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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】回転電気機械、圧縮機、及び冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20240510BHJP
   H02K 21/12 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K21/12 M
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023031613
(22)【出願日】2023-03-02
(62)【分割の表示】P 2022152625の分割
【原出願日】2022-09-26
(65)【公開番号】P2024047521
(43)【公開日】2024-04-05
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 正樹
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/215865(WO,A1)
【文献】特開2013-219950(JP,A)
【文献】国際公開第2018/016026(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/276
H02K 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(O)を中心に回転するロータコア(32)と該ロータコア(32)に形成された磁石孔に配置された複数の永久磁石(33)とを有するロータ(31)と、
前記ロータ(31)の径方向外側に配置されるステータコア(22)を有するステータ(21)とを備えた回転電気機械であって、
前記回転軸(O)の軸方向の一方を第1方向とし、他方を第2方向としたときに、
前記ロータコア(32)は、
少なくとも一部が前記ステータコア(22)と径方向で対向し、かつ前記回転軸(O)の軸方向に垂直な断面の形状が略同一となるように形成される第1コア部(32a)と、
前記第1コア部(32a)の前記第1方向側の端部に隣接し、かつ前記回転軸(O)の軸方向に垂直な断面の形状が略同一となるように形成される第2コア部(32b)とを有し、
前記第2コア部(32b)は、
少なくとも一部が前記ステータコア(22)の前記第1方向側の端部よりも前記第1方向側に配置され、かつ、
前記第1コア部(32a)よりも透磁率が低い磁気抵抗構造(R)を有し、
前記磁気抵抗構造(R)は、前記ロータ(31)の磁極部(S)かつ前記永久磁石(33)の径方向外側に形成される
回転電気機械。
【請求項2】
前記ロータコア(32)の軸方向の中心位置は、前記ステータコア(22)の軸方向の中心位置よりも、前記第1方向側にずれている
請求項1に記載の回転電気機械。
【請求項3】
前記磁気抵抗構造(R)は、前記第2コア部(32b)における前記永久磁石(33)の径方向外側に向かう磁石磁束の流れを妨げるように形成される
請求項1または2に記載の回転電気機械。
【請求項4】
前記第1コア部(32a)の前記第1方向側の端部は、前記ステータコア(22)の前記第1方向側の端部よりも前記第1方向側にずれている
請求項1または2に記載の回転電気機械。
【請求項5】
前記第1コア部(32a)の前記第2方向側の端部は、前記ステータコア(22)の前記第2方向側の端部よりも前記第1方向側にずれる
請求項4に記載の回転電気機械
【請求項6】
前記磁気抵抗構造(R)を有し、かつ、前記第1コア部(32a)の前記第2方向側の端部に隣接し、かつ前記回転軸(O)の軸方向に垂直な断面の形状が略同一となるように形成される第3コア部(32c)をさらに備える
請求項1または2に記載の回転電気機械。
【請求項7】
前記磁気抵抗構造(R)は、前記ロータコア(32)に形成される空隙(R)である
請求項1または2に記載の回転電気機械。
【請求項8】
前記ロータ(31)を前記回転軸(O)方向から見たときに、前記ロータコア(32)は、軸方向に垂直な断面の外周端の形状がいずれも同一となるように形成される
請求項7に記載の回転電気機械。
【請求項9】
前記磁気抵抗構造(R)は、前記ロータコア(32)の外周端を軸方向に切り欠くように形成される
請求項1または2に記載の回転電気機械。
【請求項10】
前記永久磁石(33)は、フェライト磁石である
請求項1または2に記載の回転電気機械。
【請求項11】
複数の前記永久磁石(33)は、前記ロータコア(32)の周方向に並ぶと共に、前記ロータコア(32)を軸方向に貫通するように設けられ、
それぞれの前記永久磁石(33)の軸方向に直交する断面形状はいずれも同一である
請求項1または2に記載の回転電気機械。
【請求項12】
請求項1または2に記載の回転電気機械と、該回転電気機械によって駆動される圧縮機構(50)とを備える圧縮機。
【請求項13】
