(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】通信システム
(51)【国際特許分類】
H04L 67/10 20220101AFI20240510BHJP
G06F 8/65 20180101ALI20240510BHJP
H04M 11/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
H04L67/10
G06F8/65
H04M11/00 302
(21)【出願番号】P 2020029103
(22)【出願日】2020-02-25
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 貴仁
【審査官】鈴木 香苗
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-275229(JP,A)
【文献】特開2018-088181(JP,A)
【文献】特開2007-299169(JP,A)
【文献】特開2015-108865(JP,A)
【文献】特開2015-121987(JP,A)
【文献】特開2016-143318(JP,A)
【文献】特開2003-288211(JP,A)
【文献】特開2019-144959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 67/10
G06F 8/65
H04M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の構成機器を含む温水利用設備とサーバとが通信接続された通信システムであって、
前記温水利用設備と前記サーバとの通信接続時に、前記複数の構成機器のうちの所定の構成機器のファームウェアのバージョンと、更新用ファームウェアのバージョンとの比較に基づき、前記所定の構成機器における前記更新用ファームウェアへのファームウェア更新指令を生成するための制御手段を備え、
前記制御手段は、前記温水利用設備と前記サーバとの初回の通信接続時であること、又は、前記所定の構成機器のファームウェアのバージョンが特別バージョンではないことを条件に、前記所定の構成機器のファームウェアのバージョンと前記更新用ファームウェアのバージョンとが不一致であるときに前記ファームウェア更新指令を生成
し、
前記通信システムは、
前記温水利用設備と前記サーバとの通信接続時に、前記所定の構成機器の識別情報及び前記所定の構成機器のファームウェアのバージョン情報を、前記温水利用設備から前記サーバへ送信するための送信手段を更に備え、
前記制御手段は、前記温水利用設備と前記サーバとの初回の通信接続において前記送信手段によって送信された前記バージョン情報と、前記サーバに用意される前記更新用ファームウェアのバージョン情報とが不一致であるときに、前記ファームウェア更新指令を生成する一方で、前記温水利用設備と前記サーバとの2回目以降の通信接続では、送信された前記バージョン情報に依存せず前記ファームウェア更新指令を非生成とする、通信システム。
【請求項2】
複数の構成機器を含む温水利用設備とサーバとが通信接続された通信システムであって、
前記温水利用設備と前記サーバとの通信接続時に、前記複数の構成機器のうちの所定の構成機器のファームウェアのバージョンと、更新用ファームウェアのバージョンとの比較に基づき、前記所定の構成機器における前記更新用ファームウェアへのファームウェア更新指令を生成するための制御手段を備え、
前記制御手段は、前記温水利用設備と前記サーバとの初回の通信接続時であること、又は、前記所定の構成機器のファームウェアのバージョンが特別バージョンではないことを条件に、前記所定の構成機器のファームウェアのバージョンと前記更新用ファームウェアのバージョンとが不一致であるときに前記ファームウェア更新指令を生成し、
前記通信システムは、
前記温水利用設備と前記サーバとの通信接続時に、前記所定の構成機器の識別情報及び前記所定の構成機器のファームウェアのバージョン情報を、前記温水利用設備から前記サーバへ送信するための送信手段を更に備え、
前記サーバには、前記ファームウェアの前記特別バージョンを特定する特定バージョン情報が予め記憶され、
前記制御手段は、前記温水利用設備と前記サーバとの通信接続時において、前記送信手段によって送信された前記バージョン情報と前記特定バージョン情報とが一致すると、前記ファームウェア更新指令を非生成とする
、通信システム。
【請求項3】
前記複数の構成機器は、
温水の供給に係る制御機器と、
前記制御機器と通信線を介して通信接続されるとともに、外部通信網を介して前記サーバと通信接続するインターフェイス機器との間での有線又は無線通信機能を有する中継装置とを含み、
前記所定の構成機器は、前記中継装置である、請求項
