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  • 特許-電子線照射装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】電子線照射装置
(51)【国際特許分類】
   G21K 5/04 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
G21K5/04 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023028901
(22)【出願日】2023-02-27
【審査請求日】2024-01-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503237806
【氏名又は名称】株式会社NHVコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】山下 将卓
(72)【発明者】
【氏名】馬場 隆
(72)【発明者】
【氏名】林 泰隆
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-066700(JP,A)
【文献】特公昭50-027557(JP,B1)
【文献】特開平08-329869(JP,A)
【文献】特開平08-114196(JP,A)
【文献】特開平10-274189(JP,A)
【文献】特開2019-152131(JP,A)
【文献】特開2002-148229(JP,A)
【文献】実開平04-127599(JP,U)
【文献】特開2021-189038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21K 5/04
A61L 2/08
B65B 55/08
B05D 3/06
F04D 19/04
H01J 35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線を発生させる電極部を収容する筒状の真空チャンバーと、
前記真空チャンバー内を排気する真空ポンプと、を備え、
前記真空ポンプの吸気口が、前記真空チャンバーの排気口に接続され
前記吸気口は、前記電極部から放射される熱を遮蔽する遮蔽部を介して、前記排気口に接続され、
前記遮蔽部は、前記真空チャンバーの中心軸に対して傾斜する複数の傾斜板を有する、電子線照射装置。
【請求項2】
前記複数の傾斜板は、前記電極部から前記真空ポンプが視認できない、又は、前記真空チャンバーの出射窓から前記真空ポンプが視認できないように設けられる、請求項に記載の電子線照射装置。
【請求項3】
前記吸気口のフランジ軸は、前記真空チャンバーの中心軸と同軸に設けられる、請求項1または2に記載の電子線照射装置。
【請求項4】
前記吸気口のフランジ軸は、前記真空チャンバーの中心軸を起点として、前記真空チャンバーの出射窓から遠ざかる方向に変位して設けられる、請求項1または2に記載の電子線照射装置。
【請求項5】
前記吸気口は、口径調整用の変換フランジを介して前記排気口に接続される、請求項に記載の電子線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子線照射装置は、自動車用タイヤの軽量化、品質の向上、電線被覆の耐熱性の向上、又は医療機器の滅菌などの幅広い分野で利用されている。電子線照射装置に関連する技術として、例えば、下記の特許文献1に開示された発明がある。
【0003】
特許文献1に記載の電子線照射装置は、電子線照射器に対して電極部を突出入自在に支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-300327号(2005年10月27日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電子線照射装置によれば、真空チャンバー2の本体部から引き出された、真空チャンバー2の一部を構成する引出管18は、真空チャンバー2の一部に一体構成してなる真空ポンプに接続される。しかしながら、引出管18は、真空チャンバー2の本体部から屈曲して引き出されているため、真空チャンバー構造が複雑化するという問題がある。
【0006】
本開示の一態様は、真空チャンバー構造が簡素化された電子線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る電子線照射装置は、電子線を発生させる電極部を収容する筒状の真空チャンバーと、前記真空チャンバー内を排気する真空ポンプと、を備え、前記真空ポンプの吸気口が、前記真空チャンバーの排気口に接続される。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、真空チャンバー構造が簡素化された電子線照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示に係る電子線照射装置の側面図を示す。
