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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】シートレール装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/06 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
B60N2/06
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019226969
(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公開番号】P2021094980
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】鍛代 光智
(72)【発明者】
【氏名】榊原 敦
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-255890(JP,A)
【文献】実公昭55-023065(JP,Y2)
【文献】特開2000-249140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
F16C 33/10
F16H 25/20-24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固定されるロアレールと、
シートに固定されるとともに前記ロアレールに対し摺動自在に設けられるアッパーレールと、
前記アッパーレールに対してその長手方向に沿って配設されるスクリューネジと、
前記ロアレールに固定されて前記スクリューネジの回転に応じて当該スクリューネジに対しその長手方向に相対的に移動するナット部材と、
を備えるシートレール装置であって、
前記スクリューネジを軸支し、軸方向一側及び軸方向他側を除く外周面が球面状に形成される含油ブッシュと、
前記含油ブッシュを支持し、前記含油ブッシュにより軸支された前記スクリューネジが挿通する第1挿通口及び第2挿通口が形成される支持部材と、
を備え、
前記支持部材は、前記第1挿通口と前記第2挿通口とに連結し前記含油ブッシュの少なくとも一部を収容するための空間を構成する内面が、前記球面状の外周面に面接触するように凹球面状に形成され、
前記支持部材は、第1支持部及び第2支持部を組み付けてなり、
前記第1支持部には、前記第1挿通口と前記凹球面状の内面の一部と環状段部とが形成され、
前記第2支持部には、前記第2挿通口と前記凹球面状の内面の残部とが形成され、
前記第2支持部は、金属板から形成される円筒部及び環状端面部と複数の弾性片を備えて、前記円筒部及び前記環状端面部は、前記環状段部に嵌まり込むように形成され、前記複数の弾性片は、前記含油ブッシュによって押し広げられるように弾性変形した状態で、その内側面にて前記含油ブッシュの外周面に面接触可能に形成されることを特徴とするシートレール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの前後方向位置を調整するシートレール装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シートの前後方向位置を調整するシートレール装置として下記特許文献1に開示されるシートレール装置が知られている。このシートレール装置は、ロアレール及びアッパーレールと、アッパーレールに支持されるスクリューネジと、ロアレールに固定されてスクリューネジの回転に応じてスクリューネジをスライドさせるナット部材とを備えるように構成されている。スクリューネジは、その前側端部及び後側端部にて、アッパーレールの前側にブラケットを介して取り付けられたゴム製のダンパーとアッパーレールの後側にホルダーを介して取り付けられた樹脂製のカラーとを利用して回転可能に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-173556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1の構成では、ダンパー等を利用してスクリューネジの前側端部がリジットに軸支され、弾性変形可能なカラー等を用いてスクリューネジの後側端部が上下方向などの軸振れを吸収するように軸支されている。具体的には、スクリューネジの後側端部が挿通するホルダーの挿通穴を上下方向に長い長穴形状とし、この長穴部分にカラーを上下方向にて弾性変形可能に組み付けることで、カラーの弾性変形を利用して上下方向のスクリューネジの軸振れを吸収している。
【0005】
しかしながら、上述のような支持構成では、スクリューネジに軸振れが生じた際に上記長穴部分にてカラーが断続的に押し付けられる場合があり、このような場合に、スクリューネジの軸振れの程度によっては、たたき音等の異音が生じてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、スクリューネジの軸振れに起因する異音の発生を抑制し得る構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の発明は、
