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特許7485906タイヤ加硫用モールドおよびその製造方法並びにタイヤの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】タイヤ加硫用モールドおよびその製造方法並びにタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20240510BHJP
   B29C 33/10 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C33/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020039012
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021138090
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸久
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-072879(JP,A)
【文献】特開2017-159514(JP,A)
【文献】特開2015-193176(JP,A)
【文献】特開2020-097177(JP,A)
【文献】特開2020-185725(JP,A)
【文献】特開2015-101051(JP,A)
【文献】特開2017-013312(JP,A)
【文献】特開2020-066212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方端開口をモールドのタイヤ成形面に有し、他方端開口を前記モールドの前記タイヤ成形面以外の面に有する排気孔と、この排気孔の一方端側に埋設されるベントユニットとを備え、前記ベントユニットが、前記排気孔に内嵌される筒状のケースと、このケースに内挿される弁体および付勢部材とを有し、前記弁体が前記付勢部材の付勢力により前記タイヤ成形面から突出する方向に常時付勢され、前記弁体が前記付勢力に抗して移動して前記一方端開口を塞ぐことにより前記排気孔を通じた前記モールドの内側と外側との連通が遮断されるタイヤ加硫用モールドにおいて、
前記ベントユニットが埋設されたそれぞれの前記排気孔における前記タイヤ成形面での前記ケースの上端の開口面積および前記付勢力の強さの2つの仕様が、前記タイヤ成形面での前記一方端開口の配置領域に応じて異ならされていることを特徴とするタイヤ加硫用モールド(ただし、前記付勢部材としてバネ定数が非線形な仕様は除くとともに、それぞれの前記弁体の前記タイヤ成形面からの突出長さを異ならせた仕様を除く)
【請求項2】
前記配置領域が、トレッド成形面、ショルダ成形面およびサイド成形面の3つ配置領域である請求項1に記載のタイヤ加硫用モールド。
【請求項3】
前記配置領域が、トレッド成形面、ショルダ成形面またはサイド成形面の少なくともいずれか1つの成形面において複数に区分した領域である請求項1に記載のタイヤ加硫用モールド。
【請求項4】
モールドのタイヤ成形面に一方端開口を有し、前記タイヤ成形面以外の面に他方端開口を有する排気孔の一方端側にベントユニットが埋設され、前記ベントユニットが、前記排気孔に内嵌される筒状のケースと、このケースに内挿される弁体および付勢部材とを有し、前記弁体が前記付勢部材の付勢力により前記タイヤ成形面から突出する方向に常時付勢されて、前記弁体が前記付勢力に抗して移動して前記一方端開口を塞ぐことにより前記排気孔を通じた前記モールドの内側と外側との連通が遮断されるタイヤ加硫用モールドの製造方法において、
前記タイヤ成形面での前記一方端開口の配置領域毎に必要な排気具合を予め把握しておき、この把握した前記必要な排気具合に基づいて、前記ベントユニットが埋設されるそれぞれの前記排気孔における前記タイヤ成形面での前記ケースの上端の開口面積および前記付勢力の強さの2つの仕様を異ならせることで、前記必要な排気具合を確保することを特徴とするタイヤ加硫用モールドの製造方法(ただし、前記付勢部材としてバネ定数が非線形な仕様は除くとともに、それぞれの前記弁体の前記タイヤ成形面からの突出長さを異ならせた仕様を除く)
