと対応する領域を重なり領域621と呼ぶ。
【0063】
重なり領域611と重なり領域621は、垂直走査方向において異なる位置に照射される複数の基準光線により走査される受光領域である。重なり領域611、621は、ある基準光線が重なり領域611、621を走査した場合、重なり領域611、621のそれぞれが、この基準光線を検出する。
【0064】
又、PD61において、重なり領域611以外の領域612を基準光線が走査した場合には、PD62は、この基準光線を検出しない。同様に、PD62において、重なり領域621以外の領域622を基準光線が走査した場合には、PD61は、この基準光線を検出しない。
【0065】
従って、ミラー310の垂直走査方向の振れ角が変動すると、PD61の領域612による基準光線の検出回数、重なり領域611、621による基準光線の検出回数、領域622による基準光線の検出回数のうち、何れかが変化する。そこで、本実施形態では、これらの検出回数の変化に応じて、ミラー310の垂直走査方向の振れ角を補正する。
【0066】
なお、本実施形態では、重なり領域611と重なり領域621は、複数の基準光線により走査されるものとしたが、これに限定されない。重なり領域611と重なり領域621を走査する基準光線は、複数でなくても良く、単数であっても良い。
【0067】
又、PD61とPD62は、それぞれが形成する受光領域が、垂直走査方向において連続していることが好ましいが、連続していなくても良い。つまり、PD61とPD62とは、垂直走査方向において異なる位置に配置されていれば良く、PD61とPD62のそれぞれにおいて、重なり領域611と重なり領域621が存在していなくても良い。
【0068】
PD61とPD62とが形成する受光領域が、垂直走査方向において連続していない場合には、PD61が形成する第一の受光領域における基準光線の検出回数と、PD62が形成する第二の受光領域における基準光線の検出回数と、の変化によって、ミラー310の垂直走査方向の振れ角を補正しても良い。
【0069】
PD62により、水平走査方向の振れ角及び位相ずれを検出できる。具体的には、CPU12は、レーザ光の水平走査の往路においてPD62によって検出されたピクセル(以下、「第1のピクセル」と示す)を特定できる。又、CPU12は、レーザ光の水平走査の復路においてPD62によって検出されたピクセル(以下、「第2のピクセル」と示す)を特定できる。更に、CPU12は、第1のピクセルの所望値からのずれと第2のピクセルの所望値からのずれに基づいて、レーザ光の水平走査方向の位相ずれと、ミラー310の振れ角変動とをそれぞれ検出及び補償できる。
【0070】
CPU12は、例えば、何番目のピクセルのレーザ光がスクリーン50に照射されたときにPD62による検出がなされたかにより、第1のピクセルのカウント値と、第2のピクセルのカウント値を特定できる。又、PD62が水平方向に連続する複数のピクセルを検出し得る場合、CPU12は、例えば、光センサ60が最初に検出したピクセルを、第1のピクセル又は第2のピクセルとして特定するようにしてもよい。
【0071】
CPU12は、第1のピクセルのカウント値と、第2のピクセルのカウント値を繰り返し(所定件数)取得してもよい。例えば、PD62が設けられている描画領域外の領域においては、1フレーム毎に、基準光線による水平走査が行われる。このため、PD62は、1フレーム毎に、第1のピクセル及び第2のピクセルを検出し、1フレーム毎に、第1のピクセルカウント値と第2のピクセルカウント値を取得できる。
【0072】
このようにして、レーザ光が水平走査の往路に水平走査されているときにPD62によって検出された第一のピクセルの所定値からのずれと、レーザ光が水平走査の復路に水平走査されているときにPD62によって検出された第二のピクセルの所定値からのずれに応じて、レーザ光の水平走査方向の位相ずれと、光走査部の水平走査方向の振れ角の変動とを検出及び補償できる。
【0073】
PD62は、例えば、水平走査方向に並べられた複数のPD623及び624を有していても良い。水平走査方向に複数のPD623及び624を配置することで、水平走査方向における基準光線の照射位置の検出精度を向上させることができる。例えば、本実施形態では、基準光線がPD623を走査している間は、PD623から基準光線の光量に応じた信号が出力され、基準光線がPD624を走査している間は、PD624から基準光線の光量に応じた信号が出力される。
【0074】
従って、PD62は、PD623からの信号が出力されなくなり、PD624から信号が出力された始めたときに、この基準光線を検出したこととして、PD62から、基準光線を検出したことを示す信号を出力しても良い。
【0075】
PD62は、レーザ光がPD621とPD622との境界を走査したとき、第一のピクセル及び第二のピクセルを検出したことを示す信号を出力できる。すなわち、基準光線が、PD62における、PD623とPD624の境界を照射したことを検出でき、基準光線の水平走査方向の照射位置の検出精度を向上させることができる。
【0076】
ところで、PD62による水平走査方向の振れ角及び位相ずれの検出は、低階調の光出力は、レーザドライバの電流設定1ステップに対して光量が変化する割合が大きく、レーザスポットの径が大きく変わってしまうため、中間階調から高階調の範囲の光出力において行うのがよい。但し、PD62に入力する光量が大きい場合には、PD62に入力可能な所望の光量となるように、PD62の前段に減光フィルタ等を配して減光するようにしてもよい。
【0077】
前述のように、レーザのI-L特性はばらつきを有しているため、何らの補正も行わないと、中間階調の光出力がばらつき、それに伴ってPD62に照射されるレーザスポットの径もばらつく。例えば、中間階調の光出力が高い方にずれるとレーザスポットの径が大きくなるため、PD62から本来よりも速いタイミングで所定の信号が出力される。一方、中間階調の光出力が低い方にずれるとレーザスポットの径が小さくなるため、PD62から本来よりも遅いタイミングで所定の信号が出力される。その結果、基準光線の検出精度が低下する。
【0078】
しかしながら、表示装置1では、変換テーブルを用いてI-L特性を線形に近づくように補正するため、中間階調の光出力のばらつきを抑制でき、それに伴ってPD62に照射されるレーザスポットの径のばらつきも抑制できる。その結果、基準光線の検出精度を向上できる。すなわち、PD62による水平走査方向の振れ角及び位相ずれの検出精度を向上できる。
【0079】
以上、好ましい実施形態について詳説したが、上述した実施形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0080】
例えば、上記の実施形態では、本発明に係る表示装置をレーザ走査型プロジェクタに適用する例を示した。しかし、これは一例であり、本発明に係る表示装置は、レーザを光源とする様々な機器に適用可能である。このような機器としては、例えば、DLP(デジタルミラーデバイスを用いた表示装置)、車載用のヘッドアップディスプレイ、レーザプリンタ、レーザ走査型脱毛器、レーザヘッドランプ、レーザーレーダ等が挙げられる。
【0081】
又、上記の実施形態では、3つのレーザを有する例を示したが、レーザは最低1つ有していればよい。この場合、単色の表示装置を実現できる。
【符号の説明】
【0082】
1 表示装置、10 回路部、11 システムコントローラ、12 CPU、13 バッファ回路、14 ミラー駆動回路、15 レーザ駆動回路、16 メモリ、20 光源部、21 LDモジュール、24 減光フィルタ、30 光走査部、40 光学部、41、42、43 反射ミラー、44 凹面ミラー、50 スクリーン、60 光センサ、100 筐体、150 ユニット、211R、211G、211B レーザ、215 光量検出センサ、217 温度センサ、310 ミラー、351、352、371、372 駆動梁、391 水平変位センサ、395、396 垂直変位センサ