車体に固定されるロアレール(20)と、
シートに固定されるとともに前記ロアレールに対し摺動自在に設けられるアッパーレール(30)と、
前記アッパーレールに対してその長手方向に沿って配設されるスクリューネジ(40)と、
前記ロアレールに固定されて前記スクリューネジの回転に応じて当該スクリューネジに対しその長手方向に相対的に移動するナット部材(60)と、
を備えるシートレール装置(10)であって、
前記スクリューネジを軸支し、軸方向一側(83a,83b)及び軸方向他側(84a,84b)を除く外周面(82a,82b)が球面状に形成される含油ブッシュ(80a,80b)と、
前記含油ブッシュを支持し、前記含油ブッシュにより軸支された前記スクリューネジが挿通する第1挿通口(73a,73b)及び第2挿通口(94a,94b)が形成される支持部材(70a,90a,70b,90b)と、
を備え、
前記支持部材は、前記第1挿通口と前記第2挿通口とに連結し前記含油ブッシュの少なくとも一部を収容するための空間を構成する内面が、前記球面状の外周面(82a,82b)に面接触するように凹球面状に形成され、
前記支持部材は、第1支持部及び第2支持部を組み付けてなり、
前記第1支持部には、前記第1挿通口と前記凹球面状の内面の一部と環状段部とが形成され、
前記第2支持部には、前記第2挿通口と前記凹球面状の内面の残部とが形成され、
前記第2支持部は、金属板から形成される円筒部及び環状端面部と複数の弾性片を備えて、前記円筒部及び前記環状端面部は、前記環状段部に嵌まり込むように形成され、前記複数の弾性片は、前記含油ブッシュによって押し広げられるように弾性変形した状態で、その内側面にて前記含油ブッシュの外周面に面接触可能に形成されることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、スクリューネジを軸支し、軸方向一側及び軸方向他側を除く外周面が球面状に形成される含油ブッシュと、含油ブッシュを支持し、含油ブッシュにより軸支されたスクリューネジが挿通する第1挿通口及び第2挿通口が形成される支持部材と、が設けられる。そして、支持部材は、第1挿通口と第2挿通口とに連結し含油ブッシュの少なくとも一部を収容するための空間を構成する内面が、上記球面状の外周面に面接触するように凹球面状に形成される。
【0009】
これにより、スクリューネジが傾く場合でも、このスクリューネジを軸支する含油ブッシュが、その球面状の外周面にて支持部材の凹球面状の内面に案内されながら傾くため、スクリューネジの軸振れを好適に吸収することができる。すなわち、含油ブッシュと支持部材とによりスクリューネジをスフェリカル軸受のように軸支でき、スクリューネジの軸振れに起因する異音の発生を抑制することができる。
【0010】
特に、支持部材は、第1支持部及び第2支持部を組み付けてなり、第1支持部には、第1挿通口と凹球面状の内面の一部とが形成され、第2支持部には、第2挿通口と凹球面状の内面の残部とが形成される。
【0011】
これにより、含油ブッシュを挟み込むように第1支持部と第2支持部とを組み付けることで、含油ブッシュの球面状の外周面を凹球面状の内面にて案内する支持部材が構成されるため、球面状の外周面と凹球面状の内面とを面接触させるような支持構造であっても容易に組み付けを実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るシートレール装置の概略構成を示す側面図である。
図2図1のシートレール装置の分解斜視図である。
図3図3(A)は、スクリューネジの後側端部での支持状態を説明する説明図であり、図3(B)は、図3(A)の含油ブッシュ近傍を拡大して示す説明図である。
図4図2の含油ブッシュを拡大して示す斜視図である。
図5図2のスプリングを拡大して示す斜視図である。
図6図1のX-X断面を拡大して示す断面図である。
図7図7(A)は、スクリューネジの前側端部での支持状態を説明する説明図であり、図7(B)は、図7(A)の含油ブッシュ近傍を拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る車両用のシートレール装置10の一実施形態について図を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、シートレール装置10は、車両フロアに固定されるロアレール20、図略の車両用シートに固定されるアッパーレール30、アッパーレール30に回動可能に支持されるスクリューネジ40、スクリューネジ40に回転を伝達するギヤボックス50、ロアレール20に固定されるナット部材60をそれぞれ一対と、両ギヤボックス50にシャフトを介して上記回転を発生させるためのモータと備えている(図1及び図2では一方のみを記載する)。
【0014】
シートレール装置10は、アッパーレール30に支持されるスクリューネジ40がギヤボックス50から伝達される回転力によって回転し、このスクリューネジ40に噛合するナット部材60がロアレール20に固定されることで、アッパーレール30がロアレール20に対して相対移動するように構成されている。