1または2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記更新用ファームウェアは、動作確認済の安定版ファームウェアである、請求項
1~3のいずれか1項に記載の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムに関し、より特定的には、温水利用設備とサーバとが通信接続された通信システムによる温水利用設備の構成機器のファームウェアの更新制御に関する。
【背景技術】
【0002】
温水利用設備の一例であるマルチ給湯システム用の遠隔管理システムが公知である。特開2019-128653号公報(特許文献1)には、上記の様な遠隔管理システムにおいて、通信アダプタ(中継装置)を介して管理サーバからダウンロードされた更新プログラムを、温水供給システムの構成機器に書き込むための技術が記載される。
【0003】
特許文献1では、管理サーバが、通信アダプタとの定期的な通信の際に、通信アダプタが収集した、温水供給システムの構成機器のソフトウェアのバージョン情報を取得する。そして、管理サーバは、取得したバージョン情報と、更新すべき新たなプログラムのバージョン情報が異なっていると、ソフトウェア更新情報を通信アダプタに送信する。更に、通信アダプタが、受信したソフトウェア更新情報に基づき、更新プログラムをダウンロードして上記構成機器に送信することで、各構成機器において、当該更新プログラムの書込みが実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の手法では、管理サーバが保持する最新バージョンのプログラムとは異なるバージョンのプログラムを格納する構成機器が、管理サーバとの通信毎に、一律にソフトウェア更新の対象とされる。
【0006】
このため、本来、書き換えないことが好ましい特殊仕様のファームウェアが格納された機器についても、自動的に更新の対象としてしまうことが懸念される。一方、このような特殊仕様を考慮したソフトウェア更新の管理を管理サーバ側において手作業で行うと、作業負荷の増大が懸念される。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、特殊仕様のファームウェアを自動的に更新してしまうことなく、適切なファームウェア更新を行うことが可能な通信システムの制御を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある局面では、複数の構成機器を含む温水利用設備とサーバとが通信接続された通信システムであって、温水利用設備とサーバとの通信接続時に、複数の構成機器のうちの所定の構成機器のファームウェアのバージョンと、更新用ファームウェアのバージョンとの比較に基づき、所定の構成機器における更新用ファームウェアへのファームウェア更新指令を生成するための制御手段を備える。制御手段は、温水利用設備とサーバとの初回の通信接続時であること、又は、所定の構成機器のファームウェアのバージョンが特別バージョンではないことを条件に、所定の構成機器のファームウェアのバージョンと更新用ファームウェアのバージョンとが不一致であるときに前記ファームウェア更新指令を生成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特殊仕様のファームウェアを自動的に更新してしまうことなく、適切なファームウェア更新を行うことが可能な通信システムの制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係る温水利用設備の通信システムの構成例を示す概略図である。
【
図2】
図1に示されたサーバの概略構成の一例を説明するブロック図である。
【
図3】
図1に示された通信アダプタの構成例を説明するブロック図である。
【
図4】ファームウェアのバージョン更新を説明する概念図である。
【
図5】本実施の形態に係る温水利用設備の通信システムにおけるファームウェア更新制御を説明するシーケンス図である。
【
図6】サーバによるファームウェア更新の制御処理を説明するフローチャートである。
【
図7】本実施の形態に係る温水利用設備の通信システムにおけるファームウェア更新の制御処理の変形例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る温水利用設備の通信システムの構成例を示す概略図である。
【0013】
図1を参照して、本実施の形態に係る温水利用設備の通信システム5は、温水利用設備100と、インターフェイス機器20と、外部通信網40と、サーバ50とを備える。通信システム5は、サーバ50を介した、温水利用設備100の遠隔管理及び遠隔操作のために、温水利用設備100とサーバ50とを通信接続する。
【0014】
