(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
F24F 11/86 20180101AFI20240510BHJP
F24F 11/65 20180101ALI20240510BHJP
F25B 29/00 20060101ALI20240510BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
F24F11/86
F24F11/65
F25B29/00 391Z
F25B1/00 351A
F25B1/00 304L
(21)【出願番号】P 2021173986
(22)【出願日】2021-10-25
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】守谷 聡乃
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 裕記
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-180140(JP,A)
【文献】特開2005-061767(JP,A)
【文献】特開2004-150737(JP,A)
【文献】特開2019-132393(JP,A)
【文献】特開2001-208447(JP,A)
【文献】特開2006-200869(JP,A)
【文献】特開2003-148642(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112797660(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
F25B 29/00
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(21)、熱源熱交換器(24)、第1利用熱交換器(111,111a,111b)、第1電動弁(13,13a,13b)、及び第2利用熱交換器(112,112a,112b)、が順に並ぶ環状の冷媒回路(40)と、
制御部(60)と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1電動弁によって冷媒を減圧し、前記第1利用熱交換器及び前記第2利用熱交換器の内、一方を蒸発器として機能させ、他方を凝縮器として機能させる、再熱除湿運転を行い、
前記再熱除湿運転時において、
前記再熱除湿運転を停止させる時には、前記第1電動弁を全閉にして弁開度の基準位置を確認する第1初期化動作、を行い、
所定条件を満たすことによって、自身の判断により前記第1利用熱交換器及び前記第2利用熱交換器に流れる冷媒量を、ゼロ又は微量にする時には、前記第1初期化動作を行わ
ず、
前記冷媒回路は、前記熱源熱交換器と、前記第1利用熱交換器と、の間に第2電動弁(25)を有し、
前記制御部は、前記所定条件を満たすことによって、前記第1利用熱交換器及び前記第2利用熱交換器に流れる冷媒量を、ゼロ又は微量にする時には、前記第2電動弁を全閉にして弁開度の基準位置を確認する第2初期化動作、を行う、
空気調和装置(1)。
【請求項2】
前記制御部は、前記再熱除湿運転時において、前記再熱除湿運転から、他の空調運転に切り換える時には、前記第1初期化動作を行う、
請求項1に記載の空気調和装置(1)。
【請求項3】
前記第1電動弁は、冷媒の第2流量域での開度調整を行う第2部材(133)と、前記第2流量域よりも大きい第1流量域での開度調整を行う第1部材(132)と、を有する、
請求項1又は2に記載の空気調和装置(1)。
【請求項4】
前記制御部は、前記再熱除湿運転時には、前記第2流量域で、前記第1電動弁の開度調整を行う、
請求項
3に記載の空気調和装置(1)。
【請求項5】
前記第1利用熱交換器及び前記第2利用熱交換器に空気を供給する、ファン(12,12a,12b)、
をさらに備え、
前記制御部は、前記所定条件を満たすことによって、前記第1利用熱交換器及び前記第2利用熱交換器に流れる冷媒量を、ゼロ又は微量にする時には、前記ファンを停止する、
請求項1から
4のいずれか1つに記載の空気調和装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2009-162475号公報)に示されているように、次の空調運転の開始に備えて、電動弁を初期化する技術がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1のように、電動弁を初期化すると、騒音が生じ、人に不快感を与える、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点の空気調和装置は、冷媒回路と、制御部と、を備える。冷媒回路は、圧縮機、熱源熱交換器、第1利用熱交換器、第1電動弁、及び第2利用熱交換器、が順に並ぶ環状の冷媒回路である。制御部は、第1電動弁によって冷媒を減圧し、第1利用熱交換器及び第2利用熱交換器の内、一方を蒸発器として機能させ、他方を凝縮器として機能させる、再熱除湿運転を行う。制御部は、再熱除湿運転時において、再熱除湿運転を停止させる時には、第1初期化動作を行う。第1初期化動作は、第1電動弁を全閉にして弁開度の基準位置を確認する動作である。制御部は、再熱除湿運転時において、所定条件を満たすことによって、自身の判断により第1利用熱交換器及び第2利用熱交換器に流れる冷媒量を、ゼロ又は微量にする時には、第1初期化動作を行わない。
【0005】
第1観点の空気調和装置は、第1電動弁の第1初期化動作を行わない条件を設けることにより、第1初期化動作の回数を減らし、第1初期化動作に起因する騒音を低減することができる。
【0006】
第2観点の空気調和装置は、第1観点の空気調和装置であって、制御部は、再熱除湿運転時において、再熱除湿運転から、他の空調運転に切り換える時には、第1初期化動作を行う。
【0007】
第2観点の空気調和装置は、このような構成により、自身が認識する第1電動弁の弁開度と、実際の第1電動弁の弁開度と、を合わせることができる。