請求項12に記載の圧縮機を備えた冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転電機機械、圧縮機、及び冷凍装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のモータは、ロータの端面がステータの端面よりも上方に突出するように配置されている。このモータでは、ロータの軸方向の中心の高さ位置がステータの軸方向の中心の高さ位置よりも上方へずれているため、ロータはマグネットプルフォースの作用によって下方へ付勢される。これにより、モータの下方に設けられる駆動軸の上下振動が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-89252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ロータとステータとの間には磁束線が形成される。この磁束線の密度(磁束密度)が高くなると磁力が強くなり、モータの性能(特にトルク性能)が向上する。しかし、ロータの端面がステータの端面よりも軸方向に突出するように配置されたモータの性能を向上させる検討はこれまでされてこなかった。
【0005】
本開示の目的は、ロータの端面がステータの端面よりも軸方向に突出している回転電気機械の性能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、
回転軸(O)を中心に回転するロータコア(32)と該ロータコア(32)に形成された磁石孔に配置された複数の永久磁石(33)とを有するロータ(31)と、
前記ロータ(31)の径方向外側に配置されるステータコア(22)を有するステータ(21)とを備えた回転電気機械であって、
前記回転軸(O)の軸方向の一方を第1方向とし、他方を第2方向としたときに、
前記ロータコア(32)は、
少なくとも一部が前記ステータコア(22)と径方向で対向し、かつ前記回転軸(O)の軸方向に垂直な断面の形状が略同一となるように形成される第1コア部(32a)と、
前記第1コア部(32a)の前記第1方向側の端部に隣接し、かつ前記回転軸(O)の軸方向に垂直な断面の形状が略同一となるように形成される第2コア部(32b)とを有し、
前記第2コア部(32b)は、
少なくとも一部が前記ステータコア(22)の前記第1方向側の端部よりも前記第1方向側に配置され、かつ、前記第1コア部(32a)よりも透磁率が低い磁気抵抗構造(R)を有し、
前記磁気抵抗構造(R)は、前記ロータ(31)の磁極部(S)かつ前記永久磁石(33)の径方向外側に形成される。
【0007】
第1の態様では、ロータ(31)の周方向に互いに向かい合う永久磁石(33)から延びる磁束線は磁気抵抗構造(R)によって第1コア部(32a)を経由してステータコア(22)に誘導される。このことで、ステータ(21)に径方向に対向していない部分の第2コア部(32b)の磁束は第1コア部(32a)に集中するため、第2コア部(32b)からステータコア(22)への軸方向磁束によるステータコア(22)で生じる面内渦電流が抑制され、磁力の低下を抑えることができる。その結果、回転電気機械の性能の低下を抑制できる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、
前記ロータコア(32)の軸方向の中心位置は、前記ステータコア(22)の軸方向の中心位置よりも、前記第1方向側にずれている。
【0009】
第2の態様では、ロータコア(32)の軸方向の中心位置をステータコア(22)の軸方向の中心位置よりも第2コア部(32b)側にずらすことで、ロータ(31)に対して第2方向側に付勢する力(プルフォース)を働かせることができる。
【0010】
第3の態様は、第2の態様において、
前記第1コア部(32a)の前記第1方向側の端部は、前記ステータコア(22)の前記第1方向側の端部よりも前記第1方向側にずれ、かつ、
前記第1コア部(32a)の前記第2方向側の端部は、前記ステータコア(22)の前記第2方向側の端部よりも前記第1方向側にずれる。
【0011】
第3の態様では、ロータ(31)の回転軸(O)方向の両端に第2方向側へ付勢するプルフォースを発生させることができる。
【0012】
第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、
前記磁気抵抗構造(R)を有すると共に、前記第1コア部(32a)の前記第2方向側の端部に隣接し、かつ、前記回転軸(O)の軸方向に垂直な断面の形状が略同一となるように形成される第3コア部(32c)をさらに備える。
【0013】
第4の態様では、第1コア部(32a)の軸方向両端に磁気抵抗構造(R)を有する第2コア部(32b)と第3コア部(32c)とが配置されるため、第2コア部(32b)のみ配置された場合よりも回転電気機械の性能低下を抑制でき、かつ、ロータ(31)を第2方向側へ付勢するプルフォースを増強できる。
【0014】
第5の態様は、第4の態様において、
前記第1コア部(32a)の前記第1方向側の端部は、前記ステータコア(22)の前記第1方向側の端部よりも前記第1方向側にずれ、
前記第1コア部(32a)の前記第2方向側の端部は、前記ステータコア(22)の前記第2方向側の端部よりも前記第1方向側にずれ、かつ、
前記第3コア部(32c)の一部は、前記ステータコア(22)の前記第2方向側の端部よりも前記第2方向側に配置される。