図2】本開示に係る電子線照射装置により得られる効果を説明するための図である。
図3】本開示に係る他の電子線照射装置の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態に係る電子線照射装置1について、図1等を参照しながら説明する。以下の説明において、「上」、「下」は、重力方向を下側、重力方向と反対側を上側とする。図中、図面下側が重力方向であるものとする。
【0011】
(電子線照射装置の概要)
図1は、本開示に係る電子線照射装置1の側面図を示す。電子線照射装置1は、電子線を発生させる電極部(不図示)を収容する筒状の真空チャンバー10と、真空チャンバー10内を排気する真空ポンプ20と、を備える。以下、各部につい説明する。
【0012】
真空チャンバー10は、チャンバー本体11、出射窓12、及び排気口13を含む。
【0013】
チャンバー本体11は、筒状(例えば、略円筒状)の中空であり、限定されないが、チャンバー本体11の一端側の内壁側で電極部を支持する。電極部は直流電源から直流電圧を印加され、直流電源は、加速電圧モニターと電子流モニターとが接続されている。電極部、直流電源、加速電圧モニター、及び電子流モニターは、それぞれ公知技術が用いられてよいため、ここでの詳細説明は省略する。
【0014】
真空チャンバー10は、チャンバー本体11の下方に、加速された電子線を大気中に放出させるための出射窓12を備える。出射窓12から放出された電子線は、被処理物の表面に照射される。電子線が被処理物の表面に照射されると、被照射物質として、高分子材料においては重合反応又は架橋反応を起こし、細胞等では細胞の活性化(破壊)等を引き起こす。この原理を利用して、電子線照射装置1は、自動車用タイヤの軽量化、品質の向上、電線被覆の耐熱性の向上、又は医療機器の滅菌などの幅広い分野で利用される。
【0015】
出射窓12は、図1図3ではチャンバー本体11の下方に設けられているが、特定の位置に限定されず、チャンバー本体11の上方、又は側方などに設けられてもよい。以下の説明では、出射窓12は、チャンバー本体11の下方に設けられているものとする。
【0016】
真空チャンバー10は、チャンバー本体11内を排気(減圧)するための真空ポンプ20と接続する排気口13を有する。排気口13は、真空ポンプ20の吸気口22に接続される。排気口13は、遮蔽部30を介して、真空ポンプ20の吸気口22に接続されてもよい。出射窓12及び排気口13は、チャンバー本体11に一体形成されてよい。排気口13及び吸気口22はそれぞれ、限定されないが、フランジにより形成されている。排気口13及び吸気口22に接続される遮蔽部30の両端部も、限定されないが、フランジにより形成されている。これにより、排気口13と遮蔽部30とを、及び吸気口22と遮蔽部30とを、それぞれフランジ接続により接続できる。
【0017】
真空ポンプ20は、チャンバー本体11内を所定の真空度に減圧する。真空ポンプ20は、電子線照射装置に一般的に使用される真空ポンプであってよく、例えば、ターボ分子ポンプ、イオンポンプ、ゲッターポンプ、又はクライオポンプが挙げられる。真空ポンプ20は、吸気口22を有する。吸気口22は、真空チャンバー10の排気口13と接続される。吸気口22は、遮蔽部30と接続されてもよい。
【0018】
遮蔽部30は、一端が真空チャンバー10の排気口13に、他端が真空ポンプ20の吸気口22に接続され、電極部から放射される電子(熱)を遮蔽する。言い換えると、吸気口22は、電極部から放射される熱を遮蔽する遮蔽部30を介して、排気口13に接続される。具体的に、チャンバー本体11内に収容された電極部は、導線と、導線から分枝する複数のフィラメントと、を有する。チャンバー本体11を真空ポンプ20によって所定の真空度に減圧し、直流電源から直流高電圧を電極部に印加することにより、フィラメントの表面から熱励起された電子が放出される。このとき、遮蔽部30は、フィラメントの表面から真空ポンプ20の方向に飛ぶ電子を遮蔽する。遮蔽部30は、強度及び/耐性を考慮して、一例として、ステンレス鋼により構成される。
【0019】