【0008】
第3観点の空気調和装置は、第1観点又は第2観点のいずれかの空気調和装置であって、第1電動弁は、第2部材と、第1部材と、を有する。第2部材は、冷媒の第2流量域での開度調整を行う。第1部材は、第2流量域よりも大きい第1流量域での開度調整を行う。
【0009】
第3観点の空気調和装置は、このような構成により、冷媒の流量を、細かく制御することができる。
【0010】
第4観点の空気調和装置は、第1観点から第3観点のいずれかの空気調和装置であって、制御部は、再熱除湿運転時には、第2流量域で、第1電動弁の開度調整を行う。
【0011】
第4観点の空気調和装置は、このような構成により、高い精度で、除湿能力を制御することができる。
【0012】
第5観点の空気調和装置は、第1観点から第4観点のいずれかの空気調和装置であって、冷媒回路は、熱源熱交換器と、第1利用熱交換器と、の間に第2電動弁を有する。制御部は、所定条件を満たすことによって、第1利用熱交換器及び第2利用熱交換器に流れる冷媒量を、ゼロ又は微量にする時には、第2初期化動作を行う。第2初期化動作は、第2電動弁を全閉にして弁開度の基準位置を確認する動作である。
【0013】
第6観点の空気調和装置は、第1観点から第5観点のいずれかの空気調和装置であって、ファンをさらに備える。ファンは、第1利用熱交換器及び第2利用熱交換器に空気を供給する。制御部は、所定条件を満たすことによって、第1利用熱交換器及び第2利用熱交換器に流れる冷媒量を、ゼロ又は微量にする時には、ファンを停止する。
【0014】
第6観点の空気調和装置は、ファンが停止した静かな状態で、第1初期化動作を行わないことにより、騒音による人の不快感を、より低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】利用膨張弁の開度と、利用膨張弁を流れる冷媒の流量と、の関係を示すグラフである。
【
図5】複数の利用ユニットを有する空気調和装置の冷媒回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(1)全体構成
空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを利用して、室内の空気調和を行う。
図1は、空気調和装置1の冷媒回路40を示す図である。
図1に示すように、空気調和装置1は、主として、利用ユニット10と、熱源ユニット20と、を有する。利用ユニット10と、熱源ユニット20とは、液冷媒連絡配管41及びガス冷媒連絡配管42によって接続され、冷媒回路40を構成する。また、利用ユニット10と、熱源ユニット20とは、通信線80によって、通信可能に接続されている。
【0017】
本実施形態では、空気調和装置1が行う空調運転は、冷房運転、暖房運転、送風運転、及び再熱除湿運転である。各運転についての詳細は、後述する。
【0018】
(2)詳細構成
(2-1)利用ユニット
利用ユニット10は、空気調和装置1が設置される建物の室内に設置される。利用ユニット10は、例えば、壁掛け型のユニットや、天井埋込型のユニット等である。
図1に示すように、利用ユニット10は、主として、第1利用熱交換器111と、第2利用熱交換器112と、利用ファン12(ファン)と、利用膨張弁13(第1電動弁)と、利用制御部19と、を有する。また、利用ユニット10は、室内温度センサ61と、室内湿度センサ62と、を有する。また、利用ユニット10は、第1利用熱交換器111の液側端と液冷媒連絡配管41とを接続する、液冷媒配管44と、第2利用熱交換器112のガス側端とガス冷媒連絡配管42とを接続する、ガス冷媒配管45とを有する。
【0019】
(2-1-1)第1利用熱交換器、及び第2利用熱交換器
第1利用熱交換器111、及び第2利用熱交換器112は、第1利用熱交換器111、及び第2利用熱交換器112を流れる冷媒と、室内の空気との間で熱交換を行わせる。第1利用熱交換器111、及び第2利用熱交換器112は、例えば、複数の伝熱フィンと、複数の伝熱管と、を有するフィン・アンド・チューブ型の熱交換器である。
【0020】
図1に示すように、第1利用熱交換器111の一端は、液冷媒配管44を介して、液冷媒連絡配管41と接続されている。第1利用熱交換器111の他端は、利用膨張弁13に接続されている。また、第2利用熱交換器112の一端は、ガス冷媒配管45を介して、ガス冷媒連絡配管42と接続されている。第2利用熱交換器112の他端は、利用膨張弁13に接続されている。
【0021】
第1利用熱交換器111は、利用ファン12によって生成される風の風流れ方向において、第2利用熱交換器112よりも下流側に位置する。
【0022】
冷房運転時には、第1利用熱交換器111に液冷媒配管44から冷媒が流入し、第1利用熱交換器111、及び第2利用熱交換器112は、冷媒の蒸発器として機能する。暖房運転時には、第2利用熱交換器112にガス冷媒配管45から冷媒が流入し、第1利用熱交換器111、及び第2利用熱交換器112は、冷媒の凝縮器として機能する。再熱除湿運転時には、第1利用熱交換器111に液冷媒配管44から冷媒が流入し、かつ利用膨張弁13によって冷媒が減圧されることにより、第1利用熱交換器111は冷媒の凝縮器として機能し、第2利用熱交換器112は冷媒の蒸発器として機能する。
【0023】
(2-1-2)利用ファン
利用ファン12は、第1利用熱交換器111、及び第2利用熱交換器112に、室内の空気を供給する。利用ファン12は、例えば、クロスフローファンである。
図1に示すように、利用ファン12は、利用ファンモータ12mによって駆動される。利用ファンモータ12mの回転数は、インバータによって制御可能である。
【0024】
(2-1-3)利用膨張弁
利用膨張弁13は、冷媒回路40を流れる冷媒の圧力や流量を調節するための機構である。本実施形態では、利用膨張弁13は、開度制御が可能な電子膨張弁である。
【0025】
図2は、利用膨張弁13の概略断面図である。
図2では、説明の便宜上、上下左右の方向が示されている。
