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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】天井設置型空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/0073 20190101AFI20240510BHJP
   F24F 13/28 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
F24F1/0073
F24F13/28
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021176696
(22)【出願日】2021-10-28
(65)【公開番号】P2023066150
(43)【公開日】2023-05-15
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】菅 恒二
(72)【発明者】
【氏名】曹 旭発
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 文人
(72)【発明者】
【氏名】山田 奏子
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-203725(JP,A)
【文献】特開平04-126927(JP,A)
【文献】特開2016-217603(JP,A)
【文献】特開平04-332321(JP,A)
【文献】特開2001-027425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/0073
F24F 8/108
F24F 13/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口を有するケーシング(10)と、
前記ケーシング(10)内に配置された第1フィルタ(51)及び第2フィルタ(52)と、
前記ケーシング(10)内において前記吸込口(11)の上方に配置され、前記吸込口(11)と鉛直方向に重なるファン(30)であって、前記吸込口から前記ファン(30)を通って前記第1フィルタ(51)及び第2フィルタ(52)へと向かう気流を発生させるファン(30)と、
前記第1フィルタ(51)及び前記第2フィルタ(52)を支持し、前記ケーシング(10)に対して着脱可能な支持部材(55)であって、前記ケーシング(10)内において前記ファン(30)の側方に配置された支持部材(55)と、
を備え
前記支持部材(55)の下端(55b)は、前記支持部材(55)の上端(55a)よりも、水平方向において、前記ファン(30)に近い、天井設置型空気調和機(1)。
【請求項2】
前記支持部材(55)は、前記第1フィルタ(51)及び前記第2フィルタ(52)の周縁に沿った枠部(55f)を有する、請求項1に記載の天井設置型空気調和機(1)。
【請求項3】
前記第1フィルタ(51)及び前記第2フィルタ(52)は、前記気流の方向に沿って積層され、
前記支持部材(55)は、前記第1フィルタ(51)の前記第2フィルタ(52)と対向する面を支持する第1支持面(55p1)と、前記第2フィルタ(52)における前記第1フィルタ(51)と対向する面を支持する第2支持面(55p2)とを有し、
前記第1支持面(55p1)と前記第2支持面(55p2)とは、互いに逆方向を向いている、請求項1又は2に記載の天井設置型空気調和機(1)。
【請求項4】
前記支持部材(55)の前記ケーシング(10)に対する固定部(55c)は、弾性を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の天井設置型空気調和機(1)。
【請求項5】
前記第1フィルタ(51)は、HEPAフィルタである、請求項1~のいずれか1項に記載の天井設置型空気調和機(1)。
【請求項6】
前記第2フィルタ(52)は、脱臭フィルタである、請求項1~のいずれか1項に記載の天井設置型空気調和機(1)。
【請求項7】
前記第2フィルタ(52)は、前記気流の方向において前記第1フィルタ(51)の下流に配置されている、請求項1~のいずれか1項に記載の天井設置型空気調和機(1)。
【請求項8】
前記支持部材(55)は、水平方向に沿った軸(55z)を中心として前記ケーシングに対して回転可能である、請求項1~7のいずれか1項に記載の天井設置型空気調和機(1)。
【請求項9】