【0015】
アッパーレール30は、その断面が下向きに開口した逆U字状でその端部から両外側に向かって鍔部を有するように形成されている。ロアレール20は、その断面が上向きに開口し上記アッパーレール30の鍔部を巻き込むように形成されている。そして、アッパーレール30及びロアレール20は、図略のスチールボールやローラー等の転動部材の介在により車両前後方向に摺動自在に組み合わされている。
【0016】
スクリューネジ40は、アッパーレール30及びロアレール20の長手方向(摺動方向)に挿通するとともに、その先端部がアッパーレール30に取り付けられたギヤボックス50に連結されている。スクリューネジ40は、このギヤボックス50によりモータからの回転力が減速されて伝達されることで回転する。
【0017】
スクリューネジ40は、後側端部41及び前側端部42が、アッパーレール30に固定された後側ブラケット70a及び前側ブラケット70b等を利用して回動可能に支持された状態で、アッパーレール30に対してその長手方向に沿って配設されている。本実施形態では、後側端部41は、後側の支持部材を構成する後側ブラケット70a及びスプリング90aと含油ブッシュ80aとによって軸支されている。また、前側端部42は、前側の支持部材を構成する前側ブラケット70b及びスプリング90bと含油ブッシュ80bとによって軸支されている。なお、後側において、後側ブラケット70aは、「第1支持部」の一例に相当し、スプリング90aは、「第2支持部」の一例に相当し得る。また、前側において、前側ブラケット70bは、「第1支持部」の一例に相当し、スプリング90bは、「第2支持部」の一例に相当し得る。
【0018】
図2及び図3(A)に示すように、後側ブラケット70aは、鉄等の剛性が高い金属材料により、スクリューネジ40が挿通可能な支持片71aと、この支持片71aに対して縁部からL字状に延出する延出片72aとを有するように形成されている。後側ブラケット70aは、延出片72aがアッパーレール30の上壁にリベットでかしめられることにより、当該アッパーレール30に固定される。
【0019】
図3(B)に示すように、支持片71aにおいてスクリューネジ40が挿通する挿通部には、挿通口73aと、含油ブッシュ80aを案内する案内用の内周面74aと、スプリング90aが組み付けられる環状段部75aとが設けられる。支持片71aの内周面74aは、含油ブッシュ80aの球面状の外周面に面接触可能に凹球面状に形成されている。
【0020】
含油ブッシュ80aは、スクリューネジ40の後側端部41を軸支するためのブッシュであって、多孔質材料である焼結金属に潤滑油を含浸して構成される。この含油ブッシュ80aには、図4に示すように、スクリューネジ40の後側端部41を軸支するための貫通穴81aが形成されている。また、含油ブッシュ80aは、軸方向一側の端面83a及び軸方向他側の端面84aを除く外周面82aが、支持片71aの内周面74aに面接触可能に球面状に形成されている。
【0021】
スプリング90aは、後側ブラケット70aの環状段部75aに組み付けられることで、スクリューネジ40を軸支した含油ブッシュ80aを保持するためのもので、金属板のプレス成型等によって形成される。このスプリング90aは、図5に示すように、円筒部91aとこの円筒部91aの端部に環状に連なる環状端面部92aと、環状端面部92aの内縁に対して弾性変形可能に連なる複数の弾性片93aとを備えるように構成されている。
【0022】
円筒部91a及び環状端面部92aは、後側ブラケット70aの環状段部75aに嵌まり込むように形成されている。また、各弾性片93aは、含油ブッシュ80aによって押し広げられるように弾性変形した状態で、その内側面にて、支持片71aの内周面74aとともに含油ブッシュ80aの外周面82aに面接触可能に形成されている。
【0023】
このように構成される後側ブラケット70a及びスプリング90aと含油ブッシュ80aとによってスクリューネジ40の後側端部41が軸支される。具体的には、後側ブラケット70aの内周面74aとスプリング90aの各弾性片93aの内側面とに含油ブッシュ80aの外周面82aが面接触することで、後側ブラケット70a及びスプリング90aにより含油ブッシュ80aが内周面74a等に沿うように傾動可能に保持される。そして、スクリューネジ40が、後側ブラケット70aの挿通口73aと各弾性片93aの先端部によって構成される挿入口94aとを挿通するように、含油ブッシュ80aに軸支される(図6参照)。
【0024】
これにより、含油ブッシュ80aを支持する後側ブラケット70a及びスプリング90aからなる後側の支持部材は、挿通口73aと挿入口94aと連結し含油ブッシュ80aの少なくとも一部を収容するための空間を構成する内面(内周面74a及び各弾性片93aの内面)が、球面状の外周面82aに面接触するように凹球面状に形成されることとなる。なお、挿通口73aは、「第1挿通口」の一例に相当し、挿入口94aは、「第2挿通口」の一例に相当し得る。
【0025】
