(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】コンベヤベルト用ゴム組成物及びコンベヤベルト
(51)【国際特許分類】
B65G 15/34 20060101AFI20240510BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20240510BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240510BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240510BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240510BHJP
C08K 5/3415 20060101ALI20240510BHJP
C08K 5/42 20060101ALI20240510BHJP
F16G 1/08 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B65G15/34
C08L7/00
C08L9/00
C08K3/04
C08K3/36
C08K5/3415
C08K5/42
F16G1/08 B
(21)【出願番号】P 2020088015
(22)【出願日】2020-05-20
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 康平
(72)【発明者】
【氏名】上西 和也
(72)【発明者】
【氏名】黒坂 香織
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-104372(JP,A)
【文献】特開2008-038133(JP,A)
【文献】特開2006-083301(JP,A)
【文献】国際公開第2019/111546(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,F16G,B65G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム及び
未変性の固形ポリブタジエンゴムを含むゴム成分と、カーボンブラックと、シリカと、重量平均分子量が1,000以上15,000以下である液状ポリブタジエンゴムとを含有し、
前記天然ゴムと前記固形ポリブタジエンゴムとの質量比(NR/固形BR)が、80/20~25/75であり、
前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、15~35質量部であり、
前記シリカの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、5~25質量部であり、
前記液状ポリブタジエンゴムの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、5~10質量部である、コンベヤベルト用ゴム組成物。
【請求項2】
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N
2SA)が、20~75m
2/gである、請求項1に記載のコンベヤベルト用ゴム組成物。
【請求項3】
更に、1,3-ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン、及び/又は、ヘキサメチレン-1,6-ビス(チオサルフェート)二ナトリウム塩二水和物を含有する、請求項1又は2に記載のコンベヤベルト用ゴム組成物。
【請求項4】
上面カバーゴム層、補強層及び下面カバーゴム層からなるコンベヤベルトであって、前記下面カバーゴム層の少なくとも裏面表面が、請求項1~3のいずれか1項に記載のコンベヤベルト用ゴム組成物により形成される、コンベヤベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤベルト用ゴム組成物及びコンベヤベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、資材等を運搬するために使用されているコンベヤベルトにおいては、消費電力を低減させるため、ECOベルト(エコベルト)の開発が望まれている。
ECOベルトとは、コンベヤベルトがキャリアローラーを乗り越える際の陥入抵抗力を低減させることで、駆動に必要となる電力を低減させることができる省エネルギー性のコンベヤベルトである。
【0003】
消費電力の低減等を目的として、例えば特許文献1は以下のコンベヤベルト用ゴム組成物を開示している。
天然ゴム(NR)およびポリブタジエンゴム(BR)からなるゴム成分と、カーボンブラックと、シリカと、シランカップリング剤と、ジエチレングリコールとを含有し、
前記ゴム成分中の天然ゴムとポリブタジエンゴムとの量比(NR/BR)が、80/20~25/75であり、
前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して15~35質量部であり、
前記シリカの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して5~25質量部であり、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.5~3質量部であり、
前記ジエチレングリコールの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.5~4.5質量部である、コンベヤベルト用ゴム組成物。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ECOベルトには、上記のようなECO性(省エネルギー性)の他、長寿命性、ベルト交換時期まで長期間の使用に耐えうる耐久性等が求められる。
このため、ECOベルトの製造に使用されるゴム組成物には、ECO性(省エネルギー性)、長寿命性に影響する耐摩耗性、並びに、耐久性に影響する、初期切断時伸び(初期EB)及び初期切断時引張強さ(初期TB)のような引張特性等が優れることが要求される。