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ加硫用モールドを開型状態にしてその内部にグリーンタイヤを配置した後、前記加硫用モールドを閉型して前記グリーンタイヤを加熱しつつ加圧して加硫するタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ加硫用モールドおよびその製造方法並びにタイヤの製造方法に関し、さらに詳しくは、ベントユニットが埋設された排気孔を通じて、モールドとグリーンタイヤとの間の不要な空気等をモールド外側に効果的に排出できるタイヤ加硫用モールドおよびこのモールドの製造方法並びにこのモールドを使用したタイヤの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グリーンタイヤとタイヤ成形面との間の不要な空気などをモールド外側に排出する排気孔にベントユニットを埋設することが知られている(例えば、特許文献1参照)。ベントユニットは、排気孔に内嵌される筒状のケースに弁体およびスプリングが内挿されていて、弁体がスプリングの付勢力によってタイヤ成形面から突出する方向に常時付勢されるように構成されている。グリーンタイヤの加硫時には、グリーンタイヤに押圧された弁体が、排気孔のタイヤ成形面の開口を塞ぐまで、この排気孔を通じて不要な空気などがモールドの内側から外側に排出される。弁体が排気孔のタイヤ成形面の開口を塞ぐことで、未加硫ゴムが排気孔に入り込むことが阻止されて、製造したタイヤにスピューが形成されることが防止される。
【0003】
排気孔の開口は、タイヤ成形面において排気が必要とされる位置に形成される。そのため、タイヤ成形面のうちのトレッド成形面、ショルダ成形面、サイド成形面などの適宜の位置に排気孔の開口が形成される。従来、1つのモールドには同じ仕様のベントユニットが使用されている。ところが、タイヤ成形面の位置によって、必要とされる排気具合が異なるため、同じ仕様のベントユニットを使用していると、必要な排気具合に対して過不足が生じ易い。それ故、ベントユニットが埋設された排気孔を通じて、モールドとグリーンタイヤとの間の不要な空気等をモールド外側に効果的に排出するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-13312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ベントユニットが埋設された排気孔を通じて、モールドとグリーンタイヤとの間の不要な空気等をモールド外側に効果的に排出できるタイヤ加硫用モールドおよびこのモールドの製造方法並びにこのモールドを使用したタイヤの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明のタイヤ加硫用モールドは、一方端開口をモールドのタイヤ成形面に有し、他方端開口を前記モールドの前記タイヤ成形面以外の面に有する排気孔と、この排気孔の一方端側に埋設されるベントユニットとを備え、前記ベントユニットが、前記排気孔に内嵌される筒状のケースと、このケースに内挿される弁体および付勢部材とを有し、前記弁体が前記付勢部材の付勢力により前記タイヤ成形面から突出する方向に常時付勢され、前記弁体が前記付勢力に抗して移動して前記一方端開口を塞ぐことにより前記排気孔を通じた前記モールドの内側と外側との連通が遮断されるタイヤ加硫用モールドにおいて、前記ベントユニットが埋設されたそれぞれの前記排気孔における前記タイヤ成形面での前記ケースの上端の開口面積および前記付勢力の強さの2つの仕様が、前記タイヤ成形面での前記一方端開口の配置領域に応じて異ならされていることを特徴とする。ただし、前記付勢部材としてバネ定数が非線形な仕様は除くとともに、それぞれの前記弁体の前記タイヤ成形面からの突出長さを異ならせた仕様を除く。
【0007】