前記第1フィルタ(51)、前記第2フィルタ(52)及び前記支持部材(55)を含むフィルタユニット(50)が前記ケーシング(10)に着脱される際に前記フィルタユニット(50)の前記ファン(30)に対向する面をガイドするガイド部材であって、下方に向かうほど水平方向において前記ファン(30)に近づくように傾斜したガイド面を有するガイド部材をさらに備えた、請求項1~8のいずれか1項に記載の天井設置型空気調和機(1)。
【請求項10】
前記ガイド面の、鉛直方向に対する鋭角側の角度は、前記ケーシング(10)に装着された前記フィルタユニット(50)の前記対向する面の、鉛直方向に対する鋭角側の角度よりも大きい、請求項9に記載の天井設置型空気調和機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、天井設置型空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の空気清浄機(本開示の「天井設置型空気調和機」に相当する。)は、吸込口を有するケーシングと、ケーシング内に配置された空気浄化部(段落0038より、本開示の「第1フィルタ」に相当する。)と、ケーシング内に配置された遠心送風機構(本開示の「ファン」に相当する。)とを備え、吸込口から吸い込んだ空気を、遠心送風機構を介して空気浄化部に導入し、空気浄化部によって浄化してケーシング外に吹き出すように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-179021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空気浄化性能を維持するには、フィルタの交換(即ち、フィルタのケーシングに対する取り外し及び取り付け)を定期的に行う必要があるが、特許文献1には、空気浄化部(フィルタ)の交換について何ら示されていない。また、フィルタが複数ある場合、フィルタ毎に交換作業を行うと、交換作業が煩雑になる。
【0005】
本開示の目的は、フィルタが複数ある場合においてもフィルタの交換作業を容易に行える天井設置型空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る天井設置型空気調和機は、吸込口を有するケーシングと、前記ケーシング内に配置された第1フィルタ及び第2フィルタと、前記ケーシング内に配置されたファンであって、前記吸込口から前記ファンを通って前記第1フィルタ及び第2フィルタへと向かう気流を発生させるファンと、前記第1フィルタ及び前記第2フィルタを支持し、前記ケーシングに対して着脱可能な支持部材と、を備えている。
【0007】
本開示によると、支持部材をケーシングに対して着脱することで、第1フィルタ及び第2フィルタをまとめて交換できる。したがって、フィルタが複数ある場合においても、フィルタの交換作業を容易に行える。
【0008】
上記天井設置型空気調和機において、前記支持部材は、前記第1フィルタ及び前記第2フィルタの周縁に沿った枠部を有してよい。この場合、各フィルタのフィルタ性能を損なわずに、第1フィルタ及び第2フィルタを支持部材によって支持できる。
【0009】
上記天井設置型空気調和機において、前記第1フィルタ及び前記第2フィルタは、前記気流の方向に沿って積層され、前記支持部材は、前記第1フィルタの前記第2フィルタと対向する面を支持する第1支持面と、前記第2フィルタにおける前記第1フィルタと対向する面を支持する第2支持面とを有し、前記第1支持面と前記第2支持面とは、互いに逆方向を向いてよい。この場合、第1フィルタ及び第2フィルタを互いに逆方向から支持部材に対して取り付けることができる。
【0010】
上記天井設置型空気調和機において、前記支持部材の前記ケーシングに対する固定部は、弾性を有してよい。この場合、弾性を有する固定部により、ケーシングに対する支持部材の着脱作業(即ち、フィルタの交換作業)を容易に行える。
【0011】
上記天井設置型空気調和機において、前記ファンは、前記吸込口の上方に配置され、前記支持部材は、前記ファンの側方に配置され、前記支持部材の下端は、前記支持部材の上端よりも、水平方向において、前記ファンに近くてよい。この場合、作業者が、吸込口からアクセスした際に、支持部材の下端に接し易い。したがって、支持部材の下端を操作して、ケーシングに対する支持部材の着脱作業(即ち、フィルタの交換作業)をより容易に行える。
【0012】
上記天井設置型空気調和機において、前記第1フィルタは、HEPAフィルタであってよい。この場合、高い除菌効果が得られる。