コンベヤベルトは長期に渡る使用の間に通常、引張特性が徐々に低下するため、初期の引張特性が高いことが求められる。
【0006】
このようななか、本発明者らは特許文献1を参考にしてゴム組成物を調製しこれを評価したところ、このようなゴム組成物は、初期切断時伸びが昨今ECOベルト用ゴム組成物に要求されているレベルを満足しない場合があること、又は、上記初期切断時伸びの他に、更に、耐摩耗性及び初期切断時引張強さが、昨今ECOベルト用ゴム組成物に要求されているレベルを満足しない場合があることが明らかとなった(比較例1、2)。
そこで、本発明は、高いECO性(省エネルギー性)を維持しつつ、耐摩耗性、初期切断時伸び及び初期切断時引張強さに優れるコンベヤベルト用ゴム組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、コンベヤベルトを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、天然ゴム及び固形ポリブタジエンゴムを含むゴム成分と、カーボンブラックと、シリカとをそれぞれ特定の量で含有するゴム組成物が、更に特定範囲の重量平均分子量を有する液状ポリブタジエンゴムを特定量で含有することによって、高い省エネルギー性を維持しつつ、耐摩耗性、初期切断時伸び及び初期切断時引張強さに優れるという効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0008】
[1] 天然ゴム及び固形ポリブタジエンゴムを含むゴム成分と、カーボンブラックと、シリカと、重量平均分子量が1,000以上15,000以下である液状ポリブタジエンゴムとを含有し、
上記天然ゴムと上記固形ポリブタジエンゴムとの質量比(NR/固形BR)が、80/20~25/75であり、
上記カーボンブラックの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、15~35質量部であり、
上記シリカの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、5~25質量部であり、
上記液状ポリブタジエンゴムの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、5~10質量部である、コンベヤベルト用ゴム組成物。
[2] 上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)が、20~75m2/gである、[1]に記載のコンベヤベルト用ゴム組成物。
[3] 更に、1,3-ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン、及び/又は、ヘキサメチレン-1,6-ビス(チオサルフェート)二ナトリウム塩二水和物を含有する、[1]又は[2]に記載のコンベヤベルト用ゴム組成物。
[4] 上面カバーゴム層、補強層及び下面カバーゴム層からなるコンベヤベルトであって、上記下面カバーゴム層の少なくとも裏面表面が、[1]~[3]のいずれかに記載のコンベヤベルト用ゴム組成物により形成される、コンベヤベルト。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物は、高い省エネルギー性を維持しつつ、耐摩耗性、初期切断時伸び及び初期切断時引張強さに優れる。
本発明のコンベヤベルトは、高い省エネルギー性を維持しつつ、耐摩耗性、初期切断時伸び及び初期切断時引張強さに優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明のコンベヤベルトの好適な実施態様の一例を模式的に示した断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分の製造方法は特に制限されない。例えば、従来公知の方法が挙げられる。
本明細書において、本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物について、省エネルギー性、耐摩耗性、初期切断時伸び及び初期切断時引張強さのうちの少なくとも1つがより優れることを、本発明の効果がより優れるということがある。本発明のコンベヤベルトについても同様である。
【0012】
[コンベヤベルト用ゴム組成物]
本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物(本発明の組成物)は、
天然ゴム及び固形ポリブタジエンゴムを含むゴム成分と、カーボンブラックと、シリカと、重量平均分子量が1,000以上15,000以下である液状ポリブタジエンゴムとを含有し、
上記天然ゴムと上記固形ポリブタジエンゴムとの質量比(NR/固形BR)が、80/20~25/75であり、
上記カーボンブラックの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、15~35質量部であり、
上記シリカの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、5~25質量部であり、
上記液状ポリブタジエンゴムの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、5~10質量部である、コンベヤベルト用ゴム組成物である。
【0013】
なお、本明細書において、本発明の組成物に含有される、上記の重量平均分子量が1,000以上15,000以下である液状ポリブタジエンゴムを「特定液状BR」と称する場合がある。
【0014】
本発明の組成物はこのような構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
天然ゴム及び固形ポリブタジエンゴムを含むゴム成分と、カーボンブラックと、シリカとをそれぞれ特定の量で含有するゴム組成物が、更に特定液状BRを含有する場合、上記特定液状BRは液状であり基本的な構造がポリブタジエンであるため、上記ゴム成分が混ざりやすくなりシリカの分散性が向上することによって、及び/又は、特定液状BRの添加によってシリカの活性が向上することによって、ゴム組成物の高い省エネルギー性を維持しつつ、耐摩耗性、並びに、初期切断時伸び及び初期切断時引張強さが優れると推測される。