このような軸支状態にて、ワッシャ101及びナット102が後側端部41に組み付けられて、後側ブラケット70aがワッシャ101を介してナット102によって前側に押し付けられることで、含油ブッシュ80aが端面83aにてスクリューネジ40の段部に摺接するように位置決めされる。
【0026】
図2及び図7(A)に示すように、前側ブラケット70bは、鉄等の剛性が高い金属材料により、スクリューネジ40が挿通可能な支持片71bと、この支持片71bに対して縁部からL字状に延出する延出片72bとを有するように形成されている。前側ブラケット70bは、延出片72bがアッパーレール30の上壁にリベットでかしめられることにより、当該アッパーレール30に固定される。
【0027】
図7(B)に示すように、支持片71bにおいてスクリューネジ40が挿通する挿通部には、挿通口73bと、含油ブッシュ80bを案内する案内用の内周面74bと、スプリング90bが組み付けられる環状段部75bとが設けられる。支持片71bの内周面74bは、含油ブッシュ80bの球面状の外周面に面接触可能に凹球面状に形成されている。
【0028】
含油ブッシュ80bは、スクリューネジ40の前側端部42を軸支するためのブッシュであって、含油ブッシュ80aと同様に、多孔質材料である焼結金属に潤滑油を含浸して構成される。この含油ブッシュ80bには、スクリューネジ40の前側端部42を軸支するための貫通穴81bが形成されている。また、含油ブッシュ80bは、軸方向一側の端面83b及び軸方向他側の端面84bを除く外周面82bが、支持片71bの内周面74bに面接触可能に球面状に形成されている。
【0029】
スプリング90bは、前側ブラケット70bの環状段部75bに組み付けられることで、スクリューネジ40を軸支した含油ブッシュ80bを保持するためのもので、スプリング90aと同様に、金属板のプレス成型等によって形成される。このスプリング90bは、円筒部91bとこの円筒部91bの端部に環状に連なる環状端面部92bと、環状端面部92bの内縁に対して弾性変形可能に連なる複数の弾性片93bとを備えるように構成されている。
【0030】
円筒部91b及び環状端面部92bは、前側ブラケット70bの環状段部75bに嵌まり込むように形成されている。また、各弾性片93bは、含油ブッシュ80bによって押し広げられるように弾性変形した状態で、その内側面にて、支持片71bの内周面74bとともに含油ブッシュ80bの外周面82bに面接触可能に形成されている。
【0031】
このように構成される前側ブラケット70b及びスプリング90bと含油ブッシュ80bとによってスクリューネジ40の前側端部42が軸支される。具体的には、前側ブラケット70bの内周面74bとスプリング90bの各弾性片93bの内側面とに含油ブッシュ80bの外周面82bが面接触することで、前側ブラケット70b及びスプリング90bにより含油ブッシュ80bが内周面74b等に沿うように傾動可能に保持される。そして、スクリューネジ40が、前側ブラケット70bの挿通口73bと各弾性片93bの先端部によって構成される挿入口94bとを挿通するように、含油ブッシュ80bに軸支される。
【0032】
これにより、含油ブッシュ80bを支持する前側ブラケット70b及びスプリング90bからなる前側の支持部材は、挿通口73bと挿入口94bと連結し含油ブッシュ80bの少なくとも一部を収容するための空間を構成する内面(内周面74b及び各弾性片93bの内面)が、球面状の外周面82bに面接触するように凹球面状に形成されることとなる。なお、挿通口73bは、「第1挿通口」の一例に相当し、挿入口94bは、「第2挿通口」の一例に相当し得る。
【0033】
このような軸支状態にて、ワッシャ103及びナット104が前側端部42に組み付けられて、前側ブラケット70bがワッシャ103を介してナット104によって後側に押し付けられることで、含油ブッシュ80bが端面84bにてスクリューネジ40の段部に摺接するように位置決めされる。
【0034】
スクリューネジ40の後側端部41と前側端部42との間には、ナット部材60が噛合(挿通螺合)されている。このナット部材60は、スクリューネジ40に螺合するナットと、ナットをロアレール20に固定するためのホルダーと、ナットをホルダーに対してボールフローティング支持するための複数のボール及びリテーナーとを備えるように構成されている。
【0035】