【0013】
上記天井設置型空気調和機において、前記第2フィルタは、脱臭フィルタであってよい。この場合、脱臭効果が得られる。
【0014】
上記天井設置型空気調和機において、前記第2フィルタは、前記気流の方向において前記第1フィルタの下流に配置されてよい。この場合、第1フィルタによって浄化された空気が、第2フィルタを通過する。したがって、第2フィルタが汚れ難く、第2フィルタの交換頻度を下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の一実施形態に係る天井設置型空気調和機を下側から見た平面図である。
図2図1に示す天井設置型空気調和機のII-II線に沿った断面図である。
図3図1に示す天井設置型空気調和機に含まれるフィルタユニットを内側から見た斜視図である。
図4図1に示す天井設置型空気調和機に含まれるフィルタユニットを外側から見た斜視図である。
図5図3及び図4に示すフィルタユニットの分解斜視図である。
図6】本開示の一実施形態に係る天井設置型空気調和機において、吸込グリルを回転させてケーシングの開口を開ける工程を示す図2に対応する断面図である。
図7】本開示の一実施形態に係る天井設置型空気調和機において、吸込グリルを取り外した後、整流部材を取り外す工程を示す図2に対応する断面図である。
図8】本開示の一実施形態に係る天井設置型空気調和機において、吸込グリル及び整流部材を取り外した後、フィルタユニットを取り外す工程を示す図2に対応する断面図である。
図9】本開示の一実施形態に係る天井設置型空気調和機において、フィルタユニットを装着する前半工程を示す図2に対応する断面図である。
図10】本開示の一実施形態に係る天井設置型空気調和機において、フィルタユニットを装着する後半工程を示す図2に対応する断面図である。
図11】本開示の一実施形態に係るフィルタユニットにおいて、HEPAフィルタをフィルタ枠から取り外す工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<天井設置型空気調和機の全体構成>
先ず、図1及び図2を参照し、本開示の一実施形態に係る天井設置型空気調和機1の全体構成について説明する。なお、以下の説明において、「上」「下」「鉛直」「水平」等の方向は、天井設置型空気調和機1が図2の状態で設置された状態での方向を表す。
【0017】
天井設置型空気調和機1は、ケーシング10と、吸込グリル20と、化粧パネル25と、ファン30と、整流部材40と、4つのフィルタユニット50と、粗塵フィルタ60と、プレフィルタ70と、除菌部90と、制御部100とを備えている。
【0018】
天井設置型空気調和機1は、ケーシング10が天井Cに埋め込まれた、天井埋込型の空気調和機である。
【0019】
ファン30と、整流部材40と、4つのフィルタユニット50と、粗塵フィルタ60と、プレフィルタ70と、除菌部90とは、ケーシング10内に配置されている。制御部100は、ケーシング10の外側面に固定されている。
【0020】
ケーシング10は、四角筒状の有底部材であり、下面に矩形状の開口10xを有する。ケーシング10の下面に、吸込グリル20及び化粧パネル25が取り付けられている。吸込グリル20及び化粧パネル25は、天井面C1に沿って配置されている。
【0021】
吸込グリル20は、矩形状の板部材であり、ケーシング10の下面の開口10xを覆っている。吸込グリル20は、一端に凸部20zを有する。凸部20zは、矩形状である吸込グリル20の4つの辺の一辺に沿って、水平方向に延びている。吸込グリル20は、凸部20zを中心としてケーシング10に対して回転可能に支持されている。吸込グリル20が凸部20zを中心としてケーシング10に対して回転することで、開口10xが開閉する。換言すると、吸込グリル20がケーシング10に対して回転することで、図2に示すように開口10xが閉じた状態と、図6に示すように開口10xが開いた状態とが成立し得る。さらに、吸込グリル20は、ケーシング10に対して着脱可能である。
【0022】
吸込グリル20は、複数の貫通孔11xで構成される吸込口11が形成された中央領域20r1と、中央領域20r1の外側の縁領域20r2とを有する。凸部20zは、縁領域20r2に設けられている。
【0023】
