(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】プラスチック容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/00 20060101AFI20240510BHJP
B65D 1/42 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B65D1/00 111
B65D1/42
(21)【出願番号】P 2020146023
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】亀谷 朋英
(72)【発明者】
【氏名】小玉 良太
(72)【発明者】
【氏名】山嵜 大輔
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-070050(JP,A)
【文献】特開2020-001718(JP,A)
【文献】特開2014-213934(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044678(WO,A1)
【文献】特開2019-189317(JP,A)
【文献】特開2006-305882(JP,A)
【文献】国際公開第2019/031171(WO,A1)
【文献】特開2012-148811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00
B65D 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最外層とリプロ層を備えるプラスチック容器であって、
前記リプロ層は、前記最外層よりも前記プラスチック容器の内側に配置され、
前記最外層は、低密度ポリエチレンを含み、
前記リプロ層は、再生樹脂とバージン樹脂で構成される混合樹脂で構成され、
前記再生樹脂は、前記容器の成形時に発生するスクラップを再生して得られる樹脂であり、
前記バージン樹脂は、ポリプロピレン系ポリマーと、直鎖状低密度ポリエチレンを含む、プラスチック容器。
【請求項2】
請求項1に記載のプラスチック容器であって、
前記混合樹脂は、前記再生樹脂を15~50質量%と、前記バージン樹脂50~85質量%含む、プラスチック容器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のプラスチック容器であって、
前記バージン樹脂は、前記ポリプロピレン系ポリマーを50~90質量%、前記直鎖状低密度ポリエチレンを10~50質量%含む、プラスチック容器。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載のプラスチック容器であって、
前記バージン樹脂中の(前記直鎖状低密度ポリエチレン/前記ポリプロピレン系ポリマー)の質量比は、0.3~0.6である、プラスチック容器。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか1つに記載のプラスチック容器であって、
前記リプロ層よりも前記プラスチック容器の内側に配置された最内層を備え、
前記最内層は、低密度ポリエチレンを含む、プラスチック容器。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れか1つに記載のプラスチック容器であって、
前記最外層は、ポリプロピレン系ポリマーを含まない、プラスチック容器。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れか1つに記載のプラスチック容器であって、
前記プラスチック容器は、高さ方向の中央での肉厚が0.7~2.0mmである、プラスチック容器。
【請求項8】
請求項1~請求項7の何れか1つに記載のプラスチック容器(但し、前記混合樹脂が水素添加スチレンブタジエンゴムを含むものを除く。)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドレッシング等の内容物を収容するプラスチック容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、容器を傾けて内容物の自重によって内容物を吐出することが想定されており、このような容器では、容器の剛性を高くするために、ポリプロピレン(以下「PP」)系ポリマーを主体とする樹脂で構成するのが一般的である。
【0005】
一方、本発明の発明者が、最外層をPP系ポリマーとする容器を試作し、この容器を梱包して運送する試験を行ったところ、容器の表面に擦り傷が発生する場合があることが分かった。一方、最外層の材料をPP系ポリマーから低密度ポリエチレン(以下「LDPE」)に変更したところ、擦り傷の発生が抑制できたものの、剛性が低下して、容器を梱包した箱を重ねたときに下側の箱に入っている容器が座屈変形してしまう場合があることが分かった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、外層に擦り傷が形成されにくく且つ座屈変形が抑制されるプラスチック容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、最外層とリプロ層を備えるプラスチック容器であって、前記リプロ層は、前記最外層よりも前記プラスチック容器の内側に配置され、前記最外層は、低密度ポリエチレンを含み、前記リプロ層は、再生樹脂とバージン樹脂で構成される混合樹脂で構成され、前記再生樹脂は、前記容器の成形時に発生するスクラップを再生して得られる樹脂であり、前記バージン樹脂は、ポリプロピレン系ポリマーと、直鎖状低密度ポリエチレンを含む、プラスチック容器が提供される。
【0008】