【0015】
第5の態様では、ロータコア(32)の両端に磁気抵抗構造(R)が設けられることでロータコア(32)の軸方向の長さである積み厚を大きくして強い磁力を得ることができる。さらに、ロータ(31)の軸方向の両端に発生するプルフォースは第2方向側に発生するため、十分なプルフォースを得ることができる。
【0016】
第6の態様は、第1~第5の態様のいずれか1つにおいて、
前記磁気抵抗構造(R)は、前記ロータコア(32)に形成される空隙(R)である。
【0017】
第6の態様では、ロータコア(32)に空隙(R)を形成するだけで簡便に磁気抵抗構造(R)を設けることができる。
【0018】
第7の態様は、第6の態様において、
前記ロータ(31)を前記回転軸(O)方向から見たときに、前記ロータコア(32)は、前記回転軸(O)方向に垂直な断面の外周端の形状がいずれも同一となるように形成される。
【0019】
第7の態様では、ロータコア(32)の外周面を滑らかに形成できる。これによりステータコア(22)とロータコア(32)との間を軸方向に流れる流体の流通抵抗を抑えることができる。
【0020】
第8の態様は、第1~第7の態様のいずれか1つにおいて、
前記磁気抵抗構造(R)は、前記ロータコア(32)の外周端を軸方向に切り欠くように形成される。
【0021】
第8の態様では、ロータコア(32)の外周端を切り欠くだけで簡便に磁気抵抗構造(R)を設けることができる。ロータコア(32)を大きく切り欠くことで、磁気抵抗構造(R)の透磁率を低くできる。
【0022】
第9の態様は、第1~第8の態様のいずれか1つにおいて、
前記第1コア部(32a)の軸方向の長さは、前記ステータコア(22)の軸方向の長さと同じである。
【0023】
第9の態様においても、第1の態様と同じ効果を得ることができる。
【0024】
第10の態様は、第1~第9の態様のいずれか1つにおいて、
前記永久磁石(33)は、フェライト磁石である。
【0025】
第10の態様では、フェライト磁石は比較的磁力が弱いため、ロータ(31)の積み厚を厚くして磁力を強化すればよいが、ロータ(31)の積み厚が大きくなると回転電気機械が大型化してしまう。しかし、磁気抵抗構造(R)によって、ロータ(31)の積み厚を抑えつつ回転電気機械の磁力の低下を抑制できる。
【0026】
第11の態様は、第1~第10の態様のいずれか1つにおいて、
複数の前記永久磁石(33)は、前記ロータコア(32)の周方向に並ぶと共に、前記ロータコア(32)を前記回転軸(O)方向に貫通するように設けられ、
それぞれの前記永久磁石(33)の前記回転軸(O)方向に直交する断面形状はいずれも同一である。
【0027】
第11の態様では、ロータ(31)の形状に応じて永久磁石(33)の一部を短くしたり長くしたりする必要がなく、簡便に永久磁石(33)をロータに設けることができる。
【0028】
第12の態様は、第1~第11の態様のいずれか1つの回転電気機械と、該回転電気機械によって駆動される圧縮機構(50)とを備える圧縮機である。
【0029】
第12の態様では、第1~第11の態様のいずれか1つの回転電気機械と圧縮機構(50)とを備えた圧縮機を提供できる。
【0030】
第13の態様は、第12の態様の圧縮機を備えた冷凍装置である。
【0031】
第13の態様では、第12の態様の圧縮機を備えた冷凍装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、実施形態に係る冷凍装置の概略の構成図である。
図2図2は、実施形態に係る圧縮機における軸方向に平行な断面に相当する縦断面図である。
図3図3は、モータを軸方向から見た図である。
図4図4は、ロータの縦断面の一部を示す斜視図である。
図5図5は、従来の回転電気機械の一例の縦断面を示す概略図である。
図6図6は、ロータの積み厚を大きくした回転電気機械の図5に相当する図である。
図7図7は、モータの一部の断面斜視図である。
図8図8は、軸方向から見た磁極部の領域と永久磁石の径方向外側の領域を示す図である。
図9図9は、モータに発生する磁束を説明するための図である。(A)はロータの一部を軸方向から見た図である。(B)は、回転電気機械の縦断面の一部を示した図である。
図10図10は、その他の実施形態に係るロータの一部を示す斜視図である。
図11図11は、その他の実施形態の永久磁石の形状を示した平面図である。
図12図12は、その他の実施形態の永久磁石の形状を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。また、以下に説明する各実施形態、変形例、その他の例等の各構成は、本発明を実施可能な範囲において、組み合わせたり、一部を置換したりできる。また、以下に説明する図面において、断面を示すハッチングを一部省略している場合がある。
【0034】
(1)冷凍装置
図1に示すように、本実施形態の冷凍装置(1)は、空気調和機である。空気調和機(1)は、冷房専用であってもよいし、暖房専用であってもよい。冷凍装置(1)は、冷媒が充填された冷媒回路(1a)を有する。冷媒回路(1a)は、圧縮機(10)、放熱器(2)、膨張弁(3)及び蒸発器(4)を有する。冷媒回路(1a)は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。また、空気調和機(1)は、冷房と暖房を切り換える空気調和機であってもよい。この場合、空気調和機は、冷媒の循環方向を切り換える切換機構(例えば四方切換弁)を有する。
