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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
H02K1/18 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020163042
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022055556
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥山 祥孝
(72)【発明者】
【氏名】清水 峻介
(72)【発明者】
【氏名】平野 正樹
(72)【発明者】
【氏名】日比野 寛
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-002742(JP,U)
【文献】実開昭61-195738(JP,U)
【文献】実開昭58-090041(JP,U)
【文献】国際公開第2016/076321(WO,A1)
【文献】特開2003-115414(JP,A)
【文献】特表昭59-500538(JP,A)
【文献】特開平05-055048(JP,A)
【文献】特開2020-039249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鋼板を積層した積層体(17)から構成される固定子コア(13)と、前記固定子コア(13)が内側に嵌合されるケーシング(14)とを備えたモータ(10)であって、
前記固定子コア(13)は、略円筒状のバックヨーク部(11)と、前記バックヨーク部(11)から径方向内側に突出した複数のティース部(12)とを含み、
前記バックヨーク部(11)を軸方向の両側から加圧する鋼板締結部材(30)をさらに備え、
前記鋼板締結部材(30)は、
前記バックヨーク部(11)の軸方向の両面上にそれぞれ配置された加圧部(31,32)と、
前記バックヨーク部(11)の外周側及び内周側のうちの少なくとも一方を経由して前記加圧部(31,32)同士を接続する接続部(33,34)とを有し、
前記鋼板締結部材(30)は、前記バックヨーク部の外周側及び内周側の両方にそれぞれ前記接続部(33,34)を有し、
前記加圧部(31,32)及び前記接続部(33,34)は、電気的に開回路を構成することを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1のモータにおいて、
前記固定子コア(13)と前記ケーシング(14)とは接触し、
前記鋼板締結部材(30)と前記ケーシング(14)とは接触しないことを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項1のモータにおいて、
前記固定子コア(13)と前記ケーシング(14)とは接触しておらず、
前記鋼板締結部材(30)と前記ケーシング(14)とは接触することを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項において、
前記積層体(17)は、前記鋼板締結部材(30)から印加される圧力のみによって締結されることを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1つのモータにおいて、
前記接続部(33,34)の弾性率は、前記加圧部(31,32)の弾性率よりも大きいことを特徴とするモータ。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1つのモータにおいて、
前記バックヨーク部(11)及び前記鋼板締結部材(30)の少なくとも一方は、径方向に段差を生じる凹凸部(61,62,63,64,65)を有し、
前記凹凸部(61,62,63,64,65)の周方向両側で前記バックヨーク部(11)と前記鋼板締結部材(30)とが対向することを特徴とするモータ。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1つのモータにおいて、
前記バックヨーク部(11)の外周側及び内周側のうち少なくとも一方と前記鋼板締結部材(30)との間に絶縁部材(81,82)が設けられることを特徴とするモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
エアコンや冷蔵庫等の駆動源として、モータが使用されている。モータは、主として、回転子(ロータ)と、固定子(ステータ)と、回転子及び固定子を収納するケーシングとを備える。回転子及び固定子は、所定形状を鋼板を複数枚積層した積層体を締結することによって形成される。回転子用の積層体にはシャフトが取り付けられる。固定子用の積層体には巻線が施される。
【0003】
従来、積層体において上下に隣り合う鋼板同士を締結する手段として、カシメやボルト締めが用いられてきた。しかし、積層体に対してカシメやボルト締めを行うと、局所的に応力がかかることに起因して、積層体の磁気特性が悪化し、磁気回路としての損失が増えてしまう。
【0004】
それに対して、例えば特許文献1には、固定子となる積層体に巻線を巻き回す前に、積層体を締結する部材を設け、その後、巻線巻回終了後に当該部材を取り外し、巻線によって積層体を締結・保持することが開示されている。特許文献1の方法では、積層体に対してカシメ等を行わないので、前述の損失の増大を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5357187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、積層体を締結する部材を巻線巻回終了後に取り外すため、積層体の締結力が低下する。このため、例えば積層体を構成する鋼板の径方向公差が大きいような場合、積層体の締まり嵌め(圧入、焼き嵌め等)による径方向応力で鋼板ずれが生じる。その結果、積層体を被覆する絶縁部材や巻線等が損傷して信頼性が低下する恐れがある。
【0007】
また、特許文献1の方法は、巻線によって積層体を締結・保持するものであるため、ノズル巻きのモータには適用できるが、ボビン巻きのモータには適用できない。さらに、ノズル巻きのモータに適用する場合にも、巻線巻回時に積層体の締結・保持のために過大なトルクが必要となる。
【0008】
本開示の目的は、モータの固定子となる積層体の磁気特性を悪化させることなく当該積層体の締結力を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様は、複数の鋼板を積層した積層体(17)から構成される固定子コア(13)と、前記固定子コア(13)が内側に嵌合されるケーシング(14)とを備えたモータ(10)である。前記固定子コア(13)は、略円筒状のバックヨーク部(11)と、前記バックヨーク部(11)から径方向内側に突出した複数のティース部(12)とを含む。前記モータ(10)は、前記バックヨーク部(11)を軸方向の両側から加圧する鋼板締結部材(20,30)をさらに備える。前記鋼板締結部材(20,30)は、前記バックヨーク部(11)の軸方向の両面上にそれぞれ配置された加圧部(21,22,31,32)と、前記バックヨーク部(11)の外周側及び内周側の少なくとも一方を経由して前記加圧部(21,22,31,32)同士を接続する接続部(23,33,34)とを有する。
【0010】