本発明者が鋭意検討を行ったところ、リプロ層を構成する混合樹脂中のバージン樹脂がPP系ポリマーと直鎖状低密度ポリエチレン(以下「LLDPE」)を含む場合に座屈変形が特に特性されることを見出した。そして、この知見に基づき、LDPEを含む樹脂で外層を構成し、上記混合樹脂でリプロ層を構成することによって、外層に擦り傷が形成されにくく且つ座屈変形が抑制されるプラスチック容器が得られることを見出し、本発明の完成に到った。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記記載のプラスチック容器であって、前記混合樹脂は、前記再生樹脂を15~50質量%と、前記バージン樹脂50~85質量%含む、プラスチック容器である。
好ましくは、前記記載のプラスチック容器であって、前記バージン樹脂は、前記ポリプロピレン系ポリマーを50~90質量%、前記直鎖状低密度ポリエチレンを10~50質量%含む、プラスチック容器である。
好ましくは、前記記載のプラスチック容器であって、前記バージン樹脂中の(前記直鎖状低密度ポリエチレン/前記ポリプロピレン系ポリマー)の質量比は、0.3~0.6である、プラスチック容器である。
好ましくは、前記記載のプラスチック容器であって、前記リプロ層よりも前記プラスチック容器の内側に配置された最内層を備え、前記最内層は、低密度ポリエチレンを含む、プラスチック容器である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】プラスチック容器1とキャップ13を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0012】
1.プラスチック容器の構成
【0013】
図1は、本発明の一実施形態のプラスチック容器1の概略図を示す。
図1に示すように、容器1は、内容物を収容する容器である。この容器は、容器1を傾けて内容物の自重によって内容物を吐出することが想定されている。内容物としては、ドレッシングなどのような液状物質が例示される。
【0014】
容器1は、係合部11及びサポートリング14が形成された口部12から内容物を吐出するものである。口部12にはキャップ13が装着される。キャップ13は、一例では、打栓式であり、係合部11に係合される係合部15を有する。キャップ13は、一例では、サポートリング14を支持した状態で、キャップ13を口部12に被せた状態でキャップ13を容器1に向かって押し付けて、係合部15を係合部11に係合させることによって装着することができる。キャップ13が打栓式である場合には、キャップ13の装着時に容器1に大きな荷重が加わって容器1が座屈変形しやすい。従って、キャップ13が打栓式である場合に本発明を採用する技術的意義が特に顕著である。容器1は、ブロー成形によって形成されたブロー成形体である。ブロー成形の詳細は後述する。
【0015】
容器1の高さ方向の中央での肉厚は、例えば、0.5~2mmであり、0.7~1.5mmが好ましい。容器1は、容器1を傾けて内容物の自重によって内容物を吐出することが想定されているので、スクイズ式の容器に比べて肉厚が厚くすることが好ましい。この肉厚は、具体的には例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0016】
容器1の容量は、例えば300~2000mLであり、500~1500mLが好ましく、700~1200mLが好ましい。容量が大きいほど、容器1が座屈変形しやすいので、容量が大きい場合に、本発明を採用する技術的意義が特に顕著である。この容量は、具体的には例えば、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、2000mLであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0017】
容器1の引張弾性率は、例えば600~1000MPaであり、具体的には例えば、600、650、700、750、800、850、900、950、1000MPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0018】
容器1は、多層構成を有する。
図2は、容器1の層構成の一例であり、容器1の内面側から順に、最内層2と、リプロ層3と、接着樹脂層4と、バリア層5と、接着樹脂層6と、最外層7を備える。リプロ層3は、最外層7よりも容器1の内側に配置される。最内層2は、リプロ層3よりも容器1の内側に配置される。容器1の層構成は、これらの層のうちの少なくとも1つを省いたものであってもよく、さらに別の層を備えるものであってもよい。
【0019】
容器1の全体の厚さを100%とすると、各層の厚さの比率は、例えば、以下の通りである。各層の比率は、下記括弧内に列挙した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
最内層2:3~30%(3、5、10、15、20、25、30%)
リプロ層3:50~90%(50、55、60、65、70、75、80、85、90%)
接着樹脂層4:0.3~5%(0.3、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0%)
バリア層5:1~8%(1、2、3、4、5、6、7、8%)
接着樹脂層6:0.3~5%(0.3、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0%)
最外層7:3~30%(3、5、10、15、20、25、30%)
【0020】
以下、各層について説明する。
【0021】
(最内層2)
最内層2は、内容物と接する層であり、熱可塑性樹脂で構成される。熱可塑性樹脂は、ポリオレフィンであることが好ましい。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン(以下、「PE」)やPPを使用することが好ましく、PEを使用することが特に好ましい。PEとしては、透明性等を考慮し、LDPEやLLDPEを使用することが好ましく、LDPEを使用することが好ましい。熱可塑性樹脂中のLDPEの割合は、例えば、50~100質量%であり、80~100質量%が好ましい。この割合は、具体的には例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0022】