本発明のタイヤ加硫用モールドの製造方法は、モールドのタイヤ成形面に一方端開口を有し、前記タイヤ成形面以外の面に他方端開口を有する排気孔の一方端側にベントユニットが埋設され、前記ベントユニットが、前記排気孔に内嵌される筒状のケースと、このケースに内挿される弁体および付勢部材とを有し、前記弁体が前記付勢部材の付勢力により前記タイヤ成形面から突出する方向に常時付勢されて、前記弁体が前記付勢力に抗して移動して前記一方端開口を塞ぐことにより前記排気孔を通じた前記モールドの内側と外側との連通が遮断されるタイヤ加硫用モールドの製造方法において、前記タイヤ成形面での前記一方端開口の配置領域毎に必要な排気具合を予め把握しておき、この把握した前記必要な排気具合に基づいて、前記ベントユニットが埋設されるそれぞれの前記排気孔における前記タイヤ成形面での前記ケースの上端の開口面積および前記付勢力の強さの2つの仕様を異ならせることで、前記必要な排気具合を確保することを特徴とする。ただし、前記付勢部材としてバネ定数が非線形な仕様は除くとともに、それぞれの前記弁体の前記タイヤ成形面からの突出長さを異ならせた仕様を除く。
【0008】
本発明のタイヤの製造方法は、上記のタイヤ加硫用モールドを開型状態にしてその内部にグリーンタイヤを配置した後、前記加硫用モールドを閉型して前記グリーンタイヤを加熱しつつ加圧して加硫することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のタイヤ加硫用モールドによれば、前記タイヤ成形面での前記一方端開口の配置領域に応じて、前記ベントユニットが埋設されたそれぞれの前記排気孔における前記タイヤ成形面での開口面積、前記付勢力の強さおよび前記排気孔の前記ケースに連接する位置から前記他方端開口に向かって延在する部分の横断面積の大きさの3つの仕様のうち、少なくとも1つの仕様が異ならされているので、前記一方端開口の配置領域で必要とされている排気具合を確保することが容易になる。これに伴い、それぞれの前記一方端開口の配置領域において過不足のない効果的な排気を実現することが可能になる。
【0010】
本発明のタイヤ加硫用モールドの製造方法によれば、前記タイヤ成形面での前記一方端開口の配置領域毎に必要な排気具合を予め把握しておき、この把握した前記必要な排気具合に基づいて、前記3つの仕様のうち、少なくとも1つの仕様を異ならせることで、前記必要な排気具合を確保するので、それぞれの前記一方端開口の配置領域において過不足のない効果的な排気を実現することが可能になる。
【0011】
本発明のタイヤの製造方法によれば、上記のタイヤ加硫用モールドを用いてグリーンタイヤを加硫するので、モールドとグリーンタイヤとの間の不要な空気等がモールド外側に効果的に排出されて、加硫故障なくタイヤを製造することができる。これに伴い、タイヤ品質の向上と生産性の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】加硫装置に取り付けられて開型状態の本発明のタイヤ加硫用モールドの右半分を断面視で例示する説明図である。
図2図1のセクタモールドを平面視で例示する説明図である。
図3図2のモールドを断面視で例示する説明図である。
図4図3の一部拡大図である。
図5】ベントユニットの変形例を断面視で例示する説明図である。
図6】排気孔の変形例を断面視で例示する説明図である。
図7図1のモールドを閉型してグリーンタイヤを加硫している状態を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のタイヤ加硫用モールドおよびその製造方法並びにタイヤの製造方法を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0014】
図1図3に例示する本発明のタイヤ加硫用モールド1(以下、モールド1という)は、セクショナルタイプである。このモールド1は、複数のセクタモールド1Aと円盤状の上側サイドモールド1Bおよび下側サイドモールド1Cとで構成されている。モールド1の内側面がタイヤ成形面2になる。タイヤ成形面2には様々な溝成形部3が突設されている。セクタモールド1Aは、タイヤトレッド部を成形するトレッド成形面2aとタイヤショルダ部を成形するショルダ成形面2bとを有している。上側サイドモールド1Bおよび下側サイドモールド1Cはそれぞれ、タイヤサイド部を成形するサイド成形面2cを有している。