第1の態様では、固定子コア(13)を構成する積層体(17)に対して、鋼板締結部材(20,30)によってバックヨーク部(11)の軸方向の両側から加圧を行う。このため、積層体(17)の締結力を向上させることができる。また、カシメやボルト締め等を用いた場合と比べて、局所的な応力を低減して積層体(17)の磁気特性の悪化を抑制できる。
【0011】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、前記固定子コア(13)と前記ケーシング(14)とは接触し、前記鋼板締結部材(20,30)と前記ケーシング(14)とは接触していない。
【0012】
第2の態様では、鋼板締結部材(20,30)とケーシング(14)とが接触しないので、締まり嵌め時の応力等を考慮せずに、鋼板締結部材(20,30)をデザインできる。
【0013】
本開示の第3の態様は、第1の態様において、前記固定子コア(13)と前記ケーシング(14)とは接触しておらず、前記鋼板締結部材(20,30)と前記ケーシング(14)とは接触する。
【0014】
第3の態様では、固定子コア(13)とケーシング(14)とが接触しないので、積層体(17)を構成する鋼板の径方向公差が大きい場合にも、積層体(17)の締まり嵌めを確実に行うことができる。また、鋼板締結部材(20,30)がケーシング(14)によって保持されるため、鋼板締結部材(20,30)の脱落がより一層抑制される。
【0015】
本開示の第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、前記積層体(17)は、前記鋼板締結部材(20,30)から印加される圧力のみによって締結される。
【0016】
第4の態様では、固定子コア(13)の全体に亘って、カシメやボルト締め等を用いない構成とすることができる。
【0017】
本開示の第5の態様は、第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、前記鋼板締結部材(20)は、前記バックヨーク部(11)の外周側又は内周側の一方のみに前記接続部(23)を有する。
【0018】
第5の態様では、バックヨーク部(11)における鋼板締結部材(20)の配置場所に対する制約が少なくなる。
【0019】
本開示の第6の態様は、第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、前記鋼板締結部材(30)は、前記バックヨーク部の外周側及び内周側の両方にそれぞれ前記接続部(33,34)を有し、前記加圧部(31,32)及び前記接続部(33,34)は電気的に開回路を構成する。
【0020】
第6の態様では、鋼板締結部材(30)に起因する渦電流の発生を抑制しつつ、脱落し難い鋼板締結部材(30)を構成できる。
【0021】
本開示の第7の態様は、第1~第6の態様のいずれか1つにおいて、前記接続部(23,33,34)の弾性率は、前記加圧部(21,22,31,32)の弾性率よりも大きい。
【0022】
第7の態様では、接続部(23,33,34)の弾性によって、加圧部(21,22,31,32)を通じてバックヨーク部(11)の軸方向の両側から加圧を行うことが可能となる。
【0023】
本開示の第8の態様は、第1~第7の態様のいずれか1つにおいて、前記バックヨーク部(11)及び前記鋼板締結部材(20,30)の少なくとも一方は、径方向に段差を生じる凹凸部(61,62,63,64,65)を有し、前記凹凸部(61,62,63,64,65)の周方向両側で前記バックヨーク部(11)と前記鋼板締結部材(20,30)とが対向する。
【0024】
第8の態様では、凹凸部(61,62,63,64)によって鋼板締結部材(20,30)に対するバックヨーク部(11)の周方向変位が抑制される。従って、固定子コア(13)を構成する積層体(17)が周方向(時計回り方向及び反時計回り方向の両方)にずれることを抑制できる。
【0025】
本開示の第9の態様は、第1~第8の態様のいずれか1つにおいて、前記バックヨーク部(11)の外周側及び内周側のうち少なくとも一方と前記鋼板締結部材(20,30)との間に絶縁部材(81,82)が設けられる。
【0026】
第9の態様では、バックヨーク部(11)の外周側又は内周側と鋼板締結部材(20,30)との間の絶縁を確保できるので、磁束透過時に固定子コア(13)に渦電流が発生して損失が増大することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、実施形態に係るモータの断面構成の一例を示す模式図である。
図2図2は、図1に示すモータのバックヨーク部に鋼板締結部材が設けられた様子の一例を示す図である。
図3図3は、図2に示す鋼板締結部材の構成の一例を示す図である。
図4図4は、図2に示す鋼板締結部材の構成の一例を示す図である。
図5図5は、図2に示す鋼板締結部材の脱落防止構造の一例を示す図である。
図6図6は、図2に示す鋼板締結部材の弾性構造の一例を示す図である。
図7図7は、図3に示す鋼板締結部材のバックヨーク部への設置方法の一例を示す図である。
図8図8は、図3に示す鋼板締結部材のバックヨーク部への設置方法の一例を示す図である。
図9図9は、図4に示す鋼板締結部材のバックヨーク部への設置方法の一例を示す図である。
図10図10は、図1に示すモータのバックヨーク部に鋼板締結部材が設けられた様子の一例を示す図である。
図11図11は、図10に示す鋼板締結部材の構成の一例を示す図である。
図12図12は、図10に示す鋼板締結部材の構成の一例を示す図である。
図13図13は、図10に示す鋼板締結部材の構成の一例を示す図である。
図14図14は、図10に示す鋼板締結部材の構成の一例を示す図である。
図15図15は、図10に示す鋼板締結部材の構成の一例を示す図である。
図16図16は、図10に示す鋼板締結部材の構成の一例を示す図である。
図17図17は、図10に示す鋼板締結部材の構成の一例を示す図である。
図18図18は、図10に示す鋼板締結部材の構成の一例を示す図である。
図19図19は、図15に示す鋼板締結部材のバックヨーク部への設置方法の一例を示す図である。
図20図20は、図15に示す鋼板締結部材のバックヨーク部への設置方法の一例を示す図である。
図21図21は、図3に示す鋼板締結部材とケーシングとの配置関係の一例を示す図である。
図22図22は、図3に示す鋼板締結部材による積層体の周方向のずれを抑制する構成の一例を示す図である。
図23図23は、図3に示す鋼板締結部材による積層体の周方向のずれを抑制する構成の一例を示す図である。
図24図24は、図3に示す鋼板締結部材における軸方向の応力に対する補強構造の一例を示す図である。
図25図25は、図1に示すモータのバックヨーク部に鋼板締結部材が設けられた様子の一例を示す図である。
図26図26は、図25に示す鋼板締結部材に起因して固定子コアに渦電流が発生することを抑制する構成の一例を示す図である。
図27図27は、図11図14に示す鋼板締結部材に起因して固定子コアに渦電流が発生することを抑制する構成の一例を示す図である。
図28図28は、図15に示す鋼板締結部材に起因して固定子コアに渦電流が発生することを抑制する構成の一例を示す図である。
図29図29は、図16に示す鋼板締結部材に起因して固定子コアに渦電流が発生することを抑制する構成の一例を示す図である。
図30図30は、図17に示す鋼板締結部材に起因して固定子コアに渦電流が発生することを抑制する構成の一例を示す図である。
図31図31は、図18に示す鋼板締結部材に起因して固定子コアに渦電流が発生することを抑制する構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0029】
《実施形態》
〈全体構成〉