化粧パネル25は、吸込グリル20の周縁に沿って形成され、吸込グリル20の4つの辺のそれぞれに対応する4つの直線部を有する。化粧パネル25の各直線部に、フラップ25fが設けられている。フラップ25fは、化粧パネル25に対して回転可能に支持されている。フラップ25fが化粧パネルに対して回転することで、吹出口12が開閉する。換言すると、フラップ25fが化粧パネルに対して回転することで、図1に示すように吹出口12が閉じた状態と、図2に示すように吹出口12が開いた状態とが成立し得る。
【0024】
このように、吸込口11及び吹出口12は、ケーシング10の下面に配置されている。
【0025】
ファン30は、遠心ファンであり、モータ31と、複数のフィン32とを有する。ファン30は、モータ31の駆動によりフィン32を回転させることで、図2に太矢印で示すように、吸込口11から、プレフィルタ70及び粗塵フィルタ60を通過し、整流部材40及びファン30を通って、フィルタユニット50、さらに吹出口12へと向かう、気流を発生させる。
【0026】
ファン30は、吸込口11の上方に配置されている。ファン30は、吸込口11に対面し、吸込口11と鉛直方向に重なっている。
【0027】
整流部材40は、吸込口11からファン30までの空気の通路を形成する筒状の部材であって、吸込口11からファン30までの空気を整流する。整流部材40は、吸込口11と鉛直方向に重なり、吸込口11の上方かつファン30の下方に配置されている。
【0028】
整流部材40は、略円錐台状の上部41と、四角筒状の下部42とを有する。上部41の上端41aは、フィン32の下端32bと水平方向に重なっている。下部42は、上部41よりも吸込口11に近く、かつ、上部41の上端41aの径よりも大きな径を有する。
【0029】
上部41の上端41aが整流部材40の上端40aに該当し、下部42の下端42bが整流部材40の下端40bに該当する。
【0030】
4つのフィルタユニット50は、それぞれ、吸込口11の上方かつファン30の側方に配置されている。4つのフィルタユニット50は、ファン30の円周に沿って、ケーシング10の4つの側面のそれぞれと対向する位置に配置されている。
【0031】
各フィルタユニット50は、HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)51と、脱臭フィルタ52と、フィルタ枠55とを有する。フィルタ枠55は、HEPAフィルタ51及び脱臭フィルタ52を支持し、ケーシング10に対して着脱可能である。
【0032】
HEPAフィルタ51は、本開示の「第1フィルタ」に該当する。脱臭フィルタ52は、本開示の「第2フィルタ」に該当する。フィルタ枠55は、本開示の「支持部材」に該当する。
【0033】
HEPAフィルタ51及び脱臭フィルタ52は、上記気流の方向に沿って積層されている。脱臭フィルタ52は、上記気流の方向においてHEPAフィルタ51の下流に配置されている。HEPAフィルタ51は、上記気流の方向に沿って山部及び谷部が形成された、プリーツ形状である。脱臭フィルタ52は、臭気成分を吸着するものであり、天井設置型空気調和機1が設置された部屋から臭気成分を減少させる。脱臭フィルタ52は、例えば活性炭で構成される。
【0034】
各フィルタユニット50は、鉛直面及び水平面と交差して配置されている。換言すると、各フィルタユニット50は、斜めに配置されている。各フィルタ51,52の表面は、鉛直方向及び水平方向と交差している。各フィルタユニット50において、下端50bは、上端50aよりも、水平方向においてファン30に近く、ケーシング10の内側に位置する。各フィルタユニット50において、内側は、上記気流の方向における上流側であって、ファン30と対向し、外側は、上記気流の方向における下流側であって、ケーシング10の側壁と対向する。
【0035】
フィルタ枠55の下端55bがフィルタユニット50の下端50bに該当し、フィルタ枠55の上端55aがフィルタユニット50の上端50aに該当する。
【0036】
各フィルタユニット50の下端50bは、整流部材40の下端40bよりも上方に位置している。
【0037】
粗塵フィルタ60は、整流部材40の下部42に取り付けられており、上記気流の方向において吸込口11とファン30との間に配置されている。
【0038】
粗塵フィルタ60は、整流部材40の下部42の上端42aから、鉛直方向に離隔している。これにより、整流部材40による整流効果が粗塵フィルタ60によって妨げられない。
【0039】