【0015】
図1では、モールド1は加硫装置9に設置されている。加硫装置9は、中心機構10と、コンテナリング12を有するコンテナとを備えている。図中の一点鎖線CLは、中心機構10の軸心位置を示している。図1図7では、モールド1および加硫装置9の右半分を示しているが、左半分も実質的に同じ構造である。
【0016】
コンテナリング12は中心機構10の外周側で上下移動する。それぞれのモールド1(1A、1B、1C)はコンテナの構成部品に取り付けられている。中心機構10を構成する中心ポスト10aには、上下に間隔をあけて取り付けられた円盤状のクランプ部を介して円筒状の加硫ブラダ11が設けられている。図1では、加硫ブラダ11によってグリーンタイヤGが保持されている。
【0017】
モールド1にはタイヤ成形面2とグリーンタイヤGとの間の不要な空気等をモールド1の外側に排出して加硫故障を防止するための排気孔4が形成されている。排気孔4はタイヤ成形面2に一方端開口4aを有し、モールド1の外側面(背面)などのタイヤ成形面2以外の面に他方端開口4bを有している。排気孔4の一方端側(即ち、タイヤ成形面2の近傍)にはベントユニット5が埋設されている。排気孔4の一方端開口4aは、タイヤ成形面2において排気が必要とされる様々な領域に配置されている。
【0018】
図4に例示するようにベントユニット5は、ケース6とケース6に内設された弁体7およびスプリング8とを有している。ケース6は上端開口6aおよび下端開口6bを有する筒状体である。上端開口6aが排気孔4の一方端開口4aに位置していて、下端開口6bは排気孔4の長手方向中途に位置している。
【0019】
弁体7は、軸部7aと軸部7aの先端に固定された拡径部7bとを有している。弁体7は、軸部7aに外挿されたスプリング8によってケース6の上端開口6a(タイヤ成形面2)から突出する方向に常時付勢されている。弁体7をこのように常時付勢できれば、この実施形態のようなコイル状のスプリング8に限定されず、その他のタイプのスプリングや弾性体などの種々の付勢部材を用いることができる。
【0020】
スプリング8によって付勢されている拡径部7bは、タイヤ成形面2から僅かに突出していて、拡径部7bがこのように一方端開口4a(上端開口6a)を開口させている位置にある時は、排気孔4を通じてモールド1の内側と外側とが連通する。グリーンタイヤGの加硫時には、弁体7(拡径部7b)はグリーンタイヤGによって押圧されて、スプリング8の付勢力に抗して後退する。そして、拡径部7bが一方端開口4a(上端開口6a)を封鎖する位置にある時は、排気孔4を通じたモールド1の内側と外側との連通が遮断される。
【0021】
タイヤ成形面2での一方端開口4aの配置領域が異なると、それぞれの排気孔4に要求される必要な排気具合は異なる。そこで、このモールド1では、タイヤ成形面2での一方端開口4aの配置領域に応じて、それぞれの排気孔4による排気具合が調整されて、必要な排気具合が確保されている。
【0022】
具体的には、ベントユニット5が埋設されたそれぞれの排気孔4におけるタイヤ成形面2での開口面積S1、スプリング8の付勢力の強さおよび排気孔4のケース6に連接する位置から他方端開口4bに向かって延在する部分の横断面積S2の大きさの3つの仕様のうち、少なくとも1つの仕様が、タイヤ成形面2での一方端開口4aの配置領域に応じて異ならされている。したがって、タイヤ成形面2での一方端開口4aの配置領域に応じて、開口面積S1のみ、スプリング8の付勢力の強さのみ、或いは、横断面積S2のみを異ならせてもよい。
【0023】
開口面積S1について説明すると、図4に例示するベントユニット5ではケース6が円筒形なので、排気孔4におけるタイヤ成形面2での開口面積S1は、ケース6の上端開口6aの内径Dに基づいて算出される。したがって、開口面積S1=(π/4)・(内径D)2になる。図5に例示するように、内径をD1(D1>D)にして開口面積S1が大きくなる程、排気孔4による排気具合は向上する(排気流量が大きくなる)。一方、開口面積S1が小さくなる程、排気孔4による排気具合は低下する(排気流量が小さくなる)。
【0024】