図2に示すように、利用膨張弁13は、主として、弁室131と、主弁体132(第1部材)と、副弁体133(第2部材)と、駆動部134と、を有する。
【0026】
弁室131は、概略円筒状の部材である。弁室131は、内部に主弁体132を収容する。弁室131の左側面には、冷媒が流出入する連通孔131aが形成されている。弁室131の下端には、冷媒が流出入する主弁ポート131bが形成されている。
【0027】
主弁体132は、弁室131の内部で、主弁ポート131bの開度を変更する円筒状の部材である。主弁体132の下端には、冷媒が流出入する副弁ポート132aが形成されている。主弁体132の上端には、リング状のリテーナ132bが取り付けられている。主弁体132の左側面には、冷媒が流出入する連通孔132cが形成されている。
【0028】
副弁体133は、副弁ポート132aの開度を変更するとともに、主弁体132を持ち上げるニードル状の部材である。副弁体133の下部は、リテーナ132bの開口から主弁体132の内部に挿入されている。副弁体133の下端には、テーパ形状133aが形成されている。副弁体133の上下方向の中腹部は、駆動部134に固定されている。副弁体133には、リテーナ132bよりもテーパ形状133a側の側面に、鍔状の突起部133bが形成されている。副弁体133は、突起部133bによって主弁体132のリテーナ132bを支えることにより、主弁体132を持ち上げることができる。また、副弁体133の上部は、利用膨張弁13の内側天井部に設けられた円筒部135、の内部に挿入される。円筒部135の右側面には、ストッパ137が入り込む凹部135aが形成されている。
【0029】
駆動部134は、主弁体132、及び副弁体133を上下方向に駆動する。駆動部134は、後述する制御部60が出力する制御信号である駆動パルス、により駆動量が制御される。言い換えると、利用膨張弁13の開度は、制御部60によって制御される。利用膨張弁13に対する単位操作量(以下、単位駆動パルスと記載することがある。)は1パルスであり、制御部60が出力する駆動パルスの増加とともに開度が増加する。駆動部134には、突起部136が形成され、突起部136には、ストッパ137が固定されている。ストッパ137は、自身に、点Pを中心とした時計回り方向の復元力が働くように、突起部136に固定されている。駆動部134が上方向に駆動すると、ストッパ137は、円筒部135の側面に沿って上方向に駆動される。駆動部134が下方向に駆動すると、ストッパ137は、円筒部135の側面に沿って下方向に駆動され、最終的には、凹部135aに入り込む。ストッパ137の下端部と、凹部135aの下側表面と、が接触することにより、駆動部134の下方向への駆動は、制限される。
【0030】
図3は、利用膨張弁13の開度と、利用膨張弁13を流れる冷媒の流量と、の関係を示すグラフである。
図3では、利用膨張弁13の開度は、百分率(%)と、制御部60が出力する駆動パルスと、の両方で表現されている。百分率(%)は、最大の駆動パルス(500パルス)に対する、実際の駆動パルスの割合である。
図3に示されるように、利用膨張弁13は、単位駆動パルスに対する流量の変化が小さい小流量制御域(第2流量域)と、単位駆動パルスに対する流量の変化が大きい大流量制御域(第1流量域)と、の2つの流量制御域を有する。
【0031】
駆動パルスが0パルスの時、主弁体132は、弁室131内部の下側表面に着座し、副弁体133は、副弁ポート132aを閉じた状態となる。この時、利用膨張弁13の開度は0%(=(0パルス/500パルス)×100)であり、冷媒の流量は2.86L/minである。利用膨張弁13では、主弁体132と主弁ポート131bとの間には、わずかな隙間(図示省略)が形成されているため、利用膨張弁13の開度が0%であっても、微小な流量が生じている。以下、利用膨張弁13の開度を0%にすることを、「利用膨張弁13を全閉する」と記載することがある。
【0032】
駆動パルスが0パルスから増加すると、副弁体133は、副弁ポート132aから遠ざかるように、上方向に駆動される。駆動パルスが150パルスに達するまでは、主弁体132は、弁室131内部の下側表面に着座しており、副弁体133だけが上方向に駆動され、副弁ポート132aの開度を変更する。副弁ポート132aが開くと、冷媒は、連通孔131a、連通孔132c、副弁ポート132a、及び主弁ポート131bにより形成される第1流路を流れる。駆動パルスが150パルスに達した時の、利用膨張弁13の開度は30%(=(150パルス/500パルス)×100)であり、冷媒の流量は10.7L/minである。小流量制御域は、駆動パルスが0パルスから150パルスの範囲(利用膨張弁13の開度が0%から30%の範囲)で変化することに伴い、副弁体133によって副弁ポート132aの開度が変更される流量制御域である。言い換えると、副弁体133は、冷媒の小流量制御域での開度調整を行う。
【0033】
駆動パルスが150パルスから増加すると、副弁体133の突起部133bが主弁体132のリテーナ132bに接触して、副弁体133は、主弁体132を持ち上げる。言い換えると、副弁体133が上方向に駆動されるのにともなって、主弁体132も、主弁ポート131bから遠ざかるように、上方向に駆動される。そのため、駆動パルスが150パルスから増加すると、副弁ポート132aは全開の状態で、主弁体132が主弁ポート131bの開度を変更する。主弁ポート131bが開くと、冷媒は、第1流路と、第2流路と、を流れることになる。第2流路は、冷媒が第1流路を介さずに直接、連通孔131aと主弁ポート131bとの間を流れる流路である。
【0034】
駆動パルスは、500パルスまで増加させることができる。駆動パルスが500パルスに達した際の、利用膨張弁13の開度は100%であり、流量は551L/minである。この時、主弁ポート131b、及び副弁ポート132aは、どちらも全開の状態となる。以下、利用膨張弁13の開度を100%にすることを、「利用膨張弁13を全開する」と記載することがある。利用膨張弁13が全開の時、連通孔132cが弁室131内部の上側に位置し、かつ主弁ポート131bが全開であるため、ほとんどの冷媒は、第2流路を流れることになる。大流量制御域は、駆動パルスが150パルスから500パルスの範囲(利用膨張弁13の開度が30%から100%の範囲)で変化することに伴い、主弁体132によって主弁ポート131bの開度が変更される流量制御域である。言い換えると、主弁体132は、小流量制御域よりも大きい大流量制御域での開度調整を行う。