【0035】
冷凍サイクルでは、圧縮機(10)によって圧縮された冷媒が、放熱器(2)において空気に放熱する。放熱した冷媒は、膨張弁(3)によって減圧され、蒸発器(4)において蒸発する。蒸発した冷媒は、圧縮機(10)に吸入される(図1の矢印参照)。
【0036】
(2)圧縮機
図2に示すように、本実施形態の圧縮機(10)は、ロータリ式圧縮機である。圧縮機(10)は、ケーシング(11)、モータ(20)、駆動軸(40)、及び圧縮機構(50)を有する。以下の説明において、「上」、「下」、「右」及び「左」は、圧縮機(10)を正面から見た場合の方向を指す(図2の矢印参照)。具体的に、「上」及び「下」は駆動軸(40)の軸方向でもある。「右」及び「左」は、軸方向に直交する向きであり、モータ(20)(またはケーシング(11))の径方向でもある。また、以下の説明において、上方を第1方向、及び下方を第2方向と呼ぶ場合がある。
【0037】
(2-1)ケーシング
ケーシング(11)は全密閉型の容器である。ケーシング(11)の内部は、圧縮機構(50)から吐出された高圧の冷媒で満たされる。
【0038】
ケーシング(11)は、金属材料で構成される。ケーシング(11)は、胴体(12)、底部(13)及び頂部(14)を有する。胴体(12)は、上下方向に延びる筒状の部材である。胴体(12)の筒軸方向は鉛直である。底部(13)は、胴体(12)の下端を閉塞し、頂部(14)は、胴体(12)の上端を閉塞する。
【0039】
ケーシング(11)は、モータ(20)、駆動軸(40)、及び圧縮機構(50)を収容する。上から順に、モータ(20)、駆動軸(40)及び圧縮機構(50)がケーシング(11)内に配置される。
【0040】
(2-2)モータ
図2及び図3に示すように、モータ(20)は、ステータ(21)及びロータ(31)を有する。モータ(20)は、インバータ装置によって回転数が制御される。言い換えると、圧縮機(10)は、回転数が可変なインバータ式である。モータ(20)は、回転電気機械(20)の一例である。
【0041】
ステータ(21)は、胴体(12)の内周面に固定される。ステータ(21)は、ステータコア(22)を有する。ステータコア(22)は、ロータ(31)の径方向外側に配置される。ステータコア(22)は、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されることで形成される。ステータコア(22)は、環状のバックヨーク(24)及びティース(25)を有する。バックヨーク(24)の外周面には、6つのコアカット(26)が形成される。コアカット(26)は、ステータコア(22)の軸方向に延びる溝である。ティース(25)は、バックヨーク(24)の内周面から径方向内方に延びる。本実施形態では、6つのティース(25)が、周方向に等ピッチ(具体的には60°ピッチ)で配置される。ステータ(21)は、コイル(23)を有する。コイル(23)は、ティース(25)に巻回される(図2参照)。
【0042】
図3及び図4に示すように、ロータ(31)は、ロータコア(32)、複数の永久磁石(33)及び磁気抵抗構造(R)を有する。磁気抵抗構造(R)については後述する。ロータコア(32)は、回転軸(O)を中心に回転する。ロータコア(32)は、ステータ(21)の内側に配置される。以下の説明において、回転軸(O)が延びる方向を単に軸方向と呼ぶ場合がある。また、周方向は、軸方向から見て、回転軸(O)を中心とする方向である。う。
【0043】
複数の永久磁石(33)は、ロータコア(32)の内部に配置される。本実施形態の永久磁石(33)は、フェライト磁石である。永久磁石(33)は、ロータコア(32)に形成されるスロット(34)の内部に配置される。スロット(34)は、ロータコア(32)を軸方向に貫通するように形成される。複数のスロット(34)は、軸方向から見て、回転軸(O)の中心から径方向外方に向かって放射状に延びるように形成される。具体的には、上から見てV字状に形成された6つのスロット(34)が、ロータ(31)の周方向に等間隔に配置される。
【0044】
永久磁石(33)は、6つのスロット(34)のそれぞれに設けられる。即ち、本実施形態のロータ(31)は6つの永久磁石(33)を有する。6つの永久磁石(33)は、ロータコア(32)の周方向に並ぶと共に、ロータコア(32)を軸方向に貫通するように設けられる。軸方向に直交する各永久磁石(33)の断面形状はいずれも同一である(図4参照)。
【0045】
軸方向から見て、永久磁石(33)は、スロット(34)内に嵌るようにV字状に構成される。具体的に、永久磁石(33)は、軸方向から見て、V字形状の第1磁石部(33a)と、第1磁石部(33a)の端部からそれぞれ径方向外方に延びる第2磁石部(33b)及び第3磁石部(33c)とを有する。軸方向から見て、第2磁石部(33b)及び第3磁石部(33c)は、ロータ(31)の外周端近傍まで直線状に延びる。第2磁石部(33b)と第3磁石部(33c)とはロータ(31)の周方向に隣り合っている。