図1に示すように、モータ(10)は、固定子コア(13)と、当該固定子コア(13)が内側に嵌合されるケーシング(14)とを備える。固定子コア(13)は、所定形状を持つ鋼板を複数枚積層した積層体(17)(図3参照)を締結することによって形成される。固定子コア(13)は、略円筒状のバックヨーク部(11)と、当該バックヨーク部(11)から径方向内側に突出した複数(例えば6個)のティース部(12)とを含む。各ティース部(12)に巻線が巻回されることによってコイル(15)が構成される。コイル(15)は、隣り合うティース部(12)同士の間のスロット空間を占有する。ケーシング(14)は、例えばパイプから構成される。
【0030】
図示は省略しているが、固定子コア(13)とコイル(15)とは、インシュレータにより絶縁される。固定子コア(13)の内径側には、固定子コア(13)と同軸のロータ(16)が設けられる。すなわち、図1に示すモータ(10)は、インナーロータ型である。
【0031】
尚、本開示において、「略円筒状」とは、概ね円筒形と認識される形状を意味し、数学的に厳密な「円筒」であることまでは必須としない。例えば外周に凹凸を有するような場合も「略円筒状」である。凹凸は、例えば加工精度、加工方法等に起因して生じるものであってもよいし、意図的に形成されたものであってもよい。
【0032】
また、本開示において、バックヨーク部(11)の軸方向、径方向、周方向をそれぞれ、単に軸方向、径方向、周方向と称することもある。
【0033】
〈鋼板締結部材(三面型)〉
図2に示すように、モータ(10)は、バックヨーク部(11)を軸方向の両側から加圧する鋼板締結部材(20)をさらに備える。バックヨーク部(11)を構成する積層体(17)は、鋼板締結部材(20)から印加される圧力のみによって締結されてもよい。
【0034】
鋼板締結部材(20)は、例えば鉄、ステンレス、アルミニウム、樹脂(PPS樹脂、PA樹脂等)などから構成される。鋼板締結部材(20)は、例えばバックヨーク部(11)におけるティース部(12)と接続された部分の外周側領域(第1領域R1)に複数(例えば3個)配置される。鋼板締結部材(20)の配置数は、特に限定されないが、締結力を向上させるために3個以上の鋼板締結部材(20)を均等な間隔で配置してもよい。バックヨーク部(11)における鋼板締結部材(20)の配置箇所は、特に限定されないが、第1領域R1の他、バックヨーク部(11)におけるスロット空間と対面する部分の外周側領域(第2領域R2)、又は当該部分の内周側領域(第3領域R3)にも鋼板締結部材(20)を配置可能である。
【0035】
図3及び図4は、バックヨーク部(11)の第2領域R2に形成された鋼板締結部材(20)の詳細構成を示す。図3及び図4において、(A)は、鋼板締結部材(20)をバックヨーク部(11)の軸方向上側から見た様子を示し、(B)は、鋼板締結部材(20)をバックヨーク部(11)の外周側から見た様子を示し、(C)は、鋼板締結部材(20)をバックヨーク部(11)の周方向に垂直な断面で見た様子を示し、(D)は、鋼板締結部材(20)をバックヨーク部(11)の内周側から見た様子を示し、(E)は、鋼板締結部材(20)をバックヨーク部(11)の軸方向下側から見た様子を示す。
【0036】
図3及び図4に示すように、鋼板締結部材(20)は、バックヨーク部(11)の軸方向の両面上にそれぞれ配置された一対の加圧部(21,22)と、バックヨーク部(11)の外周側を経由して一対の加圧部(21,22)を接続する接続部(23)とを有する。すなわち、図3及び図4に示す鋼板締結部材(20)は、バックヨーク部(11)の三面(上面(11a)、下面(11b)、外周面(11c))に設けられる三面型鋼板締結部材(20)である。
【0037】
図3及び図4に示すいずれの鋼板締結部材(20)でも、一対の加圧部(21,22)のうち上側加圧部(21)は、バックヨーク部(11)の上面(11a)の外周側と接する平板形状を有し、一対の加圧部(21,22)のうち下側加圧部(22)は、バックヨーク部(11)の下面(11b)の外周側と接する平板形状を有する。バックヨーク部(11)の内周面(11d)には、鋼板締結部材(20)は配置されない。
【0038】
図3に示すU字型の鋼板締結部材(20)では、接続部(23)は、バックヨーク部(11)の外周面(11c)と接する平板形状を有する。図3に示すU字型の鋼板締結部材(20)は、主に、バックヨーク部(11)を構成する積層体(17)のスプリングバックによって当該積層体(17)を締結する。
【0039】
図4に示すΣ型の鋼板締結部材(20)では、接続部(23)は、軸方向に弾性力を生じる形状、例えば1つ以上の屈曲を有する形状を有する。図4に示すΣ型の鋼板締結部材(20)は、主に、接続部(23)の弾性力によって、バックヨーク部(11)を構成する積層体(17)を締結する。
【0040】
尚、図4に示すΣ型の鋼板締結部材(20)では、接続部(23)の弾性率は、一対の加圧部(21,22)の弾性率よりも大きくてもよい。また、接続部(23)は、バックヨーク部(11)の外周面(11c)と接してもよいし、或いは、接しなくてもよい。
【0041】
<鋼板締結部材の脱落防止構造>
図5は、鋼板締結部材(20)の脱落防止構造の一例を示す図である。図5において、図3に示す構成と同じ要素には同じ符号を付す。尚、図5の(A)~(C)に示す脱落防止構造は、図3に示すU字型の鋼板締結部材(20)への適用を例としているが、同様の脱落防止構造は、図4に示すΣ型の鋼板締結部材(20)へも適用可能である。
【0042】
図5(A)に示すように、ケーシング(14)の内壁面に沿って、鋼板締結部材(20)の接続部(23)を配置することによって、鋼板締結部材(20)の脱落防止を図ってもよい。ケーシング(14)と接続部(23)との間には、鋼板締結部材(20)が径方向や周方向に変位しても鋼板締結部材(20)が脱落しない程度の隙間があってもよい。或いは、ケーシング(14)と接続部(23)とを接触させ、ケーシング(14)から鋼板締結部材(20)に対して径方向や周方向に応力が加わるように構成してもよい。これにより、より確実に鋼板締結部材(20)の脱落を防止できる。
【0043】
尚、図2に示す第3領域R3(バックヨーク部(11)におけるスロット空間と対面する部分の内周側領域)に鋼板締結部材(20)を設ける場合、図1に示すコイル(15)の外周面に沿って、鋼板締結部材(20)の接続部(23)を配置することによって、図5(A)に示す構成と同様の効果を得ることができる。
【0044】
或いは、図5(B)に示すように、一対の加圧部(21,22)のそれぞれの端部に、バックヨーク部(11)側に延びる凸部(21a,22a)を形成し、当該凸部(21a,22a)を、バックヨーク部(11)の上面(11a)及び下面(11b)に設けた凹部に嵌め合わせてもよい。これにより、鋼板締結部材(20)の脱落防止を図ることができる。
【0045】
或いは、図5(C)に示すように、一対の加圧部(21,22)をそれぞれバックヨーク部(11)の内周側まで延長し、各加圧部(21,22)の端部に、バックヨーク部(11)の内周面(11d)の軸方向端部にひっかかる凸部(21b,22b)を形成してもよい。これにより、鋼板締結部材(20)の脱落防止を図ることができる。
【0046】
<鋼板締結部材の弾性構造>
図6は、鋼板締結部材(20)の弾性構造の一例を示す図である。図6において、図4に示す構成と同じ要素には同じ符号を付す。
【0047】
鋼板締結部材(20)の弾性力によって、積層体(17)を締結可能な構成としては、図4で説明したΣ型の鋼板締結部材(20)と同じく、接続部(23)が軸方向の弾性力を持つ図6(A)に示す構成の他、例えば、図6(B)、(C)に示す構成がある。