温水利用設備100は、例えば、給湯装置であり、給湯器110と、リモートコントローラ(以下、単に「リモコン」とも表記する)120,130と、通信アダプタ150とを含む。給湯器110からの湯は、複数の給湯口111に接続された配管を経由して、給湯先へ送出される。例えば、給湯先には、図示しないカラン及び浴槽が含まれる。或いは、給湯先が、高温水を熱源とする暖房機(図示せず)を含むことにより、給湯装置は、暖房機能を有することができる。
【0015】
給湯器110の内部には、回路基板115が装着される。当該回路基板115には、給湯器110を駆動及び制御するためのコントローラ140が搭載される。当該コントローラ140によって、図示しない燃焼器に対する燃料ガスの供給等を制御するための電磁弁(図示せず)、及び、当該燃料ガスと混合される空気を供給するための給気ファン(図示しない)等が制御される。
【0016】
給湯器110、及び、リモコン120,130は、通信線(例えば、2心通信線)101によって、通信アダプタ150と接続される。リモコン120,130は、表示部121,131、及び、入力部122,132を有する。ユーザは、表示部121,131による表示画面に従って入力部122,132を操作することにより、湯張りや給湯設定温度等を設定することができる。
【0017】
例えば、リモコン120は浴室に配設することができる。又、リモコン130は台所に配設することができる。このように、リモコン120,130を用いて、ユーザは、温水利用設備100の各機能について、種々の設定を行うことができる。
【0018】
通信アダプタ150は、インターフェイス機器20との間で所定の通信プロトコル(例えばIEEE802.11n等)で通信するための無線通信機能を有する。
【0019】
インターフェイス機器20は、リモコン120,130を含む一定範囲内に存在する機器を、外部通信網40を介してサーバ50に通信接続する機能を有する。例えば、インターフェイス機器20は、いわゆる、無線LAN(Local Area Network)ルータによって構成することができる。又、外部通信網40は、代表的には、インターネットである。以下では、外部通信網40を、単に、インターネット40とも称する。
【0020】
尚、インターフェイス機器20としては、無線LANルータに代えて有線LANルータを用いることも可能である。この場合には、通信アダプタ150は、有線LANルータとの間で所定の通信プロトコル(例えば、Ethernet規格のIEEE802.3等)で通信するように構成することができる。
【0021】
サーバ50は、インターネット40に接続されて、温水利用設備100に対する遠隔制御(遠隔操作及び遠隔監視)を管理するための機能を有する。通信アダプタ150は、無線通信によってインターフェイス機器20に通信接続されることで、インターネット40を介して、サーバ50と通信することができる。これにより、温水利用設備100は、通信アダプタ150を中継機器として、サーバ50と通信接続される。
【0022】
サーバ50に対しては、スマートフォン又はタブレット端末等の携帯端末装置30から通信接続することも可能である。携帯端末装置30がインターフェイス機器20と接続可能な範囲内に存在する場合には、無線通信によってインターフェイス機器20と接続されることにより、携帯端末装置30は、サーバ50と通信可能である。又、携帯端末装置30が宅外等にある場合には、当該携帯端末装置30は、ルータ60又は基地局70を介してインターネット40に接続することによって、サーバ50と通信することができる。
【0023】
このように、ユーザは、リモコン120,130の操作の他、携帯端末装置30を用いて、インターフェイス機器20と接続可能な範囲の内部及び外部の両方において、サーバ50とアクセスすることによって、温水利用設備100に対する遠隔制御(遠隔操作及び遠隔監視)を行うことも可能である。
【0024】
リモコン130及び携帯端末装置30には、温水利用設備100のアプリケーションプログラムをインストールすることができる。例えば、当該アプリケーションプログラムは、サーバ50からダウンロードされた後、インストールされる。
【0025】
これに加えて、給湯器110(コントローラ140)、リモコン120,130、及び、通信アダプタ150の各々には、当該各機器の動作を制御するためのプログラム(以下、「ファームウェア(F/W)」とも称する)が格納される。ファームウェアは、工場出荷時の段階で、当該時点でのバージョンのものが書き込まれるとともに、本実施の形態では、サーバ50からの配信によって、異なるバージョンのファームウェアに書き換えることができる。
図1の構成例において、リモコン120,130及びコントローラ140は「制御機器」の一実施例に対応し、通信アダプタ150は「中継装置」の一実施例に対応する。