【0035】
制御部60は、所定のタイミングにおいて、利用膨張弁13を全閉にして弁開度の基準位置を確認する初期化動作(第1初期化動作)を行う。以下、制御部60が利用膨張弁13の初期化動作を行うことを、「利用膨張弁13を初期化する」と記載することがある。制御部60は、自身が認識する駆動パルス位置と、実際の駆動パルス位置と、を合わせるために、初期化を行う。具体的には、制御部60は、利用膨張弁13を全閉にした後、さらに、確実に0パルスの位置に合わせるために、数回、利用膨張弁13を閉める方向に単位駆動パルスを送る。このとき、利用膨張弁13を全閉にする過程において、主弁体132が弁室131内部の下側表面に接触し、騒音が生じる。また、利用膨張弁13を全閉にした後、さらに数回、利用膨張弁13を閉める方向に単位駆動パルスを送る度に、ストッパ137の下端部と、凹部135aの下側表面とが、そして、副弁体133の下端部と、副弁ポート132aの上部とが、接触するため、騒音が生じる。そのため、制御部60が利用膨張弁13の初期化を行うと、室内に騒音が生じることになる。利用膨張弁13の初期化は、次の空調運転に備えて、利用膨張弁13を全開にする必要がある場合に、利用膨張弁13を全開にする直前に行われる。
【0036】
(2-1-4)センサ
室内温度センサ61は、室内の空気の温度(室内温度)を測定する。室内温度センサ61は、利用ユニット10の空気の吸入口付近に設けられている。
【0037】
室内湿度センサ62は、室内の空気の絶対湿度(室内湿度)を測定する。室内湿度センサ62は、利用ユニット10の空気の吸入口付近に設けられている。
【0038】
室内温度センサ61、及び室内湿度センサ62は、例えば、サーミスタである。
【0039】
(2-1-5)利用制御部
利用制御部19は、利用ユニット10を構成する各部の動作を制御する。
【0040】
利用制御部19は、利用ファンモータ12m、及び利用膨張弁13を含む、利用ユニット10が有する各種機器と、制御信号や情報のやりとりを行うことが可能となるように、電気的に接続されている。また、利用制御部19は、室内温度センサ61、及び室内湿度センサ62を含む、利用ユニット10に設けられている各種センサと通信可能に接続されている。
【0041】
利用制御部19は、制御演算装置及び記憶装置を有する。制御演算装置は、CPUやGPU等のプロセッサである。記憶装置は、RAM、ROM及びフラッシュメモリ等の記憶媒体である。制御演算装置は、記憶装置に記憶されているプログラムを読み出し、プログラムに従って所定の演算処理を行うことで、利用ユニット10を構成する各部の動作を制御する。また、制御演算装置は、プログラムに従って、演算結果を記憶装置に書き込んだり、記憶装置に記憶されている情報を読み出したりすることができる。
【0042】
利用制御部19は、操作用リモコン(図示省略)から送信される各種信号を、受信可能に構成されている。各種信号には、例えば、空調運転の開始及び停止を指示する信号や、各種設定に関する信号が含まれる。各種設定に関する信号には、例えば、目標温度や、目標湿度や、目標風量に関する信号が含まれる。
【0043】
利用制御部19は、通信線80を介して、熱源ユニット20の熱源制御部29との間で制御信号、計測信号、各種設定に関する信号等のやりとりを行う。利用制御部19、及び熱源制御部29は、協働して制御部60として機能する。制御部60の機能については後述する。
【0044】
(2-2)熱源ユニット
熱源ユニット20は、例えば、空気調和装置1が設置される建物の庭やベランダ等の室外に設置される。
図1に示すように、熱源ユニット20は、主として、圧縮機21と、流路切換弁22と、アキュムレータ23と、熱源熱交換器24と、熱源膨張弁25(第2電動弁)と、熱源ファン26と、熱源制御部29と、を有する。また、熱源ユニット20は、室外温度センサ等の各種センサ(図示省略)を有する。
【0045】
図1に示すように、熱源ユニット20は、吸入管43aと、吐出管43bと、第1ガス冷媒管43cと、液冷媒管43dと、第2ガス冷媒管43eと、を有する。吸入管43aは、流路切換弁22と圧縮機21の吸入端とを接続する。吸入管43aには、アキュムレータ23が設けられる。吐出管43bは、圧縮機21の吐出端と流路切換弁22とを接続する。第1ガス冷媒管43cは、流路切換弁22と熱源熱交換器24のガス側端とを接続する。液冷媒管43dは、熱源熱交換器24の液側端と液冷媒連絡配管41とを接続する。液冷媒管43dには、熱源膨張弁25が設けられている。また、液冷媒管43dの液冷媒連絡配管41との接続部には、液閉鎖弁27が設けられている。第2ガス冷媒管43eは、流路切換弁22とガス冷媒連絡配管42とを接続する。第2ガス冷媒管43eのガス冷媒連絡配管42との接続部には、ガス閉鎖弁28が設けられている。液閉鎖弁27、及びガス閉鎖弁28は、手動で開閉される弁である。
【0046】
(2-2-1)圧縮機
圧縮機21は、低圧の冷媒を吸入し、圧縮機構(図示せず)によって冷媒を圧縮して、圧縮した冷媒を吐出する。圧縮機21は、例えば、ロータリ式やスクロール式等の容積圧縮機である。圧縮機21の圧縮機構は、圧縮機モータ21mによって駆動される。圧縮機モータ21mの回転数は、インバータにより制御可能である。
【0047】
(2-2-2)流路切換弁
流路切換弁22は、冷媒の流路を、第1状態と第2状態との間で切り換える機構である。流路切換弁22は、第1状態のとき、
図1の流路切換弁22内の実線で示されるように、吸入管43aを第2ガス冷媒管43eと連通させ、吐出管43bを第1ガス冷媒管43cと連通させる。流路切換弁22は、第2状態のとき、