スプリング8の付勢力について説明すると、スプリング8の付勢力が強くなる程、弁体7がグリーンタイヤに押圧されても後退し難くなるので、拡径部7bによって一方端開口4a(上端開口6a)が封鎖されるタイミングが遅くなる。したがって、スプリング8の付勢力が強くなる程、排気孔4を通じてより長時間、排気できるので排気具合は向上する。一方、スプリング8の付勢力が弱くなる程、排気孔4を通じた排気がより短時間になるので排気具合は低下する。
【0025】
排気孔4のケース6に連接する位置から他方端開口4bに向かって延在する部分の横断面積S2について説明すると、図4に例示する排気孔4は円筒形なので、横断面積S2は排気孔4のこの部分の内径dに基づいて算出される。したがって、横断面積S2=(π/4)・(内径d)2になる。図6に例示するように、内径をd1(d1>d)にして横断面積S2が大きくなる程、排気孔4による排気具合は向上する(排気流量が大きくなる)。一方、横断面積S2が小さくなる程、排気孔4による排気具合は低下する(排気流量が小さくなる)。通常、この内径dは、図4に例示するように、ケース6のスプリング8が内設されている部分の内径よりも小さく設定されているが、図6ではケース6のスプリング8が内設されている部分の内径よりも内径d1が大きく設定されている。内径d1を大きくする場合は、ケース6の下端開口6bの開口面積も併せて大きくするとよい。
【0026】
例えば、一方端開口4aの配置領域として、トレッド成形面2a、ショルダ成形面2bおよびサイド成形面2cの3つの領域を設定して、それぞれの配置領域毎に上述した仕様を異ならせる。即ち、トレッド成形面2aとショルダ成形面2bとサイド成形面2cとでは、上述した3つの仕様のうち、少なくとも1つの仕様を異ならせる。
【0027】
或いは、一方端開口4aの配置領域として、トレッド成形面2a、ショルダ成形面2bまたはサイド成形面2cの少なくともいずれか1つの成形面において複数に区分した領域を設定して、それぞれの区分した領域毎に上述した仕様を異ならせる。即ち、トレッド成形面2aを複数に区分して、それぞれの区分した領域では、上述した3つの仕様のうち、少なくとも1つの仕様を異ならせる。または、ショルダ成形面2bを複数に区分して、それぞれの区分した領域では、上述した3つの仕様のうち、少なくとも1つの仕様を異ならせることもできる。或いは、サイド成形面2cを複数に区分して、それぞれの区分した領域では、上述した3つの仕様のうち、少なくとも1つの仕様を異ならせることもできる。
【0028】
例えば、ゴム厚が相対的に厚くて硬いタイヤトレッド部を成形するトレッド成形面2aでは、ゴム厚が相対的に薄くて柔らかいタイヤサイド部を成形するサイド成形面2cにおいてもよりも、スプリング8の付勢力を強くする。これにより、グリーンタイヤGによって拡径部7bが押圧されても、一方端開口4a(上端開口6a)が直ぐに封鎖されないようにして必要な排気具合を確保する。或いは、付勢力の強さ以外の仕様を異ならせて必要な排気具合を確保する。
【0029】
下側サイドモールド1Cのサイド成形面2cには、モールド1の開型時からグリーンタイヤGが載置される。そのため、このサイド成形面2cに配置されている一方端開口4a(上端開口6a)は、グリーンタイヤGの重さに起因して、拡径部7bによって封鎖され易い。そこで、このサイド成形面2cの一方端開口4a(上端開口6a)の開口状態を確保するために、例えば、サイド成形面2cでは、一方端開口4aの配置領域を下側サイドモールド1Cと上側サイドモールド1Bとの2つの領域に区分して、下側サイドモールド1Cのサイド成形面2cでは、上側サイドモールド1Bのサイド成形面2cにおいてよりも、スプリング8の付勢力を強くする。
【0030】
トレッド成形面2aやショルダ成形面2bにおいても、相対的に下方領域に配置されている一方端開口4a(上端開口6a)は、相対的に上方領域に配置されている一方端開口4a(上端開口6a)よりも、グリーンタイヤGの重さに起因して、拡径部7bによって封鎖され易い。そこで、トレッド成形面2aやショルダ成形面2bにおいてもサイド成形面2cと同様に付勢力を調整する。例えば、トレッド成形面2aでは上下方向に複数(例えば2つや3つ)の領域に区分し、サイド成形面2bでは上側領域と下側領域の2つの領域に区分する。そして、相対的に下方領域では、相対的に上方領域においてよりも、スプリング8の付勢力を強くする。