なお、本発明に関する上記メカニズムは本発明者らによる推測であり上記に限定されない。
以下、本発明の組成物に含有される各成分について詳述する。
【0015】
<<ゴム成分>>
本発明の組成物に含有されるゴム成分は、天然ゴム及び固形ポリブタジエンゴムを含む。なお、上記ゴム成分は、後述する特定液状BRを含まない。
【0016】
<天然ゴム>
上記ゴム成分としての天然ゴムは特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
【0017】
<固形ポリブタジエンゴム>
上記ゴム成分としての固形ポリブタジエンゴムは、23℃条件下において固体のポリブタジエンゴムであれば特に制限されない。上記固形ポリブタジエンゴムを以下「固形BR」と称する場合がある。
【0018】
上記固形BRとしては、例えば、未変性の固形BR、変性された固形BRが挙げられる。
未変性の固形BRとしては例えば、未変性の、ブタジエンの単独重合体が挙げられる。
変性された固形BRにおける変性は特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
本発明において、上記固形BRは、本発明の効果に優れ、省エネルギー性、耐摩耗性、初期切断時伸び及び初期切断時引張強さを高いレベルでバランスさせることができるという観点から、未変性の固形BRであることが好ましい。
【0019】
上記固形BRの重量平均分子量は、本発明の効果に優れるという観点から、20万以上であることが好ましく、30万~100万であることがより好ましい。
【0020】
(Mw、Mnの測定方法)
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる標準ポリスチレン換算値とする。
・溶媒:テトラヒドロフラン
・検出器:RI検出器
上記固形BRのMw、Mnは上記測定方法によって測定できる。
【0021】
<天然ゴムと固形ポリブタジエンゴムとの質量比>
本発明において、上記天然ゴムと上記固形ポリブタジエンゴムとの質量比(NR/固形BR)は、80/20~25/75である。
上記質量比が上記の範囲であることによって、本発明の効果に優れ、省エネルギー性、耐摩耗性、初期切断時伸び及び初期切断時引張強さを高いレベルでバランスさせることができる。なお、初期切断時伸び及び初期切断時引張強さを合わせて「初期引張特性」という場合がある。
上記NR/固形BRの質量比は、本発明の効果がより優れるという観点から、75/25~50/50が好ましい。
【0022】
・天然ゴムと固形ポリブタジエンゴムとの合計含有量
上記NR及び上記固形BRの合計含有量は、本発明の効果に優れるという観点から、上記ゴム成分全量中の80~100質量%であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。
【0023】
・その他のゴム
上記ゴム成分が、上記NR及び上記固形BR以外のゴム(その他のゴム)を更に含む場合、上記その他のゴムは特に制限されない。上記その他のゴムとしては例えば、スチレンブタジエンゴムのような芳香族ビニル-共役ジエン共重合体ゴム、合成ポリイソプレン、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br-IIR、Cl-IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。
【0024】
<カーボンブラック>
本発明の組成物は、カーボンブラックを含有する。
本発明の組成物に含有されるカーボンブラック(CB)は、特に限定されない。
上記CBとしては、例えば、GPF(General Purpose Furnace)、HAF(High Abrasion Furnace)、SAF(Super Abrasion Furnace)、ISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace)、FEF(Fast Extruding Furnace)、SRF(Semi-Reinforcing Furnace)、FT(Fine Thermal)、MT(Medium Thermal)等が挙げられる。
【0025】
上記CBは、本発明の効果がより優れるという観点から、GPF(General Purpose Furnace)カーボンブラックを含むことが好ましい。
【0026】
・CBのN2SA
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、本発明の効果がより優れるという観点から、20~75m2/gであることが好ましい。
ここで、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217-2:2017「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0027】
<カーボンブラックの含有量>
本発明において、上記カーボンブラックの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、15~35質量部である。
上記カーボンブラックの含有量が上記の範囲であることによって、本発明の効果に優れる。
上記カーボンブラックの含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、上記ゴム成分100質量部に対して、20~35質量部が好ましい。
【0028】
<シリカ>
本発明の組成物は、シリカを含有する。
本発明の組成物に含有されるシリカは、特に限定されない。例えば、従来公知のシリカが挙げられる。上記シリカとしては、具体的には例えば、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカなどが挙げられる。
【0029】
<シリカの含有量>
