(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】熱負荷予測システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/64 20180101AFI20240510BHJP
F24F 110/12 20180101ALN20240510BHJP
F24F 110/00 20180101ALN20240510BHJP
【FI】
F24F11/64
F24F110:12
F24F110:00
(21)【出願番号】P 2022060703
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2023-03-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】吉田 孝太郎
(72)【発明者】
【氏名】西村 忠史
(72)【発明者】
【氏名】由良 嘉紀
(72)【発明者】
【氏名】松井 伸樹
(72)【発明者】
【氏名】岡本 昌和
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特許第5572799(JP,B2)
【文献】特開2020-139705(JP,A)
【文献】特開2001-344294(JP,A)
【文献】国際公開第2018/037496(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物(BL)内の空調ゾーン(Z1,Z2)の熱負荷を予測する、熱負荷予測システム(1)であって、
前記空調ゾーンの熱負荷に影響する、前記建物の外部の環境に関する外部環境データ(D1)、及び/又は前記建物の内部の環境に関する内部環境データ(D2)、を取得する、環境データ取得部(191)と、
前記空調ゾーンの空気調和を行う空気調和機(2)、の運転データ(D3)を取得する、運転データ取得部(192)と、
前記環境データ取得部、及び前記運転データ取得部、が取得したデータを記憶する、記憶部(11)と、
前記記憶部から得られる学習用データ(LD1,LD2)を用いて、前記空調ゾーンの熱負荷を予測するモデル(M1,M2)、の学習を行う、学習部(193)と、
前記モデルを用いて、前記空調ゾーンの熱負荷を予測する、予測部(194)と、
を備え、
前記空調ゾーンには、前記空気調和機を構成する、1または複数の室内機(20a~20c)が設置され、
前記学習用データにおける前記空調ゾーンの熱負荷は、前記空調ゾーンに設置されているそれぞれの前記室内機における熱交換量に基づいて算出され、
それぞれの前記室内機における熱交換量は、それぞれの前記室内機における前記運転データに基づいて算出され
、
前記室内機における熱交換量は、前記室内機における、吸込温度、風量、及び冷媒温度、に基づいて算出される、
熱負荷予測システム(1)。
【請求項2】
前記外部環境データは、少なくとも前記建物の外気温度、を含み、
前記内部環境データは、少なくとも前記空調ゾーンの室内温度、を含む、
請求項1に記載の熱負荷予測システム(1)。
【請求項3】
前記学習部は、前記モデルの学習を行う前に、前記学習用データから、欠損値又は異常値を含むレコードを除外する、
請求項1又は2に記載の熱負荷予測システム(1)。
【請求項4】
前記学習部は、前記モデルの学習を行う前に、前記学習用データに含まれる欠損値又は異常値を補完する、
請求項1又は2に記載の熱負荷予測システム(1)。
【請求項5】
前記学習部は、前記モデルの学習を行う前に、前記空気調和機の運転状態、又は前記空気調和機のスケジュール、に基づいて、前記学習用データを加工する、
請求項1から4のいずれか1つに記載の熱負荷予測システム(1)。
【請求項6】
前記学習部は、第1の空調ゾーンについての第1の学習用データの代わりに、前記第1の空調ゾーンと類似する第2の空調ゾーンについての第2の学習用データを用いる、
請求項1から5のいずれか1つに記載の熱負荷予測システム(1)。
【請求項7】
前記モデルは、機械学習モデル、統計モデル、物理モデル、又はこれらの組み合わせである、
請求項1から6のいずれか1つに記載の熱負荷予測システム(1)。
【請求項8】
前記学習部は、所定の単位の前記学習用データを用いて、前記モデルの学習を行う、
請求項1から7のいずれか1つに記載の熱負荷予測システム(1)。
【請求項9】
前記学習部は、所定のタイミングで、前記モデルの更新を行う、
請求項1から8のいずれか1つに記載の熱負荷予測システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
熱負荷予測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特許第5572799号公報)に示されているように、建物内の熱負荷を学習し、予測する技術がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1のように、室外機単位で熱負荷を学習すると、空調ゾーンごとの熱負荷を予測することが困難である、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点の熱負荷予測システムは、建物内の空調ゾーンの熱負荷を予測する。熱負荷予測システムは、環境データ取得部と、運転データ取得部と、記憶部と、学習部と、予測部と、を備える。環境データ取得部は、空調ゾーンの熱負荷に影響する、建物の外部の環境に関する外部環境データ、及び/又は建物の内部の環境に関する内部環境データ、を取得する。運転データ取得部は、空調ゾーンの空気調和を行う空気調和機、の運転データを取得する。記憶部は、環境データ取得部、及び運転データ取得部、が取得したデータを記憶する。学習部は、記憶部から得られる学習用データを用いて、空調ゾーンの熱負荷を予測するモデル、の学習を行う。予測部は、モデルを用いて、空調ゾーンの熱負荷を予測する。空調ゾーンには、空気調和機を構成する室内機が設置される。学習用データにおける空調ゾーンの熱負荷は、空調ゾーンに設置されている室内機における熱交換量に基づいて算出される。室内機における熱交換量は、運転データに基づいて算出される。
【0005】
第1観点の熱負荷予測システムでは、学習部は、記憶部から得られる学習用データを用いて、空調ゾーンの熱負荷を予測するモデル、の学習を行う。予測部は、モデルを用いて、空調ゾーンの熱負荷を予測する。学習用データにおける空調ゾーンの熱負荷は、空調ゾーンに設置されている室内機における熱交換量に基づいて算出される。その結果、熱負荷予測システムは、空調ゾーンごとに熱負荷を学習し、予測することができる。
【0006】
第2観点の熱負荷予測システムは、第1観点の熱負荷予測システムであって、外部環境データは、少なくとも建物の外気温度、を含む。内部環境データは、少なくとも空調ゾーンの室内温度、を含む。
【0007】
第3観点の熱負荷予測システムは、第1観点又は第2観点のいずれかの熱負荷予測システムであって、学習部は、モデルの学習を行う前に、学習用データから、欠損値又は異常値を含むレコードを除外する。
【0008】
第4観点の熱負荷予測システムは、第1観点又は第2観点のいずれかの熱負荷予測システムであって、学習部は、モデルの学習を行う前に、学習用データに含まれる欠損値又は異常値を補完する。
【0009】
第5観点の熱負荷予測システムは、第1観点から第4観点のいずれかの熱負荷予測システムであって、学習部は、モデルの学習を行う前に、空気調和機の運転状態、又は空気調和機のスケジュール、に基づいて、学習用データを加工する。
【0010】
第5観点の熱負荷予測システムは、空気調和機の運転状態、又は空気調和機のスケジュール、に基づいて、空調ゾーンの熱負荷との関連が薄いデータを除外することにより、空調ゾーンの熱負荷を予測するモデルの精度を向上させることができる。
【0011】
第6観点の熱負荷予測システムは、第1観点から第5観点のいずれかの熱負荷予測システムであって、学習部は、第1の空調ゾーンについての第1の学習用データの代わりに、第1の空調ゾーンと類似する第2の空調ゾーンについての第2の学習用データを用いる。
【0012】
第6観点の熱負荷予測システムは、このような構成により、類似する空調ゾーンの間で、学習用データを共用することができる。
【0013】
第7観点の熱負荷予測システムは、第1観点から第6観点のいずれかの熱負荷予測システムであって、モデルは、機械学習モデル、統計モデル、物理モデル、又はこれらの組み合わせである。
【0014】
第8観点の熱負荷予測システムは、第1観点から第7観点のいずれかの熱負荷予測システムであって、学習部は、所定の単位の学習用データを用いて、モデルの学習を行う。
【0015】
第9観点の熱負荷予測システムは、第1観点から第8観点のいずれかの熱負荷予測システムであって、学習部は、所定のタイミングで、モデルの更新を行う。
【0016】