【0046】
(2-3)駆動軸
図2に示すように、駆動軸(40)はロータ(31)の回転軸(O)中心に固定される。駆動軸(40)は、モータ(20)から下方に向かって延びる。駆動軸(40)は、モータ(20)によって回転駆動される。駆動軸(40)は、下方に設けられる軸受け(41)によって回転可能に支持される。
【0047】
(2-4)圧縮機構
圧縮機構(50)は、シリンダ(51)と、シリンダ(51)の内部に設けられるピストン(52)とを有する。シリンダ(51)の内周面とピストン(52)の外周面との間にシリンダ室(53)が形成される。シリンダ室(53)では、駆動軸(40)によって駆動されるピストン(52)により流体を圧縮する。
【0048】
(2-5)吸入管および吐出管
圧縮機(10)は、吸入管(15)および吐出管(16)を有する。吸入管(15)は、胴体(12)を径方向に貫通し、シリンダ室(53)と連通する。冷媒回路(1a)の低圧冷媒は、吸入管(15)を介してシリンダ室(53)に吸い込まれる。吐出管(16)は、頂部(14)を軸方向に貫通し、ケーシング(11)の内部空間と連通する。圧縮機構(50)で圧縮された冷媒は、モータ(20)のコアカット(26)などを流れた後、吐出管(16)より冷媒回路(1a)へ送られる。
【0049】
(3)低磁力の永久磁石を有するモータの課題
モータの製造コストの観点から、比較的低価格のフェライト磁石をモータに適用することが好ましい。しかし、フェライト磁石の磁力は比較的低いため、モータが所定の性能を発揮するためには、ロータコアに設けられるフェライト磁石の表面積を大きくする必要がある。例えば、ロータの軸方向の厚さを大きくすることで、フェライト磁石の表面積を大きくすることができる。
【0050】
ここで、本実施形態のようなロータリ式圧縮機において、モータの駆動により駆動軸が上下に振動することで発生する圧縮機構からの異常音を抑えることが求められる。このことに対し、駆動軸を下方へ付勢すれば、下部の軸受けに対してスラスト力が比較的強く働いて駆動軸の上下振動が抑えられる。このような、駆動軸を下方へ付勢する方法としては、ロータとステータとの間に働くプルフォースの利用が考えられる。即ち、ロータコアをステータコアよりも軸方向上側に突出するように配置することで、ロータコアを下方へ引っ張るプルフォースが働く。
【0051】
具体的に説明すると、図5に示すように、ロータコア及びステータコアの軸方向の長さが同一である場合、ロータコアの軸方向の中心の高さ位置(以下、マグネットセンタ(MC)という)をステータコアのマグネットセンタよりも上方向にずらすことで、ステータコアの上端部分とロータコアの上端部分、及びステータコアの下端部分とをロータコアの下端部分との間にプルフォースが働く。このプルフォースは、ロータコアが下方へ付勢されるように働くため(図5中の矢印参照)、モータに接続される駆動軸は、下方に配置される軸受けに押さえつけられる。その結果、駆動軸の上下振動が抑制される。
【0052】
しかし、図6に示すように、永久磁石の表面積を大きくするためにロータコアの軸方向の長さを大きくした場合、ロータコアの下端はステータコアの下端よりも下方に突出していると、ステータコアの下端部分とロータコアの下端部分との間ではロータコアを上方へ付勢するプルフォースが働く。すると、ロータコアとステータコアとのマグネットセンタの位置が互いにずれていたとしても、ステータコアの上端部分とロータコアの上端部分との間で働くプルフォース(ロータを下方へ付勢する力)は、ステータコアの下端部分とロータコアの下端部分との間で働くプルフォース(ロータを上方へ付勢する力)により低減されてしまうため(図6中の矢印参照)、駆動軸の上下振動の抑制効果が低減する。
【0053】
このことに対して、ステータコアのマグネットセンタに対してロータコアのマグネットセンタを上方へ大きくずらすことで、ロータを下向きに付勢するプルフォースを十分得ることができる。しかし、ステータコアがロータコアに対向していない面積も大きくなると、ステータコアとロータコアとの間の磁束密度が低下し、モータの性能(特にトルク性能)が低減するおそれがある。また、ステータコアとロータコアとのマグネットセンタと大きく離した場合、モータ全体の軸方向の長さが長くなってモータが大型化してしまう。
【0054】
このような課題に対して、本実施形態のモータ(20)のロータコア(32)には、磁気抵抗構造(R)が設けられる。この磁気抵抗構造(R)により、モータ(20)の性能の低下を抑制し、かつ、ロータ(31)に対して下向きのプルフォースを十分に発生させることができる。以下、本実施形態のロータコア(32)と磁気抵抗構造(R)について具体的に説明する。
【0055】
(4)第1コア部、第2コア部、及び第3コア部
図4及び図7に示すように、本実施形態のロータコア(32)は、それぞれが概ね円柱形に形成された第1コア部(32a)、第2コア部(32b)及び第3コア部(32c)から構成される。上から順に第2コア部(32b)、第1コア部(32a)及び第3コア部(32c)が並ぶ。
【0056】