本発明において、上記シリカの含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、5~25質量部である。
上記シリカの含有量が上記の範囲であることによって、本発明の効果に優れる。
上記シリカの含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、上記ゴム成分100質量部に対して、5~20質量部が好ましい。
【0030】
<特定液状BR>
本発明の組成物は、重量平均分子量が1,000以上15,000以下である液状ポリブタジエンゴム(特定液状BR)を含有する。
上記特定液状BRは、重量平均分子量が1,000以上15,000以下であり、23℃条件下において液状のポリブタジエンゴムである。なお、特定液状BRの重量平均分子量、数平均分子量の測定方法は、上記(Mw、Mnの測定方法)に示した方法と同様である。
【0031】
<特定液状BRの重量平均分子量>
本発明において、特定液状BRの重量平均分子量は、1,000以上15,000以下である。
特定液状BRの重量平均分子量が上記範囲であることによって、本発明の効果に優れ、省エネルギー性、耐摩耗性、初期切断時伸び及び初期切断時引張強さを高いレベルでバランスさせることができる。
特定液状BRの重量平均分子量は、本発明の効果に優れるという観点から、5,000~12,000が好ましい。
【0032】
・特定液状BRの分子量分布
特定液状BRの分子量分布(Mw/Mn)は、本発明の効果に優れるという観点から、1超1.2以下が好ましい。
【0033】
・変性の有無
上記特定液状BRとしては、例えば、未変性の液状BR、変性された液状BRが挙げられる。
・・未変性の液状BR
未変性の液状BRとしては例えば、未変性の、ブタジエンの単独重合体が挙げられる。
【0034】
・・変性された液状BR
変性された液状BRにおける変性は特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
変性された液状BRとしては例えば、ケイ素原子を含む官能基を有するブタジエンポリマー(変性ブタジエンポリマー)が挙げられる。上記官能基は更に窒素原子を含むことが好ましい態様の1つとして挙げられる。
変性された液状BRは上記官能基を1分子中に1個以上有することが好ましく、1個有することがより好ましい。
変性された液状BRは上記官能基を、変性された液状BRの末端及び/又は側鎖に有することができる。変性された液状BRは上記官能基を、本発明の効果がより優れるという観点から、少なくとも末端に有することが好ましい。
【0035】
上記官能基は、本発明の効果がより優れるという観点から、下記式(M)で表される基であることが好ましい。
【0036】
【0037】
上記式(M)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
上記式(M)中、Lは、2価の有機基を表す。
上記式(M)中、mは0~3の整数を表し、nは0~3の整数を表し、m及びnはm+n=3の関係式を満たす。
上記式(M)中、*は、結合位置を表す。
【0038】
上記置換基は1価の置換基であれば特に制限されない。
・R1
上記式(M)中、R1は、本発明の効果がより優れるという観点から、水素原子、アルキル基(好ましくは、炭素数1~10)、アルキルシリル基(好ましくは、炭素数1~10)、又は芳香族炭化水素基(好ましくは、炭素数6~18)であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。複数あるR1は同一であっても異なっていてもよい。
【0039】
・R2
R2は、本発明の効果がより優れるという観点から、ヒドロカルビルオキシ基(-OR基:Rは炭化水素基)、ヒドロカルビル基(-R基:Rは炭化水素基)であることが好ましく、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1~10)であることがより好ましい。R2が複数ある場合、複数のR2は同一であっても異なっていてもよい。
全てのR2がヒドロカルビルオキシ基であることが好ましい。
nが2~3であり、複数のR2の一部がヒドロカルビルオキシ基である場合、残りのR2をヒドロカルビル基とすることができる。
【0040】
・L
上述のとおり、上記式(M)中、Lは、単結合または2価の有機基を表す。2価の有機基は特に制限されない。Lは、本発明の効果がより優れるという観点から、アルキレン基(好ましくは、炭素数1~10)であることが好ましい。Lが複数ある場合、複数のLは同一であっても異なっていてもよい。
【0041】
・m、n
上記式(M)中、mは、0~3の整数を表す。mは、本発明の効果がより優れるという観点から、1であることが好ましい。
上記式(M)中、nは、0~3の整数を表す。nは、本発明の効果がより優れるという観点から、2であることが好ましい。
上記式(M)中、m及びnは、m+n=3の関係式を満たす。
【0042】
上記式(M)で表される基は、本発明の効果がより優れ、省エネルギー性、耐摩耗性、初期切断時伸び及び初期切断時引張強さを高いレベルでバランスさせることができるという観点から、下記式(m1)で表される基であることが好ましい。式(m1)中、*は、結合位置を表す。
【化2】
【0043】
・未変性の液状BR
特定液状BRは、本発明の効果がより優れ、省エネルギー性、耐摩耗性、初期切断時伸び及び初期切断時引張強さを高いレベルでバランスさせることができるという観点から、未変性の液状BRであることが好ましい。
【0044】
・固形BRと特定液状BRとの組合せ
上述の固形BRと特定液状BRとの組合せは、固形BRと特定液状BRとの相溶性及び混合性の少なくともいずれかに優れ、本発明の効果がより優れ、省エネルギー性、耐摩耗性、初期切断時伸び及び初期切断時引張強さを高いレベルでバランスさせることができるという観点から、(上記固形BRとしての)未変性の固形BRと(上記特定液状BRとしての)未変性の液状BRとの組合せが好ましい。
【0045】
上記質量比(NR/固形BR)が75/25~25/75である場合、未変性の固形BRと未変性の液状BRとの組合せが好ましい。