第10観点の熱負荷予測システムは、第1観点から第9観点のいずれかの熱負荷予測システムであって、室内機における熱交換量は、室内機における、吸込温度、風量、及び冷媒温度、に基づいて算出される。
【0017】
第11観点の熱負荷予測システムは、第1観点から第9観点のいずれかの熱負荷予測システムであって、室内機における熱交換量は、室内機における、吸込温度、吹出温度、及び風量、に基づいて算出される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図5】熱負荷予測システムの処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(1)全体構成
熱負荷予測システム1は、建物BL内の空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷を予測するシステムである。
図1は、熱負荷予測システム1の概略構成図である。
図1に示すように、熱負荷予測システム1は、空気調和機2と、熱負荷予測装置3と、を有する。空気調和機2と、熱負荷予測装置3とは、ネットワークNWを介して、通信可能に接続されている。ネットワークNWは、例えば、インターネットである。
【0020】
空気調和機2は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを構成し、建物BL内の空調ゾーンZ1,Z2の空気調和を行う。本実施形態では、空気調和機2は、いわゆるビル用マルチ式空気調和システムである。
図1に示すように、空気調和機2は、室内機20a~20cと、室外機30と、を有する。室内機20a,20bは、空調ゾーンZ1に設置されている。室内機20cは、空調ゾーンZ2に設置されている。室内機20a~20cと、室外機30とは、通信線80によって通信可能に接続されている。
図2は、空気調和機2の冷媒回路50を示す図である。
図2に示すように、室内機20a~20cと、室外機30とは、液冷媒連絡配管51及びガス冷媒連絡配管52によって接続され、冷媒回路50を構成している。
【0021】
熱負荷予測装置3は、空気調和機2等から取得する各種データに基づいて、空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷を予測する。
【0022】
図1に示すように、空調ゾーンZ1,Z2には、空調ゾーンZ1,Z2の室内温度を計測する、室内温度センサ631,632が設置されている。また、建物BLの外には、建物BLの外気温度を計測する、室外温度センサ65が設置されている。熱負荷予測装置3と、室内温度センサ631,632、及び室外温度センサ65とは、ネットワークNWを介して、通信可能に接続されている。
【0023】
(2)詳細構成
(2-1)室内機
本実施形態では、室内機20a~20cは、天井に設置される天井埋込型のユニットである。
図2に示すように、室内機20a~20cは、主として、室内熱交換器21a~21cと、室内ファン22a~22cと、室内膨張弁23a~23cと、室内制御部29a~29cと、室内吸込温度センサ61a~61cと、室内熱交温度センサ62a~62cと、ガス側温度センサ64a~64cと、液側温度センサ67a~67cと、を有する。また、
図2に示すように、室内機20a~20cは、室内熱交換器21a~21cの液側端と、液冷媒連絡配管51と、を接続する液冷媒配管53a1~53c1を有する。また、室内機20a~20cは、室内熱交換器21a~21cのガス側端と、ガス冷媒連絡配管52と、を接続するガス冷媒配管53a2~53c2を有する。
【0024】
(2-1-1)室内熱交換器
室内熱交換器21a~21cは、室内熱交換器21a~21cを流れる冷媒と、空調ゾーンZ1,Z2の空気と、の間で熱交換を行わせる。室内熱交換器21a~21cは、例えば、複数の伝熱フィンと、複数の伝熱管と、を有するフィン・アンド・チューブ型の熱交換器である。
図2に示すように、室内熱交換器21a~21cの一端は、液冷媒配管53a1~53c1を介して液冷媒連絡配管51と接続される。室内熱交換器21a~21cの他端は、ガス冷媒配管53a2~53c2を介してガス冷媒連絡配管52と接続される。冷房運転時には、室内熱交換器21a~21cに液冷媒配管53a1~53c1から冷媒が流入し、室内熱交換器21a~21cは冷媒の蒸発器として機能する。暖房運転時には、室内熱交換器21a~21cにガス冷媒配管53a2~53c2から冷媒が流入し、室内熱交換器21a~21cは冷媒の凝縮器として機能する。なお、本実施形態において、室内熱交換器21a~21cは、フィン・アンド・チューブ型熱交換器であるが、これに限定されず、他の型式の熱交換器であっても良い。
【0025】
(2-1-2)室内ファン
本実施形態において、室内機20a~20cは、ユニット内に室内空気を吸入して、室内熱交換器21a~21cにおいて冷媒と熱交換させた後に、供給空気として室内に供給するための送風機としての室内ファン22a~22cを有している。室内ファン22a~22cは、室内熱交換器21a~21cに、空調ゾーンZ1,Z2の空気を供給するファンである。室内ファン22a~22cは、例えば、ターボファンやシロッコファン等の遠心ファンである。
図2に示すように、室内ファン22a~22cは、DCファンモータ等からなる室内ファンモータ22am~22cmによって駆動される。室内ファンモータ22am~22cmの回転数は、インバータによって制御可能である。
【0026】
(2-1-3)室内膨張弁
室内膨張弁23a~23cは、液冷媒配管53a1~53c1を流れる冷媒の圧力や流量を調節するための機構である。室内膨張弁23a~23cは、液冷媒配管53a1~53c1に設けられる。本実施形態では、室内膨張弁23a~23cは、開度調節が可能な電子膨張弁である。なお、本実施形態では、膨張機構として室内機20a~20cそれぞれに室内膨張弁23a~23cを設けているが、これに限らずに、膨張機構(膨張弁を含む)を室外機30に設けてもよいし、室内機20a~20cや室外機30とは独立した接続ユニットに設けてもよい。
【0027】
(2-1-4)センサ
室内吸込温度センサ61a~61cは、室内機20a~20cが吸い込む空気の温度(室内吸込温度)を計測する。室内吸込温度センサ61a~61cは、室内機20a~20cの空気の吸入口付近に設けられている。
【0028】
室内熱交温度センサ62a~62cは、室内熱交換器21a~21cを流れる冷媒の温度(室内飽和温度)を計測する。冷房運転時の室内飽和温度は、室内熱交換器21a~21cを流れる冷媒の蒸発温度(室内蒸発温度)である。暖房運転時の室内飽和温度は、室内熱交換器21a~21cを流れる冷媒の凝縮温度(室内凝縮温度)である。室内熱交温度センサ62a~62cは、室内熱交換器21a~21cに設けられている。
【0029】
ガス側温度センサ64a~64cは、ガス冷媒配管53a2~53c2を流れる冷媒の温度(室内ガス側温度)を計測する。ガス側温度センサ64a~64cは、ガス冷媒配管53a2~53c2に設けられている。
【0030】
液側温度センサ67a~67cは、液冷媒配管53a1~53c1を流れる冷媒の温度(室内液側温度)を計測する。液側温度センサ67a~67cは、液冷媒配管53a1~53c1に設けられている。
【0031】
(2-1-5)室内制御部
室内制御部29a~29cは、室内機20a~20cを構成する各部の動作を制御する。
【0032】
室内制御部29a~29cは、室内膨張弁23a~23c、及び室内ファンモータ22am~22cmを含む、室内機20a~20cが有する各種機器と電気的に接続されている。また、室内制御部29a~29cは、室内吸込温度センサ61a~61c、室内熱交温度センサ62a~62c、ガス側温度センサ64a~64c、及び液側温度センサ67a~67cを含む、室内機20a~20cに設けられている各種センサと通信可能に接続されている。
【0033】
室内制御部29a~29cは、制御演算装置及び記憶装置を有する。制御演算装置は、CPUやGPU等のプロセッサである。記憶装置は、RAM、ROM及びフラッシュメモリ等の記憶媒体である。制御演算装置は、記憶装置に記憶されているプログラムを読み出し、プログラムに従って所定の演算処理を行うことで、室内機20a~20cを構成する各部の動作を制御する。また、制御演算装置は、プログラムに従って、演算結果を記憶装置に書き込んだり、記憶装置に記憶されている情報を読み出したりすることができる。また、室内制御部29a~29cは、タイマーを有する。
【0034】
室内制御部29a~29cは、操作用リモコン(図示省略)から送信される各種信号を、受信可能に構成されている。各種信号には、例えば、運転の開始及び停止を指示する信号や、各種設定に関する信号が含まれる。各種設定に関する信号には、例えば、設定温度や風量に関する信号が含まれる。また、室内制御部29a~29cは、室外機30の室外制御部39と、通信線80を介して、制御信号、計測信号、各種設定に関する信号等のやりとりを行う。室内制御部29a~29cと、室外制御部39とは、協働してコントローラ40として機能する。コントローラ40の機能については後述する。