プレフィルタ70は、吸込グリル20の中央領域20r1の上面に支持されており、上記気流の方向において吸込口11と粗塵フィルタ60との間に配置されている。プレフィルタ70は、吸込口11を構成する複数の貫通孔11xを覆っている。吸込口11から吸い込まれた空気は、プレフィルタ70で浄化された後、ケーシング10内に供給される。
【0040】
HEPAフィルタ51は、粒径0.3μm以上の粒子に対して99.97%以上の捕集効率を有する。HEPAフィルタ51によって所定の捕集効率(例えば99.97%)が得られる粒子の最小サイズ(粒径0.3μm)は、粗塵フィルタ60によって上記所定の捕集効率が得られる粒子の最小サイズよりも小さい。プレフィルタ70によって上記所定の捕集効率が得られる粒子の最小サイズは、粗塵フィルタ60によって上記所定の捕集効率が得られる粒子の最小サイズよりも大きい。
【0041】
除菌部90は、紫外線を照射する照射部91と、活性種を発生させる活性種発生部92とを含み、ケーシング10内における上記気流の方向において吸込口11の下流かつファン30の上流(プレフィルタ70と粗塵フィルタ60との間)を除菌する。本開示において、紫外線及び活性種による菌の殺菌並びに臭い成分及びウイルスの分解等を、まとめて単に「除菌」と称する。
【0042】
照射部91は、波長が200~280ナノメートルの紫外線C波(以下、「UVC」と称す。)を照射するUVC-LED(ultraviolet C - light emitting diode)を含んでおり、粗塵フィルタ60の下面に向けてUVCを照射する。HEPAフィルタ51がプリーツ形状であるのに対し、粗塵フィルタ60は平坦である。ここで、「平坦」とは、表面に折り目(プリーツ)がなく、表面に対して斜め方向から光が照射された場合に影となる部位が生じない形態であることを意味する。HEPAフィルタ51のようにプリーツ形状の場合、UVCが奥まで到達し難い。これに対し、粗塵フィルタ60は平坦であるため、UVCが奥まで到達し易い。
【0043】
活性種発生部92は、臭気成分を含む有害物質を分解する。活性種発生部92は、吸込口92xと、吹出口92yとを有する。吸込口92xは、上記気流の方向において脱臭フィルタ52と吹出口12との間に配置されている。吹出口92yは、上記気流の方向において吸込口11の下流かつファン30の上流(プレフィルタ70と粗塵フィルタ60との間)に配置されている。脱臭フィルタ52によって吸着されずに残った空気中の臭気成分は、吹出口12から吹き出される前に、吸込口92xから活性種発生部92に取り込まれ、活性種発生部92によって分解される。そして、活性種発生部92によって臭気成分を含む有害物質が除去された空気が、吹出口92yから、プレフィルタ70と粗塵フィルタ60との間に供給される。
【0044】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成され、ファン30及び除菌部90を制御する。
【0045】
<フィルタユニットの構成>
次いで、図2図5を参照し、フィルタユニット50の構成について詳細に説明する。
【0046】
フィルタ枠55は、図5に示すように、矩形状の枠部55fと、枠部55fの内周面から突出した突出部55pとを有する。
【0047】
枠部55fは、HEPAフィルタ51及び脱臭フィルタ52の周縁に沿って形成されている。
【0048】
突出部55pは、枠部55fの厚み方向の中央部分において、枠部55fの内周面の全周に亘って形成されている。突出部55pにおいて、内側の面は、HEPAフィルタ51の脱臭フィルタ52と対向する面を支持する第1支持面55p1に該当し、外側の面は、脱臭フィルタ52におけるHEPAフィルタ51と対向する面を支持する第2支持面55p2に該当する。第1支持面55p1と第2支持面55p2とは、互いに逆方向を向いている。
【0049】
フィルタ枠55は、さらに、図3図5に示すように、1つの爪551と、1つの爪552と、2つの爪553と、2つの爪554とを有する。爪551,552は、HEPAフィルタ51をフィルタ枠55に固定するためのものである。爪553,554は、脱臭フィルタ52をフィルタ枠55に固定するためのものである。
【0050】
爪551,552は、図3及び図5に示すように、枠部55fの厚み方向の一端において、枠部55fの各短辺の中央から、枠部55fの内側に向けて突出している。爪553は、図4及び図5に示すように、枠部55fの厚み方向の他端において、枠部55fの一方の短辺の略中央から、枠部55fの内側に向けて突出している。爪554は、図4及び図5に示すように、枠部55fの厚み方向の他端において、枠部55fの他方の短辺の一端及び他端の近傍から、枠部55fの内側に向けて突出している。