【0048】
図6(B)に示す構成では、接続部(23)の軸方向両端部をそれぞれ、バックヨーク部(11)の上面(11a)及び下面(11b)から突き出るように延長し、接続部(23)の軸方向両端部と、一対の加圧部(21,22)のそれぞれとを接続する。これによって、一対の加圧部(21,22)に軸方向の弾性力を付与することができる。
【0049】
また、図6(C)に示す構成では、図6(B)に示す構成と同様な構成において接続部(23)に曲げ等の加工を行うことによって、鋼板締結部材(20)の全体に軸方向の弾性特性を付与することができる。
【0050】
<鋼板締結部材(三面型)の設置方法>
図3に示す鋼板締結部材(20)のバックヨーク部(11)への設置方法の第1例は、図7に示す通りである。尚、図7において、図3に示す構成と同じ要素には同じ符号を付す。
【0051】
まず、図7(A)に示すように、所定形状を持つ鋼板を複数枚積層した積層体(17)を形成する。次に、図7(B)に示すように、積層体(17)に対して軸方向の両側から加圧を行う。最後に、図7(C)に示すように、積層体(17)に対する軸方向の加圧を継続した状態で、予め準備した鋼板締結部材(20)をバックヨーク部(11)の外周側からバックヨーク部(11)に嵌め合わせる。
【0052】
図3に示す鋼板締結部材(20)のバックヨーク部(11)への設置方法の第2例は、図8に示す通りである。尚、図8において、図3に示す構成と同じ要素には同じ符号を付す。
【0053】
まず、図8(A)に示すように、所定形状を持つ鋼板を複数枚積層した積層体(17)を形成する。その後、バックヨーク部(11)の下面(11b)の外周側に鋼板締結部材(20)の下側加圧部(22)を接触させ、バックヨーク部(11)の外周面(11c)に鋼板締結部材(20)の接続部(23)を接触させる。このとき、鋼板締結部材(20)の上側加圧部(21)は、接続部(23)に対して折り曲げられていない。言い換えると、上側加圧部(21)は、接続部(23)と共に軸方向に延びる。次に、図8(B)に示すように、積層体(17)に対して軸方向の両側から加圧を行う。最後に、図8(C)に示すように、積層体(17)に対する軸方向の加圧を継続した状態で、鋼板締結部材(20)の上側加圧部(21)を、バックヨーク部(11)の上面(11a)の外周側と接するように折り曲げる。
【0054】
図4に示す鋼板締結部材(20)のバックヨーク部(11)への設置方法の一例は、図9に示す通りである。尚、図9において、図4に示す構成と同じ要素には同じ符号を付す。
【0055】
まず、図9(A)に示すように、所定形状を持つ鋼板を複数枚積層した積層体(17)を形成する。次に、図9(B)に示すように、予め準備した鋼板締結部材(20)の上側加圧部(21)及び下側加圧部(22)を互いに離れる方向に押し広げる。次に、図9(C)に示すように、上側加圧部(21)及び下側加圧部(22)を押し広げた状態で、鋼板締結部材(20)をバックヨーク部(11)の外周側からバックヨーク部(11)に嵌め合わせる。このとき、積層体(17)に対して軸方向の両側から加圧を行ってもよい。最後に、図9(D)に示すように、上側加圧部(21)及び下側加圧部(22)を押し広げた状態を元に戻し、上側加圧部(21)及び下側加圧部(22)をそれぞれ、バックヨーク部(11)の上面(11a)及び下面(11b)に接触させる。
【0056】
〈鋼板締結部材(四面型)〉
図2図9に示す鋼板締結部材(20)は、バックヨーク部(11)の三面(上面(11a)、下面(11b)、外周面(11c))に設けられた三面型の鋼板締結部材(20)であった。
【0057】
このような三面型鋼板締結部材(20)に代えて、図10に示すように、バックヨーク部(11)におけるスロット空間と対面する部分に、バックヨーク部(11)の四面(上面(11a)、下面(11b)、外周面(11c)、内周面(11d))に設けられた四面型の鋼板締結部材(30)を設けてもよい。図10において、図2に示す構成と同じ要素には同じ符号を付す。
【0058】
鋼板締結部材(30)は、鋼板締結部材(20)と同様に、バックヨーク部(11)を軸方向の両側から加圧する。バックヨーク部(11)を構成する積層体(17)は、鋼板締結部材(30)から印加される圧力のみによって締結されてもよい。鋼板締結部材(30)は、例えば鉄やステンレスなどから構成される。鋼板締結部材(30)の配置数は、特に限定されないが、締結力を向上させるために3個以上の鋼板締結部材(30)を均等な間隔で配置してもよい。
【0059】
図11図18は、バックヨーク部(11)に形成された鋼板締結部材(30)の詳細構成を示す。図11図18において、(A)は、鋼板締結部材(30)をバックヨーク部(11)の軸方向上側から見た様子を示し、(B)は、鋼板締結部材(30)をバックヨーク部(11)の外周側から見た様子を示し、(C)は、鋼板締結部材(30)をバックヨーク部(11)の周方向に垂直な断面で見た様子を示し、(D)は、鋼板締結部材(30)をバックヨーク部(11)の内周側から見た様子を示し、(E)は、鋼板締結部材(30)をバックヨーク部(11)の軸方向下側から見た様子を示す。
【0060】
図11図14に示す鋼板締結部材(30)は、バックヨーク部(11)の上面(11a)上に配置された上側加圧部(31A,31B)と、バックヨーク部(11)の下面(11b)上に配置された下側加圧部(32)と、バックヨーク部(11)の外周側を経由して第1上側加圧部(31A)と下側加圧部(32)とを接続する外側接続部(33)と、バックヨーク部(11)の内周側を経由して第2上側加圧部(31B)と下側加圧部(32)とを接続する内側接続部(34)とを有する。
【0061】
図11図14に示す四面型の鋼板締結部材(30)は、主に、バックヨーク部(11)を構成する積層体(17)のスプリングバックによって当該積層体(17)を締結する。
【0062】
図11図14に示すいずれの鋼板締結部材(30)でも、第1上側加圧部(31A)は、バックヨーク部(11)の上面(11a)と接する平板形状を有し、下側加圧部(32)は、バックヨーク部(11)の下面(11b)と接する平板形状を有し、外側接続部(33)は、バックヨーク部(11)の外周面(11c)と接する平板形状を有し、内側接続部(34)は、バックヨーク部(11)の内周面(11d)と接する平板形状を有する。
【0063】
また、図11図13に示す鋼板締結部材(30)では、第2上側加圧部(31B)は、バックヨーク部(11)の上面(11a)と接する平板形状を有する。一方、図14に示す鋼板締結部材(30)では、第2上側加圧部(31B)は、第1上側加圧部(31A)を被覆する絶縁部材(41)の上面と接する平板形状を有する。絶縁部材(41)は、例えば、絶縁紙であってもよいし、積層体(17)を構成する鋼板に施された表面コーティングであってもよいし、或いは、第1上側加圧部(31A)又は第2上側加圧部(31B)に施された表面コーティングであってもよい。
【0064】
以上に説明したように、図11図14に示す鋼板締結部材(30)の端部(第1上側加圧部(31A)及び第2上側加圧部(31B)の各端部)は、バックヨーク部(11)の上面(11a)上に位置するが、当該各端部が電気的に接触しないように構成される。これにより、鋼板締結部材(30)に起因する渦電流の発生を防止できる。具体的には、図11に示す鋼板締結部材(30)では、第1上側加圧部(31A)及び第2上側加圧部(31B)の各端部は、径方向に一定間隔で離隔する。図12に示す鋼板締結部材(30)では、第1上側加圧部(31A)及び第2上側加圧部(31B)の各端部は、周方向に対して傾斜した角度において一定間隔で離隔する。図13に示す鋼板締結部材(30)は、バックヨーク部(11)をらせん状に取り囲み、それにより、第1上側加圧部(31A)と第2上側加圧部(31B)とは、周方向に一定間隔で離隔する。図14に示す鋼板締結部材(30)では、第1上側加圧部(31A)と第2上側加圧部(31B)とは、絶縁部材(41)によって電気的に絶縁される。