【0035】
(2-2)室外機
室外機30は、建物BLの屋上等、建物BLの外に設置される。
図2に示すように、室外機30は、主として、圧縮機31と、流路切換弁32と、室外熱交換器33と、室外膨張弁34と、アキュムレータ35と、室外ファン36と、液側閉鎖弁37と、ガス側閉鎖弁38と、室外制御部39と、室外熱交温度センサ66と、吸入圧力センサ68と、吐出圧力センサ69と、を有する。また、室外機30は、吸入管54aと、吐出管54bと、ガス冷媒配管54c,54eと、液冷媒配管54dと、を有する。
【0036】
吸入管54aは、流路切換弁32と圧縮機31の吸入側とを接続する。吸入管54aには、アキュムレータ35が設けられる。吐出管54bは、圧縮機31の吐出側と流路切換弁32とを接続する。ガス冷媒配管54cは、流路切換弁32と室外熱交換器33のガス側とを接続する。液冷媒配管54dは、室外熱交換器33の液側と液冷媒連絡配管51とを接続する。液冷媒配管54dには、室外膨張弁34が設けられている。液冷媒配管54dと液冷媒連絡配管51との接続部には、液側閉鎖弁37が設けられている。ガス冷媒配管54eは、流路切換弁32とガス冷媒連絡配管52とを接続する。ガス冷媒配管54eとガス冷媒連絡配管52との接続部には、ガス側閉鎖弁38が設けられている。液側閉鎖弁37及びガス側閉鎖弁38は、手動で開閉される弁である。
【0037】
(2-2-1)圧縮機
図2に示すように、圧縮機31は、吸入管54aから低圧の冷媒を吸入し、圧縮機構(図示せず)によって冷媒を圧縮して、圧縮した冷媒を吐出管54bに吐出する。
【0038】
圧縮機31は、例えば、ロータリ式やスクロール式等の容積圧縮機である。圧縮機31の圧縮機構は、圧縮機モータ31mによって駆動される。圧縮機モータ31mの回転数は、インバータにより制御可能である。
【0039】
(2-2-2)流路切換弁
流路切換弁32は、冷媒の流路を、第1状態と第2状態との間で切り換える機構である。流路切換弁32は、第1状態のとき、
図2の流路切換弁32内の実線で示されるように、吸入管54aをガス冷媒配管54eと連通させ、吐出管54bをガス冷媒配管54cと連通させる。流路切換弁32は、第2状態のとき、
図2の流路切換弁32内の破線で示されるように、吸入管54aをガス冷媒配管54cと連通させ、吐出管54bをガス冷媒配管53eと連通させる。
【0040】
流路切換弁32は、冷房運転時には、冷媒の流路を第1状態とする。このとき、圧縮機31から吐出される冷媒は、冷媒回路50内を、室外熱交換器33、室外膨張弁34、室内膨張弁23a~23c、室内熱交換器21a~21cの順に流れ、圧縮機31へと戻る。第1状態では、室外熱交換器33は凝縮器として機能し、室内熱交換器21a~21cは蒸発器として機能する。
【0041】
流路切換弁32は、暖房運転時には、冷媒の流路を第2状態とする。このとき、圧縮機31から吐出される冷媒は、冷媒回路50内を、室内熱交換器21a~21c、室内膨張弁23a~23c、室外膨張弁34、室外熱交換器33の順に流れ、圧縮機31へと戻る。第2状態では、室外熱交換器33は蒸発器として機能し、室内熱交換器21a~21cは凝縮器として機能する。
【0042】
(2-2-3)室外熱交換器
室外熱交換器33は、室外熱交換器33を流れる冷媒と、建物BLの外の空気との間で熱交換を行わせる。室外熱交換器33は、例えば、複数の伝熱フィンと、複数の伝熱管と、を有するフィン・アンド・チューブ型の熱交換器である。
図2に示すように、室外熱交換器33の一端は、液冷媒配管54dを介して液冷媒連絡配管51と接続される。室外熱交換器33の他端は、ガス冷媒配管54cを介して流路切換弁32と接続される。
【0043】
冷房運転時には、室外熱交換器33にガス冷媒配管54cから冷媒が流入し、室外熱交換器33は冷媒の凝縮器として機能する。暖房運転時には、室外熱交換器33に液冷媒配管54dから冷媒が流入し、室外熱交換器33は冷媒の蒸発器として機能する。なお、本実施形態において、室外熱交換器33は、フィン・アンド・チューブ型熱交換器であるが、これに限定されず、他の型式の熱交換器であっても良い。
【0044】
(2-2-4)室外膨張弁
室外膨張弁34は、液冷媒配管54dを流れる冷媒の圧力や流量を調節するための機構である。
図2に示すように、室外膨張弁34は、液冷媒配管54dに設けられる。本実施形態では、室外膨張弁34は、開度調節が可能な電子膨張弁である。
【0045】
(2-2-5)アキュムレータ
アキュムレータ35は、流入する冷媒を、ガス冷媒と液冷媒とに分ける気液分離機能を有する容器である。
図2に示すように、アキュムレータ35は、吸入管54aに設けられる。アキュムレータ35に流入する冷媒は、ガス冷媒と液冷媒とに分離され、上部空間に集まるガス冷媒が、圧縮機31へと流入する。
【0046】
(2-2-6)室外ファン
室外ファン36は、室外熱交換器33に、建物BLの外の空気を供給するファンである。室外ファン36は、例えば、プロペラファン等の軸流ファンである。
図2に示すように、室外ファン36は、DCファンモータ等からなる室外ファンモータ36mによって駆動される。室外ファンモータ36mの回転数は、インバータにより制御可能である。
【0047】
(2-2-7)センサ
室外熱交温度センサ66は、室外熱交換器33を流れる冷媒の温度を計測する。室外熱交温度センサ66は、室外熱交換器33に設けられている。
【0048】
吸入圧力センサ68は、圧縮機31の吸入圧力を計測するセンサである。吸入圧力センサ68は、吸入管54aに設けられている。吸入圧力は、冷房運転時における蒸発圧力に対応する冷媒圧力である。
【0049】
吐出圧力センサ69は、圧縮機31の吐出圧力を計測するセンサである。吐出圧力センサ69は、吐出管54bに設けられている。吐出圧力は、暖房運転時における凝縮圧力に対応する冷媒圧力である。
【0050】
(2-2-8)室外制御部
室外制御部39は、室外機30を構成する各部の動作を制御する。
【0051】
室外制御部39は、圧縮機モータ31m、流路切換弁32、室外膨張弁34、及び室外ファンモータ36mを含む、室外機30が有する各種機器に電気的に接続されている。また、室外制御部39は、室外熱交温度センサ66、吸入圧力センサ68、及び吐出圧力センサ69を含む、室外機30に設けられている各種センサと通信可能に接続されている。
【0052】
室外制御部39は、制御演算装置及び記憶装置を有する。制御演算装置は、CPUやGPU等のプロセッサである。記憶装置は、RAM、ROM及びフラッシュメモリ等の記憶媒体である。制御演算装置は、記憶装置に記憶されているプログラムを読み出し、プログラムに従って所定の演算処理を行うことで、室外機30を構成する各部の動作を制御する。また、制御演算装置は、プログラムに従って、演算結果を記憶装置に書き込んだり、記憶装置に記憶されている情報を読み出したりすることができる。また、室外制御部39は、タイマーを有する。
【0053】
室外制御部39は、室内機20a~20cの室内制御部29a~29cと、通信線80を介して、制御信号、計測信号、各種設定に関する信号等のやりとりを行う。室外制御部39と、室内制御部29a~29cとは、協働してコントローラ40として機能する。コントローラ40の機能については後述する。
【0054】
(2-3)コントローラ
コントローラ40は、室内制御部29a~29cと、室外制御部39と、から構成される。コントローラ40は、室内制御部29a~29c及び室外制御部39のそれぞれの制御演算装置に、それぞれの記憶装置に記憶されたプログラムを実行させることにより、空気調和機2全体の動作を制御する。なお、空気調和機2は、コントローラ40として、室内機20a~20cと、室外機30とを集中して制御する集中コントローラ(いわゆるエッジ)を有してもよい。
【0055】
図3は、空気調和機2の制御ブロック図である。
図3に示すように、コントローラ40は、室内吸込温度センサ61a~61c、室内熱交温度センサ62a~62c、ガス側温度センサ64a~64c、液側温度センサ67a~67c、室外熱交温度センサ66、吸入圧力センサ68、及び吐出圧力センサ69と通信可能に接続されている。また、コントローラ40は、室内膨張弁23a~23c、室内ファンモータ22am~22cm、圧縮機モータ31m、流路切換弁32、室外膨張弁34、及び室外ファンモータ36mと電気的に接続されている。また、コントローラ40は、ネットワークNWを介して、熱負荷予測装置3と通信可能に接続されている。コントローラ40は、室内機20a~20cを介して操作用リモコンから受信する制御信号や、熱負荷予測装置3から受信する制御信号や、各種センサの計測信号等に基づいて、空気調和機2の各種機器の動作を制御する。
【0056】
コントローラ40は、主として、冷房運転と、暖房運転とを行う。また、コントローラ40は、主として、データ送信機能を有する。
【0057】
(2-3-1)冷房運転