上記質量比(NR/固形BR)が80以下/20以上、75超/25未満の範囲である場合、固形BRと特定液状BRとの組合せは、(上記固形BRとしての)未変性の固形BRと(上記特定液状BRとしての)未変性の液状BR又は変性された液状BRとの組合せが好ましい。
【0046】
<液状ポリブタジエンゴムの含有量>
本発明において、上記液状ポリブタジエンゴムの含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、5~10質量部である。
上記特定液状BRの含有量が上記の範囲であることによって、本発明の効果に優れ、省エネルギー性、耐摩耗性、初期切断時伸び及び初期切断時引張強さを高いレベルでバランスさせることができる。
【0047】
上記特定液状BRの含有量が上記ゴム成分100質量部に対して8~10質量部である場合、上述の固形BRと特定液状BRとの組合せは、未変性の固形BRと未変性の液状BRとの組合せであることが好ましい。
【0048】
・添加剤
本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物は、上述した各成分以外に、添加剤を更に含有することができる。上記添加剤としては、例えば、硫黄のような加硫剤又は架橋剤、加硫促進剤、酸化亜鉛、ステアリン酸のような加硫助剤、リバージョン防止剤、ジエチレングリコール、シランカップリング剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、可塑剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤、分散剤、脱水剤、防錆剤、接着付与剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0049】
・硫黄
本発明の組成物は、更に、硫黄を含有することが好ましい。
上記硫黄はゴムの加硫に使用されるものであれば特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
上記硫黄の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、上記ゴム成分100質量部に対して、0.5~5質量部が好ましい。
【0050】
・リバージョン防止剤
本発明の組成物は、更に、リバージョン防止剤を含有することができる。
リバージョンとは加硫戻りと言われる現象である。リバージョンとは一般的に、酸化を伴わない熱老化による、ゴムの網目構造の減少を言う。リバージョンについては、例えば、長時間の加硫等の熱によって、硫黄による架橋点が切断し(網目構造の減少)、更に環状構造化が生じる等と考えられる。
リバージョン防止剤を使用することによって、リバージョン(加硫戻り)を防止することができる。
【0051】
上記リバージョン防止剤は、リバージョンを防止する性能に優れるという観点から、1,3-ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン、及び/又は、ヘキサメチレン-1,6-ビス(チオサルフェート)二ナトリウム塩二水和物を含むことが好ましい。
【0052】
上記リバージョン防止剤の含有量は、本発明の効果がより優れ、リバージョンを防止する性能に優れるという観点から、上記ゴム成分100質量部に対して、0.1~2質量部であることが好ましく、0.2~1質量部がより好ましい。
【0053】
・ジエチレングリコール
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れるという観点から、更に、ジエチレングリコールを含有することが好ましい。
ジエチレングリコールは、シリカ表面に作用して、シリカ同士の凝集力を抑制する働きを持つ。このため、本発明の組成物が更にエチレングリコールを含有する場合、シリカの分散性を高め、加工性を改善し、物性(例えば、耐摩耗性、初期切断時伸び、初期切断時引張強さ)をより向上させることに寄与しうるという理由から、好ましい。
ジエチレングリコールは特に制限されない。
上記ジエチレングリコールの含有量は、シリカの分散性を向上させ、本発明の効果がより優れる理由から、上記ゴム成分100質量部に対して、0.5~4.5質量部であることが好ましく、0.5~2質量部であることがより好ましく、0.6~1.8質量部であることが更に好ましい。
【0054】
・シランカップリング剤
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、更に、シランカップリング剤を含有することが好ましい。上記シランカップリング剤は、加水分解性シリル基及び官能基(上記加水分解性シリル基を除く)を有する化合物であれば特に制限されない。
【0055】
上記シランカップリング剤は、本発明の効果がより優れる理由から、硫黄を有するシランカップリング剤を含むことが好ましい。
上記シランカップリング剤の具体例としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、トリメトキシシリルプロピル-メルカプトベンゾチアゾールテトラスルフィド、トリエトキシシリルプロピル-メタクリレート-モノスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィドのような、硫黄を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
【0056】
上記シランカップリング剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上述したシリカの含有量に対して1~20質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。
【0057】
・特定液状BRとシランカップリング剤の合計含有量
本発明の組成物が更にシランカップリング剤を含有する場合、上記シランカップリング剤の含有量と上記特定液状BRの含有量の合計含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、上記ゴム成分100質量部に対して、5質量部を超え15質量部以下が好ましく、6.0~11.0質量部がより好ましい。