図1の流路切換弁22内の破線で示されるように、吸入管43aを第1ガス冷媒管43cと連通させ、吐出管43bを第2ガス冷媒管43eと連通させる。
【0048】
流路切換弁22は、冷房運転時、及び再熱除湿運転時には、冷媒の流路を第1状態とする。このとき、圧縮機21から吐出される冷媒は、冷媒回路40内を、熱源熱交換器24、熱源膨張弁25、第1利用熱交換器111、利用膨張弁13、第2利用熱交換器112の順に流れ、圧縮機21へと戻る。
【0049】
流路切換弁22は、暖房運転時には、冷媒の流路を第2状態とする。このとき、圧縮機21から吐出される冷媒は、冷媒回路40内を、第2利用熱交換器112、利用膨張弁13、第1利用熱交換器111、熱源膨張弁25、熱源熱交換器24の順に流れ、圧縮機21へと戻る。
【0050】
(2-2-3)アキュムレータ
アキュムレータ23は、流入する冷媒を、ガス冷媒と液冷媒とに分離する気液分離機能を有する。アキュムレータ23に流入する冷媒は、ガス冷媒と液冷媒とに分離され、上部空間に集まるガス冷媒が、圧縮機21へと流出する。
【0051】
(2-2-4)熱源熱交換器
熱源熱交換器24は、熱源熱交換器24の内部を流れる冷媒と、室外の空気との間で熱交換を行わせる。熱源熱交換器24は、例えば、複数の伝熱フィンと、複数の伝熱管と、を有するフィン・アンド・チューブ型の熱交換器である。
【0052】
熱源熱交換器24の一端は、液冷媒管43dを介して液冷媒連絡配管41と接続されている。熱源熱交換器24の他端は、第1ガス冷媒管43cを介して流路切換弁22と接続されている。冷房運転時、及び再熱除湿運転時には、熱源熱交換器24に第1ガス冷媒管43cから冷媒が流入し、熱源熱交換器24は、冷媒の凝縮器として機能する。暖房運転時には、熱源熱交換器24に液冷媒管43dから冷媒が流入し、熱源熱交換器24は、冷媒の蒸発器として機能する。
【0053】
(2-2-5)熱源膨張弁
熱源膨張弁25は、冷媒回路40を流れる冷媒の圧力や流量を調節するための機構である。本実施形態では、熱源膨張弁25は、開度制御が可能な電子膨張弁である。熱源膨張弁25の開度は、制御部60によって制御される。制御部60は、所定のタイミングにおいて、熱源膨張弁25を全閉にして弁開度の基準位置を確認する初期化動作(第2初期化動作)を行う。以下、制御部60が熱源膨張弁25の初期化動作を行うことを、「熱源膨張弁25を初期化する」と記載することがある。
【0054】
(2-2-6)熱源ファン
熱源ファン26は、熱源熱交換器24に室外の空気を供給する。熱源ファン26は、例えば、プロペラファンである。熱源ファン26は、熱源ファンモータ26mによって駆動される。熱源ファンモータ26mの回転数は、インバータにより制御可能である。
【0055】
(2-2-7)熱源制御部
熱源制御部29は、熱源ユニット20を構成する各部の動作を制御する。
【0056】
熱源制御部29は、圧縮機モータ21m、流路切換弁22、熱源膨張弁25、及び熱源ファンモータ26mを含む、熱源ユニット20が有する各種機器と、制御信号や情報のやりとりを行うことが可能となるように、電気的に接続されている。また、熱源制御部29は、熱源ユニット20に設けられている各種センサと通信可能に接続されている。
【0057】
熱源制御部29は、制御演算装置及び記憶装置を有する。制御演算装置は、CPUやGPU等のプロセッサである。記憶装置は、RAM、ROM及びフラッシュメモリ等の記憶媒体である。制御演算装置は、記憶装置に記憶されているプログラムを読み出し、プログラムに従って所定の演算処理を行うことで、熱源ユニット20を構成する各部の動作を制御する。また、制御演算装置は、プログラムに従って、演算結果を記憶装置に書き込んだり、記憶装置に記憶されている情報を読み出したりすることができる。
【0058】
熱源制御部29は、通信線80を介して、利用ユニット10の利用制御部19との間で制御信号、計測信号、各種設定に関する信号等のやりとりを行う。利用制御部19、及び熱源制御部29は、協働して制御部60として機能する。制御部60の機能については後述する。
【0059】
(2-3)制御部
制御部60は、利用制御部19と、熱源制御部29とが、通信線80を介して通信可能に接続されることによって構成される。制御部60は、利用制御部19及び熱源制御部29のそれぞれの制御演算装置が、それぞれの記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、空気調和装置1全体の動作を制御する。
【0060】
図4は、空気調和装置1の制御ブロック図である。
図4に示すように、制御部60は、利用ファンモータ12m、利用膨張弁13、圧縮機モータ21m、流路切換弁22、熱源膨張弁25、及び熱源ファンモータ26m、を含む、利用ユニット10及び熱源ユニット20の各種機器と、制御信号や情報のやりとりを行うことが可能となるように、電気的に接続されている。また、制御部60は、室内温度センサ61、及び室内湿度センサ62を含む、利用ユニット10及び熱源ユニット20に設けられている各種センサと通信可能に接続されている。
【0061】
制御部60は、各種センサの計測信号や、利用制御部19が操作用リモコンから受信する指示等に基づいて、空気調和装置1の運転の開始及び停止や、空気調和装置1の各種機器の動作を制御する。また、制御部60は、今の運転状態等の情報や、各種報知を、操作用リモコンに送信することができる。
【0062】
制御部60は、空調運転として、冷房運転と、暖房運転と、送風運転と、再熱除湿運転と、を行う。また、制御部60は、主な機能として、サーモオフ機能を有する。
【0063】
(2-3-1)冷房運転
制御部60は、例えば、操作用リモコンから、冷房運転の開始、及び目標温度の指示を受ける。制御部60は、流路切換弁22を、第1状態に切り換える。制御部60は、圧縮機21を稼働させ、室内温度が目標温度となるように、熱源膨張弁25の開度、及び圧縮機21の運転容量を制御する。このとき、利用膨張弁13の開度は、全開となっている。
【0064】