【0065】
尚、図11図14に示す鋼板締結部材(30)では、鋼板締結部材(30)の端部をバックヨーク部(11)の上面(11a)上に位置させたが、これに代えて、鋼板締結部材(30)の端部をバックヨーク部(11)の下面(11b)上に位置させてもよい。言い換えると、第1上側加圧部(31A)及び第2上側加圧部(31B)に代えて、一体の上側加圧部を配置し、下側加圧部(32)に代えて、第1下側加圧部及び第2下側加圧部を配置してもよい。
【0066】
また、図11図14に示す鋼板締結部材(30)において、外側接続部(33)及び内側接続部(34)の少なくとも一方について、図6(A)~(C)に示すような弾性構造を適用することにより、バックヨーク部(11)を構成する積層体(17)を締結してもよい。
【0067】
一方、図15図18に示す鋼板締結部材(30)は、バックヨーク部(11)の上面(11a)上に配置された上側加圧部(31)と、バックヨーク部(11)の下面(11b)上に配置された下側加圧部(32)と、バックヨーク部(11)の外周側を経由して上側加圧部(31)と下側加圧部(32)とを接続する外側接続部(33)と、バックヨーク部(11)の内周面(11d)上に配置され且つ上側加圧部(31)と接続する第1内側接続部(35A)と、バックヨーク部(11)の内周面(11d)上に配置され且つ下側加圧部(32)と接続する第2内側接続部(35B)とを有する。
【0068】
図15図18に示す四面型の鋼板締結部材(30)は、主に、バックヨーク部(11)を構成する積層体(17)のスプリングバックによって当該積層体(17)を締結する。
【0069】
図15図18に示すいずれの鋼板締結部材(30)でも、上側加圧部(31)は、バックヨーク部(11)の上面(11a)と接する平板形状を有し、下側加圧部(32)は、バックヨーク部(11)の下面(11b)と接する平板形状を有し、外側接続部(33)は、バックヨーク部(11)の外周面(11c)と接する平板形状を有し、第1内側接続部(35A)は、バックヨーク部(11)の内周面(11d)と接する平板形状を有する。
【0070】
また、図15図17に示す鋼板締結部材(30)では、第2内側接続部(35B)は、バックヨーク部(11)の内周面(11d)と接する平板形状を有する。一方、図18に示す鋼板締結部材(30)では、第2内側接続部(35B)は、第1内側接続部(35A)を被覆する絶縁部材(42)の上面と接する平板形状を有する。絶縁部材(42)は、例えば、絶縁紙であってもよいし、空隙であってもよいし、或いは、第1内側接続部(35A)又は第2内側接続部(35B)に施された表面コーティングであってもよい。
【0071】
以上に説明したように、図15図18に示す鋼板締結部材(30)の端部(第1内側接続部(35A)及び第2内側接続部(35B)の各端部)は、バックヨーク部(11)の内周面(11d)上に位置するが、当該各端部が電気的に接触しないように構成される。これにより、鋼板締結部材(30)に起因する渦電流の発生を防止できる。具体的には、図15に示す鋼板締結部材(30)では、第1内側接続部(35A)及び第2内側接続部(35B)の各端部は、軸方向に一定間隔で離隔する。図16に示す鋼板締結部材(30)では、第1内側接続部(35A)及び第2内側接続部(35B)の各端部は、軸方向に対して傾斜した角度において一定間隔で離隔する。図17に示す鋼板締結部材(30)は、バックヨーク部(11)をらせん状に取り囲み、それにより、第1内側接続部(35A)と第2内側接続部(35B)とは、周方向に一定間隔で離隔する。図18に示す鋼板締結部材(30)では、第1内側接続部(35A)と第2内側接続部(35B)とは、絶縁部材(42)によって電気的に絶縁される。
【0072】
尚、図15図18に示す鋼板締結部材(30)では、鋼板締結部材(30)の端部をバックヨーク部(11)の内周面(11d)上に位置させたが、これに代えて、鋼板締結部材(30)の端部をバックヨーク部(11)の外周面(11c)上に位置させてもよい。言い換えると、第1内側接続部(35A)及び第2内側接続部(35B)に代えて、一体の内側接続部を配置し、外側接続部(33)に代えて、第1外側接続部及び第2外側接続部を配置してもよい。但し、この場合、第1外側接続部及び第2外側接続部がケーシング(14)を介して電気的に接続してしまうと、渦電流が発生する恐れがある。従って、鋼板締結部材(30)の端部をバックヨーク部(11)の内周面(11d)上に位置させる方が好ましい。
【0073】
また、図15図18に示す鋼板締結部材(30)において、外側接続部(33)について、図6(A)~(C)に示すような弾性構造を適用することにより、バックヨーク部(11)を構成する積層体(17)を締結してもよい。
【0074】
<鋼板締結部材(四面型)の設置方法>
図15に示す鋼板締結部材(30)のバックヨーク部(11)への設置方法の第1例は、図19に示す通りである。尚、図19において、図15に示す構成と同じ要素には同じ符号を付す。
【0075】
まず、図19(A)に示すように、所定形状を持つ鋼板を複数枚積層した積層体(17)を形成する。次に、図19(B)に示すように、積層体(17)に対して軸方向の両側から加圧を行う。次に、図19(C)に示すように、積層体(17)に対する軸方向の加圧を継続した状態で、予め準備した鋼板締結部材(30)をバックヨーク部(11)の外周側からバックヨーク部(11)に嵌め合わせる。このとき、鋼板締結部材(30)の第1内側接続部(35A)及び第2内側接続部(35B)はそれぞれ、上側加圧部(31)及び下側加圧部(32)に対して折り曲げられていない。言い換えると、第1内側接続部(35A)は、上側加圧部(31)と共に径方向に延び、第2内側接続部(35B)は、下側加圧部(32)と共に径方向に延びる。最後に、図19(D)に示すように、積層体(17)に対する軸方向の加圧を継続した状態で、鋼板締結部材(30)の第1内側接続部(35A)及び第2内側接続部(35B)を、バックヨーク部(11)の内周面(11d)と接するように折り曲げる。
【0076】
図15に示す鋼板締結部材(30)のバックヨーク部(11)への設置方法の第2例は、図20に示す通りである。尚、図20において、図15に示す構成と同じ要素には同じ符号を付す。
【0077】
まず、図20(A)に示すように、所定形状を持つ鋼板を複数枚積層した積層体(17)を形成する。その後、バックヨーク部(11)の内周面(11d)に鋼板締結部材(30)の第2内側接続部(35B)を接触させ、バックヨーク部(11)の下面(11b)に鋼板締結部材(30)の下側加圧部(32)を接触させ、バックヨーク部(11)の外周面(11c)に鋼板締結部材(30)の外側接続部(33)を接触させる。このとき、鋼板締結部材(30)の上側加圧部(31)及び第1内側接続部(35A)は、外側接続部(33)に対して折り曲げられていない。言い換えると、上側加圧部(31)及び第1内側接続部(35A)は、外側接続部(33)と共に軸方向に延びる。次に、図20(B)に示すように、積層体(17)に対して軸方向の両側から加圧を行う。次に、図20(C)に示すように、積層体(17)に対する軸方向の加圧を継続した状態で、鋼板締結部材(30)の上側加圧部(31)を、バックヨーク部(11)の上面(11a)と接するように折り曲げる。このとき、第1内側接続部(35A)は、上側加圧部(31)に対して折り曲げられていない。言い換えると、第1内側接続部(35A)は、上側加圧部(31)と共に径方向に延びる。最後に、図20(D)に示すように、積層体(17)に対する軸方向の加圧を継続した状態で、鋼板締結部材(30)の第1内側接続部(35A)を、バックヨーク部(11)の内周面(11d)と接するように折り曲げる。