遮蔽部30は、限定されないが、一端が排気口13に接続され、他端が気口22に接続される、水冷機能を有するフランジとして実現されてもよい。この構成によれば、遮蔽部30は、内部に水を循環させることにより、電極部から与えられる熱による遮蔽部30本体の高温化を低減できる。また、遮蔽部30は、排気口13及び吸気口22との接続に使用するOリングの焼け、及び/又は、遮蔽部30の後流に位置する真空ポンプ20の高温化も低減しうるため、電子線照射装置1に使用される部品類の破損防止にも有用である。こういった効果により、真空チャンバー10の内部において形成される真空状態が好適な状態に保持されることから、遮蔽部30は真空の良化にも有用である。
【0020】
遮蔽部30については図2を参照して後述する。
【0021】
図1において、Sは、円筒状のチャンバー本体11の中心軸を示す。真空ポンプ20の吸気口22のフランジ軸は、中心軸Sと同軸に設けられる。「吸気口22のフランジ軸」とは、フランジにより構成された吸気口22の断面中心を通る線(軸)をいう。「同軸」とは、チャンバー本体11の中心軸Sと吸気口22のフランジ軸とが一致(又は、略一致)することをいう。図1の電子線照射装置1においては、真空ポンプ20の吸気口22は、真空チャンバー10の排気口13と略同径である。真空ポンプ20の吸気口22は、真空チャンバー10の排気口13と同径(略同径)でなくてよく、この構成については図3を参照して後述する。
【0022】
以上、本開示に係る電子線照射装置1の構成を説明した。次に、図2を参照しつつ、電子線照射装置1により得られる効果を説明する。図2は、電子線照射装置1により得られる効果を説明するための図である。
【0023】
図2において、参照番号40は、電極部14から放出された電子(光・熱放射)を示す。参照番号50は、電子線照射装置1をX線遮蔽するX線遮蔽部を概略的に示す。
【0024】
理解の容易のため、最初に従来の電子線照射装置に関して説明する。従来の電子線照射装置(前述の特許文献1参照)によれば、真空チャンバーの本体部から引き出された、真空チャンバーの一部を構成する引出管は、真空チャンバーの一部に一体構成してなる真空ポンプに接続される。このとき、引出管は、真空チャンバーの本体部から屈曲して引き出される。そうすると、真空チャンバーは、引出管の屈曲に応じて真空チャンバーの形状及び/又は構造が複雑化する。筒状でもなくなった真空チャンバーは、その製造が困難になる。
【0025】
これに対して、本開示に係る電子線照射装置1では、真空チャンバー10の排気口13は、真空ポンプ20の吸気口22に直接接続される。あるいは、排気口13は、遮蔽部30を介して、真空ポンプ20の吸気口22に接続される。このため、電子線照射装置1は、従来必要とされた引出管を必要とせず、チャンバー本体11(すなわち、電子線照射装置1)の形状及び構造を簡素化できる。電子線照射装置1が簡素化されると、電子線照射装置1の据付面積の低減、電子線照射装置1をX線遮蔽するためのX線遮蔽部50を構成する材料の低減、及び、X線遮蔽部50を含む、電子線照射装置1周辺の支持構造の簡素化、などの波及的効果も得られる。
【0026】
従来は、真空チャンバーから引出管を引き回して、電極部から真空ポンプへの熱放射を軽減し、真空ポンプの故障リスクを低減する対策のみが取られていた。しかし、電極部と真空ポンプとの距離があるなど、真空ポンプへの熱放射が少ない場合には遮蔽部30を使用せず、熱放射が多い場合に遮蔽部30を使用し、また、遮蔽部30に工夫を加えることで、真空ポンプへの熱放射をさらに低減する効果が得られる。
【0027】
加えて、電子線照射装置に使用される真空ポンプは、従来、引出管の口径及び/又は長さなどを考慮して仕様が決定されていた。そのため、引出管が不要となる電子線照射装置1では、真空ポンプ20の排気能力の低下の軽減、又は、従来よりも排気能力の低い真空ポンプの選定など、他の効果も期待できる。従来よりも排気能力の低い真空ポンプが選定可能な場合、真空ポンプの設置面積も低減できる。このように、電子線照射装置1は、真空チャンバー構造を簡素化するという効果に加え、様々な効果を期待できる。
【0028】
引き続き、図2を参照して、遮蔽部30の構成とその効果を説明する。図2に示すように、真空ポンプ20の吸気口22は、電極部14から放射される熱を遮蔽する遮蔽部30を介して、真空チャンバー10の排気口13に接続される構成であってよい。
【0029】
遮蔽部30は、チャンバー本体11の中心軸Sに対して傾斜する複数の傾斜板31を有する。傾斜板31は、遮蔽部30の内壁に支持される。傾斜板31は、遮蔽部30と一体に形成されてよい。傾斜板31は、その数量が適宜に決められてよい。
【0030】