【0058】
本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物の製造方法は特に制限されない。例えば、上述した必須成分、及び必要に応じて更に使用することができる添加剤(加硫剤、加硫助剤、加硫促進剤を除く)をバンバリーミキサー等で混合し、ついで、これに更に加硫剤、加硫助剤、加硫促進剤を加えて混合する製造方法が挙げられる。
【0059】
本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物の加硫は、通常行われる条件で行うことができる。加硫温度は例えば140~150℃の条件下で行うことができる。加硫の際、加圧してもよい。
【0060】
本発明の組成物は、コンベヤベルト用ゴム組成物である。
本発明の組成物をコンベヤベルトを構成する構成部材のいずれに適用するかは特に制限されないが、得られるコンベヤベルトの省エネルギー性、長寿命性、耐久性に優れるという観点から、カバーゴム層、補強層及び下面カバーゴム層を有するコンベヤベルトにおいては、上記下面カバーゴム層の少なくとも裏面表面を、本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物により形成することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0061】
[コンベヤベルト]
本発明のコンベヤベルトは、
上面カバーゴム層、補強層及び下面カバーゴム層からなるコンベヤベルトであって、上記下面カバーゴム層の少なくとも裏面表面が、本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物(本発明の組成物)により形成される、コンベヤベルトである。
【0062】
本発明のコンベヤベルトは上面カバーゴム層、補強層及び下面カバーゴム層を有する。
下面カバーゴム層は1層又は複数の層とすることができる。上面カバーゴム層及び補強層についても同様である。
【0063】
<下面カバーゴム層>
本発明のコンベヤベルトは、下面カバーゴム層を有し、上記下面カバーゴム層の少なくとも裏面表面(ローラーと接する面)が本発明のゴム組成物により形成される。
本発明のコンベヤベルトにおいて、上記下面カバーゴム層の少なくとも裏面表面を形成するゴム組成物は、本発明の組成物であれば特に制限されない。
【0064】
下面カバーゴム層が2層以上の層を有する場合、上記2層以上の層のうち少なくとも裏面表面に当たる層が本発明の組成物を用いて形成されていればよく、下面カバーゴム層が有する2層以上の層の全てが本発明の組成物を用いて形成されていてもよい。
【0065】
なお、本発明のコンベヤベルトにおいて、下面カバーゴム層の裏面表面以外の構成部材の材料は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0066】
<上面カバーゴム層>
本発明のコンベヤベルトは、上面カバーゴム層を有する。
上面カバーゴム層を形成するために使用されるゴム組成物は特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
【0067】
<補強層>
本発明のコンベヤベルトは、補強層を有する。
上記補強層は特に限定されず、通常のコンベヤベルトに用いられるものを適宜選択して用いることができる。
補強層は、例えば、芯体と接着ゴム(コートゴム)とを有することができる。上記接着ゴム(コートゴム)は上記芯体を被覆していることが好ましい。
芯体の材質としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維のような繊維;スチールのような金属が挙げられる。上記繊維は帆布として使用できる。帆布は平織りの布を意味する。
接着ゴムは特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
補強層の形態は特に限定されず、例えば、シート状のもの、補強層内に補強線の束(例えば、スチールコード、上記繊維の束)を並列に埋込むものであってもよい。
【0068】
本発明のコンベヤベルトは、例えば、上面カバーゴム層及び下面カバーゴム層の間に、補強層を有することができる。
【0069】
補強層が複数層である場合、複数の補強層の間に配置することができるゴム組成物は特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
【0070】
上面カバーゴム層の厚さは、例えば、3~25mmとできる。
下面カバーゴム層の厚さは、例えば、3~20mmとでき、5~15mmが好ましい。
なお、上面カバーゴム層が2層以上で構成されている場合、上面カバーゴム層の厚さは、これらの層の厚さの合計とすることができる。下面カバーゴム層の厚さも同様である。
【0071】
以下、本発明のコンベヤベルトを添付の図面を用いて説明する。なお本発明は添付の図面に制限されない。
図1は、本発明のコンベヤベルトの好適な実施態様の一例を模式的に示した断面斜視図である。
図1において、コンベヤベルト1は、上面カバーゴム層2、補強層3及び下面カバーゴム層4からなり、この順で積層されている。下面カバーゴム層4の裏面表面である外層16が少なくとも、本発明の組成物により形成される。コンベヤベルト1がベルトコンベヤに適用された際、外層16がローラーと接する。上面カバーゴム層2の表面5が運搬物搬送面となることができる。
【0072】
図1において、上面カバーゴム層2は、外層11および内層12を有する。下面カバーゴム層4は、内層15および外層16を有する。
外層11、内層12、内層15及び外層16のうち少なくとも外層16を本発明の組成物を用いて形成すればよい。
外層16及び内層15を、本発明の組成物を用いて形成することができる。また、内層15は、補強層3及び外層16を接着させるための接着層であってもよい。
【0073】
外層11、内層12形成するために使用されるゴム組成物は特に制限されない。