ここでは、コントローラ40が、室内機20aに冷房運転を行わせる場合について、説明する。
【0058】
コントローラ40は、例えば、操作用リモコンから、室内機20aを介して、冷房運転を行わせる旨の指示を受けると、流路切換弁32を、第1状態に切り換える。そして、コントローラ40は、室内冷媒温度が目標冷媒温度となるように、圧縮機31の回転数、室外熱交換器33を流れる冷媒の温度(室外熱交温度センサ66によって計測される温度)、室外膨張弁34の開度、及び室内膨張弁23aの開度等を調節する。ここで、室内冷媒温度は、室内飽和温度(冷房運転時は、室内蒸発温度)と、過熱度とを意味する。本実施形態では、室内蒸発温度は、室内熱交温度センサ62aの計測値である。しかし、室内蒸発温度は、吸入圧力から算出してもよい。過熱度は、室内ガス側温度から、室内蒸発温度又は室内液側温度を、差し引くことにより算出される。目標冷媒温度は、操作用リモコンから受信する設定温度に応じた温度や、熱負荷予測装置3から受信する目標冷媒温度に設定される。コントローラ40は、目標冷媒温度を、例えば、操作用リモコン又は熱負荷予測装置3から直近に受信した温度に設定してもよい。
【0059】
以上のように、各種機器の動作が制御されることにより、冷房運転時には冷媒回路50を以下のように冷媒が流れる。
【0060】
圧縮機31が起動されると、低圧のガス冷媒が圧縮機31に吸入され、圧縮機31で圧縮されて高圧のガス冷媒となる。高圧のガス冷媒は、流路切換弁32を経由して室外熱交換器33に送られ、室外ファン36によって供給される建物BLの外の空気と熱交換を行って凝縮し、高圧の液冷媒となる。高圧の液冷媒は、液冷媒配管54dを流れ、室外膨張弁34を通過する。室内機20aに送られた高圧の液冷媒は、室内膨張弁23aにおいて、圧縮機31の吸入圧力近くまで減圧され、気液二相状態の冷媒となって、室内熱交換器21aに送られる。気液二相状態の冷媒は、室内熱交換器21aにおいて、室内ファン22aにより室内熱交換器21aへと供給される空調ゾーンZ1の空気と熱交換を行って蒸発し、低圧のガス冷媒となる。低圧のガス冷媒は、ガス冷媒連絡配管52を経由して室外機30に送られ、流路切換弁32を経由して、アキュムレータ35に流入する。アキュムレータ35に流入した低圧のガス冷媒は、再び、圧縮機31に吸入される。室内熱交換器21aに供給された空気の温度は、室内熱交換器21aを流れる冷媒と熱交換することにより低下し、室内熱交換器21aで冷却された空気が空調ゾーンZ1に吹き出す。
【0061】
(2-3-2)暖房運転
ここでは、コントローラ40が、室内機20aに暖房運転を行わせる場合について、説明する。
【0062】
コントローラ40は、例えば、操作用リモコンから、室内機20aを介して、暖房運転を行わせる旨の指示を受けると、流路切換弁32を、第2状態に切り換える。そして、コントローラ40は、室内冷媒温度が目標冷媒温度となるように、圧縮機31の回転数、室外熱交換器33を流れる冷媒の温度、室外膨張弁34の開度、及び室内膨張弁23aの開度等を調節する。ここで、室内冷媒温度は、室内凝縮温度(暖房運転時は、室内凝縮温度)と、過冷却度とを意味する。本実施形態では、室内凝縮温度は、室内熱交温度センサ62aの計測値である。しかし、室内凝縮温度は、吐出圧力から算出してもよい。過冷却度は、室内凝縮温度又は室内ガス側温度から、室内液側温度を、差し引くことにより算出される。目標冷媒温度は、操作用リモコンから受信する設定温度に応じた温度や、熱負荷予測装置3から受信する目標冷媒温度に設定される。コントローラ40は、目標冷媒温度を、例えば、操作用リモコン又は熱負荷予測装置3から直近に受信した温度に設定してもよい。
【0063】
以上のように、各種機器の動作が制御されることにより、暖房運転時には冷媒回路50を以下のように冷媒が流れる。
【0064】
圧縮機31が起動されると、低圧のガス冷媒が圧縮機31に吸入され、圧縮機31で圧縮されて高圧のガス冷媒となる。高圧のガス冷媒は、流路切換弁32を経由して室内熱交換器21aに送られ、室内ファン22aにより室内熱交換器21aへと供給される空調ゾーンZ1の空気と熱交換を行って凝縮し、高圧の液冷媒となる。室内熱交換器21aに供給された空気の温度は、室内熱交換器21aを流れる冷媒と熱交換することにより上昇し、室内熱交換器21aで加熱された空気が空調ゾーンZ1に吹き出す。室内熱交換器21aを通過した高圧の液冷媒は、室内膨張弁23aにおいて減圧される。減圧された液冷媒は、液冷媒連絡配管51を経由して室外機30に送られ、液冷媒配管54dに流入する。液冷媒配管54dを流れる冷媒は、室外膨張弁34において、圧縮機31の吸入圧力近くまで減圧され、気液二相状態の冷媒となって、室外熱交換器33に流入する。室外熱交換器33に流入した低圧の気液二相状態の冷媒は、室外ファン36によって供給される建物BLの外の空気と熱交換を行って蒸発し、低圧のガス冷媒となる。低圧のガス冷媒は、流路切換弁32を経由してアキュムレータ35に流入する。アキュムレータ35に流入した低圧のガス冷媒は、再び、圧縮機31に吸入される。
【0065】
(2-3-3)データ送信機能
コントローラ40は、空気調和機2の運転データD3を、熱負荷予測装置3に送信する。
【0066】
本実施形態では、コントローラ40は、空気調和機2の運転データD3として、室内機20a~20cの室内吸込温度、風量、及び室内冷媒温度(室内飽和温度、及び過熱度又は過冷却度)を、熱負荷予測装置3に送信する。
【0067】
本実施形態では、コントローラ40は、室内吸込温度センサ61a~61cから、室内機20a~20cの室内吸込温度を取得する。また、コントローラ40は、室内ファンモータ22am~22cmの回転数から、室内機20a~20cの風量を取得する。また、コントローラ40は、室内熱交温度センサ62a~62cから、室内機20a~20cの室内飽和温度を取得する。なお、室内飽和温度は、吸入圧力又は吐出圧力から算出してもよい。また、コントローラ40は、室内ガス側温度から、室内蒸発温度又は室内液側温度を、差し引くことにより、過熱度を算出する。また、コントローラ40は、室内凝縮温度又は室内ガス側温度から、室内液側温度を、差し引くことにより、過冷却度を算出する。
【0068】
本実施形態では、コントローラ40は、10分毎に、空気調和機2の運転データD3を取得し、熱負荷予測装置3に送信する。
【0069】
(2-4)熱負荷予測装置
熱負荷予測装置3は、クラウド上に設置されるコンピュータである。
図4は、熱負荷予測装置3の制御ブロック図である。
図4に示すように、熱負荷予測装置3は、主として、記憶部11と、入力部12と、表示部13と、通信部14と、制御部19と、を有する。
【0070】
(2-4-1)記憶部
記憶部11は、RAM、ROM、及びHDD等の記憶装置である。記憶部11は、制御部19が実行するプログラムや、プログラムの実行に必要なデータ等を記憶する。
【0071】
本実施形態では、記憶部11は、特に、後述する環境データ取得部191が取得した外部環境データD1及び内部環境データD2と、運転データ取得部192が取得した運転データD3と、を記憶する。
【0072】
(2-4-2)入力部
入力部12は、キーボード、及びマウスである。熱負荷予測装置3に対する各種指令や、各種情報は、入力部12を用いて入力することができる。
【0073】
(2-4-3)表示部
表示部13は、モニターである。表示部13には、記憶部11に記憶された各種データ等を表示することができる。
【0074】
(2-4-4)通信部
通信部14は、ネットワークNWを介して、空気調和機2等と通信を行うためのネットワークインターフェイス機器である。
【0075】
(2-4-5)制御部
制御部19は、CPUやGPU等のプロセッサである。制御部19は、記憶部11に記憶されているプログラムを読み込んで実行し、熱負荷予測装置3の様々な機能を実現する。また、制御部19は、プログラムに従って、演算結果を記憶部11に書き込んだり、記憶部11に記憶されている情報を読み出したりすることができる。
【0076】
図4に示すように、制御部19は、機能ブロックとして、環境データ取得部191と、運転データ取得部192と、学習部193と、予測部194と、決定部195と、送信部196と、を有する。
【0077】
(2-4-5-1)環境データ取得部
環境データ取得部191は、空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷に影響する、建物BLの外部の環境に関する外部環境データD1、及び建物BLの内部の環境に関する内部環境データD2、を取得する。
【0078】
外部環境データD1は、少なくとも建物BLの外気温度、を含む。本実施形態では、外部環境データD1は、建物BLの外気温度である。環境データ取得部191は、建物BLの外気温度を、室外温度センサ65から取得する。
【0079】
内部環境データD2は、少なくとも空調ゾーンZ1,Z2の室内温度、を含む。本実施形態では、内部環境データD2は、空調ゾーンZ1,Z2の室内温度である。環境データ取得部191は、空調ゾーンZ1,Z2の室内温度を、室内温度センサ631,632から取得する。