図2において、出射窓12は、チャンバー本体11の下方に設けられている。このとき、傾斜板31はそれぞれ、限定されないが、チャンバー本体11側が高く、真空ポンプ20側が低くなるように形成されている。図示していないが、出射窓12がチャンバー本体11の上方に設けられている場合には、傾斜板31はそれぞれ、限定されないが、チャンバー本体11側が低く、真空ポンプ20側が高くなるように形成される。あるいは、傾斜板31は、電極部14から真空ポンプ20が視認できない、及び/又は、出射窓12から真空ポンプ20が視認できないように設けられてよい。その構成を実現するために、傾斜板31の角度、及び/又は、大きさなどが適宜に設定されてよい。
【0031】
前記の構成によれば、遮蔽部30は、電極部14から真空ポンプ20への電子放射による熱伝達(熱負荷)を低減でき、その結果、真空ポンプ20の故障リスクを低減できる。
【0032】
電極部14からの熱放射が少ない場合には、電子線照射装置1は、遮蔽部30を備えていなくてもよい。電子線照射装置1において、遮蔽部30は脱着自在であってよい。
【0033】
(他の電子線照射装置)
次に、図3を参照して、本開示に係る他の電子線照射装置100について説明する。図3は、電子線照射装置100の概略側面図である。図1等を参照して説明した内容については、その説明を省略する。
【0034】
電子線照射装置100は、真空チャンバー10、真空ポンプ20、遮蔽部30、及び変換フランジ70を備える。電子線照射装置100は、遮蔽部30を備えていなくてもよいが、図3では、電子線照射装置100は遮蔽部30を備えた例が図示されている。前述の電子線照射装置1と電子線照射装置100とは以下の点で相違する。
【0035】
電子線照射装置1では、真空ポンプ20の吸気口22は、真空チャンバー10の排気口13と同径(又は、略同径)である。従って、電子線照射装置1において遮蔽部30が使用される場合、排気口13、吸気口22、及び遮蔽部30は互いに同径(又は、略同径)で構成される。
【0036】
これに対して、電子線照射装置100では、真空ポンプ20の吸気口22と真空チャンバー10の排気口13とは口径が異なる。そのため、電子線照射装置100では、吸気口22は、口径調整用の変換フランジ70を介して排気口13に接続される。図3の例では、排気口13は吸気口22よりも口径が大きく、吸気口22は遮蔽部30と同径(又は、略同径)である。そのため、変換フランジ70は、排気口13側が遮蔽部30側よりも口径が大きくなるように構成されており、チャンバー本体11側から見ると、排気口13、変換フランジ70、遮蔽部30、吸気口22の順序で設けられている。排気口13と遮蔽部30が同径(又は、略同径)であり、吸気口22が遮蔽部30よりも口径が小さい場合には、チャンバー本体11側から見て、排気口13、遮蔽部30、変換フランジ70、吸気口22の順序で設けられる。このように、電子線照射装置100は、吸気口22と排気口13との口径が異なる場合においても、変換フランジ70を備えることにより吸気口22と排気口13とを接続できる。それゆえ、前述した電子線照射装置1と同様の効果を奏することができる。
【0037】
続いて、図2を参照して説明したように、電子線照射装置100の遮蔽部30において、傾斜板31がそれぞれ、チャンバー本体11側が高く、真空ポンプ20側が低くなるように設けられている場合を考える。このとき、図3に示すように、チャンバー本体11の中心軸をS1とし、吸気口22のフランジ軸をS2とすると、吸気口22のフランジ軸S2は、チャンバー本体11の中心軸S1よりも上方に位置付けられることが好ましい。「上方」とは、重力方向の反対側(図面上側)を示す。この構成によると、チャンバー本体11側が高く、真空ポンプ20側が低くなるように設けられた傾斜板31によって真空ポンプ20への熱負荷がより低減されるため、真空ポンプ20の故障リスクを軽減できる。
【0038】
吸気口22のフランジ軸S2は、チャンバー本体11の中心軸S1よりも側方に位置付けられる構成であってもよい。「側方」とは、重力方向と垂直な方向(図面手前から奥の方向)を示す。この構成によっても、遮蔽部30のフランジ軸S2がチャンバー本体11の中心軸S1よりも下方に位置付けられている場合と比べて、傾斜板31によって真空ポンプ20への熱負荷が低減されるため、真空ポンプ20の故障リスクを軽減できる。
【0039】
また、遮蔽部30の有無に拘わらず、吸気口22のフランジ軸S2は、真空チャンバー11の中心軸S1を起点として、真空チャンバー11の出射窓12から遠ざかる方向に変位して設けられる構成であってよい。具体的に、真空チャンバー11の下方に出射窓12が設けられている場合には、限定されないが、吸気口22のフランジ軸S2は、真空チャンバー11の中心軸S1よりも上方側に位置付けられる。真空チャンバー11の上方に出射窓12が設けられている場合には、吸気口22のフランジ軸S2は、限定されないが、真空チャンバー11の中心軸S1よりも下方側に位置付けられる。真空チャンバー11の側方に出射窓12が設けられている場合には、吸気口22のフランジ軸S2は、限定されないが、真空チャンバー11の中心軸S1よりも出射窓12が設けられている側とは反対側の側方側に位置付けられる。以上の構成によれば、出射窓12から真空ポンプ20までの距離を長くなり、その結果、真空ポンプ20への熱負荷が低減され、真空ポンプ20の故障を軽減できる。