【0078】
以上、図15に示す鋼板締結部材(30)を例として、四面型の鋼板締結部材(30)の設置方法について説明したが、図16図18に示す鋼板締結部材(30)についても、図19又は図20に示す方法と同様の方法により、バックヨーク部(11)へ設置可能である。
【0079】
また、図11図14に示す鋼板締結部材(30)については、図19又は図20に示す方法で鋼板締結部材(30)をバックヨーク部(11)に嵌め合わせる向きや鋼板締結部材(30)の折り曲げ順などを変更すれば、バックヨーク部(11)へ設置可能である。
【0080】
<鋼板締結部材とケーシングとの配置関係>
図21は、鋼板締結部材(20)とケーシング(14)との配置関係の一例を示す図である。図21において、(A)~(D)はいずれも、鋼板締結部材(20)をバックヨーク部(11)の軸方向上側から見た様子を示す。また、図21において、図3に示す構成と同じ要素には同じ符号を付す。尚、図21(A)~(D)に示す構成は、図3に示すU字型の鋼板締結部材(20)への適用を例としているが、同様の構成は、図4に示すΣ型の鋼板締結部材(20)や、図11図18に示す四面型の鋼板締結部材(30)へも適用可能である。
【0081】
図21(A)に示す構成では、バックヨーク部(11)の外周面(11c)に切り欠き(凹部)(51)を設け、当該凹部(51)内に鋼板締結部材(20)の接続部(23)を配置する。また、バックヨーク部(11)の外周面(11c)とケーシング(14)の内壁面とを接触させる。これにより、バックヨーク部(11)(固定子コア(13))とケーシング(14)とが接触し、鋼板締結部材(20)とケーシング(14)とが接触しない構成とすることができる。
【0082】
図21(A)に示す構成では、鋼板締結部材(20)とケーシング(14)とが接触しないので、締まり嵌め時の応力等を考慮せずに、鋼板締結部材(20)をデザインできる。また、バックヨーク部(11)の凹部(51)内に接続部(23)が配置されるため、バックヨーク部(11)を構成する積層体(17)の周方向ずれが、凹部(51)の周方向両壁部と接続部(23)との接触によって抑制される。
【0083】
図21(B)に示す構成では、バックヨーク部(11)の外周面(11c)上に鋼板締結部材(20)の接続部(23)を配置し、接続部(23)の外表面とケーシング(14)の内壁面とを接触させる。これにより、バックヨーク部(11)(固定子コア(13))とケーシング(14)とが接触しておらず、鋼板締結部材(20)とケーシング(14)とが接触する構成とすることができる。
【0084】
図21(B)に示す構成では、固定子コア(13)とケーシング(14)とが接触しないので、積層体(17)を構成する鋼板の径方向公差が大きい場合にも、積層体(17)の締まり嵌めを確実に行うことができる。また、鋼板締結部材(20)がケーシング(14)によって保持されるため、鋼板締結部材(20,30)の脱落がより一層抑制される。
【0085】
尚、図21(B)に示す構成において、鋼板締結部材(20)の材料として、積層体(17)を構成する鋼板よりも柔らかい材料を選択し、接続部(23)における積層体(17)の径方向壁部との接触箇所が、当該径方向壁部に応じて変形可能にしてもよい。
【0086】
図21(C)に示す構成では、バックヨーク部(11)の外周面(11c)に切り欠き(凹部)(52)を設け、当該凹部(52)に鋼板締結部材(20)の接続部(23)を配置する。凹部(52)の周方向幅は、開口側から底部側に向けて狭くなっており、接続部(23)は、凹部(52)の周方向壁面と当接する。一方、接続部(23)の外表面は、ケーシング(14)の内壁面と当接する。これにより、バックヨーク部(11)(固定子コア(13))とケーシング(14)とが接触しておらず、鋼板締結部材(20)とケーシング(14)とが接触する構成とすることができる。
【0087】
図21(C)に示す構成では、固定子コア(13)とケーシング(14)とが接触しないので、積層体(17)を構成する鋼板の径方向公差が大きい場合にも、積層体(17)の締まり嵌めを確実に行うことができる。また、鋼板締結部材(20)がケーシング(14)によって保持されるため、鋼板締結部材(20,30)の脱落がより一層抑制される。さらに、鋼板締結部材(20)の接続部(23)が、バックヨーク部(11)の凹部(52)の周方向壁面と当接するので、鋼板締結部材(20)とバックヨーク部(11)との接触面積を低減して、積層体(17)の磁気特性を改善することができる。
【0088】
尚、図21(C)に示す構成において、局所的な応力集中を回避するために、接続部(23)における凹部(52)の周方向壁面との接触箇所を、当該周方向壁面に合わせた形状にしてもよい。或いは、鋼板締結部材(20)の材料として、積層体(17)を構成する鋼板よりも柔らかい材料を選択し、接続部(23)における凹部(52)の周方向壁面との接触箇所が、当該周方向壁面に応じて変形可能にしてもよい。或いは、図21(D)に示すように、接続部(23)と凹部(52)の周方向壁面との間に追加部材(55)を設けてもよい。
【0089】
<鋼板締結部材による積層体の周方向ずれの抑制>
図22及び図23は、鋼板締結部材(20)により積層体(17)の周方向ずれを抑制する構成の一例を示す図である。図22において、(A)~(C)はいずれも、鋼板締結部材(20)及びバックヨーク部(11)を軸方向に垂直な断面で見た様子を示す。また、図23において、(A)、(B)はいずれも、鋼板締結部材(20)及びバックヨーク部(11)を周方向に垂直な断面(図22(A)のA-A線の断面)で見た様子を示す。また、図22及び図23において、図3に示す構成と同じ要素には同じ符号を付す。尚、図22及び図23に示す構成は、図3に示すU字型の鋼板締結部材(20)への適用を例としているが、同様の構成は、図4に示すΣ型の鋼板締結部材(20)や、図11図18に示す四面型の鋼板締結部材(30)へも適用可能である。
【0090】
図22(A)及び図23(A)、(B)に示す構成では、バックヨーク部(11)の外周面(11c)に凹部(61)を設け、当該凹部(61)に鋼板締結部材(20)の接続部(23)を配置する。接続部(23)は、凹部(61)の底面(61a)と接していてもよい。接続部(23)の径方向厚さは、凹部(61)の径方向深さよりも大きくてもよし、又は同等若しくは小さくてもよい。凹部(61)は、図23(A)に示すように、バックヨーク部(11)の外周面(11c)の軸方向全体に形成されてもよい。或いは、凹部(61)は、図23(B)に示すように、バックヨーク部(11)の外周面(11c)の軸方向の一部、例えば軸方向上部に形成されてもよい。
【0091】
図22(A)及び図23(A)、(B)に示す構成では、バックヨーク部(11)の凹部(61)内に接続部(23)が配置されるため、バックヨーク部(11)を構成する積層体(17)の周方向ずれが、凹部(61)の周方向両壁部と接続部(23)との接触によって抑制される。
【0092】