冷房運転時の流路切換弁22は、圧縮機21から吐出される高温高圧のガス冷媒を熱源熱交換器24に流す。熱源熱交換器24では、冷媒と、熱源ファン26により供給される室外の空気との間で熱交換が行われる。熱源熱交換器24での熱交換により冷やされた冷媒は、熱源膨張弁25で減圧されて第1利用熱交換器111及び第2利用熱交換器112に流れ込む。第1利用熱交換器111及び第2利用熱交換器112では、冷媒と、利用ファン12により供給される室内の空気と、の間で熱交換が行われる。第1利用熱交換器111及び第2利用熱交換器112での熱交換により温められた冷媒は、流路切換弁22及びアキュムレータ23を経由して、圧縮機21に吸入される。第1利用熱交換器111及び第2利用熱交換器112で冷やされた室内の空気が、利用ユニット10から室内に吹き出されることで、室内の冷房が行われる。
【0065】
制御部60は、冷房運転時に、操作用リモコンから、冷房運転を停止する指示を受けた場合、圧縮機21、利用ファン12、及び熱源ファン26を停止する。そして、制御部60は、利用膨張弁13及び熱源膨張弁25を初期化した後、利用膨張弁13及び熱源膨張弁25を全開にしておく。また、制御部60は、冷房運転時に、操作用リモコンから、冷房運転を他の空調運転に切り替える指示、を受けた場合、圧縮機21、利用ファン12、及び熱源ファン26を一旦停止する。そして、制御部60は、利用膨張弁13及び熱源膨張弁25を初期化した後、利用膨張弁13及び熱源膨張弁25を全開にする。
【0066】
(2-3-2)暖房運転
制御部60は、例えば、操作用リモコンから、暖房運転の開始、及び目標温度の指示を受ける。制御部60は、流路切換弁22を、第2状態に切り換える。制御部60は、圧縮機21を稼働させ、室内温度が目標温度となるように、熱源膨張弁25の開度、及び圧縮機21の運転容量を制御する。このとき、利用膨張弁13の開度は、全開となっている。
【0067】
暖房運転時の流路切換弁22は、圧縮機21から吐出される高温高圧のガス冷媒を、第1利用熱交換器111及び第2利用熱交換器112に流す。第1利用熱交換器111及び第2利用熱交換器112では、冷媒と、利用ファン12により供給される室内の空気と、の間で熱交換が行われる。第1利用熱交換器111及び第2利用熱交換器112での熱交換により冷やされた冷媒は、熱源膨張弁25で減圧されて熱源熱交換器24に流れ込む。熱源熱交換器24では、冷媒と、熱源ファン26により供給される室外の空気と、の間で熱交換が行われる。熱源熱交換器24での熱交換により温められた冷媒は、流路切換弁22及びアキュムレータ23を経由して、圧縮機21に吸入される。第1利用熱交換器111及び第2利用熱交換器112で温められた室内の空気が、利用ユニット10から室内に吹き出されることで、室内の暖房が行われる。
【0068】
制御部60は、暖房運転時に、操作用リモコンから、暖房運転を停止する指示を受けた場合、圧縮機21、利用ファン12、及び熱源ファン26を停止する。そして、制御部60は、利用膨張弁13及び熱源膨張弁25を初期化した後、利用膨張弁13及び熱源膨張弁25を全開にしておく。また、制御部60は、暖房運転時に、操作用リモコンから、暖房運転を他の空調運転に切り替える指示、を受けた場合、圧縮機21、利用ファン12、及び熱源ファン26を一旦停止する。そして、制御部60は、利用膨張弁13及び熱源膨張弁25を初期化した後、利用膨張弁13及び熱源膨張弁25を全開にする。
【0069】
(2-3-3)送風運転
制御部60は、例えば、操作用リモコンから、送風運転の開始、及び目標風量の指示を受ける。制御部60は、目標風量になるように、利用ファン12を制御する。
【0070】
制御部60は、送風運転時に、操作用リモコンから、送風運転を停止する指示を受けた場合、利用ファン12を停止する。そして、制御部60は、利用膨張弁13及び熱源膨張弁25を初期化した後、利用膨張弁13及び熱源膨張弁25を全開にしておく。また、制御部60は、送風運転時に、操作用リモコンから、送風運転を他の空調運転に切り替える指示、を受けた場合、利用ファン12を一旦停止する。そして、制御部60は、利用膨張弁13及び熱源膨張弁25を初期化した後、利用膨張弁13及び熱源膨張弁25を全開にする。
【0071】
(2-3-4)再熱除湿運転
再熱除湿運転は、第1利用熱交換器111によって除湿を行い、さらに第2利用熱交換器112によって除湿した空気を温める、空調運転である。
【0072】
制御部60は、例えば、操作用リモコンから、再熱除湿運転の開始、及び目標湿度の指示を受ける。流路切換弁22を、第1状態に切り換える。制御部60は、主弁ポート131bを全閉の状態とし、副弁ポート132aを全開の状態とする。言い換えると、制御部60は、利用膨張弁13の開度を30%とする。制御部60は、圧縮機21を稼働させる。制御部60は、室内湿度が目標湿度となるように、かつ、熱源熱交換器24及び第1利用熱交換器111が冷媒の凝縮器として機能し、第2利用熱交換器112が冷媒の蒸発器として機能するように、利用膨張弁13の開度、熱源膨張弁25の開度、及び圧縮機21の運転容量を制御する。このとき、制御部60は、小流量制御域で、利用膨張弁13の開度調整を行う。
【0073】
再熱除湿運転時の流路切換弁22は、圧縮機21から吐出される高温高圧のガス冷媒を熱源熱交換器24に流す。熱源熱交換器24では、冷媒と、熱源ファン26により供給される室外の空気との間で熱交換が行われる。熱源熱交換器24での熱交換により冷やされた冷媒は、熱源膨張弁25で減圧されて第1利用熱交換器111に流れ込む。第1利用熱交換器111では、冷媒と、利用ファン12により供給される室内の空気と、の間で熱交換が行われる。第1利用熱交換器111での熱交換により冷やされた冷媒は、利用膨張弁13で減圧されて第2利用熱交換器112に流れ込む。第2利用熱交換器112では、冷媒と、利用ファン12により供給される室内の空気と、の間で熱交換が行われる。第2利用熱交換器112での熱交換により温められた冷媒は、流路切換弁22及びアキュムレータ23を経由して、圧縮機21に吸入される。第2利用熱交換器112で除湿され、第1利用熱交換器111で温められた室内の空気が、利用ユニット10から室内に吹き出されることで、室内の再熱除湿が行われる。