なお、本明細書において、LDPEは、100~400MPaの高圧下でラジカル重合されるポリエチレンである。LDPEは、「高圧法ポリエチレン」と称することもできる。LDPEは、比重が0.910~0.935であることが好ましく、0.920~0.925であることがより好ましい。この比重は、具体的には例えば、0.910、0.915、0.920、0.925、0.930、0.935であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0023】
本明細書において、LLDPEは、チーグラー触媒やメタロセン触媒などの遷移金属触媒を用いて、エチレンとα-オレフィンが重合されるポリエチレンである。LLDPEは、直鎖構造を有しており、「リニアポリエチレン」と称することもできる。α-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチルペンテン、1-オクテンなどが挙げられる。LLDPEは、比重が0.900~0.940であることが好ましく、0.905~0.930であることがより好ましい。この比重は、具体的には例えば、0.900、0.905、0.910、0.915、0.920、0.925、0.930、0.935であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0024】
(最外層7)
最外層7は、容器の最も外側に配置される層であり、熱可塑性樹脂で構成される。熱可塑性樹脂の説明は、最内層2と同様であり、LDPEが好ましく、LDPEの割合の説明は、最内層2と同様である。最外層7がLDPEを含むことによって、梱包や輸送時に容器1に擦り傷が発生することが抑制される。
【0025】
(リプロ層3)
リプロ層3は、最内層2と最外層7の間に配置される。リプロ層3は、再生樹脂とバージン樹脂で構成される混合樹脂で構成される。混合樹脂全体を100質量%とすると、混合樹脂は、再生樹脂を15~50質量%(15、20、25、30、35、40、45、50質量%)と、バージン樹脂50~85質量%(50、55、60、65、70、75、80、85質量%)含むことが好ましい。このような配合の場合に、容器1の座屈変形が特に抑制されやすい。再生樹脂及びバージン樹脂の割合は、括弧内に例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0026】
再生樹脂は、容器1の成形時に発生するスクラップを再生して得られる樹脂である。スクラップには、容器1の全層が含まれているので、再生樹脂は、容器1の全層のそれぞれを構成する樹脂組成物を混合したものとなる。
【0027】
バージン樹脂は、再生樹脂ではない新品の樹脂であり、PP系ポリマーとLLDPEを含む。PP系ポリマーは、プロピレンに由来する単量体単位を含む重合体である。PP系ポリマーは、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体、又はこれらの組み合わせを含む混合物であってもよい。PP系ポリマーにおける、プロピレンに由来する単量体単位の割合は、PP系ポリマーの質量を基準として、例えば85質量%以上、又は90質量%以上であってもよい。
【0028】
PP系ポリマーを構成するプロピレン以外のオレフィンとしては、例えば、エチレン、及びα-オレフィンが挙げられる。α-オレフィンの炭素数は4~8であってもよく、その具体例としては、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、及び1-オクテンが挙げられる。
【0029】
PP系ポリマーの具体例は、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-1-ペンテンランダム共重合体、プロピレン-1-ヘキセンランダム共重合体、プロピレン-1-オクテンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-1-ペンテンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセンランダム共重合体、及びプロピレン-エチレンブロック共重合体を含む。PP系ポリマーは、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体、及びプロピレン-1-ブテンランダム共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体であってもよい。
【0030】
PP系ポリマーがプロピレン-エチレンランダム共重合体である場合、エチレンに由来する単量体の含有量は、1質量%~10質量%であってもよく、2質量~7質量%であってもよい。これらの含有量は、共重合体の質量を基準として計算される。
【0031】
バージン樹脂全体を100質量%とすると、バージン樹脂は、PP系ポリマーを50~90質量%(50、55、60、65、70、75、80、85、90質量%)、LLDPEを10~50質量%(10、15、20、25、30、35、40、45、50質量%)含むことが好ましい。このような配合の場合に、容器1の座屈変形が特に抑制されやすい。PP系ポリマー及びLLDPEの割合は、上記括弧内に例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0032】
バージン樹脂中の(LLDPE/PP系ポリマー)の質量比は、0.3~0.6であることが好ましい。この質量比は、具体的には例えば、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0033】