【0074】
本発明のコンベヤベルトはその製造方法について特に制限されない。例えば、従来公知の製造方法が挙げられる。具体的には、まず、本発明の組成物、及び上面カバーゴム層用のゴム組成物をそれぞれシート状に成形し、次に、得られた各シートの間に補強層を配置し、かつ下面カバーゴム層の少なくとも裏面表面が本発明の組成物により構成されるように、上面カバーゴム層用のゴム組成物のシート、補強層、及び本発明の組成物のシートを積層し、得られた積層体を150~170℃の温度で10~60分間加圧して、本発明のコンベヤベルトを製造する方法が挙げられる。上記補強層と上記本発明の組成物のシートの間に別のゴム組成物のシートを配置してもよい。
【実施例】
【0075】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
【0076】
<組成物の製造>
下記第1表の各成分を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを撹拌機で混合し、組成物を製造した。
【0077】
<<評価>>
上記のとおり製造された組成物を用いて以下の評価を行った。結果を第1表に示す。
【0078】
<引張特性>
・初期加硫ゴムシートの調製
上述のとおり製造された各組成物を所定の金型中(縦15cm×横15cm×厚さ2mm)で148℃で30分間プレス加硫して初期加硫ゴムシートを得た。
【0079】
・引張特性の測定
上記のとおり調製された各初期加硫ゴムシートからJIS3号ダンベル状の試験片を打ち抜き、23℃、引張速度500mm/分の条件下で引張試験をJIS K6251:2017に準拠して行い、初期加硫ゴムシートの初期切断時引張強さ(初期TB。単位MPa)及び初期切断時伸び(初期EB。単位%)を測定した。
初期切断時引張強さの結果について、比較例2の初期切断時引張強さを100とする指数とした。初期切断時伸びの結果についても同様である。
【0080】
・初期切断時引張強さ(初期TB)の評価基準
本発明において、初期切断時引張強さ(初期TB)の指数が95以上であった場合、初期TBが優れるものとする。
上記指数が135以上であった場合、初期TBが最も優れると評価して、これを「◎」と表示した。
上記指数が105以上135未満であった場合、初期TBが非常に優れると評価して、これを「〇」と表示した。
上記指数が95以上105未満であった場合、初期TBがやや優れると評価して、これを「△」と表示した。
一方、上記指数が95未満であった場合、初期TBが悪いと評価して、これを「×」と表示した。
【0081】
・初期切断時伸び(初期EB)の評価基準
本発明において、初期切断時伸び(初期EB)の指数が105以上であった場合、初期EBが優れるものとする。
上記指数が135以上であった場合、初期EBが非常に優れると評価して、これを「◎」と表示した。
上記指数が105以上135未満であった場合、初期EBがやや優れると評価して、これを「〇」と表示した。
一方、上記指数が105未満であった場合、初期EBが悪いと評価して、これを「×」と表示した。
【0082】
<耐摩耗性>
・摩耗試験
上記のとおり製造したされた各組成物をシート状に成形し、148℃、30分加熱加硫して、加硫ゴムシートを作製した。加硫ゴムシートから打ち抜いた試験片(直径16mm、厚さ6mm)を用い、JIS K6264-2:2005に準じて、23℃条件下でDIN摩耗試験(A法)を行い、摩耗量(mm3)を測定した。
摩耗量の結果について、比較例2の摩耗量を100とする指数とした。
【0083】
・耐摩耗性の評価基準
本発明において、摩耗量の指数が111以下であった場合、耐摩耗性に優れるものとする。
上記指数が94以下であった場合、耐摩耗性が最も優れると評価して、これを「◎」と表示した。
上記指数が94を超え103以下であった場合、耐摩耗性が非常に優れると評価して、これを「〇」と表示した。
上記指数が103を超え111以下であった場合、耐摩耗性がやや優れると評価して、これを「△」と表示した。
一方、上記指数が111を超えた場合、耐摩耗性が悪いと評価して、これを「×」と表示した。
上記耐摩耗性はコンベヤベルトの寿命に直結するので、上記評価によってコンベヤベルトの長寿命性を評価できる。
【0084】
(省エネルギー性)
上記のとおり製造された各組成物を用いて、縦40mm、横5mm、厚さ2mmのシートを作製した。かかるシートを用い、粘弾性スペクトロメーター(株式会社東洋精機製作所製)により、チャック間距離10mm、動的歪2%、周波数10Hzの測定条件にて、動的粘弾性測定を行ない、20℃における、損失正接(tanδ)及び動的弾性率E′(N/mm)を測定し、得られた損失正接(tanδ)及び動的弾性率E′を下記式に当てはめて、RRF(Rolling Resistance Factor)を求めた。
【数1】
本発明においては、上記RRFで省エネルギー性を評価した。
RRFの結果について、比較例2のRRFを100とする指数とした。
【0085】
・省エネルギー性の評価基準
本発明において、RRFの指数が143以下であった場合、省エネルギー性に優れると評価して、これを「〇」と表示した。
一方、上記指数が143を超えた場合、省エネルギー性が悪いと評価して、これを「×」と表示した。
【0086】
【0087】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
・NR:天然ゴム。RSS#3
・固形BR:23℃条件下において固形のポリブタジエンゴム。商品名Nipol BR1220(重量平均分子量:46万、未変性、日本ゼオン社製)
【0088】
・カーボンブラック:GPFカーボンブラック(ニテロン♯GN、日鉄カーボン社製)。窒素吸着比表面積(N2SA)32m2/g
【0089】
・シリカ:商品名ニップシールAQ、東ソー・シリカ社製。
【0090】
・酸化亜鉛:酸化亜鉛3種(正同化学工業社製)
・ステアリン酸:ステアリン酸YR(日油社製)
・ジエチレングリコール:日本触媒社製