第1コア部(32a)は、その少なくとも一部がステータコア(22)と径方向で対向し、かつ、回転軸(O)の軸方向に垂直な断面形状が同一になるように形成される。第1コア部(32a)の軸方向(上下方向)の長さD1は、ステータコア(22)の軸方向(上下方向)の長さD2と同一である。第1コア部(32a)の上方側端部は、ステータコア(22)の上方側端部よりも上方にずれている。第1コア部(32a)の下方側端部は、ステータコア(22)の下方側端部よりも上方にずれている。
【0057】
第2コア部(32b)は、第1コア部(32a)の上方側の端部に隣接する。第2コア部(32b)は、ステータコア(22)の上方側の端部よりも上方側に配置される。すなわち、第2コア部(32b)は、ステータコア(22)の上方側の端部よりも上方に突出している。
【0058】
第3コア部(32c)は、第1コア部(32a)の下方側の端部に隣接する。第3コア部(32c)の一部は、ステータコア(22)の下方側の端部よりも下方側に配置される。すなわち、第3コア部(32c)の一部は、ステータコア(22)の下方側の端部よりも下方に突出している。
【0059】
このように、ロータコア(32)の軸方向の長さは、ステータコア(22)の軸方向の長さよりも長い。ロータコア(32)の軸方向の中心位置(マグネットセンタ)は、ステータコア(22)の軸方向の中心位置(マグネットセンタ)よりも上方側にずれている。
【0060】
第1コア部(32a)、第2コア部(32b)及び第3コア部(32c)のそれぞれは、回転軸(O)の軸方向に垂直な断面の形状が同一または略同一に形成される。略同一とは、ロータコア(32)の製造時のばらつき、ロータ(31)にスキュー(斜溝)が設けられている場合、またはモータ特性への影響が比較的小さい微細な差異などによる程度の範囲をいう。
【0061】
第1コア部(32a)及び第2コア部(32b)の軸方向に垂直な断面のそれぞれの形状は、磁気抵抗構造(R)以外は同一または略同一である。また、第1コア部(32a)及び第2コア部(32b)の軸方向に垂直な断面のそれぞれの形状は、磁気抵抗構造(R)以外は同一または略同一である。
【0062】
ロータコア(32)の外周面において、第1コア部(32a)及び第2コア部(32b)は滑らかに接続され、第1コア部(32a)及び第3コア部(32c)は滑らかに接続される。言い換えると、第1コア部(32a)及び第2コア部(32b)の外周面は概ね面一に接続され、第1コア部(32a)及び第3コア部(32c)の外周面も概ね面一に接続される。このように、ロータ(31)を回転軸(O)方向から見たときに、ロータコア(32)は、軸方向断面の形状がいずれも同一となるように形成される。
【0063】
(5)磁気抵抗構造
磁気抵抗構造(R)は、第2コア部(32b)及び第3コア部(32c)に設けられる。磁気抵抗構造(R)は、第1コア部(32a)よりも透磁率が低い構造である。第2コア部(32b)及び第3コア部(32c)は、同一形状に形成される。第2コア部(32b)及び第3コア部(32c)のそれぞれに形成される磁気抵抗構造(R)も同一であるため、以下では第2コア部(32b)の磁気抵抗構造(R)について説明し、第3コア部(32c)の磁気抵抗構造(R)の説明は省略する。
【0064】
図8に示すように、磁気抵抗構造(R)は、本実施形態の磁気抵抗構造(R)は、ロータ(31)の磁極部(S)、かつ、永久磁石(33)の径方向外側に形成される。
【0065】
具体的に、本実施形態のロータ(31)の永久磁石(33)に形成される磁極部(S)は、軸方向から見て永久磁石(33)の周方向に向かい合う領域とその周辺領域(永久磁石(33)を含む)である(図8の破線で囲った領域)。本実施形態の磁気抵抗構造(R)は、第1磁石部(33a)、第2磁石部(33b)及び第3磁石部(33c)の径方向外側領域(図9の斜線領域)の少なくとも一部の領域に設けられる。
【0066】
図3図4及び図7に示すように、本実施形態の磁気抵抗構造(R)は、ロータコア(32)に形成される空隙(R)である。空隙(R)は、各永久磁石(33)の第2磁石部(33b)及び第3磁石部(33c)の径方向外方端同士を結んだ線から径方向外方側の領域に形成される。空隙(R)は、第2コア部(32b)及び第3コア部(32c)の外周面に沿うように形成される。本実施形態の回転電気機械(20)には、このような空隙(R)が軸方向からみて6つ形成される。
【0067】
本実施形態の空隙(R)は、第2コア部(32b)及び第3コア部(32c)の上下端を貫通する貫通孔である。すなわち、第2コア部(32b)の空隙(R)の下端は第1コア部(32a)の上端に接しており、第3コア部(32c)の空隙(R)の上端は第1コア部(32a)の下端に接している。
【0068】
(6)特徴
(6-1)特徴1
ロータコア(32)の第2コア部(32b)は、少なくとも一部がステータコア(22)の上方向側の端部よりも上方向側に配置され、かつ、第1コア部(32a)よりも透磁率が低い磁気抵抗構造(R)を有する。磁気抵抗構造(R)は、ロータ(31)の磁極部(S)かつ永久磁石(33)の径方向外側に形成される。
【0069】
ここで、図9(A)に示すようにロータ(31)を上から見たときに、永久磁石(33)のうち第2磁石部(33b)及び第3磁石部(33c)の周方向に向かい合う面は同じ極性であるため、その周方向に互いに向かい合う向きにのびる磁石磁束は、径方向外方へ向かう。