【0080】
本実施形態では、環境データ取得部191は、10分毎に、外部環境データD1と、内部環境データD2とを取得する。
【0081】
外部環境データD1と、内部環境データD2とは、後述する学習用データLD1,LD2として用いられる。
【0082】
(2-4-5-2)運転データ取得部
運転データ取得部192は、空気調和機2から、空気調和機2の運転データD3を取得する。
【0083】
上述の通り、本実施形態では、運転データD3は、室内機20a~20cの室内吸込温度、風量、及び室内冷媒温度である。
【0084】
本実施形態では、運転データ取得部192は、環境データ取得部191による外部環境データD1、及び内部環境データD2の取得と同じタイミングで、10分毎に、運転データD3を取得する。
【0085】
運転データD3は、後述する学習用データLD1,LD2として用いられる。
【0086】
(2-4-5-3)学習部
学習部193は、記憶部11から得られる学習用データLD1,LD2を用いて、空調ゾーンZ1,Z2ごとに、空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷を予測するモデルM1,M2の学習を行う。
【0087】
学習用データLD1,LD2は、外部環境データD1と、内部環境データD2と、運転データD3と、から構成される。本実施形態では、モデルM1の学習用データLD1は、空調ゾーンZ1の室内温度、及び建物BLの外気温度と、空調ゾーンZ1の熱負荷と、を関連付けたデータである。空調ゾーンZ2の熱負荷を予測するモデルM2の学習用データLD2は、空調ゾーンZ2の室内温度、及び建物BLの外気温度と、空調ゾーンZ2の熱負荷と、を関連付けたデータである。言い換えると、学習部193は、空調ゾーンZ1,Z2ごとに、空調ゾーンZ1,Z2の室内温度、及び建物BLの外気温度から、空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷を予測するモデルM1,M2の学習を行う。
【0088】
学習部193は、学習用データLD1,LD2における空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷を、空調ゾーンZ1,Z2に設置されている、それぞれの室内機20a~20cにおける熱交換量に基づいて算出する。学習部193は、それぞれの室内機20a~20cにおける熱交換量を、運転データD3に基づいて算出する。
【0089】
具体的には、学習部193は、まず、室内機20a~20cにおける、熱交換量、室内吸込温度、風量、及び室内冷媒温度の間に成り立つ所定の関係式を用いて、それぞれの室内機20a~20cにおける熱交換量を、それぞれの室内機20a~20cにおける、室内吸込温度、風量、及び室内冷媒温度から算出する。そして、学習部193は、算出した室内機20a~20cのそれぞれの熱交換量を、室内機20a~20cが設置されている空調ゾーンZ1,Z2ごとに足し合わせ、それらを空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷とする。例えば、空調ゾーンZ1の熱負荷は、室内機20aの熱交換量と、室内機20bの熱交換量との総和である。また、例えば、空調ゾーンZ2の熱負荷は、室内機20cの熱交換量である。
【0090】
学習部193は、モデルM1,M2の学習を行う前に、前処理として、学習用データLD1,LD2から、欠損値又は異常値を含むレコードを除外してもよい。また、学習部193は、モデルM1,M2の学習を行う前に、前処理として、学習用データLD1,LD2に含まれる欠損値又は異常値を補完してもよい。また、学習部193は、モデルM1,M2の学習を行う前に、前処理として、空気調和機2の運転状態、又は空気調和機2のスケジュール、に基づいて、学習用データLD1,LD2を加工してもよい。学習部193は、空気調和機2の運転状態に基づいて、例えば、室内温度を制御する運転(冷房運転、暖房運転等)以外の運転(油戻し運転、デフロスト運転等)のデータを、学習用データLD1,LD2から除外してもよい。また、学習部193は、空気調和機2のスケジュールに基づいて、例えば、空気調和機2が停止している時間帯や、空気調和機2が送風運転を行っている時間帯等のデータを、学習用データLD1,LD2から除外してもよい。
【0091】
本実施形態では、モデルM1,M2は、深層学習モデルを想定している。深層学習モデルは、例えば、全結合のニューラルネットワークモデルである。しかし、モデルM1,M2は、他の機械学習モデルであってもよいし、統計モデルであってもよいし、物理モデルであってもよいし、機械学習モデル、統計モデル、及び物理モデルの組み合わせであってもよい。また、モデルM1,M2は、アンサンブルモデルや、グレーボックスモデルであってもよい。
【0092】
本実施形態では、学習部193は、1週間毎に、過去1週間分の学習用データLD1,LD2を用いて、モデルM1,M2の学習(更新)を行う。学習部193は、バッチ学習を行ってもよいし、ミニバッチ学習を行ってもよい。また、学習部193は、学習用データLD1,LD2を取得する毎に、モデルM1,M2の学習(オンライン学習)を行ってもよい。
【0093】
(2-4-5-4)予測部
予測部194は、モデルM1,M2を用いて、空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷を予測する。
【0094】
本実施形態では、予測部194は、外部環境データD1、内部環境データD2、及び運転データD3を取得する毎に、外部環境データD1、内部環境データD2、及び運転データD3を取得した時点(以下、データ取得時点と記載することがある。)から10分後の空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷を予測する。具体的には、予測部194は、データ取得時点から10分後の、空調ゾーンZ1,Z2の室内温度、及び建物BLの外気温度を、モデルM1,M2に入力することにより、データ取得時点から10分後の空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷を予測する。
【0095】
データ取得時点から10分後の室内温度は、例えば、以前に取得した、室内温度と、その10分後の室内温度と、を関連付けたデータ、によって学習したモデルを用いて予測する。また、空調ゾーンZ1,Z2の室内温度は、10分間では大きく変化しないという前提のもと、データ取得時点から10分後の空調ゾーンZ1,Z2の室内温度として、直近に取得した空調ゾーンZ1,Z2の室内温度を用いてもよい。
【0096】
データ取得時点から10分後の外気温度は、例えば、以前に取得した、外気温度と、その10分後の外気温度と、を関連付けたデータ、によって学習したモデルを用いて予測する。また、建物BLの外気温度は、10分間では大きく変化しないという前提のもと、データ取得時点から10分後の建物BLの外気温度として、直近に取得した建物BLの外気温度を用いてもよい。
【0097】
(2-4-5-5)決定部
決定部195は、予測部194により予測された空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷に基づいて、空気調和機2の制御目標値又は制御指令値を決定する。本実施形態では、制御目標値又は制御指令値は、室内冷媒温度の目標値である目標冷媒温度である。しかし、これに限定されず、制御目標値又は制御指令値には、当該目標冷媒温度にするための圧縮機31の回転数等が含まれてもよい。
【0098】
まず、決定部195は、予測部194により予測された空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷と、空調ゾーンZ1,Z2に設置されている室内機20a~20cに関する情報と、に基づいて、それぞれの室内機20a~20cが処理する熱負荷を算出する。
【0099】
例えば、決定部195は、予測部194により予測された空調ゾーンZ1の熱負荷と、空調ゾーンZ1に設置されている室内機20a,20bに関する情報と、に基づいて、それぞれの室内機20a,20bが処理する熱負荷に按分する。室内機20a,20bに関する情報は、室内機20a,20bの位置関係であってもよいし、室内機20a,20bの特性値であってもよいし、室内機20a,20bの運転状況であってもよいし、これらを組み合わせた情報であってもよい。
【0100】
室内機20a,20bに関する情報が、室内機20a,20bの位置関係である場合、決定部195は、例えば、室内機20a,20bの位置が、ペリメーターゾーンか、インテリアゾーンか、に応じて重み付けをし、予測された空調ゾーンZ1の熱負荷を、それぞれの室内機20a,20bが処理する熱負荷に按分する。
【0101】