容器1がエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH:エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物等を指す。)を含む層を備える場合、バージン樹脂は、EVOHとPP系ポリマーの相溶性を高める回収助剤(相溶化剤)を含むことが好ましい。回収助剤としては、酸変性ポリオレフィンなどが挙げられる。バージン樹脂中の回収助剤の割合は、例えば0.5~10質量%であり、1~5質量%が好ましい。この割合は、具体的には例えば、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0034】
混合樹脂全体を100質量%とすると、混合樹脂は、LDPEを3~20質量%(3、5、10、15、20質量%)、PP系ポリマーを45~90質量%(45、50、55、60、65、70、75、80、85、90質量%)、LLDPEを5~40質量%(5、10、15、20、25、30、35、40質量%)含むことが好ましい。LDPEは、再生樹脂に由来することが好ましい。各成分の割合は、上記括弧内に例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0035】
(バリア層5)
バリア層5は、ガスバリア性が高い樹脂で構成される。このような樹脂としては、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH:エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物等を指す。)や芳香族ポリアミド等が挙げられる。バリア層5を設けることによって、酸素透過による内容物の酸化劣化を有効に抑制することができる。
【0036】
(接着樹脂層4,6)
接着樹脂層4,6は、接着性樹脂で構成される。接着性樹脂としては、酸変性ポリオレフィン(例:無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン)等が挙げられる。接着樹脂層4は、酸変性ポリプロピレンが好ましい。リプロ層3はPP系ポリマーの割合が高いので、酸変性ポリプロピレンを用いることによって、リプロ層3とバリア層5の接着性を高めることができる。接着樹脂層4,6を設けることによってバリア層5と、最外層7又はリプロ層3との接着性が向上する。接着樹脂層4,6を設ける代わりに、バリア層5に接着性樹脂を配合してもよい。
【0037】
2.プラスチック容器の製造方法
容器1は、パリソンのブロー成形によって形成することができる。ブロー成形は、ダイレクトブロー成形であってもよく、インジェクションブロー成形であってもよい。ダイレクトブロー成形では、押出機から押し出された溶融状態の筒状パリソンを一対の分割金型で挟んでパリソン内部にエアーを吹き込むことによって容器1を製造する。インジェクションブロー成形では、プリフォームと呼ばれる試験管状の有底パリソンを射出成形によって形成し、このパリソンを用いてブロー成形を行う。
【0038】
何れのブロー成形においても、パリソンの層構成は、容器1の層構成と同様である。多層のパリソンは、共押出成形や多層射出成形等によって形成可能である。
【0039】
ダイレクトブロー成形で容器1を形成する場合、筒状パリソンのうち、一対の分割金型によって形成されるキャビティ内の部位が容器1となり、容器1以外の部位がスクラップとなる。このスクラップには、容器1を構成する全ての層の構成材料が含まれている。このスクラップに対して粉砕等の再生処理を施すことによって再生樹脂が得られる。
【実施例】
【0040】
1.容器1の製造
図1に示す形状と
図2に示す層構成を有する容器1(容量1000mL)を製造した。容器1は、各層を構成する樹脂を共押出成形により多層ダイヘッドから押し出すことによって筒状パリソンを形成し、筒状パリソンをブロー成形することによって製造した。容器1の高さ方向中央での肉厚は、1mmとした。最外層7/接着樹脂層(無水マレイン酸変性ポリプロピレン)6/バリア層(EVOH)5/接着樹脂層(無水マレイン酸変性ポリプロピレン)4/リプロ層3/最内層(LDPE)2の厚さ比は、順に、8.1/2.0/3.0/2.0/68.9/16.0とした。
【0041】
最外層7は、比較例2ではPPとし、それ以外の実施例・比較例ではLDPEとした。
【0042】
リプロ層3を構成する混合樹脂の組成は、再生樹脂(27質量%)、バージン樹脂(70質量%)、回収助剤(三菱ケミカル ソアレジン RG500)(3質量%)のものを用いた。
【0043】
再生樹脂としては、容器1の成形時に発生するスクラップを粉砕及び洗浄して得られる樹脂を用いた。
【0044】
バージン樹脂としては、PP系ポリマー(プロピレン-エチレンランダム共重合体)とLLDPEを表1に示す割合で混合したものを用いた。
【0045】
【0046】
2.評価
以下に示す方法に従って、引張弾性率の測定、外観試験、座屈変形試験を行った。その結果を表1に示す。表1に示す通り、全ての実施例の容器1は、外層に擦り傷が形成されにくく且つ座屈変形しにくいことが分かった。
【0047】
<引張弾性率の測定>
容器1の胴部から切り出した試験片を用いて、引張試験(条件:JIS K 7113 2号型、チャック間60mm、試験速度50mm/min)を行い、引張弾性率を求めた。
【0048】
<梱包・輸送試験>
容器1に1000mLのドレッシングを85℃で充填したものを専用段ボールに6本入れ、5段積み重ねた状態でトラックに載せて1000km輸送した後に、最下段のダンボールに入っている容器の外観を観察し、耐擦り傷性及び耐座屈変形性を以下の基準で評価した。
【0049】
・耐擦り傷性
○:全ての容器に擦り傷なし
×:1本以上の容器に擦り傷あり
【0050】
・耐座屈変形性
◎:座屈変形した容器の数が0本
○:座屈変形した容器の数が1本
△:座屈変形した容器の数が2本
×:座屈変形した容器の数が3本以上
【符号の説明】
【0051】
1 :プラスチック容器
2 :最内層
3 :リプロ層
4 :接着樹脂層
5 :バリア層
6 :接着樹脂層
7 :最外層
11 :係合部
12 :口部
13 :キャップ
14 :サポートリング
15 :係合部