【0051】
枠部55fの厚み方向の一端は、フィルタユニット50の内側に位置する。枠部55fの厚み方向の他端は、フィルタユニット50の外側に位置する。
【0052】
脱臭フィルタ52をフィルタ枠55に固定するための爪553,554の数(4つ)は、HEPAフィルタ51をフィルタ枠55に固定するための爪551,552の数(2つ)よりも多い。これにより、脱臭フィルタ52を、HEPAフィルタ51よりも、フィルタ枠55に対して強固に固定できる。換言すると、HEPAフィルタ51をフィルタ枠55から取り外し易く、脱臭フィルタ52をフィルタ枠55から取り外し難くできる。
【0053】
フィルタ枠55は、さらに、図3図5に示すように、取っ手559を有する。取っ手559は、爪552に接続し、フィルタユニット50の内側に向けて突出している。取っ手559を掴んで爪552を撓ませることで、HEPAフィルタ51をフィルタ枠55から取り外し易くできる。
【0054】
HEPAフィルタ51は、プリーツ形状とされた濾紙上に粒子が蓄積していくため、定期的に交換する必要がある。これに対し、脱臭フィルタ52は、臭気成分を吸着するものであり、粒子が蓄積していくものではない。したがって、HEPAフィルタ51の交換頻度は、脱臭フィルタ52の交換頻度よりも高い。このようにHEPAフィルタ51の交換頻度が脱臭フィルタ52の交換頻度よりも高い場合に、HEPAフィルタ51をフィルタ枠55から取り外し易くできる上記構成は、特に有効である。上記構成とは、脱臭フィルタ52をフィルタ枠55に固定するための爪553,554の数(4つ)がHEPAフィルタ51をフィルタ枠55に固定するための爪551,552の数(2つ)よりも多いこと、及び、爪552に接続した取っ手559が設けられたことをいう。
【0055】
フィルタ枠55は、さらに、図2に示すように、固定部55cを有する。固定部55cは、フィルタユニット50をケーシング10に固定するためのものであり、フィルタユニット50の鉛直方向の中心50xよりも下方に設けられている。
【0056】
固定部55cは、図3図5に示すように、枠部55fの下端において、枠部55fの長辺の中央から、下方に突出している。固定部55cがケーシング10の凹部10c内に配置されることで、フィルタユニット50がケーシング10に固定される(図2参照)。
【0057】
フィルタ枠55は、さらに、図3図5に示すように、突起55dを有する。突起55dは、枠部55fの下端において、枠部55fの長辺の中央と一端との間から、フィルタユニット50の内側に向けて突出している。突起55dは、フィルタユニット50におけるファン30(図2参照)と対向する面に設けられている。
【0058】
フィルタ枠55は、さらに、図2図5に示すように、凸部55zを有する。凸部55zは、図2に示すように、フィルタユニット50の鉛直方向の中心50xよりも上方に設けられている。
【0059】
凸部55zは、図3図5に示すように、フィルタ枠55の上端において、枠部55fの長辺全体に亘って、水平方向に沿って延びている。フィルタユニット50は、凸部55zがケーシング10の凹部10z内に配置された状態で、凸部55zを中心としてケーシング10に対して回転可能である。
【0060】
フィルタ枠55は、樹脂からなる。爪551~554、固定部55c、突起55d、凸部55z等を含む、フィルタ枠55全体が、弾性及び可撓性を有する。
【0061】
<フィルタユニットの交換工程>
次いで、図6図10を参照し、フィルタユニット50を交換する工程について説明する。
【0062】
先ず、吸込グリル20を、凸部20zを中心としてケーシング10に対して回転させることで、ケーシング10の開口10xを開ける(図6参照)。さらに、吸込グリル20を、ケーシング10から取り外す。
【0063】
次に、整流部材40を、下方に移動させ、開口10xを通過させて、ケーシング10から取り外す(図7参照)。このとき、整流部材40に取り付けられた粗塵フィルタ60も、整流部材40と共に、ケーシング10から取り外される。
【0064】
次に、4つのフィルタユニット50を、ケーシング10から順次取り外す(図8参照)。このとき、作業者は、先ず、開口10xを介してファン30とフィルタユニット50との間の空間にアクセスし、フィルタユニット50の上端50aにある凸部55zをケーシング10の凹部10z内に配置した状態で、突起55d(図3図5参照)を把持し、フィルタユニット50の下端50bをファン30に向けて移動させる。これにより、フィルタユニット50が、上端50aにある凸部55zを中心としてケーシング10に対して回転し、下端50bにある固定部55cが凹部10c外に配置される。その後、作業者は、フィルタユニット50を、鉛直面及び水平面と交差した斜め下方に移動させ、開口10xを通過させて、ケーシング10から取り外す。