【0026】
図2は、サーバ50の概略構成の一例を説明するブロック図である。
【0027】
図2を参照して、サーバ50は、装置全体を制御するためのCPU(Central Processing Unit)55と、CPU55と接続された、通信ユニット56及びメモリ57と、表示部58とを含む。通信ユニット56は、インターネット40に接続された通信によって、他の機器又はサーバと通信する機能を有する。表示部58は、ディスプレイ画面によって構成される。
【0028】
メモリ57は、例えば、CPU55で実行されるプログラムを記憶するためのメモリであるROM(Read Only Memory)57a、CPU25でプログラムを実行する際の作業領域となったり計算値を記憶したりするためのメモリであるRAM(Random Access Memory)57b、及び、大型の記憶装置の一例としてのHDD(Hard Disk Drive)57cを含む。サーバ50は、一般的なコンピュータに相当する機能を有して構成することができる。サーバ50は、操作入力を受け付けるための操作部をさらに含んでもよい。
【0029】
図3は、通信アダプタ150の構成例を示すブロック図である。
【0030】
図3を参照して、通信アダプタ150は、制御部151と、通信ユニット152,153と、電源回路154と、メモリ155と、アンテナ157と、コネクタ158とを含む。コネクタ158には、
図1に示された通信線101(2心通信線)が接続される。
【0031】
制御部151は、CPU151a及びインターフェイス(I/F)151bを含むマイクロコンピュータによって構成することができる。通信ユニット152は、コネクタ158に接続された2心通信線101を経由して、給湯器110及びリモコン120,130との間で双方向にデータを送受信することによって情報を授受できるように構成される。
【0032】
通信ユニット153は、アンテナ157を経由した無線通信によって、インターフェイス機器20(無線LANルータ)との間で双方向にデータを送受信するように構成される。
【0033】
電源回路154は、コネクタ158に接続された2心通信線101から電力供給を受けて、通信アダプタ150内の各要素の動作電源電圧を生成する。
【0034】
メモリ155は、ROM155a及びRAM155bを有する。ROM155aは、代表的には、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)によって構成され、通信アダプタ150のファームウェア、及び、制御に用いるデータ等を格納する。制御部151は、起動処理時において、ROM155aに格納されたファームウェアを読出してRAM155bに展開する。制御部151は、RAM155bに展開されたプログラムを実行して通信アダプタ150の動作を制御する。
【0035】
尚、
図3では、メモリ155及び制御部151を別個の要素として表記したが、メモリ155の一部又は全部について、制御部151に内蔵することも可能である。
【0036】
通信ユニット153は、インターフェイス機器20及びインターネット40を経由して、サーバ50の通信ユニット56との間でデータを送受信することができる。これにより、通信アダプタ150は、温水利用設備100の運転情報を、定期的にサーバ50へ送信することができる。
【0037】
この結果、サーバ50は、通信アダプタ150を介して通信接続された、家庭及び各宿泊施設等の各顧客の温水利用設備100の各種情報を収集するとともに管理することができる。
【0038】
一方で、サーバ50も通信アダプタ150に対して、データ及び情報を送信することができる。これにより、温水利用設備100の遠隔操作サービスをさらに提供することが可能である。例えば、サーバ50側、又は、携帯端末装置30から、温水利用設備100の所定の操作、例えば、給湯運転スイッチのオン/オフの切替操作及び給湯設定温度の変更操作等を、インターネット40経由で行うことが可能である。
【0039】
このように、中継装置として設けられた通信アダプタ150を用いて、温水利用設備100及びサーバ50の間で双方向のデータ通信を実行することができる。尚、通信アダプタ150は、リモコン120又は130に内蔵される態様で構成することも可能である。
【0040】
本実施の形態に係る通信システム5では、温水利用設備100を構成する各構成機器のファームウェアの更新は、サーバ50からの配信によって自動的に実行することができる。以下では、一例として、通信アダプタ150のファームウェアの更新制御について説明する。通信アダプタ150では、サーバ50からダウンロードされたファームウェアをROM155aに格納することで、ファームウェアを更新することができる。
【0041】
図4には、ファームウェアのバージョン更新を説明する概念図が示される。