また、室内機20a,20bに関する情報が、室内機20a,20bの特性値である場合、決定部195は、例えば、室内機20a,20bの定格能力の大きさに応じて重み付けをし、予測された空調ゾーンZ1の熱負荷を、それぞれの室内機20a,20bが処理する熱負荷に按分する。
【0102】
また、室内機20a,20bに関する情報が、室内機20a,20bの運転状況である場合、決定部195は、例えば、直近に算出した室内機20a,20bのそれぞれの熱交換量に応じて重み付けをし、予測された空調ゾーンZ1の熱負荷を、それぞれの室内機20a,20bが処理する熱負荷に按分する。
【0103】
また、室内機20a,20bに関する情報が、室内機20a,20bの運転状況と特性値とを組み合わせた情報である場合、決定部195は、例えば、操作用リモコンの発停状態がONである室内機のみを対象として、定格能力の大きさに応じて重み付けをし、予測された空調ゾーンZ1の熱負荷を、それぞれの室内機20a,20bが処理する熱負荷に按分する。
【0104】
また、例えば、決定部195は、予測部194により予測された空調ゾーンZ2の熱負荷と、空調ゾーンZ2に設置されている室内機20cに関する情報と、に基づいて、室内機20cが処理する熱負荷を算出する。例えば、室内機20cに関する情報が、室内機20cの特性値である場合、決定部195は、室内機20cの定格能力の範囲内で、予測された空調ゾーンZ2の熱負荷を、室内機20cが処理する熱負荷とする。
【0105】
次に、決定部195は、それぞれの室内機20a~20cが、算出された熱負荷を処理するために必要な、それぞれの室内機20a~20cにおける必要冷媒温度を算出する。具体的には、決定部195は、室内機20a~20cにおける、熱交換量、室内吸込温度、風量、及び室内冷媒温度の間に成り立つ所定の関係式を用いて、それぞれの室内機20a~20cにおける必要冷媒温度(室内冷媒温度)を、算出された熱負荷(熱交換量)と、データ取得時点から10分後の室内吸込温度、及び風量と、から算出する。
【0106】
データ取得時点から10分後の室内吸込温度は、例えば、以前に取得した、室内吸込温度と、その10分後の室内吸込温度と、を関連付けたデータ、によって学習したモデルを用いて予測する。また、室内吸込温度は、10分間では大きく変化しないという前提のもと、データ取得時点から10分後の室内吸込温度として、直近に取得した室内吸込温度を用いてもよい。また、室内機20a~20cが定常状態である場合、データ取得時点から10分後の室内吸込温度は、直近に取得した設定温度であるという前提のもと、データ取得時点から10分後の室内吸込温度として、直近に取得した設定温度を用いてもよい。このとき、運転データ取得部192は、運転データD3として、室内機20a~20cの設定温度を取得しておく。
【0107】
データ取得時点から10分後の風量は、例えば、以前に取得した、風量と、その10分後の風量と、を関連付けたデータ、によって学習したモデルを用いて予測する。また、風量は、10分間では設定が変更されないという前提のもと、データ取得時点から10分後の風量として、直近に取得した風量を用いてもよい。
【0108】
次に、決定部195は、それぞれの室内機20a~20cにおける室内冷媒温度を、必要冷媒温度に近づけるために必要な、空気調和機2の目標冷媒温度を決定する。ここでいう、空気調和機2の目標冷媒温度は、空気調和機2を構成する室内機20a~20cに共通の目標冷媒温度である。言い換えると、決定部195は、冷媒系統に属する室内機に共通の目標冷媒温度を決定する。本実施形態では、室内機20a~20cは、同じ冷媒系統に属するため、決定部195は、室内機20a~20cにおける必要冷媒温度を、例えば、最大値、最小値、又は平均値によって集約することにより、空気調和機2の目標冷媒温度を決定する。
【0109】
(2-4-5-6)送信部
送信部196は、決定部195により決定された目標冷媒温度を含む制御内容を、空気調和機2に送信する。
【0110】
本実施形態では、空気調和機2は、熱負荷予測装置3から目標冷媒温度を受信すると、受信した目標冷媒温度を、室内機20a~20cにおける目標冷媒温度に設定する。空気調和機2は、操作用リモコンによって設定温度等が変更されない限り、10分間、設定した目標冷媒温度を維持する。
【0111】
(3)処理
熱負荷予測システム1の処理の一例を、
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0112】
ステップS1に示すように、熱負荷予測装置3は、建物BLの外気温度(外部環境データD1)と、空調ゾーンZ1,Z2の室内温度(内部環境データD2)と、室内機20a~20cの室内吸込温度、風量、及び室内冷媒温度(運転データD3)と、を取得する。
【0113】
ステップS1を終えると、ステップS2に示すように、熱負荷予測装置3は、データ取得時点から10分後の、空調ゾーンZ1,Z2の室内温度、建物BLの外気温度を、モデルM1,M2に入力することにより、データ取得時点から10分後の空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷を予測する。
【0114】
ステップS2を終えると、ステップS3に示すように、熱負荷予測装置3は、予測した10分後の空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷と、室内機20a~20cに関する情報と、に基づいて、それぞれの室内機20a~20cが処理する熱負荷を算出する。
【0115】
ステップS3を終えると、ステップS4に示すように、熱負荷予測装置3は、算出された熱負荷を処理するために必要な、室内機20a~20cにおける必要冷媒温度を算出する。
【0116】
ステップS4を終えると、ステップS5に示すように、熱負荷予測装置3は、室内機20a~20cにおける室内冷媒温度を、算出した必要冷媒温度に近づけるために必要な、空気調和機2の目標冷媒温度を決定する。
【0117】
ステップS5を終えると、ステップS6に示すように、熱負荷予測装置3は、決定した目標冷媒温度を含む制御内容を、空気調和機2に送信する。
【0118】
ステップS6を終えると、ステップS7に示すように、空気調和機2は、熱負荷予測装置3から目標冷媒温度を受信すると、受信した目標冷媒温度を、室内機20a~20cにおける目標冷媒温度に設定する。空気調和機2は、操作用リモコンによって設定温度等が変更されない限り、10分間、設定した目標冷媒温度を維持する。
【0119】
ステップS7を終えると、ステップS8に示すように、熱負荷予測装置3は、前回のモデルM1,M2の学習(更新)から、1週間経過したか否かを判定する。前回のモデルM1,M2の学習(更新)から、1週間経過した場合、ステップS9に進む。前回のモデルM1,M2の学習(更新)から、1週間経過していない場合、ステップS10に進む。
【0120】
ステップS8からステップS9に進むと、熱負荷予測装置3は、学習用データLD1,LD2を用いて、空調ゾーンZ1,Z2ごとに、空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷を予測するモデルM1,M2の学習(更新)を行う。言い換えると、熱負荷予測装置3は、1週間毎に、モデルM1,M2の学習(更新)を行う。
【0121】
ステップS9を終えると、又は、ステップS8からステップS10に進むと、熱負荷予測装置3は、10分間待機する。
【0122】
ステップS10を終えると、ステップS1に戻り、熱負荷予測装置3は、再び、外部環境データD1と、内部環境データD2と、運転データD3と、を取得する。言い換えると、熱負荷予測装置3は、10分毎に、外部環境データD1と、内部環境データD2と、運転データD3と、を取得する。
【0123】
(4)特徴
(4-1)
従来、建物内の熱負荷を学習し、予測する技術がある。しかし、従来のように、室外機単位で熱負荷を学習すると、空調ゾーンごとの熱負荷を予測することが困難である、という課題がある。
【0124】
本実施形態の熱負荷予測システム1は、建物BL内の空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷を予測する。熱負荷予測システム1は、環境データ取得部191と、運転データ取得部192と、記憶部11と、学習部193と、予測部194と、を備える。環境データ取得部191は、空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷に影響する、建物BLの外部の環境に関する外部環境データD1、及び建物BLの内部の環境に関する内部環境データD2、を取得する。運転データ取得部192は、空調ゾーンZ1,Z2の空気調和を行う空気調和機2、の運転データD3を取得する。記憶部11は、環境データ取得部191、及び運転データ取得部192、が取得したデータを記憶する。学習部193は、記憶部11から得られる学習用データLD1,LD2を用いて、空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷を予測するモデルM1,M2、の学習を行う。予測部194は、モデルM1,M2を用いて、空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷を予測する。空調ゾーンZ1,Z2には、それぞれ、空気調和機2を構成する、室内機20a,20b、及び室内機20cが設置される。学習用データLD1,LD2における空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷は、空調ゾーンZ1,Z2に設置されている、それぞれの室内機20a~20cにおける熱交換量に基づいて算出される。それぞれの室内機20a~20cにおける熱交換量は、運転データD3に基づいて算出される。