【0070】
図9(B)に示すように、第2コア部(32b)に磁気抵抗構造(R)が設けられていないと、磁石磁束は破線矢印で示すような向きに延びる。しかし、磁気抵抗構造(R)は、第2コア部(32b)における永久磁石(33)の径方向外側に向かう磁石磁束の流れを妨げる領域に設けられるため、永久磁石(33)からの磁石磁束は、磁気抵抗構造(R)を迂回するように第1コア部(32a)へ伸びる。
【0071】
このように、第2コア部(32b)の磁束は第1コア部(32a)を経由するようにしてステータコア(22)に誘導される。このことで、ステータコア(22)に対向していない部分の第2コア部(32b)の磁束は第1コア部(32a)に集中する結果、ロータ(31)とステータ(21)との間の磁力の低下を抑えることができ、回転電気機械(20)の性能の低下を抑制できる。
【0072】
(6-2)特徴2
ロータコア(32)の軸方向の中心位置は、ステータコア(22)の軸方向の中心位置よりも、上方向側にずれている。言い換えると、ロータコア(32)のマグネットセンタは、ステータコア(22)のマグネットセンタよりも、上方向側、すなわち第1方向側にずれている。
【0073】
これによると、ロータコア(32)のマグネットセンタをステータコア(22)のマグネットセンタよりも第2コア部(32b)側にずらすことで、ロータ(31)に対して下方へプルフォースを働かせることができる。このことにより、下方の軸受けに対してスラスト力が働いて、駆動軸(40)が上下方向に振動することが抑制される結果、異常音を低減できる。
【0074】
(6-3)特徴3
第1コア部(32a)の上方側の端部は、ステータコア(22)の上方側の端部よりも上方側にずれ、かつ、第1コア部(32a)の下方側の端部は、ステータコア(22)の下方側の端部よりも上方向側にずれる。
【0075】
これによると、ロータ(31)の軸方向の両端に対して下方へ付勢するプルフォースが発生するため、確実に下方の軸受けに対してスラスト力を働かせることができる。
【0076】
(6-4)特徴4
モータ(20)は、磁気抵抗構造(R)を有すると共に、第1コア部(32a)の下方側の端部に隣接し、かつ、回転軸(O)の軸方向に垂直な断面の形状が略同一となるように形成される第3コア部(32c)をさらに備える。
【0077】
これによると、ロータ(31)の軸方向の両端に磁気抵抗構造(R)が設けられるため、ロータ(31)の積み厚を上方向に加え下方向にも大きくできる。このことで、永久磁石(33)の表面積を大きくなり強い磁力を得ることができると共に、モータの体格が大きくなることを抑制できる。
【0078】
(6-5)特徴5
第1コア部(32a)の上方側の端部は、ステータコア(22)の上方側の端部よりも上方側にずれ、第1コア部(32a)の下方側の端部は、ステータコア(22)の下方側の端部よりも上方側にずれ、かつ、第3コア部(32c)の一部は、ステータコア(22)の下方側の端部よりも下方側に配置される。
【0079】
これによると、ロータ(31)の上部及び下部において下方へ付勢されるプルフォースが働くため駆動軸の上下振動を抑える力を向上できる。このように、上記特徴4の効果に加え、異常音の発生を確実に抑制できる。
【0080】
(6-6)特徴6
磁気抵抗構造(R)は、前記ロータコア(32)に形成される空隙(R)である。ロータコア(32)に空隙(R)を形成するだけで簡便に磁気抵抗構造(R)を設けることができる。本実施形態では、空隙(R)は、第2磁石部(33b)及び第3磁石部(33c)の径方向外方端同士を結んだ線から径方向外方側の領域に形成される。空隙(R)は、第2コア部(32b)及び第3コア部(32c)の外周面に沿うように形成される。
【0081】
(6-7)特徴7
ロータ(31)を回転軸(O)方向から見たときに、ロータコア(32)は、軸方向に垂直な断面の外周端の形状がいずれも同一となるように形成される。ロータコア(32)の外周面は滑らかに形成される。これによりステータコア(22)とロータコア(32)との間の空間(エアギャップ)を流れる冷媒の流通抵抗を抑えることができる。
【0082】
(6-8)特徴8
永久磁石(33)は、フェライト磁石である。フェライト磁石は比較的磁力が弱いため、ロータ(31)の積み厚を大きくして磁力を強くできるが、そうするとロータ(31)の積み厚によってモータ(20)が大型化してしまう。しかし、磁気抵抗構造(R)を設けることでロータ(31)の積み厚を比較的大きくしなくても磁力を強くできるため、モータ(20)の大型化を抑制できる。
【0083】
(6-9)特徴9
複数の永久磁石(33)は、ロータコア(32)の周方向に並ぶと共に、ロータコア(32)を軸方向に貫通するように設けられ、それぞれの永久磁石(33)の軸方向に直交する断面形状はいずれも同一である。このことにより、ロータコア(32)の形状に応じて永久磁石(33)の一部を短くしたり長くしたりする必要がなく、簡便に永久磁石(33)をロータに設けることができる。
【0084】
(7)その他の実施形態
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0085】