【0065】
最後に、4つのフィルタユニット50を、ケーシング10に順次装着する(図9及び図10参照)。このとき、作業者は、先ず、図9に示すように、フィルタユニット50を、ケーシング10の下方から、鉛直面及び水平面と交差した斜め上方に移動させて、開口10xを通過させ、ケーシング10内に配置する。その後、作業者は、図10に示すように、フィルタユニット50の上端50aにある凸部55zをケーシング10の凹部10z内に配置し、固定部55cを押圧すること、凸部55zを中心としてフィルタユニット50をケーシング10に対して回転させる。このとき、フィルタユニット50の下端50bがファン30から離れる方向に移動し、下端50bにある固定部55cが凹部10c内に配置される(図2参照)。
【0066】
<HEPAフィルタの交換工程>
次いで、図11を参照し、フィルタユニット50においてHEPAフィルタ51を交換する工程について説明する。
【0067】
HEPAフィルタ51をフィルタ枠55から取り外す際には、図11に示すように、先ず、HEPAフィルタ51の一端を、枠部55fにおける爪551が設けられた側壁55f1に(矢印Aの方向に)押し当てつつ、取っ手559を掴んで、枠部55fにおける爪552が設けられた側壁55f2を、枠部55fの外側に(矢印Bの方向に)引っ張る。これにより、側壁55f2が撓み、HEPAフィルタ51の他端が爪552から外れた状態となる。この状態で、HEPAフィルタ51の他端を脱臭フィルタ52から離隔する方向に(矢印Cの方向に)移動させ、フィルタ枠55外に配置する。そして、HEPAフィルタ51を斜めに保持しつつ矢印Aと逆の方向にスライドさせることで、HEPAフィルタ51の一端が爪551から外れ、HEPAフィルタ51の全体がフィルタ枠55から取り外される。
【0068】
HEPAフィルタをフィルタ枠55に取り付ける際には、HEPAフィルタ51を、第1支持面55p1と対向する側から、斜めに保持しつつ矢印Aの方向にスライドさせ、HEPAフィルタ51の一端をフィルタ枠55に挿入し、爪551に保持させる。この状態で、取っ手559を掴んで、側壁55f2を枠部55fの外側に(矢印Bの方向に)引っ張る。これにより、側壁55f2が撓み、爪552が矢印Bの方向に移動することで、HEPAフィルタ51の他端をフィルタ枠55内に配置可能となる。この状態で、HEPAフィルタ51の他端を、脱臭フィルタ52に近づく方向に(矢印Cと逆の方向に)移動させ、フィルタ枠55内に配置する。そして、取っ手559から手を離すことで、側壁55f2が弾性復帰し、HEPAフィルタ51の他端が爪552に保持され、HEPAフィルタ51の全体がフィルタ枠55に取り付けられる。
【0069】
<実施形態の効果>
以上に述べたように、本実施形態によると、フィルタ枠55をケーシング10に対して着脱することで、フィルタ51,52をまとめて交換できる(図6図10参照)。したがって、フィルタ51,52が複数ある場合においても、フィルタ51,52の交換作業を容易に行える。
【0070】
フィルタ枠55は、フィルタ51,52の周縁に沿った枠部55fを有する(図3図5参照)。この場合、各フィルタ51,52のフィルタ性能を損なわずに、フィルタ51,52をフィルタ枠55によって支持できる。
【0071】
フィルタ枠55は、HEPAフィルタ51の脱臭フィルタ52と対向する面を支持する第1支持面55p1と、脱臭フィルタ52におけるHEPAフィルタ51と対向する面を支持する第2支持面55p2とを有し、第1支持面55p1と第2支持面55p2とは、互いに逆方向を向いている(図5参照)。この場合、フィルタ51,52を互いに逆方向からフィルタ枠55に対して取り付けることができる。
【0072】
フィルタ枠55のケーシング10に対する固定部55cは、弾性を有する。この場合、ケーシング10に対するフィルタ枠55の着脱作業(即ち、フィルタ51,52の交換作業)を容易に行える。また、本実施形態では、固定部55cのみならず、フィルタ枠55全体が弾性を有するため、フィルタ枠55に対するフィルタ51,52の着脱作業も容易に行える(図11参照)。
【0073】