【0125】
熱負荷予測システム1では、学習部193は、記憶部11から得られる学習用データLD1,LD2を用いて、空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷を予測するモデルM1,M2、の学習を行う。予測部194は、モデルM1,M2を用いて、空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷を予測する。学習用データLD1,LD2における空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷は、空調ゾーンZ1,Z2に設置されている、それぞれの室内機20a~20cにおける熱交換量に基づいて算出される。その結果、熱負荷予測システム1は、空調ゾーンZ1,Z2ごとに熱負荷を学習し、予測することができる。
【0126】
(4-2)
本実施形態の熱負荷予測システム1では、外部環境データD1は、少なくとも建物BLの外気温度、を含む。内部環境データD2は、少なくとも空調ゾーンZ1,Z2の室内温度、を含む。
【0127】
(4-3)
本実施形態の熱負荷予測システム1では、学習部193は、モデルM1,M2の学習を行う前に、学習用データLD1,LD2から、欠損値又は異常値を含むレコードを除外する。
【0128】
(4-4)
本実施形態の熱負荷予測システム1では、学習部193は、モデルM1,M2の学習を行う前に、学習用データLD1,LD2に含まれる欠損値又は異常値を補完する。
【0129】
(4-5)
本実施形態の熱負荷予測システム1では、学習部193は、モデルM1,M2の学習を行う前に、空気調和機2の運転状態、又は空気調和機2のスケジュール、に基づいて、学習用データLD1,LD2を加工する。
【0130】
熱負荷予測システム1は、空気調和機2の運転状態、又は空気調和機2のスケジュール、に基づいて、空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷との関連が薄いデータを除外することにより、モデルM1,M2の精度を向上させることができる。
【0131】
(4-6)
本実施形態の熱負荷予測システム1では、モデルM1,M2は、機械学習モデル、統計モデル、物理モデル、又はこれらの組み合わせである。
【0132】
(4-7)
本実施形態の熱負荷予測システム1では、学習部193は、過去1週間分(所定の単位)の学習用データLD1,LD2を用いて、モデルM1,M2の学習を行う。
【0133】
(4-8)
本実施形態の熱負荷予測システム1では、学習部193は、1週間毎に(所定のタイミングで)、モデルM1,M2の更新を行う。
【0134】
(4-9)
本実施形態の熱負荷予測システム1では、それぞれの室内機20a~20cにおける熱交換量は、それぞれの室内機20a~20cにおける、室内吸込温度、風量、及び室内冷媒温度、に基づいて算出される。
【0135】
(4-10)
本実施形態の熱負荷予測システム1では、決定部195と、送信部196と、をさらに備える。決定部195は、予測部194により予測された空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷に基づいて、空気調和機2の目標冷媒温度を決定する。送信部196は、決定部195により決定された目標冷媒温度を含む制御内容を、空気調和機2に送信する。
【0136】
その結果、熱負荷予測システム1は、フィードフォワード制御を行うことができる。
【0137】
(4-11)
本実施形態の熱負荷予測システム1では、決定部195は、予測部194により予測された空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷と、空調ゾーンZ1,Z2に設置されている室内機20a~20cに関する情報と、に基づいて、それぞれの室内機20a~20cが処理する熱負荷を算出する。決定部195は、それぞれの室内機20a~20cが、算出された熱負荷を処理するために必要な、それぞれの室内機20a~20cにおける必要冷媒温度を算出する。決定部195は、それぞれの室内機20a~20cにおける室内冷媒温度を、必要冷媒温度に近づけるために必要な、空気調和機2の目標冷媒温度を決定する。
【0138】
(4-12)
本実施形態の熱負荷予測システム1では、必要冷媒温度は、それぞれの室内機20a~20cにおける、算出された熱負荷(熱交換量)、室内吸込温度、及び風量、に基づいて算出される。
【0139】
(5)変形例
(5-1)変形例1A
本実施形態では、空調ゾーンZ1,Z2の室内温度は、空調ゾーンZ1,Z2に設置された室内温度センサ631,632の計測値であった。しかし、空調ゾーンZ1,Z2の室内温度は、室内機20a~20cの室内吸込温度から算出してもよい。例えば、空調ゾーンZ1の室内温度は、室内機20a,20bの室内吸込温度の平均値とすることができる。言い換えると、空調ゾーンZ1の室内温度と、室内機20a,20bの室内吸込温度とは、互いに代用することができる。
【0140】
(5-2)変形例1B
本実施形態では、建物BLの外気温度は、建物BLの外に設置された室外温度センサ65の計測値であった。しかし、建物BLの外気温度は、室外機30が吸い込む空気の温度を計測する室外吸込温度センサの計測値であってもよい。このとき、室外吸込温度センサは、室外機30の空気の吸入口付近に設置される。言い換えると、建物BLの外気温度と、室外吸込温度センサの計測値とは、互いに代用することができる。
【0141】
(5-3)変形例1C
本実施形態では、熱負荷予測システム1は、複数の空調ゾーンZ1,Z2を対象とし、単一の冷媒系統を有していた。言い換えると、熱負荷予測システム1は、複数の空調ゾーンかつ単一の冷媒系統を有する系を対象としていた。しかし、熱負荷予測システム1は、単一の空調ゾーンかつ単一の冷媒系統を有する系を対象としてもよい。
【0142】
また、熱負荷予測システム1は、単一の空調ゾーンかつ複数の冷媒系統、又は複数の空調ゾーンかつ複数の冷媒系統、を有する系を対象としてもよい。このとき、決定部195は、予測部194により予測された1つ又は複数の空調ゾーンの熱負荷と、空調ゾーンに設置されている室内機に関する情報と、に基づいて、室内機が処理する熱負荷を算出する。決定部195は、室内機が、算出された熱負荷を処理するために必要な必要冷媒温度を算出し、室内機における室内冷媒温度を必要冷媒温度に近づけるために必要な目標冷媒温度を、複数の冷媒系統ごとに決定する。
【0143】
(5-4)変形例1D
本実施形態では、空気調和機2は、室内機20a~20cと、室外機30と、を有していた。しかし、空気調和機2は、さらに湿度調節器や、換気装置等の外気処理用空調機を有してもよい。
【0144】
例えば、学習部193は、室内機20a~20cと同様に、所定の関係式を用いて、湿度調節器や外気処理用空調機における熱交換量を算出する。学習部193は、室内機20a~20cにおける熱交換量だけでなく、湿度調節器や外気処理用空調機における熱交換量も、空調ゾーンZ1,Z2ごとに足し合わせて、学習用データLD1,LD2における空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷を算出する。決定部195は、予測部194により予測された空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷を、例えば、室内機20a~20cが処理する熱負荷だけでなく、湿度調節器や外気処理用空調機が処理する熱負荷にも按分する。決定部195は、室内機20a~20cと同様に、湿度調節器や外気処理用空調機が、算出された熱負荷を処理するために必要な、それぞれの設定値を決定する。
【0145】
(5-5)変形例1E
本実施形態では、外部環境データD1は、建物BLの外気温度であった。しかし、外部環境データD1は、さらに、建物BLの日射量、建物BLの位置の天気予報、雲量、風速、風向、及び降水量等を含んでもよい。例えば、環境データ取得部191は、建物BLの日射量を、建物BLの外に設置された日射センサから取得する。また、例えば、予測部194は、データ取得時点から10分後の日射量を、以前に取得した日射量又は代表的な日射量や、天気予報、雲量、風速、風向、降水量等の情報、によって学習したモデルを用いて予測する。また、建物BLの日射量は、10分間では大きく変化しないという前提のもと、データ取得時点から10分後の建物BLの日射量として、直近に取得した建物BLの日射量を用いてもよい。