・シランカップリング剤:ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(Si69、Evonik Industries AG社製)
【0091】
・特定液状BR1:23℃条件下において液状であるポリブタジエンゴム。重量平均分子量10700。分子量分布(Mw/Mn)1.08。未変性。特定液状BR1の合成方法は以下のとおりである。
【0092】
(特定液状BR1の合成)
n-BuLi(関東化学製:1.54mol/L(ヘキサン溶液),31mmol)を、1,3-ブタジエン(198g,3667mmol)および2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン(東京化成製,0.1mL,0.55mmol)のシクロヘキサン(2.96kg)混合溶液に加えて、室温で6時間攪拌した。反応後、メタノール(過剰量:開始剤であるn-BuLiに対して3モル等量)を投入し、重合を停止した。
【0093】
重合停止後、得られた溶液を取り出し、減圧下で濃縮した。その濃縮溶液をメタノール(5.0L)に流し込み、メタノール不溶成分を分離した。その結果、停止末端部位に水素原子が導入された未変性の液状BR(特定液状BR1)(Mw=10700,Mw/Mn=1.08)を95%の収率で得た。
【0094】
・特定液状BR2:23℃条件下において液状であるポリブタジエンゴム。重量平均分子量11100。分子量分布(Mw/Mn)1.08。変性有。特定液状BR2の合成方法は以下のとおりである。
【0095】
(特定液状BR2の合成)
n-BuLi(関東化学製:1.54mol/L(ヘキサン溶液),31mmol)を、1,3-ブタジエン(198g,3667mmol)および2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン(東京化成製,0.1mL,0.55mmol)のシクロヘキサン(2.96kg)混合溶液に加えて、室温で6時間攪拌した。反応後、N-トリメチルシリル-1,1-ジメトキシ-2-アザシラシクロペンタン(15g,69mmol。下記構造。以下同様)を投入し、重合を停止した。
【0096】
【0097】
重合停止後、得られた溶液を取り出し、減圧下で濃縮した。その濃縮溶液をメタノール(5.0L)に流し込み、メタノール不溶成分を分離した。その結果、停止末端部位に下記式(m1)で表される官能基が導入された変性液状BR(特定液状BR2)(Mw=11100,Mw/Mn=1.08)を95%の収率で得た。なお式(m1)中の*は結合位置を表す。
【0098】
【0099】
・比較液状BR:23℃条件下において液状であるポリブタジエンゴム。重量平均分子量44,400。分子量分布(Mw/Mn)1.03。変性有。比較液状BRの合成方法は以下のとおりである。
【0100】
(比較液状BRの合成)
n-BuLi(関東化学製:1.54mol/L(ヘキサン溶液),6.1mmol)を、1,3-ブタジエン(198g,3667mmol)および2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン(東京化成製,0.1mL,0.55mmol)のシクロヘキサン(2.96kg)混合溶液に加えて、室温で6時間攪拌した。反応後、N-トリメチルシリル-1,1-ジメトキシ-2-アザシラシクロペンタン(4g,18.3mmol)を投入し、重合を停止した。
重合停止後、得られた溶液を取り出し、減圧下で濃縮した。その濃縮溶液をメタノール(5.0L)に流し込み、メタノール不溶成分を分離した。その結果、停止末端部位に上記式(m1)で表される官能基が導入された変性液状BR(比較液状BR)(Mw=44400,Mw/Mn=1.03)を90%の収率で得た。
【0101】
・加硫促進剤(NS):N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(ノクセラーNS、大内新興化学工業社製)
・リバージョン防止剤:1,3-ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン(PERKALINK 900、LANXESS Deutschland GmbH社製)
・硫黄:油処理硫黄、細井化学工業社製
【0102】
第1表に示す結果から明らかなように、特定液状BR及びリバージョン防止剤を含有しない比較例1は、耐摩耗性、初期の切断時引張強さ及び切断時伸びが悪かった。
特定液状BRを含有しない比較例2は、初期の切断時伸びが悪かった。
特定液状BRの含有量が所定の範囲を外れる比較例3、4は、初期の、切断時引張強さ及び切断時伸びが悪かった。
特定液状BRを含有せず、代わりに重量平均分子量が所定の範囲を外れる比較液状BRを含有する比較例5、6は、初期の切断時伸びが悪かった。
特定液状BRの含有量が所定の範囲を外れる比較例7は、省エネルギー性が悪かった。
【0103】
これに対して、実施例1~9は、高い省エネルギー性を維持しつつ、耐摩耗性、初期切断時伸び及び初期切断時引張強さに優れた。
【0104】
比較例1と実施例5との比較から明らかないように、リバージョン防止剤を含有しない場合であっても、本発明は、特定液状BRを含有することによって、高い省エネルギー性を維持しつつ、耐摩耗性、初期切断時伸び及び初期切断時引張強さを改善することができた。
また、比較例2と実施例2、4、7、9との比較から明らかないように、リバージョン防止剤を更に含有する場合であっても、本発明は、特定液状BRを含有することによって、高い省エネルギー性を維持しつつ、初期切断時伸び及び初期切断時引張強さを改善することができた。
【0105】
上記の結果から、本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物及び本発明のコンベヤベルトは、高い省エネルギー性を維持しつつ、耐摩耗性、初期切断時伸び及び初期切断時引張強さに優れると言える。
また、上記の結果から、発明のコンベヤベルトは、省エネルギー性、長寿命性、耐久性に優れると考えられる。
【符号の説明】
【0106】
1:コンベヤベルト
2:上面カバーゴム層
3:補強層
4:下面カバーゴム層
5:表面
11、16:外層
12、15:内層