このようにスクリューネジ40に噛合しているナット部材60がロアレール20に固定されることで、ナット部材60は、回転するスクリューネジ40をその回転方向に応じてスライドさせるように機能する。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係るシートレール装置10では、スクリューネジ40の後側端部41を軸支し、軸方向一側の端面83a及び軸方向他側の端面84aを除く外周面82aが球面状に形成される含油ブッシュ80aと、含油ブッシュ80aを支持し、含油ブッシュ80aにより軸支されたスクリューネジ40が挿通する挿通口73a及び挿入口94aが形成される後側ブラケット70a及びスプリング90aと、が設けられる。そして、後側ブラケット70a及びスプリング90aは、挿通口73aと挿入口94aとに連結し含油ブッシュ80aの少なくとも一部を収容するための空間を構成する内面が、球面状の外周面82aに面接触するように凹球面状に形成される。また、スクリューネジ40の前側端部42を軸支し、軸方向一側の端面83b及び軸方向他側の端面84bを除く外周面82bが球面状に形成される含油ブッシュ80bと、含油ブッシュ80bを支持し、含油ブッシュ80bにより軸支されたスクリューネジ40が挿通する挿通口73b及び挿入口94bが形成される前側ブラケット70b及びスプリング90bと、が設けられる。そして、前側ブラケット70b及びスプリング90bは、挿通口73bと挿入口94bとに連結し含油ブッシュ80bの少なくとも一部を収容するための空間を構成する内面が、球面状の外周面82bに面接触するように凹球面状に形成される。
【0037】
これにより、スクリューネジ40の後側端部41が傾く場合でも、このスクリューネジ40の後側端部41を軸支する含油ブッシュ80aが、その球面状の外周面82aにて支持部材(70a,90a)の凹球面状の内面に案内されながら傾くため、スクリューネジ40の後側端部41の軸振れを好適に吸収することができる。また、スクリューネジ40の前側端部42が傾く場合でも、このスクリューネジ40の前側端部42を軸支する含油ブッシュ80bが、その球面状の外周面82bにて支持部材(70b,90b)の凹球面状の内面に案内されながら傾くため、スクリューネジ40の前側端部42の軸振れを好適に吸収することができる。すなわち、含油ブッシュと支持部材とによりスクリューネジ40をスフェリカル軸受のように軸支でき、スクリューネジ40の軸振れに起因する異音の発生を抑制することができる。
【0038】
特に、後側の支持部材は、後側ブラケット70a及びスプリング90aを組み付けてなり、後側ブラケット70aには、挿通口73aと上記凹球面状の内面の一部とが形成され、スプリング90aには、挿入口94aと上記凹球面状の内面の残部とが形成される。また、前側の支持部材は、前側ブラケット70b及びスプリング90bを組み付けてなり、前側ブラケット70bには、挿通口73bと上記凹球面状の内面の一部とが形成され、スプリング90bには、挿入口94bと上記凹球面状の内面の残部とが形成される。
【0039】
これにより、含油ブッシュ80aを挟み込むように後側ブラケット70aとスプリング90aとを組み付けることで、含油ブッシュ80aの球面状の外周面82aを凹球面状の内面にて案内する後側の支持部材が構成されるため、球面状の外周面82aと凹球面状の内面とを面接触させるような支持構造であっても容易に組み付けを実施することができる。同様に、含油ブッシュ80bを挟み込むように前側ブラケット70bとスプリング90bとを組み付けることで、含油ブッシュ80bの球面状の外周面82bを凹球面状の内面にて案内する前側の支持部材が構成されるため、球面状の外周面82bと凹球面状の内面とを面接触させるような支持構造であっても容易に組み付けを実施することができる。
【0040】
[他の実施形態]
なお、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)含油ブッシュとブラケット及びスプリングとを用いてスクリューネジ40を支持する構成は、後側端部41及び前側端部42の双方に採用されることに限らず、後側端部41及び前側端部42のどちらか一方に採用されてもよい。
【0041】
(2)後側ブラケット(第1支持部)70aとともに後側の支持部材を構成する第2支持部は、上述したスプリング90aのように構成されることに限らず、後側ブラケット70aに組み付けられて含油ブッシュ80aの外周面82aを案内するための凹球面状の内面を有するように構成されればよい。同様に、前側ブラケット70b(第1支持部)とともに前側の支持部材を構成する第2支持部は、上述したスプリング90bのように構成されることに限らず、前側ブラケット70bに組み付けられて含油ブッシュ80bの外周面82bを案内するための凹球面状の内面を有するように構成されればよい。
【0042】
(3)本発明における含油ブッシュは、多孔質材料である焼結金属に潤滑油を含浸して構成されるものに限らず、例えば、潤滑油等が塗布された鉄部材や銅部材等の金属材料等により構成されてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10…シートレール装置
20…ロアレール
30…アッパーレール
40…スクリューネジ
41…後側端部
42…前側端部
60…ナット部材
70a…後側ブラケット(支持部材,第1支持部)
70b…前側ブラケット(支持部材,第1支持部)
73a,73b…挿通口(第1挿通口)
74a,74b…内周面
80a,80b…含油ブッシュ
82a,82b…外周面
83a,83b…軸方向一側の端面
84a,84b…軸方向他側の端面
90a,90b…スプリング(支持部材,第2支持部)
94a,94b…挿通口(第2挿通口)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7