【0146】
本実施形態では、内部環境データD2は、空調ゾーンZ1,Z2の室内温度であった。しかし、内部環境データD2は、さらに、空調ゾーンZ1,Z2の湿度、CO2濃度、窓・壁に到達する日射量、隣接する空調ゾーンの室内温度、外気の流出入量、及びOA機器・人・照明の発熱量等を含んでもよい。
【0147】
(5-6)変形例1F
本実施形態では、学習用データLD1,LD2は、外部環境データD1と、内部環境データD2と、運転データD3と、から構成された。しかし、熱負荷予測装置3は、学習用データLD1,LD2として、さらに建物BLに関する情報や、空調ゾーンZ1,Z2に関する情報を用いてもよい。
【0148】
建物BLに関する情報は、例えば、建物BLの住所、緯度経度、用途、及び壁の熱貫流率等である。空調ゾーンZ1,Z2に関する情報は、例えば、空調ゾーンZ1,Z2の用途、床面積、窓面積率、ブラインドの有無、換気種別、階高、壁の長さ、設置機器(換気装置の設置台数等)、窓の遮蔽係数、窓の熱貫流率、家具等の熱容量、及び使用状況(スケジュール等)等である。
【0149】
(5-7)変形例1G
本実施形態では、学習部193は、空調ゾーンZ1,Z2ごとに、それぞれの学習用データLD1,LD2を用いて、モデルM1,M2の学習を行った。しかし、空調ゾーンZ1と空調ゾーンZ2とが、熱負荷等の観点で類似する場合、学習部193は、例えば、空調ゾーンZ1についての学習用データLD1の代わりに、空調ゾーンZ2についての学習用データLD2を用いて、モデルM1の学習を行ってもよい。
【0150】
その結果、熱負荷予測装置3は、類似する空調ゾーンの間で、学習用データを共用することができる。
【0151】
(5-8)変形例1H
本実施形態では、学習部193は、室内機20a~20cにおける、熱交換量、室内吸込温度、風量、及び室内冷媒温度の間に成り立つ所定の関係式を用いて、それぞれの室内機20a~20cにおける熱交換量を、それぞれの室内機20a~20cにおける、室内吸込温度、風量、及び室内冷媒温度から算出した。
【0152】
しかし、それぞれの室内機20a~20cにおける熱交換量は、室内機20a~20cにおける、熱交換量、室内吸込温度、室内吹出温度、及び風量の間に成り立つ所定の関係式を用いて、それぞれの室内機20a~20cにおける、室内吸込温度、室内吹出温度、及び風量から算出してもよい。このとき、室内機20a~20cにおける室内吹出温度は、室内機20a~20cが吹き出す空気の温度を計測する室内吹出温度センサから取得する。室内吹出温度センサは、室内機20a~20cの空気の吹出口付近に設けられる。
【0153】
また、学習部193は、さらに空調ゾーンZ1,Z2の室内湿度を加えて、それぞれの室内機20a~20cにおける熱交換量を算出してもよい。空調ゾーンZ1,Z2の室内湿度は、例えば、室内機20a~20cが吸い込む空気の湿度を計測する室内湿度センサから取得する。室内湿度センサは、室内機20a~20cの空気の吸込口付近に設けられる。その結果、学習部193は、より精度良く、それぞれの室内機20a~20cにおける熱交換量を算出することができる。
【0154】
(5-9)変形例1I
本実施形態では、決定部195は、予測部194により予測された複数の空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷と、空調ゾーンZ1,Z2に設置されている室内機20a~20cに関する情報と、に基づいて、それぞれの室内機20a~20cが処理する熱負荷を算出した。決定部195は、それぞれの室内機20a~20cが、算出された熱負荷を処理するために必要な、それぞれの室内機20a~20cにおける必要冷媒温度を算出し、それぞれの室内機20a~20cにおける室内冷媒温度を、必要冷媒温度に近づけるために必要な、空気調和機2の目標冷媒温度を決定した。
【0155】
しかし、熱負荷予測システム1が、複数の空調ゾーンかつ単一の冷媒系統(本実施形態に相当)、又は単一の空調ゾーンかつ単一の冷媒系統、を有する系を対象とする場合、決定部195は、予測部194により予測された1つ又は複数の空調ゾーンの熱負荷を最大値(最大熱負荷)によって集約し、最大熱負荷を処理するために必要な、当該冷媒系統の目標冷媒温度を決定してもよい。決定部195は、例えば、熱交換量(最大熱負荷)、圧縮機の回転数、及び目標冷媒温度の間に成り立つ所定の関係式を用いて、目標冷媒温度を決定する。このとき、運転データ取得部192は、運転データD3として、冷媒系統の圧縮機の回転数を取得しておく。
【0156】
また、熱負荷予測システム1が、単一の空調ゾーンかつ複数の冷媒系統、又は複数の空調ゾーンかつ複数の冷媒系統、を有する系を対象とする場合、決定部195は、予測部194により予測された1つ又は複数の空調ゾーンの熱負荷と、空調ゾーンに設置されている室内機に関する情報と、に基づいて、室内機が処理する熱負荷を算出し、算出された熱負荷を、複数の冷媒系統ごとに最大値(最大熱負荷)によって集約し、集約された冷媒系統ごとの最大熱負荷を処理するために必要な、冷媒系統ごとの目標冷媒温度を決定してもよい。
【0157】
(5-10)変形例1J
本実施形態では、学習部193は、室内機20a~20cにおける熱交換量を、空調ゾーンZ1,Z2ごとに足し合わせて、学習用データLD1,LD2における空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷を算出した。しかし、空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷は、室内機20a~20cにおける熱交換量の分布や、室内機20a~20cにおける熱交換量を補正した値、に基づいて算出してもよい。
【0158】
(5-11)変形例1K
本実施形態では、環境データ取得部191は、外部環境データD1、及び内部環境データD2、を取得した。しかし、環境データ取得部191は、外部環境データD1、及び内部環境データD2の内のいずれかのみを取得してもよい。
【0159】
この場合、例えば、学習部193は、外部環境データD1、及び内部環境データD2の内のいずれかのみを、学習用データLD1,LD2として用いる。
【0160】
(5-12)変形例1L
本実施形態では、空気調和機2は、運転データD3として、室内熱交温度センサ62a~62cから、室内機20a~20cの室内飽和温度を取得し、これらを熱負荷予測装置3に送信した。しかし、空気調和機2は、室内飽和温度の代わりに、吸入圧力又は吐出圧力を取得し、これらを熱負荷予測装置3に送信してもよい。熱負荷予測装置3は、取得した吸入圧力又は吐出圧力から、室内飽和温度を算出する。
【0161】
また、本実施形態では、空気調和機2は、運転データD3として、過熱度又は過冷却度を算出し、これらを熱負荷予測装置3に送信した。しかし、空気調和機2は、過熱度又は過冷却度の代わりに、室内ガス側温度又は室内液側温度を取得し、これらを熱負荷予測装置3に送信してもよい。熱負荷予測装置3は、取得した室内ガス側温度又は室内液側温度から、過熱度又は過冷却度を算出する。
【0162】
(5-13)変形例1M
本実施形態では、熱負荷予測装置3は、同時点における、空調ゾーンZ1,Z2の室内温度、及び建物BLの外気温度と、空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷と、を関連付けて学習した。しかし、熱負荷予測装置3は、ある時点の空調ゾーンZ1,Z2の室内温度、及び建物BLの外気温度と、当該時点から10分後の空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷と、を関連付けて学習してもよい。
【0163】
その結果、熱負荷予測装置3は、データ取得時点から10分後の、空調ゾーンZ1,Z2の室内温度、及び建物BLの外気温度を用いなくても、データ取得時点の空調ゾーンZ1,Z2の室内温度、及び建物BLの外気温度を用いて、データ取得時点から10分後の空調ゾーンZ1,Z2の熱負荷を予測することができる。
【0164】
(5-14)
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0165】
1 熱負荷予測システム
11 記憶部
20a~20c 室内機
191 環境データ取得部
192 運転データ取得部
193 学習部
194 予測部
BL 建物
D1 外部環境データ
D2 内部環境データ
D3 運転データ
LD1,LD2 学習用データ
M1,M2 モデル
Z1,Z2 空調ゾーン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0166】