【0042】
図4を参照して、通信アダプタ150のファームウェアは、初回バージョンVRAから、機能追加、或いは、バグ修正等の目的で適宜バージョンアップされる。
図4の例では、バージョンVRB、VRC、及び、VRDに順序バージョンアップされ、現在は、バージョンVRDが最新版である。
【0043】
更に、ファームウェアには、通常のバージョンアップ履歴とは別に、特殊仕様の特別バージョンVRXが存在することがある。例えば、温水利用設備100に何らかのトラブルが発生した場合には、原因究明のために、データログ収集機能を有するファームウェアが、通信アダプタ150に特別にインストールされるケースが存在する。
【0044】
このような特別バージョンVRXのファームウェアは、サービスマン等の特別な手作業によって、既に使用が開始後の通信アダプタ150に書き込まれることが一般的である。特別バージョンVRXのファームウェアは、原因究明が可能となるだけのデータが収集されるまで、一定期間に亘って継続的に作動する必要がある。
【0045】
一方で、通信アダプタ150には、工場出荷時の段階で、当該時点での適正バージョンのファームウェアが、当該ファームウェアのバージョンを示す情報(F/Wバージョン情報)とともに格納されている。従って、工場出荷後に在庫品であった期間が長いと、実際の使用開始時には、格納されているファームウェアのバージョンが古くなっている虞がある。このような場合には、新しいバージョンのファームウェアへの更新が必要である。
【0046】
サーバ50は、通信アダプタ150との通信接続時において、当該通信アダプタ150のF/Wバージョン情報を受信することにより、通信アダプタ150に現在格納されているファームウェアのバージョンを知ることができる。例えば、サーバ50では、通信接続された通信アダプタ150に、少なくとも、バージョンVRA~VRDのいずれのファームウェアが格納されているかを検知することが可能である。
【0047】
例えば、特許文献1の手法を適用すると、通信アダプタ150がサーバ50と通信した各タイミングにおいて、サーバ50が管理する最新バージョン(VRD)と異なるバージョンのファームウェアを格納する通信アダプタ150は、一律にファームウェア更新の対象に指定されてしまう。このため、特別バージョンVRXのファームウェアについても自動的に更新対象として、サーバ50に認識されてしまう。これにより、特別バージョンVRXのプログラムが、トラブルの原因究明の意図に反して自動的に書き換えられてしまうことが懸念される。一方で、このような特殊仕様を考慮したソフトウェア更新の管理を管理サーバ側において手作業で行うと、作業負荷の増大が懸念される。
【0048】
又、ファームウェアのバージョンアップ直後では、当該バージョンアップ後のファームウェアの使用開始から一定期間に亘って、トラブル発生等に備える監視期間を設けることが好ましい。従って、このような監視期間中には、最新バージョンのファームウェアへの一律の更新は好ましくない。
図4の例では、バージョンVRDへの更新直後には、安定した稼動実績を有するバージョンVRCへの書き換えの方が低リスクである。
【0049】
このため、本実施の形態では、更新順に従う最新のバージョンとは別に、安定バージョンがサーバ50側で予め定義される。
図4の例では、バージョンVRDの使用が開始されている一方で上記監視期間内であるため、最新のバージョンVRDとは別に、バージョンVRCが安定バージョンとして定められている。尚、バージョンVRDの使用が進んだ場合には、バージョンVRCからバージョンVRDに、安定バージョンの指定を変えることが可能である。安定バージョンのファームウェアは、サーバ50に準備された「更新用ファームウェア」の一実施例に対応する。
【0050】
図5には、本実施の形態に係る温水利用設備の通信システムにおけるファームウェア更新制御を説明するシーケンス図が示される。
【0051】
図5を参照して、通信アダプタ150の設置時には、施工に係る初期設定の一環として、サーバ50との通信接続の確立テストが行われる。この際に、通信アダプタ150では、サーバ50に対する初回の通信接続が行われることになる。
【0052】
初回の通信接続のうち、通信アダプタ150からサーバ50への通信C01では、当該通信アダプタ150を含む温水利用設備100を識別するためのID情報が送信される。通信C01では、上記ID情報に加えて、通信アダプタ150のF/Wバージョン情報が送信される。尚、ID情報には、温水利用設備100の設置場所(住所データ、又は、緯度、経度及び標高データ)を示す情報が更に含まれてもよい。
【0053】
これに応じて、サーバ50では、通信アダプタ150でのファームウェア更新の要否が自動的に判定される。
【0054】