図10に示すように、磁気抵抗構造(R)は、ロータコア(32)の外周端を軸方向に切り欠くように形成されてもよい。ロータコア(32)の外周端を切り欠くだけで簡便に磁気抵抗構造(R)を設けることができる。加えて、上記実施形態の空隙(R)よりも空間容積を大きくできるため、その分透磁率も低くできる。このことより、第2コア部(32b)及び第3コア部(32c)から第1コア部(32a)への磁束の集中が増し、モータ(20)の性能低下を抑制できる。
【0086】
第2コア部(32b)と第3コア部(32c)とは同一形状でなくてもよい。具体的に第2コア部(32b)が第3コア部(32c)よりも軸方向に長く、または短く形成されていてもよい。また、第2コア部(32b)と第3コア部(32c)とに設けられる磁気抵抗構造(R)の構造または形状は同一でなくてもよい。
【0087】
図11に示すように、ロータ(31)に設けられる永久磁石(33)は軸方向からみて第1磁石部(33a)を有さないものであってもよい。この場合において、磁気抵抗構造(R)は、ロータ(31)の磁極部(S)かつ永久磁石(33)の径方向外側を含む第1領域(図11の縦線領域)、またはロータ(31)の磁極部(S)かつ、第2磁石部(33b)と第3磁石部(33c)との周方向に向かい合う領域のうち第1領域を除いた第2領域(図11の横線領域)に設けられていればよい。
【0088】
図12に示すように、ロータ(31)に設けられる永久磁石(33)は、軸方向からみて、第1磁石を有さず、かつ、第2磁石部(33b)と第3磁石部(33c)とが一体となっていてもよい。この場合、磁極部(S)は、図12の破線で囲った領域となる。磁気抵抗構造(R)は、ロータ(31)の磁極部(S)かつ永久磁石(33)の径方向外側を含む第1領域(図12の縦線領域)、またはロータ(31)の磁極部(S)かつ、第2磁石部(33b)と第3磁石部(33c)との周方向に向かい合う領域のうち第1領域を除いた第2領域(図12の横線領域)に設けられていればよい。
【0089】
磁気抵抗構造(R)は、ロータコア(32)のうち、永久磁石(33)の径方向外側に向かう磁石磁束の流れを妨げる領域に設けられていればよい。例えば、磁気抵抗構造(R)は、永久磁石の第1磁極(上記実施形態の第2磁石部(33b)に相当)と、第1磁極と同じ極性でロータコア(32)の周方向に隣り合って配置される永久磁石(33)の第2磁極(上記実施形態の第3磁石部(33c)に相当)との間の領域、または該領域よりも径方向外側の領域に設けられる、としてもよい。
【0090】
また、磁気抵抗構造(R)は、ロータ(31)を軸方向から見て、磁極中心線を挟んでロータコア(32)の周方向に隣り合って配置される永久磁石(上記実施形態の第2磁石部(33b)及び第3磁石部(33c)に相当)の径方向外方端部の間の領域、または該領域よりも径方向外側の領域に設けられる、としてもよい。
【0091】
また、永久磁石(33)は、複数に分割されていてもよい。例えば、上記実施形態の永久磁石(33)は、第1磁石部(33a)と、第2磁石部(33b)と第3磁石部(33c)とに分割されていてもよい。このような永久磁石(33)の集合体において、磁気抵抗構造(R)は、ロータ(31)を軸方向から見て、ロータ(31)の磁極部(S)に配置される永久磁石(33)の集合体のうち、周方向の両端に配置される永久磁石(33)で挟まれた第領域、または該第領域よりも径方向外側の領域に設けられる、としてもよい。
【0092】
また、磁気抵抗構造(R)は、第1コア部(32a)の径方向外側に向かう磁石磁束の流れに直交するように形成される、としてもよい。
【0093】
第2コア部(32b)と第3コア部(32c)の磁気抵抗構造(R)の形状は異なっていてもよい。例えば磁気抵抗構造(R)の構造が空隙(R)である場合、軸方向から空隙(R)の形状は、第2コア部(32b)と第3コア部(32c)とで異なっていてもよい。
【0094】
モータ(20)は、第2コア部(32b)を有していればよく第3コア部(32c)はなくてもよい。
【0095】
ロータコア(32)のマグネットセンタはステータコア(22)のマグネットセンタよりも離れるほどロータコア(32)により強いプルフォースを得ることができるため、ロータコア(32)及びステータコア(22)は、互いのマグネットセンタが比較的離れるように配置されてもよい。
【0096】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。以上に述べた「第1」、「第2」、…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上説明したように、本開示は、回転電気機械、圧縮機、及び冷凍装置について有用である。
【符号の説明】
【0098】
1 冷凍装置
10 圧縮機
20 モータ(回転電気機械)
21 ステータ
22 ステータコア
31 ロータ
32 ロータコア
32a 第1コア部
32b 第2コア部
32c 第3コア部
33 永久磁石
50 圧縮機構
O 回転軸
R 磁気抵抗構造(空隙)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12