【0074】
制御部60は、再熱除湿運転時に、操作用リモコンから、再熱除湿運転を停止する指示を受けた場合、圧縮機21、利用ファン12、及び熱源ファン26を停止する。そして、制御部60は、利用膨張弁13及び熱源膨張弁25を初期化した後、利用膨張弁13及び熱源膨張弁25を全開にしておく。また、制御部60は、再熱除湿運転時に、操作用リモコンから、再熱除湿運転を他の空調運転に切り替える指示、を受けた場合、圧縮機21、利用ファン12、及び熱源ファン26を一旦停止する。そして、制御部60は、利用膨張弁13及び熱源膨張弁25を初期化した後、利用膨張弁13及び熱源膨張弁25を全開にする。
【0075】
(2-3-5)サーモオフ機能
本実施形態では、冷房運転時、暖房運転時、及び再熱除湿運転時に、所定条件を満たすことによって、制御部60が、自身の判断により第1利用熱交換器111及び第2利用熱交換器112に流れる冷媒量を、一時的に、ゼロ又は微量にする機能を、サーモオフ機能と定義する。以下、当該所定条件を、サーモオフ条件と記載することがある。また、サーモオフ機能により、第1利用熱交換器111及び第2利用熱交換器112に流れる冷媒量が、一時的に、ゼロ又は微量となっている状態を、サーモオフ状態と記載することがある。
【0076】
冷房運転時におけるサーモオフ条件は、例えば「室内温度が目標温度より低くなる」という条件である。制御部60は、冷房運転時にサーモオフ条件が満たされると、圧縮機21、利用ファン12、及び熱源ファン26を停止する。そして、制御部60は、利用膨張弁13、及び熱源膨張弁25を初期化した後、利用膨張弁13、及び熱源膨張弁25を全開にする。その結果、第1利用熱交換器111及び第2利用熱交換器112に流れる冷媒量は、一時的に、ゼロ又は微量となる。時間が経過し、冷房運転時のサーモオフ条件が満たされなくなると、制御部60は、冷房運転を再度開始する。冷房運転を開始する手順は、前述の通りである。
【0077】
暖房運転時におけるサーモオフ条件は、例えば「室内温度が目標温度より高くなる」という条件である。制御部60は、暖房運転時にサーモオフ条件が満たされると、圧縮機21、利用ファン12、及び熱源ファン26を停止する。そして、制御部60は、利用膨張弁13、及び熱源膨張弁25を初期化した後、利用膨張弁13、及び熱源膨張弁25を全開にする。その結果、第1利用熱交換器111及び第2利用熱交換器112に流れる冷媒量は、一時的に、ゼロ又は微量となる。時間が経過し、暖房運転時のサーモオフ条件が満たされなくなると、制御部60は、暖房運転を再度開始する。暖房運転を開始する手順は、前述の通りである。
【0078】
再熱除湿運転時におけるサーモオフ条件は、例えば「室内湿度が目標湿度より低くなる」という条件である。制御部60は、再熱除湿運転時にサーモオフ条件が満たされると、圧縮機21、利用ファン12、及び熱源ファン26を停止する。制御部60は、熱源膨張弁25を初期化した後、熱源膨張弁25を全開にする。一方、制御部60は、利用膨張弁13は初期化せず、サーモオフ条件を満たした時の開度を維持する。その結果、第1利用熱交換器111及び第2利用熱交換器112に流れる冷媒量は、一時的に、ゼロ又は微量となる。時間が経過し、再熱除湿運転時のサーモオフ条件が満たされなくなると、制御部60は、再熱除湿運転を再度開始する。再熱除湿運転を開始する手順は、前述の通りである。
【0079】
制御部60が、冷房運転、暖房運転、又は再熱除湿運転を開始すると、利用膨張弁13の内部を冷媒が流れ始める。このとき、冷媒が、第1流路及び第2流路の2つの流路を流れると、利用膨張弁13の内部で冷媒が分流及び合流することにより、騒音が生じる。そのため、制御部60は、冷房運転、暖房運転、又は再熱除湿運転を開始する前に、利用膨張弁13を、0%より大きく30%以下の開度(冷媒は第1流路のみを流れる)に、又は100%の開度(ほとんどの冷媒は第2流路を流れる)に、することが望ましい。
【0080】
再熱除湿運転時では、制御部60は、小流量制御域で利用膨張弁13の開度調整を行うため、利用膨張弁13の開度は、0%より大きく30%以下である。また、空気調和装置1が再熱除湿運転のサーモオフ状態となった時、次に開始される運転は、再熱除湿運転である可能性が高い。そのため、制御部60は、再熱除湿運転時にサーモオフ条件が満たされても、利用膨張弁13は初期化せず、サーモオフ条件を満たした時の開度を維持しておく。
【0081】
(3)特徴
(3-1)
従来、次の空調運転の開始に備えて、室内にある利用膨張弁を初期化する技術がある。しかし、従来の様に、室内にある利用膨張弁を初期化すると、騒音が生じ、室内に居る人に不快感を与える、という課題がある。
【0082】
本実施形態の空気調和装置1は、冷媒回路40と、制御部60と、を備える。冷媒回路40は、圧縮機21、熱源熱交換器24、第1利用熱交換器111、利用膨張弁13、及び第2利用熱交換器112、が順に並ぶ環状の冷媒回路40である。制御部60は、利用膨張弁13によって冷媒を減圧し、第1利用熱交換器111及び第2利用熱交換器112の内、一方を蒸発器として機能させ、他方を凝縮器として機能させる、再熱除湿運転を行う。制御部60は、再熱除湿運転時において、再熱除湿運転を停止させる時には、第1初期化動作を行う。第1初期化動作は、利用膨張弁13を全閉にして弁開度の基準位置を確認する動作である。制御部60は、再熱除湿運転時において、所定条件を満たすことによって、自身の判断により第1利用熱交換器111及び第2利用熱交換器112に流れる冷媒量を、ゼロ又は微量にする時には、第1初期化動作を行わない。
【0083】
空気調和装置1は、室内にある利用膨張弁13を初期化しない条件を設ける。その結果、空気調和装置1は、利用膨張弁13の初期化の回数を減らし、利用膨張弁13の初期化に起因する騒音を低減することができる。
【0084】
(3-2)
本実施形態の空気調和装置1では、制御部60は、再熱除湿運転時において、再熱除湿運転から、他の空調運転に切り換える時には、第1初期化動作を行う。
【0085】