図6は、サーバ50によるファームウェア更新の制御処理を説明するフローチャートである。
図6に示された制御処理は、例えば、サーバ50のCPU55によって実行される。
【0055】
サーバ50は、ステップ(以下、単に「S」と表記する)110により、通信接続した通信アダプタ150のID情報及びF/Wバージョン情報を読み込むと、S120により、当該通信アダプタ150からの通信接続が初回であるか否かを判定する。
【0056】
サーバ50は、初回の通信接続であった場合には(S120のYES判定時)には、S125により、当該通信アダプタ150と通信接続済である履歴を残すとともに、S130により、S110で読み込まれたF/Wバージョン情報が、安定バージョンのバージョン情報(
図4のVRC)と一致するか否かが判定される。
【0057】
そして、F/Wバージョン情報が、安定バージョンのバージョン情報と一致しないとき(S130のNO判定時)には、通信アダプタ150のファームウェアのバージョンが、安定バージョンと不一致であると判定される。この場合には、S140により、通信アダプタ150に対する、安定バージョン(VRC)のファームウェアへの更新指令(F/W更新指令)が生成される。
【0058】
これに対して、通信アダプタ150との通信が初回でないとき(S120のNO判定時)、又は、F/Wバージョン情報が安定バージョンのバージョン情報と一致するとき(S130のYES判定時)には、S150により、F/W更新指令は、不要と判断されて、生成されない。
【0059】
再び
図5を参照して、初回通信接続では、通信C01に対する返信として、サーバ50から通信アダプタ150への通信C02が実行される。例えば、通信C02では、通信アダプタ150からサーバ50への通信接続が確立されたことを通知する情報が送信される。
【0060】
更に、
図6のS140においてF/W更新指令が生成された場合には、通信C02において、当該F/W更新指令が併せて送信される。F/W更新指令には、ダウンロード先のURL(Uniform Resource Locator)及びF/W更新の開始日時を示す情報が含まれる。
【0061】
通信アダプタ150は、当該開始日時にサーバ50との通信C03を行うことで、当該URLへアクセスすることができる。これにより、通信C04により、サーバ50から指定された安定バージョンのファームウェアをダウンロードすることができる。或いは、通信C02の段階で、安定バージョンのファームウェアが、サーバ50から通信アダプタ150に送信されてもよい。
【0062】
通信アダプタ150は、初回の通信接続以降にも、定期的に、或いは、イベント発生に応じて、適宜、サーバ50との間でm回目(m:m≧2の自然数)の通信接続を実行する。2回目以降の通信接続では、
図6において、S125で残された履歴によってS120がNO判定とされるため、F/W更新指令は生成されない。
【0063】
この結果、本実施の形態に係る温水利用設備の通信システムによれば、古いバージョンのファームウェアが格納された通信アダプタ150(在庫品)がサーバ50に初回接続された際に、安定バージョンのファームウェアへの更新を自動的に実行することが可能であるとともに、当該初回接続後に書き込まれた、特別バージョンのファームウェアが、更新対象とされることがない。これにより、特殊仕様のファームウェアを自動的に更新対象とすることなく、在庫品のファームウェアを自動的に更新することが可能となる。
【0064】
図7には、サーバ50によるファームウェア更新の制御処理の変形例を説明するフローチャートが示される。
【0065】
図7を参照して、サーバ50は、
図6と同様のS110により、通信アダプタ150との通信毎に、ID情報及びF/Wバージョン情報を読み込む。そして、サーバ50は、S160により、S110で読み込まれたF/Wバージョン情報が、サーバ50に予め登録された特別バージョンと一致するか否かを判定する。そして、S110で読み込まれたF/Wバージョン情報が、特別バージョンのバージョン情報と一致するとき(S160のYES判定時)には、
図6と同様のS150により、F/W更新指令が非生成とされる。即ち、S160では、通信接続された通信アダプタ150に格納されたファームウェアのバージョンが「特別バージョンではないこと」の条件が成立するか否かが判定される。
【0066】
S110で読み込まれたF/Wバージョン情報によって示されるバージョンが特別バージョンではないとき(S160のNO判定時)には、
図6と同様のS130~S150の処理を実行する。これにより、F/Wバージョン情報が安定バージョンのバージョン情報と一致しない場合(S130のNO判定時)には、S140により、安定バージョンのファームウェアへのF/W更新指令が生成される。即ち、
図7の制御処理では、2回目以降の通信接続においても、F/W更新指令を生成することができる。