【0031】
また、モールド1を閉型した後、加硫ブラダ11を膨張させると、グリーンタイヤGはタイヤ成形面2のうち、最初にトレッド成形面2aに強く押圧されて、ショルダ成形面2bには最後に強く押圧されることが多い。そのため、トレッド成形面2aやサイド成形面2cに配置されている一方端開口4a(上端開口6a)は相対的に早期に拡径部7bによって封鎖される傾向がある。そのため、ショルダ成形面2bに配置されている一方端開口4a(上端開口6a)が相対的に遅くまで開口状態になる。即ち、この時に数が少なくなった開口状態のショルダ成形面2bに配置されている一方端開口4a(上端開口6a)を通じて、効果的に排気を行うために、例えば、ショルダ成形面2bでは、トレッド成形面2aやサイド成形面2cにおいてよりも、開口面積S1、横断面積S2の少なくとも一方を大きくして、必要な排気具合を確保する。
【0032】
このモールド1を製造するには、タイヤ成形面2での一方端開口4aの配置領域毎に必要な排気具合を予め把握しておく。例えば、グリーンタイヤGをテスト加硫して、加硫済みのタイヤの表面状態(加硫故障の有無など)を分析して、それぞれの排気孔4による排気具合(排気流量)の過不足を確認して、それぞれの排気孔4に対する必要な排気具合を把握する。そして、把握したそれぞれの排気孔4の必要な排気具合に基づいて、上述した3つの仕様のうち、少なくとも1つの仕様を異ならせることで、それぞれの排気孔4における必要な排気具合を確保する。
【0033】
このモールド1を用いてタイヤを製造するには、図1に例示するように、加硫装置9に取り付けたモールド1を開型状態にして、グリーンタイヤGを横置き状態で下側サイドモールド1Cに載置してする。このようにグリーンタイヤGを開型したモールド1の内部に配置した後、図7に例示するように、コンテナリング12を下方移動させてモールド1を閉型する。閉型したモールド1によってグリーンタイヤGを加熱しつつ加圧して加硫を行うことでタイヤが完成する。
【0034】
このモールド1によれば、上述した3つの仕様のうち、少なくとも1つの仕様が異ならされているので、グリーンタイヤGの加硫時に、タイヤ成形面2での排気孔4の一方端開口4aの配置領域で必要とされている排気具合を確保することが容易になる。これに伴い、それぞれの一方端開口4aの配置領域で過不足のない効果的な排気を実現できる。したがって、このモールド1を用いてグリーンタイヤGを加硫することで、モールド1(タイヤ成形面2)とグリーンタイヤGとの間の不要な空気等が排気孔4を通じてモールド1の外側に効果的に排出されるので、加硫故障なくタイヤを製造するには有利なる。また、弁体7によって一方端開口4a(上端開口6a)は適時封鎖されるので、グリーンタイヤGを形成している未加硫ゴムが排気孔4に流入することが阻止されて、製造したタイヤにスピューが形成されることが防止される。これに伴い、タイヤ品質の向上と生産性の向上を図ることが可能になる。
【0035】
本発明はセクショナルタイプのモールド1に限らず、いわゆる二分割タイプのモールドに適用することもできる。また、本発明は、空気入りタイヤを製造するためモールドに限らずその他の種々のタイプのタイヤを製造するためのモールドに適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 モールド
1A セクタモールド
1B 上側サイドモールド
1C 下側サイドモールド
2 タイヤ成形面
2a トレッド成形面
2b ショルダ成形面
2c サイド成形面
3 溝成形部
4 排気孔
4a 一方端開口
4b 他方端開口
5 ベントユニット
6 ケース
6a 上端開口
6b 下端開口
7 弁体
7a 軸部
7b 拡径部
8 スプリング(付勢部材)
9 加硫装置
10 中心機構
10a 中心ポスト
11 加硫ブラダ
12 コンテナリング
G グリーンタイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7