【0040】
〔まとめ〕
本開示の態様1に係る電子線照射装置は、電子線を発生させる電極部を収容する筒状の真空チャンバーと、前記真空チャンバー内を排気する真空ポンプと、を備え、前記真空ポンプの吸気口が、前記真空チャンバーの排気口に接続される。
【0041】
前記の構成によれば、本開示の態様1に係る電子線照射装置は、従来必要とされていた、真空チャンバーの一部としての引出管を必要としないため、真空チャンバー構造を簡素化できる。これにより、本開示の態様1に係る電子線照射装置は、据付面積の低減、X線遮蔽材料の低減、又は、周辺構造の簡素化等のさらなる効果も奏しうる。
【0042】
本開示の態様2に係る電子線照射装置は、前記の態様1において、前記吸気口が、前記電極部から放射される熱を遮蔽する遮蔽部を介して、前記排気口に接続される。
【0043】
前記の構成によれば、本開示の態様2に係る電子線照射装置は、前記電極部から前記真空ポンプへの電子放射による熱伝達(熱負荷)を低減でき、その結果、前記真空ポンプの故障リスクを低減できる。
【0044】
本開示の態様3に係る電子線照射装置は、前記の態様2において、前記遮蔽部が、前記真空チャンバーの中心軸に対して傾斜する複数の傾斜板を有する。
【0045】
前記の構成によれば、本開示の態様3に係る電子線照射装置は、前記真空ポンプへの熱負荷を低減でき、その結果、前記真空ポンプの故障リスクを低減できる。
【0046】
本開示の態様4に係る電子線照射装置は、前記の態様3において、前記複数の傾斜板が、前記電極部から前記真空ポンプが視認できない、又は、前記真空チャンバーの出射窓から前記真空ポンプが視認できないように設けられる。
【0047】
前記の構成によれば、本開示の態様4に係る電子線照射装置では、前記複数の傾斜板によって前記真空ポンプへの熱負荷をより低減できるため、前記真空ポンプの故障をさらに軽減できる。
【0048】
本開示の態様5に係る電子線照射装置は、前記の態様1から4の何れかにおいて、前記吸気口のフランジ軸が、前記真空チャンバーの中心軸と同軸に設けられる。
【0049】
前記の構成によれば、本開示の態様4に係る電子線照射装置は、真空チャンバー構造の簡素化が容易になる。
【0050】
本開示の態様6に係る電子線照射装置は、前記の態様1から4の何れかにおいて、前記吸気口のフランジ軸は、前記真空チャンバーの中心軸を起点として、前記真空チャンバーの出射窓から遠ざかる方向に変位して設けられる。
【0051】
前記の構成によれば、本開示の態様6に係る電子線照射装置では、前記出射窓から前記真空ポンプまでの距離を長くすることにより、前記真空ポンプへの熱負荷を低減でき、前記真空ポンプの故障を軽減できる。
【0052】
本開示の態様7に係る電子線照射装置は、前記の態様6において、前記吸気口が、口径調整用の変換フランジを介して前記排気口に接続される。
【0053】
前記の構成によれば、本開示の態様7に係る電子線照射装置は、前記吸気口と前記排気口の口径が互いに異なる場合であっても、前記変換フランジを使用することにより、前記吸気口と前記排気口とを接続できる。このように、本開示の態様7に係る電子線照射装置は、高い設計自由度を有しつつ、前記の効果を奏することができる。
【0054】
本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。さらに、それぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0055】
1、100 電子線照射装置
10 真空チャンバー
11 チャンバー本体
12 出射窓
13 排気口
14 電極部
20 真空ポンプ
22 吸気口
30 遮蔽部
31 傾斜板
50 X線遮蔽部
70 変換フランジ
S1 中心軸
S2 フランジ軸
【要約】
【課題】真空チャンバー構造が簡素化された電子線照射装置を提供する。
【解決手段】電子線照射装置(1)は、電子線を発生させる電極部(14)を収容する筒状の真空チャンバー(10)と、真空チャンバー(10)内を排気する真空ポンプ(20)と、を備え、真空ポンプ(20)の吸気口(22)が、真空チャンバー(10)の排気口(13)に接続される。
【選択図】図1
図1
図2
図3