【0067】
このように、
図7に示された変形例によれば、
図6で説明したのと同様に、初回の通信接続において、特別バージョンのファームウェアを更新対象とすることなく、在庫品の通信アダプタ150に格納された古いバージョンのファームウェアを自動的に更新することができる。
【0068】
更に、
図7の制御処理によれば、2回目以降の通信接続においても、特別バージョンのファームウェアを更新対象とすることなく、当該時点での安定バージョンとは異なるファームウェアを自動的に更新することが可能であるが、一方で、サーバ50側で、特別バージョンを網羅するように、バージョン情報を管理することが必要となる。
【0069】
言い換えると、
図6の制御処理では、ファームウェア更新の機会が初回の通信接続時に限定される一方で、安定バージョンとの不一致をトリガとしてF/W更新指令を生成するので、特別バージョンについて、サーバ50側で全てを把握する必要が無い。即ち、サーバ50側での管理負荷が軽減されることになる。
【0070】
但し、
図7のS160による「特別バージョンではないこと」の判定は、特別バージョンのバージョン情報とF/Wバージョン情報との一致を検知するのではなく、F/Wバージョン情報によって示されるバージョンが、通常のバージョンアップ履歴に従う各バージョン(例えば、
図4でのバージョンVRA~VRD)のいずれとも不一致であることの検知によっても実現可能である。この場合には、サーバ50側での特別バージョンの管理負荷を軽減できる。
【0071】
尚、
図4では、安定バージョンのファームウェアを「更新用ソフトウェア」の一例として説明したが、「更新用ソフトウェア」は、必ずしも予め一意に決められる必要はなく、ID情報に含まれる、温水利用設備100の設置場所を示す情報等によって、選択されてもよい。例えば、「寒冷地用バージョン」、「温暖地用バージョン」、「高地用バージョン」及び「低地用バージョン」等のファームウェアが予め準備されるとともに、S110で読み込まれた温水利用設備100の設置場所を示す情報に基づく、これらの複数バージョンのファームウェアからの選択によって、「更新用ファームウェア」が決められてもよい。この場合には、S130において、「更新用ファームウェア」を特定するための処理を行うとともに、特定された「更新用ファームウェア」のバージョンと、S110で読み込まれたF/Wバージョン情報とが比較されることになる。
【0072】
又、本実施の形態では、
図6又は
図7に示されたサーバ50での制御処理によって、通信アダプタ150におけるF/W更新指令の生成及び非生成を制御する「制御手段」の機能が実現される。即ち、「制御手段」がサーバ50に設けられた構成例が示されたことになる。一方で、本実施の形態とは逆に、サーバ50から通信アダプタ150に対して「更新用ファームウェア」のバージョンを送信するとともに、初回の通信接続時に限定して、通信アダプタ150側でファームウェアの更新要否を判定する構成とすること、即ち、「制御手段」の機能を通信アダプタ側に設けることも可能である。又、「制御手段」の機能の一部ずつを、通信アダプタ150及びサーバ50で分散配置することも可能である。
【0073】
更に、本実施の形態では、温水利用設備100の構成機器のうちの通信アダプタ150をファームウェア更新制御の対象としたが、その他の構成機器、例えば、コントローラ140、及び、リモコン120,130のファームウェアについても同様に、
図6又は
図7の制御処理によって制御することが可能である。
【0074】
又、
図1では、温水利用設備100として、給湯器110を含む給湯装置を例示したが、本実施の形態の適用において、温水利用設備100は、このような例示に限られない。例えば、浴槽湯水のろ過装置、浴槽補給水装置、燃料電池の排熱回収機能を備えた給湯装置、及び、ヒートポンプ式の給湯装置等を温水利用設備100とした場合でも、当該温水利用設備100の構成機器のファームウェアの自動更新に、本実施の形態で説明した制御を適用することが可能である。
【0075】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0076】
5 通信システム、20 インターフェイス機器、30 携帯端末装置、40 外部通信網(インターネット)、50 サーバ、57,155 メモリ、60 LANルータ、70 基地局、100 温水利用設備、101 通信線、110 給湯器、111 給湯口、115 回路基板、120,130 リモコン、122,132 入力部、140 コントローラ、150 通信アダプタ、151 制御部、154 電源回路、157 アンテナ、158 コネクタ、C01~C04 通信、VRA~VRD バージョン(ファームウェア)、VRX 特別バージョン(ファームウェア)。