図22(B)に示す構成では、バックヨーク部(11)の外周面(11c)に凹部(62)を設け、鋼板締結部材(20)の接続部(23)におけるバックヨーク部(11)側の表面に凸部(63)を設け、当該凸部(63)をバックヨーク部(11)の凹部(62)に配置する。凸部(63)は、凹部(62)の底面と接していてもよい。凸部(63)の径方向高さは、凹部(62)の径方向深さよりも大きくてもよし、又は同等若しくは小さくてもよい。凹部(62)及び凸部(63)は、バックヨーク部(11)の外周面(11c)の軸方向全体に形成されてもよいし、或いは、バックヨーク部(11)の外周面(11c)の軸方向の一部、例えば軸方向上部に形成されてもよい。
【0093】
図22(B)に示す構成では、バックヨーク部(11)の凹部(62)内に接続部(23)の凸部(63)が配置されるため、バックヨーク部(11)を構成する積層体(17)の周方向ずれが、凹部(62)の周方向両壁部と凸部(63)との接触によって抑制される。
【0094】
図22(C)に示す構成では、バックヨーク部(11)の外周面(11c)に凸部(64)を設け、鋼板締結部材(20)の接続部(23)におけるバックヨーク部(11)側の表面に凹部(65)を設け、当該凹部(65)にバックヨーク部(11)の凸部(64)を配置する。凸部(64)は、凹部(65)の底面と接していてもよい。凸部(64)の径方向高さは、凹部(65)の径方向深さよりも大きくてもよし、又は同等若しくは小さくてもよい。凸部(64)及び凹部(65)は、バックヨーク部(11)の外周面(11c)の軸方向全体に形成されてもよいし、或いは、バックヨーク部(11)の外周面(11c)の軸方向の一部、例えば軸方向上部に形成されてもよい。
【0095】
図22(C)に示す構成では、接続部(23)の凹部(65)内にバックヨーク部(11)の凸部(64)が配置されるため、バックヨーク部(11)を構成する積層体(17)の周方向ずれが、凹部(65)の周方向両壁部と凸部(64)との接触によって抑制される。
【0096】
<鋼板締結部材における軸方向応力に対する補強構造>
図24は、鋼板締結部材(20)における軸方向の応力に対する補強構造の一例を示す図である。図24において、(A)~(D)はいずれも、鋼板締結部材(20)及びバックヨーク部(11)の軸方向上部を周方向に垂直な断面で見た様子を示す。また、図24において、図3に示す構成と同じ要素には同じ符号を付す。尚、図24に示す構成は、図3に示すU字型の鋼板締結部材(20)の軸方向上部への適用を例としているが、同様の構成は、図3に示すU字型の鋼板締結部材(20)の軸方向下部、図4に示すΣ型の鋼板締結部材(20)、図11図18に示す四面型の鋼板締結部材(30)へも適用可能である。
【0097】
図24(A)に示す構成では、鋼板締結部材(20)の接続部(23)の軸方向上部に補強リブ(71)を設けることによって、軸方向応力に対する補強を行う。補強リブ(71)の設置に伴い、上側加圧部(21)の軸方向厚さは、バックヨーク部(11)の外周面(11c)から径方向内側に向けて薄くなってもよい。
【0098】
図24(B)に示す構成では、鋼板締結部材(20)の上側加圧部(21)の径方向内側端部からケーシング(14)側に延びる折り返し部(72)を設け、当該折り返し部(72)の径方向外側端部をケーシング(14)に当接させる。これにより、軸方向応力に対する補強を行う。
【0099】
図24(C)に示す構成では、鋼板締結部材(20)の接続部(23)をバックヨーク部(11)の外周面(11c)から離隔させつつケーシング(14)の内壁面に沿ってバックヨーク部(11)の上面(11a)よりも軸方向上側まで延長する。鋼板締結部材(20)の接続部(23)の軸方向上端と上側加圧部(21)の径方向内側端部とを中継部(73)により接続し、上側加圧部(21)の径方向外側端部からバックヨーク部(11)の上面(11a)に沿って延長部(74)を設ける。これにより、軸方向応力に対する補強を行う。
【0100】
図24(D)に示す構成では、鋼板締結部材(20)の接続部(23)をケーシング(14)の内壁面から離隔させつつバックヨーク部(11)の外周面(11c)に沿って形成する。鋼板締結部材(20)の上側加圧部(21)の径方向内側端部からケーシング(14)側に延びる中継部(75)を設け、当該中継部(75)の径方向外側端部からケーシング(14)の内壁面に沿って軸方向下側に延びる延長部(74)を設ける。これにより、軸方向応力に対する補強を行う。
【0101】
〈鋼板締結部材に起因する渦電流の発生を抑制する構成〉
図2図9に示す三面型の鋼板締結部材(20)では、バックヨーク部(11)の外周側を経由して一対の加圧部(21,22)を接続する接続部(23)を設けた。しかし、これに代えて、図25及び図26に示すように、バックヨーク部(11)の内周側を経由して一対の加圧部(21,22)を接続する接続部(23)を設けてもよい。尚、図25及び図26において、図2図9に示す構成と同じ要素には同じ符号を付す。
【0102】
ところで、図25及び図26に示す構成において、バックヨーク部(11)の外周面(11c)とケーシング(14)とが接触し、バックヨーク部(11)の内周面(11d)と接続部(23)とが接触すると、積層体(17)の軸方向両端面が、ケーシング(14)及び鋼板締結部材(20)を介して閉回路を構成する恐れがある。その場合、磁束透過時に渦電流が発生して損失が増大してしまう。
【0103】
そこで、図26に示すように、バックヨーク部(11)の内周面(11d)と接続部(23)との間に絶縁部材(81)を介在させてもよい。絶縁部材(81)は、例えば、絶縁紙であってもよいし、空隙であってもよいし、或いは、接続部(23)に施された表面コーティングであってもよい。
【0104】
同様に、図11図14に示す四面型の鋼板締結部材(30)についても、積層体(17)の軸方向両端面が、鋼板締結部材(30)を介して閉回路を構成する事態を回避するために、図27に示すように、バックヨーク部(11)の内周面(11d)と内側接続部(34)との間に絶縁部材(82)を介在させてもよい。絶縁部材(82)は、例えば、絶縁紙であってもよいし、空隙であってもよいし、或いは、内側接続部(34)に施された表面コーティングであってもよい。図27(A)~(D)に示す構成はそれぞれ、図11(C)、図12(C)、図13(C)、図14(C)に示す構成と対応する。
【0105】
また、図15図18に示す四面型の鋼板締結部材(30)についても、積層体(17)の軸方向両端面が、鋼板締結部材(30)を介して閉回路を構成する事態を回避するために、図28図31に示すように、バックヨーク部(11)の内周面(11d)と第1内側接続部(35A)及び第2内側接続部(35B)との間に絶縁部材(82)を介在させてもよい。絶縁部材(82)は、例えば、絶縁紙であってもよいし、空隙であってもよいし、或いは、内側接続部(34)に施された表面コーティングであってもよい。図28(A)、(B)に示す構成は、図15(C)、(D)に示す構成と対応し、図29(A)、(B)に示す構成は、図16(C)、(D)に示す構成と対応し、図30(A)、(B)に示す構成は、図17(C)、(D)に示す構成と対応し、図31(A)、(B)に示す構成は、図18(C)、(D)に示す構成と対応する。
【0106】
尚、図27図31に示す構成では、バックヨーク部(11)の内周面(11d)上に絶縁部材(82)を設けたが、これに限定されず、バックヨーク部(11)における鋼板締結部材(30)が配置される面のいずれかに絶縁部材を設けてもよい。例えば、バックヨーク部(11)と鋼板締結部材(30)との間の全体に絶縁部材を設けてもよい。或いは、バックヨーク部(11)の外周面(11c)上に絶縁部材を設けてもよい。
【0107】
-実施形態の特徴-