その結果、空気調和装置1は、自身が認識する利用膨張弁13の駆動パルス位置と、実際の利用膨張弁13の駆動パルス位置と、を合わせることができる。
【0086】
(3-3)
本実施形態の空気調和装置1では、利用膨張弁13は、副弁体133と、主弁体132と、を有する。副弁体133は、冷媒の小流量制御域での開度調整を行う。主弁体132は、小流量制御域よりも大きい大流量制御域での開度調整を行う。
【0087】
その結果、空気調和装置1は、冷媒の流量を、細かく制御することができる。
【0088】
(3-4)
本実施形態の空気調和装置1では、制御部60は、再熱除湿運転時には、小流量制御域で、利用膨張弁13の開度調整を行う。
【0089】
その結果、空気調和装置1は、高い精度で、除湿能力を制御することができる。
【0090】
(3-5)
本実施形態の空気調和装置1では、冷媒回路40は、熱源熱交換器24と、第1利用熱交換器111と、の間に熱源膨張弁25を有する。制御部60は、所定条件を満たすことによって、第1利用熱交換器111及び第2利用熱交換器112に流れる冷媒量を、ゼロ又は微量にする時には、第2初期化動作を行う。第2初期化動作は、熱源膨張弁25を全閉にして弁開度の基準位置を確認する動作である。
【0091】
(3-6)
本実施形態の空気調和装置1は、利用ファン12をさらに備える。利用ファン12は、第1利用熱交換器111及び第2利用熱交換器112に、室内の空気を供給する。制御部60は、所定条件を満たすことによって、第1利用熱交換器111及び第2利用熱交換器112に流れる冷媒量を、ゼロ又は微量にする時には、利用ファン12を停止する。
【0092】
空気調和装置1は、利用ファン12が停止した静かな室内で、利用膨張弁13の初期化を行わない。その結果、空気調和装置1は、騒音による室内に居る人の不快感を、より低減することができる。
【0093】
(4)変形例
(4-1)変形例1A
本実施形態では、空気調和装置1は、1つの利用ユニット10を有していた。しかし、空気調和装置1は、複数の利用ユニット10を有していてもよい。
図5は、複数の利用ユニット10を有する空気調和装置1の冷媒回路40を示す図である。
図5では、複数の利用ユニット10として、2台の利用ユニット10a,10bを示している。
【0094】
利用ユニット10が有する、第1利用熱交換器111、第2利用熱交換器112、利用ファン12、利用膨張弁13、利用制御部19、室内温度センサ61、及び室内湿度センサ62、に対応して、利用ユニット10a,10bは、それぞれ、第1利用熱交換器111a,111b、第2利用熱交換器112a,112b、利用ファン12a,12b、利用膨張弁13a,13b、利用制御部19a,19b、室内温度センサ61a,61b、及び室内湿度センサ62a,62b、を有する。
【0095】
利用ユニット10a,10bと、熱源ユニット20とは、液冷媒連絡配管41a,41b及びガス冷媒連絡配管42によって接続され、冷媒回路40を構成する。
【0096】
利用ユニット10aは、第1利用熱交換器111aの液側端と液冷媒連絡配管41aとを接続する、液冷媒配管44aと、第2利用熱交換器112aのガス側端とガス冷媒連絡配管42とを接続する、ガス冷媒配管45aとを有する。利用ユニット10bは、第1利用熱交換器111bの液側端と液冷媒連絡配管41bとを接続する、液冷媒配管44bと、第2利用熱交換器112bのガス側端とガス冷媒連絡配管42とを接続する、ガス冷媒配管45bとを有する。
【0097】
液冷媒管43dは、2つの冷媒管に分岐する。一方の冷媒管は、熱源膨張弁25aが設けられ、液閉鎖弁27aを介して、液冷媒連絡配管41aと接続される。他方の冷媒管は、熱源膨張弁25bが設けられ、液閉鎖弁27bを介して、液冷媒連絡配管41bと接続される。
【0098】
制御部60は、利用ユニット10a,10bのそれぞれに対して、各種空調運転、及びサーモオフ機能を実行させる。
【0099】
例えば、利用ユニット10aが再熱除湿運転を、利用ユニット10bが冷房運転を、行っているとする。
【0100】
利用ユニット10aが、再熱除湿運転時におけるサーモオフ条件を満たした場合、制御部60は、利用ユニット10bの冷房運転のため、圧縮機21、及び熱源ファン26を停止せず、利用ファン12aを停止する。そして、制御部60は、熱源膨張弁25aを全閉にする。制御部60は、利用膨張弁13aは初期化せず、サーモオフ条件を満たした時の開度を維持する。その結果、第1利用熱交換器111a及び第2利用熱交換器112aに流れる冷媒量は、一時的に、ゼロ又は微量となる。
【0101】
また、利用ユニット10aが、利用ユニット10aの操作用リモコンから、再熱除湿運転を停止する指示を受けた場合、制御部60は、利用ユニット10bの冷房運転のため、圧縮機21、及び熱源ファン26を停止せず、利用ファン12aを停止する。そして、制御部60は、熱源膨張弁25aを全閉にする。制御部60は、利用膨張弁13aを初期化した後、利用膨張弁13aを全開にしておく。
【0102】
また、利用ユニット10aが、利用ユニット10aの操作用リモコンから、再熱除湿運転を他の空調運転に切り替える指示、を受けた場合、制御部60は、利用ユニット10bの冷房運転のため、圧縮機21、及び熱源ファン26を停止しない。制御部60は、利用膨張弁13a及び熱源膨張弁25aを初期化した後、利用膨張弁13a及び熱源膨張弁25aを全開にする。
【0103】
(4-2)
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0104】
1 空気調和装置
12,12a,12b 利用ファン(ファン)
13,13a,13b 利用膨張弁(第1電動弁)
21 圧縮機
24 熱源熱交換器
25 熱源膨張弁(第2電動弁)
40 冷媒回路
60 制御部
111,111a,111b 第1利用熱交換器
112,112a,112b 第2利用熱交換器
132 主弁体(第1部材)
133 副弁体(第2部材)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0105】