フィルタ枠55の下端55bは、フィルタ枠55の上端55aよりも、水平方向において、ファン30に近い(図2参照)。この場合、フィルタ枠55が鉛直方向に沿って配置された場合に比べ、作業者が、ファン30及びフィルタ枠55の下方からケーシング10内にアクセスした際に、フィルタ枠55の下端55bに接し易い。ひいては、作業者がフィルタ枠55の下端55bを操作して、ケーシング10に対するフィルタ枠55の着脱作業(即ち、フィルタ51,52の交換作業)をより容易に行える。
【0074】
フィルタ枠55に支持されたフィルタ51,52のうちの一方は、HEPAフィルタ51である。この場合、高い除菌効果が得られる。
【0075】
フィルタ枠55に支持されたフィルタ51,52のうちの他方は、脱臭フィルタ52である。この場合、脱臭効果が得られる。
【0076】
脱臭フィルタ52は、ファン30が発生させる気流の方向において、HEPAフィルタ51の下流に配置されている(図2参照)。この場合、HEPAフィルタ51によって浄化された空気が、脱臭フィルタ52を通過する。したがって、脱臭フィルタ52が汚れ難く、脱臭フィルタ52の交換頻度を下げることができる。
【0077】
<変形例>
本開示において、「天井設置型」とは、上述の実施形態のような天井埋込型の他、天井吊下げ型(ケーシング10が天井面C1から下方に突出した状態で天井Cに取り付けられた構成)等を含む。
【0078】
上述の実施形態において、固定部55cは、支持部材としてのフィルタ枠55の一部であって、弾性を有する部分で構成される。しかしながら、本開示の固定部は、支持部材とは別の部材(例えば、螺子、ボルト等)で構成されてよく、また、弾性を有さなくてもよい。
【0079】
上述の実施形態において、フィルタ51,52及びフィルタ枠55は、水平方向に沿った凸部55zを中心として、ケーシング10に対して回転可能である(図10参照)。しかしながら、本開示のフィルタ及び支持部材は、水平方向に沿った軸を中心としてケーシングに対して回転可能な構成に限定されず、例えばケーシングに対して鉛直面及び水平面と交差した斜め方向にスライドして取付可能な構成であってもよい。
【0080】
上述の実施形態において、フィルタ51,52及びフィルタ枠55を含むフィルタユニット50は、鉛直面及び水平面と交差して配置されているが、鉛直方向に沿って配置されてもよい。
【0081】
上述の実施形態において、HEPAフィルタ51の代わりに、HEPAフィルタ51よりも捕集効率が低い(例えば、0.3μmを超える粒径の粒子に対して所定の捕集効率を有する)中高性能フィルタを採用してもよい。
【0082】
上述の実施形態では、脱臭フィルタ52が、ファン30が発生させる気流の方向において、HEPAフィルタ51の下流に配置されているが、これに限定されない。HEPAフィルタ51が、ファン30が発生させる気流の方向において、脱臭フィルタ52の下流に配置されてもよい。
【0083】
上述の実施形態において、整流部材40が下部42を有さず、粗塵フィルタ60が整流部材40の上部41の下面に取り付けられてもよい。
【0084】
本開示の天井設置型空気調和機は、熱交換器をさらに備え、熱交換器による暖房及び/又は冷房機能を有してもよい。
【0085】
吸込口は、上述の実施形態では複数の貫通孔で構成されているが、1つの貫通孔で構成されてもよい。
【0086】
吹出口の数は、上述の実施形態では4つであるが、任意の数であってよい。また、吹出しの方向は、上述の実施形態では4方向であるが、2方向、3方向等であってもよい。
【0087】
ファンは、吸込口に接していてもよい。
【0088】
照射部は、UVC以外の紫外線(例えば、波長が320~400ナノメートルのUVA、波長が280~320ナノメートルのUVB等)を照射してもよい。ただし、UVA、UVB及びUVCのうち、UVCが最も除菌効果が高い。
【0089】
除菌部は、照射部及び活性種発生部の一方で構成されてもよい。
【0090】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0091】
1 天井設置型空気調和機
10 ケーシング
11 吸込口
30 ファン
50 フィルタユニット
51 HEPAフィルタ(第1フィルタ)
52 脱臭フィルタ(第2フィルタ)
55 フィルタ枠(支持部材)
55a 上端
55b 下端
55c 固定部
55f 枠部
55p1 第1支持面
55p2 第2支持面
C 天井
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11