本実施形態のモータ(10)は、複数の鋼板を積層した積層体(17)から構成される固定子コア(13)と、固定子コア(13)が内側に嵌合されるケーシング(14)とを備える。固定子コア(13)は、略円筒状のバックヨーク部(11)と、バックヨーク部(11)から径方向内側に突出した複数のティース部(12)とを含む。モータ(10)は、バックヨーク部(11)を軸方向の両側から加圧する鋼板締結部材(20,30)をさらに備える。鋼板締結部材(20,30)は、バックヨーク部(11)の軸方向の両面上にそれぞれ配置された加圧部(21,22,31,32)と、バックヨーク部(11)の外周側及び内周側の少なくとも一方を経由して加圧部(21,22,31,32)同士を接続する接続部(23,33,34)とを有する。
【0108】
本実施形態のモータ(10)によると、固定子コア(13)を構成する積層体(17)に対して、鋼板締結部材(20,30)の加圧部(21,22,31,32)によってバックヨーク部(11)の軸方向の両側から加圧を行う。このため、積層体(17)の締結力を向上させることができる。例えば、積層体(17)を構成する鋼板の径方向公差が大きい場合にも、積層体(17)の締まり嵌め時における鋼板ずれを鋼板締結部材(20,30)によって抑制できる。また、鋼板締結部材(20,30)を設けた状態で、積層体(17)の径方向に締まり嵌めを行って固定子コア(13)をケーシング(14)に取り付ける際に、カシメやボルト締め等を用いた場合と比べて、積層体(17)に対する局所的な応力を低減できる。従って、積層体(17)の磁気特性の悪化を抑制できる。さらに、巻線の巻回方法に対する制約無く、積層体(17)を締結することができる。具体的には、ノズル巻きのモータに限らず、ボビン巻きのモータでも、固定子コア(13)を構成する積層体(17)を鋼板締結部材(20,30)によって締結可能である。また、ノズル巻きのモータにおいても、巻線巻回時に積層体(17)の締結・保持のためのトルクに対する制約がなくなる。
【0109】
本実施形態のモータ(10)において、固定子コア(13)とケーシング(14)とは接触し、鋼板締結部材(20,30)とケーシング(14)とは接触していなくてもよい。
【0110】
このようにすると、鋼板締結部材(20,30)とケーシング(14)とが接触しないので、締まり嵌め時の応力等を考慮せずに、鋼板締結部材(20,30)をデザインできる。
【0111】
本実施形態のモータ(10)において、固定子コア(13)とケーシング(14)とは接触しておらず、鋼板締結部材(20,30)とケーシング(14)とは接触してもよい。
【0112】
このようにすると、固定子コア(13)とケーシング(14)とが接触しないので、積層体(17)を構成する鋼板の径方向公差が大きい場合にも、積層体(17)の締まり嵌めを確実に行うことができる。また、鋼板締結部材(20,30)がケーシング(14)によって保持されるため、鋼板締結部材(20,30)の脱落がより一層抑制される。
【0113】
本実施形態のモータ(10)において、積層体(17)は、鋼板締結部材(20,30)から印加される圧力のみによって締結されてもよい。
【0114】
このようにすると、固定子コア(13)の全体に亘って、カシメやボルト締め等を用いない構成とすることができる。
【0115】
本実施形態のモータ(10)において、鋼板締結部材(20)は、バックヨーク部(11)の外周側又は内周側の一方のみに接続部(23)を有してもよい。
【0116】
このようにすると、バックヨーク部(11)における鋼板締結部材(20)の配置場所に対する制約が少なくなる。
【0117】
本実施形態のモータ(10)において、鋼板締結部材(30)は、バックヨーク部の外周側及び内周側の両方にそれぞれ接続部(33,34)を有し、加圧部(31,32)及び接続部(33,34)は電気的に開回路を構成してもよい。
【0118】
このようにすると、鋼板締結部材(30)に起因する渦電流の発生を抑制しつつ、脱落し難い鋼板締結部材(30)を構成できる。
【0119】
本実施形態のモータ(10)において、接続部(23,33,34)の弾性率は、加圧部(21,22,31,32)の弾性率よりも大きくてもよい。
【0120】
このようにすると、接続部(23,33,34)の弾性によって、加圧部(21,22,31,32)を通じてバックヨーク部(11)の軸方向の両側から加圧を行うことが可能となる。
【0121】
本実施形態のモータ(10)において、バックヨーク部(11)及び鋼板締結部材(20,30)の少なくとも一方は、径方向に段差を生じる凹凸部(61,62,63,64,65)を有し、凹凸部(61,62,63,64,65)の周方向両側でバックヨーク部(11)と鋼板締結部材(20,30)とが対向してもよい。
【0122】
このようにすると、凹凸部(61,62,63,64)によって鋼板締結部材(20,30)に対するバックヨーク部(11)の周方向変位が抑制される。従って、固定子コア(13)を構成する積層体(17)が周方向(時計回り方向及び反時計回り方向の両方)にずれることを抑制できる。
【0123】
本実施形態のモータ(10)において、バックヨーク部(11)の外周側及び内周側のうち少なくとも一方と前記鋼板締結部材(20,30)との間に絶縁部材(81,82)が設けられてもよい。
【0124】
このようにすると、バックヨーク部(11)の外周側又は内周側と鋼板締結部材(20,30)との間の絶縁を確保できるので、磁束透過時に固定子コア(13)に渦電流が発生して損失が増大することを抑制できる。
【0125】
《その他の実施形態》
前記実施形態では、バックヨーク部(11)を構成する積層体(17)を、鋼板締結部材(20,30)から印加される圧力のみによって締結した。しかし、鋼板締結部材(20,30)に加えて、積層体(17)の磁気特性に悪影響を及ぼさない程度に、積層体(17)に対してカシメやボルト締め等を行ってもよい。
【0126】
また、前記実施形態では、バックヨーク部(11)を構成する積層体(17)のみに鋼板締結部材(20,30)を設けた。しかし、これに代えて、或いは、これに加えて、ティース部(12)を構成する積層体に、鋼板締結部材(20,30)と同様の他の鋼板締結部材を設けてもよい。
【0127】
尚、前記実施形態において、積層体(17)を構成する鋼板の寸法や種類等は特に限定されないが、一例として、鋼板の厚みは、例えば0.15mm~1.0mmであってもよい。また、鋼板の材質は、例えば、けい素鋼板、アモルファス合金、ナノ結晶薄帯等であってもよい。また、1種類の鋼板を用いて積層体(17)を構成してもよいし、或いは、異なる材質、厚み等を持つ複数種類の鋼板を組み合わせて積層体(17)を構成してもよい。
【0128】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。以上に述べた「第1」、「第2」、・・・という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0129】
以上説明したように、本開示は、モータについて有用である。
【符号の説明】
【0130】
10 モータ
11 バックヨーク部
12 ティース部
13 固定子コア
14 ケーシング
17 積層体
20 鋼板締結部材
21 上側加圧部
22 下側加圧部
23 接続部
30 鋼板締結部材
31 上側加圧部
32 下側加圧部
33 外側接続部
34 内側接続部
61、62,65 凹部
63、64 凸部
81、82 絶縁部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
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